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  • 特開-燃料供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018488
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20220120BHJP
   F02M 37/04 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
F02M37/00 J
F02M37/04 B
F02M37/00 331Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121617
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸倫
(57)【要約】
【課題】
リザーバを兼ねる燃料供給装置について、それに加わった振動により大気連通通路を介して燃料が外部に漏出するのを低減する。
【解決手段】
燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設され、リザーバタンクを兼ねる燃料貯留槽2aを形成したハウジング本体2Aとハウジング本体2Aの開口部を覆う蓋体3Aで構成されたハウジング2の内部に、燃料を圧送する燃料ポンプ20と、燃料を調圧して余剰燃料を燃料貯留槽2aに戻すレギュレータと、蓋体3Aの底面側から上面側に貫通して形成され燃料貯留槽2aの上部空間と外部を連通させる大気連通通路35とを備えており、所定圧力に調整した燃料をエンジンに供給する燃料供給装置1Aにおいて、その大気連通通路35を、縦向きの入口側通路35aと縦向きの出口側通路35bの中心線が水平方向に所定距離ずれた配置とされて中間部分が屈曲している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設され、リザーバタンクを兼ねる燃料貯留槽を形成したハウジング本体と前記ハウジング本体の開口部を覆う蓋体で構成されたハウジングの内部に、貯留した燃料を圧送する燃料ポンプと、燃料を調圧しながら余剰燃料を前記燃料貯留槽に戻すレギュレータと、前記蓋体の底面側から上面側に貫通して形成されて前記燃料貯留槽の上部空間と外部を連通させる大気連通通路とを備えており、所定圧力に調整した燃料を送出してエンジンに供給する燃料供給装置において、前記大気連通通路は、縦向きの入口側通路と縦向きの出口側通路の中心線が水平方向に所定距離ずれた配置とされて中間部分が屈曲していることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記大気連通通路が、その中間部分で前記蓋体内に形成したレギュレータ背圧室に接続されて前記レギュレータ背圧室と空間を共用しており、前記入口側通路から前記レギュレータ背圧室内を経由して前記出口側通路に入ることで前記屈曲した中間部分を構成していることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記大気連通通路の前記入口側通路の開口面積が、前記出口側通路の開口面積よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと燃料タンクを連結する燃料供給路の途中に配置される燃料供給装置、殊に、燃料ポンプとレギュレータに加え燃料貯留槽を有してリザーバとしても機能する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクに貯留した燃料をエンジンに供給する際に、急加速や急減速があっても燃料を途切らせることなく安定的に供給させるため、燃料ポンプとレギュレータに加え燃料貯留槽を備えてリザーバとしても機能する燃料供給装置が、燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配置されることが多い。
【0003】
このような燃料供給装置として、リザーバタンクを兼ねる燃料貯留槽内に貯留した燃料をエンジンに送る燃料ポンプと、貯留した燃料の液面を所定レベルに維持するためのフロート及び開閉弁と、送出する燃料の調圧を行うレギュレータとを備えており、レギュレータ下部に設けたリターンポートから、調圧で生じた余剰燃料を燃料貯留槽に戻す構造のものが知られており、例えば特開2008-297941号公報などに記載されている。
【0004】
ところで、この種の燃料供給装置ではリターンポートから余剰燃料が燃料貯留槽に流下したり、外部からの振動が燃料供給装置に加わったりすると、燃料貯留槽の液面が大きく波打ちながら揺動するため、液面上方に開口した大気連通通路を介して燃料を外部に漏出させてしまうという問題がある。
【0005】
斯かる問題に対し、本願発明者・出願人らは、先に特開2018-105129号公報において、図4に示すように、ハウジングの上部を構成する蓋体3Bにより、フロート24を内装したハウジング本体2Bの燃料貯留槽2bの開口部分のうち、燃料ポンプ23上端側を除く部分の殆どを埋める構造として、液面上方でその揺動を規制するようにした燃料供給装置1Bを提案しており、これにより液面の揺動範囲を規制して大気連通通路36を介した燃料の外部への漏出を低減可能としている。
【0006】
しかしながら、前記従来の燃料供給装置1Bは、図のように大気連通通路36の入口側通路36aと出側通路口36bが同じ太さで直線的に連通しているため、燃料貯留槽2bの開口部を塞ぐ蓋体3Bの底面で燃料の液面の揺動を緩衝する構成としても、燃料供給装置1Bに大きな振動が加わった場合は燃料の漏出を充分には低減できないという問題がある。
【0007】
そこで、図4において破線で示すように、蓋状の部材からなるバッフルプレート39を液面上方に配置することで、振動時における液面の揺動範囲を小さく抑える方式も知られているが、このように従来の構造に対し新たな部品を追加することは、製造コストの面で不利になりやすいことに加え故障の原因にもなりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-297941号公報
