(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184913
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】没食子酸プロピル含有ビタミン製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/235 20060101AFI20221206BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20221206BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20221206BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20221206BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20221206BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20221206BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221206BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221206BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221206BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221206BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221206BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20221206BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20221206BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20221206BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20221206BHJP
A23K 20/174 20160101ALI20221206BHJP
A23K 20/158 20160101ALI20221206BHJP
A23K 20/105 20160101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K31/235
A61K31/355
A61K31/015
A61K31/122
A61K31/045
A61K31/047
A61K9/14
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/42
A61P3/02
A61P3/02 101
A23L33/15
A23L33/10
A23K20/174
A23K20/158
A23K20/105
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143405
(22)【出願日】2022-09-09
(62)【分割の表示】P 2019502160の分割
【原出願日】2017-07-17
(31)【優先権主張番号】16180199.8
(32)【優先日】2016-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイアー-ベーム,キャスリン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルガソン,スランドゥル
(72)【発明者】
【氏名】シーン,ラージヴィンダー
(72)【発明者】
【氏名】ドブラー,ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ショールディング,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヒベルス,クリストフ ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】コルター,カール
(72)【発明者】
【氏名】ブルーンス,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ペレティーア,ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー,ダニエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エトキシキンについて存在する安全性の懸念を引き起こすことなくエトキシキン含有製剤の安定性を達成するか又はこれを超える製剤を提供する。
【解決手段】粉末状ビタミン製剤であって、該ビタミンが本質的に0.7μm未満の粒径を有し、前記製剤が有効量の没食子酸プロピルを含む、粉末状ビタミン製剤であって、使用される有効量が、製剤の総量に対して没食子酸プロピル3.5重量%~9.5重量%であり、ここで製造中の没食子酸プロピルとビタミンとの重量比が0.21~2.63である、粉末状ビタミン製剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状ビタミン製剤であって、該ビタミンが本質的に0.7μm未満の粒径を有し、前記製剤が有効量の没食子酸プロピルを含む、前記粉末状ビタミン製剤。
【請求項2】
使用される有効量が、製剤の総量に対して没食子酸プロピル3.5重量%~9.5重量%であり、ここで製造中の没食子酸プロピルとビタミンとの重量比が0.21~2.63である、請求項1に記載の粉末状ビタミン製剤。
【請求項3】
ビタミンが、ビタミンD、E、K若しくはQ又はそれらの誘導体、例えば、酢酸トコフェロール、トコトリエノールなどのビタミンEエステル、ビタミンK1、ビタミンK2、コエンザイムQ10及び、β-カロテン、カンタキサンチン、シトラナキサンチン、アスタキサンチン及びエステル誘導体、ゼアキサンチン及びエステル誘導体、ルテイン及びエステル誘導体、リコペン、アポカロテン酸及びエステル誘導体、アポカロテナールなどのカロテノイド、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の粉末状ビタミン製剤。
【請求項4】
製剤が、ブチルヒドロキシトルエン又は合成及び/若しくは天然トコフェロールを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の粉末状ビタミン製剤。
【請求項5】
トコフェロールが天然トコフェロールである、請求項4に記載の粉末状ビタミン製剤。
【請求項6】
没食子酸プロピルとトコフェロールが、製剤中に9:1~1:2の比で存在する、請求項4又は5に記載の粉末状ビタミン製剤。
【請求項7】
没食子酸プロピルとブチルヒドロキシトルエンが、製剤中に8:1~1:4の比で存在する、請求項4に記載の粉末状ビタミン製剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の粉末状ビタミン製剤であって、ストレス試験において4週間後の、没食子酸プロピルではなく同量のエトキシキンを含む比較サンプル中の活性ビタミンの比(B2/B1)に対する該粉末状ビタミン製剤中の活性ビタミンの比(A2/A1)が少なくとも0.75であり、ここで該活性ビタミンの割合は、いずれの場合も、製造された製剤100mgと、50重量%の微粉石灰(<1000μm)、20重量%のコムギフスマ(<1000μm)、20重量%の50%シリカ支持塩化コリン(<1000μm)及び10重量%の微量元素混合物(100~500μm)(前記微量元素混合物は、46.78重量%のFeSO4×7H2O(100~500μm)、37.43重量%のCuSO4×5H2O(100~500μm)、11.79重量%のZnO(<500μm)、3.61重量%のMnO及び0.39重量%のCoCO3からなる)の混合物4gとを50mLガラス容器中に秤量し、該成分を混合してこれらを40℃及び湿度70%の環境制御チャンバ中に4週間保存し、保存開始前のビタミン含有量(A1)及び(B1)並びに保存終了時のビタミン含有量(A2)及び(B2)を決定し、比A2/A1及びB2/B1から活性ビタミンの割合を計算することにより確認される、前記粉末状ビタミン製剤。
【請求項9】
微細粉末状ビタミン製剤の製造方法であって、該ビタミンが本質的に0.7μm未満の粒径を有し、以下のステップ:
a1) 該ビタミンを、揮発性の水混和性有機溶媒中、又は水と水混和性有機溶媒との混合物中に、50℃~200℃の温度で、場合により昇圧下に、10秒未満の期間内溶解させるステップ、
a2) a)の後に得られた溶液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と0℃~50℃の温度で急速に混合し、ビタミンをコロイド状分散形態で析出させるステップ、
a3) 形成された分散液を、大部分の溶媒を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
又は
