(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184930
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ジフルオロメタン及びフッ素置換オレフィンを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C09K5/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144441
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2020178780の分割
【原出願日】2009-07-30
(31)【優先権主張番号】61/084,997
(32)【優先日】2008-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/099,382
(32)【優先日】2008-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】12/511,954
(32)【優先日】2009-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ハルス
(72)【発明者】
【氏名】ラジヴ・ラトナ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェラード・リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ラジャト・エス・バス
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ティー・ファム
(72)【発明者】
【氏名】イアン・シャンクランド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】塩素を含有する冷媒を、ハイドロフルオロカーボン(HFC)のような、オゾン層を破壊しない非塩素含有冷媒化合物と置き換えた塩素含有冷却系を提供する。
【解決手段】(a)ジフルオロメタン(R-32)を含む第一の成分;(b)多フッ素化されたC2~C5のオレフィンから選択される第二の成分;及び(c)場合により、フッ素化されたC2~C3のアルカン、CF3I、及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種の第三の成分を含む熱伝達組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ジフルオロメタン(R-32)を含む第一の成分;
(b)多フッ素化されたC2~C5のオレフィンから選択される第二の成分;及び
(c)場合により、フッ素化されたC2~C3のアルカン、CF3I、及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種の第三の成分
を含む熱伝達組成物
【請求項2】
前記第二の成分が、少なくとも1種の四フッ素化又は五フッ素化されたC3~C5のオレフィンを含む、請求項1記載の熱伝達組成物。
【請求項3】
前記第二の成分が、-CF3末端基とフッ素置換基が1つ以下である不飽和末端炭素とを有する、少なくとも1種の四フッ素化又は五フッ素化されたC3~C5のオレフィンを含む、請求項1記載の熱伝達組成物。
【請求項4】
-CF3末端基とフッ素置換基が1つ以下である不飽和末端炭素とを有する、少なくとも1種の四フッ素化又は五フッ素化されたC3~C5の前記オレフィンが、1,1,1,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を含む、請求項3記載の熱伝達組成物。
【請求項5】
-CF3末端基とフッ素置換基が1つ以下である不飽和末端炭素とを有する、少なくとも1種の四フッ素化又は五フッ素化されたC3~C5の前記オレフィンが、トランス-1,1,1,3-テトラフルオロプロペン(トランスHFO-1234ze)を含む、請求項4記載の熱伝達組成物。
【請求項6】
前記組成物が、それぞれ該組成物中のトランスHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に対して測定して、約3~約98重量%のHFC-32と約2~約97重量%のトランスHFO-1234zeとを含む、請求項5記載の熱伝達組成物。
【請求項7】
前記組成物が、それぞれ該組成物中のトランスHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に対して測定して、約45~約55重量%のHFC-32と約45~約55重量%のトランスHFO-1234zeとを含む、請求項5記載の熱伝達組成物。
【請求項8】
前記組成物が、それぞれ該組成物中のトランスHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に対して測定して、約70~約95重量%のHFC-32と約5~約30重量%のトランスHFO-1234zeとを含む、請求項5記載の熱伝達組成物。
【請求項9】
前記組成物が、それぞれ該組成物中のトランスHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に対して測定して、約3~約20重量%のHFC-32と約80~約97重量%のトランスHFO-1234zeとを含む、請求項5記載の熱伝達組成物。
【請求項10】
前記第二の成分が、-CF3末端基とフッ素置換基が1つ以下である不飽和末端炭素とを有する、少なくとも1種の四フッ素化又は五フッ素化されたC3~C5のオレフィンが、1,1,1,2-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含む、請求項3記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、それぞれ該組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に対して測定して、約10~約90重量%のHFC-32と約10~約90重量%のHFO-1234yfとを含む、請求項10記載の熱伝達組成物。
【請求項12】
前記組成物が、それぞれ該組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に対して測定して、約20~約40重量%のHFC-32と約60~約80重量%のHFO-1234yfとを含む、請求項11記載の熱伝達組成物。
【請求項13】
前記組成物が、それぞれ該組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に対して測定して、約70~約90重量%のHFC-32と約10~約30重量%のHFO-1234yfとを含む、請求項11記載の熱伝達組成物。
【請求項14】
前記組成物が、それぞれ該組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に対して測定して、約3重量%未満のHFC-32と約95~約99.5重量%のHFO-1234yfとを含む、請求項11記載の熱伝達組成物。
【請求項15】
前記第三の成分が存在し、フッ素化されたエタン、フッ素化されたアルケン、及びこれらのうち2種又はそれより多い種の組合せからなる群から選択される、請求項11記載の熱伝達組成物。
【請求項16】
前記第一の成分、前記第二の成分、及び、存在する場合は前記第三の成分が、R-22、R-404A、R-407C、R-410A、又はR-507のうち少なくとも1種、及びこれらの2種又はそれより多い種の組合せの低温用途における容量より実質的に低くない容量をもつ熱伝達組成物を提供するのに有効な量で存在する、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記第一の成分、前記第二の成分、及び、存在する場合は前記第三の成分が、R-22、R-134a、R-404A、R-407C、R-410A、又はR-507のうち少なくとも1種、及びこれらの2種又はそれより多い種の組合せの低温用途における容量より実質的に低くない容量をもつ熱伝達組成物を提供するのに有効な量で存在する、請求項1記載の熱伝達組成物。
【請求項18】
流体又は物質に、あるいは流体又は物質から、熱を伝達する方法であって、請求項1記載の組成物において相変化を引き起こし、前記相変化の間に前記流体又は物質と熱を交換することを含む、前記方法。
【請求項19】
請求項1記載の組成物を含む冷凍系であって、自動車用空調系、住宅用空調系、商業用空調系、住宅用冷却系、住宅用冷凍系、商業用冷却系、商業用冷凍系、チラー空調系、チラー冷却系、ヒートポンプ系、及びこれらのうち2種又はそれより多い種の組合せからなる群から選択される前記系。
【請求項20】
現行の熱伝達系において使用するための組成物を選択する方法であって、
a)該現行の熱伝達系において使用される流体の容量の概算を可能とするのに充分なやり方で該現行の熱伝達系を分析し;
b)2種又はそれより多い種の熱伝達組成物であって、
(i)ジフルオロメタン(HFC-32)を含む第一の成分;
(ii)多フッ素化されたC2~C5のオレフィンからなる群から選択される第二の成分;及び
(iii)場合により、フッ素化されたC2~C3のアルカン、CF3I、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の第三の成分
を含む前記熱伝達組成物の容量を概算し;そして、
c)前記現行の熱伝達系において使用するための前記2種又はそれより多い種の熱伝達組成物のうち少なくとも1種を選択すること
を含む前記方法。
【請求項21】
(a)少なくとも1種の式I:
【化1】
(式中、各々のRは、独立して、Cl、F、Br、I、又はHであり、R’は(CR
2)
nYであり、YはCRF
2であり、nは0又は1である)
のフルオロアルケン;及び
(b)ジフルオロメタン(HFC-32)
を含む、熱伝達組成物。
【請求項22】
約1000以下の地球温暖化係数を有する、請求項21記載の熱伝達組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1種のフルオロアルケンが、少なくとも1種のテトラフルオロプロペン(HFO-1234)を含む、請求項21記載の熱伝達組成物。
【請求項24】
