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特開2022-184987遺伝子操作された薬物耐性T細胞およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184987
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】遺伝子操作された薬物耐性T細胞およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20221206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
A61P35/00
A61P25/00 101
A61K45/00 101
A61K31/4188
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150822
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2018531308の分割
【原出願日】2016-09-06
(31)【優先権主張番号】62/214,071
(32)【優先日】2015-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516105903
【氏名又は名称】ザ ユーエイビー リサーチ ファウンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】503124447
【氏名又は名称】エモリー ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】518072829
【氏名又は名称】チルドレンズ ヘルスケア オブ アトランタ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ラム ローレンス エス.
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー エイチ. トレント
(72)【発明者】
【氏名】ガレスピー ジー. ヤンシー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】少なくともキメラ抗原受容体と生存因子とを発現するように遺伝子操作された新規な細胞組成物、およびそのような細胞組成物の使用方法を提供する。
【解決手段】対象に、少なくとも、腫瘍抗原に向けられたキメラ抗原受容体(CAR)と、ストレス誘導抗原に対する受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境において該CARを発現する免疫系細胞を生存できるようにする生存因子と、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与し、がんに罹患している対象を処置する方法である。
【選択図】図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 対象に、少なくとも、腫瘍抗原に向けられたキメラ抗原受容体(CAR)と、ストレス誘導抗原に対する受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境において該CARを発現する免疫系細胞を生存できるようにする生存因子と、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および
b. 対象への細胞組成物の投与前に、対象への細胞組成物の投与後に、対象への細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、対象に付加的治療処置を施す段階
を含む、免疫療法処置および付加的治療処置を用いて、がんに罹患している対象を処置する方法。
【請求項2】
対象への細胞組成物の少なくとも1回の追加の投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
付加的治療処置が、対象への細胞組成物の少なくとも1回の追加投与を施す前に、対象への細胞組成物の少なくとも1回の追加投与を施した後に、対象への細胞組成物の少なくとも1回の追加投与を施すのと同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、任意に施される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
細胞組成物をX日に対象に投与し、かつ付加的治療処置をX日の12~72時間前、X日の12~72時間後、またはX日の12~72時間前と後の両方に対象に施す、請求項1記載の方法。
【請求項5】
細胞組成物をX日に対象に投与し、かつ付加的治療処置をX日の12~72時間前、X日の12~72時間後、またはX日の12~72時間前と後の両方に対象に施し、続いて、細胞組成物をY日に対象に追加投与し、任意で、付加的治療処置をY日の12~72時間前、Y日の12~72時間後、またはY日の12~72時間前と後の両方に対象に施す、請求項1記載の方法。
【請求項6】
がんが、脳腫瘍、乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、上皮癌、頭頸部癌、皮膚癌、尿生殖路の癌、卵巣癌、子宮体癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、小腸の癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、胆管の癌、食道癌、唾液腺の癌、甲状腺癌、ならびに血液悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
がんが、松果体腫瘍、下垂体腫瘍、PNET、シュワン細胞腫、リンパ腫、髄芽腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、神経線維腫、神経細胞系および混合神経細胞膠細胞系の腫瘍、乏突起星細胞腫、乏突起膠腫、星細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍(ATRT)、軟骨肉腫、脈絡叢の腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、胚細胞腫瘍、神経芽腫、膠芽腫および神経膠腫からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
がんが付加的治療処置に感受性である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
がんが付加的治療処置に耐性である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
腫瘍抗原が、EphA2、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD22、CD19、CD20、ROR1、カッパまたは軽鎖、癌胎児性抗原、α-フェトプロテイン、CA-125、グリピカン-3、上皮性腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、EGP2、EGP40、EPCAM、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、PAP、FAR、FBP、胎児AchR、葉酸受容体α、変異p53、変異ras、HER2、ERBB2、HER3、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、5T4、8H9、GD2、CD123、CD23、CD33、CD30、CD38、CD56、c-Met、fap、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、IL-13Rα、CSPG4、Lewis-Y、MCSP、Mucl、Mucl6、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSC1、PSMA、EGFR、Sp17、SURVIVIN、TAG72、TEM1、TEM8、EGFRvIII、およびVEGFR2からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
がんが膠芽腫であり、腫瘍抗原がNKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-B、EGFRvIIIおよびIL13Rαからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
がんが膠芽腫であり、腫瘍抗原がEGFRvIIIまたはIL13Rαである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
がんが神経芽腫であり、腫瘍抗原がNKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-BおよびGD2からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
がんが神経芽腫であり、腫瘍抗原がGD2である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
細胞組成物が、γδT細胞と、αβT細胞およびNK細胞の少なくとも一方とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
細胞組成物が、γδT細胞と、任意でαβT細胞およびNK細胞とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
細胞組成物が、60%以上のγδT細胞と、5%以下のαβT細胞と、25%以下のNK細胞とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
ストレス誘導抗原に対する受容体がNKG2D受容体である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
付加的治療処置が、ヌクレオシドアナログ、アルキル化剤、抗代謝剤、抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、分化誘導剤、またはホルモン療法剤による処置であり、生存因子が、付加的治療処置に対する耐性を与える、請求項1記載の方法。
【請求項20】
生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ、多剤耐性タンパク質1、または5'ヌクレオチダーゼIIである、請求項1記載の方法。
【請求項21】
付加的治療処置がアルキル化剤による処置であり、生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項22】
付加的治療処置がテモゾロミドによる処置であり、生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項23】
γδT細胞が、腫瘍抗原に向けられたCARと生存因子とを発現するように遺伝子操作されており、ストレス誘導抗原に対する受容体が、免疫系細胞上に天然に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項24】
γδT細胞が、腫瘍抗原に向けられたCARと、生存因子と、ストレス誘導抗原に対する受容体とを発現するように遺伝子操作されている、請求項1記載の方法。
【請求項25】
γδT細胞が自殺遺伝子をさらに発現する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
付加的治療処置が、以下の利点:
a. ストレス誘導抗原の誘導による細胞組成物の有効性の増加;
b. 細胞組成物の恒常的再構成の増加;
c. 細胞組成物のインビボ増殖の増加;および
d. 細胞組成物の持続性の増加
の少なくとも1つを提供する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
付加的治療処置が、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-AおよびMIC-Bからなる群より選択されるストレス誘導抗原の発現を増加させる、請求項1記載の方法。
【請求項28】
γδT細胞が対象から得られ、任意にエクスビボで増殖される、請求項1記載の方法。
【請求項29】
少なくとも、腫瘍抗原に向けられたキメラ抗原受容体(CAR)と、付加的治療処置によりもたらされる処置環境において免疫系細胞を生存できるようにする生存因子とを発現し、さらにストレス誘導抗原に対する受容体を発現する、γδT細胞を含む細胞組成物。
【請求項30】
がんが、脳腫瘍、乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、上皮癌、頭頸部癌、皮膚癌、尿生殖路の癌、卵巣癌、子宮体癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、小腸の癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、胆管の癌、食道癌、唾液腺の癌、甲状腺癌、ならびに血液悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群からなる群より選択される、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項31】
がんが、松果体腫瘍、下垂体腫瘍、PNET、シュワン細胞腫、リンパ腫、髄芽腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、神経線維腫、神経細胞系および混合神経細胞膠細胞系の腫瘍、乏突起星細胞腫、乏突起膠腫、星細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍(ATRT)、軟骨肉腫、脈絡叢の腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、胚細胞腫瘍、神経芽腫、膠芽腫および神経膠腫からなる群より選択される、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項32】
がんが付加的治療処置に感受性である、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項33】
腫瘍抗原が、EphA2、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD22、CD19、CD20、ROR1、カッパまたは軽鎖、癌胎児性抗原、α-フェトプロテイン、CA-125、グリピカン-3、上皮性腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、EGP2、EGP40、EPCAM、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、PAP、FAR、FBP、胎児AchR、葉酸受容体α、変異p53、変異ras、HER2、ERBB2、HER3、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、5T4、8H9、GD2、CD123、CD23、CD33、CD30、CD38、CD56、c-Met、fap、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、IL-13Rα、CSPG4、Lewis-Y、MCSP、Mucl、Mucl6、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSC1、PSMA、EGFR、Sp17、SURVIVIN、TAG72、TEM1、TEM8、EGFRvIII、およびVEGFR2からなる群より選択される、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項34】
