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特開2022-184967カルボン酸およびエステルをベースオイル炭化水素に変換するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184967
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】カルボン酸およびエステルをベースオイル炭化水素に変換するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/22 20060101AFI20221206BHJP
   C07C 9/22 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 5/03 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 5/02 20060101ALI20221206BHJP
   C10G 3/00 20060101ALI20221206BHJP
   C10G 45/60 20060101ALI20221206BHJP
   C11C 3/12 20060101ALI20221206BHJP
   C11C 3/14 20060101ALI20221206BHJP
   C10M 105/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C07C5/22
C07C9/22
C07C5/03
C07C5/02
C10G3/00 Z
C10G45/60
C11C3/12
C11C3/14
C10M105/02
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022148495
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2019569820の分割
【原出願日】2018-06-15
(31)【優先権主張番号】20175569
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(31)【優先権主張番号】20175781
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(31)【優先権主張番号】20175780
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(31)【優先権主張番号】20175782
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(31)【優先権主張番号】20176095
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュッリョヤ、ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】ケッツネン、ミカ
(72)【発明者】
【氏名】ピーロラ、ラミ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カルボン酸およびエステルをベースオイル炭化水素に変換するための方法を提供する。
【解決手段】種々の多数の、星型構造(S)を有する分岐の炭化水素化合物が脂肪酸または脂肪酸を含む誘導体を含む再生可能なオイルから合成される。分岐の炭化水素化合物は、個々にまたは混合物中に単離され得、そして、ベースオイルの一部、特には再生可能なベースオイル(RBPs)の一部として使用され得る。分岐の炭化水素化合物を製造するためのプロセスは、三量化反応、またそれに続く水素化処理条件に好ましい条件を含む。分岐の炭化水素化合物は、プロセス中で再生可能な材料を触媒的に処理することによって合成され得、そして、化合物は、潤滑、低温流動に関連するおよび低いノアク揮発度を有している望ましい品質を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)三量化生成物を提供するための、少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードを、三量化条件のもと三量化ゾーンで、少なくとも一つの脂肪酸を三量化触媒に接触させることによって三量化する工程であって、脂肪酸三量体の混合物が得られる工程、および
b)5℃より低い流動点を有するベースオイル生成物を提供するために、水素化処理条件のもと水素化処理ゾーンで、水素ガスの存在下、脂肪酸三量体の混合物を水素化処理触媒と接触させることによって、三量体生成物の少なくとも一部を水素化処理する工程
を含むベールオイル製造のための方法であって、
水素化処理されたベースオイルが一または複数の以下の式(I)の化合物:
【化1】
(ここで、n、mおよびpは互いに独立して5~41のあいだの整数であり、かつ式(I)の総計の炭素数は19~65のあいだである)
を含み、
一または複数の式(I)の化合物の炭化原子が、モノカルボン酸の脂肪酸からのみ由来し、および
三量化が、前記フィードの少なくとも一つの脂肪酸の99.5%が変換されるまで行われる方法。
【請求項2】
前記三量化条件が、300~400℃の範囲である温度、5~100bargの範囲である圧力、0.1~5hr-1の範囲であるWHSVを含み、および前記三量化触媒が、金属酸化物触媒を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記三量化触媒が、Ti、Mn、Mg、Ca含有の金属酸化物触媒からなるリストのうちの一または複数から選択される触媒を含み、好ましくは、三量化触媒が、Ti含有金属酸化物触媒である請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記三量化触媒が、TiO2および一または複数のアルカリ金属酸化物を含み、好ましくは、一または複数のアルカリ金属酸化物は、例えばLi、Na、K含有金属酸化物からなるリストのうちの一または複数から選択される請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
三量化が、2つの脂肪酸のあいだの反応からのケトンの形成、それに続く、アルファ-置換のおよびアルファ-不飽和のケトンを製造するための、ケトンと別の脂肪酸とのあいだの縮合反応を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも一つの脂肪酸が、C9~C22の脂肪酸から選択される請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードが、パーム油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ひまわり油、牛脂、ラード、ココナッツオイル、コーン油、大豆油、ジャトロファ油、トール油、粗トール油、トール油ピッチ、トール油ヘッド、トール油脂肪酸からなるリストのうちの一または複数から選択される請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードが、炭化水素流を用いて希釈される、または、前記三量化された生成物が炭化水素流を用いて希釈される請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードが、プロセスから取り出された、例えば三量化ゾーンから、または水素化処理ゾーンから取り出された生成物流で希釈される請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記三量化ゾーンにおいて、ガスフィードが存在しており、前記ガスは、窒素、二酸化炭素、水蒸気、メタンおよび/または水素からなる、例えば窒素、二酸化炭素または水素からなる、好ましくは水素からなるリストから選択される請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記三量化生成物が、450℃より高い沸点を有する留分中に単離される請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
さらに、以下の工程:
c)水素化処理されたベースオイル生成物を異性化する工程
を含む請求項1~11いずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法により得られ得るベースオイル組成物であって、
少なくとも2wt%の一または複数の以下の式(I)の化合物:
【化2】
(ここで、n、mおよびpは互いに独立して、9~41のあいだの奇数であり、および、式(I)の総計の炭素数は31~65のあいだであり、ただし、nおよびmが共に9である場合、pは9または11でなく、かつn、mおよびpの全てが11ではない)
を含むベースオイル組成物。
【請求項14】
nが13または15であり、mおよびpが互いに独立して15または17である、一または複数の式(I)の化合物を含む請求項13記載のベースオイル組成物。
【請求項15】
nが13であり、mおよびpが共に15である、一または複数の式(I)の化合物を含む請求項13または14記載のベースオイル組成物。
【請求項16】
380℃以上、例えば450℃以上、例えば460℃以上、例えば470℃以上の沸点を有する請求項13~15のいずれか1項に記載のベースオイル組成物。
【請求項17】
少なくとも5%の前記一または複数の式(I)の化合物を含む請求項13~16のいずれか1項に記載のベースオイル組成物。
【請求項18】
ベースオイルの潤滑性能を向上させるための、請求項13記載のベースオイル組成物の使用。
【請求項19】
1~5のあいだのメチル分岐を有する異性化された星型の化合物を製造するための請求項1記載の方法であって、少なくとも80wt%の炭化水素を含み、および、少なくとも2wt%、好ましくは少なくとも5wt%の一または複数の式(I)の化合物(ここで、n、mおよびpは互いに独立して、9~41のあいだの奇数であり、および、式(I)の総計の炭素数は31~65のあいだであり、ただし、nおよびmが共に9である場合、pは9または11でなく、かつn、mおよびpの全てが11ではない)を含むフィードが、異性化工程に付され、前記異性化工程が、水素と例えば貴金属または非貴金属の異性化触媒などの異性化触媒との存在下で、250~400℃の範囲の温度で、10~60bargの範囲の圧力で、および、0.1~5h-1の範囲のWHSVで、および、100~800nl H2/lフィードのH2フローで、行われることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記フィードが、少なくとも15wt%、少なくとも20wt%、少なくとも32wt%、例えば少なくとも50wt%、または少なくとも80wt%の前記一または複数の式(I)の化合物を含むことを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記フィードが、本質的に炭化水素からなる請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
