IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図1
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図2
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図3
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図4
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図5
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図6
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図7
  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018493
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220120BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121628
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大輔
【テーマコード(参考)】
3D344
5H181
【Fターム(参考)】
3D344AA21
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD13
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC12
5H181EE13
5H181FF05
5H181FF22
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
5H181LL11
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】 交差点における安全性を向上させ得るヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】 ヘッドアップディスプレイ装置10は、虚像VI1となる第1画像PI1及び虚像VI2となる第2画像PI2を投影する画像投影部12と、制御部20と、を備える。制御部20は、車両1が交差点CSに所定の距離まで接近した第1のタイミングで画像投影部12に第1画像PI1を投影させる。また、制御部20は、車両1が第1のタイミングよりもさらに所定の交差点CSに接近した第2のタイミングで画像投影部12に第1画像PI1に代えて第2画像PI2を投影させる。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方に虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記虚像となる第1画像及び第2画像を投影する画像投影部と、
制御部と、
を備え、
前記第1画像は、所定の交差点を俯瞰して表す画像であり、
前記第2画像は、実景と重畳して表示される他車両を示す画像であり、
前記制御部は、前記自車両が前記所定の交差点に所定の距離まで接近した第1のタイミングで前記画像投影部に前記第1画像を投影させ、前記自車両が前記第1のタイミングよりもさらに前記所定の交差点に接近した第2のタイミングで前記画像投影部に前記第1画像に代えて前記第2画像を投影させる
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記他車両の位置を予想して、予想された前記他車両の位置と重なる領域に前記虚像が重畳して表示されるように、前記画像投影部に前記第2画像を投影させる
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定の交差点が信号が非設置の交差点である場合に前記画像投影部を動作させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定の交差点で交差する道路のうち少なくとも前記自車両が走行する道路の制限速度が50km/h以下である場合に前記画像投影部を動作させる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定の交差点の前記自車両から見て前記他車両が存在する側の角に前記自車両の運転者の視界を遮る遮蔽物が存在する場合に前記画像投影部を動作させる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車内の投影領域に投影される画像の虚像をウインドシールドの前方に表示するヘッドアップディスプレイ装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、交差点の角に存在する建造物の背後に隠れた他車両の位置に虚像を重畳表示して、当該他車両の存在を運転者に認識させるヘッドアップディスプレイ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-26708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のヘッドアップディスプレイ装置では、上記のように他車両が交差点の角の建造物に隠れる程度まで交差点に接近して初めて虚像が表示されるため、運転者が他車両の存在を認識するタイミングが遅くなる傾向がある。このため、より早期に他車両を認識して交差点における安全性をより向上させたいとの要請がある。
【0005】
そこで、本発明は、交差点における安全性を向上させ得るヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的の達成のため、本発明は、自車両の前方に表示される虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、前記虚像となる第1画像及び第2画像を投影する画像投影部と、制御部と、を備え、前記第1画像は、を所定の交差点を俯瞰して表す画像であり、前記第2画像は、実景と重畳して表示される他車両を示す画像であり、前記制御部は、前記自車両が前記所定の交差点に所定の距離まで接近した第1のタイミングで前記画像投影部に前記第1画像を投影させ、前記自車両が第1のタイミングよりもさらに前記所定の交差点に接近した第2のタイミングで前記画像投影部に前記第1画像に代えて前記第2画像を投影させることを特徴とするものである。
【0007】
