(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018487
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】スライサー及びスライス方法
(51)【国際特許分類】
B26D 1/46 20060101AFI20220120BHJP
B24B 3/36 20060101ALI20220120BHJP
B26D 7/12 20060101ALI20220120BHJP
B26D 5/34 20060101ALI20220120BHJP
B26D 7/26 20060101ALI20220120BHJP
B26D 3/28 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B26D1/46 502E
B24B3/36 C
B26D1/46 502J
B26D7/12
B26D5/34 B
B26D7/26
B26D3/28 610F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121616
(22)【出願日】2020-07-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】596184982
【氏名又は名称】株式会社 ニッピ機械
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】青田 崇
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 康弘
【テーマコード(参考)】
3C021
3C024
3C158
【Fターム(参考)】
3C021JA09
3C024GG00
3C158AA03
3C158AA18
3C158BB02
3C158CA04
3C158CB01
3C158DB01
3C158DB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】継続的にスライスしても、高い厚み精度で被加工物をスライスすることが可能なスライサー及びスライス方法を提供する。
【解決手段】回転制御部は、一対のプーリー11a、11bで、バンドナイフ10を刃先10aの方向に向かって送り出して、上下流側の規制ローラー13a、13bに当接させながら一対の案内刃10c1の間で走行させる。設定制御部は、上下流側の位置検出センサー14a、14bに基づいて検出されたバンドナイフの上下流側の刃先位置を上下流側の基準刃先位置として設定する。測定制御部は、上下流側の位置検出センサーに基づいて検出されたバンドナイフの上下流側の刃先位置を上下流側の測定刃先位置として測定する。調整制御部は、一対のプーリーの回転軸の傾斜と上下流側の規制ローラーの位置とを調整することで上下流側の現状刃先位置を上下流側の基準刃先位置に戻す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレス状のバンドナイフを巻き付けられ、回転軸のそれぞれを、当該バンドナイフの刃先の方向に向かって内向きに傾斜するように配置された一対のプーリーと、
前記一対のプーリーの間を走行する一方のバンドナイフを挟み込んだ一対の案内刃と、
前記一対の案内刃の間を走行する走行バンドナイフの刃先に対向し、回転軸を前記走行バンドナイフの刃先線のスライス方向と平行に配置された送りローラーと、
前記走行バンドナイフの上下流側に設けられ、前記走行バンドナイフの両刃の刃先を構成する両刃面のみに当接しながら回転する上下流側の規制ローラーと、
前記走行バンドナイフの上下流側に設けられ、前記走行バンドナイフの刃先の位置を検出する上下流側の位置検出センサーと、
を備えるスライサーであって、
前記一対のプーリーのいずれかを回転させることで、前記走行バンドナイフを前記刃先の方向に向かって送り出して、前記上下流側の規制ローラーに当接させながら、前記一対の案内刃の間で走行させる回転制御部と、
前記上下流側の位置検出センサーに基づいて検出された前記走行バンドナイフの上下流側の刃先位置を上下流側の基準刃先位置として設定する設定制御部と、
被加工物が押し付けられた前記送りローラーを回転させることで、当該被加工物を、前記走行バンドナイフの刃先に向かって送り出して、シート状にスライスする送出制御部と、
前記スライス前後において、前記上下流側の位置検出センサーに基づいて検出された前記走行バンドナイフの上下流側の刃先位置を上下流側の測定刃先位置として測定する測定制御部と、
前記一対のプーリーの回転軸の傾斜と、前記上下流側の規制ローラーの位置とを調整することで、前記上下流側の現状刃先位置を前記上下流側の基準刃先位置に戻す調整制御部と、
を備えるスライサー。
【請求項2】
前記調整制御部は、
前記現状刃先位置が前記基準刃先位置に対して前記刃先の方向に向かって離れている場合、対応する前記プーリーの回転軸を前記バンドナイフの刃先の方向に向かって外向きに傾斜させたり、対応する前記規制ローラーの位置を前記バンドナイフの刃元と同じ方向に移動させたりし、
前記現状刃先位置が前記基準刃先位置に対して前記刃先の方向と逆方向に向かって離れている場合、対応する前記プーリーの回転軸を前記バンドナイフの刃先の方向に向かって内向きに傾斜させたり、対応する前記規制ローラーの位置を前記バンドナイフの刃先と同じ方向に移動させたりする、
請求項1に記載のスライサー。
【請求項3】
前記一対のプーリーの間に掛けられた他方のバンドナイフに対向する位置で、当該他方のバンドナイフの両刃面にそれぞれ当接可能に設けられた一対の研磨砥石と、
前記他方のバンドナイフに対して前記一対の研磨砥石と対向する位置に設けられ、前記他方のバンドナイフの刃元に当接する研磨側押出部材と、
前記他方のバンドナイフの上下流側に設けられ、当該他方のバンドナイフの両刃面のみに当接しながら回転する一対の研磨側規制ローラーと、
を更に備える
請求項1又は2に記載のスライサー。
【請求項4】
エンドレス状のバンドナイフを巻き付けられ、回転軸のそれぞれを、当該バンドナイフの刃先の方向に向かって内向きに傾斜するように配置された一対のプーリーと、
前記一対のプーリーの間を走行する一方のバンドナイフを挟み込んだ一対の案内刃と、
前記一対の案内刃の間を走行する走行バンドナイフの刃先に対向し、回転軸を前記走行バンドナイフの刃先線のスライス方向と平行に配置された送りローラーと、
前記走行バンドナイフの上下流側に設けられ、前記走行バンドナイフの両刃の刃先を構成する両刃面のみに当接しながら回転する上下流側の規制ローラーと、
前記走行バンドナイフの上下流側に設けられ、前記走行バンドナイフの刃先の位置を検出する上下流側の位置検出センサーと、
を備えるスライサーのスライス方法であって、
前記一対のプーリーのいずれかを回転させることで、前記走行バンドナイフを前記刃先の方向に向かって送り出して、前記上下流側の規制ローラーに当接させながら、前記一対の案内刃の間で走行させる回転制御ステップと、
前記上下流側の位置検出センサーに基づいて検出された前記走行バンドナイフの上下流側の刃先位置を上下流側の基準刃先位置として設定する設定制御ステップと、
被加工物が押し付けられた前記送りローラーを回転させることで、当該被加工物を、前記走行バンドナイフの刃先に向かって送り出して、シート状にスライスする送出制御ステップと、
前記スライス前後において、前記上下流側の位置検出センサーに基づいて検出された前記走行バンドナイフの上下流側の刃先位置を上下流側の測定刃先位置として測定する測定制御ステップと、