【特許文献2】特開2018-105129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、エンジンへの燃料供給路の途中に配設されてリザーバを兼ねる燃料供給装置について、それに加わった振動により大気連通通路を介して燃料が外部に漏出するのを低減できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明は、燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配設され、リザーバタンクを兼ねる燃料貯留槽を形成したハウジング本体と前記ハウジング本体の開口部を覆う蓋体で構成されたハウジングの内部に、貯留した燃料を圧送する燃料ポンプと、燃料を調圧しながら余剰燃料を前記燃料貯留槽に戻すレギュレータと、前記蓋体の底面側から上面側に貫通して形成されて前記燃料貯留槽の上部空間と外部を連通させる大気連通通路とを備えており、所定圧力に調整した燃料を送出してエンジンに供給する燃料供給装置において、前記大気連通通路は、縦向きの入口側通路と縦向きの出口側通路の中心線が水平方向に所定距離ずれた配置とされて中間部分が屈曲している、ことを特徴とする。
【0011】
このように、通常は縦向きで直線状に形成された大気連通通路を、下部の入口側と上部の出口側とを水平方向にずらした構成を採用したことで、燃料が大気連通通路中を流動しにくい状態を確保することができるため、その漏出を最小限に抑えることを可能にした。
【0012】
また、この燃料供給装置において、前記大気連通通路が、その中間部分で前記蓋体内に形成したレギュレータ背圧室に接続されて前記レギュレータ背圧室と空間を共用しており、前記入口側通路から前記レギュレータ背圧室内を経由して前記出口側通路に入ることで前記屈曲した中間部分を構成している場合には、屈曲した部分の通路を延長しながらそれによる通路容積を大きく確保できるので、大気連通通路に入った燃料が外部まで一層到達しにくいものとなる。
【0013】
更に、本発明において、前記大気連通通路の前記入口側通路の開口面積が、前記出口側通路の開口面積よりも大きい場合には、一旦、大気連通通路に侵入してきた燃料が、燃料貯留槽側に戻りやすいものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、燃料が大気連通通路中を流動しにくい状態を確保してその漏出を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明における実施の形態の燃料供給装置の縦断面図である。
図2図1の燃料供給装置における蓋体の内部構造の詳細を示す拡大部分図である。
図3図2における蓋体の詳細な構成を説明するための一部を切り欠いた斜視図である。
図4】従来の燃料供給装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明である燃料供給装置の好ましい実施の形態の縦断面図を示すものであり、燃料供給装置1Aは、ハウジング2の内部に、燃料貯留槽2a、燃料ポンプ20、フロート21、レギュレータ(図示せず)を備え、図示しない燃料タンクからエンジンに至る燃料供給路の途中に配置されることで、燃料供給手段として機能することに加えリザーバとしても機能するものであり、これを搭載した車両に急加速や急減速があっても燃料が途切れることなく安定的に供給できる点で優れている。
【0018】
そして、この燃料供給装置1Aは、リザーバタンクとしても機能する燃料貯留槽2aを内部に形成したハウジング本体2Aと、その開口部を塞ぐように配置された蓋体3Aを備えており、これらで中空のハウジング2を構成している。また、蓋体3Aには図示しないレギュレータが配設されており、その上面側には、ハウジング2の内外を連通させるための大気連通路35が通る大気連通パイプ31が突設されている。
【0019】
一方、燃料貯留槽2aを形成しているハウジング本体2A側には、貯留した燃料を圧送する電動式の燃料ポンプ(タービンベーンポンプ)20と、先端側にフロート5を片持ち式に有した弁レバーの基端側で弁を開閉しながら貯留燃料の液面を一定レベルに維持する燃料貯留量調整手段が配設されている。
【0020】
図2は、図1の蓋体3Aを拡大して示したものであり、この蓋体3Aは、前述したように、ハウジング本体2Aの開口部を燃料ポンプ3の上端側及び燃料導入路等を除いた殆どの部分を覆う構造を有した蓋状の部材であり、その底面側から上面側に貫通して形成されて燃料貯留槽2aの上部空間と外部とを連通させる大気連通通路35は、その縦向きの入口側通路35aと縦向きの出口側通路35bの中心線が、水平方向に所定距離ずれた配置となっているとともに大気連通通路35の中間部分の経路が屈曲している。
【0021】
即ち、前記蓋体3Aは、入口側通路35aを形成した下側部材30aと出口側通路35bを形成した上側部材30bの2層構造からなり、入口側通路35aと出口側通路35bの中心線が、図示する距離X分だけ水平方向にずれた位置に配置されたことで屈曲した経路を構成しており、入口側通路35aに入った燃料が大気連通通路35中を流動しにくい状態とされて、その漏出を最小限に抑えられるようになっている。
【0022】
また、本実施の形態において、大気連通通路35は、入口側通路35aの開口面積が出口側通路35bの開面積よりも大きい(本例では2~3倍)構成となっている(先細り構造)ことから、いったん大気連通通路35内を上がって侵入してきた燃料が、燃料貯留槽2a側に戻りやすい構造とされている。
【0023】
更に、本実施の形態においては、図3に示すように前記大気連通通路35が、その中間部分で蓋体3A内に形成したレギュレータ背圧室33に接続されてその内部空間を共用しており、入口側通路35aと出口側通路35bの間には隔壁32が形成されている。
【0024】
従って、入口側通路35aからレギュレータ背圧室33内を経由して出口側通路35bに入ることで、大気連通通路35において長く屈曲した経路と大きな空間を確保したものとなっている。
【0025】
即ち、図中太矢印で示す大気連通通路35に侵入した燃料は、レギュレータ背圧室33内に入ると円環状に形成された周壁の内周面に沿って回りながら進むが、その一部が出口側通路35bの下方に到達した場合でも、レギュレータ背圧室33が比較的大きな容積を有していることから、それから出口側通路35bの中を上昇して外部に出るためには、燃料の多量な流入と強い流入圧力が必要になる。このように、大気連通通路35における屈曲部分の経路を長くしながらその容積を大きく確保したことで、大気連通通路35に入った燃料が外部まで一層到達しにくいものになっている。
【0026】
以上のように、エンジンへの燃料供給路の途中に配設されてリザーバを兼ねる燃料供給装置について、それに振動が加わっても大気連通通路を介して燃料が外部に漏出するのを低減できるようになった。
【符号の説明】
【0027】
1A 燃料供給装置、2 ハウジング、2A ハウジング本体、2a 燃料貯留槽、3A 蓋体、20 燃料ポンプ、21 フロート、33 レギュレータ背圧室、35 大気連通通路、35a 入口側通路、35b 出口側通路
図1
図2
図3
図4