このヘッドアップディスプレイ装置によれば、自車両が所定の交差点に接近した第1のタイミングで、上記第1画像の虚像が表示される。このため、自車両の運転者は、上記所定の交差点の状況を俯瞰的に把握して、交差点における衝突の危険を早い段階で認識することができる。さらに、このヘッドアップディスプレイ装置によれば、自車両が第1のタイミングよりもさらに上記所定の交差点に接近した第2のタイミングで、第1画像の虚像に代えて、他車両を示す第2画像の虚像が実景に重畳表示される。このため、この第2のタイミングにおいて、自車両の運転者は、交差点近傍に位置する他車両の存在を拡張現実によって強く認識して、他車両との衝突を避けることを促され得る。このため、このヘッドアップディスプレイ装置によれば、交差点における安全性が向上し得る。
【0008】
なお、前記制御部は、前記他車両の位置を予想して、予想された前記他車両の位置と重なる領域に前記虚像が重畳して表示されるように、前記画像投影部に前記第2画像を投影させてもよい。
【0009】
このように他車両が存在すると予測される領域に第2画像の虚像が重畳表示されることによって、自車両の運転者は、例えば他車両が遮蔽物によって視認できない場合でも、他車両の位置を正確に認識することができる。よって、交差点における安全性がより向上し得る。
【0010】
また、前記制御部は、前記所定の交差点が信号が非設置の交差点である場合に前記画像投影部を動作させてもよい。
【0011】
信号が非設置の交差点では、信号が設置された交差点に比べて、自車両が他車両に衝突する可能性が高まり得る。よって、制御部が、所定の交差点が信号が非設置の交差点である場合に画像投影部を動作させることによって、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記所定の交差点で交差する道路のうち少なくとも前記自車両が走行する道路の制限速度が50km/h以下である場合に前記画像投影部を動作させてもよい。
【0013】
一般的に、制限速度が50km/h以下の道路が交差する交差点は市街地に多く存在する傾向があり、このような市街地の交差点は見通しが悪い傾向にある。このため、制御部が、所定の交差点が少なくとも自車両の走行する道路の制限速度が50km/h以下の交差点である場合に前記画像投影部を動作させることによって、見通しの悪い交差点において他車両の存在を認識できる機会が増え、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記所定の交差点で交差する道路のうち少なくとも前記自車両が走行する道路の道幅が5m以下である場合に前記画像投影部を動作させてもよい。
【0015】
道幅が5m以下の道路が交差する交差点は、一般的に、建造物が密集した区域に存在する傾向があり、見通しが悪い傾向がある。このため、交差点における車同士の衝突が起こり易い傾向がある。よって、制御部が、所定の交差点が自車両の走行する道路の道幅が5m以下である場合に画像投影部を動作させることによって、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記所定の交差点の前記自車両から見て前記他車両が存在する側の角に前記自車両の運転者の視界を遮る遮蔽物が存在する場合に前記画像投影部を動作させてもよい。
【0017】
このような交差点では、他車両が遮蔽物の背後に隠れる傾向があるため、他車両を視認し難く、衝突危険性が高まり得る。しかし、このヘッドアップディスプレイ装置では、仮に他車両が遮蔽物の背後に隠れた場合でも、第2画像の虚像が重畳表示されるため、遮蔽物の背後の他車両を認識することができる。よって、制御部が、このような角に遮蔽物が存在する場合に画像投影部を動作させることによって、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0018】
また、前記制御部は、前記所定の交差点から前記自車両までの距離が100m以下となり、かつ、前記所定の交差点から前記他車両までの距離が100m以下となるタイミングを前記第1のタイミングとして、前記画像投影部に前記第1画像を投影させてもよい。
【0019】
第1のタイミングにおける自車両及び他車両からの交差点までの距離が長いと、虚像が表示される時間が長くなり、運転者が煩わしく感じる場合がある。しかし、第1のタイミングにおける交差点までの距離が100m以下の場合において、自車両及び他車両の速度が例えば50km/hの場合、自車両及び他車両が交差点に到達するまでの時間は概ね10秒以下であり、虚像が表示される時間が概ね10秒以下となる。このため、虚像が表示される時間が長くなり過ぎることを抑制することができ、運転者が煩わしさを感じ難くなり得る。
【0020】
また、前記制御部は、前記所定の交差点から前記自車両までの距離が27.5m以上30m以下となるタイミングを前記第2のタイミングとして、前記画像投影部に前記第2画像を投影させてもよい。
【0021】
見通しの悪い交差点が多く存在する市街地の道路の制限速度は上記のように50km以下の場合が多く、50km/hで走行する車両の停止距離は概ね27.5mである。したがって、交差点CSから自車両までの距離が27.5m以上30m以下のタイミングで第2画像の虚像が表示されれば、仮に、自車両の運転者が第2画像の虚像が表示される前に自車両を減速させていない場合でも、当該運転者は、第2画像の虚像が表示される第2のタイミングで他車両の存在を認識して、停止距離よりもやや遠い位置から自車両を減速させることができる。このため、自車両が交差点CSに到達する前に自車両を停止させることができ、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0022】
また、前記制御部は、前記自車両の走行状態が前記自車両の停止距離が増加する状態である場合に、前記第2のタイミングを前記自車両の停止距離が増加しない状態に比べて早めてもよい。
【0023】
この場合、自車両の停止距離が増加する分に応じて早めに第2画像の虚像を表示し得るため、自車両の運転者は、より早期に自車両を減速させることを促され得る。よって、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0024】
また、制御部が第2のタイミングを早める場合、前記制御部は、前記自車両の速度が所定の速度を超えている場合に、前記第2のタイミングを前記自車両の速度が前記所定の速度以下である場合に比べて早めてもよい。
【0025】
この場合、自車両の速度が所定の速度を超えていることに起因して自車両の停止距離が増加する場合でも、早めに第2画像の虚像を表示し得るため、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0026】
また、制御部が第2のタイミングを早める場合、前記制御部は、前記自車両が走行する道路の下り勾配が所定の角度を超えている場合に、前記第2のタイミングを前記下り勾配が前記所定の角度以下である場合に比べて早めてもよい。
【0027】