がんが膠芽腫であり、腫瘍抗原がNKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-B、EGFRvIIIおよびIL13Rαからなる群より選択される、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項35】
がんが膠芽腫であり、腫瘍抗原がEGFRvIIIまたはIL13Rαである、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項36】
がんが神経芽腫であり、腫瘍抗原がNKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-BおよびGD2からなる群より選択される、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項37】
がんが神経芽腫であり、腫瘍抗原がGD2である、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項38】
γδT細胞と、αβT細胞およびNK細胞の少なくとも一方とを含む、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項39】
γδT細胞と、任意でαβT細胞およびNK細胞とを含む、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項40】
60%以上のγδT細胞と、5%以下のαβT細胞と、25%以下のNK細胞とを含む、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項41】
γδT細胞が、CARおよび生存因子を発現するように遺伝子操作されており、任意で、ストレス誘導抗原に対する受容体をさらに発現するように遺伝子操作されている、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項42】
ストレス誘導抗原に対する受容体がNKG2D受容体である、請求項41記載の細胞組成物。
【請求項43】
γδT細胞が、ストレス誘導抗原に対する受容体を天然に発現する、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項44】
ストレス誘導抗原に対する受容体がNKG2D受容体である、請求項43記載の細胞組成物。
【請求項45】
付加的治療処置が、ヌクレオシドアナログ、アルキル化剤、抗代謝剤、抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、分化誘導剤、またはホルモン療法剤による処置であり、生存因子が付加的治療処置に対する耐性を与える、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項46】
生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ、多剤耐性タンパク質1、または5'ヌクレオチダーゼIIである、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項47】
付加的治療処置がアルキル化剤による処置であり、生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼである、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項48】
付加的治療処置がテモゾロミドによる処置であり、生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼである、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項49】
γδT細胞が、自殺遺伝子をさらに発現するように遺伝子操作されている、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項50】
付加的治療処置がストレス誘導抗原の発現を増加させる、請求項29記載の細胞組成物。
【請求項51】
付加的治療処置が、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-AおよびMIC-Bからなる群より選択されるストレス誘導抗原の発現を増加させる、請求項29記載の細胞組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
がん治療のための従来の治療戦略は、多くの点で有望ではあるものの、依然として改善が必要である。例えば、多大な努力にもかかわらず、多形神経膠芽腫(GBM)などの高悪性度の原発性脳腫瘍の治療法は、生存期間の中央値を、2年を超えて大幅にかつ一貫して延長することができていない。
【0002】
検討されている1つの研究分野は免疫療法である。こうした治療は、がんなどの疾患と闘うために患者の免疫系の力を利用する。特に、養子細胞移入が研究されている。養子細胞移入の多くの形態では、患者の免疫細胞が採取され、増殖され、より効率的な応答のために改変される。これに関連して、キメラ抗原受容体(CAR)が使用されてきた。CARは、遺伝子操作された受容体であって、任意のかつ明確な特異性を免疫エフェクター細胞にグラフトする受容体である。典型的には、CARは、モノクローナル抗体の特異性をT細胞にグラフトするために使用される。このアプローチでは、T細胞が患者または適切なドナーから採取されて、特定の形態のがんに特異的な受容体を発現するように改変される。その後、がん細胞を認識して死滅させることができるT細胞は、患者に再導入される。このアプローチの初期の臨床研究は有効性を示している。
【0003】
しかし、養子細胞移入におけるCARの使用には、依然としていくつかの難点がある。本開示は、腫瘍抗原に特異的なCARと、患者に施される可能性がある付加的治療処置(例えば、化学療法処置レジメン)に対する耐性を与える生存因子とを発現するように遺伝子操作された、新しい免疫系細胞組成物を提供する。この細胞組成物は、自殺遺伝子および追加の要素をさらに含み得る。疾患の治療のために該細胞組成物を使用する方法も提供される。このように、本開示は、免疫療法を用いた治療の諸問題への新たなかつ必要な解決策を提供する。特定の態様において、提供される細胞組成物はγδT細胞である。
【発明の概要】
【0004】
[本発明1001]
a. 対象に、少なくとも、腫瘍抗原に向けられたキメラ抗原受容体(CAR)と、ストレス誘導抗原に対する受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境において該CARを発現する免疫系細胞を生存できるようにする生存因子と、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および
b. 対象への細胞組成物の投与前に、対象への細胞組成物の投与後に、対象への細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、対象に付加的治療処置を施す段階
を含む、免疫療法処置および付加的治療処置を用いて、がんに罹患している対象を処置する方法。
[本発明1002]
対象への細胞組成物の少なくとも1回の追加の投与をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
付加的治療処置が、対象への細胞組成物の少なくとも1回の追加投与を施す前に、対象への細胞組成物の少なくとも1回の追加投与を施した後に、対象への細胞組成物の少なくとも1回の追加投与を施すのと同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、任意に施される、本発明1001の方法。
[本発明1004]
細胞組成物をX日に対象に投与し、かつ付加的治療処置をX日の12~72時間前、X日の12~72時間後、またはX日の12~72時間前と後の両方に対象に施す、本発明1001の方法。
[本発明1005]
細胞組成物をX日に対象に投与し、かつ付加的治療処置をX日の12~72時間前、X日の12~72時間後、またはX日の12~72時間前と後の両方に対象に施し、続いて、細胞組成物をY日に対象に追加投与し、任意で、付加的治療処置をY日の12~72時間前、Y日の12~72時間後、またはY日の12~72時間前と後の両方に対象に施す、本発明1001の方法。
[本発明1006]
がんが、脳腫瘍、乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、上皮癌、頭頸部癌、皮膚癌、尿生殖路の癌、卵巣癌、子宮体癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、小腸の癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、胆管の癌、食道癌、唾液腺の癌、甲状腺癌、ならびに血液悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1007]
がんが、松果体腫瘍、下垂体腫瘍、PNET、シュワン細胞腫、リンパ腫、髄芽腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、神経線維腫、神経細胞系および混合神経細胞膠細胞系の腫瘍、乏突起星細胞腫、乏突起膠腫、星細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍(ATRT)、軟骨肉腫、脈絡叢の腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、胚細胞腫瘍、神経芽腫、膠芽腫および神経膠腫からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1008]
がんが付加的治療処置に感受性である、本発明1001の方法。
[本発明1009]
がんが付加的治療処置に耐性である、本発明1001の方法。
[本発明1010]
腫瘍抗原が、EphA2、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD22、CD19、CD20、ROR1、カッパまたは軽鎖、癌胎児性抗原、α-フェトプロテイン、CA-125、グリピカン-3、上皮性腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、EGP2、EGP40、EPCAM、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、PAP、FAR、FBP、胎児AchR、葉酸受容体α、変異p53、変異ras、HER2、ERBB2、HER3、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、5T4、8H9、GD2、CD123、CD23、CD33、CD30、CD38、CD56、c-Met、fap、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、IL-13Rα、CSPG4、Lewis-Y、MCSP、Mucl、Mucl6、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSC1、PSMA、EGFR、Sp17、SURVIVIN、TAG72、TEM1、TEM8、EGFRvIII、およびVEGFR2からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1011]
がんが膠芽腫であり、腫瘍抗原がNKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-B、EGFRvIIIおよびIL13Rαからなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1012]
がんが膠芽腫であり、腫瘍抗原がEGFRvIIIまたはIL13Rαである、本発明1001の方法。
[本発明1013]
がんが神経芽腫であり、腫瘍抗原がNKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-BおよびGD2からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1014]
がんが神経芽腫であり、腫瘍抗原がGD2である、本発明1001の方法。
[本発明1015]
細胞組成物が、γδT細胞と、αβT細胞およびNK細胞の少なくとも一方とを含む、本発明1001の方法。
[本発明1016]
細胞組成物が、γδT細胞と、任意でαβT細胞およびNK細胞とを含む、本発明1001の方法。
[本発明1017]
細胞組成物が、60%以上のγδT細胞と、5%以下のαβT細胞と、25%以下のNK細胞とを含む、本発明1001の方法。
[本発明1018]
ストレス誘導抗原に対する受容体がNKG2D受容体である、本発明1001の方法。
[本発明1019]
付加的治療処置が、ヌクレオシドアナログ、アルキル化剤、抗代謝剤、抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、分化誘導剤、またはホルモン療法剤による処置であり、生存因子が、付加的治療処置に対する耐性を与える、本発明1001の方法。
[本発明1020]
生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ、多剤耐性タンパク質1、または5'ヌクレオチダーゼIIである、本発明1001の方法。
[本発明1021]
付加的治療処置がアルキル化剤による処置であり、生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼである、本発明1001の方法。
[本発明1022]
付加的治療処置がテモゾロミドによる処置であり、生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼである、本発明1001の方法。
[本発明1023]
γδT細胞が、腫瘍抗原に向けられたCARと生存因子とを発現するように遺伝子操作されており、ストレス誘導抗原に対する受容体が、免疫系細胞上に天然に存在する、本発明1001の方法。
[本発明1024]
γδT細胞が、腫瘍抗原に向けられたCARと、生存因子と、ストレス誘導抗原に対する受容体とを発現するように遺伝子操作されている、本発明1001の方法。
[本発明1025]
γδT細胞が自殺遺伝子をさらに発現する、本発明1001の方法。
[本発明1026]
付加的治療処置が、以下の利点:
a. ストレス誘導抗原の誘導による細胞組成物の有効性の増加;
b. 細胞組成物の恒常的再構成の増加;
c. 細胞組成物のインビボ増殖の増加;および
d. 細胞組成物の持続性の増加
の少なくとも1つを提供する、本発明1001の方法。
[本発明1027]
付加的治療処置が、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-AおよびMIC-Bからなる群より選択されるストレス誘導抗原の発現を増加させる、本発明1001の方法。
[本発明1028]
γδT細胞が対象から得られ、任意にエクスビボで増殖される、本発明1001の方法。
[本発明1029]
少なくとも、腫瘍抗原に向けられたキメラ抗原受容体(CAR)と、付加的治療処置によりもたらされる処置環境において免疫系細胞を生存できるようにする生存因子とを発現し、さらにストレス誘導抗原に対する受容体を発現する、γδT細胞を含む細胞組成物。
[本発明1030]
がんが、脳腫瘍、乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、上皮癌、頭頸部癌、皮膚癌、尿生殖路の癌、卵巣癌、子宮体癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、小腸の癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、胆管の癌、食道癌、唾液腺の癌、甲状腺癌、ならびに血液悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群からなる群より選択される、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1031]
