(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184843
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】音響生体識別タッチスキャナ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
H04R17/00 332B
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022134913
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2019558542の分割
【原出願日】2018-04-25
(31)【優先権主張番号】62/491,984
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/605,785
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/658,370
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ラスムッセン モーテン フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】トウマ ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】クリ-ヤクブ バトラス ティー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】音響生体識別タッチスキャナデバイスおよび方法を提供する。
【解決手段】音響指紋スキャニングデバイス100は、50メガヘルツ(MHz)~500MHzの範囲内の周波数を有する超音波信号を送信する超音波トランスデューサ130アレイを含む。これら超音波トランスデューサ130は、圧電薄膜を含む。音響指紋スキャニングデバイスはさらに、指105を受ける受け面125と、指からの超音波信号の反射に基づいてその指の指紋の少なくとも部分の画像を生成する処理装置を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響指紋検知デバイスであって、
50メガヘルツ(MHz)~500MHzの範囲内の周波数を有する超音波信号を送信するように構成された超音波トランスデューサのアレイであって、前記超音波トランスデューサは圧電膜を含む、トランスデューサのアレイと、
第一メタルラインと、
前記第一メタルラインと直交する第二メタルラインであって、前記第一メタルラインおよび前記第二メタルラインは、前記アレイの前記超音波トランスデューサのアドレス指定を可能にする、第二メタルラインと、
指を受けるように構成された表面と、
前記指からの前記超音波信号の反射に基づいて前記指の指紋の少なくとも部分の画像を生成するように構成された処理装置であって、前記音響指紋検知デバイスが前記表面の選択された部分に合焦して送信を行うように構成される、処理装置と、
を含む、音響指紋検知デバイス。
【請求項2】
前記超音波信号の前記周波数が、125MHz~250MHzの範囲内にある、請求項1に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項3】
前記超音波信号の前記周波数が、50MHz~100MHzの範囲内にある、請求項1に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項4】
前記圧電膜が、3マイクロメートル(μm)~75μmの範囲内の厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項5】
前記圧電膜が、10マイクロメートル(μm)~20μmの範囲内の厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項6】
処理された信号を前記処理装置に供給するため、前記反射に応答して前記超音波トランスデューサのアレイによって生成された電子受信信号を処理するように構成された受信電気回路をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項7】
前記画像がインチ当たり少なくとも500画素の解像度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項8】
前記第一メタルラインが、前記表面を含むプレートと物理的に接触している、請求項1~7のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項9】
前記圧電膜が、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、またはチタン酸鉛ジルコニウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項10】
前記表面が、ガラスおよび整合層を含むプレートの表面であり、前記整合層は前記整合層の材料中の前記超音波信号の波長の四分の一に相当する厚さを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項11】
前記処理装置が、前記表面と接触している前記指の面積に基づいて前記指が前記表面と接触している圧力を見積もるように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項12】
前記処理装置が、前記反射に関連する音速に基づいて前記指の温度を検出するように構成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項13】
前記処理装置が、前記反射に基づいて前記指の生体活性に関連するパラメータを検出し、前記生体活性パラメータに基づいて前記指が生きた人間の一部であるかどうかの表明を提示するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項14】
前記超音波トランスデューサのアレイが行と列とに配置され、前記音響指紋検知デバイスが、前記表面の前記選択された部分に前記超音波信号を送信するため、前記アレイの前記列のサブセット中の前記超音波トランスデューサを励振するように構成された送信回路をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項15】
前記処理装置が、後処理合成アパーチャ集束法を用いて合焦し送信を行うように構成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の音響指紋検知デバイス。
【請求項16】
生体識別画像を生成する方法であって、前記方法は、
1つ以上の超音波トランスデューサを用いて、50メガヘルツ(MHz)~500MHzの周波数範囲内の超音波信号を送信するステップであって、前記送信するステップが送信を合焦するステップを含む、送信するステップと、
前記1つ以上の超音波トランスデューサを用いて前記超音波信号の反射を受信するステップと、
前記超音波信号の前記反射に基づいて前記生体識別画像を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記生体識別画像が、指紋の少なくとも部分を表現し、インチ当たり少なくとも500画素の解像度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の超音波トランスデューサが、3マイクロメートル(μm)~75μmの範囲内の厚さを有する圧電膜を含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記反射に基づいて指の生体活性に関連するパラメータを検出するステップと、前記生体活性パラメータに基づいて前記指が生きた人間の一部であるかどうかの表明を提示するステップとをさらに含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
音響生体識別検知デバイスであって、
50メガヘルツ(MHz)~500MHzの範囲内の周波数を有する超音波信号を送信するように構成された超音波トランスデューサのアレイと、
表面と、
前記超音波トランスデューサと通信している処理装置であって、前記処理装置は、前記表面と接触している対象体からの前記超音波信号の反射に基づいて生体識別画像を生成するように構成され、前記音響生体識別検知デバイスが前記表面の選択された部分に合焦して送信を行うように構成される、処理装置と、
を含む、音響生体識別検知デバイス。
【請求項21】
前記超音波トランスデューサが、3マイクロメートル(μm)~75μmの範囲内の厚さを有する圧電膜を含む、請求項20に記載の音響生体識別検知デバイス。
【請求項22】
前記生体識別画像が、指紋の少なくとも部分を表現し、前記生体識別画像はインチ当たり少なくとも500画素の解像度を有する、請求項20または21に記載の音響生体識別検知デバイス。
【請求項23】
超音波指紋検出を備えたスマートカードであって、前記スマートカードは、
カード本体と、
前記カード本体の中に少なくとも部分的に埋め込まれた超音波指紋検知デバイスであって、前記超音波指紋検知デバイスは、超音波信号を送信し、指からの前記超音波信号の反射に基づいて指紋の少なくとも部分の画像データを生成するように構成され、前記画像データはインチ当たり少なくとも500画素の解像度を有する、指紋識別検知デバイスと、
を含む、スマートカード。
【請求項24】
前記超音波指紋検知デバイスが、相互に積み重ねられた超音波トランスデューサの2つのアレイを含む、請求項23に記載のスマートカード。
【請求項25】
前記カード本体が、毎秒約1,000メートル~毎秒約2,500メートルの間の前記超音波信号の音の速度を有する材料を含み、前記超音波指紋検知デバイスが、約12.5メガヘルツ(MHz)~約100MHzの周波数で前記超音波信号を送信する、請求項23または24に記載のスマートカード。
【請求項26】
前記スマートカードを外部のカードリーダーに連結するように構成されたコンタクトをさらに含み、前記超音波指紋検知デバイスが、前記コンタクトを介して前記外部のカードリーダーから電力を引き入れるように構成される、請求項23~25のいずれか一項に記載のスマートカード。
【請求項27】
前記カード本体が財布に収まるようなサイズである、請求項23~26のいずれか一項に記載のスマートカード。
【請求項28】
超音波信号を送信するように構成された第一圧電層と、
前記第一圧電層上に配置された第一メタルラインと、
前記超音波信号の反射を受信するように構成された第二圧電層であって、前記第二圧電層は前記第一圧電層に積み重ねられる、第二圧電層と、
前記第二圧電層上に配置された第二メタルラインであって、前記第二メタルラインは、前記第一メタルラインとほほ直交している、第二メタルラインと、
前記第一圧電層と前記第二圧電層との間に配置された金属導電層と、
を含む、二重層超音波指紋検知デバイス。
【請求項29】
前記第一メタルラインの少なくとも1つを励振することによって前記超音波信号を送信し、前記第二メタルラインの少なくとも1つを用いて、前記送信された超音波信号の反射を受信し、指紋の少なくとも部分の画像を生成するように構成された電気回路をさらに含む、請求項28に記載の二重層超音波指紋検知デバイス。
【請求項30】
前記第一メタルラインが前記二重層超音波指紋検知デバイスの第一側上に配置され、前記第二メタルラインは、前記二重層超音波指紋検知デバイスの、前記第一側の反対側である第二側上に配置される、請求項28または29に記載の二重層超音波指紋検知デバイス。
【請求項31】
ユーザの指からの前記超音波信号の反射に基づいて、前記指の指紋の少なくとも部分の画像を生成するように構成された電気回路をさらに含み、前記画像はインチ当たり少なくとも500画素の解像度を有する、請求項28~30のいずれか一項に記載の二重層超音波指紋検知デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月28日に出願された米国仮特許出願第62/491,984号、名称「ACOUSTIC BIOMETRIC TOUCH SCANNER」、2017年5月25日に米国特許出願第15/605,785号、名称「ACOUSTIC BIOMETRIC TOUCH SCANNER」として出願され、2018年4月28日に交付された米国特許第9,953,205号、および2018年4月16日に出願された米国仮特許出願第62/658,370号、名称「SMART CARD WITH ACOUSTIC BIOMETRIC TOUCH SCANNER」に対する優先権の利益を主張する。前述の出願の各々の内容は、参照することにより全体としておよび全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示の技術は、音響スキャニングに関し、具体的には、指紋認識、生きた指の検出、温度検出、および圧力検知への応用を含め、さらにスマートカードへの実装を含め、音響生体識別タッチスキャニングのためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
指紋は、犯人識別、銀行取引、個人デバイスに対するID認識、公的書類、およびその他を含め、多様な応用および用途に関連付けられている。指紋の画像を取得するために自動光学指紋スキャナが使われている。超音波ベースの指紋スキャナおよび容量性指紋スキャナは、他の指紋検出技術である。ロバストでコスト効果的な指紋スキャニングシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本特許請求の範囲中に記載の諸新機軸は、各々がいくつかの側面を有し、その1つだけで望ましい属性を果たすものではない。本特許請求の範囲を限定することなく、以下に本開示のいくつかの傑出した特徴を簡単に説明することとする。
【0005】
本開示の技術の一態様は音響指紋検知デバイスである。本デバイスは、50メガヘルツ(MHz:megahertz)~500MHzの範囲内の周波数を有する超音波信号を送信するように構成された超音波トランスデューサのアレイを含む。本デバイスは第一メタルラインをさらに含む。本デバイスは、第一メタルラインと直交する第二メタルラインをさらに含む。この第一メタルラインおよび第二メタルラインは、アレイの超音波トランスデューサのアドレス指定を可能にする。本デバイスは、指を受けるように構成された受け面をさらに含む。本デバイスは、指からの超音波信号の反射に基づいて指の指紋の少なくとも部分の画像を生成するように構成された処理装置をさらに含む。本音響指紋検知デバイスは、上記表面(受け面)の選択された部分に合焦して送信を行うことができる。
【0006】
超音波トランスデューサのアレイは、行と列とに配置することが可能で、本音響指紋検知デバイスは、該表面の選択された部分に超音波信号を送信するためにアレイの列のサブセット中の超音波トランスデューサを励振するように構成された送信回路をさらに含むことができる。本処理装置は、後処理合成アパーチャ集束法を用いて合焦して送信を行うように構成することが可能である。
【0007】
この超音波信号の周波数は、125MHz~250MHzの範囲とすることができる。この超音波信号の周波数は、50MHz~100MHzの範囲であってもよい。
【0008】
圧電膜は、3マイクロメートル(μm)~75μmの厚さを有してよい。この圧電膜は、10マイクロメートル(μm)~20μmの厚さとすることができる。
【0009】
音響指紋検知デバイスは、処理装置に対し処理された信号を提供するために、反射に応じて超音波トランスデューサのアレイによって生成された電子受信信号を処理するように構成された受信回路を含むことができる。
【0010】
画像はインチ(2.54cm)当たり少なくとも500画素の解像度を有することが可能である。
【0011】
第一メタルラインは、表面を有するプレートに物理的に接触していてよい。
【0012】
この表面は、ガラスおよび整合層を含むプレートの表面とすることが可能で、この整合層は、該整合層の材料中での超音波信号の波長の四分の一に相当する厚さを有してよい。
【0013】
圧電膜は、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、またはチタン酸鉛ジルコニウムのうちの少なくとも1つを含むことが可能である。
【0014】
本処理装置は、反射に基づいて指の生体活性に関連するパラメータを検出し、その生体活性パラメータに基づいてその指が生きた人間の一部であるかどうかの表明を提示するように構成することができる。本処理装置は、表面に接触している指の面積に基づいて、その指が表面に接触している圧力を見積もるように構成することが可能である。本処理装置は、反射に関連する音速に基づいてその指の温度を検出するように構成することができる。
【0015】
本開示の技術の別の態様は、音響生体識別検知デバイスである。本デバイスは、50メガヘルツ(MHz)~500MHzの範囲内の周波数を有する超音波信号を送信するように構成された超音波トランスデューサを含む。本デバイスは、超音波信号の反射に基づいて生体識別情報を生成するように構成された処理装置をさらに含む。本音響生体識別検知デバイスは、上記表面の選択された部分に合焦して送信を行うように構成することができる。
【0016】
超音波トランスデューサは、3マイクロメートル(μm)~75μmの範囲内の厚さを有する圧電膜を含むことが可能である。この生体識別画像は、指紋の少なくとも部分を表現することができ、該生体識別画像は、インチ当たり少なくとも500画素の解像度を有することが可能である。
【0017】
本開示の技術の別の態様は、音響生体識別検知デバイスである。本デバイスは、超音波信号を送信するように構成された超音波トランスデューサを含み、この超音波トランスデューサは、5マイクロメートル(μm)を超え100μmを下回る範囲内の厚さを有する圧電膜を含む。本デバイスは、超音波信号の反射に基づいて生体識別情報を生成するように構成された処理装置をさらに含む。
【0018】
本開示の技術の別の態様は、生体識別画像を生成する方法である。本方法は、1つ以上の超音波トランスデューサを用いて、50メガヘルツ(MHz)~500MHzの周波数範囲内の超音波信号を送信するステップを含む。本方法は、超音波信号の反射を受信するステップをさらに含む。本方法は、その反射に基づいて生体識別画像を生成するステップをさらに含む。
【0019】