この場合、自車両が走行する道路の下り勾配が所定の角度を超えていることに起因して自車両の停止距離が増加する場合でも、早めに第2画像の虚像を表示し得るため、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0028】
また、制御部が第2のタイミングを早める場合、前記制御部は、前記自車両が走行する道路における降水量が所定の降水量を超えている場合に、前記第2のタイミングを前記降水量が前記所定の降水量以下である場合に比べて早めてもよい。
【0029】
この場合、自車両が走行する道路における降水量が所定の降水量を超えていることに起因して自車両の停止距離が増加する場合でも、早めに第2画像の虚像を表示し得るため、交差点における安全性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、交差点における安全性を向上させ得るヘッドアップディスプレイ装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の構成を当該ヘッドアップディスプレイ装置が搭載される自車両の一部とともに概念的に示す図である。
図2】自車両の構成の一部を示すブロック図である。
図3】第1画像の一例を示す図である。
図4】第2画像の一例を示す図である。
図5図2に示すヘッドアップディスプレイ装置の制御部の制御フローの一例を示すフローチャートである。
図6図1に示すヘッドアップディスプレイ装置によって表示される第1画像の虚像の一例を示す図である。
図7図1に示すヘッドアップディスプレイ装置によって表示される第2画像の虚像の一例を示す図である。
図8】本発明の変形例に係る第2画像の虚像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、本明細書では、理解を容易にするために、各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0033】
図1は、実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の構成を当該ヘッドアップディスプレイ装置が搭載される自車両の一部とともに概念的に示す図である。図2は、上記自車両の構成の一部を示すブロック図である。図1及び図2に示すように、自車両である車両1は、ヘッドアップディスプレイ装置10と、速度センサ31と、レインセンサ32と、勾配センサ33と、を主な構成として備える。
【0034】
速度センサ31、レインセンサ32、及び勾配センサ33のそれぞれは、ヘッドアップディスプレイ装置10の後述するタイミング算出部21に接続されている。速度センサ31は、車両1の速度を検出して、その速度のデータをタイミング算出部21に出力する。レインセンサ32は、降水量を検出して、その降水量のデータをタイミング算出部21に出力する。勾配センサ33は、車両1が走行する道路の勾配を検出して、その勾配のデータをタイミング算出部21に出力する。
【0035】
ヘッドアップディスプレイ装置10は、車両1の例えばインストルメントパネル1Pに設置され、制御ユニット11と、画像投影部12と、を主な構成として備える。
【0036】
画像投影部12は、投影ユニット13と、光学機構14とを含んでおり、ウインドシールド1Fに所定の画像PIを投影する。
【0037】
本実施形態において、投影ユニット13は、例えば所定のプロジェクタ装置からなり、画像PIを表す光Lを前方に向かって出射する。この画像PIとして、図3に示す第1画像PI1と、図4に示す第2画像PI2とを挙げることができる。投影ユニット13は、ウインドシールド1Fに第1画像PI1を投影する光L1と、ウインドシールド1Fに第2画像PI2を投影する光L2とを切り替えて出射することができる。
【0038】
図3に示すように、第1画像PI1は、所定の交差点CSを俯瞰して表す画像である。本実施形態では、第1画像PI1には、交差点CSに向かって走行する車両1と、車両1が走行する道路MRに交差点CSで交差する道路ORを交差点CSに向かって走行する他車両2とが、交差点CSとともに俯瞰表示される。交差点CSは、車両1の進行方向において車両1に最も近い交差点である。なお、第1画像PI1には、必ずしも車両1や他車両2が表示されなくてもよい。また、図3では、交差点CSが十字路である例が示されているが、交差点CSはT字路であってもよいし、3つ以上の道路が交差する交差点であってもよい。また、図3では、説明のために矢印が表されているが、実際の第1画像PI1には矢印等は表示されなくてもよい。
【0039】
第2画像PI2は、車両1の運転者に他車両2の存在を認識させ得る画像であり、例えば図4に示すように、車両の形状を模した画像であってもよい。
【0040】
図1に示すように、光学機構14は、投影ユニット13から出射する光Lの光路上に配置されており、光Lをウインドシールド1Fの所定の領域に導光する。光Lが光学機構14を介してウインドシールド1Fに照射されることによって、ウインドシールド1Fの所定の領域に画像PIが投影される。本実施形態において、この光学機構14は、2方向に搖動可能な不図示のミラーを含んでいる。このミラーを搖動させることによって、光Lがウインドシールド1Fを照射する領域を移動させることができる。
【0041】
ウインドシールド1Fに導光された光Lは、運転者側のアイボックスEに向かって反射される。運転者の視点がアイボックスE内に置かれることによって、車両1の運転者は、ウインドシールド1Fを介して前方の例えば2m~20mの領域かつ交差点CSを基準として他車両2側の領域に、画像PIの虚像VIを視認することができる。このように、本実施形態において、ウインドシールド1Fは虚像VIを視認するための投影領域として機能する。なお、投影された画像PIを虚像VIとして視認できるのであれば、投影領域はウインドシールド1Fに限定されず、例えば、画像PIを投影可能な車両1の内部に設けられたコンバイナであってもよい。例えば、光Lが上記光L1である場合、運転者は第1画像PI1の虚像をウインドシールド1Fの前方に視認することができる。また、光Lが上記光L2である場合、運転者は第2画像PI2の虚像をウインドシールド1Fの前方に視認することができる。
【0042】
図2に示すように、本実施形態において、制御ユニット11は、位置情報取得部15と、自車位置算出部16と、他車位置算出部17と、交差点判定部18と、記憶部19と、制御部20と、タイミング算出部21と、を主な構成として備える。自車位置算出部16、他車位置算出部17、交差点判定部18、及びタイミング算出部21は、それぞれ制御部20に接続されている。
【0043】
位置情報取得部15は、不図示の受信機を含んでおり、GPS(Global Positioning System)衛星から取得されるGPS情報、車車間通信による情報、及び路車間通信による情報などを受信することができる。位置情報取得部15は、自車位置算出部16、他車位置算出部17、及び交差点判定部18などに接続されており、受信した情報を自車位置算出部16、他車位置算出部17、及び交差点判定部18に出力する。
