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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184988
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】抗体エピトープ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221206BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/24 ZNA
A61K39/395 U
A61K39/395 D
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P29/00
A61P17/06
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/04
A61P25/08
A61P19/10
A61P11/06
A61P37/06
A61P25/00
A61K49/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022150888
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2019533144の分割
【原出願日】2017-12-13
(31)【優先権主張番号】1621907.3
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローソン、アラステア デイビッド グリフィフィシズ
(72)【発明者】
【氏名】ライトウッド、ダニエル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ムンロ、レベッカ ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】オコンネル、ジェイムズ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ポーター、ジョン ロバート
(57)【要約】
【課題】抗体、特に、TNFαの低分子モジュレータをスクリーニングするために使用することができる特異的エピトープを認識する抗体の提供。
【解決手段】ある特定の化合物がTNFに結合し、TNF受容体に結合するトリマーTNFのコンフォメーションを安定化することが証明された。そのような化合物の複合体とTNFスーパーファミリーメンバーとの複合体に選択的に結合する抗体が開示される。これらの抗体を使用して、同じ活性を有し、ターゲットエンゲージメントバイオマーカーとしての、さらなる化合物を検出することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリマーTNFαの少なくとも以下の残基:
(a)Y115
(b)Q149;及び
(c)N137若しくはK98、又は両方
を含むエピトープに結合する抗体であって、Y115及びQ149が、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、N137及びK98が、トリマーTNFαのA鎖上に存在し、かつ残基ナンバリングが配列番号36に従う、上記抗体。
【請求項2】
トリマーTNFαのC鎖上のE146若しくはトリマーTNFαのC鎖上のP117、又はE146及びP117の両方をさらに含むエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
トリマーTNFαのC鎖上に存在する残基であるA145をさらに含むエピトープに結合する、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
TNFαのA鎖上に存在する残基であるQ88をさらに含むエピトープに結合する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
(a)L63;
(b)L94;
(c)S95;及び
(d)A96
からなる群から選択される1又は複数の残基をさらに含むエピトープに結合し、L63が、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、かつL94、S95及びA96が、トリマーTNFαのA鎖上に存在する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
(a)I97;
(b)L93;及び
(c)S81
からなる群から選択される1又は複数の残基をさらに含むエピトープに結合し、I97、L93及びS81が、全てトリマーTNFαのA鎖上に存在する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
(a)K65;
(b)Q67;
(c)P113;
(d)D143;
(e)T77;
(f)T79;
(g)I83;
(h)T89;
(g)K90;
(i)V91;
(j)N92;
(k)E135;
(l)I136;及び
(m)R138
からなる群から選択される1又は複数の残基をさらに含むエピトープに結合し、K65、Q67、P113及びD143が、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、かつT77、T79、I83、T89、K90、V91、N92、E135、I136及びR138が、トリマーTNFαのA鎖上に存在する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
(a)Y119;
(b)Q47;及び
(c)S133
からなる群から選択される1又は複数の残基をさらに含むエピトープに結合し、
Y119、Q47及びS133の全てが、トリマーTNFαのA鎖上に存在する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
配列番号36のTNFαの以下の残基:
(a)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、T77、T79、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、K65、Q67、Y115、A145、E146及びQ149;
(b)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、T77、T79、I83、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、K98、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、L63、K65、Q67、P113、Y115、D143、A145、E146及びQ149;
(c)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、T77、T79、S81、I83、Q88、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、K98、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、L63、K65、Q67、P113、Y115、P117、D143、A145、E146及びQ149;又は
(d)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、Q27、Q47、T77、T79、S81、I83、Q88、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、K98、Y119、R131、S133、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、L63、K65、Q67、P113、Y115、P117、D143、A145、E146及びQ149
を含むエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
1nM以下の親和性(KD-ab)を有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
200pM以下の親和性を有する、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
ヒト化抗体である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
Fab、改変型Fab、Fab’、改変型Fab’、F(ab’)、Fv、単一ドメイン抗体又はscFvである、請求項1から12までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
トリマーTNFαと、化合物(1)~(7):
【化1-1】

【化1-2】

【化1-3】

のいずれか1つとの複合体に結合する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
トリマー-化合物複合体に対して1nM以下の親和性(KD-ab)を有する、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
親和性が200pM以下である、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
TNFαへの結合について請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体と競合する抗体。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項19】
治療によるヒト又は動物の身体の処置の方法における使用のための請求項1から17までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項20】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容されるアジュバント及び/又は担体とを含む医薬組成物。
【請求項21】
対象から得られた試料中の化合物-トリマー複合体の検出のためのターゲットエンゲージメント(target engagement)バイオマーカーとしての請求項1から17までのいずれか一項に記載の抗体の使用であって、前記抗体が検出可能であり、前記複合体がトリマーTNFαと、トリマーTNFαに結合することができる化合物とを含み、それにより、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節する、上記抗体の使用。
【請求項22】
化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達を調節する、トリマーTNFαへの化合物のターゲットエンゲージメントを検出する方法であって、
(a)前記化合物を投与された対象から試料を取得するステップ;
(b)請求項1から17までのいずれか一項に記載の抗体と、前記試料及び対照試料とを接触させるステップであって、前記抗体が検出可能である、ステップ;
(c)前記検出可能抗体の、前記試料及び前記対照試料への結合の量を決定するステップ
を含み、前記検出可能抗体の前記試料への結合が前記検出可能抗体の前記対照試料への結合よりも高いことが、前記化合物の前記トリマーTNFαへのターゲットエンゲージメントを示す、上記方法。
【請求項23】
トリマーTNFαのコンフォメーション変化を惹起する化合物のスクリーニングにおける請求項1から17までのいずれか一項に記載の抗体の使用であって、前記コンフォメーション変化が、トリマーTNFαの結合に対する必要な受容体のシグナル伝達を調節する、上記使用。
【請求項24】
TNFαトリマーと、それに結合する化合物とを含む複合体であって、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節し、前記複合体が、1nM以下のKD-abで請求項1から17までのいずれか一項に記載の抗体に結合する、上記複合体。
【請求項25】
TNFαトリマーに結合して複合体を形成することができる化合物であって、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節し、化合物-トリマー複合体が1nM以下のKD-abで請求項1から17までのいずれか一項に記載の抗体に結合する、上記化合物。
【請求項26】
TNFαトリマーに結合し、必要な受容体を介するトリマーのシグナル伝達を調節することができる化合物を同定する方法であって、
(a)TNFαトリマーと試験化合物とを含む試験化合物-トリマー複合体の、前記複合体に選択的に結合する請求項1から17までのいずれか一項に記載の抗体に対する結合親和性を測定するための結合アッセイを実行するステップ;
(b)ステップ(a)で測定された結合親和性と、ステップ(a)に記載の抗体に高い親和性で結合することが公知の異なる化合物-トリマー複合体の結合親和性とを比較するステップ;及び
(c)ステップ(b)に記載の比較に照らして考慮した場合、その測定された結合親和性が許容される場合、ステップ(a)の化合物-トリマー複合体中に存在する化合物を選択するステップ
を含む、上記方法。
【請求項27】
