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  • 特開-不織布、吸音材、及び油吸着材 図1
  • 特開-不織布、吸音材、及び油吸着材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184957
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】不織布、吸音材、及び油吸着材
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/425 20120101AFI20221206BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20221206BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20221206BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20221206BHJP
   D04H 1/542 20120101ALI20221206BHJP
【FI】
D04H1/425
D04H1/732
G10K11/162
G10K11/168
D04H1/542
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147876
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2020513470の分割
【原出願日】2019-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2018077303
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八重澤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】黒川 晋平
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、撥水性に優れ、特に、高温多湿のような過酷な条件においても撥水性に優れた不織布を提供することであり、更に、前記不織布を用いた、撥水性及び吸音性に優れる吸音材を提供することである。また、前記不織布を用いた、油吸収性に優れた油吸着材を提供することである。
【解決手段】本発明の不織布は、撥水パルプ及び熱融着性接着剤を含有する不織布であって、該撥水パルプが、下記の(1)を満たす。
(1)JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験において、沈降開始時間が30秒以上である
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水パルプ及び熱融着性接着剤を含有する不織布であって、
該撥水パルプが、下記の(1)を満たす、不織布。
(1)JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験において、沈降開始時間が30秒以上である
【請求項2】
該撥水パルプが、更に、下記の(2)~(5)の少なくともいずれかを満たす、請求項1に記載の不織布。
(2)保水試験でのパルプ保水量が15g以下である
(3)液流れ試験での液流れ量が35g以上である
(4)顕微鏡観察下において、水を滴下した場合の膨潤率が20%以下である
(5)ティーバッグ試験での吸水量が10(g/g)以下である
【請求項3】
前記不織布が乾式不織布である、請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、請求項1~3のいずれかに記載の不織布。
【請求項5】
前記不織布を流水で1時間洗浄する水洗処理に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、請求項1~4のいずれかに記載の不織布。
【請求項6】
前記不織布を100℃の環境下に1000時間曝露する耐熱性試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、請求項1~5のいずれかに記載の不織布。
【請求項7】
前記不織布を用いて85℃、95%RHの環境下に600時間曝露する高温高湿試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、請求項1~6のいずれかに記載の不織布。
【請求項8】
前記不織布を用いて-10℃で1時間と、60℃で1時間とを1サイクルとし、これを30サイクル繰り返したヒートサイクル試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、請求項1~7のいずれかに記載の不織布。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の不織布を備える、吸音材。
【請求項10】
前記不織布中の前記撥水パルプの含有量が50質量%以上である、請求項9に記載の吸音材。
【請求項11】
前記不織布の少なくとも一方の面に、樹脂層を有する、請求項9又は10に記載の吸音材。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに記載の不織布を備える、油吸着材。
【請求項13】
前記不織布中の前記撥水パルプの含有量が50質量%以上である、請求項12に記載の油吸着材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布、吸音材、及び油吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、不織布は衣料品、日用品、又は医療品などの民生品から、工業用品に至るまで、幅広い分野で利用されている。また、その利用目的も多岐にわたっており、生地としてはもちろん、フィルタ、吸収・吸着材、吸音材、又は断熱材などとしても利用されている。
これらの中でも吸音材は、家電製品などにおいて、モータ、コンプレッサー等が発する騒音、振動を吸収するために用いられている。
【0003】
上記の不織布には、撥水性が求められており、例えば、結露を生じるような環境で不織布を吸音材として使用する場合には、撥水性を有することにより、吸水による性能の低下が抑制され、更に、カビ等の微生物の生育が抑制されるという効果も有する。
特許文献1には、有機繊維からなる不織布とJIS L1096に基づいて測定される通気量が0.01~30cc/cm/secであり、撥水剤で処理された表皮材の少なくとも2つの層が積層されてなることを特徴とする撥水性吸音材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-208599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、撥水性に優れ、特に、高温多湿のような過酷な条件下においても撥水性に優れた不織布を提供することを目的とする。更に、本発明は、前記不織布を用いた、撥水性及び吸音性に優れる吸音材を提供することを目的とする。また、本発明は、前記不織布を用いた、油吸収性に優れた油吸着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、特定の撥水パルプ及び熱融着性接着剤を含有する不織布により、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<13>に関する。
<1> 撥水パルプ及び熱融着性接着剤を含有する不織布であって、該撥水パルプが、下記の(1)を満たす、不織布。
(1)JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験において、沈降開始時間が30秒以上である
