(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184801
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】医用情報表示装置、医用画像処理装置、医用情報表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087650
(22)【出願日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2021091184
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000125381
【氏名又は名称】学校法人藤田学園
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 良治
(72)【発明者】
【氏名】青柳 康太
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA37
4C093DA03
4C093FA44
4C093FF16
4C093FF17
4C093FF19
4C093FF20
4C093FF28
4C093FG14
4C093FG16
(57)【要約】
【課題】解剖学的構造に対する病変量の分布を評価すること。
【解決手段】表示制御部を備える。前記表示制御部は、少なくとも肺を含むボリュームデータに基づいた表示を行う。前記表示制御部は、前記肺の解剖学的構造に基づいた第1の指標値と、当該肺に関する前記ボリュームデータに基づく第2の指標値とを対応づけて表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも肺を含むボリュームデータに基づいた表示を行う表示制御部を具備し、
前記表示制御部は、前記肺の解剖学的構造に基づいた第1の指標値と、当該肺に関する前記ボリュームデータに基づく第2の指標値とを対応づけて表示させる、
医用情報表示装置。
【請求項2】
前記第1の指標値は、前記肺に含まれる気管支の走行に基づいた指標値である、請求項1に記載の医用情報表示装置。
【請求項3】
前記第1の指標値と、前記第2の指標値とを対応づけて表示する表示部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の医用情報表示装置。
【請求項4】
前記第1の指標値は、前記気管支の分岐数に基づく指標値である、請求項2に記載の医用情報表示装置。
【請求項5】
前記第1の指標値は、前記気管支の走行に基づいて、前記肺に含まれる肺実質内の位置を規定する情報である、請求項2又は請求項4に記載の医用情報表示装置。
【請求項6】
前記第2の指標値は、前記肺の病変量に関する指標値である、請求項1に記載の医用情報表示装置。
【請求項7】
前記第2の指標値は、予め定められたしきい値の条件を満たすCT値である、請求項1に記載の医用情報表示装置。
【請求項8】
前記第1の指標値と、前記第2の指標値とを対応づけた表示は、縦軸及び横軸の一方が前記第1の指標値を示し、他方が前記第2の指標値を示すグラフの表示を含む、請求項1に記載の医用情報表示装置。
【請求項9】
前記ボリュームデータは、互いに異なる時点で得られた2つのデータを含む、請求項1に記載の医用情報表示装置。
【請求項10】
請求項1に記載の医用情報表示装置と、
前記ボリュームデータを取得する取得部と、
前記ボリュームデータに含まれる前記肺の解剖学的構造を抽出する領域抽出部と、
抽出された前記肺の解剖学的構造に基づいて、前記ボリュームデータ中の任意の評価点における第1の指標値を算出する算出部と、
前記ボリュームデータに基づいて、前記第2の指標値を導出する導出部と
を備える医用画像処理装置。
【請求項11】
前記第1の指標値は、前記肺に含まれる気管支の走行に基づいた指標値であり、
前記算出部は、前記気管支上の中枢側の基準点から、前記評価点に最近傍の前記気管支上の末梢側の点までの前記気管支上の長さに基づいて、前記第1の指標値を算出する、請求項10に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記第1の指標値は、前記肺に含まれる気管支の走行に基づいた指標値であり、
前記算出部は、前記気管支上の中枢側の基準点から、前記評価点に最近傍の前記気管支上の末梢側の点までの前記気管支上の分岐の数を、前記第1の指標値として算出する、請求項10に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記算出部は、前記分岐の数が等しい複数の前記気管支上の領域を起点として領域拡張法により前記肺に含まれる肺実質上に形成される結合領域に前記評価点が含まれる場合、当該結合領域の形成の起点となった前記気管支上の領域の前記分岐の数を、前記第1の指標値として算出する、請求項12に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記第1の指標値は、前記肺の外形又は前記肺の解剖学的領域の外形を規定する境界面からの深度に基づく指標値である、請求項1に記載の医用情報表示装置。
【請求項15】
少なくとも肺を含むボリュームデータに基づいた表示を行う医用情報表示方法であって、前記肺の解剖学的構造に基づいた第1の指標値と、当該肺に関する前記ボリュームデータに基づく第2の指標値とを対応づけて表示させることを含む医用情報表示方法。
【請求項16】
少なくとも肺を含むボリュームデータを取得することと、
前記ボリュームデータに含まれる前記肺の前記解剖学的構造を抽出することと、
抽出された前記肺の前記解剖学的構造に基づいて、前記ボリュームデータ中の任意の評価点における第1の指標値を算出することと、
前記肺に関する前記ボリュームデータに基づいて第2の指標値を導出することと
をさらに含む、請求項15に記載の医用情報表示方法。
【請求項17】
少なくとも肺を含むボリュームデータに基づいた表示をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記肺の解剖学的構造に基づいた第1の指標値と、当該肺に関する前記ボリュームデータに基づく第2の指標値とを対応づけて表示させるプログラム。
【請求項18】
少なくとも肺を含むボリュームデータを取得することと、
前記ボリュームデータに含まれる前記肺の気管支を抽出することと、
抽出された前記肺の解剖学的構造に基づいて、前記ボリュームデータ中の任意の評価点における前記第1の指標値を算出することと、
前記肺に関する前記ボリュームデータに基づいて前記第2の指標値を導出することと
をさらに含む、請求項17に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報表示装置、医用画像処理装置、医用情報表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばびまん性肺疾患に関して、病変分布を肺の小領域ごとに定量化し、肺の領域ごとの病変量をポーラーマップにより表示する方法が知られている。このように、臓器又は組織における定量的な病変分布を可視化する技術は、例えば診断を容易にすることができる等の理由から、需要がある。
【0003】
ところで、疾患は、臓器又は組織の解剖学的構造に沿って発生又は進展する場合がある。一例として、びまん性肺疾患等の肺の疾患では、気管支の走行に沿って病巣が広がったり、気管支の遠位部と近位部との間で病態が異なったりする場合がある。つまり、病変に関する診断や治療においては、病変の3次元分布と、臓器又は組織の解剖学的構造との関係を理解することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、解剖学的構造に対する病変量の分布を評価することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用情報表示装置は、表示制御部を備える。前記表示制御部は、少なくとも肺を含むボリュームデータに基づいた表示を行う。前記表示制御部は、前記肺の解剖学的構造に基づいた第1の指標値と、当該肺に関する前記ボリュームデータに基づく第2の指標値とを対応づけて表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る医用情報表示装置又は医用画像処理装置が搭載されたX線コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る末梢度の算出の一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る末梢度の算出の別の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る末梢度の算出の別の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る末梢度の算出の別の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る末梢度に関する分割数の指定画面の表示の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら各実施形態に係る医用情報表示装置、医用画像処理装置、医用情報表示方法、医用画像処理方法及びプログラムを説明する。なお、以下の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。また、例えば図面の視認性を確保する観点から、各図面の説明において主要又は代表的な構成要素だけに参照符号を付し、同一又は略同一の機能を有する構成要素であっても参照符号を付していない場合もある。