請求項21記載の熱伝達組成物を含む熱伝達流体であって、前記組成物が、少なくとも70重量%の式Iにしたがった化合物と少なくとも約5流量%のHFC-32とを含む前記流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年7月6日付けで出願された11/773959の優先権の利益を請求する2008年7月3日付けで出願された国際出願番号PCT/US2008/069139に関連し(一部継続出願として)、またその優先権の利益を請求する。本出願は、また、2005年6月24日付で出願された仮出願60/693853の優先権の利益を請求し、かつ、それぞれ2003年10月27日付で出願された以下の通常の米国出願:10/694,273;10/695,212;10/694,272のそれぞれに一部継続出願として関連する、2006年6月26日付で出願された同時係属する米国出願11/475605に関連し(一部継続出願として)、それに基づく優先権の利益を請求する。本出願は、また、以下の米国出願:2003年10月23日付で出願され現在放棄されている10/695,212の利益を請求する、2006年3月20日付で出願され現在係属する11/385,259;及び、2003年10月27日付で出願され係属する10/694,272の優先権の利益を請求する、2006年6月4日付で出願され係属する11/757782にも関連し、その優先権の利益を請求する。本出願は、また、以下の米国仮出願:2008年9月23日付で出願された61/099,382及び2008年7月30日付で出願された61/084,997にも関連し、その優先権の利益を請求する。本段落において特定した出願はそれぞれ、以下に完全に示すかのように、参照することにより本明細書中に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、特に、冷媒系などの熱移動系を含む、数多くの用途において有用性を有する組成物、方法、及び系に関する。好ましい側面において、本発明は、ジフルオロメタンと少なくとも1つの多フッ素化されたオレフィン及び/又は少なくとも1つのフルオロヨードカーボンとを含む冷媒組成物、また、かかる組成物の固定式冷却・空調装置における好ましい使用に向けられている。
【背景技術】
【0003】
フルオロカーボンをベースとする流体は、エアロゾル推進剤、発泡剤、及び気体誘電体などの他の使用の中で、空調系、ヒートポンプ系、冷却系などの複数の系における作動流体を含む、多くの商業的用途及び産業的用途において広く使用されてきた。
【0004】
熱移動流体は、商業的に有望であるが、一定の非常に具体的で、特定の場合においては非常に厳しい、物理的特性、化学的特性、及び経済的特性の組み合わせを満たさなければならない。そのうえ、熱移動系や熱移動装置は多くの異なるタイプが存在し、多くの場合、そのような系において使用される熱移動流体は個々の系の必要性に適合する特定の組み合わせの特性を持ち合わせる必要がある。例えば、蒸気圧縮サイクルに基づく系は、通常、比較的低い圧力での熱吸収により冷媒の液体から蒸気相への相変化を伴い、蒸気を比較的高い圧力まで圧縮し、この比較的高い圧力、温度での熱除去により蒸気を液相へと凝縮し、そして圧力を下げてサイクルを再び開始する。
【0005】
例えば、一定のフルオロカーボンは、多くの用途において何年にもわたって、冷媒などの多くの熱交換流体における好ましい成分である。クロロフルオロメタンやクロロフルオロエタンなどのフルオロアルカンは、熱容量、可燃性、操作条件下における安定性、及び系において使用する潤滑剤(存在する場合は)との混和性などの、化学的特性と物理的特性のその独特の組み合わせのために、空調用途やヒートポンプ用途を含む複数の用途において、冷媒として広く使用されるようになっている。そのうえ、蒸気圧縮系において一般
に利用されている冷媒の多くは、単一成分の流体か、非共沸(zeotropic)混合物か、共
沸混合物のいずれかである。
【0006】
近年では地球の大気と気候に対する潜在的なダメージについて懸念が高まっており、塩素をベースとする一定の化合物は、この点に関して特に問題があるとして特定されている。塩素を含有する組成物(クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)など)の空調系や冷却系における冷媒としての使用は、そのような化合物のうち多くのものと関係するオゾン破壊の可能性のために、嫌われるようになってきている。したがって、冷却用途やヒートポンプ用途のための代替物を提供する新規なフルオロカーボン化合物及びハイドロフルオロカーボン化合物に対する必要性が高くなってきている。例えば、塩素を含有する冷媒を、ハイドロフルオロカーボン(HFC)のような、オゾン層を破壊しない非塩素含有冷媒化合物と置き換えることにより、塩素含有冷却系を更新することが望ましくなっている。
【0007】
多くの現行の冷媒を取り巻く別の懸念は、そのような多くの製品が地球温暖化の原因となる傾向があることである。この特徴は、一般に、地球温暖化係数(GWP)として測られる。化合物のGWPは、既知の参照分子、すなわちGWP=1であるCO2に対して当該化学物質の温室効果への潜在的な寄与の指標である。例えば、以下の既知の冷媒は以下の地球温暖化係数を有する。
【0008】
【0009】
上述の冷媒は各々多くの点において有効であることが証明されているが、これらの材料は、約1000より大きいGWPを有する材料を使用することはしばしば望ましくないことから、あまり好まれないようになってきている。したがって、望ましくないGWPを有するこれら又は他の現行の冷媒の代用品に対する必要性が存在する。
【0010】
これら又は他の用途においてこれまでに使用された組成物に対する魅力的な代替物である、新規なフルオロカーボン及びハイドロフルオロカーボン化合物及び組成物に対する必要性がこのように増加している。例えば、現行の冷媒を、オゾン層を破壊せず、不必要なレベルの地球温暖化の原因とならず、同時に、熱移動媒体として使用される材料についてかかる系の他の厳しい要求をすべて満たす冷媒組成物により置き換えることにより、塩素を含有する冷媒系や一定のHFCを含有する冷媒系を含む、一定の系を更新することが望ましくなっている。
【0011】
性能特性に関して、潜在的な冷媒代用品は、とりわけ、すぐれた熱移動特性、化学的安定性、低毒性又は無毒性、低可燃性又は非可燃性、及び潤滑剤との適合性などの、最も広く使用される流体のうちの多くのものに存在するような特性をももっていなければならないことを本出願人らは認識している。
【0012】
使用の際の効率性に関しては、冷媒の熱力学的性能又はエネルギー効率のロスが、電気的エネルギーに対する高い需要から生ずる増大した化石燃料の使用を通じて、二次的に環境に影響を与え得ることに注目することが重要である。
【0013】
更に、一般的には、冷媒の代用品は、CFC含有冷媒などの現行冷媒に関して現在使用されている慣用的な蒸気圧縮技術に対して大きな工業技術の変化を与えることなく、有効であることが望ましいと考えられる。
【0014】
出願人らは、こうして、蒸気圧縮加熱・冷却系及び方法を含む数多くの用途において潜在的に有用であると同時にこれまでに説明した不利益のひとつ又はそれより多くを回避する組成物、特に熱移動組成物に対する必要性を認識するに至った。
【0015】
出願人らは、また、潤滑剤との適合性が多くの用途において特に重要であることを認識するに至った。より特定的には、冷凍流体は、殆どの冷凍系において使用される圧縮機ユニットで利用される潤滑剤に対して適合性があることが高度に望ましい。残念ながら、HFCを含む多くの塩素非含有冷凍流体は、例えば、鉱油、アルキルベンゼン、又はポリ(アルファ-オレフィン)を含む、伝統的にCFC及びHFCとともに使用されたタイプの潤滑剤において、比較的不溶性及び/又は非混和性である。冷凍流体-潤滑剤の組み合わせが圧縮冷凍、空調及び/又はヒートポンプ系において所望のレベルの効率で働くためには、潤滑剤は広い範囲の運転温度にわたって充分に冷凍液に溶解性であるべきである。かかる溶解性が潤滑剤の粘度を低下させ、潤滑剤が系全体をより容易に流れることが可能となる。かかる溶解性がなければ、潤滑剤は、冷凍、空調、又はヒートポンプ系の蒸発器のコイル、ならびにこれらの系の他の部分にとどまる傾向があり、これにより系の性能が低下する。
【0016】
可燃性は、多くの用途に関する別の重要な特性である。すなわち、非可燃性又は比較的低い可燃性である組成物を使用することは、特に熱移動用途を含む多くの用途において重要である、又は本質的であると考えられている。本明細書中で使用するように、「非可燃性」という用語は、参照に本明細書中に援用する2002年付けのASTM標準E-681にしたがって測定して非可燃性である化合物又は組成物を言う。残念ながら、冷媒組成物において使用することが望ましい多くのHFCは非可燃性ではない。例えば、フルオロアルカンジフルオロエタン(HFC-152a)及びフルオロアルケンである1,1,1-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)はそれぞれ可燃性であり、このために多くの用途において単独で使用することはできない。
【0017】
高級フルオロアルケン、すなわち、少なくとも5個の炭素原子を有するフッ素置換アルケンは、冷媒としての使用が提案されている。Smutnyへの米国特許第4,788,352号は、少なくともいくらかの不飽和度を有するフッ素化されたC5-C8化合物の生成に向けられている。Smutny特許は、そのような高級オレフィンは、冷媒、殺虫剤、誘電流体、熱移動流体、溶媒、及び種々の化学反応における中間体として有用性を有することが知れられていると識別している。(カラム1、11-22行参照。)
Smutnyに記載されたフッ素化されたオレフィンは、熱移動用途においていくらかのレベルの有効性を有し得るが、そのような化合物は同時に一定の不都合も有し得ると考えられる。例えば、これらの化合物のうちいくつかのものは、基板、特にアクリル樹脂やABS樹脂などの汎用プラスチックを攻撃する傾向がある。そのうえ、Smutnyに記載される高級オレフィン化合物はまた、Smutnyにおいて注目されている殺虫剤活性の結果として生じ得る、かかる化合物の潜在的なレベルの毒性のために、一定の用途において望ましくない場合がある。また、かかる化合物は、一定の用途においてそれら化合物を冷媒として有用なものとするには高すぎる沸点を有し得る。
【発明の概要】
【0018】
本発明の一側面に従って、本発明者は、ジフルオロメタン(R-32)と、C2-C5の多フッ素化されたオレフィンから選択される少なくとも一種の第二成分、好ましくは少なくとも一種のC3-C5の四-フッ素化又は五-フッ素化されたオレフィン、更により好ましくは少なくとも一種のテトラフルオロプロペン、とを含み、一定の好ましい態様においてはこれらから本質的になる組成物、好ましくは熱移動組成物、更により好ましくは熱移動組成物及び系より、これまでに注目した必要性のうち一又はそれより多く、または潜在的に他の必要性を満足できることを見出した。本発明のこの側面の非常に好ましい態様においては、少なくとも一種のC3-C5の多フッ素化されたオレフィンは、-CF3末端基を有する一又はそれより多い化合物と一以下のフッ素置換基を有する不飽和末端炭素とを含み、一定の態様においては、これらから本質的になる。非常に好ましい態様においては、本組成物は、ジフルオロメタン(R-32)と1,1,1,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze、すべての異性体を含む)及び/又は1,1,1,2-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及び/又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)とを含み、そして本方法はこれらを使用する。
