(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184883
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】嫌気性消化装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20221206BHJP
C12M 1/107 20060101ALI20221206BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20221206BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20221206BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221206BHJP
C12M 1/38 20060101ALI20221206BHJP
C12P 5/02 20060101ALI20221206BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20221206BHJP
B09B 101/70 20220101ALN20221206BHJP
【FI】
B09B3/65
C12M1/107 ZAB
C12M1/02 B
C12N1/20 A
C12M1/00 D
C12M1/38 Z
C12M1/38 A
C12P5/02
C02F11/04 A
B09B101:70
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022142125
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2020504456の分割
【原出願日】2018-04-10
(31)【優先権主張番号】1705768.8
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】519364255
【氏名又は名称】イフェインワ リタ カヌ
【氏名又は名称原語表記】KANU, Ifeyinwa Rita
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】イフェインワ リタ カヌ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】家庭環境での使用に安全かつ実用的である嫌気性消化装置、および嫌気性消化に使用するための微生物培養物を提供する。
【解決手段】嫌気性消化装置1は、嫌気性消化前および/または嫌気性消化中に有機物を保持するための第1のチャンバ4と、嫌気性消化中に有機物を保持するための第2のチャンバ5とを含む。嫌気性消化装置は、第1のチャンバを冷蔵または加熱して、第1のチャンバ内のメタン生成を抑制するように構成されている。嫌気性消化装置は、嫌気性消化プロセスを調節し、それによって、システムの摂動を減らすようにプログラムされたコントローラ18を含む。メタンが生成される第2のチャンバへの有機物の流れは制御される。アセトバクテリウム・ウッディおよびメタノサエタ・コンシリイを含む嫌気性消化のための種菌が開示されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気性消化前および/または嫌気性消化中に有機物を保持するための第1のチャンバと
、嫌気性消化中に有機物を保持するための第2のチャンバとを含む嫌気性消化装置であっ
て、前記第1のチャンバを冷蔵または加熱するように構成されている、嫌気性消化装置。
【請求項2】
前記第1のチャンバ内のメタン生成を抑制する温度まで前記第1のチャンバを冷蔵また
は加熱するように構成されている、請求項1に記載の嫌気性消化装置。
【請求項3】
前記第1のチャンバを10℃以下の温度に冷蔵し、また、前記第2のチャンバを10℃
より高い温度に加熱するように構成されている、請求項1または2に記載の嫌気性消化装
置。
【請求項4】
前記第1のチャンバおよび/または前記第2のチャンバ内に保持される材料の体積、質
量、組成、タンパク質濃度、窒素含有種の濃度、窒素濃度、炭水化物濃度、脂質濃度、脂
肪酸濃度、および/またはpHを示す1つ以上のパラメータを測定するように構成された
1つ以上のセンサを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の嫌気性消化装置。
【請求項5】
前記第1のチャンバおよび前記第2のチャンバに接続され、有機物を前記第1のチャン
バから前記第2のチャンバに移動するバッファチャンバを備え、前記バッファチャンバ内
の有機物を低温殺菌するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の嫌
気性消化装置。
【請求項6】
直接的にまたは前記バッファチャンバを介して、前記第1のチャンバと前記第2のチャ
ンバとの間に延在する導管であって、それにより、前記第1のチャンバと前記第2のチャ
ンバとの間の有機物の移動を可能にする導管と、前記導管を介した前記第1のチャンバと
前記第2のチャンバとの間の有機物の動きを調整するための流量調整手段と、前記1つ以
上のセンサから前記1つ以上のパラメータの測定値を受け取り、受け取った測定値に応じ
て前記流量調整手段を操作することにより、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバと
の間の有機物の流れを調整するように構成されているコントローラとを更に含む、請求項
4または5に記載の嫌気性消化装置。
【請求項7】
前記第1のチャンバにおけるタンパク質濃度、窒素含有種の濃度および/または窒素濃
度を示す1つ以上のパラメータの測定値を受信し、前記第1のチャンバに1つ以上の加水
分解酵素を導入するように構成されたコントローラを備え、前記第1のチャンバに導入さ
れる加水分解酵素の量は、前記1つ以上のパラメータの値に依存している、請求項4~6
のいずれか一項に記載の嫌気性消化装置。
【請求項8】
前記装置は、有機物を前記第1のチャンバから前記第2のチャンバに、および前記第2
のチャンバから前記第1のチャンバに移動させ、従って、メタン生成微生物を前記第2の
チャンバから前記第1のチャンバに移動させるように構成されている、請求項1~7のい
ずれか一項に記載の嫌気性消化装置。
【請求項9】
嫌気性消化の前に有機物を浸軟するためのマセレータを備える、請求項1~8のいずれ
か一項に記載の嫌気性消化装置。
【請求項10】
前記第1のチャンバおよび/または前記第2のチャンバ内の有機物を攪拌するための手
段を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の嫌気性消化装置。
【請求項11】
前記第1のチャンバおよび/または前記第2のチャンバ内の有機物の嫌気性消化中に生
成されるガスから、二酸化炭素、水素硫化物、アンモニアのうちの1つ以上を除去するよ
うに構成された1つ以上のフィルタを含むガス精製器を備える、請求項1~10のいずれ
か一項に記載の嫌気性消化装置。
【請求項12】
前記ガス精製器からガスの流れを受け取り、前記ガスの燃焼により生成された電気およ
び/または熱を出力するように構成されたジェネレータを更に備える、請求項11に記載
の嫌気性消化装置。
【請求項13】
前記ジェネレータは、マイクロ熱電併給ジェネレータである、請求項12に記載の嫌気
性消化装置。
【請求項14】
有機物の嫌気性消化に、請求項1~13のいずれか一項に記載の嫌気性消化装置を使用
する方法であって、前記第1のチャンバで有機物を酢酸生成微生物に曝露するステップと
、前記有機物の少なくとも一部を前記第1のチャンバから前記第2のチャンバに移送する
ステップと、前記有機物の少なくとも一部を、前記第2のチャンバ内のメタン生成微生物
に曝露するステップとを含む、方法。
【請求項15】
前記第1のチャンバを10℃以下の温度に冷蔵し、前記第2のチャンバを10℃より高
い温度に加熱するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
メタン生成微生物が前記第2のチャンバから前記第1のチャンバに移送されるが、前記
第1のチャンバの冷蔵または加熱に起因して、メタン生成が主に前記第2のチャンバで生
じるように、前記有機物の少なくとも一部を前記第2のチャンバから前記第1のチャンバ
に移送するステップを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のチャンバで有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露するステップを含む、請
求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のチャンバおよび/または前記第2のチャンバおよび/またはバッファチャン
バ内に保持される材料の体積、質量、組成、タンパク質濃度、窒素含有種の濃度、窒素濃
度、炭水化物濃度、脂質濃度、脂肪酸濃度、および/またはpHを示す1つ以上のパラメ
ータを測定する1つ以上のセンサを含み、前記コントローラが前記1つ以上のパラメータ
の測定値を受信し、前記コントローラが、受信された測定値に応答して、前記有機物の一
部を前記第1のチャンバまたは前記バッファチャンバから前記第2のチャンバへ移送する
、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記有機物を浸軟するステップを含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項20】
前記第1のチャンバおよび/または前記第2のチャンバ内の有機物に水を追加するステ
ップまたは攪拌するステップを含む、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のチャンバに導入される前に、前記第1のチャンバ内のまたは前記第1のチャ
ンバからの有機物を低温殺菌するステップを含む、請求項14~20のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項22】
前記第1のチャンバおよび/または前記第2のチャンバ内の有機物の嫌気性消化中に生
成される1つ以上のガスを濾過して、前記ガスから、二酸化物、硫化水素、アンモニアの
うちの1つ以上を除去するガス精製器を含む、請求項14~21のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項23】
前記酢酸生成微生物はアセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌を含み、前記メタン
生成微生物はメタノサエタ属に属するメタン生成古細菌を含む、請求項14~22のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項24】
有機物からメタンを生成する方法であって、有機物を10℃以下の温度で酢酸生成微生
物に曝露するステップと、続いて、前記有機物の少なくとも一部を、10℃を超える温度
でメタン生成微生物に曝露するステップとを含む、方法。
【請求項25】
前記有機物を10℃以下の温度で酢酸生成微生物に曝露するステップの前および/また
は最中に、1つ以上の加水分解酵素に前記有機物を曝露するステップを含む、請求項24
に記載の方法。
【請求項26】
10℃以下の温度で酢酸生成微生物およびメタン生成微生物の両方に有機物を曝露する
ステップと、続いて、前記有機物の少なくとも一部を10℃より高い温度で前記酢酸生成
微生物および前記メタン生成微生物の両方に曝露するステップとを含む、請求項24また
は請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記有機物の体積、質量、組成、タンパク質濃度、窒素含有種の濃度、窒素濃度、炭水
化物濃度、脂質濃度、脂肪酸濃度、および/またはpHを示す1つ以上のパラメータを決
定するステップと、前記決定された1つ以上のパラメータに応じて前記有機物の温度を変
化させるステップとを含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記有機物を浸軟するステップを含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項29】
前記酢酸生成微生物および/またはメタン生成微生物への曝露中に前記有機物を撹拌す
るステップを含む、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記有機物の嫌気性消化で生成される1つ以上のガスを濾過し、それによって前記ガス
から、二酸化炭素、硫化水素、アンモニアのうちの1つ以上を除去するステップを含む、
請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記酢酸生成微生物はアセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌を含み、前記メタン
生成微生物はメタノサエタ属に属するメタン生成古細菌を含む、請求項24~30のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項32】
有機物を加水分解する方法であって、前記有機物中のタンパク質量を示すパラメータを
決定するステップと、前記有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露するステップとを含み
、前記有機物が曝露される加水分解酵素の量は、前記決定されたパラメータの値に依存す
る、方法。
【請求項33】
前記有機物が曝露される加水分解酵素の量は、前記決定されたパラメータの値に比例す
る、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
有機物の嫌気性消化に使用される微生物培養物であって、アセトバクテリウム属に属す
る1つ以上の酢酸生成細菌を含む、微生物培養物。
【請求項35】
前記培養物中に存在する1つ以上の酢酸生成細菌は、アセトバクテリウム・ウッディを
含む、またはアセトバクテリウム・ウッディからなる、請求項34に記載の微生物培養物
。
【請求項36】
メタノサエタ属に属する1つ以上のメタン生成古細菌を更に含む、請求項34または3
5に記載の微生物培養物。
【請求項37】
前記培養物中に存在する前記メタン生成古細菌は、メタノサエタ・コンシリイを含む、
またはメタノサエタ・コンシリイからなる、請求項36に記載の微生物培養物。
【請求項38】
有機物の嫌気性消化に使用するための微生物培養物であって、メタノサエタ属に属する
1つ以上のメタン生成古細菌を含む、微生物培養物。
【請求項39】
前記培養物中に存在する1つ以上のメタン生成古細菌は、メタノサエタ・コンシリイを
含む、またはメタノサエタ・コンシリイからなる、請求項38に記載の微生物培養物。
【請求項40】
有機物の嫌気性消化に使用するための微生物培養物であって、実質的に、アセトバクテ
リウム属に属する酢酸生成細菌およびメタノサエタ属に属するメタン生成古細菌から構成
されている、微生物培養物。
【請求項41】
前記培養物中に存在する酢酸生成細菌は、アセトバクテリウム・ウッディ種に属し、前
記培養物中に存在するメタン生成古細菌は、メタノサエタ・コンシリイを含む、またはメ
タノサエタ・コンシリイからなる、請求項40に記載の微生物培養物。
【請求項42】
微生物を含むまたは微生物からなる微生物培養物であって、前記微生物培養物中の微生
物がアセトバクテリウム・ウッディおよびメタノサエタ・コンシリイからなる、微生物培
養物。
【請求項43】
アセトバクテリウム以外の細菌を含まない、請求項34~42のいずれか一項に記載の
微生物培養物。
【請求項44】
請求項34~43のいずれか一項に記載の微生物培養物、および加水分解酵素を含む、
嫌気性消化装置。
【請求項45】
有機物からメタンを生成する方法であって、前記有機物をアセトバクテリウム属に属す
る酢酸生成細菌およびメタノサエタ属に属するメタン生成古細菌に曝露するステップを含
む、方法。
【請求項46】
前記酢酸生成細菌はアセトバクテリウム・ウッディ種に属し、前記メタン生成古細菌は
メタノサエタ・コンシリイ種に属する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
バクテリアの消化によるものではなく、1つ以上の前記加水分解酵素の存在のみに起因
して、前記有機物中の少なくとも1つの化学種、または前記有機物のうちの少なくとも0
.1質量%が、アセトバクテリウムによって代謝され得る、かつ、代謝される形態に加水
分解されるように、前記有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露するステップを含む、請
求項45または46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気性消化装置、有機物の嫌気性消化における嫌気性消化装置の使用方法、
有機物からメタンを生成するための装置および方法、有機物から再生可能電力を生成する