<2> 該撥水パルプが、更に、下記の(2)~(5)の少なくともいずれかを満たす、<1>に記載の不織布。
(2)保水試験でのパルプ保水量が15g以下である
(3)液流れ試験での液流れ量が35g以上である
(4)顕微鏡観察下において、水を滴下した場合の膨潤率が20%以下である
(5)ティーバッグ試験での吸水量が10(g/g)以下である
<3> 前記不織布が乾式不織布である、<1>又は<2>に記載の不織布。
<4> JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、<1>~<3>のいずれかに記載の不織布。
<5> 前記不織布を流水で1時間洗浄する水洗処理に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、<1>~<4>のいずれかに記載の不織布。
<6> 前記不織布を100℃の環境下に1000時間曝露する耐熱性試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、<1>~<5>のいずれかに記載の不織布。
<7> 前記不織布を用いて85℃、95%RHの環境下に600時間曝露する高温高湿試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、<1>~<6>のいずれかに記載の不織布。
<8> 前記不織布を用いて-10℃で1時間と、60℃で1時間とを1サイクルとし、これを30サイクル繰り返したヒートサイクル試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、<1>~<7>のいずれかに記載の不織布。
<9> <1>~<8>のいずれかに記載の不織布を備える、吸音材。
<10> 前記不織布中の前記撥水パルプの含有量が50質量%以上である、<9>に記載の吸音材。
<11> 前記不織布の少なくとも一方の面に、樹脂層を有する、<9>又は<10>に記載の吸音材。
<12> <1>~<8>のいずれかに記載の不織布を備える、油吸着材。
<13> 前記不織布中の前記撥水パルプの含有量が50質量%以上である、<12>に記載の油吸着材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撥水性に優れ、特に、高温多湿のような過酷な条件においても撥水性に優れた不織布を提供することができる。更に、本発明によれば、前記不織布を用いた、撥水性及び吸音性に優れる吸音材を提供することができる。また、本発明によれば、前記不織布を用いた、油吸収性に優れた油吸着材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は各周波数における垂直入射吸音率の測定結果を表す。
図2図2は吸油・吸水試験における滴下テストの結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[不織布]
本発明の不織布は、撥水パルプ及び熱融着性接着剤を含有する不織布であって、該撥水パルプが、下記の(1)を満たす。
(1)JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験において、沈降開始時間が30秒以上である
前記撥水パルプは、更に、下記の(2)~(5)の少なくともいずれかを満たすことが好ましい。
(2)保水試験でのパルプ保水量が15g以下である
(3)液流れ試験での液流れ量が35g以上である
(4)顕微鏡観察下において、水を滴下した場合の膨潤率が20%以下である
(5)ティーバッグ試験での吸水量が10(g/g)以下である
従来、不織布に撥水性を持たせるためには、不織布自体を吸水性を有しない有機合成繊維で作製する方法、特許文献1に記載されているように撥水剤を含有する液体に不織布を含浸する方法、又は撥水剤を含有する液体を不織布にスプレーする方法等が採用されてきた。
しかし、不織布に撥水剤を処理する方法では、撥水剤の被覆性が不十分で、十分な撥水性が得られなかったり、時間の経過や、高温高湿環境下での保存や使用などで、撥水性が低下したりするという問題があった。
また、不織布自体を吸水性を有しない有機合成繊維で作製した場合には、有機合成繊維は繊維表面が平滑であることから、同じ厚み、密度及び比重のパルプ繊維で作製した不織布を備える吸音材に比べ、吸音性に劣るという問題がある。また、パルプ繊維は、高い吸音性を有するが、吸水性も高いため、不織布に撥水剤を処理する方法では、十分な撥水性を与えることができないという問題もあった。更に、不織布に撥水剤を処理する方法では、表面を覆う撥水剤により吸音性が阻害されるという問題があった。不織布を撥水剤で処理する場合、多孔質吸音材の場合には、多孔質が撥水剤によって被覆されることによって、吸音性が阻害される場合があり、また、不織布を撥水剤で処理する場合には繊維間の空隙も一部被覆されることによって、吸音性が阻害される場合があった。
【0010】
本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の撥水性を有する撥水パルプ及び熱融着性接着剤を含有する不織布により上記の問題が解決され、高い撥水性と撥水性の耐久性とに優れ、更に、吸音性にも優れた不織布が提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。更に、上記の不織布は、油に対して選択的であり、かつ、優れた吸着性を有する油吸着材としても有用であることを見出した。
すなわち、撥水パルプ及び熱融着性接着剤を含有する不織布では、パルプ自体に撥水性が付与されているため、不織布を撥水剤で処理した場合に比して、高い吸音性を有し、耐久性に優れる不織布が得られたと考えられる。本発明では、不織布自体を撥水パルプを用いて作製しているため、不織布としてから撥水剤で処理するような後加工に比べて、撥水剤とパルプとの結合が強固であり、撥水耐久性に優れた不織布が得られたと考えられる。
このように、パルプの吸音材と同等の吸音性を有し、かつ、撥水性をも兼ね備えた吸音材は、今般初めて見出されたものである。
また、上述のように本発明の不織布は、優れた撥水性を有するため、水を吸着せず、油に対して選択的な吸着性を有するため、優れた油吸着性を有する油吸着材としての機能をも有するものと考えられる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0011】
<撥水パルプ>
本発明の不織布は、撥水パルプを含有し、撥水パルプは、下記(1)を満たし、更に、下記(2)~(5)の少なくともいずれかを満たすことが好ましい。本発明の不織布は、不織布を撥水剤で処理するのではなく、撥水性を有するパルプを用いて作製する点に特徴を有するものである。
(1)JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験において、沈降開始時間が30秒以上である
(2)保水試験でのパルプ保水量が15g以下である
(3)液流れ試験での液流れ量が35g以上である
(4)顕微鏡観察下において、水を滴下した場合の膨潤率が20%以下である
(5)ティーバッグ試験での吸水量が10(g/g)以下である
以下、上記(1)~(5)について詳述する。
【0012】
(1)JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験において、沈降開始時間が30秒以上である
より具体的には、JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験(沈降法)に準じて測定を行う。20℃±2℃の水を入れた水槽中に試料を浮かべた後、試料が湿潤して水中に沈降し始めるまでの時間(沈降開始時間)を測定する。
本発明において、撥水パルプは、沈降開始時間が30秒以上であり、60秒以上であることが好ましい。