【0009】
以下に説明する各実施形態では、各実施形態に係る医用情報表示装置又は医用画像処理装置がX線コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)装置に搭載された場合を例示する。
【0010】
なお、各実施形態に係る医用情報表示装置又は医用画像処理装置は、X線CT装置に搭載される場合に限らず、プロセッサと、ROMやRAMなどのメモリとをハードウェア資源として有するコンピュータにより、独立した装置として実現されていてもよい。この場合、コンピュータに搭載されたプロセッサは、ROM等から読み出してRAMにロードしたプログラムを実行することにより、各実施形態に係る各種の機能を実現することができる。
【0011】
また、各実施形態に係る医用情報表示装置又は医用画像処理装置は、X線CT装置の他の医用画像診断装置に搭載されて実現されても構わない。この場合、各医用画像診断装置に搭載されたプロセッサは、ROM等から読み出してRAMにロードしたプログラムを実行することにより、各実施形態に係る機能を実現することができる。各実施形態に係る各種の機能を実現することができる。他の医用画像診断装置としては、X線診断装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT-CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET-CT装置などの種々の医用画像診断装置があり得る。
【0012】
例えばX線CT装置には、第3世代CT、第4世代CT等様々なタイプがあるが、いずれのタイプでも各実施形態へ適用可能である。ここで、第3世代CTは、X線管と検出器とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Typeである。第4世代CTは、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Typeである。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る医用情報表示装置又は医用画像処理装置が搭載されたX線CT装置1の構成の一例を示す図である。X線CT装置1は、X線管11から被検体Pに対してX線を照射し、照射されたX線をX線検出器12で検出する。X線CT装置1は、X線検出器12からの出力に基づいて被検体Pに関するCT画像を生成する。
【0014】
図1に示すように、X線CT装置1は、架台10、寝台30及びコンソール40を有する。なお、
図1では説明の都合上、架台10が複数描画されている。架台10は、被検体PをX線CT撮影するための構成を有するスキャン装置である。寝台30は、X線CT撮影の対象となる被検体Pを載置し、被検体Pを位置決めするための搬送装置である。コンソール40は、架台10を制御するコンピュータである。例えば、架台10及び寝台30はCT検査室に設置され、コンソール40はCT検査室に隣接する制御室に設置される。架台10、寝台30及びコンソール40は、互いに通信可能に有線又は無線で接続されている。
【0015】
なお、コンソール40は、必ずしも制御室に設置されなくてもよい。例えば、コンソール40は、架台10及び寝台30とともに同一の部屋に設置されてもよい。また、コンソール40が架台10に組み込まれてもよい。
【0016】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し垂直である軸方向をY軸方向と定義する。
【0017】
図1に示すように、架台10は、X線管11、X線検出器12、回転フレーム13、X線高電圧装置14、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17及びデータ収集回路(Data Acquisition System:DAS)18を有する。
【0018】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、被検体Pに対してX線を照射する。
【0019】
なお、X線を発生させるハードウェアはX線管11に限られない。例えば、X線管11に代えて、第5世代方式を用いてX線を発生させることにしても構わない。第5世代方式は、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、電磁偏向させる偏向コイルと、被検体Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとを含む。
【0020】
X線検出器12は、X線管11から照射され被検体Pを通過したX線を検出し、検出されたX線の線量に対応した電気信号をDAS18に出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子がスライス方向(列方向,row方向)に複数配列された構造を有する。また、X線検出器12は、例えば、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは、入射X線量に応じた光量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射面側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光の光量に応じた電気信号に変換する機能を有する。光センサとしては、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプアイヤー:PMT)等が用いられる。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0021】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。回転フレーム13の開口部19には、画像視野(FOV)が設定される。例えば、回転フレーム13は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やウェッジ16、コリメータ17及びDAS18等をさらに支持することもできる。また、回転フレーム13は、
図1において図示しない種々の構成をさらに支持することもできる。
【0022】
X線高電圧装置14は、高電圧発生装置及びX線制御装置を有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧及びX線管11に供給するフィラメント電流を発生する。X線制御装置は、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行う。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。X線高電圧装置14は、架台10内の回転フレーム13に設けられてもよいし、架台10内の固定フレーム(図示しない)に設けられても構わない。なお、固定フレームは、回転フレーム13を回転可能に支持するフレームである。
【0023】
制御装置15は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構と、この駆動機構を制御するプロセッサ及びメモリ等を有する処理回路とを含む。制御装置15は、入力インターフェース43や架台10に設けられた入力インターフェース等からの入力信号を受けて、架台10及び寝台30の動作制御を行う。制御装置15による動作制御としては、例えば、回転フレーム13を回転させる制御、架台10をチルトさせる制御及び寝台30を動作させる制御等がある。なお、架台10をチルトさせる制御は、架台10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台10に設けられてもよいし、コンソール40に設けられてもよい。
【0024】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工して構成される。
【0025】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を限定する。コリメータ17は、X線を遮蔽する複数の鉛板をスライド可能に支持し、複数の鉛板により形成されるスリットの形態を調節する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0026】