本開示の技術の別の態様は、生体識別画像を生成する方法であって、本方法は、1つ以上の超音波トランスデューサを使って、50メガヘルツ(MHz)~500MHzの周波数範囲内の超音波信号を送信するステップであって、この送信するステップは、送信を合焦するステップを含む、送信するステップと、1つ以上の超音波トランスデューサを使って、超音波信号の反射を受信するステップと、その超音波信号の反射に基づいて生体識別画像を生成するステップとを含む。
【0020】
この生体識別画像は、指紋の少なくとも部分を表現し、インチ当たり少なくとも500画素の解像度を有してよい。これら1つ以上の超音波トランスデューサは、3マイクロメートル(μm)~75μmの範囲内の厚さを有する圧電膜を含むことが可能である。本方法は、反射に基づいて指の生体活性に関連するパラメータを検出するステップと、その生体活性パラメータに基づいてその指が生きた人間の一部であるかどうかの表明を提示するステップとを含むことができる。
【0021】
本開示の別の態様は、50~500MHzの周波数範囲内で薄膜圧電デバイスを用いる生体識別検知システムである。この周波数範囲は、音の速度が比較的高い(5760m/s)ガラスなどの音響結合層を使った場合にあっても、望ましい解像度(例えば、50マイクロメートル)を提供する。薄膜トランスデューサアレイは、スパッタリング処理を用いて作製することができ、その材料は酸化亜鉛から成ってよい。特定のトランスデューサパラメータに対するシミュレーションでは、約3dBの非常に低い挿入損失が示され、受信側で半分の戻り電圧信号の受信が得られた。例えば、4Vの励振のシミュレーションで、出力電圧は2V台であった。本デバイスは、指紋諸層の3D超音波画像を取得し、画像品質を向上できる行、列アドレス指定およびビーム形成を実装している。或る実施形態において、スキャン解像度(DPI)は、超音波を送信するときにビーム形成された点像分布関数から導出される。或る実施形態では、受信縁部からの反射(リンギング)を低減し、より高いフレームレートを可能にするために、炭化タングステンもしくは炭化けい素またはかかる何らかの材料の粒子を付加されたゴムまたはエポキシなどの吸収層が、受け面の縁部に配置される。
【0022】
本開示の技術の別の態様は、生体識別検知システムを製造する方法である。本方法は、ガラス基板の上面上に底部金属電極を第一方向にパターン形成するステップを含み、この底部金属電極は第二方向の底部プレーン上にある。本方法は、マグネトロンスパッタリングを介して、底部金属電極の上面上に、左縁および右縁部分を除き、全面に亘って薄膜を堆積するステップをさらに含み、左縁および右縁部分は未被覆のまま残される。これにより、この未被覆の縁部分の上に金属コンタクトを形成することが可能になる。本方法は、上部金属電極を第二方向に堆積するステップをさらに含み、この上面金属電極は、上記薄膜の上面と共形で、該上部金属電極は該薄膜の左縁および右縁部分とも共形である。
【0023】
本方法は、堆積された薄膜中に第一方向および第二方向にトレンチまたは溝をエッチングするステップをさらに含むことができ、この第一方向は第二方向と直交する。かかるエッチングは隣り合うトランスデューサの間のクロストークを低減することが可能である。このエッチングはトランスデューサのアクティブ領域の外側で、薄膜の対向する側部上のプレートの間に形成することができる。或る実施形態において、エッチングされたトレンチはV形状の食刻を含む。
【0024】
別の態様は、温度検出を備えた生体識別検知デバイスである。本デバイスは、指を受けるように構成された受け面を含む。本デバイスは、受け面を介して音響信号を指に送信するように構成されたトランスデューサをさらに含む。本デバイスは、超音波信号に関連する音速に基づいて指の温度を検出し、指からの超音波信号の反射に基づいてその指の指紋の少なくとも部分の画像を生成するように構成された処理装置をさらに含む。
【0025】
別の態様は、指の温度を検出する方法である。本方法は、音響信号を、中間媒体を介して指に送信するステップを含む。本方法は、その中間媒体を通る音響信号の音速を測定するステップをさらに含む。本方法は、その音速に基づいて指の温度を検出するステップをさらに含む。
【0026】
別の態様は、検知デバイスである。本検知デバイスは、固形媒体を介して音響信号を送信するように構成された1つ以上のトランスデューサを含む。本検知デバイスは、この固形媒体を通って伝搬する音響信号に関連する音速を測定し、その測定された音速に基づいて体温を検出するように構成された処理装置をさらに含む。
【0027】
或る実施形態において、本方法は、指の三次元モデルを生成するステップをさらに含む。或る実施形態では、本方法は、周囲温度を検出するステップをさらに含む。或る実施形態において、本方法は、指からの反射と、周囲温度を検出するために使われる反射との間の差に基づいて体温を検出するステップをさらに含む。或る実施形態において、この音響信号は超音波信号である。
【0028】
別の態様は、圧力検出を備えた生体識別検知デバイスである。本生体識別検知デバイスは、指を受けるように構成された受け面を含む。本デバイスは、この受け面を介して指に音響信号を送信するように構成されたトランスデューサをさらに含む。本デバイスは、指からの音響信号の反射に基づいてその指の指紋の少なくとも部分の画像を生成し、該反射に基づいて受け面と接触している指の稜部の表面積を検出し、検出された表面積に基づいて指が受け面と接触している圧力を見積もるように構成された処理装置をさらに含む。
【0029】
別の態様は、圧力検出の方法である。本方法は、指に音響信号を送信するステップを含む。本方法は、指からの音響信号の反射に基づいてその指の指紋の少なくとも部分の画像を生成するステップをさらに含む。本方法は、該反射に基づいて表面と接触している指の面積を検出するステップをさらに含む。本方法は、検出された指が表面と接触している面積に基づいて、指が表面と接触している圧力を見積もるステップをさらに含む。
【0030】
別の態様は、圧力検出を備えた生体識別検知デバイスである。本デバイスは、音響信号を送信するように構成された1つ以上のトランスデューサを含む。本デバイスは処理装置をさらに含む。この処理装置は、音響信号の反射に基づいて対象体に関連する生体識別画像を生成するように構成される。本処理装置は、該反射に基づいて表面と接触している対象体の表面積を検出するようにさらに構成される。本処理装置は、検出された対象体が表面と接触している表面積に基づいて、その対象体が表面に接触している圧力を見積もるようにさらに構成される。
【0031】
別の態様は、タッチ圧力および/または体組織の硬化度を検出する方法である。或る実施形態において、タッチ圧力は、例えば指先の稜部の拡幅を測定することによって検出され計量化される。或る実施形態において、タッチ圧力は、指紋の幅および表面積を測定することによって検出され計量化される。或る実施形態では、体組織の硬化度は、見積もられたタッチ圧力と、圧力または加圧の直接測定とを比較することによって算定される。
【0032】
別の態様は、脈拍数を見積もるための圧力検出を備えた生体識別検知デバイスである。本生体識別検知デバイスは、指を受けるように構成された受け面を含む。本デバイスは、この受け面を介して指に音響信号を送信するように構成されたトランスデューサをさらに含む。本デバイスは、第一サンプリングレートで取得された圧力のサンプルの時系列を見積もり、各サンプルに対する指からの音響信号の反射に基づいて指の指紋の少なくとも部分の画像を生成し、各サンプルに対する該反射に基づいて受け面と接触している指の稜部の表面積を検出し、各サンプルに対し検出されたその表面積に基づいて指が受け面と接触している圧力を見積もり、さらに、圧力見積もりの時系列の周期を見積もり、この周期は脈拍数の見積もりに相当する、ように構成された処理装置、をさらに含む。或る実施形態においては、第一サンプリングレートは、最大脈拍数の2倍を上回る。例えば、有酸素運動の間に採取された脈拍に対する最大脈拍数が1分当たり220鼓動であるとすれば、第一サンプリングレートは、1分当たり少なくとも440である。
【0033】
別の態様は、超音波指紋検知を備えたスマートカードである。本スマートカードは、カード本体と、カード本体中に埋め込まれた超音波指紋検知デバイスとを含む。この超音波指紋検知デバイスは、超音波信号を送信し、指からの超音波信号の反射に基づいてその指の指紋の少なくとも部分の画像データを生成するように構成される。この画像データは、インチ当たり少なくとも500画素の解像度を有する。
【0034】
このカード本体は財布に収まるサイズにすることができる。本スマートカードには、該スマートカードの真正証明をするように構成されたセキュリティチップを含めることが可能である。本スマートカードはカード本体上に磁気ストリップを含んでよい。
【0035】
カード本体は、主として、ナイロン(登録商標)、PVC、およびマイラー(登録商標)から成る群から選択された少なくとも1つの材料で形成することができる。カード本体は、ナイロン(登録商標)を含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約12.5MHz~約50MHzの間の周波数で超音波信号を送信することができる。該カード本体は、ナイロン(登録商標)を含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約25MHzの周波数で超音波信号を送信してよい。カード本体は、PVCを含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約25MHz~約100MHzの間の周波数で超音波信号を送信してよい。該カード本体は、PVCを含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約50MHzの周波数で超音波信号を送信してよい。
【0036】
カード本体は、超音波信号に対し毎秒約1,000メートル~毎秒約2,500メートルの間の音の速度を有する材料を含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約12.5MHz~約100MHzの間の周波数で超音波信号を送信してよい。該カード本体は、毎秒約1,000メートル~毎秒約2,500メートルの間の超音波信号に対する音速を有する材料を含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約25MHz~約50MHzの間の周波数で超音波信号を送信してよい。
【0037】
本スマートカードは、カード本体内の電気回路、および該電気回路を外部のカードリーダーに連結するように構成されたコンタクトを含むことができ、カード本体内の電気回路がそのコンタクトを介して外部のカードリーダーに画像データを送信するように構成することができる。本スマートカードは、この画像データに部分的に基づいて、ユーザが当該スマートカードの正当なユーザであることを検証するように構成されたカード本体内の電気回路、および該電気回路を外部のカードリーダーに連結するように構成されたコンタクトを含むことができ、この電気回路は、ユーザが当該スマートカードの正当なユーザであることを示す検証結果を、コンタクトを介して外部のカードリーダーに送信するように構成することが可能である。本スマートカードは、本スマートカードを外部のカードリーダーに連結するように構成されたコンタクトを含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、これらコンタクトを介して外部のカードリーダーから電力を引き入れるように構成することが可能である。
【0038】
この超音波指紋検知デバイスは、二重層超音波指紋検知デバイスを含んでよい。該二重層超音波指紋検知デバイスは、超音波信号を送信または受信するように構成された第一圧電層と、第一圧電層上に配置された第一メタルラインと、超音波信号を送信または受信するように構成された第二圧電層と、第二圧電層上に配置された第二メタルラインであって、この第二メタルラインは第一メタルラインと直交している、該第二メタルラインと、第一圧電層と第二圧電層との間に配置された金属導電層と、を含むことができる。
【0039】
該超音波指紋検知デバイスは、指を受けるように構成された、カード本体の選択された部分に合焦して送信を行うように構成することが可能である。
【0040】
別の態様は、超音波指紋検知を備えたスマートカードである。本スマートカードは、カード本体と、カード本体中に埋め込まれた超音波指紋検知デバイスとを含む。この超音波指紋検知デバイスは、超音波信号を送信するように構成された超音波トランスデューサの第一アレイと、その超音波信号の反射を受信するように構成された超音波トランスデューサの第二アレイとを含み、超音波トランスデューサの第二アレイは、超音波トランスデューサの第一アレイに積み重ねられる。
【0041】
第一アレイは第一メタルラインを含むことができ、第二アレイは第二メタルラインを含むことができ、第一メタルラインと第二メタルラインとはほぼ直交させることが可能である。
【0042】
このカード本体は財布に収まるサイズにすることができる。本スマートカードには、外部のカードリーダーに対し該スマートカードの真正証明をするように構成されたセキュリティチップを含めることが可能である。本スマートカードはカード本体上に磁気ストリップを含んでよい。
【0043】
本超音波指紋検知デバイスは、インチ当たり500画素の解像度を得るのに十分な高さの周波数で超音波信号を送信することができる。
【0044】
カード本体は、ナイロン(登録商標)、PVC、およびマイラー(登録商標)から成る群から選択された少なくとも1つの材料を主として形成されてよい。カード本体は、ナイロン(登録商標)を含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約12.5MHz~約50MHzの間の周波数で超音波信号を送信することができる。カード本体は、ナイロン(登録商標)を含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約25MHzの周波数で超音波信号を送信してよい。カード本体は、PVCを含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約25MHz~約100MHzの間の周波数で超音波信号を送信してよい。カード本体は、PVCを含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約50MHzの周波数で超音波信号を送信してよい。
【0045】
カード本体は、毎秒約1、000メートル~毎秒約2、500メートルの間の超音波信号に対する音の速度を有する材料を含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約12.5MHz~約100MHzの間の周波数で超音波信号を送信してよい。該カード本体は、毎秒約1、000メートル~毎秒約2、500メートルの間の超音波信号に対する音速を有する材料を含むことができ、超音波指紋検知デバイスは、約25MHz~約50MHzの間の周波数で超音波信号を送信してよい。
【0046】
本スマートカードは、本スマートカードを外部のカードリーダーに連結するように構成されたコンタクトを含むことができる。本スマートカードは、超音波指紋検知デバイスから外部のデバイスに指紋画像データを送信するように構成されたアンテナおよびワイヤレス通信電気回路を含むことが可能である。
【0047】
超音波指紋検知デバイスは、指の指紋の少なくとも部分の画像データを生成するように構成することができ、この画像データは、インチ当たり少なくとも500画素の解像度を有することが可能である。
【0048】
別の態様は、二重層超音波指紋検知デバイスである。本デバイスは、超音波信号を送信するように構成された第一圧電層と、該第一圧電層上に配置された第一メタルラインと、超音波信号の反射を受信するように構成された第二圧電層であって、第二圧電層は第一圧電層に積み重ねられる、該第二圧電層と、該第二圧電層上に配置された第二メタルラインであって、第二メタルラインと第一メタルラインとはほぼ直交である、該第二メタルラインと、第一圧電層と第二圧電層との間に配置された金属導電層と、を含む。
【0049】
この金属導電層は、接地プレーンを含んでよい。該金属導電層は、第一圧電層と第二圧電層との間に電気的遮蔽を設けるように構成することができる。
【0050】
また、本二重層超音波指紋検知デバイスは、第一メタルラインの1つを励振することによって超音波信号を送信し、第二メタルラインの1つを使って、送信された超音波信号の反射を受信し、ユーザの指紋の少なくとも部分の画像を生成するように構成された電気回路を含むことが可能である。
【0051】
この第一および第二圧電層は、各々、ポリ二フッ化ビニル(PVDF:polyvinyl difluoride)を含む。
【0052】
第一メタルラインは、二重層超音波指紋検知デバイスの第一側に配置することが可能で、第二メタルラインは、その第二側に配置することが可能であり、第二側は第一側の反対側であってよい。
【0053】
本二重層超音波指紋検知デバイスは、ユーザの指からの超音波信号の反射に基づいて、ユーザの指の指紋の少なくとも部分の画像を生成するように構成された電気回路を含むことができる。
【0054】
この画像はインチ当たり少なくとも500画素の解像度を有することができる。
【0055】
本二重層超音波指紋検知デバイスは、指を受けるよう構成された表面の選択された部分に合焦して送信を行うように構成することが可能である。
【0056】
別の態様は、超音波指紋検知を備えたスマートカードである。本スマートカードデバイスは、材料を含むカード本体と、カード本体内中に埋め込まれた超音波指紋検知デバイスとを含む。この超音波指紋検知デバイスは、カード本体を介してスマートカードの表面に超音波信号を送信し、その超音波信号の反射に基づいて画像データを生成すするように構成される。この超音波信号は、カード本体の材料の音速と相まって、画像データに対し少なくとも50マイクロメートルの解像度を提供する周波数を有する。
【0057】
この超音波指紋検知デバイスは、カード本体中に少なくとも部分的に埋め込むことができる。この超音波指紋検知デバイスは、カード本体が該指紋検知デバイス完全に取り囲むように、カード本体中に完全に埋め込むことが可能である。
【0058】
本スマートカードは、本スマートカードを外部のカードリーダーに連結するように構成されたコンタクトを含んでよい。本スマートカードは、超音波指紋検知デバイスから外部のデバイスに画像データを送信するように構成されたアンテナおよびワイヤレス通信電気回路を含むことが可能である。
【0059】
材料はプラスチックを含んでよい。カード本体は、ナイロン(登録商標)、PVC、マイラー(登録商標)、ガラス、アルミニウム、およびサファイアから成る群から選択された少なくとも1つの物質を主として形成されてよい。