【0044】
記憶部19は、自車位置算出部16、他車位置算出部17、及び交差点判定部18などに接続されている。この記憶部19は、情報を記憶し、当該記憶した情報を読み出し可能に構成される。記憶部19としては、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体記録媒体を挙げることができ、また、この記憶部19は光学式記録媒体や磁気記録媒体等の任意の形式の記録媒体を包含してもよい。なお、「非一過性」の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く全てのコンピュータの信号を読み取り可能な記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。
【0045】
本実施形態では、記憶部19は、詳細な道路情報を含んだ地図データなどを記憶している。この詳細な道路情報としては、例えば、各道路の制限速度、各道路の道幅、及び交差点の詳細な情報などを挙げることができる。また、交差点の詳細な情報としては、例えば、当該交差点に信号が設置されているか否かの情報、及び当該交差点の角に建物や壁などの運転者の視界を遮る遮蔽物が存在する否かの情報などを挙げることができる。
【0046】
自車位置算出部16は、位置情報取得部15から例えばGPS情報が入力すると、記憶部19から地図データを読み出し、当該地図データにおける車両1の位置を特定し、図3に示すように、特定した車両1の位置に基づいて交差点CSから車両1までの距離D1を算出する。本実施形態において、距離D1は、道路MRと道路ORとの交点から車両1の前端までの距離である。また、自車位置算出部16は、算出した距離D1のデータを制御部20に出力する。なお、車両1が交差点CSに近づく場合における距離D1はプラスで表され、車両1が交差点CSを通過して交差点CSから遠ざかる場合における距離D1はマイナスで表される。
【0047】
他車位置算出部17は、位置情報取得部15から例えば車車間通信の情報や路車間通信の情報が入力すると、記憶部19から地図データを読み出し、道路ORを交差点CSに向かって走行する他車両2の上記地図データにおける位置を特定し、図3に示すように、特定した他車両2の位置に基づいて、交差点CSから他車両2までの距離D2を算出する。本実施形態において、距離D2は、道路MRと道路ORとの交点から他車両2の前端までの距離である。また、他車位置算出部17は、算出した距離D2のデータを制御部20に出力する。なお、道路ORを交差点CSに向かって走行する他車両が複数存在する場合には、距離D2は、交差点CSに最も近い他車両から交差点CSまでの距離である。他車両2が交差点CSに近づく場合における距離D2はプラスで表され、他車両2が交差点CSを通過して交差点CSから遠ざかる場合における距離D2はマイナスで表される。
【0048】
交差点判定部18は、例えばGPS情報が入力すると、記憶部19から地図データを読み出し、上述した交差点の詳細な情報に基づいて、交差点CSが所定の条件を満たす交差点に該当するか否かを判定する。例えば、交差点判定部18は、道路MRの制限速度が50km/h以下であること、道路ORの制限速度が50km/h以下であること、図3に示す道路MRの道幅W1が5m以下であること、図3に示す道路ORの道幅W2が5m以下であること、交差点CSに信号機が設置されていないこと、及び交差点CSの角のうち車両1から見て他車両2側の角に上記遮蔽物が存在すること、の6つの項目を交差点CSが所定の条件を満たす交差点に該当するか否かの判定項目とする。また、交差点判定部18は、例えば、交差点CSが上記6つの項目に1つ1つ該当するごとに数値を例えば1ずつカウントする。例えば、交差点CSが上記6つの項目のうち1つが該当する交差点である場合には、交差点CSの衝突危険性の数値を1と算出し、3つの項目が該当する交差点である場合には交差点CSの衝突危険性の数値を3と算出し、全ての項目が該当する交差点である場合には交差点CSの衝突危険性の数値を6と算出する。本実施形態では、交差点判定部18は、この数値が所定の閾値を超えている場合に、交差点CSが所定の条件を満たす交差点と判定し、交差点CSが所定の交差点に該当することを示す信号を制御部20に出力する。
【0049】
なお、所定の交差点を判定するための項目は適宜変更することができる。例えば、上記した6つの項目の全てを判定項目とする必要はなく、一部の項目のみを判定項目としてもよい。例えば、交差点に信号機が設置されていないことのみを判定項目としてもよいし、交差点CSの角のうち車両1から見て他車両2側の角に上記遮蔽物が存在することのみを判定項目としてもよい。また、上記した6つの項目のうちの例えば2つ、3つ、4つ、又は5つを判定項目としてもよい。あるいは、上記6つの項目に加えて新たに1つ以上の項目を設けて、判定する項目の数を7つ以上としてもよい。また、上記項目に加重を設けてもよい。例えば、信号機が設置されていない項目や車両1から見て他車両2側の角に遮蔽物が存在する項目に該当する交差点は、仮に他の項目に該当しない場合でも、衝突危険性が高いと考えられる。したがって、交差点CSに信号機が設置されていない項目及び交差点CSの角のうち車両1から見て他車両2側の角に遮蔽物が存在する項目に該当する場合には、それぞれ1より大きい数値を加算して、所定の条件を満たす交差点と判定され易くしてもよい。
【0050】
ただし、交差点判定部18が交差点を判定するアルゴリズムは上記に限られない。
【0051】
タイミング算出部21は、速度センサ31、レインセンサ32、及び勾配センサ33から入力する各データに基づいて、後述する第2の範囲を算出し、算出した第2の範囲のデータを制御部20に出力する。
【0052】
制御部20は、画像投影部12の投影ユニット13及び光学機構14に接続されており、投影ユニット13及び光学機構14を後述するように制御する。
【0053】
なお、制御部20、位置情報取得部15、自車位置算出部16、他車位置算出部17、交差点判定部18、及びタイミング算出部21は、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置によって構成される。また、これらは、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。また、制御ユニット11の少なくとも一部は、車両1のECUの一部として構成されてもよいし、車両1にナビゲーション装置が搭載されている場合には当該ナビゲーション装置の一部として構成されてもよい。
【0054】
次に、ヘッドアップディスプレイ装置10の制御の一例について図5に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0055】