がんが、松果体腫瘍、下垂体腫瘍、PNET、シュワン細胞腫、リンパ腫、髄芽腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、神経線維腫、神経細胞系および混合神経細胞膠細胞系の腫瘍、乏突起星細胞腫、乏突起膠腫、星細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍(ATRT)、軟骨肉腫、脈絡叢の腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、胚細胞腫瘍、神経芽腫、膠芽腫および神経膠腫からなる群より選択される、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1032]
がんが付加的治療処置に感受性である、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1033]
腫瘍抗原が、EphA2、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD22、CD19、CD20、ROR1、カッパまたは軽鎖、癌胎児性抗原、α-フェトプロテイン、CA-125、グリピカン-3、上皮性腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、EGP2、EGP40、EPCAM、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、PAP、FAR、FBP、胎児AchR、葉酸受容体α、変異p53、変異ras、HER2、ERBB2、HER3、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、5T4、8H9、GD2、CD123、CD23、CD33、CD30、CD38、CD56、c-Met、fap、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、IL-13Rα、CSPG4、Lewis-Y、MCSP、Mucl、Mucl6、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSC1、PSMA、EGFR、Sp17、SURVIVIN、TAG72、TEM1、TEM8、EGFRvIII、およびVEGFR2からなる群より選択される、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1034]
がんが膠芽腫であり、腫瘍抗原がNKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-B、EGFRvIIIおよびIL13Rαからなる群より選択される、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1035]
がんが膠芽腫であり、腫瘍抗原がEGFRvIIIまたはIL13Rαである、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1036]
がんが神経芽腫であり、腫瘍抗原がNKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-BおよびGD2からなる群より選択される、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1037]
がんが神経芽腫であり、腫瘍抗原がGD2である、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1038]
γδT細胞と、αβT細胞およびNK細胞の少なくとも一方とを含む、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1039]
γδT細胞と、任意でαβT細胞およびNK細胞とを含む、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1040]
60%以上のγδT細胞と、5%以下のαβT細胞と、25%以下のNK細胞とを含む、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1041]
γδT細胞が、CARおよび生存因子を発現するように遺伝子操作されており、任意で、ストレス誘導抗原に対する受容体をさらに発現するように遺伝子操作されている、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1042]
ストレス誘導抗原に対する受容体がNKG2D受容体である、本発明1041の細胞組成物。
[本発明1043]
γδT細胞が、ストレス誘導抗原に対する受容体を天然に発現する、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1044]
ストレス誘導抗原に対する受容体がNKG2D受容体である、本発明1043の細胞組成物。
[本発明1045]
付加的治療処置が、ヌクレオシドアナログ、アルキル化剤、抗代謝剤、抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、分化誘導剤、またはホルモン療法剤による処置であり、生存因子が付加的治療処置に対する耐性を与える、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1046]
生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ、多剤耐性タンパク質1、または5'ヌクレオチダーゼIIである、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1047]
付加的治療処置がアルキル化剤による処置であり、生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼである、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1048]
付加的治療処置がテモゾロミドによる処置であり、生存因子がO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼである、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1049]
γδT細胞が、自殺遺伝子をさらに発現するように遺伝子操作されている、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1050]
付加的治療処置がストレス誘導抗原の発現を増加させる、本発明1029の細胞組成物。
[本発明1051]
付加的治療処置が、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-AおよびMIC-Bからなる群より選択されるストレス誘導抗原の発現を増加させる、本発明1029の細胞組成物。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】フローサイトメトリーにより細胞形質導入を容易に追跡するために使用され得る、eGFPを共発現するEGFRvIII CAR対照ベクターを示す。
図1B】インビボで細胞遊走/ホーミングを追跡するために使用され得る、ホタルルシフェラーゼを共発現するEGFRvIII CAR対照ベクターを示す。
図1C】生存因子をコードする配列を欠き、薬剤耐性を付与することができない、EGFRvIII CARをコードする対照ベクターを示す。この対照構築物は、CAR発現についての陽性対照および薬剤耐性についての陰性対照として使用することができる。
図1D】テモゾロミド(TMZ)に対する耐性を付与する生存因子(この図ではMGMT)をコードする配列を共発現するEGFRvIII CARを示す。この構築物は、膠芽腫のインビボ処置に最大の効果をもたらすと予想される。
図2】処置のための例示的な実験計画を示す。
図3図3Aは、未処理のγδT細胞を用いて行った注入の48時間後の4T1乳房脂肪体腫瘍における111[In]標識γδT細胞の分布を示すSPECT/CT融合画像(軸方向像)を示し、未処理のγδT細胞が腫瘍に結合したことを示す;点線の円は腫瘍領域を線引きする。図3Bは、注入前に抗γδTCRモノクローナル抗体で前処理したγδT細胞を用いて行った、図3Aで説明したものと同じ撮像を示し、処理したγδT細胞が腫瘍に結合しなかったことを示す;点線の円は腫瘍領域を線引きする。
図4A】X12TおよびX22T神経膠腫異種移植片上のストレス関連NKG2DLの発現を示す。両方の細胞タイプとも自己蛍光を示した。黒=アイソタイプ対照、青=腫瘍、赤=400μMのTMZに4時間曝露した腫瘍。
図4B】エクスビボで増殖/活性化された、TMZに耐性であるように改変したγδT細胞が、X12TおよびX22Tのエフェクター:標的(E:T)比を増加しながらインビトロで培養したX12TおよびX22T神経膠腫異種移植片に由来する細胞に対して細胞傷害性であったことを示す;溶解%はフローサイトメトリーにより生細胞/死細胞比として表される。
図5図5Aは、TMZ単独(TMZ)により、TMZ耐性のための生存因子を発現するように改変したγδT細胞およびNK細胞を含む組成物とTMZとの組み合わせ(DRI)により、未改変のγδT細胞およびNK細胞(CT)により処置された後のX12P神経膠腫保持マウス、ならびに処置を受けていない対照マウスの生存率を示す。図5Bは、TMZ単独(TMZ)により、TMZ耐性のための生存因子を発現するように改変したγδT細胞およびNK細胞を含む組成物とTMZとの組み合わせ(DRI)により、未改変のγδT細胞およびNK細胞(CT)により処置された後のX12T神経膠腫保持マウス、ならびに処置を受けていない対照マウスの生存率を示す。
図6】ストレス誘導抗原(stress-induced antigen)の発現が転移性脳腫瘍組織に隣接する正常脳組織において増加しないことを示す。
図7】ストレス誘導抗原の発現が放射線処置後の正常脳組織において増加しないことを示す。
図8A】従来技術の方法の一実施態様を示す。
図8B】本開示の方法の一実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
がんに対する従来の治療戦略は改善が必要である。本開示は、当技術分野で遭遇する諸問題への新規な解決策を提供し、GBMを含むがこれに限定されない種々のがんを治療するための新規な細胞組成物および該細胞組成物の使用方法を記載する。本開示は、γδT細胞を用いた細胞組成物の例を提供し、CARおよび生存因子の具体的な例を提供する。しかし、他の免疫系細胞、他のCARおよび他の生存因子も本開示と共に利用することができる。免疫系細胞、CARおよび生存因子の選択は、少なくとも一部には、治療されるがんのタイプおよび患者の治療に利用される付加的治療法によって影響され得る。
【0007】
本開示は、新規な細胞組成物、ならびにそのような細胞組成物の治療方法における使用を提供する。
【0008】
第1の局面において、細胞組成物は、腫瘍抗原に向けられたCARと、付加的治療処置によりもたらされる処置環境において免疫系細胞を生存できるようにする生存因子(例えば、記載された細胞組成物と併用される化学療法剤(複数可)に対する耐性を付与するポリペプチド)と、を発現するように遺伝子操作された免疫系細胞を含む。
【0009】
第2の局面において、細胞組成物は、腫瘍抗原に向けられたCARと、付加的治療処置によりもたらされる処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする生存因子(例えば、記載された細胞組成物と併用される化学療法剤(複数可)に対する耐性を付与するポリペプチド)と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0010】
第3の局面において、細胞組成物は、神経膠腫に特異的な腫瘍関連抗原(tumor associated antigen: TAA)に向けられたCARと、例えばテモゾロミド(TMZ)化学療法の処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする、TMZ化学療法に対する耐性のための生存因子と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0011】
第4の局面において、細胞組成物は、神経膠腫特異的TAAのEGFRvIIIに向けられたCARと、例えばTMZ化学療法の処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する耐性のためのO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0012】
第5の局面において、細胞組成物は、神経膠腫特異的TAAのIL13Rαに向けられたCARと、例えばTMZ化学療法の処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する耐性のためのMGMTと、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0013】
第6の局面において、本開示は、本開示の細胞組成物を対象に投与する段階、および本開示の細胞組成物の投与の前、後または前と後の両方に付加的治療処置を施す段階を含んでなる、がんの処置方法を提供する。
【0014】
第7の局面において、本開示は、本開示の細胞組成物を対象に投与する段階、および本開示の細胞組成物の投与の前、後または前と後の両方に付加的治療処置を施す段階を含んでなる、神経膠腫の処置方法を提供する。
【0015】
第8の局面において、本開示は、本開示の細胞組成物を対象に投与する段階、および本開示の細胞組成物の投与の前、後または前と後の両方に付加的治療処置を施す段階を含んでなる、GBMの処置方法を提供する。
【0016】
第9の局面において、本開示は、第4または第5の局面の細胞組成物を対象に投与する段階、および本開示の細胞組成物の投与の前、後または前と後の両方に付加的治療処置を施す段階を含んでなる、GBMの処置方法を提供する。
【0017】
第10の局面において、本開示は、例えばTMZ化学療法を対象に施す段階、第4または第5の局面の細胞組成物を対象に投与する段階、ならびに任意で、例えばTMZ化学療法および/または追加の本開示の細胞組成物の、追加のコースを施す段階を含んでなる、GBMの治療方法を提供する。
【0018】
第11の局面において、本開示は、免疫療法処置および付加的治療処置を用いて、がんに罹患している対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)該対象に、腫瘍抗原に向けられたCARと、ストレス誘導抗原に対する受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境において該CARを発現する免疫系細胞を生存できるようにする生存因子と、を発現する免疫系細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)該対象への該細胞組成物の投与前に、該対象への該細胞組成物の投与後に、該対象への該細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、該対象に付加的治療処置を施す段階。
【0019】
第12の局面において、本開示は、免疫療法処置および付加的治療処置を用いて対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)該対象に、腫瘍抗原に向けられたCARと、ストレス誘導抗原に対する受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境において該CARを発現するγδT細胞を生存できるようにする生存因子と、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)該対象への該細胞組成物の投与前に、該対象への該細胞組成物の投与後に、該対象への該細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、該対象に付加的治療処置を施す段階。
【0020】
