(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184808
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ハッチロック装置、航空機ハッチ及び航空機ハッチを備える航空機
(51)【国際特許分類】
B64C 1/14 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B64C1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087982
(22)【出願日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】21176917
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】311014956
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,21129 Hamburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】セーレン オーレ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】引張力をハッチのフレーム領域に散逸させることのできるハッチロックシステムを提供する。
【解決手段】ハッチロック装置10は、航空機ハッチパネルのハッチ隔壁13に接続できる偏心ブッシュ17と、偏心ブッシュの中に導入され、ロックボルト30を受けるための、ボルト受容部軸Bに沿って中央に向けられるボルト受容部9を有する内側ライニング5と、内側ライニング内に配置される円錐圧迫スリーブ7と、円錐クランプスリーブ8であって、その外側円錐シェル面が円錐圧迫スリーブの内側円錐シェル面と変位可能に係合し、その内側円筒シェル面がボルト受容部の外壁と同一面である円錐クランプスリーブと、それぞれ内側ライニングの中の円錐圧迫スリーブの両側の各々に取り付けられ、円錐圧迫スリーブを円錐クランプスリーブに関してボルト受容部軸に沿って変位させるように設計されたリニアアクチュエータ4a,4bとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機ハッチのためのハッチロック装置であって、
航空機ハッチパネルのハッチ隔壁に接続できる偏心ブッシュと、
前記偏心ブッシュの中に導入され、ロックボルトを受けるための、ボルト受容部軸に沿って中央に向けられるボルト受容部を有する内側ライニングと、
前記内側ライニング内に配置される円錐圧迫スリーブと、
円錐クランプスリーブであって、その外側円錐シェル面が前記円錐圧迫スリーブの内側円錐シェル面と変位可能に係合し、その内側円筒シェル面が前記ボルト受容部の外壁と同一面である円錐クランプスリーブと、
それぞれ前記内側ライニングの中の前記円錐圧迫スリーブの両側の各々に取り付けられ、前記円錐圧迫スリーブを前記円錐クランプスリーブに関して前記ボルト受容部軸に沿って変位させるように設計されたリニアアクチュエータとを含むハッチロック装置。
【請求項2】
前記円錐圧迫スリーブ及び/又は前記円錐クランプスリーブは、1つ又は複数のスロットが、部分的に、又はそれぞれ前記円錐スリーブの本体の全長にわたり設けられる請求項1に記載のハッチロック装置(10)。
【請求項3】
前記円錐クランプスリーブは、そのスロット又はセグメントの溝の、前記内側ライニングの突起を介したインタロックによって、又は前記内側ライニング内の対応する溝内の前記円錐クランプスリーブのスリーブ突起若しくはそのセグメントのうちの1つの上の突起によって、前記ボルト受容部軸(B)の周囲で回転しないように固定され、前記円錐圧迫スリーブは、フェザキーによって前記内側ライニング内に前記ボルト受容部軸(B)の周囲での回転に関して固定される請求項2に記載のハッチロック装置。
【請求項4】
前記リニアアクチュエータは油圧シリンダである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のハッチロック装置。
【請求項5】
ハッチ側に取り付けられた接続管に管スリーブを介して螺合される力散逸管をさらに含む請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のハッチロック装置。
【請求項6】