前記フィードが、少なくとも15wt%の前記一または複数の式(I)の化合物を含む請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記フィードが、本質的に炭化水素からなり、および、少なくとも15wt%の前記一または複数の式(I)の化合物を含む請求項22記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能なベースオイル(RBO)の技術分野に関し、特には、優れた潤滑性能を示す新規のベースオイル化合物、およびそれらの中間体、優れた潤滑性能を備えるベースオイル混合物、ならびに、再生可能なフィードからのベースオイル製造のための方法、それから得られ得るベースオイル組成物、およびベースオイルの潤滑性能を向上させるための本発明の再生可能なベースオイル組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
流体潤滑は、近接し、かつ互いに対して移動する表面間の摩擦を低減するために重要である。潤滑なしに、または不十分な潤滑では、そのような摩擦が増大された熱および摩滅をもたらすであろう。
【0003】
ベースオイルは、潤滑油、モーターオイル、および金属処理流体などの製品を製造するために使用される。ベースオイルにおけるもっとも重要な要件の一つは、様々な温度における粘度である。
【0004】
例えばポリ-アルファ-オレフィンなどの合成オイルベースストックは、例えば図1において1-デセンとして示されているように、アルファオレフィンの重合によって合成され得る。
【0005】
図1を参照して、ポリ-アルファオレフィンは、反応条件に依存して、直鎖状炭化水素(L)、高度に枝分かれした炭化水素(HB)、または非常に要望の大きい星型(S)構造をもたらす。星形配向は、直鎖状炭化水素の通常の異性化反応(これは典型的には短鎖のメチル枝分かれをもたらす)からは得ることができない。それは、例えば高度に枝分かれしたまたは直鎖状の分子と比較して高い粘度指数などの優れた潤滑性能を示し、そして、その理由ゆえにまたベースオイルとして好ましい。
【0006】
特許文献1(Neste Oyjが特許権者)は、脂肪酸およびそれらの誘導体を含むフィードを、例えば担体に担持されたNiMOおよびK2O/TiO2などの二元触媒システムと共に、水素圧力下で反応させることによりベースオイル成分を製造するための方法を記載している。反応は、次に直鎖の炭化水素へと水素化脱酸素化される脂肪酸を二量化させるケトン化反応を含んでいる。この二量化反応は、直鎖の(L)ベースオイルを製造する(例えば特許文献1の請求項2を参照のこと)。
【0007】
特許文献2(ExxonMobile Research and Engineering Companyが特許権者)は、再生可能なフィードから飽和の炭化水素を製造するための方法を記載しており、ここで、酸性触媒がトリグリセリド骨格の2つの不飽和脂肪酸を二重結合二量化を通じ二量化し、続いて水素化処理される。トリグリセリドを二量化するために脂肪酸の二重結合を使用することは、例えばi-C3470などの高度に枝分かれした(HB)水素化された二量体を結果としてもたらす(例えば特許文献2の図1を参照のこと)。
【0008】
特許文献3(ExxonMobile Research and Engineering Companyが特許権者)は、再生可能なフィードから潤滑油ベースストックを製造するための方法を記載している。特許文献3の図3は、トリグリセリドとクエン酸とのあいだのケトン化反応およびそれにルづく水素化処理を記載している。これは、星型(S)配向をもつポリ-アルファ-オレフィン(PAO)様構造をもたらす。ここで、PAO様構造は、星型(S)構造を得るために2つのカルボン酸のあいだでケトン化反応を導くためのクエン酸骨格を用いることにより得られる。特許文献3の図3および7には構造に誤りがあり、これらの構造を可能とするような開示は記載されていない。とりわけ本発明の星型分子は、特許文献3では製造されておらず、また製造することもできない。
【0009】
上記で参照された従来技術の観点から、さらに、良好な潤滑性能を有する再生可能なベースオイル組成物およびそのような再生可能なベースオイルを調製するためのプロセスの必要性がある。とりわけ、優れた潤滑性能および他の有益な特性を示す星型配向をもつポリ-アルファ-オレフィン(PAO)と類似の再生可能なベースオイル組成物のさらなる必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2013/113976号
【特許文献2】国際公開第2014/099371号
【特許文献3】国際公開第2014/099373号
【発明の概要】
【0011】
本発明は、上述の従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、星型配向を有する新規のベースオイル化合物を提供すること、特には、星型配向を有するベースオイル化合物を含む、良好な潤滑性能、例えば高い粘度指数などをもつベースオイル混合物を得るためのプロセスを提供することである。
【0012】
課題を解決するために、本発明は、以下の式(I)の化合物を提供し、
【化1】
ここで、n、mおよびpは互いに独立して、9~41のあいだの整数、例えば奇数であり、および、式(I)の総計の炭素数は31~65のあいだである。式(I)のn、mおよびpの選択は、一または複数の条件に付され、例えば、nおよびmが共に9である場合、pは9または11でなく、かつn、mおよびpの全てが11ではない。
【0013】
特には、n、mおよびpは互いに独立して9~14のあいだの奇数であってもよく、ここで、nおよびmが共に9である場合、pは9または11でなく、かつn、mおよびpの全てが11ではないという条件で、式(I)の総計の炭素数は31~65のあいだである。
【0014】
式(I)のn、mおよびpの選択は、nが13または15であり、mおよびpが互いに独立して15または17であるものであり得る。
【0015】
すなわち、本発明の発明者らは、本発明の第一の形態において、これらの、例えば高い粘度指数などの良好な潤滑性能をもつ星型配向を有する新規化合物が、例えば、2つの脂肪酸がケトン化条件下で反応して、ケトンとケトンのアルファ-炭素原子の一つが以下の式(II)の中間体化合物を形成するように脂肪酸と反応する縮合反応とを導く一つの反応スキームによってなどにより、一または複数の三量化反応から形成され得ることを発見した。
【化2】
(ここで、n、mおよびpは互いに独立して9~41のあいだの整数であり、かつ式(II)の総計の炭素数は31~65のあいだである)
【0016】
式(II)のn、mおよびpの選択は、例えば、nが13または15であり、mおよびpが互いに独立して15または17であるものであり得る。
【0017】
式(II)は、水素化反応、例えば式(I)を生成するための二重結合の水素化および水素化脱酸素化などに付され得る。
【0018】
式(I)または(II)の化合物を調製するために使用される脂肪酸は、例えば、C16脂肪酸、C18脂肪酸、またはそれらの混合物であり得る。式(II)の化合物であって、nが13であり、mおよびpが共に15である化合物は、C16脂肪酸だけから製造され得、および、式(I)の化合物であって、nが13であり、mおよびpが共に15である化合物は、C16脂肪酸だけから製造され得る。
【0019】
式(I)の化合物は、一または複数の式(I)の化合物を異性化工程に付すことによって得られ得る、異性化された星型の化合物を製造するために異性化され得る。星型化合物を異性化するプロセスから得られる異性化された星型の化合物は、例えば1~5のあいだのメチル分岐などである一または複数のメチル分岐を有し得る。これは、星型ポリマーを形成している3つの分岐のうちの一つが失われるまたはメチル、エチルまたはプロピル分岐へと還元される程度の分解が回避されるまたは低減される異性化条件を提供するため優位である。
【0020】
式(i)の化合物は、一または複数の以下の式(I)の化合物を含むベースオイル混合物中に存在していてもよい。
【化3】
(ここで、n、mおよびpは互いに独立して、例えば奇数などの、9~41のあいだの整数であり、かつ式(I)の総計の炭素数は31~65のあいだである)
【0021】
ベースオイル混合物は、一または複数の式(I)の化合物であって、nが13または15であり、mおよびpが互いに独立して15または17である化合物であり得る。
【0022】
ベースオイル混合物は、式(I)の化合物であって、nが13であり、mおよびpが共に15である化合物であり得る。
【0023】
ベースオイル混合物は、380℃以上、例えば450℃以上の沸点を有し得る。
【0024】
ベースオイル混合物は、少なくとも2%以上、例えば少なくとも5%以上、例えば少なくとも10%以上である一または複数の式(I)の化合物を含み得る。
【0025】
ベースオイルは、ベースオイル製造のためのプロセスによって製造され得、これは、a)三量化生成物を提供するための、少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードを三量化する工程であって、脂肪酸三量体の混合物が得られる工程、およびb)ベースオイル生成物を提供するために、三量体生成物の少なくとも一部を水素化処理する工程を含み、ここで、水素化処理されたベースオイルは一または複数の以下の式(I)の化合物を含む。
【化4】
(ここで、n、mおよびpは互いに独立して9~41のあいだの整数であり、かつ式(I)の総計の炭素数は31~65のあいだである)
【0026】
プロセスは、水素化されたベースオイル生成物が5℃より低い流動点を含むことを特徴とし得る。
【0027】
プロセスは、一または複数の式(I)の化合物の炭化原子がモノカルボン酸の脂肪酸からのみ由来することを特徴とし得る。
【0028】
プロセスは、さらに、三量化が、フィードの少なくとも一つの脂肪酸の99.5%が変換されるまで行われることを特徴とし得る。
【0029】
プロセスは、さらに、三量化が、少なくとも5%の三量体生成物が形成されるまで行われることを特徴とし得る。
【0030】
プロセスは、さらに、ベースオイルが式(I)の三量化生成物を少なくとも部分的に含むことを特徴とし得る。
【0031】
プロセスは、さらに、三量化された生成物を異性化する工程を含むまたは含まないことを特徴とし得る。
【0032】
プロセスは、さらに、工程a)のもとで、脂肪酸三量体の混合物を提供するために、三量化条件のもと三量化ゾーンで、少なくとも一つの脂肪酸を三量化触媒に接触させることを含み、および、工程b)のもとで、ベースオイル生成物を提供するために、水素化処理条件のもと水素化処理ゾーンで、水素ガスの存在下、脂肪酸三量体の混合物を水素化処理触媒と接触させることを含んでいてもよい。