【0013】
(2)保水試験でのパルプ保水量が15g以下である
本試験は、40cc(40g)の水のうち、どの程度の水をパルプが保水できたのかを測定するものであり、パルプ保水量が多いほど、吸水性が高いことを意味する。具体的には、以下の方法により測定する。
縦横10cm、高さ6cmのアクリル製の枠(中空の四角柱状)に、内径がぴったりと密着するアクリル製底面を設置する。密着度合いは、底面を設置した枠の中に水を入れると、わずかに水が染み出る程度とする。
別途、秤量したろ紙(40ccの水を吸収するに十分なろ紙)を底面を設置した枠の下に敷く。この枠の中に、パルプ繊維2gを均一に入れ、水40ccを全体に投入し、1分後に、枠の内径とほぼ同寸法のアクリル製おもり700gfを載せ、静かにパルプ繊維に荷重をかける。1分後、枠の下のろ紙質量を測定し、枠から下に染み出した水の量を測定し、投入した水40gとの差分をパルプ保水量(g)とする。すなわち、パルプ保水量は、以下の式(a)で表される。
パルプ保水量(g)=40(g)-染み出した水の量(g) 式(a)
なお、染み出した水の量は、試験前に測定したろ紙の質量と、試験後の吸水したろ紙の質量との差から測定される。
撥水パルプの上記パルプ保水量は、好ましくは12.5g以下、より好ましくは10g以下、更に好ましくは7.5g以下、より更に好ましくは5g以下である。
【0014】
(3)液流れ試験での液流れ量が35g以上である
金網上に、孔径3mmの排水口を底面に5個、十字状に有する内径3cmのアクリル製シリンダーを載せ、パルプ繊維1gを高さ4cm(密度0.035g/cm)となるように圧縮した後、水50ccを一度に投入し、排出された水量を計量して液流れ量とする。
液流れ量が多い程、吸水性が低く、撥水性に優れることを意味する。
撥水パルプの上記液流れ量は、好ましくは37.5g以上、より好ましくは40g以上、更に好ましくは42.5g以上、より更に好ましくは45g以上である。
【0015】
(4)顕微鏡観察下において、水を滴下した場合の膨潤率が20%以下である
顕微鏡下において、撥水パルプに水を滴下した場合の膨潤率は20%以下である。膨潤率は、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、より更に好ましくは3%以下、より更に好ましくは0%である。
上記膨潤率は、以下の方法により測定される。具体的には、パルプ繊維を、プレパラート上に3~5mg載せ、スポイトで約0.1mlの水をたらす。5分程度放置後、プレパラートを傾け、更に、キムワイプなどでパルプ繊維に吸収されていない水分を除去する。水を滴下前後の顕微鏡写真から、パルプ繊維の繊維径を測定し、膨潤率を下記式により算出する。
膨潤率={水滴下後のパルプ繊維の繊維径(幅寸法)-水滴下前のパルプ繊維の繊維径(幅寸法)}÷水滴下前のパルプ繊維の繊維径(幅寸法)×100(%)
ここで、膨潤率が0%の状態とは、水とパルプ繊維がなじまず、水は表面張力により球体のままであり、繊維が水滴の上に載っている状態、又は繊維に球状の水滴が付着している状態を意味する。
【0016】
(5)ティーバッグ試験での吸水量が10(g/g)以下である
撥水パルプをティーバッグ試験に供した場合の吸水量は、10(g/g)以下、好ましくは7.5(g/g)以下、より好ましくは5(g/g)以下、更に好ましくは3(g/g)以下である。
上記吸水量は、以下のティーバッグ試験により測定される。具体的には、約5gのパルプ繊維をティーバッグ(9.5cm×7cm、ポリエステルを主要繊維素材とした不織布、トキワのお茶バッグM、(株)トキワ工業製)に入れ、ティーバッグの先端に、ひもでおもり(500g)をくくりつける。おもりのついたティーバッグを、水を入れたビーカーに入れる。水は、ティーバッグ全体が完全に水面下に沈む高さまで入れる。5分間ティーバッグを浸漬した後、水から取り出し、空中にて5分間吊り下げて水を切る。水切り後のティーバッグ(パルプ繊維入り)の質量を測定し、吸水量を下記式により算出する。ここで、ティーバッグ自体への吸水量は微量であるため考慮しなくてよい。
吸水量(g/g)=(水切り後のパルプ繊維入りティーバッグの質量-水に浸漬する前のパルプ繊維入りティーバッグの質量)÷試験前のパルプ繊維質量
ここで、吸水量が1倍の状態とは、水とパルプ繊維がなじまず、水は表面張力により球体のままであり、繊維が水滴の上に載っている状態、又は繊維に球状の水滴が付着している状態を意味する。
【0017】
本発明において、撥水パルプは、上記(1)を満たし、更に、(2)~(5)の少なくともいずれか1つを満たすことが好ましい。
撥水パルプは、少なくとも(1)を満たすことが好ましく、少なくとも(1)及び(2)を満たすことがより好ましく、少なくとも(1)、(2)及び(3)を満たすことが更に好ましく、(1)~(5)の全てを満たすことがより更に好ましい。
【0018】
撥水パルプは、パルプ繊維を含有し、直接的又は間接的に撥水剤で処理されていてもよく、また、パルプ繊維の原料を選択することによって、撥水性を有するものであってもよい。パルプ繊維は、不規則に屈曲した形状を有し、捲縮状の形態を有する繊維であるとともに、植物細胞の原形質が占めていた空孔(ルーメン)を有する中空管状の形態を有する繊維でもある。撥水パルプを使用することにより、優れた吸音性が得られ、更に環境負荷が低減できる観点で好ましい。
パルプ繊維としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、ラグパルプ、リンターパルプ、リネンパルプ、楮・三椏・雁皮パルプなどの非木材パルプ、古紙パルプなどのパルプ;これらのパルプを原料パルプとし、該原料パルプを機械的処理により繊維状に解繊したフラッフパルプ;が挙げられる。
原料パルプとしては、吸音性の観点からは、細い繊維のパルプが好ましいが、高密度とすると吸音性に劣る場合がある。また、撥水性に優れた不織布が得られやすい点からは、原料パルプとして、ユーカリ等のアルカン含有量の多い木材や、パラフィン含有量の多い木材を用いることも好ましい。
更に、吸音性に優れる点から、フラッフパルプが好ましい。
原料パルプのパルプ化方法は特に限定されず、従来公知の方法によりパルプ化すればよい。
【0019】
本発明において、撥水パルプは、上述した繊維パルプを撥水剤により処理したものであってもよい。撥水剤としては、特に限定されず、例えば各種ワックス;高級脂肪酸誘導体;ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミン系樹脂等の合成樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリメチル水素シロキサン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂;クロム酸塩;ジルコニウム塩;等を挙げることができる。また、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、スチレン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー等も、本発明において、撥水剤として使用可能である。
撥水剤として、具体的には、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、油シェルより抽出されたワックス等の鉱物系ワックス、及びパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油系ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスのほかに、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の高級脂肪酸アミド、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックスも使用できる。更に、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子が挙げられる。