前記円錐クランプスリーブは、前記ボルト受容部軸に沿って前記ボルト受容部の開口に向かってテーパが付けられている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のハッチロック装置。
【請求項7】
前記円錐クランプスリーブの前記外側円錐シェル面と前記円錐圧迫スリーブの前記内側円錐シェル面には、前記円錐クランプスリーブと前記円錐圧迫スリーブとの間の静止摩擦を低減させるコーティングが設けられる請求項6に記載のハッチロック装置。
【請求項8】
前記内側ライニングは、フレーム側で頂上を有する構成であり、及び/又は前記ボルト受容部の前記開口においてボルト案内面取り部を有する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のハッチロック装置。
【請求項9】
航空機ハッチであって、
ハッチ隔壁及びハッチスキン要素を有するハッチパネルと、
該ハッチパネル内に取り付けられた請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のハッチロック装置と、
双方向リニアアクチュエータを介して駆動され、フレームボルト受容部内で前記ボルト受容部軸に沿って案内されるロックボルトを有するハッチフレーム領域と、
ハッチフレーム隔壁に接続されたフレーム偏心ブッシュと、
フレーム内側ライニングであって、前記フレーム偏心ブッシュ内に導入され、その中でフレーム円錐圧迫スリーブの内側円錐シェル面がフレーム円錐クランプスリーブの外側円錐シェル面と変位可能に係合し、また、その中でそれぞれ前記フレーム円錐圧迫スリーブの両側の各々に取り付けられるフレームリニアアクチュエータが前記フレーム円錐圧迫スリーブを前記フレーム円錐クランプスリーブに関して前記ボルト受容部軸に沿って変位させることによって、前記ロックボルトを固定又は解放するように設計されるフレーム内側ライニングとを含む航空機ハッチ。
【請求項10】
前記双方向リニアアクチュエータは、スペーサスリーブを介して前記フレーム領域内へと前記ボルト受容部軸の方向に延長されて、ロック解除状態において前記スペーサスリーブ内に前記ロックボルトを受けることができる油圧シリンダである請求項9に記載の航空機ハッチ。
【請求項11】
ハッチフレーム隔壁に取り付けられたフレーム側ハッチシールをさらに備える請求項9または請求項10に記載の航空機ハッチ。
【請求項12】
前記フレーム円錐クランプスリーブの前記外側円錐シェル面と前記フレーム円錐圧迫スリーブの前記内側円錐シェル面には、前記フレーム円錐クランプスリーブと前記フレーム円錐圧迫スリーブとの間の静止摩擦を低減させるコーティングが設けられる請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の航空機ハッチ。
【請求項13】
前記ロックボルトが端面において面取りされている請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の航空機ハッチ。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれか一項に記載の航空機ハッチを備える航空機。
【請求項15】
前記航空機ハッチは貨物室ハッチとして構成される請求項14に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば航空宇宙分野又は自動車工学において使用可能な、特に航空機のピボット・アンド・スライドドア又は回転ピボットドアをロックするためのハッチロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピボット・アンド・スライドドア又は回転ピボットドアは、「プラグ・タイプ・ドア」と呼ばれるものであり、外部空間と内部コンパートメントとの間に圧力差がある場合に、構造上の原理によって自己シール動作を有するような方法で構成されるドアシステムである。このタイプのドアはよく航空機で使用され、その場合、飛行中に機内コンパートメント中に陽圧を生じさせ、又は保持する。例えば(特許文献1)は、航空機の貨物室の貨物室ハッチとしてのこのタイプの回転ピボットドアを開示している。
【0003】
例えば、飛行中、特に貨物室ハッチ等の比較的大型の航空機ドア又はハッチの場合、高い引張力が加わる。それに加えて、例えば貨物無積載時及び積載時の貨物室を比較した場合の高い荷重差により、ハッチギャップの領域に変形又は歪みが発生する可能性があり、この変形又は歪みは、ハッチロック要素の相互に関する正しい向きを損ないかねない。
【0004】
