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特開2022-184907近視の治療のためのシステムおよびプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184907
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】近視の治療のためのシステムおよびプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61F9/008 120A
A61F9/008 120D
A61F9/008 120C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022143131
(22)【出願日】2022-09-08
(62)【分割の表示】P 2019554563の分割
【原出願日】2017-12-05
(31)【優先権主張番号】15/583,096
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/629,002
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516120205
【氏名又は名称】オーハイ レチナル テクノロジー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ラトレル,ジェフェリー ケー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,デイビッド ビー.
(72)【発明者】
【氏名】マーゴリス,ベンジャミン ダブリュ.エル.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】近視であるかまたは近視のリスクがある眼の組織にパルスレーザービームなどのパルスエネルギーを適用して、近視を予防または治療するシステムおよびプロセスを提供する。
【解決手段】パルスエネルギーの供給源は、波長または周波数、デューティサイクル、パルス列の持続時間を含むエネルギーパラメータを有し、眼組織38において熱ショックタンパク質活性化を刺激することなどの治療または予防効果を達成するために、眼組織温度を11℃まで上昇させるように選択される。数分間にわたる眼組織の平均温度上昇は、眼組織に永久的な損傷を与えないように、所定レベル以下に維持される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視を有するか、または近視のリスクを有する眼に光ビームを適用するためのシステムであって、
波長530nmから1300nm、デューティサイクル10%未満、及びパルス列持続時間0.1秒から0.6秒を含むエネルギーパラメータを有する光ビームからなるパルスエネルギーを生成するレーザーコンソールであって、パルスエネルギーが眼組織に適用されると眼組織温度を最大11℃まで上昇させ、前記眼組織に永久的な損傷を与えないように数分間の前記眼組織の平均温度上昇を所定のレベル以下に維持しながら、パルスエネルギーを発生する、レーザーコンソールと、
近視を有するか、または近視のリスクを有すると判断された眼球に前記パルスエネルギーを投射するプロジェクターとを、
有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記パルスエネルギーが、少なくともパルスエネルギー源の適用中に前記眼組織の温度を6℃から11℃上昇させ、前記眼組織に熱ショックタンパク質の活性化を発生させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記眼組織の前記平均温度上昇が数分間にわたり略1℃以下に維持される、請求項1乃至2のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項4】
前記眼組織の前記平均温度上昇が、6分間にわたって1℃以下に維持される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロジェクターは、熱組織損傷を回避するために少なくとも所定の距離だけ分離された複数の眼組織領域に前記パルスエネルギーを投射する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
走査機構であって、当該走査機構が、前記パルスエネルギーを第1の眼組織領域に適用し、単一の治療セッション内の所定期間後に、パルスエネルギー源が前記第1の眼組織領域に再適用され、前記第1の眼組織領域へのパルスエネルギー適用の間隔の間、前記パルスエネルギー源が第2の眼組織領域に適用されてなる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
パルス光ビームが、880nmから1000nmの間の波長を有し、2.5%から5%の間のデューティサイクルを有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記パルス光ビームが、0.5から74ワットの間のパワーを有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記レーザーコンソールと前記プロジェクターとの間に配置された光学レンズからなる光学系を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記光学系は、前記光ビームを、前記眼組織に同時に投射される複数の離間した光ビームに形成するマスクを含むことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本願は、2017年5月1日に出願された米国出願シリアル番号15/583,096の一部継続であり、これは、2016年7月20日に出願された米国出願シリアル番号15/214,726の一部継続出願であり、これは、2015年10月26日に出願された米国出願シリアル番号14/922,885の一部出願継続出願であり(現在は特許第9,427,602号)(これは、2015年4月28日に出願された米国仮出願第62/153,616号の優先権を主張している)、これは、2015年1月28日に出願された米国出願シリアル番号14/607,959(現在の特許第9,168,174号)の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124(現在の特許番号9,381,115)の一部継続出願であり、また、本願は、2016年8月9日に出願された米国出願シリアル番号15/232,320の一部継続出願でもあり、これは、2016年6月21日出願の米国出願シリアル番号15/188,608の一部継続出願であり、これは、2016年5月6日に出願された米国出願シリアル番号15/148,842の一部継続出願であり、これは、2015年10月23日に出願された米国出願シリアル番号14/921,890(現在の特許第9,381,116号)の一部継続出願であり、これは、2015年1月28日に出願された米国出願シリアル番号14/607,959(現在の特許第9,168,174号)の一部継続出願である。本願はまた、2017年3月16日に出願された米国出願シリアル番号15/460,821の一部継続出願でもあり、これは、2016年7月20日に出願された米国出願シリアル番号15/214,726の一部出願継続出願であり、これは、2015年10月26日に出願された、米国出願シリアル番号14/922,885、現在の米国特許第9,427,602号(これは、2015年4月28日に出願された米国出願番号62/153,616の利益を主張している)であり、これは、2015年1月28日に出願された米国出願番号14/607,959、現在の米国特許第9,168,174号の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願番号13/798,523の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124、現在の米国特許番号9,381,115の一部継続出願であり、本願はまた、2016年5月6日に出願された米国出願シリアル番号15/148,842の一部継続出願であり、これは、2015年10月23日に出願された米国特許出願シリアル番号14/921,890、現在の米国特許第9,381,116号の一部継続出願であり、これは、2015年1月28日に出願された米国出願シリアル番号14/607,959、現在の米国特許第9,168,174号の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国特許出願第13/481,124号、現在の米国特許第9,381,115号の一部継続出願であり;本願はまた、2016年3月21日に提出された米国出願シリアル番号15/075,432の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国特許出願第13/481,124号、現在の米国特許第9,381,115号の一部係属出願である。本願はまた、2016年10月24日に出願された米国出願シリアル番号15/332,132の一部継続出願でもあり、これは2016年8月9日に出願された米国出願シリアル番号15/232,320の分割出願であり、2016年5月6日に出願された米国出願シリアル番号15/148,842の一部継続出願であり、これは、2015年10月23日に出願された米国出願シリアル番号14/921,890の一部継続出願(現在の米国特許第9,381,116号)であり、これは、2015年1月28日に出願された米国出願シリアル番号14/607,959(現在の米国特許第9,168,174号)の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に提出された米国出願シリアル番号13/481,124(現在の米国特許第9,381,115号)の一部継続出願であり;本願はまた、2016年6月21日に出願された米国出願シリアル番号15/188,608の一部継続出願であり、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124(現在の米国特許第9,381,115号)の継続出願であり;そして、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124(現在の米国特許第9,381,115号)の一部出願継続である。本願はまた、2016年10月12日に出願された米国出願番号15/291,796の一部継続出願でもあり、これは、2016年5月6日に出願された米国出願シリアル番号15/148,842の分割出願であり、これは、2015年10月23日に出願された米国出願シリアル番号14/921,890の一部継続出願であり、これは、2015年1月28日に出願された米国出願シリアル番号14/607,959(現在の米国特許第9,168,174号)の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124の一部継続出願である。本願はまた、2016年3月21日に提出された米国出願シリアル番号15/075,432の一部継続出願でもあり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124の継続出願である。本願はまた、2016年8月9日に出願された米国出願シリアル番号15/232,320の一部継続出願でもあり、これは、2016年5月6日に出願された米国出願シリアル番号15/148,842の一部継続出願であり、これは、2015年10月23日に出願された米国出願シリアル番号14/921,890(現在の米国特許第9,381,116号)の一部継続出願であり、これは、2015年1月28日に出願された米国出願シリアル番号14/607,959(現在の米国特許第9,168,174号)の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124(現在の米国特許第9,381,115号)の一部継続出願であり、これはまた、2016年6月21日に出願された米国出願シリアル番号15/188,608の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124(現在の米国特許第9,381,115号)の継続出願であり;また、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124(現在米国特許第9,381,115号)の一部出願継続である。