第13の局面において、本開示は、免疫療法処置および、例えばTMZ化学療法を利用する、付加的治療処置を用いて対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)該対象に、神経膠腫特異的TAAに向けられたCARと、ストレス誘導抗原に対する受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境において該CARを発現するγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する耐性のための生存因子と、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)該対象への該細胞組成物の投与前に、該対象への該細胞組成物の投与後に、該対象への該細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、該対象に付加的治療処置を施す段階。
【0021】
第14の局面において、本開示は、免疫療法処置および、例えばTMZ化学療法を利用する、付加的治療処置を用いて対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)該対象に、神経膠腫特異的TAAのEGFRvIIIに向けられたCARと、NKGD2受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境において該CARを発現するγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する耐性を与える、O6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼと、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)該対象への該細胞組成物の投与前に、該対象への該細胞組成物の投与後に、該対象への該細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、該対象に付加的治療処置を施す段階。
【0022】
第15の局面において、本開示は、免疫療法処置および、例えばTMZ化学療法を利用する、付加的治療処置を用いて対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)該対象に、神経膠腫特異的TAAのIL13Rαに向けられたCARと、NKGD2受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境において該CARを発現するγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する耐性を与える、O6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼと、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)該対象への該細胞組成物の投与前に、該対象への該細胞組成物の投与後に、該対象への該細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、該対象に付加的治療処置を施す段階。
【0023】
細胞組成物
一般に、本開示は、薬剤耐性細胞免疫療法(drug resistant cellular immunotherapy: DRI)を提供するために生存因子を利用する。このメカニズムを介して、本開示の細胞組成物は、対象への投与後に処置環境において生存し、増殖し、抗腫瘍活性を発揮する能力がもたらされる。生存因子は、本開示の細胞組成物および方法と併用される可能性がある付加的治療処置に基づいて選択される。
【0024】
本明細書で使用する語句「付加的治療処置によりもたらされる処置環境において生存する」は、語句「付加的治療処置の存在下で生存する」と交換可能に使用することができ、各語句は、付加的治療処置で用いる薬剤との直接接触を乗り越えて生き残る細胞の能力、または付加的治療剤の使用から生じる本発明の細胞組成物の環境における細胞毒性の存在下で生き残る細胞の能力を指す。付加的治療処置には、限定するものではないが、以下の薬剤による治療が含まれる:抗がん剤、代謝拮抗剤、DNA脱メチル化剤、植物由来抗腫瘍剤、ヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ化学療法剤、アルキル化剤、抗代謝剤、抗がん性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、分化誘導剤、ホルモン療法剤、およびこれらの組み合わせ。当技術分野で公知であり、また、本明細書で論じられるように、様々な特定の薬剤が付加的治療処置において使用され得る。
【0025】
一態様では、細胞組成物は、少なくとも、腫瘍抗原に向けられたCARと、付加的治療処置によりもたらされる処置環境において免疫系細胞を生存できるようにする生存因子、例えば、記載された細胞組成物と併用される化学療法剤(複数可)に対する耐性を付与するポリペプチドと、を発現するように遺伝子操作された免疫系細胞を含む。特定の化学療法剤に対する薬剤耐性を付与するそのようなポリペプチドとしては、限定するものではないが、以下が挙げられる:MGMT、5'ヌクレオチダーゼII (NT5C2)、ジヒドロ葉酸レダクターゼの薬剤耐性変異体(L22Y-DHFR)、チミジル酸シンターゼ、および多剤耐性タンパク質1(MDR1)。
【0026】
別の態様では、細胞組成物は、少なくとも、腫瘍抗原に向けられたCARと、付加的治療処置によりもたらされる処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする生存因子(例えば、記載された細胞組成物と併用される化学療法剤(複数可)に対する耐性を付与するポリペプチド)と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0027】
別の態様では、細胞組成物は、少なくとも、神経膠腫特異的TAAに向けられたCARと、付加的治療処置によりもたらされる処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする生存因子(例えば、記載された細胞組成物と併用される化学療法剤(複数可)に対する耐性を付与するポリペプチド)と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0028】
別の態様では、細胞組成物は、少なくとも、TAAに向けられたCARと、例えばTMZ化学療法の処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する耐性のための生存因子と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0029】
別の態様では、細胞組成物は、少なくとも、神経膠腫特異的TAAのEGFRvIIIに向けられたCARと、例えばTMZ化学療法の処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する耐性のためのMGMTと、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0030】
別の態様では、細胞組成物は、少なくとも、神経膠腫特異的TAAのIL13Rαに向けられたCARと、例えばTMZ化学療法の処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する耐性のためのMGMTと、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0031】
別の態様では、細胞組成物は、少なくとも、神経芽腫特異的TAAに向けられたCARと、付加的治療処置によりもたらされる処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする生存因子(例えば、記載された細胞組成物と併用される化学療法剤(複数可)に対する耐性を付与するポリペプチド)と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0032】
別の態様では、細胞組成物は、少なくとも、神経芽腫特異的TAAに向けられたCARと、例えばTMZ化学療法の処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する耐性のための生存因子と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0033】
別の態様では、細胞組成物は、少なくとも、神経芽腫特異的TAAのGD2に向けられたCARと、例えばTMZ化学療法の処置環境においてγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する耐性のためのO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)遺伝子と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む。
【0034】
特定の態様では、細胞組成物は、腫瘍抗原もしくは神経膠腫特異的TAAに向けられたCARと、例えばTMZに対する耐性のための生存因子などの生存因子と、のみを発現するように遺伝子操作された免疫系細胞またはγδT細胞を含む。特定の態様では、細胞組成物は、腫瘍抗原、神経膠腫特異的TAAもしくは神経芽腫特異的TAAに向けられたCARと、自殺遺伝子と、例えばTMZに対する耐性のための生存因子などの生存因子と、のみを発現するように遺伝子操作された免疫系細胞またはγδT細胞を含む。特定の態様では、細胞組成物は、腫瘍抗原、神経膠腫特異的TAAもしくは神経芽腫特異的TAAに向けられたCARと、ストレス誘導抗原に対する受容体と、例えばTMZに対する耐性のための生存因子などの生存因子と、のみを発現するように遺伝子操作された免疫系細胞またはγδT細胞を含む。特定の態様では、細胞組成物は、腫瘍抗原、神経膠腫特異的TAAもしくは神経芽腫特異的TAAに向けられたCARと、ストレス誘導抗原に対する受容体と、自殺遺伝子と、例えばTMZに対する耐性のための生存因子などの生存因子と、のみを発現するように遺伝子操作された免疫系細胞またはγδT細胞を含む。特定の態様では、細胞組成物は、腫瘍抗原、神経膠腫特異的TAAもしくは神経芽腫特異的TAAに向けられたCARと、NKG2D受容体と、例えばTMZに対する耐性のための生存因子などの生存因子と、のみを発現するように遺伝子操作された免疫系細胞またはγδT細胞を含む。特定の態様では、細胞組成物は、腫瘍抗原、神経膠腫特異的TAAもしくは神経芽腫特異的TAAに向けられたCARと、NKG2D受容体と、自殺遺伝子と、TMZに対する耐性のための生存因子などの生存因子と、のみを発現するように遺伝子操作された免疫系細胞またはγδT細胞を含む。
【0035】
特定の態様では、免疫系細胞またはγδT細胞は、ストレス誘導抗原に対する受容体をさらに含む。特定の態様では、免疫系細胞またはγδT細胞は、NKGD2受容体をさらに含む。特定の態様において、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体は、免疫系細胞またはγδT細胞上に天然に存在する。特定の態様では、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体は、免疫系細胞またはγδT細胞上に増加したレベルで誘導される。したがって、細胞組成物が、腫瘍抗原、神経膠腫特異的TAAもしくは神経芽腫特異的TAAに向けられたCARと、生存因子と、任意の自殺遺伝子と、のみを発現するように遺伝子操作された免疫系細胞またはγδT細胞を含む実施態様では、その免疫系細胞またはγδT細胞はストレス誘導抗原またはNKGD2受容体をさらに発現し得る。
【0036】
特定の態様では、免疫系細胞は、免疫療法に有用な任意の免疫系細胞である。上記の別の局面において、免疫系細胞は、ストレス誘導抗原に対する受容体を発現する任意の細胞である。特定の態様では、免疫系細胞は、NKG2D受容体を発現する任意の細胞である。特定の態様では、免疫系細胞はNK細胞またはγδT細胞である。特定の態様では、免疫系細胞はγδT細胞である。特定の態様では、免疫系細胞はNK細胞とγδT細胞との組み合わせである。特定の態様では、免疫系細胞はNK細胞とγδT細胞との組み合わせであり、ここで、NK細胞および/またはγδT細胞の少なくとも一部は、ストレス誘導抗原に対する受容体を発現する。特定の態様では、免疫系細胞はNK細胞とγδT細胞との組み合わせであり、ここで、NK細胞および/またはγδT細胞の少なくとも一部はNKGD2受容体を発現する。
【0037】
特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞および追加の免疫系細胞を含む。例えば、細胞組成物はγδT細胞とNK細胞を含んでもよいし、γδT細胞とαβT細胞とNK細胞とを含んでもよい。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞と追加の免疫系細胞を含み、その際、γδT細胞は全細胞集団の60%以上で存在する。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞とNK細胞を含み、その際、γδT細胞は全細胞集団の60%以上で存在する。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞とNK細胞を含み、その際、γδT細胞は全細胞集団の60%以上で存在し、かつNK細胞は25%以下で存在する。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞とαβT細胞を含み、その際、γδT細胞は全細胞集団の60%以上で存在する。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞とαβT細胞を含み、その際、γδT細胞は全細胞集団の60%以上で存在し、かつαβT細胞は5%以下で存在する。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞、αβT細胞およびNK細胞を含み、その際、γδT細胞は全細胞集団の60%以上で存在する。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞、αβT細胞およびNK細胞を含み、その際、γδT細胞は全細胞集団の60%以上で存在し、αβT細胞は5%以下で存在し、NK細胞は25%以下で存在する。存在する様々な細胞タイプの割合は、一実施態様では、実施例3に記載されるようにフローサイトメトリーによって測定される。
【0038】