DAS18は、X線検出器12により検出されたX線の線量に応じた電気信号をX線検出器12から読み出す。DAS18は、読み出した電気信号を増幅し、ビュー期間に亘り電気信号を積分(加算)することにより当該ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する検出データを収集する。検出データは、投影データと呼ばれる。DAS18は、例えば、投影データを生成可能な回路素子を搭載した特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)により実現される。投影データは、非接触データ伝送装置等を介してコンソール40に伝送される。
【0027】
なお、DAS18が生成した検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)を有する送信機から光通信によって架台10の非回転部分(例えば固定フレーム。
図1での図示は省略している。)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール40へと転送される。なお、回転部分の回転フレーム13から架台10の非回転部分への検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ転送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0028】
なお、本実施形態では、積分型のX線検出器12が搭載されたX線CT装置1を例として説明するが、本実施形態に係る技術は、光子計数型のX線検出器が搭載されたX線CT装置1として実現することもできる。
【0029】
寝台30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置である。寝台30は、基台31、寝台駆動装置32、天板33及び支持フレーム34を有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長手方向に移動する駆動機構である。寝台駆動装置32は、モータ及びアクチュエータ等を含む。天板33は、被検体Pが載置される板である。天板33は、支持フレーム34の上面に設けられる。天板33は、被検体Pの全身が撮影可能となるように、寝台30から架台10側へ突出することが可能である。天板33は、例えば、X線の透過性と、剛性及び強度等の物理特性とが良好な炭素繊維強化樹脂(carbon fiber reinforced plastic;CFRP)により形成される。また、例えば、天板33の内部は、空洞である。支持フレーム34は、天板33を、天板33の長手方向に移動可能に支持する。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長手方向に移動してもよい。
【0030】
コンソール40は、メモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43及び処理回路44を有する。メモリ41とディスプレイ42と入力インターフェース43と処理回路44との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。なお、コンソール40は架台10とは別体として説明するが、架台10にコンソール40又はコンソール40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0031】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ41は、投影データや再構成画像データを記憶する。また、例えば、メモリ41は、各種のプログラムを記憶する。なお、メモリ41の保存領域は、X線CT装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。ここで、メモリ41は、記憶部の一例である。
【0032】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。ディスプレイ42に表示される情報は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変の空間分布を含む。ディスプレイ42としては、種々の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。例えばディスプレイ42として、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、Cathode Ray Tube(CRT)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(Organic Electro Luminescence Display:OELD)又はプラズマディスプレイが使用可能である。
【0033】
なお、ディスプレイ42は、制御室の如何なる場所に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、架台10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール40の本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、ディスプレイ42として、1又は2以上のプロジェクタが用いられてもよい。ここで、ディスプレイ42は、表示部の一例である。
【0034】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。また、例えば、入力インターフェース43は、CT画像データから解剖学的構造に対する病変量の分布を算出する際の算出条件等を操作者から受け付ける。
【0035】
入力インターフェース43としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。なお、本実施形態において、入力インターフェース43は、これらの物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。また、入力インターフェース43は、架台10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。ここで、入力インターフェース43は、入力部の一例である。
【0036】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。処理回路44は、ハードウェア資源として、プロセッサと、ROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路44は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能441、画像生成機能442、画像処理機能443、領域抽出機能444、末梢度算出機能445、病変定量機能446及び表示制御機能447等を実行する。ここで、処理回路44は、処理部の一例である。
【0037】
システム制御機能441において処理回路44は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各種機能を制御する。例えば処理回路44は、架台10で行なわれるCTスキャンを制御する。処理回路44は、CTスキャンで得られた検出データに基づいて、後述する画像生成機能442及び画像処理機能443により被検体Pに関するボリュームデータを取得する。本実施形態では、一例として、少なくとも肺を含むボリュームデータが取得される場合を説明する。
【0038】
なお、処理回路44は、X線CT装置1の外部から被検体Pに関するボリュームデータを取得してもよい。また、本実施形態では、例えばX線CT装置1で得られたボリュームデータが用いられる場合を例示するが、他の医用画像診断装置により得られたボリュームデータが用いられても構わない。ここで、画像生成機能442を実現する処理回路44は、取得部の一例である。
【0039】
画像生成機能442において処理回路44は、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。処理回路44は、生成されたデータをメモリ41に格納する。なお、前処理前のデータ(検出データ)及び前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。処理回路44は、生成された投影データ(前処理後の投影データ)に対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法、機械学習等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。処理回路44は、生成されたCT画像データをメモリ41に格納する。
【0040】