【0020】
本発明の不織布において、撥水パルプの含有量は特に限定されないが、不織布に撥水性を付与する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上である。上限は特に限定されないが、後述する熱溶融性接着剤によって撥水パルプを固定化する観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
また、撥水パルプと熱融着性接着剤との合計に対する撥水パルプの含有量は、不織布に撥水性を付与する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上である。上限は特に限定されないが、後述する熱融着性接着剤の含有量を維持する観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0021】
<熱融着性接着剤>
本発明の不織布は、熱融着性接着剤を含有する。熱融着性接着剤は、熱融着性粉体として、粒子状で供給されてもよく、溶媒に溶解又は分散させた状態でスプレーにより供給されてもよく、また、熱融着性繊維として、繊維状で供給されてもよいが、熱融着性接着剤は、繊維状で不織布に供給されたものであることが好ましい。すなわち、熱融着性接着剤は、熱融着性繊維であることがより好ましい。
熱融着性接着剤の成分としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
熱融着性繊維としては、ウェブを形成した後、加熱処理によって、少なくとも一部が溶融し、バインダーとして機能するものであれば特に限定されない。
熱融着性繊維としては、融点の異なる2種類の樹脂を複合化させて得られ、繊維が部分的に溶融する芯鞘型構造等の熱融着性繊維を使用してもよい。芯鞘型構造の熱融着性繊維は、融点の高い樹脂からなる芯の外周上に、融点の低い樹脂からなる鞘が形成された構造を有し、具体的には、融点が異なる2種の樹脂を組み合わせた形体(PET/PET複合繊維、PE/PE複合繊維、PP/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PP/PET複合繊維、PE/PP複合繊維)が挙げられる。
【0023】
本発明の不織布において、熱融着性接着剤の含有量は特に限定されないが、不織布としての強度を付与する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、撥水パルプの含有量を維持する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下である。
また、撥水パルプと熱融着性接着剤との合計に対する熱融着性接着剤の含有量は、不織布としての強度を付与する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、撥水パルプの含有量を維持する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下である。
【0024】
<その他の成分>
本発明の不織布は、上述した撥水パルプ及び熱融着性接着剤に加えて、他の成分を含有していてもよい。
具体的には、機能性粉体、機能性繊維、機能性液体等が挙げられる。機能性粉体、機能性繊維、機能性液体としては、消臭機能、抗菌機能、抗ウィルス機能、抗アレルゲン機能、防カビ機能、芳香機能、難燃焼性成分等のいずれか1種以上の機能を有するものが好ましく、例えば、ゼオライト、活性炭、キチン、キトサン、ホタテ貝殻、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、植物抽出物、キノコ抽出物、カテキン、フラボノール、シクロデキストリン、コラーゲン繊維、酸化鉄、クエン酸、ジンクピリチオン、銅ピリチオン、ヒノキチオール、ユーカリエキス、ハロゲン臭素系、水和金属系、酸化アンチモン系、リン系、リン・窒素系縮合物等の難燃剤粒子等が例示される。
【0025】
本発明の不織布が、その他の成分を含有する場合、不織布におけるその他の成分の合計量は、不織布の撥水性に影響を与えない範囲で適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下である。その他の成分の含有量の下限は、特に限定されない。
【0026】
本発明において、不織布を構成する全ての繊維(原料繊維)の平均繊維径は、好ましくは5~80μm、より好ましくは10~60μmである。不織布を構成する繊維の平均繊維系が上記範囲内であると、吸音性に優れるので好ましい。平均繊維径は、合繊繊維の場合は、顕微鏡観察によって測定することができ、パルプ繊維の場合は、繊維長測定装置(例えば、KAJAANI Fiber Lab.)による画像解析結果により平均繊維径を測定することができる。
【0027】
また、本発明において、不織布を構成する全ての繊維(原料繊維)の平均繊維長は、好ましくは0.5~150mmであり、不織布がエアレイド不織布である場合には、不織布を構成する全ての繊維(原料繊維)の平均繊維長は、好ましくは0.5~10mm、より好ましくは0.5~6mmである。不織布を構成する全ての繊維の平均繊維長が上記範囲内であると、不織布の嵩密度が小さくなり、また、吸音性に優れるので好ましい。平均繊維長は、合繊繊維の場合は、顕微鏡観察によって測定することができ、パルプ繊維の場合は、繊維長測定装置(例えば、KAJAANI Fiber Lab.)により繊維長を測定することができる
【0028】
<不織布の製造方法>
本発明において、不織布の製造方法としては、少なくとも撥水パルプを含有する原料繊維からシート状のウェブを形成するウェブ形成工程、及び得られたウェブ中の原料繊維を結合させる繊維結合工程とを経る方法であることが好ましい。
【0029】
本発明において、不織布は、湿式不織布及び乾式不織布のいずれであってもよく、具体的には、エアレイド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、レジンボンド不織布等が挙げられる。撥水パルプを水に分散させることが困難である観点から、不織布は乾式不織布、すなわち、乾式の製造方法で得られた不織布であることが好ましく、エアレイド不織布であることがより好ましい。
不織布がエアレイド不織布であると、撥水パルプを水に分散させる必要がなく、また、エアレイド不織布では、原料繊維が3次元的にランダムに配向するため、空隙が多く形成され、吸音性の高い不織布が得られる。
【0030】
エアレイド不織布とは、空気流を利用して、不織布を構成する繊維を三次元的にランダムに積層させるエアレイド法によりウェブが形成された不織布である。
エアレイド不織布は、例えば、以下のようにして作製される。まず、メッシュ状の無端ベルト上に透気性キャリアシートを配置し、該透気性キャリアシート上にエアレイド方式のウェブ形成装置にて、不織布を構成する繊維を空気に分散させながら堆積させてウェブを形成する。次いで、加熱によってウェブに含まれる熱融着性接着剤によって熱接着させる(サーマルボンド法)。
形成されたエアレイドウェブの熱処理は、一般的なサーマルボンド法により行えばよく、例えば、エアレイドウェブを加熱炉に導入する方法、エアレイドウェブを熱風処理する方法等が挙げられる。
また、熱融着の前又は後に、不織布の表面に、更にシートを配置してもよい。なお、前記シートは、透気性キャリシートを配置した面を裏面とした場合に、他の一面(表面)に配置する。ここで、表面に配置するシートは、透気性シートに限定されるものではなく、各種シートを配置することが可能である。表面のシートは、裏面の透気性キャリシートと同じであってもよい。