【0060】
このカード本体は財布に収まるサイズにすることができる。本スマートカードには、外部のカードリーダーに対し、該スマートカードの真正証明をするように構成されたセキュリティチップを含めることが可能である。本スマートカードはカード本体上に磁気ストリップを含んでよい。
【0061】
別の態様は、超音波検知を用いたスマートカードによる真正証明の方法である。本方法は、スマートカードから超音波信号を送信するステップと、その超音波信号の反射に基づいてユーザの指紋の少なくとも部分の画像データを生成するステップであって、この画像データはインチ当たり少なくとも500画素の解像度を有する、該生成するステップと、その画像データに基づいてユーザの指紋の真正証明をするステップと、を含む。
【0062】
本方法は、ユーザが真正証明されたことの表明を外部のデバイスに提示するステップを含むことができる。ユーザの指紋の真正証明をするステップは、スマートカード中の電気回路によってユーザの指紋の真正証明をするステップを含むことができ、本方法は、さらに、ユーザの指紋に基づいてユーザが真正証明されたことの表明を、外部のデバイスに提示するステップも含んでよい。ユーザの指紋の真正証明をするステップは、ユーザの指紋の真正証明のための画像データを外部のデバイスに送信するステップを含んでよい。
【0063】
このスマートカードは、外部のデバイスに連結するコンタクトを含むことができる。本方法は、超音波信号を送信し画像データを生成するための電力を、該コンタクトを介して外部のデバイスから引き入れるステップを含むことが可能である。
【0064】
このスマートカードはアンテナを含んでよい。本方法は、このアンテナを介して画像データを送信するステップを含むことができる。
【0065】
本開示の別の態様は、超音波指紋検知を備えたスマートカードであって、本スマートカードは、カード本体と、該カード本体に少なくとも部分的に埋め込まれた超音波指紋検知デバイスとを含むことができ、この超音波指紋検知デバイスは指を受けるように構成された受け面を含むことが可能であり、該超音波指紋検知デバイスは、超音波信号を送信し、ユーザの指からの該超音波信号の反射に基づいてユーザの指の指紋の少なくとも部分の画像データを生成するように構成することができ、この画像データはインチ当たり少なくとも500画素の解像度を有してよい。
【0066】
超音波指紋検知デバイスの受け面は、超音波指紋検知デバイスによって送信された超音波信号が、カード本体を通過することなく受け面を介して指の中に伝送されるように、カード本体とほぼ同一平面とすることができる。
【0067】
本スマートカードは剛性(リジッド)であってよい。
【0068】
超音波指紋検知デバイスは、酸化亜鉛圧電層を含んでよい。この超音波指紋検知デバイスは、ガラスまたは溶融石英によって覆われた酸化亜鉛圧電層を含むことが可能で、このガラスまたは溶融石英が超音波指紋検知デバイスの受け面を形成することができる。超音波指紋検知デバイスは、ガラスまたは溶融石英を含むことが可能で、このガラスまたは溶融石英が超音波指紋検知デバイスの受け面を形成してよい。
【0069】
超音波指紋検知デバイスは、ニオブ酸リチウム圧電層、窒化アルミニウム圧電層、タンタル酸リチウム圧電層、酸化ビスマスゲルマニウム圧電層、チタン酸鉛ジルコニウム圧電層、ポリ二フッ化ビニル圧電層、およびポリマー圧電層から成る群から選択された少なくとも1つの圧電層を含んでよい。
【0070】
本スマートカードは、カード本体内の電気回路と、その電気回路を外部のカードリーダーに連結するように構成されたコンタクトとを含むことが可能である。カード本体内の電気回路は、画像データをこのコンタクトを介して外部のカードリーダーに送信するように構成されてよい。本スマートカードは、本スマートカードを外部のカードリーダーに連結するように構成されたコンタクトを含むことができる。超音波指紋検知デバイスは、作動のための電力を、このコンタクトを介して外部のカードリーダーから引き入れるように構成することが可能である。
【0071】
この超音波指紋検知デバイスは、二重層超音波指紋検知デバイスを含んでよい。
【0072】
超音波指紋検知デバイスは、受け面の選択された部分に合焦して送信を行うことができる。
【0073】
適切な場合、前述の態様のいずれも相互に組み合せることが可能である。本開示は、前述の態様の各々の1つ以上の特徴をありとあらゆる適切な組み合せで結合することを予期している。
【0074】
本開示を要約するために、諸新機軸の特定の態様、利点、および新規の特徴を、ここまで説明してきた。当然のことながら、かかる全ての利点が、必ずしも、いずれの特定の実施形態によっても達成され得るものではない。しかして、これら諸新機軸は、本明細書中で教示または示唆され得るように、必ずしも他の利点を達成しないで本明細書で教示の1つの利点もしくは利点の群を達成しまたは最適化するような仕方で、具現化しまたは実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】音響指紋スキャニングを表し、該スキャニングでは超音波トランスデューサが超音波を放射し、図示のように、これは、表面-指の境界面で、また指内部からも強く反射され、微弱に透過され得る。
【
図2】行-列アドレス指定の二次元(2D)アレイを備え、音波を合焦するためのデバイスを表す。送信合焦および受信合焦の各々に対し、相互に直角でコンパクトな焦点スポットサイズの測定スポットで交差する一度に1つだけの合焦ラインが作動することができる。
【
図3】行電極の縦のアレイおよび列電極の水平アレイによってアドレス指定される、トランスデューサ素子の二次元行-列アドレス指定アレイを表し、この縦および水平アレイは相互に直交している。
【
図4】基板上に搭載された例示の超音波トランスデューサアレイの斜視図を表す。
【
図5】基板上に搭載された超音波トランスデューサアレイの部分の斜視図を表す。
【
図6】ガラス基板の上面に底部電極を堆積することにより、超音波トランスデューサアレイを製造する中間のステップを表す。
【
図7】底部電極の上を覆って圧電膜を堆積することによる、超音波トランスデューサアレイを製造する中間のステップを表す。
【
図8】素子の間のクロストークを低減するため、膜の上側上に2方向のトレンチまたは溝をエッチングすることによる、超音波トランスデューサアレイを製造する中間のステップを表す。
【
図9】底部電極に対し垂直方向に上部電極を堆積することによる、超音波トランスデューサアレイを製造する中間のステップを表す。
【
図10】超音波トランスデューサアレイ、送信電極、および受信電極を含む、例示の音響生体識別タッチスキャナを表す。
【
図11】単一の活性の行と単一の活性の列との交点を備える、多重化単一チャネル行-列アドレス指定トランスデューサアレイを表す。
【
図12】3つの行と2つの列との交点を備える、多重化単一チャネル行-列アドレス指定トランスデューサアレイを表す。
【
図13】超音波信号中のピークを検出するためのオペアンプを用いたピーク検出電気回路を表す。
【
図14】超音波トランスデューサアレイと通信している受信電気回路中の信号に関連する周波数ドメインのプロットを表す。
【
図15】超音波トランスデューサアレイと通信している受信電気回路中の直接同相および直交位相(IQ:in-phase and quadrature)サンプリングに対する機能ブロック図を表す。
【
図16】元の高周波信号、およびアンダーサンプルされたときのそのスペクトル偽信号、ならびにアンダーサンプリング後のベースバンド偽信号を表す。
【
図17】指が受け面に対して押し付けられる圧力が増大すると、指紋の稜部が拡幅し、受け面に接触している指の合計表面が増加することを表す。
【
図18】媒体を通る音波の速度が、媒体の温度の変化で変わり得ることを表す。
【
図19】励振から、反射された波頭が記録されるまでの飛しょう時間が温度によって変化し得ることを表す。
【
図20】本開示の技術の或る実施形態による、生体識別情報を生成する方法のフローチャートである。
【
図21】本開示の技術の或る実施形態による、生体識別画像を生成する方法のフローチャートである。
【
図22】本開示の技術の或る実施形態による、音響生体識別タッチスキャナを製造する方法のフローチャートである。
【
図23】本開示の技術の或る実施形態による、指の温度を検出する方法のフローチャートである。
【
図24】本開示の技術の或る実施形態による、指が表面に接触している圧力を見積もる方法のフローチャートである。
【
図25】本開示の技術の或る実施形態による、圧力測定値の時系列の周期を見積もる方法のフローチャートであり、この周期は脈拍数の見積もりに対応する。
【
図26】
図26~34は、超音波指紋スキャニングのためのサンプリングおよびエンベロープ検出方法の回路およびシミュレーション結果を表す。
図26は一方向の挿入損失のシミュレーションを表す。
【
図27】IおよびQチャネル中へのRF信号のIQ復調のための回路を表す。
【
図28】シミュレートされた復調同相および直交位相信号の一例を表す。
【
図29】
図27の処理に対するIQ復調のために使用されたローパスフィルタの応答を表す。
【
図30】
図27の回路によって復調された信号に対するIQ復調エンベロープを表す。
【
図31】
図30のIQ復調エンベロープから採取された100MHzサンプルを表す。
【
図32】IQ復調信号のIQサンプリングのための回路を表す。
【
図33】サンプルされた、IQ復調信号の同相および直交位相信号を表す。
【
図34】200MHz、150MHz、100MHz、および50MHzのIQサンプリングレートに対するIQ復調信号のエンベロープのグラフを表す。
【
図35】一緒に積み重ねられた2つの一次元トランスデューサアレイを含む、二重層行-列アドレス指定トランスデューサアレイを表す。
【
図36】スマートカードデバイスの表面上に搭載された指紋スキャナを備えた該スマートカードデバイスを表す。
【
図37A】
図37Aは、スマートカードデバイス中に埋め込まれた指紋スキャナを備えた該スマートカードデバイスを表す。
【
図37B】
図37Bは、スマートカードデバイス中に埋め込まれた指紋スキャナを備えた該スマートカードデバイスを表す。
【
図38】点像分布関数および信号の半値全幅を示す反射された超音波信号のグラフを表す。
【
図39A】反射された超音波信号の点像分布関数の幅が、2つの被写体がなお別々に解像可能でありながらもいかに近接できるか、に関係することを表す。
【
図39B】2つの密接に間隔どりされた被写体から反射された超音波信号を表す。
【
図40】均等な媒体内の無響の、または無反射の領域の超音波画像を表す。
【
図41】強く反射する領域に囲まれた、信号のない、またほとんどない領域の反射超音波信号のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下の特定の諸実施形態の詳細な説明では、特定の実施形態の様々な記述を提供する。但し、本明細書で説明する新機軸は、例えば特許請求の範囲によって規定され包含されるような、多くの異なる仕方で具現化することが可能である。この説明において、諸図面が参照され、該図面では、同じ参照符号は、同一のまたは機能的に類似の要素を示し得る。当然のことながら、これら図面に表された諸要素は必ずしも一定の縮尺ではない。加えて、当然のことながら、特定の実施形態は、図面に表された要素、および/または図面に表された要素のサブセットよりも多い要素を含むことが可能である。さらに、いくつかの実施形態は、2つ以上の図面からの特徴の任意の適切な組み合せを組み入れることができる。
【0077】
超音波ベースの指紋スキャナは、指紋の表皮(表面)層だけでなく、内部(真皮)層を視覚化でき、このことは濡れた手、油、グリス、または汚れを取り扱う際にスキャナをロバストにする。これは、セキュリティの追加のレベルを提供し、偽造に対してセキュリティを堅固にし、これは様々な用途に対して望ましい。超音波ベースの指紋スキャナシステムは、表皮層の2Dマップ、および/または指の真皮層の3D容積画像を取得することができる。スキャニングの方法には、インピディオグラフィ、音響顕微鏡法、反響およびドップラー撮像が含まれる。本明細書で説明する指紋検知システムは、インチ当たり500の画素(PPI:pixels per inch)のスキャン解像度を達成することができ、米国連邦調査局(FBI:Federal Bureau of Investigation)および/または他の基準を満たす。かかる解像度は、焦点深度で50マイクロメートルの横方向解像度に変換することができ、これは通常、中心周波数、音響アパーチャサイズ、および焦点距離に依存する。
【0078】
他の指紋検知技術は、超音波ベースの指紋スキャナには存在し得ない難題に直面することがある。例えば、光学的指紋スキャナは、汚れた指紋を解像するという難題に直面し得る。別の例として、容量性指紋スキャナは、偽の指紋成型物を使って比較的容易に偽造が可能である。
【0079】
別の種類のセンサは、インピディオグラフィの概念に基づいており、これでは、指紋の表面がトランスデューサ素子にタッチし、その表面が体組織(稜部)かまたは空気(谷部)かどうかによって素子の音響インピーダンスが変わる。この技術は、超音波パルスおよび反響を生成させ処理する必要がないので便利であり得るが、指紋の表面の画像を取得することに限定されてしまいかねない。さらに、上記の一部のアプローチでは、圧電セラミック超音波トランスデューサのインピーダンスは、周波数に対して比較的に高い感受性があり得る。例えば、指紋の谷部によって負荷される素子のインピーダンスは、19.8MHzの周波数において約800オームであり、20.2MHzの周波数では約80,000オームになり得る。同様に、指紋の稜部によって負荷される素子のインピーダンスは、19.8MHzの周波数において約2,000オームであり、20.2MHzの周波数では約20,000オームになり得る。このことにより、信頼性のある測定値を得るために相異なる周波数での複数のインピーダンス測定が必要となり、それがフレーム取得時間に影響を及ぼすことになり得る。かかるアプローチにおける別の不都合点は、指とトランスデューサとの直接の接触であり、これは、トランスデューサの表面を汚染させ、さらには恒久的に破損させかねず、その性能に影響を及ぼしうる。
【0080】
いくつかの他のアプローチは、トランスデューサアレイからの超音波を指に加えるために、人の体組織と類似の音響インピーダンスを有する材料でできた音響導波路を備えた超音波トランスデューサを必要とし、さらに、必要な解像度を達成するためにビーム形成技術を使用する。導波路の使用は周波数拘束を緩和するが、導波路の作製は、通常、追加のリソグラフィステップを必要とし、これは、トランスデューサ設計の複雑性およびコストを増大する。かかるアプローチは、特定の用途においては望ましからぬ結果を招いてきた。いくつかの例において、かかるアプローチは、たとえビーム形成が実装され、電子装置の複雑性が高められていても、この設計の能力に影響を与える比較的に高い挿入損失に遭遇してきている。また、かかるアプローチでは、消費者用電子機器にはふさわしくない比較的に高い電圧のバイアスおよびパルスが使われている。
【0081】
本開示の技術は、裸の皮膚によってタッチされたとき、外部皮膚層(表皮)および下層の体組織(真皮および皮下組織)の両方をスキャンする音響生体識別タッチデバイスを含む。かかるセンサは、人を識別するために用いることができる。スキャンのために一般に使われる箇所は指であるが、例えば、足の裏、足指、または掌など、身体の任意の他の場所をスキャンすることもできよう。簡明化のため、以降、スキャン対象の場所として指を引合いに出す。本明細書で説明されるどの適した原理および利点も、人間または他の動物の、任意の適切な対象箇所のスキャニングに適用が可能である。
【0082】
本明細書で説明する生体識別検知システムは、50MHz~500MHzの範囲内の周波数を有する音響信号を送信するように構成された薄膜圧電デバイスを含む。この周波数によって、音の速度が比較的高い(例えば、5760m/s)ガラスなどの音響カップリング層を使っても、50マイクロメートルなどの所望の解像度を備えた画像を生成することができる。薄膜トランスデューサアレイは、スパッタリング処理を用いて作製することが可能である。このトランスデューサの圧電材料は、例えば、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、またはチタン酸鉛ジルコニウムとしてよい。特定のトランスデューサパラメータに対するシミュレーションでは、約3dBの比較的低い挿入損失が示され、受信側で半分の戻り電圧信号の受信が得られた。例えば、4ボルトの励振のシミュレーションで、出力電圧は2ボルト台であった。本生体識別検知デバイスは、指紋諸層の3D超音波画像を得ることができる。本生体識別検知デバイスは、画像品質の向上および/または組立てならびに電子装置設計の複雑さを低減するために、行、列アドレス指定およびビーム形成を実装することが可能である。
【0083】
本明細書では、指紋の撮像との組合せで、(1)稜部の拡幅および指紋表面積の測定による指のタッチ圧力検出、および(2)温度依存性のある音の速度の変化の測定によって、指の温度を生成し周囲温度を検出することなど、いくつかの他の特徴が説明される。本明細書では、血流、心拍数の測定、および生体識別検知デバイスの他の構造的特徴が説明される。
【0084】
本開示のデバイスは、指とスキャナとの間の中間媒体を介してスキャンをする能力を有する。この媒体は、例えば、ガラス、金属、プラスチック、または対象となる周波数範囲で超音波の伝搬を可能にする任意の適切な材料とすることができよう。これを、例えば、携帯電話上の前面ガラスの任意の部分または全部を指紋スキャナにするために用いることが可能となろう。
【0085】
また、この超音波は、指に入り込み、皮膚層を通過するので、指の表面さらには内部の指組織の三次元(3D)スキャンを行うことができる。とりわけ、血静脈および/または動脈をスキャンし、それらの血流量を見積もることができよう。血流の測定値は、心拍とともに周期的であり得る。しかして、本センサは、ガラスにタッチしている人の心拍を測定することもまた可能である。
【0086】