ための装置および方法、有機物から電気を生成するための装置および方法、有機物の加水
分解方法、並びに、有機物の嫌気性消化に使用するための微生物培養物に関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性消化とは、酸素が存在しない状態で微生物が有機物を分解するプロセスの集合体
を指す。嫌気性消化には、有機ポリマー(炭水化物やタンパク質等)の小有機分子への生
化学的加水分解と、そのような小分子のメタン、二酸化炭素、窒素および水素、並びにそ
の他の副産物への変換とが含まれる。嫌気性消化は、食品廃棄物や下水汚泥等の生分解性
廃棄物のリサイクルにおける処理プロセスの一部として使用される。このプロセスは、通
常、バイオガス(約50%~80%のメタンを含む)と、液体および固体の発酵残渣(d
igestate)とを生成する。バイオガスは燃料として使用することができるため、
嫌気性消化は再生可能エネルギー源と考えられている。バイオガスを更に精製して、バイ
オメタンを生成することができ、これは、天然ガスと同様のメタン含有量を有する。発酵
残渣は、栄養価の高い肥料としてだけでなく、価値の高い化学製品源としても役立ち得る
。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
制御された嫌気性消化は、バイオガスおよびバイオメタンの生産で使用されるように、
通常、家庭および商業施設から収集された食品廃棄物、農場廃棄物、特別なエネルギー作
物、肥料および下水汚泥の組み合わせを使用して産業規模で実行される。商業用の嫌気性
消化装置は、通常、人間に対して病原性がある微生物を利用する故に、家庭環境での使用
には適さない。特に病原性加水分解微生物は、商業用の嫌気性消化装置で一般的に使用さ
れている。商業用の嫌気性消化装置は、典型的には大型かつ複雑であり、一般的に不快な
臭いを周囲環境に放出する。
【0004】
従って、家庭環境での使用に安全かつ実用的である嫌気性消化装置および微生物培養物
の両方を提供することが有益であろう。消化装置に投入される材料のメタンへのより完全
な変換が可能である嫌気性消化装置および微生物培養物を提供することも有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、嫌気性消化装置を提供する。装置は、嫌気性消化の前および/
または嫌気性消化中に有機物を保持するための第1のチャンバと、嫌気性消化中に有機物
を保持するための第2のチャンバとを含む。装置は、典型的には(即ち、使用時には)、
第1のチャンバ(即ち、その内容物)を冷蔵または加熱するように構成されており、換言
すると、第1のチャンバが典型的に冷蔵または加熱される。
【0006】
第1のチャンバの温度は、第1のチャンバのメタン生成を抑制する温度に冷蔵または加
熱(通常は調整)される(例えば、メタン生成率を、第2のチャンバにおけるメタン生成
率の10%未満、5%未満、または好ましくは1%未満に低減する)。従って、メタン生
成は主に第2のチャンバで生じる。
【0007】
メタン生成は、存在する、生きたメタン生成微生物によりメタン生成を抑制する温度ま
で第1のチャンバの温度を低下させることによって、または、存在する、あるいはメタン
生成菌を殺す、生きたメタン生成微生物によりメタン生成を抑制する温度まで第1のチャ
ンバの温度を上昇させることによって、抑制することができる。
【0008】
装置は、典型的には、有機物を第1のチャンバから第2のチャンバへ、および第2のチ
ャンバから第1のチャンバへ移動させるように構成される。従って、第1のチャンバを冷
蔵または加熱することなく、第2のチャンバからのメタン生成微生物が第1のチャンバに
移動され、第1のチャンバに著しいメタン生成が生じるであろう。
【0009】
嫌気性消化とは、酸素が存在しない状態で微生物が有機物を分解するプロセスを意味す
ることが理解されよう。嫌気性消化を担う微生物には、通常、嫌気性細菌および/または
嫌気性古細菌が含まれる。嫌気性消化には、通常、次のプロセス:大分子(例えば、炭水
化物(多糖類)および/またはタンパク質(ポリペプチド)および/または脂質(トリグ
リセリド等)等のポリマー)を加水分解してより小さい分子(例えば、単糖、アミノ酸お
よび/または脂肪酸)を形成するプロセス;加水分解の生成物の酸生成により、例えば揮
発性脂肪酸(VFA)を形成するプロセス;加水分解の生成物の酢酸生成および/または
酸生成による酢酸の形成;並びに、加水分解、酸生成、および/または酢酸生成の生成物
のメタン生成によるメタン(CH4)の形成のうちの1つ以上が含まれる。制御された有
機物の嫌気性消化は、バイオガスの生産に使用される。バイオガスは様々なガスの混合物
であるが、通常は少なくとも50%のメタンを含んでいる。バイオガスには、二酸化炭素
(CO2)、窒素(N2)、水素(H2)、硫化水素(H2S)および/または酸素(O
2)も含まれる。
【0010】
装置は、第1のチャンバを10℃以下、または8℃以下、または6℃以下、または4℃
以下の温度に冷蔵するように構成されてもよい。
【0011】
装置は、第1のチャンバを40℃以上、または50℃以上、または60℃以上の温度に
加熱するように構成されてもよい。
【0012】
装置は、通常、2段階の嫌気性消化プロセスで使用するように構成されており、即ち、
嫌気性消化の最初の段階(例えば、加水分解、酸生成、および/または酢酸生成を含む)
が第1の位置で(例えば、ほぼ同時に)行われ、続いてメタン生成が第1の位置から(少
なくとも部分的に)離れた第2の位置で行われる。2段階の嫌気性消化プロセスでは、加
水分解、酸生成および/または酢酸生成は、通常、(冷蔵または加熱された)第1のチャ
ンバで行われ、メタン生成は、通常、第2のチャンバで行われる。加水分解、酸生成およ
び/または酢酸生成微生物および/または酵素(これらは通常、併せて有機物の加水分解
、酸生成および/または酢酸生成に関与する)は、通常、メタン生成微生物よりも低い温
度に耐えることができ、実際にはメタン生成微生物よりも低い温度で増殖することが可能
である。メタン生成微生物は、通常、低温(例えば10℃未満)では抑制され、高温(例
えば10℃超)では増殖する傾向がある。通常、第1のチャンバの冷蔵は、メタン生成を
主に第1のチャンバではなく第2のチャンバで行いつつ、嫌気性消化中に有機物を第1の
チャンバと第2のチャンバとの間で(その逆も可)移動することができることを意味する
。あるいは、メタン生成微生物を抑制するまたは殺すのに十分な温度まで第2のチャンバ
を加熱するが、加水分解、酸生成、および/または酢酸生成微生物および/または酵素が
機能している場合も、有機物を第1のチャンバと第2のチャンバとの間(その逆も可)で
移動可能としつつ、主に第2のチャンバでのメタン生成を可能にする。
【0013】
本発明者は、メタン生成のプロセスを加水分解、酸生成および/または酢酸生成のプロ
セスから分離する(即ち、空間的に分離する)ことによって、有機物のより完全なメタン
生成が可能となることを発見した。これは、メタン生成微生物が特に敏感な、揮発性脂肪
酸(VFA)濃度(加水分解、酸生成、および/または酢酸生成中に生成される(VFA
(および主に酢酸))、窒素濃度およびpH等の重要なプロセスパラメータが、第1のチ
ャンバと第2のチャンバとの間の発酵残渣の流れを調整することにより、メタン生成が発
生する領域においてより正確に制御され得るからである。プロセスパラメータを最適化し
て、メタン出力を最大化し、システムの摂動を制御することができる。
【0014】
従って、第1のチャンバおよび第2のチャンバの両方は、典型的には消化チャンバ、即
ち、使用時に嫌気性消化のうちの1つ以上の段階が実行されるチャンバである。
【0015】
更に、第1のチャンバは、実際には、嫌気性消化前の有機物の貯蔵チャンバとして機能
し得る。第1のチャンバが貯蔵チャンバとして機能する場合、前記第1のチャンバの冷蔵
により、その中に保持されている有機物の分解を遅らせ、従って、装置から周囲環境への
不快な臭いの放出を低減する。これは、例えば家庭内で装置を使用する場合に重要である
。例えば、電力供給の安価なオフピーク期間を利用するために、嫌気性消化の前に何時間
も第1のチャンバに有機物を保管する必要があるかもしれない。
【0016】
従って、「嫌気性消化前および/または嫌気性消化中」に有機物を保持する第1のチャ
ンバとは、嫌気性消化前あるいは嫌気性消化中、または嫌気性消化前および嫌気性消化中
の両方のいずれかに有機物を保持する第1のチャンバを指すことが理解されよう。
【0017】
しかしながら、装置は、(典型的には浸軟された)廃棄物が(いくつかの実施形態では
前記低温殺菌チャンバを介して)第1のチャンバに移される前に収容される貯蔵チャンバ
を備えてもよい。装置は、嫌気性消化のために有機物を第1のチャンバに移送するように
構成された制御可能なポンプを備えてもよい。貯蔵チャンバは冷蔵されてもよい。装置は
、貯蔵チャンバを冷蔵する手段を備えてもよい。
【0018】
装置は、第1のチャンバを冷蔵するための手段を備えてもよい。装置は、第1の消化チ
ャンバを冷却するように構成されたヒートポンプを備えてもよい。第1のチャンバを冷蔵
するための手段は、(家庭用冷蔵庫で一般的に使用されるような)蒸気圧縮装置、蒸気吸
収装置、(ペルチェ式冷蔵庫で使用されるような)熱電冷却装置のうちの1つ以上を備え
てもよい。
【0019】
装置は、第1のチャンバを加熱するための手段を備えてもよい。従って、加水分解およ
び酸生成は温度を上げて実施することができる。装置は、第1のチャンバ内の物質を低温
殺菌するように、例えば物質を閾値温度(典型的には40℃以上、50℃以上または60
℃以上)より高い温度まで少なくとも所定の期間(例えば1時間以上)にわたり加熱する
ように適合させることができる。これは、加水分解および酸生成と同時に、またはその後
に実行することができる。
【0020】
装置は、第1のチャンバおよび第2のチャンバに接続されたバッファチャンバを備えて
もよく、このバッファチャンバを通して有機物が第1のチャンバから第2のチャンバに移
動する。装置は、バッファチャンバ内の有機物を低温殺菌する(例えば、所定の時間、例
えば少なくとも1時間にわたり、所定の温度、一般的には少なくとも60℃まで加熱する
)ように構成されてもよい。
【0021】
装置は、消化のために第1のチャンバに移される前に、(例えば、浸軟された)有機廃
棄物が収容される低温殺菌チャンバを備えてもよい。前記低温殺菌チャンバは、少なくと
も所定の期間(例えば、1時間以上)にわたり、閾値温度(例えば、60℃以上)を超え
る温度まで加熱されてもよい。続いて、結果的に得られる低温殺菌された物質を、加水分
解および酸生成のために第1のチャンバに移すことができる。
【0022】
第1のチャンバは断熱されていてもよい。第1のチャンバは、断熱材料から形成されて
もよい。第1のチャンバは、断熱材料によって(即ち、少なくとも部分的に)包囲されて
いてもよい。
【0023】
第2のチャンバは断熱されていてもよい。第2のチャンバは、断熱材料から形成されて
もよい。第2のチャンバは、断熱材料によって(即ち、少なくとも部分的に)包囲されて
いてもよい。
【0024】
第1のチャンバおよび第2のチャンバは、互いに断熱されていてもよい。第1のチャン
バと第2のチャンバとの間に断熱材料を設けることができる。
【0025】
装置は、典型的には、有機物を導入することができる入口を含む。入口は、第1のチャ
ンバ内に(即ち直接的に)延在していてもよい。入口は(即ち、少なくとも部分的に)密
閉可能であってもよい。入口は、気密シールを備えてもよい。入口を密閉することにより
、通常、不快な臭いが装置から周囲環境に逃げるのを防ぐ。
【0026】
装置は、典型的には、嫌気性消化の前に有機物を浸軟するためのマセレータを含む。当
業者は、浸軟とは、有機物固体を切断または切り刻んで固体粒子サイズを小さくすること
を指すことを理解するであろう。マセレータは、1つ以上のブレードを備えてもよい。1
つ以上のブレードは回転可能であってもよい。マセレータはチョッパーポンプを備えても
よい。装置は、マセレータが設けられる浸軟チャンバを備えてもよい。入口は、有機物が
浸軟チャンバに導入されるように、浸軟チャンバ内に(即ち、直接的に)延在してもよい
。(即ち、浸軟された)有機物が浸軟チャンバから第1のチャンバに移動することができ
るように、浸軟チャンバと第1のチャンバ(または存在する場合には貯蔵チャンバ)との
間に導管を設けてもよい。浸軟チャンバは、(即ち、浸軟された)有機物が重力により浸
軟チャンバから第1のチャンバ(または存在する場合には貯蔵チャンバ)に落下および/
または流入するように、第1のチャンバ(または存在する場合には貯蔵チャンバ)の上に
(即ち垂直に)設けられてもよい。
【0027】
装置は、1つ以上の水スプレー等の水源を備えてもよい。水源(例えば、1つ以上の水
スプレー)は、(即ち使用時に)マセレータの少なくとも一部(例えば、1つ以上のブレ
ード)に水を指向する(例えば、噴霧する)ように構成されてもよい。マセレータの少な
くとも一部に水を指向することにより、一般には、有機物がマセレータを通過しやすくな
り、目詰まりが減少する。(即ち、浸軟された)有機物への水の添加は、一般的には、存
在する有機物の嫌気性消化を容易にするための有機物スラリーの形成を助ける。水の添加
は、有機物スラリーの窒素濃度の調整にも役立ち得る。
【0028】
水源(例えば、1つ以上の水スプレー)は、(即ち、使用時に)水を第1のチャンバに
指向する(例えば、噴霧する)ように構成されてもよい。
【0029】
有機物が前記第1のチャンバと第2のチャンバとの間を前記導管を通して移動すること
ができるように、導管は、第1のチャンバと第2のチャンバとの間で(即ち、直接的にま
たは少なくとも1つの更なる(例えば、バッファ)チャンバを介して、第1のチャンバか
ら第2のチャンバまで)延在し得る。装置は、導管を通る第1のチャンバと第2のチャン
バとの間の有機物の動きを調節するための有機物流量調整手段(例えば、有機物流量調整
弁)を備えてもよい。有機物流量調整手段は、ポンプを含む(例えば、からなる)ことが
できる。ポンプは、二方向ポンプであってもよく、即ち、有機物が第1のチャンバから第
2のチャンバに、かつ、第2のチャンバから第1のチャンバに汲み出され得るようにする
ことができる。
【0030】
第1のチャンバおよび第2のチャンバは、互いに隣接して(即ち、水平に)配置されて
もよい。第1のチャンバと第2のチャンバとの間の導管は、前記第1のチャンバと第2の
チャンバとの間でほぼ水平に延在してもよい。
【0031】
通常、第2のチャンバは冷蔵されない。
【0032】
装置は、周囲温度(即ち、周囲環境の温度)よりも高くなるように第2のチャンバ(例
えば、その内容物)の温度を調整するように構成されてもよい。装置は、第2のチャンバ
(例えば、その内容物)の温度を、第1のチャンバ(例えば、その内容物)の温度よりも
高く調整するように構成されてもよい。装置は、第2のチャンバ(例えば、その内容物)
の温度を、第1のチャンバ(例えば、その内容物)の温度より少なくとも10℃高くなる
よう調整するように構成されてもよい。しかしながら、メタン生成を抑制するために第1
のチャンバが加熱される場合、装置は、第1のチャンバ(例えば、その内容物)の温度を
第2のチャンバ(例えば、その内容物)の温度よりも少なくとも10℃だけ高くなるよう
調整するように構成されてもよい。
【0033】
装置は、第2のチャンバ(例えば、その内容物)を加熱するように構成されてもよく、
即ち、第2のチャンバは加熱されてもよい。装置は、第2のチャンバ(例えば、その内容
物)を10℃より高い、または15℃より高い、または20℃より高い、または25℃よ
り高い、または30℃より高い温度に加熱するように構成されてもよい。しかしながら、
第2のチャンバ(例えば、その内容物)が加熱される温度は、例えば、50℃未満または
典型的には40℃未満であり得る。メタン生成微生物は、通常、より高い温度(例えば1
0℃超)で増殖するため、一般には、第1のチャンバに対して第2のチャンバを加熱する
ことにより、冷蔵された第1のチャンバと比較して、第2のチャンバ内でのメタン生成微
生物の著しい増殖が促進される。
【0034】
装置は、直接的にまたは1つ以上の更なるチャンバ(例えば、バッファチャンバ)を介
して、第1のチャンバから第2のチャンバに(例えば、酢酸生成微生物およびメタン生成
微生物と共に)有機物を移す(例えば、供給する)ように構成されてもよい。装置は、直
接的にまたは1つ以上の更なるチャンバ(例えば、バッファチャンバ)を介して、第2の
チャンバから第1のチャンバに(例えば、酢酸生成微生物およびメタン生成微生物と共に
)有機物を移すように構成されてもよい。装置は、直接的にまたは1つ以上の更なるチャ
ンバ(例えば、バッファチャンバ)を介して、第1のチャンバと第2のチャンバとの間で
(例えば、酢酸生成微生物およびメタン生成微生物と共に)有機物を往復させる(例えば
、循環させる)ように構成されてもよい。有機物が第1のチャンバと第2のチャンバとの
間で移動(例えば、循環)すると、通常、第1のチャンバで酸生成および酢酸生成が(即