特定の態様において、細胞組成物を構成する細胞の少なくとも一部(例えば、免疫系細胞またはγδT細胞)は、ストレス誘導抗原に対する受容体をさらに含む。特定の態様では、細胞組成物を構成する細胞の少なくとも一部(例えば、免疫系細胞またはγδT細胞)は、NKGD2受容体をさらに含む。特定の態様では、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体は、細胞組成物を構成する細胞の少なくとも一部(例えば、免疫系細胞またはγδT細胞)上に天然に存在する。特定の態様では、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体は、細胞組成物を構成する細胞の少なくとも一部(例えば、免疫系細胞またはγδT細胞)において増加したレベルで誘導される。特定の態様では、細胞組成物を構成する細胞の少なくとも一部(例えば、免疫系細胞またはγδT細胞)は、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体を発現するように遺伝子操作される。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞を含み、γδT細胞の少なくとも一部は、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体を発現する。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞、αβT細胞およびNK細胞を含み、γδT細胞の少なくとも一部は、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体を発現する。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞、αβT細胞およびNK細胞を含み、γδT細胞の少なくとも一部は、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体を発現し、ここで、γδT細胞は全細胞集団の60%以上で存在する。特定の態様では、細胞組成物はγδT細胞、αβT細胞およびNK細胞を含み、γδT細胞の少なくとも一部は、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体を発現し、ここで、γδT細胞は全細胞集団の60%以上で存在し、αβT細胞は5%以下で存在し、NK細胞は25%以下で存在する。特定の態様では、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体は、γδT細胞、αβT細胞および/またはNK細胞の少なくとも一部上に天然に存在する。特定の態様では、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体は、γδT細胞、αβT細胞および/またはNK細胞の少なくとも一部において増加したレベルで誘導される。特定の態様では、γδT細胞、αβT細胞および/またはNK細胞の少なくとも一部は、ストレス誘導抗原に対する受容体またはNKGD2受容体を発現するように遺伝子操作される。存在する様々な細胞タイプの割合は、一実施態様では、実施例3に記載されるようにフローサイトメトリーによって測定される。
【0039】
上記の1つの局面において、腫瘍抗原は、当技術分野で公知の任意の腫瘍抗原である。特定の態様では、腫瘍抗原は、以下の特徴の少なくとも1つが存在するように選択される:該抗原はがんの可能な限り多くのステージにおいて発現される;該抗原は腫瘍の表面上に発現される;該抗原は腫瘍細胞の生存能力にとって重要である;および該抗原は非腫瘍組織上に発現されないか、オフターゲット効果が臨床的に許容できるようなレベルで発現される。特定の態様では、腫瘍抗原は、以下からなる群より選択される:EphA2、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD22、CD19、CD20、ROR1、カッパまたは軽鎖、癌胎児性抗原、α-フェトプロテイン、CA-125、グリピカン-3、上皮性腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、EGP2、EGP40、EPCAM、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、PAP、FAR、FBP、胎児AchR、葉酸受容体α、変異p53、変異ras、HER2、ERBB2、HER3、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、5T4、8H9、GD2、CD123、CD23、CD33、CD30、CD38、CD56、c-Met、fap、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、IL-13Rα、CSPG4、Lewis-Y、MCSP、Mucl、Mucl6、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSC1、PSMA、EGFR、Sp17、SURVIVIN、TAG72、TEM1、TEM8、EGFRvIII、およびVEGFR2。
【0040】
上記の1つの局面において、神経膠腫特異的TAAは当技術分野で公知の任意の神経膠腫特異的TAAである。特定の態様では、神経膠腫特異的TAAは、以下の特徴の少なくとも1つが存在するように選択される:神経膠腫特異的TAAはがんの可能な限り多くのステージにおいて発現される;神経膠腫特異的TAAは腫瘍の表面上に発現される;神経膠腫特異的TAAは腫瘍細胞の生存能力にとって重要である;および神経膠腫特異的TAAは非腫瘍組織上に発現されないか、オフターゲット効果が臨床的に許容できるようなレベルで発現される。特定の態様では、神経膠腫特異的TAAは、以下からなる群より選択される:NKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-B、EGFRvIIIおよびIL13Rα。特定の態様では、神経膠腫特異的TAAはEGFRvIIIである。特定の態様では、神経膠腫特異的TAAはIL13Rαである。
【0041】
上記の1つの局面において、神経芽腫特異的TAAは当技術分野で公知の任意の神経膠腫特異的TAAである。特定の態様では、神経芽腫特異的TAAは、以下の特徴の少なくとも1つが存在するように選択される:神経芽腫特異的TAAはがんの可能な限り多くのステージにおいて発現される;神経芽腫特異的TAAは腫瘍の表面上に発現される;神経芽腫特異的TAAは腫瘍細胞の生存能力にとって重要である;および神経芽腫特異的TAAは非腫瘍組織上に発現されないか、オフターゲット効果が臨床的に許容できるようなレベルで発現される。特定の態様では、神経芽腫特異的TAAは、以下からなる群より選択される:NKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-B、およびGD2。特定の態様では、神経芽腫特異的TAAはGD2である。
【0042】
生存因子は、付加的治療処置に対する耐性を与えかつ/または細胞組成物を構成する細胞を処置環境(例えば、化学療法の処置環境)において生存できるようにする、当技術分野で公知の任意の因子であり得る。特定の態様では、付加的治療処置は、抗がん剤、代謝拮抗剤、DNA脱メチル化剤、植物由来抗腫瘍剤、ヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ化学療法剤、アルキル化剤、抗代謝剤、抗がん性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、分化誘導剤、ホルモン療法剤、およびこれらの組み合わせによる治療であり、生存因子は付加的治療処置に対する耐性を与える。当技術分野で公知であり、また、本明細書で論じられるように、様々な特定の薬剤が付加的治療処置において使用され得る。代表的なアルキル化剤としては、シクロホスファミド、イホスファミドおよびメルファランが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な代謝拮抗剤としては、メトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なDNA脱メチル化剤(抗代謝剤としても知られる)としては、アザシチジンが挙げられるが、これに限定されない。代表的なヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ化学療法剤には、置換ヌクレオチドおよび置換ヌクレオシドが含まれるが、これらに限定されない。代表的な抗腫瘍性抗生物質には、マイトマイシン、アドリアマイシンおよびドキソルビシンが含まれるが、これらに限定されない。代表的な植物由来の抗腫瘍剤としては、ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、アブラキサン;シスプラチン;カルボプラチン;エトポシドなどが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な抗がん剤としては、限定するものではないが、トリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド(TMZ)、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジルグアニジン(6-BG)、ニトロソウレア[例:ビス-クロロニトロソウレア(BCNU;カルムスチン)、ロムスチン(CCNU)+/-プロカルバジンおよびビンクリスチン(PCVレジメン)、ドキソルビシン、フォテムスチン、シタラビン、カンプトテシン、ならびに上記のいずれかの治療用誘導体が挙げられる。好ましくは、付加的治療処置に使用される薬剤には、TMZ、ドキソルビシン、メルファラン、ニトロソウレアおよびこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0043】
特定の態様において、生存因子はMGMT、多剤耐性タンパク質1(MDR1)、または5'ヌクレオチダーゼII(NT5C2)である。他の生存因子には、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼの薬剤耐性変異体(L22Y-DHFR)およびチミジル酸シンターゼが含まれる。好ましくは、生存因子はMGMTである。しかし、処置環境の性質(すなわち、どのような他の付加的治療処置が本開示の細胞組成物と組み合わせて患者に施されているか)に依存して、他の生存因子も使用しうる。
【0044】
上記の1つの局面において、前記組成物の細胞は自殺遺伝子をさらに含む。
【0045】
上記の1つの局面において、細胞組成物は、単一タイプの免疫系細胞を60%、70%、80%、90%、95%以上含む。上記の1つの局面では、細胞組成物は、γδT細胞を60%、70%、80%、90%、95%以上含む。上記の1つの局面では、細胞組成物は、γδT細胞を60%以上、αβT細胞を5%以下、NK細胞を25%以下含む。存在する様々な細胞タイプの割合は、一実施態様では、実施例3に記載されるようにフローサイトメトリーによって測定される。
【0046】
上記の別の局面において、γδT細胞は患者から得られ、エクスビボで増殖/活性化される;その後、該細胞は該患者に再導入され得る。
【0047】
記載の細胞組成物は、DRI-CAR T細胞とも呼ばれる。
【0048】
本明細書に記載の細胞組成物は、CARおよび生存因子、ならびに他の要素(例えば、自殺遺伝子および/またはストレス誘導抗原に対する受容体)をコードしかつ発現することができる核酸構築物を組み込むことによって作製され得る。特定の態様では、単一の核酸構築物がCARおよび生存因子、ならびに他の要素(例えば、自殺遺伝子および/またはストレス誘導抗原に対する受容体)をコードする。特定の態様では、別個の核酸構築物がCARおよび生存因子、ならびに他の要素(例えば、自殺遺伝子および/またはストレス誘導抗原に対する受容体)をコードする。そのような核酸構築物を作製する方法は、当技術分野で公知である。CARおよび/または生存因子をコードする代表的な核酸構築物を図1A~1Dに示す。
【0049】
特定の態様において、核酸構築物はCARおよび生存因子をコードする。
【0050】
上記の態様において、CARは本明細書に記載のドメインおよび/または配列を含み得る。特定の態様では、核酸構築物は、EGFRvIII抗原に対するscFvを含むエクトドメイン、ヒンジ領域、膜貫通領域、および少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含むエンドドメインを含むCARをコードする。特定の態様では、核酸構築物は、IL13Rα抗原に対するscFvを含むエクトドメイン、ヒンジ領域、膜貫通領域、および少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含むエンドドメインを含むCARをコードする。特定の態様では、核酸構築物は、EGFRvIII抗原に対するscFvを含むエクトドメイン、IgG由来のヒンジ領域、CD3ζ由来の膜貫通領域、ならびにCD28、Ox40およびCD32シグナル伝達ドメインを含むエンドドメインを含むCARをコードする。特定の態様では、核酸構築物は、IL13Rα抗原に対するscFvを含むエクトドメイン、IgG由来のヒンジ領域、CD3ζ由来の膜貫通領域、ならびにCD28、Ox40およびCD32シグナル伝達ドメインを含むエンドドメインを含むCARをコードする。
【0051】
核酸構築物は、宿主細胞に導入する前に発現ベクターに組み込むことができる。そのような方法は当技術分野で公知である。上述したように、核酸構築物の性質に応じて単一の発現ベクターを使用してもよいし、複数の発現ベクターを使用してもよい。種々の発現ベクターを使用することができる。特定の態様では、発現ベクターはプラスミドである。特定の態様では、発現ベクターはウイルスベクターである。特定の態様では、発現ベクターはレトロウイルスベクターである。特定の態様では、発現ベクターはレンチウイルスベクターである。発現ベクターは免疫系細胞(宿主細胞とも呼ばれる)の内部で複製可能であるか、または発現ベクターは免疫系細胞のゲノムに全体的または部分的に組み込まれて、核酸構築物を宿主細胞のゲノムと共に複製させることができる。
【0052】
発現ベクターは、宿主細胞内での核酸構築物の発現に適した形態で核酸構築物を含む。こうして、発現ベクターは、宿主細胞内での核酸構築物の発現に必要とされる要素を含む。必要とされる要素は、宿主細胞の性質およびベクター、ならびに他の要因(例えば、所望の発現レベル)に依存して、様々であり得る。例えば、ベクターは、核酸構築物の発現を可能にする、核酸構築物に機能的に連結された1つまたは複数の調節配列(例えば、プロモーター配列、エンハンサー配列、他のそのような配列)を含み得る。調節配列は、核酸構築物が特定の細胞タイプでのみ発現されるように細胞特異的であってもよいし、調節配列は、核酸構築物が任意の細胞タイプで発現されるように構成的であってもよい。
【0053】
キメラ抗原受容体
本開示の細胞組成物を構成する細胞には、1つまたは複数のCARが組み込まれる。CARの具体的な例はGBMの処置に用いるために提供されるが、別のがんの処置のために設計された他のCARも使用され得る。本開示は、当技術分野で公知の任意のCARを利用することができる。腫瘍関連抗原に対する所望の特異性を有するCARの作製方法は、当技術分野で公知である。CARは、本開示の免疫系細胞がMHC制限されない方法で腫瘍抗原を認識することを可能にする。さらに、CARは、タンパク質由来ではない抗原を認識するように遺伝子操作することもできる。
【0054】
CARは一般に、次の構造を有する:抗原認識ドメインを含むエクトドメイン、膜貫通ドメインおよびエンドドメイン。特定の態様では、CARの様々なドメインを分離するために、1~15アミノ酸のペプチドリンカーがCAR中に存在し得る。例えば、ペプチドリンカーは、抗原認識ドメインと膜貫通ドメインとの間、または膜貫通ドメインとエンドドメインとの間に存在することができる。ペプチドリンカーは、全てのドメインの間に存在してもよく、またはドメインの一部の間にのみ存在してもよい。さらに、エンドドメインが2つ以上の要素を含む場合には、リンカーペプチドはエンドドメイン中の個々の要素の一部または全部の間に存在し得る。
【0055】
CARは、最初にシグナル配列(一般にCARのプロセシング中に後で除去される)を組み込むことにより作製され得る。シグナルペプチドは、発現された新生タンパク質を小胞体に導き、CARが修飾(例えば、グリコシル化)されて、細胞膜に挿入されることを可能にする。真核生物のシグナルペプチド配列はどれも使用することができる。一般的には、最もアミノ末端側にある成分に天然に連結されているシグナルペプチドが使用される(例えば、軽鎖-リンカー-重鎖の方向を有するscFvでは、軽鎖の天然のシグナルが使用される)。
【0056】
抗原認識ドメインは、腫瘍抗原を認識する任意のドメインであり得る。特定の態様では、抗原認識ドメインは神経膠腫特異的TAAに向けられたものである。特定の態様では、抗原認識ドメインは腫瘍抗原に向けられたものである。特定の態様では、抗原認識ドメインは神経芽腫特異的TAAに向けられたものである。抗原認識ドメインによる認識のための特異的抗原は、上記に示されている。抗原認識ドメインには多くの選択肢がある。天然のT細胞受容体(TCR)αおよびβ単鎖由来の抗原認識ドメインは、単純なエクトドメイン(例えば、HIV感染細胞を認識するCD4エクトドメイン)、および連結されたサイトカイン(サイトカイン受容体を持つ細胞の認識につながる)などの認識成分を含むより特殊なエクトドメインを有するとして、記載されている。実際に、所与の標的に高親和性で結合する成分はどれも、抗原認識領域として使用することができる。好ましい態様では、抗原認識領域はscFvである。特定の態様では、リンカーペプチド(すなわち、スペーサー領域またはヒンジ領域)が抗原結合ドメインを膜貫通ドメインに連結する。