本明細書で説明する指紋スキャナは、該指紋スキャナの表面に接触している、指などの対象体に関連する1つ以上の生体活性パラメータを検出することができる。1つ以上の生体活性パラメータの検出は、指紋の少なくとも部分の画像もさらに生成する、超音波ベース検知デバイスを使って行うことが可能である。この画像は500PPIの精度を有してよい。本指紋スキャナは、生体活性パラメータに基づいて、当該指が生きた人間の一部であるかどうかの表明を、その生活パラメータに基づき提示することができる。これは、成型物、人工指、または他の対象体が、或る特定の指に関連付けられた指紋と合致すると識別されることを防止するために用いることが可能である。生体活性パラメータは、指紋スキャナの1つ以上のトランスデューサによって送信された音波の反射に基づいて測定することができる。これら生体活性パラメータは、例えば、体温および/または体組織の硬化度であってよい。
【0087】
指が体温であり、センサが室温である場合、タッチされると、ガラスまたは他の中間層の温度は、通常、温められ、そのガラス中の音の速度は一般に低下するはずである。いくつかの例において、デバイスは(例えば、日光によって)体温よりも高い温度に温められ得、熱がデバイスから指に移送されデバイスを冷却することがある。しかして、本開示の別の目的は、指の温度を測定することである。これは、ガラスにタッチしているのが生きた指であり、人工指でないことを確認するために行われる。指がガラスにタッチしていないときに、本デバイスによって周囲温度を測定することが可能である。
【0088】
指がガラス上により強く押し付けられると、指とガラスなどの表面との間の接触面積は増大するはずである。このことは、指が表面に接触している圧力を検出するのに使うことができる。しかして、本出願の別の目的は、表面との接触密度の計算を通して、押し当てられた加圧および/または圧力を測定することである。
【0089】
ガラス上の指の加圧は、心筋が収縮し動脈圧が増大するとき、心拍とともに増大するはずである。収縮と収縮との間は、心臓は血液で満たされ圧力は低下する。指先圧力測定の時系列は、その人の脈拍数に対応する頻度の周期的、リズミカルなパターンに従うことになり得る。したがって、本開示の音響スキャナは、体温の測定に加え、脈拍数を見積もることが可能で、これは、対象指先が人工物でなく、測定された脈拍数を有する生きた人に付属することを確認するために使用される。
【0090】
さらに、本開示のデバイスは、前述の加圧見積もりと直接の圧力または加圧の測定値とを比較することによって体組織の硬化度の見積もりを可能にする。これにより、センサにタッチしている対象体が本物の指であり、人工物ではないことの確実性を増すことができる。
【0091】
本開示のデバイスは、諸用途の中でもとりわけ、通信または計算デバイスへのログイン、ソフトウェアアプリへのログイン、ドアまたは盗難防止デバイスの開錠、電子支払いの本人証明、または保安デバイスの開錠を含む、諸用途のため、人の識別または本人証明をするのに用いることが可能である。
【0092】
図1は、音響指紋スキャニングデバイス100を表し、該デバイスでは、超音波トランスデューサ130(XDC)が超音波135を放射し、これは、表面-指の境界面125で、また指105内からも反射される。トランスデューサ130は、50メガヘルツ(MHz)~500MHzの範囲内の周波数を有する超音波を送信することができる。音響指紋スキャナは、指105とそれがタッチしている媒体120との間の境界面をスキャンする。媒体120は剛性であってよい。指105の稜部110が表面125にタッチしている箇所では、音波140の一部が指105に進入することになり、より少ないエネルギーが反射150を介して反射されることになる。指105の谷部115がある箇所では、相対的により多くの(例えば、実際上全ての)音響エネルギーが、反射155として超音波トランスデューサ130に戻り反射される。指105の表面をスキャンするために、稜部110と谷部115とに関連するこの反射係数のコントラストが、このデバイスによって用いられる。例えば、指105の表面をスキャンするために医用超音波撮像技法が実装されてよい。
【0093】
超音波は稜部110を通って指105に進入するので、スキャナはまた指105の内部の特徴を撮像することもできる。これは、パルス認識、および/または、体組織構造、靭帯、静脈、および動脈など、他の生体識別特徴を介する識別のために用いることができよう。一例として、音響スキャニングデバイスは、手の掌および/または指中の血管のパターンを検出し、その血管のパターンに基づいて人を識別することができる。指105のこの三次元スキャンは、指105の二次元および/または三次元画像を生成するために用いることが可能である。この二次元および/または三次元画像は、画像処理およびパターン認識技法を使って処理されてよい。
【0094】
指紋を識別するために、指紋認識デバイスは、指中の稜部を50μmよりも良好な解像度で解像することができる。超音波アプローチは、プレート(例えば、ガラスプレート)と体組織との間のインピーダンスのミスマッチを測定することが可能で、これにより稜部を表現することができ、また、プレートと空気との間のインピーダンスのミスマッチを測定することが可能で、これにより稜部と稜部との間の谷部を表現することができる。
【0095】
ガラスプレート中の導波路を用いるいくつかの超音波スキャナは、指とガラスプレートとの間のインピーダンスのミスマッチの測定を可能にするために、トランスデューサ130からの超音波信号の周波数よりも低い周波数(すなわち、50MHz未満)を持つ超音波信号を導波することが可能である。いくつかの超音波センサは、50μmよりも狭い圧電材料のポストを含んでよく、かかるスキャナは、各ポストと指との間の表面接触に起因するインピーダンスの変化を測定することができる。導波路および/または圧電材料の狭小なポストを備えた超音波スキャナでは、波長が50マイクロよりずっと大きな超音波信号によって50μmスケールで測定をするために、比較的に複雑な構造が必要となり得る。かかる複雑なアセンブリは、超音波指紋スキャニングのためのシステムを構築するのに比較的に高コストおよび困難が生じ得る。かかる例の他の不利点には、特定の金属および/またはガラス表面中に導波路を組み込んだ受け面の不透過性とその設計の困難性を含めることができる。
【0096】
いくつかの超音波スキャナは、回折に関連する問題を回避するために、1GHzを超える(例えば、おおよそ5GHzの)周波数を有する超音波信号を生成することができる。しかしながら、かかる周波数において、超音波信号は体組織に貫入できない。さらに、かかる周波数の超音波信号を用いるスキャナは、かかる周波数の信号が有意な減衰なしに伝搬することを可能にする材料によって構築されることができる。加えて、50μmのトランスデューサ素子の二次元(2D)アレイは、アドレス指定が法外に複雑となり得て、1GHzを超える周波数で動作する間の電気的クロストークによってさらに面倒になる。
【0097】
図2のデバイスに例示されているように、本開示の技術は、なかんずく、より低いまたはより高い周波数で動作する超音波スキャナの前述の欠点を克服することができる。
【0098】
図2は、超音波トランスデューサの行-列アドレス指定の二次元(2D)アレイを備え、音波を合焦するためのデバイス200を表す。デバイス200は、圧電薄膜210と、ガラスプレート220と、x方向の格子230と、y方向の格子240とを含む。
図2に示されるように、デバイス200は、x方向の合焦ライン250、y方向の合焦ライン260、およびx方向の合焦ライン250とy方向の合焦ライン260とが交差する箇所である測定スポット270を持つように動作することができる。送信の合焦、および受信の合焦の各々に対し、一度に、合焦ライン250と260とのうちの1つだけが作動することができる。例えば、合焦ライン250および260は、送信の合焦および受信の合焦にそれぞれ使用されてよい。あるいは、合焦ライン250と260とを、受信合焦および送信合焦それぞれに使用することができる。
【0099】
デバイス200は、ビーム形成を用いて50μmの解像度を達成するために、十分に高い(例えば、約150MHzなど50MHz~500MHzの範囲の)周波数で超音波撮像を使用する。しかして、デバイス200は、導波路なしに、望まれる50μmの解像度を達成することが可能である。これにより、デバイス200は、導波路を含む超音波スキャナデバイスと比べてより簡単な構造を有することができる。さらに、タッチ材料の種類および/またはその材料の厚さに対する制約をより少なくすることが可能である。
【0100】
圧電層210は、50MHz~500MHzの範囲内の周波数を有する音響信号を生成することができる。かかる音響信号を送信するように拵えられたトランスデューサアレイは、効率的に実装可能で、デバイス200のトランスデューサと受け面との間の導波路なしに、望まれる画像解像度を達成することができ、この受け面は、指を受けて物理的コンタクトをするように構成される。いくつかの応用において、圧電層210は、125MHz~250MHzの範囲内の周波数を有する音響信号を生成することができる。特定の諸実装によれば、圧電層210は、50MHz~100MHzの範囲内の周波数を有する音響信号を生成することが可能である。例えば、50MHz~100MHzの範囲内の音響信号は、クレジットカード中に実装されるデバイス用に用いることができる。
【0101】
圧電層210は、任意の適切な圧電材料を含んでよい。例えば、圧電層210は、酸化亜鉛層、窒化アルミニウム層、ニオブ酸リチウム層、タンタル酸リチウム層、酸化ビスマスゲルマニウム、チタン酸鉛ジルコニウム、またさらには、ポリ二フッ化ビニル層などのポリマー圧電体であってよい。圧電層210の厚さは、50MHz~500MHzの範囲内の周波数を有する音響信号を生成するのに適するようにされてよい。この圧電層は、3マイクロメートル~75マイクロメートルの範囲内の厚さを有してよい。いくつかの用途において、酸化亜鉛圧電層は、約10~20マイクロメートルの範囲内の厚さを有してよい。酸化亜鉛圧電層は、ガラス基板などの基板の上にスパッタリング可能な圧電層の一例である。特定の用途によれば、ニオブ酸リチウム圧電層は、約5~10マイクロメートルの範囲内の厚さを有してよい。かかるニオブ酸リチウム圧電層は、ガラス基板などの基板に、エポキシによって接着することが可能である。
【0102】
図示のように、デバイス200は、ガラスプレート220を含む。ガラスプレート220は、圧電層をその上に配置することが可能な基板の一例である。本明細書に記載の音響検知デバイスのいずれも適切な他の基板を含んでよい。例えば、金属層またはプラスチック基板は特定の用途においては適切な基板であり得る。
【0103】
或る実施形態において、ガラスプレート220は、約500μmの厚さとすることができる。この厚さは、使われる圧電材料、超音波周波数、および用途に応じて任意の適切な厚さとしてよい。かかる厚さは、携帯用通信および計算デバイスに対し標準値とすることができる。他の例において、ガラスプレート220は、より薄くして、任意の適切な材料のより厚いプレートに接着することが可能である。これにより、指紋デバイスは、電話または任意のかかるシステムの金属ハウジング上に配置することができよう。この配置は、任意の適切なサイズであってよい。これにより、デバイス200は、タッチスクリーンと指紋認識とを同時に行うため、全体プレートのほとんどまたは全部をカバーすることが可能となる。
【0104】
作動において、デバイス200は、合焦の位置で、つまり、xおよびy方向の合焦ライン250および260の交点上の測定スポット270で、反射係数を測定することができる。測定スポット270のサイズは、当該デバイスの回折解像度によって決まり得る。例えば、ガラス中で150MHzの音響信号を提供する超音波トランスデューサに対して、このスポット270のサイズは約40マイクロメートルであってよい。ガラス、指の境界面での反射係数の変化は、当該指紋デバイス中に使われているガラスの種類の如何によって、1もしくは約0.85となろう。ガラスと指との間でガラス上に整合層を加えることによって、体組織の中へのカップリングを向上させ、おおよそ1~0の反射係数でのコントラストを得ることが可能である。整合層の厚さは、その整合層の材料中での超音波信号の波長の四分の一になるように選択することができる。一例として、おおよそ150MHzで音響信号を送信するデバイス200に対して、整合層は約5μmの厚さを有するエポキシを含んでよい。
【0105】
デバイス200は、リニアアレイ撮像のための電子装置を含むことが可能である。かかるリニア画像生成は、医用超音波撮像システム中のリニア画像生成と類似であってよい。かかるオペレーションにおいて、アレイ中のいくつかの素子が一緒にグループ化され、全てのアレイ素子からプレート-指境界面への到達が同時になるように、相異なって位相化された信号によって励振される。受信アレイ素子は、送信アレイ素子と数が類似であり、次いで反射された信号を受信することになり、体組織への動的アクティブな合焦のため、それら反射信号の到達時間を同じにするために、各素子に電子的な位相遅延が加えられる。1つのスポットで測定が行われたならば、次の隣接する解像スポットの測定を可能にするために受信アレイの素子は1素子だけシフトされてよい。このプロセスは、受信アレイをスキャンすることによって全体ラインの画像生成をするため繰り返すことが可能である。次に、送信アレイが1素子だけ移動され、別のラインを受信するためにこのプロセスを繰り返すことができる。全体として、このプロセスは、指の全領域または任意の所望部分を撮像するためにこのプロセスが繰り返されてよい。
【0106】
上記の説明において、この撮像は、プレート、指の境界面125で行われる。また一方、指がプレートにタッチしている箇所では、超音波エネルギーが指の中に貫入し、反射は、指の内部の組織から生じることになろう。これにより、指中の毛細血管内の血流に関する情報など、情報を指内部から収集することができる。かかる情報から、デバイス200は、心拍数、またはさらには、血管中のパルス波の速度に基づく毛細血管の健康度の或る種の測定など、対象体が生きていることを示す情報を導出することが可能となる。
【0107】
本指紋スキャナは、指の表面およびおそらくはその容積をスキャンすることができる。デバイス200は、超音波トランスデューサの二次元(2D)アレイによって、可動部品なしにかかる画像生成を行うことが可能である。全2Dトランスデューサアレイの迅速なアドレス指定は、比較的に多数の相互接続のために難題であり得る。
【0108】
全アドレス指定の代案は、素子の全体行または素子の全体列が同時にアドレス指定される行-列アドレス指定である。これは、同じ行中の素子に上部(または底部)電極を共有させ、同じ列の中の素子に底部(または上部)電極を共有させることによって達成が可能である。これに応じて、送信電極と受信電極とをアレイの異なる側(上側または底側)に配置することができ、送信および受信アパーチャを2つの異なる方向(行または列)にすることができる。これにより、トランスデューサアレイから展開される相互接続の数を低減することが可能である。
図3は、行電極の水平アレイ310および列電極の縦のアレイ320によってアドレス指定される、トランスデューサ素子340の二次元N×Nの行-列アドレス指定アレイ300を表し、この水平および縦アレイ310および320は、それぞれ相互に直交している。
図3は正方形のN×Nのアレイを表しているが、代わりにM個の行とN個の列を備える任意の適切なM×Nの矩形アレイを実装することも可能で、このNおよびMは相異なる正の整数である。
図3は、N×1個の各水平行アレイ310、および1×N個の各縦列アレイ320の端部に接続部330を含んでいる。
【0109】
行-列アドレス指定アレイ300を使う1つのやり方については
図2を参照して既に説明した。送信-受信イベント毎に一回の受信合焦が行われる。送信および受信アパーチャの両方に13個の能動素子を使っている或る512×512の2Dアレイは、一回のスキャンを行うため、約500×500=250,000の送信-受信イベントを用いることになり得る。これは、カップリング媒体が、5760m/sの音の速度を有する0.5mmの厚さのガラスの場合に、一回のスキャンを完了するのにおおよそ43msかかる。受信電子装置が全ての受信素子を並行して記録するように拡張されれば、スキャンは500回の送信-受信イベントで完了する。これでは、全スキャンのため約87μsかかることになろう。
【0110】
また、スキャン速度をさらに増大するためには、複数の送信波が一度に放射されるように、送信段階に並列化を導入してもよい。行-列アドレス指定アレイに対し、送信ビームを並列化するために、これら送信ビームを周波数ドメインに分離し、その後それらを分離するために相異なるフィルタで受信することができる。これら相異なるフィルタは、次いでデータを受信ビームフォーマに送ることができる。送信および受信の並列化の任意の組み合せを用いることが可能である。また、超音波ビームは、能動アパーチャを変換する代わりに、角度を操作することができ、またはこれら2つの組み合せを用いることも可能である。さらに、このスキャンは、合成送信集束法、合成受信集束法、またはその両方を使用することによって合成的に合焦されてもよい。
【0111】
これは、この2Dトランスデューサアレイを、相互に直交する2つの1Dトランスデューサアレイとして効果的に利用することを可能にする。一方のアレイが送信用に他方が受信用に使用されれば、全3D画像生成が達成可能である。行ごと、および列ごとに1つの相互接続およびビーム形成チャネルを用いることができる。
【0112】
一例として、全アドレス指定の256×256素子のアレイは、65536個の相互接続点を伴い得るが、それが行-列アドレス指定にされれば、512個の接続部330の実装でよい。
【0113】
作動において、ライン合焦された超音波のビームを送信するために、例えばx軸の電極など電極の1セットを使用すればよい。この焦点は、表面-指の境界面に当てられる。x軸に配列された電極によってパルスが送信されたならば、
図2中にも概略的に示したように、x方向のライン合焦を検出するために、y軸に配列された電極が使用される。システムの全応答は、2つの合焦ラインの交点であり、回折限界解像度に相応する解像度をもたらす。
【0114】
送信ビーム形成は、媒体中の選択された焦点深さに放射超音波ビームを合焦するため、全アドレス指定のアレイと行-列アドレス指定アレイとの両方に使用することが可能である。これは、対象領域での音響圧力を最大化し、それにより、その合焦領域でのSNRおよび画像品質が向上される。また、必要な撮像パフォーマンスを得るために、長さ、振幅レベル、および中心周波数などのパルス特性を変えることが可能である。
【0115】