【0019】
多フッ素化された化合物が少なくとも一つのBr置換基を有する本発明の態様に関しては、化合物が水素を含まないことが好ましい。そのような態様においては、また、一般的には、Br置換基が不飽和炭素上にあることが好ましく、更に、Br置換基は非末端不飽和炭素上にあることがより好ましい。この分類のひとつの態様はCF3CBr=CF2であり、その異性体のすべてを含む。
【0020】
一定の態様において、本組成物は、少なくとも、フッ素化されたC2-C3のアルカン、CF3I、及びこれらの組み合わせから選択される第三成分を更に含む。本明細書中で使用するように、「フッ素化されたC2-C3のアルカン」という用語は、2個又は3個の炭素原子と少なくともひとつのフッ素置換基とを有するアルカンを意味する。本発明のこの側面の一定の好ましい態様において、第二成分及び/又は第三成分は、可燃性低減剤として作用する。本明細書中で使用するように、「可燃性低減剤」という用語は、時フルオロメタン単独の可燃性に対して当該組成物の可燃性を低減する正味の効果を有する化合物又は複数の化合物の組み合わせを言う。一定の好ましい態様において、第三成分は、フッ素化されたエタン類からなる群から選択される。
【0021】
「HFO-1234」という用語は、すべてのテトラフルオロプロペン類を言うために本明細書中において使用する。テトラフルオロプロペン類の中には、1,1,1,2-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)と、cis-及びtrans-1,1,1,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)の両方とが含まれる。「HFO-1234ze」という用語は、一般的に、それがcis-又はtrans-のいずれの形態であるかは別として、1,1,1,3-テトラフルオロプロペンを言うために本明細書中において使用する。「cisHFO-1234ze」「transHFO-1234ze」という用語は、それぞれ、1,1,1,3-テトラフルオロプロペンのcis-形態及びtrans-形態を言うために本明細書中において使用する。したがって、「HFO-1234ze」という用語には、その範囲内にcisHFO-1234ze、transHFO-1234ze、及びこれらのすべての組み合わせと混合物が含まれる。
【0022】
本発明は、また、熱を移動するための方法及び系を含む本発明の組成物を利用する方法及び系と、現行の熱移動系において現行の熱移動流体を置き換えるための方法及び系と、本発明にしたがって熱移動流体を選択して現行の一又はそれより多い熱移動流体を置き換える方法とを提供する。好ましい態様において、熱移動流体の代用品を選択するための方
法及び系は、現行の熱移動系における以下の熱移動流体:R-22、R-134a、R-404A、R-407C、R-410A、R-507、及びこれらの任意の二種又はそれより多い組み合わせ:のうちひとつ又はそれより多くを置き換えることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図2】
図2は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図3】
図3は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図4】
図4は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図5】
図5は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図6】
図6は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図7】
図7は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図8】
図8は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図9】
図9は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図10】
図10は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図11】
図11は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【
図12】
図12は、三元組成曲線であり、また、本明細書の実施例に説明する、その能力が既知の冷媒に実質的に匹敵する各成分の種々の濃度における本発明の一定の好ましい組成物について二元組成も示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
組成物
本発明の一定の態様の利益のひとつは、格別の可燃性特性を有しながら他の重要な特性を所望の範囲内に維持する組成物を提供することである。出願人は、R-32及びHFO-1234yfの両方が室温において適度な可燃限界(flame limit)を有することを認
識するに至った。しかし、出願人は、本組成物中の化合物の燃焼の危険は、都合のよいことに、R-152aなどの他のHFC及びR-290などの他のHCに匹敵することに注目している。これらの材料の可燃性を位置付けるひとつのやり方は、各化合物の燃焼速度
を測定することである。R-32、R-152a、及びR-290の最大燃焼速度は、それぞれ、6.7、23.0、及び38.5cm/sと報告されている(Jabbour)。HF
O-1234yfの燃焼速度は、1.5cm/sと測定されている。燃焼速度の測定は、室温で測定するように設計されている。HFO-1234ze(E)は室温で非可燃性であるから、燃焼速度を直接、他の値と比較することはできないが、HFO-1234ze(E)の燃焼速度はHFO-1234yfの燃焼速度より低いと予測するのが妥当である。これは、R-32及びHFO-1234ze及び/又はHFO-1234yfのすべての混合物が6.7cm/sより低い燃焼速度を有することを意味するであろう。異なる材料と比較する際、第一の材料が第二の材料より低い燃焼速度を有する場合は、第一の材料は、第二の材料と比較して安定した火炎伝搬の可能性が低いということになる。
【0025】
好ましい態様において、本発明の組成物の少なくとも一種の多フッ素化されたオレフィン化合物は、以下の式Iの化合物を含む:
【0026】
【0027】
式中、各々のRは独立してCl、F、Br、I、又はHであり、
R’は(CR2)nYであり、
YはCRF2であり、
そして、nは0、1、2、又は3であるが、化合物中にBrが存在する場合は当該化合物中に水素が存在しないことが一般に好ましい。一定の態様においては、Brは化合物中に存在しない。
【0028】
非常に好ましい態様において、YはCF3であり、nは0又は1であり(最も好ましくは0)、R’中のRを含む残りのRのうち少なくともひとつがFであり、好ましくはRはBrではなく、又はBrが存在する場合は、化合物中には水素が存在しない。
【0029】
出願人は、一般に、上述の式Iの化合物は熱移動組成物一般、特に冷媒組成物において、一般的に有効であり、有用性を示すと考える。また、本発明の組成物は、発泡剤組成物、相溶化剤(compatibilizer)、エアロゾル、推進剤、芳香剤、香味配合物、溶媒組成物、膨張剤組成物としての使用も見出されている。しかし、出願人は、驚くべきことに、また予想外に、上述の式にしたがった構造を有する一定の化合物が、他のそのような化合物と比較して非常に望ましい低いレベルの毒性を示すことを見出した。容易に認識できるように、この発見には、冷媒組成物だけでなく、上述の式を満たす比較的毒性のある化合物を含有する任意のすべての組成物をも形成することに関して、潜在的に数多くの利点と利益がある。より特定的には、出願人は、比較的低い毒性レベルの化合物は式IIの化合物、好ましくは、式中、YがCF3であり、nが0又は1であり、不飽和末端炭素上の少なくともひとつのR及び残りのRのうち少なくともひとつがF又はClであるものと関係していると考える。また、出願人は、そのような化合物のすべての構造異性体、幾何異性体、及び光学異性体が有効であり、有利なことに低毒性であると考える。
【0030】
一定の好ましい態様において、本発明の多フッ素化された化合物は、C3又はC4のハイドロフルオロクロロオレフィン(HCFO)、好ましくはC3のHCFO、より好ましくは式Iにしたがった化合物で、式中、YがCF3であり、nが0であり、不飽和末端炭素上の少なくともひとつのRがHであり、残りのRのうち少なくともひとつがClであるものを含む。HCFO-1233はそのような好ましい化合物の一例である。
【0031】
非常に好ましい態様において、特に、上述の低毒性の化合物を含む態様において、nはゼロである。一定の非常に好ましい態様において、本発明の組成物は、HFO-1234yf、(cis)HFO-1234ze、(trans)HFO-1234ze、及びこれらのうち二種又はそれより多くの組み合わせを含む、一種又はそれより多いテトラフルオロプロペンを含む。(cis)HFO-1234ze及び(trans)HFO-1234zeの諸特性は少なくともいくつかの点において異なるが、これらの化合物は各々、本明細書中に説明する用途、方法、及び系の各々に関して単独で又はその光学異性体を含む他の化合物と一緒に使用するために適合可能であると考えられる。例えば、(trans)HFO-1234zeは、その比較的低い沸点(-19℃)のために一定の系において使用するのに好ましいが、(cis)HFO-1234zeは+9℃の沸点を有し、他の用途において使用するのに好ましい。cis-異性体及びtrans-異性体の組み合わせが多くの態様において許容可能であり、及び/又は好ましい場合があることはもちろんのことである。したがって、「HFO-1234ze」及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペンという用語は、光学異性体のいずれか又は両方を言うもので、別に示さない限り、この用語を使用することにより、cis-形態及びtrans-形態の各々を述べられた目的のために適用すること、及び/又は、cis-形態及びtrans-形態の各々が述べられた目的のために有用であると意図していることは理解すべきである。