本願はまた、2016年7月20日に提出された米国出願シリアル番号15/214,726の一部継続出願でもあり、2015年10月26日に出願された米国出願シリアル番号14/922,885の一部継続出願であり(これは、2015年4月28日に出願された米国出願番号62/153,616の利益を主張している)、これは、2015年1月28日に出願された米国出願番号14/607,959、現在の特許第9,168,174号の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124、現在の特許第9,381,115号の一部継続出願である。本願は、2016年6月21日に出願された米国出願シリアル番号15/188,608の一部継続出願でもあり、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124の継続出願である。本願はまた、2016年5月6日に出願された米国出願シリアル番号15/148,842の一部継続出願でもあり、これは、2015年10月23日に出願された米国出願シリアル番号14/921,890の一部出願継続出願であり、これは、2015年1月28日に出願された米国出願シリアル番号14/607,959(現在の米国特許第9,168,174号)の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の一部継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124の一部継続出願であり;本願はまた、2016年3月21日に出願された米国出願シリアル番号15/075,432の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の継続出願であり、これは、2012年5月25日に提出された米国出願シリアル番号13/481,124の一部継続出願である。本願はまた、2016年3月21日に出願された米国出願シリアル番号15/075,432の一部継続出願であり、これは、2013年3月13日に出願された米国出願シリアル番号13/798,523の継続出願であり、これは、2012年5月25日に出願された米国出願シリアル番号13/481,124の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般に、眼疾患を治療するためのシステムおよびプロセスに関する。より具体的には、本発明は、近視であるか、または近視のリスクがある眼の組織にパルスエネルギーを適用することにより近視を予防もしくは治療するためのシステムおよびプロセス、または永久的な損傷を与えないままで、眼の組織の温度を十分に上昇させて治療の利益を提供するシステムおよびプロセスに関する。
【0003】
近視は「近視眼」として知られる状態であり、目の前の画像が、網膜上に正確にではなく、網膜の前に焦点を合わせる。網膜上の画像のこの焦点は、「正視」とも呼ばれる。近視の画像は、次のいずれかまたは両方の理由で、網膜の前に焦点が合う場合があり、視力障害を引き起こす:角膜および水晶体での眼の前部の屈折力が過剰であること;および/または、眼の軸長が長すぎるため、その結果、網膜が画像焦点の後方にあること。この視覚的な不鮮明さを打ち消すために、罹患した人は見るべき物体に近づくように動く。これにより、画像の焦点が網膜に近づき、視覚がより鮮明になる。
【0004】
近視は通常の医学的定義では流行しており、成人の50%もの多くが罹患し、最近の世代の学齢期の子供での発生は200%以上増加している。この急速な増加と普及は、読書時間の増加による教育機会の改善、ならびに電子デバイスとメディアの使用の増加に起因している。
【0005】
典型的な近視の原因は、遺伝と環境にあるようである。高等教育、ならびに近い距離での作業および読書に費やす時間は、近視のリスク因子であることが知られている。近視を引き起こす距離が近い作業についての刺激は、このことが、おそらく部分的に、水晶体の調節を介して、眼の軸長を増加させるための眼の成長の神経学的および/または化学的メディエーターに影響を与えることを示唆している。この現象の証拠は、小児の局所アトロピンによる調節の麻痺により、後天性近視の程度と発生率を減らすことができるということである。
【0006】
正常な眼の成長と形成および軸長を促進し、近い距離での作業によって減少、遮断、または阻害される「正視性」因子は、眼の長さの増加につながり、通常は視覚画像の焦点が合っている網膜中心または「黄斑」で生じる可能性が最も高い。生まれつき備わっている神経学的および/または拡散性の化学的フィードバック機構によって、眼の成長の自動調節が妨げられ、積極的に奨励するか、または、正視刺激の喪失、受動的に軸方向の長さの増加により、受動的に許容することによって、眼を近視の焦点に合わせるように適応して、近視の状態を増加させる。
【0007】
環境因子に応答した網膜機能障害および網膜自己調節の変化は、加齢黄斑変性および糖尿病性網膜症、慢性開放隅角緑内障などの眼神経疾患、ならびに網膜色素変性およびシュタルガルト病を含む遺伝性網膜症を含む、ほとんどの慢性進行性網膜症における共通の現象および共通の所見である。緑内障においては、近視の進行に類似した設定、視野欠損の選択的補完的スペアリングにより、中枢神経系によって媒介される片方の眼の間の直接および神経学的および/または化学的コミュニケーションが示され、視覚障害全体が最小限に抑えられる。緑内障における高い眼圧に反応して、視神経組織は、片方の眼の視野が維持される確率を高め、もう片方の眼の失われた視野を覆い、両方の眼を一緒に使用したときの視覚機能全体を最大化するようなやり方で犠牲にされる。したがって、網膜および神経構造を変化させて視覚刺激の質を調整し、視覚機能を最大化する網膜シグナル伝達によって媒介される明確な解剖学的応答が存在する。
【0008】
小児近視は、他の慢性進行性眼疾患と同様の様式で、および同様のメカニズムによって発生および進行するようである。異常な環境に応答して網膜機能の変化と自動調節を引き起こす異常な刺激(慢性的な近距離作業および水晶体調節)は、従って、異常になり、眼に対して伸長性の成長を引き起こして、調節力の少ない鋭い近視力を回復し、従って近視の状態が進行する。
【0009】
典型的な軸性または屈折性近視は眼鏡、コンタクトレンズ、または屈折矯正手術によって矯正できるが、近視はまた、視覚機能の低下と関連することも多く、網膜剥離、脈絡膜血管新生、黄斑萎縮、緑内障による失明のリスクを高める。同時に、近視の屈折矯正の必要性と医学的結果は、重大な公衆衛生問題と社会経済的負担を構成する。
【0010】
したがって、近視の眼の状態を予防および/または治療することができるシステムおよび方法のための必要性が引き続き存在している。そのようなシステムまたは方法は、後天性近視を遅延させるかまたは予防するために、後天性近視に寄与する可能性のある生物学的因子を修正できるはずである。そのような治療のシステムおよび治療の方法は、実施することが比較的容易で無害であるべきである。本発明はこれらの必要性を満たし、他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、近視を予防または治療するプロセスに属する。波長または周波数、デューティサイクル、パルス持続時間を含むエネルギーパラメータを有するパルスエネルギー源が提供される。エネルギーパラメータは、治療効果または予防効果を達成するために眼組織温度を最大11℃まで上昇させるように選択される。数分間にわたる眼組織の平均温度上昇は、眼組織に永久的な損傷を与えないように、所定レベル以下に維持される。眼に近視があるか、または近視になるリスクがあると判定される場合がある。パルスエネルギーは、近視であるか、または近視のリスクがある眼の組織に適用され、眼組織内の熱ショックタンパク質の活性化を刺激する。
【0012】
パルスエネルギーは、530nmから1300nmの間、より具体的には80nmから1000nmの間の波長を有するパルス光ビームを含んでもよい。この光ビームは、10%未満、より好ましくは2.0%と5%の間のデューティサイクルを有してもよい。パルス光ビームは、0.5ワットから74ワットの間のパワーを有する。パルス光ビームは、0.1から0.6秒の間のパルス列持続時間を有してもよい。
【0013】
通常、パルスエネルギーが適用される眼組織は、網膜および/または中心窩組織を含む。パルスエネルギー源のエネルギーパラメータは、少なくともパルスエネルギー源の適用中に眼組織温度が6℃から11℃の間で上昇するように選択される。しかし、眼組織の平均温度上昇は、6分間にわたるなど、数分間にわたって約1℃以下に維持される。
【0014】
パルスエネルギーは、複数の眼組織領域に適用されてもよく、ここで、隣接する眼組織領域は、熱組織損傷を回避するために少なくとも所定の距離だけ分離されている。パルスエネルギーは、第1の眼組織領域に適用されてもよく、単一の治療セッション内の所定の期間の後、パルスエネルギーは第1の眼組織領域に再適用される。第1の眼組織領域へのパルスエネルギーの適用の間隔の間、パルスエネルギーは第2の眼組織領域に適用される。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の原理を例として例証する添付図面と併せて、以下のより詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付の図面は本発明を例証する。図面の説明は以下の通りである。
図1】レーザーの光源半径およびパルス列持続時間と比較した波長を有するレーザー光源の平均パワーを例証するグラフである。
図2図1と同様のグラフであり、レーザーの光源半径およびパルス列持続時間と比較して、より高い波長のレーザー光源の平均パワーを図示している。
図3】本発明に従って眼を治療するために使用されるシステムを例証する概略図である。
図4】本発明に従って幾何学的パターンを生成するために使用される例示的な光学レンズまたはマスクの概略図である。
図5】本発明に従って眼組織を治療するために使用されるシステムの代替実施形態を例証する概略図である。
図6】本発明に従って眼組織を治療するために使用されるシステムのさらに別の代替実施形態を示す概略図である。。
図7】本発明のアイリス絞りを備えるカメラの正面図である。
図8】本発明に従うLCD絞りを備えるカメラの正面図である。
図9】本発明に従って使用される光学走査機構の上面図である。
図10図9の光学走査機構の部分分解図であり。その様々な構成部品を示す。
図11】本発明に従う、眼組織を治療するためのレーザースポットの例示的な幾何学的パターングリッドの露光の制御されたオフセットを例証する概略図である。。
図12】本発明に従う、眼組織の領域を治療するために制御可能に走査された線の形態の幾何学的対象のユニットを例証する概略図である。
図13図12と同様の概略図であるが、本発明に従って、網膜の領域を治療するために回転された幾何学的な線またはバーを例証する。
図14A】本発明に従う、単一の治療セッション内の所定の時間間隔の間の異なる治療領域へのレーザー光の適用、および以前に治療された領域へのレーザー光の再適用を例証する概略図である。
図14B】本発明に従う、単一の治療セッション内の所定の時間間隔の間の異なる治療領域へのレーザー光の適用、および以前に治療された領域へのレーザー光の再適用を例証する概略図である。
図14C】本発明に従う、単一の治療セッション内の所定の時間間隔の間の異なる治療領域へのレーザー光の適用、および以前に治療された領域へのレーザー光の再適用を例証する概略図である。
図14D】本発明に従う、単一の治療セッション内の所定の時間間隔の間の異なる治療領域へのレーザー光の適用、および以前に治療された領域へのレーザー光の再適用を例証する概略図である。
図15】本発明の実施形態に従う治療能力と時間との関係を示すグラフである。
図16】本発明の実施形態に従う治療能力と時間との関係を示すグラフである。
図17】本発明の実施形態に従う治療能力と時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面に示され、本明細書でより完全に説明されるように、本発明は、近視を予防または治療するプロセスを対象とする。これは、眼の組織に永久的な損傷を与えないように、経時的に眼組織の平均温度上昇を所定レベル以下に維持しながら、治療または予防効果を達成するために十分に眼組織温度を上昇させるように選択されたエネルギーパラメータを有するパルスエネルギー源を提供することにより達成される。