画像処理機能443において処理回路44は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、画像生成機能442によって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。例えば、処理回路44は、当該CT画像データにボリュームレンダリングや、サーフェスレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planar Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して、任意視点方向のレンダリング画像データを生成する。なお、任意視点方向のレンダリング画像データ等の3次元画像データ、すなわちボリュームデータの生成は、画像生成機能442が直接行っても構わない。処理回路44は、断層像データや3次元画像データをメモリ41に格納する。
【0041】
領域抽出機能444において処理回路44は、ボリュームデータに含まれる気管支を抽出する。処理回路44は、ボリュームデータに基づいて、気管支をセグメンテーションする。ここで、気管支のセグメンテーションは、気管支の周囲組織、すなわち肺実質の領域から気管支の領域を区分けすることを意味する。気管支のセグメンテーションは、公知の手法により行われればよい。なお、気管支の領域は、肺実質等の気管支の他の領域のセグメンテーションにより気管支の領域を抽出できる場合には、気管支の他の領域のセグメンテーションにより気管支の領域が抽出されても構わない。また、処理回路44は、セグメンテーションの結果に基づいて、気管支の分岐部を特定する。処理回路44は、最初の分岐部より頭部側を気管として特定し、当該分岐部より末梢側を気管支として特定する。例えば、処理回路44は、他の分岐部が存在する側を末梢側として特定することができる。ここで、領域抽出機能444を実現する処理回路44は、領域抽出部の一例である。また、抽出された気管支の走行は、肺の解剖学的構造の一例である。
【0042】
例えば、領域抽出機能444において処理回路44は、領域拡張法(Region Growing)により気管支をセグメンテーションする。この場合、処理回路44は、例えばボリュームデータの各データ点のうちの、予め定められたCT値の条件を満たすデータ点を開始点に設定する。予め定められたCT値の条件とは、例えば空気のCT値又は空気のCT値に準じた大きさのCT値である。処理回路44は、設定された開始点の近傍のデータ点のうち、CT値の条件を満たすデータ点を領域に加える。その後、処理回路44は、領域に含まれる各データ点の近傍にCT値の条件を満たすデータ点がなくなるまで領域を拡大することにより、気管支の領域として抽出する領域をセグメンテーションする。
【0043】
例えば、領域抽出機能444において処理回路44は、機械学習モデルを用いて気管支をセグメンテーションすることもできる。この場合、機械学習モデルは、ボリュームデータを入力として当該ボリュームデータの気管支の領域を示すボリュームデータを出力する、複数の関数が合成されたパラメータ付き合成関数である。パラメータ付き合成関数は、複数の調整可能な関数及びパラメータの組合せにより定義される。この機械学習モデルは、上記の要請を満たす如何なるパラメータ付き合成関数であってもよいが、多層のネットワークモデルであるとする。機械学習モデルは、一例として、深層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)である。このDNNとしては、如何なる構造のDNNであってもよく、例えばResNet(Residual Network)やDenseNet(Dense Convolutional Network)、U-Net等が利用可能である。機械学習モデルの構成やパラメータは、例えば予め定められてメモリ41等に格納されていればよい。
【0044】
末梢度算出機能445において処理回路44は、抽出された気管支の領域に基づいて、肺実質内の各評価点における末梢度を算出する。ここで、肺実質内の各評価点とは、ボリュームデータの各値のうちの肺実質の領域に属する任意の値であるとする。また、末梢度とは、任意の評価点に関して、気管支走行に沿ってどれだけ肺の末梢に存在するかを示す指標であるとする。ここで、末梢度算出機能445を実現する処理回路44は、算出部の一例である。また、肺実質内の各評価点は、ボリュームデータ中の任意の評価点の一例である。また、末梢度は、第1の指標値の一例である。
【0045】
ここで、末梢度の算出について、図面を参照しつつ説明する。
図2は、実施形態に係る末梢度の算出の一例を説明するための図である。
図2は、気管の領域A0、気管支の領域A1及び肺実質の領域A2を模式的に例示する。また、
図2は、複数の評価点P1を模式的に例示する。ここでは、複数の評価点P1のうちの
図2に白抜きの丸にXで示す任意の評価点P1に関する末梢度の算出を説明する。
【0046】
末梢度算出機能445において処理回路44は、評価点P1に対して最近傍の気管支の領域A1内のデータ点P2を特定する。処理回路44は、抽出された気管支の領域A1上における、中枢側の気管分岐部A01から末梢側のデータ点P2までの距離Lを末梢度として算出する。ここで、気管分岐部A01は、気管の領域A0及び気管支の領域A1の接続部であるとする。このように実施形態に係る末梢度は、気管支の走行に基づいて、肺実質の領域A2内の位置を規定する情報であり、分岐部を経るほど、すなわち末梢に進むほど大きい連続値である。
【0047】
なお、末梢度としては、距離Lそのものに限らず、例えば気管の領域A0の長さや気管支の領域A1の最長の長さで距離Lを正規化した値など、距離Lに応じて変化する値が使用されてもよい。また、末梢度は、例えば上記の気管分岐部A01からの距離の逆数など、末梢に進むほど小さい値となるように設定されても構わない。
【0048】
なお、処理回路44は、気管分岐部A01からの距離に限らず、気管の領域A0を含めた距離を末梢度として算出してもよい。
【0049】
なお、処理回路44は、最近傍のデータ点P2として1のデータ点を使用してもよいし、2以上の複数のデータ点を使用してもよい。2以上の複数のデータ点としては、例えば、最近傍のデータ点P2と、2番目に近傍のデータ点とを使用することができる。
【0050】
なお、1つの評価点P1に対して複数の最近傍のデータ点P2が存在する場合には、処理回路44は、予め定められた規則に従って末梢度を算出すればよい。一例として、処理回路44は、複数の最近傍のデータ点のうちの最も大きい末梢度を採用する。別の一例として、処理回路44は、複数の最近傍のデータ点のうちの最も小さい末梢度を採用する。別の一例として、処理回路44は、複数の最近傍のデータ点それぞれの末梢度の平均値を採用する。これらの規則は、予め定められてメモリ41等に記憶されているとする。
【0051】
病変定量機能446において処理回路44は、ボリュームデータに基づいて、肺の病変量に関する指標値を導出する。病変としては、空間的な分布が把握し難いものであってもよく、例えば炎症や繊維化、肺胞出血、肺水腫、腫瘍などがあり得る。なお、本実施形態では病変に関する指標値を例示するが、病変に相関のある状態量など、病変の他の性状や性質に関する指標値であっても構わない。ここで、肺の病変量に関する指標値とは、少なくとも肺を含むボリュームデータのうちの肺に関するボリュームデータに基づく指標値である。例えば、肺の病変量に関する指標値とは、肺実質の各評価点における、任意の種類の病変の有無又は程度を示す肺の病変情報である。一例として、当該指標値は、ボリュームデータ又はボリュームデータに基づく画像データのうちの肺実質の領域に属する任意のボクセル値又はピクセル値であってもよい。なお、当該指標値としては、ボクセル値又はピクセル値に基づく値が用いられてもよい。ボクセル値又はピクセル値に基づく値としては、ボクセル値又はピクセル値が予め定められたしきい値の範囲を満たすか否かを示す値であってもよいし、正規化を施した値や偏差値などの統計値であってもよい。ボクセル値又はピクセル値は、CT値を表していてもよい。例えば、CT値が利用される場合には、各CT値が予め定められたしきい値と比較され得る。例えば、CT値がしきい値の条件を満たすとき、そのボクセル又はピクセルは、病変が有ると導出された評価点として取り扱うことができる。以下の説明では、肺の病変量に関する指標値を単に病変情報と記載する場合もある。
【0052】
なお、本実施形態に係る技術は、いずれの種類の病変に関する指標値に対しても適用することができる。また、本実施形態に係る病変量に関する指標値の導出においては、いずれの抽出方法により病変又は病変に相関のある状態量が抽出されても構わない。一例として、処理回路44は、特開2019-010410に開示されている技術と同様にして、肺実質をボリュームデータに基づいて複数のテクスチャパターンに分類する。この複数のテクスチャパターンそれぞれは、CT画像上のテクスチャパターンであり、任意の病変に特徴的なテクスチャパターンを含む。例えば、びまん性肺疾患の病変に特徴的なテクスチャパターンとしては、すりガラス状構造がある。