【0032】
HFO-1234化合物は既知の材料であり、ケミカル・アブストラクツのデータベースにリストされている。種々の飽和又は不飽和のハロゲン含有C3化合物を触媒により気
相でフッ素化することによりCF3CH=CH2などのフルオロプロペンを製造することが、各々を参照により本明細書中に援用する米国特許第2,889,379号;第4,798,818号;及び第4,465,786号に記載されている。また、参照により本明細書中に援用するEP974,571は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(H
FC-245fa)を、気相でクロムを基材とする触媒と高温にて接触させることにより、又は液相でKOH、NaOH、Ca(OH)2、又はMg(OH)2のアルコール溶液と接触させることにより、1,1,1,3-テトラフルオロプロペンを調製することを開示している。加えて、本発明にしたがった化合物を製造するための方法は、一般には、代理人ドケット番号(H0003789(26267))の「フルオロプロペン類を製造するための方法」と題する係属する米国特許出願に記載されており、これもまた参照により本明細書中に援用する。
【0033】
本発明にしたがって使用するための他の好ましい化合物としては、そのすべての異性体(例えば、HFO-1225)を含むペンタフルオロプロペン、及びそのすべての異性体(例えば、HFO-1354及びHFO-1345)を含むテトラ-及びペンタ-フルオロブテンが挙げられる。本発明の組成物は、本発明の広い範囲内にある、又は本発明の任意の好ましい範囲内にある、任意の二種又はそれより多い化合物の組み合わせを含んでもよいことはもちろんのことである。
【0034】
本組成物、特にHFO-1234(HFO-1234ze及びHFO-1234yfを含む)を含むものは、数多くの重要な理由から有利な特性を持つと考えられる。例えば、出願人は、少なくとも部分的に数学的モデルに基づいて、本発明のフルオロオレフィンは、大気の化学に実質的な悪影響を与えることがなく、オゾン層破壊の一因としては一部の他のハロゲン化された種と比較して無視できるほどであると考える。このため、本発明の好ましい組成物は、実質的にオゾン層破壊の一因とはならないという利点を有する。また、好ましい組成物は、現在使用されているハイドロフルオロアルカンの多くと比較して、地球温暖化に実質的に寄与しない。
【0035】
組成物の特定の性質(例えば、費用など)を調節する他の化合物及び/又は成分もまた
本発明の組成物に含めてもよく、そのような化合物及び成分はすべて本発明の広い範囲に含まれる。
【0036】
一定の好ましい態様において、本発明の組成物は、約1000以下、より好ましくは約500以下、更により好ましくは約150以下の地球温暖化係数(GWP)を有する。一定の態様において、本組成物のGWPは、約100以下であり、更により好ましくは約75以下である。本明細書中で使用するように、「GWP」は、参照により本明細書中に援用する「The Scientific Assessment of Ozone Depletion, 2002, a report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project」に定義するように、二酸化炭素ものに対して、100年の期間にわたって測定する。
【0037】
一定の好ましい形態において、本発明の組成物は、また、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.02以下、更により好ましくは約ゼロのオゾン層破壊係数(ODP)を有する。本明細書中で使用するように「ODP」は、参照により本明細書に援用する「The Scientific Assessment of Ozone Depletion, 2002, A report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project」に定義するとおりである。
【0038】
本組成物中に含有される多フッ素化されたオレフィン、特定的には式Iの化合物、及び更により特定的にはHF-1234yf化合物の量は、特定の用途に依存して広く変動することができ、痕跡量より多く100%未満までの化合物を含む組成物が本発明の広い範囲の範囲内にある。そのうえ、本発明の組成物は、共沸性、共沸様、又は非共沸性であることができる。好ましい態様において、本組成物は、式Iの化合物、好ましくはHFO-1234、より好ましくはHFO-1234ze及び/又はHFO-1234yfを、約5重量%~約99重量%の量、更により好ましくは約5重量%~約95重量%の量含む。組成物の特定の性質(例えば、費用など)を調節する、潤滑剤、安定剤、金属不動態化剤緒、腐食抑制剤、燃焼抑制剤、及び、他の化合物及び/又は成分を含む、多くの追加の化合物又は成分を本組成物中に含めてもよく、すべてのそのような化合物及び成分の存在は本発明の広い範囲内にある。
【0039】
存在するHFC-32の量は本発明の広い範囲内において広く変動してもよいと考えられている。好ましい態様において、組成物中に存在するHFC-32の量は、流体の所望の熱移動容量に基づいて、典型的には流体を使用する、又は流体が存在する系に基づいて、選択される。当初、R-22、R-134a、R-404A、R-407C、R-410A、R-507(以下、限定するものではないが、簡便性の目的のために「現行の冷媒群」と言う)の二種又はそれより多くに関して使用するために設計された系において当該組成物を使用する、又は使用することを意図する態様について、ジフルオロメタンは、好ましくは約1重量%~約95重量%、より好ましくは約1重量%~約80重量%、更により好ましくは約3重量%~約75重量%、更により好ましくは約5重量%~約70重量%の量で組成物中に存在する。
【0040】
一定の好ましい態様において、第一の成分は、更に、R-32に加えて、CO2を好ましくは組成物の約5重量%以下の量で含む。
本組成物の第二の成分は、また、本発明の広い範囲内で広く変動してもよい。好ましい態様において、特定的な第二の成分及びその組成物中の量は、当該組成物全体の燃焼性を低減できるということに基づいて選択される。現行の冷媒群において一種又はそれより多い冷媒に関して使用するために当初設計された系において、当該組成物を使用する、又は使用することを意図する態様について、第二の成分は、組成物の重量基準で好ましくは約5%~約99%の量で組成物中に存在する。他の好ましい態様において、第二の成分は、組成物の重量基準で約20~約95パーセントの量で存在する。
【0041】
第三成分を有する第二の側面にしたがった態様について、第三成分の量は、また、本発明の広い範囲内で変動してもよい。好ましい態様において、組成物中に存在する第三成分の量は、当該組成物の所望の熱移動特性、特定的にかつ好ましくは熱容量に基づいて選択され、そのような量はすべて本発明の範囲内に含まれる。一定の好ましい態様における本発明の第三成分は、当該組成物の重量基準で約1~約99パーセントの量で存在する。これまでに説明したように、第三成分は、存在する場合は、好ましくはフッ素化されたエタン、好ましくはモノフルオロエタン(HFC-161)、ジフルオロエタン(HFC-152a)、トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、及びパンタフルオロエタン(HFC-125)である。
【0042】
したがって、出願人は、本発明の一定の組成物は数多くの用途において大きな利点のために使用できることを認識した。例えば、本発明には、熱移動用途、起泡剤及び発泡剤用途、推進剤用途、噴霧可能な組成物の用途、滅菌用途、エアロゾル用途、相溶化剤用途、芳香剤及び香味の用途、溶媒用途、洗浄用途、膨張剤用途などに関する方法及び組成物が含まれる。当業者であれば、過度な実験をすることなく、本組成物を任意かつすべてのそのような態様において使用するために容易に適合させることができると考えられる。
【0043】
熱移動組成物
本発明の組成物は、一般的に、熱移動用途、すなわち、気化冷却剤を含む、加熱及び/又は冷却媒体として使用するために適合可能である。
【0044】
気化冷却用途に関して、本発明の組成物を直接か又は間接に冷却すべき物体と接触させ、その後、かかる接触の間に蒸発又は沸騰させ、本組成物にしたがった沸騰性気体が、冷却すべき物体から熱を吸収するという好ましい結果が得られる。そのような用途においては、冷却すべき物体に液体を噴霧するか、さもなければ施用することにより、本発明の組成物を好ましくは液体の形態で利用することが好ましい。他の気化冷却用途においては、本発明にしたがった液体組成物を比較的高い圧力容器から相対的により低い圧力環境へと逃がし、そこで、逃がした気体を回収したり再圧縮したりすることなく、冷却すべき物体を直接か又は間接に本発明の液体組成物を封入する容器と接触させることが好ましい。このタイプの態様についてのひとつの特定的な用途は、飲料、食料品、小物などの自己冷却(self cooling)である。本明細書中に説明する発明より前に、HFC-152a及びHFC-134aなどの従来の組成物はこのような用途に関して使用されていた。しかし、そのような組成物は、最近では、これらの材料を大気中に放出することにより生じる環境へのネガティブな影響のために、かかる用途においては否定的に見られている。例えば、米国EPAは、そのような従来の化学物質のこの用途における使用は、これらの化合物の地球温暖化性が高いことと、それらの使用から結果として生じ得る環境への有害な効果のために、許容できないものと決定している。本発明の組成物は、本明細書中に説明するように、これらの地球温暖化係数が低く、オゾン層破壊の可能性が低いために、この点に関して明確な利点を有する。加えて、本組成物は、製造の間か又は促進寿命試験の間での電気部品又は電子部品の冷却に関して、実質的な有用性が見出されると期待される。促進寿命試験においては、成分を逐次にすばやく連続して加熱及び冷却して、成分の使用をシミュレートする。したがって、そのような使用は半導体及びコンピューターボード製造産業において特に有利である。この点に関する本組成物の別の利点は、そのような用途に関して使用した場合に、伝染性の(contagious)電気的特性を示すと予期されることである。別の気化冷却用途は、導管を通る流体の流れを一時的に中断させるための方法を含む。好ましくは、そのような方法は、水が流れる水道管などの導管を本発明にしたがった液体組成物と接触させ、その中に含有される液体を凍結させるように本発明の液体組成物を導管と接触している間に蒸発させ、それにより一時的に導管を通る流体の流れを停止させることを含む。かかる方法は、本組成物を施用する位置より下流の位置において、かかる導管