【0018】
上記のように、過去数十年の間に世界中で近視の有病率が劇的に増加した。最近の研究は、屈折の進行、すなわち近視が環境的、行動的および遺伝的要因によって影響を受けることを示してきた。本発明者らは、単純な後天性近視の進行の背後に修正可能な生物学的要因が存在すると考えている。本発明者らは、低強度かつ高密度の閾値以下ダイオードマイクロパルスレーザー(SDM)が、無数の慢性進行性網膜疾患および開放隅角緑内障の眼および視神経の生理学的および精神物理的機能を改善することを実証した。本研究は、本発明者らによる「デフォルトへのリセット」効果またはホメオトロフィと呼ばれるメカニズムによって網膜機能および自己調節を正常化することによって、SDMが、これを行うことが示している。網膜機能および自己調節の主な駆動因子である網膜色素上皮(RPE)の機能を選択的に標的化および正常化することにより、環境またはその他の原因により異常になった場合、RPEの生物学的機能がデフォルトにリセットされるか、または通常の機能に戻される。そうすることにより、病気の進行が遅くなったり、停止したり、さらには逆転さえする。本発明者らは、SDMホメオトロピック療法が、通常の網膜生理学および自己調節を回復させることにより、他の慢性進行性網膜症および緑内障と同じようなやり方で、近視、特に小児近視の進行を遅らせ、停止し、さらには逆転させると考えている。糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、緑内障、遺伝性網膜症を含む他の眼疾患での臨床経験と使用は、効果的なSDMホメオトロピック療法が定期的に繰り返される治療により堅牢で再生可能であることの両方を示唆している。
【0019】
本発明者らは、様々な波長のレーザー光の型などの電磁放射を、眼疾患に対する有益な効果を達成しながら組織を破壊または損傷しない様式で網膜組織に適用できることを発見した。これは、少なくとも部分的には、熱ショックタンパク質の刺激と活性化、および組織内のタンパク質修復の促進に起因し得ると考えられている。熱的時間経過の生成は、熱ショックタンパク質の活性化または産生を刺激し、いかなる損傷も引き起こすことなくタンパク質の修復を促進すると考えられている。
【0020】
本発明者らは、治療的であるが網膜組織細胞に対して致死量以下であり、したがって眼の網膜組織の予防的および保護的治療を提供する網膜組織における光凝固の損傷を回避するレーザー光ビームを生成できることを発見した。選択されたパラメータの組み合わせが組織に永久的な損傷を与えずに治療効果を達成するように、光ビームのさまざまなパラメータを考慮しかつ選択しなければならない。これらのパラメータには、レーザー波長、レーザー光源の半径、平均レーザーパワー、合計パルス持続時間、パルス列のデューティサイクルが含まれる。特に好ましい実施形態では、レーザー光線が使用されるが、適切に選択されたエネルギーパラメータを有する超音波、紫外線周波数、マイクロ波周波数などを含む他のパルスエネルギー源も使用され得るが、近視を含む眼障害および眼疾患の治療においては、他の疾患や障害と同程度には便利ではない。
【0021】
これらのパラメータの選択は、HSPの活性化に必要なアレニウス積分が1または1より大きいことを要求することで決定できる。アレニウス積分は、生体組織に対する作用の影響を分析するために使用される。例えば、The CRC Handbook of The CRC Handbook of Thermal Engineering,ed.Frank Kreith,Springer Science and Business Media(2000)を参照。同時に、選択したパラメータが組織に永久的な損傷を与えてはならない。したがって、損傷のアレニウス積分もまた使用でき、解かれたアレニウス積分は1未満または1である。
【0022】
あるいは、単位グラムの組織あたりのエネルギー沈着と、数分間にわたって測定されるような温度上昇とに対するFDA/FCCの制約は、永久的な組織損傷を回避するように満たされなければならない。例えば、エネルギー蓄積と温度上昇に関するFDA/FCCの要件は一般に使用され、例えば、電磁気ソースについては、www.fda.gov/medicaldevices/deviceregulationandguidance/guidancedocuments/ucm073817.htm#attacha、および超音波源については、Anastosio and P.LaRivero,ed.,Emerging Imaging Technologies.CRC Press(2012)で引用され得る。
【0023】
概して言えば、6℃~11℃の間での組織温度上昇は、熱ショックタンパク質を活性化するなどして治療効果を生み出すことができ、特定の環境下で、長時間にわたって、例えば、6分間などの数分間にわたって、あらかじめ決められた温度以下に、例えば、6℃および1℃以下などに平均組織温度を維持することで、永久的に組織は損傷されない。
【0024】
本発明の、しばしば「真の閾値以下」と呼ばれる閾値以下の網膜光凝固は、処置の際に生体顕微鏡では目に見えない網膜レーザー適用として定義される。本発明の結果としての「真の閾値以下」の光凝固は目に見えず、FFA、FAF、あるいはSD-OCTなどの他の既知の手段では識別できないレーザー療法を含んでいる。したがって、「真の閾値以下の」光凝固は、処置の差異または処置の後の任意の時間に既知の検出の手段で検出可能な網膜損傷を絶対に生成しないレーザー療法として定義される。そのため、「真の閾値以下の」とは、病変および他の組織損傷および破壊がないことである。本発明は、典型的な光凝固損傷がないため、光凝固よりも光刺激と呼ぶほうがより正確な場合がある。
【0025】
様々なパラメータが「真の閾値以下」あるいは「低強度」の効果的な光凝固を達成することが分かった。これらは、効果的な処置網膜レーザー露光を生成するには十分であるが、組織の損傷または破壊をもたらすほどには高くない力を与えることを含む。真の閾値以下のレーザー適用は、単独で、あるいは、熱の蓄積を最小限に抑える任意のサイズと配置の幾何学的なオブジェクトまたはパターンを作成しつつも、低デューティサイクルを使用するなどして熱放散を最大限にすると同様に均一の熱分布を保証するために、適用可能である。本発明者は、治療上効果的で無害な真の閾値以下の網膜レーザー療法を達成する方法を発見した。本発明者はさらに、網膜表面への集密的かつ近接的な真の閾値以下のレーザー適用の配置が、網膜損傷を伴わない処置の治療上の利点を改善かつ最大化することを発見した。
【0026】
1平方センチメートル当たり100ワットから590ワットの間の低デューティサイクルの810nmのレーザービームの強度またはパワーが、有効である上、安全であることが分かった。レーザー光ビームの特に好ましい強度またはパワーは、810nmのマイクロパルスダイオードレーザーに対して1平方センチメートル当たりおよそ250-350ワットである。
【0027】
現在のマイクロパルスダイオードレーザーにおけるパワー制限は、かなり長い露光持続時間を必要とする。レーザー露光が長ければ長いほど、レーザースポットの残存部での露光されていない組織への及び基礎的な脈絡毛細管へのセンタースポットでの放熱性がより重要となる。したがって、810nmのダイオードレーザーの放射ビームは、500ミリ秒以下、および好ましくはおよそ100-300ミリ秒の露光エンベロープ持続時間を有するべきである。もちろん、マイクロパルスダイオードレーザーがより強力になった場合、露光持続期間はそれにしたがって短縮される。露光エンベロープ持続時間が、マイクロパルスレーザービームが網膜の同じスポットまたは位置に露光される時間の持続時間であるが、レーザーに対する組織の露光の実時間は、レーザー光パルスの持続時間が1ミリ秒未満、および典型的には50マイクロ秒から100マイクロ秒の間であるように、はるかにより短いことが理解される。
【0028】
本発明による目に見えない光線療法または真の閾値以下光凝固は、532nmから1300nmの範囲などの様々なレーザー光波長で実行することができる。異なる波長を使用すると、網膜組織が損傷を受けないように、治療効果が得られるように、レーザー光線の好ましい強度またはパワー、および照射エンベロープの持続時間に影響を与える可能性がある。
【0029】
本発明の別のパラメータは、デューティサイクル(一連のマイクロパルスの周波数、または連続するパルス間の熱緩和時間の長さ)である。10%デューティサイクル以上を使用して、同様のMPEレベルで同様の放射照度でマイクロパルスレーザーを照射すると、特に暗い眼底で致死細胞損傷のリスクが大幅に増加することがわかっている。ただし、10%未満、好ましくは約5%以下のデューティサイクルは、生物学的反応を刺激するためにRPE細胞のレベルで適切な熱上昇と治療を実証しているが、暗く色素沈着した眼底においてさえ、致死的な細胞傷害を引き起こすと予想されるレベルを下回っている。さらに、デューティサイクルが5%未満の場合、場合によっては露光エンベロープの持続時間が500ミリ秒を超えることがある。
【0030】
特に好ましい実施形態では、小さな網膜レーザースポットの使用が使用される。これは、大きなスポットが大きな網膜レーザースポット内の不均一な熱分布と不十分な熱放散に寄与し、大きなレーザースポットの中心に向かって組織損傷または組織破壊さえ引き起こす可能性があるという事実によるものである。この使用法では、「小さい」は一般に直径3mm未満の網膜スポットに適用される。ただし、網膜スポットが小さければ小さいほど、熱放散と均一なエネルギーの適用がより理想的になる。したがって、上記のパワー強度と暴露時間では、組織の損傷を避けるために熱分布と熱放散を最大化するために、直径25~300マイクロメートルなどの小さなスポット、または小さな幾何学的な線または他の物体が好ましい。
【0031】
従って、無害な「真の閾値以下」の致死量以下のマイクロパルスレーザー光線を作成して、本発明の目的を達成するために、波長または周波数、デューティサイクルおよびパルス持続時間を含む以下の重要なパラメータが見出された。レーザー光ビームは、550nm~1300nm、特に好ましい実施形態では810nm~1000nmの波長などの細胞毒性光化学効果を回避するために532nmを超える波長を有する必要がある。デューティサイクルは10%未満である必要があり、2.5%~5%であることが望ましい。パルス列の持続時間または露光時間は、100~600ミリ秒である必要がある。レーザー光線の強度またはパワーは、網膜で1平方センチメートルあたり100~590ワット、または網膜の各治療スポットでレーザースポットあたり約1ワットにする必要がある。これは、最大許容暴露(MPE)の18~55倍の網膜レーザー照射と100~590W/cmの網膜放射照度を生成するのに十分なパワーである。好ましくは、小さなスポットサイズを使用して、熱の蓄積を最小限に抑え、所定のレーザースポット内の均一な熱分布を保証して、熱放散を最大にする。
【0032】
前述のパラメータを使用すると、RPEのすべての領域の網膜光刺激がレーザー放射に曝され、治療に貢献するために保存および利用できる、無害であるが治療的に有効な「真の閾値以下」または目に見えない光線療法治療を達成できる。本発明は、従来の光線療法の欠点および合併症を回避しながら、従来の光線凝固および光線療法の利点をもたらすことが見出された。本発明によれば、医師は、レーザー光線を適用して、視力低下または他の損傷を生じることなく、黄斑および中心窩などの敏感な領域を含む網膜全体を治療することができる。これは、目への損傷や失明を引き起こす可能性があるため、従来の光線療法では不可能である。
【0033】
治療効果を得るために、組織損傷と病変を作成しなければならないというのが従来の考え方である。しかしながら、本発明者は、これが単純にそうではないことを発見した。レーザーで誘起された網膜損傷がない状態では、機能的な網膜組織の喪失はなく、処置に対する炎症反応もない。有害な処置効果は、それ故、完全に除去され、機能的な網膜は、犠牲にされるよりもむしろ保存される。これは、従来の光凝固治療と比較して、優れた視力結果を生み出すかもしれない。
【0034】
本発明は網膜神経感覚上皮に使用されず(spares)、RPEによって選択的に吸収される。網膜血管疾患の病態形成についての現在の理論は、特に、網膜血管疾患の重要なメディエーターとして、RPEによって生成された強力な追加の細胞血管作用性因子である、サイトカインに関係している。本発明は、RPE内の致死的な蓄積を選択的に標的とし、回避する。したがって、本発明によって、治療反応に関与する処置されたRPEの能力は保存され、従来の光凝固治療におけるRPEのそれらの破壊の結果として、除去されるのではなく、さらに増強される。