抗体が、TNFαトリマーの非存在下での化合物への結合及び/又は化合物の非存在下でのTNFαトリマーへの結合と比較して、TNFαトリマー-化合物複合体に選択的に結合する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗体が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーへの結合及び/又はTNFαトリマーの非存在下での化合物への結合に関するKD-abの少なくとも100分の1のKD-abでTNFαのトリマー-化合物複合体に結合する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
抗体が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーへの結合及び/又はTNFαトリマーの非存在下での化合物への結合に関するKD-abの少なくとも200分の1のKD-abでTNFαのトリマー-化合物複合体に結合する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
高効率アッセイである、請求項26から29までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの安定性と比較して、TNFαトリマーの安定性を増加させる、請求項26から30までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
安定性の増加が、少なくとも1℃のTNFαトリマーの温度遷移中点(T)の増加をもたらす、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
安定性の増加が、少なくとも10℃のTNFαトリマーの温度遷移中点(T)の増加をもたらす、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
TNFαトリマーのTの増加が10℃~20℃である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対する結合親和性と比較して、TNFαトリマーの、必要な受容体に対する結合親和性を増加させる、請求項26から34までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対する結合に関する結合速度(kon-r)及び解離速度(koff-r)値と比較して、kon-rを増加させること及び/又はkoff-rを減少させることによって、TNFαトリマーの、必要な受容体に対する結合親和性を増加させる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対する結合に関する結合速度(kon-r)値と比較して、kon-rを増加させることによって、TNFαトリマーの、必要な受容体に対する結合親和性を増加させる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対するKD-rと比較して、TNFαトリマーの、必要な受容体に対するKD-rを減少させ、
a)化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対するKD-rと比較して、TNFαトリマーの、必要な受容体に対するKD-rを少なくとも10分の1に減少させ、
b)化合物の存在下での、必要な受容体への結合に関するTNFαトリマーのKD-r値が10nM未満である、請求項35、36又は37に記載の方法。
【請求項39】
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対するKD-rと比較して、TNFαトリマーの、必要な受容体に対するKD-rを減少させ、
a)化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対するKD-rと比較して、TNFαトリマーの、必要な受容体に対するKD-rを少なくとも4分の1に減少させ、
b)化合物の存在下での、必要な受容体への結合に関するTNFαトリマーのKD-r値が600pM未満である、請求項35、36又は37に記載の方法。
【請求項40】
化合物の存在下での、必要な受容体への結合に関するTNFαトリマーのKD-r値が200pM未満である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記試験化合物が500nM以下のIC50値を有する、請求項26から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ステップ(b)における化合物が、化合物(1)~(7)、又はその塩若しくは溶媒和物からなる群から選択される、請求項26から41までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
受容体がTNF受容体である、請求項26から42までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体、特に、TNFαの低分子モジュレータをスクリーニングするために使用することができる特異的エピトープを認識する抗体に関する。本発明は、そのようなTNFα低分子モジュレータ複合体に選択的に結合する抗体、及びそのような抗体の使用に関する。本発明はまた、前記抗体を使用してTNFαの新規モジュレータを同定するためのアッセイにも関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーは、細胞生存及び細胞死を調節する主な機能を共有するタンパク質ファミリーである。TNFスーパーファミリーのメンバーは、「ジェリーロール」β構造を形成する、逆平行β鎖を含む2つの逆平行βプリーツシートを含む、共通のコアモチーフを共有する。TNFスーパーファミリーのメンバーにより共有される別の共通の特徴は、ホモ又はヘテロトリマー複合体の形成である。それは、特定のTNFスーパーファミリー受容体に結合し、活性化するTNFスーパーファミリーメンバーのこれらのトリマー形態である。
【0003】
TNFαは、TNFスーパーファミリーの典型的なメンバーである。TNFα産生の調節異常は、有意に医学的に重要ないくつかの病状に関与してきた。例えば、TNFαは、関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病を含む)、乾癬、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、疼痛、てんかん、骨粗鬆症、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)及び多発性硬化症(MS)に関与してきた。TNFスーパーファミリーの他のメンバーも、自己免疫疾患を含む病状に関与してきた。
【0004】
TNFスーパーファミリーメンバーの従来のアンタゴニストは、大分子であり、TNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対する結合を阻害することによって作用する。従来のアンタゴニストの例としては、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、アダリムマブ(Humira(登録商標))及びセルトリズマブペゴール(Cimzia(登録商標))などの抗TNFα抗体、特に、モノクローナル抗体、又はエタネルセプト(Enbrel(登録商標))などの可溶性TNFα受容体融合タンパク質が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、TNFαを調節する低分子実体(SME)のクラスを同定した。これらの化合物は、ホモトリマー形態のTNFαに結合すること、並びにTNFαのホモトリマーのコンフォメーション変化を誘導すること、及び/又は安定化することによって作用する。例えば、化合物が結合したTNFαのホモトリマーは、TNFα受容体に結合することができるが、TNFα受容体の下流のシグナル伝達を開始することがほとんどできないか、又は開始することができない。これらの化合物を、TNFαによって媒介される状態の処置において使用することができる。
【0006】
本発明者らは、そのような化合物と、TNFαとを含む複合体に選択的に結合する抗体を開発した。これらの抗体を使用して、この様式でTNFαを阻害することができ、また、ターゲットエンゲージメント(target engagement)バイオマーカーとして使用することができるさらなる化合物を同定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、トリマーTNFαの少なくとも以下の残基:
(a)Y115
(b)Q149;及び
(c)N137若しくはK98、又は両方
を含むエピトープに結合する抗体であって、Y115及びQ149が、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、N137及びK98が、トリマーTNFαのA鎖上に存在し、残基ナンバリングが、配列番号36に従う、抗体を提供する。
【0008】
本発明はまた、
- TNFαへの結合について、上記で定義された抗体と競合する抗体、
- 本発明の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド、
- 治療によるヒト又は動物の身体の処置の方法における使用のための本発明の抗体、
- 本発明の抗体と、薬学的に許容されるアジュバント及び/又は担体とを含む医薬組成物、
- 対象から得られた試料中の化合物-トリマー複合体の検出のためのターゲットエンゲージメントバイオマーカーとしての本発明の抗体の使用であって、前記抗体は、検出可能であり、前記複合体は、トリマーTNFαと、トリマーTNFαに結合することができる化合物とを含み、それによって、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達を調節する、上記使用、
- 化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達を調節する、化合物の、トリマーTNFαへのターゲットエンゲージメントを検出する方法であって、
(a)前記化合物を投与された対象から試料を取得すること;
(b)検出可能である本発明の抗体を、前記試料及び対照試料と接触させること;
(c)前記検出可能抗体の、前記試料及び前記対照試料への結合の量を決定すること
を含み、前記検出可能抗体の前記対照試料への結合より高い、前記検出可能抗体の前記試料への結合が、前記化合物の、前記トリマーTNFαへのターゲットエンゲージメントを示す、上記方法、
- TNFαのコンフォメーション変化を惹起する化合物のスクリーニングにおける本発明の抗体の使用であって、前記コンフォメーション変化が、トリマーTNFαの結合に対する必要な受容体のシグナル伝達を調節する、上記使用、
- トリマーTNFαと、それに結合する化合物とを含む複合体であって、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達を調節し、1nM以下のKD-abで本発明の抗体に結合する、上記複合体、
- TNFαトリマーに結合して、複合体を形成することができる化合物であって、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達を調節し、化合物-トリマー複合体が、1nM以下のKD-abで本発明の抗体に結合する、上記化合物、
- TNFαトリマーに結合し、必要な受容体を介するトリマーのシグナル伝達を調節することができる化合物を同定する方法であって、
(a)TNFαトリマーと、試験化合物とを含む試験化合物-トリマー複合体の、前記複合体に選択的に結合する本発明の抗体に対する結合親和性を測定するための結合アッセイを実行するステップ;
(b)ステップ(a)で測定された結合親和性を、ステップ(a)に記載の抗体に対して高い親和性で結合することが公知の異なる化合物-トリマー複合体の結合親和性と比較するステップ;及び
(c)その測定された結合親和性が、ステップ(b)に記載の比較に照らして考慮した場合に許容される場合、ステップ(a)の化合物-トリマー複合体中に存在する化合物を選択するステップ
を含む、上記方法
も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ヒトTNFαの結晶構造における残基N168、I194、F220及びA221を強調した図である。
図2】CA185_01974mFab及び化合物(1)を用いたHPLC実験の結果を示す。過剰のFabに相当するピークは、1.5×及び2.0×過剰に現れる。したがって、化学量論は、1Fab:1TNFαトリマーと決定された。
図3】CA185_01979mFab及び化合物(1)を用いたHPLC実験の結果を示す。再度、過剰のFabに相当するピークは、1.5×及び2.0×過剰に現れる。したがってこの場合も、化学量論は、1Fab:1TNFαトリマーと決定された。
図4】市販の抗TNFαポリクローナル抗体を使用した、化合物(3)、(4)及び(5)との全TNFαELISAの結果を示す。
図5】CA185_01974.0並びに化合物(3)、(4)及び(5)を用いたコンフォメーション特異的TNFαELISAの結果を示す。アポTNFαはこのアッセイでシグナルを示さず、化合物結合TNFαに対する抗体CA185_01974の結合の特異的性質を実証する。
図6】1及び10μg/mlのCA185_01974及びCA185_01979を用いた染色のFACSヒストグラムプロットを示す。これらのプロットは、抗体が、化合物(1)とプレインキュベートしたTNFαのみを認識することを実証する。DMSO対照では染色はなかった。
