(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184938
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲートのネオアジュバント使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20221206BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221206BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221206BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221206BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221206BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20221206BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
C07K16/18
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022145199
(22)【出願日】2022-09-13
(62)【分割の表示】P 2020035068の分割
【原出願日】2015-10-05
(31)【優先権主張番号】62/060,858
(32)【優先日】2014-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504149971
【氏名又は名称】イミューノメディクス、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ゴールデンバーグ, デイビッド エム.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】癌治療における、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のネオアジュバント使用のための改善された方法を提供する。
【解決手段】好ましくは、ADCはアントラサイクリンまたはカンプトテシンを含み、より好ましくは、SN-38またはプロ-2-ピロリノドキソルビシン(P2PDox)を含む。ADCは、外科手術、放射線療法、化学療法、または免疫療法などの標準的な抗癌治療を用いる処置の前に、ネオアジュバントとして投与される。ADCのネオアジュバント使用は、標準的な抗癌治療の有効性を実質的に改善し、原発腫瘍を減量させ得るかまたは微小転移を除去し得る。最も好ましい実施形態では、ネオアジュバントADCは標準的な抗癌治療と併用されて、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)などの標準処置に耐性を示す癌の処置に成功する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌のネオアジュバント処置のための方法であって、
a)抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を、癌を有する対象に投与すること、ここで前記薬物は、アントラサイクリン及びカンプトテシンからなる群より選択される;及び
b)外科手術、放射線療法、化学療法、及び免疫療法からなる群より選択される標準的な抗癌治療で前記対象を処置することを含み、前記ADCが、前記標準的な抗癌治療の前に投与される、前記方法。
【請求項2】
前記カンプトテシンが、SN-38である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アントラサイクリンが、プロ-2-ピロリノドキソルビシン(P2PDox)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ADCが、抗体、抗原結合性抗体断片、及び標的化ペプチドからなる群より選択される抗体部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体部分が、炭酸脱水酵素IX、CCCL19、CCCL21、CSAp、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、IGF-1R、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD47、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a-e、CD67、CD70、CD70L、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、AFP、PSMA、CEACAM5、CEACAM-6、c-MET、B7、フィブロネクチンのED-B、H因子、FHL-1、Flt-3、葉酸受容体、GRO-β、ヒストンH2B、ヒストンH3、ヒストンH4、HMGB-1、低酸素誘導因子(HIF)、HM1.24、インスリン様成長因子-1(ILGF-1)、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IL-2、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-25、IP-10、LIV-1、MAGE、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、MIF、D-DT(D-ドパクロムトートメラーゼ)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5ac、MUC16、PAM4抗原、NCA-95、NCA-90、Ia、HM1.24、EGP-1(TROP-2)、EGP-2、HLA-DR、テネイシン、Le(y)、RANTES、T101、TAC、Tn抗原、トムソン-フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、TNF-α、TRAIL受容体(R1及びR2)、VEGFR、EGFR、PlGF、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、及び発がん遺伝子産物からなる群より選択される腫瘍関連抗原に結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体部分が、hR1(抗IGF-1R)、hPAM4(抗MUC5ac)、hA20(抗CD20)、GA101(抗CD20)、hA19(抗CD19)、hIMMU-31(抗AFP)、hLL1(抗CD74)、hLL2(エプラツズマブ、抗CD22)、hRFB4(抗CD22)、hMu-9(抗CSAp)、hL243(抗HLA-DR)、hL243 IgG4P(抗HLA-DR)、hMN-14(抗CEACAM5)、hMN-15(抗CEACAM6)、hRS7(抗TROP-2)、hMN-3(抗CEACAM6)、Ab124(抗CXCR4)及びAb125(抗CXCR4)からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体断片が、F(ab’)2、F(ab)2、Fab、Fab’及びscFv断片からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体または抗原結合性抗体断片が、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4からなる群より選択されるヒト定常領域を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が、非G1m1(nG1m1)抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、G1m3重鎖アロタイプを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、nG1m1、2重鎖ヌルアロタイプを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、Km3軽鎖アロタイプを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記P2PDoxが、SMCCヒドラジド、アミノキシ、フェニルヒドラジド及び4-(ヒドラジノスルホニル)安息香酸からなる群より選択される架橋剤により前記抗体、抗体断片またはペプチドに付着する、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記P2PDoxが、マレイミド部分を含み、前記マレイミドとシステイン残基の反応により前記抗体、抗体断片またはペプチドに付着する、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記P2PDoxが、前記抗体または抗原結合性抗体断片と分子内架橋を形成する、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記分子内架橋が、in vivoで前記コンジュゲートを安定化し、循環中への遊離薬物の放出を防止する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ADCが、前記薬物を前記抗体に付着させるリンカーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記薬物がSN-38であり、前記リンカーがCL2Aである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記治療剤が、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、チロシンキナーゼ阻害剤、スフィンゴシン阻害剤、免疫調節剤、サイトカイン、ホルモン、二次抗体、二次抗体断片、イムノコンジュゲート、放射性核種、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤及び細胞毒性薬剤からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記薬物が、5-フルオロウラシル、アファチニブ、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、アキシチニブ、AVL-101、AVL-291、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、Cox-2阻害薬、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ジナシクリブ、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2P-DOX)、シアノ-モルフォリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エルロチニブ、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エルロチニブ、エンチノスタット、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、エトポシドホスフェート、エキセメスタン、フィンゴリモド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’-O-ジオレイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、フラボピリドール、フォスタマチニブ、ガネテスピブ、GDC-0834、GS-1101、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イブルチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、L-アスパラギナーゼ、ラパチニブ、レノリダミド(lenolidamide)、ロイコボリン、LFM-A13、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニトロソウレア(nitrosurea)、オラパリブ、プリコマイシン(plicomycin)、プロカルバジン、パクリタキセル、PCI-32765、ペントスタチン、PSI-341、ラロキシフェン、セムスチン、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、タモキシフェン、テマゾロミド(temazolomide)(DTICの水性形態)、トランスプラチナ、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、バタラニブ、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンカアルカロイド及びZD1839からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記毒素が、抗体または抗原結合性抗体断片に付着し、リシン、アブリン、アルファ毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、例えば、オンコナーゼ、DNaseI、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、及びシュードモナス内毒素からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記放射性核種が、抗体または抗原結合性抗体断片に付着し、111In、111At、177Lu、211Bi、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、133I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、153Sm、161Tb、152Dy、166Dy、161Ho、166Ho、186Re、188Re、189Re、211Pb、212Pb、223Ra、225Ac、77As、89Sr、99Mo、105Rh、149Pm、169Er、194Ir、58Co、80mBr、99mTc、103mRh、109Pt、119Sb、189mOs、192Ir219Rn、215Po、221Fr、255Fm、11C、13N、15O、75Br、198Au、199Au、224Ac、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、227Th、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、142Pr、143Pr、161Tb、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201T1、76Br及び169Ybからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、ケモカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン(IL)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及び「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記サイトカインが、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、サイロキシン、インスリン、プロインスリン、レラキシン、プロレラキシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体ホルモン(LH)、肝臓増殖因子、プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、ミュラー管抑制因子、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、NGF-β、血小板増殖因子、TGF-α、TGF-β、インスリン様成長因子-I、インスリン様増殖因子-II、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導性因子、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、マクロファージ-CSF(M-CSF)、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21、IL-25、LIF、FLT-3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子及びリンホトキシンからなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ケモカインが、RANTES、MCAF、MIP1-アルファ、MIP1-ベータ及びIP-10からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記抗血管新生剤が、MIF、D-DT及びHMGB-1からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記癌が、固形腫瘍または造血性癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記癌が、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、ホジキン病、T細胞白血病、T細胞リンパ腫、骨髄腫、結腸癌、胃癌、食道癌、甲状腺髄様癌、腎臓癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、精巣癌、前立腺癌、肝臓癌、皮膚癌、骨癌、脳癌、直腸癌、及び黒色腫からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記B細胞白血病またはB細胞リンパ腫が、B細胞リンパ腫の緩徐進行型形態、B細胞リンパ腫の侵襲性形態、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、毛髪様細胞白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫及び多発性骨髄腫からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記癌が、転移性である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、転移性結腸癌、転移性非小細胞肺癌(NSCLC)、転移性膵臓癌、転移性腎細胞癌腫、転移性胃癌、転移性前立腺癌、及び転移性小細胞肺癌からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記癌が、他の治療法に不応性であるが、ネオアジュバントADCを用いる治療には応答する、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、前記ネオアジュバントADCを用いる処置の前に、少なくとも1つの他の治療への応答に失敗している、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その文章全体が参照により本明細書に組み込まれる2014年10月7日に出願された仮米国特許出願第62/060,858号の合衆国法典第35巻第119条(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-ウェブを介してASCII形式で提出されている配列表を含み、同配列表はその全体において参照により本明細書に組み込まれる。前記ASCIIコピーは、2015年9月23日に作製され、名称はIMM350WO1_SL.txtであり、サイズは23,226バイトである。
【0003】
本発明は、ネオアジュバント療法におけるイムノコンジュゲートの使用に関する。好ましくは、イムノコンジュゲートは、抗体部分及びカンプトテシンまたはアントラサイクリン群の薬物から選択された薬物部分を含む。より好ましくは、抗体部分は、腫瘍関連抗原(TAA)に結合する。最も好ましくは、カンプトテシンはSN-38であるか、またはアントラサイクリンは2-ピロリノドキソルビシンのプロドラッグ形態(本明細書ではP2PDoxと称する)である。抗体及び薬物部分は、治療有効性を増加させる細胞内で切断可能な結合を介して連結され得る。好ましくは、抗体部分と薬物部分を接合するリンカーは、CL2Aであり、それは下記に示す通りである。特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは、最適な有効性及び最小限の毒性を提供する特定の投与量及び/または投与計画で投与され得、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、転移性結腸癌、転移性非小細胞肺癌(NSCLC)、転移性膵臓癌、転移性腎細胞癌腫、転移性胃癌、転移性前立腺癌、または転移性小細胞肺癌などの標準的な抗癌治療に耐性である癌の有効な処置を可能にする。好ましい実施形態は、TNBCにおけるネオアジュバント使用に関する。ネオアジュバントイムノコンジュゲートは、外科手術、放射線療法、化学療法、または免疫療法などの標準的な抗癌治療の前に投与される。
【背景技術】
【0004】
ネオアジュバント薬剤は、外科手術または放射線療法などの一次療法を用いる処置の前に患者に投与される(例えば、Wikipedia-Neoadjuvant therapyを参照されたい)。ネオアジュバント癌療法は、一次療法の前に患者の腫瘍(複数可)のサイズまたは程度を低下させることを目的とし、好ましくは、ネオアジュバント療法の不在下で必要とされ得るより広範囲にわたる処置の転帰の成否を改善する及び/または有害効果を低減させる(同書)。ネオアジュバント処置は、一次療法により影響されない可能性がある微小転移も標的とし得る(同書)。近年、ネオアジュバント療法は、新規化学療法をより迅速に検査する手段としての役割を増しており、それはネオアジュバント療法に対する応答が、迅速に比較的少数の患者で評価することができ、長期転帰を予測することができるからである(Rastagi et al.,2008,J Clin Oncol 26:778-85;Bardia&Baselga,2013,Clin Cancer Res 19:6360-70)。実際、ネオアジュバント試験からのエビデンスは、外科手術での病理学的完全奏効(pCR)(すなわち、乳房及び腋窩における残存疾患がない)の決定が、2サイクルのネオアジュバント化学療法後でさえも長期臨床奏効を予測するということを示している。(Rastagi et al.,2008,J Clin Oncol 26:778-85;von Mickwitz et al.,2012,J Clin Oncol 30:1796-1804;Huober et al.,2010,Breast Cancer Res Treat 124:133-40)。
【0005】
癌におけるネオアジュバント処置の歴史は広範である。この分野における初期の研究の大部分は、外科的切除または放射線療法の前のネオアジュバント化学療法の使用に関連していた。Ervin et al.(1984,Arch Otolaryngol 110:241-5)は、外科手術+放射線療法または高用量単独放射線療法の前の、シスプラチン、ブレオマイシン及びメトトレキセートを用いた進行頭頸部癌のネオアジュバント化学療法を報告した。特にネオアジュバント療法が実質的な腫瘍減少をもたらした場合には、転帰においていくらか改善は見られたが、疾患の再発が一般的であった(Ervin et al,1984)。ネオアジュバント化学療法及び/または放射線療法は、骨形成肉腫(Rosen&Nirenberg,1985,Prog Clin Biol Res 201:39-51)、乳癌(Ragaz et al.,1985,Prog Clin Biol Res 201:77-87)、食道癌(Kelsen et al.,1986,Semin Surg Oncol 2:170-6)、肛門及び直腸癌(Smith et al.,1986,Am J Surg151:577-80)、肺癌(Cox et al.,1986,Cancer Treat Rep 70:1219-20)及び多くの他の形態の癌においても報告されている。ネオアジュバント療法を用いて転帰の改善がしばしば報告されているが、ネオアジュバント化学療法及び/または放射線療法が癌における長期患者生存率を改善する程度は、概して、まだ前向き研究によって確かめられていない(例えば、Bittoni et al.,2014,Gastroenterol Res Pract 2014:183852;Doval et al.,2013,J Indian Med Assoc 111:629-31を参照されたい)。
【0006】
近年、抗体または抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のネオアジュバント使用が乳癌において試みられている。ペルツズマブ(抗HER2)が研究されており、HER2陽性転移性乳癌のネオアジュバント処置においてトラスツズマブ及びドセタキセルとの併用においてFDAの承認を受けた(Sabatier&Goncalves,2014,Bull Cancer 101:765-71;Esserman&DeMichele,2014,Clin Cancer Res 20:3632-36)。Ado-トラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)は、強力な微小管阻害剤エムタンシンにコンジュゲートした抗HER2抗体を含み、以前の治療に失敗した患者のためのHER2陽性転移性乳癌における使用に対して承認されており、ネオアジュバント使用について研究されている(Corrigan et al.,2014,Ann Pharmacother[印刷物に先駆けたオンライン出版、2014年7月31日])。
【0007】
これらの結果は有望であるが、抗HER2抗体は、例えば、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体及びHER2の発現を欠くトリプルネガティブ乳癌(TNBC)においてほとんど使用されていない(例えば、Gogia et al.,2014,Indian J Cancer 51:163-6)。TNBCは、乳癌の約10~20%を占め、この疾患の他の形態よりも、より侵攻性であり致死性であり、全身治療にもかかわらず、転移性TNBCを有する女性のほぼ全てがこの疾患で最終的に死亡する。本分野において、イムノコンジュゲートをベースとするネオアジュバント癌療法のより有効な形態が、特にTNBCなどの標準的な抗癌処置に耐性である癌の形態に対して、必要とされている。
【0008】
[発明の概要]
本発明は、カンプトテシン(例えば、SN-38)またはアントラサイクリン(例えば、P2PDOX)などの薬物の抗体コンジュゲートを使用し、これらは、カリケアマイシン、メイタンシノイドまたはMMAEのような超毒性化学療法剤のナノモル濃度未満からピコモル濃度までの毒性と比較して、in vitroでナノモル濃度の毒性を有する。超毒性ではない薬剤の使用によって、遊離薬物の放出のために細胞内部移行を必要としないが、むしろ薬物のいくらかの細胞外放出を可能にする抗体-薬物リンカーの使用が可能となる。以下に記載するCL2Aリンカーでは、コンジュゲートした薬物の50%が24時間内に放出され、それにより、細胞外及び細胞内の両方で該薬物を遊離させることによって、該薬物のバイオアベイラビリティを増強させる。加えて、比較的非毒性の薬物の使用によって、より高投与量のADCの投与が可能となり、これはより良好な治療効果をもたらす。
【0009】
本発明は、カンプトテシン-抗体またはアントラサイクリン-抗体イムノコンジュゲートなどのADCを調製及び投与するためのネオアジュバント方法及び組成物を提供することにより当該分野におけるまだ満たされていない必要性を解決する。好ましくは、カンプトテシンはSN-38であるかまたはアントラサイクリンはP2PDOXである。本開示の方法及び組成物は、他の形態の治療に対して不応性であるか応答が低い癌のネオアジュバント処置のために使用される。不応性の癌には、トリプルネガティブ乳癌、転移性結腸癌、転移性非小細胞肺癌(NSCLC)、転移性膵臓癌、転移性腎細胞癌腫、転移性胃癌、転移性前立腺癌、または転移性小細胞肺癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
抗体は、様々なアイソタイプのもの、好ましくは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4であることができ、より好ましくはヒトIgG1ヒンジ及び定常領域配列を含む。抗体またはその断片は、キメラ、ヒト化、または完全ヒト抗体もしくはその抗原結合性断片、例えば、van der Neut Kolfschoten et al.(Science 2007;317:1554-1557)により記載されるような半IgG4抗体、または市販されているような単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディ)(例えば、ABLYNX(登録商標)、ベルギー、ゲント)であることができる。より好ましくは、抗体またはその断片は、特定のアロタイプに属するヒト定常領域配列を含むように設計または選択され得、これはイムノコンジュゲートがヒト対象に投与されるときに免疫原生の低下をもたらし得る。投与に好ましいアロタイプには、非G1m1アロタイプ(nG1m1)、例えば、G1m3、G1m3,1、G1m3,2またはG1m3,1,2が含まれる。より好ましくは、アロタイプは、nG1m1、G1m3、nG1m1,2及びKm3アロタイプからなる群より選択される。
【0011】
癌のネオアジュバント処置については、腫瘍細胞により発現されるかまたは他の方法で腫瘍細胞と関連する多くの抗原が当該分野で公知であり、炭酸脱水酵素IX、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、α-アクチニン-4、A3、A33抗体に特異的な抗原、ART-4、B7、Ba733、BAGE、BrE3-抗原、CA125、CAMEL、CAP-1、CASP-8/m、CCL19、CCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a-e、CD67、CD70、CD70L、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD132、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK-4/m、CDKN2A、CTLA-4、CXCR4、CXCR7、CXCL12、HIF-1α、結腸特異的抗原-p(CSAp)、CEACAM5、CEACAM6、c-Met、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP-1(TROP-2)、EGP-2、ELF2-M、Ep-CAM、線維芽細胞増殖因子(FGF)、Flt-1、Flt-3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、gp100、GRO-β、HLA-DR、HM1.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)及びそのサブユニット、HER2/neu、ヒストンH2B、ヒストンH3、ヒストンH4、HMGB-1、低酸素誘導因子(HIF-1)、HSP70-2M、HST-2、Ia、IGF-1R、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IFN-λ、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-25、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、KC4-抗原、KS-1-抗原、KS1-4、Le-Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、MAGE、MAGE-3、MART-1、MART-2、NY-ESO-1、TRAG-3、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5ac、MUC13、MUC16、MUM-1/2、MUM-3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM4抗原、膵臓癌ムチン、PD-1、PD-L1、PD-1受容体、胎盤増殖因子、p53、PLAGL2、前立腺性酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PlGF、ILGF、ILGF-1R、IL-6、IL-25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン-2B、TAC、TAG-72、テネイシン、TRAIL受容体、TNF-α、Tn抗原、トムソン-フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED-Bフィブロネクチン、WT-1、17-1A-抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl-2、bcl-6、Kras、発がん遺伝子マーカー及び発がん遺伝子産物を含むが、これらに限定されない(例えば、Sensi et al.,Clin Cancer Res 2006,12:5023-32;Parmiani et al.,J Immunol 2007,178:1975-79;Novellino et al.Cancer Immunol Immunother 2005,54:187-207を参照されたい)。好ましくは、抗体は、AFP、CEACAM5、CEACAM6、CSAp、EGP-1(TROP-2)、AFP、MUC5ac、PAM4抗原、CD74、CD19、CD20、CD22またはHLA-DRに結合する。
【0012】
利用してよい例示的な抗体としては、hR1(抗IGF-1R、米国特許出願第12/722,645号、2010年3月12日出願)、hPAM4(抗MUC5ac、米国特許第7,282,567号)、hA20(抗CD20、米国特許第7,151,164号)、hA19(抗CD19、米国特許第7,109,304号)、hIMMU31(抗AFP、米国特許第7,300,655号)、hLL1(抗CD74、米国特許第7,312,318号)、hLL2(抗CD22、米国特許第5,789,554号)、hRFB4(抗CD22、米国仮特許出願第61/944,295号、2014年2月25日出願)、hMu-9(抗CSAp、米国特許第7,387,772号)、hL243(抗HLA-DR、米国特許第7,612,180号)、hMN-14(抗CEACAM5、米国特許第6,676,924号)、hMN-15(抗CEACAM6、米国特許第8,287,865号)、hRS7(抗TROP-2、米国特許第7,238,785号)、hMN-3(抗CEACAM6、米国特許第7,541,440号)、Ab124及びAb125(抗CXCR4、米国特許第7,138,496号)、が挙げられるが、これらに限定されず、引用された各特許または出願の実施例の項は参照により本明細書に組み込まれる。より好ましくは、抗体は、IMMU-31(抗AFP)、hRS7(抗TROP-2)、hMN-14(抗CEACAM5)、hMN-3(抗CEACAM6)、hMN-15(抗CEACAM6)、hLL1(抗CD74)、hLL2(抗CD22)、hL243もしくはIMMU-114(抗HLA-DR)、hA19(抗CD19)またはhA20(抗CD20)である。本明細書で用いるとき、エプラツズマブとhLL2という用語は互換可能であり、同様に、ベルツズマブとhA20、及びhL243g4P、hL243ガンマ4PとIMMU-114も互換可能である。
【0013】
使用する代替的な抗体としては、アブシキシマブ(抗糖タンパク質IIb/IIIa)、アレムツズマブ(抗CD52)、ベバシズマブ(抗VEGF)、セツキシマブ(抗EGFR)、ゲムツズマブ(抗CD33)、イブリツモマブ(抗CD20)、パニツムマブ(抗EGFR)、リツキシマブ(抗CD20)、トシツモマブ(抗CD20)、トラスツズマブ(抗ErbB2)、ラムブロリズマブ(抗PD-1受容体)、ニボルマブ(抗PD-1受容体)、イピリムマブ(抗CTLA-4)、アバゴボマブ(抗CA-125)、アデカツムマブ(抗EpCAM)、アトリズマブ(抗IL-6受容体)、ベンラリズマブ(抗CD125)、オビヌツズマブ(GA101、抗CD20)、CC49(抗TAG-72)、AB-PG1-XG1-026(抗PSMA、米国特許出願第11/983,372号、ATCC PTA-4405及びPTA-4406として寄託)、D2/B(抗PSMA、WO2009/130575)、トシリズマブ(抗IL-6受容体)、バシリキシマブ(抗CD25)、ダクリズマブ(抗CD25)、エファリズマブ(抗CD11a)、GA101(抗CD20;Glycart Roche)、ムロモナブCD3(抗CD3受容体)、ナタリズマブ(抗α4インテグリン)、オマリズマブ(抗IgE);抗TNF-α抗体、例えば、CDP571(Ofei et al.,2011,Diabetes 45:881-85)、MTNFAI、M2TNFAI、M3TNFAI、M3TNFABI、M302B、M303(Thermo Scientific、イリノイ州、ロックフォード)、インフリキシマブ(Centocor、ペンシルべニア州、マルバーン)、セルトリズマブペゴル(UCB、ベルギー、ブリュッセル)、抗CD40L(UCB、ベルギー、ブリュッセル)、アダリムマブ(Abbott、イリノイ州、アボットパーク)、及びベリムマブ(Human Genome Sciences)を含むが、これらに限定されない。近年、ヒトヒストンH2B、H3及びH4に対するヒト化抗体が開示されており(米国特許出願第14/180,646号)、本開示の方法及び組成物において利用し得る。
【0014】
好ましくは、抗体部分は、少なくとも1つの薬物部分、より好ましくは1~約5つの薬物部分、あるいは約6~12の薬物部分に連結する。様々な実施形態では、抗体部分は、4または6つの薬物部分、または5つ以下の薬物部分に付着し得る。抗体部分あたりの薬物部分の数は、1、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上であってよい。
【0015】
例示的なカンプトテシンはCPT-11である。広範な臨床データが、CPT-11の薬理学及び活性SN-38へのそのin vivo変換に関して入手可能である(Iyer and Ratain,Cancer Chemother Pharmacol.42:S31-43(1998);Mathijssen et al.,Clin Cancer Res.7:2182-2194(2002);Rivory,Ann NY Acad Sci.922:205-215,2000))。活性形態SN-38は、CPT-11より約2~3桁強力である。特定の好ましい実施形態では、本イムノコンジュゲートは、hMN-14-SN-38、hMN-3-SN-38、hMN-15-SN-38、hIMMU-31-SN-38、hRS7-SN-38、hR1-SN-38、hA20-SN-38、hPAM4-SN-38、hL243-SN-38、hLL1-SN-38、hRFB4-SN-38、hMu-9-SN-38またはhLL2-SN-38コンジュゲートであってよい。より好ましくは、CL2Aリンカーを、SN-38を抗体部分にコンジュゲートするために使用する。
【0016】
例示的なアントラサイクリンは、米国特許出願第14/175,089に開示されているN-(4,4-ジアセトキシブチル)ドキソルビシンなどの2-ピロリノドキソルビシンのプロドラッグ形態(P2PDox)である。驚くべきことに、P2PDoxは、抗体ペプチド鎖と架橋が形成されるために、コンジュゲート抗体に密接に結合すると見いだされている。架橋は、循環中への遊離薬物の放出からもたらされ得る、毒性、例えば心毒性の最小化を助する。好ましくは、P2PDoxは、プロドラッグ形態の間、鎖間ジスルフィドチオール基に付着する。プロドラッグ保護は、注射の直後にin vivoで迅速に除去され、結果得られるコンジュゲートの2-PDox部分は、抗体のペプチド鎖を架橋し、分子内架橋を抗体分子内で形成する。これは、ADCを安定化させ、かつ循環中の他の分子への架橋を防ぐ。特定の好ましい実施形態では、イムノコンジュゲートは、hMN-14-P2PDox、hMN-3-P2PDox、hMN-15-P2PDox、hIMMU-3l-P2PDox、hRS7-P2PDox、hR1-P2PDox、hA20-P2PDox、hPAM4-P2PDox、hL243-P2PDox、hLL1-P2PDox、hRFB4-P2PDox、hMu-9-P2PDoxまたはhLL2-P2PDoxコンジュゲートであってよい。
【0017】
様々な実施形態は、非ホジキンリンパ腫、B細胞急性及び慢性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性大細胞型B細胞リンパ腫、毛髪様細胞白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞リンパ腫及び白血病、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、癌腫、黒色腫、肉腫、神経膠腫、骨癌ならびに皮膚癌を含むがこれらに限定されない癌を処置するための主題の方法及び組成物の使用に関し得る。癌腫には、口腔、食道、消化管、気道、肺、胃、結腸、乳房、卵巣、前立腺、子宮、子宮内膜、子宮頸部、膀胱、膵臓、骨、脳、結合組織、肝臓、胆嚢、膀胱、腎臓、皮膚、中枢神経系及び精巣の癌腫が含まれ得る。
【0018】