a2) 該ビタミンを、揮発性の水不混和性有機溶媒中に、30~150℃の温度で、場合により昇圧下に溶解させ、
b2) a)の後に得られた溶液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と混合し、エマルションを形成するステップ、
c2) 該エマルションから有機溶媒を除去し、形成された懸濁液/分散液を、水を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
又は
a3) 該ビタミンを、その融点超に加熱するか若しくはこれを油中に溶解させることにより、又はこれを室温で温置することにより液体に変換するステップ、
b3) a3)の後に得られた融液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と混合し、エマルションを形成するステップ、
c3) 形成された分散液を、水を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
を含み、該方法が有効量の没食子酸プロピルの存在下で行われる、前記方法。
【請求項10】
ビタミンが本質的に0.7μm未満の粒径を有する、微細粉末状ビタミン製剤を製造するための請求項9に記載の方法であって、以下のステップ:
a1) 該ビタミンを、揮発性の水混和性有機溶媒中、又は水と水混和性有機溶媒との混合物中に、50℃~200℃の温度で、場合により昇圧下に、10秒未満の期間内溶解させるステップ、
b1) a1)の後に得られた溶液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と0℃~50℃の温度で急速に混合し、ビタミンをコロイド状分散形態で析出させるステップ、
c1) 形成された分散液を、大部分の溶媒を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
又は
a2) ビタミンを、揮発性の水不混和性有機溶媒中に、30~150℃の温度で、場合により昇圧下に溶解させるステップ、
b2) a2)の後に得られた溶液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と混合し、エマルションを形成するステップ、
c2) 該エマルションから有機溶媒を除去し、形成された分散液を、水を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
又は
a3) 該ビタミンを、その融点超に加熱するか若しくはこれを油中に溶解させることにより、又はこれを室温で温置することにより液体に変換するステップ、
b3) a3)の後に得られた融液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と混合し、エマルションを形成するステップ、
c3) 形成された分散液を、水を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
を含み、使用される有効量が該製剤の総量に対して没食子酸プロピル3.5重量%~9.5重量%であり、ここで該製造中の没食子酸プロピルとビタミンとの重量比は0.21~2.63である、前記方法。
【請求項11】
没食子酸プロピルが、有機溶媒含有ビタミン相及び/又はコロイド含有水溶液及び/又は形成された分散液に添加される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載の方法であって、該方法が、pH4.5~pH8.5のpHで、より好ましくは6.5~8.5のpHで行われる、前記方法。
【請求項13】
コロイド含有水溶液への没食子酸プロピルの添加後、前記溶液が6.5~8.5のpHに調整される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
トコフェロールが、有機溶媒含有ビタミン相に添加される、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
トコフェロールが天然トコフェロールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
没食子酸プロピルとトコフェロールが9:1~1:2の比で使用される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
ブチルヒドロキシトルエンが、形成された分散液に添加される、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
没食子酸プロピルとブチルヒドロキシトルエンが、8:1~1:4の比で使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ビタミンが、ビタミンD、E、K若しくはQ又はそれらの誘導体、例えば、酢酸トコフェロール、トコトリエノールなどのビタミンEエステル、ビタミンK1、ビタミンK2、コエンザイムQ10及び、β-カロテン、カンタキサンチン、シトラナキサンチン、アスタキサンチン及びエステル誘導体、ゼアキサンチン及びエステル誘導体、ルテイン及びエステル誘導体、リコペン、アポカロテン酸及びエステル誘導体、並びにアポカロテナールなどのカロテノイドからなる群から選択される、請求項9~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
コロイドが、植物ガム、改変植物ガム、ゼラチン、改変ゼラチン、改変デンプン、リグノスルホネート、キトサン、カラギーナン、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、ゼイン、改変セルロース、ペクチン、改変ペクチン、植物タンパク質及び改変植物タンパク質又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項9~20のいずれか1項に記載の方法により製造される粉末状ビタミン製剤。
【請求項22】
動物飼料、食品、栄養補助食品、パーソナルケア製品又は医薬組成物中の添加剤としての、請求項1~8及び21のいずれか1項に記載の粉末状ビタミン製剤の使用。
【請求項23】
請求項1~8及び21のいずれか1項に記載の粉末状ビタミン製剤を含む、動物飼料、食品、栄養補助食品、パーソナルケア製品又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化特性を有する製剤、並びにその製造及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミン含有製剤の製造における困難性は、これらが多くの場合不安定であり、製造工程中、及びその後の保存又はプレミックス、ペレット又は飼料へのさらなる加工の過程の両方の酸化過程により損なわれることである。この損傷は、大気中の酸素との反応又は重金属との相互作用により、あるいはUV線の吸収によって生じ得る。これにより生じた損傷の結果として、ビタミンは、例えば、変色する及び/又は効力を失う可能性がある。
【0003】
上記の問題に対処する既知の方法は、製剤への抗酸化剤の添加を含む。
【0004】
CD Roempp Chemie Lexikon 10th edition, Version 1.3, Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlagによれば、抗酸化剤とは、保護対象の物質中の酸素の作用(例えば酸化的過程など)により引き起こされる望ましくない変化を阻止又は防止する化合物である。
【0005】
エトキシキンは抗酸化作用を有し、このためビタミンにおいて保護作用を有する。エトキシキンについての毒物学的データ位置(toxicological data position)は不足しており、この物質エトキシキン自体は非遺伝毒性であると考えられている。しかし、欧州食品安全機関(EFSA)は、その代謝物質の1つであるエトキシキンキノンイミンは遺伝毒性(すなわちDNA損傷性)である可能性があると決定し、安全性の懸念の可能性を示唆している。
【0006】
エトキシキンの製造方法の結果として、おそらくは変異源である不純物p-フェネチジンがさらに存在し、これは動物飼料中に残留する。変異源とは、ヒト及び動物の表現型の突然変異を引き起こす物質である。
【0007】
現在データが入手不可能であるため、EFSAは標的動物用の動物飼料添加剤としてのエトキシキンの安全性を決定することができず、又は消費者又は環境に対する安全性の確証的評価を行うことができない。
【0008】
これらの安全性の懸念により、動物飼料、食品、栄養補助食品、パーソナルケア製品又は医薬組成物への添加剤としての使用に適し、且つその製剤中のエトキシキンを短期間で置換し得る抗酸化剤に対する緊急の必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】CD Roempp Chemie Lexikon 10th edition, Version 1.3, Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlag
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、エトキシキンについて存在する安全性の懸念を引き起こすことなくエトキシキン含有製剤の安定性を達成するか又はこれを超える製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、本発明では、ビタミンが本質的に0.7μm未満の粒径を有し、有効量の没食子酸プロピルを含む粉末状ビタミン製剤が、上記の目的を達成するために優れた適性を有することが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によれば、「有効量の没食子酸プロピル」とは、ここでは、ストレス試験において4週間後に、ストレス試験の開始時に存在するビタミン含有量の少なくとも20重量%のビタミン、好ましくは少なくとも25重量%のビタミン、特に好ましくは少なくとも30重量%のビタミンが依然として保存されるような、製剤中のビタミンを安定化させるために好適な没食子酸プロピルの量を意味すると理解される。
【0013】
ビタミンに対するストレス試験は、いずれの場合も、製造された製剤の100mgの試料と4gのプレミックス混合物をガラス容器中に秤量するように構成される。プレミックス混合物は、50重量%の微粉石灰(粒径<1000μm)、20重量%のコムギフスマ(粒径<1000μm)、20重量%の50%シリカ支持塩化コリン(粒径<1000μm)及び10重量%の微量元素混合物(粒径100~500μm)からなる。微量元素混合物は、46.78重量%のFeSO4×7H2O(100~500μm)、37.43重量%のCuSO4×5H2O(100~500μm)、11.79重量%のZnO(<500μm)、3.61重量%のMnO及び0.39重量%のCoCO3で構成される。全成分の添加後、機械的にあるいは手動で混合を行うことにより試料を注意深く混合し、これらの試料(A)を、40℃で湿度70%の環境制御チャンバ中に4週間保存する。保存の開始前及び保存の終了時に、試料のビタミン含有量を決定する。保存後の含有量(A2)と保存前の含有量(A1)との比を用いて、サンプルの保持率(A2/A1)(すなわち試料中に依然として存在するビタミン含有量)を計算する。
【0014】
特に、「有効量の没食子酸プロピル」とは、製造ステップ中の製剤の総量に対して3.5重量%~9.5重量%の没食子酸プロピル、好ましくは4重量%~9重量%、より好ましくは7重量%~9重量%、特に8重量%~9重量%の没食子酸プロピルを意味すると理解され、ここで成分の重量%の総計は100重量%であり、製造中の没食子酸プロピルとビタミンとの重量比は0.21~2.63である。
【0015】
本発明によれば、「製造ステップ」という用語は、所望の加工製品が得られるまでの全工程ステップa1~c1、又はa2~c2、又はa3~c3を包含する。
【0016】
本出願において、抗酸化剤としての没食子酸プロピル及びトコフェロール又はブチルヒドロキシトルエン(BHT)はいずれも、製造の過程においてのみならず保存又はさらなる加工の過程においても恒常的な分解処理を受けるため、量及び濃度並びに相対比の全ての数値は、これらが粉末状製剤に関する数値であるか又は溶液若しくは分散液に関する数値であるかに関わらず、製造ステップにおいて使用される量に関し、従って製剤中のこれらの含有量に関する数字は、秤量操作における製造の開始についてのみ確実に記載し得ることが明確に強調されるべきである。
【0017】
本発明の文脈において、分散液は、エマルション又は懸濁液のいずれかを意味する。
【0018】
本発明の文脈において、「本質的に」という用語は、さらに特に、粉末状ビタミン製剤の溶解において形成される粒子の80パーセント以上、より好ましくは85パーセント以上、さらに好ましくは90パーセント以上、最も好ましくは95パーセント以上が、0.7μm未満の粒径を有することを意味する又は包含する。
【0019】
粒径は、Malvern Zetasizer Nano ZSPを用いて決定される。
【0020】
本発明によれば、好ましいビタミンは、ビタミンD、E、K若しくはQ又はそれらの誘導体、例えば、酢酸トコフェロール、トコトリエノールなどのビタミンEエステル、ビタミンK1、ビタミンK2、コエンザイムQ10及び、β-カロテン、カンタキサンチン、シトラナキサンチン、アスタキサンチン及びエステル誘導体、ゼアキサンチン及びエステル誘導体、ルテイン及びエステル誘導体、リコペン、アポカロテン酸及びエステル誘導体、アポカロテナールなどのカロテノイド、並びにそれらの混合物の群から選択されるビタミンである。
【0021】
本発明のビタミン製剤中に存在するコヒーレント相は、植物ガム、改変植物ガム、ゼラチン、改変ゼラチン、改変デンプン、リグノスルホネート、キトサン、カラギーナン、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、ゼイン、改変セルロース、ペクチン、改変ペクチン、植物タンパク質及び改変植物タンパク質、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のコロイドである。
【0022】
本発明によれば、植物ガムはここで、寒天、アルギン酸、アルギン酸塩、チクル、ダマール(dammar)、ウスベニタチアオイ抽出物、ジェラン(gellan)、グアー粉、アラビアガム、オオバコ種子殻由来ガム、トウヒ樹液由来ガム、イナゴマメ粉、カラヤ、コンニャク粉、マスチック、タラガム、トラガカント、キサンタンを意味すると理解される。
【0023】
本発明によれば、好ましいコヒーレント相は、ゼラチン並びに/又は植物ガム及び/若しくは改変植物ガムである。
【0024】
驚くべきことに、製剤へのトコフェロール又はBHTの添加が、製剤中の没食子酸プロピルの抗酸化保護作用を、相乗的作用機序により促進又は増強することが同様に見出された。本発明によれば、「トコフェロール」は、天然トコフェロール又は合成トコフェロールのいずれかを意味すると理解される。天然トコフェロールは、天然のα-,β-,γ-,λ-トコフェロールを意味すると理解され、これは用語「混合トコフェロール」にも包含され、BASFにより商標名Covi-OXの下で販売されている。対照的に、DL-α-トコフェロールとも呼ばれる合成トコフェロールは、8つのα-ジアステレオマーのランダム混合物を含有する。製剤にトコフェロールを添加する場合、本発明によれば、天然トコフェロールの添加が好ましい。
【0025】
本発明によれば、没食子酸プロピルとトコフェロールが9:1~1:2の相対重量比で存在する製剤が好ましく、2種の抗酸化剤の相対比が2:1~1:1の製剤が特に好ましい。
【0026】
本発明によれば、没食子酸プロピルとBHTが8:1~1:4の重量比で存在する場合、より好ましくはこれらが2:1~1:3の重量比で存在する場合に、没食子酸プロピルの抗酸化保護作用がブチルヒドロキシトルエン(BHT)の添加により促進又は増強される製剤が好ましい。
【0027】
本発明の製剤の利点は特にその抗酸化作用にあり、この作用は、エトキシキン又は他の慣用の抗酸化剤を含む製剤との比較により、本発明の製剤中のビタミンの、比較可能な、特に高められた安定性として示される。
【0028】
本発明のビタミン製剤の比較可能な又は高められた安定性は、ストレス試験によって示され得る。この目的のため、製造された製剤のそれぞれ100mgの試料及び4gのプレミックス混合物をガラス容器(50mLガラスバイアル)中に秤量する。プレミックス混合物は、50重量%の微粉石灰(粒径<1000μm)、20重量%のコムギフスマ(粒径<1000μm)、20重量%の50%シリカ支持塩化コリン(粒径<1000μm)及び10重量%の微量元素混合物(粒径100~500μm)からなり、前記微量元素混合物は、46.78重量%のFeSO4×7H2O(100~500μm)、37.43重量%のCuSO4×5H2O(100~500μm)、11.79重量%のZnO(<500μm)、3.61重量%のMnO及び0.39重量%のCoCO3からなる。全成分の添加後に試料を注意深く混合し、ここで混合は、機械的にあるいは手動で実施することが可能であり、これらの試料(A)は、40℃で湿度70%の環境制御チャンバ中に4週間保存される。同一組成ではあるが没食子酸プロピルではなく同量のエトキシキンを含む比較サンプル(B)を用いて、同一の試験を行う。ここで、保存の開始前及び保存の終了時に試料のビタミン含有量を決定する。ここで、保存後の含有量(A2)、(B2)と保存前の含有量(A1)及び(B1)との比を用いて、サンプルの保持率(A2/A1)又は(B2/B1)を計算する。本発明の製剤について、少なくとも0.75の比(A2/A1):(B2/B1)がここで決定される。好ましくは、本発明の製剤について、少なくとも1の比が得られる。
【0029】
ビタミン製剤の製造及び性能特性の改善のため、可塑剤並びにさらなる助剤及び添加剤などの、さらなる成分を添加することが適切であり得る。好ましい助剤及び添加剤は、乳化剤、油、水溶性塩及び/又は分離剤である。
【0030】