【0053】
また、病変定量機能446において処理回路44は、導出された各評価点の病変情報と、末梢度算出機能445により算出された各評価点の末梢度とに基づいて、解剖学的構造に対する病変量の分布情報を生成する。ここで、解剖学的構造に対する病変量の分布情報とは、末梢度と病変量との関係を示す情報である。ここで、病変定量機能446を実現する処理回路44は、導出部の一例である。また、病変量に関する指標値は、第2の指標値の一例である。
【0054】
一例として、病変量は、病変が有ると導出された評価点の数である。評価点が空間的に一様に分布している場合、評価点の数は、肺実質における病変の体積に相関がある。別の一例として、病変量は、各末梢度又は各末梢度の区分に属する評価点のうちの病変が有ると導出された評価点の数の割合である。評価点が空間的に一様に分布している場合、評価点の割合は、肺実質の各末梢度の領域に占める病変の体積を示す。なお、評価点が空間的に一様に分布していない場合には、病変が有ると導出された評価点の数を、単位体積あたりの評価点の数等により正規化すればよい。これにより、肺の一部の部位について重点的に解剖学的構造に対する病変分布を把握しつつ、肺の他の部位の評価点の数を低減して計算コストを抑制することもできる。
【0055】
表示制御機能447において処理回路44は、画像処理機能443により生成された各種画像データに基づいて、画像をディスプレイ42に表示させる。ディスプレイ42に表示させる画像は、病変定量機能446により導出された解剖学的構造に対する病変量の分布情報を示す画像を含む。換言すれば、処理回路44は、末梢度と病変情報とを対応付けてディスプレイ42に表示させる。また、ディスプレイ42に表示させる画像は、CT画像データに基づくCT画像、任意断面の断面画像データに基づく断面画像、任意視点方向のレンダリング画像データに基づく任意視点方向のレンダリング画像等を含む。また、ディスプレイ42に表示させる画像は、操作画面を表示するための画像や操作者への通知及び警告を表示するための画像を含む。ここで、表示制御機能447を実現する処理回路44は、表示制御部の一例である。
【0056】
なお、解剖学的構造に対する病変量の分布情報を示す画像データは、画像処理機能443、病変定量機能446及び表示制御機能447のいずれの機能により生成されても構わない。
【0057】
なお、各機能441~447は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路44を構成し、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各機能441~447を実現するものとしても構わない。ここで、各機能441~447は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0058】
なお、コンソール40は、単一のコンソールにて複数の機能を実行するものとして説明したが、複数の機能を別々のコンソールが実行することにしても構わない。例えば、画像生成機能442、画像処理機能443、領域抽出機能444、末梢度算出機能445、病変定量機能446等の処理回路44の機能を分散して有しても構わない。
【0059】
なお、処理回路44の一部又は全部は、コンソール40に含まれる場合に限らず、複数の医用画像診断装置にて取得された検出データに対する処理を一括して行う統合サーバに含まれてもよい。
【0060】
なお、後処理、領域抽出処理、末梢度算出処理、病変定量処理及び表示処理のうちの少なくとも1の処理は、コンソール40又は外部のワークステーションのどちらで実施することにしても構わない。また、コンソール40とワークステーションの両方で同時に処理することにしても構わない。ワークステーションとしては、例えば各処理に対応する機能を実現するプロセッサと、ROMやRAM等のメモリとをハードウェア資源として有するコンピュータ等が適宜利用可能である。
【0061】
なお、X線CT画像データの再構成においては、フルスキャン再構成方式及びハーフスキャン再構成方式のいずれの再構成方式が適用されてもよい。例えば、画像生成機能442において処理回路44は、フルスキャン再構成方式では、被検体Pの周囲一周、360度分の投影データを用いる。また、処理回路44は、ハーフスキャン再構成方式では、180度+ファン角度分の投影データを用いる。以下では、説明の簡単のため、処理回路44は、被検体Pの周囲一周、360度分の投影データを用いて再構成するフルスキャン再構成方式を用いるものとする。
【0062】
なお、本実施形態に係る技術は、一管球型のX線コンピュータ断層撮影装置にも、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置にも適用可能である。
【0063】
なお、本実施形態に係る技術は、デュアルエネルギー方式で撮影できるように構成されたX線CT装置1にも適用可能である。このとき、X線高電圧装置14は、例えば2種の電圧値の高速スイッチングにより、X線管11から射出されるX線のエネルギースペクトルを交互に切り替えることができる。つまり、X線CT装置1は、管電圧変調の制御信号に従うタイミングで管電圧を変調しながら各収集ビューで投影データを収集できるように構成されている。被検体を異なる管電圧で撮影することにより、X線のエネルギースペクトルごとの物質のエネルギー透過性に基づいて、CT画像における濃淡のコントラストを向上させることができる。
【0064】
なお、本実施形態に係るX線CT装置1は、逐次読み出し方式でX線検出器12から電気信号を読み出すように構成されているとする。
【0065】
なお、本実施形態に係るX線CT装置1は、立位CTとして構成されていても構わない。この場合、天板33の移動に代えて、立位の被検体Pを支持し、架台10の回転部の回転軸に沿って移動可能に構成された患者支持機構が設けられていればよい。また、本実施形態に係るX線CT装置1は、架台10及び寝台30が移動可能な移動型CTとして構成されていても構わない。
【0066】
図3は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示処理の一例を示すフローチャートである。以下の流れは、システム制御機能441により少なくとも肺を含むボリュームデータが取得された後に実施されるとする。
【0067】
まず、領域抽出機能444は、ボリュームデータに基づいて、気管支をセグメンテーションする。(S101)。また、領域抽出機能444は、セグメンテーションの結果に基づいて、気管支の分岐部を特定する(S102)。そして、末梢度算出機能445は、抽出された気管支の領域に基づいて、肺実質内の各評価点における末梢度を算出する(S103)。
【0068】
病変定量機能446は、ボリュームデータに基づいて肺病変を検出することにより、肺の病変量に関する指標値を導出する(S104)。なお、本ステップの処理は、S101の処理に先立って実行されてもよいし、S101~S103の処理と並行して実行されても構わない。
【0069】
また、病変定量機能446は、肺末梢度及び肺病変情報に基づいて、肺末梢度ごとの肺病変を定量する(S105)。すなわち、病変定量機能446は、解剖学的構造に対する病変量の分布情報を生成する。また、表示制御機能447は、生成された解剖学的構造に対する病変量の分布情報をディスプレイ42に表示させる(S106)。その後、
図3の流れは終了する。
【0070】
ここで、解剖学的構造に対する病変量の分布情報の表示について、図面を参照しつつ説明する。
図4は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の一例を示す図である。
図4に示すグラフにおいて、縦軸及び横軸は、それぞれ病変量及び肺末梢度を示す。一例として、処理回路44は、解剖学的構造に対する病変量の分布情報として、末梢度に対する病変量の大きさを示すグラフを表示するための画像データを生成する。表示制御機能447は、生成された画像データに基づいて、肺末梢度に対する病変量の大きさを示すグラフを含む画像G1をディスプレイ42に表示させる。
図4に示すグラフを表示する態様によれば、病変が気管支の走行に沿って3次元的にどのように分布しているかを把握することができる。
【0071】
このように、実施形態に係る医用画像処理装置を搭載するX線CT装置1において、処理回路44は、システム制御機能441、領域抽出機能444、末梢度算出機能445及び病変定量機能446を実現可能に構成されている。システム制御機能441において処理回路44は、少なくとも肺を含むボリュームデータを取得する。領域抽出機能444において処理回路44は、ボリュームデータに含まれる気管支を抽出する。末梢度算出機能445において処理回路44は、抽出された気管支に基づいて、ボリュームデータ中の任意の評価点における肺末梢度を算出する。病変定量機能446において処理回路44は、ボリュームデータに基づいて、肺の病変量に関する指標値を導出する。