【0035】
サイトカインの臨床効果が「U字型の曲線」に従い、ここで曲線の左側によって示される、サイトカイン産生の小さな生理学的変化が、高用量の(薬理学的)治療(曲線の右側によって示される)に匹敵する大きな臨床効果を有し得ることが留意されている。本発明に従う致死量以下のレーザー露光を使用することで、曲線の左側に作用し、ここで処置反応は、用量反応ではなくむしろ「オン/オフ」現象に近似し得る。これは、低い報告された放射照度で観察された本発明の臨床的有効性の説明になるかもしれない。これはまた、レーザーと組織の相互作用の臨床的な経験およびインビトロでの試験と一致しており、ここで放射照度の増大によって、治療効果を改善することなく、単純に熱による網膜損傷のリスクは増大し得る。
【0036】
SDMが作用し得る別の機構は、熱ショックタンパク質(HSP)の活性化作用であると考えられている。ほぼ無限の様々な細胞異常が考えられるのにもかかわらず、すべてのタイプの細胞が、共通の及び高度に保存された修復の機構:熱ショックタンパク質(HSP)を共有する。HSPsは、ほとんどあらゆるタイプの細胞のストレスあるいは損傷によって、即座に、数秒から数分で誘発される。致死的な細胞障害のない状態で、HSPは、生細胞をより正常な機能的状態へと修復および回復させるのに極めて有効である。HSPは、一時的なものであり、一般に数時間でピークに達し、数日間持続するが、その効果は長く永続することもある。HSPは、糖尿病性網膜症(DR)およびAMDを含む、多くの網膜障害における共通因子である炎症を減少させる。
【0037】
レーザー治療は、HSP活性化を誘発し、網膜処置の場合には、それ故、網膜のサイトカイン発現を変更し、正常化する。致命的でない細胞ストレス(レーザー照射など)がより突発的且つ重度なものであればあるほど、HSP産生はより迅速且つ強固なものとなる。したがって、各SDM暴露によってもたらされた非常に急激な変化率(各々が100μsのマイクロパルスで~7℃の上昇、または70,000℃/sec)での爆発的な(a burst of)繰り返しの低温の熱スパイクは、特に、低い平均組織温度上昇のみを繰り返す(duplicate)ことができる、連続波レーザーによる閾値以下の処置への致命的でない露光と比較して、HSPの産生を刺激することに特に有効である。
【0038】
532nm未満のレーザー波長は、漸増的に細胞毒性の光化学効果をもたらす。532nm-1300nmおよび特に880nm-1000nmで、SDMは、光化学的な細胞ストレスではなく、輻射熱を産生する。したがって、SDMは、組織を損傷させることなく、RPEを含む組織に影響を与えることができる。HSP活性化と一致して、SDMは、網膜の電気生理、視力、および対比視力の迅速且つ有意な改善、マイクロペリメトリーによって測定された黄斑の感度の改善などの、迅速な臨床効果に加えて、DMEの減少および網膜の新血管新生の退行などの長期的な効果ももたらす。
【0039】
網膜において、SDMの臨床的有用性は、それ故、致死量以下の光熱RPE HSP活性化によってもたらされる。機能障害のRPE細胞において、SDMによるHSP刺激は、結果としてサイトカイン発現を正常化させ、網膜の構造および機能を改善する。この「低強度」のレーザー/組織相互作用の治療効果は、その後、「高密度」のレーザー適用によって増幅されて、標的とされた領域に機能障害のRPEをすべて動員し、それによって処置効果を最大限にする。これらの原則は、本明細書に記載されるSDMの処置戦略を定義する。薬物および光凝固の両方に類似した治療効果をもたらすSDMの能力は、(焼灼以外の効果のための)レーザーで誘起された網膜損傷が不必要且つ非治療的なものであり;および実際に、網膜機能の喪失および炎症の誘因が原因で有害であることを示している。
【0040】
正常に機能する細胞は修復を必要としないため、正常細胞中のHSP刺激は、顕著な臨床効果を有さない傾向がある。様々な細胞タイプに対する、病気の細胞に影響を及ぼすが正常な細胞には影響を及ぼさない、SDMなどの近赤外レーザー効果の「病原性-選択性(patho-selectivity)」は、SDMの臨床観察と一致している。この能力は、慢性の進行性疾患を有する眼および最小の網膜異常および最小の機能不全を有する眼の初期の及び予防的な処置に対するSDMの適合性の鍵である。最終的に、SDMは、米国規格協会の「最大許容露光量」の予測と一致している、網膜のレーザー法の中でも独特な、臨床的に広い治療域を有することが報告された。SDMは、エントロピー的な(entropic)タンパク質のアンフォールディングおよび脱凝集などの直接的な光熱効果を引き起こし得るが、HSP媒介性の網膜修復の臨床的に安全且つ有効な刺激のために最適化されているように見える。
【0041】
SDMはレーザーにより誘発された網膜障害(光凝固)を生成せず、既知の有害な処置効果を有しておらず、多くの網膜障害(糖尿病性黄斑浮腫(DME)増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)による黄斑浮腫、中心性漿液性網脈絡膜症(CSR)、薬剤耐性の逆転、および乾燥した加齢黄斑変性、シュタルガルト病、錐体ジストロフィー、および網膜色素変性症などの進行性の変性網膜症の予防療法)の効果的な処置であることが報告されている。SDMの安全性は、それが、初期の窩を含むDMEによる視力喪失のリスクを減らすために、20/20の視力を備えた目の中で中心窩的に(transfoveally)使用され得るような状態である。
【0042】
上記のように、HSPのSDM刺激が疾患プロセスに関して非特異性である一方で、HSPを媒介とする修復の結果は機能不全の状態に特有のそれ自体の性質による。HSPは、間違いが何であってもそれを修復する傾向がある。したがって、網膜の状態におけるSDMの観察された効果は、BRVO、DME、PDR、CSR、年齢関連および遺伝学的な網膜症、ならびに薬物耐性のあるNAMDほど広範に異なる。概念的に、この能力は、SDM作用の「デフォルトにリセット(Reset to Default)」モードの一種とみなされ得る。細胞の機能が危機的である広範な障害について、SDMは、HSPを媒介とする細胞の修復によって、(「工場出荷時の設定(factory default settings)」への)「リセット(reset)」のトリガーを引くことにより細胞の機能を標準化する。
【0043】
本発明者らは、加齢黄斑変性(AMD)に苦しむ患者のSDM処置が、進行を遅らせ、AMDの進行を止めることさえできるということを発見した。患者のほとんどは、SDM治療後にダイナミックな機能的logMARの薄明視の視力と薄明視の対比視力における有意な改善を発見した。SDMは網膜色素上皮(RPE)の機能を標的化し、保存し、および「標準化する」(正常に近づく)ことにより作用すると考えられている。
【0044】
SDMはまた、全身性糖尿病の持続性にもかかわらず、処置関連の損傷または副作用なしで、糖尿病性網膜症の疾患状態の発現を停止または逆転させることが示された。これに基づき、SDMは、糖尿病に罹患したRPE細胞において、通常の細胞機能への復帰とサイトカイン発現を誘発することによって(工場出荷時の設定を回復するために電子デバイスの「リセット」ボタンを押すことに似ている)作用し得ると仮定される。上記の情報と研究に基づいて、SDM処置は、標的とされた組織における熱ショックタンパク質(HSP)活性化によってサイトカイン発現に直接影響を与えることもある。
【0045】
上記に示されるように、閾値以下のダイオードマイクロパルスレーザー(SDM)光刺激は、眼の組織中のわずかにミスフォールドされたタンパク質の直接修復を刺激するのに効果的であった。HSP活性化に加えて、これは別の方法でも生じ得る。なぜなら、熱の時間経過の形をしたマイクロパルスによって引き起こされた温度中のスパイクがタンパク質内部の水の拡散を可能にし、これが、タンパク質がその天然の状態に戻るのを防ぐペプチド-ペプチド水素結合の切断を可能にするからである。タンパク質への水の拡散により、抑制的な水素結合の数が約1000倍増加する。したがって、このプロセスを他の疾患にも有利に適用することができると考えられている。
【0046】
上記に説明されるように、標的組織に適用されるエネルギー源は、治療効果を達成しつつ、永久的に組織を破損しないように決定および選択されなければならない、エネルギーおよび動作パラメータを有する。一例として、レーザー光線ビームなどの光線ビームエネルギー源を使用して、レーザー波長、デューティサイクル、および合計のパルス列持続時間パラメータを考慮に入れなければならない。考慮できる他のパラメータは、平均レーザーパワーと同様にレーザー源の半径を含んでいる。こうしたパラメータの1つを調節または選択することは、少なくとも1つの他のパラメータに対する効果を有することもある。
【0047】
図1図2は、レーザー源半径(0.1cm~0.4cmの間)とパルス列持続時間(0.1~0.6秒)とを比較して、平均パワーをワットで示すグラフを例証している。図1は880nmの波長を示し、図2は1000nmの波長を有する。レーザー源の半径が減少し、合計の列持続時間が増大し、および波長が減少するにつれて、必要とされるパワーが単調に減少することがこれらの図から見て取れる。レーザー源の半径の好ましいパラメータは1mm~4mmである。880nmの波長については、パワーの最小値は0.55ワットであり、レーザー源の半径は1mmであり、合計のパルス列持続時間は600ミリ秒である。レーザー源の半径が4mmであり、合計のパルス列持続時間が100ミリ秒である場合、880nmの波長のためのパワーの最大値は52.6ワットである。しかしながら、1000nmの波長を有するレーザーを選択する場合、最小限のパワー値は0.77ワットであり、レーザー源の半径は1mmであり、合計のパルス列持続時間は600ミリ秒であり、レーザー源の半径が4mmであり、合計のパルス持続時間が100ミリ秒である場合、最大のパワー値は73.6ワットである。個々のパルスの間の対応するピークパワーは、デューティサイクルで除算することによって平均パワーから得られる。
【0048】
加熱される組織部分の体積は、波長、関連する組織中の吸収長、およびビーム幅によって決定される。合計のパルス持続時間と平均レーザーパワーは、組織を暖めるために送達された全エネルギーを決定し、パルス列のデューティサイクルは関連するスパイクまたはピーク、平均レーザーパワーに関連するパワーを与える。好ましくは、およそ20~40ジュールのエネルギーが各立方センチメートルの標的組織に吸収されるように、パルスエネルギー源エネルギーパラメータは選択される。
【0049】
本発明の治療効果を生み出しつつ、標的組織の平均温度を、数分などの長時間にわたって6℃未満または1℃未満などの低い温度範囲に維持するために、1秒未満などの短時間にわたって最大で約11℃に標的組織を加熱することができることが分かっている。デューティサイクルと合計のパルス列持続時間の選択は、熱が消散し得る時間間隔を提供する。10%未満、好ましくは2.5%~5%の間のデューティサイクルは、100ミリ秒~600ミリ秒の合計のパルス持続時間とともに、効果的であることが分かった。
【0050】
総照射期間の間、少なくとも6℃から最大11℃まで、および好ましくはおよそ10℃に増大する望ましい標的領域の平均温度上昇が、結果としてHSP活性化をもたらすことが分かった。標的組織温度の制御は、ソースおよび標的パラメータを選ぶことによって判定され、それによって、HSP活性化に対する積分のアレニウスは1より大きく、同時に損傷を回避するための保守的なFDA/FCC要件を保証するか、または損傷アレニウス積分が1未満となる。
【0051】
永久的な組織損傷を回避する保守的なFDA/FCC制約を満たすために、光線および他の電磁放射線源に関して、6分間の期間にわたる標的組織の平均温度上昇は1℃以下である。加熱された標的領域における温度が、およそ10℃から1℃までの温度上昇から熱拡散によって減少するのに必要とされる典型的な減衰時間をし、波長が880nmであり、ソース直径が1ミリメートルであるときに、温度減衰時間は16秒である。ソース直径が4mmであるときに、温度減衰時間は107秒である。波長が1000nmであると、ソース直径が4mmであるときに温度減衰時間は18秒であり、ソース直径が1mmであるときに温度減衰時間は136秒である。これは、6分間以下などの数分にわたって維持されている平均温度上昇の時間内に十分にある。標的組織の温度が、組織へのエネルギー源の適用の間に、1秒の何分の1などC、非常に速く、およそ10℃などまで上昇されるが、比較的低いデューティサイクルは、組織に適用されたエネルギーのパルス間の比較的長い期間を提供し、比較的短いパルス列持続時間は、永久的な組織損傷がない、6分間以下などの数分を含む比較的短期間内の十分な温度の拡散および減衰を確かなものとする。