ビタミン製剤のコヒーレント相の機械的安定性を調整するため、コロイドに少なくとも1種の可塑剤、例えばポリオール、糖又は糖アルコールなど(例えば、スクロース、グルコース、グルコースシロップ、デンプン加水分解物、フルクトース、フルクトースシロップ、ラクトース、マルトース、キシロース、アラビノース、リボース、トレハロース、転化糖、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、グリセロール、ポリエーテルグリコール又はイソマルト)を添加することが適切である。「イソマルト」という名称は糖置換物を示し、これは商品名Palatinit(登録商標)(Suedzucker、ドイツ)の下でも供給されている。イソマルトは、ほぼ同等の6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール部分と1-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニトール部分とからなる水素化イソマルツロースである。好ましく用いられる可塑剤は、スクロース、グルコースシロップ及びラクトースである。
【0031】
使用されるさらなる助剤及び添加剤は、本発明のビタミン製剤の製造において相を安定化させるための乳化剤、例えばモノ-及びジグリセリド、モノグリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノグリセロールクエン酸エステル、糖脂肪酸エステル又はレシチンであり得る。好ましく用いられる乳化剤は、モノ-及びジグリセリド、モノグリセロール脂肪酸エステル並びにレシチンである。
【0032】
幾つかの状況下では、さらに、生理学的に許容される動物又は植物由来の油、例えばゴマ油、トウモロコシ穀粒油、ワタ種子油、ダイズ油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、菜種油、ココナッツ油、ヤシ油、オリーブ油、ベニバナ油、動物脂肪、ラード、獣脂、水素化、分留又はエステル交換により修飾された油、あるいは混合物を使用することも有利であり得る。好ましい油は、トウモロコシ穀粒油、ヒマワリ油及び菜種油である。
【0033】
さらに、EDTA及びクエン酸などの金属キレート剤も、本発明のビタミン製剤に添加することができる。
【0034】
さらに、水溶性無機塩及び/又は有機塩、例えばアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属フィチン酸塩及びそれらの混合物も、ビタミン製剤のコヒーレント相に有利に添加し得る。好ましい塩は、安息香酸ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムである。
【0035】
望ましくない塊形成を回避し、流動性を高めるために、難水溶性の、10μm以下の平均粒径を有する微粒子分離剤(DIN ISO 9276-2:2006-02によれば×50,3)が適宜添加され、これらは粉末状ビタミン製剤の表面上に蓄積する。好ましい分離剤は、二酸化ケイ素、疎水性修飾シリカ、リン酸三カルシウム(TCP)、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二リン酸二カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウムアルミニウム、タルク、カオリン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、様々な植物源由来のデンプン、セルロース又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0036】
ここで特に好ましいのは、二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム(TCP)、疎水性修飾シリカ及びコーンスターチである。
【0037】
本発明によれば、助剤及び添加剤の割合は、製造ステップにおける製剤の総量に対して0.1重量%~60重量%、好ましくは1重量%~50重量%、より好ましくは5重量%~30重量%であり、ここで製剤の全成分の重量%の合計は100重量%である。
【0038】
本発明はさらに、上記の粉末状製剤の製造方法であって、以下:
a1) ビタミンを、揮発性の水混和性有機溶媒中、又は水と水混和性有機溶媒との混合物中に、50℃~200℃の温度で、場合により20バール~100バールの昇圧下に、10秒未満の期間内溶解させること、
b1) a1)の後に得られた溶液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と0℃~80℃の温度で急速に混合し、ビタミンをコロイド状分散形態で析出させること、
c1) 形成された分散液を、大部分の溶媒を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換すること
を含む、上記方法を提供する。
【0039】
上記の工程は、本発明による有効量で添加される抗酸化剤としての没食子酸プロピルの存在下で実施される。製剤の総量に対して3.5重量%~9.5重量%の没食子酸プロピルを製造工程に添加することが好ましく、ここで製造中の没食子酸プロピルとビタミンとの重量比は、0.21~2.63である。没食子酸プロピルは、工程ステップa1)及び/又はb1)及び/又はc1)に添加することが可能であり、没食子酸プロピルを工程ステップa1及び/又はb1に添加することが好ましく、工程ステップb1に添加することが最も好ましい。
【0040】
没食子酸プロピルの高分解は比較的高いpH値において検出されるため、水/有機溶媒系においては、pH4.5~最大pH8.5に調整することが好ましい。特に好ましくは、上記の系についてpH6.5~最大pH8.5が選択される。
【0041】
ビタミンに関する好ましい実施形態は、冒頭の説明に見出すことができる。
【0042】
本発明の方法の段階a1)において用いられる有機溶媒は、特に、アルコール、エーテル、エステル、ケトン又はアセタールなどの、炭素、水素及び酸素のみを含む水混和性で熱的に安定な揮発性溶媒である。適切には、少なくとも10%程度まで水混和性であり、200℃未満の沸点を有する及び/又は10個未満の炭素原子を有する溶媒が使用される。メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタン-1,2-ジオール-1-メチルエーテル(1-メトキシブタン-2-オール)、プロパン-1,2-ジオール-1-n-プロピルエーテル(1-プロポキシプロパン-2-オール)、テトラヒドロフラン、アセトン又はそれらの混合物を使用することが特に好ましい。
【0043】
本方法において用いられるコロイドは、植物ガム、改変植物ガム、ゼラチン、改変ゼラチン、デンプン、改変デンプン、リグノスルホネート、キトサン、カラギーナン、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、ゼイン、改変セルロース、ペクチン、改変ペクチン、植物タンパク質及び改変植物タンパク質又はそれらの混合物である。
【0044】
本発明によれば、「植物ガム」は、ここで、寒天、アルギン酸、アルギン酸塩、チクル、ダマール(dammar)、ウスベニタチアオイ抽出物、ジェラン(gellan)、グアー粉、アラビアガム、オオバコ種子殻由来ガム、トウヒ樹液由来ガム、イナゴマメ粉、カラヤ、コンニャク粉、マスチック、タラガム、トラガカント、キサンタンを意味すると理解される。
【0045】
本発明によれば、ゼラチン及び/又は植物ガム及び/又は改変植物ガムが好ましい。
【0046】
乾燥製品の機械的安定性を増加させるため、コロイドに可塑剤、例えばポリオール、糖又は糖アルコールなど(例えばスクロース、グルコース、グルコースシロップ、デンプン加水分解物、フルクトース、フルクトースシロップ、ラクトース、マルトース、キシロース、アラビノース、リボース、トレハロース、転化糖、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、グリセロール、ポリエーテルグリコール又はイソマルト)を添加することが適切である。「イソマルト」という名称は糖置換物を示し、商品名Palatinit(登録商標)(Suedzucker、ドイツ)の下でも供給される。イソマルトは、ほぼ同等の6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール部分と1-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニトール部分とからなる水素化イソマルツロースである。好ましく用いられる可塑剤は、スクロース、グルコースシロップ及びラクトースである。
【0047】
本発明の粉末状ビタミン製剤は、場合により、選択された場合において、本発明の活性成分製剤の製造における相の安定化のための分散液の生成において好ましく使用される乳化剤も含む。例としては、モノ-及びジグリセリド、モノグリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノグリセロールクエン酸エステル、糖脂肪酸エステル又はレシチンがある。好ましく用いられる乳化剤は、モノ-及びジグリセリド、モノグリセロール脂肪酸エステル並びにレシチンである。
【0048】
幾つかの状況下では、さらに、生理学的に許容される動物又は植物由来の油、例えばゴマ油、トウモロコシ穀粒油、ワタ種子油、ダイズ油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、菜種油、ココナッツ油、ヤシ油、オリーブ油、ベニバナ油、動物脂肪、ラード、獣脂、水素化、分留若しくはエステル交換により修飾された油、又はそれらの混合物を使用することも有利であり得る。好ましい油は、トウモロコシ穀粒油、ヒマワリ油及び菜種油である。