図4は、ガラス410上の例示の超音波トランスデューサアレイ400の概略斜視図を表す。超音波トランスデューサアレイ400は、ガラス基板410の上面に底部電極430を含む。底部電極430は、水平方向にラインの縦のアレイを形成する。酸化亜鉛などの圧電薄膜420は、ガラス基板410上で且つ底部電極430の上面に所在する。圧電薄膜420は、正方形または矩形の形状であってよい。圧電薄膜420は、底部電極のアレイにオーバーラップしているが、図示のように、各底部電極430の端部は、金属コンタクトの作成を可能にするため圧電薄膜420によってオーバーラップされていない。圧電薄膜420は、トランスデューサ素子450のアレイ中での受信および送信両方に対するクロストークを低減するため、縦および水平方向の両方に、v形状エッチング460などのトレンチまたは溝をエッチングされる。これらv形状のエッチング460は、トレンチまたは溝の一例である。他の諸実施形態は、v形状でなく別の適切な形状を有するトレンチまたは溝を含んでよい。
【0116】
各トランスデューサ素子450の上面は、図示のようにほぼ正方形である。いくつかの他の実施形態では、1つ以上のトランスデューサ素子450の上面は、矩形形状などの異なる形状を有してよい。上部電極440は、縦方向に、ラインの水平アレイを形成している。上部電極440は、底部電極430と直交している。上部電極440は、v形状エッチング460によって形成されたトランスデューサ素子450の上面および側面を含め、トランスデューサ素子450の形状と共形である。底部電極430および上部電極440の各々の幅は、トランスデューサ素子450の対応する縁部の長さのほぼ合致している。例えば、底部電極430は、各々、上部電極440の幅とほぼ同じの幅を有し、これは、二次元超音波トランスデューサアレイ400の各トランスデューサ素子450の正方形の上面の各側辺の長さにほぼ等しい。
【0117】
超音波トランスデューサアレイ400は、以下に限らないが、蒸着、DCまたはACスパッタリング、ゾル-ゲル堆積、化学気相堆積など、多くの薄膜堆積技法の1つによって表面に堆積された圧電薄膜420を用いて作製することができる。任意の適切な堆積方法によって、超音波信号の励振および検出を可能にする妥当な電気機械結合係数を備えられるように適切に方位付けられた薄膜を得ることが可能である。50MHzを超え500MHz未満の中高範囲周波数の周波数を得るために、圧電トランスデューサ(例えば、酸化亜鉛ベースのトランスデューサ)は、スパッタリング技術を使って、または比較的に薄い(例えば、ニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムの)圧電プレートによって作製することができる。36°回転Yカットニオブ酸リチウム圧電層の音の速度を想定した場合、このプレートは、約7.4マイクロメートル~74マイクロメートルの範囲内の厚さを有してよい。ニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウム圧電層とともに、薄い結合層を圧電体と基板との間に含めることができる。
【0118】
所望の解像度を備えた画像を生成するための超音波センサデバイスの動作周波数は、センサのプレートまたは基板の材料の如何によって決まり得る。センサのプレートがサファイアでできている場合、サファイア中の音の速度は11,100m/secと比較的に高く、50μmの波長(解像度)には、222MHzの動作周波数を必要とする。さらに、サファイアは、ほとんどの圧電材料よりも高い機械インピーダンスを有するので、いわゆる四分の一波長モードで動作することになり、しかしてより薄い圧電膜を必要とする。例えば、酸化亜鉛(ZnO)が用いられる場合、その厚さは約7.1μmとすることができる。類似の試作では、6,320m/secの音の速度を有する水晶、および約25μmの厚さのZnO膜でのオペレーションに対しては、126.4MHzで作動させて50μmの波長が得られることが示された。2,740m/secの音の速度を有するポリプロピレン、および約57μmの厚さのZnO膜でのオペレーションに対しては、55MHzでの作動によって50μmの波長が得られた。単純な堆積では特定の圧電膜の厚さが過大になる状況では、エポキシ接合など他の代替の製造方法を利用することができる。
【0119】
プレート中の波長は解像度におおむね等しくすることができ、指紋認識に対してこれは50μmである。しかして、ある材料が選択されたならば、動作周波数は、f=音の速度/50μmで与えられる。プレートが圧電材料よりも低いインピーダンスを有する場合、その圧電体の厚さは、波長の約半分である。しかして、この圧電体の厚さは、t=音の速度/動作周波数の2倍、で与えられる。
【0120】
或る実施形態において、圧電膜は約16μmの厚さを有するZnO薄膜であり、単一のサブ素子に対し20μm×30μm~30μm×30μmのトランスデューササイズであり、10~20μmのライン間隔(切り溝)であり、且つ10~20μmのライン幅であり、40~50μmのピッチである。ライン幅、ライン間隔、ピッチ、またはこれらの何らかの組み合せは、圧電膜が異なる材料を含む場合にあってもこれらの範囲内であってよい。
【0121】
デバイス400は、最初にガラス基板沿いの一方向にラインのパターンを堆積することによって作製することが可能である。例えば、ラインおよび間隔はおおよそ25μmとすることができ、その後に厚さ約15μmの圧電薄膜の堆積を行うことができる。既設のラインおよびラインの間の間隔と直交する方向に沿って、ラインおよび間隔の別のセットを形成することができる。かかるデバイスの製造は、他の超音波指紋ソリューションに比べて比較的に簡単にすることができる。ラインおよび間隔のリソグラフィは、ゆうに現今の半導体製造機能の能力内にあり、圧電薄膜(15μm)の堆積は、物理気相堆積法(スパッタリング)もしくはゾル-ゲル製造方法によって行うことが可能である。そのどちらのやり方でも、この目的のため、圧電材料のいくつかの選択が利用可能である。本デバイスを製造するために、これら3つの製造ステップが使われてよい。次に、x-およびy-電極を、指紋認識のオペレーションのための電子回路に連結することができる。
【0122】
図5は、基板上の超音波トランスデューサアレイの部分の斜視図を表す。
図5は、圧電薄膜420、上部電極440、トランスデューサ素子450、およびv形状エッチング460を含む、
図4の音響生体識別タッチスキャナの部分を表す。
図5は、トランスデューサ素子450の間の、水平および縦方向両方のv形状エッチング460を表す。上部電極440は、v形状エッチング460と上部電極440の方向に共形であるが、上部電極440と直交方向のv形状エッチング460をカバーせずまたはこれと共形ではない。前述したように、或る実施形態は、v形状でないエッチングトレンチまたは溝を含んでよい。
【0123】
図6は、ガラス基板の上面に底部電極を堆積することにより、
図4および5のスキャナなどの超音波トランスデューサアレイを製造する中間のステップ600を表す。
図6は、ガラス基板410上に堆積された底部金属電極430の水平および縦方向の図を含む。底部電極430は、水平素子の縦アレイを形成する。
【0124】
図7は、底部電極430の上を覆って酸化亜鉛などの圧電薄膜420を堆積することによる、
図4および
図5のアレイなどの超音波トランスデューサアレイを製造する中間のステップ700を表す。圧電薄膜420は、底部電極430が存在する場所では底部電極430に接し、底部電極430の間など底部電極430が存在しない場所ではガラス基板410に接している。圧電薄膜420は、マグネトロンスパッタリングを使って堆積することが可能である。後続のステップでコンタクトの作製を可能にするため、底部電極430両側の縁部分は被覆せずに残されている。
【0125】
図8は、素子450の間のクロストークを低減するため、膜420の上側上に水平および縦方向にv形状の食刻460をエッチングすることによる、
図4および5のアレイなどの超音波トランスデューサアレイを製造する中間のステップを表す。v形状の食刻460が表されているが、任意の他の適切な形状の食刻が実装されてよい。v形状の食刻460は、水平および縦方向に、トランスデューサ素子450の二次元アレイの上面の境界を形成する。
図8の例では、トランスデューサ素子450の上面はほぼ正方形である。v形状の食刻460は、アレイ中の相異なるトランスデューサ素子450の間のクロストークを低減することができる。
【0126】
図9は、底部電極430に対し直角方向に上部電極440を堆積することによる、
図4および
図5のアレイなどの超音波トランスデューサアレイを製造する中間ステップを表す。コンタクトの作製を可能にするため、上部電極440は、その縁部470で両側から底部電極430と同じ平面に降下する。
【0127】
或る実施形態では(図示せず)、プレートの縁部から対象となる信号で境界面に戻ってくる可能性のある反射を低減するため、炭化タングステンもしくは炭化けい素またはかかる何らかの材料の粒子を付加されたゴムまたはエポキシなどの吸収層が、プレートの縁部に配置される。また、かかる縁部の反射は、指を探索する反復速度しかして画像フレームレートを低下させる影響を有し得よう。
【0128】
図10は、
図2~9を参照して前に説明したような超音波トランスデューサアレイ400を含む、例示の音響生体識別タッチスキャナ1000を表す。音響生体識別タッチスキャナ100は人のタッチを受けるための受け面125を含む。図示の超音波トランスデューサアレイ400は、その動作を制御する電子装置とインターフェース接続されている。これら電子装置は、送信および受信回路を含む。
【0129】
送信回路は、対象となる画像域に向けて超音波ビームを放射するため超音波トランスデューサアレイ400を励振させる。この励振は、トランスデューサアレイ内のトランスデューサ素子のセットの電極を通して電圧パルスを印加することによって生成することが可能である。上部電極にパルスが印加されるときに底部電極は接地状態でよく、底部電極にパルスが印加されるときには上部電極が接地状態であってよい。送信アパーチャのサイズおよび形状は、対象となる画像域に応じて変えてよい。図示の送信電子装置は、送信スイッチング回路網1005、電圧パルスジェネレータ1010、送信ビーム形成回路1015、および送信制御回路1020を含む。
【0130】
超音波トランスデューサアレイは、各々が、少なくとも1つの電極および超音波トランスデューサ素子と関連付けられた複数の送信チャネルを含む。各送信チャネルは、パルスを生成する少なくとも電圧パルスジェネレータ1010、およびパルスをトリガする際に使われるときチャネル間位相遅延を付与するための送信制御回路1020を含むことができる。各送信電極が専用の送信チャネルに連結されていてもよく、あるいは複数の電極が一緒にグループ化され1つの送信チャネルに割り当てられてもよい。
【0131】
送信スイッチング回路網1005は、パルスを必要な活性状態素子に割り振ることによって送信チャネルの数を低減させるマルチプレクサとすることができる。行-列アドレス指定のオペレーションの過程で、一方側の電極が送信または受信モードで動作可能であるときは、他方側は接地に接続されている。これは、電極を接地/送信チャネル、または受信チャネル/接地に連結するスイッチを用いて達成することができる。
【0132】
送信ビーム形成回路1015は、放射される超音波ビームを媒体中の選択された音響焦点深さに合焦するためのビーム形成を実装することが可能である。これにより、合焦ラインに最小のスポットサイズ(回折限界解像度)および最大の音響圧力を生成することができ、しかして合焦域に最適の性能を提供する。特定の合焦領域に集束するために、ビーム形成回路1015は、相互に対しチャネルを遅延させる遅延素子を含むことが可能である。例えば、超音波トランスデューサアレイ400は、一度に、例えば14個の電極など複数の底部電極上で送信を行ってよい。超音波トランスデューサアレイ400は、例えば20個の電極のアパーチャを介して送信し、次いで1つ以上の電極をシフトして再度送信することが可能である。例えば、一度に20個の電極を介して送信することにより、一度に1つの電極を介する送信からもたらされるであろうよりも、より良好な信号対ノイズ比を備えたより強い信号となる。ビーム形成回路1015は、諸電極の間の遅延を調整することができる。電圧パルスジェネレータ1010(パルサー)は、望ましい撮像パフォーマンスを得るための形状、長さ、レベル、周波数、およびバンド幅を備えたパルスを生成することが可能である。
【0133】
前述したように、送信アパーチャのサイズおよび形状は、対象となる撮像域に応じて変えられてよい。例えば、
図11は、単一の活性の行と単一の活性の列との交点1150を備える、多重化単一チャネル行-列アドレス指定アレイ1100を表す。アレイ1100は、トランスデューサ素子1180の行1110および列1120、ならびにコンタクト1190を含む。スイッチング回路網1160は活性の列1140を選択しており、スイッチング回路網1170は活性の行1130を選択している。活性の列1140および活性の行1130は交点1150で交差している。アクティブアパーチャは、ライン素子の全長である。
図11に表されているように、2つのアクティブアパーチャがあり、1つは送信用であり1つは受信用である。このアレイは、一点すなわち2つのライン集束の交点上に合焦することが可能である。
図11において、合焦が全くなくてもよい。代わりに、合成アパーチャ集束する後処理ステップとして合焦を行うことができる。
【0134】
図12では、本デバイスは、合成アパーチャ集束する後処理ステップを実装せず、ハードウェアのビームフォーマを含むことができる。アレイ1105は、トランスデューサ素子1185の、行1115および列1125、ならびにコンタクト1195を含む。スイッチング回路網1165は2つの活性の列1145を選択しており、スイッチング回路網1175は3つの活性の行1135を選択している。活性の列1145および活性の行1135は交点1155で交差している。トランスデューサアレイの1つ以上の行と1つ以上の列との任意の適切な組み合せを同時に活性化されるように制御することができる。
【0135】
図10に戻って参照すると、受信回路は、媒体から超音波反響信号を受信するのに応じて、トランスデューサによって生成される電気無線周波数(RF:radio frequency)信号を処理することが可能である。次いで、該受信回路は信号をサンプルすることができ、超音波画像を生成するように構成された処理装置1065にデジタルデータを提供することが可能である。
【0136】
図示の受信回路は、受信スイッチング回路網1025、低ノイズ増幅器1030、アナログフィルタ1035、時間利得補償回路1040、アナログ-デジタルコンバータ1045、受信ビーム形成回路1050、サンプリングおよびエンベロープ検出回路1055、および受信制御回路1060を含む。
【0137】
受信スイッチング回路網1025は、必要な受信電極に切り替えることによって受信チャネルの数を低減するマルチプレクサであってよい。行-列アドレス指定オペレーションの過程で、電極の一方側が送信または受信モードで動作可能なとき、他方側は接地に接続されていてよい。これは、電極を接地/送信チャネル、または受信チャネル/接地に連結するスイッチを用いて達成することができる。
【0138】
受信された超音波信号は、特にノイズ感受性があり低電力であり得る。低ノイズ増幅器1030が受信された超音波信号を増幅することができる。この第一段階は、信号中のノイズレベルに影響を与える可能性があり、このレベルは必要な信号対ノイズ比でのスキャンを可能にするために十分に低くすべきである。後続の諸段階は、実装の如何により機能が変わり得る。これらの機能には、サンプリングおよび受信ビーム形成が含まれる。なお、この後続の段階は超音波画像再構築処理装置であり、受信回路は、処理装置に受信された超音波反響を表現するサンプルデータを提供することができる。
【0139】
アナログフィルタ1035は、望ましくない周波数成分を除去することが可能である(例えば、アナログフィルタ1035は通過帯から外れた望ましくない周波数成分を除去するバンドパスフィルタであってよい)。いくつかの他の例において、時間利得補償回路1040とアナログ-デジタルコンバータ1045との間にアナログフィルタ1035を連結することが可能であり、および/または、時間利得補償回路1040とアナログ-デジタルコンバータ1045との間に追加のフィルタを含めることが可能である。時間利得補償回路1040は、長距離を伝搬した超音波信号の増加した減衰量を補償することができる。例えば、指内部のより遠くの構造体からの反射は、指表面の構造体からの反射よりも多く減衰されることになる。時間利得補償回路1040は、より短い期間の間伝搬したより近い構造体からの反射の利得に対して、より遠い構造体からの反射の利得を増大することによって補償することが可能である。
【0140】
時間利得補償の後、得られた信号は、後続の信号のデジタル処理のため、アナログ-デジタルコンバータ(ADC:analog to digital converter)1045によってデジタル化することができる。或る実施形態では、このアナログ-デジタル変換は、処理過程の異なった段階で行うことが可能である。例えば、アナログドメインでのビーム形成を備える実施形態において、アナログ-デジタル変換は、受信ビーム形成の後まで遅らせてよい。
【0141】
受信ビーム形成回路1050は、それぞれ、低ノイズ増幅器103、アナログフィルタ1035、および時間利得補償回路1040によって、増幅、ろ波、および補償された、複数の受信電極からの受信信号を組み合せることが可能である。受信ビーム形成回路1050は、活性の諸受信電極によって受信された反射を組み合せるために、合焦に対する遅延を用いて遅延を適用することができる。
【0142】
受信制御回路1060は、反射を待っているとき、次の測定までの間静止しているようADC1045をアイドルにするため受信側回路が不活性になるように、ADC1045のスイッチを切るかそれを待機モードに置くことが可能である。これは、電力消費の観点から、音響生体識別タッチスキャナ1000をより効率的にすることができる。
【0143】
また、受信制御回路1060は、受信ビーム形成回路1050のタイミングおよび動作を制御することが可能である。例えば、受信制御回路1020は、異なる電極によって受信されたパルスの反射に対し、必要な場合、チャネル間位相遅延を付与することができる。ビーム形成は、アナログドメインにおいて、アナログ遅延ラインおよびアナログ加算電気回路を用いて達成することができよう。アナログ遅延ラインは、諸チャネルの間に望ましい相対的位相遅延を付与することが可能で、アナログ加算電気回路はビーム形成された信号を生成するために、全アナログ信号を加算することになる。この単一のビーム形成された信号は、次いで、サンプルされ、デジタル化され、超音波画像の再構築のために処理装置に送信されてよい。
【0144】