【0052】
治療上のHSPの活性化およびタンパク質修復の促進が関係する限り、エネルギー送達のパルス列モードは、エネルギー送達の単一パルスまたは段階的なモードとは異なる利点を有する。この利点については2つの考察がある:まず第1に、SDMエネルギー送達モードにおけるHSP活性化およびタンパク質修復に対する大きな利点は、およそ10℃のスパイク温度の生成から生じる。この大きな温度上昇は、活性化されるHSPの数を定量的に記述するアレニウス積分およびタンパク質修復を促進するタンパク質への水拡散の速度に対して大きな影響を与える。これは、温度が、大きな増幅効果を有する指数関数(exponential)に入るからである。第2に、温度上昇が長い間高値(10℃以上)で留まらないことが重要であり、なぜなら、これは、分単位の期間にわたっては平均温度上昇が1℃(超音波の場合には6℃)未満でなければならない、FDAおよびFCCの要件に違反するためである。
【0053】
エネルギー送達のSDMモードは、パワー、パルス時間、パルス間隔、および処置される標的領域の体積の賢明な選択によって、これらの先の考察を両方とも一意的に満たす。長期間の平均温度上昇が、超音波周波数に対して6℃および電磁放射線エネルギー源に対して1℃以下の長期間のFDA/FCC限界を超えないように、温度が、Cかなり急速におよそ10℃のその高値から減衰しなければならないため、治療領域の体積が入る(enters)。
【0054】
ここで図3を参照すると、概略図は、本発明のプロセスを実現するためのシステムを示す。参照符号(30)によって一般に言及されるシステムは、例えば、好ましい実施形態における810nmの近赤外マイクロパルスダイオードレーザーなどの、レーザーコンソール(32)を含む。レーザーは、光学レンズまたはマスク、あるいは必要に応じて複数の光学レンズ及び/又はマスク(34)などの、光学素子に通されるレーザー光ビームを生成する。レーザープロジェクター光学素子(34)は、形成された光ビームを、レーザービーム光を患者の眼(38)上へと投射するための同軸の広視野の非接触性デジタル光視認システム/カメラ(36)に通す。(36)と標識されたボックスが、レーザービームプロジェクターと視認システム/カメラの両方を表わすことができ、これは、実際に使用時に2つの異なるコンポーネントを含み得ることが理解される。同軸の広視野の非接触性デジタル光視認システム/カメラ(36)は、レーザー(32)、光学素子(34)、及び/又は投射/視認コンポーネント(36)を操作するための、必要なコンピューター化されたハードウェア、データ入力部および制御部なども含んでもよい表示モニター(40)にフィードバックを提供する。
【0055】
上記に議論されるように、現在の処置は、処置される標的組織に単独で適用される多数の個々のレーザービームスポットの適用を必要とする。その数は、望ましい処置領域に対して何百または何千にもなり得る。これには非常に時間がかかり、骨が折れる。
【0056】
ここで図4を参照すると、一実施形態において、レーザー光ビーム(42)は、コリメータレンズ(44)に通され、その後マスク(46)に通される。特に好ましい実施形態では、マスク(46)は回折格子を含む。マスク/回折格子(46)は、幾何学的オブジェクト、またはより典型的には同時に生成された複数のレーザースポットの幾何学的パターン、あるいは他の幾何学的オブジェクトをもたらす。これは、参照符号(48)を付けられた複数のレーザー光ビームによって表わされる。代替的に、複数のレーザースポットは、複数の光ファイバーワイヤーによって生成され得る。レーザースポットを生成する方法はいずれも、網膜全体から成るなどの、非常に広い治療照射野にわたって大多数のレーザースポットを同時に生成することを可能にする。実際に、ひょっとすると何百、何千またはそれ以上もの数の大多数のレーザースポットが、黄斑および中心窩、網膜血管および視神経を含む、眼底全体および網膜全体をカバーし得る。本発明におけるプロセスの意図は、視力を改善するために惜しみなく網膜に対してレーザーを用いることによって、完全且つ全体的なカバレッジおよび処置をより確かなものとすることにある。
【0057】
利用されるレーザーの波長と同等の形状サイズを有する光学的特徴を使用することで、例えば、回折格子を用いて、非常に大きな標的領域のための大多数のレーザースポットの同時の適用を許可する量子力学的効果を活用することが可能である。そのような回折格子によって生成された個々のスポットはすべて、各スポットに対するパワー変動が最小である、入射ビームに類似した光学的形状である。結果として、十分な放射照度を有する複数のレーザースポットによって、大きな標的領域にわたって同時に、無害である上に有効な治療適用がもたらされる。本発明はまた、他の回折光学素子によってもたらされた幾何学的なオブジェクトおよびパターンの使用を企図する。
【0058】
マスク(46)を通るレーザー光は回折し、図4において(48)と標識されたレーザービームによって示された、マスク(46)とは距離を置かれた周期的パターンをもたらす。シングルレーザービーム(42)は、それ故、スポットの望ましいパターンまたは他の幾何学的オブジェクトを作り出すように、複数の何百または何千までもの個々のレーザービーム(48)へと形作られた。これらのレーザービーム(48)は、レーザービームを伝送し、患者の網膜上に望ましいパターンを形成するために、追加のレンズおよびコリメーター(50)、(52)などに通され得る。そのような追加のレンズおよびコリメーター(50)、(52)などはさらに、必要に応じてレーザービーム(48)を変換する及びその向きを変えることができる。
【0059】
光学マスク(46)の形状、間隔およびパターンを制御することによって、恣意的パターンが構築され得る。パターンおよび露光スポットは、光工学分野の専門家による適用要件に従って望まれるように、恣意的に作成且つ変更され得る。フォトリソグラフィー技術、特に半導体製造の分野で開発された技術は、同時の幾何学的なスポットのパターンまたは他のオブジェクトを作り出すために使用することができる。
【0060】
数百または数千もの同時のレーザースポットが、生成され、作り出され、および眼組織に適用されるパターンへと形成され得るが、眼組織、および特に眼水晶体を過熱しない要件が原因で、本発明に従って同時に使用することができる処置スポットまたはビームの数には制約がある。個々のレーザービームまたはスポットはそれぞれ、有効となる列持続時間にわたって最小の平均パワーを必要とする。しかしながら、同時に、眼組織は、損傷されることなく特定の温度上昇を超過することができない。例えば、眼の水晶体を過熱且つ損傷しないように水晶体を介して送られ得る平均パワーに対する上限を設定する、眼水晶体の温度上昇に対する4℃の制約がある。例えば、810nmの波長のレーザーを使用して、生成される及び使用される同時のスポットの数は、0.04(4%)のデューティサイクルおよび0.3秒(300ミリ秒)の合計の列持続時間が、汎網膜のカバレッジのための使用されるときに、わずか1からおよそ100までとなり得る。波長が増加するにつれ、吸水率は増加し、結果として網膜の前の硝子体液を通る長い路程にわたる加熱がもたらされる。より短い波長、例えば577nmに関して、RPEのメラニンにおける吸収係数はより高くなり得、それ故、レーザーパワーはより低くなり得る。例えば、577nmでは、パワーは、有効となる本発明に対する4倍だけ低下され得る。したがって、577nmの波長レーザー光を使用するときに、わずかに単一のレーザースポットまたはおよそ400までのレーザースポットとなり得るが、それでも眼は害されないし損傷されない。
【0061】
本発明は、数ダース又は数百もの数などの、多数の同時に生成された治療光線又はスポットを使用することができ、本発明のパラメータと方法論が治療上有効で非破壊である上に非永続的に損傷を与える処置を生成すると、レーザー光スポットが中心窩を含む網膜の任意の部分に適用されることが可能となり、一方で、従来技術は、従来のレーザービーム方法への曝露から損傷を受け、それにより視力損失と他の合併症が引き起こされると、中心窩などの網膜の敏感な領域の偶発的曝露を回避するために、大多数の同時のレーザースポットを使用することができず、且つ頻繁にたった1つの処置レーザービームに制限される。
【0062】
図5は、複数の光源を、上に記載される、パターンを生成する光学サブアセンブリへと連結するシステムを図式で例示する。具体的には、このシステム(30’)は、上記の図3に記載されたシステム(30)に類似している。代替的なシステム(30’)及び前述のシステム(30)の主な違いは、複数のレーザーコンソール(32)を包含することであり、その出力は各々、ファイバカプラ(54)に供給される。ファイバカプラは、前のシステムに記載されたようなレーザープロジェクター光学素子34へと通される単一出力を生み出す。複数のレーザーコンソール32の単一の光ファイバーへの連結は、当該技術分野で既知なようにファイバカプラ54を用いて達成される。複数の光源を組み合わせるための他の既知の機構も利用可能であり、本明細書に記載されるファイバカプラと交換するために使用されてもよい。
【0063】
このシステム(30’)において、複数の光源(32)は、前のシステム(30)に記載されたものと同様の経路に従うものであり、即ち、コリメートされ、回折され、再びコリメートされ、及びステアリング機構を用いて網膜へと配向される。この代替的なシステム(30’)において、回折素子は、通過する光の波長に依存して、前に記載されたものとは異なって機能しなければならず、これは、結果としてパターンのわずかな変化をもたらす。その変化は、回折されている光源の波長と直線状になっている。一般に、回折角の差は、異なる重複パターンが、処置のためにステアリング機構36を通って網膜38に向かう同じ光路に沿って配向され得るのに十分小さな差である。回折角のわずかな差は、ステアリングパターンがどのように網膜のカバレッジを達成するのかに影響を与える。
【0064】
結果として生じるパターンが各波長に対してわずかに変化するため、完全なカバレッジを達成するための連続するオフセット(offsetting)は、各波長に対して異なる。連続するオフセットは2つのモードで達成され得る。第1のモードでは、光の波長はすべて、同一のカバレッジなしで同時に適用される。複数の波長の1つに対する完全なカバレッジを達成するためのオフセットのステアリングパターンが使用される。したがって、選択された波長の光は、網膜の完全なカバレッジを達成しているが、他の波長の適用は、網膜の不完全なカバレッジまたは重複するカバレッジのいずれかを達成する。第2のモードは、その特定の波長に対する網膜の完全なカバレッジを達成するために、適切なステアリングパターンを用いて、変化する又は異なる波長の各光源を連続して適用する。このモードは、複数の波長を使用する同時の処置の可能性を除外するが、光学的手法によって各波長に対する同一のカバレッジを達成することを可能にする。これは、光学波長のいずれに対する不完全なカバレッジおよび重複するカバレッジも回避する。
【0065】
これらのモードはまた、組み合わされ、一致され得る。例えば、2つの波長が同時に適用されて、1つの波長が完全なカバレッジを達成し、もう1つの波長が不完全な又は重複するカバレッジを達成してもよく、その後、第3の波長が連続して適用されて、完全なカバレッジを達成してもよい。
【0066】
図6は、本発明のシステム(30’’)の更に別の代替的な実施形態を図式で例証している。このシステム(30’’)は、図3に描写されたシステム(30)と略同じように構成されている。主な違いは、光源の特定の波長に合わせられた複数のパターンを生成するサブアセンブリチャネルを包含することである。複数のレーザーコンソール(32)が平行に配され、その各1つは、それ自体のレーザープロジェクター光学素子(34)へと直接つながっている。各チャネル(58a)、(58b)、(58c)のレーザープロジェクター光学素子は、図4に関連して上に記載されるように、コリメーター(44)、マスクまたは回折格子(48)、およびリコリメーター(recollimators)(50)、(52)を含み、光学素子の全セットは、対応するレーザーコンソール(32)によって生成された特定の波長に合わせられる。その後、光学素子(34)の各セットからの出力は、他の波長との組み合わせのためにビームスプリッター(56)に向けられる。逆に使用されるビームスプリッターが、複数の光ビームを単一出力へと組み合わせるために使用され得ることは当業者に知られている。