又は導管に接続された系に対して点検又は他の作業を行うことを可能とするということに関して、明確な利点を有する。
【0045】
本発明の組成物は、本発明の化合物を広い範囲の量で含んでもよいと企図されているが、一般には、本発明の冷媒組成物は、式Iにしたがった化合物(単数又は複数)、更により好ましくはHFO-1234(HFO-1234ze及びHFO-1234yfを含む)を、当該組成物の少なくとも約50重量%、更により好ましくは少なくとも約70重量%の量で含むことが好ましい。一定の態様においては、本発明の熱移動組成物はtransHFO-1234zeを含むことが好ましい。一定の好ましい態様において、本発明の熱移動組成物は、少なくとも約80重量%、更により好ましくは少なくとも約90重量%のHFO-1234、更により好ましくはHFO-1234yf及び/又はHFO-1234zeを含むことが好ましい。本発明の熱移動組成物は、一定の態様において、cisHFO-1234ze及びtransHFO-1234zeの組み合わせを、好ましくは約1:99~約10:99、より好ましくは約1:99~約5:99、更により好ましくは約1:99~約3:97のcis:trans重量比で含む。
【0046】
本発明にしたがって使用するハイドロフルオロオレフィンの相対量は、好ましくは、必要な熱移動容量、特に冷凍容量を有し、好ましくは同時に非燃焼性である熱移動流体を生成するように選択される。本明細書中で使用するように、非燃焼性という用語は、ASTM E-681により測定して空気中ですべての比率で非燃焼性である流体を言う。
【0047】
本発明の組成物は、当該組成物に対して一定の機能を高め又は提供する目的のため、あるいは一部の場合において当該組成物の費用を低減する目的のために、他の成分を含んでもよい。例えば、本発明にしたがった冷媒組成物、特に蒸気圧縮系において使用されるものは、一般に当該組成物の約30~約50重量%の量で潤滑剤を含む。そのうえ、本組成物は、潤滑剤の相溶性及び/又は溶解性を補助する目的のために、共冷媒、又はプロパンなどの相溶化剤を含んでもよい。プロパン、ブタン、及びペンタンを含む、そのような相溶化剤は、好ましくは当該組成物の約0.5~約5重量%の量で存在する。また、参照により本明細書中に援用する米国特許第6,516,837号に開示されるように、界面活性剤及び可溶化剤の組み合わせを本組成物に添加して、油溶解性を補助してもよい。ポリオールエーテル(POE)及びポリアルケニルグリコール(PAG)、PAG油、シリコーン油、鉱油、アルキルベンゼン(AB)、及びポリ(アルファ-オレフィン)(PAO)などの広く使用される冷凍潤滑剤は、冷凍機においてハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒とともに使用されており、これらは本発明の冷媒組成物とともに使用することができる。商業的に入手可能な鉱油としては、WitcoからのWitco LP 250(登録商標)、Shrieve ChemicalからのZerol 300(登録商標)、WitcoからのSunisco 3GS、及びCalumetか
らのCalumet R015が挙げられる。商業的に入手可能なアルキルベンゼン潤滑剤としては、Zerol 150(登録商標)が挙げられる。商業的に入手可能なエステルとしては、Emery 2917(登録商標)として入手可能なネオペンチルグリコールジペラルゴネート、及びHatcol 2370(登録商標)が挙げられる。他の有用なエステルとしては、燐酸エステル、二塩基酸エステル、及びフルオロエステルが挙げられる。一部の場合において、炭化水素を基材とする油は、ヨードカーボンから構成される冷媒に関して充分な溶解性を有し、ヨードカーボンと炭化水素油の組み合わせは他のタイプの潤滑剤より安定である。したがって、そのような組み合わせは有利であり得る。好ましい潤滑剤としては、ポリアルキレングリコール及びエステルが挙げられる。ポリアルキレングリコールは、移動式空調などの特定の用途において現在使用されていることから、一定の態様において非常に好ましい。もちろん、異なるタイプの潤滑剤の異なる混合物を使用してもよい。
【0048】
一定の好ましい態様において、熱移動組成物は、約10重量%~約95重量%の式Iの化合物、より好ましくは一種又はそれより多いHFO-1234化合物と、約5重量%~
約90重量%のR-32とを含む。
【0049】
本方法、系、及び組成物は、一般に多種多様な熱移動系、特に空調(固定式空調系と移動式空調系の両方を含む)、冷凍、ヒートポンプ系などの冷凍系に関して使用するために適合可能である。一定の好ましい態様において、本発明の組成物は、固定式空調ユニットや、当初、R-22、R-134a、R-404A、R-407C、R-410A、R-507のうち一種又はそれより多くを使用するために設計された固定式冷凍機などの、固定式冷凍系において使用される。本発明の好ましい組成物は、これらの現行の冷媒について多くの望ましい特徴を示す傾向があり、現行冷媒と同じくらい低いか又はそれより低いGWP、そのような冷媒と同じくらい高いかそれより高い容量、そのような冷媒と実質的に同等であるか又は実質的に匹敵する、好ましくはそのような冷媒と同じくらい高いかまたはそれより高い容量を示す。特に、出願人は、本組成物の一定の好ましい態様は、好ましくは約1000未満、より好ましくは約500未満、更により好ましくは約150未満の比較的低い地球温暖化係数(GWP)を示す傾向があることを認識した。
【0050】
多くの現行の冷媒系は、現在のところ、現行冷媒に関して使用するために適合されており、本発明の組成物は、系の改変の有無に関わらず、そのような系のうち多くのものにおいて使用するために適合可能であると考えられる。
【0051】
一般には、本発明の好ましい熱移動組成物は、使用する温度と圧力の範囲の多くにわたって、潜在的にはそのすべてにわたって、非共沸性である。すなわち、かかる成分の混合物は、非低沸温度において液体を生成し、それゆえ、蒸発器及び凝縮器において「温度グライド」として知られるものをもたらす。「温度グライド」は、非共沸性材料が凝縮又は蒸発する際に起こる温度の変化である。このグライドは、置き換えられる冷媒組成物に最も効果的に匹敵する組成物を提供するために、好ましくは、本発明の方法及び組成物の側面に関して考慮される。単一の成分又は共沸混合物においては、温度グライドは0である。R-407Cは非共沸性混合物であり、典型的な用途においては5℃のグライドを有し、一定の好ましい態様において、本組成物は、実際の使用又は企図される使用の条件下で約5℃又はそれ未満の温度グライドをもたらす。
【0052】
また、本組成物は、本明細書中の他の場所で説明したように、エアロゾル、発泡剤などの他の用途において現在使用されている多くの組成物に対する代用品として適していると考えられる。
【0053】
本発明の組成物の特に好ましい態様を以下に説明する。
HFC-32/HFO-1234yfをベースとする組成物
本発明のひとつの好ましい態様において、本組成物は、主要な割合を構成し、好ましくは本質的にHFC-32からなり、更により好ましくはHFC-32からなる、第一の成分と、HFO-1234yfを含み、好ましくは本質的にHFO-1234yfからなり、更により好ましくはHFO-1234yfからなる、第二の成分とを含む。そのような態様においては、当該組成物中に存在するHFC-32の量は、HFC-32及びHFO-1234yfの全重量に基づいて、組成物の約10重量%~約90重量%、より好ましくは組成物の約20重量%~約90重量%、更により好ましくは組成物の約25重量%~約85重量%であることが一般的に好ましい。しかし、出願人は、一定の態様においては更にHFC-32が10重量%未満であることが好ましいということに注目している。例えば、組成物をHFC-134aの代用品としての使用のために意図されているか、又はその代用品として使用される態様について、HFC-32は、約5%未満、更により好ましくは約3%未満などの、比較的少量で組成物中に含まれる。実際、そのような一定のHFC-134a代用品態様においては、組成物中のHFC-32の量は、HFC-32及びHFO-1234yfの全重量に基づいて、約1%未満の量で含むことが望ましい。
【0054】
これまでに説明したように、そのような好ましい態様における組成物は、HFO-1234yfを含む第二の成分も含む。そのような一定の態様において、第二の成分は、HFO-1234yfを主要な割合で含み、好ましくは本質的にHFO-1234yfからなり、更により好ましくはHFO-1234yfからなる。組成物中に存在するHFO-1234yfの量は、好ましくは当該組成物の約10~約90重量%、より好ましくは当該組成物の約10~約80重量%、更により好ましくは当該組成物の約15~約75重量%である。
【0055】
本発明の一定の好ましい態様にしたがえば、特定的には、かつ好ましくは、組成物をR-404Aに対する代用品又は代替品として意図又は使用する態様について、組成物中に存在するHFO-1234yfの量は、組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に基づいて、約40~約80重量%、より好ましくは約50~約80重量%、更により好ましくは約60~約80重量%である。出願人は、この範囲内の組成物が、R-410A及びR-404Aを含む、多くの標準的な冷媒よりはるかに低い地球温暖化係数(GWP)を有し、同時に、特にR-410A及びR-404Aを含むこれまでに使用された冷媒と商業的に匹敵する性能パラメータを示す冷媒流体を提供することを見出した。そのような性能のひとつの指標は、95°F周囲でのAHRI「A」条件により提供される。かかる指標にしたがって、出願人は、驚くべきことに及び/又は有利なことに、組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に対して、約30~約50重量%のHFO-1234yfを含む本発明の組成物は、容量及び効率に関して許容可能な性能パラメータをなおも達成しながら、R-22などの冷媒の放出温度のパラメータにおいてすぐれた一致を提供できることを発見した。そのような態様について、組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に対して、約35~約45重量%のHFO-1234yf、更により好ましくは約40重量%のHFO-1234yfを含む組成物が特に好ましい。
【0056】
本発明の一定の好ましい態様にしたがえば、組成物中に存在するHFO-1234yfの量は、組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に基づいて、約10~約50重量%、より好ましくは約20~約40重量%、更により好ましくは約10~約30重量%である。出願人は、これらの範囲内の組成物が、R-404a及びR-410Aを含む、多くの標準的な冷媒よりはるかに低い地球温暖化係数(GWP)を有し、同時に、特にR-410A、R-404a、及びR-22を含むこれまでに使用された冷媒と商業的に匹敵する性能パラメータを示す冷媒流体を提供することを見出した。そのような性能のひとつの指標は、95°F周囲でのAHRI「A」条件により提供される。