ある特定の実施形態では、薬物コンジュゲートは、外科手術、放射線療法、化学療法、裸抗体を用いる免疫療法、放射線免疫療法、免疫調節剤等を用いる処置の前にネオアジュバントとして使用され得る。これらのネオアジュバント療法は、与えられる各治療剤のより低い用量を可能にすることができ、ゆえにある特定の重度副作用を減らすか、または外科手術などの他の処置の有効性を改善することができる。
【0019】
イムノコンジュゲートの好ましい最適投与量は、3mg/kgから18mg/kgの間の投与量を含み得、好ましくは、週1回、週2回、隔週または3週間に1回のいずれかで与えられ得る。最適な投薬スケジュールには、2週連続の治療の後に1、2、3もしくは4週間の休薬の処置サイクル、または治療及び休薬を週替わりで行う処置サイクル、または1週間の治療の後に2、3もしくは4週間の休薬の処置サイクル、または3週間の治療の後に1、2、3もしくは4週間の休薬の処置サイクル、または4週間の治療の後に1、2、3もしくは4週間の休薬の処置サイクル、または5週間の治療の後に1、2、3、4もしくは5週間の休薬の処置サイクル、または2週間に1回、3週間に1回もしくは1カ月に1回の投与の処置サイクルを含み得る。処置は任意のサイクル数、好ましくは、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、または少なくとも16サイクルに延長してよい。投与量は、最大で24mg/kgまでとしてよい。使用する例示的な投与量には、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、22mg/kg及び24mg/kgが含まれ得る。好ましい投与量は、4、6、8、9、10、12、14、16または18mg/kgである。当業者は、年齢、全身の健康状態、特定の器官の機能または体重、ならびに特定の器官系(例えば、骨髄)に対する先行療法の効果などの種々の因子が、イムノコンジュゲートの最適な投与量を選択する上で考慮に入れられ得、投与量及び/または投与頻度は、治療経過中に増減してよいことを認識するだろう。投与量は、必要に応じて反復してもよく、腫瘍の縮小のエビデンスはわずか4~8用量の後に観察され得る。本明細書に開示のネオアジュバント使用に最適化した投与量及び投与スケジュールは、予期せぬ優れた有効性及び毒性の低下をヒト対象において示し、このことは、動物モデル研究からは予測することができなかった。驚くべきことに、優れた有効性により、1つまたは複数の標準的な抗癌治療に対して耐性を示すと以前に見いだされた腫瘍の処置が可能となる。
【0020】
特許請求する組成物及び方法に伴う意外な結果は、高用量の抗体-薬物コンジュゲートの予測されていなかった忍容性であり、反復注入でも、比較的低い等級の悪心及び嘔吐、または管理可能な好中球減少症のみが観察された。さらなる驚くべき結果は、化学療法薬をアルブミン、PEGまたは他の担体にコンジュゲートさせた他の生成物とは異なり、抗体-薬物コンジュゲートの蓄積が欠如していることである。蓄積の欠如は、反復した投薬または増量した投薬の後でさえ、改善された忍容性及び深刻な毒性の欠如と関連している。これらの驚くべき結果によって、予期せぬ高い有効性及び低い毒性で投与量及び送達スケジュールの最適化が可能となる。特許請求する方法は、すでに耐性のある癌を有する個体において固形腫瘍の大きさで(最長直径によって測定して)15%以上、好ましくは20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上の縮小をもたらす。当業者は、腫瘍の大きさは、総腫瘍体積、任意の寸法における腫瘍の最大の大きさまたはいくつかの寸法における大きさの測定値の組み合わせなど、様々な異なる技術によって測定してよいことを認識するだろう。このことは、コンピュータ断層撮影法、超音波検査法、及び/または陽電子放射断層撮影法など、標準的な放射線手順を伴い得る。大きさを測定する手段は、好ましくは腫瘍の除去を結果としてもたらすイムノコンジュゲート処置での腫瘍の大きさの縮小傾向の観察よりも重要性は低い。
【0021】
イムノコンジュゲートを、周期的なボーラス注射として投与してよいが、代替的な実施形態では、イムノコンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲートの連続注入によって投与してよい。血中のイムノコンジュゲートのCmaxを増加させ、PKを広げるために、連続注入は、例えば留置カテーテルによって投与してよい。このような装置は、HICKMAN(登録商標)、BROVIAC(登録商標)またはPORT-A-CATH(登録商標)カテーテルなど、当該分野で公知であり(例えば、Skolnik et al.,Ther Drug Monit 32:741-748,2010を参照されたい)、任意のこのような公知の留置カテーテルを使用してよい。様々な連続注入ポンプも当該分野で公知であり、任意のこのような公知の注入ポンプを使用してよい。連続注入のための投与量範囲は、1日当たり0.1から3.0mg/kgの間であってよい。より好ましくは、これらのイムノコンジュゲートは、2~5時間、より好ましくは2~3時間の比較的短期間にわたって静脈内注入によって投与することができる。
【0022】
特に好ましい実施形態では、イムノコンジュゲート及び投薬スケジュールは、標準的な治療に対して耐性を示す患者において有効であり得る。例えば、hMN-14-SN-38イムノコンジュゲートは、SN-38の親薬剤であるイリノテカンを用いた以前の療法に応答しなかった患者へ投与してよい。驚くべきことに、イリノテカン耐性患者は、hMN-14-SN-38に対して部分奏功またはさらには完全奏功を示すことがある。腫瘍組織を特異的に標的とするイムノコンジュゲートの能力は、治療剤の標的化の改善及び送達の向上によって腫瘍耐性を克服し得る。あるいは、hMN-14などの抗CEACAM5イムノコンジュゲートは、hMN-3またはhMN-15などの抗CEACAM6イムノコンジュゲートと併用投与してよい。他の抗体-SN-38または抗体-P2PDoxイムノコンジュゲートは、代替的な標準的治療処置と比較して、同様の有効性の改善及び/または毒性の低減を示し得、異なるイムノコンジュゲートの組み合わせ、または放射性核種、毒素または他の薬物にコンジュゲートした抗体と組み合わせたADCは、さらなる有効性の改善及び/または毒性の低下を提供し得る。具体的な好ましい対象は、転移性結腸癌患者、トリプルネガティブ乳癌患者、HER+、ER+、プロゲステロン+乳癌患者、転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者、転移性膵臓癌患者、転移性腎細胞癌腫患者、転移性胃癌患者、転移性前立腺癌患者、または転移性小細胞肺癌患者であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】例示的な抗体-薬物コンジュゲートであって、細胞内で切断可能なCL2Aリンカーを介してSN-38カンプトテシン薬物にコンジュゲートしているhRS7抗TROP-2抗体を示す。
【
図2A】
図2Aは、ドキソルビシンの構造である。「Me」は、メチル基である。
【
図2B】
図2Bは、2-ピロリノドキソルビシン、(2-PDox)の構造である。「Me」は、メチル基である。
【
図2C】
図2Cは、2-ピロリノドキソルビシンのプロドラッグ形態、(P2PDox)の構造である。「Me」は、メチル基であり、「Ac」は、アセチル基である。
【
図2D】
図2Dは、抗体カップリングのための、P2PDoxのマレイミド活性化形態の構造である。「Me」は、メチル基であり、「Ac」は、アセチル基である。
【
図3A】
図3Aは、Calu-3ヒトNSCLC異種移植片におけるIMMU-132のIn vivo有効性である。
【
図3B】
図3Bは、COLO205ヒト結腸癌異種移植片におけるIMMU-132のIn vivo有効性である。
【
図3C】
図3Cは、Capan-1ヒト膵臓癌異種移植片におけるIMMU-132のIn vivo有効性である。
【
図3D】
図3Dは、BxPC-3ヒト膵臓癌異種移植片におけるIMMU-132のIn vivo有効性である。
【
図3E】
図3Eは、SK-MES-1ヒト扁平上皮細胞肺癌異種移植片におけるIMMU-132のIn vivo有効性である。
【
図3F】
図3Fは、NCI-N87ヒト胃癌異種移植片におけるIMMU-132のIn vivo有効性である。
【
図4A】
図4Aは、MDA-MB-468ヒトTNBC異種移植片におけるIMMU-132のIn vivo有効性である。
【
図4B】
図4Bは、MDA-MB-468ヒトTNBC異種移植片におけるIMMU-132のIn vivo有効性である。腫瘍を有するマウスを、最初に対照(非標的)ADCで処置した。腫瘍を自然に増殖させた後、マウスに、指示投与量のIMMU-132を、78日目に開始して投与した。腫瘍を大きなサイズまで自然に増殖させた後でさえも、IMMU-132は、腫瘍退縮を誘導するのに有効であった。
【
図4C】
図4Cは、MDA-MB-231ヒトTNBC異種移植片における、IMMU-132のIn vivo有効性である。
【
図5A】
図5Aは、IMMU-132-01治験に登録された14人のTNBC患者の最良奏効である。
【
図5B】
図5Bは、IMMU-132-01治験に登録された14人のTNBC患者の無増悪期間である。
【
図6A】
図6Aは、用量レベルの関数としてのIgG及びADCのIMMU-132ピーク血清濃度である。
【
図6B】
図6Bは、患者体重に正規化したときの、用量レベルの関数としてのIgG及びADCのIMMU-132ピーク血清濃度である。
【
図7A】
図7Aは、IMMU-132総IgG対総IMMU-132の薬物動態である。
【
図7B】
図7Bは、IMMU-132総SN-38対遊離SN-38の薬物動態である。
【
図7C】
図7Cは、ELISAまたは血清中のSN-38濃度に基づくIMMU-132のクリアランスである。
【
図8A】
図8Aは、NCI-N87ヒト胃癌腫異種移植片における異なるIMMU-132投薬レジメンである。
【
図8B】
図8Bは、BxPC-3ヒト膵臓腺癌異種移植片における異なるIMMU-132投薬レジメンである。
【
図9A】
図9Aは、1μMの遊離SN-38または当量のIMMU-132に曝露されたNCI-N87ヒト胃癌腫におけるIMMU-132媒介性アポトーシスシグナル伝達である。
【
図9B】
図9Bは、SK-BR-3及びMDA-MB486乳癌細胞におけるIMMU-132媒介性PARP切断である。
【
図10】膵臓癌異種移植モデルにおけるIMMU-132対イリノテカンの薬理毒性学試験である。
【
図11】TNBCにおけるパクリタキセル+/-IMMU-132のためのネオアジュバント処置レジメンである。
【
図12】皮下ヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける治療であり、Capan-1ヒト膵臓腺癌異種移植片を有するヌードマウス(n=5)において2.25mg/kgタンパク質用量(0.064mg/kgの薬物用量)のMAb-P2PDoxコンジュゲートを週2回×2週間使用する。
【
図13A】
図13Aは、複数回の注射を用いるhLL1-P2PDoxコンジュゲートのMTD試験である。マウスに、hLL1-P2PDox(q4d×4)を25μg静脈内/用量で投与した。
【
図13B】
図13Bは、複数回の注射を用いるhLL1-P2PDoxコンジュゲートのMTD試験である。マウスに、hLL1-P2PDox(q4d×4)を50μg静脈内/用量で投与した。
【
図13C】
図13Cは、複数回の注射を用いるhLL1-P2PDoxコンジュゲートのMTD試験である。マウスに、hLL1-P2PDox(q4d×4)を100μg静脈内/用量で投与した。
【
図13D】
図13Dは、複数回の注射を用いるhLL1-P2PDoxコンジュゲートのMTD試験である。マウスに、hLL1-P2PDox(q4d×4)を150μg静脈内/用量で投与した。
【
図14A】
図14Aは、NCI-N87ヒト胃癌異種移植片を有するヌードマウスにおけるP2PDoxコンジュゲートのIn vivo有効性である。マウスに、食塩水対照を投与した。
【
図14B】
図14Bは、NCI-N87ヒト胃癌異種移植片を有するヌードマウスにおけるP2PDoxコンジュゲートのIn vivo有効性である。マウスに、45μgのhA20-P2PDoxを矢印により示すように投与した。
【
図14C】
図14Cは、NCI-N87ヒト胃癌異種移植片を有するヌードマウスにおけるP2PDoxコンジュゲートのIn vivo有効性である。マウスに、45μgのhMN-15-P2PDoxを矢印により示すように投与した。
【
図14D】
図14Dは、NCI-N87ヒト胃癌異種移植片を有するヌードマウスにおけるP2PDoxコンジュゲートのIn vivo有効性である。マウスに、45μgのhRS7-P2PDoxを矢印により示すように投与した。
【
図14E】
図14Eは、NCI-N87ヒト胃癌異種移植片を有するヌードマウスにおけるP2PDoxコンジュゲートのIn vivo有効性である。マウスに、45μgのhLL1-P2PDoxを矢印により示すように投与した。
【
図14F】
図14Fは、NCI-N87ヒト胃癌異種移植片を有するヌードマウスにおけるP2PDoxコンジュゲートのIn vivo有効性である。マウスに、45μgのhMN-14-P2PDoxを矢印により示すように投与した。
【
図15】NCI-N87ヒト胃癌腫異種移植片を有するヌードマウスにおける生存に及ぼすhRS7-P2PDoxの異なる投薬スケジュールの影響。
【
図16】ヒト胃癌腫異種移植片の増殖に及ぼすhRS7-P2PDoxの異なる単回用量の影響。
【
図17】ヒト胃癌腫異種移植片を有するマウスの生存に及ぼすhRS7-P2PDoxの異なる単回用量の影響。
【
図18】様々なhRS7-ADC対hRS7 IgGのADCC。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明では、いくつかの用語を使用し、以下の定義は、特許請求する主題事項の理解を容易にするために提供される。本明細書で明確に定義されていない用語は、当該用語の平易かつ通常の意味に従って使用する。
【0025】
別段の指定がない限り、[a]または[an]は「1つまたは複数」を意味する。
【0026】
[約]という用語は、ある値の±10パーセント(10%)を意味するものとして本明細書で使用する。例えば、「約100」は、90から110の間の任意の数を指す。
【0027】
[抗体]は、本明細書で用いるとき、全長(すなわち、天然に生じるまたは正常な免疫グロブリン遺伝子断片組換えプロセスによって形成される)免疫グロブリン分子(例えば、IgG抗体)、または抗体断片などの免疫グロブリン分子の抗原結合部分を指す。抗体または抗体断片は、特許請求する主題事項の範囲内でコンジュゲートされてよいかさもなければ誘導体化されてよい。このような抗体には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4(及びIgG4の下位形態)、ならびにIgAアイソタイプが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
[抗体断片]は、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFv(一本鎖Fv)、単一ドメイン抗体(DABまたはVHH)等の抗体の一部であり、先に挙げたIgG4の半分子を含む(van der Neut Kolfschoten et al.(Science 2007;317(14 Sept):1554-1557)。ナノボディ(ABLYNX(登録商標)、ベルギー、ゲント)と称される単一ドメイン抗体の市販の形態は、以下にさらに詳細に考察する。構造にかかわらず、使用する抗体断片は、インタクト抗体によって認識されるものと同じ抗原と結合する。「抗体断片」という用語は、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する合成タンパク質または遺伝子操作されたタンパク質も含む。例えば、抗体断片は、重鎖及び軽鎖可変領域からなる「Fv」断片などの可変領域からなる単離された断片、軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーによって接続している組換え一本鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)、ならびにCDRなどの超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位を含む。Fv断片は、異なる方法で構築されて、多価及び/または多重特異性結合形態を生じ得る。多価の場合、Fv断片は、特定のエピトープに対して1つを超える結合部位を有するのに対し、多重特異性形態の場合、1つを超えるエピトープ(同じ抗原のものかまたは1つの抗原及び異なる抗原に対するものかのいずれか)が結合される。
【0029】
[裸抗体]は一般に、治療剤にコンジュゲートしていない全(完全長)抗体である。これがそうであるのは、抗体分子のFc部分が、細胞溶解を結果として生じ得る機構を作用させる、補体結合及びADCC(抗体依存性細胞傷害)などのエフェクタ機能または免疫学的機能を提供するからである。しかしながら、Fc部分は、抗体の治療機能に必要でない場合があり、むしろアポトーシス、抗血管新生作用、抗転移活性、ヘテロタイプまたはホモタイプの接着の阻害などの抗接着活性、及びシグナル伝達経路における干渉などの他の機序が機能するようになり疾患の進行を妨げ得る。裸抗体は、マウス抗体を含む、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方及びその断片、ならびにある特定の組換え抗体、例えばキメラ、ヒト化またはヒト抗体及びその断片を含む。本明細書で用いるとき、「裸」は、「未コンジュゲート」と同義であり、治療剤に連結またはコンジュゲートしていないことを意味する。
【0030】
[キメラ抗体]は、1つの種由来の抗体、好ましくは齧歯類抗体、より好ましくはマウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含む、重鎖及び軽鎖抗体鎖の両方の可変ドメインを含有するが、抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のそれに由来する、組換えタンパク質である。獣医学的用途のために、キメラ抗体の定常ドメインは、霊長類、ネコまたはイヌなどの他の種に由来してよい。
【0031】
[ヒト化抗体]は、1つの種に由来する抗体、例えばマウス抗体、からのCDRが、マウス抗体の重鎖及び軽鎖可変鎖からヒト重鎖及び軽鎖可変ドメイン(フレームワーク領域)へと移された組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体のそれに由来する。いくつかの場合では、ヒト化抗体のフレームワーク領域の特定の残基、特にCDR配列に接触しているまたは近接する残基は、改変されてよく、例えば、元のマウス、齧歯類、ヒトより下位の霊長類、または他の抗体からの対応する残基と置換されてよい。
【0032】
[ヒト抗体]は、例えば、抗原攻撃に応答してヒト抗体を産生するよう「操作」されているトランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術において、ヒト重鎖及び軽鎖の遺伝子座のエレメントは、内因性重鎖及び軽鎖の遺伝子座の標的化破壊を含有する胚性幹細胞、ES細胞株に由来するマウス系統へと導入される。トランスジェニックマウスは、様々な抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、当該マウスを使用してヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al.,Nature Genet.7:13(1994)、Lonberg et al.,Nature 368:856(1994)、及びTaylor et al.,Int.Immun.6:579(1994)によって説明されている。完全ヒト抗体はまた、遺伝子もしくは染色体のトランスフェクション法、ならびにファージディスプレー技術によっても構築することができ、これらは全て当該分野で公知である。例えば、免疫化していないドナーからの免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーに由来するヒト抗体及びその断片のin vitroでの産生については、McCafferty et al.,Nature 348:552-553(1990)を参照されたい。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージのメジャーまたはマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかへとインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能性抗体断片として表示される。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能的特性に基づいた選択は、それらの特性を呈する抗体をコードする遺伝子の選択ももたらす。この方法で、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレーは、様々な形式で実施することができ、これらの概説については、例えば、Johnson and Chiswell,Current Opinion in Structural Biology 3:5564-571(1993)を参照されたい。ヒト抗体は、in vitroで活性化されたB細胞によっても生成され得る。米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照されたく、これらの各々の実施例項は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
[治療剤]は、結合性部分、例えば、抗体または抗体断片とは別個に、同時にまたは連続して投与される分子または原子であり、疾患の処置に有用である。治療剤の例としては、抗体、抗体断片、コンジュゲート、薬物、細胞毒性剤、アポトーシス促進剤、毒素、ヌクレアーゼ(DNAse及びRNAseを含む)、ホルモン、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤もしくは色素、放射性同位体もしくは放射性核種、オリゴヌクレオチド、干渉性RNA、ペプチド、抗血管新生剤、化学療法剤、サイオカイン(cyokine)、ケモカイン、プロドラッグ、酵素、結合タンパク質もしくはペプチド、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0034】
[イムノコンジュゲート]は、治療剤にコンジュゲートした抗体、抗体断片または他の抗体部分である。本明細書で用いるとき、「コンジュゲート」及び「イムノコンジュゲート」という用語は互換可能に使用される。
【0035】
本明細書で用いるとき、[抗体融合タンパク質]という用語は、1つまたは複数の天然抗体、一本鎖抗体または抗体断片が、タンパク質もしくはペプチド、毒素、サイトカイン、ホルモン等の、別の部分へ連結している組換え産生された抗原結合性分子である。ある特定の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、同じエピトープ、同じ抗原上の異なるエピトープ、または異なる抗原に結合し得る、2つ以上の、同じもしくは異なる抗体、抗体断片または一本鎖抗体を1つに融合して含んでよい。
【0036】
[免疫調節剤]は、存在する場合、身体の免疫系を変化、抑制または刺激する治療剤である。典型的には、使用する免疫調節剤は、免疫細胞を刺激して、マクロファージ、樹状細胞、B細胞及び/またはT細胞などの免疫応答カスケードにおいて増殖または活性化させる。本明細書で記載する免疫調節剤の例はサイトカインであり、特定の抗原と接触する際に1つの細胞集団(例えば、薬物刺激されたTリンパ球)によって放出されるおおよそ5~20kDaの可溶性小分子タンパク質であり、細胞間で細胞間メディエーターとして作用する。当業者であれば理解するように、サイトカインの例としては、リンホカイン、モノカイン、インターロイキン、ならびに腫瘍壊死因子(TNF)及びインターフェロンなどのいくつかの関連シグナル伝達分子が挙げられる。ケモカインは、サイトカインのサブセットである。ある特定のインターロイキン及びインターフェロンは、T細胞または他の免疫細胞の増殖を刺激するサイトカインの例である。
【0037】
[CPT]は、カンプトテシンの略語である。本出願で用いるとき、CPTは、カンプトテシンそれ自体またはカンプトテシンの類似体もしくは誘導体を表す。カンプトテシン及びその類似体のうちの一部の構造は、番号が付され、環が文字A~Eで標識されている、以下のチャート1の式1に提供される。
【0038】
【0039】
カンプトテシンコンジュゲート
抗体または抗原結合性抗体断片に付着したカンプトテシン治療剤を含むイムノコンジュゲートを調製するための非限定的な方法及び組成物を以下に説明する。好ましい実施形態では、薬物の溶解度は、規定されたポリエチレングリコール(PEG)部分(すなわち、規定数の単量体単位を含有するPEG)を薬物と抗体の間に配置することによって向上し、ここで規定されたPEGは、低分子量PEGであり、好ましくは1~30単量体単位を含有し、より好ましくは1~12単量体単位を含有する。
【0040】
好ましくは、第一のリンカーは、一端で薬物を接続しており、他端ではアセチレン基またはアジド基で終了してよい。この第一のリンカーは、アジド基またはアセチレン基を有する規定されたPEG部分を一端で、カルボン酸基またはヒドロキシル基などの異なる反応性基を他端で有して含み得る。前記二官能性の規定されたPEGは、アミノアルコールのアミン基に付着し得、後者のヒドロキシル基は、炭酸塩の形態で薬物上のヒドロキシル基に付着し得る。あるいは、前記規定された二官能性PEGの非アジド(またはアセチレン)部分は、L-アミノ酸またはポリペプチドのN末端に付着するとともに、C末端はアミノアルコールのアミノ基に付着し得、後者のヒドロキシ基は、それぞれ、炭酸塩またはカルバミン酸塩の形態で薬物のヒドロキシル基に付着し得る。
【0041】
第二のリンカーは、第一のリンカーのアジド(またはアセチレン)基に対して相補的な抗体カップリング基及び反応基を含み、すなわちアセチレン(またはアジド)であり、薬物-(第一のリンカー)コンジュゲートと、アセチレン-アジド付加環化反応を介して反応して、疾患標的抗体へのコンジュゲートに有用な最終二官能性薬物産物を供給し得る。抗体カップリング基は、好ましくは、チオールまたはチオール反応性基のいずれかである。
【0042】
アセチレン-アジド「クリックケミストリー」カップリングでは、銅(+1)触媒性付加環化反応が、アセチレン部分及びアジド部分の間で生じる(Kolb HC and Sharpless KB,Drug Discov Today 2003;8:1128-37)が、クリックケミストリーの代替の形態も公知であり使用してよい。反応には、ジクロロメタンなどの非極性有機溶媒における高度に効率的なカップリングを可能にするために臭化銅及びトリフェニルホスフィンの混合物を使用する。クリックケミストリーの利点は、それが化学選択的であり、チオール-マレイミド反応などの他の周知のコンジュゲーション化学反応を補完することである。以下の考察では、コンジュゲートが抗体または抗体断片を含む場合、標的化ペプチドなどの別の型の結合部分が置換されてよい。
【0043】
SN-38などのCPT類似体を必然的に含む薬物-リンカー前駆体の調製におけるC-20炭酸塩の存在下での10-ヒドロキシル基の選択的再生のための方法を以下に提供する。SN-38のフェノール性ヒドロキシルなどの薬物内の反応性ヒドロキシル基に対する他の保護基、例えば、t-ブチルジメチルシリルまたはt-ブチルジフェニルシリルも使用してよく、これらは、抗体-カップリング部分への誘導体化された薬物の連結の前にテトラブチルアンモニウムフルオリドによって脱保護されてよい。CPT類似体の10-ヒドロキシル基はあるいは、「BOC」以外のエステルまたは炭酸塩として保護され、それにより二官能性CPTはこの保護基の先行する脱保護なしで抗体にコンジュゲートする。保護基は、該生体コンジュゲートが投与された後に生理学的pH条件下で容易に脱保護され得る。
【0044】
ADCの例示的な実施形態を
図1に示し、これはSN-38カンプトテシンに細胞内で切断可能なCL2Aリンカーを介してコンジュゲートされたhRS7(抗TROP-2)の構造を示す。
【0045】
様々な実施形態では、抗体及び薬物のコンジュゲートは、数百グラムのコンジュゲートを精製するために25~30透析濾過容量のコンジュゲート製剤緩衝液を用いて50,000Daの分子量のカットオフ膜を使用するタンジェンシャルフローろ過(TFF)法によって精製され得る。この方法は、サイズ排除及び疎水性クロマトグラフィーカラム上での高価かつ扱いにくいクロマトグラフィー精製を採用する必要性を除去する。
【0046】
他の実施形態では、コンジュゲートは、6~7.0のpHのグッドの生物学的緩衝液中で製剤化され、保存のために凍結乾燥される。好ましくは、グッドの緩衝液は、6~7のpH範囲、好ましくは6.5~7のpH範囲で、10~100mM、好ましくは25mMの緩衝液濃度の、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES)、及び1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸(PIPES)からなる群から選択される。最も好ましい製剤緩衝液は、25mM MES、pH6.5である。
【0047】
さらなる実施形態では、精製されたコンジュゲートは、トレハロース及びポリソルベート80などの賦形剤と組み合わされ、凍結乾燥され、-20℃~8℃の温度範囲で凍結乾燥体として保存される。
【0048】
アントラサイクリンコンジュゲート
図2は、ADCを形成するためのコンジュゲーションに使用する例示的なアントラサイクリンである、プロ-2-ピロリノドキソルビシン(P2PDox)を示す。親化合物である、2-ピロリノドキソルビシンは、1996年Schallyのグループにより最初に記載され、彼らは、後にそれを前臨床探索のために多くの受容体標的化ペプチドにコンジュゲートするために使用した(Nagy et al.,1996a,Proc Natl Acad Sci USA 93:7269-73;Nagy et al.,1996b,Proc Natl Acad Sci USA 93:2464-9;Nagy et al.,1997,Proc Natl Acad Sci USA 94:652-6;Nagy et al.,1998,Proc Natl Acad Sci USA 95:1794-9)。これはドキソルビシンの誘導体であり、5員エナミンに組み込まれたダウノサミン窒素を有し、極めて強力なアルキル化剤となり、ドキソルビシンの500~1000倍の細胞毒性を有する。この薬物の超毒性は、安全性のため、アイソレーター内で特別に扱う必要がある。
【0049】
2-ピロリノドキソルビシンのプロドラッグ形態が別のグループにより調査され、彼らは、N-(4,4-ジアセトキシブチル)ドキソルビシンと称したドキソルビシンの誘導体を開示した(Farquhar et al.,1998,J Med Chem 41:965-72;米国特許第5,196,522号;同第6,433,150号)。この誘導体は、in vivoで2-ピロリノドキソルビシンに変換可能である。この誘導体は、4,4-ジアセトキシブチルアルデヒドでのドキソルビシンの還元性アルキル化により調製された。しかしながら、このプロドラッグは、ジスルフィド還元型抗体のチオールで、切断可能なリンカーとしてヒドラゾンなどの酸に不安定な基を使用して抗体または他の標的化分子に付着しなかった。
【0050】
以下の様々な実施例は、ネオアジュバント使用のためのADCにおける薬物としてP2PDoxを使用する。この物質には、(i)プロドラッグのみを扱うことにより、安全性の懸念を軽減すること;(ii)原材料のドキソルビシン(Dox)がcGMPグレードにて量的に入手可能であること、(iii)Doxを活性化P2PDox(P2PDox)に変換する化学は、数ステップの合成のみを含むこと、のいくつかの利点がある。
図2A~2Dは、Dox、2-PDox、P2PDox(P2PDox)、及び活性化P2PDoxの構造を示す。IgGへのカップリングについては、本発明者らは、P2PDoxをSMCC-ヒドラジドで活性化させた。これは酸に不安定なヒドラゾンならびにマレイミド基を導入する手法であり、マレイミド基は穏やかに還元した抗体のチオールのコンジュゲーションに用いる。
【0051】
ADCネオアジュバント使用のための薬物のうちの1つとしての2-ピロリノドキソルビシン、特にMAbにコンジュゲートするためのそのプロドラッグ形態の選択により、迅速にイムノコンジュゲートを開発でき、それは原材料のドキソルビシンがcGMpグレードで容易に入手可能であるためである。P2PDox上のケトンは、単一ステップで酸に不安定なヒドラゾン及び抗体結合性マレイミド基を組み込むためのハンドルを提供する。2-PDoxの場合のドキソルビシンのアミノ基の誘導体化は、先行文献(Farquhar et al.,1998,41:965-72;Guillemard&Uri,2004,Oncogene 23:3613-21)に基づき、ドキソルビシンに伴う複数の薬剤抵抗性を克服するものであるべきである。この設計は、in vivoで生成される活性2-ピロリノドキソルビシン構造に影響を与えることなく、目的物質を放射性標識する、及び/または投与可能な用量をさらに調節するため、必要な場合には、リンカーまたはN-アルキル部に親水基を付加する選択肢を提供する。
【0052】
他者により現在試験されているADCの大部分は、チューブリンに作用し、毒性の極めて高い、マイタンシノイド及びオーリスタチンを組み込み、これらは細胞周期相に特異的である。通例、トラスツズマブ-DM1を除き、これらのADCは、臨床的に固形癌において比較的狭い治療指数を呈するとされる。2-PDoxなどのDNA-アルキル化剤は、細胞周期相に非特異的である。本提案のADCは、異なる細胞殺傷機序、EpCAM MAbなどの他の多くよりも高い癌特異性を示す内部移行抗体、及び連結の化学により作用する薬剤成分に基づき、他の超毒性ADCからの逸脱した利点を提供し、改善した治療指数を提供する。以下に示すように、膵臓癌、乳癌、及び胃癌の侵攻性異種移植モデルにおいて現在までに行われた前臨床試験は、hRS7-P2PDoxコンジュゲートが低く安全な用量で非常に活性であり、完全な退縮をもたらすことを示す。ヒト血液腫瘍及び固形腫瘍を有するマウスを、このような腫瘍を標的化し、P2PDoxとコンジュゲートする様々な抗体で処置した試験もまた、通常5%未満の死亡率をもたらす用量である、最大耐量(MTD)より低くあるように用量を調節することにより制御される、好中球減少症に主に起因する用量制限毒性を伴う、低頻度用量でさえも、優れた腫瘍制御(対照群と比較して、増殖の遅延または後退)を示す。本試験は、抗体-P2PDoxコンジュゲートのネオアジュバント使用を支持する。
【0053】
一般的な抗体技術
事実上あらゆる標的抗原に対するモノクローナル抗体を調製するための技術は、当該分野で周知である。例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)、及びColigan et al.(eds.),CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,VOL,1,pages 2.5.1-2.6.7(John Wiley&Sons 1991)を参照されたい。簡潔には、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物をマウスに注射すること、脾臓を取り出してBリンパ球を得ること、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを産生すること、ハイブリドーマをクローニングすること、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択すること、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養すること、及び抗体をハイブリドーマ培養物から単離することによって得ることができる。
【0054】
キメラ抗体またはヒト化抗体の産生などの様々な技術は、抗体のクローニング及び構築の手順を必然的に含み得る。目的の抗体に関する抗原結合性Vκ(可変軽鎖)配列及びVH(可変重鎖)配列は、様々な分子クローニング手順、例えば、RT-PCR、5’-RACE、及びcDNAライブラリスクリーニングによって得られ得る。マウス抗体を発現する細胞由来の抗体のV遺伝子は、PCR増幅によってクローニングされ、配列決定することができる。それらの確実性を確認するために、クローニングしたVL遺伝子及びVH遺伝子は、Orlandi et al.,(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86:3833(1989))により記載されるように、キメラAbとして細胞培養物中で発現することができる。V遺伝子配列に基づき、ヒト化抗体は次に、Leung et al.(Mol.Immunol.,32:1413(1995))により記載されるように設計及び構築されることができる。
【0055】
cDNAは、一般的な分子クローニング技術(Sambrook et al.,Molecular Cloning,A laboratory manual,2nd Ed(1989))によりマウス抗体を産生する任意の公知のハイブリドーマ株またはトランスフェクトした細胞株から調製することができる。抗体に関するVκ配列は、プライマーVK1BACK及びVK1FOR(Orlandi et al.,1989)またはLeung et al.(BioTechniques,15:286(1993))により記載される伸長したプライマーセットを用いて増幅され得る。VH配列は、プライマー対VH1BACK/VH1FOR(Orlandi et al.,1989)またはLeung et al.(Hybridoma,13:469(1994))により記載されるマウスIgGの定常部にアニーリングするプライマーを用いて増幅することができる。ヒト化V遺伝子は、Leung et al.(Mol.Immunol.,32:1413(1995))により記載されるように、長いオリゴヌクレオチド鋳型合成及びPCR増幅の組み合わせによって構築することができる。
【0056】
VκについてのPCR産物は、Igプロモーター、シグナルペプチド配列及び好都合な制限部位を含有する、pBR327ベースのステージングベクターであるVKpBRなどのステージングベクター中にサブクローニングすることができる。VHについてのPCR産物は、pBluescriptベースのVHpBSなどの同様のステージングベクター中にサブクローンニングすることができる。プロモーター及びシグナルペプチド配列とともにVκ配列及びVH配列を含有する発現カセットは、VKpBR及びVHpBSから切り出して、それぞれpKh及びpGlgなどの、適切な発現ベクター中にライゲートすることができる(Leung et al.,Hybridoma,13:469(1994))。発現ベクターは、適切な細胞内に同時トランスフェクトすることができ、上清液は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体の産生についてモニターされることができる。あるいは、Vκ及びVH発現カセットは、切り出して、Gillies et al.(J.Immunol.Methods 125:191(1989))により記載され、Losman et al.,Cancer,80:2660(1997)においても示されるように、pdHL2などの単一発現ベクター中にサブクローンニングすることができる。
【0057】
代替的な実施形態では、発現ベクターは、無血清培地中でのトランスフェクション、増殖及び発現にあらかじめ適応している宿主細胞へとトランスフェクトされ得る。使用してよい例示的な細胞株としては、Sp/EEE、Sp/ESF及びSp/ESF-X細胞株が挙げられる(例えば、米国特許第7,531,327号;同第7,537,930号及び同第7,608,425号を参照されたく;これらの各々の実施例項は参照により本明細書に組み込まれる)。これらの例示的な細胞株は、Sp2/0骨髄腫細胞株をベースとし、突然変異体Bcl-EEE遺伝子でトランスフェクトされ、メトトレキサートに曝露されてトランスフェクトした遺伝子配列を増幅し、タンパク質発現のために無血清細胞株にあらかじめ適応している。
【0058】
キメラ及びヒト化抗体
キメラ抗体とは、ヒト抗体の可変領域が、例えば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含むマウス抗体の可変領域により置き換えられている組換えタンパク質である。キメラ抗体は、対象に投与されたとき、低減した免疫原性及び増加した安定性を呈する。キメラ抗体を構築するための方法は、当該分野で周知である(例えば、Leung et al.,1994,Hybridoma 13:469)。
【0059】
キメラモノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖可変鎖からヒト抗体の対応する可変ドメインへとマウスCDRを移植することによってヒト化され得る。キメラモノクローナル抗体におけるマウスフレームワーク領域(FR)も、ヒトFR配列と置き換えられる。ヒト化モノクローナルの安定性及び抗原特異性を保存するために、1つまたは複数のヒトFR残基がマウス対応物残基により置き換えられ得る。ヒト化モノクローナル抗体は、対象の治療的処置のために使用してよい。ヒト化モノクローナル抗体を産生するための技術は、当該分野で周知である(例えば、Jones et al.,1986,Nature,321:522;Riechmann et al.,Nature,1988,332:323;Verhoeyen et al.,1988,Science,239:1534;Carter et al.,1992,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,89:4285;Sandhu,Crit.Rev.Biotech.,1992,12:437;Tempest et al.,1991,Biotechnology 9:266;Singer et al.,J.Immun.,1993,150:2844を参照されたい)。
【0060】
他の実施形態は、非ヒト霊長類抗体に関し得る。ヒヒにおける治療上有用な抗体を生じるための一般的な技術は、例えば、Goldenberg et al.,WO91/11465(1991)において、及びLosman et al.,Int.J.Cancer 46:310(1990)において見出され得る。別の実施形態では、抗体は、ヒトモノクローナル抗体であり得る。このような抗体は、以下に考察するように、抗原攻撃に応答して特定のヒト抗体を産生するように操作されているトランスジェニックマウスから得られ得る。
【0061】
ヒト抗体
組み合わせアプローチまたはヒト免疫グロブリン遺伝子座を用いて形質転換したトランスジェニック動物のいずれかを用いて完全ヒト抗体を産生するための方法は、当該分野で公知である(例えば、Mancini et al.,2004,New Microbiol.27:315-28;Conrad and Scheller,2005,Comb.Chem.High Throughput Screen.8:117-26;Brekke and Loset,2003,Curr.Opin.Phamacol.3:544-50;各々参照により本明細書に組み込まれる)。このような完全ヒト抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体よりもさらに少ない副作用を呈し、本質的に内在性のヒト抗体としてin vivoで機能すると期待される。ある特定の実施形態では、特許請求する方法及び手順は、このような技術によって産生されるヒト抗体を利用し得る。
【0062】
ある代替では、ファージディスプレー技術を使用して、ヒト抗体を生成してよい(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Dantas-Barbosa et al.,2005,Genet.Mol.Res.4:126-40)。ヒト抗体は、正常なヒトから、または癌などの特定の疾患状態を呈するヒトから生成されてよい(Dantas-Barbosa et al.,2005)。罹患した個体からヒト抗体を構築する利点は、循環中の抗体レパートリーが疾患関連抗原に対する抗体へと偏っている可能性があることである。
【0063】
この方法論の1つの非限定的な例では、Dantas-Barbosa et al.(2005)は、骨肉腫患者からヒトFab抗体断片のファージディスプレーライブラリを構築した。概して、総RNAを循環血リンパ球から獲得した(同書)。組換えFabをμ、γ及びκ鎖抗体レパートリーからクローニングし、ファージディスプレーライブラリ中に挿入した(同書)。RNAをcDNAへ変換し、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン配列に対して特異的なプライマーを用いてFab cDNAライブラリを作成するために使用した(参照により本明細書に組み込まれる、Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581-97)。ライブラリ構築は、Andris-Widhopf et al.(2000、参照により本明細書に組み込まれる、Phage Display Laboratory Manual,Barbas et al.(eds),1st edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY pp.9.1 to 9.22内)に従って実施した。最終Fab断片は、制限エンドヌクレアーゼで消化され、バクテリオファージゲノム中に挿入されて、ファージディスプレーライブラリを作成した。このようなライブラリは、標準的なファージディスプレー法によってスクリーニングされてよい。当業者は、この技術が例示であるに過ぎず、ファージディスプレーによるヒト抗体または抗体断片を作成及びスクリーニングするための任意の公知の方法が利用されてよいことを認識するだろう。
【0064】
別の代替では、ヒト抗体を産生するように遺伝子操作されているトランスジェニック動物を使用して、上に考察した標準的な免疫化プロトコルを用いて、本質的にあらゆる免疫原性標的に対する抗体を生成し得る。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al.,Nature Genet.7:13(1994)、Lonberg et al.,Nature 368:856(1994)、及びTaylor et al.,Int.Immun.6:579(1994)により記載されている。このような系の非限定的な例は、Abgenix(カリフォルニア州、フリーモント)製のXenoMouse(登録商標)(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Green et al.,1999,J.Immunol.Methods 231:11-23)である。XenoMouse(登録商標)及び類似の動物では、マウス抗体遺伝子は、不活性化されており、機能的ヒト抗体遺伝子により置き換えられているが、マウス免疫系の残りはインタクトなままである。
【0065】
XenoMouse(登録商標)は、アクセサリー遺伝子及び制御配列とともに可変領域配列の大部分を含むヒトIgH及びIgカッパ遺伝子座の複数の部分を含有する生殖細胞系列により構成されたYAC(酵母人工染色体)を用いて形質転換された。ヒト可変領域レパートリーを使用して、抗体産生性B細胞を生成してよく、これを公知の技術によりハイブリドーマへと処理してよい。標的抗原で免疫化したXenoMouse(登録商標)は、正常な免疫応答によりヒト抗体を産生し得、これは、上に考察した標準的な技術によって回収及び/または産生され得る。様々な系統のXenoMouse(登録商標)が入手可能であり、これらの各々は、異なるクラスの抗体を産生することができる。遺伝子導入により産生されたヒト抗体は、正常なヒト抗体の薬物動態特性を保有しながら、治療可能性を有することが示されている(Green et al.,1999)。当業者は、特許請求する組成物及び方法が、XenoMouse(登録商標)系の使用に限定されるのではなく、ヒト抗体を産生するように遺伝子操作された任意のトランスジェニック動物を利用し得ることを認識するだろう。
【0066】
抗体断片の産生
抗体断片は、例えば、従来法によって抗体全体のペプシンまたはパパイン消化により得られ得る。例えば、抗体断片は、F(ab’)2と示される5S断片を提供するようにペプシンによる抗体の酵素的切断により産生されてよい。この断片は、チオール還元剤を、及び任意で、ジスルフィド連結の切断から結果的に生じるスルフヒドリル基のブロッキング基を用いてさらに切断して、3.5S Fab’一価断片を産生し得る。あるいは、ペプシンを用いる酵素的切断は、2つの一価Fab断片及びFc断片を産生する。抗体断片を産生するための例示的な方法は、米国特許第4,036,945号、米国特許第4,331,647号、Nisonoff et al.,1960,Arch Biochem Biophys,89:230;Porter,1959,Biochem.J.,73:119;Edelman et al.,1967,METHODS IN ENZYMOLOGY,page 422(Academic Press)、及びColigan et al.(eds.),1991,CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,(John Wiley&Sons)において開示されている。
【0067】
重鎖の分離など、抗体を切断して、一価の軽鎖-重鎖断片を形成する他の方法、断片のさらなる切断または他の酵素的、化学的もしくは遺伝的技術も、インタクト抗体によって認識される抗原に断片が結合する限り、使用してよい。例えば、Fv断片は、VH鎖及びVL鎖の会合を含む。この会合は、Inbar et al.,1972,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,69:2659において記載されるように、非共有結合であることができる。あるいは、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結されてよいか、またはグルタルアルデヒドなどの化学物質によって架橋されてよい。Sandhu,1992,Crit.Rev.Biotech.,12:437を参照されたい。
【0068】
好ましくは、Fv断片は、ペプチドリンカーによって接続したVH鎖及びVL鎖を含む。これらの一本鎖抗原結合性タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドリンカー配列によって接続するVHドメイン及びVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子は、発現ベクターへと挿入され、これはその後、大腸菌などの宿主細胞へと導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを用いて一本鎖ポリペプチドを合成する。scFvを産生するための方法は、当該分野で周知である。Whitlow et al.,1991,Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:97;Bird et al.,1988,Science,242:423;米国特許第4,946,778号;Pack et al.,1993,Bio/Technology,11:1271、及びSandhu,1992,Crit.Rev.Biotech.,12:437を参照されたい。
【0069】
抗体断片の別の形態は、単一ドメイン抗体(dAb)であり、時に一本鎖抗体と称される。単一ドメイン抗体を産生するための技術は当該分野で周知である(例えば、Cossins et al.,Protein Expression and Purification,2007,51:253-259;Shuntao et al.,Molec Immunol 06,43:1912-19;Tanha et al.,J.Biol.Chem.2001,276:24774-780を参照されたい)。他の型の抗体断片は、1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を含み得る。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。このような遺伝子は例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって得ることができる。Larrick et al.,1991,Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106;Ritter et al.(eds.),1995,MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,pages 166-179(Cambridge University Press)、Birch et al.,(eds.)1995,MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS,pages 137-185(Wiley-Liss,inc.)を参照されたい。
【0070】
抗体変動
ある特定の実施形態では、抗体のFc部分などの抗体の配列は、血清中の半減期など、コンジュゲートの生理学的特徴を最適化するように変動してよい。タンパク質におけるアミノ酸配列を置換する方法は、当該分野で広く公知であり、例えば、部位特異的突然変異誘発による(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A laboratory manual、2nd Ed,1989)。好ましい実施形態では、変動はFc配列中の1つまたは複数のグリコシル化部位の付加または除去を必然的に含み得る(例えば、その実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,254,868号)。他の好ましい実施形態では、Fc配列における特定のアミノ酸置換がなされ得る(例えば、Hornick et al.,2000,J Nucl Med 41:355-62;Hinton et al.,2006,J Immunol 176:346-56;Petkova et al.2006,Int Immunol 18:1759-69;米国特許第7,217,797号;各々参照により本明細書に組み込まれる)。
【0071】
抗体アロタイプ
治療用抗体の免疫原性は、注入反応の危険性の増加及び治療応答の持続時間の低減と関係している(Baert et al.,2003,N Engl J Med 348:602-08)。治療用抗体が宿主において免疫応答を誘導する程度は、抗体のアロタイプによって一部決定され得る(Stickler et al.,2011,Genes and Immunity 12:213-21)。抗体アロタイプは、抗体の定常領域配列における特定の位置にあるアミノ酸配列の変動と関連する。重鎖γ型定常領域を含有するIgG抗体のアロタイプは、Gmアロタイプと命名されている(1976,J Immunol 117:1056-59)。
【0072】
一般的なIgG1ヒト抗体について、最も優勢なアロタイプは、G1m1である(Stickler et al.,2011,Genes and Immunity 12:213-21)。しかしながら、G1m3アロタイプもコーカサス人種において頻繁に生じる(Stickler et al.,2011)。G1m3患者など、非G1m1(nG1m1)レシピエントに投与したとき免疫応答を誘導する傾向があるアロタイプ配列をG1m1抗体が含有することが報告されている(Stickler et al.,2011)。非G1m1アロタイプ抗体は、G1m1患者に投与したとき、それほど免疫原性ではない(Stickler et al.,2011)。
【0073】
ヒトG1m1アロタイプは、重鎖IgG1のCH3配列におけるKabat位置356でアスパラギン酸、Kabat位置358でロイシンのアミノ酸を含む。nG1m1アロタイプは、アミノ酸のグルタミン酸をKabat位置356で、メチオニンをKabat位置358で含む。G1m1及びnG1m1アロタイプは両方とも、グルタミン酸残基をKabat位置357で含み、アロタイプは、DEL及びEEMアロタイプと称されるときもある。G1m1及びnG1m1アロタイプ抗体での重鎖定常領域配列の非限定的な例を、例示的な抗体リツキシマブ(配列番号1)及びベルツズマブ(配列番号2)について以下に示す。
【0074】
【0075】
Jefferis and Lefranc(2009,MAbs 1:1-7)は、IgGアロタイプの配列変動特徴及び免疫原性に及ぼすそれらの効果を概説している。彼らは、G1m3アロタイプが、G1m17アロタイプにおけるKabat214のリジン残基と比較して、Kabat位置214のアルギニン残基を特徴とすると報告した。nG1m1,2アロタイプは、Kabat位置356のグルタミン酸、Kabat位置358のメチオニン及びKabat位置431のアラニンを特徴とした。G1m1,2アロタイプは、Kabat位置356のアスパラギン酸、Kabat位置358のロイシン及びKabat位置431のグリシンを特徴とした。重鎖定常領域配列変異体に加えて、Jefferis and Lefranc(2009)は、Kabat位置153のバリン及びKabat位置191のロイシンを特徴とするKm1アロタイプ、Kabat位置153のアラニン及びKabat位置191のロイシンによるKm1,2アロタイプ、ならびにKabat位置153のアラニン及びKabat位置191のバリンを特徴とするKm3アロタイプを有するカッパ軽鎖定常領域におけるアロタイプ変異体を報告した。
【0076】
治療用抗体に関して、ベルツズマブ及びリツキシマブはそれぞれ、広範な血液学的悪性腫瘍の治療のために使用する、CD20に対するヒト化IgG1抗体及びキメラIgG1抗体である。表1は、リツキシマブ対ベルツズマブのアロタイプ配列を比較する。表1に示すように、リツキシマブ(G1m17,1)は、DELアロタイプIgG1であり、リツキシマブにおいてリジン対ベルツズマブにおいてアルギニンの、Kabat位置214(重鎖CH1)での追加的な配列変動を有する。対象における免疫原性がベルツズマブはリツキシマブよりも低いことが報告されており(例えば、Morchhauser et al.2009,J Clin Oncol 27:3346-53;Goldenberg et al.2009,Blood 113:1062-70;Robak and Robak,2011,BioDrugs 25:13-25を参照されたい)、これはヒト化抗体とキメラ抗体の間の差に起因している効果である。しかしながら、EEMアロタイプとDELアロタイプの間のアロタイプにおける差も、ベルツズマブの比較的低い免疫原性の原因である可能性がある。
【0077】
【0078】
nG1m1遺伝子型の個体における治療用抗体の免疫原性を低下させるために、Kabat214のアルギニンを特徴とするG1m3アロタイプならびにKabat位置356のグルタミン酸、Kabat位置358のメチオニン及びKabat位置431のアラニンを特徴とするnG1m1,2ヌルアロタイプに対応するように抗体のアロタイプを選択することが望ましい。驚くべきことに、長期間にわたるG1m3抗体の反復皮下投与は、有意な免疫応答を結果として生じなかったことが見出された。代替的な実施形態では、G1m3アロタイプと同様にヒトIgG4重鎖は、アルギニンをKabat214で、グルタミン酸をKabat356で、メチオニンをKabat359で、及びアラニンをKabat431で有する。免疫原性は、これらの位置の残基に少なくとも一部関連しているように思われるため、治療用抗体のためのヒトIgG4重鎖定常領域配列の使用も好ましい実施形態である。G1m3 IgG1抗体とIgG4抗体の組み合わせも、治療用投与のために使用され得る。
【0079】
既知の抗体
様々な実施形態では、特許請求する方法及び組成物は、当該分野で公知の様々な抗体のうちのいずれかを利用してよい。使用する抗体は、いくつかの公知の源から商業的に得てよい。例えば、様々な抗体分泌性ハイブリドーマ株は、米国培養細胞系統保存機関(ATCC、バージニア州マナサス)から入手可能である。腫瘍関連抗原を含むがこれらに限定されない様々な疾患標的に対する多数の抗体は、ATCCに寄託されており、かつ/または可変領域配列を公開しており、特許請求する方法及び組成物における使用に利用可能である。例えば、米国特許第7,312,318号;同第7,282,567号;同第7,151,164号;同第7,074,403号;同第7,060,802号;同第7,056,509号;同第7,049,060号;同第7,045,132号;同第7,041,803号;同第7,041,802号;同第7,041,293号;同第7,038,018号;同第7,037,498号;同第7,012,133号;同第7,001,598号;同第6,998,468号;同第6,994,976号;同第6,994,852号;同第6,989,241号;同第6,974,863号;同第6,965,018号;同第6,964,854号;同第6,962,981号;同第6,962,813号;同第6,956,107号;同第6,951,924号;同第6,949,244号;同第6,946,129号;同第6,943,020号;同第6,939,547号;同第6,921,645号;同第6,921,645号;同第6,921,533号;同第6,919,433号;同第6,919,078号;同第6,916,475号;同第6,905,681号;同第6,899,879号;同第6,893,625号;同第6,887,468号;同第6,887,466号;同第6,884,594号;同第6,881,405号;同第6,878,812号;同第6,875,580号;同第6,872,568号;同第6,867,006号;同第6,864,062号;同第6,861,511号;同第6,861,227号;同第6,861,226号;同第6,838,282号;同第6,835,549号;同第6,835,370号;同第6,824,780号;同第6,824,778号;同第6,812,206号;同第6,793,924号;同第6,783,758号;同第6,770,450号;同第6,767,711号;同第6,764,688号;同第6,764,681号;同第6,764,679号;同第6,743,898号;同第6,733,981号;同第6,730,307号;同第6,720,155号;同第6,716,966号;同第6,709,653号;同第6,693,176号;同第6,692,908号;同第6,689,607号;同第6,689,362号;同第6,689,355号;同第6,682,737号;同第6,682,736号;同第6,682,734号;同第6,673,344号;同第6,653,104号;同第6,652,852号;同第6,635,482号;同第6,630,144号;同第6,610,833号;同第6,610,294号;同第6,605,441号;同第6,605,279号;同第6,596,852号;同第6,592,868号;同第6,576,745号;同第6,572,856号;同第6,566,076号;同第6,562,618号;同第6,545,130号;同第6,544,749号;同第6,534,058号;同第6,528,625号;同第6,528,269号;同第6,521,227号;同第6,518,404号;同第6,511,665号;同第6,491,915号;同第6,488,930号;同第6,482,598号;同第6,482,408号;同第6,479,247号;同第6,468,531号;同第6,468,529号;同第6,465,173号;同第6,461,823号;同第6,458,356号;同第6,455,044号;同第6,455,040号、同第6,451,310号;同第6,444,206号;同第6,441,143号;同第6,432,404号;同第6,432,402号;同第6,419,928号;同第6,413,726号;同第6,406,694号;同第6,403,770号;同第6,403,091号;同第6,395,276号;同第6,395,274号;同第6,387,350号;同第6,383,759号;同第6,383,484号;同第6,376,654号;同第6,372,215号;同第6,359,126号;同第6,355,481号;同第6,355,444号;同第6,355,245号;同第6,355,244号;同第6,346,246号;同第6,344,198号;同第6,340,571号;同第6,340,459号;同第6,331,175号;同第6,306,393号;同第6,254,868号;同第6,187,287号;同第6,183,744号;同第6,129,914号;同第6,120,767号;同第6,096,289号;同第6,077,499号;同第5,922,302号;同第5,874,540号;同第5,814,440号;同第5,798,229号;同第5,789,554号;同第5,776,456号;同第5,736,119号;同第5,716,595号;同第5,677,136号;同第5,587,459号;同第5,443,953号;同第5,525,338号を参照されたく、この各々の実施例項は参照により本明細書に組み込まれる。これらは、例示的であるに過ぎず、広範な他の抗体及びそれらのハイブリドーマは当該分野で公知である。当業者は、ほぼあらゆる疾患関連抗原に対する抗体配列または抗体分泌性ハイブリドーマを、目的の選択された疾患関連標的に対する抗体について、ATCC、NCBI及び/またはUSPTOのデータベースを簡単に検索することによって得られ得ることを認識するだろう。クローニングされた抗体の抗原結合性ドメインを、当該分野で周知の標準的な技術を用いて、増幅し、切除し、発現ベクターにライゲートし、適応させた宿主細胞にトランスフェクトし、タンパク質産生のために使用し得る(例えば、米国特許第7,531,327号;同第7,537,930号;同第7,608,425号及び同第7,785,880号を参照されたく、これらの各々の実施例項は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0080】
本特許請求の方法及び組成物の範囲内で使用され得る具体的な抗体には、LL1(抗CD74)、LL2またはRFB4(抗CD22)、ベルツズマブ(hA20、抗CD20)、リツクスマブ(rituxumab)(抗CD20)、オビヌツズマブ(GA101、抗CD20)、ラムブロリズマブ(抗PD-1受容体)、ニボルマブ(抗PD-1受容体)、イピリムマブ(抗CTLA-4)、RS7(抗上皮糖タンパク質-1(EGP-1、TROP-2としても知られる))、PAM4またはKC4(ともに抗ムチン)、MN-14(抗癌胎児性抗原(CEA、CD66eまたはCEACAM5としても知られる)、MN-15またはMN-3(抗CEACAM6)、Mu-9(抗結腸特異的抗原-p)、Immu31(抗アルファ-フェトプロテイン)、R1(抗IGF-1R)、A19(抗CD19)、TAG-72(例えば、CC49)、Tn、J591またはHuJ591(抗PSMA(前立腺特異的膜抗原))、AB-PG1-XG1-026(抗PSMAダイマー)、D2/B(抗PSMA)、G250(抗炭酸脱水酵素IX MAb)、L243(抗HLA-DR)アレムツズマブ(抗CD52)、ベバシズマブ(抗VEGF)、セツキシマブ(抗EGFR)、ゲムツズマブ(抗CD33)、イブリツモマブチウキセタン(抗CD20);パニツムマブ(抗EGFR);トシツモマブ(抗CD20);PAM4(アカクリバツズマブ(aka clivatuzumab)、抗ムチン)及びトラスツズマブ(抗ErbB2)が含まれるが、これらに限定されない。このような抗体は当該分野で公知である(例えば、米国特許第5,686,072号;同第5,874,540号;同第6,107,090号;同第6,183,744号;同第6,306,393号;同第6,653,104号;同第6,730.300号;同第6,899,864号;同第6,926,893号;同第6,962,702号;同第7,074,403号;同第7,230,084号;同第7,238,785号;同第7,238,786号;同第7,256,004号;同第7,282,567号;同第7,300,655号;同第7,312,318号;同第7,585,491号;同第7,612,180号;同第7,642,239号;及び米国特許出願公開第20050271671号;同第20060193865号;同第20060210475号;同第20070087001号;それぞれの実施例項は参照により本明細書に組み込まれる)。使用する特定の公知の抗体には、hPAM4(米国特許第7,282,567号)、hA20(米国特許第7,151,164号)、hA19(米国特許第7,109,304号)、hIMMU-31(米国特許第7,300,655号)、hLL1(米国特許第7,312,318号)、hLL2(米国特許第5,789,554号)、hMu-9(米国特許第7,387,772号)、hL243(米国特許第7,612,180号)、hMN-14(米国特許第6,676,924号)、hMN-15(米国特許第8,287,865号)、hR1(米国特許出願第12/772,645号)、hRS7(米国特許第7,238,785号)、hMN-3(米国特許第7,541,440号)、AB-PG1-XG1-026(米国特許出願第11/983,372号、ATCC PTA-4405及びPTA-4406として寄託)及びD2/B(WO2009/130575)が含まれ、各記載の特許または出願の文書は、図及び実施例項に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
本明細書に記載のコンジュゲートを使用して標的化され得る他の有用な抗原には、炭酸脱水酵素IX、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、α-アクチニン-4、A3、A33抗体に特異的な抗原、ART-4、B7、Ba733、BAGE、BrE3-抗原、CA125、CAMEL、CAP-1、CASP-8/m、CCL19、CCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、
CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a-e、CD67、CD70、CD70L、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD132、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK-4/m、CDKN2A、CTLA-4、CXCR4、CXCR7、CXCL12、HIF-1α、結腸特異的抗原-p(CSAp)、CEACAM5、CEACAM6、c-Met、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP-1(TROP-2)、EGP-2、ELF2-M、Ep-CAM、線維芽細胞増殖因子(FGF)、Flt-1、Flt-3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、gp100、GRO-β、HLA-DR、HM1.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)及びそのサブユニット、HER2/neu、HMGB-1、低酸素誘導因子(HIF-1)、HSP70-2M、HST-2、Ia、IGF-1R、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IFN-λ、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-25、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、KC4-抗原、KS-1-抗原、KS1-4、Le-Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、MAGE、MAGE-3、MART-1、MART-2、NY-ESO-1、TRAG-3、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5ac、MUC13、MUC16、MUM-1/2、MUM-3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM4抗原、膵臓癌ムチン、PD-1、PD-L1、PD-1受容体、胎盤増殖因子、p53、PLAGL2、前立腺性酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PlGF、ILGF、ILGF-1R、IL-6、IL-25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン-2B、TAC、TAG-72、テネイシン、TRAIL受容体、TNF-α、Tn抗原、トムソン-フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED-Bフィブロネクチン、WT-1、17-1A-抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl-2、bcl-6、Kras、発がん遺伝子マーカー及び発がん遺伝子産物が含まれる(例えば、Sensi et al.,Clin Cancer Res 2006,12:5023-32;Parmiani et al.,J Immunol 2007,178:1975-79;Novellino et al.Cancer Immunol Immunother 2005,54:187-207を参照されたい)。
【0082】
好適な抗原の包括的な分析(クラスター指定またはCD)は、フローサイトメトリーによって示すように、造血器悪性細胞を標的としており、薬物とコンジュゲートする免疫療法に好適な抗体を選択するためのガイドであることができ、2008年1月15日にオンラインで事前公開した、Craig and Foon,Blood;DOL 10.1182/blood-2007-11-120535である。
【0083】
CD66抗原は、類似の構造を有する5つの異なる糖タンパク質であるCD66a-eからなり、それぞれ癌胎児性抗原(CEA)遺伝子ファミリーメンバー、BCG、CGM6、NCA、CGM1及びCEAによりコードされる。これらのCD66抗原(例えば、CEACAM6)は主に、顆粒球、消化管の正常上皮細胞及び様々な組織の腫瘍細胞において発現する。また、癌に好適な標的として含まれているのは、NY-ESO-1などの癌精巣抗原(Theurillat et al.,Int.J.Cancer 2007;120(11):2411-7)、ならびに骨髄性白血病における(Kozlov et al.,Cancer Genet.Cytogenet.2005;163(1):62-7)及びB細胞疾患にもおけるCD79a、ならびに非ホジキンリンパ腫についてのCD79b(Poison et al.,Blood 110(2):616-623)である。いくつかの上述の抗原は、2002年11月15日に出願された“Use of Multi-specific,Non-covalent Complexes for Targeted Delivery of Therapeutics”という表題の米国仮特許出願第60/426,379号に開示されている。より治療抵抗性の高い前駆体悪性細胞集団であることが原因であるとされている癌幹細胞(Hill and Perris,J.Natl.Cancer Inst.2007;99:1435-40)は、前立腺癌(Maitland et al.,Ernst Schering Found.Sympos.Proc.2006;5:155-79)、非小細胞肺癌(Donnenberg et al.,J.Control Release 2007;122(3):385-91)、及び神経膠芽腫(Beier et al.,Cancer Res.2007;67(9):4010-5)におけるCD133、ならびに結腸直腸癌(Dalerba er al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2007;104(24)10158-63)、膵臓癌(Li et al.,Cancer Res.2007;67(3):1030-7)、及び頭頸部扁平上皮癌(Prince et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2007;104(3)973-8)におけるCD44などのある特定の癌種において標的とすることができる抗原を有する。乳癌治療のための別の有用な標的は、Taylor et al.(Biochem.J.2003;375:51-9)により記載されるLIV-1抗原である。
【0084】
多発性骨髄腫治療については、適切な標的化抗体が、例えば、CD38及びCD138(Stevenson,Mol Med 2006;12(11-12):345-346、Tassone et al.,Blood 2004;104(12):3688-96)、CD74(Stein et al.,同書)、CS1(Tai et al.,Blood 2008;112(4):1329-37)、ならびにCD40(Tai et al.,2005;Cancer Res.65(13):5898-5906)に対して記載されている。
【0085】
マクロファージ遊走阻止因子(MIF)は、先天性及び適応性の免疫及びアポトーシスの重要な調節因子である。CD74は、MIFについての内在性受容体であることが報告されている(Leng et al.,2003,J Exp Med 197:1467-76)。MIF媒介性細胞内経路に及ぼすアンタゴニスト性抗CD74抗体の治療効果は、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸癌及び慢性リンパ球性白血病(例えば、Meyer-Siegler et al.,2004,BMC Cancer 12:34;Shachar&Haran,2011,Leuk Lymphoma 52:1446-54)などの広範な疾患状態の処置に使用され得る。ミラツズマブ(hLL1)は、MIF媒介性疾患の処置のために治療的に使用される例示的な抗CD74抗体である。
【0086】
抗TNF-α抗体は、当該分野で公知であり、癌の処置のために使用され得る。TNF-αに対する公知の抗体には、ヒト抗体CDP571(Ofei et al.,2011,Diabetes 45:881-85);マウス抗体MTNFAI、M2TNFAI、M3TNFAI、M3TNFABI、M302B及びM303(Thermo Scientific、イリノイ州、ロックフォード);インフリキシマブ(Centocor、ペンシルバニア州、マルバーン);セルトリズマブペゴル(UCB、ベルギー、ブリュッセル);及びアダリムマブ(Abbott、イリノイ州、アボットパーク)が含まれる。これら及び多くの他の公知の抗TNF-α抗体が、特許請求する方法及び組成物において使用され得る。
【0087】
チェックポイント阻害剤抗体は、主に癌療法において使用されている。免疫チェックポイントは、自己免疫寛容を維持し、末梢組織損傷を最小限にするよう免疫系応答の程度を調節する責任を担う免疫系における阻害経路を指す。しかしながら、腫瘍細胞も、免疫系チェックポイントを活性化させて腫瘍組織に対する免疫応答の有効性を低減することができる。細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA4、CD152としても知られる)、プログラムされた細胞死タンパク質1(PD1、CD279としても知られる)及びプログラムされた細胞死1リガンド1(PD-L1、CD274としても知られる)に対する例示的なチェックポイント阻害剤抗体は、一つまたは複数の他の薬剤と併用で使用されて癌細胞または組織に対する免疫応答の有効性を向上させ得る。例示的な抗PD1抗体には、ラムブロリズマブ(MK-3475、MERCK)、ニボルマブ(BMS-936558、BRISTOL-MYERS SQUIBB)、AMP-224(MERCK)、及びピジリズマブ(CT-011、CURETECHLTD.)が含まれる。抗PD1抗体は、例えば、ABCAM(登録商標)(AB137132)、BIOLEGEND(登録商標)(EH12.2H7、RMP1-14)及びAFFYMETRIX EBIOSCIENCE(J105、J116、MIH4)から市販されている。例示的な抗PD-Ll抗体には、MDX-1105(MEDAREX)、MEDI4736(MEDIMMUNE)MPDL3280A(GENENTECH)及びBMS-936559(BRISTOL-MYERS SQUIBB)が含まれる。抗PD-Ll抗体は、例えば、AFFYMETRIX EBIOSCIENCE(MIH1)から市販されている。例示的な抗CTLA4抗体には、イピリムマブ(Bristol-Myers Squibb)及びトレメリムマブ(PFIZER)が含まれる。抗PD1抗体は、例えばABCAM(登録商標)(AB134090)、SINO BIOLOGICAL INC.(11159-H03H、11159-H08H)、及びTHERMO SCIENTIFIC PIERCE(PA5-29572、PA5-23967、PA5-26465、MA1-12205、MA1-35914)から市販されている。イピリムマブは、近年、転移性黒色腫の処置に対してFDAの承認を受けている(Wada et al.,2013,J Transl Med 11:89)。
【0088】
別の好ましい実施形態では、迅速に内部移行し、その後に再発現し、処理され、細胞表面上に提示され、細胞による持続的な取込み及び循環コンジュゲートの癒着を可能にする抗体が使用される。最も好ましい抗体/抗原対の例は、LL1、抗CD74 MAb(インバリアント鎖、クラスII特異的シャペロン、Ii)である(例えば、米国特許第6,653,104号;同第7,312,318号を参照されたく;各々の実施例項は参照により本明細書に組み込まれる)。CD74抗原は、B細胞リンパ腫(多発性骨髄腫を含む)及び白血病、ある特定のT細胞リンパ腫、黒色腫、結腸癌、肺癌、及び腎癌、神経膠芽腫、ならびにある特定の他の癌で高度に発現する(Ong et al.,Immunology 98:296-302(1999))。癌におけるCD74抗体の使用に関する概説は、参照により本明細書に組み込まれる、Stein et al.,Clin Cancer Res.2007 Sep 15;13(18 Pt 2):5556s-5563sに含有される。
【0089】
抗CD74抗体を用いて好ましく処置される疾患としては、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、黒色腫、肺癌、腎癌、結腸癌、多形膠芽腫(glioblastome multiforme)、組織球腫、骨髄性白血病、及び多発性骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない。標的細胞の表面上での短期間にわたるCD74抗原の持続的な発現、それに続く抗原の内部移行、及び抗原の再発現によって、標的化LL1抗体は、それが運ぶ任意の化学療法部分とともに、内部移行することが可能になる。このことは、高い、治療濃度のLL1-化学療法薬コンジュゲートがこのような細胞の内側に蓄積されることを可能にする。内部移行したLL1-化学療法薬コンジュゲートは、リソソーム及びエンドソームを循環し、化学療法部分は、標的細胞内で活性形態にて放出される。