いくつかの実施形態において、この単一のビーム形成された信号は、サンプリングレートの低減のため、アナログドメイン中で検出されるエンベロープであってよい。この検出されたエンベロープ、単一のビーム形成された信号は、次いで、サンプルされ、デジタル化され、超音波画像の再構築のために処理装置1065に送信されてよい。
【0145】
上記に換えてまたは加えて、ビーム形成はデジタルドメインに実装されてもよく、この場合、受信チャネルの個別の信号は、それらが遅延され加算される前にサンプルされデジタル化される。これらデジタルデータは、デジタル遅延電気回路を用いて相対的に遅延され、デジタル加算電気回路を用いて加算することができる。別のアプローチは、軸方向沿いに時間的サンプルを収集する代わりに、ガラス-指境界面のサンプルだけを取得し格納することである。これは、ハードウェアの複雑さを低減することが可能で、アナログビーム形成実装と類似の電気回路を使って行うことができるであろうが、全ての信号を全速力でサンプルするためサンプリング電気回路を使う代わりに、境界面だけでの信号レベルを検出するため、ピーク検出および単一サンプルサンプリング電気回路を用い、次いで、全スキャンの画像を生成するために、異なるアクティブアパーチャ位置群からのデジタルデータを用いることができる。
【0146】
サンプリングおよびエンベロープ検出回路1055は、必要なサンプリングレートを低減するため、ビーム形成された信号のエンベロープを検出し、その後にビーム形成された信号をサンプルすることが可能である。
【0147】
信号サンプリングおよびエンベロープ検出をどのように実装するかについては、オペアンプを使うピーク検出を含め、多数のオプションがある。1つのオプションが
図13に示されており、これは、超音波信号中のピークを検出するためオペアンプを使うピーク検出電気回路1300を表している。このアナログハードウェアピーク検出器は、いくつかの他のオプションと比べ、低減されたハードウェアの複雑さとコストとによって実装することが可能である。このピーク検出器はエンベロープ検出器の比較的に安価なバージョンであり、したがって、得られる信号はベースバンド信号と類似で、これは低減されたサンプリング周波数でサンプルすることができる。
【0148】
第二のオプションが
図14に示されており、この中では、より低いサンプリング周波数でサンプルすることが可能なベースバンドにRF信号をダウンミックスするため、IQ復調器が使用されている。
図14は、同位相および直交位相の信号復調に対する周波数ドメインのプロットおよび信号混合を表す。グラフ1410は、320MHzでサンプルされた、20MHzのバンド幅を有する150MHzにセンタリングされた周波数ドメイン中の信号を表す。ブロック
図1420は、グラフ1410の信号をダウンミックスするためのミキサを表す。グラフ1430は、0Hzにセンタリングされたベースバンド信号を有する周波数ドメイン中のダウンミックスされた信号と、より高い(負の)周波数におけるイメージとを表す。グラフ1440では、1430のダウンミックスされた信号がローパスろ波され、ベースバンド信号が残されている。グラフ1450は、ベースバンド信号が、今や低減された周波数でサンプル可能なことを表している。
【0149】
第三のオプションが
図15に示されており、これは直接の同相および直交位相(IQ)のサブサンプリングに対する機能ブロック
図1500を表す。このアプローチは、受信信号が狭バンドである場合に有用であり得る。IQサブサンプリング電気回路は、復調器とその後のサンプリング電気回路との機能を組み合せている。信号がより狭バンドであるほど、画像品質を保ちながらサンプリングレートをより低くすることができる。直交位相信号は、単一の周波数に対する単なる90°の位相シフトであり、したがって、広バンドの信号よりもより狭バンドの信号に対してより良好に機能することが可能である。
【0150】
データレートを低減するが、信号情報をなお保つための第四のオプションは、有限バンド信号のアンダーサンプリングである。連続する時間信号をサンプリングするとき、その周波数成分は、離散時間フーリエ変換によって算定され、該成分は、サンプリング周波数f
sの倍数で元の信号のイメージを有する。
図16は、元の高周波信号、およびアンダーサンプリングされたときのそのスペクトル偽信号、ならびにアンダーサンプリング後のベースバンド偽信号を表す。
【0151】
第五のオプションは、当該信号中の最高周波数成分の周波数の2倍でその無線周波数信号をサンプルすることである。このオプションは、比較的に高いサンプリングレートを必要とする。
【0152】
図10に戻って参照すると、音響生体識別タッチスキャナ1000は処理装置1065およびメモリ1070を含む。処理装置1065は、前述したように、増幅され、ろ波され、補償され、デジタル化され、ビーム形成され、サンプルされ、エンベロープ検出された反射超音波信号から画像を再構築する。処理装置1065によって再構築された画像は、三次元画像または二次元であってよい。二次元または三次元で、指の変化の検出またはビデオ処理するために、画像は異なる時点で、または時系列で再構築することが可能である。
【0153】
処理装置1065は、例えば、斑点を低減し、血管をハイライトし、脈拍を測定し、温度を見積もるために、再構築された画像に諸画像処理技法を適用することができる。メモリ1070は、再構築された画像、処理の結果、送信および受信制御命令、ビーム形成パラメータ、ならびにソフトウェア命令を格納する。また、メモリ1070は、生体識別タッチスキャナ1000が、スキャンされた画像が一致するかどうかを判定するため使用する指紋画像などの画像を格納することも可能である。
【0154】
これらにより、処理装置1065は、受け面125の指から反射された、超音波トランスデューサアレイ400からの超音波信号の反射に基づいて指紋の少なくとも部分の画像を生成することができる。この反射は、超音波トランスデューサアレイ400によって受信し、受信回路によって処理することが可能である。また、処理装置1065は、超音波トランスデューサアレイ400からの超音波信号の反射に基づいて、追加的情報を生成することもできる。かかる追加的情報は、指に関連する温度、および/または指がデバイスに接触している圧力など、1つ以上の生体活性パラメータを含んでよい。処理装置1065は、1つ以上の生体活性パラメータに基づいて、検出された画像が生きた指に関連付けられているかどうかの表明を提示することができる。生体活性パラメータは、指紋画像と相まって、任意の適切な識別および/または真正証明用途のために用いることが可能である。処理装置1065は、この表明を、任意の適切な視覚的、聴覚的またはその他の仕方で出力することができる。
【0155】
図17は、指がスキャナに対し押し付けられる圧力が増大すると、指紋の稜部が拡幅し、スキャナに接触している指の合計表面が増加することを表す。より低い圧力1700で受け面に接触している稜部および谷部の幅は、それぞれR1およびV1である。より高い圧力で受け面に接触している稜部および谷部の幅は、それぞれR2およびV2である。稜部の幅は、指がスキャナに対し押し付けられている圧力によって決まり得る。より高い圧力で、稜部は拡幅し(R2>R1)、谷部は狭化(V2<V1)される。例えば、より低い圧力では、谷部の幅およびスキャナと接しているその合計面積は増加する。
図17の例において、圧力が増大すると、受け面に接触している稜部の表面積は増加する。この合計面積または接触密度は測定が可能で、それから体組織硬化度を想定することによって、加えられた圧力を見積もることができる。体組織が硬いほど、圧力下でのその変形は小さいはずである。
【0156】
体組織の硬化度それ自体も、指に加えられた圧力を測定し、それを、想定される体組織硬化度に基づいて見積もられた圧力と対比することによって見積もることが可能である。見積もられた体組織硬化度αは、次の式を成り立たせる値である。
Fmeas=Fest(α)
【0157】
上式のFmeasは測定された圧力であり、Festは見積もられた圧力である。
【0158】
本明細書に記載の生体識別検知デバイスのいずれも圧力検出を実装することができる。圧力検出を備えた生体識別検知デバイスは、処理装置、および受け面を介して指に音響信号を送信するように構成されたトランスデューサを含んでよい。この処理装置は、指からの音響信号の反射に基づいて指の指紋の少なくとも部分の画像を生成し、該反射に基づいて受け面と接触している指の稜部の表面積を検出し、検出された表面積に基づいて指が受け面と接触している圧力を見積もることができる。処理装置は、見積もられた圧力に基づいてその指が生きた人間の一部であるかどうかの表明を生成することが可能である。指紋の少なくとも部分の画像は、インチ当たり500画素またはそれより高い解像度を有してよい。
【0159】
媒体を通る音速は、温度によって変化し得る。いくつかの材料中では、音の速度は温度とともに増加し得る。本発明人らは、様々な材料(例えば、ガラス、サファイア、金属などの固体)に対し、温度とともに音の速度は減少することを予期した。これにより、材料を通って伝搬する音の速度の測定値から温度を求めるため当該材料中の音の速度の温度への依存性を用いることが可能となる。
【0160】
図18は、媒体を通る音波の速度が、媒体の温度の上昇とともに低下し得ることを表す。材料を通って伝搬する音の速度は、通常、その材料の温度に依存する。固体中の音の速度は、通常、より高い温度によって低下する。生体識別検知デバイスの通常動作温度の範囲内では、温度と音の速度との間にはほぼリニアな関係があり、
c(T)∝T×φ
となる。
【0161】
上式のc(T)は、材料を通る温度依存性の音速であり、Tは温度であり、φはその材料に基づいた音速の傾き(勾配)である。φの符号は正でも負でもよいが、本明細書で説明する媒体の様々な材料(例えば、ガラス、サファイア、および金属)では負である。
【0162】
また、超音波トランスデューサと、スマートフォン上のガラス-空気境界面などの音響反射する対象体との間の距離も、熱膨張によって温度とともに増加する。また一方、音の速度の低下をもたらす弾性定数の変化は、通常、熱膨張係数よりも約一桁大きく、パルスの遅延を増大する上で支配的影響を有するはずである。音の速度は、超音波信号が、トランスデューサから音響反射する対象体に伝搬し、再び戻ってくるまでにかかる時間によって見積もることができる。かかった時間が短いほど、音の速度は早く、材料がより高温であるはずである。
図18の例において、諸波頭の間の間隔が波長に相当する。より高い温度1800および低い温度1810で、反射された超音波ビームの波長は、それぞれλ1およびλ2であり、λ2はλ1より大きい。この音の速度から、上記の式に基づいて、分析的および/または数式的に材料の温度を算定することが可能である。この材料の温度は、指に関連付けられた温度とすることができ、これはその指が生きた人間の一部であるかどうかの表明を生成するために用いられてよい。
【0163】
本明細書に記載の生体識別検知デバイスのいずれも、温度検出を実装することができる。温度検出を備えた生体識別検知デバイスは、処理装置、および受け面を介して指に音響信号を送信するように構成されたトランスデューサを含んでよい。この処理装置は、音響信号に関連する音速に基づいて指の温度を検出し、指からの音響信号の反射に基づいてその指の指紋の少なくとも部分の画像を生成することができる。処理装置は、検出された温度に基づいてその指が生きた人間の一部であるかどうかの表明を生成することが可能である。処理装置は、指が受け面に接触していないときの、音響信号に関連する第二の音速に基づいて周囲温度を検出することができる。処理装置は、指が受け面に接触しているときと、指が受け面に接触していないときとの間の、音響信号に関連する音速の差に基づいてその指の温度を検出することが可能である。
【0164】
図19は、励振から、反射された波頭までの飛しょう時間が、より高い温度に対してより短くなることを表す。具体的に、
図19は、励振から、反射された波頭が記録されるまでの飛しょう時間は、音波の速度が温度の上昇とともに増大するので、20℃よりも34℃でより短くなることを示している。指は体温でありセンサは室温なので、タッチされると、ガラスまたは他の中間層は温められることになり、一般にそのガラス中の音の速度は増大する。したがって、本明細書で説明する生体識別デバイスは、音速に基づいて指の温度を算定することができる。これは、ガラスにタッチしているのが偽造の指でないことを確かめることを可能にする。指がガラスにタッチしていないときに、デバイスによって周囲温度を測定することができる。
【0165】
図19は、34℃のより高い温度での超音波の伝搬の時間と20℃のより低い温度での超音波の伝搬の時間とを比べている。図示のように、より低い温度で、音の速度は4020m/sであり、より高い温度では4000m/sである。これら時間間隔は、伝搬の時間の差を強調するために正確な縮尺では描かれていない。
【0166】
より低い温度でのグラフ1910中の時間t=0で、トランスデューサによって空気/ガラス境界面に向けてパルスが送信される。グラフ1920中の時間t=1で、パルスは空気/ガラス境界面に近付く。グラフ1930中の時間t=2で、パルスの反射がトランスデューサに到達する。グラフ1940中の時間t=4では、反射パルスが既にトランスデューサに到達しているので何の活動も行われない。したがって、より高い温度では、励振から、反射された波頭が記録されるまでの飛しょうの時間は、グラフ1950に表されているようにおおよそ2時間間隔である。
【0167】
高い温度でのグラフ1960中では、時間t=0でトランスデューサによって空気/ガラス境界面に向けてパルスが送信される。グラフ1970中の時間t=1で、パルスは空気/ガラス境界面に近寄るが、まだ近接していない。グラフ1970中の時間t=2で、パルスの反射はトランスデューサに近寄るが、まだ到達していない。グラフ1970中の時間t=3で、パルスの反射がトランスデューサに到達している。より高い温度に対しては、励振から、反射された波頭が記録されるまでの飛しょうの時間は、グラフ1950に表されているようにおおよそ3時間間隔である。したがって、この飛しょうの時間はより低い温度でより短い。飛しょうの時間は、温度とともに変化するので、この飛しょうの時間は、相対的な温度を見積もるのに用いることができ、較正されれば、絶対的な温度を見積もるのに用いることも可能である。
【0168】
図20は、本開示の技術の或る実施形態による、生体識別情報を生成する方法2000のフローチャートである。ブロック2010で、方法2000は、50MHz~500MHzの範囲内の周波数を有する超音波信号を送信する。ブロック2020で方法2000は、超音波システムの反射に基づいて生体識別情報を生成する。
【0169】
図21は、生体識別画像を生成する方法2100のフローチャートである。ブロック2110で、方法2000は、1つ以上の超音波トランスデューサを用いて、50MHz~500MHzの範囲内の周波数を有する超音波信号を送信する。ブロック2120で、方法2100は、その超音波信号の反射を受信する。ブロック2130で、方法2000は、該反射に基づいて生体識別画像を生成する。
【0170】
図22は、本開示の技術の或る実施形態による、音響生体識別タッチスキャナを製造する方法2200のフローチャートである。ブロック2210で、方法2200は、ガラス基板の上面に底部金属電極を第1方向に且つ底部プレーン上にパターン形成する。ブロック2220で、方法2200は、底部金属電極の上面に、左および右縁部分を除いて全面に亘って圧電膜を堆積する。ブロック2230で、方法2200は、堆積された圧電膜中に、第一方向、および第一方向と直交する第二方向にトレンチまたは溝をエッチングする。ブロック2240で、方法2200は、エッチングされた圧電膜の上面と共形に第二方向に上部金属電極を堆積し、これら上部金属電極は、膜の左および右縁部分に共形であり、底部金属電極とコンタクトしている。
【0171】
図23は、本開示の技術の或る実施形態による、指の温度を検出する方法2300のフローチャートである。ブロック2310で、方法2300は、1つ以上の超音波トランスデューサを用いて、50MHz~500MHzの範囲内の周波数を有する超音波信号を媒体を通して指に送信する。ブロック2320で、方法2300は、その超音波信号の反射を受信する。ブロック2330で、方法2300は、送信され反射された信号の伝搬の時間に応じて指の温度を検出する。
【0172】
図24は、本開示の技術の或る実施形態による、指が表面に接触している圧力を見積もる方法2400のフローチャートである。ブロック2410で、方法2400は、指に音響信号を送信する。ブロック2420で、方法2400は、指からの音響信号の反射に基づいて、その指の指紋の少なくとも部分の画像を生成する。ブロック2430で、方法2400は、該反射に基づいて表面と接触している指の面積を検出する。ブロック2440で、方法2400は、表面と接触している指の検出された面積に基づいて、指が該表面と接触している圧力を見積もる。
【0173】
図25は、本開示の技術の或る実施形態による、圧力測定値の時系列の周期を見積もる方法2500のフローチャートであり、この周期は脈拍数の見積もりに対応する。ブロック2510で、方法2500は、複数の音響信号を受け面を介して指に送信する。ブロック2520で、方法2500は、第一サンプリングレートで画像の時系列を生成し、その指の指紋の少なくとも部分の各画像は、指からの音響信号の反射に基づく。ブロック2520で、方法2500は、画像の時系列の各画像に対して、反射に基づいて、受け面と接触している指の稜部の表面積を検出する。ブロック2530で、方法2500は、画像の時系列の各画像に対して、検出された表面積に基づいて、指が受け面と接触している圧力の時系列を見積もる。ブロック2540で、方法2500は、圧力の時系列の周期を見積もり、この周期は脈拍数の見積もりに相当する。
【0174】
図26~34は、超音波指紋スキャニングのためのサンプリングおよびエンベロープ検出方法の回路およびシミュレーション結果を表す。このシミュレーションは、20μmの素子幅、20μmのライン間隔(切り溝)、10mmの素子高さ、43:8%の超音波バンド幅を備えた素子を想定している。励振は、150MHzで5サイクルの正弦カーブである。実効f#=0.893で14個の能動素子が使用され、このf#はfナンバーであり、アクティブアパーチャの口径で除された焦点距離として定義される。
【0175】
図26は一方向の挿入損失のシミュレーションを表す。
【0176】
図27は、IおよびQチャネル中へのRF信号のIQ復調のための回路を表す。
【0177】
図28は、シミュレートされた復調の同相および直交位相信号の一例を表す。
【0178】
図29は、
図27の処理に対するIQ復調のため使用されたローパスフィルタの応答を表す。
