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特開2022-184888羊膜組織グラフトとその調製方法及び使用方法
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  • 特開-羊膜組織グラフトとその調製方法及び使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184888
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】羊膜組織グラフトとその調製方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/36 20060101AFI20221206BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20221206BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61L27/36 100
A61L31/04 120
A61L31/14 500
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022142204
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2019545699の分割
【原出願日】2017-11-02
(31)【優先権主張番号】62/416,528
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517415528
【氏名又は名称】アクソジェン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】デイスター,カート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】手術まで持つように十分長い保存可能期間を達成しつつ、新鮮な組織の有用な構成要素を維持する手段を提供する。
【解決手段】羊膜組織グラフトであって、ワルトン膠質が前記羊膜の表面のリッジ間の谷をほぼ埋めるか完全に埋めているとともに、前記臍帯羊膜グラフトが約150μm~約250μmの厚さを有する、単膜の臍帯羊膜を含み、前記羊膜組織グラフトが、前記羊膜組織グラフトを形成すべく前記臍帯羊膜から血管を取り除くことにより形成され、前記羊膜組織グラフトの厚さ変動が、乾燥した羊膜組織グラフトの表面全体にわたって20%未満である、羊膜組織グラフトを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍帯から乾燥羊膜組織グラフトを調製する方法であって、
a)内腔を有する臍帯の羊膜に長手方向の切れ目を入れて、前記内腔の内容物を露出させるステップと、
c)前記内腔の前記内容物のうちの血管及びワルトン膠質を取り除いて、創面切除された羊膜を形成するステップと、
d)任意選択で、前記創面切除された羊膜を保持液中でインキュベートするステップと、
e)前記創面切除及びインキュベート(実施された場合)された羊膜を前記保持液で洗浄するステップと、
f)前記洗浄された羊膜をすすぎ液で1回以上すすぐステップと、
g)前記すすいだ羊膜を乾燥させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記長手方向の切れ目は、前記臍帯の全長に沿って入れられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保持液は、
a)ツイーン20:0.4~0.6%(v/v)、好ましくは約0.5%(v/v)と、
b)抗菌性化合物と、
c)NaCl:7~10g/Lと、
d)pHが6.5~7.0の緩衝剤と、
を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記保持液は、
a)0.5%(v/v)のツイーン20と、
b)約0.05%(w/v)のポリヘキサメチレンビグアニドヒドロクロリドと、
c)NaCl:9g/Lと、
d)pHが6.7±0.1の適切な緩衝剤と、
を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記洗浄ステップは、前記創面切除された羊膜を前記保持液中で攪拌するステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記洗浄ステップは約3時間にわたって実施され、前記攪拌は、毎分約100~200回転実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記すすぎ液は、
a)NaCl:7~10g/Lと、
b)無水NaHPO:0.5~1.5g/Lと、
c)KHPO:0.1~0.2g/Lと、
を含み、
pHが約7.4である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記すすぎ液は、約9g/LのNaClと、約0.795g/Lの無水NaHPOと、約0.144g/LのKHPOとを含み、pHが約7.4である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記すすぎステップは、3~5回、前記すすぎ液中で実施される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各すすぎステップは、約100~200RPMで、約10分にわたって実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記創面切除された羊膜は、前記洗浄ステップまで、約4℃で保管される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥ステップは、15~50mBarの圧力下で、30~40℃の温度で、約15時間にわたって実施される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
臍帯から乾燥羊膜を取得する方法であって、
a)部分的に創面切除された羊膜を取得するステップと、
b)血管及びワルトン膠質を取り除いて、創面切除された羊膜を形成するステップと、
c)任意選択で、前記創面切除された羊膜を保持液中でインキュベートするステップと、
d)前記創面切除及びインキュベート(実施された場合)された羊膜を前記保持液中で洗浄するステップと、
e)前記洗浄された羊膜をすすぎ液で1回以上すすぐステップと、