【0049】
さらに、上記工程において、EDTA及びクエン酸などの金属キレート剤を添加することが有利であり得る。
【0050】
コロイド及び可塑剤とカロテノイド溶液との比は、一般的に、2重量%~25重量%のビタミン、10重量%~50重量%のコロイド、20重量%~70重量%の可塑剤及び3.5重量%~9.5重量%の没食子酸プロピル、場合により適切な量のトコフェロール又はBHT、及び0.1重量%~60重量%の助剤及び添加剤を含む乾燥製品が得られるように選択され、ここで製剤の全成分のパーセントの総計は100重量%である。
【0051】
トコフェロールは、好ましくは、有機溶媒工程ステップa1)に添加され、ここで本発明による没食子酸プロピルとトコフェロールとの比は、9:1~1:2、好ましくは2:1~1:1である。トコフェロールの添加の場合、本発明によれば、天然トコフェロールを用いることが好ましい。
【0052】
本発明によれば、BHTが添加される場合、これは好ましくは分散液に(すなわち工程ステップc1に)、溶媒の除去後に添加される。本発明によれば、没食子酸プロピルとBHTとの比は8:1~1:4、好ましくは2:1~1:3である。
【0053】
本発明によれば、本方法のステップc1)において、形成された分散液は、溶媒又は混合物を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換される。溶媒又は溶媒混合物の除去の前に、形成された分散液のpHを硫酸で6.5~7、特にpH6.8に低下させ;その後、とりわけ噴霧乾燥、噴霧冷却、改変噴霧乾燥、凍結乾燥又は流動床における乾燥により、場合により分離剤も存在する下で乾燥粉末への変換を行い得ることが有利である。ここで好ましい分離剤は、二酸化ケイ素、疎水性修飾シリカ、リン酸三カルシウム(TCP)、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二リン酸二カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウムアルミニウム、タルク、カオリン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、様々な植物源由来のデンプン、セルロース又はそれらの混合物からなる群から選択される。ここで特に好ましいのは、二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム(TCP)、疎水性修飾シリカ及びコーンスターチである。
【0054】
好ましくは、工程ステップc1)において、形成された分散液は、大部分の溶媒又は混合物の蒸留除去により約25重量%~50重量%の濃度の固体に濃縮され、その後この濃縮分散物は、噴霧乾燥機中で乾燥粉末に変換される。
【0055】
さらに好ましくは、本発明の方法の工程ステップc1)において、乾燥は、組み込まれた流動床及び/又は下流の外部流動床を有する噴霧乾燥機中で行われる。ここで好ましく形成されるのは、凝集粒子を有する粉末状製剤である。
【0056】
本発明の製剤の代替的製造法は、工程ステップa2)において、ビタミンを、揮発性の水不混和性有機溶媒に30~150℃の温度で、場合により昇圧下に溶解させ、その後工程ステップb2)において、コロイドの水溶液中でこの溶液を乳化させることである。次いで、工程ステップc2)において、結果として得られたエマルションから、それ自体公知の方法で(例えば蒸留により)、場合により減圧を用いて揮発性有機溶媒を除去し、分散液を得て、これを、水を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換することができる。
【0057】
本発明の文脈において、「水不混和性有機溶媒」という用語は、標準圧で10%未満の水溶性を有する有機溶媒を意味する。ここで可能な溶媒としては、ハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム及び四塩化炭素、カルボン酸エステル(例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン)、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル又は酢酸イソプロピル、及びエーテル(例えばメチルtert-ブチルエーテル)、並びに対応する上記溶媒の混合物などが挙げられる。
【0058】
ビタミンが、その低融点により、標準圧下に室温(20℃)で既に液体形態であるはずであるか若しくは100℃未満の融点を有するか、又は本方法のさらなる構成として油中で溶液の形態である場合、ビタミンをコロイドの水溶液に直接若しくは融解後に乳化させるか、又は有機溶媒を用いることなく油中に溶解させ(工程ステップa3)、その後、水を除去した後乾燥させることによりこれを乾燥粉末に変換することができる(c3)。
【0059】
これらの2つの代替法においても、没食子酸プロピルの添加は有利である。工程a1~c1について記載された補足説明と同様に、没食子酸プロピルは、製剤の総量に対して3.5重量%~9.5重量%で添加される。前者の代替法において、没食子酸プロピルを、水性コロイド相に(すなわち工程ステップb2に)添加すること、ビタミン含有有機溶媒に(工程ステップa2に)添加すること、及び/又は分散液(工程ステップc2)に添加することが可能であり、没食子酸プロピルを水性コロイド相及び/又はビタミン含有有機溶媒に添加することが好ましく、工程ステップb2に添加することが最も好ましい。
【0060】
ビタミンが油状形態若しくは融解形態である場合、又は油中に溶解されている場合、没食子酸プロピルは、ビタミン(工程ステップa3)に、及び/又は水性コロイド相(工程ステップb3)に、及び/又は分散液(工程ステップc3)に添加される。ここで没食子酸プロピルを水性コロイド相に添加することが最も好ましい。
【0061】
pH調整に関して、没食子酸プロピルが、有機溶媒に添加されるか、あるいは油状形態若しくは融解形態又は油中に溶解させたビタミンに添加される場合、このpH調整は水性コロイド相において行われることに留意すべきである。
【0062】
ビタミンの溶解に有用な油としては、本出願において言及される生理学的に許容される動物又は植物由来の油などが挙げられる。この目的のために好ましい油は、トウモロコシ穀粒油、ヒマワリ油及び菜種油である。
【0063】
本方法において用いられるコロイドは、植物ガム、改変植物ガム、ゼラチン、改変ゼラチン、デンプン、改変デンプン、リグノスルホネート、キトサン、カラギーナン、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、ゼイン、改変セルロース、ペクチン、改変ペクチン、植物タンパク質及び改変植物タンパク質又はそれらの混合物である。
【0064】
ビタミン製剤の機械的安定性を増加させるため、本方法中、コロイドに可塑剤を添加することが適切である。この目的に適しているのは、ポリオール、糖又は糖アルコール(例えばスクロース、グルコース、グルコースシロップ、デンプン加水分解物、フルクトース、フルクトースシロップ、ラクトース、マルトース、キシロース、アラビノース、リボース、トレハロース、転化糖、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、グリセロール、ポリエーテルグリコール又はイソマルト)である。イソマルトという名称は糖置換物を示し、商品名Palatinit(登録商標)(Suedzucker、ドイツ)の下でも供給されている。イソマルトは、ほぼ同等の6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール部分と1-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニトール部分とからなる水素化イソマルツロースである。好ましく用いられる可塑剤は、スクロース、グルコースシロップ及びラクトースである。
【0065】
さらに、本発明の活性成分製剤の製造において相を安定化させるため、乳化剤、例えばモノ-及びジグリセリド、モノグリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノグリセロールクエン酸エステル、糖脂肪酸エステル又はレシチンを使用することができる。好ましく用いられる乳化剤は、モノ-及びジグリセリド、モノグリセロール脂肪酸エステル並びにレシチンである。
【0066】
幾つかの状況下では、さらに、生理学的に許容される動物又は植物由来の油、例えばゴマ油、トウモロコシ穀粒油、ワタ種子油、ダイズ油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、菜種油、ココナッツ油、ヤシ油、オリーブ油、ベニバナ油、動物脂肪、ラード、獣脂、水素化、分留若しくはエステル交換により修飾された油、又はそれらの混合物を使用することも有利であり得る。好ましい油は、トウモロコシ穀粒油、ヒマワリ油及び菜種油である。
【0067】
さらに、本方法において、EDTA及びクエン酸などの金属キレート剤を添加することが有利であり得る。
【0068】