図7】親NS0細胞系と、膜TNFαを過剰発現する改変NS0細胞系とに対する、CA185_01974を用いた染色のFACSヒストグラムプロットを示す。細胞を化合物(1)又はDMSOと共にインキュベートし、抗体Fab断片を用いて染色した。結果は再びDMSO対照で(親細胞系又は改変細胞系のいずれについても)染色がないことを示す。しかしながら、化合物(1)の存在下で改変細胞系について染色が観察される。
図8】カニクイザルTNFαを使用したCA185_01974に対する親和性値の決定のためのセンソグラムを示す。対照(上部パネル)には、カニクイザルTNFα及びDMSOを含めた。次いで下部パネルは、化合物(4)と複合体化されたカニクイザルTNFαについての二連の実験を示す。
図9】ヒトTNFαを使用したCA185_01974に対する親和性値の決定のためのセンソグラムを示す。対照(上部パネル)には、ヒトTNFα及びDMSOを含めた。次いで下部パネルは、化合物(4)と複合体化されたヒトTNFαについての二連の実験を示す。
図10】化合物(1)~(7)の構造を示す。
図11】ヒトTNFα非対称トリマーと、化合物(2)と、2つのヒトTNFR1受容体との複合体に結合したFab1974の構造を示す。
図12図11と同じ構造であるが、計算的にモデル化した対称トリマーを伴う場合を(つまり、化合物の非存在下で)示す。この対称トリマーを伴う場合、トリマーのA鎖は、Fab断片との相互作用を保持している。しかしながら、Fab断片とトリマーのC鎖との間の立体的衝突がある。
図13】CA185_1974を伴う、TNFαトリマーのA鎖及びC鎖で実験的に決定されたエピトープを球として示す。
図14】CA185_1974が、複合体生物学的マトリックスにおける標的占有率を測定するための好適な試薬であることを示す。CA185_1974を捕捉試薬として使って、市販の抗TNFα抗体を検出試薬として用いる高感度ELISAを使用して、化合物(2)と複合体化されたTNFαを測定した。過剰な化合物又はDMSOのいずれかとプレインキュベートしたTNFαを、(内因性TNFαを枯渇させた)純粋なヒト血漿へ注入し、種々な濃度に希釈した。TNFα-低分子阻害剤複合体により生じたシグナルは、TNFα注入濃度に比例して明らかに増加した。DMSOとプレ-インキュベートしたTNFα(アポTNF)では、試験したどのTNFα注入濃度でも、有意な検出は認められなかった。TNFα-低分子複合体のシグナルは、アポTNFαバックグラウンドより有意に高く、25pg/ml以上のTNFα濃度で少なくとも0.999の確率であった。
図15図15(a)は、直接固定化したヒトTNFαに結合する化合物(1)の、シングルサイクル動態を示す。図15(b)は、CA185_1974を介して捕捉されたヒトTNFαに結合する化合物(1)のシングルサイクルカイネティクスを示す。コンフォメーション選択的抗体CA1974を介して捕捉されている場合、動態は、直接固定化されたアポTNFとの「遅い結合-遅い解離」から「速い結合-速い解離」へ変わる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、CA185_01974.0のLCDR1を示す。
配列番号2は、CA185_01974.0のLCDR2を示す。
配列番号3は、CA185_01974.0のLCDR3を示す。
配列番号4は、CA185_01974.0のHCDR1を示す。
配列番号5は、CA185_01974.0のHCDR2を示す。
配列番号6は、CA185_01974.0のHCDR3を示す。
配列番号7は、CA185_01974.0のLCVRのアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、CA185_01974.0のHCVRのアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、CA185_01974.0のLCVRのDNA配列を示す。
配列番号10は、CA185_01974.0のHCVRのDNA配列を示す。
配列番号11は、CA185_01974.0のカッパ軽鎖のアミノ酸配列を示す。
配列番号12は、CA185_01974.0のmIgG1重鎖のアミノ酸配列を示す。
配列番号13は、CA185_01974.0のmFab(ヒンジなし)重鎖のアミノ酸配列を示す。
配列番号14は、CA185_01974.0のカッパ軽鎖のDNA配列を示す。
配列番号15は、CA185_01974.0のmIgG1重鎖のDNA配列を示す。
配列番号16は、CA185_01974.0のmFab(ヒンジなし)重鎖のDNA配列を示す。
配列番号17は、CA185_01979.0のLCDR2を示す。
配列番号18は、CA185_01979.0のLCDR3を示す。
配列番号19は、CA185_01979.0のHCDR1を示す。
配列番号20は、CA185_01979.0のHCDR2を示す。
配列番号21は、CA185_01979.0のHCDR3を示す。
配列番号22は、CA185_01979.0のLCVRのアミノ酸配列を示す。
配列番号23は、CA185_01979.0のHCVRのアミノ酸配列を示す。
配列番号24は、CA185_01979.0のLCVRのDNA配列を示す。
配列番号25は、CA185_01979.0のHCVRのDNA配列を示す。
配列番号26は、CA185_01979.0のカッパ軽鎖のアミノ酸配列を示す。
配列番号27は、CA185_01979.0のmIgG1重鎖のアミノ酸配列を示す。
配列番号28は、CA185_01979.0のmFab(ヒンジなし)重鎖のアミノ酸配列を示す。
配列番号29は、CA185_01979.0のカッパ軽鎖のDNA配列を示す。
配列番号30は、CA185_01979.0のmIgG1重鎖のDNA配列を示す。
配列番号31は、CA185_01979.0のmFab(ヒンジなし)重鎖のDNA配列を示す。
配列番号32は、ラットTNFαのアミノ酸配列を示す。
配列番号33は、マウスTNFαのアミノ酸配列を示す。
配列番号34は、ヒトTNFαのアミノ酸配列を示す。
配列番号35は、ヒトTNFαの可溶性形態のアミノ酸配列を示す。
配列番号36は、ヒトTNFαの可溶性形態のアミノ酸配列であるが、(配列番号35におけるクローニングの人為生成物である)最初の「S」がない、配列を示す。
配列番号37は、N54D及びC182S変異を有するヒトTNFR1の細胞外ドメインのアミノ酸配列を示す。
配列番号38は、配列番号37のアミノ酸配列であるが、クローニングの人為生成物である最初の「G」がない、配列を示す。
【0011】
TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータ
トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する試験化合物が同定された。以下の開示は一般的に、本発明の実施形態は、具体的には、そのような化合物のTNFαへの結合に関する。
【0012】
試験化合物は、1000Da以下、750Da以下、又は600Da以下の分子量を有する低分子実体(SME)である。分子量は、約50~約1000Da、又は約100~約1000Daの範囲にあってもよい。これらの化合物は、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節するトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのコンフォメーションを安定化する。そのような化合物の例としては、式(1)~(7)の化合物が挙げられる。
【0013】
トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに対する化合物の安定化効果を、化合物の存在下及び非存在下でトリマーの温度遷移中点(Tm)を測定することによって定量することができる。Tmは、生物分子の50%がアンフォールディングされる温度を意味する。TNFスーパーファミリーメンバーのトリマーを安定化する化合物は、トリマーのTmを増加させる。Tmを、当業界で公知の任意の適切な技術を使用して、例えば、示差走査熱量測定(DSC)又は蛍光プローブ熱変性アッセイを使用して決定することができる。
【0014】
化合物は、TNFスーパーファミリーメンバーのトリマー内に存在する中心空間(すなわち、トリマーのコア)の内部に結合してもよい。
【0015】
これらの化合物は、TNFスーパーファミリーメンバーを、TNFスーパーファミリー受容体アンタゴニストに変化させることができる。これらの化合物は、したがって、TNFスーパーファミリーメンバーとその受容体との高親和性相互作用と競合する必要なく、TNFスーパーファミリーメンバーのシグナル伝達を遮断することができる。
【0016】
或いは、化合物は、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を増強するトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのコンフォメーションを安定化することができる。これらの化合物は、したがって、TNFスーパーファミリーメンバーとその受容体との高親和性相互作用と競合する必要なく、TNFスーパーファミリーメンバーのシグナル伝達を増加させることができる。
【0017】
ここで、化合物がアンタゴニストとして記載される場合、化合物は同様にアゴニストでもあり、TNFスーパーファミリーメンバーのトリマーと、そのようなアゴニスト化合物との複合体に結合するTNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を増加させることができることが理解される。同様に、他の開示がアンタゴニスト化合物、そのような化合物を同定する方法及びそのような化合物の使用を指す場合、本開示は、同様にアゴニスト化合物を指してもよい。
【0018】
本明細書に記載の化合物は、TNFスーパーファミリー受容体の天然のアゴニスト、すなわち、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合し、これらのトリマーに、必要なTNFスーパーファミリー受容体に依然として結合し、受容体によるシグナル伝達を調節するコンフォメーションを採用させる、アロステリックなモジュレータである。調節することにより、化合物が拮抗効果を有し、したがって、TNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を減少させるか、又は他には刺激効果を有し、したがって、TNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を増加若しくは増強することができることが理解される。
【0019】
これらの化合物は、天然のTNFスーパーファミリーメンバーアゴニストを、アンタゴニストに変換することができる。対照的に、従来のTNFスーパーファミリーメンバーアンタゴニストは、TNFスーパーファミリーメンバー又はTNFスーパーファミリー受容体に結合し、TNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体への結合を防止する。別の方法では、化合物は、TNFスーパーファミリーメンバーが化合物の非存在下で結合する場合のTNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達のレベルと比較して、TNFスーパーファミリーメンバーが結合する場合のTNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を増加させることができる。化合物は、したがって、天然のTNFスーパーファミリーメンバーアゴニストを、いわゆる「スーパーアゴニスト」に変換することができる。化合物は、したがって、リガンド活性のアロステリックモジュレータ(AMLA)としても公知であってよい。
【0020】
化合物は、それらが少なくとも1つのTNFスーパーファミリーメンバーに結合し、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、TNFスーパーファミリー受容体のシグナル伝達を調節するトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのコンフォメーションを安定化するという条件で、その化学式又は構造に関して限定されない。化合物は、したがって、本明細書に記載の抗体及び方法を使用して同定することができる。非限定的な例は、ベンゾイミダゾール部分又はそのイソスターを含みうる化合物である。
【0021】
化合物は、化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対する結合親和性と比較して、TNFスーパーファミリーメンバー(化合物-トリマー複合体の形態にある)の、必要な受容体に対する結合親和性を増加させることができる。
【0022】