図5に示すように、本実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置10の制御ステップには、ステップSP1~ステップSP10が含まれる。本実施形態では、車両1のイグニッション電源がオンになると、ヘッドアップディスプレイ装置10の制御ステップが開始される。
【0056】
(ステップSP1)
自車位置算出部16は、車両1の進行方向において最も近くに存在する交差点CSと車両1までの距離D1を算出し、算出した距離D1のデータを制御部20に出力する。本実施形態において、制御部20は、距離D1が第1の範囲にあることを示す信号が自車位置算出部16から入力する場合、制御ステップをステップSP2に進める。本実施形態では、第1の範囲は30m<D1≦100mに設定される。一方、制御部20は、距離D1が100mを超えていることを示す信号が自車位置算出部16から入力する場合、本ステップを繰り返す。
【0057】
(ステップSP2)
交差点判定部18は、例えば上述した判定方法により、交差点CSが所定の交差点であるか否かを判定する。本実施形態において、交差点判定部18は、上述した6つの項目を全て満たす場合、交差点CSが所定の交差点に該当することを示す信号を制御部20に出力する。なお、この場合、上記閾値は例えば5である。一方、交差点判定部18は、上記6つの項目のうち1つ以上の項目を満たさない場合、上記信号を制御部20に出力しない。制御部20は、交差点CSが所定の交差点に該当することを示す信号が交差点判定部18から入力する場合、制御ステップをステップSP3に進める。一方、制御部20は、上記信号が交差点判定部18から入力しない場合、制御ステップをステップSP1に戻す。
【0058】
(ステップSP3)
他車位置算出部17は、交差点CSから道路ORを走行する他車両2までの距離D2を算出し、算出した距離D2のデータを制御部20に出力する。本実施形態において、制御部20は、距離D2が0m超100m以下であることを示す信号が他車位置算出部17から入力する場合、制御ステップをステップSP4に進める。一方、制御部20は、距離D2が100mを超えていることを示す信号が他車位置算出部17から入力する場合、制御ステップをステップSP1に戻す。
【0059】
(ステップSP4)
本ステップでは、制御部20は、第1制御信号を画像投影部12に出力する。投影ユニット13は、制御部20から第1制御信号が入力すると、光L1を出射する。これにより、光L1がウインドシールド1Fを照射し、ウインドシールド1Fに図3に示す第1画像PI1が投影される。この第1画像PI1は、ステップSP1及びステップSP3で算出された距離D1及び距離D2に対応する位置に車両1及び他車両2が示された俯瞰画像である。この第1画像PI1がウインドシールド1Fに投影されることによって、車両1の運転者は、図6に示すように、第1画像PI1の虚像VI1をウインドシールド1Fよりも所定の距離だけ前方の位置に視認することができる。なお、交差点CSの車両1から見て他車両2側の角には遮蔽物3が存在しており、図6では、他車両2側とは反対側の角にも遮蔽物が存在する例が示されている。このように、本ステップでは、制御部20は、車両1及び他車両2が所定の交差点CSに接近した第1のタイミングで、画像投影部12に第1画像PI1をウインドシールド1Fに投影させる。制御部20は、本ステップの後、制御ステップをステップSP5に進める。
【0060】
(ステップSP5)
タイミング算出部21は、距離D1の第2の範囲を算出する。本ステップの直前において、本実施形態では、この第2の範囲は27.5m≦D1≦30mの初期範囲に設定されている。タイミング算出部21は、車両1の速度が所定の速度を超えていることを示す信号が速度センサ31から入力する場合、所定の速度からの差に相当する加算値を初期範囲の上限値及び下限値のそれぞれに加算する。この所定の速度は例えば50km/hであってもよい。また、タイミング算出部21は、降水量が所定の降水量を超えていることを示す信号がレインセンサ32から入力する場合、所定の降水量からの差に相当する加算値を初期範囲の上限値及び下限値のそれぞれに加算する。この所定の降水量は例えば2mmであってもよい。さらに、タイミング算出部21は、車両1が走行する道路MRの下り勾配が所定の角度を超えていることを示す信号が勾配センサ33から入力する場合、所定の角度からの差に相当する加算値を初期範囲の上限値及び下限値のそれぞれに加算する。この所定の角度は例えば8‰であってもよい。こうして、タイミング算出部21は、上述したそれぞれの加算値が加算された後の範囲を第2の範囲のデータとして制御部20に出力する。なお、タイミング算出部21は、車両1の速度が所定の速度を超えておらず、かつ、降水量が所定の降水量を超えておらず、かつ、道路MRの下り勾配が所定の角度を超えていない場合には、上記初期範囲を第2の範囲のデータとして制御部20に出力する。制御部20は、タイミング算出部21から第2の範囲のデータが入力すると、制御ステップをステップSP6に進める。
【0061】
(ステップSP6)
本ステップでは、制御部20は、距離D1が第2の範囲にあることを示す信号が自車位置算出部16から入力する場合、制御ステップをステップSP7に進める。一方、制御部20は、距離D1が第2の範囲の上限値を超えていることを示す信号が自車位置算出部16から入力する場合、制御ステップをステップSP1に戻す。
【0062】
制御ステップが本ステップからステップSP1に戻ることによって、所定の時間が経過した後の距離D1と距離D2とが新たに算出される。その後、制御部20は、再びステップSP4を行い、第1制御信号を投影ユニット13に出力する。こうして、制御部20は、新たに算出された距離D1,D2に対応する位置に車両1及び他車両2が示された第1画像PI1を投影ユニット13に投影させる。その結果、車両1の運転者は、車両1及び他車両2の位置が更新された虚像VI1を視認することができる。また、再びステップSP5が実行され、新たな第2の範囲が算出される。制御部20は、距離D1が第2の範囲にあることを示す信号が入力するまで、このサイクルを繰り返す。
【0063】
(ステップSP7)
本ステップでは、制御部20は、距離D2がステップSP3における距離よりも小さくかつプラスの距離であることを示す信号が他車位置算出部17から入力する場合、制御ステップをステップSP8に進める。この際、制御部20は、他車両2の速度等に基づいて、後述するステップSP8の時点で他車両2が存在すると予想される予想位置を算出する。一方、制御部20は、距離D2がステップSP3における距離以上であることを示す信号又は距離D2がマイナスであることを示す信号が他車位置算出部17から入力する場合、制御ステップをステップSP10に進める。なお、上述のように、距離D2がプラスである場合、他車両2は交差点を非通過で交差点CSに近づいている状態にあり、距離D2がマイナスの場合、他車両2は交差点CSを通過して交差点CSから遠ざかっている状態にある。