【0033】
三量化条件は、300~400℃の範囲である温度、5~100bargの範囲である圧力、0.1~5hr-1の範囲であるWHSVを含み、三量化触媒は、金属酸化物触媒を含む。
【0034】
三量化触媒は、Ti、Mn、Mg、Ca含有の金属酸化物触媒からなるリストのうちの一または複数から選択される触媒を含み得、好ましくは、三量化触媒は、Ti含有金属酸化物触媒である。例えば、三量化触媒は、TiO2および一または複数のアルカリ金属酸化物を含み得、ここで、好ましくは、一または複数のアルカリ金属酸化物は、Li、Na、K含有の金属酸化物からなるリストのうちの一または複数から選択される。
【0035】
プロセスの工程a)下の三量化は、2つの脂肪酸のあいだの反応からのケトンの形成、それに続く、アルファ-置換のおよびアルファ-不飽和のケトンを製造するための、ケトンと別の脂肪酸とのあいだの縮合反応を含んでいてもよい。
【0036】
プロセスにおいて、少なくとも一つの脂肪酸は、C9~C22の脂肪酸から選択され得る。
【0037】
プロセスにおいて、少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードは、パーム油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ひまわり油、牛脂、ラード、ココナッツオイル、コーン油、大豆油、ジャトロファ油、トール油、粗トール油、トール油ピッチ、トール油脂肪酸、トール油ヘッドからなるリストのうちの一または複数から選択され得る。
【0038】
プロセスにおいて、少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードは、炭化水素流を用いて希釈されてもよく、または、三量化された生成物が炭化水素流を用いて希釈される。炭化水素流は、プロセスのリサイクル生成物であってもよく、例えば、少なくとも一つ脂肪酸を含むフィードのプロセスのリサイクルあれた生成物に対する比は、1:9~9:1のあいだである。少なくとも一つ脂肪酸を含むフィードは、また、プロセスから取り出された、例えば三量化ゾーンから取り出された、または、水素化処理ゾーンから取り出された、生成物流であってもよい。
【0039】
三量化ゾーンにおいて、ガスフィードが存在していてもよく、ここで、ガスは、窒素、二酸化炭素、水蒸気、メタンおよび/または水素からなる、例えば窒素、二酸化炭素または水素からなる、好ましくは水素からなるリストから選択され得る。
【0040】
プロセスにおいて、三量化生成物は、380℃より高い、例えば450℃より高い、沸点を有する留分中に単離され得る。プロセスはさらに、水素化処理されたベースオイル生成物を異性化する工程c)を含んでいてもよい。ベースオイル組成物は、記載されるプロセスにしたがって得られ得る。
【0041】
本明細書中で記載されるベースオイル組成物は、ベースオイルの潤滑性能を向上させるために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、1-デセンからのポリ-アルファ-オレフィンの例を示す図である。
図2図2は、三量体を製造するための例示的な反応スキームを示す図である。
図3図3は、三量化された、飽和のC16脂肪酸であるパルミチン酸を示す図である。
図4図4は、三量化された、飽和のC16およびC18脂肪酸を含む混合物であるパーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)を示す図である。
図5図5は、脂肪酸変換の関数としての三量体を示す図である。パルミチン酸フィード(C16FA)の変換が高くなるにつれ、三量体含有量の増加がより大きくなることがわかる。
図6図6は、図5の拡大図であり、ここで、個々の反応条件のそれぞれに関して、生成物の三量体含有量が、脂肪酸変換の増加にともなって増加すること、および、5wt%より多い量の三量体が、脂肪酸変換が99.5%以上であることが確実とされる場合に形成され得ることがわかる。
図7図7は、450℃より高い温度で沸騰する三量化されたパルミチン酸の留分を示す図であり、ここで、主な生成物がC47のパラフィン生成物であることがわかり、これは分析により式(I)の化合物であることが同定された。
図8図8は、380~450℃のあいだで沸騰する三量化されたパルミチン酸の留分を示す図であり、ここで、主な生成物がC31のパラフィン生成物であることがわかり、これは分析によりケトン化による脂肪酸の二量化から生じる生成物であることが同定された。
図9図9は、三量化された生成物の%での量(x軸)の、粘度指数(y軸)の向上における効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施形態を記載するにあたり、特定の用語が明確性を目的として使用される。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定される意図はなく、そして、それぞれの特定の用語は、類似の目的を達成するための類似の方法で操作される全ての技術的に透過であるものを含むと理解されるべきである。
【0044】
本発明の利益が例えば、説明を簡便化するためにエンジンオイルを参照して記載されていたとしても、本発明の利益はエンジンオイルに限定されるものではない。
【0045】
乗用車のエンジンのためのベースオイルは、例えば85~90%のベースオイルおよび10~15%性能向上用添加剤パッケージなどからなっていてもよい。ベースオイルは、典型的には乗用車塩銀における最大の成分であるため、流体の性能において劇的な効果をもたらす。ベースオイルは、例えば、粘度、酸化安定性、揮発性、粘度指数、および、例えば流動点および/または曇り点などの低温流動性など、多くのパラメータに影響する。
【0046】
性能向上用添加剤パッケージは、例えば摩擦調整剤、粘度調整剤および流動点硬化剤などの、種々の添加剤を含んでいてよい。
【0047】
アメリカ石油協会(API)はベースオイルを5つのメイングループに分類している。グル-プI~IIIは、様々な品質をもつ石油系ベースオイルである。
【0048】
【表1】
【0049】
APIは、グループIIおよびIIIのあいだの差異を粘度指数(VI)に関してでしか定義しておらず、そして、グループIIIのベースオイルはまた、非常に高い粘度のベースオイル(VHVI)と呼ばれている。しかしながら、低温流動特性およびノアク揮発度もまたベースオイルの重要な特性である。
【0050】
オイル揮発度は、通常、ノバク揮発度試験(例えば、ASTM D5800またはCECL-40-93-B)を用いて測定される。ノバク試験に先立って、潤滑油の引火点が、オイルの揮発度を見積もるために使用された。ノバク試験においては、オイルサンプルは秤量され、そしえ、一時間250℃まで加熱される(250℃は上限のエンジン温度をシミュレートすることを意図している)。乾燥空気がサンプル上を通され、沸騰したオイル蒸気を運び、そしてビーカー内に堆積される。元のサンプルが除去されそして、再秤量される。重量における全ての減少が元の重量の損失割合として評価される。ASTM D5800を用いて測定される%重量損失(g/100g)であるノバク揮発度限界は、基準に合致していなければならない。API SN性能分類は例えば、美髪による重量損失が、モーターオイルの全て粘度グレードにおいて15%より大きくないことを要件としている。より低いノバク指数がより良好であり、これは、オイルレベルを減少させるであろう、高温に暴露された場合により容易に蒸発するオイル中の軽い分子量の分子の蒸発を測定しているものであるためである。2016年の最も一般的な乗用車用エンジンオイルは、典型的には、13%より大きいノバク指数を有しており、一方、合成の乗用車用エンジンオイルは約9~11%であり得る。完全に合成の高加重油は8~9%に低下したノバク指数を有し得る。
【0051】
ベースオイルにおいて、典型的には、沸点範囲が高くなると、粘度がより高くなり、そして、オイルの揮発がより低くなることが観察される。反対に、より低い粘度がより高いオイル揮発性と結びついているということもまた典型的に観察される。
【0052】
オイル揮発性がより高くなると、より多くのエンジンオイルが蒸発し、そしてそれにより、オイルはより重質となる。より重質な、より粘性の高いオイルは、良好に循環せず、これは、燃料の経済性、オイル消費および排出に影響を与える。
【0053】
低い温度でのクランキングが、低温、例えば-30℃などで、コールドクランキングシミュレータ(CCS)によって測定され、その値が、センチポイズ(cP)(これはミリパスカル秒(mPa・s)と同じである)で与えられる。これは、エンジンの起動機の作動をシミュレートする試験である。試験は、例えば冬季にエンジンを始動させるなどの場合の、低温における適切なクランキングスピードを作り出す際のバッテリおよび起動機が経験する抵抗と関係するために重要である。
【0054】
クランキングに関連するSAE低温粘度要件は、0W SAE粘度グレードにおいては、最大の許容クランキングが、-30℃で3250cPであることを特定している(より低い値がより良い)。
【0055】
種々の多数の、星型構造(S)を有する分岐の炭化水素化合物(式(I))が脂肪酸または脂肪酸を含む誘導体を含む再生可能なオイルから合成される。分岐の炭化水素化合物は、個々にまたは混合物中に単離され得、そして、ベースオイルの一部、特には再生可能なベースオイル(RBPs)の一部として使用され得る。式(I)の分岐の炭化水素化合物を製造するためのプロセスは、三量化反応、またそれに続く水素化処理条件に好ましい条件を含む。式(I)の化合物は、プロセス中でなんらかの形状の脂肪酸(例えば、遊離脂肪酸または例えばトリグリセリドまたは他のエステルなどの脂肪酸含有誘導体など)を含む再生可能な材料を触媒的に処理することによって得られ得、そして、化合物は、潤滑、低温流動に関連するおよび低いノアク揮発度を有している望ましい品質を有する。
【0056】
ベースオイル化合物
星型構造(S)を有するポリ-アルファ-オレフィン型(PAOs)の新規ベースオイル化合物が製造された。式(I)の化合物は、個々にまたは混合物中で単離され得る。新規のベースオイル化合物は、脂肪酸を含む再生可能なフィード材料から製造され得、そして、それによって新規のベースオイル化合物が再生可能なベースオイル化合物としてみなされ得る。本発明のプロセスにしたがって製造される星型構造(S)を有するポリ-アルファ-オレフィン型(PAOs)のベールオイル化合物は、例えば高い粘度指数、良好な低温流動特性、例えば低い曇り点および/または流動点など、および低いノバク揮発度などの、良好な潤滑特性から選択される一または複数の特性をもたらす。
【0057】
ベースオイル化合物は以下の式(I)の化合物の構造を有する。
【化5】
【0058】