f)前記すすいだ羊膜を乾燥させるステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記部分的に創面切除された羊膜は冷凍状態で取得され、前記冷凍された、部分的に創面切除された羊膜を解凍するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記解凍ステップは、24℃で、約10~15時間にわたって実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記保持液は、
a)ツイーン20:0.4~0.6%(v/v)、好ましくは約0.5%(v/v)と、
b)抗菌性化合物と、
c)NaCl:7~10g/Lと、
d)pHが6.5~7.0の緩衝剤と、
を含む、
請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記保持液は、
a)0.5%(v/v)のツイーン20と、
b)約0.05%(w/v)のポリヘキサメチレンビグアニドヒドロクロリドと、
c)NaCl:9g/Lと、
d)pHが6.7±0.1の適切な緩衝剤と、
を含む、
請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記洗浄ステップは、前記創面切除された羊膜を前記保持液中で攪拌するステップを含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記洗浄ステップは約3時間にわたって実施され、前記攪拌は、毎分約100~200回転実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記すすぎ液は、
a)NaCl:7~10g/Lと、
b)無水NaHPO:0.5~1.5g/Lと、
c)KHPO:0.1~0.2g/Lと、
を含み、
pHが約7.4である、
請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記すすぎ液は、約9g/LのNaClと、約0.795g/Lの無水NaHPOと、約0.144g/LのKHPOとを含み、pHが約7.4である、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記すすぎステップは、3~5回、すすぎ液中で実施される、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
各すすぎステップは、約100~200RPMで、約10分にわたって実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記創面切除された羊膜は、前記洗浄ステップまで、約4℃で保管される、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記乾燥ステップは、15~50mBarの圧力下で、30~40℃の温度で、約15時間にわたって実施される、請求項13~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の方法で調製される羊膜組織グラフト。
【請求項27】
単膜の臍帯羊膜と、円滑な稼働の為の十分なワルトン膠質と、20%未満の水分と、150~250μmの厚さと、を含む羊膜組織グラフト。
【請求項28】
グリセロールを含まない、請求項27に記載の組織グラフト。
【請求項29】
本質的には、単膜の羊膜と、円滑な稼働の為の十分なワルトン膠質と、20%未満の水分と、150~250μmの厚さと、からなる、請求項27~28のいずれか一項に記載の組織グラフト。
【請求項30】
8-0 USPの縫合糸で縫合される為の十分な強度を有する、請求項27~29のいずれか一項に記載の組織グラフト。
【請求項31】
厚さの変動が20%以下である、請求項27~30のいずれか一項に記載の組織グラフト。
【請求項32】
前記組織グラフトの上皮側と前記組織グラフトのストロマ側とを区別するしるしを含む、請求項27~31のいずれか一項に記載の組織グラフト。
【請求項33】
前記しるしは、前記グラフトの特定の領域からの突出である、請求項32に記載の組織グラフト。
【請求項34】
前記突出は、矩形、正方形、又は三角形のタブである、請求項33に記載の組織グラフト。
【請求項35】
前記突出は、鉗子で掴まれることに適するように設計されている、請求項33~34のいずれか一項に記載の組織グラフト。
【請求項36】
前記組織グラフトの形成に使用される前記羊膜中に存在する生物活性化合物と同等レベルの生物活性化合物を含む、請求項27~35のいずれか一項に記載の組織グラフト。
【請求項37】
前記生物活性化合物として、インターロイキン、組織性メタロプロテアーゼ阻害因子、表皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、血管内皮成長因子、トランスフォーミング成長因子などがある、請求項36に記載の組織グラフト。
【請求項38】
前記組織グラフトは、組織又は器官の上に配置されると、前記組織又は器官の形状に順応して粘着する、請求項27~37のいずれか一項に記載の組織グラフト。
【請求項39】
前記組織グラフトは、前記組織又は器官の形状に順応して粘着した後に、ユーザによって姿勢変換された場合に、壊れたり、ばらばらになったりせずに姿勢を変える、請求項38に記載の組織グラフト。
【請求項40】
前記組織グラフトは、前記組織又は前記器官の上に配置された後、その場所に少なくとも8週間、10週間、12週間、16週間、又はそれ以上とどまる、請求項27~39のいずれか一項に記載の組織グラフト。
【請求項41】
前記組織グラフトは、前記組織又は前記器官の上に配置された後、その場所に少なくとも16週間とどまる、請求項40に記載の組織グラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、羊膜組織グラフトとその調製方法及び使用方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2016年11月2日に出願された米国特許仮出願第62/416,528号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
組織グラフトは、様々なタイプの外科手術や創傷治療に有用である。グラフト手術で使用される組織は、ヒト又は動物標本から収集されてよい。或いは、グラフト組織は人工的に製作されてよい。ヒトの組織の一原料として胎盤膜があり、胎盤膜は何十年にもわたって外科手術で利用されてきた。
【0004】