【0057】
出願人は、驚くべきことに及び/又は有利なことに、組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に対して、約60~約80重量%のHFO-1234yfを含む本発明の組成物は、放出温度に関して許容可能な性能パラメータをなおも達成しながら、R-404aなどの冷媒に対して容量及び効率のパラメータにおいてすぐれた一致を提供できることを発見した。そのような態様について、組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に対して、約65~約85重量%のHFO-1234yf、更により好ましくは約70重量%のHFO-1234yfを含む組成物が、とりわけR-404aの代用品として使用するために、特に好ましい。
【0058】
出願人は、驚くべきことに及び/又は有利なことに、組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の全重量に対して、約10~約50重量%のHFO-1234yfを含む本発明の組成物は、放出に関して許容可能な性能パラメータをなおも達成しながら、R-410Aなどの冷媒に対して容量及び効率のパラメータにおいてすぐれた一致を提供できることを発見した。そのような態様について、組成物中のHFO-1234yf及びH
FC-32の全重量に対して、約20~約40重量%のHFO-1234yf、更により好ましくは約30重量%のHFO-1234yfを含む組成物が、特に好ましい。
【0059】
HFC-32/HFO-1234zeをベースとする組成物
本発明のひとつの好ましい態様において、本組成物は、主要な割合を構成し、好ましくは本質的にHFC-32からなり、更により好ましくはHFC-32からなる、第一の成分と、HFO-1234zeを含み、好ましくは本質的にHFO-1234zeからなり、更により好ましくはHFO-1234zeからなる、第二の成分とを含む。そのような態様においては、当該組成物中に存在するHFC-32の量は、組成物の約3重量%~約98重量%、より好ましくは組成物の約10重量%~約95重量%、更により好ましくは、一定の態様において、特に404a又は410Aの代用品として意図又は使用する態様において、組成物の約40重量%~約95重量%であることが一般的に好ましい。
【0060】
これまでに説明したように、そのような好ましい態様における組成物は、HFO-1234zeを含む第二の成分も含む。そのような一定の態様において、第二の成分は、HFO-1234ze、好ましくはtransHFO-1234zeを、主要な割合で含み、好ましくは本質的にHFO-1234ze、好ましくはtransHFO-1234zeからなり、更により好ましくはHFO-1234ze、好ましくはtransHFO-1234zeからなる。組成物中に存在するHFO-1234ze、好ましくはtransHFO-1234zeの量は、好ましくは当該組成物の約2~約97重量%、より好ましくは当該組成物の約5~約90重量%、更により好ましくは、一定の態様において、当該組成物の約5~約60重量%である。
【0061】
本発明の一定の好ましい態様にしたがえば、組成物中に存在するHFO-1234ze、好ましくはtransHFO-1234zeの量は、組成物中のHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に基づいて、約25~約85重量%である。出願人は、この範囲内の組成物が、R-410Aを含む、多くの標準的な冷媒よりはるかに低い地球温暖化係数(GWP)を有し、同時に、特にR-404A、R-410A、及びR-22を含むこれまでに使用された冷媒と商業的に匹敵する性能パラメータを示す冷媒流体を提供することを見出した。そのような性能のひとつの指標は、95°F周囲でのAHRI「A」条件により提供される。
【0062】
かかる指標にしたがって、出願人は、驚くべきことに及び/又は有利なことに、組成物中のHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に対して、約50~約70重量%のHFO-1234zeを含む本発明の組成物は、容量及び効率に関して許容可能な性能パラメータをなおも達成しながら、R-22などの冷媒の放出温度のパラメータにおいてすぐれた一致を提供できることを発見した。そのような態様について、組成物中のHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に対して、約35~約45重量%のHFO-1234ze、更により好ましくは約55重量%のHFO-1234zeを含む組成物が特に好ましい。
【0063】
本発明の一定の好ましい態様にしたがえば、組成物中に存在するHFO-1234zeの量は、組成物中のHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に基づいて、約5~約30重量%、より好ましくは約5~約20重量%、更により好ましくは一定の態様において約10重量%である。出願人は、これらの範囲内及び量の組成物が、R-410Aを含む、多くの標準的な冷媒よりはるかに低い地球温暖化係数(GWP)を有し、同時に、特にR-410A及びR-22を含むこれまでに使用された冷媒と商業的に匹敵する性能パラメータを示す冷媒流体を提供することを見出した。
【0064】
別の好ましい態様にしたがって、出願人は、驚くべきことに及び/又は有利なことに、
組成物中のHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に対して、約5~約30重量%のHFO-1234zeを含む本発明の組成物は、放出温度に関して許容可能な性能パラメータをなおも達成しながら、R-410Aなどの冷媒に対して容量及び効率のパラメータにおいてすぐれた一致を提供できることを発見した。そのような態様について、組成物中のHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に対して、約5~約25重量%のHFO-1234ze、更により好ましくは約10重量%のHFO-1234zeを含む組成物が、特に好ましい。
【0065】
特定的には、かつ好ましくは、組成物をR-404Aに対する代用品又は代替品として意図又は使用する態様を含む、本発明の一定の好ましい態様にしたがえば、組成物中に存在するHFO-1234zeの量は、組成物中のHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に基づいて、約40~約70重量%、より好ましくは約40~約60重量%、より好ましくは約45~約55重量%、更により好ましくは一定の態様において約50重量%である。出願人は、これらの範囲内及び量の組成物が、R-404Aを含む、多くの標準的な冷媒よりはるかに低い地球温暖化係数(GWP)を有し、同時に、特にR-404Aを含むこれまでに使用された冷媒と商業的に匹敵する性能パラメータを示す冷媒流体を提供することを見出した。そのような性能のひとつの指標は、95°F周囲でのAHRI「A」条件により提供される。かかる指標にしたがって、出願人は、驚くべきことに及び/又は有利なことに、組成物中のHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に対して、約40~約70重量%のHFO-1234zeを含む本発明の組成物は、放出温度に関して許容可能な性能パラメータをなおも達成しながら、R-404Aなどの冷媒に対して容量及び効率のパラメータにおいてすぐれた一致を提供できることを発見した。そのような態様について、組成物中のHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に対して、約40~約60重量%のHFO-1234ze、更により好ましくは約50重量%のHFO-1234zeを含む組成物が特に好ましい。
【0066】
特定的には、かつ好ましくは、組成物をR-134aに対する代用品又は代替品として意図又は使用する態様を含む、本発明の一定の好ましい態様にしたがえば、組成物中に存在するHFO-1234zeの量は、組成物中のHFO-1234ze及びHFC-32の全重量に基づいて、約80~約97重量%、より好ましくは約80~約90重量%、更により好ましくは約85重量%である。出願人は、これらの範囲内及び量の組成物が、R-134aを含む、多くの標準的な冷媒よりはるかに低い地球温暖化係数(GWP)を有し、同時に、特にR-134aを含むこれまでに使用された冷媒と商業的に匹敵する性能パラメータを示す冷媒流体を提供することを見出した。
【0067】
HFC-32/CF
3
Iをベースとする組成物
本発明のひとつの好ましい態様において、本組成物は、主要な割合を構成し、好ましくは本質的にHFC-32からなり、更により好ましくはHFC-32からなる、第一の成分を含む。そのような態様においては、当該組成物中に存在するHFC-32の量は、組成物の約1重量%~約60重量%であることが一般的に好ましい。
【0068】
そのような好ましい態様における組成物は、CF3Iを含む第二の成分も含む。そのような一定の態様において、第二の成分は、CF3Iを主要な割合で含み、好ましくは本質的にCF3Iからなり、更により好ましくはCF3Iからなる。当該組成物中に存在するCF3Iの量は、好ましくは、組成物の約5重量%~約98重量%である。第二の成分がCF3I及びHFO-1225の両方を含む態様について、CF3I及びHFO-1225の相対量は広く変動することができるが、そのような態様においては、CF3Iの量が組成物の約5重量%~約98重量%であり、HFO-1225の量が組成物の約1重量%~約65重量%であることが好ましい。第二の成分がCF3I及びHFO-1225を含む態様について、第三成分は任意であるが、存在する場合は、組成物の約1重量%~約9
4重量%の量で存在することが好ましい。第二の成分が本質的にCF3Iからなる態様、すなわち、組成物に実質的な量のHFO-1225が含まれない態様について、第三成分が必要であり、組成物の少なくとも約1重量%の量で存在することが好ましい。
【0069】