【0090】
腫瘍関連抗原に対する上述の抗体及び他の公知の抗体は、特許請求する方法及び組成物の実践においてイムノコンジュゲートとして使用されてよい。
【0091】
二重特異性及び多重特異性抗体
二重特異性抗体は、多くの生物医学用途において有益である。例えば、腫瘍細胞表面抗原及びT細胞表面受容体に対する結合部位を有する二重特異性抗体は、T細胞により特定の腫瘍細胞の溶解をもたらすことができる。神経膠腫及びT細胞上のCD3エピトープを認識する二重特異性抗体は、ヒト患者の脳腫瘍の処置での使用に成功している(Nitta, et al.Lancet.1990;355:368-371)。ある特定の実施形態では、本明細書に開示する治療剤コンジュゲーションのための技術及び組成物は、二重特異性または多重特異性抗体を抗体部分として共に使用してよい。
【0092】
二重特異性または多重特異性抗体を産生するための多くの方法が知られており、例えば、その実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,405,320号において開示されている。二重特異性抗体は、2つの異なるハイブリドーマの融合を必然的に含む、クアドローマ法により産生でき、これは、それぞれ異なる抗原部位を認識するモノクローナル抗体を産生する(Milstein and Cuello,Nature,1983;305:537-540)。
【0093】
二重特異性抗体を産生するための別の方法は、2つの異なるモノクローナル抗体を化学的に繋留するためにヘテロ二官能性架橋剤を使用する(Staerz,et al.Nature,1985;314:628-631;Perez,et al.Nature,1985;316:354-356)。また、二重特異性抗体は、それぞれ半分の分子に対して2つのモノクローナル親抗体のそれぞれを還元することにより産生することもでき、次いで、これを混合し再び酸化させてハイブリッド構造が得られる(Staerz and Bevan.Proc Natl Acad Sci USA.1986;83:1453-1457)。別の代替案は、適切なリンカーを使用して、2つまたは3つの別々に精製したFab’断片を化学的に架橋することを必然的に含む(例えば、欧州特許出願第0453082号を参照されたい)。
【0094】
他の方法には、レトロウイルス由来のシャトルベクターを介して別個の選択可能なマーカーをそれぞれの親ハイブリドーマに遺伝子導入する(続いてそれらは融合される)ことによりハイブリッドハイブリドーマの生成効率を改善すること(DeMonte,et al.Proc Natl Acad Sci USA.1990,87:2941-2945);または異なる抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子を含有する発現プラスミドを用いるハイブリドーマ細胞株のトランスフェクションが含まれる。
【0095】
同族VH及びVLドメインは、適切な組成及び長さ(通常12超のアミノ酸残基からなる)のペプチドリンカーと接合して、結合活性を有する一本鎖Fv(scFv)を形成することができる。scFvを製造する方法は、米国特許第4,946,778号及び米国特許第5,132,405号に開示されており、その各々の実施例項は参照により本明細書に組み込まれる。12アミノ酸残基未満へのペプチドリンカー長さの減少は、同一鎖上のVH及びVLドメインの対合を防ぎ、他の鎖上の相補的ドメインとのVH及びVLドメインの対合を強要し、これは機能的多量体の形成を結果もたらす。3~12アミノ酸残基のリンカーと接合しているVH及びVLドメインのポリペプチド鎖は、主として二量体(ダイアボディと称する)を形成する。0~2アミノ酸残基のリンカーでは、三量体(トリアボディと称する)及び四量体(テトラボディと称する)が好都合であるが、オリゴマー形成の正確なパターンは、リンカー長さに加えて、V-ドメインの組成ならびに配向(VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VH)に依存するとみられる。
【0096】
多重特異性または二重特異性抗体を産生するためのこれらの技術は、その技術の収率の低さ、精製の必要性、安定性の低さまたは労力の大きさに関して様々な難点を呈する。より近年では、「DOCK-AND-LOCK(商標)」(DNL(商標))として知られる二重特異性構築物が、事実上あらゆる所望の抗体、抗体断片、及び他のエフェクタ分子の組み合わせを産生するために使用されている(例えば、米国特許第7,550,143号;同第7,521,056号;同第7,534,866号;同第7,527,787号及びUSSN11/925,408を参照されたく、その各々の実施例項は参照により本明細書に組み込まれる)。この技術は、アンカードメイン(AD)及び二量体化及びドッキングドメイン(DDD)とも称される相補的タンパク質結合性ドメインを利用し、これらは互いに結合し、二量体、三量体、四量体、五量体及び六量体の範囲の複合体構造の組立を可能にする。これらは、安定した複合体を高収率で形成し、大規模な精製を必要としない。この技術は、単一特異性、二重特異性または多重特異性抗体の組立を可能にする。二重特異性または多重特異性抗体を作成するために当該分野で公知である技術はいずれも、本発明で特許請求する方法の実践において利用してよい。
【0097】
癌療法に好まれるような、使用の組み合わせには、CD20+CD22抗体、CD74+CD20抗体、CD74+CD22抗体、CEACAM5(CEA)+CEACAM6(NCA)抗体、インスリン様成長因子(ILGF)+CEACAM5抗体、EGP-1(例えば、RS-7)+ILGF抗体、CEACAM5+EGFR抗体が含まれる。そのような抗体は、併用でのみ使用される必要はないが、IgG、Fab、scFv等の様々な形態の融合タンパク質として組み合わされることができ、各々の実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,083,477号;同第6,183,744号及び同第6,962,702号ならびに米国特許出願公開第20030124058号;同第20030219433号;同第20040001825号;同第20040202666号;同第20040219156号;同第20040219203号;同第20040235065号;同第20050002945号;同第20050014207号;同第20050025709号;同第20050079184号;同第20050169926号;同第20050175582号;同第20050249738号;同第20060014245号及び同第20060034759号に記載されている。
【0098】
前標的化
二重特異性または多重特異性抗体は、前標的化技術においても利用され得る。前標的化は、多段階プロセスであり、元々は、骨髄などの正常組織への望ましくない毒性に寄与する、抗体を直接標的化する際の血液クリアランスの遅さを解決するために開発された。前標的化により、放射性核種または他の治療剤は、数分で血液から排泄される小さな送達分子(標的可能な構築物)に付着する。前標的化二重特異性または多重特異性抗体は、標的可能な構築物ならびに標的抗原に対する結合部位を有し、最初に投与され、遊離抗体は循環から排泄され、次いで標的可能構築物が投与される。
【0099】
前標的化方法は、例えば、Goodwin et al.,米国特許第4,863,713号;Goodwin et al.,J.Nucl.Med.29:226,1988;Hnatowich et al.,J.Nucl.Med.28:1294,1987;Oehr et al.,J.Nucl.Med.29:728,1988;Klibanov et al.,J.Nucl.Med.29:1951,1988;Sinitsyn et al.,J.Nucl.Med.30:66,1989;Kalofonos et al.,J.Nucl.Med.31:1791,1990;Schechter et al.,Int.J.Cancer 48:167,1991;Paganelli et al.,Cancer Res.51:5960,1991;Paganelli et al.,Nucl.Med.Commun.12:211,1991;米国特許第5,256,395号;Stickney et al.,Cancer Res.51:6650,1991;Yuan et al.,Cancer Res.51:3119,1991;米国特許第6,077,499号;同第7,011,812号;同第7,300,644号;同第7,074,405号;同第6,962,702号;同第7,387,772号;同第7,052,872号;同第7,138,103号;同第6,090,381号;同第6,472,511号;同第6,962,702号;及び同第6,962,702号に開示されており、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
対象において疾患または障害を処置または診断する前標的化法は、(1)対象に二重特異性抗体または抗体断片を投与すること;(2)該対象にクリアリング組成物を任意で投与し、該組成物が循環から抗体を排泄することを可能にすること;及び(3)SN-38またはP2PDoxなどの1つまたは複数のキレート化剤または化学的に結合した治療剤もしくは診断剤を含有する標的可能な構築物を該対象に投与することにより提供され得る。前標的化技術は、ネオアジュバント療法の1つのステップとして使用され得る。
【0101】
標的可能な構築物
ある特定の実施形態では、前標的化での使用のために1つまたは複数の治療剤または診断剤で標識されている標的可能な構築物ペプチドは、標的可能な構築物ペプチドに対する1つまたは複数の結合部位及び疾患または状態に関連する標的抗原に対する1つまたは複数の結合部位を有する二重特異性抗体に結合するように選択され得る。二重特異性抗体は、前標的化技術において使用され得、ここで抗体は、対象に最初に投与され得る。二重特異性抗体が標的抗原に結合し、未結合抗体が循環から排泄されるために十分な時間が許容され得る。次いで、標的可能な構築物、例えば、標識されたペプチドが、対象に投与され、二重特異性抗体への結合が可能になり、疾患細胞または組織で局在化し得る。
【0102】
このような標的可能な構築物は、多様な構造であることができ、標的可能な構築物に高い親和性で結合する抗体または断片の利用可能性だけでなく、前標的化法及び二重特異性抗体(bsAb)または多重特異性抗体内で使用される時の迅速なin vivoクリアランスに関して選択される。強力な免疫応答を引き出すには疎水性の薬剤が最良であるが、迅速なin vivoクリアランスのためには親水性の薬剤が好ましい。ゆえに、疎水性と親水性の特徴の平衡が確立される。これは、一部には、多くの有機部分の固有の疎水性を相殺するために親水性キレート剤を用いることにより、成し遂げられ得る。また、逆の溶液特性を有する標的可能な構築物のサブユニット、例えば、いくらかは疎水性でありいくらかは親水性であるアミノ酸を含有するペプチドが選択され得る。
【0103】
わずか2個のアミノ酸残基を有する、好ましくは、2~10個の残基を有するペプチドが用いられてよく、キレート剤などの他の部分にカップリングされてもよい。リンカーは、低分子量コンジュゲートあるべきであり、好ましくは50,000ダルトン未満、有利には約20,000ダルトン未満、10,000ダルトン未満、または5,000ダルトン未満の分子量を有する。より一般的には、標的可能な構築物ペプチドは、例えば、二重特異性抗体に結合するための4個以上の残基及び1つまたは複数のハプテンを有するだろう。例示的なハプテンは、In-DTPA(インジウム-ジエチレントリアミン五酢酸)またはHSG(ヒスタミンスクシニルグリシン)を含み得る。標的可能な構築物は、1つまたは複数のキレート部分、例えば、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカネル,4,7,10-四酢酸)、NOTA(1,4,7-トリアザ-シクロノナン-1,4,7-三酢酸)、TETA(p-ブロモアセトアミド-ベンジル-テトラエチルアミン四酢酸)、NETA([2-(4,7-ビスカルボキシメチル[1,4,7]トリアザシクロノナン-1-イルエチル]-2-カルボニルメチル-アミノ]酢酸)または他の公知のキレート部分も含み得る。キレート部分は、例えば、治療用及びまたは診断用放射性核種、常磁性イオンまたは造影剤に結合するために使用され得る。
【0104】
標的可能な構築物は、in vivoでのペプチドの安定性を増加させるために、非天然アミノ酸、例えば、D-アミノ酸を骨格構造に含んでもよい。代替の実施形態では、非天然アミノ酸またはペプトイドから構築されるものなどの他の骨格構造が用いられてよい。
【0105】
標的可能な構築物として使用されるペプチドは、固相支持体ならびに反復直交脱保護及びカップリングの標準技術を使用する、自動ペプチド合成器で好都合に合成される。後にキレート部分または他の薬剤のコンジュゲーションに使用される、ペプチド内の遊離アミノ基は、Boc基などの標準的な保護基で有利にブロックされる一方で、N末端残基は、血清安定性を増加させるためにアセチル化され得る。かかる保護基は、当業者に周知である。Greene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis,1999(John Wiley and Sons,N.Y.)を参照されたい。ペプチドが、二重特異性抗体系内での後の使用のために調製されるとき、in vivoでのカルボキシペプチダーゼ活性を阻害するために、それらは樹脂から有利に切断されて対応するC末端アミドを生成する。
【0106】
二重特異性抗体を伴う前標的化を使用する場合、抗体は、標的組織により産生されるか、または標的組織と関連する抗原に対する第一の結合部位、及び標的可能な構築物上のハプテンに対する第二の結合部位を含有するだろう。例示的なハプテンは、これに限定されないが、HSG及びIn-DTPAを含む。HSGハプテンに対して作製される抗体は、公知であり(例えば、679抗体)、適切な二重特異性抗体に容易に組み込むことができる(実施例項に関して参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第6,962,702号;同第7,138,103号及び同第7,300,644号を参照されたい)。しかしながら、他のハプテン及びこれらに結合する抗体は、当該分野において公知であり、In-DTPA及び734抗体などが使用されてよい(例えば、実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,534,431号)。
【0107】
DOCK-AND-LOCK(商標)(DNL(商標))
好ましい実施形態では、二価または多価抗体が、DOCK-AND-LOCK(商標)(DNL(商標))複合体として形成される(例えば、米国特許第7,521,056号;同第7,527,787号;同第7,534,866号;同第7,550,143号及び同第7,666,400号を参照されたく、その各々の実施例項は参照により本明細書に組み込まれる)。通常、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)の調節(R)サブユニットの二量体化及びドッキングドメイン(DDD)配列と、様々なAKAPタンパク質のいずれかに由来するアンカードメイン(AD)配列との間に生じる特異的及び高親和性の結合相互作用を利用する(Baillie et al.,FEBS Letters.2005;579:3264.Wong and Scott,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2004;5:959)。DDD及びADペプチドは、任意のタンパク質、ペプチドまたは他の分子に付着し得る。DDD配列が自発的に二量体化し、AD配列に結合するため、本技術は、DDDまたはAD配列に付着し得る任意の選択された分子間の複合体の形成を可能にする。
【0108】
標準的なDNL(商標)複合体は、1つのAD連結分子に付着する2つのDDD連結分子を有する三量体を含むが、複合体構造における変動により、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体及び他の多量体の形成が可能になる。いくつかの実施形態では、DNL(商標)複合体は、2以上の抗体、抗体断片または融合タンパク質を含み得、これらは同一の抗原決定基または2つ以上の異なる抗原に結合する。DNL(商標)複合体は、1つまたは複数の他のエフェクタ、例えば、タンパク質、ペプチド、免疫調節剤、サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、結合性タンパク質、ペプチドリガンド、担体タンパク質、毒素、オンコナーゼなどのリボヌクレアーゼ、siRNAなどの阻害性オリゴヌクレオチド、抗原もしくは異種抗原、PEGなどのポリマー、酵素、治療剤、ホルモン、細胞毒性薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤または任意の他の分子もしくは凝集体も含み得る。
【0109】
PKAは、セカンドメッセンジャーcAMPのRサブユニットへの結合により引き起こされる最良に試験されているシグナル伝達経路の1つにおいて中心的な役割を果たしており、1968年に最初にウサギ骨格筋から単離された(Walsh et al.,J.Biol.Chem.1968;243:3763)。ホロ酵素の構造は、Rサブユニットにより不活性形態に保持された2つの触媒サブユニットからなる(Taylor,J.Biol.Chem.1989;264:8443)。PKAのアイソザイムは、2つの型のRサブユニット(RI及びRII)を伴って見いだされ、各型はα及びβアイソフォームを有する(Scott,Pharmacol.Ther.1991;50:123)。ゆえに、PKA調節サブユニットの4つのアイソフォームは、RIα、RIβRIIα及びRIIβである。Rサブユニットは、安定した二量体としてのみ単離されており、二量体化ドメインは、RIIαの最初の44個のアミノ末端残基からなることが示されている(Newlon et al.,Nat.Struct.Biol.1999;6:222)。以下に考察するように、他の調節サブユニットのアミノ酸配列の同様の部分は、二量体化及びドッキングに関与しており、それぞれ調節サブユニットのN末端の近くに位置している。cAMPのRサブユニットへの結合は、広域スペクトルのセリン/トレオニンキナーゼ活性に関する活性触媒サブユニットの放出をもたらし、これは、AKPとのそのドッキングを介したPKAの区画化を通して選択された基質に向けられる(Scott et al.,J.Biol.Chem.1990;265;21561)。
【0110】
最初のAKAPである、微小管関連タンパク質-2が1984年に特徴解析されて(Lohmann et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA.1984;81:6723)以来、形質膜、アクチン細胞骨格、核、ミトコンドリア、及び小胞体を含む、様々な細胞内部位に局在する50超のAKAPが、酵母からヒトに及ぶ種で多様な構造を有することが同定されている(Wong and Scott,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2004;5:959)。PKAに対するAKAPのADは、14~18残基の両親媒性ヘリックスである(Carr et al.,J.Biol.Chem.1991;266:14188)。ADのアミノ酸配列は、個々のAKAP間で大きく異なり、RII二量体について報告された結合親和性の範囲は、2~90nMである(Alto et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2003;100:4445)。AKAPは、二量体Rサブユニットにのみ結合するだろう。ヒトのRIIαについては、ADは、23個のアミノ末端残基により形成される疎水性表面に結合する。(Colledge and Scott,Trends Cell Biol.1999;6:216).したがって、ヒトRIIαの二量体化ドメイン及びAKAP結合ドメインは両方とも、同一のN末端の44個のアミノ酸配列内にあり(Newlon et al.,Nat.Struct.Biol.1999;6:222;Newlon et al.,EMBO J.2001;20:1651)、この配列を本明細書ではDDDと称する。
【0111】
本発明者らは、ヒトPKA調節サブユニットのDDD及びAKAPのADを、以後A及びBと称する任意の2つの実体をドッキングさせて非共有結合複合体にするためのリンカーモジュールの優れたペアとして利用するためのプラットフォーム技術を開発した。非共有結合複合体は、ジスルフィド結合の形成を促進するためにDDD及びADの両方の戦略的位置にシステイン残基を導入することによりにDNL(商標)複合体へとさらにロックされることができた。この手法の一般的な方法は以下の通りである。実体Aを、Aの前駆体にDDD配列を連結することにより構築し、以後aと称する第1の構成要素を生じさせる。DDD配列が二量体の自発的形成に影響し得るため、Aは、a2から構成され得る。実体Bは、Bの前駆体にAD配列を連結することにより構築され、以後bと称する第2構成要素を生じさせる。a2に含有されるDDDの二量体モチーフは、bに含有されるAD配列に結合するためのドッキング部位を作製し得、それにより、a2とbの素早い会合を促進して、a2bから構成される2成分の三量体複合体を形成させる。この結合事象は、ジスルフィド架橋を介して2つの実体を共有結合的に固定するための次の反応で不可逆的になる。これは、有効局所濃度の原理に基づいて非常に効率的に生じるが、それは最初の結合相互作用がDDDとADの両方の上に配置された反応性チオール基を近接させて(Chmura et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2001;98:8480)、部位特異的にライゲートするはずであるからである。リンカー、アダプターモジュール及び前駆体の様々な組み合わせを使用することで、異なる化学量論の広範なDNL(商標)構築物が産生及び使用され得る(例えば、米国第7,550,143号;同第7,521,056号;同第7,534,866号;同第7,527,787号及び同第7,666,400号を参照されたい)。
【0112】
DDD及びADを、2つの前駆体の官能基から離れた所で付着させることにより、そのような部位特異的ライゲーションが2つの前駆体の本来の活性を保持することも期待される。この手法は、本質的にモジュール方式であり、潜在的には、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片及び広範囲の活性を有する他のエフェクタ部分を含む、広範囲の物質を、部位特異的及び共有結合的に連結するために適用することができる。以下の実施例に記載されるAD及びDDDコンジュゲートエフェクタを構築する融合タンパク質法を活用して、事実上あらゆるタンパク質またはペプチドがDNL(商標)構築体内に組み込まれ得る。しかしながら、該技術は非限定的であり、他のコンジュゲーション方法を利用してよい。
【0113】
目的の融合タンパク質をコードする合成二本鎖核酸を産生するための、核酸合成、ハイブリダイゼーション及び/または増幅を含めた融合タンパク質を作製するための様々な方法が公知である。そのような二本鎖核酸を、標準的な分子生物学的技術により融合タンパク質の産生のために発現ベクター内に挿入してよい(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A laboratory manual,2nd Ed,1989を参照されたい)。かかる好ましい実施形態では、AD及び/またはDDD部分は、エフェクタタンパク質またはペプチドのN末端またはC末端のいずれかに付着してよい。しかしながら、当業者は、エフェクタ部分へのADまたはDDD部分の付着の部位が、エフェクタ部分及びその生理学的活性に関与するエフェクタ部分の一部(複数可)の化学的性質によって異なり得るということを認識するだろう。様々なエフェクタ部分の部位特異的付着は、当該分野において公知の技術を用いて、例えば二価の架橋試薬の使用及び/または他の化学的コンジュゲーション技術により実施されてよい。
【0114】
代替のDNL(商標)構造
ある特定の代替の実施形態では、DNL(商標)構築物は、代替的に構築された抗体または抗体断片を使用して形成されてよく、ここでAD部分は、重鎖上のFcのC末端の代わりに、カッパ軽鎖(Ck)のC末端で付着されてよい。代替的に形成されたDNL(商標)構築物は、各々の文書全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第61/654,310号(2012年6月1日に出願)、同第61/662,086号(2012年6月20日に出願)、同第61/673,553号(2012年7月19日に出願)及び同第61/682,531号(2012年8月13日に出願)に開示されるように調製され得る。軽鎖コンジュゲートしたDNL(商標)構築物は、in vitroで向上したFc-エフェクタ機能活性、及びin vivoで改善した薬物動態、安定性及び抗リンパ腫活性を呈した(Rossi et al.,2013,Bioconjug Chem 24:63-71)。
【0115】
Ck-コンジュゲートDNL(商標)構築物は、米国仮特許出願第61/654,310号、同第61/662,086号、同第61/673,553号、及び同第61/682,531号に開示されるように調製され得る。簡潔には、Ck-AD2-IgGは、組換え遺伝子操作により生成され、それによりAD2ペプチドをカッパ軽鎖のC末端に融合した。CKの天然C末端がシステイン残基であり、それがCH1に対してジスルフィド架橋を形成するため、16-アミノ酸残基「ヒンジ」リンカーを、CK-VH1ジスルフィド架橋からAD2を離すために使用した。Ck-AD2-IgG-ベルツズマブ及びCk-AD2-IgG-エプラツズマブに対する哺乳類発現ベクターは、以前に相同CH3-AD2-IgGモジュールの発現のために使用したpdHL2ベクターを使用して構築した。2208塩基対のヌクレオチド配列を、VK/CKイントロン内のBam HI制限部位からCkイントロンのXho I制限部位3’の範囲のpdHL2ベクター配列を含んで合成し、CKのコード配列の3末端でインフレームで、ヒンジリンカー及びAD2に対するコード配列を挿入した。この合成配列を、ベルツズマブ及びエプラツズマブのIgG-pdHL2発現ベクター内へとBam HI及びXho I制限部位を介して挿入した。SpESFX-10を用いる産生物クローンの生成を、CH3-AD2-IgGモジュールについて記載されているように実施した。Ck-AD2-IgG-ベルツズマブ及びCk-AD2-IgG-エプラツズマブを、バッチ・ローラーボトル培養にて安定的にトランクフェクトされた産生物クローンにより産生し、MAbSelect(GE Healthcare)プロテインA親和性クロマトグラフィーを使用して単一ステップで上清液から精製した。
【0116】
ファージディスプレー
特許請求する組成物及び/または方法のある特定の実施形態は、様々な標的分子、細胞または組織の結合性ペプチド及び/またはペプチド模倣物に関し得る。結合性ペプチドは、ファージディスプレー技術を含むがこれに限定されない当該分野で公知の任意の方法により同定され得る。ペプチドの多様な集団を産生するための様々な方法のファージディスプレー及び技術が当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,223,409号;同第5,622,699号及び同第6,068,829号は、ファージライブラリを調製するための方法を開示する。ファージディスプレー技術は、低分子ペプチドがバクテリオファージの表面上に発現することができるようにバクテリオファージを遺伝子操作することを必然的に含む(Smith and Scott,1985,Science 228:1315-1317;Smith and Scott,1993,Meth.Enzymol.21:228-257)。ペプチドに加えて、一本鎖抗体などのより大きなタンパク質ドメインも、ファージ粒子の表面上に呈され得る(Arap et al.,1998,Science 279:377-380)。
【0117】
所与の臓器、組織、細胞型または標的分子に選択的である標的化アミノ酸配列は、パンニングにより単離され得る(Pasqualini and Ruoslahti,1996,Nature 380:364-366;Pasqualini,1999,The Quart.J.Nucl.Med.43:159-162)。簡潔には、仮想標的化ペプチドを含有するファージのライブラリをインタクトな生物または単離された臓器、組織、細胞型または標的分子に投与し、結合したファージを含有する試料を回収する。標的に結合するファージは、標的臓器、組織、細胞型または標的分子から溶出され得、次いで、それらを宿主細菌内で成長させることにより増幅する。
【0118】
ある特定の実施形態では、ファージは、数ラウンドのパンニング間で、宿主細菌内で繁殖し得る。ファージにより溶解されるよりむしろ、細菌は、代わりに特定の挿入物を示すファージの複数のコピーを分泌し得る。必要に応じて、増幅したファージは、標的臓器、組織、細胞型または標的分子に再度曝露されてよく、さらなる数ラウンドのパンニングのために回収してよい。複数ラウンドのパンニングが選択的または特異的結合物の集団が得られるまで行われ得る。ペプチドのアミノ酸配列は、ファージゲノム内の標的化ペプチド挿入物に対応するDNAを配列決定することにより決定され得る。同定された標的化ペプチドは、次いで、標準的なタンパク質化学技術により合成ペプチドとして産生され得る(Arap et al.,1998,Smith et al.,1985)。
【0119】
いくつかの実施形態では、サブトラクションプロトコルを使用して、バックグラウンドのファージ結合をさらに減少させてよい。サブトラクションの目的は、目的の標的以外の標的に結合するファージをライブラリから除去することである。代替的な実施形態では、ファージライブラリは、対照の細胞、組織、または臓器に対してプレスクリーニングされてよい。例えば、腫瘍結合性ペプチドは、対照の正常な細胞株に対するライブラリのプレスクリーニングの後に同定されてよい。サブトラクションの後に、目的の分子、細胞、組織、または臓器に対してライブラリをスクリーニングしてよい。サブトラクションプロトコルの他の方法は、例えば、米国特許第5,840,841号、同第5,705,610号、同第5,670,312号、及び同第5,492,807号に開示されるように知られており、特許請求する方法の実践において使用してよい。
【0120】
ナノボディ
ナノボディは、約12~15kDナノボディは、標的抗原を用いるaの大きさ(約110の長さのアミノ酸)の単一ドメイン抗体である。ナノボディは、フルサイズ抗体のように、標的抗原に選択的に結合でき、抗原と同様の親和性を有する。しかしながら、サイズが非常に小さいため、ナノボディは、固形腫瘍により良好に浸透することができ得る。この小さなサイズは、ナノボディの安定性にも寄与しており、フルサイズ抗体よりもpH及び温度に対する耐性が高くなる(Van Der Linden et al.,1999,Biochim Biophys Act 1431:37-46)。当初、単一のドメイン抗体は、ラクダ類(ラクダ、アルパカ、ラマ)が、軽鎖を伴わずに完全に機能的な抗体を有するとの発見に従って開発された(例えば、Hamsen et al.,2007,Appl Microbiol Biotechnol 77:13-22)。重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)及び2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)からなる。抗体のように、ナノボディは、多価及び/または二重特異性の構築物として開発及び使用され得る。IL-6R、vWF、TNF、RSV、RANKL、IL-17A&F及びIgE(例えば、ABLYNX(登録商標)、ベルギー、ヘント)などの様々な標的抗原に標的化されたナノボディのヒト化形態が商業的に開発されており、癌において臨床的に使用される可能性がある(例えば、Saerens et al.,2008,Curr Opin Pharmacol 8:600-8;Muyldermans,2013,Ann Rev Biochem 82:775-97)。
【0121】
ナノボディの血漿半減期は、フルサイズ抗体のそれよりも短く、腎経路により主に排出される。ナノボディはFc領域が欠損しているため、補体依存性細胞傷害を示さない。
【0122】
ナノボディは、標的抗原を用いるラクダ、ラマ、アルパカ、またはサメの免疫化、次いで、mRNAの単離、ライブラリへのクローニング、及び、抗原結合性についてのスクリーニングにより産生され得る。ナノボディ配列は、標準的な技術によりヒト化され得る(例えば、Jones et al.,1986,Nature 321:522、Riechmann et al.,1988,Nature 332:323、Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534、Carter et al.,1992,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285、Sandhu,1992,Crit.Rev.Biotech.12:437、Singer et al.,1993,J.Immun.150:2844)。ヒト化は、ラクダ化FR配列及びヒトFR配列の間での高い相同性のため、比較的単純である。
【0123】
様々な実施形態では、主題のイムノコンジュゲートは、コンジュゲートした薬物の細胞、組織または臓器への標的送達のためのナノボディを含み得る。使用するナノボディは、例えば、米国特許第7,807,162号;同第7,939,277号;同第8,188,223号;同第8,217,140号;同第8,372,398号;同第8,557,965号;同第8,623,361号及び同第8,629,244号に開示されており、各々の実施例項は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0124】
コンジュゲーションプロトコル
好ましいコンジュゲーションプロトコルは、中性または酸性pHで容易である、チオール-マレイミド、チオール-ビニルスルホン、チオール-ブロモアセトアミド、またはチオール-ヨードアセトアミド反応をベースとする。これは、例えば、活性エステルを使用するときに必要とされるだろうコンジュゲーションのためのより高いpH条件の必要性を取り除く。例示的なコンジュゲーションプロトコルのさらなる詳細を以下に実施例項にて記載する。
【0125】
治療的処置
別の態様では、本発明は、対象を処置する方法であって、本明細書に記載の治療有効量の治療用コンジュゲートを対象に投与することを含む、前記方法に関する。本明細書に記載の治療用コンジュゲートを用いて処置され得る疾患には、B細胞悪性腫瘍(例えば、非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、毛髪様細胞白血病)を含むがこれに限定されず、例えば、別のCD22エピトープ(hRFB4)に対するhLL2 MAb(エプラツズマブ、米国特許第6,183,744を参照されたい)などの抗CD22抗体、またはCD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD37、CD40、CD40L、CD52、CD74、CD80またはHLA-DRなどの他のB細胞抗原に対する抗体を使用する。他の疾患には、内胚葉由来消化系上皮の腺癌、乳癌及び非小細胞肺癌などの癌、ならびに他の癌腫、肉腫、グリア系腫瘍、骨髄性白血病等を含むが、これらに限定されない。具体的には、悪性固形腫瘍または造血器腫瘍、例えば、消化管、胃、結腸、食道、肝臓、肺、乳房、膵臓、肝臓、前立腺、卵巣、精巣、脳、骨もしくはリンパ系腫瘍、肉腫または黒色腫により産生されたまたはこれに関連する抗原、例えば、癌胎児性抗原に対する抗体は、有利に使用される。そのような治療剤は、疾患状態及びコンジュゲートの忍容性に応じて、1回または反復して与えられることができ、外科手術、外照射、放射免疫療法、免疫療法、化学療法、アンチセンス療法、干渉RNA療法、遺伝子療法等の他の治療様式と任意で組み合わせて使用することもできる。各組み合わせは、腫瘍のタイプ、ステージ、患者の状態及び以前の治療ならびに担当医により考慮される他の因子に適合されるだろう。
【0126】
本明細書で用いるとき、「対象」という用語は、ヒトを含む哺乳類を含むがこれらに限定されない任意の動物(すなわち、脊椎動物及び無脊椎動物)を指す。該用語は、特定の年齢または性別に限られるものではない。したがって、雄または雌にかかわらず、成体及び新生児対象、ならびに胎児が本用語により包含される。本明細書で提供する用量はヒト用であるが、体重または平方メートルサイズに従って、他の哺乳類、ならびに小児の大きさに調整することができる。
【0127】
好ましい実施形態では、hRS7 MAbなどの抗EGP-1(抗TROP-2)抗体を含む治療用コンジュゲートは、その実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,238,785号;同第7,517,964号及び同第8,084,583号に記載されるように、食道、膵臓、肺、胃、結腸及び直腸、膀胱、乳房、卵巣、子宮、腎臓ならびに前立腺の癌腫などの癌腫を処置するために使用することができる。hRS7抗体は、軽鎖相補性決定領域(CDR)配列CDR1(KASQDVSIAVA、配列番号3);CDR2(SASYRYT、配列番号4);及びCDR3(QQHYITPLT、配列番号5)ならびに重鎖CDR配列CDR1(NYGMN、配列番号6);CDR2(WINTYTGEPTYTDDFKG、配列番号7)及びCDR3(GGFGSSYWYFDV、配列番号8)を含むヒト化抗体である。
【0128】
別の好ましい実施形態では、抗CEACAM5抗体(例えば、hMN-14、ラブレツズマブ(labretuzumab))及び/または抗CEACAM6抗体(例えば、hMN-3またはhMN-15)を含む治療用コンジュゲートは、各々の実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,287,865号;同第7,951,369号;同第5,874,540号;同第6,676,924号及び同第8,267,865号に開示されるような、CEACAM5及び/またはCEACAM6を発現する様々な癌のいずれかを処置するために使用され得る。抗CEACAM5、抗CEACAM6、またはこの2つの組み合わせを使用して処置され得る固形腫瘍には、乳房、肺、膵臓、食道、甲状腺髄様、卵巣、結腸、直腸、膀胱、口腔及び胃癌が含まれるがこれらに限定されない。消化管、呼吸器、尿生殖器及び乳癌を含む癌腫の大半は、CEACAM5を発現し、主題のイムノコンジュゲートを用いて処置され得る。hMN-14抗体は、軽鎖可変領域CDR配列CDR1(KASQDVGTSVA;配列番号9)、CDR2(WTSTRHT;配列番号10)、及びCDR3(QQYSLYRS;配列番号11)、ならびに重鎖可変領域CDR配列CDR1(TYWMS;配列番号12)、CDR2(EIHPDSSTINYAPSLKD;配列番号13)及びCDR3(LYFGFPWFAY;配列番号14)を含むヒト化抗体である。
【0129】
hMN-3抗体は、軽鎖可変領域CDR配列CDR1(RSSQSIVHSNGNTYLE、配列番号15)、CDR2(KVSNRFS、配列番号16)及びCDR3(FQGSHVPPT、配列番号17)ならびに重鎖CDR配列CDR1(NYGMN、配列番号18)、CDR2(WINTYTGEPTYADDFKG、配列番号19)及びCDR3(KGWMDFNSSLDY、配列番号20)を含むヒト化抗体である。
【0130】
hMN-15抗体は、軽鎖可変領域CDR配列SASSRVSYIH(配列番号21);GTSTLAS(配列番号22);及びQQWSYNPPT(配列番号23);ならびに重鎖可変領域CDR配列DYYMS(配列番号24);FIANKANGHTTDYSPSVKG(配列番号25);及びDMGIRWNFDV(配列番号26)を含むヒト化抗体である。
【0131】
別の好ましい実施形態では、抗CD74抗体(例えば、hLL1、ミラツズマブ、各々の実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,074,403号;同第7,312,318号;同第7,772,373号;同第7,919,087号及び同第7,931,903号に開示される)を含む治療用コンジュゲートは、腎臓、肺、腸、胃、乳房、前立腺または卵巣癌、ならびに多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、及びホジキンリンパ腫などのいくつかの血液癌を含むがこれらに限定されないCD74を発現する様々な癌のいずれかを処置するために使用され得る。hLL1抗体は、軽鎖CDR配列CDR1(RSSQSLVHRNGNTYLH;配列番号27)、CDR2(TVSNRFS;配列番号28)、及びCDR3(SQSSHVPPT;配列番号29)ならびに重鎖可変領域CDR配列CDR1(NYGVN;配列番号30)、CDR2(WINPNTGEPTFDDDFKG;配列番号31)、及びCDR3(SRGKNEAWFAY;配列番号32)を含むヒト化抗体である。
【0132】