前記一対のプーリーの回転軸の傾斜と、前記上下流側の規制ローラーの位置とを調整することで、前記上下流側の現状刃先位置を前記上下流側の基準刃先位置に戻す調整制御ステップと、
を備えるスライス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライサー及びスライス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バンドナイフ(又は、エンドレスブレード、環状刃ともいう。)を回転させて、被加工品をシート状にスライスするスライサーの技術が存在する。
【0003】
例えば、米国特許第4441396号明細書(特許文献1)には、皮や繊維製品などをスライスするためのスライサーが開示されている。このスライサーでは、エンドレスブレードの刃先に向かって付勢されている2つの砥石を備える研ぎ装置と、エンドレスブレードの刃先の位置を感知するフォトセルと、フォトセルの信号に基づいて、エンドレスブレードの刃元を刃先の方向に向かって押すキーとを備える。又、エンドレスブレードを巻き付けた一対のプーリーの回転軸の傾きを調整することで、エンドレスブレードを刃先の方向に向かって出したり引いたりする。これにより、エンドレスブレードの刃先の位置を高精度に不変にすることが出来るとしている。
【0004】
又、特開2009-154250号公報(特許文献2)には、一方の端面に刃を形成した帯状で金属からなるエンドレス状のバンドナイフと、該バンドナイフを緊張状態に巻き付けた一対のプーリーとを用いたバンドナイフ式スライサーの刃位置調整方法が開示されている。この刃位置調整方法では、プーリーの少なくとも一方を駆動させてバンドナイフを走行させるとともに、被加工物を一対のニップロールにより挟持し、バンドナイフへ送り出しながらシート状にスライスするに際し、バンドナイフに液体を噴射し、バンドナイフの熱膨張の増減を調整することで、バンドナイフの刃先の位置を制御する。これにより、特に化学的機械的研磨法で使用するのに好適な、厚み精度及び平滑性に優れた研磨パッド等を提供することが出来るとしている。
【0005】
又、特開2018-20396号公報(特許文献3)には、少なくとも、回転する第一、第二プーリーと、第一、第二プーリーに掛けられ回転する、輪状で全周縁が刃である環状刃と、環状刃の環内側に位置し、被処理材が載置される第一ベルトコンベアとからなるスライサーが開示されている。このスライサーでは、第一ベルトコンベアのベルトの上面と環状刃との間隙が被処理材のスライス厚であって、被処理材とともに第一ベルトコンベアのベルトが連動して前後動し、被処理材を環状刃に当てて、被処理材をスライスする。これにより、環状刃による引き切りによるスライスであるので、スライス面の仕上がりが滑らかでキレイとなり、又、軟状物のスライス、例えば、皮付き蒸しサツマイモのスライスも可能になるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4441396号明細書
【特許文献2】特開2009-154250号公報
【特許文献3】特開2018-20396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被加工物(又は、被処理材)を高精度の厚みでスライスするためには、被加工物をバンドナイフに送り出す送出ローラーに対して、当該バンドナイフの刃先の位置を精度高く一定に保つ必要がある。被加工物が軟質素材であり、且つ、高精度の厚みでスライスする必要がある場合は、尚更である。
【0008】
特許文献1に記載の技術では、フォトセルによってエンドレスブレードの刃先を感知して、キーによるエンドレスブレードの刃元の押出によって、エンドレスブレードの刃先の位置を不変に保つ技術であるが、この技術では、エンドレスブレードの刃元にキーを当接し、エンドレスブレードの刃元を基準にして、エンドレスブレードの刃元の位置を調整することで、エンドレスブレードの刃先の位置を保つ。ここで、エンドレスブレードの刃先と刃元は、エンドレスブレードの短手方向の寸法だけ離れているため、エンドレスブレードの刃元の位置を調整したとしても、エンドレスブレードの短手方向の距離だけ、刃先の前後方向の刃振れ、刃先の上下方向の刃振れに誤差が生じる。従って、エンドレスブレードの刃先の位置を精度高く調整することが出来ないという課題がある。
【0009】
又、特許文献2には、バンドナイフに液体を噴射して、バンドナイフの熱膨張の増減により、バンドナイフの刃先の位置を制御すると記載されている。この技術では、バンドナイフへの液体の噴射により、スライス時のバンドナイフと被加工物との摩擦係数を低下させることで、スムーズなスライス面を得ると考えられ、バンドナイフの刃先の位置を精度高く制御する技術と言い難い。
【0010】
又、特許文献3に記載の技術では、環状刃に対して第一ベルトコンベアの被処理材を前後動によりスライスする技術であるが、この技術では、被処理材を連続的にスライスすることが出来ないため、被処理材をシート状にスライスし難いという課題がある。
【0011】
スライサーでは、高い厚み精度で被加工物をスライスするためには、バンドナイフの刃先の位置を精度高く保つ必要がある。特許文献1に記載の技術では、バンドナイフの刃先の位置を検出しているものの、バンドナイフの刃元の位置を調整しているため、最も重要なバンドナイフの刃先の位置を制御していないという課題がある。又、特許文献2-3に記載の技術では、バンドナイフの刃先の位置を制御することは出来ない。従って、従来技術では、未だにバンドナイフの刃先の位置を精度高く制御することが出来ていないという課題がある。
【0012】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、継続的にスライスしても、高い厚み精度で被加工物をスライスすることが可能なスライサー及びスライス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るスライサーは、一対のプーリーと、一対の案内刃と、送りローラーと、上下流側の規制ローラーと、上下流側の位置検出センサーと、を備える。一対のプーリーは、エンドレス状のバンドナイフを巻き付けられ、回転軸のそれぞれを、当該バンドナイフの刃先の方向に向かって内向きに傾斜するように配置されている。一対の案内刃は、前記一対のプーリーの間を走行する一方のバンドナイフを挟み込んでいる。送りローラーは、前記一対の案内刃の間を走行する走行バンドナイフの刃先に対向し、回転軸を前記走行バンドナイフの刃先線のスライス方向と平行に配置されている。上下流側の規制ローラーは、前記走行バンドナイフの上下流側に設けられ、前記走行バンドナイフの両刃の刃先を構成する両刃面のみに当接しながら回転する。上下流側の位置検出センサーは、前記走行バンドナイフの上下流側に設けられ、前記走行バンドナイフの刃先の位置を検出する。
【0014】
本発明に係るスライサーは、回転制御部と、設定制御部と、送出制御部と、測定制御部と、調整制御部と、を備える。回転制御部は、前記一対のプーリーのいずれかを回転させることで、前記走行バンドナイフを前記刃先の方向に向かって送り出して、前記上下流側の規制ローラーに当接させながら、前記一対の案内刃の間で走行させる。設定制御部は、前記上下流側の位置検出センサーに基づいて検出された前記走行バンドナイフの上下流側の刃先位置を上下流側の基準刃先位置として設定する。送出制御部は、被加工物が押し付けられた前記送りローラーを回転させることで、当該被加工物を、前記走行バンドナイフの刃先に向かって送り出して、シート状にスライスする。測定制御部は、前記スライス前後において、前記上下流側の位置検出センサーに基づいて検出された前記走行バンドナイフの上下流側の刃先位置を上下流側の測定刃先位置として測定する。調整制御部は、前記一対のプーリーの回転軸の傾斜と、前記上下流側の規制ローラーの位置とを調整することで、前記上下流側の現状刃先位置を前記上下流側の基準刃先位置に戻す。