ち、主に)行われ、第2のチャンバでメタン生成が(即ち、主に)行われる(メタン生成
微生物は、一般に、第1のチャンバが冷蔵されている場合、温度が低いために第1のチャ
ンバでは活性が低く、または、第1のチャンバが加熱されている場合、温度が高いために
第2のチャンバでは活性が低い、あるいは殺されるからである)。
【0035】
装置は、第2のチャンバを加熱するための手段を備えてもよい。装置は、第2のチャン
バの内容物を加熱するための手段を備えてもよい。装置は、(即ち、使用時に)第2のチ
ャンバ(例えば、その内容物)を加熱するように構成されたヒーターを備えてもよい。装
置は、(即ち、使用時に)第2のチャンバ(例えば、その内容物)を加熱するように構成
された1つ以上の加熱要素を備えてもよい。
【0036】
装置は、第1のチャンバ内の有機物を攪拌するための手段を備えてもよい。例えば、装
置は、第1のチャンバ内に設けられる1つ以上のパドルを備えてもよい。1つ以上のパド
ルは、1つ以上のパドルの動き(例えば、回転)が第1のチャンバの内容物の攪拌(例え
ば、混合)を引き起こすように、移動可能(例えば、回転可能)であってもよい。
【0037】
装置は、第2のチャンバ内の有機物を攪拌するための手段を備えてもよい。例えば、装
置は、第2のチャンバ内に設けられる1つ以上のパドルを備えてもよい。1つ以上のパド
ルは、1つ以上のパドルの動き(例えば、回転)が、第2のチャンバの内容物の攪拌(例
えば、混合)を引き起こすように、移動可能(例えば、回転可能)であってもよい。
【0038】
第1のチャンバは取り外し可能(例えば、交換可能)であってもよい。第2のチャンバ
は取り外し可能(例えば、交換可能)であってもよい。第1のチャンバおよび/または第
2のチャンバは、装置の洗浄または修理を可能にするために取り外し可能であってもよい
。過剰な固体および/または液体の発酵残渣を装置から除去するため、または新鮮な微生
物種菌を装置に導入するために、第2のチャンバの除去および/または交換が必要な場合
もある。
【0039】
装置は、ガス精製器を備えてもよい。ガス精製器は、1つ以上のフィルタを備えてもよ
い。1つ以上のフィルタは、第1のチャンバおよび/または第2のチャンバ内の有機物の
嫌気性消化中に生成されるガスから1つ以上の(即ち、ガス状)種を(例えば、選択的に
)除去するように構成され得る。1つ以上のフィルタは、二酸化炭素(CO2)、硫化水
素(H2S)、アンモニア(NH3)のうちの1つ以上を(例えば、選択的に)除去する
ように構成されてもよい。1つ以上のフィルタは、炭素(例えば、活性炭、木炭)を含ん
でもよい。1つ以上のフィルタは、過マンガン酸カリウムを含んでもよい。
【0040】
装置は、ガス精製器(即ち、1つ以上のフィルタ)が配置されているガス精製チャンバ
を備えてもよい。装置は、ガスを前記第1のチャンバとガス精製チャンバとの間、および
/または、前記第2のチャンバとガス精製チャンバとの間で輸送することができるように
、第1のチャンバとガス精製チャンバとの間(即ち、第1のチャンバからガス精製チャン
バまで)および/または、第2のチャンバとガス精製チャンバとの間(即ち、第2のチャ
ンバからガス生成チャンバまで)延在する1つ以上の導管を備えてもよい。
【0041】
装置は、ジェネレータを備えてもよい。ジェネレータは、典型的には、第1のチャンバ
および/または第2のチャンバおよび/またはガス精製器(例えば、ガス精製チャンバ)
からのガス(例えば、バイオガス、換言すると、少なくとも主にメタンガス)の流れを受
け取るように構成される。ジェネレータは、受け取ったガスを燃焼させるように構成され
てもよい。ジェネレータは、ガスの燃焼によって生成された電気および/または熱を出力
するように構成されてもよい。ジェネレータは、熱電併給(CHP)ジェネレータであっ
てもよい。ジェネレータは、マイクロ熱電併給(マイクロCHP)ジェネレータであって
もよい。
【0042】
装置は、ガス貯蔵チャンバ(即ち、ガスアキュムレータ)を備えてもよい。ガス貯蔵チ
ャンバ(即ち、ガスアキュムレータ)は、一般に、ガスがジェネレータに送り込まれる前
にガスを貯蔵するように構成されている。ガス貯蔵チャンバは、典型的には、250L未
満、またはより典型的には200L未満、またはより典型的には150L未満のガスを貯
蔵するように構成されている(例えば、寸法決めされている)。ガス貯蔵チャンバは、約
100Lのガスを貯蔵するように構成(例えば、寸法決め)されてもよい。
【0043】
ジェネレータは、(例えば、本管から来るガス供給から)天然ガスの流れを受け取るよ
うに構成されてもよい。ジェネレータは、第1のガス流および第2のガス流を受け取るよ
うに構成されてもよく、第1のガス流は、第1のチャンバおよび/または第2のチャンバ
および/またはガス精製器(例えば、ガス精製チャンバ)および/またはガス貯蔵チャン
バ(例えば、ガスアキュムレータ)からのガス(例えば、バイオガス)の流れであり、第
2のガス流は、(例えば、本管から来るガス供給からの)天然ガスの流れである。装置(
例えば、ジェネレータ)は、ジェネレータへの第1のガス流および/または第2のガス流
を調整するように構成されたガス流量調整器(例えば、バルブ、例えば、ソレノイドバル
ブ)を備えてもよい。
【0044】
ジェネレータは、通常、バイオガスが天然ガスの発熱量(一般に、37.5MJ/m3
)と同様の発熱量(一般に、30MJ/m3~34MJ/m3)の高メタン含有量を有す
る故に、第1のチャンバおよび/または第2のチャンバでの嫌気性消化によって生成され
る天然ガスおよびバイオガスの両方を燃焼させることができる。
【0045】
装置(例えば、ガス流量調整器)は、ガス貯蔵チャンバに貯蔵されたガスの体積が閾値
体積を超えたときに、ガス貯蔵チャンバ(例えば、ガスアキュムレータ)からジェネレー
タへのガスの流れを可能にするように構成されてもよい。装置(例えば、ガス流量調整器
)は、ガス貯蔵チャンバに貯蔵されたガスの体積が最小値を下回ったときに、ガス貯蔵チ
ャンバ(例えば、ガスアキュムレータ)からジェネレータへのガスの流れを制限(例えば
、防止)するように構成されてもよい。装置(例えば、ガス流量調整器)は、ガス貯蔵チ
ャンバからジェネレータへのガスの流れが制限されている(例えば、妨げられている)と
きに、例えば、ガス貯蔵チャンバに貯蔵されたガスの体積が最小体積を下回る場合に、天
然ガスの(例えば、本管から来るガス供給から)ジェネレータへの流れを可能にするよう
に構成されてもよい。装置(例えば、ガス流量調整器)は、ガス貯蔵チャンバ(例えば、
ガスアキュムレータ)からのガスの流れが許可されるとき、例えば、ガス貯蔵チャンバに
貯蔵されているガスの体積が閾値体積を超えた場合、天然ガスの(例えば、本管から来る
ガス供給から)ジェネレータへの流れを制限する(例えば、妨げる)ように構成されても
よい。
【0046】
ジェネレータは、ジェネレータによって生成された電気を、例えばネットメーターを使
用して電力系統に供給することができるように、電力系統に接続してもよい。
【0047】
ジェネレータは、一般に、1時間あたり約600Lのガス(即ち、天然ガスおよび/ま
たはバイオガス)を消費して、1kWeの電気および5.5kWの熱を生成する。
【0048】
装置は、一般に、処理される有機物1kgあたり100Lのバイオガスを生成する。
【0049】
装置は、1つ以上のセンサを備えてもよい。1つ以上のセンサは、1つ以上の嫌気性消
化プロセスパラメータを測定するように構成されてもよい。
【0050】
1つ以上のセンサは、第1のチャンバおよび/または存在する場合にはバッファチャン
バ内の材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー)の体積を
示すパラメータを測定するように構成されてもよい。1つ以上のセンサは、第1のチャン
バおよび/または存在する場合にはバッファチャンバ内の材料(例えば、有機物および/
または有機物と水を含む有機物スラリー)の質量を示すパラメータを測定するように構成
されてもよい。
【0051】
1つ以上のセンサは、第1のチャンバおよび/または存在する場合にはバッファチャン
バ内に保持される材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー
)の組成を示す1つ以上のパラメータを測定するように構成されてもよい。1つ以上のセ
ンサは、第1のチャンバおよび/または存在する場合にはバッファチャンバ内に保持され
る材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー)中のタンパク
質の量(例えば、濃度)を示す1つ以上のパラメータを測定するように構成されてもよい
。1つ以上のセンサは、第1のチャンバおよび/または存在する場合にはバッファチャン
バ内に保持される材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー
)中の窒素含有種(例えば、分子、化合物等)の量(例えば、濃度)を示す1つ以上のパ
ラメータを測定するように構成されてもよい。1つ以上のセンサは、第1のチャンバおよ
び/または存在する場合にはバッファチャンバ内に保持される材料(例えば、有機物およ
び/または有機物と水を含む有機物スラリー)中の窒素の量(例えば、濃度)を示す1つ
以上のパラメータを測定するように構成されてもよい。1つ以上のセンサは、1つ以上の
ケルダールプローブを含む(例えば、からなる)ことができる。1つ以上のセンサは、1
つ以上のアンモニア用イオン電極を含む(例えば、からなる)ことができる。1つ以上の
センサは、第1のチャンバおよび/または存在する場合にはバッファチャンバ内に保持さ
れた材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー)中の炭水化
物の量(例えば、濃度)を示す1つ以上のパラメータを測定するように構成されてもよい
。1つ以上のセンサは、第1のチャンバおよび/または存在する場合にはバッファチャン
バ内に保持される材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー
)中の脂質(例えば、脂肪)の量(例えば、濃度)を示す1つ以上のパラメータを測定す
るように構成されてもよい。
【0052】
1つ以上のセンサは、第1のチャンバおよび/または存在する場合にはバッファチャン
バ内の材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー)中の1つ
以上の脂肪酸(即ち、揮発性脂肪酸)の濃度を示すパラメータを測定するように構成され
てもよい。例えば、1つ以上のセンサは、第1のチャンバおよび/または存在する場合に
はバッファチャンバ内の材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物ス
ラリー)中のギ酸(CH2O2)、酢酸(C2H4O2)、プロピオン酸(C3H6O2
)、酪酸(C4H8O2)および/または吉草酸(C5H10O2)の濃度を示すパラメ
ータを測定するように構成することができる。1つ以上のセンサは、1つ以上の(または
任意の)揮発性脂肪酸を感知する揮発性脂肪酸(VFA)センサ、例えば、光学VFAセ
ンサ(ファブリ・ペロー分光計および/または減衰全反射(ATR)プローブを含むVF
Aセンサ等)を含む(例えば、からなる)ことができる。VFAセンサは、酢酸センサ、
例えば光学(典型的には赤外線)酢酸センサであってもよい。典型的には、酢酸が主なV
FAである故に、いくつかの実施形態では、酢酸を測定すれば十分であり得る。
【0053】
1つ以上のセンサは、第1のチャンバおよび/または存在する場合にはバッファチャン
バ内の材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー)のpHを
示すパラメータを測定するように構成されてもよい。1つ以上のセンサは、例えばpHメ
ーター等のpHセンサであってもよい。
【0054】
1つ以上のセンサは、第1のチャンバおよび/または存在する場合にはバッファチャン
バ(例えば、その内容物)の温度(例えば、第1のチャンバおよび/または存在する場合
にはバッファチャンバ内の材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物
スラリー)の温度)を示すパラメータを測定するように構成されてもよい。1つ以上のセ
ンサは温度センサであってもよい。例えば、1つ以上のセンサは、1つ以上のサーミスタ
、熱電対、または抵抗温度計を含む(例えば、からなる)ことができる。
【0055】
1つ以上のセンサは、第2のチャンバ内の材料(例えば、有機物および/または有機物
と水を含む有機物スラリー)の体積を示すパラメータを測定するように構成されてもよい
。1つ以上のセンサは、第2のチャンバ内の材料(例えば、有機物および/または有機物
と水を含む有機物スラリー)の質量を示すパラメータを測定するように構成されてもよい
。
【0056】
1つ以上のセンサは、第2のチャンバ内に保持される材料(例えば、有機物および/ま
たは有機物と水を含む有機物スラリー)の組成を示す1つ以上のパラメータを測定するよ
うに構成されてもよい。1つ以上のセンサは、第2のチャンバ内に保持される材料(例え
ば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー)中のタンパク質の量(例え
ば、濃度)を示す1つ以上のパラメータを測定するように構成されてもよい。1つ以上の
センサは、第2のチャンバ内に保持される材料(例えば、有機物および/または有機物と
水を含む有機物スラリー)中の窒素含有種(例えば、分子、化合物等)の量(例えば、濃
度)を示す1つ以上のパラメータを測定するように構成されてもよい。1つ以上のセンサ
は、第2のチャンバ内に保持される材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含
む有機物スラリー)中の窒素の量(例えば、濃度)を示す1つ以上のパラメータを測定す
るように構成されてもよい。1つ以上のセンサは、1つ以上のケルダールプローブを含む
(例えば、からなる)ことができる。1つ以上のセンサは、1つ以上のアンモニア用イオ
ン電極を含む(例えば、からなる)ことができる。1つ以上のセンサは、第2のチャンバ
内に保持される材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー)
中の炭水化物の量(例えば、濃度)を示す1つ以上のパラメータを測定するように構成さ
れてもよい。1つ以上のセンサは、第2のチャンバ内に保持される材料(例えば、有機物
および/または有機物と水を含む有機物スラリー)中の脂質(例えば、脂肪)の量(例え
ば、濃度)を示す1つ以上のパラメータを測定するように構成されてもよい。
【0057】
1つ以上のセンサは、第2のチャンバ内の材料(例えば、有機物および/または有機物
と水を含む有機物スラリー)中の1つ以上の脂肪酸(即ち、揮発性脂肪酸)の濃度を示す
パラメータを測定するように構成されてもよい。例えば、1つ以上のセンサは、第2のチ
ャンバ内の材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー)中の
ギ酸(CH2O2)、酢酸(C2H4O2)、プロピオン酸(C3H6O2)、酪酸(C
4H8O2)および/または吉草酸(C5H10O2)の濃度を示すパラメータを測定す
るように構成することができる。1つ以上のセンサは、揮発性脂肪酸(VFA)センサ、
例えば、光学VFAセンサ(ファブリ・ペロー分光計および/または減衰全反射(ATR
)プローブを含むVFAセンサ等)を含む(例えば、からなる)ことができる。
【0058】
1つ以上のセンサは、第2のチャンバ内の材料(例えば、有機物および/または有機物
と水を含む有機物スラリー)のpHを示すパラメータを測定するように構成されてもよい
。1つ以上のセンサは、例えば、pHメーター等のpHセンサであってもよい。
【0059】
1つ以上のセンサは、第2のチャンバ(例えば、その内容物)の温度(例えば、第2の
チャンバ内の材料(例えば、有機物および/または有機物と水を含む有機物スラリー)の
温度)を示すパラメータを測定するように構成されてもよい。1つ以上のセンサは、温度
センサであってもよい。例えば、1つ以上のセンサは、1つ以上のサーミスタ、熱電対、
または抵抗温度計を含む(例えば、からなる)ことができる。
【0060】
装置はコントローラを備えてもよい。コントローラは、1つ以上のセンサから1つ以上
のパラメータの測定値を受信するように構成されてもよい。コントローラは、受信した測
定値に応じて装置の動作を変更させるように構成されてもよい。例えば、コントローラは
、第1のチャンバの温度の測定値を受信し、受信した温度測定値に応じて第1のチャンバ
を(適宜)冷蔵または加熱するための手段の動作を調整するように構成されてもよい。コ
ントローラは、1つ以上のパラメータ(第1のチャンバおよび/または第2のチャンバお
よび/または存在する場合にはバッファチャンバ中の材料(例えば、有機物および/また
は有機物と水を含む有機物スラリー)の体積、質量、組成、タンパク質濃度、窒素含有種
の濃度、窒素濃度、炭水化物濃度、脂質(例えば、脂肪)濃度、脂肪酸(即ち、揮発性脂