(特許文献2)は、管材又は棒材を保持するためのクランプ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,497,462 A号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2014 005 234 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、その閉鎖中にハッチをセンタリングするハッチロックシステムのための解決策を見出すことである。さらに、本発明の目的の1つは、小さい設置空間内で極端に大きい引張力をハッチのフレーム領域に散逸させることのできるハッチロックシステムのための解決策を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記及びその他の目的は、特許請求の範囲の請求項1の特徴を有するハッチロック装置及び特許請求の範囲の請求項9の特徴を有する航空機ハッチによって達成される。
【0008】
本発明の第一の態様によれば、航空機ハッチのためのハッチロック装置は、航空機ハッチパネルのハッチ隔壁に接続できる偏心ブッシュと、偏心ブッシュの中に導入され、ロックボルトを受けるための、ボルト受容部軸に沿って中央に向けられるボルト受容部を有する内側ライニングと、内側ライニング内に配置される円錐圧迫スリーブと、円錐クランプスリーブであって、その外側円錐シェル面が円錐圧迫スリーブの内側円錐シェル面と変位可能に係合し、その内側円筒シェル面がボルト受容部の外壁と同一面である円錐クランプスリーブと、それぞれ内側ライニングの中の円錐圧迫スリーブの両側の各々に取り付けられ、円錐圧迫スリーブを円錐クランプスリーブに関してボルト受容部軸に沿って変位させるように設計されたリニアアクチュエータとを含む。
【0009】
本発明の第二の態様によれば、航空機ハッチは、ハッチ隔壁及びハッチスキン要素を有するハッチパネルと、ハッチパネル内に取り付けられた本発明の第一の態様によるハッチロック装置と、双方向リニアアクチュエータを介して駆動され、フレームボルト受容部内でボルト受容部軸に沿って案内されるロックボルトを有するハッチフレーム領域と、ハッチフレーム隔壁に接続されたフレーム偏心ブッシュと、フレーム内側ライニングであって、フレーム偏心ブッシュ内に導入され、その中でフレーム円錐圧迫スリーブの内側円錐シェル面がフレーム円錐クランプスリーブの外側円錐シェル面と変位可能に係合し、また、その中でそれぞれフレーム円錐圧迫スリーブの両側の各々に取り付けられるフレームリニアアクチュエータがフレーム円錐圧迫スリーブをフレーム円錐クランプスリーブに関してボルト受容部軸に沿って変位させることによって、ロックボルトを固定又は解放するように設計されるフレーム内側ライニングとを含む。
【0010】
本発明の第三の態様によれば、航空機は本発明の第二の態様による航空機ハッチを含む。幾つかの実施形態において、航空機ハッチは、特に回転ピボットハッチとして構成される貨物室ハッチとすることができる。
【0011】
本発明の本質的なコンセプトは航空機ハッチのためのボルト式密閉装置を提供することにあり、このボルト式密閉装置は、力とトルクを全方向へと伝達できる。特に、高い引張負荷は、能動的に作動されるクランプ手段により、小さい設置空間内で航空機の隔壁構造中に有効に散逸させることができる。典型的な航空機ハッチフレームに取り付ける場合、ボルト引張力は特に、C隔壁内にねじりモーメントを誘導し、その結果、クランプ力を増大させることができる。
【0012】
ハッチパネル及び/又はハッチフレームの製造公差は、有利な点として、全方向に並進的に補償でき、すなわち、ハッチロック装置により、閉鎖中のハッチの自己センタリング及びロック中のロックボルトの自己センタリングが可能となる。それに加えて、1つの特定の利点は、ロックとロック解除の信頼性を高める能動的に作動される、特に油圧式のボルトドライブから得られる。
【0013】
有利な改良と発展形は、後述の特許請求の範囲の従属項から、及び図面に関する説明から得られる。
【0014】
本発明によるハッチロック装置の幾つかの実施形態によれば、リニアアクチュエータは、例えば油圧をロードできる油圧シリンダとすることができる。
【0015】
本発明によるハッチロック装置の幾つかの実施形態によれば、円錐圧迫スリーブは、フェザキーを介して内側ライニング内にボルト受容部軸の周囲で回転しないように固定できる。
【0016】