【0015】
本発明に係るスライサーのスライス方法は、回転制御ステップと、設定制御ステップと、送出制御ステップと、測定制御ステップと、調整制御ステップと、を備える。スライス方法の各ステップは、スライサーの各制御部に対応する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、継続的にスライスしても、高い厚み精度で被加工物をスライスすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るスライサーの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るスライサーの一対のプーリーの回転軸の配置形態を示す平面図(
図2A)と、一対の案内刃の配置形態を示す右側面図(
図2B)とである。
【
図3】本発明の実施形態に係るスライサーの上流側の規制ローラーの右側面図と拡大図(
図3A)と、上流側の位置検出センサーの斜視図と右側面図(
図3B)とである。
【
図4】本発明の実施形態に係るスライサーの機能ブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るスライス方法の実行手順を示すためのフローチャートである。
【
図6】上下流側の位置検出センサーで上下流側の刃先位置を検出した場合の一例を示す上下流側の右側面図(
図6A)と、送りローラーにより送出された被加工物をバンドナイフの刃先でスライスする場合の一例を示す概念図(
図6B)とである。
【
図7】送りローラーに対するバンドナイフの刃先の位置の一例を示す概念図(
図7A)と、上下流側の位置検出センサーで上下流側の基準刃先位置を検出する場合の右側面図(
図7B)とである。
【
図8】上流側の基準刃先位置と上流側の現状刃先位置との関係の一例を示す概念図である。
【
図9】上流側のプーリーの回転軸の内向きの傾斜と上流側のバンドナイフの刃先の位置の移動との関係の一例を示す概念図(
図9A)と、上流側のプーリーの回転軸の外向きの傾斜と上流側のバンドナイフの刃先の位置の移動との関係の一例を示す概念図(
図9B)とである。
【
図10】上流側の位置検出センサーと上流側の規制ローラーの一例を示す斜視図(
図10A)と、上流側の規制ローラーの一例を示す右側面図と平面図(
図10B)とである。
【
図11】スライス側押出部材を含むスライサーの一例を示す平面図(
図11A)と、スライス側押出部材の一例を示す右側面図と平面図(
図11B)とである。
【
図13】実施例と比較例のスライサーの一例を示す平面図である。
【
図14】被加工物と加工物の写真と厚み測定位置を示す加工物の平面図と、厚み精度と繰り返し厚み精度の結果とである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0019】
本発明の実施形態に係るスライサー1は、
図1に示すように、エンドレス状のバンドナイフ10と、一対のプーリー11a、11bと、送りユニット12と、を基本的に備えている。
【0020】
バンドナイフ10は、バンドナイフ10の長手方向の両端が接続されることで、エンドレス状(環状)に構成され、バンドナイフ10の短手方向の一端が両刃の刃先10aとして形成され、他端が刃元10bとして形成される。バンドナイフ10の刃先10aは、両刃の先端であり、断面視で二等辺三角形状である。バンドナイフ10の刃元10bは、断面視でコの字状である。
【0021】
一対のプーリー11a、11bには、バンドナイフ10が巻き付けられており、一対のプーリー11a、11bの間に掛けられた一方(上方)のバンドナイフ10と、他方(下方)のバンドナイフ10は、一対のプーリー11により緊張状態を保っている。一対のプーリー11a、11bは、スライサー1の枠体(図示せず)の両端側にそれぞれ設けられ、一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1は、水平方向と略平行に回転可能に設置される。そして、一対のプーリー11a、11bのいずれか又は両方が回転することで、バンドナイフ10が回転される。
【0022】
ここで、
図2Aに示すように、一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1のそれぞれは、当該バンドナイフ10の刃先10aの方向に向かって内向きに傾斜するように配置されている。言い換えると、一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1は、平面視で、バンドナイフ10の刃元10bに向かってハの字状に配置されている。これにより、バンドナイフ10が回転すると、バンドナイフ10が刃先10aの方向に向かって徐々に送り出しながら、走行する。
【0023】
一対のプーリー11a、11bの間を走行する一方(上方)のバンドナイフ10の上下面は、
図2Bに示すように、一対の案内刃10c1、10c2により挟み込まれて押さえられている。一対の案内刃10c1、10c2により、バンドナイフ10の走行が案内され、バンドナイフ10の上下方向の刃ブレを防止する。一対の案内刃10c1、10c2は、更に、重量を有する一対の案内刃本体部10d1、10d2により挟み込まれて押さえられている。これにより、一対の案内刃10c1、10c2の取替交換を可能としている。
【0024】
送りユニット12は、一対の案内刃10c1、10c2の間を走行するバンドナイフ10(走行バンドナイフ)の刃先10aに対向する位置に設けられる。送りユニット12には、入ってきた被加工物Wを、走行バンドナイフ10の刃先10aに向かって送り出す一対の送りローラー12a、12bが設けられる。下方の送りローラー12aは、走行バンドナイフ10の刃先10aよりも下方に設けられ、上方の送りローラー12bは、走行バンドナイフ10の刃先10aよりも上方に設けられる。尚、上方の送りローラー12bは、押えローラーともいうことがある。一対の送りローラー12a、12bの回転軸12a1、12b1のそれぞれは、走行バンドナイフ10の刃先線のスライス方向(バンドナイフ10の長手方向)と平行に配置される。送りユニット12に被加工物Wが入ると、一対の送りローラー12a、12bの回転により、押し付けられ、バンドナイフ10の刃先10aに当たり、シート状にスライスされる。スライスされた被加工物W1、W2は、バンドナイフ10を境界にして上下に分断される。
【0025】
又、スライサー1は、上下流側の規制ローラー13a、13bと、上下流側の位置検出センサー14a、14bと、を備えている。
【0026】
上下流側の規制ローラー13a、13bは、走行バンドナイフ10の上下流側に設けられ、この走行バンドナイフ10の両刃の刃先10aを構成する両刃面のみに当接しながら回転する。ここで、上流側とは、バンドナイフ10の走行方向と逆方向側を意味し、下流側とは、バンドナイフ10の走行方向と順方向側を意味する。
【0027】
上下流側の規制ローラー13a、13bの回転軸13a1、13b1は、バンドナイフ10の走行方向と直角方向と略平行に設けられ、上下流側のアーム13a2、13b2によりそれぞれ回転可能に支持される。上下流側のアーム13a2、13b2は、スライサー1の枠体にバンドナイフ10の短手方向に移動可能に設けられる。
【0028】
上流側の規制ローラー13aは、例えば、