化合物は、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する。そのような化合物は、トリマー形態の1又は複数のTNFスーパーファミリーメンバーに特異的(又は選択的)に結合してもよい。化合物は、ただ1つのTNFスーパーファミリーメンバーに特異的(又は選択的)に結合するが、任意の他のTNFスーパーファミリーメンバーには結合しなくてもよい。化合物はまた、2、3、4又は最大で全てのTNFスーパーファミリーメンバーに特異的に結合してもよい。特異的(又は選択的)とは、化合物が、TNFスーパーファミリーの他のメンバーを含んでもよい、任意の他の分子と有意に交差反応することなく、目的の分子又は複数の分子、この場合、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合することと理解される。交差反応性を、任意の好適な方法、例えば、表面プラズモン共鳴によって評価することができる。トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの化合物と、トリマー形態のその特定のTNFスーパーファミリーメンバー以外の分子との交差反応を、化合物がトリマー形態の目的のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する強さの少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の強さで他の分子に結合する場合、有意と考えることができる。例えば、化合物がトリマー形態の目的のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する強さの約5%~約100%、典型的には、約20%~約100%、又は約50%~約100%の強さで他の分子に結合する場合、交差反応を有意と考えることができる。トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに特異的(又は選択的)である化合物は、それがトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する強さの約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%又は20%未満の強さで別の分子に結合してもよい(ゼロ結合に下がる)。化合物は、それがトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する強さの約20%未満、約15%未満、約10%未満、又は約5%未満、約2%未満又は約1%未満の強さで他の分子に結合してもよい(ゼロ結合に下がる)。
【0023】
試験化合物がTNFスーパーファミリーメンバーに結合する速度は、本明細書では「結合」速度、kon-cと呼ばれ、試験化合物がTNFスーパーファミリーメンバーから解離する速度は、本明細書では「解離」速度又はkoff-cと呼ばれる。本明細書で使用される場合、記号「KD-c」は、試験化合物のTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合親和性(解離定数)を示す。KD-cは、koff-c/kon-cと定義される。試験化合物は、遅い「結合」速度を有してもよく、TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物-トリマー複合体のピーク強度の質量分析によって分で測定することができる。試験化合物のKD-c値を、異なるTNFスーパーファミリーメンバー:化合物-トリマー複合体比でこの測定を繰り返すことによって見積もることができる。非限定的な例として、化合物のTNFスーパーファミリーのトリマーへの結合は、約10-1-1の速い「結合」速度と共に、遅い「解離」速度、例えば、10-3-1、10-4-1の値、又は測定可能な「解離」速度がないことを特徴とすることができる。
【0024】
本明細書で使用する場合、記号「kon-r」は、化合物-トリマー複合体がTNFスーパーファミリー受容体に結合する速度(「結合」速度)を示す。本明細書で使用する場合、記号「koff-r」は、化合物-トリマー複合体がTNFスーパーファミリー受容体から解離する速度(「解離」速度)を示す。本明細書で使用する場合、記号「KD-r」は、化合物-トリマー複合体の、スーパーファミリー受容体に対する結合親和性(解離定数)を示す。KD-rは、koff-r/kon-rと定義される。
【0025】
試験化合物の存在下でのTNFスーパーファミリーメンバー(すなわち、化合物-トリマー複合体の形態にある)の、その受容体への結合に関するKD-r値は、試験化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーのその受容体への結合に関するKD-r値の、少なくとも約1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1でもよい。化合物-トリマー複合体の、TNFスーパーファミリーメンバーへの結合に関するKD-r値を、試験化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーのトリマーの、TNFスーパーファミリー受容体への結合のKD-r値の、少なくとも約1.5分の1、又は少なくとも約3分の1、又は少なくとも4分の1に減少させることができる、すなわち、化合物-トリマー複合体の、TNFスーパーファミリー受容体に対する結合親和性を、試験化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーのトリマーのTNFスーパーファミリー受容体に対する結合親和性と比較して少なくとも約1.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍増加させることができる。
【0026】
本明細書に記載の化合物は、化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合親和性と比較して、TNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合親和性を約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍以上増加させることができる。
【0027】
結合親和性を、結合親和性(KD-r)単位として与えることができ、μM、nM又はpMなどの任意の適切な単位で与えることができる。KD-r値が小さいほど、TNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合親和性が大きい。
【0028】
化合物の存在下でのその受容体への結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値は、試験化合物の非存在下でのその受容体への結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値の、少なくとも約1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1でもよい。
【0029】
TNFスーパーファミリー受容体に結合するTNFスーパーファミリーのトリマーのみのKD-r値と比較した、TNFスーパーファミリー受容体への結合に関する化合物-トリマー複合体のKD-r値の減少は、TNFスーパーファミリーのトリマーのみと比較したTNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の結合速度(kon-r)の増加、及び/又はTNFスーパーファミリーのトリマーのみと比較した解離速度(koff-r)の減少の結果生じてもよい。TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の結合速度(kon-r)は、一般的には、TNFスーパーファミリーのトリマーのみと比較して増加する。TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の解離速度(koff-r)は、一般的には、TNFスーパーファミリーのトリマーのみと比較して減少する。最も好適には、TNFスーパーファミリーのトリマーのみと比較して、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の結合速度(kon-r)は増加し、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の解離速度(koff-r)は減少する。化合物-トリマー複合体の、必要なTNFスーパーファミリー受容体に対するkon-r値は、化合物の非存在下でその受容体に結合するTNFスーパーファミリーのトリマーのkon-r値と比較して少なくとも約1.5倍若しくは少なくとも約2倍、若しくは少なくとも約3倍増加してもよく、及び/又は化合物-トリマー複合体の、必要なTNFスーパーファミリー受容体に対するkoff-r値は、化合物の非存在下でその受容体に結合するTNFスーパーファミリーのトリマーのkoff-r値と比較して少なくとも約1.2分の1、少なくとも約1.6分の1、少なくとも約2分の1、より好適には少なくとも約2.4分の1に減少してもよい。
【0030】
TNFスーパーファミリーのトリマーに結合する化合物の結合速度(kon-c)は、典型的には、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の結合速度(kon-r)よりも速い。TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の解離速度(koff-r)も、典型的には、TNFスーパーファミリーのトリマーに結合する化合物の解離速度(koff-c)よりも速い。本発明の実施形態では、TNFスーパーファミリーのトリマーに結合する化合物の結合速度(kon-c)は、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の結合速度(kon-r)よりも速く、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の解離速度(koff-r)は、TNFスーパーファミリーのトリマーに結合する化合物の解離速度(koff-c)よりも速い。TNFスーパーファミリーのトリマーへの結合に関する化合物のKD-c値は、一般的には、TNFスーパーファミリー受容体への結合に関する化合物-トリマー複合体のKD-r値よりも低い、すなわち、化合物は、化合物-トリマー複合体が受容体に対して有するよりも高いトリマーに対する親和性を有する。
【0031】
必要なTNFスーパーファミリー受容体に対する化合物-トリマー複合体とTNFスーパーファミリーのトリマーの両方のkon-r、koff-r、及びKD-r値を、任意の適切な技術、例えば、表面プラズモン共鳴、質量分析及び等温熱量測定を使用して決定することができる。試験化合物の存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体への結合に関するKD-r値は、1μM、100nM、10nM、5nM、1nM、100pM、10pM以下(約1pMのより低い値に向かって下がる)であってもよい。試験化合物の存在下での(すなわち、化合物-トリマー複合体中での)TNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体への結合に関するKD-r値は、1nM以下であってもよい。化合物-トリマー複合体の、必要なTNFスーパーファミリー受容体への結合に関するKD-r値は、600pM未満、500pM未満、400pM未満、300pM未満、200pM未満、100pM未満又は50pM未満(再度、約1pMのより低い値に向かって下がる)であってもよい。化合物-トリマー複合体の、必要なTNFスーパーファミリー受容体への結合に関するKD-r値は、約200pM未満(約1pMまで)であってもよい。
【0032】
TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物の試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rを決定すること;試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rを対照試料と比較すること;並びに化合物を選択することを含むアッセイによって、化合物を同定することができる。対照は、TNFスーパーファミリーメンバーのその受容体への結合親和性を増加させることが既知である陽性対照であってもよい。ここで、試験化合物は、陽性対照と同じ、又は陽性対照より低い(より良い)KD-rを有していてもよい。
【0033】
化合物は、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーを安定化する。試験化合物が、試験化合物の非存在下でTNFスーパーファミリーメンバー及び不安定化剤を含有する試料について観察されるトリマーの量と比較してトリマーの割合を増加させる場合、安定化が起こると考えられる。試験化合物は、試験化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバー及び不安定化剤を含有する試料中に存在するトリマーの量と比較して、トリマーの量を約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%以上増加させてもよい。
【0034】
試験化合物はまた、不安定化剤と試験化合物の両方の非存在下でTNFスーパーファミリーメンバーの試料について観察されるものと比較してトリマーの量を増加させてもよい。試験化合物は、不安定化剤と試験化合物の両方の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーを含有する試料中に存在するトリマーの量と比較して、トリマーの量を約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%以上増加させてもよい。
【0035】
試験化合物は、試験化合物の非存在下でTNFスーパーファミリーメンバーを含有する試料中でその受容体に結合したTNFスーパーファミリーメンバーの量と比較して、その受容体に結合したTNFスーパーファミリーメンバーの量を約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%以上増加させてもよい。
【0036】