【0057】
特定の態様において、抗原認識ドメインはscFvである。scFvとは、VH-リンカー-VL構造(抗原結合ドメインとも呼ばれる)を形成するために、短いリンカーペプチド(一般に約10~約25アミノ酸)により連結された、免疫グロブリンの重鎖(VH)と軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を指す。リンカーは、通常、柔軟性のためにグリシンに富むだけでなく、可溶性のためにセリンまたはトレオニンにも富んでおり、VHのN末端をVLのC末端に、またはその逆につなぐことができる。このscFvは、定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。
【0058】
特定の態様において、抗原認識ドメインは多価scFvである。多価scFvは、追加のリンカーによってつながれた2つの免疫グロブリン由来抗原結合ドメイン(例えば、VH-リンカー-VL鎖)を含み、該抗原結合ドメインは異なる抗原または同じ抗原の異なる部分を認識する。特定の局面では、抗原結合ドメインの1つは、標的細胞上の活性化分子を認識する。特定の局面では、抗原結合ドメインの1つは、付加的治療処置の結果として標的細胞上での発現が増加する抗原(ストレス誘導抗原などであるが、これに限定されない)を認識する。
【0059】
特定の態様において、抗原認識ドメインは2価scFvである。このような2価scFvは、一例として、VH1-リンカーa-VL1-VH-リンカーb-VL-リンカーc-VH-リンカーd-VL構造を(VHおよびVLは上述したように異なる方向で配置され得るという理解のもとで)有し得る。
【0060】
リンカーペプチドは、抗原結合ドメインが抗原認識および結合に適した立体構造をとれるように十分に柔軟でなければならない。最も単純な形態はIgG1由来のヒンジ領域である。種々のリンカーペプチドを、本明細書に記載のCARと組み合わせて使用することができる。
【0061】
膜貫通ドメインは、CARが組み込まれた細胞の膜にまたがる疎水性領域(αヘリックスなど)である。任意の膜埋込み型タンパク質に由来する膜貫通ドメインが使用され得る。一般的には、例えば抗原認識ドメインからのシグナルのエンドドメインへの伝達を容易にするために、エンドドメインの最も膜近傍の成分に由来する膜貫通ドメインが使用される。興味深いことに、CD3ζの膜貫通ドメインを使用すると、天然CD3ζの膜貫通荷電アスパラギン酸残基の存在に依存する天然TCR a因子への人工TCRの組み込みが起こり得る。
【0062】
エンドドメインは、抗原結合後のシグナルの伝達を可能にする。抗原認識後、受容体がクラスター化し、シグナルがCARを含む免疫系細胞に伝達される。エンドドメインは少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む。特定の態様では、エンドドメインは、2つ以上のシグナル伝達ドメインを含む。最も一般的に使用されるシグナル伝達ドメインはCD3ζであり、これは3つの免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif: ITAM)を含む。したがって、特定の態様では、シグナル伝達ドメインは少なくとも1つのITAMを含む。特定の態様では、エンドドメインはCD3ζを含む。特定の態様では、エンドドメインはCD3ζおよび少なくとも1つの追加のシグナル伝達ドメインを含む。エンドドメインは、抗原が結合された後に活性化シグナルを細胞に伝達する。「第1世代」のCARは、典型的には、内因性TCRからのシグナルの主要伝達分子であるCD3ζ由来のエンドドメインを有する。「第2世代」のCARでは、種々の共刺激タンパク質受容体(例えば、CD28、41BB、DAP10、OX40またはICOS)由来の細胞内シグナル伝達ドメインがエンドドメインの細胞質尾部に追加されて、T細胞にさらなるシグナルを提供する。より最近の「第3世代」のCARは、効力をさらに増強するために、CD3ζ-CD28-41BBまたはCD3ζ-CD28-OX40などの、複数のシグナル伝達ドメインを組み合わせたエンドドメインを有する。特定の態様では、エンドドメインはCD3ζ-CD28-OX40を含む。
【0063】
使用方法
本開示の細胞組成物を使用する方法もまた記載される。
【0064】
一態様において、本開示は、本開示の細胞組成物を対象に投与する段階、および本開示の細胞組成物の投与の前、後または前と後の両方に付加的治療処置を施す段階を含んでなる、がんの処置方法を提供する。
【0065】
別の態様において、本開示は、本開示の細胞組成物を対象に投与する段階、および本開示の細胞組成物の投与の前、後、または前と後の両方に付加的治療処置を施す段階を含んでなる、神経膠腫の処置方法を提供する。
【0066】
別の態様において、本開示は、本開示の細胞組成物を対象に投与する段階、および本開示の細胞組成物の投与の前、後、または前と後の両方に付加的治療処置を施す段階を含んでなる、GBMの処置方法を提供する。
【0067】
別の態様において、本開示は、神経膠腫特異的TAAのEGFRvIIIまたはIL13Rαに向けられたCARと、例えばTMZ化学療法に対する耐性のためのMGMT遺伝子と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む細胞組成物を対象に投与する段階、および本開示の細胞組成物の投与の前、後、または前と後の両方に付加的治療処置を施す段階を含んでなる、GBMの処置方法を提供する。
【0068】
別の態様において、本開示は、例えばTMZ化学療法を対象に施す段階、神経膠腫特異的TAAのEGFRvIIIまたはIL13Rαに向けられたCARと、例えばTMZ化学療法に対する耐性のためのMGMT遺伝子と、を発現するように遺伝子操作されたγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階、ならびに任意で、例えばTMZ化学療法および/または追加の本開示の細胞組成物の、追加のコースを施す段階を含んでなる、GBMの処置方法を提供する。
【0069】
別の態様において、本開示は、免疫療法処置および付加的治療処置を用いて、がんに罹患している対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)対象に、腫瘍抗原に向けられたCARと、ストレス誘導抗原に対する受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境において該CARを発現する免疫系細胞を生存できるようにする生存因子と、を発現する免疫系細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)対象への細胞組成物の投与前に、対象への細胞組成物の投与後に、対象への細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、対象に付加的治療処置を施す段階。
【0070】
別の態様において、本開示は、免疫療法処置および付加的治療処置を用いて、がんに罹患している対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)対象に、腫瘍抗原に向けられたCARと、ストレス誘導抗原に対する受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境においてCARを発現するγδT細胞を生存できるようにする生存因子と、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)対象への細胞組成物の投与前に、対象への細胞組成物の投与後に、対象への細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、対象に付加的治療処置を施す段階。
【0071】
別の態様において、本開示は、免疫療法処置およびTMZまたは他の適切な化学療法を利用する付加的治療処置を用いて、神経膠腫に罹患している対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)対象に、神経膠腫特異的TAAに向けられたCARと、ストレス誘導抗原に対する受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境においてCARを発現するγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する、耐性のための生存因子と、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)対象への細胞組成物の投与前に、対象への細胞組成物の投与後に、対象への細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、対象に付加的治療処置を施す段階。
【0072】
別の態様において、本開示は、免疫療法処置および、例えばTMZ化学療法を利用する、付加的治療処置を用いて、神経芽腫に罹患している対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)対象に、神経芽腫特異的TAAに向けられたCARと、ストレス誘導抗原に対する受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境においてCARを発現するγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する、耐性のための生存因子と、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)対象への細胞組成物の投与前に、対象への細胞組成物の投与後に、対象への細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、対象に付加的治療処置を施す段階。
【0073】
別の態様において、本開示は、免疫療法処置および、例えばTMZ化学療法を利用する、付加的治療処置を用いて、神経膠腫に罹患している対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)対象に、神経膠腫特異的TAAのEGFRvIIIに向けられたCARと、NKGD2受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境においてCARを発現するγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する、耐性を与えるO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼと、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)対象への細胞組成物の投与前に、対象への細胞組成物の投与後に、対象への細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、対象に付加的治療処置を施す段階。
【0074】
別の態様において、本開示は、免疫療法処置および、例えばTMZ化学療法を利用する、付加的治療処置を用いて、がんに罹患している対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)対象に、神経膠腫特異的TAAのIL13Rαに向けられたCARと、NKGD2受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境においてCARを発現するγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する、耐性を与えるO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼと、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)対象への細胞組成物の投与前に、対象への細胞組成物の投与後に、対象への細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、対象に付加的治療処置を施す段階。
【0075】
別の態様において、本開示は、免疫療法処置および、例えばTMZ化学療法を利用する、付加的治療処置を用いて、神経芽腫に罹患している対象を処置する方法を提供し、この方法は、以下の段階を含んでなる:(i)対象に、神経芽腫特異的TAAのGD2に向けられたCARと、NKGD2受容体と、付加的治療処置から生じる処置環境においてCARを発現するγδT細胞を生存できるようにする、例えばTMZ化学療法に対する、耐性を与えるO6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼと、を発現するγδT細胞を含む細胞組成物を投与する段階;および(ii)対象への細胞組成物の投与前に、対象への細胞組成物の投与後に、対象への細胞組成物の投与と同時に、またはそれらの任意の組み合わせで、対象に付加的治療処置を施す段階。
【0076】
前述の方法のいずれかの特定の態様において、細胞組成物は、本明細書に記載の任意の細胞組成物である。前述の方法のいずれかの特定の態様では、細胞組成物が対象に2回以上投与され、付加的治療処置は細胞組成物の各投与の前、後、または前と後の両方に施される。前述の方法のいずれかの特定の態様では、細胞組成物が対象に2回以上投与され、付加的治療処置は、細胞組成物の最初の投与の前、後、または前と後の両方に施され、任意で、細胞組成物の各追加投与の前、後、または前と後の両方に施される。前述の方法のいずれかの特定の態様では、細胞組成物が、週に1回で、2週間、3週間または4週間以上にわたり、対象に投与され得る。
【0077】
前述の方法のいずれかの特定の態様において、付加的治療処置は、細胞組成物の投与の24~48時間前、24~48時間後、または24~48時間前と後の両方に対象に施される。前述の方法のいずれかの特定の態様では、細胞組成物をX日に対象に投与し、付加的治療処置をX日の12~72時間前、X日の12~72時間後、またはX日の12~72時間前と後の両方に対象に施す。前述の方法のいずれかの特定の態様では、細胞組成物をX日に対象に投与し、付加的治療処置をX日の12~72時間前、X日の12~72時間後、またはX日の12~72時間前と後の両方に対象に施し、続いて、細胞組成物をY日に対象に追加投与し、任意で、付加的治療処置をY日の12~72時間前、Y日の12~72時間後、またはY日の12~72時間前と後の両方に対象に施す。
【0078】
前述の方法のいずれかの一局面において、細胞組成物のCARは、治療されるがんに特異的である。前述の方法のいずれかの一局面では、細胞組成物の生存因子は、治療処置/付加的治療処置に対する耐性を付与する。
【0079】
本開示の細胞組成物は、当技術分野で公知の任意の方法で投与することができる。前述の方法のいずれかの一局面では、細胞組成物を静脈内に投与する。前述の方法のいずれかの一局面では、細胞組成物を頭蓋内に投与する。前述の方法のいずれかの一局面では、細胞組成物を動脈内に投与する。前述の方法のいずれかの一局面では、細胞組成物を腫瘍床に直接投与する。前述の方法のいずれかの一局面では、細胞組成物を腫瘍の近くにまたは腫瘍に隣接して投与する。前述の方法のいずれかの一局面では、細胞組成物を上記投与法の組み合わせにより投与する。
【0080】
前述の方法のいずれかの一局面において、付加的治療処置(例えば、TMZ化学療法)は、以下の利点の少なくとも1つを提供する:ストレス誘導抗原の誘導による細胞組成物の有効性の増加、細胞組成物の恒常的再構成の増加、インビボ増殖の増加、および細胞組成物の持続性の増加(これらは、付加的治療処置を省いた場合の同様の処置との比較である)。
【0081】