本方法におけるコロイド及び可塑剤とカロテノイド溶液との比は、一般的に、2重量%~25重量%のビタミン、10重量%~50重量%のコロイド、20重量%~70重量%の可塑剤及び3.5重量%~9.5重量%の没食子酸プロピル、場合により適切な量のトコフェロール又はBHT、及び0.1重量%~60重量%の助剤及び添加剤を含む乾燥製品が得られるように選択され、ここで製剤の全成分のパーセントの総計は100重量%である。
【0069】
トコフェロールは、好ましくは有機溶媒工程ステップa)に添加され、ここで本発明による没食子酸プロピルとトコフェロールとの比は、9:1~1:2、好ましくは2:1~1:1である。本発明によれば、トコフェロールの添加の場合、天然トコフェロールを用いることが好ましい。
【0070】
本発明によれば、BHTが添加される場合、これは好ましくは分散液に(すなわち工程ステップcに)、溶媒の除去後に添加される。本発明によれば、没食子酸プロピルとBHTとの比は8:1~1:4、好ましくは2:1~1:3である。
【0071】
本発明の方法において、工程ステップc2)においては、形成されたエマルションは、有機溶媒又は混合物を除去することにより分散液に変換され、その後、後続の乾燥ステップで水を除去することにより乾燥粉末に変換される。水の除去の前に、形成された分散液のpHを硫酸で6.5~7に(特にpH6.8に)低下させ;その後、とりわけ噴霧乾燥、噴霧冷却、改変噴霧乾燥、凍結乾燥、又は流動床における(場合によりコーティング物質も存在する下での)乾燥による乾燥粉末への変換を実施し得ることが有利である。好適なコーティング物質としては、例えば、コーンスターチ、シリカ、修飾シリカ、リン酸三カルシウム(TCP)、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二リン酸二カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウムアルミニウム、タルク、カオリン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、様々な植物源由来のデンプン、セルロース又はそれらの混合物などが挙げられる。ここで特に好ましいのは、二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム(TCP)、疎水性修飾シリカ及びコーンスターチである。
【0072】
好ましくは、工程ステップc2)において、形成された分散液は、大部分の溶媒又は混合物の蒸留除去により約25重量%~50重量%の濃度の固体に濃縮され、その後この濃縮分散物が、噴霧乾燥機中で乾燥粉末に変換される。
【0073】
さらに好ましくは、本発明の方法の工程ステップc2)において、乾燥は、組み込まれた流動床及び/又は下流の外部流動床を有する噴霧乾燥機中で行われる。ここで好ましく形成されるのは、凝集粒子を有する粉末状製剤である。
【0074】
工程ステップc3)では不要な有機溶媒の除去を除いて、工程手段c2)は言及される好ましい例と共に、工程ステップc3)にも適用することができる。
【0075】
本発明の粉末状製剤は、とりわけ、食品調製物への添加剤(例えば飲料などの食品を着色するための添加剤)として、医薬品製剤及び化粧品製剤を製造するための手段として、さらにまた、栄養補助食品製剤(例えばヒトセクター及び動物セクターにおけるマルチビタミン製剤)を製造するために好適である。
【0076】
本発明はさらに、動物飼料、食品、栄養補助食品、パーソナルケア製品又は医薬組成物への添加剤としての、上記の本発明の粉末状製剤の使用を提供する。
【0077】
同様に本発明は、本発明の粉末状製剤を含む動物飼料、食品、栄養補助食品、パーソナルケア製品又は医薬組成物を提供する。
【0078】
本発明は、以下に続く実施例により説明されるが、これらは決して本発明を限定するものではない。
【実施例0079】
実施例1 (表1の例7)
30gのシトラナキサンチンを、1.1gのパルミチン酸アスコルビルと共に240gのイソプロパノールに懸濁させ、混合チャンバAにおいて、圧力制限バルブを30バールに設定し、390gのイソプロパノールと連続的に混合した。混合チャンバAにおいては、懸濁液側は6L/h、溶媒側は9L/hの計量速度で、混合温度170℃が確立された。0.3秒の滞留時間後、混合チャンバBにおいて、分子分散溶液を、32gのゼラチン、71.4gのスクロース及び50gのグルコースシロップの水(4000g)中溶液と、100L/hのスループット速度で混合した。蒸留装置中で溶媒を減圧下に除去した後、活性成分分散液を得て、これに8gのヒマワリ油及び8gの没食子酸プロピルを添加した。ここで没食子酸プロピルを200mlの水に予溶解させ、NaOHでpH7に調整した。その後、この分散液を噴霧乾燥により安定な水溶性乾燥粉末に変換した。水に溶解させた後、光子相関分光法(PCS)により、粒径386nm(標準偏差142.5、多分散性指数PDI 0.185、D(95):660nm)が測定された(Malvern Zetasizer Nano ZSP)。
【0080】
シトラナキサンチンの安定性試験
このように製造された粒子の安定性を、ストレス試験において試験した。この目的のため、それぞれ100mgの粒子の試料を製造し、4gのプレミックス混合物を50mLガラス瓶中に秤量した。このプレミックス混合物は、50重量%の微粉石灰(粒径<1000μm)、20重量%のコムギフスマ(粒径<1000μm)、20重量%の50%シリカ支持塩化コリン(粒径<1000μm)及び10重量%の微量元素混合物(粒径100~500μm)からなり、この微量元素混合物は、46.78重量%のFeSO4×7H2O(100~500μm)、37.43重量%のCuSO4×5H2O(100~500μm)、11.79重量%のZnO(<500μm)、3.61重量%のMnO及び0.39重量%のCoO3からなるものであった。全成分の添加後、試料を手動で注意深く混合した。これらの試料を、40℃で空気湿度70%の環境制御チャンバ中に4週間保存した。保存の開始前及び保存の完了後、試料のシトラナキサンチン含有量を決定した。保存前及び保存後のシトラナキサンチン含有量の比を用いて、保持率を計算した。
【0081】
実施例の保持値は、以下に続く表にまとめられる。
【0082】
【0083】
保持率が高いほど、粒子又はそれらの調製物の安定性が優れている。
【0084】
実施例2
pHが没食子酸プロピル活性に与える影響
この実験は、没食子酸プロピルの添加に最適なpH範囲が、pH4.5~pH8.5の範囲内であることを示す。短い滞留時間であっても、8.5超のpH値又はかかるpH値における没食子酸プロピルの予溶解は、没食子酸プロピルの活性を著しく制限するのに十分であった。
【0085】
【0086】
この結果は、没食子酸プロピルがビタミン含有分散液に添加されるのではなく、没食子酸プロピルが保護コロイド相に既に添加されている場合にも確認される(表2b)。没食子酸プロピルが保護コロイド相に添加されている場合に極めて良好な結果が見られ、これがNaOHでpH5~7からpH7へと調整され、pHは、析出のわずか15~30分前にNaOHで8~8.5へ上昇される。
【0087】
【0088】
対照的に、没食子酸プロピル(固体形態の又はpH7の水に溶解させた)の、ビタミン含有分散液への添加様式は、シトラナキサンチンの安定性に影響を与えない(表2c)。
【0089】
【0090】
実施例3:
没食子酸プロピル濃度が活性成分安定性に与える影響
a). 没食子酸プロピル濃度の増加は、シトラナキサンチン活性成分の安定性を増加させる。しかし、驚くべきことに、製剤中の没食子酸プロピルを10重量%まで増加させる場合、安定性の有意な低下が観察される。製剤中の没食子酸プロピルが4重量%~9重量%、好ましくは7重量%~9重量%、最適には8%~9重量%において、極めて優れた安定化効果が観察された(表3a)。
【0091】
【0092】
没食子酸プロピルの良好な効果、及びまた最適な濃度は、他のカロテノイドについても確認することができた(表3b~e)。
b). 30gのカンタキサンチンを、1.1gのパルミチン酸アスコルビルと共に240gのイソプロパノールに懸濁させ、混合チャンバAにおいて、圧力制限バルブを30バールに設定し、390gのイソプロパノールと連続的に混合した。混合チャンバAにおいては、懸濁液側は6L/h、溶媒側は9L/hの計量速度で、混合温度170℃が確立された。0.3秒の滞留時間後、混合チャンバBにおいて、分子分散溶液を、32gのゼラチン及び121.4gのスクロースの水(4000g)中溶液と、100L/hのスループット速度で混合した。蒸留装置中で溶媒を減圧下に除去した後、活性成分分散液を得て、これに、8gのヒマワリ油及びいずれの場合も表3bに特定される量の没食子酸プロピルを添加した。ここで没食子酸プロピルを200mlの水に予溶解させ、NaOHでpH7に調整した。その後、この分散液を噴霧乾燥により安定な水溶性乾燥粉末に変換した。水に溶解させた後、PCSにより、粒径290nm(標準偏差140、多分散性指数PDI 0.193、D(95):594nm)が測定された(Malvern Zetasizer Nano ZSP)。
【0093】
【0094】