マーカッシュ形式の式(I)の化合物は、炭化水素であり、式(I)において、n、mおよびpは互いに独立して、7以上の、例えば7~41のあいだの整数であり得る。例えば、n、mおよびpにおける整数値は、例えば高度に枝分かれした(HB)化合物または直鎖(L)の化合物、および異性化された(これは主としてメチル分岐を製造する)直鎖状の化合物と比較して星型の構造(S)である分岐を強調するために9~41のあいだであり得る(図1を参照のこと)。本発明の化合物は、脂肪酸含有材料の三量化反応から得られ絵、そして、n、mおよびpの整数値は、再生可能なオイルにおいてしばしば直面する脂肪酸の長さにより注力するために、互いに独立して25以下であり得る。例えば、n、mおよびpの整数値は、9~41のあいだ、例えば9~25のあいだであり得る。
【0059】
式(I)の総計の炭素数は、26以上である。ミネラルオイル精製において、潤滑油の製造のために使用される留分は、通常、26~40の炭素原子を有する化合物を含む留分である。40より大きい炭素数を有する最も重質かつ大きな炭化水素は取り出されてそしてアスファルト-ベースの製品に使用される。式(い)の化合物は、少なくとも40の炭素原子、例えば40以上の炭素原子、例えば45以上の炭素原子、例えば47以上の炭素原子を有し得る。例えば、47、53、または65ものの炭素原子を有する式(I)の化合物は、本明細書中に記載のプロセスを用いて、それぞれ、C16-、C18-、またはC22-脂肪酸から出発して製造され得る。式(I)の炭素数の上限は、正確に定義されるものではない。炭素数の上限は65であってもよく、これは、例えば菜種油などの多くの再生可能なオイル、特にはエルカ酸濃度の高い菜種油において見出され得るエルカ酸(C22-脂肪酸)の三量体に対応するであろう。
【0060】
式(I)の総計の炭素数は、31以上であってもよく、これは、例えば高い量のラウリン酸を典型的に含む例えばココナッツオイルなどの多くの再生可能なオイル、特にはエルカ酸濃度の高い菜種油において見出され得る、例えば、ラウリン酸、デカン酸、およびカプリル酸(C12、C10、およびC8-脂肪酸)の混合物などから得られ得る三量化合物に対応する。
【0061】
例えば、式(I)の総計の炭素数は、例えば31~65のあいだなどであり得る。
【0062】
マーカッシュ型の式(I)の化合物は、有利には、脂肪酸、それらのエステルまたはトリグリセリドを含む再生可能なオイルから得られ得る。再生可能なオイルとは、化石オイルとは反対に、人類の時間スケールにおいて自然に補充される原料から集められるオイルであると考えられる。植物または動物起源の脂肪酸の大部分は、直鎖状の化合物であり、これは、偶数個の炭素原子を非常にしばしば含み、そして、通常は奇数である脂肪酸を含まないかまたは痕跡量でのみ含む。式(I)の化合物に関して、それらが偶数個の炭素原子を有する脂肪酸をもつ再生可能なオイルから得られる脂肪酸から合成されるのであれば、n、mおよびpの整数値は、奇数の整数値となるであろう。例えば、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、例えば、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、例えば、9、11、13、15、17、19、21、23、25である。
【0063】
式(I)のn、mおよびpの選択は、一または複数の条件に、例えば、n、mおよびpの整数についてそれらが上述のように奇数であるということと組み合わされて以下に示される一または複数の条件に、付され得る。
【0064】
一または複数の条件は、以下の条件のうちの1つ、2つ、または3つから選択され得る。
nおよびmが共に7である場合、pは9でない。
nおよびmが共に9である場合、pは9または11でなく、
n、mおよびpの全てが11ではない。
【0065】
さらなる条件が、本発明のプロセスによって本明細書中で記載される再生可能なオイルを使用して製造される式(I)の化合物により明確に焦点を合わせるために選択され得る。
【0066】
例えば、nおよびmが共に7である場合、pは9でないという条件のもと、nおよびmが共に9である場合、pは9または11でないという条件のもと、および、n、mおよびpの全てが11ではないという条件のもと、n、mおよびpは互いに独立して、7~41のあいだの奇数であり、ここで、式(I)の総計の炭素数は26~65のあいだであり得る。
【0067】
例えば、nおよびmが共に9である場合、pは9または11でないという条件のもと、および、n、mおよびpの全てが11ではないという条件のもと、n、mおよびpは互いに独立して、9~41のあいだの奇数であり、ここで、式(I)の総計の炭素数は31~65のあいだであり得る。
【0068】
例えば、nおよびmが共に7である場合、pは9でないという条件のもと、nおよびmが共に9である場合、pは9または11でないという条件のもと、および、n、mおよびpの全てが11ではないという条件のもと、n、mおよびpは互いに独立して、7~25のあいだの奇数であり、ここで、式(I)の総計の炭素数は31~65のあいだであり得る。
【0069】
式(I)のn、mおよびpの選択は、nが13または15であり、mおよびpが互いに独立して15または17であるものであり得る。式(I)のこれらの化合物は、例えば、本発明のプロセスを用いてC16-およびC18-脂肪酸を含む混合物を三量化することによって得られ得る(以下の、表2の化合物1~6を参照のこと)。
【0070】
式(I)の化合物はまた、nが13あり、mおよびpが共に15であるものであり得る。この化合物は、C16脂肪酸からのみ製造され得る(以下の、表2の化合物1を参照のこと)。
【0071】
同様に、式(I)の化合物はまた、nが15であり、mおよびpが共に17であるものであり得る。この化合物は、C18脂肪酸からのみ製造され得る(以下の、表2の化合物2を参照のこと)。
【0072】
表2の以下の特定の化合物は、例えば、本発明によって合成され得る。C47~C53の炭素製品を含む三量化された生成物のピークを示している図4もまた参照される。
【0073】
【表2】
【0074】
星型配向をもつ上述の新規化合物は、高い粘度指数を含む良好な潤滑性能を有する。追加で、式(II)の新規中間体化合物が製造され得ることもまた発見された。
【0075】
式(II)の中間体化合物および続く式(I)の化合物は、一または複数の三量化反応によって形成され得る(図2を参照のこと)。
【0076】
例えば、式(II)は、式(II)の化合物を形成するために、少なくとも2段階で2つの脂肪酸が反応するような三量化反応スキームの一つによって製造され得る。2つの工程のそのようないシークエンスの一つは、ケトンおよび縮合反応を導く、ケトン化条件下で2つの脂肪酸を反応させることを含み得、ここで、ケトンのアルファ-炭素の一つが、以下の式(II)の中間体化合物を形成するために、脂肪酸と反応される。
【化6】
(ここで、ここで、n、mおよびpは互いに独立して、7以上の、例えば7~41のあいだ、例えば9~41のあいだ、または9~25のあいだの整数であり、式(II)の総計の炭素数は、26以上、例えば31以上、例えば31~65のあいだである)
【0077】
例えば、式(II)の中間体は、n、mおよびpは互いに独立して、9~41のあいだの整数であり、式(I)の総計の炭素数は、31~65のあいだであるものであり得る。
【0078】
具体的に記載される式(II)のn、mおよびpに加えて、式(II)のn、mおよびpはまた、式(I)で記載されたように選択されてもよい。
【0079】
式(II)のn、mおよびpの選択は、nが13または15であり、mおよびpが互いに独立して15または17であるものであり得る。
【0080】
【表3】
【0081】
式(II)の中間体化合物は、式(I)の化合物を与えるために、例えば二重結合水素化および水素化脱酸素化などの水素化反応の形で水素化処理に付され得る。
【0082】
式(I)または(II)の化合物を製造するために使用される脂肪酸は、例えば、C16脂肪酸、C18脂肪酸、もしくはそれらの混合物、またはC16脂肪酸、C18脂肪酸またはその両方を含む混合物であり得る。nが13であり、mおよびpの両方が15である、式(II)の化合物は、C16脂肪酸からのみ合成され得、nが13であり、mおよびpの両方が15である、式(I)の化合物は、C16脂肪酸からのみ合成され得る(表3の化合物7を参照のこと)。
【0083】
同様に、式(II)の化合物はまたは、nが15であり、mおよびpの両方が17であるものであってもよい。この化合物は、C18脂肪酸からのみ合成され得る(表3の化合物8を参照のこと)。
【0084】
式(I)の化合物は、一または複数の式(I)の化合物を異性化工程へと付すことによって得られ得る、異性化された星型の化合物を製造するために異性化され得る。1~5個のあいだのメチル分岐を含む異性化された星型の化合物を得るためのプロセスにおいて、分解を避けるまたは分解の量を低減させるために、異性化工程のあいだのより温和な条件、例えば異性化工程のあいだのより低い温度など、および/またはより酸性ではない触媒材料が適用され得、ここで、分解とは、式(I)の化合物の星型構造(S)を与える分の分解を含む。例示的な異性化触媒および例示的な異性化条件を示している実施例3および表6が参照される。
【0085】
図5および6に示されるように、脂肪酸変換が99.5%以上であることが確実である場合、少なくとも2wt%の三量体が形成され、そして図6に示されているように、脂肪酸変換が99.5%以上であることが確実である場合、5wt%より多い量の三量体が形成される。したがって、異性化工程へのフィードは、少なくとも2wt%の、好ましくは少なくとも5wt%の一または複数の式(I)の化合物を含み得る。
【0086】
異性化工程へのフィードは、少なくとも80wt%の炭化水素を含み得、これは例えば炭化水素のみから形成され得る。
【0087】
式(I)の化合物は、例えば異性化工程へより高い濃度の式(I)の化合物を提供するために分画などによって、他の化合物から分離され得る。例えば、フィードは、少なくとも80wt%の炭化水素からなり、および、少なくとも15wt%、少なくとも20wt%、少なくとも32wt%、例えば少なくとも50wt%、または少なくとも80wt%でさえある式(I)の化合物、例えばnおよびmが共に9である場合、pは9または11でないという条件のもと、および、n、mおよびpの全てが11ではないという条件のもと、n、mおよびpが互いに独立して、9~41のあいだの奇数であり、式(I)の総計の炭素数が31~65のあいだである一または複数の式(I)の化合物などを含み得る。
【0088】
異性化された星型化合物は、少なくとも一つのメチル分岐、例えば少なくとも二つ、または少なくとも三つのメチル分岐、例えば1~5個のあいだのメチル分岐を含み得る。上述されるような分解を回避するまたは低減させる異性化条件を提供することが有利である。エチルまたはそれより長い分岐もまた存在してよい。以下は、式(I)の化合物が4つのメチル分岐を生成するように異性化された場合に、異性化された星型の化合物がどのようなものであり得るかを図示したものである。分岐は典型的には、星型化合物の炭素鎖の末端に近接して位置している。