肪酸)濃度、および/またはpH等)の受信した測定値に応答して、第1のチャンバと第
2のチャンバとの間(および/またはバッファチャンバが存在する場合にはバッファチャ
ンバと第2のチャンバとの間)の有機物(例えば、有機物スラリー)の動きを調整する(
即ち、変化させる)ように構成されてもよい。
【0061】
従って、コントローラは、典型的には、加水分解および酸生成に曝された材料の1つ以
上のパラメータの測定値を考慮して、第2のチャンバへの有機物の移動速度を制御する。
【0062】
コントローラは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)であり得る。コント
ローラは、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)を含み得る。
【0063】
コントローラは、比例積分微分(PID)コントローラであり得る。当業者は、PID
コントローラが、所望のシステム設定点と測定されたプロセス変数との間の差としてエラ
ー値が計算され、比例項、積分項および微分項に基づいてシステム補正が適用される制御
ループフィードバックメカニズムを利用するコントローラであることを理解するだろう。
しかしながら、コントローラは、インテリジェントコントローラであることがより一般的
である。当業者は、インテリジェントコントローラが、システムを調整するために何らか
の形態の人工知能を利用するコントローラであることを理解するだろう。インテリジェン
トコントローラにより使用可能な人工知能手法には、ニューラルネットワーク、ベイズ確
率、ファジー論理、機械学習、進化的計算、および遺伝的アルゴリズムが含まれる。
【0064】
装置は、信号送信機および/または信号受信機を備えてもよい。例えば、装置は、無線
ネットワーク送信機および/または受信機、または、ブルートゥース送信機および/また
は受信機を備えてもよい。コントローラは、送信機および/または受信機を使用してリモ
ートデバイス(パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、および/または携帯
電話等)と通信するように構成(例えばプログラム)されてもよい。
【0065】
コントローラは、1つ以上のセンサからの1つ以上の出力に応じて、リモートデバイス
に信号を送信する、およびリモートデバイスから信号を受信するようにプログラムされて
もよい。例えば、コントローラは、第1のチャンバおよび/または第2のチャンバの窒素
濃度および/またはVFA濃度が臨界閾値を超えた場合、および/または、第2の消化チ
ャンバ内の材料の体積が臨界値を超えた場合、または1つ以上のガスセンサが装置の外側
でメタンを検出した場合、リモートデバイスに警報を発するようにプログラムされてもよ
い。
【0066】
装置は、第1のチャンバおよび/または第2のチャンバの外側(例えば、装置の外側)
の1つ以上のガス(例えば、メタン)を検出(例えば、その濃度を測定)するように構成
された1つ以上のガスセンサ(例えば、1つ以上のメタンセンサ)を備えてもよい。コン
トローラは、通常、1つ以上のガスセンサから1つ以上の出力を受信するように構成され
る。コントローラは、1つ以上のガスセンサが前記第1のチャンバおよび/または第2の
チャンバの外側(または装置の外側)でメタンを検出した場合、第1のチャンバおよび/
または第2のチャンバの温度を下げるように構成されてもよい。コントローラは、1つ以
上のガスセンサが第1のチャンバおよび/または第2のチャンバ(例えば、装置の外側)
でメタンを検出した場合、第1のチャンバおよび/または第2のチャンバの温度を10℃
未満、または8℃未満、または6℃未満、または4℃未満に下げるように構成されてもよ
い。付加的または代替的に、コントローラは、第1のチャンバおよび/または第2のチャ
ンバ内の窒素濃度および/またはVFA濃度(例えば、酢酸濃度)が臨界閾値を超える場
合、および/または、第2の消化チャンバ内の材料の体積が臨界値を超える場合、第1の
チャンバおよび/または第2のチャンバの温度を下げるように構成されてもよい。
【0067】
装置(例えば、コントローラ)は、クロックを備えてもよい。装置(例えば、コントロ
ーラ)はタイマーを備えてもよい。コントローラは、クロックまたはタイマーからの出力
に基づいて、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の有機物の動きを調整するように構
成(例えば、プログラム)されてもよい。
【0068】
装置は外部ハウジングを備えてもよい。外部ハウジングは、第1のチャンバおよび第2
のチャンバを収容する(即ち、保持する)ように構成(例えば、成形および寸法決め)さ
れてもよい。外部ハウジングは、存在する場合、マセレータ(および、存在する場合には
、浸軟チャンバ)、コントローラ、ガス精製器(および、存在する場合には、ガス精製チ
ャンバ)、ガス貯蔵チャンバおよび/またはジェネレータを保持するように更に構成され
てもよい。入口は、外部ハウジングの外壁を貫通していてもよい。
【0069】
外部ハウジングは、ジェネレータではなく、存在する場合には、マセレータ(および、
存在する場合には、浸軟チャンバ)、コントローラ、ガス貯蔵チャンバおよび/またはガ
ス精製器(および、存在する場合には、ガス精製チャンバ)を保持するように構成されて
もよい。換言すると、外部ハウジングは、ジェネレータを除くほとんどまたは全ての他の
装置コンポーネントを保持することができ、即ち、ジェネレータは他のコンポーネントと
は別個に設けられている。
【0070】
第1のチャンバは密閉されていてもよい(即ち、周囲環境から密閉されていてもよい)
。第2のチャンバは密閉されていてもよい(即ち、周囲環境から密閉されていてもよい)
。第1のチャンバおよび/または第2のチャンバを密閉することにより、一般的に、不快
な臭いおよび/または微生物が周囲環境に逃げることを低減することができる。あるいは
、第1のチャンバは密封されていなくてもよい(例えば、第1のチャンバへの入口は密封
されていない)が、前記第1のチャンバの冷却により、周囲環境への不快なガスの漏出は
依然として制限される。
【0071】
装置は、本管から引き込んだ給水設備に配管することができる。装置は幹線の電源に電
気的に接続されていてもよい。
【0072】
装置は、1つ以上の嫌気性微生物を含み得る。
【0073】
装置は酢酸生成微生物を含んでもよい。酢酸生成微生物は、酢酸生成細菌を含む(例え
ば、からなる)ことができる。酢酸生成微生物は、アセトバクテリウム属に属する酢酸生
成細菌を含む(例えば、からなる)ことができる。酢酸生成微生物は、アセトバクテリウ
ム・ウッディ種に属する酢酸生成細菌を含む(例えば、からなる)ことができる。
【0074】
酢酸生成微生物は、酸生成微生物であってもよい。酢酸生成細菌は、一般に、ホモ酢酸
生成性である。酢酸生成菌も酸生成性であってもよい。アセトバクテリウム属に属する酢
酸生成細菌も酸生成性であり得る。アセトバクテリウム・ウッディ種に属する酢酸生成細
菌も、一般には酸生成性である。
【0075】
装置は、メタン生成微生物を含んでもよい。メタン生成微生物は、メタン生成古細菌を
含む(例えば、からなる)ことができる。メタン生成微生物は、メタノサエタ属に属する
メタン生成古細菌を含む(例えば、からなる)ことができる。メタン生成微生物は、メタ
ノサエタ・コンシリイ種に属するメタン生成古細菌を含む(例えば、からなる)ことがで
きる
【0076】
装置は、第1のチャンバの温度(即ち、第1のチャンバが冷蔵または加熱される温度)
で抑制される(例えば、増殖しない)メタン生成微生物(例えば、メタン生成古細菌)を
含んでもよい。
【0077】
装置は、主にアセトバクテリウム属に属する細菌と、メタノサエタ属に属する古細菌と
を含む微生物培養物を含んでもよい。微生物培養物は、主に、アセトバクテリウム・ウッ
ディ種に属する細菌と、メタノサエタ・コンシリイ種に属する古細菌とを含み得る。
【0078】
装置のサイズは、3次元、即ち、装置の高さ(即ち、装置が通常の使用状態にあるとき
の垂直方向に沿った装置の最大延長)と、装置の幅(即ち、装置が通常の使用状態にある
ときの第1の水平方向に沿った装置の延長の最大延長)と、装置の深さ(即ち、装置が通
常の使用状態にあるときの前記第1の水平方向に垂直な第2の水平方向に沿った装置の最
大延長)とを参照して定義することができる。装置は、一般に、3メートル未満、または
2メートル未満、または1メートル未満、または0.5メートル未満の(垂直)高さであ
る。装置は、一般に、3メートル未満、または2メートル未満、または1メートル未満、
または0.5メートル未満の幅を有する。装置は、一般に、3メートル未満、または2メ
ートル未満、または1メートル未満、または0.5メートル未満の深さを有する。装置は
、一般に、15立方メートル未満、または10立方メートル未満、または5立方メートル
未満、または3立方メートル未満、または1立方メートル未満の体積を占める。
【0079】
装置は、家庭用装置、即ち、家庭環境(例えば、家庭用住居)で使用するために構成さ
れた装置であり得る。装置は、キッチン装置、即ちキッチンで使用するために構成された
装置であってもよい。
【0080】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による嫌気性消化装置を有機物の嫌気性消
化に使用する方法を提供する。この方法は、第1のチャンバで有機物を酢酸生成微生物に
曝露するステップと、有機物の少なくとも一部を第1のチャンバから第2のチャンバに移
送するステップと、第2のチャンバで前記有機物の少なくとも一部をメタン生成微生物に
曝露するステップと、を含む。有機物は、第1のチャンバから第2のチャンバに直接的に
、または1つ以上の更なるチャンバを介して移送され得る。
【0081】
本方法は、有機物を浸軟する(例えば、細断する)ステップを含むことができる。有機
物を浸軟するステップは、典型的には、第1のチャンバで有機物を酢酸生成微生物に曝露
する前に実施される。本方法は、有機物に水を添加するステップ(例えば、有機物と水を
混合するステップ)を含んでもよい。浸軟ステップ中および/または浸軟後に、有機物に
水を添加してもよい。水は、第1のチャンバで有機物に添加することができる。
【0082】
本方法は、第1のチャンバを冷蔵するステップを含むことができる。本方法は、第1の
チャンバを10℃以下、または8℃以下、または6℃以下、または4℃以下の温度に冷蔵
するステップを含むことができる。
【0083】
あるいは、本方法は、第1のチャンバを40℃以上、または50℃以上、または60℃
以上の温度に加熱するステップを含んでもよい。
【0084】
本方法は、典型的には、メタン生成微生物が第2のチャンバから第1のチャンバに移さ
れるが、第1のチャンバの温度の調節(冷蔵または加熱)により、メタン生成が主に第2
のチャンバで行われるように、有機物の少なくとも一部を第2のチャンバから第1のチャ
ンバに移す(戻す)ステップも含む。従って、メタン生成微生物が第2のチャンバから第
1のチャンバに移動することにより生じるメタン生成は、第1のチャンバの冷蔵または加
熱により第1のチャンバでは抑制される。
【0085】
これにより、例えば、更なる嫌気性消化のため、更なる微生物を第1のチャンバに供給
するために、消化されている有機物を第2のチャンバから第1のチャンバに戻すことが可
能となる。
【0086】
本方法は、酢酸生成微生物および/またはメタン生成微生物への曝露の前に、第1のチ
ャンバに有機物を貯蔵するステップを含み得る。本方法は、昼間(例えば、日中)に第1
のチャンバ(または存在する場合には貯蔵チャンバ)に有機物を貯蔵するステップを含む
ことができる。
【0087】
本方法は、第1のチャンバで有機物(例えば、有機物と水のスラリー)を攪拌(例えば
、混合)するステップを含み得る。
【0088】
本方法は、有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露するステップを含んでもよい。1つ
以上の加水分解酵素は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼのうちの1つ
以上を含み得る。本方法は、第1のチャンバで有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露す
るステップを含むことができる。有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露するステップは
、有機物を酢酸生成微生物に曝露するステップの前および/または最中に実施することが
できる。
【0089】
本方法は、第2のチャンバを加熱するステップを含み得る。本方法は、第2のチャンバ
を10℃を超える、または15℃を超える、または20℃を超える、または25℃を超え
る、または30℃を超える温度に加熱するステップを含むことができる。
【0090】
第2のチャンバは、第2のチャンバ内のメタン生成を最大化するために選択された温度
範囲内に温度調節されてもよい。
【0091】
本方法は、第2のチャンバで有機物(例えば、有機物と水のスラリー)を攪拌(例えば
、混合)するステップを含むことができる。
【0092】
本方法は、第1のチャンバ内の有機物の一部を前記第1のチャンバから第2のチャンバ
に移送するステップを含むことができる。本方法は、第1のチャンバ内の有機物の第1の
部分を前記第1のチャンバから第2のチャンバに移送し、続いて、第1のチャンバ内に残
っている有機物の第2の部分を前記第1のチャンバから第2のチャンバに移送するステッ
プを含むことができる。本方法は、第1のチャンバ内の有機物のうちの3つ以上の部分を
前記第1のチャンバから第2のチャンバに連続的に移す(即ち、供給する)ステップを含
むことができる。
【0093】
本方法は、第2のチャンバ内の有機物の一部を前記第2のチャンバから第1のチャンバ
に移送する(例えば、戻す)ステップを含むことができる。本方法は、第1のチャンバと
第2のチャンバとの間で有機物を繰り返し(例えば、周期的に)往復させるステップを含
むことができる。本方法は、24時間以内に、第1のチャンバと第2のチャンバとの間で
有機物を繰り返し(例えば、少なくとも2回、より典型的には3回以上、4回以上、また
は5回以上)移送する(例えば、往復させる)ステップを含み得る。本方法は、一晩中、
第1のチャンバと第2のチャンバとの間で有機物を繰り返し(例えば、少なくとも2回、
より典型的には3回以上、4回以上、または5回以上)移送する(例えば、往復させる)
ステップを含み得る。有機物は、クロックまたはタイマーからの出力に基づいて、第1の
チャンバと第2のチャンバとの間で(例えば、周期的に)(例えば、第1のチャンバから
第2のチャンバへ)移送されてもよい。有機物は、約1時間ごと、または2時間ごと、ま
たは3時間ごと、24時間以内および/または一晩中、第1のチャンバと第2のチャンバ
との間で移動されてもよい。
【0094】
本方法は、第1のチャンバおよび/または第2のチャンバ内の材料(例えば、有機物お
よび/または有機物と水を含む有機物スラリー)の体積、質量、組成、タンパク質濃度、
窒素含有種の濃度、窒素濃度、炭水化物濃度、脂質(例えば脂肪)濃度、脂肪酸(即ち、
揮発性脂肪酸、例えば酢酸)濃度、および/またはpHを示す1つ以上のパラメータを測
定する1つ以上のセンサを含み得る。本方法は、コントローラにより前記1つ以上のパラ
メータの測定値を受信するステップを含むことができる。本方法は、コントローラにより
、第1のチャンバおよび/または第2のチャンバ内の材料(例えば、有機物および/また
は有機物と水を含む有機物スラリー)の体積、質量、組成、タンパク質濃度、窒素含有種
の濃度、窒素濃度、炭水化物濃度、脂質(例えば、脂肪)濃度、脂肪酸(即ち、揮発性脂
肪酸、例えば、酢酸)濃度、および/またはpHのうち受信した測定値に応答して、第1
のチャンバと第2のチャンバとの間で有機物の一部を移送する(例えば、一部を繰り返し
移送する)ステップを含み得る。
【0095】
本方法は、第1のチャンバで測定されたタンパク質濃度および/または窒素濃度に応じ
て(例えば、それに依存して、例えば、それに比例する)1つ以上の加水分解酵素を第1
のチャンバに追加するステップを含み得る。換言すると、一般に、第1のチャンバに追加
される加水分解酵素の量は、測定されたタンパク質濃度および/または窒素濃度に依存す
る。
【0096】
本方法は、前記第1のチャンバで測定された窒素濃度が閾値を超える場合(例えば、1
000mg/Lの濃度を超える場合)、第1のチャンバに水を追加するステップを含み得
る。本方法は、前記第2のチャンバで測定された窒素濃度が閾値を超える場合(例えば、
1000mg/Lの濃度を超える場合)、第2のチャンバに水を追加するステップを含み
得る。
【0097】
本方法は、前記第2のチャンバで測定された揮発性脂肪酸濃度(例えば、酢酸濃度)が
閾値を超える(例えば、300mg/Lの濃度を超える)場合、第2のチャンバに水を追
加するステップを含み得る。
【0098】
本方法は、第1のチャンバ内の有機物の一部を第1のチャンバから第2のチャンバに移