胎盤は、妊娠中に成長して、胎児を取り囲み、胎児を子宮壁につないでいる器官である。この一時的な器官は、ガス及び栄養を胎児に運ぶことを可能にし、同時に他の代謝機能及び内分泌機能を提供する。胎盤膜は2つの組織層からなる。1つは羊膜であり、これは発育中の胎児を取り囲む最も内側の層である。もう1つは絨毛膜であり、これは羊膜及び胎児を取り囲む外側の層である。羊膜は、胎児の周囲に、血管のない、体液によって満たされた嚢を形成して、発育中の胎児を保持及び保護する。
【0005】
羊膜嚢以外の、別の主要な胎盤構成要素が臍帯である。この紐状構造物は、胎児を胎盤につないでおり、発育中の胎児に栄養を供給し、胎児を支持する。ヒトの臍帯は、典型的には、長さが約50~60cm、直径が約2cmである。臍帯は、ワルトン膠質と呼ばれる滑らかな保護的間葉物質に取り囲まれた血管で構成されており、これらが全て、羊膜で形成された管に収容されている。
【0006】
羊膜組織グラフトは、一般に、組織再生や創傷治癒を促進する為に使用される。羊膜グラフトの既知の臨床の処置又は用途として、眼球再建、火傷治療、歯肉組織置換、一般的な創傷ケア等があり、これらに限定されない。
【0007】
羊膜組織は、外科手術に使用される場合にユニークなグラフト特性を提供する。羊膜組織グラフトには、自己粘着可能なものや、例えば、フィブリン接着剤又は縫合によって所定位置に固定されることが可能なものがある。
【0008】
典型的には新鮮な膜を使用することが理想的であるが、新鮮な組織を保管できる期間に限りがある為、そのような使い方は困難である。そこで、組織が手術用途で必要になるまでの組織の保全及び保管を容易にする処理方法が必要とされている。組織の処理及び保全の主たる目標は、手術まで持つように十分長い保存可能期間を達成しつつ、新鮮な組織の有用な構成要素を維持することである。適正に調製された羊膜組織グラフトであれば、長期保管が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術における問題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、羊膜組織グラフトの調製方法、並びにそのグラフト自体を提供する。特定の実施形態では、組織グラフトは、臍帯から得られた単膜の乾燥羊膜を含む。
【0011】
一実施形態では、本方法は以下のステップを含む。
a)臍帯の羊膜に長手方向の切れ目を入れて、臍帯の内腔の内容物を露出させる。
b)臍帯の内腔から血管及びワルトン膠質を取り除いて、創面切除された羊膜を形成する。
c)任意選択で、創面切除された羊膜を保持液中でインキュベートする。
d)創面切除及びインキュベート(実施された場合)された羊膜を保持液で洗浄する。
e)洗浄された羊膜をすすぎ液で1回以上すすぐ。
f)すすいだ羊膜を乾燥させる。
【0012】
別の実施形態では、部分的に創面切除された羊膜が取得され、これに対し、更に、洗浄、すすぎ、及び乾燥、並びに任意選択で、洗浄ステップまでの保持による処理が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】乾燥の実施から得られる圧力及び温度のチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
羊膜は、胎児の発育中の胎盤及び臍帯の内壁を形成する。羊膜には3つの別個の層があり、それらは、上皮細胞からなる単層、厚い基底膜、及び血管のないストロマ層である。羊膜は、HLA抗原もMHC分子も含まない為、免疫学的に特権を与えられた物質である。羊膜の主要な構造的構成要素は、コラーゲン及びタンパク質(フィブロネクチン、プロテオグリカン、ラミニン、グリコサミノグリカンなど)で構成される細胞外マトリックスである。羊膜において見られる他の分子として、成長因子、メタロプロテイナーゼ、及び組織性メタロプロテアーゼ阻害因子があり、これらは細胞外マトリックスと一緒になって、創傷治癒及び細胞内方成長に関与することが可能である。
【0015】
本発明は、羊膜組織グラフトの調製方法、並びに羊膜組織グラフト自体を提供する。特定の実施形態では、組織グラフトは、臍帯から得られた乾燥単層羊膜を含む。
【0016】
一実施形態では、本方法は以下のステップを含む。
a)臍帯の羊膜に長手方向の切れ目を入れて、臍帯の内腔の内容物を露出させる。
b)臍帯の内腔から血管及びワルトン膠質を取り除いて、創面切除された羊膜を形成する。
c)任意選択で、創面切除された羊膜を保持液中でインキュベートする。
d)創面切除及びインキュベート(実施された場合)された羊膜を保持液で洗浄する。
e)洗浄された羊膜をすすぎ液で1回以上すすぐ。
f)すすいだ羊膜を乾燥させる。
【0017】
別の実施形態では、部分的に創面切除された羊膜が取得され、これに対し、更に、洗浄、すすぎ、及び乾燥、並びに任意選択で、洗浄ステップまでの保持による処理が行われる。
【0018】
選択された定義
「被験者」は、動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトを意味する。本明細書に記載の方法は、ヒト及びヒト以外の動物の両方から羊膜を切り離すことに役立ちうる。実施形態によっては、被験者は哺乳動物である。本発明は、ヒト、ヒト以外の霊長類、ラット、マウス、ブタ、ウマ、ウシ、イヌ、又はネコの非限定的な例から選択された被験者において用いられてよい。
【0019】
本明細書では、「羊膜」は臍帯の羊膜を意味する。
【0020】
「臍帯」は、妊娠中に胎児を胎盤につないでいる、血管を含む紐状構造物を意味する。臍帯は、幾つかある物質の中でも特にワルトン膠質及び血管を含む内腔を取り巻く羊膜壁を含む。
【0021】
羊膜組織グラフトの形成
一実施形態では、臍帯の全長に沿って羊膜に長手方向の切れ目が入れられる。次に、臍帯が平らに配置されてよく、羊膜を下側にし、羊膜の上に内腔の内容物が来るようにして、ほぼ矩形形状に配置されてよい。羊膜の「創面切除」と呼ばれる処理において、臍帯の内腔内容物が羊膜から取り除かれてよい。創面切除の処理は、適切な道具(例えば、鉗子、はさみ等の手術用具)を使用して、臍帯の内容物を羊膜から切り離すステップを含む。
【0022】
創面切除ステップの目的は、内腔の内容物を全て、又はほぼ全て、取り除くことである。ワルトン膠質は、アモルファスゲル状の塊であり、ワルトン膠質を100%取り除くことが可能でない場合があり、或いは100%取り除かなくてもよい場合がある。従って、本発明の目的上、「臍帯の内腔内容物からワルトン膠質を取り除く」ことは、臍帯の内腔にあるワルトン膠質のおよそ50%超、70%超、80%超、90%超、95%超、更には99%超を羊膜から切り離すことを意味する。従って、創面切除された羊膜には、ワルトン膠質が多少残ってよい。
【0023】
一実施形態では、ある程度のワルトン膠質が残り、これらは、ワルトン膠質が残らなかったら羊膜組織内に存在するであろう、リッジ間の谷をほぼ埋めるか完全に埋める。