試験化合物は、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性を増強してもよい。トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの増強された安定性は、試験化合物が、試験化合物の非存在下でTNFスーパーファミリーメンバーと不安定化剤とを含有する試料について観察されるトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTと比較して、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの温度遷移中点(T)を増加させる場合に起こると考えられる。トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーTは、生物分子の50%がアンフォールディングされる温度である。試験化合物の存在下及び/又は非存在下でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTを、当業界で公知の任意の適切な技術を使用して、例えば、示差走査熱量測定(DSC)又は蛍光プローブ熱変性アッセイを使用して測定することができる。
【0037】
試験化合物は、試験化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーを含有する試料中のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTと比較して、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTを少なくとも1℃、少なくとも2℃、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃以上増加させてもよい。試験化合物は、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTを、少なくとも1℃、少なくとも10℃、10℃~20℃増加させてもよい。
【0038】
化合物は、化合物-トリマー複合体の形態にあるTNFスーパーファミリーメンバーが受容体に結合する場合、TNF受容体を介するシグナル伝達を完全に又は部分的に阻害することができる。化合物は、TNFスーパーファミリー受容体を介するシグナル伝達を、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少させるように作用することができる。或いは、化合物は、化合物-トリマー複合体の形態にあるTNFスーパーファミリーメンバーが受容体に結合する場合、TNF受容体を介するシグナル伝達を増加させることができる。化合物は、TNFスーパーファミリー受容体を介するシグナル伝達を、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%又は200%増加させるように作用することができる。シグナル伝達のレベルの任意の変化を、アルカリホスファターゼ若しくはルシフェラーゼによるリポーター遺伝子活性、Cellomics Arrayscanなどの機械を使用するNF-κB転座、下流エフェクターのリン酸化、シグナル伝達分子の動員、又は細胞死の測定を含む任意の適切な技術によって測定してもよいが、それだけに限定されない。
【0039】
化合物は、化合物-トリマー複合体の形態にあるTNFスーパーファミリーメンバーが受容体に結合する場合、TNF受容体を介するシグナル伝達の下流の効果の少なくとも1つを調節することができる。そのような効果は、本明細書で考察され、TNFスーパーファミリー誘導性IL-8、IL17A/F、IL2及びVCAM産生、TNFスーパーファミリー誘導性NF-κB活性化及び好中球動員を含む。TNFスーパーファミリーメンバーの下流の効果を測定するための標準的な技術が当業界で公知である。化合物は、TNF受容体を介するシグナル伝達の下流の効果の少なくとも1、2、3、4、5、10又は最大で全部を調節することができる。
【0040】
化合物の活性を、IC50又は半数最大効果濃度(EC50)値などの標準的な用語を使用して定量することができる。IC50値は、特定の生物学的又は生化学的機能の50%の阻害にとって必要とされる化合物の濃度である。EC50値は、その最大効果の50%にとって必要とされる化合物の濃度である。化合物は、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、5nM、1nM、100pM以下のIC50又はEC50値を有してもよい(約10pM又は1pMのより低い値に向かって下がる)。IC50及びEC50値を、任意の適切な技術を使用して測定することができ、例えば、サイトカイン産生を、ELISAを使用して定量することができる。次いで、IC50及びEC50値を、シグモイド型用量応答モデルとしても公知の標準的な4パラメータロジスティックモデルを使用して生成することができる。
【0041】
上記のように、TNFに結合し、シグナル伝達を調節することができる化合物の例は、式(1)~(7)の化合物である。
【0042】
モジュレータ-TNFスーパーファミリーメンバー複合体
本発明の実施形態では、本明細書に記載の化合物の、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーへの結合が、TNFスーパーファミリーのトリマーのコンフォメーション変化をもたらすことを同定した。さらなる実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーのトリマーは、本明細書に開示される化合物が結合した場合、変形した、又は歪んだコンフォメーションを取る。
【0043】
例えば、化合物(1)~(7)がヒトTNFαの可溶性ドメインに結合する場合、TNFはそのトリマー構造を保持するが、A及びCサブユニットは互いに遠ざかり、Cは回転して、これらのサブユニット間に裂け目を生成する。
【0044】
理論によって束縛されるものではないが、化合物の非存在下では、トリマーTNFαを含むトリマーTNFスーパーファミリーメンバーは、3つの別々のダイマーTNFスーパーファミリーメンバー受容体に結合することができると考えられる。それぞれのダイマーTNFスーパーファミリーメンバー受容体は、2つの別々のTNFスーパーファミリーのトリマーに結合することができる。この結果、複数のTNFスーパーファミリーメンバーのトリマー及びTNFスーパーファミリーメンバー受容体ダイマーが凝集し、下流のシグナル伝達を開始するシグナル伝達ラフトを作出する。
【0045】
トリマーTNFαが化合物に結合する場合、得られる複合体のコンフォメーションは変形する。したがって、理論によって束縛されるものではないが、本明細書に開示される化合物の存在下では、トリマーTNFαを含むトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのみが、2つの別々のダイマーTNFスーパーファミリーメンバー受容体に結合することができると考えられる。3つよりもむしろ、2つのみの別々のダイマーTNFスーパーファミリーメンバー受容体がトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに結合するという事実は、複数のTNFスーパーファミリーメンバーのトリマー及びTNFスーパーファミリーメンバー受容体ダイマーの凝集を減少させるか、又は阻害する。これは、シグナル伝達ラフトの形成を減少させるか、又は阻害し、したがって、下流のシグナル伝達を減少させるか、又は阻害する。
【0046】
本発明の抗体を使用して、本明細書に開示される化合物の結合の結果として、歪曲したコンフォメーションを有するTNFαを検出することができる。典型的には、歪曲した、又は変形したコンフォメーションを有するTNFαは、トリマーTNFαである。しかしながら、本発明の抗体は、他の形態のTNFαに結合することもできる。例えば、本発明の抗体は、TNFαモノマーに結合することができる。
【0047】
TNFαは、典型的には、トリマーTNFαであり、トリマーTNFα(又は、トリマーTNFα)であってもよい。
【0048】
したがって、本発明は、TNFαトリマーと、それに結合する化合物とを含む複合体であって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFα受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節し、少なくとも1nM(すなわち、1nM以下であり、約1pMに向かって下がる)の親和性で本発明の抗体に結合する、上記複合体を提供する。TNFスーパーファミリーメンバーは、典型的には、TNFαである。
【0049】
さらに、抗体は、一般的には、TNFαトリマーの非存在下での化合物への結合に関する、及び/又は化合物の非存在下でのTNFαトリマーへの結合に関する親和性と比較して、少なくとも約100分の1であり(親和性は少なくとも約100倍改善される)、約200分の1の親和性で複合体に結合する。
【0050】
本発明はさらに、TNFαトリマーに結合して、複合体を形成することができる化合物であって、化合物-トリマー複合体は必要なTNFα受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節し、化合物-トリマー複合体は、1nM以下(約1pMに向かって下がる)のKD-abで本発明の抗体に結合する、上記複合体を提供する。TNFαは、典型的には、TNFαである。
【0051】
抗体は、TNFαトリマーの非存在下での化合物への結合及び/又は化合物の非存在下でのTNFαトリマーへの結合に関する親和性と比較して、少なくとも約100分の1(親和性が少なくとも約100倍改善される)、約200分の1の親和性で複合体に結合することができる。
【0052】
化合物-トリマー複合体は、本発明の任意の抗体に結合することができる。
【0053】
本明細書に記載の化合物又は複合体を、病状の処置及び/又は予防において使用することができる。したがって、ヒト又は動物の身体に対して実行される治療方法における使用のための本発明の化合物又は複合体が提供される。本発明はまた、対象への本発明の化合物又は複合体の投与を含む治療方法も提供する。本発明の化合物又は複合体を、本明細書に記載の任意の治療指標及び/又は医薬組成物において使用することができる。
【0054】
抗体
本発明は、本明細書に開示される少なくとも1つの化合物と、TNFαトリマーとを含む少なくとも1つの化合物-トリマー複合体に選択的に結合する抗体を提供する。
【0055】
典型的には、本発明の抗体の、化合物-(トリマー)複合体への選択的結合は、TNFαの非存在下での抗体の化合物への結合、又は化合物の非存在下でのTNFαへの結合又は他の(異なる)化合物-(トリマー)複合体への結合と比較して測定される。
【0056】
化合物は、化合物(1)~(7)(又はその塩若しくは溶媒和物)を含む、本明細書に記載の任意の化合物であってもよい。TNFスーパーファミリーメンバーは、TNFαである。TNFαは、ヒトTNFα、特に、可溶性TNFα(TNFα)であってもよい。TNFαは、ヒトTNFα、特に、可溶性TNFα(TNFαs)であってもよい。TNFαsは、配列番号35又は配列番号36(配列番号35からN末端の「S」を欠く)の配列を有してもよく、又はそのバリアントであってもよい。そのようなバリアントは、典型的には、配列番号35又は配列番号36に対する少なくとも約60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%又は95%の同一性(又はさらには約96%、97%、98%若しくは99%の同一性)を保持する。換言すれば、そのようなバリアントは、配列番号35若しくは配列番号36に対する約60%~約99%の同一性、配列番号35若しくは配列番号36に対する約80%~約99%の同一性、配列番号35若しくは配列番号36に対する約90%~約99%の同一性、配列番号35若しくは配列番号36に対する約95%~約99%の同一性を保持してもよい。バリアントは、以下にさらに記載される。
【0057】
本発明の抗体は、他の形態のTNFαに結合することもできる。例証するために、本出願の実施例は、CA185_0179抗体がトリマーTNFαに結合することを証明する。しかしながら、図1(化合物(1)の存在下でTNFαモノマーに結合したCA185_0179抗体の結晶構造)に示されるように、抗体はモノマーTNFαに結合するとも考えられる。理論によって束縛されるものではないが、化合物の存在下では、TNFの可溶性ドメインはそのトリマー構造を保持すると考えられる。しかしながら、A及びCサブユニットは互いに遠ざかり(及びCサブユニットは回転する)、これらの2つのサブユニット間に裂け目を生成する。したがって、本発明の抗体は歪曲したトリマーに結合するが、トリマー構造がモノマーに押し開かれる場合、抗体は依然として結合することも可能である(「A」及び「C」サブユニットのさらなる考察については、以下を参照されたい)。
【0058】
本明細書に記載される用語「抗体」は、全抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又はその単鎖を含む。抗体は、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2個の重(H)鎖と、2個の軽(L)鎖とを含む糖タンパク質、又はその抗原結合部分を指す。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVと省略される)と、重鎖定常領域とを含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVと省略される)と、軽鎖定常領域とを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。V及びV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分される。