【0179】
図30は、
図27の回路によって復調された信号に対するIQ復調エンベロープを表す。
【0180】
図31は、
図30のIQ復調のエンベロープから採取された100MHzサンプルを表す。
【0181】
図32は、IQ復調信号のIQサンプリングのための回路を表す。
【0182】
図33は、サンプリングされた、IQ復調信号の同相および直交位相信号を表す。
【0183】
図34は、200MHz、150MHz、100MHz、および50MHzのIQサンプリングレートに対するIQ復調信号のエンベロープのグラフを表す。
【0184】
超音波指紋スキャナは、スマートカードに含まれてもよい。このスマートカード中の超音波指紋スキャナは、本明細書で説明したいずれかの適切な原理および利点によって、実装することができる。スマートカードは、超音波指紋センサ、および/または支払いを認可するため読み取りの可能なチップなど他の電気回路を含んでよい。いくつかのスマートカードは磁気ストリップを含むことが可能で、これはカード本体上に設けられてよい。スマートカード中に超音波指紋スキャナ含めることで、真正証明のための追加のファクタを備えることができる。これにより、かかるスマートカードは、多重ファクタの真正証明を実装することが可能となる。一例として、スマートカードは、該スマートカード中のセキュリティチップによる真正証明に基づいて、およびこれと別に、指紋の真正証明するための超音波指紋スキャナを使って取引を認可することができる。この超音波指紋スキャナは、インチ当たり少なくとも500画素の解像度を備えた画像データを生成することが可能である。スマートカードは、クレジットカード、デビットカード、身分証明書、保険証などであってよい。
超音波生体識別検知を備えたスマートカードおよび関連する方法を開示する。一態様において、カード本体および超音波指紋検知デバイスを備えた或るスマートカードは、カード本体の材料の音速と相まって、インチ当たり少なくとも500画素の解像度を提供する周波数の超音波信号を送信するように構成される。この超音波指紋検知デバイスは、ユーザの指からの超音波信号の反射に基づいて、そのユーザの指の指紋の少なくとも部分の画像を生成するように構成される。特定の諸実施形態において、この超音波指紋検知デバイスは、金属層によって隔てられた圧電層の対を含むことができる。
【0185】
図35は、相互に積み重ねられた2つの一次元トランスデューサアレイ3500、3510を含む、二重層行-列アドレス指定トランスデューサアレイ3520を表す。この二重層行-列アドレス指定トランスデューサアレイ3500、3510は、スマートカード中に実装することができる。該二重層行-列アドレス指定トランスデューサアレイ3500、3510は、任意の他の応用品中に実装することも可能である。二重層行-列アドレス指定トランスデューサアレイ3500、3510は、指紋に対する画像データを生成するために使うことができる。二重層行-列アドレス指定トランスデューサアレイ3500、3510は、複数の指紋、掌、または手全体など、手のより大きな部分に対する画像データを生成するために使用することも可能である。第一トランスデューサアレイ3500は、圧電層3502、列(または行)ライン3504、金属コンタクト3506、および接地層3508を含んでよい。同様に、第二トランスデューサアレイ3510は、圧電材料3512、行(または列)ライン3514、金属コンタクト3516、および接地層3518を含むことが可能である。様々な応用の中で、接地層3508および/または3518に換えて、固定電圧に連結された金属層(群)または何らかの他の適切な金属層(群)を実装することができる。
【0186】
アレイ3500、3510中の圧電層3502、3512は、任意の適切な圧電材料を含んでよい。例えば、圧電材料3502、3512は、ポリ二フッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDFとも称される)などのポリマーであってよい。他の例として、圧電材料3502、3512は、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、酸化ビスマスゲルマニウム、またはチタン酸鉛ジルコニウムなど、他の適切な圧電材料を含んでもよく、薄膜の圧電材料を含むことができる。
【0187】
一次元のトランスデューサアレイ3500、3510中の金属膜ライン3504、3514は、積み重ねアレイ3520中の行および列のラインを形成することができる。列ライン3504と行ライン3514とは、相互にほぼ直交に方位付けられる。特定の諸実施形態において、積み重ねアレイ3520は、アレイの全体の行およびアレイの全体の列を一度にアドレス指定する行-列アドレス指定をするように構成することが可能である。いくつかの他の実施形態では、積み重ねアレイ3502は、超音波を送信するときに、アレイの1つ以上の行または列をアドレス指定することができ、超音波を受信するときに、1つ以上の行または列をそれぞれアドレス指定することができる。
【0188】
金属膜ライン3504、3514は、トランスデューサアレイ3500、3510中に電極3506、3516を実装することができ、積み重ねアレイ3520から展開される相互接続の間の接続を提供することが可能である。いくつかの実施形態において、電極3506、3516は、電極と相互接続との間の接続を容易にするために、段差付けされて(例えば、段差付けされた仕方で積み重ねアレイ3520から延び出して)よい。
【0189】
特定の諸実施形態において、第一トランスデューサアレイ3500は第二トランスデューサアレイ3510と一緒に積み重ねられて、2つの一次元アレイから、二重層行-列アドレス指定トランスデューサアレイ3520を形成することができる。トランスデューサアレイ3500と3510とは、
図35に示されるように、接地プレーン3508および3518が二重層アレイ3520の中央に位置し、一方、金属膜ライン3504および3514が二重層アレイ3520の外側面になるように、背中合わせに積み重ねることが可能である。金属膜ライン3504および3514は、一般に二重層アレイ3520の中で相互に垂直であってよい。特定の諸実施形態において、接地プレーン3508と3518とは単一の接地プレーン3522に統合されてよい。いくつかの他の実施形態では、2つのトランスデューサアレイ3510、3520の間に共通の接地プレーンを備えるために、接地プレーン3508および3518は一緒に短絡されてよい。ここでは接地プレーン3522と称しているが、プレーン3522は、全ての実施形態において接地される必要はない。プレーン3522は、この2つのトランスデューサアレイ3510、3520の間に配置された任意の適切な金属プレーンであってよく、任意の適切な固定電位または浮動電位にあってよい。
【0190】
図35の積み重ねアレイ3520などの二重層行-列アドレス指定トランスデューサアレイは、
図4のトランスデューサアレイ400などの単層アレイとは様々な側面で異なっている。一例として、送信の間、全体の送信ライン素子(例えば、金属膜ライン3504または3514の1つ)に亘って圧電層を励振するために、単一層アレイ中の受信電極は接地されてよい。同様に、受信オペレーションの間、帰還信号の適切な読み取りのため、単一層アレイ中の送信電極は接地されてよい。いくつかの実施形態において、複数の金属膜ラインに亘って圧電層を励振することができ、および/または帰還信号を受信するために複数の金属膜ラインを用いることが可能である。単一層トランスデューサアレイにおいては、送信および受信電極を、接地と、送信および受信回路との間で切り替えるスイッチング機構が、かかる接地連結を実装することができる。
【0191】
これに対して、
図35のアレイ3520などの二重層トランスデューサアレイでは、接地プレーン3522などの接地プレーン中央層を有することが可能である。しかして、金属膜ライン3504および3514の1つ上の何らかの電圧が、圧電層(例えば、その電圧が、それぞれ、ライン3504の1つまたはライン3514の1つ上の電圧かどうかによって、層3502または3512の1つ)を通過し該圧電層を励振する接地プレーン3522に対する電界を生成することが可能である。同様に、送信電極も、接地プレーン3522が既に設けられているので、受信オペレーションの間接地されている必要はない。また、接地プレーン3522は、積み重ねアレイ3520の送信側と受信側との間に遮蔽を設けることによって、送信電極と受信電極との間のRFフィードスルーを低減するなど、付加的有益性を提供することが可能である。これは、電極を接地と、送信回路および受信回路との間で切り替えなしに、オペレーションを容易化することができる。
【0192】
作動において、
図35の二重層トランスデューサアレイ3520は、金属膜ライン3504(または3514)の1つ以上を用いて超音波を送信し、次いで、直交する金属膜ライン3514(または3504)の1つ以上を用いてそれら超音波の反射を受信することができる。さらに、本二重層トランスデューサアレイ3520は、音波を集束し、例えば、少なくとも
図2に関連して本明細書で説明した技法を用いて、送信および/または受信の合焦することができる。
【0193】
図36、37A、および37Bに示されるように、スマートカード3602には、超音波指紋スキャナ3604または3608が備えられてよい。超音波指紋スキャナ3604および/または3608は、
図35を参照しながら説明したいずれかの適切の適切な原理および利点によって実装することが可能である。スマートカード3602は、任意の適切なカードであってよく、一般には支払い用および/または他の用途のために使われるカードであってよい。例として、スマートカード3602は、クレジットカード、デビットカード、会員証、ポイントカード、身分証明書、セキュリティカード、決済カード、セキュリティカード、アクセスカード、受診カード、保険証などであってよい。スマートカード3602は、カード本体3601を含む。カード本体3601は、財布に収まるサイズを有してよい。スマートカード3602は、400μm~1000μmの範囲内の厚さを有することができる。例えば、スマートカード3602は、約760μmの厚さを有してよい。スマートカード3602は、約85.60mm×53.98mmとすることができる。特定の諸例において、スマートカード3602は、丸コーナーを有してよい。
【0194】
スマートカード3602中の超音波指紋スキャナは、認証のためスマートカード3602を提示しているユーザを真正証明するために用いることができる。指紋スキャナ3604または3608は、許可されていない人によってカードが使われる可能性をより低くするのに役立つ。一例として、ユーザがスマートカード3602を使って商品を購買することを所望してよく、支払いシステムは、指紋スキャナ3604を使ってユーザの指紋を同時検出した後でだけ、その購買を認可するように構成することが可能である。
【0195】
特定の諸実施形態において、スマートカード3602は、ユーザの指紋の検出を助力し、ユーザの指紋を(安全な仕方で)格納し、そうでなければスマートカード3602および/または指紋スキャナのオペレーションを別途に助力するなど、またはこれらの任意の適切な組み合せを行う電気回路3610を含んでよい。特定の諸例において、電気回路3610は、光起電力セル、バッテリー、コンデンサ、RF環境発電回路などの電源を含んでよい。
【0196】
様々な実施形態において、スマートカード3602は、1つ以上の電路3614を介して外部のデバイス3616に連結する1つ以上のコンタクト3612を含むことができる。一例として、コンタクト3612は、スマートカード3602がカードリーダー3616の中に挿入されたとき、カードリーダー3616と係合することが可能である。かかる実施形態において、信号は、カードリーダー3616と指紋スキャナ3604または3608、および/または電気回路3610との間で送受信される。これらの信号は、指紋スキャナ3604または3608、および/または電気回路3610に電力供給するための電力信号を含むことができ、さらに(例えば、ユーザの指紋が遠隔に格納されている場合は)指紋のスキャンを、(例えば、ユーザの指紋が、スマートカード3602内にローカルに格納されている場合は)検証の結果を含むことができる。いくつかの実施形態において、指紋スキャナ3604または3608のための送信および読み取りのための電気回路の一部または全部をカード3602から省き、外部の電気回路3616内に設けてもよい。これにより、スマートカード3602のコストおよび複雑さを低減することができる。
【0197】
いくつかの他の実施形態において、スマートカード3602は、電気回路3610中に、(アンテナを含めて)ワイヤレス通信電気回路を含むことが可能で、ユーザの指紋のスキャン、および/または指紋検証結果に関連するデータを、ワイヤレスに、カードリーダー3616などの外部の電気回路に伝送することが可能である。例として、回路3610は、近距離周波数を用いる信号または他の無線周波数信号を送信してよい。
【0198】
図36に表された例において、超音波指紋スキャナ3604は、スマートカード3602の表面に設けることができる。
図36は、スマートカード3602の、ユーザの指3600を受ける側と反対側に配置された(しかして、超音波3606にカード3602を通過させる)スキャナ3604を表しているが、これは単なる例示である。いくつかの他の実施形態では、ユーザの指3600は、スキャナ3604によって直接に受けられてもよい。
【0199】
図37Aおよび37Bに表されているように、スキャナ3608は、スマートカード3702のカード本体3701の中に埋め込まれてよい。
図37Aにおけるように、スキャナ3608は、ユーザの指3600を受ける面の反対側面と同一平面とすることができ、超音波3706は、スキャナ3608によって、スマートカード3702を通って送信されてよく、同様に、超音波反射はスマートカード3702のカード本体3701を通って伝搬されてよい。いくつかの他の実施形態では、
図37Bにおけるように、スキャナ3608は、(ユーザの指紋を検出する際に超音波がスマートカード3702を通って伝搬しなくてもよいように)ユーザの指3600を受ける面と同一平面に埋め込むことが可能である。様々な実施形態において、スキャナ3608はスマートカード3702の(例えば、スマートカード3702のどちらの表面とも同一面でない)容積の内部に埋め込むことができ、カード本体3701を形成している材料によって完全にまたはほぼ完全に囲むことが可能である。スキャナ3608は、カード本体3701を形成している材料と類似の材料で形成することができ、または異なった材料で形成することもできる。
【0200】
前に述べ、
図37B中に表されている実施形態などのいくつかの実施形態におけるように、スキャナ3608は、ユーザの指3600を受ける面と同一表面に埋め込むことができる。これらのまたは他の実施形態において、スキャナ3608は、酸化亜鉛(ZnO)薄膜などの圧電材料で形成されてよく、溶融石英、ガラス、別のガラス様材料、または他の望ましい材料で形成されてもよい。かかる実施形態において、スキャナ3608は、カード本体3701の上側面と同一平面に位置するガラスまたは金属または別の適切な材料で覆われてよい。言い換えれば、スキャナ3608上にはガラスまたは金属層があり、カード本体3701と同一表面であってよく、ユーザの指は、このガラスまたは金属層によって受けられてよい。いくつかの実施形態においてカード本体3701はフレキシブルであってよく、一方、他の実施形態ではカード本体3701は剛性であってよい。
【0201】
スマートカード3602および3702、具体的にはカード本体3601および3701は、超音波信号の伝搬のために適切な特性を備えた1つ以上の材料で形成することができる。一例として、望ましい解像度(例えば50マイクロメートル)を有する画像データを生成するように構成された指紋スキャナ3604または3608を備えることが望ましいであろう。例として、カード3601および3701は、1つ以上のプラスチック、1つ以上の金属、ナイロン(登録商標)、PVC、マイラー(登録商標)、ガラス、アルミニウム、他の材料、またはこれらのおよび他の材料の組み合せで形成されてよい。
【0202】
この指紋センサを使って生成された画像の解像度は、カード本体3601(または本体3701)を形成する材料内の音の速度に比例し、動作周波数に反比例し得る。また、比較的に高い周波数に対してはより複雑なサンプリング回路および追加の数のトランスデューサが必要となり得るので、比較的により低い周波数での作動が望ましくなり得る。さらに、比較的に低い周波数に対しては、カード本体3601、3701を通過する超音波はより低く減衰され得る。一例として、カード本体3601が700マイクロメートルの厚さでナイロン(登録商標)製である場合、25MHzで所与の解像度を得るのに22個の受信素子が必要であり得、50MHzでは、同じ解像度を得るための受信素子の数は倍の44個の受信素子になり得る。特定の諸実施形態において、本明細書で説明するスマートカード指紋検知システムは、インチ当たり500画素(PPI)のスキャン解像度を達成することができ、米国連邦調査局(FBI)および/または他の基準を満たす。この解像度は、50マイクロメートルの横方向解像度に変換することできる。
【0203】
下記の表1は、約760μmの厚さを有するカードについて、カード本体3601を形成することが可能な各種材料、およびいろいろな周波数に対するおおよその(マイクロメートルでの)解像度を提示している。かかる厚さは、クレジットカードおよび同類のカードの典型的厚さと類似して対比される。
【0204】
【0205】
表1に表されているように、スマートカード超音波指紋採取システムのスキャニング解像度は、カード本体材料とその超音波指紋採取システムの動作周波数との組み合せによって決まり得る。一例として、スマートカード超音波指紋システムは、ナイロン(登録商標)カード本体と約25MHzの(またはそれより高い)周波数のスキャナ作動とで、インチ当たり500画素(PPI)の解像度を提供することができる。他の例として、本システムは、PVCカード本体と約50MHzの(またはそれより高い)スキャナ作動とで、マイラーカード本体と約50MHzの(またはそれより高い)スキャナ作動とで、ガラスカード本体と約150MHzの(またはそれより高い)スキャナ作動とで、またはアルミニウムカード本体と約150MHzの(またはそれより高い)スキャナ作動とで、500PPIの解像度を提供することができよう。500PPIの解像度は約50μmのスキャニング解像度に相当し得る。しかして、表1にリストされた様々な材料に対し、500PPIの解像度に関連付けられる最小の動作周波数は、表1のデータポイントの間にあってよい。