図3Aに示すように、上下の両端から中央に向かって傾斜面13a3を有するくの字のローラーで構成される。規制ローラー13aの傾斜面13a3が、バンドナイフ10の両刃面10dのみに当接することで、上流側の規制ローラー13aは、バンドナイフ10の刃先10aに触れることなく、バンドナイフ10を規制することが出来る。又、上流側の規制ローラー13aの傾斜面13a3がバンドナイフ10の両刃面10dに当接することで、バンドナイフ10の刃先10aの方向(バンドナイフ10の短手方向)の刃ブレを防止するとともに、バンドナイフ10の上下方向の刃ブレを防止する。尚、下流側の規制ローラー13bも同様である。
【0029】
上下流側の位置検出センサー14a、14bは、走行バンドナイフ10の上下流側に設けられ、走行バンドナイフ10の刃先10aの位置を検出する。上下流側の位置検出センサー14a、14bの構成に特に限定は無いが、例えば、
図3Bに示すように、上流側の位置検出センサー14aは、バンドナイフ10の刃先10aの周辺を挟んで互いに対向に配置された発光部14a1と受光部14a2とを有する。発光部14a1は、バンドナイフ10の刃先10aの周辺に対して帯状の光を発行し、受光部14a2は、その光を受光するが、バンドナイフ10が刃先10aまで光を遮断することで、受光部14a2は、バンドナイフ10の刃先10aまでの光を受光する。受光部14a2は、バンドナイフ10の本体から刃先10aまでの領域では、光を受光しないため、例えば、Low信号を出力し、バンドナイフ10の刃先10aから外部までの領域では、光を受光するため、例えば、High信号を出力する。これにより、上流側の位置検出センサー14aは、バンドナイフ10の刃元10bから刃先10aに向かって、Low信号からHigh信号に切り替わる受光部14a2の位置をバンドナイフ10の刃先10の位置として検出することが出来る。尚、下流側の位置検出センサー14aも同様である。上下流側の位置検出センサー14a、14bは、例えば、赤外線センサー等を採用することが出来るが、カメラなど、非接触でバンドナイフ10の刃先10aの位置を検出することが出来るものであれば、特に限定は無い。
【0030】
又、スライサー1は、スライス側押出部材15を更に備える。スライス側押出部材15は、一対の案内刃10c1、10c2の間の背面側で、走行バンドナイフ10の刃元10bに面状に当接し、当該バンドナイフ10の上流側の位置と下流側の位置とのそれぞれで当該バンドナイフ10の短手方向に押出可能に設けられている。
【0031】
スライス側押出部材15の構成に特に限定は無く、例えば、長方形状の板材(プレート)で構成され、スライス側押出部材15の短手方向の一端は、走行するバンドナイフ10の刃元10bの直線と平行になるように設置され、バンドナイフ10の刃元10bと面状に当接される。走行バンドナイフ10の刃先10aの両刃面10dを一対の規制ローラー13a、13bで規制し、当該バンドナイフ10の刃元10bをスライス側押出部材15で規制することで、バンドナイフ10の刃先10aを刃ブレさせることなく安定して走行させることが出来る。スライス側押出部材15は、バンドナイフ10の刃元10bを刃先10aの方向に向かって押し出すことも可能である。又、スライス側押出部材15は、板材以外にローラーであっても構わない。スライス側押出部材15のローラーをバンドナイフ10の刃元10bに当接することで、バンドナイフ10の刃元10bをスライス側押出部材15で規制することが出来る。
【0032】
又、スライサー1は、一対の研磨砥石16a、16bを備える。一対の研磨砥石16a、16bは、一対のプーリー11a、11bの間に掛けられた他方(下方)のバンドナイフ10に対向する位置で、当該他方のバンドナイフ10の両刃面10d(上下面)にそれぞれ当接可能に設けられている。一対の研磨砥石16a、16bの配置位置に特に限定は無いが、
図1では、一対のプーリー11a、11bの間に掛けられた他方のバンドナイフ10の中心付近の位置に設置されている。バンドナイフ10の刃先10aは両刃であるため、一対の研磨ローラー16a、16bのそれぞれが、バンドナイフ10の厚み方向で、バンドナイフ10の刃先10aに向かって略均等に当接することで、バンドナイフ10の刃先10aを均等に研磨する。尚、一対の研磨砥石16a、16bの近傍に集塵機を別途設けても構わない。
【0033】
又、スライサー1は、一対の研磨砥石16a、16bに対して、研磨側押出部材17と、一対の規制ローラー18a、18bとを備える。研磨側押出部材17は、他方のバンドナイフ10に対して一対の研磨砥石16a、16bと対向する位置に設けられ、他方のバンドナイフ10の刃元10bに当接する。研磨側押出部材17は、他方のバンドナイフ10の短手方向に押出可能に設けられている。これにより、一対の研磨砥石16a、16bの研磨により、他方のバンドナイフ10が刃元10bに向かって押し出されるのを防止する。又、一対の研磨砥石16a、16bの研磨により、バンドナイフ10の短手方向の長さが短くなってくるため、バンドナイフ10の短手方向の長さが短くなった分だけ、研磨側押出部材17でバンドナイフ10の刃先10aを押し出すことが出来る。又、一対の規制ローラー18a、18bは、上述の一方のバンドナイフ10の上下流側の規制ローラー13a、13bと同様の構成であり、他方のバンドナイフ10の上下流側に設けられ、この走行する他方のバンドナイフ10の両刃面10dのみに当接しながら回転する。他方のバンドナイフ10の刃元10bを研磨側押出部材17で規制し、当該バンドナイフ10の刃先の両刃面を一対の規制ローラー18a、18bで規制することで、同様に、バンドナイフ10を刃ブレさせることなく安定して走行させることが出来る。
【0034】
一対のプーリー11a、11b、送りユニット12、上下流側の規制ローラー13a、13b、上下流側の位置検出センサー14a、14b、スライス側押出部材15、一対の研磨砥石16a、16bは、それぞれ各制御部によって制御される。各制御部は、図示しないCPU、ROM、RAM等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM等に記憶されているプログラムを実行する。又、後述する各部についても、CPUがプログラムを実行することで当該各部を実現する。
【0035】
次に、
図4、
図5を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。
【0036】
先ず、ユーザーは、スライサー1の電源を投入すると、スライサー1が起動するため、次に、ユーザーは、スライサー1に付属の操作盤を介して第一の回転指示をスライサー1に入力する。すると、スライサー1の回転制御部201は、一対のプーリー11a、11bのいずれか又は両方を回転させることで、走行バンドナイフ10を刃先10aの方向に向かって送り出して、上下流側の規制ローラー13a、13bに当接させながら、一対の案内刃10c1、10c2の間で走行させる(
図5:S101)。
【0037】
ここで、回転制御部201の回転方法に特に限定は無いが、例えば、回転制御部201は、プーリー11a、11bのいずれか又は両方に連結された制御モーター(図示せず)を所定の回転速度で回転させることで、バンドナイフ10を走行させる。
【0038】
一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1のそれぞれは、当該バンドナイフ10の刃先10aの方向に向かって内向きに傾斜するように配置されていることから、バンドナイフ10の走行が開始すると、バンドナイフ10は、全体として刃先10aの方向に向かって送り出される。一方、バンドナイフ10の刃先10a側には、上下流側の規制ローラー13a、13bがあるため、走行するバンドナイフ10の両刃面10dに当接して、バンドナイフ10が刃先10a側に送り出されることを防止する。このように、バンドナイフ10は、常に、刃先10aの方向に向かって送り出されるように走行する。