【0059】
抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)の様々な細胞を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0060】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってもよく、典型的には、モノクローナル抗体である。本発明の抗体は、キメラ抗体、CDR移植抗体、ナノボディ、ヒト若しくはヒト化抗体又はそれらのいずれかの抗原結合部分であってもよい。モノクローナル抗体とポリクローナル抗体との両方の産生について、実験動物は、典型的にはヤギ、ウサギ、ラット又はマウスなどの非ヒト哺乳動物であるが、抗体を他の種において生じさせることもできる。
【0061】
ポリクローナル抗体を、目的の抗原を用いる、好適な動物の免疫化などの日常的な方法によって産生させることができる。次いで、血液を動物から取り出し、IgG画分を精製することができる。
【0062】
本発明の化合物-トリマー複合体に対して生成された抗体を、動物の免疫化が必要である場合、周知且つ日常的なプロトコールを使用して、ポリペプチドを動物、例えば、非ヒト動物に投与することによって取得することができる。例えば、Handbook of Experimental Immunology, D. M. Weir (ed.), Vol 4, Blackwell Scientific Publishers, Oxford, England, 1986を参照されたい。ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ又はブタなどの多くの温血動物を免疫することができる。しかしながら、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが一般的には最も好適である。
【0063】
モノクローナル抗体を、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein, 1975, Nature, 256:495-497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al., 1983, Immunology Today, 4:72)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp77-96, Alan R Liss, Inc., 1985)などの当業界で公知の任意の方法によって調製することができる。
【0064】
本発明の抗体を、例えば、Babcook, J. et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(15): 7843-7848l;WO92/02551;WO2004/051268及びWO2004/106377により記載された方法により、特異的抗体の産生のために選択された単一リンパ球から生成される免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニング及び発現させることによる単一リンパ球抗体法を使用して生成することもできる。
【0065】
本発明の抗体を、当業界で公知の様々なファージディスプレイ法を使用して生成することもでき、Brinkman et al. (J. Immunol. Methods, 1995, 182: 41-50)、Ames et al. (J. Immunol. Methods, 1995, 184:177-186)、Kettleborough et al. (Eur. J. Immunol. 1994, 24:952-958)、Persic et al. (Gene, 1997 187 9-18)、Burton et al. (Advances in Immunology, 1994, 57:191-280)及びWO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;及びUS5,698,426;5,223,409;5,403,484;5,580,717;5,427,908;5,750,753;5,821,047;5,571,698;5,427,908;5,516,637;5,780,225;5,658,727;5,733,743及び5,969,108により開示されたものが挙げられる。
【0066】
完全ヒト抗体は、重鎖と軽鎖の両方の可変領域及び定常領域(存在する場合)が全てヒト起源のものであるか、又はヒト起源の配列と実質的に同一であるが、同じ抗体に由来する必要はない抗体である。完全ヒト抗体の例としては、例えば、上記のファージディスプレイ法により産生された抗体並びにマウス免疫グロブリン可変領域及び場合により、定常領域遺伝子が、例えば、EP0546073、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,661,016号、米国特許第5,770,429号、EP0438474号及びEP0463151に一般的な用語で記載されたそのヒト対応物によって置き換えられたマウスによって産生された抗体が挙げられる。
【0067】
或いは、本発明による抗体を、トリマーTNFαと、本明細書に開示される化合物との化合物-トリマー複合体を含む免疫原で非ヒト哺乳動物を免疫すること;前記哺乳動物から抗体調製物を取得すること;前記複合体を選択的に認識するモノクローナル抗体を、それから誘導すること、並びに化合物の存在下でのみTNFαに結合するモノクローナル抗体について、モノクローナル抗体の集団をスクリーニングすることを含む方法によって産生することができる。
【0068】
本発明の抗体分子は、完全長重鎖及び軽鎖を有する完全抗体分子又はその断片若しくは抗原結合部分を含んでもよい。抗体の用語「抗原結合部分」とは、抗原に選択的に結合する能力を保持する抗体の1又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能を、完全長抗体の断片によって実行させることができることが示されている。抗体並びにその断片及び抗原結合部分は、限定されるものではないが、Fab、改変型Fab、Fab’、改変型Fab’、F(ab’)、Fv、単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、二価、三価又は四価抗体、Bis-scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ並びに上記のいずれかのエピトープ結合断片であってもよい(例えば、Holliger and Hudson, 2005, Nature Biotech. 23(9):1126-1136;Adair and Lawson, 2005, Drug Design Reviews - Online 2(3), 209-217を参照されたい)。これらの抗体断片を作出及び製造するための方法は、当業界で周知である(例えば、Verma et al., 1998, Journal of Immunological Methods, 216, 165-181を参照されたい)。本発明における使用のための他の抗体断片としては、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されたFab及びFab’断片並びに国際特許出願WO2009/040562に記載されたFab-dAb断片が挙げられる。多価抗体は、多特異性を含んでもよく、又は一特異的であってもよい(例えば、WO92/22853及びWO05/113605を参照されたい)。これらの抗体断片を、当業者には公知の従来の技術を使用して取得し、断片を、無傷抗体と同じ様式での使用のためにスクリーニングすることができる。
【0069】
存在する場合、本発明の抗体分子の定常領域ドメインを、抗体分子の提唱された機能、特に、必要とされるエフェクター機能を考慮して選択することができる。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってもよい。特に、抗体分子が治療的使用を意図され、抗体エフェクター機能が必要とされる場合、特に、IgG1及びIgG3アイソタイプのヒトIgG定常領域ドメインを使用することができる。或いは、抗体分子が治療目的を意図され、抗体エフェクター機能が必要とされない場合、IgG2及びIgG4アイソタイプを使用することができる。
【0070】
(a)目的の免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニック若しくは導入染色体である動物(例えば、マウス)又はそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)目的の抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換え、コンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、並びに(d)免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作出又は単離された抗体などの本発明の抗体を、組換え手段によって調製する、発現させる、作出する、又は単離することができる。
【0071】
本発明の抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域も、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでの無作為若しくは部位特異的突然変異誘発又はin vivoでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含むことは意図しない。
【0072】
そのようなヒト抗体は、ヒトモノクローナル抗体であってもよい。そのようなヒトモノクローナル抗体を、不死化細胞に融合されたヒト重鎖トランスジーン及び軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有する、トランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生させることができる。
【0073】
ヒト抗体を、ヒトリンパ球のin vitroでの免疫化、次いで、エプスタイン・バーウイルスによるリンパ球の形質転換によって調製することができる。
【0074】
用語「ヒト抗体誘導体」とは、任意の改変型のヒト抗体、例えば、抗体と別の薬剤又は抗体とのコンジュゲートを指す。
【0075】
用語「ヒト化抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されたCDR移植抗体分子を指すように意図される。さらなるフレームワーク領域改変を、ヒトフレームワーク配列内で作製することができる。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「CDR移植抗体分子」とは、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワーク中に移植されたドナー抗体(例えば、マウス又はラットモノクローナル抗体)に由来する1又は複数のCDR(必要に応じて、1又は複数の改変されたCDRを含む)を含有する抗体分子を指す。概説については、Vaughan et al, Nature Biotechnology, 16, 535-539, 1998を参照されたい。一実施形態では、CDR全体が導入されるよりもむしろ、本明細書の上記のCDRのいずれか1つに由来する1又は複数の特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに導入される(例えば、Kashmiri et al., 2005, Methods, 36, 25-34を参照されたい)。一実施形態では、本明細書の上記の1又は複数のCDRに由来する特異性決定残基のみが、ヒト抗体フレームワークに導入される。別の実施形態では、本明細書の上記のそれぞれのCDRに由来する特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに導入される。
【0077】
CDR又は特異性決定残基が移植される場合、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列を、マウス、霊長類及びヒトフレームワーク領域を含む、CDRが由来するドナー抗体のクラス/タイプを考慮して使用することができる。好適には、本発明によるCDR移植抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域並びに上記の1又は複数のCDR又は特異性決定残基を含む可変ドメインを有する。したがって、一実施形態では、可変ドメインがヒトアクセプターフレームワーク領域と非ヒトドナーCDRとを含む中和CDR移植抗体が提供される。
【0078】