【化7】
【0089】
ベースオイル混合物
上述されるような、一または複数の式(I)の化合物および/または異性化された星型の式(I)の化合物がベースオイル混合物中に存在し得る。n、mおよびpの値は互いに独立して、7~41のあいだの整数であり得、そして、式(I)の総計の炭素数は、31~65のあいだ、または40~65のあいだ、例えば45~65のあいだ、例えば47~65のあいだであり得る。炭素数の値および範囲ならびにn、mおよびpは、式(I)に関して上述されるように選択され得る。
【0090】
例えば、ベースオイル混合物は、一または複数の式(I)の化合物を含み得、ここで、n、mおよびpは、式(I)に関して上述されているものである。例えば、互いに独立して整数、例えば9~41のあいだの奇数、そして、式(I)の総計の炭素数は、31~65のあいだであり、上述のような式(I)の異性化された星型のポリマーである。
【化8】
【0091】
ベースオイル混合物は、2より多くの、例えば4より多くの、または6より多くの式(I)の化合物および/またはそれらの異性化された星型の化合物を含み得る。このようなベースオイル混合物は、一または複数の、表2の化合物1~6を含み得る。
【0092】
たとえば、ベースオイル混合物は、一または複数の式(I)の化合物(ここで、nは13または15であり、mおよびpはそれぞれ独立して15または17である、上記の表2の化合物1~6である化合物)を含み得る。ベースオイル混合物は、式(I)の化合物(ここで、nは13または15であり、mおよびpはともに15であり、上記の表2の化合物1である化合物)を含んでいてもよく、また、ベースオイル混合物は、式(I)の化合物(ここで、nは15であり、mおよびpはともに17であり、上記の表2の化合物2である化合物)を含んでいてもよい。
【0093】
ベースオイル混合物は、表1に示されるように、APIベースストックカテゴリーのグループI~Vの一つに従った品質を有し得る。ベースオイル混合物は、90%以上の飽和物を含み、そして、80以上の粘度指数、例えば120より大きい粘度指数を有し得る。ベースオイル混合物は、5wt%以下の、例えば1wt%以下のまたは0.1wt%より低い酸素含有量を有し得る。本発明により調製されるベースオイルに後に添加される添加剤は、酸化物を含んでいてもよい。
【0094】
ベースオイル混合物は、ベースオイルストックであってもよく、それは、例えば望ましい特性を有するベースストックを提供するために、他のベースオイルストックとのブレンドに使用されてもよい。ベースオイル混合物はまた、例えばエンジンオイルなどとして直接使用され得る完成品ベースオイルであってもよい。ベースオイル混合物が完成品ベースオイルである場合、通常、添加剤パッケージが、ベースオイルストックを修飾するため、そして所望の特性を完成品ベースオイルに与えるために、ベースオイルストックへと添加される。
【0095】
ベースオイル混合物は、350℃以上、例えば380℃以上、例えば400℃以上、例えば450℃以上、例えば460℃以上、例えば470℃以上の沸点を有し得る。沸点は、730℃以下、例えば650℃以下、例えば620℃以下、例えば600℃以下、例えば550℃以下であり得る。例えば、式(I)の化合物を含むベースオイル混合物を含むために実施例4の表8において380℃~730℃の範囲の沸点、例えば380℃より高い、380℃~730℃、および、380℃~620℃または550℃の沸点範囲、特には450℃より高い、例えば470℃~730℃の沸点範囲、および460℃~620℃または550℃の沸点範囲が見いだされた。
【0096】
初留点(IBP/SP)および最終沸点(FBP/EP)は、ASTM D6352またはD2887のどちらかにしたがい、蒸留によって、または模擬蒸留(Sim Dist)によって決定され得る。沸点範囲は、初留点(IBP/SP)および最終沸点(FBP/EP)のあいだ、または初留点(IBP/SP)および95%蒸発の沸点とのあいだとして計算され得る。
【0097】
ベースオイル混合物は、GCを用いたエリア-%として測定されて、少なくとも2%以上、例えば少なくとも5%以上、例えば少なくとも10%以上の一または複数の式(I)の化合物を含み得る。
【0098】
ベースオイル製造のためのプロセス
ベースオイルは、ベースオイル製造のためのプロセスによって製造され得、これは、a)三量化生成物を提供するための、少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードを三量化する工程であって、脂肪酸三量体の混合物が得られる工程、およびb)ベースオイル生成物を提供するために三量体生成物の少なくとも一部を水素化処理する工程であって、水素化処理されたベースオイルが一または複数の以下の式(I)の化合物(ここで、n、mおよびpは互いに独立して5~41のあいだの整数であり、かつ式(I)の総計の炭素数は19~65のあいだである)を含む工程を含む。
【化9】
【0099】
ベースオイル製造のためのプロセスは、一または複数の三量化反応およびそれに続く水素化処理工程を含む、プロセスは、ベースオイル、例えば本明細書中で記載される、例えば「ベースオイル混合物」の題のもとで記載される、ベースオイル混合物を製造する。本発明のプロセスにしたがって製造されたベースオイルは、水素化処理工程の結果として、非常に少量の酸化物および飽和物を含む。酸化物および飽和物の量は本明細書中、例えば「ベースオイル混合物」の題のもとで記載される。ベースオイル製造のためのプロセスは、例えば「ベースオイル混合物」の題のもとで記載されるような、ベースオイル沸点範囲にある蒸留物を提供すること、例えば、380℃以上の沸点を有する蒸留物を提供することを含んでいてもよい。
【0100】
プロセスは、少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードを三量化する工程を含む。図2は、少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードを三量化することによって三量体を製造するための例示的なスキームを示しており、ここで、脂肪酸はパルミチン酸(C16:0)である。理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、フィードの三量化は、いくつかの可能な反応、ここで一つの例が図2に示されているが、これらを通じて起こっているかもしれないことを発見した。モデルフィードとしてパルミチン酸から出発して、ケトン生成物がケトン化反応を経て得られ得ることが発見された。さらに、三量化反応のもと、アルデヒドが処理されたフィード中に存在していることが発見された。アルデヒドおよび二量化されたケトンが、式(II)のアルドール縮合生成物、三量化された生成物を形成するように反応し得る。式(II)の中間体生成物を得るための他の機構も可能であり、例えばアルドール縮合反応に続くケトン化反応である。三量化生成物は、一または複数の、式(II)の化合物(ここで、n、mおよびpは互いに独立して、5~41のあいだの整数であり、式(II)の総計の炭素数は、25~65のあいだである、または、n、mおよびpならびに総計の炭素数は、「ベースオイル化合物」または「ベースオイル混合物」の題のもとで記載されているように選択される)。
【0101】
プロセスは、少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードを使用する。少なくとも一つの脂肪酸は、C6以上、例えば、C7以上、例えばC8以上、例えばC9以上の脂肪酸から選択され得る。それは例えば、C30以下の脂肪酸、例えばC26以下の脂肪酸またはC22以下の脂肪酸であり得、例えば一または複数の脂肪酸は、C7~C22のあいだの脂肪酸を含み得る。少なくとも一つの脂肪酸は、種々の炭素数を有する脂肪酸の混合物を含み得、そしてそれはまた、カルボン酸官能基を有する脂肪酸誘導体としての脂肪酸も含み得る。少なくとも一つの脂肪酸は、直鎖状である必要はなく、枝分かれしていてもよく、また、環構造を含んでいてもよい。少なくとも一つの脂肪酸は、そのような構造が式(I)の化合物を提供するためにより容易に反応するであろうということから、直鎖の/枝分かれのない脂肪酸の留分を含むことが好ましい。再生可能なオイルに含まれている脂肪酸の大部分は、典型的には遊離脂肪酸としてまたは脂肪酸のトリグリセリドとして、および遊離脂肪酸として、直鎖の/枝分かれのない脂肪酸を含む。再生可能なオイルは、植物由来のオイルもしくは脂肪、動物性オイルもしくは脂肪、および魚のオイルもしくは脂肪、または、廃棄油もしくは脂肪であり得る。例えば、フィードは、パーム油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ひまわり油、牛脂、ラード、ココナッツオイル、コーン油、大豆油、ジャトロファ油、トール油、粗トール油、トール油ピッチ、トール油ヘッド、トール油脂肪酸、またはこれらの種々の留分、例えばパーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)、または、使用済み料理油などの廃棄油、からなるリストのうちの一または複数から選択されてもよい。フィードは、トール油の留分を含む任意の脂肪酸を含み得、そして用語脂肪酸はまた、枝分かれ構造および環構造を含み得る、例えばトール油の産生樹脂などを含む。遊離脂肪酸含有フィードは、プロセスが2つの遊離脂肪酸のあいだの反応を含む場合特に適切である。
【0102】
不飽和の脂肪酸を含むフィードの場合、前水素化工程が、例えば不飽和脂肪酸などの任意の不飽和を飽和させるために三量化工程の前に使用されてもよい。飽和されたフィードを用いて三量化反応を行うことは、図1にしめされるように、高度に枝分かれした(HB)生成物を形成するであろう二重結合異性化反応を避ける、または少なくとも顕著に減少させ得る。
【0103】
三量化工程から得られる三量化生成物は、「ベースオイル化合物」の題のもとで記載されるように、式(II)を有する中間体生成物を含んでいてもよい。それは脂肪酸三量体の混合物中に他の脂肪酸三量体と共に存在し得る。
【0104】
三量化生成物は単離されてもよく、また、三量化反応に加えて他の反応へと付されていてもよい。
【0105】
プロセスは、ベースオイル生成物を得るために三量化生成物の少なくとも一部分を水素化処理することを含む。水素化処理は、触媒的水素化反応であり、ここで、三量化生成物は水素化処理触媒および水素と接触される。これは、水素化処理された炭化水素ベースオイル生成物を生成するための二重結合水素化および水素化脱酸素化反応を含む、多くの水素化反応をもたらす。
【0106】