【0031】
熱風処理としては、ウェブが、周面に通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアードライヤを通過することにより熱処理する方法(熱風循環ロータリードラム方式)、ウェブが、ウェブに熱風を貫通させることができるボックスタイプドライを通過することにより熱処理する方法(熱風循環コンベアオーブン方式)などが挙げられる。
熱処理温度としては、熱融着性接着剤の融点以上であればよい。なお、熱融着性接着剤が2種以上の樹脂からなる場合には、最も低い融点を有する樹脂の融点以上の温度であればよい。熱融着性接着剤の融点以上の温度に加熱すると、熱融着性接着剤が溶融し、溶融した熱融着性接着剤を介して、撥水パルプを含む繊維原料同士が結合する。
【0032】
繊維結合工程の後、形成された不織布の密度を微調整する目的などで、熱プレス処理を行ってもよい。その場合のプレス圧は、線圧で、好ましくは44kg/cm以下、より好ましくは10kg/cm以下であり、繊維同士を結合させる繊維結合工程として一般的に行われる熱プレス工程よりも低圧で行われる。
【0033】
上記のようにして得られた不織布から、透気性キャリアシートを剥離することで、不織布が得られる。なお、透気性キャリアシートは、剥離せずにそのまま残してもよい。剥離せずにそのまま残す場合は、透気性キャリアシートとして、撥水性を有するキャリアシートを使用することが好ましい。
【0034】
本発明において、不織布の坪量、密度、及び厚みは、特に限定されず、必要とされる性能応じて、適宜選択すればよい。
本発明の不織布を吸音材として使用する場合には、例えば、吸音させたい周波数帯、吸音材の設置スペースなどの観点から、坪量、密度、及び厚みを設定すればよい。本発明の不織布を吸音材として厚さ:3.0~6.0mmで使用する場合には、米坪:400~500g/m、密度:0.05~0.1g/cmが好ましい。
【0035】
本発明の不織布は、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満であることが好ましい。ここで、クレム吸水度とは、不織布(試料)を鉛直に水の中に浸漬し、毛管現象によって10分間に水が上昇した高さ(mm)を意味する。
本発明の不織布は、上記クレム吸水度が、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下、より更に好ましくは5mm以下、より更に好ましくは1mm以下、より更に好ましくは0mmである。
本発明者等の知見によれば、疎水性の有機合成繊維で不織布を作製した場合には、毛管現象によって、クレム吸水度は30mm以上である。
なお、クレム吸水度は密度に依存するため、密度が低い不織布では、クレム吸水度が低い傾向にある。しかしながら、多孔質吸音材において、一定の吸音効果を得るためには、音がエネルギーに変換されるための多孔質体自体の総量が必要であり、厚さに制約のある条件下では、ある一定の密度を要する。従って、クレム吸水度を比較する場合には、吸音効果の見られる厚みがある場合、不織布の密度が0.03g/cm以上であることが好ましく、0.05g/cm以上であることがより好ましく、0.07g/cm以上であることが更に好ましい。
【0036】
本発明の不織布は、洗浄によっても撥水性の劣化が生じにくく、不織布を流水で1時間洗浄する水洗処理に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満であることが好ましい。
ここで、洗浄は、水道水を使用して、水温30℃±2℃にて洗浄することが好ましい。上記の条件では、不織布を撥水剤で後加工した場合には、撥水剤が洗浄処理によって減少し、クレム吸水度がより高くなる傾向にある。一方、本発明の不織布は、撥水性を有する撥水パルプを用いて不織布を形成しており、上述のような撥水性の低下が生じ難い。
上述した水洗処理後のクレム吸水度は、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下、より更に好ましくは5mm以下、より更に好ましくは1mm以下、より更に好ましくは0mmである。
【0037】
また、本発明の不織布は、耐熱性試験によっても撥水性の劣化が生じにくく、不織布を100℃の環境で1000時間曝露する耐熱性試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満であることが好ましい。
耐熱性試験は、不織布を100℃の環境に1000時間曝露することにより行う。不織布を撥水剤で後加工した場合や、撥水性のシートを不織布に貼り合わせて撥水性を付与した場合には、耐熱性試験により撥水性の低下が生じやすい。特に、撥水性のシートを貼り合せたような場合には、撥水性のシートと不織布とが剥離して、撥水性が低下する場合がある。一方、本発明の不織布は、撥水性を有する撥水パルプを用いて不織布を形成しており、上述のような撥水性の低下が生じにくい。
上述した耐熱性試験後の不織布のクレム吸水度は、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下、より更に好ましくは5mm以下、より更に好ましくは1mm以下、より更に好ましくは0mmである。
【0038】
更に、本発明の不織布は、高温高湿試験によっても撥水性の劣化が生じにくく、85℃、95%RHの環境下に600時間曝露する高温高湿試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満であることが好ましい。
高温高湿試験は、不織布を85℃95%RHの環境下に600時間曝露することにより行う。不織布を撥水剤で後加工した場合や、撥水性のシートを不織布に貼り合わせて撥水性を付与した場合には、高温高湿試験により撥水性の低下が生じやすい。特に、撥水性のシートを貼り合せたような場合には、撥水性のシートと不織布とが剥離して、撥水性が低下する場合がある。一方、本発明の不織布は、撥水性を有する撥水パルプを用いて不織布を形成しており、上述のような撥水性の低下が生じにくい。
上述した高温高湿試験後の不織布のクレム吸水度は、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下、より更に好ましくは5mm以下、より更に好ましくは1mm以下、より更に好ましくは0mmである。
【0039】
更に、本発明の不織布は、ヒートサイクル試験によっても撥水性の劣化が生じにくく、-10℃で1時間と、60℃で1時間とを1サイクルとし、これを30サイクル繰り返したヒートサイクル試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満であることが好ましい。
ヒートサイクル試験は、不織布を-10℃で1時間と、60℃で1時間とを1サイクルとし、これを30サイクル繰り返すことにより行う。不織布を撥水剤で後加工した場合や、撥水性のシートを不織布に貼り合わせて撥水性を付与した場合には、ヒートサイクル試験により撥水性の低下が生じやすい。特に、撥水性のシートを貼り合せたような場合には、撥水性のシートと不織布とが剥離して、撥水性が低下する場合がある。一方、本発明の不織布は、撥水性を有する撥水パルプを用いて不織布を形成しており、上述のような撥水性の低下が生じにくい。
上述したヒートサイクル試験後の不織布のクレム吸水度は、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下、より更に好ましくは5mm以下、より更に好ましくは1mm以下、より更に好ましくは0mmである。
【0040】
[吸音材]
本発明において、上記不織布は、吸音材に使用することが好ましい。