【0039】
バンドナイフ10の回転が開始されると、次に、ユーザーは、操作盤を介して設定指示をスライサー1に入力する。すると、スライサー1の設定制御部202は、上下流側の位置検出センサー14a、14bに基づいて検出された走行バンドナイフ10の上下流側の刃先位置を上下流側の基準刃先位置として設定する(
図5:S102)。
【0040】
ここで、設定制御部202の設定方法に特に限定は無いが、例えば、設定制御部202は、
図6Aに示すように、上流側の位置検出センサー14aを起動して、上流側の走行バンドナイフ10の刃先位置du0を検出する。又、設定制御部202は、下流側の位置検出センサー14bを起動して、下流側の走行バンドナイフ10の刃先位置dd0を検出する。設定制御部202は、検出した上流側の刃先位置du0を上流側の基準刃先位置(例えば、上流側のゼロ点位置)として所定のメモリに記憶させることで設定する。又、設定制御部202は、検出した下流側の刃先位置dd0を下流側の基準刃先位置(例えば、下流側のゼロ点位置)として前記メモリに記憶させることで設定する。これにより、被加工物Wをスライスする前の基準となる上下流側の走行バンドナイフ10の刃先位置を基準として設定することが出来る。
【0041】
さて、上下流側の基準刃先位置du0、dd0の設定が完了すると、次に、ユーザーは、操作盤を介して第二の回転指示をスライサー1に入力する。すると、スライサー1の送出制御部203は、送りユニット12の一対の送りローラー12a、12bを回転させる(
図5:S103)。
【0042】
ここで、送出制御部203の回転方法に特に限定は無いが、例えば、
図6Bに示すように、送出制御部203は、一対の送りローラー12a、12bのいずれか又は両方に連結された制御モーター(図示せず)を所定の回転速度で回転させることで、一対の送りローラー12a、12bをバンドナイフ10の刃先10aに向かって回転させる。
【0043】
ここで、下方の送りローラー12aと上方の送りローラー12bとの間の間隔aは、被加工物Wの厚みtよりも小さく設定されている。又、送りユニット12の下方の送りローラー12aの近傍には、被加工物Wを下方の送りローラー12aと上方の送りローラー12bとの間に案内するテーブル12cが設けられている。
【0044】
そこで、ユーザーが、被加工物Wをテーブル12cの上に載置して、送りユニット12に投入すると、テーブル12cに案内された被加工物Wが、下方の送りローラー12aと上方の送りローラー12bとの間の間隔aに入り、下方の送りローラー12aと上方の送りローラー12bのそれぞれに押し付けられた状態となる。
【0045】
この状態で、送出制御部203が、一対の送りローラー12a、12bのいずれか又は両方を回転することで、被加工物Wを走行バンドナイフ10の刃先10aに押し当て、バンドナイフ10の走行・回転によって、被加工物Wをシート状にスライスする(
図5:S104)。
【0046】
被加工物Wがスライスされると、スライス後の上方と下方の加工物W1、W2が、一対の案内刃10c1、10c2の上下に分かれて分断される。
【0047】
ここで、被加工物W1の送出方向は、走行バンドナイフ10の走行方向に対して略直角方向である。そのため、走行バンドナイフ10の刃先10aには、被加工物Wのスライスの際に、バンドナイフ10の走行方向と逆方向の抵抗力がバンドナイフ10の刃先10aに掛かり、走行バンドナイフ10の刃先10aの位置が変動しやすくなる。
【0048】
一方、スライス後の上下方の加工物W1、W2のうち、目的の加工物の厚みは、スライス前に、一対の送りローラー12a、12bに対するバンドナイフ10の刃先10aの位置を適宜設定することで、所望の厚みにすることが出来る。しかしながら、継続的にスライスしても、シート状の加工物の厚みを高精度に一定にするためには、一対の送りローラー12a、12bに対するバンドナイフ10の上下流側の刃先10aの位置を一定に保つ必要がある。
【0049】
例えば、
図7Aに示すように、一対の送りローラー12a、12bの中心線Cと、走行バンドナイフ10の刃先10aとの間の間隔x0を、走行バンドナイフ10の上下流側のそれぞれで一定に保つ必要がある。
【0050】
そこで、ユーザーが、スライサー1を用いて被加工物をスライスする前後で、スライサー1のメンテナンスの際に、ユーザーが操作盤を介して調整指示をスライサー1に入力する。すると、スライサー1の測定制御部204は、上下流側の位置検出センサー14a、14bに基づいて検出された走行バンドナイフ10の上下流側の刃先位置を上下流側の現状刃先位置として測定する(
図5:S105)。
【0051】
ここで、測定制御部204の測定方法に特に限定は無いが、例えば、測定制御部204は、
図7Bに示すように、上流側の位置検出センサー14aを起動して、上流側の走行バンドナイフ10の刃先位置du1を検出して上流側の現状刃先位置として測定する。又、測定制御部204は、下流側の位置検出センサー14bを起動して、走行バンドナイフ10の下流側の刃先位置dd1を検出して下流側の現状刃先位置として測定する。
【0052】
ここで、例えば、上流側の走行バンドナイフ10では、被加工物Wのスライス開始時において、スライス後の加工物W1(W2)の厚みが所望の厚みになるように、
図8に示すように、一対の送りローラー12a、12bの中心線Cと、走行バンドナイフ10の刃先10aとの間の間隔を特定の間隔xu0に設定している。その際、上流側の位置検出センサー13aで検出された上流側の刃先位置が上流側の基準刃先位置du0(ゼロ点位置)に対応する。
【0053】
そして、被加工物Wが連続的にスライスされていく中で、上流側の走行バンドナイフ10の刃先10aの位置が変動し、一対の送りローラー12a、12bの中心線Cと、走行バンドナイフ10の刃先10aとの間の間隔xu1が変動したとする。この際に、上流側の位置検出センサー13aで検出された上流側の刃先位置を上流側の現状刃先位置du1として測定することで、現状の走行バンドナイフ10の上流側の刃先10aの位置が、最初の位置からどれだけ変動したかを判断することが出来る。尚、
図8では、上流側の走行バンドナイフ10の刃先10aが、刃先10aの方向に向かって出た場合であるが、逆に、刃先10aの方向と逆方向に向かって出る場合であっても、同様である。又、下流側の走行バンドナイフ10であっても同様である。
【0054】
さて、上下流側の現状刃先位置du1、dd1の測定が完了すると、スライサー1の調整制御部205は、一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1の傾斜と、上下流側の規制ローラー13a、13bの位置とを調整することで、上下流側の現状刃先位置du1、dd1を上下流側の基準刃先位置du0、dd0に戻す(
図5:S106)。
【0055】
ここで、調整制御部205の調整方法に特に限定は無い。例えば、一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1は、既に、バンドナイフ10の刃先10aの方向に向かって内向きに傾斜している。この状態から、例えば、上流側のバンドナイフ10が巻き付いている上流側のプーリー11aの回転軸11a1をバンドナイフ10の刃先10aの方向に向かって更に内向きに傾斜させることで、