水素化されたベースオイル生成物は、一または複数の、式(I)の化合物(ここで、n、mおよびpは互いに独立して5~41のあいだの整数であり、かつ式(I)の総計の炭素数は25~65のあいだである、または、n、mおよびpならびに総計の炭素数は、「ベースオイル化合物」または「ベースオイル混合物」の題のもとで記載されているように選択される)を含む。
【化10】
【0107】
プロセスは、水素化処理されたベースオイル生成物が5℃より低い流動点を含むことを特徴とし得る。プロセスは、さらに、ベースオイルが式(I)の三量化生成物を少なくとも部分的に含むことを特徴とし得る。すなわち、三量化反応に続き水素化処理反応が行われる場合、式(I)の星型化合物を含むベースオイル混合物を形成させ、これは、炭化水素混合物、例えば得られるベースオイル混合物の流動点を向上させる。流動点は、例えば、ケトン化反応のみを経て得られ得る直鎖炭化水素(L)に対して向上される。
【0108】
プロセスは、さらに、水素化処理されたベースオイル生成物を異性化することを含む工程を含んでいてもよい。ベースオイル混合物を任意的な異性化工程(この異性化工程はプロセスに含まれていても、含まれていなくてもよい)へと付す前に得られた流動点は、5度以下、例えば0℃以下、例えば-5℃以下である。異性化工程は、さらに、水素化されたベースオイル生成物の流動点を、-10℃以下、例えば、-20℃以下、例えば-30℃以下などまで、異性化工程の程度に依存して、向上させる。
【0109】
異性化された星型の化合物はまた、適切な触媒および適切な条件、例えばNiW触媒、例えばアルミナなどの担体に担持された例えばNiW、例えばアルミナなどの担体に担持されたNiW/ゼオライトなどを用いた組み合わされた水素化処理および異性化工程において得られてもよい。すなわち、プロセスは、三量化工程、それに続く、水素化処理および異性化反応の両方が起こる組み合わされた水素化処理および異性化工程を含んでいてもよい。
【0110】
プロセスは、一または複数の式(I)の化合物の炭化原子がモノカルボン酸の脂肪酸からのみ由来することを特徴とし得る。モノカルボン酸は、遊離脂肪酸またはカルボン酸基を含む脂肪酸誘導体、例えばトリグリセリドなどの例えば脂肪酸エステルなどの形である。
【0111】
プロセスはさらに、三量化が、少なくとも一つの脂肪酸の99.5%が変換されるまで行われることを特徴とし得る。例えば、プロセスはさらに、三量化が、GCを用いたエリア-%として測定されて、少なくとも99.5%である、フィードの少なくとも一つの脂肪酸の変換レベルで行われることを特徴とし得、すなわち、変換レベルが高いレベルに維持されており、例えば99.6%、99.8%または99.9%さえの少なくとも一つの脂肪酸が変換される。脂肪酸が直鎖状の炭化水素ベースオイル(L)へと二量化されそして水素化脱酸素化される従来技術のケトン化反応のあいだ、このようなケトン化工程は、より効率的であると考えられて通常約97%以下の変換率で行われる。残余の脂肪酸はn-パラフィンへと水素化処理され得、および分画されて例えばディーゼル生成物として使用され得るため、脂肪酸を完全にケトン化生成物へと変換させる必要はない。さらに、より高い変換率を得るために任意のフィードに対してケトン化パラメータが変更される必要がある。
【0112】
変換は、とりわけ温度およびフィードフロー速度(WHSV)、ならびにある程度圧力も操作することにより、例えば、連続モードの固定床リアクター中で99.5%以上のレベルとなるように操作され得る。一般的に、反応温度は反応速度を増大させる。より低いフィード速度は、滞留時間を増大させ、これは典型的にはより高い変換を与える。圧力の効果は、反応化学に依存する。例えば、反応のあいだにガス状の生成物またはフィードよりも軽い生成物が形成される場合、より低い圧力がいくつかの場合において、これらの軽質な生成物が触媒の活性点からガス相へと脱着されるために有利である。
【0113】
個々のパラメータだけ(温度、圧力、WHSV、ガスの種類またはガスの量)では、三量化された生成物の形成を顕著に促進することはできず、むしろ、三量化された生成物の形成は、適切な反応条件パラメータの組み合わせの結果である。パルミチン酸の高い変換レベルは、維持される必要があり、および、本明細書中に記載される反応条件パラメータによって達成され得る。変換レベルが99.5%より高く維持されている場合にのみ、実施例2に示されているように、三量化された生成物の形成は、予期され得ないほどに増加する。
【0114】
とりわけ、97%より高い変換率は、例えば水素の量、WHSV、温度および圧力などのケトン化パラメータの変更を必要し得る。
【0115】
本発明者らによって、少なくとも一つの脂肪酸の変換率が99.5%より高いことを確実なものとするケトン化条件を提供することが、図5および6から明らかであるように、2wt%以上の量の三量化された生成物をもたらすことが発見された。
【0116】
プロセスはさらに、三量化が、少なくとも2wt%の三量体生成物、例えば少なくとも5wt%の三量体生成物が形成されるまで行われることを特徴とし得る。例えば水素の量、WHSV、温度および圧力などのパラメータを調整することは、2wt%~20wt%のあいだの三量化された生成物の製造を可能にする。
【0117】
少なくとも一つの脂肪酸の変換、および2wt%以上の三量化された生成物の生成は、実施例に記載されるようにGCを用いてモニターされ得る。
【0118】
プロセスはさらに、
工程a)が、脂肪酸三量体の混合物を提供するために、三量化条件のもと三量化ゾーンで、少なくとも一つの脂肪酸を三量化触媒に接触させることを含み、および、工程b)が、ベースオイル生成物を提供するために、水素化処理条件のもと水素化処理ゾーンで、水素ガスの存在下、脂肪酸三量体の混合物を水素化処理触媒と接触させることを含んでいてもよい。
【0119】
プロセスの工程a)下の三量化は、2つの脂肪酸のあいだの反応からのケトンの形成、それに続く、アルファ-置換のおよびアルファ-不飽和のケトンを製造するための、ケトンと別の脂肪酸とのあいだの縮合反応を含んでいてもよい。
【0120】
三量化触媒は、Ti、Mn、Mg、Ca含有の金属酸化物触媒からなるリストのうちの一または複数から選択される触媒を含み得、好ましくは、三量化触媒は、Ti含有金属酸化物触媒である。Ti、Mn、MgおよびCaの金属酸化物は、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化カルシウムであってもよい。この第一の金属酸化物は、他の金属酸化物、例えばLi、Na、Kなどのアルカリ金属の金属酸化物などと組み合わされてもよい。三量化された生成物を製造することを望む場合、アルカリ金属の金属酸化物を組み合わされた酸化チタン酸化物触媒、例えばTiO2およびK2Oなどが好ましい。金属酸化物が金属酸化物触媒として調製されていることが有利である。これは、特定のBET表面面積、特定の平均細孔径および結晶化度を含む。例えば、BET表面積は、40m2/gより大きく、例えば40~200m2/g、例えば45~100m2/gのあいだであり得る。金属酸化物の結晶化度は、例えば、50~100%のあいだであり得る。
【0121】
三量化ゾーンは、リアクター、または、三量化触媒を保持し得る固定床リアクター中の一または複数の触媒床であり得る。
【0122】
フィードがトリグリセリドまたは他の脂肪酸エステルを含む場合、特定の量の水素化処理触媒と組み合わされた三量化触媒がエステル結合の開裂を助け得るが、同時に、それらが三量化反応に付され得るまでに脂肪酸を完全にn-パラフィンへと変換しないことが発見された。三量化触媒は、当該技術分野における、活性化されていても、されていなくてもよい、水素化処理触媒、典型的には例えばAl23などの担体上に担持されている、例えばモリブデンまたはウォルフラム触媒と混合されてもよい。活性化された水素化処理触媒は、例えば、NiMo、CoMo、NiW、CoW、NiCoMoなどである。水素化処理触媒は、触媒の総量の50wt%まで、例えば25wt%未満などの量で存在し得る。表8から明らかなように、80%の二酸化チタン触媒および20%のNiMOを含むフィードは、トリグリセリドを含む、30%のパーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)および70%の精製パーム油のフィードを効果的に変換した。
【0123】
三量化反応条件は、300~400℃の範囲である温度、5~100bargの範囲である圧力、0.1~5hr-1の範囲であるWHSVを含み、三量化触媒は、金属酸化物触媒を含む。これらのパラメータをこれらの範囲内に調整することは、2wt%~20wt%のあいだの三量化された生成物の製造を可能にする。
【0124】
例えば、温度範囲は340℃以上であり得る。例えば、それは300℃~370℃の間、例えば340℃~365℃のあいだ、345℃~365℃のあいだ、または345℃~355℃のあいだであってもよい。
【0125】
例えば、圧力範囲は、5~100barg、例えば5~30bargであり得る。WHSVは、0.1~5hr-1の範囲、例えば0.5~2.5hr-1のあいだ、例えば0.1~1.5hr-1のあいだであってもよい。
【0126】
三量化ゾーンにおいて、ガスフィードが存在していてもよく、ここで、ガスは、窒素、二酸化炭素、水蒸気、メタンおよび/または水素からなる、好ましくは水素からなるリストから選択され得る。窒素ガスの添加はガスが添加されない場合と比較して脂肪酸含有フィードの変換を増大させることが発見された。窒素ガスを水素ガスと置き換えることがさらに脂肪酸含有フィードの変換をさらに増大させること、および同時に三量体形成を増大させることも発見された(実施例2を参照のこと)。
【0127】
例えば、連続的に操作される固定触媒床チューブリアクター内での変換レベルは、例えばパルミチン酸などのC16脂肪酸含有フィードをリアクター中に供給しながら、340~360℃の反応温度で、8~15bargの圧力で、0.5~1.2hr-1のWHSVで、インレットガスフィードとして4~6 l/hの量である水素を選択することによって、99.5より高く、例えば約99.7%に維持され得る。得られる三量化された生成物の量は、2wt%より多く、好ましくは、4wt%より多い。
【0128】
脂肪酸三量体の混合物は、水素化処理触媒と接触される。水素化処理触媒、典型的な当該技術分野における水素化処理触媒であり、例えば、担持体に担持された水素化金属を含んでいてもよく、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの食い合わせから選択される触媒であり得る。水素化処理工程は、ベースオイル生成物を提供するために水素化処理条件のもと行われる。水素化処理工程は、例えば、100~500℃の温度で、および、10~150bargの圧力で行われ得る。水素化条件の例は、実施例3および表6から明らかであり得る。水素化処理工程は、例えば、250~350℃の温度、30~80bargの圧力、0.1~2hr-1のWHSV、500~1500nl/lのH2/オイル比で行われ得る。さらにプロセスにおいて、少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードは、炭化水素流を用いて希釈されてもよい。希釈は、三量化された生成物が製造された後、水素化処理工程の前に行われてもよい。希釈は、30wt%の炭化水素および70wt%の三量化された生成物、例えば、30~85wt%の炭化水素および15~70wt%の三量化された生成物などであってもよい。希釈に用いられる炭化水素流は、部分的にまたは全て生成物リサイクルであってもよい。