別の好ましい実施形態では、抗CD22抗体(例えば、hLL2、エプラツズマブ、各々の実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,789,554号;同第6,183,744号;同第6,187,287号;同第6,306,393号;同第7,074,403号及び同第7,641,901号に開示される、またはキメラもしくはヒト化RFB4抗体)を含む治療用コンジュゲートは、緩慢性形態のB細胞リンパ腫、侵攻性形態のB細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫またはびまん性B細胞リンパ腫を含むがこれらに限定されないCD22を発現する様々な癌のいずれかを処置するために使用され得る。hLL2抗体は、軽鎖CDR配列CDR1(KSSQSVLYSANHKYLA、配列番号33)、CDR2(WASTRES、配列番号34)、及びCDR3(HQYLSSWTF、配列番号35)ならびに重鎖CDR配列CDR1(SYWLH、配列番号36)、CDR2(YINPRNDYTEYNQNFKD、配列番号37)、及びCDR3(RDITTFY、配列番号38)を含むヒト化抗体である。
【0133】
好ましい実施形態では、hMu-9 MAbなどの抗CSAp抗体を含む治療用コンジュゲートは、各々の実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,962,702号;同第7,387,772号;同第7,414,121号;同第7,553,953号;同第7,641,891号及び同第7,670,804号に開示されるように、結腸直腸、ならびに膵臓及び卵巣癌を処置するために使用することができる。hMu-9抗体は、軽鎖CDR配列CDR1(RSSQSIVHSNGNTYLE、配列番号39)、CDR2(KVSNRFS、配列番号40)、及びCDR3(FQGSRVPYT、配列番号41)、ならびに重鎖可変CDR配列CDR1(EYVIT、配列番号42)、CDR2(EIYPGSGSTSYNEKFK、配列番号43)、及びCDR3(EDL、配列番号44)を含むヒト化抗体である。
【0134】
hPAM4 MAbを含む治療用コンジュゲートは、各々の実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,238,786号及び同第7,282,567号に開示されるように、膵臓癌または他の固形腫瘍を処置するために使用することができる。hPAM4抗体は、軽鎖可変領域CDR配列(sequencs)CDR1(SASSSVSSSYLY、配列番号45);CDR2(STSNLAS、配列番号46);及びCDR3(HQWNRYPYT、配列番号47);ならびに重鎖CDR配列CDR1(SYVLH、配列番号48);CDR2(YINPYNDGTQYNEKFKG、配列番号49)及びCDR3(GFGGSYGFAY、配列番号50)を含むヒト化抗体である。
【0135】
別の好ましい実施形態では、IMMU31などの抗AFP MAbを含む治療用コンジュゲートは、その実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,300,655号に開示されるように、肝細胞癌腫、胚細胞腫瘍、及び他のAFP産生腫瘍をヒト化、キメラ及びヒト抗体形態を使用して処置するために使用することができる。IMMU31抗体は、重鎖CDR配列CDR1(SYVIH、配列番号51)、CDR2(YIHPYNGGTKYNEKFKG、配列番号52)及びCDR3(SGGGDPFAY、配列番号53)ならびに軽鎖CDR1(KASQDINKYIG、配列番号54)、CDR2(YTSALLP、配列番号55)及びCDR3(LQYDDLWT、配列番号56)を含むヒト化抗体である。
【0136】
別の好ましい実施形態では、hL243などの抗HLA-DR Mabを含む治療用コンジュゲートは、その実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,612,180号に開示するように、リンパ腫、白血病、皮膚、食道、胃、結腸、直腸、膵臓、肺、乳房、卵巣、膀胱、子宮内膜、子宮頸部、精巣、腎臓、肝臓の癌、黒色腫または他のHLA-DR産生腫瘍を処置するために使用することができる。hL243抗体は、重鎖CDR配列CDR1(NYGMN、配列番号57)、CDR2(WINTYTREPTYADDFKG、配列番号58)、及びCDR3(DITAVVPTGFDY、配列番号59)ならびに軽鎖CDR配列CDR1(RASENIYSNLA、配列番号60)、CDR2(AASNLAD、配列番号61)、及びCDR3(QHFWTTPWA、配列番号62)を含む、ヒト化抗体である。
【0137】
別の好ましい実施形態では、ベルツズマブ(hA20)、1F5、オビヌツズマブ(GA101)、またはリツキシマブなどの抗CD20 MAbを含む治療用コンジュゲートは、各々の実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,435,803号または同第8,287,864号に開示するように、リンパ腫、白血病、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病を処置するために使用することができる。hA20(ベルツズマブ)抗体は、軽鎖CDR配列CDRL1(RASSSVSYIH、配列番号63)、CDRL2(ATSNLAS、配列番号64)及びCDRL3(QQWTSNPPT、配列番号65)ならびに重鎖CDR配列CDRH1(SYNMH、配列番号66)、CDRH2(AIYPGNGDTSYNQKFKG、配列番号67)及びCDRH3(STYYGGDWYFDV、配列番号68)を含む、ヒト化抗体である。
【0138】
別の好ましい実施形態では、hA19などの抗CD19 MAbを含む治療用コンジュゲートは、各々の実施例項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,109,304号、同第7,462,352号、同第7,902,338号、同第8,147,831号及び同第8,337,840号に開示するように、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病または急性リンパ芽球性白血病などのB細胞関連リンパ腫及び白血病を処置するために使用することができる。hA19抗体は、軽鎖CDR配列CDR1KASQSVDYDGDSYLN(配列番号69);CDR2 DASNLVS(配列番号70);及びCDR3QQSTEDPWT(配列番号71)ならびに重鎖CDR配列CDR1 SYWMN(配列番号72);CDR2 QIWPGDGDTNYNGKFKG(配列番号73)及びCDR3 RETTTVGRYYYAMDY(配列番号74)を含むヒト化抗体である。
【0139】
抗テネイシン抗体を含む治療用コンジュゲートは、造血器及び固形腫瘍を処置するために使用することができ、テネイシンに対する抗体を含むコンジュゲートは、固形腫瘍、好ましくは、神経膠芽腫のような脳癌を処置するために使用することができる。
【0140】
好ましくは、ヒト疾患の処置において使用される抗体は、抗体のヒトまたはヒト化(CDR移植)版であるが;抗体のマウス及びキメラ版を使用することができる。送達剤として同種のIgG分子が免疫応答を最小化するために大部分で好ましい。これは、反復処置を考慮する際に特に重要である。ヒトについては、ヒトまたはヒト化IgG抗体は、患者からの抗IgG免疫応答を生成する可能性が低い。hLL1及びhLL2などの抗体は、標的細胞上の内部移行抗原に結合した後に迅速に内部移行するが、これは、運ばれている化学療法薬も同じく細胞内も迅速に内部移行されることを意味する。しかしながら、内部移行の速度が遅い抗体も選択的治療を有効にするために使用することができる。
【0141】
当業者は、抗体または抗体断片にコンジュゲートしたカンプトテシンまたはアントラサイクリンを含む主題のイムノコンジュゲートが、単独でまたは1つもしくは複数の他の治療剤、例えば、二次抗体、二次抗体断片、第二のイムノコンジュゲート、放射性核種、毒素、薬物、化学療法剤、放射線療法、ケモカイン、サイトカイン、免疫調節剤、酵素、ホルモン、オリゴヌクレオチド、RNAiもしくはsiRNAと併用されてよいことを認識するだろう。そのような追加の治療剤は、主題の抗体-薬物イムノコンジュゲートと別々に、併用で、または付着して投与されてよい。
【0142】
ある特定の実施形態では、本発明のイムノコンジュゲートと併用して使用される治療剤は、1つまたは複数の同位体を含み得る。罹患した組織を処置するために有用である放射性同位体は、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、227Th及び211Pbを含むが、これらに限定されない。治療用放射性核種は、好ましくは、オージェ放射体で20~6,000keVの範囲、好ましくは60~200keVの範囲、ベータ放射体で100~2,500keVの範囲、アルファ放射体で4,000~6,000keVの範囲の崩壊エネルギーを有する。有用なベータ粒子放射核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは20~5,000keV、より好ましくは100~4,000keV、及び最も好ましくは500~2,500keVである。オージェ放射粒子で実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、Co-58、Ga-67、Br-80m、Tc-99m、Rh-103m、Pt-109、In-111、Sb-119、I-125、Ho-161、Os-189m及びIr-192。有用なベータ粒子放射核種の崩壊エネルギーは、好ましくは、1,000keV未満、より好ましくは100keV未満、最も好ましくは70keV未満である。また、アルファ粒子の生成で実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。このような放射性核種には、Dy-152、At-211、Bi-212、Ra-223、Rn-219、Po-215、Bi-211、Ac-225、Fr-221、At-217、Bi-213、Th-227、及びFm-255が含まれるが、これらに限定されない。有用な粒子を放射する放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは、2,000~10,000keV、より好ましくは、3,000keV~8,000keV、及び最も好ましくは、4,000keV~7,000keVである。さらに使用される可能性のある放射性同位体には、11C、13N、15O、75Br、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rh、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201Tl、225Ac、76Br、169Ybなどが含まれる。
【0143】
例えば、抗体またはコンジュゲートに付着しているキレート基を使用して、放射性核種および他の金属を送達し得る。NOTA、DOTA、及びTETAなどの大環状キレート剤は、様々な金属及び放射性金属を伴って、とりわけ、それぞれ、ガリウム、イットリウム及び銅の放射性核種を伴って使用される。そのような金属-キレート複合体は、環サイズを目的の金属に仕立てることにより非常に安定的に作成されることができる。223Raを複合体化するための大環状ポリエーテルなどの他の環型キレート剤を使用してよい。
【0144】
本明細書に記載のイムノコンジュゲートと併用で使用する治療剤には、例えば、化学療法剤、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)、タキサン、代謝拮抗薬、チロシンキナーゼ阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、Cox-2阻害薬、抗有糸分裂剤、抗血管新生剤及びアポトーシス促進剤、特にドキソルビシン、メトトレキセート、タキソール、他のカンプトテシン、ならびに抗癌剤のこれら及び他のクラス由来の他のもの等も含まれる。他の癌化学療法薬には、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位錯体、ホルモン、等が含まれる。好適な化学療法剤は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(Mack Publishing Co.1995)、及びGOODMAN AND GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS,7th Ed.(MacMillan Publishing Co.1985)、ならびにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。実験薬物などの他の好適な化学療法剤は、当業者に公知である。
【0145】
使用される例示的な薬物には、5-フルオロウラシル、アファチニブ、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、アキシチニブ、AVL-101、AVL-291、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、Cox-2阻害薬、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ジナシクリブ、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2P-DOX)、シアノ-モルフォリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エルロチニブ、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エルロチニブ、エンチノスタット、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、エトポシドホスフェート、エキセメスタン、フィンゴリモド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’-O-ジオレイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、フラボピリドール、フォスタマチニブ、ガネテスピブ、GDC-0834、GS-1101、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イブルチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、L-アスパラギナーゼ、ラパチニブ、レノリダミド(lenolidamide)、ロイコボリン、LFM-A13、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニトロソウレア(nitrosurea)、オラパリブ、プリコマイシン(plicomycin)、プロカルバジン、パクリタキセル、PCI-32765、ペントスタチン、PSI-341、ラロキシフェン、セムスチン、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、タモキシフェン、テマゾロミド(temazolomide)(DTICの水性形態)、トランスプラチナ、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、バタラニブ、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンカアルカロイド及びZD1839が含まれるがこれらに限定されない。このような薬剤は、本明細書に記載のコンジュゲートの一部であり得るか、またあるいは本記載のコンジュゲートと併用して、そのコンジュゲートの前、同時または後に投与され得る。あるいは、当該分野で公知である1つまたは複数の治療用裸抗体は、本記載のコンジュゲートと併用して使用され得る。例示的な治療用裸抗体は、上述している。
【0146】
イムノコンジュゲートと調和して使用され得る治療剤は、標的化部分にコンジュゲートした毒素も含み得る。これに関して使用され得る毒素には、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNaseI、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、及びシュードモナス内毒素が含まれる(例えば、Pastan. et al.,Cell(1986),47:641,及びSharkey and Goldenberg,CA Cancer J Clin.2006 Jul-Aug;56(4):226-43を参照されたい)。本明細書での使用に好適な追加の毒素は、当業者に公知であり、U.S.6,077,499に開示されている。
【0147】
治療剤のなおも別のクラスは、1つまたは複数の免疫調節剤を含み得る。使用される免疫調節剤は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチン及びそれらの組み合わせから選択されてよい。特に有益なものは、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、インターロイキン(IL)などの造血因子、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などのコロニー刺激因子、インターフェロンα、β、γまたはλなどのインターフェロン、及び「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子である。サイトカインの中に含まれるものは、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;サイロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝臓増殖因子;プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミュラー管抑制因子;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-βなどの神経増殖因子;血小板増殖因子;TGF-α及びTGF-βなどの形質転換増殖因子(TGF);インスリン様成長因子-I及び-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導性因子;インターフェロンα、β、γ及びλなどのインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21、IL-23、IL-25などの、インターロイキン(IL)、LIF、キット-リガンドまたはFLT-3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子及びリンホトキシン(LT)である。本明細書で用いるとき、サイトカインという用語は、天然源由来または組換え細胞培養物由来のタンパク質及び未変性配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0148】
使用されるケモカインには、RANTES、MCAF、MIP1-アルファ、MIP1-ベータ及びIP-10が含まれる。
【0149】
製剤及び投与
コンジュゲートの好適な投与経路には、経口、非経口、皮下、直腸、経粘膜、腸投与、筋肉内、髄内、くも膜下腔内、直接心室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、または眼球内注射が含まれるが、これらに制限されるものではない。好ましい投与経路は、非経口である。あるいは、例えば、固形腫瘍内に直接化合物を注射することを介して、全身様式よりむしろ局所にて化合物を投与してよい。
【0150】
イムノコンジュゲートは、薬学的に有用な組成物を調製するための既知の方法に従って製剤化されることができ、それによりイムノコンジュゲートは薬学的に好適な賦形剤と共に混合物中に組み合わされる。滅菌リン酸緩衝食塩水は、薬学的に好適な賦形剤の一例である。他の好適な賦形剤は、当業者に周知である。例えば、Ansel et al.,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea&Febiger 1990)、及びGennaro(ed.),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition(Mack Publishing Company 1990)、及びそれらの改訂版を参照されたい。
【0151】
好ましい実施形態では、イムノコンジュゲートは、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES);N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA);N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES);4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES);2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES);3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS);3-(N-モルホリニル)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO);及びピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)[Pipes]からなる群から選択される緩衝液を使用するグッドの生物学的緩衝液(pH6~7)中で製剤化される。より好ましい緩衝液は、MESまたはMOPSであり、好ましくは、20~100mMの範囲、より好ましくは約25mMの濃度である。最も好ましいものは、25mM MES、pH6.5である。本製剤は、25mMトレハロース及び0.01%v/vポリソルベート80を賦形剤としてさらに含んでよく、最終緩衝液濃度は、賦形剤を添加した結果22.25mMへと修正される。保存の好ましい方法は、コンジュゲートの凍結乾燥製剤としてであり、-20℃~2℃の温度範囲で保存し、最も好ましくは、2~8℃で保存される。
【0152】
イムノコンジュゲートは、例えば、ボーラス注射、低速注入または持続注入を介する静脈内投与用に製剤化することができる。好ましくは、本発明の抗体は、約4時間未満の期間にわたって、及びより好ましくは、約3時間未満の期間にわたって注入される。例えば、最初の25~50mgは、30分以内、さらに好ましくは15分以内で注入され得、残りが次の2~3時間にわたって注入され得る。注射用の製剤は、添加保存剤を伴って単位財形、例えば、アンプルまたは複数用量容器で存在することができる。組成物は、油性または水性ビヒクルにおいて懸濁剤、溶液またはエマルジョンなどの形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤、及び/または分散剤などの調合剤を含有することができる。あるいは、活性成分は、使用前に、例えば滅菌パイロジェン不含水などの好適なビヒクルと共に構成するための粉末形態であることができる。
【0153】
追加の薬学的方法を採用して、治療用コンジュゲートの作用の持続期間を制御してよい。制御放出調製物は、イムノコンジュゲートを複合体化するまたは吸収するためにポリマーを使用して調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)のマトリックスならびにステアリン酸二量体及びセバシン酸のポリ無水物コポリマーのマトリックスを含む。Sherwood et al.,Bio/Technology 10:1446(1992)。このようなマトリックスからのイムノコンジュゲートの放出速度は、イムノコンジュゲートの分子量、マトリックス内のイムノコンジュゲートの量、及び分散粒子の大きさに依存する。Saltzman et al.,Biophys.J.55:163(1989);Sherwood et al.,上記。他の固形剤形は、Ansel et al.,PRMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea&Febiger 1990)、及びGennaro(ed.),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition(Mack Publishing Company 1990)、ならびにこれらの改訂版に記載される。
【0154】
一般的に、ヒトに投与されるイムノコンジュゲートの投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身健康状態、及び既往歴などの因子に応じて変動するだろろう。単回静脈内注入として約1mg/kg~24mg/kgの範囲のイムノコンジュゲートの投与量をレシピエントに提供することが望ましくあり得るが、状況に応じてより低いまたは高い投与量が投与されてもよい。1~20mg/kgの投与量とは、例えば、70kgの患者に70~1,400mg、または1.7mの患者に41~824mg/m2である。投与量は、例えば、4~10週間にわたり週1回、8週間にわたり週1回、4週間にわたり週1回、必要に応じて反復してよい。維持療法において必要に応じて、頻度を減らして与えてもよく、例えば、数カ月にわたって隔週、または多くの月にわたって月1回または年に4回などである。好ましい投与量には、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、22mg/kg及び24mg/kgが含まれるが、これらに限定されない。1~24mg/kgの範囲の任意の量が使用されてよい。この投与量は、好ましくは、複数回、週に1回または2回投与される。4週間、より好ましくは8週間、より好ましくは16週間またはより長い最小投薬スケジュールを使用してよい。投与のスケジュールは、(i)週1回;(ii)隔週;(iii)1週間の治療の後、2、3、または4週間の休薬、(iv)2週間の治療の後、1、2、3、または4週間の休薬、(v)3週間の治療の後、1、2、3、4、または5週間の休薬、(vi)4週間の治療の後、1、2、3、4、または5週間の休薬、(vii)5週間の治療の後、1、2、3、4、または5週間の休薬、及び(viii)月1回からなる群より選択されるサイクルでの週1回または2回の投与を含んでよい。このサイクルは、4、6、8、10、12、16または20回またはそれ以上反復されてよい。
【0155】
あるいは、イムノコンジュゲートは、2または3週間ごとに1投与量として投与されてよく、合計で少なくとも3投与量にわたって反復されてよい。または、週2回を4~6週間。投与量が、おおよそ200~300mg/m2まで低くなると(1.7m患者に対して投与量あたり340mg、または70kg患者に対して4.9mg/kg)、それは、4~10週間にわたって週1回またはさらには週2回投与されてよい。あるいは、投与量スケジュールは低減され、すなわち、2~3カ月にわたって2または3週毎になってよい。しかしながら、12mg/kgを週1回または2~3週間に1回などのさらに高い用量を、低速静脈内注入により反復投薬サイクルにわたって投与することができると決定されている。投薬スケジュールは、他の間隔で任意で反復することができ、投与量は、用量及びスケジュールを適切に調節して、様々な非経口経路を通して与えられ得る。
【0156】
好ましい実施形態では、イムノコンジュゲートは、癌の治療に使用される。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、神経膠芽腫、黒色腫、肉腫、及び白血病、骨髄腫、またはリンパ性悪性腫瘍を含むが、これに限定されない。そのような癌のより具体的な例は以下に記され、扁平上皮癌(例えば、上皮の扁平上皮癌)、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、星細胞腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、消化管癌を含む胃部または胃癌、膵臓癌、多形性神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝がん、肝細胞癌腫、神経内分泌腫瘍、髄様甲状腺癌、分化型甲状腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎部または腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、肛門癌腫、陰茎癌腫、ならびに頭頚部癌を含む。「癌」という用語は、原発性悪性細胞または腫瘍(例えば、元々の悪性細胞または腫瘍部位以外の対象の体内の部位にその細胞が移入していないもの)及び二次悪性細胞または腫瘍(例えば、転移、元々の腫瘍の部位と異なる二次的な部位への悪性細胞または腫瘍細胞の移入から生じるもの)を含む。
【0157】
癌または悪性腫瘍の他の例には、急性小児リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞癌、成人(原発性)肝臓癌、成人急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓癌、成人軟組織肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂及び尿管の癌、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫、子宮頸癌、小児(原発性)肝細胞癌、小児(原発性)肝臓癌、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部及び視覚路膠腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果体及びテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、小児原発性肝臓癌、小児横紋筋肉腫、小児軟組織肉腫、小児視覚路及び視床下部膠腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌膵島細胞癌、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫及び関連腫瘍、外分泌膵臓癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼の癌、女性の乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管腫瘍、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、毛髪様細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼内黒色腫、島細胞癌、島細胞膵臓癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ増殖性障害、マクログロブリン血症、男性の乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、原発転移性扁平上皮性頸部癌、転移性扁平上皮性頸部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病(Myelogenous Leukaemia)、骨髄性白血病(Myeloid Leukaemia)、骨髄増殖性障害、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、中咽頭癌、骨/悪性線維肉腫、骨肉腫/悪性線維組織球腫、骨肉腫/骨の悪性線維組織球腫、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、境界悪性卵巣腫瘍、膵臓癌、パラプロテイン血症、真性赤血球増加症、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂及び尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平上皮性頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性及び松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行上皮癌、移行性腎盂及び尿管癌、栄養膜腫瘍、尿管及び腎盂細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚路及び視床下部膠腫、外陰癌、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、ならびに上に挙げた臓器系に位置する新生物のほかの任意の他の過剰増殖疾患を含むが、これらに限定されない。
【0158】
本明細書に記載及び特許請求する方法及び組成物は、悪性または前悪性状態を処置するため、及び上記の障害を含むがこれらに限定されない新生物または悪性状態への進行を防ぐために使用してよい。そのような使用は、新生物または癌への先行進行が知られているまたは疑われる状態において示され、具体的には、過形成、化生、また特に、異形成からなる非新生物細胞増殖が生じている場合である(そのような異常増殖状態の概説については、Robbins and Angell,Basic Pathology,2d Ed.,W.B.Saunders Co.,Philadelphia,pp.68-79(1976)を参照されたい)。
【0159】
異形成は、しばしば癌の前兆であり、主に上皮に見られる。異形成は、非新生物細胞増殖のうちの最も障害が重い形態であり、個々の細胞の均一性及び細胞の構造的な定位の喪失を必然的に含む。異形成は、特徴的に慢性刺激または炎症の存在する場所で起こる。処置することができる異形成障害には、無汗性外胚葉性異形成、前後異形成、窒息性胸郭異形成、心房指異形成、気管支肺異形成、大脳異形成、子宮頚部上異形成、軟骨外胚葉異形成、鎖骨頭蓋骨異形性、先天性外胚葉性異形成、頭蓋骨幹異形成、頭蓋手根骨足根骨異形成、頭蓋骨幹端異形成、象牙質異形成症、骨幹異形成、外胚葉性異形成、エナメル質異形成、脳眼形成不全症、骨端異形成半肢症、多発性骨端異形成、点状骨端異形成、上皮性異形成、顔面指趾生殖器異形成、家族性線維性顎異形成、家族性白色襞性異形成、線維筋性異形成、線維性骨異形成、開花性骨性異形成、遺伝性腎-網膜異形成、発汗性外胚葉性異形成、発汗減少症性外胚葉性異形成、リンパ性減少性胸腺異形成、乳房異形成、下顎顔面異形成、骨幹端異形成、モンディニ異形成、単発性線維性異形成、粘膜上皮異形成、多発性骨端異形成、眼耳脊椎異形成、眼歯指異形成、眼脊椎異形成、歯原性異形成、眼底下顎骨異形成、根尖端セメント質異形成、多発性線維性骨異形成、偽軟骨発育不全脊椎骨端異形成、網膜異形成、中隔視神経異形成、脊椎骨端異形成、及び心室橈骨異形成が含まれるが、これらに限定されない。
【0160】
処置することができる追加の前新生物障害には、良性異常増殖性障害(例えば、良性腫瘍、線維嚢胞性病態状態、組織肥大、腸ポリープまたはアデノーマ、及び食道異形成)、白板症、角化症、ボーエン病、農夫皮膚、太陽性口唇炎、及び日光角化症が含まれるがこれらに限定されない。
【0161】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、特に上に挙げる癌における、癌の増殖、進行、及び/または転移を阻害するために使用される。
【0162】
追加の過剰増殖性疾患、障害、及び/または状態には、悪性腫瘍及び関連する障害、例えば、白血病(急性白血病;例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄球白血病[骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、及び赤白血病を含む])及び慢性白血病(例えば、慢性骨髄球[顆粒球性]白血病及び慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、重鎖病、ならびに肉腫及び癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺腫、皮脂腺腫、乳頭腫、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌腫、肝がん、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌腫、小細胞肺癌、膀胱癌腫、上皮癌腫、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫(emangioblastoma)、聴神経腫、希突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫を含むがこれらに限定されない固形癌の、進行、及び/または転移を含むがこれらに限定されない。
【0163】
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)
特定の実施形態では、本発明は、トリプルネガティブ乳癌のネオアジュバント処置のためのADCイムノコンジュゲートの使用に関する。TNBCは、用語が示すように、エストロゲン受容体及びプロゲステロン受容体(ER、PR)、ならびにHER2(ERBB2)の発現を欠いている乳癌を指す。この種は、全侵襲性乳癌の約15~20%を構成し、非常に悪性である。TNBC患者は、他の乳癌と比較して遠隔再発及び死亡の割合が高く(Millikan et al.,Breast Cancer Res Treat 2008;109:123-139)、転移性疾患を伴うこれらの生存期間中央値はたった13カ月である(Kassam et al.,Clin Breast Cancer 2009;9:29-33)。罹病率に関しては、TNBCは、若年患者、BRCA1突然変異保有者、ならびに特定の民族、例えばアフリカ系アメリカ人及びヒスパニック系の女性においてより頻繁にみられる(Bauer et al.,Cancer 2007,109:1721-1728;Sorlie et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2003,100:8418-8423;26-28;Foulkes et al.,N Engl J Med 2010,363:1938-1948)。これは、生殖細胞系列遺伝的背景が、TNBCの転写及び分化において役割を果たしていることを示す。組織学的に、大半のTNBC腫瘍は、侵襲性乳管腫であり、組織学的グレードが高く、腫瘍サイズが大きく、診断時にはリンパ節転移陽性であることが非常に多い(Dent et al.,Clin Cancer Res 2007,13:4429-4434)。予後は、転移の挙動に関連し、サブタイプにより転移のパターンは異なる。乳癌は、一般的に、骨に転移するが、基底様疾患は、脳、肺、及び遠隔リンパ節への転移が多数を占める(Kennecke et al.,J Clin Oncol 2010,28:3271-3277;Sihto et al.,Breast Cancer Res 2011,13:R87)。非基底形態は、類似したパターンの転移を示すが、肝臓への転移がより頻繁である。
【0164】
Lehmann et al.(Lehmann et al.,J Clin Invest 2011,121(7):2750-2767)は、TNBCに対する6つの特定の分子サブタイプを提案した:2つの基底様、BL1及びBL2、これは最も罹患率が高く、基底様内因性サブタイプに類似しているためにこの命名を受け、遺伝子の発現は、サイトケラチン5、6または17などこのような細胞により発現される;3つ目は、免疫調節系サブタイプ;間葉系(M)及び間葉系幹細胞様(MSL)サブタイプ;ならびに6つ目は、管腔アンドロゲン受容体(LAR)である。
【0165】
基底様腫瘍は、TP53の高度な増殖及び頻繁な突然変異を示し、BRCA1突然変異状態に関連する。そのような腫瘍は、BRCA突然変異保有者においてBRCAの不活性化を伴う相同組換えにおける欠失によりDNA修復が調節不能になっていると考えられる(Rehman et al.,Nat Rev Clin Oncol 2010,7:718-724)。BL1サブ系統は、シスプラチンに優先的に応答することが見出されており、これはグアニン架橋の形成を通してDNA損傷を引き起こす。いくつかの臨床治験が、基底様TNBCにおけるプラチナ製剤の役割を評価している及び評価を継続している(Ademuyiwa et al.,J Onc 2013;2013:219869)。LAR型は、抗アンドロゲン受容体処置に応答する可能性があるが、これは臨床評価中である。
【0166】
TNBCの処置は、典型的な乳癌と同様、現在利用可能な標的療法がないため、外科手術、放射線療法、及び化学療法を必然的に含む。最も有効な化学療法剤は、アントラサイクリン及びタキサンである。7つのネオアジュバント臨床治験のメタアナリシスは、病理学的完全奏効(乳房及びリンパ節における侵襲性乳癌の不在)がアントラサイクリン及びタキサンを用いた治療を受けた患者の36%で達成されたことを示した(von Minckwitz et al.J Clin Oncol 2012,30(15):1796-1804)。TNBCにおけるネオアジュバント療法の様々な治験の概要は、様々な組み合わせで与えられた、ドキソルビン(doxorubin)、シクロホスファミド、ドキソルビシン、タキサン、エピルビシン、ドセタキセル、パクリタキセル、ベバシズマブ、ゲムシタビン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、カペシタビン(capcitabine)、ビンクリスチン、シスプラチン、及びカルボプラチン、などの一般的な癌に対する薬物が、100人を超える患者を含む治験において、28~52%のpCR率をもたらしたことを示している(Engebraaten et al.Am J Pathol 2013 Oct;183(4):1064-1074)。プラチナ含有レジメンは乳癌において有効であるが、TNBCでは、かかるレジメンは同等に優れているわけではないという結果を示している(Engebraaten et al.Am J Pathol 2013 Oct;183(4):1064-1074)。エピルビシン、シクロホスファミド、及びドカタキセル(docataxel)のレジメンにカルボプラチンを加えても、ネオアジュバント設定におけるカルボプラチン添加の利点を示さなかった(Alba et al.Breast Cancer Cancer Res Treat 2012 Nov;136(2):487-493)。