【0024】
一実施形態では、創面切除ステップはすすぎ液中で実施される。一実施形態では、すすぎ液はリン酸緩衝生理食塩水であって、以下を含む。
1)NaCl:7~11g/L、好ましくは8~10g/L、より好ましくは約9g/L。
2)無水NaHPO:0.2~1.5g/L、好ましくは約0.5~1g/L、より好ましくは約0.8g/L。
3)KHPO:0.1~0.2g/L、好ましくは約0.15g/L。
【0025】
pHが7~8.8、好ましくは約7.4である。
【0026】
特定の実施形態では、すすぎ液は、約9g/LのNaCl、約0.8g/Lの無水NaHPO、約0.14g/LのKHPOを含み、pHが約7.4である。
【0027】
実施形態によっては、すすぎ液はカルシウム又はマグネシウムを含有しない。
【0028】
一実施形態では、創面切除された羊膜は、保持期間の間、保持液中で保管される。保持期間は約2~5時間であってよく、具体的には、約2時間、約3時間、約4時間、又は約5時間であってよい。保持ステップは、20~30℃の温度で実施されてよく、好ましくは約25℃で実施されてよい。
【0029】
一実施形態では、保持液は以下を含む。
1)ツイーン20:0.4~0.6%(v/v)、好ましくは約0.5%(v/v)。
2)抗菌性化合物:例えば、0.04~0.06%(w/v)のポリアミノプロピルビグアニド(ポリヘキサメチレンビグアニドヒドロクロリド又はPHMBとも呼ばれる)。別の実施形態では、抗菌性化合物は、グルコン酸クロルヘキシジンであり、その濃度は、例えば、0.01~1.5%であり、より好ましくは0.03~0.08%である。別の抗菌性化合物、例えば、抗生物質又は抗カビ剤とそれらの適切な濃度が当業者には知られており、そのような実施形態は本発明の範囲内である。
3)NaCl:7~10g/L、好ましくは8~9g/L、より好ましくは約9g/L。
4)適切な緩衝剤。pHが6.0~8.0、好ましくは6.5~7.0、好ましくは約6.6~6.8、より好ましくは6.7±0.1。保持液中で使用可能な緩衝剤の一例としてビス-トリスプロパン緩衝剤があり、これは8~12mM、好ましくは9~11mM、より好ましくは約10mMである。緩衝剤の別の例として、MES、ビス-トリス、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、TAPSO、HEPPSO、POPSO、EPPS(HEPPS)、トリシン、Gly-Gly、Bicine、HEPBS、TAPS、AMPD、TABS、AMPSO、CHES、CAPSO、AMP、CAPS、CAPS等がある。
【0030】
特定の実施形態では、保持液は、約0.5%(v/v)のツイーン20と、約9g/LのNaClと、約0.05%(w/v)のPHMBと、約10mMのビス-トリスプロパン緩衝剤とを含み、pHが6.7±0.1である。
【0031】
一実施形態では、創面切除された羊膜は、保持ステップの有無にかかわらず、洗浄ステップまで約4℃で約10~15時間、保管される。創面切除された羊膜を4℃で保管するステップは、保持液中で実施されてよい。
【0032】
別の実施形態では、創面切除された羊膜は、保持ステップの有無にかかわらず、洗浄ステップにおいて洗浄される。好ましくは、洗浄ステップは、創面切除された羊膜を保持液中で攪拌することを含む。
【0033】
洗浄ステップ中の攪拌は、例えば、攪拌機上で、約2~5時間、具体的には、約2時間、約3時間、約4時間、又は約5時間にわたって実施されてよい。攪拌は、50~300RPM(毎分50~300回転)で実施されてよく、好ましくは約100~200RPM、より好ましくは約125~175RPM、更により好ましくは約150RPMで実施されてよい。
【0034】
一実施形態では、保持ステップにおいて、創面切除された羊膜が保持液中で保管され、その羊膜を攪拌機に移すことにより、同じ保持液中で洗浄ステップが実施される。
【0035】
洗浄ステップ後、すすぎステップにおいて、洗浄された羊膜のすすぎが行われる。すすぎステップは、上述のすすぎ液中で実施される。特定の実施形態では、すすぎステップで使用されるすすぎ液は、約9g/LのNaCl、約0.8g/Lの無水NaHPO、及び約0.14g/LのKHPOを含み、pHが約7.4である。
【0036】
一実施形態では、すすぎステップは、3~5回、すすぎ液中で実施される。各すすぎステップは、約5~30分にわたって実施されてよく、好ましくは約10~25分、更により好ましくは約15分にわたって実施されてよい。
【0037】
すすぎステップは、攪拌機上で、50~300RPMで実施されてよく、好ましくは約100~200RPM、より好ましくは約125~175RPM、更により好ましくは約150RPMで実施されてよい。
すすぎステップは、洗浄液の成分をグラフトから取り除き、且つ、創面切除ステップで残った血液又は残骸を取り除くように設計されている。
【0038】
一実施形態では、すすいだ羊膜を乾燥させる。乾燥ステップは、約5~25時間にわたって実施されてよく、好ましくは約10~20時間、更により好ましくは約15時間にわたって実施されてよい。一実施形態では、乾燥は、大気圧より低い圧力下で実施され、例えば、約15~60mBarの圧力下で実施される。減じられた圧力の下での典型的な乾燥処理では、乾燥ステップの開始時に、約40~60mBar、好ましくは45~55mBar、より好ましくは約50mBarの圧力が使用される。図1に示されるように、乾燥ステップの間に、圧力は時間とともに変化してよい。約12~16時間の乾燥処理の終了時の圧力は、例えば、約10~15mBarであってよい。
【0039】
特定の実施形態では、乾燥ステップは、約50mBarの初期圧力下で、30~40℃の温度で約15時間にわたって実施され、この圧力は、乾燥ステップの終了に向かって約15mBarに減じられる。
【0040】
本発明の別の実施形態は、臍帯から乾燥羊膜を調製する方法を提供し、この方法は以下のステップを含む。
a)部分的に創面切除された羊膜を取得する。
b)血管及びワルトン膠質を取り除いて、創面切除された羊膜を形成する。
c)任意選択で、創面切除された羊膜を保持液中でインキュベートする。
d)創面切除及びインキュベート(実施された場合)された羊膜を保持液中で洗浄する。
e)洗浄された羊膜をすすぎ液で1回以上すすぐ。
f)洗浄された羊膜を乾燥させる。
【0041】
部分的に創面切除された羊膜は、冷凍された状態で取得されてよく、この場合、冷凍された、部分的に創面切除された羊膜は、解凍されてから、その後の処理が行われる。解凍は、約6~20時間にわたって実施されてよく、好ましくは約8~15時間、より好ましくは約10~12時間にわたって実施されてよい。解凍は、20~30℃の温度で実施されてよく、好ましくは22~28℃、更により好ましくは約24~25℃で実施されてよい。