【0129】
炭化水素流は、プロセスのリサイクル生成物であってもよく、例えば、少なくとも一つ脂肪酸を含むフィードのプロセスのリサイクルされた生成物に対する比は、1:9~9:1のあいだであり得る。生成物リサイクルは、リサイクルされるまえに分画されていてもよく、例えば、リサイクルされるそれは、380℃より高い沸点の留分、または、本明細書中で記載されるベースオイル混合物の他の任意の留分であり得る。本発明のプロセスによって得られるベースオイル混合物中の式(I)の化合物の量は、(新鮮な)フィードの希釈のために使用される炭化水素流として生成物リサイクルが使用される場合に、増加される。例えば、生成物リサイクルは、ベースオイル混合物中の式(I)の化合物の量を、5wt%以上まで、例えば15wt%まで、例えば、32wt%以上まで増加させ得る。三量化ゾーンが2以上の触媒床を含む場合、生成物リサイクルは、どちらかの触媒床へとリサイクルされ得、例えば、生成物リサイクルは、三量化ゾーンの第1の触媒床へと、三量化ゾーンの最後の触媒床へと、または、三量化ゾーンの中間床へと、リサイクルされ得る。
【0130】
プロセスから取り出された任意の生成物は、上述されたような方法でリサイクルされ得、例えば、取り出された生成物は、三量化ゾーンの第1の触媒床へと、三量化ゾーンの最後の触媒床へと、または、三量化ゾーンの中間床へと、リサイクルされ得る。例えば、少なくとも一つの脂肪酸を含むフィードの、プロセスから取り出された任意の生成物に対する比は、1:9~9:1のあいだであり得る。例えば、生成物は、三量化ゾーンから、または、水素化処理ゾーンから、取り出され得る。これらのゾーンが触媒床を備えている場合、生成物は、三第1の触媒床の後、最後の触媒床の後、または、これらのゾーンの中間床の後に取り出され得る。
【0131】
水素化処理触媒は、典型的には例えばAl23などの担体上に担持されている、例えばモリブデンまたはウォルフラム触媒であってもよい。触媒は活性化されていても、活性化されていなくてもよい。活性化された水素化処理触媒は、例えば、NiMo、CoMo、NiW、CoW、NiCoMoなどである。例えばNiWなどのウォルフラムベースの触媒が使用される場合、それは異性化反応をもまた触媒することができるため、さらに優位である。水素化処理は、固定床リアクター中の触媒であり得る、水素化処理ゾーン内で水素ガスの存在下で行われる。
【0132】
プロセスはさらに、三量化された生成物を異性化する工程を含むまたは含まないことを特徴とし得る。
【0133】
水素化処理工程の生成物は、水素および異性化触媒の存在下、異性化工程へと付され得る。水素化処理工程と異性化工程の両方は、同じリアクター中で、および、同じリアクター床でさえも、行われ得る。
【0134】
水素化異性化反応は、任意には担体に担持されていてもよい、例えば、グループVIII金属、好ましくはPtおよびモレキュラーシーブを含む触媒などの異性化触媒の存在下で行われてもよい。担体は例えば、シリカ、アルミナ、クレイ、酸化チタン、酸化ボロン、ジルコニアから選択され得、これらは単独でまたは混合物として使用されてもよく、好ましくはこれらはシリカおよび/またはアルミナであり得る。モレキュラーシーブは、例えば、ZSMなどのゼオライト、または、例えばSAPOなどの、例えばSAPO-11、MeAPO、MeAPSO(ここで、Meは例えばFe、Mg、Mn、Co、またはZnである)などのアルミノリン酸モレキュラーシーブ、または他のエレメント(EI)モレキュラーシーブEIAPOまたはEIAPSO、例えば、シリカアルミナ、Yゼオライト、SAPO-11、SAPO-41、ZSM-22、フェリエライト、ZSM-23、ZSM-48、ZBM-30、IZM-1、COK-7などであり得る。適切なモレキュラーシーブおよび水素化異性化適用に適したモレキュラーシーブの特性は、当該技術分野における当業者にとって公知であり、そして、例えば、Handbook of heterogeneous catalysis from VCH Verlagsgesellschaft mbH with editiors Ertl, Knoezinger and Weitkamp, volume 4, pages 2036-2037などの文献に記載されており、これは参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0135】
異性化触媒は、PtまたはPdなどの貴金属、あるいは、非貴金属、または例えばモレキュラーシーブを組み合わされたNiWなどの金属の組み合わせを含む二元機能触媒であってもよい。モレキュラーシーブは、中程度(10環)または大きな細孔(12環)の大きさを有するゼオライト、例えばSAPOモレキュラーシーブ、ZSM-5、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ゼオライトY、ゼオライトベータなどであり得る。異性化触媒は、Pt含有の市販の触媒などの貴金属二元機能触媒、例えば、Ptおよび中程度および/または大きな細孔サイズのモレキュラーシーブまたはゼオライト、Pdおよび中程度および/または大きな細孔サイズのモレキュラーシーブまたはゼオライトであり得る。例えば、担体上に担持されている、Pt-SAPOもしくはPt-ZSM-触媒、または、例えば上述のモレキュラーシーブと一緒のまたは単独でのNiWなどの非貴金属触媒など。例えば、NiW/Al23またはNiW/ゼオライト/Al23など。水素化処理および異性化の工程は水素化処理および異性化工程の両方において例えばNiW触媒などの同じ触媒床内で行われ得る。異性化工程は、例えば、200~400℃の温度で、および、20~150bargの圧力で行われ得る。本明細書中で記載されているように、星型化合物の分解、とりわけ、星型の部分を作り出している側鎖を完全に除去してしまうであろうような星型化合物の分解を回避する、またはその量を減少させるために、異性化反応の程度を低減することが望ましい。分解副反応は、水素化異性化反応においてよく知られているものである。当該技術分野における当業者であれば、異性化を得るためおよび望ましくない分解を低減するおよび/または回避するために、一または複数の反応条件(例えば温度、圧力、滞留時間およびオイルに対する水素比など)を調整することによって異性化反応の程度をどのように変更するかは周知である。例えば、異性化工程は、水素および異性化触媒、例えば貴金属または非貴金属異性化触媒などの存在下で、250~400℃の範囲の温度で、10~60bargの範囲の圧力で。および、0.1~5h-1の範囲のWHSVで、および、600~1200nl/lのH2/オイル比で、行われ得る。異性化触媒は、例えばAl23、TiO2、SiO2、またはこれらの組み合わせなどの担体上に担持されていてもよい。
【0136】
プロセスはさらに、三量化生成物の単離を含んでいてもよい。例えば、三量化生成物は、二量化生成物から分離され、非常に少量の二量化生成物しか含まない留分、例えば二量化生成物が5wt%未満、例えば1wt%未満である留分中に単離され得る。当該技術分野における様々な技術、例えば電解イオン化質量分析などを用いて、任意の特定の留分が二量化されたまたは三量化された生成物を含んでいるか否かを分析することが可能である(実施例3ならびに図7および8を参照のこと)。例えば、三量化された生成物は、380℃より高い、例えば450℃より高い、例えば460℃より高い、例えば470℃より高い、例えば480℃より高い、または例えば500℃より高い、例えば、「ベースオイル混合物」の題のもとで記載される範囲などの沸点を有する留分中に単離され得る。
【0137】
本明細書中で記載されるプロセスにより、ベースオイル組成物が得られる。
【0138】
本明細書中で記載されるベースオイル組成物は、ベースオイルの潤滑性能を向上させるため、例えば粘度指数を向上させるためなどに使用され得る。プロセスによる三量化反応および水素処理反応からの450℃より高い沸点留分は、パルミチン酸の三量化から得られる三量化された生成物を含む。それは、380~450℃からのベースオイル留分であって155の粘度指数を有する留分と比較して、164という高い粘度指数を有している。図9に示されているように、380~450℃からのベースオイル留分に、10%のみの三量化された生成物を混合することにより、粘度指数が160まで上昇する。これは、三量体を含む留分が粘度指数に与える効果が線形ではないことを示している。
【0139】
フィードの変換率における種々の反応条件および結果として得られる式(I)の星型化合物の効果を示しているさらなる具体的な例が実施例から理解され得る。
【0140】
本発明の実施形態が記載されるとき、全ての可能な実施例の組み合わせおよび順列が明示されているわけではない。それどころか、特定の方法が互いに異なる従属クレームに列挙されている、または異なる実施形態において記載されているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利には使用されないということを示しているわけではない。本発明は、記載されている実施形態の全ての可能な組み合わせおよび順列を想定している。
【0141】
本明細書中において用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、どのような場合においても、発明者らによって、それぞれ、「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」および「からなる(consists of)」の用語と任意には置換可能であることが意図されている。
【実施例0142】
使用された触媒リアクターは、固定触媒床を備えた連続的なフローのチューブリアクターであった。リアクターシステムは、それらの重さが秤量され得る2つの加熱された加圧(1~2barg)のフィードチャンバーを備える。これらのフィードチャンバーは、2つのフィードの同時のフィーディングのためまたは別々のフィーディングのために使用され得る。H2、N2、CH4、水蒸気またはCO2などの加圧ガスをリアクターへと導くことができる。リアクターの加熱は、3つの電気的加熱ブロックを用いることで可能とされている。リアクターの加熱精度は1℃である。触媒の平均温度は温度点を変えて測定することによって決定される。圧力は、自動圧力レギュレーターによって制御される。ガス/流体分離は、大気圧で加熱された生成物チャンバー中で行われる。