【0167】
一般に、TNBCを有する患者は、ER陽性、HER2陰性腫瘍を有する患者よりも化学療法に対する応答が高いが、逆説的にTNBCを有する患者の転帰の方が不良である(Carey et al.,Clin Cancer Res.2007 Apr 15;13(8):2329-2334)。TNBCにおけるpCR率は20%またはそれより高くあることができ(Engebraaten et al.Am J Pathol 2013 Oct;183(4):1064-1074)、応答しているものは良好な長期転帰を有するが、TNBC患者の大半はpCRを達成せず、ゆえに、ER+疾患を有する患者よりも侵攻して進行する(Carey et al.,Clin Cancer Res.2007 Apr 15;13(8):2329-2334;Liedtke et al.,J Clin Oncol.2008 Mar 10;26(8):1275-1281)。pCRを達成しないTNBC患者については、再発率は、5年の期間にわたって40から50%の間であり(von Minckwitz et al.J Clin Oncol 2012,30(15):1796-1804;Liedtke et al.,J Clin Oncol.2008 Mar 10;26(8):1275-1281)、これはTNBC患者の化学療法感受性が高いにもかかわらず転帰が不良であることを実証する。これは、TNBCにおいてより高いpCR率を達成するための新規化学療法剤に対する、まだ満たされていない重大な必要性を強調する。
【0168】
PARP阻害剤及び血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤などの生物学的治療剤も、TNBCを有する患者において評価されている(Schneider et al.,J Clin Oncol 2005;23(8):1782-1790;von Minckwitz et al.,N Eng J Med 2012;366(4):299-309)。実際、TNBCがBRCA関連乳癌に対して臨床的類似性を有するため、PARP阻害剤は、TNBCの治療について魅力的な候補であるが、これはまだ実証されていない。しかしながら、IMMU-132は、トポイソメラーゼI阻害剤と同様の作用機序を有し(Cardillo et al.,Clin Cancer Res 2011;17:3157-3169)、転移性TNBCを有する患者、ならびにTNBC細胞株において単独療法として臨床的退縮を示している(Cardillo et al.,Clin Cancer Res 2011;17:3157-3169及び以下の実施例)。
【0169】
TNBCネオアジュバント療法におけるIMMU-132
ある特定の実施形態は、抗TROP-2 hRS7抗体に付着しているSN-38カンプトテシン型薬物の多数のコピーを含むADCである、IMMU-132のTNBCにおけるネオアジュバント使用に関する。SN-38は、CPT-11(イリノテカン)の活性代謝産物であり、乳癌における標準的な薬物ではないが、TNBCにおいて固有の治療的利益を提供し得る。BRCA1突然変異を発現する癌に対してTNBCがその表現型において類似しており、それゆえ、BRCAに伴うDNA修復機序における欠失に起因して、かかるBRCA1患者において有効である、プラチナ製剤及びアルキル化剤、ならびにトポイソメラーゼI阻害剤(例えば、トポテカン及びイリノテカンのようなカンプトテシン)などの、薬剤に反応性である可能性があると想定されている。これらは、二重鎖DNAの切断を誘導し、DNA修復に影響を与え、細胞死を引き起こすことにより作用する(Hastak et al.,Cancer Res 2010;70:7970-7980)。ポリ(アデノシン二リン酸リボース)ポリメラーゼ(PARP)を阻害する同様の作用機序は、BRCA同様、DNA修復においても重要な役割を果たすが、PARP阻害剤は、DNAの1つの鎖に損傷を引き起こし、これは、BRCA突然変異及びPARP阻害のために、相同組換えにより修復することができない。
【0170】
本発明者らは、TNBC(及び他の上皮癌)において発現が増強されているタンパク質(TROP-2)を選択的に標的とするヒト化モノクローナル抗体(MAb)にコンジュゲートした、トポイソメラーゼI阻害剤であるSN-38を含むイムノコンジュゲートIMMU-132が、PARP阻害を介してDNA鎖を切断する同様の効果を有することを見出している(Cardillo et al.,Clin Cancer Res 2011;17:3157-3169)。それゆえ、このイムノコンジュゲートは、TNBCの併用療法において高い毒性を有する、プラチナ及び他のDNA損傷薬物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)を置き換え得る。転移性TNBCを含む転移性固形癌を有する患者におけるIMMU-132を用いた現在の結果は、親イリノテカン薬物よりも忍容性が良好であることを示しており、これは、イリノテカンが与えられときよりも制御しやすい毒性を伴うその明らかに高い治療指数のためである。イリノテカン及びトポイソメラーゼI阻害剤が、TNBCを含む乳癌において活性であると知られていないものの、IMMU-132を用いるTNBCにおける現在の治験は、それが転移性TNBCにおいて有効であることを示しており(Starodub et al.,J Clin Oncol 32:5s,2014(suppl;abstr3032))、これは、おそらく、TNBC細胞細胞上のTROP-2タンパク質に対するキャリア抗体の選択的結合により、イリノテカンが与えられるときよりも腫瘍部位を標的とするこのDNA損傷薬物の割合が高いためである(以下の実施例において記載される前臨床知見に基づく)。実際、本発明者らの前臨床試験は、TNBC異種移植モデルにおけるIMMU-132の活性を実証している。IMMU-132の他の特性は、それが内部移行抗体(RS7)を必然的に含み、ゆえに、標的癌細胞内に、毒性薬、つまりSN-38を選択的に組み込むことである。さらに、IMMU-132の標的である、TROP-2は、カルシウムシグナル伝達タンパク質であり、多くの上皮癌により正常細胞よりも高量で発現され、いくつかの癌において、悪性腫瘍の増加の予後指標であると示されている。様々な進行固形癌、ならびにTNBCの両方におけるIMMU-132を用いる現在の実験は、以下に記載し、一部公表されている(Cardillo et al.,Clin Cancer Res 2011;17:3157-3169)、前臨床ヒト癌異種移植片試験の結果を実証する。
【0171】
TROP-2は、IMMU-132イムノコンジュゲートの標的抗原であり、36-kDaの細胞表面糖タンパク質であり、肺、乳房、結腸直腸、膵臓、前立腺及び卵巣を含む様々なヒト癌腫上で発現される(例えば、Lipinski et al.Proc Natl Acad Sci USA 1981;78:5147-5150;Stein et al.Cancer Res 1990;50:1330-1336;Alberti et al.Hybridoma 1992;11:539-545;Wang et al.Mol Cancer Ther 2008;7:280-285;Cubas et al.Biochim Biophys Acta 2009;1796:309-314を参照されたい)。それは、カルシウムシグナル伝達物質として機能し(Ripani et al.Int J Cancer 1998;76:671-676)、細胞移入及び足場非依存性増殖につながると示されている(Hastak et al.,Cancer Res 2010;70:7970-7980)。重要なことに、TROP-2の高発現は、疾患の侵攻及び予後の不良に関連し、それにより癌療法の理想的な標的となっている(Shimada et al.Cancer Sci 2005;96:668-675;Wang et al.Mol Cancer Ther 2008;7:280-285;Cubas et al.Biochim Biophys Acta 2009;1796:309-314)。
【0172】
SN-38は、水性媒体におけるその不溶性のためにそのまま使用することはできない。活性薬物であるSN-38へのイリノテカンの生体変換は、非常に非効率的であり、患者変動性でもある。SN-38を標的部位に直接利用可能にするために、SN-38の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を、抗TROP-2(hRS7)抗体と共に調製した。多くのリンカーを調査し、1つ、「CL2A」を最適に作用するリンカーであるとした選出した(Cardillo et al.,Clin Cancer Res 2011;17:3157-3169;Moon et al.J Med Chem 2008.51,6916-6926;Govindan et al.Clin Cancer Res 2009;15:6052-6061;Govindan et al.Mol Cancer Ther 2013 Jun;12(6):968-978)。コンジュゲーション部位及び薬物切断部位を示すSN-38誘導体のコンジュゲートである、CL2A-SN-38を
図1に示す。穏やかに還元されたhRS7へのCL2A-SN-38のコンジュゲーションは記載されている(Moon et al.J Med Chem 2008.51,6916-6926;Govindan et al.Clin Cancer Res 2009;15:6052-6061)、TROP-2
+細胞株への抗原結合性は、ADCにて保存され、これはin vitroで多くのTROP-2
+細胞株にて、遊離薬物へのそれに類似する一桁のナノモル強度も呈する。平均薬物-抗体置換率(DAR)は、質量スペクトル測定により7.6であると決定され、これは吸光度測定によって裏付けられた。非コンジュゲート遊離薬物のレベルは5%未満であり、臨床グレードの調製物の規格限界以内である。
【0173】
ADCの大規模調製物は、CL2A-SN-38成分及びADCの両方のcGMP条件及びQA監視下で、200グラム規模の抗体で実施されている。現在までにコンジュゲートの8つのかかる調製物(8×200グラム)を調製し、生成物を100mgのアリコートにして凍結乾燥調製物として2~8℃で保存した。保管に対する調製物の安定性は、現在3年間にわたって文書化されている。
【0174】
37℃、in vitroでのヒト血清において、hRS7-CL2A-SN-38は、約24時間内に50%の遊離薬物を放出すると示されている。CL2Aリンカーは、異なる、非常に安定した、リンカーを有するコンジュゲートと比較して、遥かに高いバイオアベイラビリティの遊離薬物をもたらす。これは、遊離薬物の遊離が抗体コンジュゲートの内部移行及びその後の細胞処理に左右されないためであり、これが腫瘍表面上の抗原密度が低い状況においてもそれを魅力的にする。
【0175】
TNBCにおける代替エンドポイントとしての病理学的完全奏効(pCR)
pCRは、TNBCを有する患者におけるネオアジュバント療法治験の容認エンドポイントとなっている(Bardia&Baselga,Clin Cancer Res 2013 Dec 1;19(23):6360-6370;Ademuyiwa et al.,J Onc 2013;2013:219869;Food and Drug Administration。業界用ドラフトガイダンス:Pathologic Complete Response in Neoadjuvant Treatment of High-Risk Early-Stage Breast Cancer: Use as an Endpoint to Support Accelerated Approval.May 2012)。pCRは、FDAガイダンス書類において「ネオアジュバント全身療法の完了後に、摘出した乳房検体及び[全ての採取した]同側リンパ節のヘマトキシリン・エオシン評価上でいずれの侵襲性癌も残存しない(すなわち、現行のAJCC病期分類システムにおいてypT0ypN0である)として」既定されている(Food and Drug Administration.業界用ドラフトガイダンス:Pathologic Complete Response in Neoadjuvant Treatment of High-Risk Early-Stage Breast Cancer:Use as an Endpoint to Support Accelerated Approval.May 2012)(イタリック強調を追加)[訳者注:[全ての採取した]が強調されている箇所である]。これにより、転移性疾患の設定よりも比較的少数の患者で素早く薬物を検査することが可能になるが、ネオアジュバント療法の開始後6カ月以内またはそれより早期の外科手術の結果に基づく迅速な(暫定的な)薬物承認をもたらす可能性がある外科手術での有効性の評価、治療成功期間(EFS)及び全生存(OS)率を決定するための経過観察は、最終的な薬物承認につながる臨床的利益を実証するために依然として必要とされている。承認の迅速化のためのこの道筋は、遥かに早く一般使用に薬物を利用可能にし、様々な臨床試験及び設定におけるその包含を拡大し、これがTNBCの外科手術に直面している女性に非常に迅速な利益を提供することができることを意味する。IMMU-132の毒性プロファイルが、同様の作用機序を扱うプラチナ製剤及びPARP薬物よりも真に優れているならば、この新規治療剤の追加は、TNBC治療のネオアジュバントにおける(ならびに、おそらく補助剤及び転移性設定でも)パラダイムシフトを引き起こす可能性がある。また、IMMU-132の標的であるTROP-2が、非トリプルネガティブ(TN)腫瘍においても高率で発現されるため、この薬剤は、これらの他の乳癌型においても特有の活性を示し得る。転移性及び早期TNBCの治療における有望な結果は、非TN癌を有する患者においてもこの薬剤の研究を奨励するだろう。
【0176】
1つのメタアナリシスで検討されたTNBCに対するネオアジュバント治験のうち、3つの治験のみが、長期無病生存期間及びOSを報告し、これらは、プラチナ系ネオアジュバント療法を受けた患者に対して優れていた(Petrelli et al.Breast Cancer Res Treat 2014;144:223-232)。pCRを乳房及び腋窩にて達成した(ypT0N0)TNBCを有する患者は、疾患が残存している患者よりも良好な治療成功期間を有した。11,955人の患者を含む12件の国際治験のなおも別の分析では、TNBCにおけるpCRが、改善されたEFS及びOSに対する代替エンドポイントであると証明された(Cortazar et al.Lancet 2014 Jul 12;384(9938):164-172)。EFSに関して、例えば3年で、非pCRのTNBC患者の約60%に対して、pCR患者は90%の割合を示した(Cortazar et al.Lancet 2014 Jul 12;384(9938):164-172)。
【0177】
結論として、ネオアジュバント化学療法は、TNBCを有する患者の反応性サブグループの標準治療となっているが、事実、好ましいとして確立されている特定の治療レジメンはなく;タキサン及びアントラサイクリンの使用だけが標準的な様式であるとみられている。以前の全身処置に失敗している転移性TNBC患者において良好な活性を示す新規の標的療法剤を加えることが、ネオアジュバント設定において最良及び最速で評価され得、ここでそれは従来の併用療法に加えられ、この候補治療剤を伴わない同一治療と比較される。比較対照薬治験における新規薬剤の検査は、標準療法を確立することを助け得、また他のサブグループにまで反応性タイプの拡大を可能にし、患者に対して高レベルの毒性で現在達成されているレベルを超えてpCR奏効率を増加させる可能性がある。タキサン及びシクロホスファミドと組み合わせたアントラサイクリンがTNBCにおいて高いpCR率を提供することは通常合意されている(von Minckwitz&Fontanella,Breast 2013 Aug;22 Suppl 2:S149-S151)が、これは高い毒性を伴う。シスプラチン及びカルボプラチンなどのプラチナ製剤の添加も、調査中である。以下の試験は、IMMU-132を、トポイソメラーゼI阻害剤として、TACレジメンに添加することを評価しており、それはカルボプラチンがTACと併用すると毒性が増加するためである。この取り組みは、より多くの乳房保存、より忍容性のある処置、及び治癒率の増加をもたらすはずである。
【0178】
キット
様々な実施形態は、患者を処置するために好適な構成要素を含有するキットに関し得る。例示的なキットは、本明細書に記載の少なくとも1つのコンジュゲートされた抗体または他の標的化部分を含有してよい。投与するための成分を含有する組成物が、経口送達によるものなどの消化管を介する送達用に製剤化されていない場合、いくつかの他の経路を通してキット構成要素を送達することができるデバイスが含まれ得る。非経口送達などの用途のためのデバイスの1タイプは、組成物を対象の体内に注入するために使用されるシリンジである。吸入デバイスも使用してよい。
【0179】
キット構成要素は、一緒に包装されてよいか、または2つ以上の容器に分離されてもよい。いくつかの実施形態では、容器は、再構成に好適な組成物の滅菌された凍結乾燥製剤を含有するバイアルであってよい。キットは、他の試薬の再構成及び/または希釈に好適な1つまたは複数の緩衝液も含有してよい。使用され得る他の容器には、パウチ、トレイ、箱、管等が含まれるがこれらに限定されない。キット構成要素は、包装されて容器内で滅菌されて維持され得る。含むことができる別の構成要素は、キットを使用する人のための使用説明書である。
【実施例0180】
本発明の様々な実施形態を、以下の実施例により説明するが、本発明の範囲を限定しない。
【0181】
実施例1.CL2A-SN-38イムノコンジュゲートの調製
CL2A-SN-38の合成のための好ましい反応スキームでは、EEDQ(0.382g)を、市販されているFmoc-Lys(MMT)-OH(0.943g)及びp-アミノベンジルアルコール(0.190g)の混合物を含む塩化メチレン(10mL)に、室温で加え、4時間撹拌した。抽出処理、その後フラッシュクロマトグラフにより、1.051gの物質を白色泡状物として得た。エレクトロスプレー質量スペクトルは、ピークをm/e745.8(M+H)及びm/e780.3(M+Cl-)で示し、これは構造と一致した。Lys(MMT)-PABOH中間体(0.93g)を、ジエチルアミン(10mL)中に溶解し、2時間撹拌した。溶媒除去後、残渣をヘキサン中で洗浄して、0.6gの中間体を無色沈査として得た(HPLCにより91.6%純度)。HPLC保持時間:2.06分。エレクトロスプレー質量スペクトルは、ピークをm/e523.8(M+H)、m/e546.2(M+Na)及びm/e522.5(M-H)で示した。
【0182】
この粗中間体(0.565g)を、市販のO-(2-アジドエチル)-O’-(N-ジグリコリル-2-アミノエチル)ヘプタエチレングリコール(「PEG-N3」、0.627g)と、EEDQを含む塩化メチレン(10mL)を使用してカップリングした。溶媒除去及びフラッシュクロマトグラフィーにより、0.99gのアジド-PEG-Lys(MMT)-PABOH中間体を(淡黄色油状物で;87%収率)得た。エレクトロスプレー質量スペクトルは、ピークをm/e1061.3(M+H)、m/e1082.7(M+Na)及びm/e1058.8(M-H)で示し、これは構造と一致した。中間体3(0.92g)を、10-O-TBDMS-SN-38-20-O-クロロぎ酸を含む塩化メチレン(10mL)と10分間アルゴン下で反応させた。混合物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.944gのアジド-PEG-Lys(MMT)-PAB-O-SN-38-TBDMS(収率=68%)を淡黄色油状物として得た。この中間体(0.94g)を含む塩化メチレン(10mL)に、TBAF(1Mを含むTHF、0.885mL)及び酢酸(0.085mL)の混合物を含む塩化メチレン(3mL)を加え、次いで10分間撹拌した。混合物を、塩化メチレン(100mL)で希釈し、0.25Mクエン酸ナトリウム及びブラインで洗浄した。溶媒除去により0.835gのアジド-PEG-Lys(MMT)-PAB-O-SN-38を黄色油状生成物として得た(99%純度)。エレクトロスプレー質量スペクトルは、ピークをm/e1478(M+H)、m/e1500.6(M+Na)、m/e1476.5(M-H)、m/e1590.5(M+TFA)で示し、これは構造と一致した。
【0183】
このアジド誘導体化SN-38中間体(0.803g)を、4-(N-マレイミドメチル)-N-(2-プロピニル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド(「MCC-yne」;0.233g)を含む塩化メチレン(10mL)と、CuBr(0.0083g)、DIEA(0.01mL)及びトリフェニルホスフィン(0.015g)の存在下で、18時間反応させた。0.1M EDTA(10mL)での洗浄を含む抽出処理、及びフラッシュクロマトグラフィーにより、0.891gのMCC-PEG-Lys(MMT)-PAB-O-SN-38中間体(収率=93%)を黄色泡状物として得た。エレクトロスプレー質量スペクトルは、ピークをm/e1753.3(M+H)、m/e1751.6(M-H)、1864.5(M+TFA)で示し、これは構造と一致した。最終的に、ジクロロ酢酸(0.3mL)及びアニソール(0.03mL)の混合物を含む塩化メチレン(3mL)を用いる脱保護、その後エーテルを用いる沈殿により、0.18g(97%収率)のCL2A-SN-38最終生成物を淡黄色の粉末として得た。エレクトロスプレー質量スペクトルは、ピークをm/e1480.7(M+H)、1478.5(M-H)で示し、これは構造と一致した。
【0184】
抗体へのコンジュゲーション
抗CEACAM5ヒト化MabであるhMN-14、抗CD22ヒト化MabであるhLL2、抗CD20ヒト化MabであるhA20、抗EGP-1ヒト化MabであるhRS7、及び抗ムチンヒト化MabであるhPAM4を、CL2A-SN-38にコンジュゲートしてイムノコンジュゲートを調製した。各抗体を、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含むリン酸緩衝液で7~7.4の範囲のpHで穏やかに還元し、pHを6.5に調整し、約10倍モル過剰のCL2A-SN-38と、DMSOを5~10%v/vで共溶媒として使用して反応させ、20分間にわたって周囲温度でインキュベートした。抗体に関して10倍モル過剰で水溶液として使用されるN-エチルマレイミドで過剰チオールはいずれもキャップした。
【0185】
コンジュゲートをタンジェンシャルフローろ過(TFF)により、20~30ダイアフィルトレーション容量の最終製剤緩衝液、25mM MES、pH6.5を使用して精製した。この方法は、サイズ排除及び疎水性カラムでの厄介な一連の精製を回避し、それにより、数百グラムのコンジュゲートを容易な様式で精製することが可能になる。生成物をSN-38に対して、366nmでの吸光度及び標準値との相関によりアッセイした。タンパク質濃度を280nmでの吸光度から演繹し、この波長でのSN-38吸光度のスピルオーバーに対して補正した。これらから、SN-38/MAb置換比率(DAR)を決定した。精製したコンジュゲートを、ガラスバイアル中で凍結乾燥製剤として保存し、真空下で蓋をし、-20℃の冷凍庫で保存した。薬物-抗体比率(DAR)は、典型的には5~7の範囲であった(すなわち、抗体部分あたり、5~7薬物部分)。
【0186】
上述のADCを精製し、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)、pH6.5で緩衝液交換し、トレハロース(25mM最終濃度)及びポリソルベート80(0.01%v/v最終濃度)でさらに製剤化し、最終緩衝液濃度は、賦形剤添加の結果として22.25mMとなった。製剤化したコンジュゲートを凍結乾燥し、密封バイアル中に保存し、2℃-8℃で保存した。凍結乾燥したイムノコンジュゲートは、保存条件下で安定であり、その生理学的活性を維持した。
【0187】
実施例2.IMMU-132で処置した様々な固形腫瘍における前臨床試験
In vitro特徴づけ-TROP-2陽性ヒト前立腺癌腫細胞株である、PC-3を標的として使用して、非コンジュゲートhRS7 IgGと比較してIMMU-132による抗原結合における潜在的な変化を評価した。3つの別々の場合で測定したとき、IMMU-132及び非コンジュゲートhRS7 IgGの結合性の間で有意差はなかった(KD値、それぞれ、0.658±0.140nM対0.564±0.055nM)。
【0188】
ヒト新生児受容体(FcRn)結合性を、低密度FcRnバイオセンサーチップを使用して表面プラズモン共鳴(BIACore)分析により決定した。各試験薬剤について5つ希釈液の3つの別々のセットを使用する3つの結合実行により、SN-38のhRS7 IgGへのコンジュゲーションは、FcRnに対するその結合親和性に有意に影響しなかったことが実証された(KD値、それぞれ、92.4±5.7nM及び191.9±47.6nM;P=0.07)。
【0189】
TROP-2は、TNBC細胞株を含む広範なヒト固形腫瘍細胞株において発現される(例えば、MDA-MB-231及びMDA-MB-268)。発現レベルは、腫瘍型間及び型内で異なる(表2)。例えば、MDA-MB-231と比較して、おおよそ10倍多くのTROP-2がMDA-MB-468により発現されているが、HER2+SK-BR-3腫瘍株と比較したときに差異はない。全てのこれらの腫瘍型は、細胞毒性効果IMMU-132に感受性である。50%増殖阻害を引き起こすために必要な濃度(IC50値)は、低ナノモル濃度範囲にある。これらのアッセイでは、遊離SN-38は、ADCよりも細胞毒性である傾向があるが、これは、IMMU-132が細胞に結合して細胞により取り込まれるためにかかる時間に対し、遊離形態での薬物の容易な利用能に起因する可能性が高い。TROP-2発現レベル及びSN-38に対する感受性の間に相関関係があるように見えない。BxPC-3は、最高発現レベルのTROP-2を有するが、遊離SN-38及びIMMU-132間のIC50値において4倍差があり、一方でCOLO205は比較においておおよそ8倍低くTROP-2を発現したが、IC50値において呈する差は2倍のみである。
【0190】
【0191】
様々な固形腫瘍におけるIn vivo有効性-IMMU-132の最初の有効性試験を、複数の固形腫瘍異種移植モデルにおいて行った(Cardillo et al.,Clin Cancer Res 2011;17:3157-3169)。これらには、膵臓、肺、結腸、及び胃癌を含んだ(
図3;用量は、SN-38当量で示す)。検査した全6種の固形腫瘍では、IMMU-132は、食塩水対照と比較したとき、腫瘍増殖を有意に阻害した(P<0.043、曲線下面積AUC)。6種のうち5種で、特異的IMMU-132療法が、非腫瘍標的化対照ADCと比較したとき、有意な抗腫瘍応答を提供した(P<0.05、AUC)。加えて、IMMU-132は、10倍当量多いSN-38をイリノテカンの形態で投与されたマウスと比較したとき、有意に大きな抗腫瘍効果を提供した(
図3A、C、&D)。イリノテカンのMTDが動物に投与されたときのみ、これらの実験で達成されたADCと同等であった(
図3B&E)。しかしながら、マウスに与えられたイリノテカンレジメンに含有される総SN-38当量は合計で約2,400μgであり、これはIMMU-132処置レジメンで投与されたSN-38当量(64μg)より37.5倍多かった。重要なことに、マウスは、イリノテカンをSN-38に、ヒトより5~10倍ほども高く効率的に変換する。(Morton et al.Cancer Res 2000;60(15):4206-4210;Furman et al.J Clin Oncol 1999;17(6):1815-1824;Zamboni et al.Clin Cancer Res 1998;4(2):455-462)。ゆえに、マウスにおいてこのイリノテカンの大きな利点があっても、IMMU-132は同等の抗腫瘍効果を提供する。
【0192】
実施例3.IMMU-132で処置されたTNBCにおけるIn vivo試験
IMMU-132を、MDA-MB-468 TNBC腫瘍を有するマウスにおいて評価した(
図4A;用量は、SN-38当量で示す)。IMMU-132(0.2mg/kg)は、食塩水、イリノテカン(6mg/kg)、または対照抗CD20 ADC、hA20-CL2A-SN-38と比較したとき、有意な腫瘍退縮を引き起こした(P<0.0012、AUC)。用量を0.12mg/kgまで低下させたときでさえ、IMMU-132は、マウスにおいて有意に腫瘍体積を減少させた(P<0.0017、AUC)。重要なことに、この低量のIMMU-132で与えられたSN-38当量の総量は、たった9.6μgであり、一方でマウスに投与された6mg/kgは62.5倍の利益を表した(600μg累積用量)。しかしながら、イリノテカン群における最初のマウスが疾患進行のために失われたとき、IMMU-132(0.12mg/kg)で処置したマウスにおける腫瘍体積(TV)は、イリノテカンで処置したマウスのものよりも有意に小さかった。(それぞれ、TV=0.17±0.12cm
3対0.53±0.29cm
3;P=0.0094、両側T検定)。他の固形腫瘍モデルにおいて見いだされるように、IMMU-132を用いる腫瘍に対する少量のSN-38の特異的標的は、遥かに多い用量の非標的薬物よりも遥かに有効である。
【0193】
治療56日目(移植後78日)に、低用量hA20-CL2A-SN-38(抗CD20)対照群(0.12mg/kg)におけるマウスの腫瘍は、食塩水対照マウスと差がない点まで進行した(それぞれ、TV=0.74±0.41cm
3対0.63±0.37cm
3)。その時点で、これらの腫瘍が、かなり大きなサイズへのそれらの進行にもかかわらず、IMMU-132処置に応答し得るかどうかを判定することを決定した(
図4B)。全てのマウスが、陽性反応を実証し、腫瘍は、78日目にIMMU-132を用いた治療を開始したときより5週間後には有意に小さくなっており(それぞれ、TV=0.14±0.14cm
3対0.74±0.41cm
3;P=0.0031、両側T検定)、IMMU-132処置の開始時点で1.0cm
3より大きかった腫瘍でさえ、88%よりも多く退縮した(1.32cm
3が0.06cm
3まで退縮し、1.08cm
3が0.13cm
3まで退縮した)。MDA-MB-468において観察された効果とは対照的に、MDA-MB-231 TNBC腫瘍を有するマウスは、IMMU-132処置に応答しなかった(
図4C)が、これはこの腫瘍の非常に迅速な増殖及び/またはその非常に低いTROP-2の発現に関連する可能性がある。
【0194】
実施例4.IMMU-132を用いるヒト臨床治験
IMMU-132は、最近の治療後に再発して中央値で3つの治療を以前に受けた、多様な転移性固形癌を有する25人の患者における用量設定第I相試験を完了している。25人のうち23人は、コンピュータ断層撮影(CT)によりRECIST1.1について評価可能であり、知見は以下の通りであった。(1)8~10mg/kg/用量を与える21日間のサイクルの1日目及び8日目の処置の用量スケジュールは、忍容性を示し、有効であった。(2)G-CSF造血支持は最低限必要であるが、時折の投与遅延及び/または用量減少を伴って、最大10カ月までさえも、反復サイクルを投与することができる。(3)治療の反復施行にもかかわらず、抗薬物抗体または抗抗体抗体は感受性ELISA試験によって検出されなかった。(4)主要な毒性は、好中球減少症、下痢、及び脱毛症であり、単独で与えられるときのSN-38の親化合物であるイリノテカンのそれと一致しているが、IMMU-132ではより管理可能であった。(5)IMMU-132は、13人の患者で安定疾患、3例で部分奏効(TNBC、小細胞肺癌、及び結腸直腸癌)、7例で進行性疾患を、最良奏効として達成することにより、in vivoでヒト対象において抗腫瘍活性を示した。最長無増悪期間は、第I相試験で転移性ホルモン難治性前立腺癌を有する患者における、約57週間であった。
【0195】
これらの結果は、第II相試験において確認されており、この試験は、すでに100人を超える多様な転移性固形癌を有する患者が登録されており、8または10mg/kg用量が21日間のサイクルの1日目及び8日目に与えられ、患者の状態及び忍容性が許す限りの頻度で反復した。副作用は、第I相実験における経験と差はなかったが、特に転移性TNBC患者における有効性は非常に奨励されるものである。
【0196】
現在、14人のCTで評価可能なTNBC患者のうち、4人は、部分奏効を経験しており、6人の疾患は安定しており(1人は、RECIST1.1により27%退縮を示している)、4人は進行性疾患を最良奏効として示している(
図5A~B)。この治験におけるTNBCの登録は、20人の患者を安全性及び応答性について評価するだろうことを期待して、継続されている。これらのTNBC患者は、1~9個の治療を以前に受けており、登録前の最近のものに再発している。PRを示している患者12~14が、登録される前に2~6個の治療を以前に受けていることは注目に値する。
【0197】
第I相部にて応答している最初の患者は、治療の前後で皮膚への転移において優れた奏効を示した(図示せず)。第II相部にて部分奏効を有する他の患者は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、食道癌、及び膀胱癌を含む。
【0198】
これらの結果は、IMMU-132がイリノテカンよりも良好な治療指数を有することを実証し、それはIMMU-132が低毒性用量で活性であるためであり、このことは、抗TROP-2抗体により選択的に標的されるより高用量のSN-38が、このトポイソメラーゼI阻害剤により十分な選択的DNA損傷を提供して、このクラスの薬剤に応答すると知られているよりも多くの癌型において奏効を達成することを示す。それぞれの連続的な治療で応答が縮小することが周知であるために、転移性TNBCの患者において、彼らが繰り返し以前の療法に失敗した後で、高い奏効率が観察されたことは驚くべきことである。免疫組織化学による評価は、この治験において記録した腫瘍検体のほとんど全てが標的抗原であるTROP-2を発現したことを示している。TNBC及び非TNBCの腫瘍マイクロアレイの個別の試験で、本発明者らは、90%超がTROP-2を発現し、そのうち65%超が強度2+及び3+染色を有することを実証した。従って、本発明者らは、TNBCが、及びおそらくは非TNBCも、これらの癌においてTROP-2を標的とするこのSN-38とコンジュゲートした抗体に対して感受性の新生物であり、ゆえに、TNBCに対する最初の腫瘍標的療法を代表すると結論付けた。
【0199】
他の薬剤と併用したときの用量制限毒性及び潜在的な懸念事項
忍容可能な好中球減少症(神経障害またはアドリアマイシン、タキサン、及びプラチナ薬剤に顕著な他の副作用のエビデンスがない)は、特に、ネオアジュバント設定において処置未経験患者で、IMMU-132がこれらの薬剤のうちの1つまたは複数と併用できることを示す。ドキソルビシン+シクロホスファミドの前後でのパクリタキセルの長期使用を考えると、本発明者らは、IMMU-132がパクリタキセルと併用して12週間にわたって与えられるべきだと考えた。この場合、IMMU-132の典型的なサイクルは、8mg/kgを21日毎の1日目及び8日目に与えるものである。パクリタキセル±IMMU-132の12週間処置レジメンを完了後、ドキソルビシン及びシクロホスファミドを、4コースにわたって、隔週で投与し、使用される標準的なプロトコルに従う(下記例)。IMMU-132が追加される治験群と同じように、対照群は、パクリタキセル、ドキソルビシン+シクロホスファミドを用いる治療のみを受ける。好中球減少症を制限し、発熱性好中球減少症を回避するために、そのレジメンにおけるIMMU-132の用量減少は、併用により経験される好中球減少症の等級及び持続期間に従って許容される。現在の経験におけるように、パクリタキセルも減少が必要である場合があり、G-CSF(例えば、ニューポジェン)を用いた造血支持の選択肢が、最初の治療コースについて担当医の裁量にゆだねられる。しかしながら、本発明者らは、ドキソルビシン+シクロホスファミドの第二群の開始後の予防的G-CSF療法を要求する(共同研究者の推奨に基づく)。
【0200】
複数のコースの治療法で現在まで処置された125人を超える転移性癌患者におけるIMMU-132を用いた本発明者らの経験に基づき、そして、患者が以前に多くの細胞毒性療法を受けていた場合、以下のIMMU-132用量及びスケジュールを使用する。いくつかの治療を以前に受けた患者は、8、10、及びさらには12mg/kgでのIMMU-132の複数用量に忍容性を示したが、本発明者らは、8mg/kgをこの併用に使用する。それは、この用量レベルでは、複数用量後であってもグレード2を超える好中球減少症はほとんど起こらず、このレベルで治療的に活性であるからである。本発明者らが、好中球減少効果がパクリタキセルで生じると予測する一方、8.0mg/kg用量レベルのIMMU-132は、この併用においてより重度な転帰を緩和する。
【0201】
実施例5.IMMU-132を受ける多様な進行癌を有する患者の薬物動態及び免疫原性
上述の第I相試験では、血清試料を、各処置について、「ピーク」レベルを表す注入終了の30分以内に(ほとんどの注入は2~3.5時間続いた)、次いで「トラフ」レベルを表す次の用量の直前に回収した。2回のELISAアッセイを使用してピーク及びトラフ血清試料を測定した。一方のアッセイは、抗SN-38抗体で被覆されたプレート(Immunomedicsにより開発された)を使用してインタクトなコンジュゲート(ADC)に付着したSN-38を結合することにより生成物を捕捉する。結合した生成物を、次いで、特異的抗イディオタイプ抗体(すなわち、抗hRS7 IgG)を使用して目的の抗体であるとして同定する。ゆえに、このアッセイは、インタクトなコンジュゲートを測定する。他方のアッセイは、血清中のhRS7 IgGを検出するように構成される。
図6Aは、4つの用量レベルにおけるIgG及びADCピークレベルを示す。ピークレベルを患者の体重に正規化するとき(すなわち、μg/mL/kg)、用量が増加するにつれて濃度が増加する傾向が見られる(
図6B)。
【0202】
代表的な患者の血清における2つの生成物の濃度を複数用量にわたって分析したところ、ピークレベルは同様のレベルで維持され、用量が減少したときにはより低く調整されたことが示された(図示せず)。トラフ試料のいずれにもADCは存在しなかったが、低濃度のIgGは前回用量の7~14日間以内に検出することはできた(図示せず)。この知見は、約1日でSN-38の50%がIgGから放出されることを示すin vitro安定性データと一致する(Cardillo et al.,Clin Cancer Res 2011;17:3157-3169)。
【0203】
治験の第I相部に登録された患者からの選択ピーク及びトラフ血清試料を、逆相HPLCによる分析を用いて、血清を抽出することによりSN-38決定に供した。分析は、2部に分けて行われ、一方は抽出した血清中の未結合型SN-38(遊離)を検出し、他方のプロセスは、その後総SN-38(すなわち、結合型+遊離SN-38)の一部として測定されるだろう、IgGに結合したSN-38を放出する(総合)抽出前の酸加水分解ステップを含んだ。未結合型SN-38の決定を伴う5人の患者で、そのレベルは血清中に見いだされるSN-38の総量の3%未満であった(表3)。ゆえに、血清中のSN-38の97%超が注入終了の30分以内にIgGに結合していた。
【0204】
【0205】
治験の拡大部分に登録された選択患者では、さらなるPK試料を、最初及び二回目の用量の1、2、3日後に収集して、IgG、コンジュゲート、及びSN-38のクリアランス速度をより注意深く調べた。
図7は、8mg/kgを受けた代表的な患者を示し、さらなる試料を最初の2処置のそれぞれの1及び2日後に収集した。
図7Aは、最初の2用量でのIgG及びIMMU-132のクリアランス、及び次のサイクル(21日目及び28日目)について収集されたピーク/トラフ試料をプロットする。これらのデータは、インタクトなコンジュゲートがIgGより素早く排泄されることを実証するが、これも、SN-38が放出されているために生じる。7日目までに、SN-38の全てが放出され得、それゆえIMMU-132は検出されなかったが、一方で依然として少量のIgGが存在していた。
図7Bは、総SN-38及び遊離SN-38の対応する濃度を提供する。再度、試料中で、遊離SN-38の量は、総SN-38の1.8~6.1%のみであった。7日目までに、微量のSN-38のみが血清中に残存する。
図7Cは、検出のELISA法または血清中のSN-38濃度に基づくIMMU-132のクリアランスをプロットする。両セットのデータが重複し、ELISAが、血清中のSN-38の大半がIgGに結合しているという事実を反映するSN-38クリアランスに対する合理的な代理的決定であることのエビデンスを提供する。
【0206】
IMMU-132は、数カ月に及ぶ反復注射の後でさえも、免疫原生を欠く。hRS7 IgGまたはSN-38に対する抗体応答を検出するためのELISAアッセイは、試験の開始前及び処置期間を通して、4~6週間毎に行われる。現在まで試験された1人の患者のみが、hRS7 IgGに対して陽性のベースライン抗体を有した(すなわち、50ng/mL超)。しかしながら、現在までのいずれの患者においても処置の経過にわたって抗hRS7 IgGまたは抗SN-38抗体応答は検出されておらず、これは、30回もの注射を受けている患者のものである。