送するステップを含むことができ、移送される有機物の一部の体積は、第2のチャンバの
揮発性脂肪酸濃度(例えば、酢酸濃度)が閾値(例えば、300mg/Lの濃度)を超え
ないように、第1のチャンバで測定された揮発性脂肪酸濃度(例えば、酢酸濃度)を考慮
して決定される。
【0099】
本方法は、第1のチャンバ内の有機物の一部を前記第1のチャンバから第2のチャンバ
に移送する前(例えば、直前)に、前記第2のチャンバで測定された揮発性脂肪酸濃度(
例えば、酢酸濃度)が閾値を超える(例えば、300mg/Lの濃度を超える)場合、第
2のチャンバに水を追加するステップを含み得る。
【0100】
本方法は、第1のチャンバ内の有機物の一部を、前記第1のチャンバから第2のチャン
バに繰り返し移送するステップを含むことができる。第1のチャンバから第2のチャンバ
に移送される有機物の各部分の体積は、通常、第1のチャンバで測定された揮発性脂肪酸
濃度(例えば、酢酸濃度)と、第1のチャンバ内の有機物の体積(即ち、有機物の一部が
移送される直前の第1のチャンバ内の有機物の体積)とを考慮して決定される。
【0101】
本方法は、装置の1稼働サイクル内で、第1のチャンバ内の有機物の一部を第1のチャ
ンバから第2のチャンバに繰り返し移送するステップを含むことができる。1稼働サイク
ルには、通常、有機物が装置に(即ち、入口を介して)追加される期間と、有機物が第1
のチャンバおよび/または第2のチャンバで消化される(即ち、重複していない)期間と
が含まれる。1作業サイクルは24時間続いてもよい。
【0102】
各稼働サイクルの開始時に、通常、第1のチャンバは最大量の有機物を保持している。
各稼働サイクルの終了時には、通常、第1のチャンバは最小量の有機物を保持している(
例えば、有機物をほとんど保持していない)。本方法は、第1のチャンバから第2のチャ
ンバへの有機物の移動速度を変更するステップを含むことができる。第1のチャンバから
第2のチャンバへの有機物の移動速度は、第1のチャンバで測定される揮発性脂肪酸濃度
(例えば、酢酸濃度)(および、例えば、稼働サイクルの開始時における第1のチャンバ
内の有機物の体積(例えば、第1のチャンバ内の最大量の有機物))を考慮して決定する
ことができる。第1のチャンバから第2のチャンバへの有機物の移動速度を変更するステ
ップは、第1のチャンバから第2のチャンバへの有機物の一部の移動の間の時間の変更、
および/または移動する有機物の一部の体積の変更を含み得る。本方法は、装置の1稼働
サイクル内で、第1のチャンバ内の有機物の一部を第1のチャンバから第2のチャンバに
繰り返し移送するステップを含むことができ、第1のチャンバから第2のチャンバに移送
される有機物の各部分の体積は、第1のチャンバで測定された揮発性脂肪酸濃度(例えば
、酢酸濃度)と、稼働サイクルの開始時における第1のチャンバ内の有機物の体積(例え
ば、第1のチャンバ内の最大量の有機物)と、有機物の一部が移送される直前の第1のチ
ャンバ内の有機物の体積とを考慮して決定される。第1のチャンバから第2のチャンバに
移動する有機物の各部分の体積は、通常、稼働サイクルの終了時に第1のチャンバに残っ
ているべき有機物の目標体積(例えば、第1のチャンバ内の有機物の体積がほぼゼロ)お
よび/または稼働サイクルの終了前に行われるべき第1のチャンバから第2のチャンバへ
の有機物の移送の目標数を考慮して決定される。
【0103】
本方法は、第2のチャンバで測定された揮発性脂肪酸濃度(例えば、酢酸濃度)が閾値
を超える(例えば、300mg/Lの濃度を超える)場合、第2のチャンバから第1のチ
ャンバに有機物を移送するステップを含むことができる。
【0104】
本方法は、第2のチャンバ内の材料の体積が閾値を超える場合、第2のチャンバから第
1のチャンバに有機物を移送するステップを含むことができる。
【0105】
本方法は、第1のチャンバおよび/または第2のチャンバ内の有機物の嫌気性消化中に
生成される1つ以上のガスを濾過するガス精製器を含むことができる。本方法は、ガス精
製器が、ガスから二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)および/またはアンモニア
(NH3)のうちの1つ以上を(例えば、選択的に)除去するステップを含み得る。
【0106】
酢酸生成微生物は、酢酸生成細菌を含む(例えば、からなる)ことができる。酢酸生成
微生物は、アセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌を含む(例えば、からなる)こと
ができる。酢酸生成微生物は、アセトバクテリウム・ウッディ種に属する酢酸生成細菌を
含む(例えば、からなる)ことができる。
【0107】
酢酸生成微生物は、酸生成微生物であってもよい。酢酸生成細菌は酸生成性でもあり得
る。アセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌も酸生成性であり得る。アセトバクテリ
ウム・ウッディ種に属する酢酸生成細菌は、通常、酸生成性でもある。
【0108】
メタン生成微生物は、メタン生成古細菌を含む(例えば、からなる)ことができる。メ
タン生成微生物は、メタノサエタ属に属するメタン生成古細菌を含む(例えば、からなる
)ことができる。メタン生成微生物は、メタノサエタ・コンシリイ種に属するメタン生成
古細菌を含む(例えば、からなる)ことができる。
【0109】
本発明の第3の態様は、熱および/または電気を生成する方法を提供する。この方法は
、本発明の第2の態様のステップを実行するステップと、第1のチャンバおよび/または
第2のチャンバ内の有機物の嫌気性消化により生成されたメタンを燃焼させることによっ
て発電するステップと、を含む。
【0110】
本発明の第4の態様は、有機物からメタン(例えば、メタンを含むバイオガス)を生成
する方法を含む。本方法は、有機物を10℃以下の温度で酢酸生成微生物に曝露するステ
ップと、続いて、有機物の少なくとも一部を、10℃を超える温度でメタン生成微生物に
曝露するステップと、を含む。
【0111】
本方法は、有機物を浸軟する(例えば、細断する)ステップを含むことができる。有機
物を浸軟するステップは、通常、有機物を酢酸生成微生物に曝露する前に実施する。本方
法は、有機物に水を追加するステップ(例えば、有機物と水を混合するステップ)を含ん
でもよい。水は、浸軟ステップ中および/または浸軟後に、有機物に追加されてもよい。
【0112】
本方法は、有機物を8℃以下、または6℃以下、または4℃以下の温度で酢酸生成微生
物に曝露するステップを含んでもよい。
【0113】
本方法は、有機物の少なくとも一部を、15℃を超える、または20℃を超える、また
は25℃を超える、または30℃を超える温度でメタン生成微生物に曝露するステップを
含むことができる。
【0114】
本方法は、酢酸生成細菌への曝露中に有機物(例えば、有機物と水のスラリー)を攪拌
(例えば、混合)するステップを含むことができる。本方法は、メタン生成古細菌への曝
露中に有機物(例えば、有機物と水のスラリー)を攪拌(例えば、混合)するステップを
含むことができる。
【0115】
本方法は、有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露するステップを含んでもよい。1つ
以上の加水分解酵素は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼのうちの1つ
以上を含んでもよい。有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露するステップは、有機物を
10℃以下の温度で酢酸生成微生物に曝露するステップの前および/または最中に実施さ
れ得る。
【0116】
本方法は、有機物を10℃以下の温度で酢酸生成微生物とメタン生成微生物との両方に
曝露するステップと、続いて、有機物の少なくとも一部を、10℃を超える温度で酢酸発
生微生物とメタン生成微生物との両方に曝露するステップと、を含むことができる。酢酸
生成微生物は10℃以下の温度で増殖する傾向がある一方、メタン生成微生物は10℃以
下の温度で抑制される傾向がある。メタン生成微生物は、10℃を超える温度で増殖する
傾向がある。
【0117】
本方法は、第一に、有機物を10℃以下の温度で酢酸生成微生物とメタン生成微生物と
の両方に曝露するステップと、第二に、有機物の第1の部分を10℃より高い温度で酢酸
生成微生物とメタン生成微生物との両方に曝露するステップと、第三に、有機物の第2の
部分を10℃より高い温度で酢酸生成微生物とメタン生成微生物との両方に曝露するステ
ップとを含むことができる。本方法は、10℃より高い温度で、有機物の3つ以上の部分
を酢酸生成微生物とメタン生成微生物との両方に連続的に曝露するステップを含むことが
できる。
【0118】
本方法は、酢酸生成微生物とメタン生成微生物との両方への曝露中に、10℃以下の温
度と10℃を超える温度との間で、有機物の少なくとも一部の温度を繰り返し(例えば、
周期的に)変化させるステップを含んでもよい。本方法は、酢酸生成微生物とメタン生成
微生物との両方への曝露中に、少なくとも第1の位置と第2の位置(例えば、コンテナ)
との間で、有機物の少なくとも一部を繰り返し(例えば、周期的に)移動させるステップ
を含むことができ、ここで、第1の位置は温度が10℃以下の温度に(例えば、冷蔵され
て)保持されており、第2の位置は10℃を超える温度に(例えば、加熱されて)保持さ
れている。
【0119】
本方法は、有機物の体積、質量、組成、タンパク質濃度、窒素含有種の濃度、窒素濃度
、炭水化物濃度、脂質(例えば、脂肪)濃度、脂肪酸(即ち、揮発性脂肪酸、例えば酢酸
)濃度、および/またはpHを示す1つ以上のパラメータを決定(例えば、測定)するス
テップを含み得る。本方法は、決定された(例えば、測定された)1つ以上のパラメータ
に応じて、有機物の温度を変化させるステップを含むことができる。
【0120】
本方法は、有機物を加水分解酵素に曝露するステップを含んでもよく、有機物が曝露さ
れる加水分解酵素の量は、測定されたタンパク質濃度および/または測定された窒素濃度
に依存する(例えば、比例する)。
【0121】
本方法は、有機物の嫌気性消化で生成された1つ以上のガスを精製する(例えば、濾過
する)ステップを含み得る。本方法は、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)およ
び/またはアンモニア(NH3)のうちの1つ以上をガスから(例えば、選択的に)除去
するステップを含むことができる。
【0122】
酢酸生成微生物は、酢酸生成細菌を含む(例えば、からなる)ことができる。酢酸生成
微生物は、アセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌を含む(例えば、からなる)こと
ができる。酢酸生成微生物は、アセトバクテリウム・ウッディ種に属する酢酸生成細菌を
含む(例えば、からなる)ことができる。
【0123】
酢酸生成微生物は、酸生成微生物でもあり得る。酢酸生成細菌は酸生成性であってもよ
い。アセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌も酸生成性であり得る。アセトバクテリ
ウム・ウッディ種に属する酢酸生成細菌も、通常、酸生成性である。
【0124】
メタン生成微生物は、メタン生成古細菌を含む(例えば、からなる)ことができる。メ
タン生成微生物は、メタノサエタ属に属するメタン生成古細菌を含む(例えば、からなる
)ことができる。メタン生成微生物は、メタノサエタ・コンシリイ種に属するメタン生成
古細菌を含む(例えば、からなる)ことができる。
【0125】
本発明の第5の態様は、有機物を加水分解する方法を提供する。本方法は、有機物中の
タンパク質の量(例えば、濃度)を示すパラメータを決定する(例えば、測定する)ステ
ップと、有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露するステップと、を含む。ここで、有機
物が曝露される加水分解酵素の量は、決定された(例えば、測定された)パラメータの値
に依存する。
【0126】
有機物は、通常、タンパク質、炭水化物、脂質およびリグノセルロース、並びにその他
の物質で構成される。異なる加水分解酵素は、異なる組成の高分子の加水分解を触媒する
ことができる。例えば、アミラーゼは、デンプン(炭水化物)の単糖への加水分解を触媒
することができる。プロテアーゼは、タンパク質中のペプチド結合の加水分解を触媒して
アミノ酸を形成することができる。セルラーゼは、セルロースおよび関連する多糖類の加
水分解を触媒することができる。リパーゼは、脂質の加水分解を触媒して脂肪酸を形成す
ることができる。
【0127】
有機物が曝露される加水分解酵素の量は、通常、決定された(例えば、測定された)パ
ラメータの値に比例する。
【0128】
本発明の第6の態様は、有機物の嫌気性消化に使用するための微生物培養物を提供する
。微生物培養物は、アセトバクテリウム属に属する1つ以上の細菌を含む(例えば、また
はからなる)。
【0129】
培養物中に存在する1つ以上の細菌は、典型的には、アセトバクテリウム属に属する酢
酸生成細菌を含む(例えば、またはからなる)。酢酸生成細菌は、通常、ホモ酢酸生成菌
、例えばホモ酢酸生成アセトバクテリウム・ウッディである。従って、1つ以上の酢酸生
成細菌は、アセトバクテリウム・ウッディ種に属する細菌を含む(例えば、またはからな
る)ことができる。
【0130】
酢酸生成細菌は、通常、酸生成細菌でもある。
【0131】
微生物培養物は、主にアセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌を含むことができる
。微生物培養物は、主にアセトバクテリウム・ウッディ属に属する細菌を含むことができ
る。
【0132】
しかしながら、微生物培養物は、メタノサエタ属に属する1つ以上の古細菌を更に含ん
でもよい。1つ以上の古細菌は、通常、メタノサエタ属に属するメタン生成古細菌である
。1つ以上の古細菌は、メタン生成のための主要なまたは唯一の物質として酢酸を有して
いてもよい。培養物中に存在する1つ以上の古細菌は、メタノサエタ・コンシリイ種に属
する古細菌を含む(例えば、またはからなる)ことができる。
【0133】
微生物培養物は、主にアセトバクテリウム属に属する細菌と、メタノサエタ属に属する
古細菌とを含み得る。微生物培養物は、主にアセトバクテリウム・ウッディ種に属する細
菌と、メタノサエタ・コンシリイ種に属する古細菌とを含んでもよい。
【0134】
本発明の第7の態様は、有機物の嫌気性消化に使用するための微生物培養物を提供する
。微生物培養物は、メタノサエタ属に属する1つ以上の古細菌を含む(例えば、またはか
らなる)。
【0135】
1つ以上の古細菌は、通常、メタノサエタ属に属するメタン生成古細菌である。1つ以
上の古細菌は、メタノサエタ・コンシリイの種に属し得る。
【0136】
微生物培養物は、主に、メタノサエタ属に属する古細菌を含んでもよい。微生物培養物
は、主に、メタノサエタ・コンシリイ属に属する古細菌を含んでもよい。微生物培養物に
存在するメタン生成古細菌は、メタノサエタ属に属する古細菌で構成されている場合があ
る。微生物培養物に存在するメタン生成古細菌は、メタノサエタ・コンシリイ種に属する
古細菌で構成されている場合がある。
【0137】
微生物培養物は、アセトバクテリウム属に属する1つ以上の細菌を含んでもよい。1つ
以上の細菌は、通常、アセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌である。1つ以上の細
菌は、アセトバクテリウム・ウッディ種に属している可能性がある。1つ以上の細菌は、
通常、酸産生性でもある。
【0138】
微生物培養物は、主に、アセトバクテリウム属に属する細菌と、メタノサエタ属に属す
る古細菌とを含み得る。微生物培養物は、主に、アセトバクテリウム・ウッディ種に属す
る細菌と、メタノサエタ・コンシリイ種に属する古細菌とを含んでもよい。
【0139】
第6の態様または第7の態様の微生物培養物は、アセトバクテリウム以外の細菌を含ま
なくてもよい(通常、アセトバクテリウム・ウッディ以外の細菌を含まない)。
【0140】
第6の態様または第7の態様の微生物培養物は、メタノサエタ以外の古細菌を含まなく
てもよい(通常、メタノサエタ・コンシリイ以外の古細菌を含まない)。
【0141】
本発明の第8の態様は、有機物からメタン(例えば、メタンを含むバイオガス)を生成
する方法を提供する。この方法は、アセトバクテリウム属に属する細菌およびメタノサエ
タ属に属する古細菌に有機物を曝露するステップであって、例えば、アセトバクテリウム
とメタノサエタとの両方を含む第6の態様または第7の態様による微生物培養物に有機物
を曝露するステップを含む。
【0142】
細菌は、アセトバクテリウム・ウッディ種に属し得る。古細菌は、メタノサエタ・コン
シリイ種に属し得る。
【0143】
本方法は、10℃以下、または8℃以下、または6℃以下、または4℃以下の温度で、
アセトバクテリウム属に属する細菌(例えば、アセトバクテリウム・ウッディ種に属する