【0064】
(ステップSP8)
本ステップでは、制御部20は、上記第1制御信号に代えて、第2制御信号を画像投影部12に出力する。この第2制御信号には、他車両2の上記予想位置の情報が含まれる。第2制御信号が入力すると、投影ユニット13が光L2を出射するともに、光学機構14のミラーの角度が光L1が出射する場合とは異なる角度になる。こうして、ウインドシールド1Fの光L1が照射する位置とは異なる位置に光L2が照射される。この光L2に照射されるウインドシールド1Fの位置は、概ね上記の予想位置に虚像VI2が現れる位置である。したがって、ウインドシールド1Fに図4に示す第2画像PI2が投影されることによって、車両1の運転者は、虚像VI1に代えて、図7に示すように、上記予想位置に重畳表示された虚像VI2を視認することができる。このように、制御部20は、他車両2の位置を予想して、予想された他車両2の位置と重なる領域に虚像VI2が重畳して表示されるように、画像投影部12に第2画像PI2を投影させる。
【0065】
本実施形態では、上述のように、交差点CSの車両1から見て他車両2側の角に遮蔽物3が存在している。図7の状態では、他車両2がステップSP3の時点よりも交差点CSに接近することによって、他車両2が遮蔽物3の背後に位置しており、この遮蔽物3によって他車両2の視認が妨げられている。したがって、本実施形態では、この遮蔽物3に隠れた他車両2の位置に虚像VI2が重畳して表示される。
【0066】
このように、本ステップでは、制御部20は、車両1及び他車両2が上記第1のタイミングよりもさらに交差点CSに接近した第2のタイミングで、画像投影部12に第1画像PI1に代えて第2画像PI2をウインドシールド1Fに投影させる。その結果、この第2のタイミングで、ウインドシールド1Fの前方に表示される虚像VIが虚像VI1から虚像VI2に切り替わる。制御部20は、本ステップの後、制御ステップをステップSP9に進める。
【0067】
なお、上記ステップSP5において第2の範囲の下限値と上限値とが、初期範囲の下限値27.5mと上限値30mとからそれぞれ増加した場合、第2の範囲が初期範囲から変化しない場合に比べて車両1が交差点CSから離れている時点で、虚像VI1が虚像VI2に切り替わる。このように、本実施形態では、車両1の速度、道路MRの下り勾配、及び道路MRにおける降水量の少なくとも1つが基準値よりも大きい場合、第2のタイミングが、第2の範囲が初期範囲である場合に比べて早まる。
【0068】
(ステップSP9)
本ステップでは、制御部20は、距離D1が第3の範囲にあることを示す信号が自車位置算出部16から入力する場合、制御ステップをステップSP7に戻す。本実施形態では、第3の範囲は0m以上かつ第2の範囲の上限値以下に設定される。一方、制御部20は、距離D1がマイナスであることを示す信号又は距離D1が第2の範囲の上限値を超えていることを示す信号が自車位置算出部16から入力する場合、制御ステップをステップSP10に進める。なお、上述のように、距離D1がマイナスの場合、車両1は交差点CSを通過して交差点CSから遠ざかっている状態にある。
【0069】
(ステップSP10)
本ステップでは、制御部20は、画像投影部12に第1制御信号及び第2制御信号を出力することを中止する。これにより、投影ユニット13からの光の出射が停止し、虚像VI1,VI2の表示が中止される。また、制御部20は、光学機構14に所定の制御信号を出力し、光学機構14のミラーの角度をステップSP1の角度に戻す。その後、制御部20は、制御ステップをステップSP1に戻す。
【0070】
以上説明したように、本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置10は、虚像VI1となる第1画像PI1及び虚像VI2となる第2画像PI2を投影する画像投影部12と、制御部20と、を備える。第1画像PI1は、交差点CSを俯瞰して表す画像である。第2画像PI2は、実景と重畳して表示される他車両2を示す画像である。制御部20は、車両1が所定の交差点CSに所定の距離まで接近した第1のタイミングで画像投影部12に第1画像PI1を投影させる。また、制御部20は、車両1が第1のタイミングよりもさらに所定の交差点CSに接近した第2のタイミングで画像投影部12に第1画像PI1に代えて第2画像PI2を投影させる。
【0071】
このヘッドアップディスプレイ装置10によれば、車両1が所定の交差点CSに接近した第1のタイミングで、第1画像PI1の虚像VI1が表示される。このため、車両1の運転者は、所定の交差点CSの状況を俯瞰的に把握して、交差点CSにおける衝突の危険を早い段階で認識することができる。さらに、このヘッドアップディスプレイ装置10によれば、車両1が第1のタイミングよりもさらに交差点CSに接近した第2のタイミングで、第1画像PI1の虚像VI1に代えて、他車両2を示す第2画像PI2の虚像VI2が実景に重畳表示される。このため、この第2のタイミングにおいて、車両1の運転者は、交差点CS近傍に位置する他車両2の存在を拡張現実によって強く認識して、他車両2との衝突を避けることを促され得る。このため、このヘッドアップディスプレイ装置10によれば、交差点における安全性が向上し得る。
【0072】
また、本実施形態では、第1画像PI1には、交差点CSに向かって走行する車両1と、車両1が走行する道路MRに交差点CSで交差する道路ORを交差点CSに向かって走行する他車両2とが俯瞰して表示される。このため、車両1の運転者は、交差点CSに対する車両1と他車両2との位置関係を俯瞰的に把握することができる。よって、交差点CSの危険の状況をより正確に認識することができ、安全性がより向上し得る。
【0073】