図9Aに示すように、バンドナイフ10の回転により、上流側のプーリー11aに巻き付いた上流側のバンドナイフ10が刃先10aの方向に向かって送り出される。これにより、上流側のバンドナイフ10の刃先10aを傷付けることなく、刃先10aの位置を刃先10aと同じ方向に移動させることが出来る。
【0056】
一方、上流側のプーリー11aの回転軸11a1をバンドナイフ10の刃先10aの方向に向かって外向きに傾斜させることで、
図9Bに示すように、バンドナイフ10の回転により、上流側のプーリー11aに巻き付いた上流側のバンドナイフ10が、今度は、逆に、刃元10bの方向に向かって送り出される。これにより、上流側のバンドナイフ10の刃先10aを傷付けることなく、刃先10aの位置を刃先10aの方向と逆方向に移動させることが出来る。
【0057】
尚、上述では、上流側のプーリー11aの回転軸11a1の傾斜について説明したが、下流側についても同様であり、下流側のバンドナイフ10が巻き付いている下流側のプーリー11bの回転軸11b1の傾斜により、下流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置をバンドナイフ10の短手方向に移動させることが出来る。
【0058】
又、例えば、上流側の規制ローラー13aは、
図10Aに示すように、一対の案内刃10c1、10c2の上流側に設けられ、上流側のアーム13a2の長手方向の一端により回転可能に支持されている。上流側のアーム13a2は、バンドナイフ10の上方で、バンドナイフ10の短手方向に沿って設けられ、上流側のアーム13a2の長手方向の他端は、スライサー1の枠体に固定された伸縮制御部材13a3に連結されている。伸縮制御部材13a3を縮めることで、
図10Bに示すように、上流側の規制ローラー13aの傾斜面13a3を上流側のバンドナイフ10の両刃面10dに当接させるとともに、上流側の規制ローラー13aの位置をバンドナイフ10の刃先10aの方向と逆方向に移動させる。これにより、当該バンドナイフ10の刃先10aを傷付けることなく、刃先10aの位置を刃先10aの方向と逆方向に移動させることが出来る。伸縮制御部材13a3は、例えば、電気的に伸縮制御可能なモーター等を挙げることが出来る。一方、伸縮制御部材13a3を伸ばすことで、今度は、上流側の規制ローラー13aの位置をバンドナイフ10の刃先10aと同じ方向に移動させることが出来る。
【0059】
尚、上述では、上流側の規制ローラー13aの位置の移動について説明したが、下流側についても同様であり、下流側のアーム13b2に連結された伸縮制御部材の伸縮により、下流側の規制ローラー13bの位置をバンドナイフ10の短手方向に移動させることが出来る。
【0060】
さて、上流側のバンドナイフ10について、上流側の現状刃先位置du1が上流側の基準刃先位置du0に対して刃先10aの方向に向かって離れている場合、言い換えると、上流側のバンドナイフ10の刃先10aが刃先10aの方向に向かって出ている場合、調整制御部205は、上流側のプーリー11aの回転軸11a1を上流側のバンドナイフ10の刃先10aの方向に向かって外向きに傾斜させたり、上流側の規制ローラー13aの位置をバンドナイフ10の刃先10aの方向と逆方向に移動させたりする。
【0061】
ここで、上流側の現状刃先位置du1と上流側の基準刃先位置du0との差分の大きさに応じて、上流側のプーリー11aの回転軸11a1の傾斜の程度と、上流側の規制ローラー13aの位置の移動の程度は、適宜調整される。
【0062】
これにより、上流側のバンドナイフ10の刃先10aを刃先10aの方向と逆方向に向かって移動させることが出来るため、上流側の現状刃先位置du1を上流側の基準刃先位置du0に戻すことが可能となる。
【0063】
一方、上流側の現状刃先位置du1が上流側の基準刃先位置du0に対して刃先10aの方向と逆方向に向かって離れている場合、言い換えると、上流側のバンドナイフ10の刃先10aが刃先10aの方向と逆方向に向かって出ている場合、調整制御部205は、上流側のプーリー11aの回転軸11a1を上流側のバンドナイフ10の刃先10aの方向に向かって内向きに傾斜させたり、上流側の規制ローラー13aの位置をバンドナイフ10の刃先10aと同じ方向に移動させたりする。
【0064】
ここで、上述と同様に、上流側の現状刃先位置du1と上流側の基準刃先位置du0との差分の大きさに応じて、上流側のプーリー11aの回転軸11a1の傾斜の程度と、上流側の規制ローラー13aの位置の移動の程度は、適宜調整される。
【0065】
これにより、上流側のバンドナイフ10の刃先10aを刃先10aの方向に向かって移動させることが出来るため、上流側の現状刃先位置du1を上流側の基準刃先位置du0に戻すことが可能となる。
【0066】
さて、調整制御部205が、上流側のプーリー11aの回転軸11a1の傾斜と、上流側の規制ローラー13aの位置とを調整すると、例えば、測定制御部204に、上流側の位置検出センサー14aにより、再度、上流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を上流側の現状刃先位置du1として測定させる。そして、調整制御部205は、測定された現状刃先位置du1が基準刃先位置du0に戻ったか否かを判定する。
【0067】
現状刃先位置du1が基準刃先位置du0に戻らなかった場合は、調整制御部205は、再度、現状刃先位置du1と基準刃先位置du0との位置関係によって、上流側のプーリー11aの回転軸11a1の傾斜と、上流側の規制ローラー13aの位置とを調整し、上流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を微調整する。
【0068】
一方、現状刃先位置du1が基準刃先位置du0に戻った場合は、調整制御部205は、処理を完了する。これにより、上流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を最初の位置に戻すことが可能となる。
【0069】
尚、上述では、上流側のバンドナイフ10について説明したが、下流側のバンドナイフ10についても同様である。
【0070】
このように、調整制御部205は、上流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を上流側の基準刃先位置du0に戻し、下流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を下流側の基準刃先位置dd0に戻すことで、バンドナイフ10の刃先10aの位置は、被加工物Wのスライス開始時における最初の設定の位置に戻ることになる。
【0071】
これにより、被加工物をスライスする前であれば、上下流側の位置検出センサー14a、14bでバンドナイフ10の刃先10aの位置を確認し、ゼロ点位置からずれていれば、ゼロ点位置に修正して、送りユニット12に対する上下流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を一定に保つことが可能となる。又、被加工物をスライスした後であれば、同様の方法により、バンドナイフ10の刃先10aの位置をゼロ点位置に戻すことで、送りユニット12に対する上下流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を一定に保つことが可能となり、被加工物Wのスライス後のシート状の加工物の厚みを、どこの位置であっても、高精度に一定にすることが出来る。
【0072】