特定の態様において、がんは付加的治療処置(前記細胞はこの治療処置に対して耐性となるように遺伝子操作される)に感受性である。がん細胞が感受性であり得るそのような付加的治療処置には、限定するものではないが、抗がん剤、代謝拮抗剤、DNA脱メチル化剤、植物由来抗腫瘍剤、ヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ化学療法剤、アルキル化剤、抗代謝剤、抗がん性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、分化誘導剤、ホルモン療法剤、およびこれらの組み合わせが含まれる。当技術分野で公知であり、また、本明細書で論じるように、様々な特定の薬剤が付加的治療処置において使用され得る。代表的なアルキル化剤には、シクロホスファミド、イホスファミドおよびメルファランが含まれるが、これらに限定されない。代表的な代謝拮抗剤には、メトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはその誘導体が含まれるが、これらに限定されない。代表的なDNA脱メチル化剤(抗代謝剤としても知られる)には、アザシチジンが含まれるが、これに限定されない。代表的なヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ化学療法剤には、置換ヌクレオチドおよび置換ヌクレオシドが含まれるが、これらに限定されない。代表的な抗腫瘍性抗生物質には、マイトマイシン、アドリアマイシンおよびドキソルビシンが含まれるが、これらに限定されない。代表的な植物由来の抗腫瘍剤には、ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、アブラキサン;シスプラチン;カルボプラチン;エトポシドなどが含まれるが、これらに限定されない。代表的な抗がん剤には、限定するものではないが、トリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド(TMZ)、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジルグアニジン(6-BG)、ニトロソウレア[例:ビス-クロロニトロソウレア(BCNU;カルムスチン)、ロムスチン(CCNU)+/-プロカルバジンおよびビンクリスチン(PCVレジメン)、ドキソルビシン、フォテムスチン、シタラビン、カンプトテシン、ならびに上記のいずれかの治療用誘導体が含まれる。好ましくは、がん細胞が感受性であり得る付加的治療処置に使用される薬剤として、TMZ、ドキソルビシン、メルファラン、ニトロソウレア、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0082】
特定の態様において、がんは付加的治療処置(前記細胞はこの治療処置に対して耐性となるように遺伝子操作される)に耐性である。このような態様において、付加的治療処置は上記の利点の少なくとも1つを提供する。一態様では、付加的治療処置は、NKG2D受容体のリガンドであるストレス誘導抗原の発現を増加させる。アップレギュレートされる具体的なストレス誘導抗原としては、限定するものではないが、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-AおよびMIC-Bが挙げられる。
【0083】
特定の態様において、がんは以下からなる群より選択される:脳腫瘍、乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、上皮癌、頭頸部癌、皮膚癌、尿生殖路の癌、卵巣癌、子宮体癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、小腸の癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、胆管の癌、食道癌、唾液腺の癌、甲状腺癌、ならびに血液悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群。
【0084】
特定の態様において、がんは脳腫瘍である。特定の態様では、がんは、松果体腫瘍、下垂体腫瘍、PNET、シュワン細胞腫、リンパ腫、髄芽腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、神経線維腫、神経細胞系および混合神経細胞膠細胞系の腫瘍、乏突起星細胞腫、乏突起膠腫、星細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍(ATRT)、軟骨肉腫、脈絡叢の腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、胚細胞腫瘍、神経芽腫、膠芽腫(GBM)および神経膠腫である。特定の態様では、がんは膠芽腫である。特定の態様では、がんは神経芽腫である。
【0085】
特定の態様において、腫瘍抗原は、当技術分野で公知の任意の腫瘍抗原である。特定の態様では、腫瘍抗原は、以下の特徴の少なくとも1つが存在するように選択される:該抗原はがんの可能な限り多くのステージにおいて発現される;該抗原は腫瘍の表面上に発現される;該抗原は腫瘍細胞の生存能力にとって重要である;および該抗原は非腫瘍組織上に発現されないか、オフターゲット効果が臨床的に許容できるようなレベルで発現される。特定の態様では、腫瘍抗原は、以下からなる群より選択される:EphA2、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD22、CD19、CD20、ROR1、カッパまたは軽鎖、癌胎児性抗原、α-フェトプロテイン、CA-125、グリピカン-3、上皮性腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、EGP2、EGP40、EPCAM、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、PAP、FAR、FBP、胎児AchR、葉酸受容体α、変異p53、変異ras、HER2、ERBB2、HER3、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、5T4、8H9、GD2、CD123、CD23、CD33、CD30、CD38、CD56、c-Met、fap、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、IL-13Rα、CSPG4、Lewis-Y、MCSP、Mucl、Mucl6、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSC1、PSMA、EGFR、Sp17、SURVIVIN、TAG72、TEM1、TEM8、EGFRvIII、およびVEGFR2。
【0086】
特定の態様において、神経膠腫特異的TAAは当技術分野で公知の任意の神経膠腫特異的TAAである。特定の態様では、神経膠腫特異的TAAは、以下の特徴の少なくとも1つが存在するように選択される:神経膠腫特異的TAAはがんの可能な限り多くのステージにおいて発現される;神経膠腫特異的TAAは腫瘍の表面上に発現される;神経膠腫特異的TAAは腫瘍細胞の生存能力にとって重要である;および神経膠腫特異的TAAは非腫瘍組織上に発現されないか、オフターゲット効果が臨床的に許容できるようなレベルで発現される。特定の態様では、神経膠腫特異的TAAは、以下からなる群より選択される:NKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-B、GD2、EGFRvIIIおよびIL13Rα。特定の態様では、神経膠腫特異的TAAはEGFRvIIIである。特定の態様では、神経膠腫特異的TAAはIL13Rαである。
【0087】
特定の態様において、神経芽腫特異的TAAは当技術分野で公知の任意の神経膠腫特異的TAAである。特定の態様では、神経芽腫特異的TAAは、以下の特徴の少なくとも1つが存在するように選択される:神経芽腫特異的TAAはがんの可能な限り多くのステージにおいて発現される;神経芽腫特異的TAAは腫瘍の表面上に発現される;神経芽腫特異的TAAは腫瘍細胞の生存能力にとって重要である;および神経芽腫特異的TAAは非腫瘍組織上に発現されないか、オフターゲット効果が臨床的に許容できるようなレベルで発現される。特定の態様では、神経芽腫特異的TAAは、以下からなる群より選択される:NKG2Dリガンド、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、MIC-A、MIC-B、およびGD2。特定の態様では、神経芽腫特異的TAAはGD2である。
【0088】
DRI遺伝子操作、例えばMGMT遺伝子の使用は、腫瘍が最大限にストレスを受けているであろう時期の化学療法に富む環境において、本開示の細胞組成物が機能できるようにする。腫瘍へのストレス効果は、特定の態様では、ストレス抗原の発現を増加させ、該抗原はγδT細胞上の、NKG2D受容体などの受容体によって認識される。化学療法によるストレス抗原の誘導と、制御性T細胞の減少という二重の効果は、いずれか一方の個々のレジメンよりも腫瘍の減少を大いに向上させる。遺伝子改変は、例えばTMZのような、化学療法レジメンのリンパ球枯渇効果から本開示の細胞組成物を保護し、かつ悪性細胞が化学療法によって最大限にストレスを受けているときに、損なわれていないT細胞の細胞傷害性機能と組み合わせて、TAAを介した本開示の細胞組成物の腫瘍への特異的アクセスを可能にする。本開示の細胞組成物の使用(DRI-CAR T細胞療法と呼ばれる)は、化学療法(例えば、TMZ)処置単独またはγδT細胞注入単独と比較したとき、生存を大幅に引き延ばし、腫瘍量を減少させ、しかも重大かつ有害な全身的または神経学的影響なしにそのようにすると考えられる。
【0089】
本開示の細胞組成物および方法の論理的根拠は、以下の(a)~(d)を示す以前の研究に基づいている:(a)ヒトGBM細胞は、エクスビボで増殖/活性化されたγδT細胞による攻撃を非常に受けやすい(1、2);(b)増殖/活性化されたγδT細胞の局所頭蓋内注入は、免疫能の正常なC56BL/6マウスモデルにおけるGBM異種移植片(3)およびGL261由来腫瘍の進行を遅らせることによって、腫瘍保持マウスの生存を延長する;(c)ヒトSNB-19およびU373 GBM細胞株のTMZ耐性クローンは、TMZまたはγδT細胞のいずれか一方よりも有意に高い効力で、TMZの存在下にMGMT改変γδT細胞によって殺傷される(4);そして、最も重要なことに、(d)原発性ヒトGBM異種移植片の未改変クローンまたはTMZ耐性クローンのいずれかを保持するマウスは、いずれか一方の治療単独と比較して、遺伝子改変γδT細胞の頭蓋内注入で処置した場合に、生存の向上を示す。したがって、付加的治療処置(例えば、TMZ)に対する耐性を付与するように改変されたγδT細胞を含む本開示の細胞組成物は、どちらか一方の別々の処置と比較して、大幅に生存を引き延ばし、かつ腫瘍量を減少させると予想され、重大かつ有害な全身的または神経学的影響を与えることなくそうするであろう。
【0090】
いくつかの最近の研究により、頭蓋外の固形新生物のための化学療法と免疫療法の戦略的タイミングは、腫瘍細胞上のストレス関連抗原の化学療法誘導発現への生得的応答(8~10)と、制御性T細胞の枯渇とを利用することが示されている。ストレス抗原を誘導し、かつ制御性T細胞を減少させるという二重の効果は、いずれか一方の個々のレジメンよりも大いに改善された腫瘍減少をもたらし得る(11~17)。GBMを含むがこれに限定されないがんのためのこの戦略の成功の実現は、腫瘍関連抗原の適応認識(18、19)、神経膠腫細胞MHCクラスI発現(20、21)、またはリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞療法(22~26)に頼ってきた古典的アプローチを大きく引き離すものである。
【0091】
出願人は、腫瘍によって発現されたストレス誘導抗原(すなわち、NKG2Dリガンド)を介して高悪性度の神経膠腫を確実に標的とする、増殖/活性化されたγδT細胞を作製するためのロバストなシステムを以前に開発した(3、27、28)。インビトロでの細胞傷害性と、治療条件を再現するように設計された特定のインビボモデルでの生存率の向上/無増悪期間の増加と、の両方が示されている(1、2)。本出願人は、TMZが神経膠腫細胞表面上のNKG2Dリガンドの発現を一過性にアップレギュレートして、腫瘍がγδT細胞による認識を受けやすくなることを示しており(4、8)、TMZ耐性神経膠腫系統の死滅は、治療濃度のTMZの存在下でMGMT遺伝子改変γδT細胞によって増強される。本開示の細胞組成物および方法の使用を通して、細胞免疫療法と化学療法のタイミングを、両方の効果を最大限にするように調整することができる。したがって、本開示は、記載される新規な細胞組成物を提供するだけでなく、新規な抗膠芽腫治療戦略をも提供し、高悪性度の神経膠腫を処置するためのこれまで未開拓の手段を提供する。
【0092】
本開示の細胞組成物は、外科的に配置されたカテーテル(例えば、脳室瘻カテーテル)を介して腫瘍床に直接投与することが可能であるが、切除とTMZ投与量の増加との間の時間間隔は最大8週間に及ぶことがあり、これは、患者を感染の、または細胞療法を施す時期にカテーテルを配置するための追加の術式の、潜在的リスクにさらす。記載された細胞組成物に組み込まれるCARは、様々な投与方法で患者に投与したときに腫瘍にDRI-CAR T細胞を集結させるために、腫瘍関連抗原(例えば、神経膠腫特異的腫瘍関連抗原)を標的とするように設計され、様々な投与方法を使用することができるようにする。例えば、細胞組成物が静脈内経路または動脈内経路によって患者に投与される場合、記載の細胞組成物に組み込まれたCARは、DRI-CAR T細胞の腫瘍床への浸潤を高めるのに役立ち、腫瘍床におけるDRI-CAR T細胞の濃度上昇を可能にする。同様に、他の手段で(例えば、Rickhamカテーテルもしくは類似のデバイスを介して腫瘍床に直接的に、または脳室内投与によって)投与される場合、記載の細胞組成物に組み込まれたCARは、同じ結果が達成されるのを可能にする。活性化および細胞傷害性は、CARを介しておよび/またはγδT細胞によるNKG2Dリガンドの認識によって媒介され、これは、CARを介してT細胞を活性化するのに十分な密度でTAAを発現しない不均一な腫瘍において、特に重要な戦略である。重要なことには、この療法は、腫瘍細胞が高度にストレスを受け、制御性T細胞が枯渇し、他の腫瘍関連免疫防御が損なわれ、血管床がより透過性になっている、高用量化学療法中に行われる。TMZにより媒介されるリンパ球枯渇はまた、DRI-CAR T細胞の恒常的再構成、インビボ増殖および持続性に有利である。
【0093】
免疫療法の従来の方法および本開示の改良方法の概要を、それぞれ、図8Aおよび8Bに示す。従来の方法では、免疫担当細胞(immunocompetent cell)がサイトカイン処理および他の方法によって作製された。免疫担当細胞それ自体が殺腫瘍活性を示した。付加的処置、例えば化学療法レジメンを施すと、免疫担当細胞は枯渇され、治療用細胞の死滅のために処置の有効性が制限された。本開示の方法は、腫瘍特異的CARおよび生存因子(DRI-CAR)を含む、γδT細胞などの、しかしこれに限定されない、細胞組成物を提供することによって、こうした制限を克服する。化学療法レジメンのような付加的治療処置と組み合わせると、DRI-CAR細胞は、存在するCARにより、ストレス誘導リガンドの認識を介して、腫瘍細胞を攻撃する能力を保持するとともに、処置環境で生き残ることができる。さらに、制御性T細胞の減少は、さらなる治療上の利点を提供する。さらにまた、化学療法レジメンを介したリンパ球枯渇は、DRI-CAR T細胞の恒常的再構成、インビボ増殖および持続性に有利であり、治療結果をさらに改善する。
【実施例0094】
実施例1 - 遺伝子改変γδT細胞の開発およびインビトロ試験:
最適なトランスジーン発現をもたらすベクター構成を決定し、かつ遺伝子改変γδT細胞を作製するための最適な形質導入タイミングを決定するために、CARのcDNA配列と薬剤耐性を付与する生存因子のcDNA配列を共発現するレンチウイルスベクターが作製される。最適な送達および持続性を定量化するために、EGFRvIIIまたはIL13Rα(DRI-CAR)を保持する111[In]標識γδT細胞を用いた改変γδT細胞免疫療法は、免疫不全マウスにおいてTMZ化学療法中に、患者由来の神経膠腫異種系統(xenoline)に対する頭蓋内対静脈内の投与経路の効力、持続性および有効性を比較することによって、評価される。
【0095】