また、本実施形態では、第1のタイミング及び第2のタイミングが交差点CSから車両1までの距離と交差点CSから他車両2までの距離との両方によって定められる。このため、交差点CSに接近する他車両2が存在しない場合に虚像VI1や虚像VI2が表示されることが抑制され、車両1の運転者が煩わしさを感じることを抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上述のように、制御部20は、交差点CSが信号が非設置の交差点である場合に画像投影部12を動作させ、信号が設置されている交差点では画像投影部12を動作させない。信号が非設置の交差点では、信号が設置された交差点に比べて、自車両が他車両に衝突する危険が高まり得る。よって、交差点CSが信号が非設置の交差点である場合に虚像VI1,VI2を表示させることによって、交差点における安全性をより向上させることができる。一方、信号が設置されている交差点では、信号の切り替わりによって、車両1が交差点に進入するタイミングと、他車両2が交差点に進入するタイミングとが制御されるため、信号が非設置である場合に比べて、車両1と他車両2とが衝突する危険性が低い。このため、交差点CSが信号が設置された交差点である場合に画像投影部12を動作させないことで、虚像VI1,VI2が表示される機会が多くなり過ぎることを抑制することができ、車両1の運転者が煩わしさを感じることを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上述のように、制御部20は、交差点CSの車両1から見て他車両2が存在する側の角に車両1の運転者の視界を遮る遮蔽物3が存在する場合に、画像投影部12を動作させ、上記角に遮蔽物3が存在しない交差点では画像投影部12を動作させない。遮蔽物が存在する交差点では、他車両が遮蔽物の背後に隠れる傾向があるため、他車両を視認し難く、衝突危険性が高まり得る。しかし、このヘッドアップディスプレイ装置10では、仮に他車両2が遮蔽物3の背後に隠れた場合でも第2画像PI2の虚像VI2が重畳表示されるため、遮蔽物3の背後の他車両2を認識することができる。よって、交差点における安全性をより向上させることができる。一方、遮蔽物3が存在しない交差点では、車両1の運転者は他車両2の存在を視認することができるため、遮蔽物3が存在する場合に比べて、車両1と他車両2とが衝突する危険性が低い。このため、遮蔽物3が存在しない場合に画像投影部12を動作させないことで、虚像VI1,VI2が表示される機会が多くなり過ぎることを抑制することができ、車両1の運転者が煩わしさを感じることを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上述のように、制御部20は、交差点CSで交差する道路MR,ORのうち少なくとも車両1が走行する道路MRの制限速度が50km/h以下である場合に、画像投影部12を動作させる。一般的に、制限速度が50km以下の道路が交差する交差点は市街地に存在する傾向があり、このような市街地の交差点は見通しが悪い傾向にある。このため、本実施形態のように制限速度が50km/h以下の道路が交差することを衝突危険性の高い交差点の判定項目にすれば、見通しの悪い交差点で他車両の存在を認識する機会が増え、交差点における安全性をより向上させることができる。なお、他車両2の走行する道路ORの制限速度が50km/h以下であることをさらに判定項目にすれば、交差点における安全性をさらに向上させることができる。
【0077】
また、本実施形態では、上述のように、制御部20は、交差点CSで交差する道路MR,ORのうち少なくとも車両1が走行する道路MRの道幅が5m以下である場合に、画像投影部12を動作させる。道幅が5m以下の道路が交差する交差点は、一般的に、建造物が密集した区域に存在する傾向があり、見通しが悪い傾向がある。このため、交差点における車同士の衝突が起こり易い傾向がある。よって、本実施形態のように自車両の走行する道路の道幅が5m以下であることを衝突危険性の高い交差点の判定項目にすれば、見通しの悪い交差点で他車両の存在を認識する機会が増え、交差点における安全性をより向上させることができる。なお、他車両2の走行する道路ORの道幅が5m以下であることをさらに判定項目にすれば、交差点における安全性をさらに向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態では、上述のように、制御部20は、交差点CSから車両1までの距離が100m以下となり、かつ、交差点CSから他車両2までの距離が100m以下となるタイミングを上記第1のタイミングとして、画像投影部12に第1画像PI1を投影させる。第1のタイミングにおける車両1及び他車両2からの交差点CSまでの距離が長いと、虚像が表示される時間が長くなり、運転者が煩わしく感じる場合がある。しかし、第1のタイミングにおける交差点CSまでの距離が100m以下の場合において、車両1及び他車両2の速度が例えば50km/hの場合、車両1及び他車両2が交差点に到達するまでの時間は概ね10秒以下であり、虚像が表示される時間が概ね10秒以下となる。このため、虚像が表示される時間が長くなり過ぎることを抑制することができ、運転者が煩わしさを感じ難くなり得る。
【0079】
また、本実施形態では、上述のように、第2の範囲の初期範囲が27.5m以上30m以下である。一般的に、見通しの悪い交差点が多く存在する市街地の道路の制限速度は上記のように50km以下の場合が多く、50km/hで走行する車両の停止距離は概ね27.5mである。したがって、交差点CSから車両1までの距離が27.5m以上30m以下のタイミングで虚像VI2が表示されれば、仮に、車両1の運転者が虚像VI2が表示される前に車両1を減速させていない場合でも、当該運転者は、虚像VI2が表示される第2のタイミングで他車両2の存在を認識して、停止距離よりもやや遠い位置から車両1を減速させることができる。このため、車両1が交差点CSに到達する前に車両1を停止させることができ、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態では、上述のように、制御部20は、車両1の速度が所定の速度を超えている場合に、第2のタイミングを車両1の速度が所定の速度以下である場合に比べて早める。したがって、車両1の速度が所定の速度を超えていることに起因して車両1の停止距離が増加する場合でも、停止距離が増加する分に応じて早めに虚像VI2が表示されるため、車両1の運転者は、より早期に車両1を減速させることを促され得る。よって、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、上述のように、制御部20は、車両1が走行する道路MRの下り勾配が所定の角度を超えている場合に、第2のタイミングを下り勾配が所定の角度以下である場合に比べて早める。したがって、道路MRの下り勾配が大きいことに起因して車両1の停止距離が増加する場合でも、停止距離が増加する分に応じて早めに虚像VI2が表示されるため、車両1の運転者は、より早期に車両1を減速させることを促され得る。よって、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態では、上述のように、制御部20は、車両1が走行する道路MRおける降水量が所定の降水量を超えている場合に、第2のタイミングを降水量が所定の降水量以下である場合に比べて早める。したがって、降水量が多いことに起因して車両1の停止距離が増加する場合でも、停止距離が増加する分に応じて早めに虚像VI2が表示されるため、車両1の運転者は、より早期に車両1を減速させることを促され得る。よって、交差点における安全性をより向上させることができる。
【0083】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0084】