【0207】
実施例6.臨床投薬スキーム
臨床的に、IMMU-132は、8mg/kgで投与されている(すなわち、約0.16μg/kg SN-38当量)。ヒト用量の8mg/kgは、マウス用量にすると、98.4mg/kgまたは20gのマウスに対しておおよそ2mgである。この用量は、3つのうちの1つ異なる投薬スキームに分割され、動物の1群は2回の1mgのIMMU-132用量(1及び15日目)を受け、これは隔週投薬レジメンを表し、1群は、4用量の500μg(1、8、22、及び29日目)を与えられ、これは21日間の処置サイクルにおける2週間にわたる週1回を表し、最後の群は、8用量の250μg(1、4、8、11、22、25、29、及び32日目)を与えられ、これは21日間の処置サイクルにおける2週間にわたる週2回を表す。これらの投薬スキームを、ヒト胃癌腫及び膵臓腺癌異種移植モデルにおいて試験した(
図8)。
【0208】
NCI-N87ヒト胃癌腫異種移植片を有する動物では(
図8A)、全3つの(2×1mg、4×0.5mg、及び8×0.25mg)投与量は、未処置対照動物と比較したとき有意な抗腫瘍効果を提供した(P<0.0001;AUC)。生存率において有意差はなかったものの、4×0.5mg及び8×0.25mg群は両方とも88%及び100%陽性反応率をもたらし、それに対し2×1mg群では22%のみであった。加えて、49日目(2×1mg群の最初のマウスが1.0cm
3を超える腫瘍体積に達した日)、腫瘍は、4×0.5mg群において有意に小さかった(それぞれ、平均TV=0.637±0.274cm
3対0.341±0.255cm
3;P=0.0259)。全体では、98日目に試験が終了したとき、4×0.5mg群においては、8匹中3匹のマウスがまだ生存しており、まだ陽性反応を示していたが、2×1mg群では9匹中0であった。
【0209】
同様に、BxPC-3ヒト膵臓腺癌異種移植モデルでは(
図8B)、全3つの(2×1mg、4×0.5mg、及び8×0.25mg)投与量は、未処置対照動物と比較したとき腫瘍増殖を有意に阻害した(P<0.0009;AUC)。4×0.5mg及び8×0.25mg群は両方とも治療32日目で、2×1mg処置群と比較したとき、有意に小さい腫瘍をもたらした(最初のマウスを疾患進行のために安楽死させた日;P<0.0093)。全体で、4×0.5mgのIMMU-132で処置されたマウスは、2×1mg処置群と比較したとき、有意な抗腫瘍効果を実証した(P=0.0357)。生存に関しては、2×1mg群と4×0.5mg群の間で差はなかった(生存中央値=それぞれ、35日及び46日)。しかしながら、8×0.25mgで処置したマウスは、他の2つの処置群と比較したとき、優れた延命効果を実証した(MST=53日;P<0.0349;ログランク)。全3つは、70%を超える陽性反応率を有し、腫瘍進行時間に有意差はなかった。全体で、これらのデータは、用量を分割することが、大用量ボーラスを隔週で与えるよりも良好な増殖制御を提供することを示す。これは、臨床的に履行されている週1回投薬を支持する。
【0210】
実施例7.忍容性
マウス及びカニクイザルを両方とも活用して、IMMU-132の毒性動力学を評価した(Cardillo et al.,Clin Cancer Res 2011;17:3157-3169)。Swiss-Websterマウスにおいて、4、8、または12mg/kgのSN-38当量(250、500、または750mg/kgタンパク質用量)での2用量のIMMU-132を、3日間離して投与した。体重減少がないことから示されるように動物にて毒性の明白な兆候は観察されなかった(結果はファイル上)。造血器毒性は生じておらず、血清化学はアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)及びアラニントランスアミナーゼ(ALT)レベルが二回目の注射の7日後に上昇したことを明らかにしたのみであった。しかしながら、これらの酵素は正常に戻り、病理組織検査で肝病変のエビデンスはなかった。
【0211】
IMMU-132が、マウスにより発現されるTROP-2と交差反応しないため、二つ目の試験は、カニクイザルモデルにおいて行われ、カニクイザルのTROP-2は、IMMU-132により認識される。この実験では、6匹のサルの1つの群(3雄及び3雌)は、0.96mg/kgのSN-38当量(60mg/kgタンパク質用量)のIMMU-132を受け、6匹の第二の群は1.92mg/kg(120mg/kgタンパク質用量)を受けた。用量は3日間空けて投与した。2回の0.96mg/kgのIMMU-132用量に全てのサルが忍容性を示し、一過性の血球数の低減のみを伴ったが、その全てが正常範囲内に留まった。体重低下は、8%未満であり、これは注射後15日以内にベースラインに戻った。病理組織学は、2回目の注射の8日後に、最小限から中程度の微視的変化を造血器及び消化管臓器ならびに雌の生殖器官に示したのみであった。これらは全て、回復期の終わりである32日目までに正常に戻った。対照的に、2回の1.92mg/kg用量(120mg/kgタンパク質用量)は、サルに対して有毒だと証明された。1匹の動物は、消化管合併症及び重度の骨髄抑圧の結果として死亡した。この群の残りの動物も同様に、0.96mg/kg用量を受けたサルにおいて観察されたものと同様の臓器毒性を示したが、レベルは遥かに重度であった。これらの最終臓器毒性は、イリノテカンと一致するが、最も重要なことは、TROP-2を発現する多くの異なる正常組織においてTROP-2標的毒性のエビデンスがなかったことである。この試験は、IMMU-132の2回注射に対する最大耐量が0.96から1.92mg/kgの間であることを示し、ヒト当量用量は20から40mg/kg(タンパク質用量)の間であるだろう。
【0212】
実施例8.作用機序
一般に、癌細胞は、外因性または内因性アポトーシス経路と称される2つの主経路のうちの1つを介してアポトーシスを起こすことができる(Fulda&Debatin,Oncogene 2006;25(34):4798-4811)。外因性経路は、細胞表面の細胞死受容体(例えば、TNFファミリー受容体)の係合を特徴とし、これはカスパーゼ-8の活性化をもたらし、これがカスパーゼ3などの下流カスパーゼの活性化をもたらし、最終的にポリ-ADP-リボースポリメラーゼ(PARP)を切断し、DNAを断片化し、細胞死をもたらす。反対に、内因性経路は、ミトコンドリアから細胞質内へのシトクロムc放出をもたらす直接的なDNA損傷(例えば、電離放射線)または他の細胞のストレス(例えば、細胞周期停止)のいずれかにより引き起こされることができる。シトクロムcは、次いで、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子-1(APAF-1)と複合体を形成し、これがカスパーゼ-9を活性化するプラットフォームとして作用し、その後カスパーゼ-3及び-7を含むカスパーゼ活性化カスケードを開始し、PARP切断、ならびに細胞死がもたらされる。
【0213】
SN-38は、細胞のDNAに重大な損傷を引き起こす公知のトポイソメラーゼ-I阻害剤である。これは、早期アポトーシス促進性タンパク質である、p53及びp21WAF1/Cip1の上方制御を仲介し、カスパーゼ活性化及びPARP切断をもたらす(Cusack et al.Cancer Res 2001;61:3535-3540;Liu et al.Cancer Lett 2009;274:47-53;Lagadec et al.Br J Cancer 2008;98:335-344;Whitacre et al.Clin Cancer Res 1999;5:665-672)。p21WAF1/Cip1の発現は、細胞周期のG1停止を伴い、ゆえに内因性経路の顕著な特徴である(Sherr&Roberts,Genes Dev 1995;9:1149-1163)。本発明者らは、IMMU-132も同様に、早期アポトーシス促進性シグナル伝達事象(p53及びp21WAF1/Cip1)の上方制御を仲介し、結果としてNSCLC(Calu-3)及び膵臓(BxPC-3)細胞株においてPARP切断をもたらし得ることを以前に実証した(Cardillo et al.,Clin Cancer Res 2011;17:3157-3169)。
【0214】
IMMU-132により活用されるアポトーシス経路をより良好に規定するために、NCI-N87ヒト胃癌腫細胞株を1μMの遊離SN-38または当量のIMMU-132に曝露した(
図9A)。遊離SN-38及びIMMU-132は両方ともp21
WAF1/Cip1の上方制御を仲介するが、SN-38に対しIMMU-132に曝露された細胞の間で上方制御の量が同じになるには48時間かかる。これは、培養細胞に、単に遊離薬物が添加されときの容易な利用能と比較して、SN-38の取込み及びADCからのSN-38の放出における遅延に起因する可能性がある。in vivoでのIMMU-132と比較してイリノテカンの迅速なクリアランスを考えると、以下に薬理-毒性学試験において実証されるように、IMMU-132を用いるときの腫瘍内のSN-38蓄積の利点が予想されるだろう。
【0215】
カスパーゼ活性化に関して、遊離SN-38及びIMMU-132は両方とも曝露の48時間以内でのカスパーゼ-9及び-7の切断を実証する。この結果は、10nMで、72時間の暴露後にカスパーゼ9の切断を引き起こしたHT-29結腸細胞株における以前の報告と一致する(Lagadec et al.Br J Cancer 2008;98:335-344)。しかしながら、その同じ報告においてカスパーゼ-3切断は観察されなかったが、本発明者らは切断を示す。これが72時間では検出されない早期事象であるからか、または彼らが使用したSN-38の量(10nM)が、本発明者らのアッセイにおいて本発明者らが使用した1μMと比較してこれを示すのに十分に高くなかった可能性がある。最終的に、遊離SN-38及びIMMU-132は両方ともPARP切断を仲介した。これは、24時間で最初に明らかになり、48時間で切断が増加した。まとめると、これらのデータは、IMMU-132に含有されるSN-38が遊離SN-38と同じ活性を有すること、及び内因性アポトーシス経路がこのADCにより誘導されることを実証する。
【0216】
微小管阻害剤である、パクリタキセルは、ヒト乳癌においてp21
WAF1/Cip1の誘導を仲介する(Blagosklonny et al.Cancer Res 1995;55:4623-4626)。この誘導は、p53状態から独立していることができる(Li et al.Cancer Res 1996;56:5055-5062)。加えて、パクリタキセルは、ヒト乳癌細胞においてカスパーゼ2を活性化すると示されており、これがカスパーゼ活性化カスケード及びPARP切断を開始する(Jelinek et al.Cancer Cell Int 2013;13:42)。図示するように(
図9B)、IMMU-132も同様に、TNBC MDA-MB-468を含む2つの異なるヒト乳癌細胞株においてPARP切断を仲介すると示された。ほぼ完全な切断が1μM遊離SN-38または当量のIMMU-132への曝露の48時間以内に明らかになった。加えて、p21
WAF1/Cip1は、突然変異p53を含有するMDA-MB-468において上方制御された。継続中の実験は拡大されて、IMMU-132により乳癌細胞においてどのカスパーゼが活性化されるか、及び、あれば、どれがパクリタキセルと重複し得るかを決定するだろう。
【0217】
2つの化学療法剤を併用するときの最良のシナリオは、相乗効果の達成であるだろう。これをなすためには、2つの薬剤は、同じ結果をもたらす2つの独立した経路により作用するか、調和して作用して単一経路を増幅させるかのいずれかであるべきである。TNBCにおけるこの一例は、メチルセレニン酸をパクリタキセルと併用したときに示された(Qi et al.PLoS ONE 2012;7:e31539)。両薬剤は、カスパーゼ-3を活性化しPARP切断を誘導することが単独で可能であるが、併用すると、これらはこの活性化の程度を増加させ、細胞増殖を相乗的に阻害する結果を伴った。メチルセレニン酸のように、IMMU-132もまた、これらの同じアポトーシス経路の多くを使用し、それゆえ、これらのシグナルを増幅させるようにパクリタキセルと相乗的に作用する可能性もある。
【0218】
パクリタキセルと5-FU、ゲムシタビン、及びカルボプラチンの併用は、正しい順番で投与されなければ拮抗的であると示されている(Qi et al.PLoS ONE 2012;7:e31539;Johnson et al.Clin Cancer Res 1997;3:1739-1745;Johnson et al.Clin Cancer Res 1999;5:2559-2565;Sui et al.Cancer Biol Ther 2006;5:1015-1021;Xiong et al.Cancer Biol Ther 2007;6:1067-1073)。ゲムシタビン及びカルボプラチンの場合、これらの他の薬剤の前にパクリタキセルを投与することが、拮抗作用を防ぐために必要である(Sui et al.Cancer Biol Ther 2006;5:1015-1021;Xiong et al.Cancer Biol Ther 2007;6:1067-1073)。しかしながら、5-FUについては、順番はこの拮抗作用転帰を変化させなかった(Johnson et al.Clin Cancer Res 1999;5:2559-2565)。5-FUがp21WAF1/Cip1のパクリタキセル誘導を遮断することが重要な発見であった。興味深いことに、SN-38が5-FUと併用されたとき、拮抗作用は5-FUがSN-38の前に加えられた場合またはこれらが同時に加えられた場合に観察された。細胞がSN-38に最初に曝露されたときのみ、5-FUを加えて相乗効果を達成することができた(Torigoe et al.AntiCancer Res 2009;29:2083-2090)。IMMU-132が、パクリタキセルと同様、p21WAF1/Cip1の上方制御を仲介し、同様のアポトーシス経路を使用し、両方とも同様の拮抗作用問題を5-FUと有したことを考えると、この2つの薬剤が相乗的に作用し得る可能性はある。継続中の実験は、IMMU-132療法とパクリタキセルを併用することの利益の可能性を調べている。これらは、in vitroでのアポトーシスシグナル伝達事象及びTNBCのin vivoモデルを含み、ここでマウスは、IMMU-132とパクリタキセルの併用を用いて処置されている。
【0219】
実施例9.膵臓癌異種移植モデルにおけるIMMU-132対イリノテカンの薬理毒性学試験
組織におけるSN-38のクリアランス及び取込みを、40mg/kgのイリノテカン(773μg;総SN-38当量=448μg)またはIMMU-132(1.0mg、DAR=7.6、SN-38当量=20μg)を静脈内注射されたCapan-1膵臓癌異種移植片(約0.06~0.27g)を有するヌードマウスにおいて調べた。イリノテカン用量は、マウスのMTDであり、ヒトでは3.25mg/kgまたは約126mg/m2が当量である。マウスにおいてIMMU-132用量はMTDを十分に下回り、約4mg/kg IMMU-132のヒト当量用量を表す(80μg/kg SN-38当量)。動物の群(n=3)を5つの間隔で病理解剖した;イリノテカンについては、5分、1時間、2時間、6時間、及び24時間ならびにIMMU-132については、1時間、6時間、24時間、48時間、72時間。動物から採取した血清を水中で1:2に希釈し、次いで、等分のメタノール:エチレングリコール:1M ZnSO4で抽出した。この培地では、SN-38、SN-38G(グルクロン酸抱合)、及びイリノテカンは有機相に取込まれ、一方でタンパク質は沈殿する。ゆえに、IgGに結合したSN-38はいずれも沈殿し、検出されなくなる。
【0220】
IgGに結合したSN-38を検出するために、血清試料を、まず6M HClで酸加水分解し、次いで、抽出培地を添加する前に中和しなければならなかった。このプロセスは、全てのIgG結合SN-38を放出し、これは、抽出培地の有機相にて単離され得、試料中のあらゆる未結合型(すなわち、遊離)SN-38を伴う。酸加水分解された抽出試料は、試料中のSN-38の総量を測定するといわれるが、抽出されただけの試料は試料中の未結合型または遊離SN-38を測定する。IgG結合SN-38の量は、総合から遊離を引くことにより得ることができる。IMMU-132処置動物由来の血清及び組織ホモジネートは、それゆえ、非加水分解/抽出されて、未結合型SN-38と、総SN-38を与える酸加水分解/抽出された試料とを単離するという2つのプロセスで処理される。腫瘍、肝臓、及び小腸内容物は、まず、水中で均質化される(10部の水に対し1部の組織)。抽出前の全ての試料を、内部標準である、10-ヒドロキシル-カンプトテシン(10-OH CT)でスパイクし、これが定量化及び回復のモニタリングを助する。少量(例えば、5~50μL)の抽出物の有機相を、目的の生成物のそれぞれから標準で予め較正した分析用のC-18HPLCカラムに適用する。各生成物ピーク(すなわち、SN-38、SN-38G、イリノテカン、及び10-OH CT)のAUCを決定する。生成物ピークと内部標準ピークとの比率を算出し、各薬剤について10~10,000ng/mLの範囲の標準曲線に対してプロットした。線形回帰を使用して対数変換したデータを適合させた。血清試料に対するアッセイの感受性は20ng/mLであり、これは試料を分析用に2:1に希釈したためであり、一方で組織試料に対する感受性は110ng/mLであり、これはホモジネートを11:1(1部の組織に対し10部の水)に希釈したためである。
【0221】
イリノテカン処置動物では、SN-38は、5分、1時間、及び2時間)でのみ検出できたが、イリノテカン及びSN-38Gはこれらの同じ試料及び6時間試料において検出された。(
図10);これらの生成物はいずれも24時間試料では検出されなかった。高レベルのイリノテカンを腫瘍内に有するにもかかわらず、SN-38またはSN-38Gの濃度は非常に低かった。例えば、2時間で、平均で101.6±58.6μg/gのイリノテカンが腫瘍内にあって、それぞれ1.6±1.0(1.6%)及び1.3±1.2μg/g(1.3%)のSN-38及びSN-38Gのみが腫瘍内にあった。ゆえに、かなりの量のイリノテカンがCapan-1腫瘍内に非常に素早く取り込まれる一方、SN-38に変換される腫瘍内のイリノテカンは非常に乏しかった。
【0222】
IMMU-132を受けている動物については、検出可能レベルの未結合型SN-38またはSN-38Gは腫瘍内になかった;しかしながら、高レベルのSN-38[総]が検出された。未結合型SN-38またはSN-38Gが検出されなかったため、これはIMMU-132処置動物の腫瘍内のSN-38の全てがIgGに結合したことを意味し、生成物完全性が保持され、腫瘍へのコンジュゲートの結合によりSN-38が排他的に腫瘍に送達されていることを示す。IMMU-132と共に注射されたSN-38のモル当量は、イリノテカンを注射された動物中に含有されるSN-38のモル当量のほんの一部分であることを念頭におくことが重要である(例えば、448μg SN-38、または25%変換率に基づくと、約115μgに対し、IMMU-132では20μg)。
【0223】
イリノテカンで腫瘍に送達されるSN-38のAUC(3.9μg/g・h)と、IMMU-132での腫瘍内のSN-38[総]のAUC(474μg/g・h)を比較すると、この試験のように、イリノテカンより22倍少ないSN-38当量がIMMU-132で動物に与えられたとしても(448対20μg)、IMMU-132が、イリノテカンよりもほぼ120倍多くのSN-38をCapan-1腫瘍に送達する能力を有することが見出される。
【0224】
同様の分析を、無関係な、非標的抗体コンジュゲートを与えられたCapan-1腫瘍を有する動物において行った。IMMU-132の腫瘍/血液濃度は、非標的SN-38抗体コンジュゲートを与えられた動物において見いだされた比率よりも4倍高く、これは、腫瘍に特異的に結合するコンジュゲートを使用することの利益を実証した。
【0225】
肝臓及び糞便の分析:IMMU-132を与えられた動物の肝臓内の未結合型SN-38レベルは非常に低く、1時間で平均130±58ng/gであり、その後検出可能レベルは見いだされなかった。SN-38[総]濃度さえも比較的低く、それぞれ、1、6、及び24時間で平均が1023±202、909±186、及び203±29ng/gであり、48時間及び72時間で肝臓内の検出可能レベルは見いだされなかった。これは、小腸から単離した糞便中の比較的低い濃度の未結合型SN-38と良好に一致する(1時間及び6時間で全体含量において442±103ng及び912±373ng)。総合したプロセス済試料(結合型+未結合型)におけるSN-38濃度は、遊離プロセスされた試料(未結合型)より微かに高かったのみであり、インタクトなコンジュゲートが腸内へと胆汁排出経路を横切らないことを実証する。
【0226】
イリノテカン処置動物では、SN-38濃度は遥かに高く、肝臓において5分でピークに達し(3,511±476ng/g)、1時間で1296±505ng/gまで低減し(このとき、IMMU-132を与えられた動物における未結合型SN-38より10倍近く高い)、最終的に、6時間で638ng/gが測定され、その後24時間で検出不可能になった。驚くべきことに、SN-38は、わずかに5分という早さで小腸内容物中で検出することができ(799±550ng/g)、6時間にわたって約10,000ng/gのレベルを維持し、その後24時間で検出不可能になった。これは、イリノテカンがSN-38及びSN-38Gにいかに素早く変換されるかを示す。前述している通り、血液クリアランスデータは、生成物の98%超が、たった5分以内で血液から排泄されたことを示した。
【0227】
実施例10.CD74+ヒト癌を処置するための抗CD74-CL2A-SN-38コンジュゲート
CD74は、内部移行し、抗体結合の後に再循環するので、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のための魅力的な標的である。CD74の多くは、血液癌に関連しているが、固形癌でも発現される。従って、CD74を発現する固形腫瘍の治療に関するヒト化抗CD74抗体、ミラツズマブと調製されたADCの有用性を調べた。ミラツズマブ-ドキソルビシン及び2つのミラツズマブ-SN-38コンジュゲートを、切断可能リンカー(CL2A及びCL2E)と共に調製したが、これらは血清におけるその安定性及びどのようにSN-38をリソソーム中に放出するかにおいて異なる。CD74発現を、フローサイトメトリー及び免疫組織学により決定した。In vitro細胞毒性及びin vivo治療試験をヒト癌細胞株A-375(黒色腫)、HuH-7及びHep-G2(肝がん)、Capan-1(膵臓)、及びNCI-N87(胃)、及びRajiバーキットリンパ腫において行った。ミラツズマブ-SN-38ADCを抗TROP-2及び抗CEACAM6抗体と調製したSN-38ADCとそれらの標的抗原を発現している異種移植片において比較した。
【0228】
ミラツズマブ-ドキソルビシンは、リンパ腫モデルにおいて最も有効であったが、一方でA-375及びCapan-1では、ミラツズマブ-CL2A-SN-38のみが治療的利益を示した。CD74の表面発現がTROP-2またはCEACAM6よりも遥かに低いにもかかわらず、ミラツズマブ-CL2A-SN-38は、Capan-1において抗TROP-2-CL2A-SN-38と同様の有効性を有した。しかし、NCI-N87では、抗CEACAM6及び抗TROP-2コンジュゲートが優れていた。単回用量レベルでの2つの肝がん細胞株における試験は、食塩水処置動物よりも有意な利益を示したが、無関係なIgGコンジュゲートに対してはそうでなかった。CD74は、いくつかの固形腫瘍異種移植片ではADCに対して好適な標的であり、有効性はCD発現の均一性により大きく影響を受け、CL2A連結SN-38コンジュゲートが最良の治療応答を提供した。
【0229】
材料及び方法
ヒト腫瘍細胞株。Rajiバーキットリンパ腫、A-375(黒色腫)、Capan-1(膵臓腺癌)、NCI-N87(胃癌腫)、Hep-G2肝がん及びMC/CAR骨髄腫細胞株をAmerican Tissue Culture Collection(バージニア州、マナサス)から購入した。HuH-7肝がん細胞株を日本ヒューマンサイエンス研究資源バンク(Japan Health Science Research Resources Bank)(日本、大阪府)から購入した。全ての細胞株は、加湿されたCO2インキュベーター(5%)内、37℃で、10%~20%仔牛血清及びサプリメントを含有する推奨培地内で培養した。細胞を50回未満で継代し、マイコプラズマについて定期的に検査した。
【0230】
抗体及びコンジュゲーション方法。ミラツズマブ(抗CD74 MAb)、エプラツズマブ(抗CD22)、ベルツズマブ(抗CD20)、ラベツズマブ(抗CEACAM5)、hMN15(抗CEACAM6)、及びhRS7(抗TROP-2)は、ヒト化IgG1モノクローナル抗体である。CL2A及びCL2Eリンカー及びそれらのSN-38誘導体を、上記実施例に記載のように調製し、抗体にコンジュゲートした。ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートを、前述のように調製した(Griffiths et al.,2003,Clin Cancer Res 9:6567-71)。全てのコンジュゲートをIgGのジスルフィド還元により調製し、その後これらのリンカーの対応するマレイミド誘導体と反応させた。分光分析により、薬物:IgGモル置換比率は5~7であると推定された(1.0mgのタンパク質が、約16μgのSN-38または25μgのドキソルビシン当量を含有する)。
【0231】
In vitro細胞結合及び細胞毒性。抗原陽性細胞に対する未コンジュゲートとコンジュゲートミラツズマブの細胞結合を比較するためのアッセイ及び細胞毒性検査に、MTS色素還元法を使用した(Promega、ウィスコンシン州、マディソン)。
【0232】
フローサイトメトリー及び免疫組織学。膜のみ結合抗原または膜及び細胞質抗原の評価を提供する様式でフローサイトメトリーを行った。皮下腫瘍異種移植片のホルマリン固定、パラフィン包埋切片で、抗原回収法を用いずに染色して、抗ヒトIgGコンジュゲートで明らかになった10μg/mLで抗体を使用して、免疫組織学を行った。
【0233】
In vivo試験。雌ヌードマウス(4~8週齢)または雌SCIDマウス(7週齢)をTaconic(ニューヨーク州、ジャーマンタウン)から購入し、1週間の検疫後に使用した。食塩水対照を含む全ての薬剤を週2回4週間にわたって腹腔内投与した。具体的な用量は結果に示す。毒性を、週1回の体重測定により評価した。Rajiバーキットリンパ腫モデルについては、SCIDマウスに0.1mL媒地中2.5×106個のRaji細胞を静脈内注射した。5日後に、動物に、単回静脈内注射(0.1mL)のコンジュゲートまたは食塩水を投与した(N=10/群)。マウスを、苦悩及び麻痺の徴候について毎日観察し、後肢麻痺の発症、開始時体重の15%を超える低下、または他の場合には、瀕死(代替生存エンドポイント)のいずれかの場合に安楽死させた。
【0234】
皮下腫瘍を二次元でキャリパーによって測定し、腫瘍体積(TV)をL×w2/2として算出した。式中、Lは最長直径であり、wは最短直径である。測定は、少なくとも週1回行い、腫瘍が1.0cm3まで成長したら、動物を死亡させた(すなわち、代替生存エンドポイント)。A-375黒色腫細胞株(0.2mL中に6×106個の細胞)をヌードマウスに移植し、腫瘍が平均で0.23±0.06cm3(N=8/群)となったときに、治療を開始した。Capan-1をヌードマウスに皮下移植し、それには、組織培養物からの8×106個の細胞と組み合わせた、連続継代腫瘍からの腫瘍懸濁液(0.3mLの15%w/v腫瘍懸濁液)の組み合わせを使用した。TVが平均で0.27±0.05cm3(N=10/群)となったときに処置を開始した。NCI-N87胃腫瘍異種移植片を、マトリゲルと最終培養物からの1×107個の細胞の0.2mLの1:1(v/v)混合物を皮下注射することにより開始した。TVが平均で0.249±0.045cm3(N=7/群)となったときに、治療を開始した。同じ手順に従ってヌードマウスにおいてHep-G2及びHuH-7肝がん異種移植片を発生させた。Hep-G2が平均で0.364±0.062cm3(N=5/群)となり、HuH-7が平均で0.298±0.055cm3(N=5/群)となったときに、治療を開始した。
【0235】
有効性をカプランマイヤー生存曲線において表現し、生存時間中央値を決定するために上述の代替エンドポイントを使用する。Prism GraphPadソフトウェア(カリフォルニア州、ラホヤ)を使用してログランク(マンテル・コックス)検定により分析を行い、有意性はP<0.05とした。
【0236】
結果
ヒト腫瘍細胞株及び異種移植片におけるCD74発現。固形腫瘍細胞株における膜のみのCD74のMFIが、バックグラウンドMFIよりも非常に頻繁に2倍未満で高かったため(A-375黒色腫細胞株を除く)、4つの異なる固形腫瘍型に由来する6つの細胞株を、透過処理した細胞の分析に主に基づいてCD74陽性であると同定した(表4)。Rajiにおける表面CD74発現は、固形腫瘍細胞株よりも5倍超高かったが、透過処理したRaji細胞における総CD74は、固形腫瘍細胞株の大半と同様であった。
【0237】
【0238】
免疫組織学は、Raji皮下異種移植片が大きく均一で強い染色を、顕著な細胞表面標識を伴って有したことを示した(図示せず)。Hep-G2肝がん細胞株は、固形腫瘍の最も均一な取込みを有し、中程度に強かったが、主として細胞質で染色を有し(図示せず)、その後A-375黒色腫細胞株はいくらか均一でない染色をより強く、ただ、ほぼ細胞質の発現を有した(図示せず)。Capan-1膵臓(図示せず)及びNCI-N87(図示せず)胃癌腫細胞株は、中程度(Capan-1)から強い(NCI-N87)CD74染色を有したが、均一に分布していなかった。HuH-7肝がん細胞株(図示せず)は、最も均一でなく、最も弱い染色を有した。
【0239】
コンジュゲートの免疫反応性。未コンジュゲートミラツズマブ、ミラツズマブ-CL2A-SN-38及びミラツズマブ-CL2E-SN-38コンジュゲートのKd値は有意差がなく、それぞれ平均で0.77nM、0.59nM、及び0.80nMであった。MC/CAR多発性骨髄腫細胞株において測定した未コンジュゲート及びドキソルビシン-コンジュゲートミラツズマブのKd値は、それぞれ、0.5±0.02nM及び0.8±0.2nMであった(Sapra et al.,2008,Clin Cancer Res 14:1888-96)。
【0240】
コンジュゲートのIn vitro薬物放出及び血清安定性。メルカプトエタノールでキャップしたCL2A及びCL2EリンカーからのSN-38の放出機序を、リソソーム条件を部分的にシミュレートする環境、すなわち低pH(pH5.0)で、及びカテプシンBの存在下または不在下で決定した。CL2E-SN-38基質は、酵素の不在下pH5では不活性であったが(図示せず)、カテプシンBの存在下では、Phe-Lys部位での切断が素早く進行し、半減期は34分であった(図示せず)。活性SN-38の形成には、SN-38の10番目の位置で結合したカルバメートの分子内環化が必要とされ、これは、よりゆっくりと生じ、半減期は10.7時間であった(図示せず)。
【0241】
予想通り、カテプシンBは、CL2Aリンカーにおける活性SN-38の放出に影響を及ぼさなかった。しかしながら、CL2Aは、切断可能なベンジル炭酸塩結合を有し、pH5.0でCL2Eリンカーと同様の速度で活性SN-38を放出し、半減期は約10.2時間であった(図示せず)。pH感受性アシルヒドラゾン結合を有するミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートの半減期は、pH5.0で7~8時間であった(図示せず)。
【0242】
リソソームに関連する条件下でこれらのリンカーの全てが薬物を比較的同様の速度で放出する一方、それらの血清中の安定性は非常に異なる。ミラツズマブ-CL2A-SN-38は、21.55±0.17時間で遊離SN-38の50%を放出し(図示せず)、これは他のCL2A-SN-38コンジュゲートと一致した。CL2E-SN-38コンジュゲートは、しかしながら、非常に不活性で、半減期は約2100時間と推定された。ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートは、98時間でドキソルビシンの50%を放出し、これは2つの他の抗体-ドキソルビシンコンジュゲートと同様であった(図示せず)。
【0243】
細胞毒性。これらのコンジュゲートの評価に関連する重大な問題は、造血器及び固形腫瘍細胞株における遊離ドキソルビシン及びSN-38の相対作用強度であった。本発明者らのグループは、SN-38がいくつかのB細胞リンパ腫及び急性白血病細胞株において活性であり、その作用強度は、0.13~2.28nMの範囲であったことを以前に報告した(Sharkey et al.,2011,Mol Cancer Ther 11:224-34)。その後in vivoでの治療試験に使用された4つの固形腫瘍細胞株におけるSN-38作用強度は、2.0~6nMの範囲であった(図示せず)。ドキソルビシンは、混合反応を有し、Rajiリンパ腫及びA-375黒色腫細胞株における作用強度は3~4nMであったが、Capan-1、NCI-N87、及びHep G2細胞株に対しては10倍近く弱かった。SN-38とドキソルビシンの作用強度を比較する他の試験では、LS174T結腸癌、18対18(それぞれ、SN-38対ドキソルビシンのnM作用強度);MDA-MB-231乳癌、2対2nM;SK-OV-4卵巣癌、18対90nM;Calu-3肺腺癌、32対582nM;Capan-2膵臓癌、37対221nM;及びNCI-H466小細胞肺癌、0.1対2nMを見出した。ゆえに、SN-38は、これらの6細胞株のうちの4つでドキソルビシンよりも5から20倍強力であり、LS174T及びMDA-MB-231では作用強度は同様であった。まとめると、これらのデータは、ドキソルビシンがSN-38よりも固形腫瘍に対して有効性が低く、一方で、SN-38は固形腫瘍及び造血器腫瘍において同等に有効であると思われることを示す。
【0244】
予想通り、3つのコンジュゲート形態は多くの場合に、in vitroで遊離薬物よりも数桁効力が弱く、これは、両薬物が細胞内に容易に輸送されると予想されるのに対して、薬物コンジュゲートは、薬物を細胞内部に輸送するために抗体結合を必要とするためである(図示せず)。CL2A連結SN-38コンジュゲートは例外であり、それはSN-38の90%超が4日間のアッセイ期間にわたって、コンジュゲートから培地内へと放出されるためである(Cardillo et al.,2011,Clin Cancer Res 17:3157-69;Sharkey et al.,2011,Mol Cancer Ther 11:224-34)。ゆえに、コンジュゲートが迅速に内部移行したとしても、遊離薬物とCL2A連結薬物の間の相違を識別することは難しいだろう。
【0245】
安定したCL2E連結SN-38は、遊離SN-38と比較して、比較的良好にRaji細胞株において機能するが、4つの固形腫瘍細胞株において実質的に(7~16倍)低い作用強度を有し、これは、相対的に低いCD74の表面発現が、これらの固形腫瘍において薬物輸送を最小化する役割を担っている可能性を示す。ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートは、全ての細胞株において遊離ドキソルビシンと比較したときにその作用強度において実質的な差異を有したが、これは、固形腫瘍細胞株における遊離SN-38に対するCL2E-SN-38コンジュゲートと同様の程度であった。
【0246】
上述の6つの追加の細胞株では、ミラツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲートは、ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートよりも9~60倍効力が強かったが(図示せず)、この場合も、この結果はCL2A連結コンジュゲートが4日間のインキュベーション期間にわたってそのSN-38の大半を培地中に放出する一方でドキソルビシンコンジュゲートが同じ時間にわたって多くてもその薬物の50%しか放出しないという事実により大きく影響を受けた。CL2E連結ミラツズマブは、これらの他の細胞株では調べなかった。
【0247】
ヒト腫瘍異種移植片のIn vivo治療。様々な抗体を用いて調製されたミラツズマブ-ドキソルビシンまたはSN-38コンジュゲートを用いた以前のin vivo試験は、これらが、その最大耐量よりも遥かに低い用量で有効であったことを示しており(Griffiths et al.,2003,Clin Cancer Res 9:6567-71;Sapra et al.,2005,Clin Cancer Res 11:5257-64;Govindan et al.,2009,Clin Cancer Res 15:6052-61;Cardillo et al.,2011,Clin Cancer Res 17:3157-69;Sharkey et al.,2011,Mol Cancer Ther 11:224-34)、ゆえに、in vivo検査は、同様の、しかし固定量の各コンジュゲートをそれらが十分に忍容性を示すレベルで比較することに焦点を当てた。
【0248】
初めの試験は、まず、ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートが2つのSN-38コンジュゲートにどの程度匹敵するかを測るために、リンパ腫の播種性Rajiモデルにおいてドキソルビシン及びSN-38コンジュゲートを調べた(図示せず)。全ての特異的なコンジュゲートは、20日間のみの生存中央値を有した、非標的ラベツズマブ-SN-38コンジュゲートまたは食塩水処置動物よりも有意に良好であった(P<0.0001)。In vitroでの試験が、RajiにおいてSN-38コンジュゲートについて8倍もの優位性を示すにもかかわらず、最良生存率は、ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートで見られ、ここで単回17.5mg/kg(350μg)用量を与えられた全動物、及び2.0mg/kg(40μg)を与えられた動物の7/10が研究の終了時(112日目)で生存していた(例えば、17.5mg/kg用量のミラツズマブ-ドキソルビシン対ミラツズマブ-CL2A-SN-38、P=0.0012)。In vitro試験により、両コンジュゲートが、内部移行したときに同様の速度で活性SN-38を放出するだろうと示されていたが、生存率は、より安定したCL2E-SN-38コンジュゲートについて有意に低かった(それぞれ、CL2A対CL2EでP<0.0001及びP=0.0197、17.5及び2.0mg/kg用量)。
【0249】
5つの固形腫瘍細胞株を調べた。ドキソルビシン及びSN-38の両方に対して最良のin vitro応答を有したため、A-375黒色腫細胞株で開始した。A-375異種移植片は迅速に増殖し、食塩水処置対照動物は10.5日間のみの生存中央値を有した(図示せず)。12.5mg/kg(0.25mg/動物)で週2回用量のミラツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲートは、生存を28日間まで延長させ(P=0.0006)、これは、17.5日間の生存中央値を有する対照エプラツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲートよりも有意に良好であり(P=0.0089)、後者は食塩水処置動物と有意差はなかった(P=0.1967)。ミラツズマブ-CL2Aコンジュゲートは、対照エプラツズマブ-CL2E-SN-38コンジュゲートと同一の14日間の生存中央値を有したミラツズマブ-CL2E-SN-38コンジュゲートよりも有意に長い生存を提供した(P=0.0014)。SN-38コンジュゲートよりも2倍高い用量のミラツズマブ-ドキソルビシンを与えたにもかかわらず、生存中央値は、食塩水処置動物よりも良好ではなかった(10.5日間)。
【0250】
A-375黒色腫モデルと同様に、Capan-1において、CL2A連結SN-38コンジュゲートのみが有効であり、生存中央値は35日間であり、未処置動物とは有意に差があり(P<0.036)(図示せず)、これはより低い用量(5mg/kg;100μg/動物)であっても有意に差があった(P<0.02)。ミラツズマブ-CL2Eもしくは非標的エプラツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲート、または2倍高い用量のミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートはいずれも、何らの生存優位性を提供しなかった(P=0.44対食塩水)。同じ用量の内部移行性抗TROP-2 CL2A-SN-38コンジュゲート(hRS7-SN-38;IMMU-132)を与えられた動物を用いる同じ試験で、生存中央値が、ミラツズマブ-CL2A-SN-38と等しかったことは注目に値する(図示せず)。hRS7-CL2A-SN-38コンジュゲートは、様々な固形腫瘍を処置するための目的のADCとして以前に同定されていた(Cardillo et al.,2011,Clin Cancer Res 17:3157-69)。Capan-1での表面結合性hRS7のMFIは、ミラツズマブでの22(表4を参照されたい)に比較して、237であった(図示せず)。ゆえに、実質的に低い表面抗原発現を有するにもかかわらず、ミラツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲートは、このモデルにおいて、hRS7-CL2A-SN-38コンジュゲートと同じく良好に機能した。