特に、本発明の実施形態では、走行バンドナイフ10の刃先10aの位置を上流側と下流側とで別個独立に制御することで、一定に保つようにしている。そのため、被加工物Wは、硬質素材はもちろん、軟質素材の場合であっても、高い厚み精度でスライスすることが可能となる。更に、スライス後の加工物W1、W2の厚みが薄い場合であっても、高い厚み精度でスライスすることが可能である。被加工物Wの種類について、特に限定は無いが、例えば、皮、スポンジ、フォーム(発泡体)、ゲル、ゴム、プラスチック等を挙げることが出来る。
【0073】
ところで、本発明の実施形態では、調整制御部205が、現状刃先位置du1を基準刃先位置du0に戻した後に、スライス側押出部材15をバンドナイフ10の刃元10bに軽く当接させて、バンドナイフ10の刃元10bを規制しても良い。
【0074】
ここで、スライス側押出部材15が長方形状の板材の場合、スライス側押出部材15の短手方向の一端15aは、
図11Aに示すように、走行バンドナイフ10の刃元10bの直線と平行になるように設置され、スライス側押出部材15は、当該走行バンドナイフ10の刃元10bに面状に当接する。一方、スライス側押出部材15の短手方向の他端15bには、走行バンドナイフ10の上流側と下流側とに、上流側と下流側の押出プレート15c1、15c2がそれぞれ設けられている。上流側の押出プレート15c1は、スライス側押出部材15の短手方向の他端15bのうち、上流側のスライス側押出部材15の位置を、バンドナイフ10の刃元10bに向かって押すことで、上流側のスライス側押出部材15をバンドナイフ10の刃元10bに当接させることが出来る。又、下流側の押出プレート15c2は、スライス側押出部材15の短手方向の他端15bのうち、下流側のスライス側押出部材15の位置を、バンドナイフ10の刃元10bに向かって押すことで、下流側のスライス側押出部材15をバンドナイフ10の刃元10bに当接させることが出来る。このように、上流側の押出プレート15c1と、下流側の押出プレート15c2とを別個独立に移動させることで、スライス側押出部材15をバンドナイフ10の走行方向に対して傾斜させながらバンドナイフ10の刃元10bに当接することが可能となる。
【0075】
又、上流側の押出プレート15c1は、略直角三角形状の上流側のくさび部材15d1をバンドナイフ10の走行方向と逆方向の一方向に移動させることで、上流側のくさび部材15d1の傾斜面が上流側の押出プレート15c1の長手方向の一端を押し出すように構成している。これにより、上流側の押出プレート15c1の長手方向の他端がスライス側押出部材15を押下する。そして、スライス側押出部材15は、
図11Bに示すように、走行バンドナイフ10の刃元10bを刃先10aと同じ方向に押し出す。
【0076】
ここで、バンドナイフ10の刃先10aは、一対の研磨砥石16a、16bによって、経時的に小さくなり、バンドナイフ10の短手方向の長さは徐々に短くなっていく。そのため、上流側のくさび部材15d1の位置の一方向のみの移動を可能とすることで、スライス側押出部材15の位置を、基本的に、バンドナイフ10の刃元10bを刃先10aと同じ方向に向かって一方向にのみ移動させ、逆方向に戻らないようにし、何らかの原因によって、バンドナイフ10の刃先10aの位置が刃先10aの方向と逆方向に移動しないようにしている。尚、上流側のくさび部材15d1の位置の一方向のみの移動は、解除可能であり、上流側のくさび部材15d1の解除によりスライス側押出部材15の位置の固定は解除され、スライス側押出部材15の位置を逆方向に戻すことは可能である。
【0077】
又、上述では、上流側の押出プレート15c1の押出について説明したが、下流側についても同様であり、下流側の押出プレート15c2は、略直角三角形状の下流側のくさび部材15d2をバンドナイフ10の走行方向と同じ方向の一方向に移動させるように構成している。
【0078】
尚、スライス側押出部材15は、バンドナイフ10の刃元10bの位置を規制するだけの構成であるため、調整制御部205が、上下流側のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1の傾斜と、上下流側の規制ローラー13a、13bの位置とを調整する際には、スライス側押出部材15の位置の固定を解除し、その調整後に、スライス側押出部材15をバンドナイフ10の刃元10bに当接させて、バンドナイフ10の刃元10bを規制することになる。
【0079】
ところで、本発明の実施形態では、走行バンドナイフの上下流側に上下流側の規制ローラー13a、13bを合計2つ設けるように構成したが、規制ローラーの数は、2つ以上に増加させても構わない。規制ローラーの数を増やすことで、バンドナイフ10の刃先10aの位置を上流側から下流側にかけて安定的に一定に保つことが出来る。
【0080】
又、本発明の実施形態では、一対のプーリー11a、11bの間に掛けられた一方のバンドナイフ10の刃先10aの位置を、一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1の傾斜と、上下流側の規制ローラー13a、13bの位置との調整により、一定に保った。ここで、一方のバンドナイフ10の刃先10aの位置を一定にするためには、一対のプーリー11a、11bの間に掛けられた他方のバンドナイフ10の位置を一定にすることも重要である。そのため、他方のバンドナイフ10の位置を一定にするために、一対の研磨砥石16a、16bに加え、研磨側押出部材17と、一対の規制ローラー18a、18bとを備えると好ましい。これにより、一方のバンドナイフ10の刃先10aの位置を高精度に一定に保つことが可能となる。
【0081】
又、本発明の実施形態では、送出ユニット12は、一対の送りローラー12a、12bを用いて構成したが、他の構成でも構わない。例えば、
図12Aに示すように、送出ユニット12は、下方の送りローラー12aと、下方の送りローラー12aの上方に所定の間隔bを空けて対向して配置された押え部材12dとを用いても構わない。押え部材12dは、直方体状に構成され、下方の送りローラー12aの長手方向(バンドナイフ10の長手方向)と略平行に固定される。そして、送出ユニット12に被加工物Wが入ると、下方の送りローラー12aと押え部材12dとの間に入り込むことで、下方の送りローラー12aに押し付けられる。この状態で、下方の送りローラー12aが、走行バンドナイフ10の刃先10aに向かって回転することで、押し付けられた被加工物Wが、当該バンドナイフ10の刃先に当たり、シート状にスライスされる。
【0082】
ここで、送出ユニット12が下方の送りローラー12aと押え部材12dで構成されている場合、スライス後の加工物W1、W2の厚みを、どこの位置であっても、高精度の一定にするためには、下方の送出ローラー12aに対するバンドナイフ10の刃先10aの位置を一定に保つ必要がある。
【0083】
例えば、
図12Bに示すように、下方の送りローラー12aに対向し、バンドナイフ10の刃先10aと同じ方向に表れる押え部材12bの角部12d1と、バンドナイフ10の刃先10aとの間の間隔x0を一定に保つ必要がある。
【0084】
本発明の実施形態では、この場合であっても、一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1の傾斜と、上下流側の規制ローラー13a、13bの位置とを調整することで、走行バンドナイフ10の刃先10aの位置を上流側と下流側とで一定に保つことが可能である。
【0085】
又、本発明の実施形態では、上流側の規制ローラー13aと上流側の位置検出センサー14aとの位置関係に特に限定は無いが、例えば、
図1、
図3、