)に有機物を曝露するステップを含むことができる。
【0144】
本方法は、10℃より高い、または8℃より高い、または6℃より高い、または4℃よ
り高い温度で、メタノサエタ属に属する古細菌(例えば、メタノサエタ・コンシリイ種に
属する)に有機物を曝露するステップを含むことができる。
【0145】
本方法は、10℃以下の温度でアセトバクテリウム属に属する細菌(例えば、アセトバ
クテリウム・ウッディに属する)に有機物を曝露するステップと、続いて、10℃より高
い温度でメタノサエタ属に属する古細菌(例えば、メタノサエタ・コンシリイ種に属する
)に有機物の少なくとも一部を曝露するステップとを含んでもよい。
【0146】
本方法は、10℃以下の温度でアセトバクテリウム属に属する細菌(例えば、アセトバ
クテリウム・ウッディ種に属する)とメタノサエタ属に属する古細菌(例えば、メタノサ
エタ・コンシリイ種に属する)との両方に有機物を曝露するステップと、続いて、10℃
より高い温度でアセトバクテリウム属に属する細菌(例えば、アセトバクテリウム・ウッ
ディ種に属する)とメタノサエタ属に属する古細菌(例えば、メタノサエタ・コンシリイ
種に属する)との両方に有機物の少なくとも一部を曝露するステップとを含み得る。
【0147】
本方法はまた、有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露するステップを含んでもよい。
1つ以上の加水分解酵素は、典型的には、微生物を含まない供給源、例えば、粉末化され
た(例えば、凍結乾燥した)酵素製剤、または微生物を含まない酵素溶液から提供される
。
【0148】
有機物中の少なくとも1つの化学種、または有機物の少なくとも0.1質量%が、細菌
消化(即ち、細菌加水分解)によるものではなく、1つ以上の前記加水分解酵素の存在に
起因して、アセトバクテリウム(例えば、アセトバクテリウム・ウッディ)により代謝可
能な形態に加水分解される。
【0149】
本発明の第9の態様は、本発明の第1の態様による装置を内部に有するキッチンを提供
する。キッチンは、調理器具を備えた家庭用または業務用のキッチンであってもよい。装
置が保持している有機物は食品廃棄物であり得る。有機物は、第1のチャンバおよび/ま
たは第2のチャンバに位置し得る。装置は酢酸生成微生物を含んでもよい。酢酸生成微生
物は、酸生成微生物でもあり得る。装置は、メタン生成微生物を含んでもよい。装置は、
本発明の第6の態様または第7の態様による微生物培養物を含み得る。第1のチャンバは
、(例えば、10℃以下、または8℃以下、または6℃以下、または4℃以下の温度まで
)冷蔵されてもよい。第2のチャンバは、(例えば、10℃より高い、または15℃より
高い、または20℃より高い、または25℃より高い、または30℃より高い温度に)加
熱されてもよい。
【0150】
本発明の任意の一態様の任意の好ましい特徴は、本発明の任意の他の態様の特徴であり
得る。
【0151】
次に、本発明の例示的な実施形態を、以下の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【
図2】
図1の装置の一部を形成するコントローラの入力および出力を示す図である。
【
図3】使用中の
図1の嫌気性消化装置を通過する材料の動きを示す概略図である。
【
図4】嫌気性消化装置の例示的な動作の、24時間にわたって行われた、嫌気性消化ステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0153】
食品廃棄物の嫌気性消化で生成されたバイオガスの燃焼により電気を生成するための、
嫌気性消化装置1の第1の例が、
図1に概略的に示されている。この装置は、浸軟チャン
バ3、第1の消化チャンバ4、第2の消化チャンバ5、ガス精製チャンバ6、ガスアキュ
ムレータ7およびガス変換器8を含む外部ハウジング2を含む。食品廃棄物を受け取るた
めの密閉可能な入口9は、ハウジング2を貫通して浸軟チャンバ3内に延在している。浸
軟チャンバ3は、第1の密閉可能なパイプ10を介して、第1の消化チャンバ4に接続さ
れている。第1の消化チャンバ4は、ポンプ12により第2の密閉可能なパイプ11を介
して、第2の消化チャンバ5に接続されている。第2の消化チャンバ5は、第3の密閉可
能なパイプ13を介してガス精製チャンバ6に接続されている。パイプ13には、圧力逆
止弁(図示せず)が取り付けられている。第1の消化チャンバ4は、第4の密閉可能なパ
イプ14を介してガス精製チャンバ6にも接続されている。ガス精製チャンバ6は、第5
の密閉可能なパイプ15を介してガスアキュムレータ7に接続されている。ガスアキュム
レータ7は、第4の密閉可能なパイプ16によってガス変換器8に接続されている。浸軟
チャンバには水源17が設けられている。装置は、第1の消化チャンバ検知装置19およ
び第2の消化チャンバ検知装置20と通信するコントローラ18も備えている。コントロ
ーラ18もポンプ11に結合されている。
【0154】
浸軟チャンバ3は、マセレータ(図示せず)を収容している。マセレータは、通常、1
つ以上の穿孔された切断プレートを有する。マセレータは、入口を通して装置内に入る食
品廃棄物がマセレータを通過するように、入口9の下に配置される。水源17は、典型的
には、加圧水をマセレータの穿孔された切断プレート上に指向するように構成された1つ
以上の水噴射を含む。
【0155】
第1の消化チャンバ4は、浸軟チャンバの下に位置する。第1の消化チャンバ4は、使
用中(例えば、ヒートポンプにより)約4℃の温度に冷蔵される。第1の消化チャンバ4
の温度は、コントローラによってサーモスタット制御される。第1の消化チャンバは、そ
の中に収容される任意の内容物を混合するための1つ以上の回転可能なパドル(図示せず
)を収容する。第1の消化チャンバには、典型的にはアミラーゼ、プロテアーゼ、リパー
ゼおよびセルラーゼを含む加水分解酵素が提供される。第1の消化チャンバに存在する特
定の酵素は、消化される食品廃棄物の組成に応じてカスタマイズ可能である。酵素は、凍
結乾燥された酵素の形態で、例えば固体形態(例えば、凍結乾燥された酵素の錠剤)で提
供されてもよく、または液体希釈剤に分散されてもよい。酵素は、第1の消化チャンバに
隣接する冷蔵領域に保存されてもよい。
【0156】
第2の消化チャンバ5は、使用時に約35℃の温度に(例えば、加熱要素により)加熱
される。第2の消化チャンバ5の温度は、サーモスタット制御される。第2の消化チャン
バには、アセトバクテリウム属に属する細菌(特に、アセトバクテリウム・ウッディ種(
the Leibniz-Institut DSMZ-Deutsche Samml
ung von Mikroorganismen und Zellkulturen
GmbH under deposit number DSM 1030およびth
e American Type Culture Collection under
deposit number ATCC 29683参照))と、メタノサエタ属に
属する古細菌(特に、メタノサエタ・コンシリイ種(the Leibniz-Inst
itut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorg
anismen und Zellkulturen GmbH under depo
sit number DSM 3671およびthe American Type
Culture Collection under deposit number
ATCC 35969参照))とを含む微生物種菌が提供される。
【0157】
ポンプ12は双方向ポンプであり、これは、材料が第1の消化チャンバから第2の消化
チャンバへ、または第2の消化チャンバから第1の消化チャンバへパイプ11を介して送
り込むことができることを意味する。あるいは、2つの別個のポンプを使用することもで
きる。
【0158】
(
図3により詳細に示すように)コントローラ18は、リモートデバイスと接続するた
めのユーザインタフェース101およびインターネットインタフェース102を有する。
コントローラは、コンピュータ実行可能なプログラムコード104を記憶するメモリ10
3と、装置較正パラメータを記憶するデータベース105とを有する。また、コントロー
ラは、クロック106も備えている。コントローラは、通常、プログラマブルロジックコ
ントローラ(PLC)である。
【0159】
コントローラは、第1の消化チャンバ検知装置19および第2の消化チャンバ検知装置
20に電子的に接続されている。第1の消化チャンバ検知装置および/または第2の消化
チャンバ検知装置は、通常、1つ以上の温度センサ107、1つ以上の揮発性脂肪酸(V
FA)センサ(酢酸センサ等)108、1つ以上のレベルセンサ109、1つ以上のロー
ドセル110、1つ以上の窒素センサ111、1つ以上のpHセンサ112、および1つ
以上の体積センサ113を含む。
【0160】
各VFAセンサ108は、通常、ファブリ・ペロー分光計を減衰全反射(ATR)プロ
ーブと組み合わせることで、それぞれのチャンバから材料のサンプルを取り除くことなく
、第1の消化チャンバおよび/または第2の消化チャンバ内のVFAの濃度を決定するこ
とができる。適切なVFAセンサは、欧州委員会プロジェクトであるNovel mon
itoring and process control system for e
fficient production of VFA and biogas in
anaerobic digestion plant(プロジェクトID:6060
96)の一環として開発され、文献1(Validation and improvement of the OPTI-VFA s
ensor for online VFA monitoring, Zhe Deng, Master's thesis, Delft University of
Technology, 2015)に詳細に検討されているOPTI-VFAセンサであり得る。これら
の内容は、参照により本書に組み込まれる。VFAセンサは、通常、第1の消化チャンバ
および/または第2の消化チャンバ内の酢酸の濃度を決定するように構成される。VFA
センサは、第1の消化チャンバおよび/または第2の消化チャンバ内の総VFA濃度を決
定するように構成されてもよい。
【0161】
各レベルセンサ109は、通常、第1の消化チャンバおよび/または第2の消化チャン
バ内の材料のレベルを測定するように構成される。
【0162】
各ロードセル110は、通常、第1の消化チャンバおよび/または第2の消化チャンバ
内の材料の重量を測定するように構成される。
【0163】
各窒素センサ111は、通常、第1の消化チャンバおよび/または第2の消化チャンバ
の内容物中の窒素および窒素含有化合物の濃度を検知および決定するための、当技術分野
において知られているケルダールプローブである。
【0164】
各pHセンサ112は、通常、第1の消化チャンバおよび/または第2の消化チャンバ
内の材料のpHを測定するように構成される。
【0165】
各体積センサ113は、通常、第1の消化チャンバおよび/または第2の消化チャンバ
に保持されたガスの体積を測定するように構成される。
【0166】
コントローラは、1つ以上の温度センサ107、1つ以上の揮発性脂肪酸(VFA)セ
ンサ(酢酸センサ等)108、1つ以上のレベルセンサ109、1つ以上のロードセル1
10、1つ以上の窒素センサ111、1つ以上のpHセンサ112、および1つ以上の体
積センサ113からの入力を受信し、1つ以上の入力をデータベース105に格納されて
いる較正パラメータと比較した結果に応じて、1つ以上のデバイス制御アクションを実行
するようにプログラムされている。可能なデバイス制御アクションには、入口を密閉およ
び開封し114、酵素を第1の消化チャンバに分散し115、第1の消化チャンバと第2
の消化チャンバとの間でポンプを作動させ116、第1の消化チャンバの温度を調整し1
17、第2の消化チャンバの温度を調整し118、第1の消化チャンバおよび第2の消化
チャンバ内の混合パドルを操作し119、水噴霧を作動させ120、ガス変換器を作動ま
たは停止させる121アクションが含まれる。
【0167】
保存された較正パラメータには、通常、酵素重み付けパラメータ、第1の消化チャンバ
および/または第2の消化チャンバの閾値窒素濃度、第1の消化チャンバおよび/または
第2の消化チャンバの目標温度、並びに、第1の消化チャンバおよび/または第2の消化
チャンバの閾値揮発性脂肪酸濃度(特に閾値酢酸濃度)が含まれる。
【0168】
ガス精製器6は、第2の消化チャンバの上に設けられている。ガス精製器6は、典型的
には、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)およびアンモニア(NH3)を捕捉す
るように構成された多数のフィルタ(例えば、活性炭および/または過マンガン酸カリウ
ムフィルタ)を含む。ガス精製フィルタは、メタン(CH4)を妨げずに通過させること
ができるように構成されている。第1の消化チャンバとガス精製器との間のパイプ14は
、典型的には、入口9が密閉されていないときに密閉され、逆もまた同様に、パイプ14
は、入口9が密閉されているときに解放される。
【0169】
ガスアキュムレータ7は、ガスがガス変換器8に送り込まれる前にガスを貯蔵すること
ができるチャンバを提供する。
【0170】
ガス変換器8は、典型的には、当技術分野で知られているように、マイクロ熱電併給(
マイクロCHP)デバイスである。マイクロCHPデバイスは、メタンの燃焼により熱と
電気を生成するように構成されている。
【0171】
通常、使用中に食品または発酵残渣と接触する装置部品は、一般に、ステンレス鋼、特
にEN 1.4301/AISI 304ステンレス鋼から製造される。通常、嫌気性消
化中に遊離するバイオガスと接触する装置部品も、一般に、ステンレス鋼、特にEN 1
.4571/AISI 316Τiステンレス鋼から製造される。各部品は、通常、部品
を再利用することができるよう、取り外しおよび交換可能であるように設計される。
【0172】
食品廃棄物の嫌気性消化による発電プロセスを
図3および
図4に示す。
【0173】
食品廃棄物は、入口から浸軟チャンバに入る(
図4のステップ201)。食品が浸軟チ
ャンバに入ると、マセレータのスイッチがオンになり、マセレータの穿孔された切断プレ
ートによって食品が小さな粒子(0.5mm~0.9mmの特徴的な直径を有する)に切
断される。矢印21によって示すように、浸軟された食品は、重力下でパイプ10を通っ
てマセレータの下の第1の消化チャンバに移動される(ステップ202)。水源17によ
って切断プレート上に指向された加圧水は、浸軟された食品を第1の消化チャンバに押し
込むのを助ける一方で、浸軟チャンバの洗浄もし、目詰まりや不快な臭いを低減する。浸
軟された食品および水は、第1の消化チャンバ内に収容されるスラリーを形成する。第1
の消化チャンバは冷蔵されているため、食品に自然に存在する微生物の代謝活性が阻害さ
れ、食品スラリーの分解が抑制され、更なる不快な臭いの発生も抑制される。
【0174】
(レベルセンサ、ロードセル、または体積センサの出力に基づいて)コントローラが、
貯蔵タンクに十分な物質が追加されたと判断した場合、または(クロックを使用して判断
したように)適切な時間に達した場合、食品の嫌気性消化を始めることができる。この時
点で、それ以上の食品が浸軟チャンバに追加されないように、入口が密閉される(ステッ
プ203)。入口の密閉は気密性を有する故に、入口から周囲環境にガスが漏れることは
ない。入口を密閉することにより、第1の消化チャンバとガス精製器との間のパイプ14
も開口させることができる。
【0175】
コントローラは、窒素センサによって測定された第1の消化チャンバ内の窒素濃度の測
定値を受け取り、データベースに保存されている酵素重み付けパラメータを考慮して、窒
素濃度に比例して加水分解酵素を第1の消化チャンバに導入する(ステップ204)。酵
素は、コントローラの制御下にある計量ポンプによって第1の消化チャンバに導入するこ
とができる。
【0176】
貯蔵チャンバ内のパドルが回転し(ステップ205)、(矢印22によって示されるよ
うに)食品スラリーの混合をもたらし、食品スラリーの完全な加水分解を確実にする。
【0177】
第1の消化チャンバ内の食品スラリーの加水分解が本質的に完了するように、コントロ
ーラが十分な時間が経過したと判断すると(通常はクロックの出力に基づく)、嫌気性微
生物の導入によって嫌気性消化が開始される。微生物の新鮮な培養物は、コントローラに
よって第1の消化チャンバに直接導入されてもよい。実際、これは最初に装置を起動する
ときと同様である。しかしながら、通常の使用状態では、微生物と混合された、以前に消
化された物質は、既に第2の消化チャンバに存在する。従って、微生物は、典型的には、
発酵残渣の一部を第2の消化チャンバから第1の消化チャンバに送り込むことにより、第
1の消化チャンバに導入される(ステップ206)。第1の消化チャンバに送り込まれる
発酵残渣の量は、第2の消化チャンバに既に存在する発酵残渣の量に依存する。例えば、
コントローラは、体積センサまたはレベルセンサから第2の消化チャンバ内の発酵残渣の