【0143】
GC測定パラメータ(面積-%)および装置の記載
脂肪酸の変換(面積-%)は、ガスクロマトグラフィーによるGC分析(Agilent Technology 7890)によって測定される。使用された検出器は、水素炎イオン化型検出器(FID)であった。GCカラムは、以下の寸法:10m×250μm×0.12μmを有するCP/SIL5 カラムであった。クロマトグラムのピークは、少なくとも0.01面積-%であり、多くの場合0.001面積-%でさえある。炭化水素は、典型的にはwt-%値に近い、面積-%値を用いて分析される。
【0144】
脂肪酸(X)の変換は、生成物(脂肪酸ピーク面積-%)およびフィード(脂肪酸ピーク面積-%)のGC分析から算出され得る。変換は、どのくらいの%の出発物質、すなわちフィードが他の物、典型的には生成物分子へと変換されるかをしめす測定値である。
X=[フィード中の脂肪酸(面積-%)-生成物中の脂肪酸(面積-%)]/[フィード中の脂肪酸(面積-%)]
【0145】
実施例1 パルミチン酸を用いた三量体を含むベースオイルの製造
20gの触媒材料(K2O/TiO2;BET 50~54m2/g、平均細孔径 100~200Å、結晶化度 50~100%)でロードされた触媒床を含む、連続モードで操作される固定床リアクターが三量化反応のために使用され、ここで、フィードの温度、希釈および変換率は変えられた。
【0146】
これらの実験は、三量化合物の形成における希釈剤の影響を確認するために行われた。初めに、希釈が三量体の形成を促進することが結論づけられたが、99.5%をはるかに下回って、87.1%まで低下した際、三量体の形成は2%未満である典型的なレベルであったことが観察された。
【0147】
表4(下記)から、パルミチン酸の変換が99.5面積-%(GCにより測定されたように)より高く維持された場合に、式(II)の三量化合物の量が8~15面積-%であったことが観察された(表4、カラム4A、4Bおよび4Cを参照のこと)。
【0148】
カラム4Aを4Bと比較すると、特定の変換条件下での希釈が三量体生成物の生成を9.9%から8.2%へと低下させたことがわかる。
【0149】
カラム4Bを4Cと比較すると、より低い温度およびより低いWHSVがまた、99.5%の脂肪酸変換をもたらし、そして、三量体生成物の収率を8.2%から14.7%へと増加させたことがわかった。
【0150】
カラム4Cを4Dと比較すると、より低い温度はまた、十分な変換および2.0%より多い三量化された生成物を得るため、より低いWHSVを必要としたことがわかった。
【0151】
47のピークを示す三量化されたパルミチン酸のGC蒸留が図3に示されている。
【0152】
【表4】
【0153】
フィードはパルミチン酸(C16:0 脂肪酸)である。希釈は、動物性脂肪の水素化脱酸素化から得られるC15~C18のn-パラフィンを用いて行われる。水相が有機相から分離され、そして両方の相が別々に秤量される。気相は、フィード重量から水相および有機相の重量を引いたものとして算出される。有機相の組成はGCを用いて測定され、そして、有機相の面積-%の合計が有機相の重量パーセントに正規化される。
【0154】
実施例2 三量化生成物収率における様々なパラメータの効果
パルミチン酸フィードを備える「リアクター」の題のもとで記載される固定床リアクターが、三量化生成物収率における効果を評価するために、様々なパラメータに付された。表5において、有機相の物質収支および組成は、実施例1で記載されたように測定および算出される。
【0155】
カラム5Aを5Bと比較すると、より低いWHSV(0.5対1.0h-1)は、パルミチン酸変換を99.9%まで上昇し、そして、同時に。三量化生成物の形成を2.2%まで増加させることがわかる。
【0156】
カラム5Aを5cと比較すると、パルミチン酸の変換は、ガス添加がない場合と比較して窒素ガス添加によって顕著に増加されることがわかる。88%の変換で、三量体の形成は、ある程度のみしか影響されなくなることがわかる。
【0157】
カラム5Cを5Dと比較すると、25bargから10bargへの圧力低下は、パルミチン酸の変換を顕著に増加させたことがわかる。しかしながら、三量体生成物の形成は、97.5%の変換率で影響を及ぼされない。
【0158】
カラム5Dを5Eと比較すると、窒素ガスの水素ガスへの変化は、パルミチン酸の変換を97.5%から99.9%へと増加させ、および、三量体の形成に顕著な影響を与えた(0.5%から5.6%へ)ことがわかる。
【0159】
カラム5Eを5Fと比較すると、WHSVが1.0-1から2.0-1へと増加された場合、変換は顕著に低下し、そしてまた、三量体の形成は1.2%のレベルにまで戻ってしまったことがわかる。
【0160】
カラム5Fを5Gと比較すると、圧力がその後10bargから2bargへと再び低下された場合、変換は顕著に増加したことがわかる。しかしながら、三量体の形成はわずかな程度のみしか影響されなかった。
【0161】
カラム5Dを5Hと比較すると、360℃から350℃への温度低下は、変換を97.5%から74.6%へと顕著に低下させたことがわかる。
【0162】
同時に、三量化された生成物の形成は、0.5%から0.9%へとむしろ顕著に(80%の増加)増加されたが、三量化された生成物は1%未満にとどまっていた。
【0163】
カラム5Dを5Iと比較すると、窒素ガスからCO2への変化は、パルミチン酸の変換をある程度(97.5%から99.4%へ)増加させ、および、三量化された生成物の形成を顕著に(0.5%から1.6%へ)増加させたことがわかる。しかしながら、三量化された生成物の¥は、2.0%未満にとどまっていた。
【0164】
カラム5Eを5Iと比較すると、水素ガスのCO2への変化は、パルミチン酸の変換をある程度(99.9%から99.4%へ)増加させたが、三量体の形成を堅調に低下させた(5.6%から1.6%へ)ことがわかる。
【0165】
カラム5J、5Kを5Lと比較すると、添加されるガスの量を5.0 l/hから2.5 l/hへとおよび7.5 l/hへと変化させることは、三量化された生成物の形成に顕著には影響しないが、変化率には影響を与え、ここで、変化率は、添加されるガスの量が低下するにしたがって低下することがわかる。
【0166】
カラム5Lを5Mと比較すると、10bargから18bargへの圧力変化は、パルミチン酸の変換をある程度減少させたが。三量体の形成はそれほどには変化させなかったことがわかる。
【0167】
カラム5Mを5Nと比較すると、1.1h-1から0.6h-1へのWHSVの低下は、変換をある程度(96.1%から99.7%へと)増加させ、そして同時に、三量体の形成を0.7%から9.1%へと顕著に増加させたことがわかる。
【0168】
表5の結果から、個々のパラメータ(温度、圧力、WHSV、ガスの種類またはガスの量)単独では、三量体の形成を顕著に促進することはできず、むしろ、これは適切な反応条件パラメータの組み合わせの結果である。パルミチン酸の高い変換レベルは、維持される必要があり、および、これらの反応条件パラメータによって達成され得る。変換レベルが99.5%より高く維持されている場合にのみ、図5および6に示されているように、三量化された生成物の形成は、予期され得ないほどに増加する。
【0169】
【表5】

【0170】
実施例3 再生可能なベースオイル(RBO)の製造
再生可能なベースオイルは、表6に示されている条件下、3つの別個のユニット中の三量化、水素化処理、および異性化によって得られた。フィードはパルミチン酸であり、フィードの三量化ユニットにおける変換は100%であった。希釈は、C15~C18のn-パラフィンを用いて行われた。水素化処理の後、異性化工程に先立って、希釈剤が蒸留によって除去された。
【0171】
【表6】
【0172】
種々の留分(380~450℃留分および450℃より高い温度の留分)の収率が、最初の脂肪酸のフィード(希釈されていないフィード)に基づいて示されている。異性化工程の苛酷さの程度に依存して、流動点が、添加剤未添加のベースオイル生成物(ベースオイルストック)として優れた流動点である例えば-18℃または-39℃へと変化され得ることがわかる。また、異性化条件は、星型化合物を含む留分(450℃より高い温度の留分)の収率を有害に低下させないように選択され得ることがわかる。
【0173】
電解イオン化質量分析(FIMS)から、450℃より高い温度の留分は30wt%より多い三量体生成物を含んでおり(表7および図7を参照のこと)、そして、380~450℃の留分はC31二量体生成物を含んでいる(図8を参照のこと)ことがわかる。
【0174】
【表7】
【0175】
実施例4 最終生成物の特性
三量体含有ベースオイル留分の種々の特性が測定され、そして、以下の表8に示されている。三量化された生成物を含むカラム(450℃より高い温度)から、パルミチン酸がフィードとして使用される場合、粘度指数(VI)が164であることがわかり、これはグループVIIIベースオイルのための最低のVIである120よりも顕著により高い値である。
【0176】
組み合わされた二量体および三量体留分(380℃より高い=380~450℃+450℃より高い温度)は、160という非常に高い粘度指数を維持しており、および同時に、-18℃という良好な流動点を維持している。上の表6中で記載されているより厳しい異性化条件は、-18℃の流動点を向上しつつなお147という非常に高い粘度指数を有する組み合わされた二量体および三量体留分(380℃より高い)を結果としてもたらした。
【0177】
312℃で異性化されたパルミチン酸に関する表8(下記)において、450℃より高い温度の留分は、少量の二量体生成物の不純物とともに約90%の三量化された生成物を含む。380~450℃の留分は、三量化された生成物は一切含んでいない。380℃より高い温度の留分は、推定で10%の三量化された生成物を含む(表6を参照のこと)。図9で、推定される三量化された生成物量をパーセントでx軸に、および、粘度指数をy軸にプロットすると、三量化された生成物は、10%のみの三量化された生成物の添加によって粘度指数を155から160へと向上させること、そして、約90%の三量化された生成物(450℃より高い温度の留分)で粘度指数は164であることがわかる。したがって、三量化された生成物を含まないベースストックに三量化された生成物を添加した場合、線形相関はなく、そして、最小で10%の三量化された生成物が粘度指数における顕著な増加をもたらし得る。
【0178】
【表8】
【0179】
密度は、EN ISO 12185を用いて、曇り点はASTM D7689を用いて、流動点はASTM D7346を用いて、CCSはASTM D5293を用いて、ノバク指数はCECL-40-93-Bを用いて、および、SimDist AC750はEN 15199-2を用いて測定された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】