本発明によるハッチロック装置の幾つかの別の実施形態によれば、円錐圧迫スリーブ及び/又は円錐クランプスリーブは、1回又は複数回、部分的に、又はそれぞれの円錐スリーブ本体の全長にわたり、スロットを設けることができる。幾つかの設計の変形において、円錐クランプスリーブは、内側ライニングの突起を介したそのスロット又はセグメントの溝のインタロックにより、ボルト受容部軸の周囲で回転しないように固定できる。その代替案として、幾つかの設計の変形において、円錐クランプスリーブにスリーブ突起又はそのセグメントのうちの1つの上の突起を設けることも可能であり、すると、これは内側ライニングの対応する溝の中に固定できる。これらの変形型の何れにおいても、ボルトシェル面全体の周囲でロックボルトへの均一な接触圧力を発生させることが可能となる。
【0017】
本発明によるハッチロック装置の幾つかの別の実施形態によれば、内側ライニングはフレーム側で頂部を有する構成とすることができる。これにより、有利な点として、閉鎖中にハッチをフレーム内でセンタリングすることが可能となる。幾つかの実施形態において、内側ライニングはボルト受容部の開口に、ボルト案内面取り部を有することができる。これは、ロック中にロックボルトがハッチ側クランプ装置内で確実にセンタリングされるようにすることができ、それによって動作負荷による偏向を補償することが可能となる。
【0018】
本発明によるハッチロック装置の幾つかの別の実施形態によれば、さらに、ハッチロック装置は力散逸管を含むことができ、これは管スリーブを介して、ハッチ側に取り付けられる接続管に螺合される。力散逸管は、例えば内側ライニングの延長部品として構成できる。この構成により、相互に反対にハッチの異なる側にあり、それぞれ円錐圧迫スリーブと円錐クランプスリーブからなるクランプ装置を、ハッチパネル本体を通じて接続することができ、その結果、ハッチに負荷をかけることなく、引張力と圧縮力を伝達することが可能となる。
【0019】
本発明によるハッチロック装置の幾つかの別の実施形態によれば、円錐クランプスリーブには、ボルト受容部軸に沿ってボルト受容部の開口に向かってテーパを付けることができる。ここで、円錐クランプスリーブの外側円錐シェル面と円錐圧迫スリーブの内側円錐シェル面に、円錐クランプスリーブと円錐圧迫スリーブとの間の静止摩擦を減少させる、例えばテフロン(登録商標、4フッ化エチレン樹脂)等のコーティングを設けると特に有利であり得る。特に、円錐スリーブ間の摩擦がロックボルトと円錐クランプスリーブとの間及び円錐圧迫スリーブと内側ライニングとの間の摩擦より小さいと、固定状態で、ボルト受容部内のロックボルトの自己ロック動作を実現できる。
【0020】
本発明による航空機ハッチの幾つかの実施形態によれば、両方向リニアアクチュエータは油圧シリンダとすることができ、これはスペーサスリーブを介してフレーム領域の中へとボルト受容部軸の方向に延ばされ、それによってロック解除状態でスペーサスリーブ内にロックボルトを受けることができる。フレームとハッチとの間の製造による間隔誤差は、偏心ブッシュに関する内側ライニングの可変的な軸位置により補償できる。双方向リニアアクチュエータの荷重は、例えば、油圧アクチュエータの場合の入口及び出口バルブの同時開放等の能動的フリーホイール状態を通じて確実に受けないようにすることができる。軸方向の力は、スペーサスリーブにおいて止めて、胴体構造へと伝導することができる。
【0021】
本発明による航空機ハッチの幾つかの別の実施形態によれば、さらに、航空機ハッチはフレーム側ハッチシールを有することができ、これはハッチフレーム隔壁に取り付けられる。
【0022】
本発明による航空機ハッチの幾つかの別の実施形態によれば、フレーム円錐クランプスリーブの外側円錐シェル面とフレーム円錐圧迫スリーブの内側円錐シェル面に、フレーム円錐クランプスリーブとフレーム円錐圧迫スリーブとの間の静止摩擦を減少させる、例えばテフロン(登録商標)等のコーティングを設けることができる。特に、円錐フレームスリーブ間の摩擦がロックボルトとフレーム円錐クランプスリーブとの間及びフレーム円錐圧迫スリーブとフレーム内側ライニングとの間の摩擦より小さければ、固定状態において、フレーム側ボルト受容部の中のロックボルトの自己ロック動作を実現することができる。
【0023】
上述の改良及び発展型は、必要に応じて何れの所望の方法でも相互に組み合わせることができる。本発明のその他の考え得る改良、発展、及び実装はまた、上に、又は例示的な実施形態に関する以下の説明文の中に記載されている本発明の特徴の、はっきりとは述べられていない組合せも含む。ここで、特に、当業者はまた、個々の態様を改良又は追加として本発明のそれぞれの基本形に加えるであろう。
【0024】