また、本発明の不織布は、パルプ繊維を使用しており、パルプ繊維表面は、有機合成繊維に比べて表面形状が複雑であり、音波が不織布を通過する場合には迷路度が高くなり、音エネルギーが熱エネルギーに変換される効率が高く、その結果、高い吸音性が得られるものと推定される。
本発明の吸音材は、少なくとも本発明の不織布を備え、更に、前記不織布の少なくとも一方の面に他の層を備えていてもよい。
本発明の吸音材は、上記本発明の不織布を備えることから、撥水性に優れ、また、上述したように、耐熱性試験、高温高湿試験、及びヒートサイクル試験によっても、その撥水性が保持されるとともに、吸音性も保持されることから、種々の環境下での使用に耐え得るものである。
【0041】
本発明の不織布を吸音材に使用する場合には、不織布中の撥水パルプの含有量は、高い吸音性を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上であり、熱融着性接着剤の含有量を適切な範囲とする観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0042】
吸音材としては、不織布そのままを使用する態様でもよいが、不織布の少なくとも一方の面に、樹脂層を有することが好ましい。樹脂層としては、特開2016-71376号公報に記載されているような、表面層及びゴム層が例示され、また、フィルム層であってもよい。
なお、本発明において、吸音材としても撥水性を有することが好ましい観点から、本発明の不織布以外の層も撥水性を有することが好ましい。
【0043】
好ましい一つの態様において、本発明の撥水性を有する吸音材は、高温多湿のような過酷条件において、長時間、撥水性の耐久性を有する。また、本発明の吸音材は、吸音性も優れていることから、小型の機器にも使用することができる。従って、簡単に交換不能な電気製品の吸音材として用いることがより好ましく、コンプレッサーや熱交換器など、ドレンを発生したり、温度変化による結露を発生したりする機器、及び、常時湿度の高い条件で使用される機器の吸音部材として用いることがより好ましい。
【0044】
[油吸着材]
本発明の不織布は、油吸着材として使用することも好ましい。油吸着材は、オイル吸着材ともいわれる。
ここで、油吸着材は、水分の吸着性に比較して、油分の吸着性が高く、選択的に油を吸着することが好ましい。油吸着材は、飲食店の厨房廃液の処理、油水分離槽、油流出事故、建設現場等に使用され、油吸着の選択性、吸収速度、廃棄の容易性等が求められる。
従来、油吸着材としては、ポリプロピレン等の吸着マットが使用されている。しかしながら、このような油吸着材では十分な油吸着性が得られなかった。
本発明の不織布は、撥水性が高く、水分の吸着性に比較して、油分に対する吸着性が高く、選択的に油を吸着することができる。また、撥水パルプを使用して製造されているため、油の吸着性が高く、また、速い吸収速度が得られる。更にパルプを用いているため、使用後も焼却可能であり、産業廃棄物にならない。
【0045】
本発明の不織布を油吸着材に使用する場合には、不織布中の撥水パルプの含有量は、高い油吸着性を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上であり、熱融着性接着剤の含有量を適切な範囲とする観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。パルプを多く含有する不織布を用いた油吸着材は、油を吸着した後の廃棄が容易である観点から好ましい。
【0046】
本発明の不織布を油吸着材に使用する場合には、脱粉防止効果が得られる観点から、更に不織布の少なくとも一方の面に他の層を備えることが好ましい。他の層は、表皮層ともいわれ、吸水性を有さない限り特に制限されず、好ましくは、PPスパンボンド、PETスパンレース又はメルトブローが挙げられる。
【0047】
本発明の油吸着材が吸着できる油は、粘度が10~500cpsの油が好ましい。具体的には、サラダ油、ごま油といった食用油、重油、工業用潤滑油、又はギア油などが挙げられる。
【0048】
本発明の油吸着材は、吸液する際にバラバラとならない構造であり、また、回収が容易であるという利点をも有する。また、本発明の油吸着材は、吸液後も水中に沈み難いという点でも好ましい。
なお、本発明の油吸着材を構成する不織布に使用する撥水パルプを単体で、油吸着材として使用してもよく、また、前記撥水パルプをシート状、チューブ形状等に加工して使用してもよい。更に、前記撥水パルプを袋に詰めて、油吸着材として使用してもよい。
【0049】
[その他の用途]
本発明の不織布は、吸音材及び油吸着材に用いる用途に限定されるものではなく、医療分野、薬品分野、美容分野、衛生分野、食品・調理分野、自動車分野、電機・電器分野、電子分野、農業分野等において、通気性カバー、通気性セパレータ、自動車の内装、空調設備、掃除機等の各製品に使用される不織布として使用することができる。
【実施例0050】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0051】
<平均繊維径及び平均繊維長の測定方法>
後述する繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、以下の方法により測定した。
平均繊維径は、合繊繊維の場合は、メーカー規格値(試験値)を参照するか、又は顕微鏡観察によって測定した。また、パルプ繊維の場合は、繊維長測定装置(例えば、KAJAANI Fiber Lab.)による画像解析結果により平均繊維径を測定した。
また、平均繊維長は、合繊繊維の場合は、顕微鏡観察によって測定した。パルプ繊維の場合は、繊維長測定装置(例えば、KAJAANI Fiber Lab.)、及び顕微鏡観察により繊維長を測定した。
【0052】
<撥水パルプの調製>
広葉樹のパルプシートを解繊し、解繊パルプを調製した。得られた解繊パルプに撥水剤(マレイン化石油樹脂アルカリ塩及び流動パラフィンを主成分とする撥水剤)を含浸して撥水性を付与し、乾燥処理を経ることで、パルプと撥水剤の結合を強化した撥水パルプを得た。得られた撥水パルプの平均繊維径は20μm、平均繊維長は1.5mmであった。
【0053】
比較例として、以下のパルプ繊維を使用した。
・針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP):平均繊維径50μm、平均繊維長4mm
【0054】
[撥水性試験]
<沈降開始時間>
JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験(沈降法)に準じて、沈降開始時間を測定した。具体的には、20℃±2℃の水を入れた水槽(20×20cm)中の水に、撥水パルプ及びNBKPをそれぞれ1,000mg浮かべ、試料が湿潤して沈降し始めるまでの時間(沈降開始時間)を測定した。
【0055】
<保水試験でのパルプ保水量>
縦横10cm、高さ6cmのアクリル製の枠(中空の四角柱状)に、内径がぴったりと密着するアクリル製底面を設置した。底面の密着度合いは、底面を設置した枠の中に水を入れても、わずかに水が染み出る程度とした。
別途、秤量したろ紙(40ccの水を吸収するに十分なろ紙)を、底面を設置した枠の下に敷き、この枠の中に、パルプ繊維2gを均一に入れ、水40ccを全体に投入し、1分後に、枠の内径とほぼ同寸法のアクリル製おもり700gfを載せ、静かにパルプ繊維に荷重をかけた。1分後、枠の下のろ紙質量を測定し、枠から下に染み出した水の量を測定し、投入した水40gとの差分をパルプ保水量(g)とした。すなわち、パルプ保水量は、以下の式(a)で表される。
パルプ保水量(g)=40(g)-染み出した水の量(g)
なお、染み出した水の量は、試験前に測定したろ紙の質量と、試験後の吸水したろ紙の質量との差から測定した。
なお、パルプ繊維を入れない場合の保水量(ブランク)は、0.6gであった。
【0056】
<液流れ試験>