【0067】
その後、最終的なビームスプリッター(56c)から組み合わされたチャネル出力は、ステアリング機構を適用するカメラ(36)に通して配向され、網膜(38)の完全なカバレッジが可能となる。
【0068】
このシステム(30’’)において、各チャネルに対する光学素子は、そのチャネルの波長に対する正確な指定されたパターンを生成するように調整される。結果的に、チャネルがすべて組み合わせられ、適切に整列される(aligned)と、単一のステアリングパターンが使用されて、すべての波長に対する網膜の完全なカバレッジが達成され得る。
【0069】
システム(30’’)は、処置に使用されている光の波長と同じくらい多くのチャネル(58a)、(58b)、(58c)など及びビームスプリッター(56a)、(56b)、(56c)などを使用し得る。
【0070】
システム(30’’)の実施には、位置合わせの制約の数を減らすために異なる対称性が活用され得る。例えば、提案されたグリッドパターンは、二次元で周期的であり、完全なカバレッジを達成するために二次元で操作される。結果として、各チャネルに対するパターンが、指定されたパターンと同一である場合、各チャネルの実際のパターンは、すべての波長に対する完全なカバレッジを達成するために同じステアリングパターンに対して整列される必要はない。各チャネルは、効率的な組み合わせを達成するために光学的に整列される必要があるだけである。
【0071】
システム(30’’)において、各チャネルは光源(32)と共に開始し、光源(32)は、パターンを生成するサブアセンブリの他の実施形態などにおける光ファイバーからのものであり得る。この光源(32)は、コリメーション、回折、リコリメーション(recollimation)のために光アセンブリ(34)に配向され、チャネルをメイン出力と組み合わせるビームスプリッターへと配向される。
【0072】
光生物学の分野は、異なる生物学的効果が、標的組織を異なる波長のレーザーに露光することによって達成され得ることを明らかにしている。分離の可変期間及び/又は異なる照射エネルギーで順に、異なる又は同じ波長の複数のレーザーを連続的に適用することによっても、同じことが達成され得る。本発明は、望ましい処置効果を最大限にするか又はカスタマイズするために同時に又は順に適用される複数のレーザー、光または放射波長(またはモード)の使用を予期している。この方法はまた、潜在的な有害効果を最小限にする。上記に例示され記載された光学的な手法およびシステムは、複数の波長の同時または連続する適用を提供する。
【0073】
本明細書に記載される本発明は、汎網膜の及び/又は中心窩にわたる(trans-foveal)処置に対して概して安全である。しかしながら、使用者、つまり外科医は、疾患マーカーが位置付けられる網膜の特定の領域への処置を制限する、または瘢痕組織などからのより暗い色素形成を有する特定の領域における処置を予防することに備えること(preparing)が可能である。この場合、カメラ(36)には、開口部を選択的に広げるか又は狭くするように構成されたアイリス絞り(72)が備え付けられてもよく、開口部を通って光が患者の眼(38)へと配向される。図7は、そのようなアイリス絞り72)が備え付けられたカメラ(36)上の開口部(74)を例示する。代替的に、アイリス絞り(72)は、液晶ディスプレイ(LCD)(76)と交換されてもよいし、それを補足されてもよい。LCD76は、ディスプレイ中の各画素が、通り抜ける光を伝送または遮断することを可能にすることによって、動的な絞りとして作用する。そのようなLCD(76)は、図8に描写される。
【0074】
好ましくは、本発明のシステム(30)、(30’)、(30’’)のいずれか1つは、カメラ(36)を通して見られるような網膜のライブ画像を有するユーザーインターフェース上のディスプレイを含む。ユーザーインターフェースは、処置光が、アイリス絞り72及び/又はLCD76によって限定または制限または除外される領域を選択するために、網膜のこのライブ画像のオーバーレイを含んでもよい。ユーザーは、タッチスクリーン上などのライブ画像上に輪郭を描き、その後、制限または除外されたカバレッジを有するためにその輪郭の内側または外側のいずれかを選択してもよい。
【0075】
例として、ユーザーは、処置から除外されるべき網膜上の瘢痕組織を特定する場合、瘢痕組織のまわりに輪郭を描き、その後、レーザー療法からの除外のためにその輪郭の内部をマークするだろう。制御システムおよびユーザーインターフェースは、その後、選択された瘢痕組織にわたって画素を通る投射された処置光を遮断するように、LCD76に適切な制御信号を送るだろう。LCD76は、投射されたパターンの領域の減衰に有用である付加効果を提供する。この特徴は、パターン内の特定のスポットのピークパワー出力を制限するために使用されてもよい。最も高いパワー出力を有するパターンでの特定のスポットのピークパワーの制限は、処置パワーを網膜にわたってより均一にするために使用され得る。
【0076】
代替的に、外科医は、処置または回避されるべき網膜の領域の輪郭を描くために眼底モニターを使用してもよく、指定された領域は、その後、遮断用の(obstructing)LCD(76)の絞り(diaphragm)の必要性または使用なしに、その領域を処置または回避するように処置ビームをソフトウェアにより配向することによって、処置または回避される。
【0077】
典型的には、本発明のシステムは、網膜の光刺激による完全且つ全体的な網膜処置を確かなものとするために、誘導システムを組み込む。このガイダンスシステムは、両方に使用される従来の網膜のレーザー誘導装置と識別されることになっている、方向付ける、特定の網膜のロケーションへの処置;また、処置を窩などの敏感なロケーションから遠ざけて監督するために、本発明の処置方法が無害なように、従来のレーザー治療によって破損される窩、全網膜、窩を含むこと光学の神経などを処置することができる。さらに、偶発的な患者の運動による偶発的な視力喪失からの保護は問題ではない。代わりに、患者の運動は、十分なカバレッジを保証するためにレーザー光の適用の追跡における誘導に主として影響するだろう。視標、追跡機構から構成され、システムオペレーションにリンクされた、固定/追跡/登録のシステムは、多くの眼科用の診断システムにおいて一般的であり、本発明に組み込まれ得る。
【0078】
特に好ましい実施形態では、同時のレーザースポットの幾何学的パターンは、網膜表面の集密的なおよび完全な処置を達成するように連続してオフセットされる(offset)。網膜のセグメントは本発明に従って処置され得るが、より理想的には、網膜全体が1回の処置セッション内で処置される。これは、複数のスポットを眼底全体に一度に適用することによって、時間を節約して行われる。この同時のスポットのパターンは、単一の処置セッションで網膜全体をカバーするように、連続してアレイ全体として、走査されるか、シフトされるか、また再配向される。
【0079】
これは、光走査機構(60)を使用して、制御された方法で行われ得る。図9および図10は、MEMSミラーの形態で使用され得る光学走査機構(60)を例示し、これは、電子的に作動される制御装置(64)および(66)を備えるベース(62)を有し、制御装置は、電気がそこに適用され移される(removed)とミラー(68)を傾斜させパンする(pan)ように作用する。コントローラー(64)および(66)に電気を適用することによって、ミラー(68)は移動し、それ故、レーザースポットの同時のパターンまたはその上に反映された他の幾何学的オブジェクトが、それに応じて患者の網膜上に移動される。これは、例えば、網膜の完全なカバレッジ、または処置されることが望まれる網膜の少なくとも一部が、光線療法にさらされるまで、光走査機構(60)を調節する電子ソフトウェアプログラムを使用して、自動化方法で行われ得る。光走査機構はまた、小さなビーム直径の走査検流計ミラーシステム、またはThorlabsによって流通されているシステムなどの、類似したシステムであってもよい。そのようなシステムは、望ましいオフセットパターンでレーザーを走査することができる。
【0080】
本発明のパラメータが、適用された放射エネルギーまたはレーザー光が破壊的でない又は損害を与えないことを決定するので、レーザースポットの幾何学的パターンは、例えば、組織を破壊することなく又は永久的な損傷を与えることなく重複され得る。しかしながら、特に好ましい実施形態では、図11に例示されるように、スポットのパターンは、熱放散を可能にする及び熱損傷または組織破壊の可能性を予防するために直前の露光間に空間を作り出すように各露光でオフセットされる。したがって、図11に例示されるように、16のスポットのグリッドとして典型的な目的のために例示されたパターンは、レーザースポットが前の露光とは異なる空間を占めるように各露光でオフセットされる。丸すなわち空(empty)ドットの他に充填(filled)ドットの図式での使用が、本発明に従って、領域へのスポットのパターンの前の及び続く露光を例示する図式目的のみであることが理解される。レーザースポットの間隔によって、組織に対する過熱および損傷が防がれる。これは、網膜全体(好ましい方法論)が光線療法を受けるまで、または望ましい効果が達成されるまで行われることが理解される。これは、例えば、図9および図10に例示されるように、マイクロマシンドミラー(micromachined mirror)に静電トルクを適用することなど、走査機構によって行うことができる。露光自由領域によって区切られた小さな網膜レーザースポット、蓄熱の予防、および一面当たりの多数のスポットを有するグリッドの使用を組み合わせることによって、可能な現在の技術よりもはるかにより急速に短い露光持続時間で大きな標的領域を傷つけずに且つ目に見えないように処置することが可能である。
【0081】
スポットまたは幾何学的オブジェクトの同時に適用されたグリッドアレイ全体の再配向またはオフセットを急速に且つ連続して繰り返すことによって、ヒト網膜などの標的の完全なカバレッジが、熱組織の損傷なしに急速に達成され得る。このオフセットは、レーザーパラメータおよび望ましい適用に依存して、最速の処置時間および熱組織による損傷の最小のリスクを確かなものとするために、アルゴリズム的に判定され得る。下記はフランホーファー近似(Fraunhoffer Approximation)を使用してモデル化された。9×9の正方格子を有するマスクを備え、9μmの開口半径、600μmの開口間隔を有し、890nmの波長レーザーを使用し、75mmのマスク-レンズ分離、および2.5mm×2.5mmの二次的なマスクサイズを有して、以下のパラメータは、6μmのスポットサイズ半径で133μmで区切られた一面当たり19のスポットを有するグリッドをもたらす。望ましい領域の辺長「A」、正方形の一面当たりの出力パターンスポット「n」、スポット間の区切り「R」、スポット半径「r」、および領域を処置するための望ましい正方形の辺長「A」を考慮して、処置する(小さなスポットの適用で集密的にカバーする)のに必要とされる露光の数「m」は、以下の数式によって与えられ得る:
【0082】
【数1】
【0083】
前述のセットアップで、露光の異なる視野領域を処置するために必要とされる操作の数mを計算することができる。例えば、処置に有用な3mm×3mmの領域は、およそ30秒の処置時間を必要とする、98のオフセット操作を必要とする。別の例は、ヒト網膜の表面全体を表わす、3cm×3cmの領域になる。そのような大きな処置領域のために、25mm×25mmのはるかに大きな二次的なマスクサイズが使用され、6μmのスポットサイズ半径で133μmで区切られた一面当たり190のスポットの処置グリッドがもたらされ得る。二次的なマスクサイズが、望ましい処置領域と同じ倍数だけ増大されたため、およそ98のオフセット操作の数、およびそれ故およそ30秒の処置時間は一定である。これらの処置時間は、連続する個々のレーザースポット適用の現在の方法と比較して、処置時間の少なくとも10~30倍の短縮を表わしている。3mmの照射野は、例えば、糖尿病黄斑浮腫および加齢黄斑変性症などの一般的な盲目疾患の処置に有用である、単一の露光でのヒト黄斑全体の処置を可能にする。98の連続するオフセット全体を実行することで、黄斑の全カバレッジを確かなものとする。
【0084】