神経膠腫細胞を認識し、かつ膠芽腫(GBM)を標的とすることが知られているIL13RαおよびEGFRvIII CARをコードするベクターを作製する。さらに、TMZに対する耐性を付与するMGMTをコードするcDNAをCARと共発現させる。また、遺伝子移入および遺伝子改変細胞の追跡の最適な分析のためのフローまたはイメージングマーカーをコードする対照ベクターを作製する。EGFRvIII CARをコードする例示的な構築物を図1に示す。
【0096】
本発明者らの以前の研究により、単純SIVコード化p140K-MGMTベクターを挿入するのに最適な形質導入時期は、ゾレドロン酸/IL2ベースのγδT細胞増殖培養の開始後3~7日であることが検証されている。これらの条件下で、400μMを超える濃度のTMZに対して耐性を付与するのに十分なMGMTコピー数は、5という低いMOIで生じた。こうした条件は、2~7日目にわたる形質導入時期およびMOIならびに1~25のMOIのマトリクスを使用して、DRI-CAR形質導入について検証され、最適化される。
【0097】
(表1)実験計画
【0098】
頭蓋内神経膠腫異種移植片は、原発性GBMからのGBM-X12(古典的)、GBM-X22(間葉性)、GBM-X1066(神経)、およびGBM-XD456(前神経)外植片の親クローン(「P」で示す)とTMZ耐性クローン(「T」で示す)からなる。Beck (5)によって開発された方法を用いて、マウスに1.5×106細胞/kg(頭蓋内)または5×108細胞/kg(静脈内)の111[In]標識DRI-CAR γδT細胞を注入し、表1 (IC=頭蓋内;IP=腹腔内;IV=静脈内)および図2に示された実験計画に基づいて様々な処置を評価する。図3に乳癌についてモデル化されるようにX-SPECTにより、注入後最低3日間24時間間隔で画像検査を行う。生体内分布研究もまた、5×108細胞/kgの111[In]標識γδT細胞/kgを注入して24時間後に個別に実施し、主要組織および腫瘍を計数して、結果を%111[In]注入量(ID)/gとして表す。γδT細胞の腫瘍局在は、画像に関連するカラースケールから導き出して、腫瘍1グラムあたりに見られる注入放射線量のパーセントとして(慣例により)表される腫瘍内の蓄積放射能により定量化する。頭蓋内投与だけでなく静脈内投与も有効であると予想される。
【0099】
各DRI-CAR産物の効力は、4つの選択された異種系統に対するインビトロ細胞傷害性アッセイを用いて判定される。有効性は、表1および図2に示される実験計画に基づいて処置した腫瘍保持マウスの生存率を、未処置対照と比較することによって評価する。腫瘍組織病理学、腫瘍浸潤、リンパ球浸潤、およびリンパ球の免疫表現型を含む組織学的および機能的評価のために、腫瘍組織と正常組織を採取する。遊走および分布研究のためのノンパラメトリックt検定および/またはANOVA、ならびに生存データのノンパラメトリックログランク分析を利用して、統計分析を行う。処置群と対照群との間に0.15の差を投影すると、20回の反復/群は、p≦0.05で差を検出するために80%の検出力(power)をもたらす。
【0100】
実施例2 - 処置中に広く行われているであろう条件(例えば、先行する放射線療法、TMZ)下でのDRI-CAR療法の安全性の評価
本開示の細胞組成物および方法は、培養したヒト星状細胞に対するDRI-CARのインビトロ毒性アッセイを用いて、局所的な標的外(off-target)細胞傷害性の可能性について試験される。さらに、自殺遺伝子を発現するγδT細胞は、有利とみなされる安全性のメリットを与えるかどうかが判定される。ベクターの組み込み部位の解析も行われる。Vγ9Vδ2 T細胞のための比較可能な動物モデルは存在しないため、インビトロ毒性分析が実施される。DRI-CAR T細胞(20回の反復)を、250cGyの電離放射線または200μM TMZ中での4時間のインキュベーションのいずれかに曝露された培養ヒト星状細胞に対して試験し、NKG2Dリガンド発現およびDRI-CAR細胞媒介細胞傷害性の評価によって未処置の星状細胞と比較する。初期の研究は、MIC-AとULBP2のわずかなアップレギュレーション、および培養星状細胞に対するγδT細胞の細胞傷害性の有意性なしを示す。
【0101】
カスケード性の炎症反応または標的外の細胞傷害性から保護するために、自殺遺伝子がCAR遺伝子産物への組み込みについて評価される。γ-レトロウイルス、SFG.iCaspase9.2A.DeltaCD19は、選択マーカーとして役立つトランケート型ヒトCD19に、2A様配列を介して連結されたiC9からなる。カスパーゼ9自殺遺伝子のAP1903誘導性活性化は、ヒトFK506結合タンパク質(FKBP)に由来する薬剤結合ドメインに融合されたキメラタンパク質(iC9)を発現させることによって達成される。iC9はAP1903に曝露されるまで細胞内で静止状態にあり、AP1903はFKBPドメインを架橋し、iCasp9シグナル伝達を開始させて、遺伝子改変細胞のアポトーシスを誘導する。該遺伝子およびAP1903はBellicum Pharmaceuticals社(Houston, TX)から供給され、機能的研究も支援する。この構築物の使用はすでに記載されており(6、7)、全身のおよび頭蓋内のDRI-CAR T細胞の急速なアポトーシスを誘導するための投薬を最適化することを目的として、NSGマウスにおいて機能的研究を行うために使用される。
【0102】
レンチウイルス部位組み込み解析は、ゲノムウォーカー(Genome Walker)技術を使用したLenti-X(商標)システム(Clontech社)を用いて、我々の研究室で最初に実施される。
【0103】
実施例3 - ヒトの治療にDRI-CARを使用するための細胞の製造・出荷基準の標準化
cGMP細胞製造のための細胞傷害性(効力および毒性)アッセイ、フローサイトメトリー移植片組成分析、および感染症検査は、臨床試験への移行を可能にするであろう。細胞製剤および遺伝子治療製剤については、21 CFR 211.165および610においてFDAによって定められた、無菌性、純度、同一性および効力に関しての出荷基準が要求される。FDAは、無菌試験の手順を義務付けている。同一性試験は、臨床的HLAタイピングによって達成される。細胞製剤の純度/組成および効力試験には、我々の研究室での標準化が必要となる。FDA規則21 CFR 600.3は、表示通りに機能する製剤の特定の能力が、適切な検査によって明確にされるべきであることを要求しており、また、21 CFR 610.10は、その製剤のために特別に設計されたインビトロおよび/またはインビボ試験で効力の評価を構成すべきであると明言している。FDAはまた、細胞傷害性が標的表現型と相関することも推奨している;したがって、細胞傷害性は、薬事未承認検査(Laboratory Developed Test)についての1988年の臨床検査改善修正法案(Clinical Laboratory Improvement Act of 1988:CLIA)に規定される臨床的要件に対してDRI-CAR移植片機能を評価するための標準として、一貫した継代数の規定された標的神経膠腫細胞株を用いて、検証される。最適な機能とは、20:1のE:T(エフェクター:標的)比で50%殺傷として暫定的に定義される。培養星状細胞は陰性標的として、K562赤白血病細胞標的は陽性標的として役立つ。最終的な純度および組成は、全T細胞(CD3)%、γδT細胞%、αβT細胞(CD3+CD4+γδ-およびCD3+CD8+γδ-)%、NK細胞(CD16/56)%、B細胞(CD19)%および単球(CD14)%についてフローサイトメトリーにより評価される。標的出荷基準は、γδT細胞≧60%、αβT細胞≦5%、およびNK細胞≦25%である。統計分析は、最低20回のアッセイで、純度/組成分析では個々の細胞表現型についての、機能アッセイでは各E:T比に対する各殺傷%についての、平均、SD、および95%CIを確立することからなる。群間の個々のE:T比における差を比較するためにANOVAを使用する。インビトロ細胞傷害機能、ならびに動物モデルでの遊走研究および生存転帰が組み込まれる。
【0104】
実施例4 - 第0相臨床試験での原発性膠芽腫患者3人における切除後細胞療法としてのCAR-DRI 111 [In]標識γδT細胞の安全性、毒性、輸送性および遊走性の評価
臨床条件下でのTMZ耐性、および残存顕微鏡的疾患の潜在領域への遊走を確認するために、111[In]標識DRI-CAR T細胞を用いた少数の初期実験を実施する。この研究は、毒性が主な関心対象の項目である第0相臨床試験として行われる。適格な患者を順次受け入れ、1回の注入を行う。副作用の頻度は、頻度と百分率を用いることによって、体組織、悪性度および因果関係ごとにまとめられる。個々の対象のリストが提供され、そのリストには、症状発現の試験日および有害事象の長さを加えた、上記の情報が含まれる。統計的な比較は行わない。副次的な目的には、第I相および第II相臨床試験の仮説生成および設計を目的として、無増悪期間、早期および後期全身造血キメラ現象の存在、全身免疫機能ならびに全生存をモニタリングすることが含まれる。組織学的に確認された原発性GBMの切除を受ける18歳以上の成人男性および非妊娠女性からなる評価可能な患者を3名まで登録する。患者は、切除後に、かつDRI-CAR生産のためのRT(放射線療法)+TMZ療法の開始前に、1回の白血球除去療法を受ける。1×106個/kgのDRI-CAR T細胞の1回量を、RT+TMZ併用療法の終端の休止期間に続く高用量TMZ療法の間に投与する。細胞製剤の一部は、細胞の遊走を追跡するために111[In]で標識される。単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)を注入後12、24および48時間に実施する。1人の熟練した核医学医師が、全ての減衰補正された111[In]オキシン標識白血球の平面およびSPECT画像をレビューする。個々の患者は、次の患者を登録する前に、毒性に関して少なくとも30日間追跡される。有害事象の等級付けのためのがん療法評価プログラム共通毒性基準(Cancer Therapy Evaluation Program Common Toxicity Criteria)を用いて、毒性がDRI-CAR T細胞におそらく関連していると考えられる場合に、肝臓、肺および心臓に関わるグレード3もしくは4の毒性、またはその他のグレード4の毒性を、用量制限毒性(DLT)として定義する。DLTと考えられる重要な追加の事象(それらがおそらく関連している場合)には、死亡、脳卒中、手術を必要とする血腫、治療できない神経学的退行、無反応性の全身感染症、および移植片対宿主病が含まれる。推定上の標的外の毒性、または炎症もしくは白質脳症のような頭蓋内事象は、iC9自殺遺伝子を介してDRI-CAR T細胞のアポトーシスを活性化するためのAP1903投与の引き金になるだろう。
【0105】
実施例5 - ストレス誘導抗原の発現
神経膠腫異種移植片の選択されたストレス誘導リガンド(NKG2DL)は、TMZへの曝露時にアップレギュレートされる(図4A)。図4は、X12TおよびX22T神経膠腫異種移植片におけるNKG2DLのMIC-A、MIC-B、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3およびULBP-4の発現を示す。X12T神経膠腫異種移植片は、400μMのTMZで4時間処置した後に、最小限のアップレギュレーションでMIC-A、ULBP-1およびULBP-4の発現を示す。X22T神経膠腫異種移植片は、400μMのTMZで4時間処置した後に、MIC-AおよびULBP-4のアップレギュレーションと共にMIC-A、MIC-B、ULBP-1およびULBP-4の発現を示す。エクスビボで増殖/活性化させたγδT細胞は、図4Bに示すように、X12TおよびX22T神経膠腫異種移植片に由来する細胞を殺傷するのに有効であった。TMZ耐性のための生存因子を発現するように改変されたγδT細胞を、X12TおよびX22T神経膠腫異種移植片に由来する細胞と共に、漸増エフェクター:標的(E:T)比で培養し、溶解パーセント(フローサイトメトリーで測定された生細胞対死細胞の比によって決定される)をE:T比の関数として表した。E:T比が10:1より大きい場合、γδT細胞は、X12TおよびX22T神経膠腫異種移植片由来の細胞に対して細胞傷害性であった。γδT細胞は、20:1のE:T比で、培養ヒト星状細胞に対する毒性の証拠を何も示さなかった。
【0106】
実施例6 - γδT細胞療法の有効性はストレス誘導抗原の発現によって増加する
腫瘍細胞上のNKG2DLの発現は、γδT細胞療法の全体的な効果を高める。図5Aおよび5Bは、様々な処置に応答する、それぞれX12PおよびX12T(TMZ耐性)神経膠腫保持マウスの生存率を示す。図5Aは、TMZ単独(TMZ)で処置したX12P神経膠腫保持マウス、TMZ耐性のための生存因子を発現するように改変されたγδT細胞およびNK細胞を含む組成物とTMZとの組み合わせ(DRI)で処置したX12P神経膠腫保持マウス、未改変のγδT細胞およびNK細胞(CT)を受けたマウス、ならびに処置を受けていない対照マウスの生存率を示す。TMZ処置レジメン(青色)およびDRI処置レジメン(赤色)は、CT処置レジメン(緑色)および未処置マウス(黒色)と比較して、X12P神経膠腫保持マウスの生存率を増加させた(p<0.001)。DRI処置レジメンは、TMZ処置レジメンに対して生存期間中央値を57日から75日に増加させた。図5Bは、図5Aに記載したように処置されたX12T神経膠腫保持マウスの生存率を示す。DRI処置レジメン(赤色)は、未処置マウス(黒色)と比較して、X12T神経膠腫保持マウスの生存率を増加させた(p=0.0147)。TMZ処置レジメンは、予想通りに、未処置マウスと比較して、X12T神経膠腫保持マウスの生存率を改善しなかった。DRI処置レジメンは、TMZ処置レジメンに対して生存期間中央値を22日から27日に増加させた。DRI処置レジメンの効果は、γδT細胞およびNK細胞の投与を、週1回の投与(図2に示す)から週2回の投与に増強することによって高めることができた(データは示してない)。この変更した投与法では、DRI処置レジメンは、未処置マウスと比較して、X12T神経膠腫保持マウスの生存率を増加させ(p=0.0004)、TMZ処置レジメンに対して生存期間中央値を22日から38日に増加させた。
【0107】
実施例7 - ストレス誘導抗原は正常脳組織においてアップレギュレートされない
放射線を受けた転移性脳腫瘍組織および隣接する正常脳組織の観察から、ストレス誘導抗原(NKG2Dリガンド)は腫瘍組織においてアップレギュレートされるのに対して、周囲の正常(すなわち、非腫瘍)脳組織では本質的に発現されないことが明らかにされる(図6)。図6は、放射線を受けた転移性脳腫瘍組織および隣接する正常脳組織からのストレス誘導抗原の発現を示す。転移性脳腫瘍組織は、ULBP-1の強い発現とULBP-2およびULBP-3の弱い発現を示した。隣接する正常脳組織にはストレス誘導抗原がまったく観察されなかった。したがって、本明細書に記載の細胞組成物による正常脳組織へのオフターゲット効果および結果として生じる損傷の可能性は低い。
【0108】
実施例8 - ストレス誘導抗原は放射線処置によってアップレギュレートされない
同様に、ストレス誘導抗原(NKG2Dリガンド)は、放射線を受けたマウス脳においてアップレギュレートされず、他の炎症兆候も見られない(図7)。図7は、前後方向と後前方向の一組の160kV X線ビームを17Gyの線量で用いて放射線を当てたWT C56BL/6マウス(パネルb、d)、ならびに放射線を当てていない対照マウス(パネルa、c)の全脳を示す。マウスを70日目に屠殺し、脳を摘出した。パネルaおよびbは、対照マウスと放射線を受けたマウスとの間のストレス抗原MULT-1染色を比較する。パネルcおよびdは、対照マウスと放射線を受けたマウスとの間の抗CD3による染色を比較する。放射線を受けたマウスはMULT-1および抗CD3の両方について陰性であり、正常脳組織ではストレス誘導抗原が放射線処置に応答してアップレギュレートされず、かつ正常脳組織ではリンパ球浸潤が放射線処置に応答して誘導されないことを示している。
【0109】
引用文献
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
【手続補正書】
【提出日】2022-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願の明細書に記載される発明。