量の測定値を受信し、データベースに格納されている閾値体積(例えば、30リットル)
を超える第2の消化チャンバ内に存在する任意の材料を移送することができる。
【0178】
メタノサエタ・コンシリイ等のメタン生成微生物は、温度変動の影響を大きく受けやす
く、特に、低温(例えば、約10°C未満)で代謝活性が著しく低下する。従って、微生
物種菌(新鮮な培養物の形態で、または既存の発酵残渣として)が冷蔵された第1の消化
チャンバに加えられると、メタン生成微生物は不活性化される。対照的に、アセトバクテ
リウム・ウッディ等の酸生成微生物および酢酸生成微生物は、このような低温で増殖する
。従って、酸生成微生物および酢酸生成微生物が加水分解生成物(グルコースおよび有機
酸等)を酢酸に(例えば、Wood-Ljungdahl経路を介して)変換する際、第
1の消化チャンバ内で酸生成および酢酸生成が生じる。
【0179】
加水分解、酸生成、および酢酸生成が進行し、アミノ酸が分解されると、窒素を第1の
消化チャンバに放出することができる。従って、コントローラは、第1の消化チャンバの
窒素センサからの出力を監視し続ける。コントローラは、窒素センサによって測定された
窒素濃度を、メモリに較正パラメータとして保存されている閾値窒素濃度と比較し、測定
された窒素濃度が閾値を超えた場合、コントローラにより水スプレーを起動して、測定さ
れた窒素濃度が閾値を下回るまで第1のチャンバに水を追加する(ステップ207)。典
型的な窒素濃度の閾値は1000mg/Lである。パドルを回転させることにより、第1
の消化チャンバ全体で酢酸生成が均一になる。
【0180】
その後、第1の消化チャンバと第2の消化チャンバとの間で食品スラリーが交換される
。コントローラにより十分な時間が経過したと判断されると(通常はクロックの出力に基
づく)、第2の消化チャンバ内の酢酸塩濃度が、データベースに保存されている酢酸濃度
の閾値を超えないように、コントローラが、第1の消化チャンバから第2の消化チャンバ
に移動する必要があるスラリーの量を計算する。特に、コントローラは、第1の消化チャ
ンバ内のVFAセンサによって決定された、第1の消化チャンバ内の酢酸濃度の測定値を
受け取り、この濃度を使用して移動する量を決定する。コントローラは、第2の消化チャ
ンバのVFAセンサによって決定される第2の消化チャンバ内の酢酸濃度の測定値と、第
2の消化チャンバの負荷センサ、レベルセンサまたは体積センサによって決定される第2
の消化チャンバ内の材料の体積の測定値とを受け取り、かつそれを考慮するか、または、
コントローラによりメモリに保存されている第2に消化チャンバの酢酸濃度および物質の
体積の以前の測定値にアクセスするか、またはコントローラが、例えば、メタン生成微生
物が酢酸をメタンに変換する既知の速度と、第2の消化チャンバへの酢酸の前回の導入か
らの時間、および第2の消化チャンバに導入された物質の以前の量を使用して、第2の消
化チャンバの酢酸濃度および物質の量を推定する。コントローラは、通常、保存された酢
酸濃度の閾値を超えて第2の消化チャンバ内の酢酸の濃度を上げるために必要な酢酸の量
より少ない酢酸の量を含むスラリーの体積を決定し、続いて、この量のスラリーを第1の
消化チャンバから第2の消化チャンバに移送する(ステップ208)。
【0181】
コントローラが移送する材料の体積を決定する方法の簡単な例として、目標となる第2
の消化チャンバの酢酸濃度C(酢酸濃度の閾値より低い)は、第1の消化チャンバから第
2の消化チャンバにある量のスラリーVTを移送することにより達成することができる。
【0182】
【数1】
ここで、C
1は第1の消化チャンバの酢酸濃度、C
2は第2の消化チャンバの酢酸濃度
、V
2はある量のスラリーを移送する前の第2の消化チャンバの材料の量であり、移送後
の第2の消化チャンバの材料の総量は、移送前の前記第2の消化チャンバ内の材料の体積
と、移送された材料の体積との合計によって与えられることが想定される。
【0183】
典型的な酢酸濃度の閾値は300mg/Lであり、これを超えるとメタン生成微生物は
通常効率的に機能しない。
【0184】
第2の消化チャンバの温度が高い故、メタン生成微生物は通常、第2の消化チャンバで
既に活性化されている。更に、移送されたスラリーに既に存在するメタン生成微生物は、
第2の消化チャンバへの移送時に再活性化される。従って、移送されたスラリーのメタン
生成は、第2の消化チャンバで進行し、それにより、メタン生成微生物はスラリー中の酢
酸をメタンに変換する。第2の消化チャンバ内のパドルの回転により、矢印23によって
示すように、メタン生成が均一になる(ステップ209)。
【0185】
続いて、このプロセスが周期的に繰り返される。各段階で、コントローラにより十分な
時間が経過したと判断されると(これもまたクロックの出力に基づく)(ステップ210
)、コントローラは、第1の消化チャンバのVFAセンサによって測定された酢酸濃度を
データベースに格納されている閾値酢酸濃度と比較し、スラリーの別の部分を第1の消化
チャンバから第2の消化チャンバに移送する。移送されるスラリーの量は、測定された酢
酸濃度に依存する。第1の消化チャンバ内のVFA濃度を監視し、それに応じて移送され
るスラリーの量を調整することにより、第2の消化チャンバ内の酢酸濃度を閾値濃度未満
に維持することができるため、メタン生成をより効率化することができる。
【0186】
第1の消化チャンバから第2の消化チャンバへの物質の交換は、コントローラがクロッ
クの出力に基づいて十分な時間が経過したと判断するまで繰り返され(ステップ210)
、その時点で、パドルの回転が停止し、第1の消化チャンバ内の任意の残留物質は、第2
の消化チャンバに送り込まれる(ステップ211)。第1の消化チャンバ内の残留物質の
VFA(例えば、酢酸)濃度が高い場合(例えば、300mg/L超)、コントローラは
、第1の消化チャンバに水を加えて、残留物質を希釈してから、第2の消化チャンバに移
送する。しかしながら、一般に、サイクルの最後に第1の消化チャンバに材料が残らない
ように、またはVFA濃度が更なる希釈を必要とするほど高くならないように、コントロ
ーラにより、各稼働サイクル全体にわたって第2のチャンバへの材料の供給を分配するよ
うにプログラムすることもできる。
【0187】
嫌気性消化中、第1の消化チャンバおよび第2消化チャンバで遊離したガスは(矢印2
4、25および26によって示すように、)CO2、H2S、およびNH3等の汚染物質
を除去するガス精製器6を通過する。精製されたガスは、(矢印27によって示されるよ
うに、)貯蔵のためにガスアキュムレータに供給される。ガスアキュムレータ内のガスの
量が閾値に達すると、ガスは燃焼のためにマイクロCHPに送り込まれ、熱および電気を
生成する。
【0188】
パイプ13の圧力逆止弁は、嫌気性消化プロセスの間、第2の消化チャンバ内のガス圧
力が一定の状態を維持することを保証する。
【0189】
コントローラにはクロックが搭載されているため、電力コストの低い特定の時間帯に嫌
気性消化プロセスを調整するようにプログラムすることができる。例えば、日中を通して
食品を装置に追加し、夕方にコントローラにより入口を密閉し、上記で概説したように嫌
気性消化プロセスを開始することができる。物質を第1の消化チャンバから第2の消化チ
ャンバに周期的に供給し、一晩中窒素および/または酢酸濃度を監視することにより、メ
タン出力が最大になるようにメタン生成の最適条件を維持することができる。朝、パドル
は回転を停止し、コントローラが残留物質を第1のチャンバから第2のチャンバに移動す
る。その後、入口の密閉が解除される。続いて、第1の消化チャンバは、翌日までに再び
新しい食品廃棄物を受け取る準備ができている。第1の消化チャンバが新しい食品廃棄物
を受け取っている間、嫌気性消化プロセスが日中も第2の消化チャンバで続行される。
【0190】
コントローラは、例えば、第1の消化チャンバおよび第2の消化チャンバのそれぞれに
おける窒素および/または酢酸濃度並びに材料の体積の継続的な測定に基づいて、プロセ
スの各段階で第1の消化チャンバから第2の消化チャンバに移送される材料の量を決定し
てもよい。あるいは、コントローラは、嫌気性消化プロセスのモデルに基づいて、消化チ
ャンバ間の物質の移動を調整するようにプログラムすることができる。このモデル、およ
び結果的にコントローラをプログラムするアルゴリズムは、消化装置からのメタン出力を
監視しつつ、窒素および酢酸の濃度並びに第2の消化チャンバの供給速度を変更する一連
の実験を実行することによって、開発することができる。実験中に収集されたデータは、
当業者に周知の人工知能モデリング方法(例えば、ファジー理論(例えば、Mamdan
iファジー理論)またはニューラルネットワーク(例えば、ベイジアン正則化を使用))
を使用してモデル化することができる。このようにして開発されたモデルは、MATLA
B(登録商標)等の標準的な数学モデリングソフトウェアを使用してプログラム可能であ
る。
【0191】
第2のチャンバ内の液体および/または固体の発酵残渣の量は、使用される数日または
数週間にわたってゆっくりと増加してもよい。従って、発酵残渣を除去し、新鮮な種菌を
装置に導入するために、第2のチャンバを定期的に取り外すことが必要になる場合がある
。
【0192】
窒素濃度および/またはVFA濃度が臨界閾値を超えた場合、コントローラは、ユーザ
インタフェースを介して(例えば、アラームを鳴らすか、警告灯を作動させることにより
)ユーザに通知するように構成されてもよい。付加的または代替的に、コントローラは、
第2の消化チャンバ内の発酵残渣の量が臨界値を超えた(第2のチャンバを空にし、内容
物を新鮮な微生物種菌と交換する必要があることを示す)場合、ユーザインタフェースを
介して(例えば、アラームを鳴らすか、警告灯を作動させることにより)ユーザに通知す
るように構成されてもよい。
【0193】
装置はまた、装置の外側(即ち、周辺大気)のメタンの濃度を測定するように構成され
た1つ以上のガスセンサを備えてもよい。コントローラは、1つ以上のガスセンサが装置
の外側でメタンを検出した(ガス漏れがあることを示す)場合、ユーザインタフェースを
介して(例えば、アラームを鳴らすか、警告灯を作動させることによって)ユーザに通知
するように構成することができる。
【0194】
装置は、(Bluetooth通信用の1つ以上の送信機および受信機を含む装置等、
他の接続オプションも可能であるが)インターネットインタフェースを介してリモートデ
バイスに信号を送信する、およびリモートデバイスから信号を受信するようにプログラム
することができる。リモートデバイスは、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュ
ータ、または携帯電話であり得る。ユーザは、リモートデバイスを使用して装置のステー
タスを監視することができる。コントローラは、例えば窒素濃度および/またはVFA濃
度が臨界閾値を超えた場合、または第2の消化チャンバの発酵残渣の量が臨界値を超えた
場合、または、1つ以上のガスセンサが装置の外側でメタンを検出した場合、リモートデ
バイスに警報を送信するようにプログラムすることができる。
【0195】
コントローラは、1つ以上のガスセンサが装置の外側でメタンを検出した(ガス漏れが
あることを示す)場合、第2の消化チャンバの温度を下げるように構成することもできる
。第2の消化チャンバを冷却することにより、嫌気性消化プロセスが抑制され、メタンの
生成が減少する。窒素濃度および/またはVFA濃度が臨界閾値を超えた場合、または第
2の消化チャンバ内の発酵残渣の量が臨界値を超えた場合(システムが過度に混乱してい
ることを示している場合)、コントローラを第2の消化チャンバの温度を下げるように構
成することもできる。
【0196】
当業者は、様々な異なる加水分解酵素が第1の消化チャンバで使用され得ることを理解
するであろう。しかしながら、アルファアミラーゼは、デンプン鎖に沿ったランダムな位
置で、デンプンの加水分解を迅速に触媒することができる故に、他のアミラーゼよりも好
ましい場合がある。いずれにせよ、加水分解酵素は、一般に、(大規模な嫌気性消化施設
で一般的に使用される加水分解微生物の病原性種と違って、)商業的または家庭での使用
に安全である。酵素は、食品の加水分解を大幅に加速するが、これは、加水分解がほとん
どの嫌気性消化プロセスにおける律速段階である故に重要である。通常、第1の消化チャ
ンバで起こる加水分解の約99%は酵素によるものである。
【0197】
少なくとも理論上、コントローラによって追加される様々な加水分解酵素の相対的比率
を調整するために、(例えば、ガスクロマトグラフィー技術を使用して)第1の消化チャ
ンバ内の食品スラリー中の様々な炭水化物、セルロース、タンパク質、および脂質の濃度
を決定することが可能である一方、発明者は、窒素濃度のみを監視すれば十分であること
を発見した。食事の炭水化物および脂肪に窒素が含まれないと仮定すると、平均的な食事
に含まれるほとんど全ての窒素は、タンパク質のアミノ酸残基において発見される故、ス
ラリーの総窒素濃度は総タンパク質濃度の良い指標を提供する。実際、総タンパク質濃度
は、通常、測定された総窒素濃度に6.25の係数を掛けて推定される。研究(例えば、
文献2(Synthesis of Food Waste Compositional Data 2012, published by The Waste
and Resources Action Programme (WRAP))および文献3(On-site treatment of organi
c waste from the public and hospitality sectors, SKM Enviros and Frith Resource
Management, published by The Waste and Resources Action Programme (WRAP))を参照
)により、英国で分析された食品廃棄物中の炭水化物と脂質とタンパク質との平均比は、
156:59.3:44.3であることが判明した。従って、食品スラリー中の炭水化物
および脂質の濃度は、スラリー中のタンパク質の濃度を決定し、同じまたは類似の経験的
比率(例えば、3:1:1の比率)を適用することにより推定することができる。適切な
加水分解酵素(アミラーゼ、リパーゼ、およびプロテアーゼ等)を同じ比率でスラリーに
加えることができる。いずれにせよ、タンパク質の加水分解は、通常、他の食品成分の加
水分解よりも遅いため、一般的にタンパク質濃度の決定が最も重要である。
【0198】
本方法は、有機物を第2のチャンバから第1のチャンバに戻すステップを含むことがで
きる。これにより、更なる嫌気性消化のために、第1のチャンバに新しい微生物が供給さ
れる。
【0199】
上記の装置は、アセトバクテリウム・ウッディおよびメタノサエタ・コンシリイを含む
微生物種菌を利用する。当業者は、装置が異なる微生物を使用し得ることを理解するであ
ろう。それにも関わらず、発明者は、アセトバクテリウム属の細菌およびメタノサエタ属
の古細菌を含む種菌が特に効果的であることを発見した。
【0200】
アセトバクテリウム・ウッディは、(例えば、文献4(Acetobacterium, a New Genus
of Hydrogen-Oxidizing, Carbon Dioxide-Reducing, Anaerobic Bacteria, W. E. Bach,
S. Schoberth, R. S. Tanner and R. S. Wolfe, International Journal of Systematic
Bacteriology, October 1977, Vol. 27, No. 4, p. 355-361)に記載のように)嫌気性消
化の副産物として、主に酢酸(即ち、酢酸または酢酸塩)を生成する非病原性の酸生成細
菌および酢酸生成細菌である故に好適である。特定の状況では、アセトバクテリウム・ウ
ッディは、嫌気性消化の副産物としてコハク酸塩も生成する場合がある。他の酢酸生成細
菌は、大量の望ましくない副産物(エタノール、ブタノール、酪酸、およびギ酸塩等)を
生成することが知られている。
【0201】
メタノサエタ・コンシリイは、酢酸を消化してメタンを生成する非病原性のメタン生成
古細菌である故に好適である。
【0202】
他の微生物がほとんど存在しない状態で、アセトバクテリウム・ウッディとメタノサエ
タ・コンシリイとの組み合わせを使用することにより、メタン出力が最大になる嫌気性消
化プロセスとなり得る。また、アセトバクテリウム・ウッディとメタノサエタ・コンシリ
イとの組み合わせを使用することにより、アンモニア、硫化水素、および二酸化炭素等の
腐食性ガスの生成も大幅に削減され、これにより、装置部品の有効寿命を延長し、生産さ
れるバイオガスの発熱量を増加させることができ、これは、より少ないガス洗浄手順が必
要となることを意味している。嫌気性消化の副産物として生成されるコハク酸塩は、残っ
た発酵残渣から抽出することができる。コハク酸塩は、関節炎の局所治療の準備等の医療
用途を持つ、価値の高い物質である。
【0203】