【0042】
血管及びワルトン膠質を取り除いて、創面切除された羊膜を形成するステップと、創面切除された羊膜を保持液中でインキュベートするステップと、創面切除及びインキュベート(実施された場合)された羊膜を保持液中で洗浄するステップと、洗浄された羊膜をすすぎ液で1回以上すすぐステップと、すすいだ羊膜を乾燥させるステップと、については既に説明したが、そのような説明は、部分的に創面切除された羊膜が出発物質である、本発明の実施形態に適用可能である。
【0043】
羊膜組織グラフト
本発明に従って形成される臍帯/羊膜組織グラフトは、幅が、例えば、0.5~4cm、長さが、例えば、2~6cmであってよい。
【0044】
一実施形態では、グラフトに、どちらの側が臍帯の外側からのものであって、どちらの側が臍帯の内側からのものであるかを示すしるしが付けられる。一実施形態では、しるしは、グラフトの特定のコーナーに与えられたタブである。本明細書での「タブ」は、グラフトのエッジからの突出を意味する。突出の形状は、例えば、矩形、正方形、又は三角形であってよい。一実施形態では、内皮側を上にしてグラフトを配置すると、タブは左上コーナーにある。タブは、実際に使用される場合には、ユーザが組織グラフトを器具(例えば、鉗子)で掴むことにも役立つ。タブは、組織グラフトを手術部位において姿勢変換することにも役立ち、例えば、ユーザが、組織グラフトを器具(例えば、鉗子)で掴んで所望のとおりに姿勢変換することによって、手術部位において組織グラフトを動かすことが可能である。
【0045】
本発明に従って調製される組織グラフトは、含水率が20%を下回るように処理される。含水率は、約12~18%であることが好ましい。好ましい実施形態では、含水率が15%以下である。
【0046】
グラフトは、血管、又は絨毛膜組織を含まないことが好ましい。すなわち、グラフトは、典型的には多少のワルトン膠質を含む羊膜組織で構成され、或いは本質的に構成される。
【0047】
組織グラフトは、(例えば、処理後に)乾燥されると、厚さが約150~250μmであり、好ましくは約175~225μmである。上述のように、組織グラフトは、ある程度のワルトン膠質を含み、これは、表面を滑らかにする(例えば、リッジがあってもごくわずかにする)。グラフトの厚さは均一であることが好ましく、表面全体にわたる変動が20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、更には1%未満、であることが好ましい。
【0048】
組織グラフトは、電子ビーム照射によって滅菌されてよく、その線量は、例えば、約25KGy未満、好ましくは約15~19KGyであってよい。
【0049】
組織グラフトは、生細胞、グリセロール、又は氷晶を含まない。
【0050】
一実施形態では、グラフトは、例えば、白色度を高める為にアスコルビン酸で処理される。
【0051】
一実施形態では、グラフトは、グラフトの移植後の感染を軽減及び/又は防止する為に、グラフトとともに存続する抗菌性組成物を塗布又は注入される。抗菌性組成物は、例えば、ポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアニド、PHMB)又はグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)(又は他の、その塩)であってよく、その量は、病原菌が約0.01~1.0%、好ましくは約0.02~0.08%のCHGに曝露されるような量であってよい。最も好ましいCHG濃度は、約0.03~0.05%である。グラフトは他の物質を含んでよく、例えば、成長因子、抗炎症薬、及び幹細胞を含んでよく、これらに限定されない。本明細書に記載の方法に従って形成される羊膜組織グラフトが示す生物活性化合物のレベルは、組織グラフトの形成に使用される羊膜中に存在する生物活性化合物のレベルと同等である。そのような生物活性化合物として、インターロイキン、組織性メタロプロテアーゼ阻害因子、表皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、血管内皮成長因子、処理の前後に存在するトランスフォーミング成長因子などがある。これらの生物活性化合物は、本発明の組織グラフトが外科手術で使用される場合に治癒を促進する。
【0052】
有利なことに、本発明の羊膜組織グラフトは、縫合の為の強度が十分である。縫合糸は、例えば、サイズが7-0、8-0、更には9-0 USPサイズ、又はそれ以下であってよく、これらは、有利なことに、グラフトを引き裂くことはない。
【0053】
組織グラフトは、第1のフォイルパッケージの内側にパッケージされてよく、第1のフォイルパッケージは、内側及び外側が滅菌されていて、第2のパッケージの滅菌された内側に配置される。
【0054】
羊膜組織グラフトの使用
羊膜組織グラフトは、例えば、組織再生や創傷治癒を促進する為に使用されてよい。本発明の羊膜グラフトに関する臨床処置又は用途の例として、腱修復、硬膜欠損、腹腔内癒着、腹膜再建、生殖器再建、眼球再建、火傷治療、歯肉組織置換、神経修復、手術部位の治癒促進、一般的な急性又は慢性の創傷のケア等がある。
【0055】
組織グラフトは、手術部位にすぐに配置されてよく、或いは再水和されてから配置されてよい。再水和が必要な場合は、室温の滅菌生理食塩水又は滅菌乳酸リンゲル液(LRS)が再水和に使用されてよい。
【0056】
本発明の組織グラフトは、乾燥状態であれ、再水和後であれ、手術部位に配置される際には、組織又は器官の上に掛けられて、その組織又は器官の形状に順応する。そうして、組織グラフトは、掛けられた組織又は器官に自己粘着することが可能である。組織グラフトの、組織又は器官への粘着は、組織グラフトをその部位に縫合することによって促進されうる。本発明の組織グラフトの自己粘着特性は、組織グラフトのコーナーに丸みを持たせる設計によって強化されうる。コーナーに丸みを持たせることにより、組織グラフトを体の部位に配置しやすくなる。これは、コーナーがとがっている場合(例えば、直角の場合)より、コーナーに丸みがある場合のほうが標的部位の形状に順応しやすい為である。組織グラフトは、組織又は器官の形状に順応して粘着するが、ユーザ(例えば、外科医)によって姿勢変換されることに対し、壊れたり、ばらばらになったりしない十分な強度を有する。
【0057】
組織グラフトは、移植された後、その場所に8週間、10週間、12週間、16週間、又はそれ以上とどまる。有利なことに、本発明の組織グラフトの使用は、(例えば、損傷部位における関門機能によって)宿主免疫反応を都合よく改質することにより、瘢痕組織を無くしたり減らしたりすることに役立ちうる。