例えば、衝突危険性の高い交差点の判定項目は上述の実施形態に限定されず、適宜変更することが可能である。例えば、上述した実施形態では、上記6つの項目の全てを満たす場合に交差点CSが衝突危険性の高い交差点と判定する例を示したが、上記閾値を上記実施形態よりも小さな値にして、6つの項目の一部を満たす場合に衝突危険性の高い交差点と判定してもよい。この場合、より多くの交差点が衝突危険性の高い交差点と判定され、虚像VI1,VI2が表示される機会が増える。一方、上述の実施形態のように6つの項目の全てが満たされる場合に衝突危険性の高い交差点と判定する場合、虚像VI1,VI2が表示される機会が厳選され、運転者が煩わしさを感じることを抑制することができる。
【0085】
また、上述の実施形態では、遮蔽物3が存在する場合に衝突危険性の高い交差点と判定する例を説明したが、遮蔽物3が存在しない交差点を衝突危険性の高い交差点と判定してもよい。この場合、図8に示すように、交差点CSに遮蔽物3が存在しないため、車両1の運転者は、他車両2を実景として視認し得る。しかし、車両1の運転者が前方不注意等の理由により、例えば信号が赤であるにも関わらず交差点に進入して他車両2に衝突する等の危険性を低下させるために、例えば車両1のウインドシールド1Fを介して視認される実景のうち他車両2が存在する領域に、例えば他車両2を囲うような円環状の虚像VI2を仮想現実として重畳表示して、他車両2を際立たせてもよい。このように他車両2を際立たせることで、上記のような運転者の前方不注意等が抑制され、交差点における安全性を向上させ得る。なお、このような虚像VI2は円環状に限定されず、矢印の形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、第1のタイミングが、交差点CSから車両1までの距離が100m以下となり、かつ、第1のタイミングにおける交差点CSから他車両2までの距離が100m以下となるタイミングである場合を説明したが、これは必須ではない。この第1のタイミングは、交差点における安全性を向上させる観点から適宜変更することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、制御部20が、第2のタイミングが変化しない場合において、交差点CSから車両1までの距離が27.5m以上30m以下であるタイミングを第2のタイミングとして、画像投影部12に第2画像PI2を投影させる例を説明したが、これは必須ではない。第2のタイミングが変化しない場合における交差点CSから車両1までの距離は、交差点における安全性を向上させる観点から適宜変更することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、制御部20が、他車両2の位置を予想して、予想された他車両2の位置と重なる領域に虚像VI2が重畳して表示されるように、画像投影部12に第2画像PI2を投影させる例を説明した。しかし、他車両2を示す虚像VI2が実景に重畳表示されるのであれば、虚像VI2が他車両2の存在する領域に重畳表示される必要はない。ただし、虚像VI2が交差点CSを基準として他車両2側の領域の実景に重畳表示されることによって、車両1の運転者は、例えば他車両2を遮蔽物3によって視認できない場合でも他車両2の位置を凡そ把握することができる。そのため、安全性がより向上し得る。また、本実施形態のように虚像VI2が他車両2の存在する領域に重畳表示されることによって、車両1の運転者は他車両2の位置をより正確に認識することができる。よって、安全性がさらに向上し得る。
【0089】
また、上記実施形態では、ステップSP5において、制御部20が車両1の速度、車両1が走行する道路MRの下り勾配、及び車両1が走行する道路MRにおける降水量に基づいて第2のタイミングを早める例を説明した。しかし、制御部20は、これら3つの基準のうち1つ又は2つに基づいて第2のタイミングを早めてもよい。また、制御部20が第2のタイミングを早める基準は上記3つの基準に限定されず、車両1の走行状態が車両1の停止距離が増加するような状態であればよく、この場合、第2のタイミングを車両1の停止距離が増加しない状態に比べて早めてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、制御部20が、車両1の走行する道路MRの状態に応じて第2のタイミングを早める例を説明した。しかし、上記ステップSP5を省略して第2の範囲を初期範囲のままとして、第2のタイミングを変化させないようにしてもよい。この場合、ステップSP5が省略されるため、制御ステップが簡易になり制御負荷を低減することができる。
【0091】
また、高速道路のような高速走行を前提とする道路を走行中に虚像VI1,VI2が表示されると、車両1の運転者が煩わしさを感じる場合がある。このため、高速走行を前提とする道路を走行していると予測できる例えば70km/h以上の速度で車両1が走行している場合、或いは、高速走行を前提とする道路と予測できる例えば8m以上の道幅の道路MRを車両1が走行している場合、制御部20は、画像投影部12を動作させないようにしてもよい。
【0092】
また、上記第1のタイミングにおいて、所定の交差点から自車両までの距離と、所定の交差点から他車両までの距離とが相違してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、第1のタイミングが車両1及び他車両2の双方が所定の交差点CSに所定の距離まで接近したタイミングであり、第2のタイミングが車両1及び他車両2の双方が第1のタイミングよりもさらに所定の交差点CSに接近したタイミングである例を説明した。しかし、第1のタイミング及び第2のタイミングのそれぞれは、少なくとも車両1が所定の交差点CSに所定の距離まで接近したタイミングであればよい。車両1から所定の交差点CSまでの距離のみに応じて、第1のタイミング及び第2のタイミングの少なくとも一方を設定する場合、虚像VI1や虚像VI2を表示する際に他車両2の位置を算出する必要がなく、制御負荷を低減し得る。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、交差点における安全性を向上させ得るヘッドアップディスプレイ装置が提供され、例えば自動車などの分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1・・・車両(自車両)
1F・・・ウインドシールド(投影領域)
2・・・他車両
3・・・遮蔽物
10・・・ヘッドアップディスプレイ装置
11・・・制御ユニット
20・・・制御部
CS・・・交差点
PI1・・・第1画像
PI2・・・第2画像
VI1・・・第1画像の虚像
VI2・・・第2画像の虚像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8