以下の説明部の中で、本発明は以下のような概略的図面に示されている例示的実施形態に基づいて、より詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるハッチロック装置を備える航空機ハッチのハッチギャップ周辺の領域を通る長さ方向断面の概略図を示す。
【
図2】少なくとも1つのハッチロック装置を有する本発明の1つの実施形態による航空機ハッチを備える航空機の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面は、本発明の実施形態をさらに理解できるようにするためのものである。これらは実施形態を図解し、説明文と共に本発明の原理とコンセプトを説明する役割を果たす。図面を参照すると、その他の実施形態及び記載されている利点の多くがわかる。図中の要素は必ずしも相互に関して正確な縮尺で示されているとはかぎらない。例えば「上」、「下」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、「水平」、「垂直」、「前」、「後」、及びこれらに類する特定等の方向を示す用語は、単に説明を目的として使用されており、一般性を図に示されている具体的な実施形態に限定するものではない。
【0027】
図面中の各図を通じて、同じ、機能的に同じ、及び同じく作用する要素、特徴、及びコンポーネントには、別段の明示がないかぎり、それぞれ同じ指示番号が付されている。
【0028】
以下においては、例示的実施形態を説明する。
図1は、ハッチロック装置10を備える航空機ハッチのハッチギャップ周囲の領域を通る長さ方向断面の概略図を示す。ここで、図の航空機ハッチは例えば、ピボット・アンド・スライドドア又は回転ピボットドアとすることができ、これは特に、例えば
図2の航空機A等の航空機の貨物室ハッチとして構成される。
【0029】
図1は、一般性を制限することなく、図面の左側にあるハッチセクションTと、図面の右側にあるフレーム領域(ハッチフレーム領域)Rを示している。ハッチが閉じると、ハッチパネルスキン要素11がフレームスキン要素41に近づく。その結果生じる外側ギャップは、例えば発泡材又はゴム製リップ等のハッチシール35によってできるだけ流体密封方式で閉じることができる。ハッチシール35は、取付ブラケット36及びねじ接続37を介してハッチフレーム領域R内のC隔壁にしっかりと固定できる。
【0030】
偏心ブッシュ17はハッチのハッチ隔壁13、例えばC隔壁に接続できる。内側ライニング部(内側ライニング)6は偏心ブッシュ17の中へと導入され、この内側ライニング部6はその回転軸の延長線上で力散逸管1に接続できる。第二の内側ライニング部(内側ライニング)5は、その内部に能動的に作動可能なクランプ装置を有する。クランプ装置は、円錐内側切欠き(内側円錐シェル面)を有する外側(半径方向に見る)円錐圧迫スリーブ7と、外側円錐シェル面と円筒内側切欠き(内側円筒シェル面)とを有する内側(半径方向に見る)円錐クランプスリーブ8と、を含む。
【0031】
第二の内側ライニング部5はボルト受容部9であり、これは、ロックボルト30を受けるためにボルト受容部軸Bに沿って中央に向けられる。ロックボルト30は、フレーム領域R(破線を使って示されるロック解除状態)から、双方向リニアアクチュエータ31を介してボルト受容部軸Bに沿ってハッチセクションTへと押し込まれ、ボルト受容部9の中へと案内される。このために、ロックボルト30は端面を面取りすることができ、これはちょうど、ギャップ側の端の、ボルト受容部軸Bの開口の高さにおいてボルト案内面取り部5aを有する第二の内側ライニング部5と同様である。ロックボルトは、有利な点として、ロック動作中に、ロックボルト30及び/又は第二の内側ライニング部5の面取り部によって、自己センタリングできる。それに加えて、第二の内側ライニング部5は、フレーム側で頂部を有する構成とすることができ、それによってハッチは閉鎖中にフレーム内で自動的にセンタリングされるようにすることができる。
【0032】
円錐圧迫スリーブ7は、第一の内側ライニング部6内にフェザキー6aを介して回転しないように固定できる。これによって、内側ライニングに関して同軸的に配置される円錐圧迫スリーブ7は第一の内側ライニング部6の半径方向及び円周方向に正確にフィットして着座することが確実となり、ボルト受容部軸Bに沿った移動可能性は損なわれない。円錐クランプスリーブ8は、その内側円筒シェル面によってボルト受容部9の外壁と同一面であり、その結果、内側円筒シェル面は、導入されたロックボルト30の場合、その外周面上に平らに支持される。2つの円錐スリーブ7,8の円錐度が同じであることから、円錐クランプスリーブ8の外側円錐シェル面は円錐圧迫スリーブ7の内側円錐シェル面と変位可能に係合する。したがって、円錐圧迫スリーブ7の変位はボルト受容部軸Bに沿って生じさせることができ、それによってボルト受容部軸Bに沿って内側ライニング部5内にしっかりと固定された円錐クランプスリーブ8は、円錐圧迫スリーブ7の位置に応じて異なる堅固さでロックボルト30の外周面に圧迫される。