もちろん、同時のパターンアレイにおいて生成された網膜スポットの数およびサイズは、容易に且つ高度に変更される場合があり、それによって、処置を完了するのに必要とされる連続するオフセット操作の数は、与えられた適用の治療要件に応じて容易に調節され得る。
【0085】
さらに、回折格子またはマスクにおいて利用される小さな開口によって、レーザー入力エネルギーの恣意的な分布を可能にする量子力学的挙動が観察され得る。これは、グリッドパターン、線、または他の望ましいパターンでの複数のスポットなどの、恣意的な幾何学的形状またはパターンの生成を可能にする。複数のファイバーの光ファイバーまたはマイクロレンズを使用するなど、幾何学的形状またはパターンを生成する他の方法も、本発明で使用され得る。幾何学的形状またはパターンの同時の投射の使用からの時間節約は、単一の臨床設定または処置セッションでの、網膜全体の処置を達成する1.2cm^2領域などの、新規のサイズの治療照射野を可能にする。
【0086】
ここで図12および図13を参照すると、小さなレーザースポットの幾何学的パターンの代わりに、本発明は、他の幾何学的なオブジェクトまたはパターンの使用を熟考する。例えば、継続的に又は一連の密に間隔を置かれたスポットによって形成された、レーザー光の単一の線(70)を作り出すことができる。領域にわたって線を連続して走査するために、オフセットする光走査機構を使用することができ、これは図12において下向きの矢印によって例示される。ここで図13を参照すると、線(70)の同じ幾何学的オブジェクトが、矢印によって例示されるように、光線療法の円形視野を作り出すように回転され得る。しかしながら、この手法の潜在的な欠点は、中央領域が、繰り返し露光され、許容しがたい温度にまで達し得ることである。しかしながら、これは、露光間の時間を増やすことによって、または中央領域が露光されないように、線において間隙を作り出すことによって克服することができるかもしれない。
【0087】
現在のマイクロパルスダイオードレーザーにおけるパワー制限は、かなり長い露光持続時間を必要とする。露光が長ければ長いほど、レーザースポットの残存部での露光されていない組織への及び網膜におけるような基礎的な脈絡毛細管板へのセンタースポットでの放熱性がより重要となる。したがって、810nmのダイオードレーザーのマイクロパルスレーザー光光線は、500ミリ秒以下、および好ましくはおよそ300ミリ秒の露光エンベロープ持続時間を要するべきである。もちろん、マイクロパルスダイオードレーザーがより強力になった場合、露光持続期間はそれにしたがって短縮されるべきである。
【0088】
パワー制限とは別に、本発明の別のパラメータは、デューティサイクル、すなわちマイクロパルスの列の周波数、または連続するパルス間の熱緩和時間の長さである。同様のMPEレベルでの同様の放射照度でマイクロパルスレーザーを伝送するために調節された10%以上のデューティサイクルの使用が、特により濃い眼底において致死的な細胞損傷のリスクを著しく増大させることが分かった。しかしながら、10%未満のデューティサイクル、および好ましくはおよそ5%以下のデューティサイクルは、生物学的反応を刺激するのにMPE細胞のレベルで十分な熱上昇および処置を実証しているが、濃く染色された眼底においてさえ致死的な細胞損傷をもたらすと予測されるレベルを下回ったままである。しかしながら、デューティサイクルが低ければ低いほど、露光エンベロープ持続時間は増加し、幾つかの例では、500ミリ秒を超過し得る。
【0089】
各マイクロパルスは、わずかミリ秒続き、典型的に50~100マイクロ秒の持続時間である。したがって、300-500ミリ秒の露光エンベロープ持続時間のために、および5%未満のデューティサイクルで、連続するパルス間の熱緩和時間を可能にするためにマイクロパルス間の相当量の時間の浪費がある。典型的に、熱緩和時間の1~3ミリ秒および好ましくはおよそ2ミリ秒の遅延が、連続するパルス間で必要とされる。十分な処置のために、網膜細胞は、典型的に、各位置で50-200回、および好ましくは75-150回の間、レーザー光に露光されるか又は当てられる。1-3ミリ秒の緩和または間隔の時間で、与えられた領域、あるいはより具体的には、レーザースポットに露光されている網膜上の位置を処置するために上に記載された実施形態に従う合計時間は、平均で200ミリ秒から500ミリ秒の間である。熱緩和時間は、その位置またはスポット内で細胞を過熱しないために、および細胞が損傷または破壊されるのを防ぐために必要とされる。200-500ミリ秒の時間は長くないようであるが、レーザースポットの小さなサイズおよび網膜の比較的大きな領域を処置する必要性を考慮して、黄斑全体または網膜全体を処置するには、特に処置を受けている患者の観点から、相当の時間かかり得る。
【0090】
したがって、本発明は、第1の処置領域とは離れて間隔を置かれる網膜及び/又は中心窩の第2の処置領域、すなわち追加領域にレーザー光を適用するために、同じ位置への連続するレーザー光の適用の間隔(典型的に1~3ミリ秒の間)を利用する。レーザービームは、予め決められた時間間隔内で、第1の処置位置、すなわち前の処置位置に戻され、本発明の望ましい治療的利益を達成するために、連続するパルス間の十分な熱緩和時間を提供し、それでもなお、レーザー光をその位置に繰り返し適用することにより適切にそれらの細胞の温度を時間をかけて十分に上昇させることによってそれらの位置または領域において細胞を十分に処置する。
【0091】
1-3ミリ秒以内、および好ましくはおよそ2ミリ秒以内に前に処置した位置に戻ることは重要であり、それによって、その領域を十分にその時間の間に冷やし、必要な時間窓内で処置することも可能になる。例えば、処置が有効とならない、またはひょっとしたら全く有効とはならないため、1秒または2秒を待つことができず、その後、必要な十分な処置をまだ受けていない前に処置された領域に戻る。しかしながら、その時間間隔の間、典型的におよそ2ミリ秒の間、少なくとも1つの他の領域、および典型的に複数の領域は、レーザー光パルスが、典型的に50~100マイクロ秒の持続時間であるため、レーザー光の適用によって処置することができる。処置することができる追加領域の数は、マイクロパルスの持続時間およびレーザー光ビームを1つの領域から別の領域に制御可能に移動させる能力のみによって制限される。現在、互いに離れて十分に間隔を置かれているおよそ4つの追加領域を、第1の処置領域で始まる熱緩和間隔の間に処置することができる。したがって、複数の領域を、少なくとも部分的に、第1領域に対して200-500ミリ秒の露光エンベロープ中に処置することができる。したがって、単一の時間間隔において、100の同時の光スポットのみが処置領域に適用される代わりに、およそ500の光スポットを、異なる処置領域においてその時間間隔の間に適用することができる。これは、例えば、810nmの波長を有するレーザー光ビームに当てはまるだろう。570nmなどの、より短い波長に関しては、多数の個々の位置でさえ光スポットを作り出すためにレーザービームに露光され得る。したがって、最高でおよそ400の同時のスポットの代わりに、およそ2,000のスポットが、与えられた領域または位置に対するマイクロパルス処置の間隔の間にカバーされ得る。
【0092】
上記に言及されるように、典型的に、各位置は、望ましい処置を達成するために、露光エンベロープ持続時間(典型的に200-500ミリ秒)にわたって50-200およびより典型的には75-150の光の適用を有する。本発明の一実施形態に従って、レーザー光は、各々の領域または位置に対する緩和時間間隔の間に順に前に処置された領域に再適用されるだろう。これは、処置される各領域に対する予め決められた数のレーザー光の適用が達成されるまで繰り返し行われる。
【0093】
これは、図14A図14Dに図式で例示される。図14Aは、第1の適用としてレーザー光を適用した第1の領域を実線の丸で例示している。レーザービームは、第1の露光領域における位置が、レーザー光を再び熱緩和時間間隔内に適用させることによって再処置されることが必要とされるまで、図14Bに例示されるように、第2の露光領域にオフセットされるか又はマイクロシフトされ(microshifted)、その後、第3の露光領域および第4の露光領域に続く。その後、図14Cに例示されるように、第1の露光領域内の位置は、レーザー光を再適用される。図14Dにおいて露光領域1の黒塗りされた丸によって図式で例示された、望ましい数の露光またはヒットあるいは光の適用が、これらの領域を治療上処置するために達成されるまで、陰影線が入ったドットまたは丸によって図14Dに例示されるように、二次的な又は続く露光が各露光領域に生じる。第1または前の露光領域の処置が完了すると、システムは追加の露光領域を加えることができ、そのプロセスは、処置される網膜の全領域が十分に処置されるまで繰り返される。実際に本発明に従うレーザー光の露光が、ヒトの眼に加えて既知の検出装置および技術では目に見えず、検出できないため、実線の丸、破線の丸、部分的に陰影線が入った丸、および完全に陰影線が入った丸の使用が、単に説明目的であることが理解されるべきである。
【0094】
隣接した露光領域は、熱による組織損傷を回避するために、少なくとも予め決められた最小距離だけ離されなければならない。そのような距離は、直前に処置された位置または領域から少なくとも0.5直径、およびより好ましくは1-2直径離れている。そのような間隔は、前の露光領域における実際に処置された位置に関係している。
比較的大きな領域が、図14A-Dに例示される方法とは異なる方法でオフセットされる複数の露光領域を実際に含み得ることが本発明によって熟考される。例えば、露光領域は、図12および図13に例示される細線を含み得るが、これは、必要領域がすべて十分に露光され処置されるまで、順に繰り返し露光される。本発明に従って、その領域は、網膜の限られた領域、黄斑全体または汎黄斑の処置領域、あるいは中心窩を含む網膜全体の領域を含むことができる。しかしながら、本発明の方法論により、処置される網膜または網膜全体のその領域を処置するために必要とされる時間は、単一の処置セッションが医療提供者にとって非常により短い時間がかかるものであるように、および期間が長いとして患者が不快になる必要がないように、4倍または5倍など、大幅に短縮される。
【0095】
1つ以上の処置ビームを網膜に一度適用し、処置ビームを一連の新しい位置に移動させる本発明のこの実施形態に従って、ビームを繰り返し同じ位置または領域に戻して再処置することには、全露光エンベロープ持続時間の間にレーザービームを同じ位置または領域に維持する方法論と比較して、それほどパワーが必要としないことが分かった。図15-17に関連して、必要とされるパルス長とパワーとの間には直線関係があるが、生成される熱間には対数関係がある。
【0096】
図15に関連して、X軸がワットでの平均パワーの対数(Log)を表わし、Y軸が秒での処置時間を表わす、グラフが提供される。下の曲線は汎黄斑の処置のためのものであり、上の曲線は汎網膜のためのものである。これは、50マイクロ秒のマイクロパルス時間、パルス間の2ミリ秒の時間、および300ミリ秒のスポット上の列の持続時間を有するレーザー光ビームに対するものである。各網膜スポットの領域は100ミクロンであり、これらの100ミクロンの網膜スポットに対するレーザーパワーは0.74ワットである。汎黄斑領域は、合計で7,000の汎黄斑スポットを必要とする、0.55cmであり、汎網膜領域は、完全なカバレッジに対して42,000のレーザースポットを必要とする、3.30cmである。各RPEスポットは、本発明に従って、そのリセット機構を十分に作動されるために最小エネルギーすなわち、汎黄斑に対して38.85ジュールおよび汎網膜に対して233.1ジュールを必要とする。予期されるように、処置時間が短ければ短いほど、必要とされる平均パワーは大きくなる。しかしながら、許容可能な平均パワーには上限があり、これは処置時間を短くする程度を制限している。
【0097】
上記に言及されるように、利用可能な及び使用されるレーザー光に関してパワー制約があるだけでなく、眼組織を損傷させることなく眼に適用することができるパワーの量にも制約がある。例えば、眼の水晶体における温度上昇は、白内障を引き起こすなど、水晶体を過熱しない及び損傷させないように4℃などに限定される。したがって、7.52ワットの平均パワーは、水晶体温度をおよそ4℃に上昇させ得る。パワーのこの制限は最小の処置時間を増大させる。
【0098】