本発明において使用することができるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOM(Kabat et al.、上掲)である。例えば、KOL及びNEWMを重鎖のために使用し、REIを軽鎖のために使用し、EU、LAY及びPOMを重鎖と軽鎖の両方のために使用することができる。或いは、ヒト生殖系列配列を使用してもよい;これらのものは、例えば、http://www.vbase2.org/で入手可能である(Retter et al, Nucl. Acids Res. (2005) 33 (supplement 1), D671-D674を参照されたい)。
【0079】
本発明のCDR移植抗体では、アクセプター重鎖及び軽鎖は、同じ抗体に由来する必要はなく、必要に応じて、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
【0080】
また、本発明のCDR移植抗体では、フレームワーク領域は、アクセプター抗体のものと全く同じ配列を有する必要はない。例えば、非通常残基を、そのアクセプター鎖クラス又はタイプについてより頻繁に存在する残基に変化させてもよい。或いは、アクセプターフレームワーク領域中の選択された残基を、それらがドナー抗体中の同じ位置に見出される残基と一致するように変化させてもよい(Reichmann et al., 1998, Nature, 332, 323-324を参照されたい)。そのような変化は、ドナー抗体の親和性を回復させる最小限の必要性を保持するべきである。変化させる必要があり得るアクセプターフレームワーク領域中の残基を選択するためのプロトコールは、WO91/09967に記載されている。
【0081】
また、抗体が様々な翻訳後改変を受けてもよいことが当業者には理解されるであろう。これらの改変の型及び程度は、抗体を発現させるのに使用される宿主細胞系並びに培養条件に依存することが多い。そのような改変は、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化及びアスパラギン脱アミド化の変化を含んでもよい。よくある改変は、カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端塩基性残基(リシン又はアルギニンなど)の喪失である(Harris, RJ. Journal of Chromatography 705:129-134, 1995に記載されている)。
【0082】
一実施形態では、抗体重鎖は、CH1ドメインを含み、抗体軽鎖はCLドメイン、カッパ又はラムダのいずれかを含む。
【0083】
抗体又は断片などの生物分子は、酸性及び/又は塩基性官能基を含有し、それにより、分子に正味の正電荷又は負電荷を与える。全体の「観察される」電荷の量は、実体の絶対アミノ酸配列、3D構造における荷電した基の部分環境及び分子の環境条件に依存するであろう。等電点(pI)は、特定の分子又は表面が正味の電荷を担持しないpHである。一実施形態では、本開示による抗体又は断片は、少なくとも7の等電点(pI)を有する。一実施形態では、抗体又は断片は、少なくとも8、例えば、8.5、8.6、8.7、8.8又は9の等電点を有する。一実施形態では、抗体のpIは8である。**ExPASY http://www.expasy.ch/tools/pi_tool.html_(Walker, The Proteomics Protocols Handbook, Humana Press (2005), 571-607を参照されたい)のようなプログラムを使用して、抗体又は断片の等電点を予測することができる。
【0084】
本明細書に開示されるエピトープに結合する抗体は、配列番号4~6(それぞれ、HCDR1/HCDR2/HCDR3)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つ全部の重鎖CDR配列を含んでもよい。これらのものは、実施例のCA185_01974抗体のHCDR1/HCDR2/HCDR3配列である。場合によって、抗体は、配列番号4~6のCDRを含まない(つまり、抗体は、配列番号4~6のいずれか1つ又は全てのCDRを含まない)。
【0085】
さらに、そのような抗体は、配列番号1~3(それぞれ、LCDR1/LCDR2/LCDR3)の少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全部の軽鎖CDR配列を含んでもよい。これらのものは、実施例のCA185_01974抗体のLCDR1/LCDR2/LCDR3配列である。場合によって、抗体は、配列番号1~3のCDRを含まない(つまり、抗体は、配列番号1~3のいずれか1つ又は全てのCDRを含まない)。
【0086】
抗体は、配列番号6の少なくとも1つのHCDR3配列を含む。一実施形態では、抗体は、配列番号4~6から選択される少なくとも1つの重鎖CDR配列と、配列番号1~3から選択される少なくとも1つの軽鎖CDR配列とを含む。抗体は、配列番号4~6から選択される少なくとも2つの重鎖CDR配列と、配列番号1~3から選択される少なくとも2つの軽鎖CDR配列とを含んでもよい。抗体は、配列番号4~6の3つ全部の重鎖CDR配列(それぞれ、HCDR1/HCDR2/HCDR3)と、配列番号1~3の3つ全部の軽鎖CDR配列(それぞれ、LCDR1/LCDR2/LCDR3)とを含む。抗体は、キメラ、ヒト又はヒト化抗体であってもよい。場合によって、抗体は、配列番号1~6のいずれか1つ又は全てのCDRを含まない。
【0087】
抗体はまた、配列番号19~21の少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全部の重鎖CDR配列(それぞれ、HCDR1/HCDR2/HCDR3)を含んでもよい。これらのものは、実施例のCA185_01979抗体のHCDR1/HCDR2/HCDR3配列である。場合によって、抗体は、配列番号19~21のCDRを含まない(つまり、配列番号19~21のいずれか1つ又は全てのCDRを含まない)。
【0088】
抗体は、配列番号21のHCDR3配列を含む。
【0089】
抗体はまた、配列番号1、17、18の少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つ全部の軽鎖CDR配列(それぞれ、LCDR1/LCDR2/LCDR3)を含んでもよい。これらのものは、実施例のCA185_01979抗体のLCDR1/LCDR2/LCDR3配列である。場合によって、抗体は、配列番号1、17又は18のCDRを含まない(つまり、配列番号1、17又は18のいずれか1つ又は全てのCDRを含まない)。
【0090】
本発明の一実施形態では、抗体は、配列番号19~21から選択される少なくとも1つの重鎖CDRと、配列番号1、17、18から選択される少なくとも1つの軽鎖CDR配列とを含む。抗体は、配列番号19~21から選択される少なくとも2つの重鎖CDR配列と、配列番号1、17、18から選択される少なくとも2つの軽鎖CDR配列とを含んでもよい。抗体は、配列番号19~21(それぞれ、HCDR1/HCDR2/HCDR3)の3つ全部の重鎖CDR配列と、配列番号1、17、18(それぞれ、LCDR1/LCDR2/LCDR3)の3つ全部の軽鎖CDR配列とを含んでもよい。抗体は、キメラ、ヒト又はヒト化抗体であってもよい。場合によって、抗体は、配列番号1、17、18、19、20又は21のいずれか1つ又は全てのCDRを含まない。
【0091】
抗体は、CA185_01974抗体とCA185_01979抗体のCDR配列の任意の組合せを含んでもよい。特に、抗体は、配列番号4~6及び19~21から選択される少なくとも1つのHCDR配列並びに/又は配列番号1~3、17及び18から選択される少なくとも1つのLCDR配列を含んでもよい。
【0092】
抗体は、
- 配列番号4及び19から選択されるHCDR1;並びに/又は
- 配列番号5及び20から選択されるHCDR2;並びに/又は
- 配列番号6及び21から選択されるHCDR3;並びに/又は
- 配列番号1のLCDR1;並びに/又は
- 配列番号2及び17から選択されるLCDR2;並びに/又は
- 配列番号3及び18から選択されるLCDR3
を含んでもよい。
【0093】
場合によって、抗体は、以下の配列:配列番号1~6及び17~21のいずれか1つのCDRを含まない。
【0094】
抗体は、配列番号8の重鎖可変領域(HCVR)配列(CA185_01974のHCVR)を含んでもよい。抗体は、配列番号7の軽鎖可変領域(LCVR)配列(CA185_01974のLCVR)を含んでもよい。抗体は、好適には、配列番号8の重鎖可変領域配列と、配列番号7の軽鎖可変領域配列とを含む。
【0095】
場合によって、抗体は、配列番号8のHCVR及び/又は配列番号7のLCVRを含まない。
【0096】
抗体はまた、配列番号23の重鎖可変領域(HCVR)配列(CA185_01979のHCVR)を含んでもよい。抗体は、配列番号22の軽鎖可変領域(LCVR)配列(CA185_01979のLCVR)を含んでもよい。抗体は、好適には、配列番号23の重鎖可変領域配列と、配列番号22の軽鎖可変領域配列とを含む。場合によって、抗体は、配列番号23のHCVR及び/又は配列番号22のLCVRを含まない。
【0097】
抗体は、CA185_01974及びCA185_01979抗体に由来する重鎖及び軽鎖可変領域の組合せを含んでもよい。換言すれば、抗体は、配列番号8若しくは23の重鎖可変領域及び/又は配列番号7若しくは22の軽鎖可変領域を含んでもよい。
【0098】
場合によって、抗体は、配列番号8若しくは23の重鎖可変部及び/又は配列番号7若しくは22の軽鎖可変部を含まない。
【0099】
抗体は、配列番号12(CA185_01974 mIgG1)又は配列番号13(CA185_01974 mFab(ヒンジなし))の重鎖(H鎖)配列を含んでもよい。抗体は、配列番号11(CA185_01974 カッパ軽鎖)の軽鎖(L鎖)配列を含んでもよい。抗体は、配列番号12/13の重鎖配列と、配列番号11の軽鎖配列とを含んでもよい。抗体は、キメラ、ヒト又はヒト化抗体であってもよい。場合によって、抗体は、これらの配列の重鎖及び/又は軽鎖を含まない。
【0100】
抗体は、配列番号27(CA185_01979 mIgG1)又は配列番号28(CA185_01979 mFab(ヒンジなし))の重鎖配列を含んでもよい。抗体は、配列番号26(CA185_01979 カッパ軽鎖)の軽鎖配列を含んでもよい。抗体は、配列番号27/28の重鎖配列と、配列番号26の軽鎖配列とを含む。抗体は、キメラ、ヒト又はヒト化抗体であってもよい。再度、CA185_01974及びCA185_01979に由来する配列を組み合わせることができる。場合によって、抗体は、これらの配列の重鎖及び/又は軽鎖を含まない。
【0101】
或いは、抗体は、上記の特定の配列の1つのバリアントであるか、又はそれを含んでもよい。例えば、バリアントは、上記のアミノ酸配列のいずれかの置換、欠失又は付加バリアントであってもよい。
【0102】
バリアント抗体は、上記で考察された特定の配列に由来する1、2、3、4、5、最大10、最大20個以上(典型的には、最大50個まで)のアミノ酸置換及び/又は欠失を含んでもよい。「欠失」バリアントは、個々のアミノ酸の欠失、2、3、4若しくは5個のアミノ酸などの少数のアミノ酸の欠失、又は特定のアミノ酸ドメイン若しくは他の特徴部の欠失などのより大きいアミノ酸領域の欠失を含んでもよい。「置換」バリアントは、典型的には、1又は複数のアミノ酸の、同じ数のアミノ酸による置き換えを含み、保存的アミノ酸置換を作製する。例えば、アミノ酸を、類似する特性を有する代替アミノ酸、例えば、別の塩基性アミノ酸、別の酸性アミノ酸、別の中性アミノ酸、別の荷電アミノ酸、別の親水性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸、別の極性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸又は別の脂肪族アミノ酸で置換してもよい。好適な置換を選択するために使用することができる20種の主なアミノ酸のいくつかの特性は、以下の通りである。
【表1】
【0103】
「誘導体」又は「バリアント」は一般的に、天然アミノ酸の代わりに、配列中に出現するアミノ酸がその構造的類似体であるものを含む。抗体の機能が有意に有害に作用しないという条件で、配列中で使用されるアミノ酸を、誘導体化又は改変する、例えば、標識することもできる。
【0104】
上記の誘導体及びバリアントを、抗体の合成中に、又は産生後改変により、又は抗体が組換え形態にある場合、部位特異的突然変異誘発、無作為突然変異誘発、若しくは酵素的切断及び/若しくは核酸のライゲーションの公知の技術を使用して調製することができる。
【0105】
バリアント抗体は、本明細書に開示されるアミノ酸配列に対する約60%を超える、又は約70%を超える、例えば、75又は80%、約85%を超える、例えば、約90又は95%を超えるアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有してもよい(特に、HCVR/LCVR配列並びにH及びL鎖配列)。さらに、抗体は、これらの配列について開示された正確なCDRを保持しながら、本明細書に開示されるHCVR/LCVR配列並びにH及びL鎖配列に対する約60%を超える、又は約70%を超える、例えば、75又は80%、約85%を超える、例えば、約90又は95%を超えるアミノ酸同一性を有するバリアントであってもよい。バリアントは、本明細書に開示されるHCVR/LCVR配列並びにH及びL鎖配列に対する少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を保持してもよい(いくつかの環境では、正確なCDRを保持しながら)。場合によって、抗体は、本明細書に記載の配列のいずれかに対する60、70、75、80、85、90又は95%を超える同一性を有するバリアントではない(つまり、抗体は、本明細書に記載のHCVR及び/若しくはLVCR配列又はH鎖及び/若しくはL鎖配列に対する60、70、75、80、85、90又は95%の同一性を有していない)。