【0251】
2つの固形腫瘍異種移植片において劣った治療結果を有するミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートでは、ミラツズマブ-SN-38コンジュゲートを、多くの固形腫瘍の表面上でより高く発現されるTROP-2(hRS7)またはCEACAM6(hMN-15)に対する他のヒト化抗体で調製されたSN-38コンジュゲートと比較することに焦点を変更した(Blumenthal et al.,2007,BMC Cancer 7:2;Stein et al.,1993,Int J Cancer 55:938-46)。3つの追加の異種移植モデルを調べた。
【0252】
胃腫瘍モデル、NCI-N87では、17.5mg/kg/用量(350μg)のミラツズマブ-CL2A-SN-38を与えられた動物は、生存において多少の改善を示したが、食塩水処置動物と(31日間対14日間;P=0.0760)または非結合性ベルツズマブ抗CD20-CL2A-SN39コンジュゲート(21日間;P=0.3128)(図示せず)と比較して、統計学的な有意性を満たすことはできなかった。しかしながら、hRS7-及びhMN-15-CL2Aコンジュゲートは、生存中央値をそれぞれ66日間及び63日間まで有意に改善した(P=0.0001)。表面発現されるTROP-2及びCEACAM6のMFIは、それぞれ795及び1123であり、たった5であったCD74よりも遥かに高かった(表4を参照されたい)。免疫組織学は、この細胞株の異種移植片におけるCD74の比較的強い細胞質発現を示したが、重要なことに、これは散在しており、腫瘍内の画定されたポケット内のみに出現した(図示せず)。CEACAM6及びTROP-2は、CD74よりも均一に発現され(図示せず)、CEACAM6は、細胞質及び膜上の両方により強く提示され、TROP-2は主に膜上で見出された。ゆえに、抗CEACAM6及び抗TROP-2コンジュゲートで改善された生存はおそらく、NCI-N87におけるより高い抗原密度とより均一な発現の両方を反映している。
【0253】
Hep-G2肝がん細胞株(図示せず)では、免疫組織学は、CD74の中程度の細胞質染色を伴う非常に均一な発現を示し、フローサイトメトリーは、比較的低い表面発現を示した(MFI=9)。hMN-15でのMFIは175であり、免疫組織学は、非常に強い膜染色の単離ポケットを伴う、CEACAM6のかなり均一な膜及び細胞質発現を示した(図示せず)。Hep-G2異種移植片を有する動物における試験により、ミラツズマブ-CL2A-SN-38が、食塩水処置群での21日間に比較して、生存を45日間まで延長した(P=0.0048)一方で、hMN-15-CL2A-SN-38コンジュゲートが、生存を35日間まで改善したことが見出された。hMN-15-CL2A-SN-38よりもミラツズマブコンジュゲートが優位である傾向があったが、これは、統計的な有意性は達成しなかった(46日間対35日間;P=0.0802)。しかしながら、非結合性ベルツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲートは、ミラツズマブコンジュゲートと類似した生存優位性を提供した。本発明者らは、非結合性コンジュゲートを用いた治療結果は、特に比較的高いタンパク質用量で特異的CL2A連結コンジュゲートに類似し得ることを以前に観察したが、特異的及び対照コンジュゲートの力価測定は通常、選択的に明らかにした。ゆえに、特異的コンジュゲートはいずれも、この細胞株でこれらの用量においては、選択的な治療優位性を提供しなかった。
【0254】
HuH-7肝がん細胞株を使用する別の試験(図示せず)は、Hep-G2と類似の表面発現、ただしやや低い細胞質レベルを有し(表4を参照されたい)、hMN-15-SN-38コンジュゲートがミラツズマブ-CL2Aコンジュゲートよりも長いが(35日間対18日間)、有意差はない生存優位性を提供することを見出した(P=0.2944)。hMN-15及びミラツズマブコンジュゲートは両方とも、食塩水処置動物よりも有意に良好であったが(それぞれP=0.008及び0.009)、この場合も、コンジュゲートはいずれも、この用量レベルでは、非標的ベルツズマブ-SN-38コンジュゲートと有意差はなかった(それぞれP=0.4602及び0.9033)。CEACAM6表面発現は、この細胞株においては比較的低く(MFI=81)、免疫組織学は、CD74(図示せず)及びCEACAM6(図示せず)は両方とも、非常にわずかで、また高度に散在していることを示した。
【0255】
これらの試験は、SN-38抗体-薬物コンジュゲートのネオアジュバント使用が抗TROP2(hRS7)抗体に限定されず、CD74などの異なる抗原標的に対する抗体も利用してもよいことを示す。
【0256】
実施例11.治療難治性転移性結腸癌(mCRC)を処置するためのhRS7-SN-38(IMMU-132)の使用
患者は、mCRCを有する62歳の女性であり、2012年1月に転移性疾患を最初に呈した。女性は、診断の数週間後に最初の治療として腹腔鏡下での回腸横行結腸切除術を受け、次いで、4サイクルのFOLFOX(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、オキサリプラチン)化学療法をネオアジュバント設定で受け、その後、肝臓の右葉にある転移性病変を除去するために2012年3月に右肝切除を受けた。この後、合計で12サイクルのFOLFOXにわたるアジュバントFOLFOXレジメンを2012年6月に再開した。8月に、オキサリプラチンを、悪化する神経毒性のために、レジメンから除去した。女性の5-FUの最後のサイクルは2012年9月25日であった。
【0257】
2013年1月に行われたCTは、肝転移を示した。そして、女性は、IMMU-132(hRS7-CL2A-SN-38)治験に参加する良好な候補として評価された。女性の病歴における併存症は、喘息、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、心雑音、裂孔ヘルニア、甲状腺機能低下症、手根管症候群、緑内障、うつ病、下肢静止不能症候群、及び神経障害が含まれた。女性の術歴には、卵管結紮(1975)、甲状腺除去(1983)、胆のう摘出術(2001)、手根管除去(2008)、及び緑内障外科手術が含まれる。
【0258】
この治験への参加の時点で、女性の標的病変は、肝臓の左葉内で3.1cm腫瘍であった。非標的病変には、肝臓内のいくつかの低弱毒化腫瘤が含まれていた。女性のベースラインCEAは781ng/mであった。
【0259】
この患者がインフォームドコンセントにサインした後に、IMMU-132を、週1回のスケジュールで注入により連続2週間与え、その後1週間休薬し、これが、1つの処置サイクルを構成した。これらのサイクルを、忍容される限り反復した。IMMU-132(8mg/kg)の最初の注入は2013年2月15日に開始し、特筆すべき事象もなく完了した。女性は、第一サイクルの経過中に悪心(グレード2)及び疲労(グレード2)を経験したが、それ以降大きな有害事象を伴わなかったために処置を継続している。女性は、脱毛症及び便秘を2013年3月に報告した。2013年4月8日に行われた一回目の奏効評価(6用量の後)では、コンピュータ断層撮影法(CT)により標的病変の29%の縮小が示された。女性のCEAレベルは、2013年3月25日に230ng/mlまで低減した。2013年5月23日に行われた二回目の奏効評価(10用量の後)では、標的病変は39%縮小しており、ゆえにRECIST判定基準による部分奏効を成した。女性は、2013年6月14日現在、処置を継続しており、8mg/kgでの12用量のhRS7-CL2A-SN-38(IMMU-132)からなる6サイクルを受けている。女性の全体的な健康及び臨床的症状は、この治験処置を開始して以来、顕著に改善された。
【0260】
実施例12.治療難治性転移性乳癌を処置するためのhRS7-SN-38(IMMU-132)の使用
患者は、57歳の女性であり、ステージIV、トリプルネガティブ、乳癌(ER/PRネガティブ、HER-neuネガティブ)を有し、2005年に最初に診断された。女性は、2005年に左乳房の腫瘍摘出手術を受け、その後、2005年9月に投与集中ACTをアジュバント設定で受けた。次いで、女性は、放射線療法を受け、これは11月に完了した。2012年初期に患者が対側(右)乳房にしこりを触診したときに疾患の局所再発が認められ、その後CMF(シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル)化学療法を用いて処置された。女性の疾患は同年に再発し、胸壁の皮膚の転移性病変を伴った。次いで、女性は、カルボプラチン+TAXOL(登録商標)化学療法レジメンを受け、その間に、血小板減少症が生じた。女性の疾患は進行し、女性は週1回ドキソルビシンを開始し、これを6用量にわたって継続した。皮膚疾患も進行していた。FDG-PETスキャンを2012年9月26日に行い、胸壁上への疾患の進行及び固形腋窩結節の肥大が示された。患者は疼痛制御のためにオキシコドンを投与された。
【0261】
女性は、IXEMPRA(登録商標)を2012年10月から2013年2月まで(2週間毎に4カ月にわたって)投与された。このとき、胸壁病変が開き、出血した。その後、女性はXELODA(登録商標)を投与されたが、これは女性の手足における神経障害、ならびに便秘のために十分に忍容性を示さなかった。皮膚病変は進行性であったため、女性はインフォームドコンセントを受けたあとにIMMU-132治験に登録された。患者は、甲状腺機能亢進症及び視覚障害の病歴も有し、CNS疾患の高いリスクを有した(しかし、脳のMRIはCNS疾患について陰性であった)。この治験に登録された時点で、女性の右乳房の皮膚病変(標的)は、最大直径で4.4cm及び2.0cmと測定された。女性は、別の非標的病変を右乳房に、及び左右の腋窩に1つずつ肥大したリンパ節を有していた。
【0262】
最初のIMMU-132注入(12mg/kg)は、2013年3月12日に開始され、これは十分に忍容性を示した。女性の二回目の注入は、予定注入日にグレード3の絶対好中球数(ANC)の減少(0.9)があったために、1週後に遅延された。一週間遅延し、NEULASTA(登録商標)を受けた後、女性の二回目のIMMU-132が投与されたが、用量は25%減少させて9mg/kgとした。その後女性は、週1回を2週間、その後1週間の休薬というプロトコルに従って計画通りにIMMU-132を受けている。2013年5月17日の一回目の女性の奏効評価は、3治療サイクル後であり、標的病変の長径の合計において43%低減を示し、RECIST判定基準による部分奏効を成した。女性は処置を9mg/kg用量レベルで継続している。女性の全体的な健康及び臨床的症状は、IMMU-132を用いて処置を開始して以来、顕著に改善された。
【0263】
実施例13.TNBCを処置するためのIMMU-132のネオアジュバント使用
本試験は、手術可能なTNBC、ステージII及びIIIを有する18歳以上の女性を対象とする。適格な患者が登録され、コンピュータによって2つの治療群のうちの1つに無作為化される。この治療群は、一方の群が、以下の処置レジメンに示すように、併用療法の最初のコースでIMMU-132をパクリタキセルに追加する点を除いて同一である(
図11)。用量減少及び用量遅延のルールは、IMMU-132について、毒性が先行治験から予測されるそれを超えた場合に、可能であればパクリタキセルを処方量に維持するように、確立された。G-CSFなどの骨髄増殖因子の使用は、治験群のこの最初の併用コースについては担当医師の裁量にあるが、患者が、最後の化学療法コースとして外科手術の前にドキソルビシン及びシクロホスファミドの併用を受けているときは、発熱性好中球減少症のリスクを低下させるためにG-CSFの予防的投与が義務づけられる。
組み入れ基準
1.18歳以上で侵襲性乳癌と診断された女性により記載されたインフォームドコンセント。
2.コア針生検または切開(摘出でない)生検により組織学的に確認された侵襲性乳癌。身体検査または放射線検査により臨床ステージT2-4N0-2またはT1N1-2。
3.乳癌遺伝子(BRCA)生殖細胞系列突然変異検査の記述。
4.エストロゲン受容体(ER)-ネガティブ、プロゲステロン受容体-ネガティブ、及びヒト上皮成長因子(HER2)-ネガティブ(トリプル-ネガティブ)乳癌。
5.ECOGパフォーマンスステータス0-1。
6.登録の1カ月以内でのECG及び心臓エコー(LVEFまたは左室内径短縮率)により確認された正常な心機能。
7.CBC及びHgbレベルにより反映される十分な骨髄機能。
8.無作為化の前に、妊娠の可能性がないまたは陰性血清妊娠反応。
除外基準
1.現在の乳癌に対する治療目的を有する治験剤を含む、以前の全身または局所領域的抗癌治療。
2.この治験に含まれる薬剤のいずれかを用いた以前の処置。
3.転移性乳癌
4.無作為化の時点で卵巣補充療法もしくはホルモン剤を用いるまたは任意のエストロゲン受容体調節因子を用いる同時処置。
5.試験登録の12カ月以内のてんかん発作の病歴。
6.グレード1を超える任意の原因からの既存神経障害。
7.既存する異常に低い値の白血球(好中球)、血小板、赤血球またはヘモグロビン。
8.In situでの子宮頸癌または皮膚の基底細胞癌以外の癌の5年以内の病歴。
9.ネオアジュバント療法に対する不耐性を示す医学的状態(未制御肺疾患、糖尿病、重度汗腺、活動性消化性潰瘍、凝固障害、結合組織疾患、骨髄抑制性疾患)。
10.不十分な肝臓または腎臓機能。
11.デキサメタゾンまたは高用量のコルチコステロイドの使用に対する禁忌。
12.うっ血性心不全またはコントロール不良の高血圧を含む他の重篤な心臓状態の病歴。
13.妊娠または授乳。
14.本試験処置を開始する30日以内のいずれかの治験薬物を用いた処置。
【0264】
安全性及び忍容性-安全性及び忍容性を、有害事象、標準的な安全性検査(CBC、白血球分画及び血小板数、血清化学及び尿分析)、身体検査、バイタルサイン、及びEKGから評価する。ドキソルビシン療法のための標準治療により必要とされる追加の心臓モニタリングを行う。有害事象は、MedDRAシステムにより分類し、全ての有害事象及び異常検査値をNCI CTCAEv4.0毒性グレードを使用して重症度について分類する。治験群におけるIMMU-132及びさらにパクリタキセルに関する薬物動態(PK)を患者の代表的な群において評価した。結果を、標準的なPKパラメータにより特徴づけ、それには、ピーク及びトラフ値、曲線下面積(AUC)、Cmax、及びT1/2を含む。IMMU-132の免疫原性を、患者の血中の抗RS7及び抗SN-38力価を測定するELISA検査により評価した。
【0265】
統計学的計画及びデータ分析-本発明者らは、IMMU-132を追加することで臨床的意義があるように少なくとも20パーセント点(57%増加)のpCR率における増加を達成することを目的とした。検定力計算のため、本発明者らは、IMMU-132を用いない対照群において35%及びIMMU-132を用いる群で55%のpCR率を想定する。1:1無作為化、及び比率を比較する標準的な統計学を用いて、各群において最小で94人の患者が、この優位性が2つの群の間で存在するかどうかを95%の信頼度で検出するための80%の検定力を提供するだろう。ゆえに、このエンドポイントのために必要とされる最小試料サイズは、おおよそ200人の患者であるだろう。
【0266】
加えて、患者を、5年まで再発及び生存について追跡する。IMMU-132の追加による治療成功期間(EFS)または全生存期間(OS)において10%点改善すれば、臨床的に有意な利益を提供するとして認められる。TNBCのいくつかの試験は、標準的なネオアジュバント化学療法を用いて60~80%の3年EFS率を示している。算出のために、本発明者らは、1157人のTNBC患者(43)の大規模メタアナリシスから決定されているため、対照群において70%、それゆえ、IMMU-132を用いる群で80%と想定する。想定するEFSは、おおよそ指数関数的に減衰する関数であり、EFS中央値は、対照群において5.8年及びIMMU-132を用いる群で9.4年であり、処置群間のハザード比(HR)は0.62である。少なくとも3年にわたる自然増加の想定と、少なくとも4年にわたる経過観察の分析で、各群において約200人の患者が、このEFS差が2群間で存在するかどうかを95%信頼度で検出するための85%検定力を提供するだろう。ゆえに、臨床的に有意な利益を実証するためにEFSを使用することで、このエンドポイントのために必要とされる試料サイズは、おおよそ400人の患者であるが、10%の過剰分を離脱者に当てるとして、本発明者らは、440人の患者をこの治験に登録すると推定した。
【0267】
TNBCにおけるネオアジュバント療法の試験の大半は、生存ではなく、再発エンドポイントを考慮する。この試験がOSについて検定されていない一方で、MD Andersonの試験(Liedtke et al.,J Clin Oncol.2008 Mar 10;26(8):1275-1281)は、5年でのOS率は、その3年でのPFS率に近かったと報告した。これは、おおよそ2年の追加の経過観察の後に、OSに基づいて臨床的に有意な利益の同じ10%点改善測定を実証する同様の検定力を有するのに十分な事象が生じているだろうことを示す。
【0268】
実施例14.不応性、転移性、非小細胞肺癌を処置するためのhRS7-SN-38(IMMU-132)の使用
60歳の男性を非小細胞肺癌と診断している。その後、患者は、6.5×4cmと測定される左縦隔腫瘤及び胸水を示す。インフォームドコンセントにサインした後に、患者に、IMMU-132を18mg/kgの用量で、隔週で投与する。最初の2回の注射の間に、短期間の好中球減少症及び下痢が経験され、4時間以内に4回の腸運動を伴うが、これらは、2日以内に解消するか、対症薬物療法に応答する。合計6回のIMMU-132の注入の後に、インデックス病変のCT評価は、22%の減少を示し、これは部分奏効に少し満たないが、明確な腫瘍縮小である。患者は、この治療をさらに2カ月継続し、この時、インデックス病変の直径の合計の45%腫瘍縮小の部分奏効がCTによって認められ、RECIST判定基準による部分奏効を成している。
【0269】
患者は、その後、カルボプラチン、ベバシズマブの化学療法レジメンを6カ月にわたって与えられ、応答を示し、次いで、進行の後に、カルボプラチン、エトポシド、TAXOTERE(登録商標)、及びゲムシタビンを用いる化学療法のさらなるコースを受ける。縦隔腫瘍は、化学療法と(whith)併用されるADCのネオアジュバント使用で除去される。
【0270】
実施例15.抗MUC5ac-CL2A-SN-38イムノコンジュゲートを用いる転移性膵臓癌の処置
この44歳の患者は、転移性膵臓癌腫の病歴を有し、膵頭部に膵管腺癌を伴い、左右の肝葉への転移を示し、前者の測定値は3×4cmであり、後者の測定値は2×3cmである。患者は、1コースのゲムシタビンを与えられたが、客観的な奏効を示さない。4週後に、男性は、hPAM4-CL2A-SN-38を静脈内に8mg/kgの用量で週2回2週間とその後1週間の休薬を、その後、さらに2サイクルにわたって反復して与えられる。CT試験が1週間後に行われ、転移の除去及び原発腫瘍量における32%の減少(部分奏功)を示すとともに、男性の血中CA19-9力価がベースラインの220からX線診断評価の時点で75まで低下する。患者は、抗体-薬物コンジュゲートを用いた各処置の後にグレード1の悪心及び嘔吐のみを、ならびに、最後の処置サイクルの終了時に、グレード2の好中球減少症を示すが、これは4週後に解消する。転移性病変の除去及び原発腫瘍のサイズ減少により、以前には手術不可能であった腫瘍量の外科的除去が可能になる。外科処置の6カ月後、患者は、膵臓癌腫の再発の兆候を示さない。
【0271】
実施例16.プロ-2-ピロリノドキソルビシン(P2PDox)の産生及び使用
合成-P2PDoxの合成経路における中間体の構造、ならびに抗体もしくは他のタンパク質もしくはスルフヒドリル含有ペプチドへのコンジュゲーションに好適なP2PDoxのマレイミド誘導体を本明細書に開示する。例示的なP2PDoxを産生するための一般的なスキームを以下のスキーム1に示す。本発明者らは、1g規模の反応を実施して、約40%の収率で1g超の4,4-ジアセトキシブチルアルデヒドを生成している。シアン化物で生成物を汚染し得る可能性があるシアノ水素化ホウ素ナトリウムの使用を回避するため、還元剤を還元アルキル化においてナトリウムトリアセトキシボロヒドリドに変更した。探索スケールでは、ドキソルビシンのP2PDoxへの80%を超える変換が記録された。これを2g規模まで増加させて、1g超のP2PDoxを生成した(スキーム1)。4,4-ジアセトキシブチルアルデヒドを、報告されている方法(Nagy et al.,1998,Proc Natl Acad Sci USA 95:1794-9)を改変して調製したが、これは、危険なオゾン分解ステップを避けるために必要であった。無水酢酸及び塩化インジウム触媒を用いる市販の4-ペンテン-1-アールのジアセトキシ化、それに続く、塩化ルテニウム及び過ヨウ素酸ナトリウム組み合わせ(Yang&Zhang,2001,66:4814-8)によるオレフィンの酸化切断により、4,4-ジアセトキシブチルアルデヒドを得て、これをドキソルビシンに還元的にカップリングして、P2PDoxを得た。
【0272】
以下のステップを必然的に含んだ:(i)無水酢酸(7.45mL)及び塩化インジウム(0.56g)の混合液を含むジクロロメタン(20mL)に5.05gの4-ペンテン-1-アールを加えた。10~30分後、反応混合物を25%酢酸ナトリウム水溶液(20mL)で処理し、有機層をブラインで洗浄して乾燥させた。溶媒除去により15.3gの液体生成物を得て、これを次のステップに用いた;(ii)3.5mM塩化ルテニウム原液を含む水(69.4mL)を、ステップ(i)生成物の溶液を含むジクロロメタンに6:1アセトニトリル-水(350mL)中で加えた。過ヨウ素酸ナトリウム(29.7g)を少しずつ加えた。TLC分析により判断されるように、反応の完了後、反応混合物を30mLの飽和チオ硫酸ナトリウムで処理し、セライトのパッドを通して濾過し、アセトニトリルを蒸発させた。残存する水層を酢酸エチルで抽出し、25%酢酸ナトリウム、水、及びブラインで洗浄し、乾燥させた。粗物質をクロマトグラフィーによりシリカゲル上で、溶出のために酢酸エチル-ヘキサン混合物を使用して精製した。純生成物を次のステップでのドキソルビシンの還元アルキル化のために使用した;(iii)1.5グラムの塩酸ドキソルビシンを、1,1,1,3,3,3,-ヘキサフルオロイソプロパノール(195mL)及びジイソプロピルエチルアミン(2.7mL)に溶解し、ステップ(ii)からの3.4g(7倍モル過剰)のアルデヒド及び0.66gのナトリウムトリアセトキシボロヒドリドと反応させた。反応は10分で完了し、生成物をシリカゲル上で溶出のために塩化メチレン-イソプロパノール混合物を使用して精製して、0.96gの純生成物を得た。エレクトロスプレー質量スペクトルは、生成物の構造と一致する、m/z 716.2570(M+H)での質量を示した。この構造は、プロトン及びC-13NMRスペクトルによっても確認された。(iv)ステップiiiからのP2PDoxをMCCヒドラゾンへと、SMCCヒドラジドを以下のように使用して変換させた:0.6gのP2PDoxを75mLの無水メタノール中に溶解し、使用されたP2PDoxの量の分光測光定量に基づき1.8倍過剰になるように計算した、0.34gのSMCCヒドラジドで処理した。変換率(%)は、HPLCにより88%と判定された。LC-MS分析は、生成物ピークを949.3734(M+H)のm/zで示し、これは949.3713(M+H)の算出質量(m/z)と一致した。物質は、溶媒除去の後、誘導体化されていない出発物質がコンジュゲートせず、コンジュゲート精製プロセスの間に除去されたため、コンジュゲーションのためにそのまま使用された。
【0273】
【0274】
小規模のコンジュゲート調製-コンジュゲート調製は、IgGの鎖間ジスルフィドを、TCEPを用いてPBS中で穏やかに還元し、その後10倍過剰の活性化P2PDoxにカップリングするという一般的な方法論に従って行われた。コンジュゲートを、pH6.8、25mMの3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)で平衡化したSEPHADEX(登録商標)上、遠心分離したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、その後疎水性カラムを通過させて精製した。生成物を、トレハロース及びポリソルベート80を用いて製剤化し、凍結乾燥させた。コンジュゲートした生成物は、4~7薬物/IgGの範囲の置換を伴い、サイズ排除HPLCにより単一ピークとして溶出され、典型的に逆相HPLCにより1%未満の未コンジュゲート遊離薬物を含有した。
【0275】
規模を大きくしたコンジュゲート調製-ヒト化抗TROP-2抗体のコンジュゲートである、hRS7を、5g及び10g規模で、抗体のTCEP還元、その後、DMSOを共溶媒(5%v/v)として用いて12倍過剰の活性化P2PDoxを使用するin situコンジュゲーションにより調製した。生成物をタンジェンシャルフローろ過により、25mM MOPS緩衝液、pH6.8を、精製のための20ダイアフィルトレーション容量と共に使用して、精製した。生成物は、25mMトレハロース及び0.01%TWEEN(登録商標)80を用いて製剤化され、20mgまたは100mgロットに分割し、凍結乾燥した。
【0276】
【0277】
コンジュゲートは、hPAM4-P2PDox、hLL2-P2PDox及びRFB4-P2PDoxについても調製されており、同様のタンパク質回収及び純度を伴った(図示せず)。
【0278】
実施例17.P2PDoxを用いるIn vitro前臨床試験
In vitro細胞結合性試験-抗体結合の保持は、非コンジュゲート抗体に対するコンジュゲートの結合を比較する細胞結合性アッセイによって確認された(Chari,2008,Acc Chem Res 41:98-107)。コンジュゲートの作用強度は、適切な標的細胞を使用して4日間のMTSアッセイにおいて検査された。hRS7-P2PDoxコンジュゲートは、胃(NCI-N87)、膵臓(Capan-1)、及び乳房(MDA-MB-468)ヒト癌細胞株において0.35~1.09nMのIC50値を呈し、遊離薬物は、同じ細胞株において0.02~0.07nM作用強度を呈した。
【0279】
血清安定性-原型のP2PDoxコンジュゲートである、hRS7-P2PDoxの血清安定性を、ヒト血清中、0.2mg/mLの濃度、37℃でインキュベートすることにより決定した。インキュベート物は、ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラムを使用するHPLCにより分析し、ここで、遊離薬物によるピークとコンジュゲートまたはより高い分子量種によるピークとの間で良好な保持時間分離があった。この分析は、コンジュゲートからの遊離薬物の放出がなかったことを示しており、このことは、コンジュゲートの高い血清安定性を示している。同じ実験を、hRS7-P2PDoxと同じ切断可能リンカーを含有するhRS7-ドキソルビシンコンジュゲートで繰り返したとき、及び遊離薬物が96時間の半減期で放出されると独立して検証された場合、遊離薬物ピーク、すなわちドキソルビシンピークの明確な形成が、HIC HPLC上で見られた。
【0280】
驚くべきことに、P2PDoxコンジュゲートが、抗体のペプチド鎖を一緒に架橋するため、抗体にしっかりと保持されていることが決定された。架橋は、抗体への薬物の付着を安定化させるため、薬物は、抗体が代謝された後に細胞内でのみ放出される。架橋は、循環中への遊離薬物の放出の結果生じるだろう毒性、例えば心毒性を最小限に抑えることを助ける。2-PDoxペプチドコンジュゲートの以前の使用は失敗したが、それは薬物がペプチドを、in vivoで他のタンパク質またはペプチドに架橋したためである。本発明のコンジュゲートでは、P2PDoxは、プロドラッグ形態の間に鎖間ジスルフィドチオール基に付着する。プロドラッグ保護は、注射の直後にin vivoで迅速に除去され、結果得られるコンジュゲートの2-PDox部分は、抗体のペプチド鎖を架橋し、抗体分子内での分子内架橋を形成する。これは、ADCを安定化させ、かつ循環中の他の分子への架橋を防止する。
【0281】
実施例18:P2PDoxを用いるIn vivo前臨床試験
一般-腫瘍サイズを長さ(L)及び幅(W)のキャリパー測定で、腫瘍体積を(L×W2)/2として算出することにより決定した。週2回、腫瘍を測定し、マウスの体重を測定した。マウスは、その腫瘍が1cm3を超えるサイズに達した、その開始時体重の15%超が低下した場合、またあるいは瀕死になった場合に安楽死させた。腫瘍増殖データについての統計学的分析は、曲線下面積(AUC)及び生存時間に基づいた。個別の腫瘍増殖のプロファイルは、線形曲線モデリングを通して得た。f検定を採用して、群間の等分散性を決定してから増殖曲線の統計学的分析をおこなった。両側t検定を使用して、全ての様々な処置群と非特異的対照の間の統計学的有意性を評価した。食塩水対照の分析については、片側t検定を使用して有意性を評価した。生存試験を、カプランマイヤープロット(ログランク分析)を使用して分析し、これには、Prism GraphPadソフトウェア(v4.03)ソフトウェアパッケージ(Advanced Graphics Software,Inc.;カリフォルニア州エンシニータス)を使用した。前臨床実験における全ての用量は、抗体量で表した。薬物に関しては、20gのマウスにおける100μgの抗体(5mg/kg)は、例えば、3~6薬物/IgGでADCを使用するとき、1.4μg~2.8μg(0.14~0.17mg/kg)のP2PDox当量用量を有する。
【0282】
300μg以上[約10μgのP2PDox]のコンジュゲートの単回静脈内用量は、致死性であったが、2週間で与えた4用量の45μgは、全ての動物に忍容性を示した。この投薬レジメンを使用して、本発明者らは、2つのヒト腫瘍異種移植モデル、Capan-1(膵臓癌)及びNCI-N87(胃癌)におけるhRS7-P2PDoxの治療効果を調べた。治療は、ヌードマウスにて腫瘍移植の7日後に開始した。定着した、7日齢の、Capan-1モデルにおいて、定着腫瘍の100%が素早く退縮し、再増殖のエビデンスはなかった(
図12)。この結果は、反復実験において再現された(図示せず)。同様の知見が、定着したNCI-N87モデルにおいても成され(図示せず)、ここで治療の2回目のコースは70日目の後に投与され、これは安全に忍容性を示し、残存腫瘍のさらなる退縮をもたらした(図示せず)。Trop-2を標的とする、内部移行するhRS7-SN-38コンジュゲートは、あまり内部移行しない抗CEACAM5抗体であるhMN-14のコンジュゲートよりも良好な治療応答を提供した(
図2)。非標的抗CD20 ADCであるhA20-P2PDoxは有効でなく、これは選択的治療の有効性を示している(
図2)。乳癌異種移植片(MDA-MB-468)及び第二の膵臓癌異種移植片からのデータ(図示せず)は、コンジュゲートの特異的及び有意な抗腫瘍効果の同じ傾向を繰り返す。
【0283】
6.8または3.7薬物/IgGの置換を伴うhRS7-P2PDoxのPK及び毒性-8もの超毒性薬物/MAbを有する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、未改変MAbより早く排泄し、オフターゲット毒性を増加させることが知られており、4以下の薬物置換を使用する現在の傾向をもたらしている発見である(Hamblett et al.,2004,Clin Cancer Res 10:7063-70)。コンジュゲートを調製し、約6:1及び約3:1の平均薬物/MAb置換率(MSR)で評価した。正常マウスの群(n=5)に、単回用量の未改変hRS7または6.8もしくは3.7の薬物置換を伴うhRS7-P2PDox(同じタンパク質用量)を静脈内投与し、血清試料を注射後30分、4時間、24時間、72時間、及び168時間で回収した。これらをELISAにより抗体濃度について分析した。様々な時間で血清濃度に有意差はなく、これは、これらが同様に排泄したことを示す。PKパラメータ(Cmax、AUC、等)は同様であった。高低いずれかの薬物置換を伴うコンジュゲートは、同じ用量のコンジュゲート薬物で投与されたとき、ヌードマウスにおいて同様の忍容性を有した。
【0284】
最小有効量(MED)での治療有効性-抗TROP-2抗体コンジュゲートであるhRS7-P2PDoxを、NCI-N87ヒト胃癌異種移植片を有するヌードマウスにおいて、9mg/kg、6.75mg/kg、4.5mg/kg、2.25mg/kg、または1mg/kgの単回ボーラスタンパク質用量を投与することにより評価した。治療は、平均腫瘍体積(mTV)が0.256cm3となったときに開始した。21日目に、食塩水対照群(非処置群)におけるmTVは、0.801±0.181cm3であり、これは、9、6.75、4.5、または2.25mg/kg用量で処置されたマウスにおける、それぞれ、0.211±0.042cm3、0.239±0.0.054cm3、0.264±0.087cm3、及び0.567±0.179cm3、のmTVより有意に大きかった(P<0.0047、片側t検定)。これらから、最小有効量は、2.25mg/kgであると判定され、一方で9mg/kgはMTDを表した。
【0285】
実施例19.抗体-P2PDoxのMTD
マウスにおいて、原型抗体であるhLL1の2-PDox及びP2PDoxコンジュゲートを比較するMTD試験は、P2PDoxコンジュゲートが遥かに強力であることを実証した(図示せず)。単回静脈内注射のMTDは、100から300μgの間であった。その後、4日間毎に合計4回(q4d×4)のスケジュールでの複数回注射のMTDを、注射毎に25μgから150μgの間のタンパク質用量を使用して、決定した。これらの用量で、100から600μgの間の累積用量が動物に与えられた。以下の表5は、様々な群の概要である。
【0286】
【0287】
体重低下を示すグラフを
図13A~Dに示す。25μg P2PDox-ADCで処置されたマウスのみが、継続して毒性の兆候を示さなかった。これは、100μgの累積用量であり、単回注射として投与されたときにも忍容性を示した用量であった(図示せず)。それゆえ、マウスにおけるP2PDox-ADCの複数回注射でのMTDは、この実験から25μg q4d×4である。データの注意深い分析及び実験の反復が、分割投薬でのMTDを、4日毎に2週間投与される45μgのタンパク質用量(45μg、q4d×4スケジュール)のコンジュゲートであると確立した。
【0288】
実施例20.P2PDoxコンジュゲートを用いたさらなる試験
NCI-N87胃癌腫細胞に対する抗体部分の結合において、未コンジュゲートhRS7と抗体あたり6分子のP2PDoxにコンジュゲートしたP2PDox-hRS7との間に有意差は観察されなかった(図示せず)。標的抗原に対する抗体結合に与えるコンジュゲーションの影響の欠如がP2PDox-hMN-15(抗CEACAM6)、P2PDox-hLL2(抗CD22)及びP2PDox-hMN-24(抗CEACAM5)コンジュゲートについて実証された。抗体へのP2PDoxのコンジュゲーションは、抗体-抗原結合活性に影響しないと結論付けられた。
【0289】
標的細胞にコンジュゲートするP2PDox-mAbコンジュゲートの細胞毒性を調べた。hRS7-P2PDox及びhMN-15-P2PDoxは、MDA-MB-468、AG S、NCI-N87及びCapan-1固形腫瘍細胞株に対して細胞毒性であった(図示せず)。hMN-14-P2PDoxは、Capan-1、BxPC-3及びAsPC-1ヒト膵臓腫瘍株及びAGS、NCI-N87及びLS147Tヒト胃及び結腸腫瘍株に対して細胞毒性であった(図示せず)。hLL2-P2PDOxは、Daudi、Raji、Ramos及びJVM-3造血器腫瘍株に対して細胞毒性であった(図示せず)。コンジュゲートのIC50値は、ナノモル濃度範囲であった(図示せず)。
【0290】
さらなるIn vivo有効性試験を、NCI-N87ヒト胃癌異種移植片を移植されたヌードマウスにおいて行った(
図14A~F)。4×45μgのhRS7-P2PDoxを用いる1回の処置サイクルは、迅速に全ての腫瘍を退縮させた(
図14D)。2回目の処置サイクルは、最初のサイクルの終了の約2カ月後に開始され、hRS7-P2PDoxで処置された動物の1つを除く全ての完全な退縮をもたらした。hA20、hLL1及びhMN-14コンジュゲートは、腫瘍進行にほとんど影響しなかった(
図14A、14B、14E及び14F)。P2PDox-hMN-15の投与は、胃癌の退縮を遅れてもたらし、これはhRS7コンジュゲートよりも効果は低かった。
【0291】
抗腫瘍有効性に及ぼす投与スケジュールの変動の影響を調べた(
図15)。実験は、腫瘍移植の9日後に開始し、このとき全群での平均腫瘍体積は0.383cm
3であり、93日目に終了した(治療開始の84日後)。この試験では、180μgの単回用量、90μgの2回の週1回用量、及び45μgのq4d×4は、全て有意に向上された生存をもたらした(
図15)。食塩水対照については、9匹中0匹のマウスが生存した(図示せず)。45μg q4d×4のhRS7-P2PDoxを受けているマウスについては、9匹中8匹のマウスが94日目で生存していた(図示せず)。90μg週1回×2のhRS7-P2PDoxを受けているマウスについては、9匹中9匹のマウスが94日目で生存していた(図示せず)。180μgの単回用量のhRS7-P2PDoxを受けているマウスについては、9匹中78匹のマウスが94日目で生存していた(図示せず)。
【0292】
同じ投薬スケジュールで、対照hA20コンジュゲートは、生存に影響を及ぼさなかった(
図15)。毒性試験は、3つの投薬スケジュールのhRS7-P2PDoxは、同様に低レベルの毒性をもたらしたことを示した(図示せず)。
【0293】
hRS7-P2PDoxコンジュゲートは、Capan-1膵臓癌においても有効であり(図示せず)、hRS7-SN-38コンジュゲートよりも腫瘍増殖の阻害に有効であった(図示せず)。hPAM4-P2PDoxコンジュゲートも、hPAM4-SN-38コンジュゲートよりもCapan-1ヒト膵臓癌の増殖の阻害に有効であった(図示せず)。Capan-1腫瘍注射の63日後(治療は、接種の1日後に開始)、10匹中0匹のマウスが食塩水対照で生存しており、10匹中10匹のマウスが週2回×2週間45μgのhPAM4-P2PDoxを用いて処置されたマウスで生存しており、10匹中2匹のマウスが週2回×2週間45μgのhA20-P2PDoxで処置されたマウスで生存しており、10匹中0匹のマウスが週2回×4週間250μgのhPAM4-SN-38を用いて処置されたマウスで生存しており、10匹中0匹のマウスが週2回×4週間250μgのh20-SN-38を用いて処置されたマウスで生存していた。
【0294】
hRS7-P2PDoxは、hRS7-SN-38よりもPxPC-3膵臓癌の増殖の阻害に実質的に有効であり(図示せず)、MDA-MB-468乳癌の増殖の阻害にhRS7-SN-38よりも微かに有効であった(図示せず)。
【0295】
NCI-N87胃癌腫異種移植片の増殖に及ぼす異なる単回用量のhRS7-P2PDoxの影響を
図16に示す。単回用量を使用して、腫瘍増殖に及ぼす最大効果は、90μgまたはそれ以上で観察された(
図16)。単回用量の45μgは、食塩水対照と比較して有意な生存利益を観察するために必要とされる最小値であった(
図17)。
【0296】
様々なhRS7-ADCコンジュゲートのADCC活性をhRS7 IgGと比較して決定した(
図18)。PBMCをニュージャージー州の血液センターから購入した血液から精製した。Trop-2陽性ヒト膵臓腺癌細胞株(BxPC-3)を、標的細胞株として使用し、エフェクタ対標的比は100:1とした。hRS7 IgGにより媒介されるADCCを、hRS7-Pro-2-PDox、hRS7-CL2A-SN-38、及び還元されてキャップされたhRS7-NEMと比較した。全て33.3nMで使用した。
【0297】
結果を
図18に示す。全体的な活性は低かったが、有意であった。hRS7 IgGでは8.5%特異的溶解があり、これはhRS7-Pro-2-PDoxと有意差はなかった。両方ともhLL2対照及びhRS7-NEM及びhRS7-SN-38より有意に良好であった(P<0.02、両側t検定)。hRS7-NEMとhRS7-SN-38の間に差はなかった。
【0298】
実施例21.P2PDox-hRS7 ADCを用いるトリプルネガティブ乳癌の処置
P2PDox-hRS7 ADCは、上記実施例に記載のように調製される。少なくとも2つの標準療法に失敗したトリプルネガティブ乳癌を有する患者は、3サイクルの70mg P2PDox-hRS7を3週間毎に静脈内注射された。客観的奏効が、この用量レベルのP2PDox-hRS7で観察され、2サイクルの治療後、平均で腫瘍体積において35%低減した。ヒト抗hRS7抗体(HAHA)について評価した全ての血清試料は陰性であった。腫瘍量の減少のあと、腫瘍を外科的に除去した。
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【0299】
以上の説明から、当業者は本発明の本質的特徴を容易に確認することができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び改変を行って、様々な使用及び条件に過度の実験を伴わずに適合させることができる。本明細書で引用した全ての特許、特許出願及び刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。