【0033】
2つのリニアアクチュエータ4a、4bは、作動を目的として、それぞれ円錐圧迫スリーブ7の両側の各々において内側ライニング部5の中に取り付けられ、例えば(図のように)油圧シリンダ4a、4bであり、これらはそれぞれ油圧流体供給ライン3a、3bを介して油圧入口2a、2bに流体的に接続される。油圧入口2a、2bには油圧をロードし、例えば作動させる油圧シリンダ4a、4bに応じて、円錐圧迫スリーブ7を交互に変位させることができる。油圧シリンダ4bを作動させると、ロックボルト30に対するクランプ動作が増大し、他方で、油圧シリンダ4aを作動させると、ロックボルト30に対するクランプ動作が減少する。
【0034】
円錐圧迫スリーブ7と円錐クランプスリーブ8は、それぞれスロットを有することができ、スロットは相互に180°ずれている。ここで、1つ又は複数のスロットを円錐スリーブ7,8に設けることができ、その結果、円錐スリーブ7,8はセグメント化される。例えば、スリーブセグメントは1つのスリーブから製作でき、スロットはスリーブ軸に沿って一部のみに、換言すればスリーブの本体の全長にわたらないように、例えば側フライスによって形成できる。複数のスロットと、その結果であるセグメント化された円錐スリーブの利点の1つは、半径方向に自由に移動できることである。
【0035】
1つ又は複数のスロットにより、ロックボルト30にかかる接触圧力がロックボルト30の円周に沿ってできるだけ均一に分散させるような方法で加えられることを確実にできる。さらに、円錐クランプスリーブ8は、ボルト受容部軸Bの周囲で回転しないように、第二の内側ライニング部5の中に固定できる。これは、例えば円錐クランプスリーブ8のスロットと第二の内側ライニング部5上の対応する突起とのインタロックによって発生させることができる。その代替案として、円錐クランプスリーブ8はまた、スリーブ突起を有することもでき、するとこれは第二の内側ライニング部5の中のそれに対応する溝の中に導入される。円錐圧迫スリーブ7がフェザキー6aによって第一の内側ライニング部6に関して回転的に固定されると、円錐クランプスリーブ8もまた、第一の内側ライニング部6に関して固定される。したがって、2つの内側ライニング部5,6を相互に関して回転的に固定して位置付けることにより、2つの円錐スリーブは自動的に相互に回転的に固定される。
【0036】
図1が例として示しているように、円錐クランプスリーブ8にはボルト受容部軸Bに沿ってボルト受容部9の開口に向かってテーパが付けられ、すなわち、円錐クランプスリーブ8の外側円錐シェル面と円錐圧迫スリーブ7の内側円錐シェル面とに、円錐クランプスリーブ8と円錐圧迫スリーブ7との間の静止摩擦を軽減させるコーティングが設けられている場合、クランプ動作によってロックボルト30の自己ロック動作を実現することができる。この種のコーティングは、例えばテフロン(登録商標)とすることができる。それに対して、円錐クランプスリーブ8の内側円筒シェル面には被覆がなくても、又は、さらには静止摩擦を増大させるような方法で被覆されてもよい。
【0037】
ハッチロック装置10を取り付けるために、まず、内側ライニング部5,6を含む偏心ブッシュ17をハッチに挿入し、製造公差が補償されるまで回転させることができる。このために、例えば、向き付けのために補助ボルトをボルト受容部9の中に仮に挿入できる。その後、偏心ブッシュ17は、例えばナット15を介して固定できる。ハッチの内部のハッチギャップからの間隔は、ハッチ側に取り付けられた接続管18上の対応するナット固定手段16を有する管スリーブ12を介して可変的に設定できる。このために、管スリーブ12は、偏心ブッシュ17の後方(すなわち、ハッチの内側)端で支持される。すると、ギャップは、内側ライニング部5と偏心ブッシュ17のハッチ外側端との間のハッチギャップから所望の間隔に設定できる。その結果、軸方向への公差補償を行うことができる。
【0038】
管スリーブ12によって接続管18に螺合される力散逸管1を介して、フレームの引張力及び圧縮力をハッチに負荷をかけずに伝達できる。