【0058】
本明細書において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに矛盾する場合を除き、複数形も同様に包含するものとする。更に、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」などの語句、又はこれらの変種は、詳細説明及び/又は特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限りにおいては、「含む(comprising)」という語句と同様に包含的であるものとする。
【0059】
「約(about)」又は「約(approximately)」という語句は、特定の値に関して当業者によって決定される許容誤差範囲内であることを意味しており、これは、その値が測定又は特定される方法、即ち、測定システムの限界に、部分的に依存する。例えば、「約(about)」は、当該技術分野の慣例に従って、1標準偏差以上の範囲内であることを意味しうる。或いは、「約(about)」は、所与の値の、最大で0~20%、0~10%、0~5%、又は最大で1%の範囲を意味しうる。或いは、特に生物学的なシステム又は処理に関しては、この語句は、ある値の一桁差以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内であることを意味しうる。本出願および特許請求の範囲において特定の値が記載されている場合、特に断らない限り、「約(about)」という語句は、その特定の値に関して許容誤差範囲内であることを意味するものと見なされたい。「約(about)」又は「約(approximately)」という語句が使用されている量の成分を含有する組成物の文脈においては、これらの組成物に含有されるその成分のその述べられた量は、その値を中心として0~10%のばらつき(誤差範囲)がある(X±10%)。
【0060】
本開示では、範囲の記載を略記で行うことにより、範囲内の全ての値を1つ1つ長々と提示及び説明しなくてもいいようにしている。必要に応じて、範囲内の任意の適切な値が、上限値、下限値、又は範囲の限界値として選択されてよい。例えば、範囲0.1~1.0は、境界値0.1及び1.0、並びに中間値0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び0.1~1.0に包含される全ての中間範囲(例えば、0.2~0.5、0.2~0.8、0.7~1.0等)を意味する。ある範囲内の、有効桁数が少なくとも2である値が想定され、例えば、範囲5~10は、5.0と10.0の間、並びに5.00と10.00の間の、境界値を含む全ての値を表す。
【0061】
本明細書中において言及又は引用される全ての特許、特許出願、仮出願、及び刊行物は、全ての図面及び表を含む全内容が、本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に組み込まれている。
【0062】
以下は、本発明を実施する手順を示す実施例である。これらの実施例は、限定的として解釈されるべきではない。特に断らない限り、全てのパーセント値は重量パーセント値であり、全ての溶剤混合比は体積比である。
【0063】
実施例1-ヒトの臍帯膜の処理の卓上実施
この実施例は、組織からの物質の抽出、及び組織内での処理残留物の保持の手順を示す。
【0064】
この実施例で採用された水性処理時間は、物質(例えば、細胞外マトリックスの成長因子又は構成要素)を試験前の組織から抽出する可能性を最大化することを意図された。処理条件を緩くすると、抽出量が減る。
【0065】
更に、リカバリ後、且つ冷凍前に、臍帯を切開してストロマ面からバルク組織を取り除くことによって調製された組織を使用することにより、創面切除の前のリカバリ処理及び解凍の間に物質を組織から拡散させる為の表面積が最大化される。洗剤洗浄処理と乾燥処理との間のすすぎの繰り返しの時間及び量を減らすと、処理剤が保持される可能性が高まり、それによって、生体適合性に影響するリスクが最大化される。
設備:
1.攪拌機インキュベータ
2.バイオセーフティキャビネット
3.真空乾燥オーブン
4.真空シーラー
5.天秤
6.プッシュゲージ
7.冷蔵庫
【0066】
創面切除
組織は冷凍状態で取得されており、主要な創面切除は既に実施されていた。この「事前創面切除」により、バルク組織と不定量の血液が取り除かれた。冷凍された組織の解凍は、周囲温度(~24℃)で夜通し実施された。解凍時間には14:34時間から17:03時間という幅があり、平均は15:21時間であった。
【0067】
創面切除では、切開して残留血管を鉗子で全て取り除くことが必要であった。次に、湾曲したアイリスはさみでバルク組織(主にワルトン膠質)が取り除かれた。これは、アドソン鉗子でしっかり掴まれる可能性のある、組織面より上にある組織(例えば、膜自体までは掴まれずに掴まれる可能性がある組織「リッジ」)が全て取り除かれるまで行われた。
【0068】
臍帯の平均長さは44.5cmであった(長さは32cmから68cmの幅があった)。創面切除によって湿組織膜が形成され、その厚さは約1300±300ミクロンであり、510ミクロンから1900ミクロンの幅があった。
【0069】
未処理の組織膜は創面切除後ただちに集められ、測定が行われた後、それらの膜は、乾燥ステップまで冷蔵庫内の滅菌円錐管で保管された。
【0070】
処理済み試料も創面切除後ただちに集められ、測定されたが、これらは、乾燥の前に臍帯の他の部分とともに処理された。
【0071】
処理
以下の表1A及び表1Bは、この実施例において実施された処理の継続時間及び設定点を示す。n=3は、処理が3回実施されたことを示す(当該ステップがいつ個々のドナーを参照をしたかの記載がある場合を除く)。

【表1A】

【表1B】
【0072】
乾燥
乾燥は、以下に記載のように実施された。
【表2】
【0073】
乾燥処置により、組織は、約30~40℃、好ましくは約33~37℃、更により好ましくは約34~36℃、特に約35℃で乾燥された。乾燥ステップは、中程度の真空で実施される。最終真空圧力(絶対)は、約10~20mBar、好ましくは約12~18mBar、更により好ましくは約14~16mBar、特に約15mBarであってよい。しかしながら、乾燥処理中の任意の時刻における真空圧力は、組織の含水量に関係する。
【0074】
乾燥時間は15~16時間であった(なお、実際の時間は、圧力及び温度が適合するまで第1のステップが続くにつれて変動する可能性があり、初期条件に基づいて変動する)。例えば、一実施形態では、約1~10分以内、又は約2~5分以内、又は約2~3分以内に、必要とされる温度及び圧力に到達する。