【0072】
この構成によれば、気管支の走行に沿って肺実質の各評価点に肺末梢度を付与することができる。また、肺末梢度に基づいて肺領域を分割し、各分割領域内の病変を定量することができる。ここで、気管支の走行は、肺の解剖学的構造の一例である。つまり、実施形態に係る医用画像処理装置によれば、解剖学的構造に対する病変量の分布を評価することができる。
【0073】
また、実施形態に係る医用画像処理装置を搭載するX線CT装置1において、処理回路44は、表示制御機能447をさらに実現可能に構成されている。また、実施形態に係る医用情報表示装置を搭載するX線CT装置1において、処理回路44は、表示制御機能447を実現可能に構成されている。表示制御機能447において処理回路44は、少なくとも肺を含むボリュームデータに基づいた表示を行う。一例として、処理回路44は、肺に含まれる気管支走行に基づいた末梢度と、当該肺の病変量とを対応づけて表示させる。処理回路44は、当該末梢度と病変量とを対応付けた表示情報を、例えばディスプレイ42に表示させる。
【0074】
この構成によれば、気管支の走行に沿って肺実質の各評価点に付与された肺末梢度と、肺末梢度に基づいて分割された肺領域である各分割領域内の病変量との対応を表示することができる。この表示態様によれば、病変の空間分布を把握しやすくすることができる。つまり、実施形態に係る医用情報表示装置によれば、各種疾患の診断等に役立つ情報を提供できる。ここで、気管支の走行は、肺の解剖学的構造の一例である。つまり、実施形態に係る医用情報表示装置によれば、解剖学的構造に対する病変量の分布を評価することができる。
【0075】
例えば新型コロナウイルス肺炎では、両側性のすりガラス陰影が肺末梢に多発することが知られている。このような中、実施形態に係る医用情報表示装置は、病変としてのすりガラス陰影に関して肺末梢度に沿って定量化された情報を表示することができる。このため、実施形態に係る医用情報表示装置の操作者は、新型コロナウイルス肺炎に特徴的なCT画像か否かを容易に判断することができる。
【0076】
(第2の実施形態)
本実施形態では、主に第1の実施形態との相違点を説明する。
図5は、実施形態に係る末梢度の算出の別の一例を説明するための図である。
図5は、気管の領域A0、気管支の領域A1及び肺実質の領域A2を模式的に例示する。また、
図5は、複数の評価点P1を模式的に例示する。ここでは、複数の評価点P1のうちの
図5に白抜きの丸にXで示す任意の評価点P1に関する末梢度の算出を説明する。
【0077】
領域抽出機能444において処理回路44は、気管の領域A0を次数0として、気管の領域A0から気管支の領域A1を末梢側へ進む際に通過する分岐数、すなわち分岐部の数を、気管支の領域A1のうちの各領域の次数として設定する。例えば処理回路44は、気管の領域A0に気管分岐部A01を介して接続される気管支の領域A1の次数を1に設定する。また、例えば処理回路44は、次数が1の気管支の領域A1の末梢側に分岐部を介して接続される気管支の領域A1の次数を2に設定する。
【0078】
末梢度算出機能445において処理回路44は、評価点P1に対して最近傍の気管支の領域A1内のデータ点P2を特定する。処理回路44は、データ点P2が位置する気管支の領域A1の次数を末梢度として算出する。
【0079】
このように、本実施形態に係る末梢度は、分岐部を経るほど、すなわち末梢に進むほど大きい離散値である。この構成であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
(第3の実施形態)
本実施形態では、主に第2の実施形態との相違点を説明する。
図6は、実施形態に係る末梢度の算出の別の一例を説明するための図である。本実施形態に係る末梢度算出機能445は、
図6に示すように、領域抽出機能444による気管支のセグメンテーションと同様にして、同じ次数の複数の気管支の領域A1を、領域拡張法により肺実質の領域A2において拡張する。
【0081】
図6の領域拡張法による領域拡張RGでは、肺実質の領域A2の各評価点P1が予め定められた条件を満たすとき、その評価点P1を順次拡張される結合領域R12,R13に加える。
図6の結合領域R12は、次数が2の複数の気管支の領域A1が領域拡張法により拡張され、複数の肺実質の領域A2上に拡張された領域が結合されて形成される領域である。同様に、
図6の結合領域R13は、次数が3の複数の気管支の領域A1からの拡張により肺実質の領域A2上に形成される領域である。
【0082】
末梢度算出機能445において処理回路44は、各結合領域を形成する起点となった気管支の領域A1の次数を、各結合領域内の各評価点P1の末梢度として算出する。
図6の例では、次数が2の複数の気管支の領域A1から形成された結合領域R12内の評価点P1については、いずれも末梢度2であると算出する。
【0083】
このように、本実施形態に係る末梢度は、各結合領域R12,R13内において一定の大きさであり、領域拡張の起点となった気管支の領域A1の次数である。この構成であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0084】
(第4の実施形態)
本実施形態では、主に第1の実施形態との相違点を説明する。上述の各実施形態では、気管支の走行に沿って末梢側へ進むにつれて大きくなるように末梢度を算出する場合を例示したが、これに限らない。
【0085】
図7は、実施形態に係る末梢度の算出の別の一例を説明するための図である。
図7は、肺の各領域のうちの任意の領域を例示する。本実施形態において、肺の各領域とは、肺を複数の解剖学的領域に分割した、肺葉や肺区域等の各領域である。ここで、肺の各領域の外形は、肺の解剖学的構造の一例である。なお、各領域の外形は、各領域の境界面により規定される。また、各領域の境界内は、少なくとも、気管支の領域A1及び肺実質の領域A2を含む。また、
図7は、複数の評価点P1を模式的に例示する。ここでは、複数の評価点P1のうちの
図7に白抜きの丸にXで示す任意の評価点P1に関する末梢度の算出を説明する。
【0086】
一例として、末梢度算出機能445において処理回路44は、評価点P1に対して各領域の境界面から境界内への深度D2に応じた連続値を評価点P1の末梢度として算出する。
【0087】
なお、末梢度算出機能445において処理回路44は、評価点P1に対して各領域の境界面から境界内への深度に応じた区分の次数を示す離散値を評価点P1の末梢度として算出してもよい。例えば処理回路44は、各領域の境界面から深度D1までの領域R21の次数を1に設定する。例えば処理回路44は、各領域の深度D1から深度D2までの領域R22の次数を2に設定する。例えば処理回路44は、各領域の深度D2より末梢側、すなわち各領域の内側の領域R23の次数を3に設定する。
【0088】
このように、本実施形態に係る末梢度は、肺の各領域における、各領域の境界面から境界内への深度に応じて算出される。この構成であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0089】
なお、末梢度は、肺全体の外表面から内部への深度に応じて与えられても構わない。
【0090】
なお、上述の各実施形態に係る末梢度は、組み合わせて使用することもできる。例えば、各実施形態に係る末梢度の合計値や平均値を、各評価点P1の末梢度として与えることもできる。この際、複数の末梢度の間で異なる重み付けを行うこともできる。例えば、第1の実施形態、第2の実施形態又は第3の実施形態に係る末梢度に対して、第4の実施形態に係る末梢度より大きい重み付けを行うこともできる。
【0091】
(第5の実施形態)
本実施形態では、主に第1の実施形態との相違点を説明する。解剖学的構造に対する病変量の分布情報の表示は、
図4を参照して説明した画像G1に限らない。
図8は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。表示制御機能447は、
図8に示すように、肺末梢度に対する病変量の大きさを示すグラフを含む画像G2をディスプレイ42に表示させてもよい。つまり、肺末梢度に対する病変量の大きさを示すグラフの表示態様は、
図2に例示するように棒グラフであってもよいし、
図8に例示するように折れ線グラフであっても構わない。このような表示態様であっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0092】
(第6の実施形態)
本実施形態では、主に第1の実施形態との相違点を説明する。
図9は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。解剖学的構造に対する病変量の分布情報の表示は、
図9に示すように、肺末梢度に対する病変量の累積値、すなわち累積病変量の大きさを示すグラフを含む画像G3の表示であってもよい。
図9に例示する画像G3のグラフは、