非常に数多くの組み合わせの化合物が本発明の第三成分として、この特定の態様において、また多種多様な相対濃度で使用できることが企図されており、すべての量と組み合わせは本明細書中に含まれる教示にしたがって使用のために適合できると考えられる。しかし、第三成分が、モノフルオロエタン(HFC-161)、ジフルオロエタン(HFC-152a)、トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,1,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze、すべての異性体を含む)、及び1,1,1,2-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)のうち一種又はそれより多くを含む、一定の好ましい態様においては、存在する場合はそのような成分は以下の表1(示した量は、「約」という修飾語が前にあり、組成物における重量パーセントに基づくと理解すべきものと意図している)に示す範囲内から選択することが好ましい。
【0070】
【0071】
HFC-32/HFO-1225をベースとする組成物
本発明のこれらの態様において、本組成物は、主要な割合を構成し、好ましくは本質的にHFC-32からなり、更により好ましくはHFC-32からなる、第一の成分を含む。そのような態様においては、当該組成物中に存在するHFC-32の量は、組成物の約1重量%~約60重量%であることが一般的に好ましい。
【0072】
そのような好ましい態様における組成物は、HFO-1225、好ましくはHFO-1225ye-Zを含む第二の成分も含む。そのような一定の態様において、第二の成分は、HFO-1225を主要な割合で含み、好ましくは本質的にHFO-1225ye-Zからなり、更により好ましくはHFO-1225ye-Zからなる。当該組成物中に存在するHFO-1225ye-Zの量は、好ましくは、組成物の約5重量%~約98重量%である。そのような態様において、第三成分は任意であるが、存在する場合は、組成物の約1重量%~約94重量%の量で存在することが好ましい。
【0073】
非常に数多くの組み合わせの化合物が本発明の第三成分として、この特定の態様において、また多種多様な相対濃度で使用できることが企図されており、すべての量と組み合わせは本明細書中に含まれる教示にしたがって使用のために適合できると考えられる。しかし、第三成分が、モノフルオロエタン(HFC-161)、ジフルオロエタン(HFC-152a)、トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,1
,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze、すべての異性体を含む)、及び1,1,1,2-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)のうち一種又はそれより多くを含む、一定の好ましい態様においては、存在する場合はそのような成分は以下の表2(示した量は、「約」という修飾語が前にあり、組成物における重量パーセントに基づくと理解すべきものと意図している)に示す範囲内から選択することが好ましい。
【0074】
【0075】
選択方法
本発明のひとつの側面は、現行の熱移動系に関して使用するための熱移動組成物を選択するための方法を包含する。本明細書中で使用するように、「現行の熱移動系」という用語は、建設されておりしかるべき場所にある実際の熱移動系だけでなく、まだ建設されていないが想定されている及び/又は設計段階にある系も含む。ひとつの好ましい態様は、これまでに知られている組成物に関して使用するために設計されている現行の熱移動系に関して使用するための熱移動組成物を選択するための方法を提供する。そのような場合において、これまでに知られている組成物は、一般には、所望の又は予期される熱容量を有するが、一又はそれより多い望ましくなく特性も示す。例えば、以下のこれまでに知られている冷媒は各々、それらが使用される系について望ましい熱容量を有するが以下に示すような望ましくないほど高いGWPを示す。
【0076】
【0077】
好ましい方法工程は、現行又は設計の熱移動流体について容量の近似を可能とするのに充分なやり方で系のパラメータを分析し、現行又は設計の系の条件で二種又はそれより多い本発明の組成物について容量の近似を可能とするツールを提供し、そしてこれらを利用して現行又は設計の系において使用するための組成物を選択することを含む。そのようなツールの例は、以下の実施例に示すチャートである。本明細書中に含まれる教示にしたがって構成されたコンピュータプログラムは、かかるツールの別の例である。好ましい態様において、ツールは、本発明の組成物のGWP及び/又は燃焼性を近似し、決定し、又は組み込むことができ、選択工程は、約1000未満、更により好ましくは約150未満のGWPを有するように、及び/又は、燃焼性がないか又は燃焼性が予め決められたパラメータの範囲内にあるように、組成物を選択することを含む。
【0078】
方法及び系
本発明の組成物は、冷凍系、空調系、及びヒートポンプ系において使用する冷媒などの、熱を移動するための方法及び系における熱移動流体を含む数多くの方法及び系に関して有用である。本組成物は、好ましくはかかる系及び方法においてエアロゾル推進剤を含むかそれからなる、エアロゾルを発生させる系及び方法において使用する際に有利である。フォームを形成する方法、並びに、火炎を消火及び抑制する方法も本発明の一定の側面に含まれる。本発明は、また、一定の側面において、物品から残留物を除去する方法であって、本組成物をかかる方法及び系において溶媒組成物として使用する方法も提供する。
【0079】
熱移動方法及び系
好ましい熱移動方法は、一般に、本発明の組成物を提供し、顕熱移動、相変化熱移動、又はこれらの組み合わせのいずれかにより、組成物に又は組成物から熱を移動させることを含む。例えば、一定の好ましい態様において、本方法は、本発明の冷媒を含む冷凍系、及び、本発明の組成物を凝縮及び/又は蒸発することにより加熱又は冷却をもたらす方法を提供する。一定の好ましい態様において、他の流体を直接又は間接に冷却するか、あるいは物体を直接又は間接に冷却することを含む、冷却するための方法は、本発明の組成物を含む冷媒組成物を凝縮し、その後、前記冷媒組成物を冷却すべき物品の近傍で蒸発させることを含む。本明細書中で使用するように、「物体」という用語は、無生物の物だけでなく、一般に動物組織、特にヒト組織を含む、生体組織も言う。例えば、本発明の一定の側面は、鎮痛手法、予備的麻酔、又は、治療する身体の温度を低減することを含む治療の一部などの、一又はそれより多い治療目的のために、本組成物をヒト組織に適用することを包含する。一定の態様において、物体への適用は、好ましくは一方放出弁及び/又はノズルを有する加圧容器において、本組成物を圧力下で液体形態で提供し、組成物を物体に噴霧し、さもなければ適用することにより、加圧容器から液体を放出することを含む。噴霧される表面から液体が蒸発すると、その表面が冷える。
【0080】
流体又は物体を加熱するための一定の好ましい方法は、本発明の組成物を含む冷媒組成物を加熱すべき流体又は物体の近傍で凝縮し、その後に、前記冷媒組成物を蒸発させることを含む。本明細書中の開示に照らして、当業者であれば、過度な実験をすることなく、本発明にしたがって容易に物品を加熱及び冷却するだろう。
【0081】
出願人は、本発明の系及び方法において、重要な冷媒系性能パラメータの多くは、これまでに説明した現行の冷媒群のパラメータに比較的近いことを見出した。当業者であれば、系に対して比較的最小限に改変を施して冷媒の代用品として使用することができる、低GWP及び/又は低オゾン破壊性冷媒の実質的な利点を認識するであろう。本発明は、一定の態様において、現行の系において実質的に系を改変することなく熱移動流体(冷媒など)を本発明の組成物と置き換えることを含む、改良する方法を提供することを企図している。一定の好ましい態様において、置き換え工程は、本発明の組成物を熱移動流体として適応させるために、実質的な系の再設計を必要とすることなく装置の主要なアイテムを置き換える必要がないという意味において、ドロップイン置き換えである。一定の好ましい態様において、本方法は、ドロップイン置き換えを含み、その際、系の容量は、置き換え前の系の容量の少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約85%、更により好ましくは少なくとも約90%であり、かつ好ましくは約130%以下、更により好ましくは約115%以下、更により好ましくは約110%以下である。一定の好ましい態様において、本方法は、ドロップイン置き換えを含み、その際、系のサクション圧力及び/又は放出圧力、更により好ましくはこれらの両方は、置き換え前の系のサクション圧力及び/又は放出圧力の少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%であり、かつ好ましくは約130%以下、更により好ましくは約115%以下、更により好ましくは約110%以下である。一定の好ましい態様において、本方法は、ドロップイン置き換えを含み、その際、系の質量流量は、置き換え前の系の質
量流量の少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%であり、かつ好ましくは約130%以下、更により好ましくは約115%以下、更により好ましくは約110%以下である。
【0082】
一定の態様において、本発明は、好ましくは本冷媒組成物を蒸発し、冷却すべき物体又は流体の近傍で流体又は物体から熱を吸収して、本組成物を含む蒸気を生成することを提供する。好ましくは、本方法は、通常は圧縮機又は同様な装置により冷媒蒸気を圧縮して、比較的高圧の本組成物の蒸気を生成する更なる工程を含む。一般には、蒸気を圧縮する工程により、蒸気に熱が付加され、比較的高い圧力の蒸気の温度が高められる。好ましくは、そのような態様において、本方法は、この比較的高温、高圧の蒸気から蒸発工程及び圧縮工程による付加された熱の少なくとも一部を除去することを含む。熱除去工程は、好ましくは、高温、高圧の蒸気をこの蒸気が比較的高い圧力の条件にある間に凝縮して、本発明の組成物を含む比較的高圧の液体を生成することを含む。この比較的高圧の液体は、好ましくは、名目上等エントロピーの圧力降下を経験して、比較的低温、低圧の液体を生成する。そのような態様において、この温度を下げた冷媒液体を、次いで、冷却すべき物体又は流体から移動される熱により蒸発させる。
【0083】
本発明の別の方法態様において、本発明の組成物を、本組成物を含む冷媒を加熱すべき液体又は流体の近傍で凝縮することを含む、熱を生成する方法において使用してもよい。これまでに説明したように、そのような方法は、これまでに説明した冷凍サイクルに対して逆のサイクルであることが多い。
【実施例0084】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく本発明を説明する目的のために提供する。
実施例1- HFC-32及びCF
3
Iの中温系