c). 30gのC30エステルを、1.1gのパルミチン酸アスコルビルと共に240gのイソプロパノールに懸濁させ、混合チャンバAにおいて、圧力制限バルブを30バールに設定し、390gのイソプロパノールと連続的に混合した。混合チャンバAにおいては、懸濁液側は6L/h、溶媒側は9L/hの計量速度で、混合温度170℃が確立された。0.3秒の滞留時間後、混合チャンバBにおいて、分子分散溶液を、32gのゼラチン及び121.4gのスクロースの水(4000g)中溶液と、100L/hのスループット速度で混合した。蒸留装置中で溶媒を減圧下に除去した後、活性成分分散液を得て、これに8gのヒマワリ油及びいずれの場合も表3cに重量%で特定される量の没食子酸プロピルを添加した。ここで没食子酸プロピルを200mlの水に予溶解させ、NaOHでpH7に調整した。その後、この分散液を噴霧乾燥により安定な水溶性乾燥粉末に変換した。水に溶解させた後、PCSにより、粒径280nm(標準偏差120、多分散性指数PDI 0.181)が測定された(Malvern Zetasizer Nano ZSP)。
【0095】
【0096】
d). 30gのβ-カロテンを、1.1gのパルミチン酸アスコルビルと共に240gのイソプロパノールに懸濁させ、混合チャンバAにおいて、圧力制限バルブを30バールに設定し、390gのイソプロパノールと連続的に混合した。混合チャンバAにおいては、懸濁液側は6L/h、溶媒側は9L/hの計量速度で、混合温度170℃が確立された。0.3秒の滞留時間後、混合チャンバBにおいて、分子分散溶液を、32gのゼラチン、71.4gのスクロース及び50gのグルコースシロップの水(4000g)中溶液と、100L/hのスループット速度で混合した。蒸留装置中で溶媒を減圧下に除去した後、活性成分分散液を得て、これに8gのヒマワリ油及び8gの没食子酸プロピルを添加した。ここで没食子酸プロピルを200mlの水に予溶解させ、NaOHでpH7に調整した。その後、この分散液を噴霧乾燥により安定な水溶性乾燥粉末に変換した。水に溶解させた後、PCSにより、粒径262nm(標準偏差182、多分散性指数PDI 0.268)が測定された(Malvern Zetasizer Nano ZSP)。
【0097】
【0098】
e). 30gのC30エステルを、1.1gのパルミチン酸アスコルビルと共に240gのイソプロパノールに懸濁させ、混合チャンバAにおいて、圧力制限バルブを30バールに設定し、390gのイソプロパノールと連続的に混合した。混合チャンバAにおいては、懸濁液側は6L/h、溶媒側は9L/hの計量速度で、混合温度170℃が確立された。0.3秒の滞留時間後、混合チャンバBにおいて、分子分散溶液を、32gのゼラチン及び121.4gのスクロースの水(4000g)中溶液と、100L/hのスループット速度で混合した。蒸留装置中で溶媒を減圧下に除去した後、活性成分分散液を得て、これに8gのヒマワリ油及びいずれの場合も表3eに重量%で特定される量の没食子酸プロピルを添加した。ここで没食子酸プロピルを200mlの水に予溶解させ、NaOHでpH7に調整した。その後、この分散液を噴霧乾燥により安定な水溶性乾燥粉末に変換した。水に溶解させた後、PCSにより、粒径373nm(標準偏差165、多分散性指数PDI 0.203、D(95):683nm)が測定された(Malvern Zetasizer Nano ZSP)。
【0099】
【0100】
実施例4
混合トコフェロール及びD,L α-トコフェロールが安定性に与える効果
合成源及び天然源に由来するトコフェロールは、それらの低い水溶性により、活性成分を含む相に溶解される。いずれの場合も、天然トコフェロール又は合成トコフェロールのみがそのまま添加される場合、それらの抗酸化剤としての保護効果及びそれらのカロテノイド又はレチノイドの安定化に差異はない。
【0101】
【0102】
没食子酸プロピルが、抗酸化剤としてトコフェロールに付加的に添加される場合、状況は異なる。この場合、混合トコフェロール/没食子酸プロピルの組み合わせについてのプレミックス試験における安定化は、D,Lアルファ-トコフェロールと没食子酸プロピルとの組み合わせについてよりさらに著しい(表4b)。
【0103】
【0104】
実施例5
a). 没食子酸プロピルとトコフェロール間の相乗効果
没食子酸プロピルとトコフェロールとの組み合わせに関して、この系については、安定性を喪失することなく製剤中の抗酸化剤の総濃度を低下させ得ることが見出された。この系について、4%没食子酸プロピルを含む製剤についての安定性(61.2%)と4%混合トコフェロールを含む製剤についての安定性(48.7%)とを互いに比較した場合、没食子酸プロピルが明らかにより優れた抗酸化剤である。対照的に、4%没食子酸プロピルを4%混合トコフェロールと混合して、それらの安定性(80.3%)を、8%没食子酸プロピルを含む製剤の安定性(83.3%)と比較した場合、個々の値からは予想され得なかった相乗効果が明らかである。この相乗効果は、没食子酸プロピル含有量が一定で、混合トコフェロールの濃度が4%から2%へと低下する場合に、さらにより顕著となる。この系については80.6%の安定性が測定される一方、6%没食子酸プロピルを含む系については71.3%の安定性しか得られない。これは明らかに、製剤中の抗酸化剤含有量を低下させながら安定性の有意な上昇を得るためには、特定の濃度の混合トコフェロールのみが必要とされることを示す。
【0105】
【0106】
4重量%の没食子酸プロピルと組み合わせた2重量%の混合トコフェロールは、ほぼ4重量%の没食子酸プロピルと組み合わせた4重量%の混合トコフェロールについての安定性値に達する。しかし、混合トコフェロールの割合を1重量%まで低下させ、再度4重量%の没食子酸プロピルと組み合わせると、安定性値は低下し始める(表5b)。
【0107】
【0108】
【0109】
4重量%の没食子酸プロピル及び4重量%のトコフェロールの添加についての実験的方法 30gのシトラナキサンチンを、1.1gのパルミチン酸アスコルビル及び9gの混合トコフェロールと共に240gのイソプロパノールに懸濁させ、混合チャンバAにおいて、圧力制限バルブを30バールに設定し、390gのイソプロパノールと連続的に混合した。混合チャンバAにおいては、懸濁液側は6L/h、溶媒側は9L/hの計量速度で、混合温度170℃が確立された。0.3秒の滞留時間後、混合チャンバBにおいて、分子分散溶液を、pH9に調整された、32gのゼラチン、71.4gのスクロース、50gのグルコースシロップ及び9gの没食子酸プロピルの水(4100g)中溶液と、100L/hのスループット速度で混合した。蒸留装置中で溶媒を減圧下に除去した後、活性成分分散液を得て、これに9gのヒマワリ油を添加した。その後、この分散液を噴霧乾燥により安定な水溶性乾燥粉末に変換した。水に溶解させた後、PCSにより、粒径280nm(標準偏差142.5、多分散性指数PDI 0.185)が測定された(Malvern Zetasizer Nano ZSP)。
【0110】
b). 没食子酸プロピルとBHT間の相乗効果
【0111】
【0112】
4重量%の没食子酸プロピル及び4重量%のブチルヒドロキシトルエンの添加についての実験的方法
【0113】
30gのシトラナキサンチンを、1.1gのパルミチン酸アスコルビルと共に240gのイソプロパノールに懸濁させ、混合チャンバAにおいて、圧力制限バルブを30バールに設定し、390gのイソプロパノールと連続的に混合する。混合チャンバAにおいては、懸濁液側は6L/h、溶媒側は9L/hの計量速度で、混合温度170℃が確立される。0.3秒の滞留時間後、混合チャンバBにおいて、分子分散溶液を、pH9に調整された、32gのゼラチン、71.4gのスクロース、50gのグルコースシロップ及び9gの没食子酸プロピルの水(4100g)中溶液と、100L/hのスループット速度で混合する。蒸留装置中で溶媒を減圧下に除去した後、活性成分分散液を得て、これに9gのヒマワリ油及びそれに溶解させた9gのBHTを添加する。
その後、この分散液を噴霧乾燥により安定な水溶性乾燥粉末に変換した。水に溶解させた後、PCSにより、粒径290nm(標準偏差140、多分散性指数PDI 0.180)が測定された(Malvern Zetasizer Nano ZSP)。
30gのシトラナキサンチンを、1.1gのパルミチン酸アスコルビルと共に240gのイソプロパノールに懸濁させ、混合チャンバAにおいて、圧力制限バルブを30バールに設定し、390gのイソプロパノールと連続的に混合する。混合チャンバAにおいては、懸濁液側は6L/h、溶媒側は9L/hの計量速度で、混合温度170℃が確立される。0.3秒の滞留時間後、混合チャンバBにおいて、分子分散溶液を、pH9に調整された、32gのゼラチン、71.4gのスクロース、50gのグルコースシロップ及び9gの没食子酸プロピルの水(4100g)中溶液と、100L/hのスループット速度で混合する。蒸留装置中で溶媒を減圧下に除去した後、活性成分分散液を得て、これに9gのヒマワリ油及びそれに溶解させた9gのBHTを添加する。
その後、この分散液を噴霧乾燥により安定な水溶性乾燥粉末に変換した。水に溶解させた後、PCSにより、粒径290nm(標準偏差140、多分散性指数PDI 0.180)が測定された(Malvern Zetasizer Nano ZSP)。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
粉末状ビタミン製剤であって、該ビタミンが本質的に0.7μm未満の粒径を有し、前記製剤が有効量の没食子酸プロピルを含む、前記粉末状ビタミン製剤。
(実施形態2)