図4と同様に棒グラフである。このような表示態様であっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、累積病変量によれば、病変量の総量を定量的に把握することもできる。
【0093】
(第7の実施形態)
本実施形態では、主に第6の実施形態との相違点を説明する。
図10は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。
図10に例示する画像G4のグラフは、
図8と同様に折れ線グラフである。このような表示態様であっても、第6の実施形態と同様の効果が得られる。
【0094】
(第8の実施形態)
上述の各実施形態に係る病変量の分布情報の表示において、表示制御機能447は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、グラフのスケールを任意に変更可能である。ここで、グラフのスケールとは、グラフにより表示される病変量の分布情報を生成する対象の領域を意味する。つまり、グラフにより表示される病変量の分布情報は、左右肺全体、左右肺別、肺葉別、肺区域別等の各領域に対して生成及び表示することができる。なお、病変量の分布情報は、各領域に対して生成及び表示される場合に限らず、複数の任意の領域について一覧できるグラフとして生成及び表示されてもよい。このような表示態様であっても、上述の各実施形態と同様の効果が得られる。
【0095】
(第9の実施形態)
上述の各実施形態では、病変量の分布情報の表示として末梢度に対する病変量の分布が表示される場合を例示したが、これに限らない。病変量の分布情報としては、病変量に対する末梢度の分布を表示することもできる。例えば、表示制御機能447は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、各グラフの軸を入れ替えることができる。このような表示態様であっても、上述の各実施形態と同様の効果が得られる。また、操作者は、気管支の走行に沿った病変量の分布と、病変量が大きい末梢度、すなわち病変量が大きい気管支の走行に沿った位置とを、確認したい内容に応じて任意に切り替えて確認することができる。
【0096】
(第10の実施形態)
上述の各実施形態に係る病変量の分布情報の表示において、表示制御機能447は、対応するCT画像をさらにディスプレイ42に表示させてもよい。例えば操作者は、グラフ上の任意の点を指定する。このとき、表示制御機能447は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、指定されたグラフ上の点を代表するCT画像をディスプレイ42に表示させる。グラフ上の指定された点を代表するCT画像としては、例えば、指定された点の末梢度を有し、かつ、病変が存在する領域の代表点を通るMPR断面を示すCT画像である。より好ましくは、グラフ上の指定された点を代表するCT画像としては、例えば、指定された点の末梢度を有し、かつ、その病変が最も多く存在する領域の代表点を通るMPR断面を示すCT画像である。なお、表示制御機能447は、グラフの表示に変えてCT画像を表示してもよいし、グラフとともにCT画像を表示してもよい。このような表示態様であっても、上述の各実施形態と同様の効果が得られる。
【0097】
(第11の実施形態)
上述の各実施形態に係る病変量の分布情報の表示において、表示制御機能447は、グラフ上で肺末梢度又は肺末梢度の範囲の指定が指定されたとき、当該末梢度又は当該末梢度の範囲の肺末梢度を有する病変領域を、例えばMPR断面を示すCT画像や3次元のCT画像上でハイライト表示してもよい。このような表示態様であっても、上述の各実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
(第12の実施形態)
上述の各実施形態に係る病変量の分布情報の表示において、表示制御機能447は、上述のように表示されたCT画像上の点が指定されたとき、当該点のグラフ上での位置を表示してもよい。このとき、末梢度算出機能445は、指定された点の肺末梢度を算出する。そして、表示制御機能447は、算出された肺末梢度に対応するグラフ上の位置又は範囲をハイライト表示したり、当該位置又は範囲にアイコンを表示させたりする。このような表示態様であっても、上述の各実施形態と同様の効果が得られる。
【0099】
(第13の実施形態)
上述の各実施形態に係る病変量の分布情報は、末梢度に関して任意の区分に分割して算出及び表示することもできる。
図11は、末梢度に関する分割数の操作画面の表示の一例を示す図である。
図11は、
図4の画像G1において末梢度の表示区分を5分割から3分割に変更する操作者の入力操作が行われた場合に表示される画像G5を例示する。表示制御機能447は、
図11に示すように、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた閾値の入力操作に応じて、末梢度の表示区分に係る閾値をさらにディスプレイ42に表示させる。なお、操作者による閾値の入力操作は、閾値とする末梢度の値の入力操作でもよいし、分割数の入力操作でもよいし、画像G5上の閾値を示すアイコンの位置を変更するGUIの入力操作でもよい。
【0100】
病変定量機能446は、入力操作に応じた末梢度の閾値に基づいて、病変量の分布情報を再生成する。また、表示制御機能447は、再生成された解剖学的構造に対する病変量の分布情報をディスプレイ42に表示させる。
図12は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。
図12は、設定された2つの閾値に応じて、3分割の表示区分で表示される病変量の分布情報を示す画像G6を例示する。
【0101】
このように、表示制御機能447は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、末梢度に関する分割数を任意に変更可能である。本実施形態に係る技術によれば、いずれの分割数であっても、任意の末梢度によって表示区分が分割されるため、病変量の分布情報を、気管支走行に沿った解剖学的に有意な区分で分割して表示することができる。このような表示態様であっても、上述の各実施形態と同様の効果が得られる。
【0102】
なお、
図12の例では、近位部と、中間部と、遠位部との3つの区分に末梢度が分割されているが、末梢度の分割数はこれに限らない。末梢度の分割数は、2分割であってもよいし、4以上の複数分割であってもよい。ここで、末梢度の分割数は、左右肺全体、左右肺別、肺葉別、肺区域別等の病変量の分布情報が生成及び表示される各領域について任意に設定することができる。
【0103】
好ましくは、肺葉ごとに末梢部と中枢部との2の区分に末梢度を分割した場合である。つまり、病変量は、右肺の3つの肺葉と左肺の2つの肺葉とを含む5つの肺葉それぞれの2つの区分、すなわち合計10の区分それぞれについて算出することもできる。この場合、病変量の分布情報は、肺葉ごとに1つの閾値で分割された肺葉ごとのグラフとして生成及び表示されてもよいし、10の区分の病変量を一覧できる左右肺全体のグラフとして生成及び表示されてもよい。あるいは、好ましくは、肺葉の代わりに、肺区域ごとに末梢部と中枢部との2つの区分に末梢度を分割した場合である。つまり、病変量は、18の肺区域それぞれの2つの区分、すなわち合計36の区分それぞれについて算出することもできる。この場合、病変量の分布情報は、肺区域ごとに1つの閾値で分割された肺区域ごとのグラフとして生成及び表示されてもよいし、36の区分の病変量を一覧できる左右肺全体のグラフとして生成及び表示されてもよい。
【0104】
(第14の実施形態)
上述の各実施形態に係る医用情報表示装置又は医用画像処理装置が搭載されたX線CT装置1は、解剖学的構造に対する病変量の分布の経時変化を示す情報を算出及び表示することもできる。
図13は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。表示制御機能447は、
図13に示すように、解剖学的構造に対する病変量の分布の経時変化を示す画像G7を表示してもよい。画像G7は、「検査1」に関する病変量の分布情報を表示する画像G71を含む。また、画像G7は、「検査1」とは異なる「検査2」に関する病変量の分布情報を表示する画像G72を含む。ここで、「検査1」に関する病変量の分布情報とは、第1の時点で得られたボリュームデータに基づいて生成された病変量の分布情報である。同様に、「検査2」に関する病変量の分布情報とは、第1の時点とは異なる第2の時点で得られたボリュームデータに基づいて生成された病変量の分布情報である。
【0105】
例えば
図3に例示する病変量の分布情報の表示処理は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて特定された少なくとも2つのボリュームデータに関して実行され得る。なお、互いに異なる時点に得られた2つのボリュームデータに関する各処理は、一連の流れとして実行されてもよいし、別個の流れとして実行されてもよい。つまり、表示制御機能447は、既に病変量の分布情報が生成されているボリュームデータに関しては、