また、発明者は、アセトバクテリウム・ウッディとメタノサエタ・コンシリイとの両方
が、消化パラメータ(食品廃棄物成分の濃度、窒素濃度、および揮発性脂肪酸(VFA)
濃度における変動等)における重大な摂動に耐え得る、特に弾力性を有する微生物である
ことも見出した。これらの微生物は非病原性であり、加水分解酵素と有効に組み合わせて
、効率的な嫌気性消化装置を提供し、嫌気性消化器が少なくともいくつかの病原性微生物
の使用を必要とするという、当技術分野における先入観を克服する。
【0204】
次に、嫌気性消化装置201の第2の例を、
図5を参照して説明する。第2の例の構造
および機能は、第1の例とほぼ同じであるが、第1の消化チャンバを冷蔵する代わりに、
使用時に第1の消化チャンバを60~70℃の温度に加熱する点が異なる。この場合も、
このような生物が、限られた最適温度範囲を有する故に(例えば、メタノサエタ・コンシ
リイは狭い最適温度範囲(約35℃)を有する)第1の消化チャンバ内のメタン生成微生
物を抑制する効果がある。より高い温度範囲には、食品スラリーを低温殺菌するという利
点があり、これは、食品廃棄物および/または動物廃棄物の再利用のための環境基準を満
たし、および/または、メタン生成中、第2のチャンバ内の酸生成細菌とメタン生成古細
菌との間の競合を回避するために重要であり得る。貯蔵タンクは、第1の消化チャンバに
導入される前に浸軟された廃棄物を保持し、その貯蔵タンクは例えば、4℃前後まで冷蔵
されて、消化前の食品廃棄物からの臭気放出を低減させる。
【0205】
より詳細には、装置は、マセレータ203、貯蔵チャンバ250、第1の消化チャンバ
204、および第2の消化チャンバ205を含む外部ハウジング202を含む。食品廃棄
物を受け入れるための密閉可能な入口209は、ハウジング102を貫通してマセレータ
まで延在している。水ポンプ221によって動力を供給される高圧スプレー220は、水
位計223を有する水タンク222からの水を、浸軟中にマセレータに指向する。
【0206】
浸軟された食品廃棄物は、消化前に貯蔵チャンバ250で保持され、そこで冷蔵庫(図
示せず)を使用して4℃以下に冷蔵される。貯蔵チャンバは、ミキサ251、レベルセン
サ252、熱交換器253、圧力センサ254、および液体センサアレイ255を有する
。制御可能なバルブ256は、ストレーナ257を貫通してドレインまで延在する。制御
可能な一方向ポンプ260は、大粒子フィルタ261、逆止弁262および流量計263
を介して、浸軟された廃棄物を貯蔵チャンバから第1の消化チャンバに制御可能に移動す
るために設けられている。
【0207】
第1の消化チャンバ202は、ミキサ271、レベルゲージ272、熱交換器273、
圧力センサ274、液体センサアレイ275、ガスセンサアレイ276、スプレーヘッド
277、および制御可能なバルブ278およびストレーナ278を備えたドレインを有す
る。ガス導管279は、第1の消化チャンバから、以下で更に説明されるガス流制御シス
テムまで延在している。第1の消化チャンバはヒータ(図示せず)を有する。
【0208】
第1の消化チャンバ202は、制御可能な双方向ポンプ266および流量計267を有
する導管265を介して、第2の消化チャンバ203に接続されている。
【0209】
第2の消化チャンバ203は、ミキサ281、レベルゲージ282、熱交換器283、
圧力センサ284、液体センサアレイ285、ガスセンサアレイ286、スプレーヘッド
287、および制御可能なバルブ288およびストレーナ289を備えたドレインを有す
る。ガス導管279は、第1の消化チャンバから、以下で更に説明するガス流制御システ
ムまで延在している。第2の消化チャンバは、ヒーター(図示せず)を有する。
【0210】
本装置は、加水分解酵素(固体または液体の形態)用のコンテナ290およびレベルセ
ンサ291(酵素が液体形態である場合)を含む。液体制御システム292は、水および
加水分解酵素のタンクへの供給を調整する(必要に応じて、水がスプレー220および貯
蔵タンクに供給され、加水分解酵素が第1の消化タンクに供給され、水が第1の消化タン
クまたは第2の消化タンクに供給されて、固形物を所望の濃度に維持し、更に、酵素の分
注に使用するためおよび/またはマセレータにフィードバックするために、蒸発した水分
を受け取り、再利用することができる。
【0211】
ガス流制御システム300は、導管301を介した第1の消化チャンバからのガス(主
に蒸気)と、導管302を介した第2の消化チャンバからのガス(主にバイオガス)との
受け取りを制御する。ガスからの不所望な種を濾過するためにフィルタ305が設けられ
ている(例えば、CO、H2Sおよび/またはNH3フィルタが存在し得る。)制御可能
なバルブ306、307およびガスポンプ308は、圧力センサ310およびガスセンサ
アレイ311を有する貯蔵タンク309へのガスの流れ、並びに貯蔵タンクからMicr
oCHPコジェネレータ312へのガスの流れを調節する。
【0212】
コントローラ350は、液体流制御システム、冷凍および加熱、並びにガス流制御シス
テムを含む様々なセンサおよびアクチュエータを制御する。
【0213】
液体センサアレイ215、275、285は、各タンク内の物質の温度の正確な制御を
可能にする温度センサ、pHセンサ、並びに1つ以上の炭水化物、脂質およびタンパク質
濃度センサを含む。ガスセンサアレイは、通常、少なくともCO2、CH4、および少な
くとも酢酸(および任意に他のVFA)並びにガス温度を監視する。
【0214】
動作中、第2の実施形態の装置は、第1の実施形態とほぼ同じく制御されるが、第1の
消化チャンバの温度が60~70℃の範囲の(可変)設定点に制御される点が異なる。貯
蔵タンク250は約4℃に冷蔵され、浸軟された物質は、ポンプ260によって第1の消
化チャンバ202に定期的に移動され、ここで嫌気性消化微生物と混合され、加水分解酵
素が添加され、加水分解、酸生成および酸生成のステップが主に実行される。メタン生成
は抑制される(実際、メタン生成生物は、通常、第1の消化チャンバの高温によって死滅
する)。材料は、第1のチャンバの酢酸の測定値を考慮して、第1のチャンバから第2の
チャンバに(必要に応じてその逆の方向に)定期的に移動される。第2の消化チャンバは
、メタン生成生物にとって最適な温度付近の温度に前もって制御される。第1の例と同様
に、アセトバクテリウム・ウッディとメタノサエタ・コンシリイとの種菌が適しており、
この場合、第2のチャンバの温度は約35℃に制御される。加水分解酵素は、第1の消化
チャンバに分配され、水が分配され、物質は上述したように第1の消化チャンバと第2の
消化チャンバとの間で移動する。
【0215】
第3の例示的な実施形態が
図6に示されている。第3の例は、説明され、かつ対応する
特徴が一貫して番号付けされている場合を除き、第2の例に対応している。
図6では、分
かりやすくするために、レベルセンサ、熱交換器、および流量制御コンポーネントは省略
されている。ここでも、コントローラ350は、センサデータを監視し、手順全体を制御
する。
【0216】
第3の例示的な実施形態では、有機物が制御された方法で移動する5つのタンクがある
。第1のタンクは貯蔵タンク250であり、ここで受け取った浸軟された廃棄物を冷蔵し
て、分解と悪臭の発生を防ぎ、更に処理されるまで貯蔵する。第2のタンク360は予備
殺菌タンクである。第3のタンク202は、第1の消化チャンバであり、ここで使用時に
酵素加水分解および酸生成が起こる(また、メタン生成が抑制される)。第4のタンク3
70は低温殺菌タンクである。第5のタンク203は、第2の消化チャンバであり、ここ
で使用時にメタン生成が行われる。第2のタンク内のミキサ、圧力センサ、液体センサア
レイ、およびガスセンサアレイは、それぞれ361、365、364、366とラベル付
けされており、また、第4のタンクではそれぞれ371、375、374、376とラベ
ル付けされている。ポンプ、ヒーター、およびクーラーを含む他のセンサおよびアクチュ
エータと同様に、これらのセンサはコントローラ365に接続されている。
【0217】
稼働時、貯蔵された冷蔵廃棄物は、一方向ポンプによって予備殺菌タンクに制御可能に
移動され、そこでヒーター(図示せず)を使用して、例えば60℃~70℃の温度で少な
くとも1時間殺菌される。蒸発した水分は保持され、マセレータで使用するためにリサイ
クルされる(従って、第2のタンクから液体コントローラへの接続が示されている)。い
くつかの実施形態では、予備低温殺菌タンク内の圧力は、(例えば、水の沸点が約70℃
まで低下するように)真空ポンプによって減圧され、エネルギーの効率的な水の蒸発を促
進する。
【0218】
低温殺菌後、有機物は予備低温殺菌タンクから第1の消化チャンバ202に移送される
。ここで、受け取った廃棄物の組成(特に窒素レベル)が測定され、コントローラにより
追加する加水分解酵素の量を決定し、続いて加水分解酵素の分配を制御する。前述した微
生物(例えば、アセトバクテリウム・ウッディおよびメタノサエタ・コンシリイ)がまだ
存在しない場合にはそれらが導入され、嫌気性消化が開始される。(メタン生成を回避す
べき場合にはこのタンク内においてはメタノサエタ・コンシリイが省略される場合がある
が、単一の種菌の一部として、または第1のチャンバと第2のチャンバとの間の物質の双
方向移動に起因して存在する場合がある)。
【0219】
この第1の消化チャンバ202の温度は、必要に応じて調整される。いくつかの例では
、例えば、50~55℃の範囲に制御されてもよい。これにより、効率的な酸生成が可能
になり、この温度で適切な活性を持つように加水分解酵素を選択することができるが、メ
タン生成は抑制される。メタノサエタ・コンシリイのようなメタン生成菌は、この温度で
死滅する。いくつかの代替的な例では、第2の例のように、第1の消化チャンバをより高
い温度(例えば、60~70℃)に加熱するか、または以下の第1の例のように(例えば
、10℃以下に)冷蔵することができる。いずれにせよ、温度はメタン生成を最小限に抑
えるように選択される。
【0220】
第1の消化チャンバ202で加水分解され、酸生成に曝された材料は、続いて、更なる
低温殺菌タンク370に移され、そこで、例えば60~70℃の温度で少なくとも1時間
加熱されて内容物を低温殺菌する。ここでも、真空ポンプを使用して水蒸気を収集し、空
気圧を下げることができる。次いで、VFAの濃度(例えば、少なくとも酢酸の濃度)が
測定され、第5のタンクであって、例えば約35℃の温度でメタン生成が行われる第2の
消化チャンバ203に移送される材料の量(例えば、比率)を決定するために使用される
。
【0221】
場合によっては、任意に、追加の低温殺菌タンクを介して、物質を第2の消化チャンバ
から第1の消化チャンバに戻すことができる。これは、例えば、システム内の温度を4℃
未満に下げる等、コントローラが緊急時のアクションをアクティブにしている間に、消化
機能を維持するのに役立ち得る。
【0222】
この例では、第4のタンクである低温殺菌タンク370は、低温殺菌を実行するだけで
なく、加水分解および酸生成に曝された材料を、制御された速度で、メタン生成が行われ
る第2の消化タンクに供給することができるように保管可能なバッファタンクとしても機
能する。VFA(例えば、少なくとも酢酸の濃度)は、第1の消化チャンバ202で測定
され、第1の消化チャンバ202からバッファタンク370への物質の移動速度を制御す
るために使用され得る。VFA(例えば、少なくとも酢酸の濃度)は、第1の消化チャン
バおよびバッファタンクの両方で測定され、第1消化チャンバからバッファタンクへの、
およびバッファタンクから第2の消化チャンバへの物質の移動速度を制御するために使用
されてもよい。
【0223】
しかしながら、第4の例では、第1の消化チャンバ202は、(例えば、50~55℃
の高い温度または10℃以下の低い温度で)加水分解および酸生成を実施するために使用
され、続いて、第1の消化チャンバの温度を上げて(例えば60~70℃まで)低温殺菌
ステップを実行する。このとき、結果的に得られる材料のVFA(または少なくとも酢酸
の濃度)が測定され、制御された量が第2の消化チャンバ203に移送される。この場合
、第4のタンク/バッファタンクは不要である。
【0224】
本明細書に開示された本発明の範囲内で、更なる変形および修正を行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物からメタンを生成する方法であって、有機物を10℃以下の温度で酢酸生成微生物に曝露するステップと、続いて、前記有機物の少なくとも一部を、10℃を超える温度でメタン生成微生物に曝露するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記酢酸生成微生物はアセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌を含むか、またはアセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌からなり、前記メタン生成微生物はメタノサエタ属に属するメタン生成古細菌を含むか、またはメタノサエタ属に属するメタン生成古細菌からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酢酸生成細菌はアセトバクテリウム・ウッディ種に属し、前記メタン生成古細菌はメタノサエタ・コンシリイ種に属する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上の加水分解酵素に前記有機物を曝露するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機物を酢酸生成微生物/細菌に曝露するステップの前および/または最中に、加水分解酵素に前記有機物が曝露される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機物を酢酸生成微生物/細菌に曝露するより前に、前記有機物を浸軟するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
有機物からメタンを生成する方法であって、前記有機物をアセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌およびメタノサエタ属に属するメタン生成古細菌に曝露するステップを含む、方法。
【請求項8】
10℃以下の温度で酢酸生成微生物およびメタン生成微生物の両方に有機物を曝露するステップと、続いて、前記有機物の少なくとも一部を10℃より高い温度で前記酢酸生成微生物および前記メタン生成微生物の両方に曝露するステップとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酢酸生成細菌はアセトバクテリウム・ウッディ種に属し、前記メタン生成古細菌はメタノサエタ・コンシリイ種に属する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上の加水分解酵素に前記有機物を曝露するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記有機物を酢酸生成微生物/細菌に曝露するステップの前および/または最中に、加水分解酵素に前記有機物が曝露される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
バクテリアの消化によるものではなく、1つ以上の前記加水分解酵素の存在のみに起因して、前記有機物中の少なくとも1つの化学種、または前記有機物のうちの少なくとも0.1質量%が、アセトバクテリウムによって代謝され得る、かつ、代謝される形態に加水分解されるように、前記有機物を1つ以上の加水分解酵素に曝露するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記有機物を酢酸生成微生物/細菌に曝露するより前に、前記有機物を浸軟するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
固体および/または液体の発酵残渣を単離するステップをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
有機物の嫌気性消化に使用するための微生物培養物であって、実質的に、アセトバクテリウム属に属する酢酸生成細菌およびメタノサエタ属に属するメタン生成古細菌から構成されており、前記培養物中に存在する酢酸生成細菌は、アセトバクテリウム・ウッディ種に属し、前記培養物中に存在するメタン生成古細菌は、メタノサエタ・コンシリイを含む、またはメタノサエタ・コンシリイからなる、微生物培養物。
【請求項16】
アセトバクテリウム以外の細菌を含まない、請求項15に記載の微生物培養物。
【請求項17】
微生物を含むまたは微生物からなる微生物培養物であって、前記微生物培養物中の微生物がアセトバクテリウム・ウッディおよびメタノサエタ・コンシリイからなる、微生物培養物。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載の微生物培養物、および加水分解酵素を含む、嫌気性消化装置。
【外国語明細書】