【0039】
フレーム側に相補的な装置を同様に取り付けることができる。このために、双方向リニアアクチュエータ31は、ハッチフレーム領域R内でナット34によりスペーサスリーブ32に接続33を介して固定される。この延長されたスペーサスリーブ32は、それに対応してハッチフレーム領域Rの中へと延びて、ロック解除状態において、ロックボルト30がスペーサスリーブ32内に受けられることを可能にする役割を果たす。双方向リニアアクチュエータ31は、例えば油圧シリンダとすることができ、ロックボルト30をフレームボルト受容部29からボルト受容部軸Bに沿ってハッチ側ハッチロック装置10へと案内する役割を果たす。軸方向の力は、大部分が、円錐スリーブ27,28を介して隔壁43の中へと非積極的に散逸する。スペーサスリーブ32を介して、軸方向の力がハッチフレーム領域Rにおける隔壁43の周囲構造の中に散逸し、分散する程度を減らすことができる。
【0040】
フレーム偏心ブッシュ47は、ハッチセクションTと同様に、ハッチフレーム領域R内でハッチフレーム隔壁43に接続され、ナット45を介して固定される。単独の部品又は複数の部品のライニングコンポーネント25,46からなる、導入されたフレーム内側ライニングはフレーム偏心ブッシュ47の中に設置され、そのフレーム内側ライニングの中で、フレーム円錐圧迫スリーブ27の内側円錐シェル面は、フレーム円錐クランプスリーブ28の外側円錐シェル面と変位可能に係合する。向きに応じて、フレーム内側ライニングはフレーム偏心ブッシュ47の中に螺合を介して固定し、軸方向の製造による公差を補償することができる。
【0041】
フレームリニアアクチュエータ24a,24b、例えば供給ライン23a,23b及びそれに対応する流体入口22a,22bを備える油圧シリンダは、内側ライニングコンポーネント25の中に設置される。これらのフレームリニアアクチュエータ24a,24bは、それぞれフレーム円錐圧迫スリーブ27の両側の各々にあり、フレーム円錐圧迫スリーブ27をボルト受容部軸Bに沿ってフレーム円錐クランプスリーブ28に関して変位させて、ロックボルト30を固定又は解放するように設計される。
【0042】
再び、フレーム円錐圧迫スリーブ27は、フェザキー46aを介して内側ライニングコンポーネント46内に回転しないように固定できる。これによって、フレーム円錐圧迫スリーブ27はフレームボルト受容部29の半径方向及び円周方向に正確にフィットして着座することが確実となり、ボルト受容部軸Bに沿った移動可能性は損なわれない。フレーム円錐クランプスリーブ28は、その内側円筒シェル面によってフレームボルト受容部29の外壁と同一面であり、その結果、内側円筒シェル面はロックボルト30の外周面上に平らに(傾くことなく)支持される。2つの円錐スリーブ27,28の円錐度が同じであることから、フレーム円錐クランプスリーブ28の外側円錐シェル面はフレーム円錐圧迫スリーブ27の内側円錐シェル面と変位可能に係合する。したがって、フレーム円錐圧迫スリーブ27の変位はボルト受容部軸Bに沿って生じさせることができ、それによってボルト受容部軸Bに沿ったライニングコンポーネント25内にしっかりと固定されたフレーム円錐クランプスリーブ28は、フレーム円錐圧迫スリーブ27の位置に応じて異なる堅固さでロックボルト30の外周面に圧迫される。
【0043】
油圧シリンダ24bを作動させることにより、ロックボルト30へのクランプ動作が増大し、反対に、油圧シリンダ24aを作動させると、ロックボルト30へのクランプ動作は減少する。
【0044】
フレーム円錐圧迫スリーブ27とフレーム円錐クランプスリーブ28は、それぞれスロットを有することができ、スロットは相互に180°ずれている。その結果、ロックボルト30にかかる接触圧力がロックボルト30の円周に沿ってできるだけ均一に分散させるような方法で作用することを確実にできる。さらに、フレーム円錐クランプスリーブ28は、ボルト受容部軸Bの周囲で回転しないように、フレーム内側ライニングの中に固定できる。これは、例えばフレーム円錐クランプスリーブ28のスロットとフレーム内側ライニング上の対応する突起とのインタロックによって発生させることができる。その代替案として、フレーム円錐クランプスリーブ28はまた、スリーブ突起を有することもでき、するとこれはフレーム内側ライニングの中のそれに対応する溝の中に導入される。フレーム円錐圧迫スリーブ27がフェザキー46aによってフレーム内側ライニングに関して回転的に固定されると、フレーム円錐クランプスリーブ28もまた、フレーム内側ライニングに関して固定される。したがって、2つの円錐スリーブを相互に関して回転的に固定することは、フレーム円錐圧迫スリーブ27とのインタロックを通じて自動的に実現される。