図3のS101~S105の処理を再度実行しなくてもよい。このような表示態様であっても、上述の各実施形態と同様の効果が得られる。また、操作者は、各末梢度での病変量の経時変化を容易に把握することができる。
【0106】
なお、画像G71及び画像G72は、
図13に例示する画像G7のように同時に表示されてもよいし、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて順次表示されてもよい。
【0107】
(第15の実施形態)
本実施形態では、主に第14の実施形態との相違点を説明する。
図14は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。表示制御機能447は、
図14の画像G8に示すように、第1の時点の「検査1」に関する病変量の分布情報と、第1の時点とは異なる第2の時点の「検査2」に関する病変量の分布情報とを1つのグラフにより表示してもよい。このような表示態様であっても、第14の実施形態と同様の効果が得られる。
【0108】
(第16の実施形態)
本実施形態では、主に第14の実施形態との相違点を説明する。
図15は、実施形態に係る解剖学的構造に対する病変量の分布の表示の別の一例を示す図である。表示制御機能447は、
図15の画像G9に示すように、第1の時点の「検査1」と、第1の時点とは異なる第2の時点の「検査2」との間における各末梢度の病変量の差分を1つのグラフにより表示してもよい。つまり、病変定量機能446は、各ボリュームデータから肺末梢度ごとの肺病変量を算出した後、各肺末梢度の肺病変量の差分をさらに算出する。このような表示態様であっても、第14の実施形態と同様の効果が得られる。
【0109】
なお、
図13~
図15を参照して互いに異なる時点に得られた2つのボリュームデータに基づいて解剖学的構造に対する病変量の分布の経時変化を示す情報を算出及び表示する場合を例示したが、これに限らない。解剖学的構造に対する病変量の分布の経時変化を示す情報は、3以上の複数のボリュームデータに基づいて算出及び表示されてもよい。
【0110】
なお、上述の各実施形態に係る病変量の分布情報の表示は、組み合わせて使用することもできる。例えば、表示制御機能447は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、各表示を任意に切り替えることもできる。表示の切替に際して追加の処理が発生する場合、医用情報表示装置は、上述した各処理で得られた表示のための情報をさらに取得する。また、医用画像処理装置は、上述した各表示に係る処理をさらに実行し、表示のための情報をさらに生成する。
【0111】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、ASIC、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)等の回路を意味する。PLDは、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)を含む。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プログラムが保存された記憶回路は、コンピュータ読取可能な非一時的記録媒体である。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現してもよい。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0112】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、解剖学的構造に対する病変量の分布を評価することができる。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0114】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
少なくとも臓器を含むボリュームデータに基づいた表示を行う表示制御部を備え、
前記表示制御部は、前記臓器の解剖学的構造に基づいた第1の指標値と、当該臓器に関する前記ボリュームデータに基づく第2の指標値とを対応づけて表示させる、
医用情報表示装置。
(付記2)
前記臓器の解剖学的構造は、前記臓器に含まれる管状組織であってもよい。
(付記3)
前記管状組織は、少なくとも1の分岐を有していてもよい。
(付記4)
前記第1の指標値は、前記管状組織の分岐数に基づく指標値であってもよい。
(付記5)
前記第1の指標値は、前記管状組織の末梢度を示す指標値であってもよい。
(付記6)
前記第1の指標値は、前記臓器に含まれる組織であって、前記管状組織の周囲組織内の位置を規定する情報であってもよい。
(付記7)
前記管状組織の周囲組織内の位置は、前記管状組織の走行を基準とした位置を規定する情報であってもよい。
(付記8)
前記第2の指標値は、前記臓器の病変量に関する指標値であってもよい。
(付記9)
前記第2の指標値は、前記ボリュームデータのボクセル値又は前記ボリュームデータに基づく画像データのピクセル値のうちの予め定められたしきい値の条件を満たすボクセル値又はピクセル値であってもよい。
(付記10)
前記ボクセル値又は前記ピクセル値は、CT値又は当該CT値に基づく値であってもよい。
(付記11)
前記ボリュームデータを取得する取得部と、
前記ボリュームデータに含まれる前記臓器の解剖学的構造を抽出する領域抽出部と、
抽出された前記臓器の解剖学的構造に基づいて、前記ボリュームデータ中の任意の評価点における第1の指標値を算出する算出部と、
前記ボリュームデータに基づいて、前記第2の指標値を導出する導出部と
をさらに備える医用画像処理装置であってもよい。
(付記12)
前記評価点は、前記周囲組織上に設定されてもよい。
(付記13)
前記第1の指標値は、前記評価点に最近傍の前記管状組織上の点に基づいて算出されてもよい。
(付記14)
前記第1の指標値は、前記管状組織上の中枢側の基準点から、前記評価点に最近傍の前記管状組織上の末梢側の点までの前記管状組織上の長さであってもよい。
(付記15)
前記第1の指標値は、前記管状組織上の中枢側の基準点から、前記評価点に最近傍の前記管状組織上の末梢側の点までの前記管状組織上の分岐の数であってもよい。
(付記16)
前記第1の指標値は、前記管状組織上の中枢側の基準点からの前記管状組織上の分岐の数が等しい複数の前記管状組織上の領域から領域拡張法により前記周囲組織上に形成される結合領域であって、前記評価点が含まれる結合領域の分岐の数であってもよい。
(付記17)
前記基準点は、前記管状組織上の最も中枢側の分岐上に設定されてもよい。
(付記18)
前記臓器の解剖学的構造は、前記臓器の外形又は前記臓器の解剖学的領域の外形であってもよい。
(付記19)
前記第1の指標値は、前記臓器の外表面からの距離又は前記臓器の解剖学的領域の境界面からの距離であってもよい。
(付記20)
前記第1の指標値は、前記臓器の外表面からの距離の区分又は前記臓器の解剖学的領域の境界面からの距離の区分であってもよい。
(付記21)
前記臓器が肺であるとき、前記臓器の解剖学的構造は、当該肺に含まれる気管支の走行であってもよい。
(付記22)
前記管状組織の周囲組織は、当該肺に含まれる肺実質であってもよい。
(付記23)
前記臓器が脳、肝臓又は腎臓であるとき、前記臓器の解剖学的構造は、当該臓器に含まれる血管であってもよい。
(付記24)
前記臓器の解剖学的構造に基づいた第1の指標値と、当該臓器の病変量に関する第2の指標値とを対応づけて表示する表示部をさらに備えていてもよい。
(付記25)
前記第1の指標値と、前記第2の指標値とを対応づけた表示は、縦軸及び横軸の一方が前記第1の指標値を示し、他方が前記第2の指標値を示すグラフの表示を含んでいてもよい。
(付記26)
前記ボリュームデータは、互いに異なる時点で得られた2つのデータを含んでいてもよい。
(付記27)
前記第1の指標値と、前記第2の指標値とを対応づけた表示は、前記2つのデータそれぞれに関する表示を含んでいてもよい。
(付記28)
前記第1の指標値と、前記第2の指標値とを対応づけた表示は、前記2つのデータの間の前記第1の指標値又は前記第2の指標値の差分を示す表示であってもよい。
(付記29)
前記第1の指標値と前記第2の指標値とを対応づけることは、前記第2の指標値が前記第1の指標値に対してどのように変化するかを図表、絵又は画像で表現することを含んでいてもよい。
(付記30)
上記の医用情報表示装置の各構成を制御する方法。
(付記31)
上記の医用画像処理装置の各構成を制御する方法。
(付記32)
上記の医用情報表示装置の各構成をコンピュータに実行させるプログラム。
(付記33)
上記の医用画像処理装置の各構成をコンピュータに実行させるプログラム。
(付記34)
コンピュータにより実行される上記のプログラムを記憶する記憶媒体。