熱移動組成物(及び特に冷媒)の容量は、冷却又は加熱の能力を示し、冷媒の所与の体積流速に関して圧縮機が熱量を供給する能力の指標を提供する。言い換えれば、具体的な圧縮機がある場合に、冷媒の容量が高いと、より多くの冷却又は加熱の出力が送達される。
【0085】
凝縮器温度を約40℃、蒸発器温度を約2℃、過熱を約10℃、過冷温度を約5℃、圧縮機効率を0.7として(これらは通常は典型的な「中温」条件と考えられる)、冷却/空調サイクル系をシミュレート又は提供する。本発明のいくつかの組成物を、HFC-32からなる第一の成分、CF
3Iからなる第二の成分、これまでに説明したような一連の第三の成分のうちひとつに基づいて、シミュレート及び/又は試験する。各々の第三の成分について、これまでに説明した条件下でR-410Aの容量に実質的に匹敵する三成分すべての相対濃度を決定する。次いで、容量が実質的にR-410Aの容量に匹敵する各成分の種々の濃度の曲線を引き、又はシミュレートする(視覚的に、数学的に、又は各々の組み合わせ)。次いで、この曲線にアステリクシスを置いて、1000又はそれ未満のGWPを有する組成物を示し、次いで、曲線にダイアモンドを置いて、1000より大きいGWPを有する組成物を示す。この手順を上記の三成分の化合物すべて、また第二成分化合物であるHFO-1225ye-Zについて繰り返す。この系のための冷媒を選択するための「ツール」のひとつの例をこのように作成し、
図1にチャートとして示す。
図1のチャートを分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0086】
実施例2- HFC-32/CO
2
及びCF
3
Iの中温系
熱移動組成物の第一成分が3重量%のCO
2及び97重量%のHFC-32からなること、その容量が匹敵すべき冷媒がR-410Aであることを除いて、実施例1を繰り返す。
図2のチャートを作成し、分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0087】
実施例3- HFC-32/CO
2
及びCF
3
Iの中温系
熱移動組成物の第一成分が1重量%のCO
2及び99重量%のHFC-32からなること、その容量が匹敵すべき冷媒がR-410Aであることを除いて、実施例1を繰り返す。
図3のチャートを作成し、分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0088】
実施例4- HFC-32/CO
2
及びCF
3
Iの低温系
熱移動組成物の第一成分が3重量%のCO
2及び99重量%のHFC-32からなること、その容量が匹敵すべき冷媒がR-410Aであること、条件が約45℃の凝縮器温度、約-34℃の蒸発器温度、約10℃の過熱、約5℃の過冷、0.7の圧縮機効率であること(これらは通常は典型的な「低温」条件と考えられる)を除いて、実施例1を繰り返す。
図4のチャートを作成し、分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0089】
実施例5- HFC-32/CO
2
及びCF
3
Iの低温系
熱移動組成物の第一成分が1重量%のCO
2及び99重量%のHFC-32からなること、その容量が匹敵すべき冷媒がR-410Aであること、条件が約45℃の凝縮器温度、約-34℃の蒸発器温度、約10℃の過熱、約5℃の過冷、0.7の圧縮機効率であること(これらは通常は典型的な「低温」条件と考えられる)を除いて、実施例1を繰り返す。
図5のチャートを作成し、分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0090】
実施例6- HFC-32及びHFO-1225の中温系
凝縮器温度を約40℃、蒸発器温度を約2℃、過熱を約10℃、過冷温度を約5℃、圧縮機効率を0.7として(これらは通常は典型的な「中温」条件と考えられる)、冷却/空調サイクル系をシミュレート又は提供する。本発明のいくつかの組成物を、HFC-32からなる第一の成分、HFO-1225ye-Zからなる第二の成分、これまでに説明したような一連の第三の成分のうちひとつに基づいて、シミュレート及び/又は試験する。各々の第三の成分について、これまでに説明した条件下でR-410Aの容量に実質的に匹敵する三成分すべての相対濃度を決定する。次いで、容量が実質的にR-410Aの容量に匹敵する各成分の種々の濃度の曲線を引き、又はシミュレートする(視覚的に、数学的に、又は各々の組み合わせ)。次いで、この曲線にアステリクシスを置いて、1000又はそれ未満のGWPを有する組成物を示し、次いで、曲線にダイアモンドを置いて、1000より大きいGWPを有する組成物を示す。この手順を上記の三成分の化合物すべて、また第二成分化合物であるHFO-1225ye-Zについて繰り返す。この系のための冷媒を選択するための「ツール」のひとつの例をこのように作成し、
図6にチャートとして示す。
図6のチャートを分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWP
が約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0091】
実施例7- HFC-32及びHFO-1225の低温系
条件が約45℃の凝縮器温度、約-34℃の蒸発器温度、約10℃の過熱、約5℃の過冷、0.7の圧縮機効率であること(これらは通常は典型的な「低温」条件と考えられる)を除いて、実施例6を繰り返す。
図7のチャートを作成し、分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0092】
実施例8- HFC-32/CO
2
及びHFO-1225の中温系
熱移動組成物の第一成分が3重量%のCO
2及び97重量%のHFC-32からなることを除いて、実施例6を繰り返す。
図8のチャートを作成し、分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0093】
実施例9- HFC-32/CO
2
及びHFO-1225の中温系
熱移動組成物の第一成分が1重量%のCO
2及び97重量%のHFC-32からなること、その容量が匹敵すべき冷媒がR-410Aであることを除いて、実施例6を繰り返す。
図9のチャートを作成し、分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0094】
実施例10- HFC-32/CO
2
及びHFO-1225の低温系
熱移動組成物の第一成分が3重量%のCO
2及び97重量%のHFC-32からなること、条件が約45℃の凝縮器温度、約-34℃の蒸発器温度、約10℃の過熱、約5℃の過冷、0.7の圧縮機効率であること(これらは通常は典型的な「低温」条件と考えられる)を除いて、実施例6を繰り返す。
図10のチャートを作成し、分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0095】
実施例11- HFC-32/CO
2
及びHFO-1225の低温系
熱移動組成物の第一成分が1重量%のCO
2及び99重量%のHFC-32からなること、条件が約45℃の凝縮器温度、約-34℃の蒸発器温度、約10℃の過熱、約5℃の過冷、0.7の圧縮機効率であること(これらは通常は典型的な「低温」条件と考えられる)を除いて、実施例6を繰り返す。
図11のチャートを作成し、分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0096】
実施例12- HFC-32及びCF
3
Iの低温系
条件が約45℃の凝縮器温度、約-34℃の蒸発器温度、約10℃の過熱、約5℃の過冷、0.7の圧縮機効率であること(これらは通常は典型的な「低温」条件と考えられる)を除いて、実施例1を繰り返す。
図12のチャートを作成し、分析して、曲線に該当するか又はほぼ該当し、そのGWPが約1000未満である組成物を同定する。この同定の前又は後に、好ましくは、組成物の燃焼性を分析し、次いで、かかる系のもとの成分として、あるいはそのような現行の系に対する置き換え又は改良として使用するための組成物について選択する。
【0097】
実施例13
HFO-1234ze(E)及びR-32の混合物について蒸気液体平衡(VLE)を二つの別々の方法により測定した。第一の方法は開放式の沸点測定装置であり、これにより大気圧における混合物の泡立ち点温度を測定し、結果を表3に示す。第二の方法は密封した系であり、これにより大気圧より高い圧力を実現でき、この結果を表4に示す。
【0098】
【0099】
【0100】
実施例14
HFO-1234yf及びR-32のVLEを二つの別々の方法により測定した。第一の方法は開放式の沸点測定装置であり、これにより大気圧における混合物の泡立ち点温度を測定し、結果を表5に示す。第二の方法は密封した系であり、これにより大気圧より高い圧力を実現でき、この結果を表6に示す。
【0101】
【0102】
【0103】
実施例15
表3及び4のデータを用いて、これらの冷媒の典型的な空調用途における性能を評価した。空調サイクルの条件は、
蒸発器温度=2℃
凝縮器温度=40℃
過冷=5℃
過熱=10℃
等エントロピー圧縮機効率=0.7
であった。
【0104】
これらの条件下で、容量、COP、圧縮機吐出温度、及び凝縮器と蒸発器のグライドを計算し、表7A及び表7Bに示す。また、これらの混合物に関するサイクル性能とGWPを計算して、表8A及び表8Bに示す。純粋なR-32を用いるひとつの不利益は、高い吐出温度である。HFO-1234ze(E)+R-32混合物のグライドはすべての組成にわたって<9℃であり、HFO-1234yf+R-32混合物のグライドはすべての組成にわたって<7℃である。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
実施例16
表3及び4のデータを用いて、これらの冷媒の低音用途における性能を評価した。低温サイクルの条件は、
蒸発器温度=-34℃
凝縮器温度=45℃
過冷=10℃
過熱=10℃
等エントロピー圧縮機効率=0.7
であった。
【0110】
これらの条件下で、容量、COP、圧縮機吐出温度、及び凝縮器と蒸発器のグライドを計算し、表9A及び表9Bに示す。また、これらの混合物に関するサイクル性能とGWPを計算して、表10A及び表10Bに示す。純粋なR-32を用いるひとつの不利益は、高い吐出温度である。HFO-1234ze(E)+R-32混合物のグライドはすべての組成にわたって<9℃であり、HFO-1234yf+R-32混合物のグライドはすべての組成にわたって<7℃である。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
当業者であれば、前述の説明及び実施例は本発明の例示であるが、特許請求の範囲による示される本発明の全体かつ真の広い範囲を必ずしも限定しないことを意図していることを認識するであろう。