【0045】
図1に例として示されているように、フレーム円錐クランプスリーブ28にはボルト受容部軸Bに沿ってボルト受容部29の開口に向かってテーパが付けられており、換言すれば、フレーム円錐クランプスリーブ28の外側円錐シェル面とフレーム円錐圧迫スリーブ27の内側円錐シェル面に、フレーム円錐クランプスリーブ28とフレーム円錐圧迫スリーブ27との間の静止摩擦を軽減させるコーティングが設けられている場合、クランプ動作によってロックボルト30の自己ロック動作を実現することができる。この種のコーティングは、例えばテフロン(登録商標)とすることができる。それに対して、フレーム円錐クランプスリーブ28の内側円筒シェル面には被覆がなくても、又は、さらには静止摩擦を増大させるような方法で被覆されてもよい。
【0046】
リニアアクチュエータ4a,4b,24a,24bは基本的に、線形の駆動動作又はストローク運動を生じさせるためのあらゆる既知の種類、あらゆる構成、及びあらゆる機構を含むことができる。リニアアクチュエータは、例えば、空気圧若しくは油圧駆動ピストン/シリンダ装置、又は電気リニアモータ若しくは、例えば台形スレッドスピンドル及びスレッドフォロワ若しくはラック・アンド・ピニオンを駆動する電気、油圧、若しくは空気圧回転モータを含むことができる。これらのピストン/シリンダ装置は、好ましくは油圧式に駆動されるが、代替案として、これらは空気圧でも駆動できる。
【0047】
上述のハッチロック装置は一般に、あらゆる分野の運輸業、例えば道路用自動車のため、鉄道車両のため、航空機のため、又は船舶のための他、ポータブルコンテナのために使用できる。特に、上述のハッチロック装置は、例えば航空機の貨物室ハッチのため等、動作中に高い引張負荷を受けるドア又はハッチに使用できる。
【0048】
上述の詳細な説明の中で、表現の正確さを向上させるために、1つ又は複数の例において様々な特徴が組み合わされている。しかしながら、ここで、上述の説明は単に例示であり、限定的な性質は一切持たないことを明確にすべきである。それは各種の特徴及び例示的な実施形態の全ての代替案、改良、及び等価物をカバーする。上述の説明を参照すれば、当業者にとっては、その専門知識から、他の多くの例が即座にすぐさま明らかとなるであろう。
【0049】
例示的な実施形態は、本発明の基礎をなす原理と実践におけるそれらの考え得る使用をできるだけ十分に提示することが可能となるようにするために選択され、記載されている。その結果、専門家は本発明を及びその様々な例示的実施形態を、所期の目的に関して最適な方法で改良し、利用することができる。特許請求の範囲及び説明の中で、「~を包含する(containing)」、及び「~を有する(having)」という用語は、それに対応する「~を含む(comprising)」という中立的用語として使用されている。さらに、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(one)」の使用はこのように記載された複数の特徴及びコンポーネントを根本的に除外することを意図したものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 力散逸管
2a、2b 油圧入口
3a、3b 油圧流体供給ライン
4a、4b リニアアクチュエータ
5、6 内側ライニング部(内側ライニング)
5a ボルト案内面取り部
6a、46a フェザキー
7 円錐圧迫スリーブ
8 円錐クランプスリーブ
9 ボルト受容部
10 ハッチロック装置
11 ハッチパネルスキン要素(ハッチスキン要素)
12 管スリーブ
13 ハッチ隔壁
15、34、45 ナット
16 ナット固定手段
17 偏心ブッシュ
18 接続管
22a、22b 流体入口
23a、23b 供給ライン
24a、24b フレームリニアアクチュエータ
25 ライニングコンポーネント
27 フレーム円錐圧迫スリーブ
28 フレーム円錐クランプスリーブ
29 フレームボルト受容部
30 ロックボルト
31 双方向リニアアクチュエータ
32 スペーサスリーブ
35 フレーム側ハッチシール
36 取付ブラケット
37 ねじ接続
41 フレームスキン要素
43 ハッチフレーム隔壁
46 内側ライニングコンポーネント(フレーム内側ライニング)
47 フレーム偏心ブッシュ
A 航空機
B ボルト受容部軸
R ハッチフレーム領域
T ハッチセクション