しかしながら、図16を参照すると、必要とされるパルス当たりの合計のパワーは、レーザースポットを繰り返し且つ連続して移動させて、前の処置された位置に戻す、マイクロシフト(microshift)の場合にはより少なく、その結果、処置時間の間の伝送される総エネルギーおよび合計平均パワーは同じである。図16および図17は、合計のパワーが処置時間にどれほど左右されるかを示す。これは、汎黄斑処置に対しては図16に、汎網膜処置に対しては図17に示される。上の実線または曲線は、図11などに記載される及び例示されるように、熱緩和時間間隔を活用するマイクロシフトがない実施形態を表わし、一方で下の破線は、図14などに記載される及び例示されるように、そのようなマイクロシフトに対する状況を表わす。図16および図17は、与えられた処置時間の間、ピークの合計パワーが、マイクロシフトがないときよりもマイクロシフトがあるときの方がより少ないことを示している。これは、本発明のマイクロシフトの実施形態を使用する与えられた処置時間には、より少ないパワーが必要とされることを意味している。代替的に、許容可能なピークパワーは、全処置時間を短縮して、好都合に使用され得る。
【0099】
したがって、図15図17に従うと、1.0の対数パワー(10ワット)には、本明細書に記載されるように、本発明のマイクロシフトの実施形態を使用して合計20秒の処置時間を必要とする。マイクロシフトなしでは2分を超える時間がかかり、代わりに全処置エンベロープ持続時間の間に同じ位置または領域にマイクロパルス光ビームを残す。ワット数に従って最小の処置時間がある。しかしながら、マイクロシフトでのこの処置時間は、マイクロシフトなしよりもはるかに短い。必要とされるレーザーパワーがマイクロシフトでははるかにより少ないため、与えられた望ましい網膜の処置領域に対する処置時間を短縮するために、幾つかの事例においてパワーを増大させることが可能である。処置時間と平均パワーの積は、本発明に従って治療上の処置を達成するために、与えられた処置領域に対して固定される。これは、例えば、低減されたパワーで同時により多くの治療用レーザー光ビームまたはスポットを適用することによって実施され得る。もちろん、レーザー光のパラメータが、治療上有効であり、それでも細胞に対して破壊的ではなく、永久的に損傷を与えないように選択されるため、誘導または追跡のビームが必要とされず、本発明に従って、処置ビームだけで、中心窩を含む網膜のすべての領域を処置することができる。実際に、特に好ましい実施形態では、中心窩を含む網膜全体は本発明に従って処置され、これは単純に従来の技術の使用では不可能である。
【0100】
本発明の固有の特徴によって、中間透光体の混濁、網膜濃縮、または眼底色素沈着による影響をそれほど受けない、単一のセットの最適化されたレーザーパラメータを可能にしながら、単純化されたユーザーインターフェースが許容される。動作制御が提示され、多くの異なる方法で機能し得るが、システムは、2つの制御機能のみを利用し得る非常に単純化されたユーザーインターフェースを許容する。すなわち、第1の制御機能は「作動」ボタンであり、「スタンバイ」中にこのボタンを1回押し下げることによって、処置を作動させ開始する。処置中のこのボタンの押し下げは、処置を早期に中断させ、「スタンバイ」モードに戻す。マシンの起動は、ボタンに隣接している又はボタン内のLEDなどによって識別され、表示され得る。第2の制御機能は「フィールドサイズ」ノブであり得る。このボタンの1回の押し下げによって、ユニットが、例えば、3mmの焦点または「黄斑の」視野スポットをもたらすようにプログラムすることができた。このノブの2回目の押し下げによって、ユニットが、6mmまたは「後極の」スポットをもたらすようにプログラムすることができた。このノブの3回目の押し下げによって、ユニットが、「汎網膜」またはおよそ160°-220°のパノラマの網膜スポットまたはカバレッジ領域をもたらすようにプログラムすることができた。このノブを手動で回転させることで、様々なスポット照射野をもたらすことができた。各照射野内で、処置の密度および強度は同一である。フィールドサイズの変動は、光学的または機械的なマスキングまたは記載されるアイリス絞りまたはLCD開口などの開口によってもたらされる。
【0101】
固定ソフトウェアは、眼底の表示された画像をモニタリングすることができた。眼底の目印(landmark)の処置を始める前に、視神経、または(眼球正位を想定した)患者のいずれかの眼の部分または特徴などが、ディスプレイスクリーン上にオペレーターによってマークされ得る。処置が開始され、ソフトウェアは、十分な固視を確かなものとするために、眼底の画像または(眼球正位を想定した)患者のいずれかの眼の部分に対する他の画像登録(image-registered)をモニタリングする。固視のずれ(break)は自動的に処置を妨げる。固視のずれは、光学的に、または瞳孔の縁のそばで処置ビームに平行して及びその外縁に投射された低エネルギーの赤外線ビームの妨害によって検出され得る。固視が確立されるとすぐに、処置は完了に向けて自動的に再開する。標的への望ましいレーザーエネルギーの集密的な伝送の完了によって判定される、処置の終わりに、ユニットは、露光を自動的に終了し、デフォルトで「オン」または「スタンバイ」モードになる。この処置の特有の特性により、固視の妨害は、患者損傷の害またはリスクを引き起こさずに、処置セッションを延長するだけである。
【0102】
レーザーは、広視野の非接触レンズを介して眼底に投射され得る。レーザー視野または中央領域以外の眼底の特定の標的または領域のカスタマイズされた配向は、オペレーターのジョイスティックまたは偏心的な(eccentric)患者の注視によって達成され得る。レーザー伝送光学素子は、広視野の非接触デジタル眼底視認システムに同軸で連結され得る。作成された眼底の画像は、レーザーオペレーターに可視のビデオモニターに表示され得る。眼底のクリアな且つ焦点を合わせられた画像の維持は、オペレーターによって手動で配向されるカメラアセンブリ上のジョイスティックによって促進され得る。代替的に、カメラソフトウェアへの標的登録および追跡システムの追加は、結果として完全に自動化した処置システムをもたらす。
【0103】
眼の位置合わせを促進するために、固視像が患者に同軸で表示され得る。この画像は、視細胞の消耗、患者の疲労を回避し、優れた固視を促進するために、処置の間に、形状およびサイズ、色、強度、まばたき率(blink)、振動率、あるいは他の通常の又は連続的な変動が変更される。
【0104】
さらに、OCT、網膜血管造影、または自発蛍光撮影などの、他の網膜の診断方法からの結果または画像は、処置を誘導する、支援する、またはそうでなければ促進するために、患者の眼底の表示画像と並列して、またはそれに上書きして表示されるかもしれない。画像のこの並列または上書きは、網膜上の疾患、損傷または瘢痕組織の特定を促進することができる。
【0105】
本発明者は、加齢黄斑変性症(AMD)を患う患者の本発明による処置が、AMDの進行を遅らせる又は止めることさえもできることを発見した。この回復性の処置効果の更なる証拠は、処置が、脈絡膜血管新生が原因のAMDの視力喪失のリスクを一意に80%低下させることができるという本発明者の発見である。患者のほとんどは、本発明による処置後に動的な機能的logMAR視力および対比視力が有意に改善され、より優れた視力を持つ患者もいた。これは、網膜色素上皮(RPE)を標的とし、保護し、およびその機能を「正常化する」(正常へと近づける)ことによって作用すると考えられる。
【0106】
本発明による処置は、全身性糖尿病の持続性にもかかわらず、処置関連の損傷または副作用なしで、糖尿病性網膜症の疾患状態の発現を停止または逆転させることができると示された。本発明者によって公開された研究は、処置の回復効果が、糖尿病性網膜症の進行のリスクを一意に85%低下させることができることを示した。これに基づくと、本発明は、工場出荷時の設定を回復させるために電子装置の「リセット」ボタンを押すことに類似して、糖尿病の影響を受けたRPE細胞においてより正常な細胞機能およびサイトカイン発現へと戻ることを誘発することによって作用し得ると仮定される。
【0107】
上記の情報および試験に基づくと、SDM治療は、標的組織、特に網膜色素上皮(RPE)層におけるサイトカイン発現および熱ショックタンパク質(HSP)の活性化に直接影響し得る。重度の非増殖性および増殖性の糖尿病性網膜症、AMD、DMEなどを含む、多くの網膜疾患の進行の速度を低下させるために、汎網膜および汎黄斑のSDが、本発明者によって留意されてきた。既知の有害な処置効果の欠如と結び付けられた、これらの網膜疾患を有している個体の既知の治療上の処置有益性は、必要に応じて、初期の及び予防的な処置、開放的な適用(liberal application)および再処置を考慮することが可能となる。リセットの理論はまた、本発明が、様々なタイプのRPE媒介性の網膜障害に応用され得ることを示唆している。実際、本発明者は最近、汎黄斑の処置が、萎縮型加齢黄斑変性症、色素性網膜炎、錐体桿体の(cone-rod)網膜変性、およびシュタルガルト病において網膜の機能および健康、網膜の感度、および動的なlogMAR視力および対比視力を有意に改善することができることを示し、これは他の処置が以前には行うことができなかったことである。
【0108】
現在、網膜像および視力検査は、慢性の進行性網膜疾患の管理の手引きとなっている。組織及び/又は臓器の構造損傷および視力喪失は、遅発性の疾患症状であるため、この時点で定められた処置は、集中的なものでなくてはならず、しばしば延長され、高価となり、視力を改善させることに頻繁に失敗し、めったに正常な視力を回復させない。本発明は、有害な処置効果なしで多くの網膜障害の有効な処置であることが示され、その安全性および有効性によって、それはまた、網膜障害の発症または症状を予防的に又はそのような網膜疾患の予防的な処置として止める又は遅らせるべく眼を処置するために使用され得る。網膜機能を改善する、および故に健康を改善する処置も、疾患の疾患障害重症度、進行、不適当な事象および視力喪失を減少させるはずである。病理学的構造の変化の前に、処置を早期に開始し、定期的な機能的に誘導された再処置による処置有益性を維持することによって、構造の変性および視力喪失が、予防されない場合には遅らせられ得る。疾患障害進行の速度の適度の初期の低下でさえ、視力喪失における有意な長期的な低下および合併症につながり得る。一次欠陥の結果を軽減することによって、疾患の経過は弱められ(muted)、進行は遅くされ、合併症および視力喪失が減少され得る。これは、処置が、糖尿病性網膜症における進行および視力喪失のリスクを85%減少させる及びAMDを80%減少させることを発見した本発明者の試験に反映されている。
【0109】
SDMがホメオトロフィの中で成功裡に使用されたか、またはRPEの機能、網膜の機能と自己調節、およびRPEの生体機能を正常化することにより「デフォルトにリセットされ」たので、SDMの適用は、他の慢性の進行性の網膜症をそうするのと同じ方法で、近視、特に小児の近視の進行を遅くするか、止めるか、または逆転さえするように、正常な網膜の生理学および自己調節を回復できると考えられている。
【0110】
致死量以下であり、真の閾値以下の光凝固および網膜組織を作り出す、レーザー光ビームが生成され、網膜組織の少なくとも一部は、眼の網膜組織の予防的および保護的な処置を提供するように、露光された網膜または中心窩の組織を損傷することなく、生成されたレーザー光ビームに露光される。処置された網膜は、中心窩、小窩、網膜色素上皮(RPE)、脈絡膜、脈絡膜新生血管膜、網膜下液、黄斑、黄斑浮腫、傍中心窩、及び/又は周中心窩を含み得る。レーザー光ビームは、網膜の一部のみ、または実質的に網膜および中心窩の全体、または他の眼組織に露光され得る。この手順は、近視または近視のリスクがある眼の網膜および/または中心窩組織などの眼の組織に適用される。
【0111】
ほとんどの処置効果は、永続的でないにしても長く続くように見えるが、臨床観察は、それが時々弱まるように見え得ることを示唆している。したがって、網膜は定期的に再処置される。これは、設定したスケジュールに従って、あるいは患者の網膜が患者の視覚的な及び/又は網膜の機能または症状を定期的にモニタリングすることなどによって再処置されると判定されるときに行われ得る。
【0112】
いくつかの実施形態は例示目的のために詳細に記載されているが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更を行ってもよい。これに応じて、本発明は添付の請求項による場合を除けば、限定されないものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16
図17
【外国語明細書】