【0075】
3つの作成の実施の圧力及び温度のプロファイルを図1に示す。
【0076】
3つの実施の全てにおいて、チャンバは、実施開始から730分まで約15mBarであった。実施開始から約50分で観察された圧力増加とほぼ同じ時間帯に、チャンバの前面窓の内側に結露が観察された。圧力プロットの30mBarと25mBarとの間に「肩部」が観察されており、これは、主要な乾燥(即ち、他の分子と結合していない水分の除去)の終了を表している可能性がある。チャンバ温度の、設定点に達してからの、実施を通しての設定点からの変動は0.5℃未満であった。
【0077】
大気中から湿気を吸収する可能性を減らす為に、乾燥袋に入ったままの乾燥アセンブリが、使用時までポリ袋に入れられ、ジップタイで封止された(サイジング及びパッケージングがすぐに開始されなかった場合)。処理済み及び未処理の試料は、乾燥による質量減少の平均が95%であった(表3)。
【表3】

【0078】
外観及び最終サイジング
試料のサイジングは、外科用メスと定規とにより手動で行われた。バイオバーデン試験用とされた試料を有する最初のロットのサイジングは、高圧蒸気滅菌されたまな板を使用して行われた。各実施における後続のロットのサイジングは、cm目盛グリッドがあらかじめ印刷されている使い捨てのまな板を使用して行われた。この使い捨てまな板は、蒸気滅菌可能ではなかったが、使用前に70%イソプロピルアルコールで清浄化され、空気乾燥された。
【0079】
組織の厚さ
測定の有効桁数を考慮すると、創面切除後の湿組織の厚さは1300±300ミクロンであり、乾燥組織の厚さは200±60ミクロンであった。湿組織の場合の観察された範囲(24個の試料、64回の測定)は、510~1900ミクロンであった。乾燥組織の場合の観察された範囲(24個の試料、72回の測定)は、50~300ミクロンであった。
【表5】

【表6】

【表7】
【0080】
結論
組織の解凍は、周囲温度(~24℃)で夜通し、14~18時間実施された。創面切除によって得られた湿膜は、厚さが約1.3mmであり、これが乾燥後には約0.2mmまで薄くなった。観察された、乾燥による重量減少は、全ての試料において約95%であった。
【0081】
表6は、試験された水性処理条件と、代替処理の場合の潜在的条件とをまとめたものである。潜在的な代替処理条件は、組織に対する処理条件が全体的に緩くなるように(主に、総接触時間が短くなるように)、且つ、残留処理剤が除去される可能性が高くなるように(ステップ3~7において時間が長くなるように、攪拌が多くなるように、且つ温度が高くなるように)選択される。
【0082】
表7は、試験された乾燥処理条件と、代替処理の場合の潜在的条件とをまとめたものである。潜在的な代替処理条件は、観察される乾燥が、少なくとも、このプロトコルで観察されるものと同等にロバストであるように選択される。
【0083】
最終的な保持ステップとして、窒素パージに代わるソリューションも可能であり、例えば、加熱要素をシャットオフして真空を維持するソリューションが可能である。このプロトコルの下で作られる試料は、特性評価試験用として適切である。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羊膜組織グラフトであって、
ワルトン膠質が前記羊膜の表面のリッジ間の谷をほぼ埋めるか完全に埋めているとともに、前記臍帯羊膜グラフトが約150μm~約250μmの厚さを有する、単膜の臍帯羊膜を含み、
前記羊膜組織グラフトが、前記羊膜組織グラフトを形成すべく前記臍帯羊膜から血管を取り除くことにより形成され、
前記羊膜組織グラフトの厚さ変動が、乾燥した羊膜組織グラフトの表面全体にわたって20%未満である、羊膜組織グラフト。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0083
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0083】
最終的な保持ステップとして、窒素パージに代わるソリューションも可能であり、例えば、加熱要素をシャットオフして真空を維持するソリューションが可能である。このプロトコルの下で作られる試料は、特性評価試験用として適切である。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
臍帯から乾燥羊膜組織グラフトを調製する方法であって、
a)内腔を有する臍帯の羊膜に長手方向の切れ目を入れて、前記内腔の内容物を露出させるステップと、
c)前記内腔の前記内容物のうちの血管及びワルトン膠質を取り除いて、創面切除された羊膜を形成するステップと、
d)任意選択で、前記創面切除された羊膜を保持液中でインキュベートするステップと、
e)前記創面切除及びインキュベート(実施された場合)された羊膜を前記保持液で洗浄するステップと、
f)前記洗浄された羊膜をすすぎ液で1回以上すすぐステップと、
g)前記すすいだ羊膜を乾燥させるステップと、
を含む方法。
[項目2]
前記長手方向の切れ目は、前記臍帯の全長に沿って入れられる、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記保持液は、
a)ツイーン20:0.4~0.6%(v/v)、好ましくは約0.5%(v/v)と、
b)抗菌性化合物と、
c)NaCl:7~10g/Lと、
d)pHが6.5~7.0の緩衝剤と、
を含む、項目1又は2に記載の方法。
[項目4]
前記保持液は、
a)0.5%(v/v)のツイーン20と、
b)約0.05%(w/v)のポリヘキサメチレンビグアニドヒドロクロリドと、
c)NaCl:9g/Lと、
d)pHが6.7±0.1の適切な緩衝剤と、
を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
[項目5]
前記洗浄ステップは、前記創面切除された羊膜を前記保持液中で攪拌するステップを含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項目6]
前記洗浄ステップは約3時間にわたって実施され、前記攪拌は、毎分約100~200回転実施される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項目7]
前記すすぎ液は、
a)NaCl:7~10g/Lと、
b)無水Na HPO :0.5~1.5g/Lと、
c)KH PO :0.1~0.2g/Lと、
を含み、
pHが約7.4である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項目8]