【0206】
スマートカード超音波指紋システムのスキャニング解像度は、メインローブのサイズおよびサイドローブのサイズの両方に依存し得る。メインローブは半値全幅(FWHM:full width at half maximum)として測定されてよく、これは次の式から見積もることが可能である。
【数1】
【0207】
上式において、wはアクティブアパーチャの幅であり、dはスマートカードの厚さであり、λは動作周波数での波長(例えば、超音波の波長)であり、F#はfナンバーである。fナンバーは、アクティブアパーチャの口径で除された焦点距離として定義されてよい。サイドローブの影響は、嚢胞解像度を用いて見積もることが可能である。但し、多くの場合、スキャニング解像度は、FWHMだけで充分に近似される。良好な合焦、およびほぼ1または1をやや下回るfナンバーを達成するために、アクティブアパーチャは、比較的に大きく選択されてよい。簡潔には、F#が1であると仮定し、解像度がほぼ波長に等しくなるように、前述の式を単純化するのが合理的であり得よう。
【0208】
次いで、波長は次の式によって見積もることが可能である。
【数2】
【0209】
上式の中の、cはカード本体の材料中の音の速度であり、fは超音波の中心周波数である。各種材料に対するいろいろな超音波周波数でのスキャニング解像度の例が上記の表1に示されている。表1および上記の式に示されるように、一般に、より高い音の速度を有する材料がより高いスキャニング解像度をもたらす。
【0210】
スマートカード超音波指紋システムのスキャニング解像度は、点像分布関数(PSF:point spread function)に基づくことができる。この指標は、最大振幅の半値でのPSFの幅によって測定された詳細解像度、および嚢胞解像度(CR:cystic resolution)によって測定されたコントラスト解像度の両方を取り入れている。PSFおよびFWHMは、
図38、39A、および39B中に示されて説明されている。
【0211】
図38に示されるように、反射点3800を撮像している超音波システムは、反射点3800で最も高いが、(xおよびy軸に)距離が増加するにつれて弱くなる反射超音波信号を受信することができる。言い換えれば、点光源は際限なくシャープな信号を生成することはできていない。この反射信号の減退は、点像分布関数(PSF)と言われる。
図38に示されるように、この信号は、領域3802の内側ではその最大値の半分を維持し、領域3804中では測定可能である。点3800から領域3802の縁までの距離の2倍を、半値全幅(FWHM)または最大振幅の半値でのPSF幅と称することができる。言い換えれば、領域3802の直径を反射信号のFWHMとしてよい。
【0212】
図39Aおよび39Bに示されるように、PSF(またはFWHM)の幅が、2つの小さな被写体3900および3902をどれほど相互に近接して(距離3904として示されている)位置付けし、なお分けて解像できるかを決める。
図39Bにおいて、被写体3900と3902とは分離解像を可能にするため十分に遠く離れているが、それでもマージして様々な撮像アーチファクトを生成し始めている。
【0213】
超音波指紋システムの嚢胞解像度は、均等に分散された媒体中の無響の、または無反射の領域を検出する能力の指標である。具体的に、嚢胞解像度は、取り囲んでいる均等に背後分散している媒体に対する、所与のサイズの無響の嚢胞の中心での相対強度(RI:relative intensity)を与える。嚢胞の中心での強度が低いほど、すなわち、所与の嚢胞サイズに対する画像中でそれがより暗いほど、システムのコントラストは良好である。
【0214】
図40は、無響のまたは無反射の領域4004を含む、均等に背後分散している媒体4002を撮像している超音波デバイス4000を表す。
【0215】
無響の嚢胞の相対強度は(RI)は、次の式で与えられる、全体エネルギーに対するクラッタエネルギーの比率によって見積もることができる。
【0216】
【0217】
上式の中で、Einは、点像分布関数のピークを中心とする半径Rの円領域の内側の信号エネルギーであり、Etotはその点像分布関数中の合計エネルギーである。
【0218】
取り囲む媒体の強度が1の値を有するように正規化した場合、嚢胞が0.5のRIを有すればその嚢胞は検出可能である。0.5のRIをもたらす無響領域の半径を「R0.5」と称し、等価な直径を「D0.5」と称することができる。解像可能な最小の無響領域の半径および直径は、PSF中のサイドローブの如何により得る。
【0219】
図41は、強く反射する領域に囲まれた、信号のない、またほとんどない領域の反射超音波信号のグラフを示す。指紋スキャナにとって、強い信号を持つ領域によって囲まれた、信号のない、またほとんどない領域(例えば、高反射性領域に囲まれた無反射性領域)を解像することは重要であり得る。これは、指紋スキャナのコントラスト幅と称してよい。このコントラスト幅は、反射の領域の中心で、強く反射する領域の振幅の半分(例えば0.5)以下の信号振幅を有する弱い反射の領域を介在させた、2つの強く反射する領域の間の最小距離とすることができる。このコントラスト幅は、前述したD0.5に等しくてよい。
【0220】
所与の撮像指紋スキャナの解像度が、最低の(例えば最悪の)FWHM解像度およびコントラスト幅解像度のこともあり得る。
【0221】
前述のいくつかの実施形態は、超音波ベースの指紋センサに関連する例を提示している。但し、これら諸実施形態の原理および利点は、かかる原理および利点から益を得ることができるであろう任意の他の適切なデバイス、システム、装置、および/または方法のために用いることができる。指紋のコンテキストで説明してきたが、本明細書に記載の1つ以上の特徴は、同様に、人間または動物の任意の他の適切な部分を検出するのに用いることが可能である。
【0222】
本明細書に記載の様々な特徴およびプロセスは、相互に独立的に実装されてよく、または様々な仕方で組み合されてもよい。全ての可能な組み合せおよびサブ組合せは、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、一部の実装においては、特定の方法またはプロセスブロックを省くことが可能である。また、本明細書で開示された方法およびプロセスは、いかなる特定のシーケンスにも限定されず、それらに関するブロックまたは状態は、任意の他の適切なシーケンスで行うことができる。例えば、記載されたブロックまたは状態は、具体的に開示された順序以外の順序で行うことが可能であり、あるいは、複数のブロックまたは状態を単一のブロックまたは状態に組み合せることができる。例示のブロックまたは状態は、適切な場合、シリアルに、パラレルに、または何らかの他の仕方で行ってもよい。適切な場合、開示された例示の実施形態に、ブロックまたは状態を追加し、またはそれらから削除することも可能である。本明細書に記載の例示のシステムおよびコンポーネントは、記載と異なるように構成されてもよい。例えば、開示された例示の実施形態に比べて、要素を追加し、除去し、または再編成してもよい。様々な実施形態において、異なった型の電子デバイスを作製するため異なった技法を適用することも可能である。
【0223】
本開示の諸態様は、様々なデバイスに実装することができる。例えば、本明細書で説明した音響生体識別検知デバイスは、スマートフォンなどの携帯電話、タブレットコンピュータ、運転ハンドル、銃、ドア、ドアの取っ手、壁、エレベータ、または、本明細書で開示の原理および利点から益を受けることができるような任意の他の適切な用途に実装することが可能である。
【0224】
特定の実施形態について説明してきたが、これらの実施形態は単なる例として提示されたもので、本開示の範囲を限定することは意図されていない。実際上、本明細書で説明した新規なデバイス、システム、装置、方法、およびシステムは他の多様な形態で具現化することが可能であり、さらに、本開示の趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載された方法およびシステムの形態に、様々な省略、代替、および変更を加えることができる。例えば、諸ブロックは或る所与の配置で提示されているが、別の実施形態は、異なるコンポーネントおよび/または電気回路トポロジによって類似の機能を実行することもでき、一部のブロックは、削除、移動、追加、細分化、組み合せ、および/または修改することが可能である。これらブロックの各々は、様々な異なった仕方で実装されてよい。前述した様々な実施形態の要素および作用の任意の適切な組み合せによってさらなる実施形態を提供することも可能である。
【符号の説明】
【0225】
100 音響指紋スキャニングデバイス
105 指
110 稜部
115 谷部
120 媒体
125 境界面
130 超音波トランスデューサ
135 超音波
140 音波
150 反射
155 反射
200 デバイス
210 圧電薄膜
220 ガラスプレート
230 x方向の格子
240 y方向の格子
250 x方向の合焦ライン
260 y方向の合焦ライン
270 測定スポット
300 二次元N×Nの行-列アドレス指定アレイ
310 行電極の水平アレイ
320 列電極の縦のアレイ
330 接続部
340 トランスデューサ素子
400 超音波トランスデューサアレイ
410 ガラス基板
420 圧電薄膜
430 底部電極
440 圧電薄膜
450 トランスデューサ素子
460 v形状エッチング
1000 音響生体識別タッチスキャナ
1005 送信スイッチング回路網
1010 電圧パルスジェネレータ
1015 送信ビーム形成回路
1020 送信制御回路
1025 受信スイッチング回路網
1030 低ノイズ増幅器
1035 アナログフィルタ
1040 時間利得補償回路
1045 アナログ-デジタルコンバータ
1050 受信ビーム形成回路
1055 サンプリングおよびエンベロープ検出回路
1060 受信制御回路
1065 処理装置
1070 メモリ
1100 多重化単一チャネル行-列アドレス指定アレイ
1105 アレイ
1110 行
1115 行
1120 列
1125 列
1130 活性の行
1135 活性の行
1140 活性の列
1145 活性の列
1150 交点
1155 交点
1160 スイッチング回路網
1165 スイッチング回路網
1170 スイッチング回路網
1175 スイッチング回路網
1180 トランスデューサ素子
1185 トランスデューサ素子
1190 コンタクト
1195 コンタクト
1300 ピーク検出電気回路
3500 第一トランスデューサアレイ
3502 圧電材料
3504 金属膜ライン
3506 金属コンタクト
3508 接地層
3510 第二トランスデューサアレイ
3512 圧電材料
3514 金属膜ライン
3516 金属コンタクト
3518 接地層
3520 二重層行-列アドレス指定トランスデューサアレイ
3522 接地プレーン
3600 指
3601 カード本体
3602 スマートカード
3604 超音波指紋スキャナ
3606 超音波
3608 超音波指紋スキャナ
3610 電気回路
3612 コンタクト
3614 電路
3616 外部のデバイス
3701 カード本体
3702 スマートカード
4000 超音波デバイス
4002 媒体
4004 無反射の領域
【手続補正書】
【提出日】2022-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波生体識別検知を備えたスマートカードであって、前記スマートカードは、
カード本体と、
前記カード本体と統合された音響生体識別検知デバイスと、
を備え、
前記音響生体識別検知デバイスは、
超音波信号を送信するように構成された超音波トランスデューサの第1アレイと、
前記超音波信号の反射を受信するように構成された超音波トランスデューサの第2アレイであって、前記超音波トランスデューサの第2アレイは、前記超音波トランスデューサの第1アレイに積み重ねられる、超音波トランスデューサの第2アレイと、
前記超音波トランスデューサの第1アレイと前記超音波トランスデューサの第2アレイとの間に配置された金属導電層であって、前記金属導電層は、前記超音波トランスデューサの第1アレイと前記超音波トランスデューサの第2アレイとの間に遮蔽を設けるように構成される、金属導電層と、
を備える、
スマートカード。
【請求項2】
請求項1に記載のスマートカードであって、
アンテナと、
前記アンテナを介して外部のデバイスに前記超音波信号の反射に関連するデータを送信するように構成されたワイヤレス通信電気回路と、
をさらに備える、スマートカード。
【請求項3】
請求項1に記載のスマートカードであって、
前記超音波トランスデューサの第1アレイは、第1圧電層と、前記金属導電層とは反対である前記第1圧電層の側の第1メタルラインと、を備え、
前記超音波トランスデューサの第2アレイは、第2圧電層と、前記金属導電層とは反対である前記第2圧電層の側の第2メタルラインと、を備える、
スマートカード。
【請求項4】
請求項1に記載のスマートカードであって、前記超音波トランスデューサの第1アレイは、ポリマー圧電層を備える、スマートカード。
【請求項5】
請求項1に記載のスマートカードであって、前記超音波信号は、約12.5メガヘルツ~約100メガヘルツの範囲内にある周波数を有する、スマートカード。
【請求項6】
請求項1に記載のスマートカードであって、前記スマートカードの真正証明をするように構成されたセキュリティチップをさらに備え、前記スマートカードは、(a)生体識別画像と、(b)前記セキュリティチップと、に関連する情報を出力するように構成される、スマートカード。
【請求項7】
請求項1に記載のスマートカードであって、前記カード本体は、丸コーナーを有し、前記カード本体は、約85.60ミリメートル×53.98ミリメートルであり、前記カード本体は、約0.76ミリメートルの厚さを有する、スマートカード。
【請求項8】
請求項1に記載のスマートカードであって、前記音響生体識別検知デバイスは、前記カード本体の表面と同一平面である、スマートカード。
【請求項9】
請求項1に記載のスマートカードであって、前記音響生体識別検知デバイスは、前記カード本体中に少なくとも部分的に埋め込まれる、スマートカード。
【請求項10】
請求項1に記載のスマートカードであって、前記カード本体は、主として、ナイロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル(PVC)、およびマイラー(登録商標)、およびその組み合わせ、から成る群から選択された少なくとも1つの材料で形成される、スマートカード。
【請求項11】
音響検知デバイスであって、
超音波信号を送信するように構成された超音波トランスデューサの第1アレイと、
前記超音波信号の反射を受信するように構成された超音波トランスデューサの第2アレイであって、前記超音波トランスデューサの第2アレイは、前記超音波トランスデューサの第1アレイに積み重ねられる、超音波トランスデューサの第2アレイと、
前記超音波トランスデューサの第1アレイと前記超音波トランスデューサの第2アレイとの間に配置された金属導電層であって、前記金属導電層は、前記超音波トランスデューサの第1アレイと前記超音波トランスデューサの第2アレイとの間に遮蔽を設けるように構成される、金属導電層と、
を備える、音響検知デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の音響検知デバイスであって、
アンテナと、
前記アンテナを介して外部のデバイスに前記超音波信号の反射に関連するデータを送信するように構成されたワイヤレス通信電気回路と、
をさらに備える、音響検知デバイス。
【請求項13】
請求項11に記載の音響検知デバイスであって、
前記超音波トランスデューサの第1アレイは、第1圧電層と、前記金属導電層とは反対である前記第1圧電層の側の第1メタルラインと、を備え、
前記超音波トランスデューサの第2アレイは、第2圧電層と、前記金属導電層とは反対である前記第2圧電層の側の第2メタルラインと、を備える、
音響検知デバイス。
【請求項14】
請求項11に記載の音響検知デバイスであって、前記超音波トランスデューサの第1アレイは、ポリマー圧電層を備える、音響検知デバイス。
【請求項15】
請求項11に記載の音響検知デバイスであって、前記超音波トランスデューサの第1アレイは、ポリ二フッ化ビニル圧電層を備える、音響検知デバイス。
【請求項16】
請求項11に記載の音響検知デバイスであって、前記超音波信号は、約12.5メガヘルツ~約100メガヘルツの範囲内にある周波数を有する、音響検知デバイス。
【請求項17】
請求項11に記載の音響検知デバイスであって、前記音響検知デバイスは、送信合焦または受信合焦のうちの少なくとも1つを行うように構成される、音響検知デバイス。
【請求項18】
スマートカードを使用する認証の方法であって、前記方法は、
前記スマートカードの超音波トランスデューサの第1アレイで、対象体に超音波信号を送信するステップと、
前記スマートカードの超音波トランスデューサの第2アレイで、前記超音波信号の反射を受信するステップであって、前記超音波トランスデューサの第1アレイと前記超音波トランスデューサの第2アレイとは、互いに積み重ねられ、前記スマートカードのカード本体と統合された音響生体識別検知デバイスに含まれ、金属導電層は、前記超音波トランスデューサの第1アレイと前記超音波トランスデューサの第2アレイとの間に遮蔽を設ける、受信するステップと、
前記超音波信号の反射に基づいて画像データを生成するステップと、
前記画像データに基づいて前記対象体を真正証明するステップと、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記スマートカードのアンテナおよびワイヤレス通信電気回路を使用して外部のデバイスに前記超音波信号の反射に関連するデータを送信することをさらに含む、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記超音波トランスデューサの第1アレイは、ポリマー圧電層を備える、方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法であって、前記金属導電層は接地される、方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法であって、前記超音波信号は、約12.5メガヘルツ~約100メガヘルツの範囲内にある周波数を有する、方法。
【請求項23】
請求項18に記載の方法であって、前記超音波信号は、約12.5メガヘルツ~約50メガヘルツの範囲内にある周波数を有する、方法。
【外国語明細書】