使用される有効量が、製剤の総量に対して没食子酸プロピル3.5重量%~9.5重量%であり、ここで製造中の没食子酸プロピルとビタミンとの重量比が0.21~2.63である、実施形態1に記載の粉末状ビタミン製剤。
(実施形態3)
ビタミンが、ビタミンD、E、K若しくはQ又はそれらの誘導体、例えば、酢酸トコフェロール、トコトリエノールなどのビタミンEエステル、ビタミンK1、ビタミンK2、コエンザイムQ10及び、β-カロテン、カンタキサンチン、シトラナキサンチン、アスタキサンチン及びエステル誘導体、ゼアキサンチン及びエステル誘導体、ルテイン及びエステル誘導体、リコペン、アポカロテン酸及びエステル誘導体、アポカロテナールなどのカロテノイド、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1又は2に記載の粉末状ビタミン製剤。
(実施形態4)
製剤が、ブチルヒドロキシトルエン又は合成及び/若しくは天然トコフェロールを含む、実施形態1~3のいずれか1項に記載の粉末状ビタミン製剤。
(実施形態5)
トコフェロールが天然トコフェロールである、実施形態4に記載の粉末状ビタミン製剤。
(実施形態6)
没食子酸プロピルとトコフェロールが、製剤中に9:1~1:2の比で存在する、実施形態4又は5に記載の粉末状ビタミン製剤。
(実施形態7)
没食子酸プロピルとブチルヒドロキシトルエンが、製剤中に8:1~1:4の比で存在する、実施形態4に記載の粉末状ビタミン製剤。
(実施形態8)
実施形態1~7のいずれか1項に記載の粉末状ビタミン製剤であって、ストレス試験において4週間後の、没食子酸プロピルではなく同量のエトキシキンを含む比較サンプル中の活性ビタミンの比(B2/B1)に対する該粉末状ビタミン製剤中の活性ビタミンの比(A2/A1)が少なくとも0.75であり、ここで該活性ビタミンの割合は、いずれの場合も、製造された製剤100mgと、50重量%の微粉石灰(<1000μm)、20重量%のコムギフスマ(<1000μm)、20重量%の50%シリカ支持塩化コリン(<1000μm)及び10重量%の微量元素混合物(100~500μm)(前記微量元素混合物は、46.78重量%のFeSO
4
×7H
2
O(100~500μm)、37.43重量%のCuSO
4
×5H
2
O(100~500μm)、11.79重量%のZnO(<500μm)、3.61重量%のMnO及び0.39重量%のCoCO
3
からなる)の混合物4gとを50mLガラス容器中に秤量し、該成分を混合してこれらを40℃及び湿度70%の環境制御チャンバ中に4週間保存し、保存開始前のビタミン含有量(A1)及び(B1)並びに保存終了時のビタミン含有量(A2)及び(B2)を決定し、比A2/A1及びB2/B1から活性ビタミンの割合を計算することにより確認される、前記粉末状ビタミン製剤。
(実施形態9)
微細粉末状ビタミン製剤の製造方法であって、該ビタミンが本質的に0.7μm未満の粒径を有し、以下のステップ:
a1)
該ビタミンを、揮発性の水混和性有機溶媒中、又は水と水混和性有機溶媒との混合物中に、50℃~200℃の温度で、場合により昇圧下に、10秒未満の期間内溶解させるステップ、
a2)
a)の後に得られた溶液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と0℃~50℃の温度で急速に混合し、ビタミンをコロイド状分散形態で析出させるステップ、
a3)
形成された分散液を、大部分の溶媒を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
又は
a2)
該ビタミンを、揮発性の水不混和性有機溶媒中に、30~150℃の温度で、場合により昇圧下に溶解させ、
b2)
a)の後に得られた溶液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と混合し、エマルションを形成するステップ、
c2)
該エマルションから有機溶媒を除去し、形成された懸濁液/分散液を、水を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
又は
a3)
該ビタミンを、その融点超に加熱するか若しくはこれを油中に溶解させることにより、又はこれを室温で温置することにより液体に変換するステップ、
b3)
a3)の後に得られた融液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と混合し、エマルションを形成するステップ、
c3)
形成された分散液を、水を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
を含み、該方法が有効量の没食子酸プロピルの存在下で行われる、前記方法。
(実施形態10)
ビタミンが本質的に0.7μm未満の粒径を有する、微細粉末状ビタミン製剤を製造するための実施形態9に記載の方法であって、以下のステップ:
a1)
該ビタミンを、揮発性の水混和性有機溶媒中、又は水と水混和性有機溶媒との混合物中に、50℃~200℃の温度で、場合により昇圧下に、10秒未満の期間内溶解させるステップ、
b1)
a1)の後に得られた溶液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と0℃~50℃の温度で急速に混合し、ビタミンをコロイド状分散形態で析出させるステップ、
c1)
形成された分散液を、大部分の溶媒を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
又は
a2)
ビタミンを、揮発性の水不混和性有機溶媒中に、30~150℃の温度で、場合により昇圧下に溶解させるステップ、
b2)
a2)の後に得られた溶液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と混合し、エマルションを形成するステップ、
c2)
該エマルションから有機溶媒を除去し、形成された分散液を、水を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
又は
a3)
該ビタミンを、その融点超に加熱するか若しくはこれを油中に溶解させることにより、又はこれを室温で温置することにより液体に変換するステップ、
b3)
a3)の後に得られた融液を、コロイドの水性又はコロイド状分散溶液と混合し、エマルションを形成するステップ、
c3)
形成された分散液を、水を除去し、その後乾燥させることにより乾燥粉末に変換するステップ、
を含み、使用される有効量が該製剤の総量に対して没食子酸プロピル3.5重量%~9.5重量%であり、ここで該製造中の没食子酸プロピルとビタミンとの重量比は0.21~2.63である、前記方法。
(実施形態11)
没食子酸プロピルが、有機溶媒含有ビタミン相及び/又はコロイド含有水溶液及び/又は形成された分散液に添加される、実施形態9又は10に記載の方法。
(実施形態12)
実施形態9~11のいずれか1項に記載の方法であって、該方法が、pH4.5~pH8.5のpHで、より好ましくは6.5~8.5のpHで行われる、前記方法。
(実施形態13)
コロイド含有水溶液への没食子酸プロピルの添加後、前記溶液が6.5~8.5のpHに調整される、実施形態12に記載の方法。
(実施形態14)
トコフェロールが、有機溶媒含有ビタミン相に添加される、実施形態9~13のいずれか1項に記載の方法。
(実施形態15)
トコフェロールが天然トコフェロールである、実施形態14に記載の方法。
(実施形態16)
没食子酸プロピルとトコフェロールが9:1~1:2の比で使用される、実施形態14又は15に記載の方法。
(実施形態17)
ブチルヒドロキシトルエンが、形成された分散液に添加される、実施形態9~13のいずれか1項に記載の方法。
(実施形態18)
没食子酸プロピルとブチルヒドロキシトルエンが、8:1~1:4の比で使用される、実施形態17に記載の方法。
(実施形態19)
ビタミンが、ビタミンD、E、K若しくはQ又はそれらの誘導体、例えば、酢酸トコフェロール、トコトリエノールなどのビタミンEエステル、ビタミンK1、ビタミンK2、コエンザイムQ10及び、β-カロテン、カンタキサンチン、シトラナキサンチン、アスタキサンチン及びエステル誘導体、ゼアキサンチン及びエステル誘導体、ルテイン及びエステル誘導体、リコペン、アポカロテン酸及びエステル誘導体、並びにアポカロテナールなどのカロテノイドからなる群から選択される、実施形態9~18のいずれか1項に記載の方法。
(実施形態20)
コロイドが、植物ガム、改変植物ガム、ゼラチン、改変ゼラチン、改変デンプン、リグノスルホネート、キトサン、カラギーナン、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、ゼイン、改変セルロース、ペクチン、改変ペクチン、植物タンパク質及び改変植物タンパク質又はそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態9~19のいずれか1項に記載の方法。
(実施形態21)
実施形態9~20のいずれか1項に記載の方法により製造される粉末状ビタミン製剤。
(実施形態22)
動物飼料、食品、栄養補助食品、パーソナルケア製品又は医薬組成物中の添加剤としての、実施形態1~8及び21のいずれか1項に記載の粉末状ビタミン製剤の使用。
(実施形態23)
実施形態1~8及び21のいずれか1項に記載の粉末状ビタミン製剤を含む、動物飼料、食品、栄養補助食品、パーソナルケア製品又は医薬組成物。