前記すすぎ液は、約9g/LのNaClと、約0.795g/Lの無水Na HPO と、約0.144g/LのKH PO とを含み、pHが約7.4である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項目9]
前記すすぎステップは、3~5回、前記すすぎ液中で実施される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
[項目10]
各すすぎステップは、約100~200RPMで、約10分にわたって実施される、項目9に記載の方法。
[項目11]
前記創面切除された羊膜は、前記洗浄ステップまで、約4℃で保管される、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
[項目12]
前記乾燥ステップは、15~50mBarの圧力下で、30~40℃の温度で、約15時間にわたって実施される、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
[項目13]
臍帯から乾燥羊膜を取得する方法であって、
a)部分的に創面切除された羊膜を取得するステップと、
b)血管及びワルトン膠質を取り除いて、創面切除された羊膜を形成するステップと、
c)任意選択で、前記創面切除された羊膜を保持液中でインキュベートするステップと、
d)前記創面切除及びインキュベート(実施された場合)された羊膜を前記保持液中で洗浄するステップと、
e)前記洗浄された羊膜をすすぎ液で1回以上すすぐステップと、
f)前記すすいだ羊膜を乾燥させるステップと、
を含む方法。
[項目14]
前記部分的に創面切除された羊膜は冷凍状態で取得され、前記冷凍された、部分的に創面切除された羊膜を解凍するステップを含む、項目13に記載の方法。
[項目15]
前記解凍ステップは、24℃で、約10~15時間にわたって実施される、項目14に記載の方法。
[項目16]
前記保持液は、
a)ツイーン20:0.4~0.6%(v/v)、好ましくは約0.5%(v/v)と、
b)抗菌性化合物と、
c)NaCl:7~10g/Lと、
d)pHが6.5~7.0の緩衝剤と、
を含む、項目13~15のいずれか一項に記載の方法。
[項目17]
前記保持液は、
a)0.5%(v/v)のツイーン20と、
b)約0.05%(w/v)のポリヘキサメチレンビグアニドヒドロクロリドと、
c)NaCl:9g/Lと、
d)pHが6.7±0.1の適切な緩衝剤と、
を含む、項目13~16のいずれか一項に記載の方法。
[項目18]
前記洗浄ステップは、前記創面切除された羊膜を前記保持液中で攪拌するステップを含む、項目13~17のいずれか一項に記載の方法。
[項目19]
前記洗浄ステップは約3時間にわたって実施され、前記攪拌は、毎分約100~200回転実施される、項目18に記載の方法。
[項目20]
前記すすぎ液は、
a)NaCl:7~10g/Lと、
b)無水Na HPO :0.5~1.5g/Lと、
c)KH PO :0.1~0.2g/Lと、
を含み、
pHが約7.4である、項目13~19のいずれか一項に記載の方法。
[項目21]
前記すすぎ液は、約9g/LのNaClと、約0.795g/Lの無水Na HPO と、約0.144g/LのKH PO とを含み、pHが約7.4である、項目13~20のいずれか一項に記載の方法。
[項目22]
前記すすぎステップは、3~5回、すすぎ液中で実施される、項目13~21のいずれか一項に記載の方法。
[項目23]
各すすぎステップは、約100~200RPMで、約10分にわたって実施される、項目22に記載の方法。
[項目24]
前記創面切除された羊膜は、前記洗浄ステップまで、約4℃で保管される、項目13~23のいずれか一項に記載の方法。
[項目25]
前記乾燥ステップは、15~50mBarの圧力下で、30~40℃の温度で、約15時間にわたって実施される、項目13~24のいずれか一項に記載の方法。
[項目26]
項目1~25のいずれか一項に記載の方法で調製される羊膜組織グラフト。
[項目27]
単膜の臍帯羊膜と、円滑な稼働の為の十分なワルトン膠質と、20%未満の水分と、150~250μmの厚さと、を含む羊膜組織グラフト。
[項目28]
グリセロールを含まない、項目27に記載の組織グラフト。
[項目29]
本質的には、単膜の羊膜と、円滑な稼働の為の十分なワルトン膠質と、20%未満の水分と、150~250μmの厚さと、からなる、項目27~28のいずれか一項に記載の組織グラフト。
[項目30]
8-0 USPの縫合糸で縫合される為の十分な強度を有する、項目27~29のいずれか一項に記載の組織グラフト。
[項目31]
厚さの変動が20%以下である、項目27~30のいずれか一項に記載の組織グラフト。
[項目32]
前記組織グラフトの上皮側と前記組織グラフトのストロマ側とを区別するしるしを含む、項目27~31のいずれか一項に記載の組織グラフト。
[項目33]
前記しるしは、前記グラフトの特定の領域からの突出である、項目32に記載の組織グラフト。
[項目34]
前記突出は、矩形、正方形、又は三角形のタブである、項目33に記載の組織グラフト。
[項目35]
前記突出は、鉗子で掴まれることに適するように設計されている、項目33~34のいずれか一項に記載の組織グラフト。
[項目36]
前記組織グラフトの形成に使用される前記羊膜中に存在する生物活性化合物と同等レベルの生物活性化合物を含む、項目27~35のいずれか一項に記載の組織グラフト。
[項目37]
前記生物活性化合物として、インターロイキン、組織性メタロプロテアーゼ阻害因子、表皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、血管内皮成長因子、トランスフォーミング成長因子などがある、項目36に記載の組織グラフト。
[項目38]
前記組織グラフトは、組織又は器官の上に配置されると、前記組織又は器官の形状に順応して粘着する、項目27~37のいずれか一項に記載の組織グラフト。
[項目39]
前記組織グラフトは、前記組織又は器官の形状に順応して粘着した後に、ユーザによって姿勢変換された場合に、壊れたり、ばらばらになったりせずに姿勢を変える、項目38に記載の組織グラフト。
[項目40]
前記組織グラフトは、前記組織又は前記器官の上に配置された後、その場所に少なくとも8週間、10週間、12週間、16週間、又はそれ以上とどまる、項目27~39のいずれか一項に記載の組織グラフト。
[項目41]
前記組織グラフトは、前記組織又は前記器官の上に配置された後、その場所に少なくとも16週間とどまる、項目40に記載の組織グラフト。
【外国語明細書】