図10に示すように、上流側の規制ローラー13aは、上流側の位置検出センサー14aよりも、バンドナイフ10の走行方向の下流側に設けられると好ましい。これにより、調整制御部205が、上流側の位置検出センサー14aで、上流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を検出した場合、上流側の位置検出センサー14aの下流側に存在する上流側の規制ローラー13aで、上流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を直ぐに調整することが出来る。そのため、検出後の結果を直ぐに調整に反映させることが可能となり、調整の迅速化に資する。尚、下流側の規制ローラー13bと下流側の位置検出センサー14bとの位置関係についても同様であり、下流側の規制ローラー13bは、下流側の位置検出センサー14bよりも、バンドナイフ10の走行方向の下流側に設けられると好ましい。
【0086】
又、本発明の実施形態では、一対のプーリー11a、11bの間を走行する一方のバンドナイフ10を上方のバンドナイフにして、上方のバンドナイフ10に一対の案内刃10c1、10c2を設けて、スライス場所とし、他方のバンドナイフ10を下方のバンドナイフにして、下方のバンドナイフ10に一対の研磨砥石16a、16bを設けて、研磨場所としたが、上方のバンドナイフを研磨場所とし、下方のバンドナイフをスライス場所にして、構成を逆にしても構わない。
【0087】
又、本発明の実施形態では、スライサー1が各制御部を備えるよう構成したが、当該各制御部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、プログラムを装置に読み出させ、当該装置が各制御部を実現する。その場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。さらに、各制御部が実行するステップを記憶媒体に記憶させる方法として提供することも可能である。
【実施例0088】
以下に、本発明の実施形態における実施例、比較例等を具体的に説明するが、本発明の適用が本実施例等に限定されるものではない。
【0089】
<実施例>
先ず、
図1~
図11に基づいて実施例となるバンドナイフ式のスライサー1を製造した。実施例のスライサー1の構成として、
図13に示すように、一対の案内刃10c1、10c2に対して最大のスライス幅は600mmに設定し、被加工物の材料の幅は550mmに設定した。実施例では、上下流側の規制ローラー13a、13bと、上下流側の位置検出センサー14a、14bとを設け、一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1の傾斜と、上下流側の規制ローラー13a、13bの位置を調整可能に設けた。
【0090】
<比較例>
比較例のスライサーの構成として、
図13に示すように、一対の案内刃10c1、10c2に対して最大のスライス幅は450mmに設定し、被加工物の材料の幅は400mmに設定した。比較例では、下流側の規制ローラー13bを設けたが、上流側の規制ローラー13aと、上下流側の位置検出センサー14a、14bとを設けず、且つ、一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1の傾斜と、上下流側の規制ローラー13a、13bの位置を調整可能としなかった。それ以外は、実施例と同様の部材を用いて構成とした。
【0091】
<評価>
実施例及び比較例のスライサーを用いて、厚みが2mmのポリウレタンフォームシート(被加工物)をスライスし、厚みが0.3mmのポリウレタンフォームシート(加工物)を製造した。
【0092】
実施例のスライサーでは、被加工物のスライスにより製造される加工物の厚みが0.3mmになった時点で、上流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を上流側の基準刃先位置du0に設定し、下流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を下流側の基準刃先位置dd0に設定した。
【0093】
そして、
図14に示すように、ポリウレタンフォームシート(被加工物)を実施例又は比較例のスライサーで連続的にスライスし、その後、バンドナイフ10の刃先10aの位置を調整した。実施例のスライサーでは、上下流側の規制ローラー13a、13bと、上下流側の位置検出センサー14a、14bとを用いて、一対のプーリー11a、11bの回転軸11a1、11b1の傾斜と、上下流側の規制ローラー13a、13bの位置を調整することで、上流側と下流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を調整した。一方、比較例のスライサーでは、手動により、バンドナイフ10の刃先10aの位置を調整した。そして、調整後の実施例又は比較例のスライサーで、再度、被加工物をスライスし、スライス後の加工物の厚みを測定した。加工物の厚みの測定は、先ず、スライス幅に対して等間隔に3点ずつ取り、それをスライス長さに対して等間隔に3回ずつ繰り返して、合計9点測定した。厚みの測定には、市販の厚み測定機を用いた。次に、9点の厚みから目標の厚み0.3mmに対する最大値と最小値を取って、厚み精度を算出した。
【0094】
その結果、
図14に示すように、比較例のスライサーにおける加工物の厚み精度は、±0.05mmであったが、一方、実施例のスライサーにおける加工物の厚み精度は、驚くべきことに、±0.03mmであり、比較例よりも極めて良好な厚み精度が得られた。特に、実施例のスライサーの最大のスライス幅は、比較例のそれと比較して長く設定されており、一般的に、最大のスライス幅が長くなる程、厚み精度が悪化する。今回、最大のスライス幅が長い実施例において、最大のスライス幅が短い比較例よりも顕著に良好な厚み精度が得られたことは、送出ユニット12に対してバンドナイフ10の刃先10aの位置が高精度に一定に保たれていたことを意味する。これにより、実施例のスライサーでは、加工物のどこの位置であっても、高い厚み精度でスライスすることが出来ることが分かった。
【0095】
又、実施例及び比較例のスライサーで被加工物を連続的にスライスし、その後、再度、上述と同様の方法で、バンドナイフ10の刃先10aの位置を調整し、その後、再度、実施例及び比較例のスライサーで被加工物をスライスした。そのスライス後の加工物の厚みを、上述と同様の方法で算出し、その厚み精度を、再現性を示す繰り返し厚み精度として算出した。バンドナイフ10の刃先10aの位置の調整は、その後、3回繰り返し、各調整毎に繰り返し厚み精度を算出した。
【0096】
その結果、
図14に示すように、比較例のスライサーにおける加工物の繰り返し厚み精度は、1回目で±0.06mm、2回目で±0.05mm、3回目で±0.07mmとなり、繰り返し厚み精度のバラつきが見られた。一方、実施例のスライサーにおける加工物の繰り返し厚み精度は、1回目で±0.03mm、2回目で±0.03mm、3回目で±0.03mmとなり、驚くべきことに、繰り返し厚み精度は、3回とも、一定に保たれていた。これは、まさに、実施例のスライサーは、上流側と下流側のバンドナイフ10の刃先10aの位置を高精度に一定に保っていることを示している。従って、実施例のスライサーでは、繰り返しスライスしたとしても、高い厚み精度で被加工物をスライスすることが出来ることが分かった。
以上のように、本発明に係るスライサー及びスライス方法は、軟質素材に限らず、あらゆる種類の被加工物をスライスするスライサー及びスライス方法に有用であり、継続的にスライスしても、高い厚み精度で被加工物をスライスすることが可能なスライサー及びスライス方法として有効である。