金網上に、孔径3mmの排水口を底面に5個、十字状に有する内径3cmのアクリル製シリンダーを載せ、パルプ繊維1gを高さ4cm(密度0.035g/cm)となるように圧縮した後、水50ccを一度に投入し、排出された水量(g)を計量して液流れ量(g)とした。
【0057】
<顕微鏡観察下において、水を滴下した場合の膨潤率>
パルプ繊維を、プレパラート上に3~5mg載せ、スポイトで約0.1mlの水をたらした。5分程度放置後、プレパラートを傾け、更に、キムワイプなどでパルプ繊維に吸収されていない水分を除去した。水を滴下前後の顕微鏡写真から、パルプ繊維の繊維径を測定し、膨潤率を下記式により算出した。
膨潤率={水滴下後のパルプ繊維の繊維径(幅寸法)-水滴下前のパルプ繊維の繊維径(幅寸法)}÷水滴下前のパルプ繊維の繊維径(幅寸法)×100(%)
【0058】
<ティーバッグ試験での吸水量>
パルプ繊維をティーバッグ(9.5cm×7cm、ポリエステルを主要繊維素材とした不織布)(トキワのお茶バッグM、(株)トキワ工業製)に全質量が約5gになるように入れ、ティーバッグの先端におもり(500g)をひもでくくりつけた。試験前のパルプ繊維の質量は全質量から空のティーバック質量を減算することで算出した。おもりをつけたティーバッグを、水を入れたビーカーに入れた。水は、ティーバッグ全体が完全に水面下に沈む高さまで入れた。5分間ティーバッグを浸漬したあと、水から取り出し、空中にて5分間吊り下げて、水を切った。水切り後のティーバッグ(パルプ繊維入り)の質量を測定し、吸水量を下記式により算出した。
吸水量(g/g)=(水切り後のパルプ繊維入りティーバッグの質量-水に浸漬する前のパルプ繊維入りティーバッグの質量)÷試験前のパルプ繊維質量
空のティーバッグの質量は0.42gであった。
実施例及び比較例で使用した繊維の撥水性試験の結果を、以下の表に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
[実施例1]
<不織布の作製>
コンベアに装着されて走行するメッシュ状無端ベルト上にPETスパンボンドを繰り出しつつ、エアレイド法のウェブフォーミング機に、上記撥水パルプ及び熱融着性繊維(ポリエチレンテレフタレート複合繊維)を、質量比(撥水パルプ:熱融着性繊維=1:1~3:1)で、坪量が450g/mとなるように供給し、空気中で均一に混合しつつメッシュ状無端ベルト上に吸気流とともに下降させて落下堆積させることにより、PETスパンボンド上にウェブを形成してエアレイドウェブを得た。
次いで、このエアレイドウェブの上に、更にPETスパンボンドを積層し、熱風をウェブに貫通させることのできるボックスタイプドライヤ(熱風循環コンベアオーブン)を通過させて熱風処理して不織布とした。熱風処理温度(熱風循環コンベアオーブン温度)は、160℃とし、不織布を得た。
得られた不織布のトータル坪量、厚さ、密度を測定した。結果を表2に示す。
【0061】
[比較例1~3]
比較例1:合成繊維(種類:PET)のみを使用した不織布(フェルト)に対して、撥水剤(フッ素系)スプレー加工を施した不織布。
比較例2:撥水パルプの代わりにNBKPを使用して作製した不織布(後加工なし)。
比較例3:比較例2の不織布に対して、撥水剤(フッ素系)でスプレー加工を施した不織布。
【0062】
<クレム吸水度>
得られた不織布に対し、JIS P8141:2004に準拠してクレム吸水度を測定した。結果を以下の表2に示す。クレム吸水度は、以下の評価基準にて評価した。
-評価基準-
3:ほぼ吸水しないシート。具体的には、クレム吸水度が0mm以上15mm未満である。
2:毛細管力で吸い上げるシート。具体的には、クレム吸水度が15mm以上50mm未満である。
1:吸水シート。具体的には、クレム吸水度が50mm以上である。
【0063】
<洗浄処理後のクレム吸水度>
得られた不織布を、30℃の水道水にて、1時間流水洗浄した後、同様にしてクレム吸水度を測定した。
【0064】
<耐熱性試験後のクレム吸水度>
得られた不織布を、100℃の環境で1000時間曝露する耐熱性試験に供した後、同様にしてクレム吸水度を測定した。
【0065】
<高温高湿試験後のクレム吸水度>
得られた不織布を、85℃95%RHの環境下に600時間曝露する高温高湿試験に供した後、同様にしてクレム吸水度を測定した。
【0066】
<ヒートサイクル試験後のクレム吸水度>
得られた不織布を、-10℃で1時間と、60℃で1時間とを1サイクルとし、これを30サイクル繰り返したヒートサイクル試験に供した後、同様にしてクレム吸水度を測定した。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例1の不織布に対して、耐熱性試験、高温高湿試験、及びヒートサイクル試験のそれぞれを行い、試験後の不織布について、同様にクレム吸水度を測定した結果、いずれの試験後の不織布についても、クレム吸水度は0mmであり、評価は3であった。
このように、本発明の不織布は、高い撥水性を有し、更に、高温多湿のような過酷な条件下においても撥水性に優れた不織布を提供可能であることが示された。
【0069】
<垂直入射吸音率の測定>
それぞれの不織布から作製した吸音率の測定試料を用いて、JIS A 1405-2:2007(ISO 10534-2、ASTM E1050)に準拠し、垂直入射吸音率の測定を行った。なお、材料の吸音率は音が入射する角度によって変化するため、測定方法により吸音率の値は異なる。音響管を用いて音が材料へ垂直に入射する条件で測定した吸音率を「垂直入射吸音率」という。「垂直入射吸音率」は吸音材料の開発や特性の把握などに用いられる。
上記垂直入射吸音率を、1,000Hz、1,250Hz、1,600Hz、2,000Hz、2,500Hz、3,150Hz、4,000Hz、5,000Hz、及び6,300Hzのそれぞれの周波数について測定した。得られた各周波数における垂直入射吸音率を図1に示した。
また、以下の評価基準で評価を行った。
3:1,000~6,300Hz平均値が35%以上、かつ、2,500~6,300Hz平均値が60%以上、かつ、6,300Hzが70%以上
2:上記評価3を満たさない不織布の中で、1,000~6,300Hz平均値が25%以上、かつ、2,500~6,300Hz平均値が35%以上、かつ、6,300Hzが50%以上
1:上記評価3又は評価2に該当しない
【0070】
【表3】
【0071】
比較例3は、比較例2と同様の吸音性を示した。
【0072】
<耐久試験後の吸音率>
得られた不織布について、耐熱性試験、高温高湿試験、及びヒートサイクル試験後を行い、試験後の不織布について、上記と同様に吸音率を測定した。いずれの不織布についても、試験前と同様の優れた吸音率が得られた。
【0073】
[吸油・吸水試験]
1.滴下テスト
実施例1で得られた不織布(厚さ5mm)、比較例として上記比較例2で得られた針葉樹パルプ不織布(厚さ5mm)の3cm角をサンプルとして用いた。これらをシャーレに乗せ(図2(A))、水(図2(B))及びサラダ油(日清サラダ油(食用調合油:食用大豆油、食用なたね油)、日清オイリオグループ(株)製、23.5℃で粘度65mpa・s)(図2(C))をそれぞれ表面に1.5mlずつ滴下した。結果を図2に示す。
【0074】
図2中、(a)は、比較例2で得られた針葉樹パルプ不織布であり、(b)は、実施例1で得られた不織布である。
図2(A)に示すように、シャーレにそれぞれの不織布(3cm角)を載せた。図2(B)に示すように、それぞれの不織布に対して、スポイトで1.5mlの水を滴下したところ、比較例2で得られた針葉樹パルプ不織布(図2(B)の(a))では、吸水性が認められた。一方、実施例1で得られた撥水パルプを使用して製造された不織布(図2(B)の(b))では、撥水性を示し、水が不織布表面で玉状となった。
また、同様に、それぞれの不織布に対して、スポイトで1.5mlの油を滴下したところ、両サンプルともに、吸油性を示した(図2(C)の(a)及び(b))。
結果に示されるように、本発明の不織布は、水は吸水せず、表面に玉状になった。一方、撥水パルプの代わりにNBKPを使用して作製した不織布(比較例)は吸水した。食用油は、本発明の不織布もNBKPを使用して作製した不織布も、両者ともに吸収した。
【0075】
2.水・油混合液での吸収テスト
上記1.のサンプルを用いた。内径φ90mmのシャーレに水を40ml入れ、そこに食用油を4mlを加え、混合液を作製した。混合液の表面にサンプルをそれぞれのせ、10秒程度吸収させた。本発明の不織布では、油のほとんどが吸収され、残ったのは水だけであった。針葉樹パルプ不織布では、水と油の両方を吸収し、油が多く残った。
【0076】
3.吸油・吸水試験
実施例1と同様にして、撥水パルプを用いて、エアレイド不織布A~Cを作製した。
得られた不織布A~Cに対し、以下の方法により、吸油・吸水試験を行った。得られた不織布5cm角(0.0025m)を、サラダ油(日清サラダ油(食用調合油:食用大豆油、食用なたね油)、日清オイリオグループ(株)製、23.5℃で粘度65mPa・s)、又は水を入れたアルミ製バッドに5分間浸漬した。その後、不織布を金網上に取り出し、1分間油又は水を切り、それぞれの質量を測定した。結果を表4及び5に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
表4及び5の結果に示されるように、吸油試験では、10~13gの油を吸収した。油は、浸漬直後から不織布への速やかな吸収が始まり、浸漬から1分程度で不織布全体に吸収された。吸水試験では吸水量が0.3~0.4g見られたが、これは、不織布の表面に付着しているものであり、不織布の中まで浸透はしていなかった。
【0080】
次に、不織布Aの5cm角(0.0025m)を、サラダ油を5質量%となるように浮遊させた水を入れたアルミ製バッドに、浮遊させ、水の表面に浮いている浮遊油に対して、液やバットをゆすり十分に接触させた後、不織布を取り出し、質量を測定した。水の表面に浮いている浮遊油がなくなるまで、不織布を追加した。なお、2枚目に追加した不織布の厚み及び質量は、表6に示す通りである。結果を表6に示す。
【0081】
【表6】
【0082】
表6の結果に示されるように、この試験では、2枚の不織布で添加した浮遊油を吸着できた。また、不織布を浮遊させていると、油が不織布のシート端面に吸着後、シート内部に油のみが選択的に吸引されるという現象を確認した。2枚の不織布での吸液量の合計は14.4gとなり、バッドにいれた油の量とほぼ同じであった。すなわち、本発明の不織布は、選択的に油を吸収することを確認できた。また、吸着量も高いものであった。ここで、吸着量は、油の吸着性試験データの指標となるものであり、通常、油の吸着材としては、吸着量として、6g/g以上、又は、0.8/cm以上であれば、十分な効果があるといえる(油吸着材(マット状のもの)性能試験基準:型式承認基準運輸省船舶局長通達舶査第52号参照)。
なお、吸油性試験に使用した本発明の不織布は、サンプルからの紙粉脱落がなく、吸収速度も速いものであり、浸漬直後から吸油が始まり、ほぼ1分以内にシート全体に吸油した。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の不織布は、高い撥水性を有し、更に、高温多湿のような過酷な条件においても、高い撥水性が維持される。更に、本発明の不織布は、吸音材として好適に使用され、高い吸音性を有するとともに、耐久性試験後においても、高い吸音性を有していた。更に、本発明の不織布は、油吸着材としても好適に使用され、油に対して高い選択性を有することが示された。本発明の不織布は、撥水性を有する不織布として、各種用途に応用が期待され、特に、騒音、振動を吸収する吸音材や、油吸着材として有用である。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ原料をフラッフ化した後、撥水剤で処理することにより撥水パルプを得る工程、
該撥水パルプと熱融着性接着剤とを、エアレイド法にて不織布化する工程、および
加熱により熱接着する工程をこの順で含む、
不織布の製造方法。
【請求項2】
前記撥水パルプが、下記の(1)を満たす、請求項1に記載の不織布の製造方法。
(1)JIS L1907:2010規格に規定される吸水性試験において、沈降開始時間が30秒以上である
【請求項3】
前記撥水パルプが、更に、下記の(2)~(5)の少なくともいずれかを満たす、請求項1または2に記載の不織布の製造方法。
(2)保水試験でのパルプ保水量が15g以下である
(3)液流れ試験での液流れ量が35g以上である
(4)顕微鏡観察下において、水を滴下した場合の膨潤率が20%以下である
(5)ティーバッグ試験での吸水量が10(g/g)以下である
【請求項4】
得られる不織布のJIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、請求項1~3のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
得られる不織布を流水で1時間洗浄する水洗処理に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、請求項1~4のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
得られる不織布を100℃の環境下に1000時間曝露する耐熱性試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、請求項1~5のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
得られる不織布を用いて85℃、95%RHの環境下に600時間曝露する高温高湿試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、請求項1~6のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項8】
得られる不織布を用いて-10℃で1時間と、60℃で1時間とを1サイクルとし、これを30サイクル繰り返したヒートサイクル試験に供した後、JIS P8141:2004に準拠して測定されるクレム吸水度が30mm未満である、請求項1~7のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項9】
前記熱融着性接着剤が、熱融着性繊維として供給される、請求項1~8のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項10】
前記不織布を構成する全ての繊維の平均繊維径が10~60μmである、請求項1~9のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項11】
得られる不織布が吸音材用である、請求項1~10のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項12】
不織布中の前記撥水パルプの含有量が50質量%以上である、請求項11に記載の不織布の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の製造方法により得られた不織布の少なくとも一方の面に、樹脂層を設ける工程をさらに有する、吸音材の製造方法。
【請求項14】
得られる不織布が油吸着材用である、請求項1~10のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項15】
前記不織布中の前記撥水パルプの含有量が50質量%以上である、請求項14に記載の不織布の製造方法。