【0106】
バリアントは、約60%~約99%の同一性、約80%~約99%の同一性、約90%~約99%の同一性又は95%~約99%の同一性を保持する。このレベルのアミノ酸同一性は、関連する配列番号の配列の全長にわたって、又は完全長ポリペプチドのサイズに応じて、約20、30、50、75、100、150、200個以上のアミノ酸にわたるなど、配列の一部にわたって見ることができる。
【0107】
アミノ酸配列に関連して、「配列同一性」とは、ClustalW(Thompson et al., 1994、上掲)を使用して評価した場合、以下のパラメータに関する開始値を有する配列を指す。
【0108】
ペアワイズアラインメントパラメータ-方法:正確、マトリックス:PAM、Gapオープンペナルティ:10.00、Gap伸長ペナルティ:0.10。
【0109】
複数アラインメントパラメータ-マトリックス:PAM、Gapオープンペナルティ:10.00、遅延に関する%同一性:30、末端ギャップペナルティ:オン、Gap分離距離:0、ネガティブマトリックス:なし、Gap伸長ペナルティ:0.20、残基特異的ギャップペナルティ:オン、親水性ギャップペナルティ:オン、親水性残基:GPSNDQEKR。特定の残基での配列同一性は、単に誘導体化された同一の残基を含むことが意図される。
【0110】
したがって、特定の配列を有する抗体及びこれらの鎖の機能又は活性を維持するバリアントが提供される。
【0111】
本発明はまた、本発明の抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖可変領域(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列も提供する。
【0112】
配列番号10の単離されたDNA配列は、配列番号8の重鎖可変領域をコードする。配列番号9の単離されたDNA配列は、配列番号7の軽鎖可変領域をコードする。
【0113】
配列番号25の単離されたDNA配列は、配列番号23の重鎖可変領域をコードする。配列番号24の単離されたDNA配列は、配列番号22の軽鎖可変領域をコードする。
【0114】
本発明はまた、本発明の任意の抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列も提供する。好適には、DNA配列は、本発明の抗体分子の重鎖又は軽鎖をコードする。
【0115】
配列番号15又は16の単離されたDNA配列は、それぞれ、配列番号12及び配列番号13の重鎖をコードする。配列番号14の単離されたDNA配列は、配列番号11の軽鎖をコードする。
【0116】
配列番号30又は31の単離されたDNA配列は、それぞれ、配列番号27及び配列番号28の重鎖をコードする。配列番号29の単離されたDNA配列は、配列番号26の軽鎖をコードする。
【0117】
好適なポリヌクレオチド配列は、或いは、これらの特定のポリヌクレオチド配列の1つのバリアントであってもよい。例えば、バリアントは、上記の核酸配列のいずれかの置換、欠失又は付加バリアントであってもよい。バリアントポリヌクレオチドは、配列表に与えられる配列に由来する1、2、3、4、5、最大10、最大20、最大30、最大40、最大50、最大75個以上までの核酸置換及び/又は欠失を含んでもよい。一般的には、バリアントは、1~20、1~50、1~75又は1~100個の置換及び/又は欠失を有する。
【0118】
好適なバリアントは、本明細書に開示される核酸配列のいずれか1つのポリヌクレオチドと少なくとも約70%相同であってもよく、典型的には、それと少なくとも約80又は90%、少なくとも約95%、97%又は99%相同であってもよい。バリアントは、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を保持してもよい。バリアントは、約60%~約99%の同一性、約80%~約99%の同一性、約90%~約99%の同一性又は約95%~約99%の同一性を保持する。これらのレベルでの相同性及び同一性は、一般的には、少なくともポリヌクレオチドのコード領域に関して存在する。相同性を測定する方法は当業界で周知であり、当業者であれば、本発明の文脈で、相同性が核酸同一性に基づいて算出されることを理解できる。そのような相同性は、少なくとも約15、少なくとも約30、例えば、少なくとも約40、60、100、200個以上の連続するヌクレオチド(長さに応じて)の領域にわたって存在してもよい。そのような相同性は、非改変ポリヌクレオチド配列の全長にわたって存在してもよい。
【0119】
ポリヌクレオチドの相同性又は同一性を測定する方法は、当業界で公知である。例えば、UWGCG Packageは、相同性を算出するために使用することができるBESTFITプログラム(例えば、そのデフォルト設定で使用される)を提供する(Devereux et al (1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。
【0120】
例えば、Altschul S.F. (1993) J Mol Evol 36:290-300;Altschul, S, F et al (1990) J Mol Biol 215:403-10に記載されたように、PILEUP及びBLASTアルゴリズムを使用して、相同性を算出するか、又は配列を並べることもできる(典型的には、そのデフォルト設定で)。
【0121】
BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Centre for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公共的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致するか、又はそれを満たす問合せ配列中の短いワード長Wを同定することにより、高スコアリング配列対(HSP)を最初に同定することを含む。Tは、近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al, 上掲)。これらの初期近隣ワードヒットは、それらを含有するHSPを発見するための検索を開始するためのシードとして作用する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアを増大させることができる限り、それぞれの配列に沿って両方向に伸長される。それぞれの方向におけるワードヒットに関する伸長は、累積アラインメントスコアが、1若しくは複数の負のスコアの残基アラインメントの蓄積のため、ゼロ以下に行く場合;又はいずれかの配列の末端に達する場合、停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、11のワード長(W)、50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919を参照されたい)アラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。
【0122】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析を実行する;例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照されたい。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然存在する確率の指標を提供する、最小合計確率(P(N))である。例えば、第1の配列と第2の配列との比較における最小合計確率が約1未満、典型的には約0.1未満、好適には約0.01未満、最も好適には約0.001未満である場合、ある配列は別の配列と類似すると考えられる。例えば、最小合計確率は、約1~約0.001、多くは約0.01~約0.001の範囲にあってよい。
【0123】
相同体は、約3、5、10、15、20個未満又はそれ以上の突然変異(それぞれ、置換、欠失又は挿入であってもよい)によって関連するポリヌクレオチド中の配列と異なっていてもよい。例えば、相同体は、3~50個の突然変異、多くは3~20個の突然変異によって異なってもよい。これらの突然変異を、相同体の少なくとも30個、例えば、少なくとも約40、60又は100個以上の連続するヌクレオチドの領域にわたって測定することができる。
【0124】
一実施形態では、バリアント配列は、遺伝子コードにおける冗長性のため配列表に与えられる特定の配列によって異なってもよい。DNAコードは、4種の主要核酸残基(A、T、C及びG)を有し、生物の遺伝子中でコードされるタンパク質のアミノ酸を表す3文字コドンを「綴る」ためにこれらのものを使用する。DNA分子に沿ったコドンの線形配列は、これらの遺伝子によってコードされるタンパク質(単数又は複数)中のアミノ酸の線形配列に翻訳される。コードは高度に縮重性であり、61個のコドンが20個の天然アミノ酸をコードし、3個のコドンが「停止」シグナルを表す。したがって、多くのアミノ酸は、1より多いコドンによってコードされ、事実、いくつかは4個以上の異なるコドンによってコードされる。本発明のバリアントポリヌクレオチドは、したがって、本発明の別のポリヌクレオチドと同じポリペプチド配列をコードしてもよいが、同じアミノ酸をコードする異なるコドンの使用のため、異なる核酸配列を有してもよい。
【0125】
本発明のDNA配列は、例えば、化学的プロセッシング、cDNA、ゲノムDNA又はその任意の組合せにより産生される合成DNAを含んでもよい。
【0126】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列を、当業者には周知の方法によって取得することができる。例えば、抗体重鎖及び軽鎖の一部又は全部をコードするDNA配列を、必要に応じて、決定されたDNA配列から、又は対応するアミノ酸配列に基づいて合成することができる。
【0127】
ベクターを構築することができる一般的方法、トランスフェクション方法及び培養方法は、当業者には周知である。これに関して、「Current Protocols in Molecular Biology」, 1999, F. M. Ausubel (ed), Wiley Interscience, New York及びCold Spring Harbor Publishingにより製造されたManiatis Manualが参照される。
【0128】
また、本発明の抗体をコードする1又は複数のDNA配列を含む1又は複数のクローニング又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。任意の好適な宿主細胞/ベクター系を、本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現のために使用することができる。細菌、例えば、大腸菌、及び他の微生物系を使用してもよく、又は真核生物、例えば、哺乳動物宿主細胞発現系を使用してもよい。好適な哺乳動物宿主細胞としては、CHO、ミエローマ細胞又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0129】
本発明はまた、本発明の抗体分子をコードするDNAからのタンパク質の発現をもたらすのに好適な条件下で本発明のベクターを含有する宿主細胞を培養すること、及び抗体分子を単離することを含む、本発明による抗体分子の産生のためのプロセスも提供する。
【0130】
本明細書に記載のスクリーニング方法を使用して、化合物-トリマー複合体に結合することができる好適な抗体を同定することができる。したがって、本明細書に記載のスクリーニング方法を実行して、目的の抗体を試験することができる。
【0131】
本発明の抗体を、例えば、標準的なELISA又はウェスタンブロッティングにより、化合物-トリマー複合体に対する結合について試験することができる。ELISAアッセイを使用して、標的タンパク質との陽性反応性を示すハイブリドーマについてスクリーニングすることもできる。抗体の結合選択性を、例えば、フローサイトメトリーにより、抗体の、標的タンパク質を発現する細胞に対する結合をモニタリングすることによって決定することもできる。したがって、本発明のスクリーニング方法は、ELISA若しくはウェスタンブロットを実行することにより、又はフローサイトメトリーにより、化合物-トリマー複合体を結合することができる抗体を同定するステップを含んでもよい。
【0132】
本発明の抗体は、TNFαトリマー-化合物複合体、すなわち、化合物-トリマー複合体中のエピトープを選択的(又は特異的)に認識する。抗体、又は他の化合物は、それが選択的であるが、他のタンパク質には実質的に結合しない、又は低い親和性で結合するタンパク質に対して優先的に、又は高い親和性で結合する場合、タンパク質「に選択的に結合する」又は「を選択的に認識する」。標的である化合物-トリマー複合体に対する本発明の抗体の選択性を、抗体が上記で考察された他の関連する化合物-トリマー複合体に結合するかどうか、又はそれがそれらを識別するかどうかを決定することによってさらに試験することができる。
【0133】
抗体は、他のトリマー形態の1又は複数のTNFスーパーファミリーメンバーを含む化合物-トリマー複合体を特異的(又は選択的)に結合してもよい。例えば、抗体は、TNFαを含む化合物-トリマー複合体、TNFβを含む化合物-トリマー複合体及びCD40Lを含む化合物-トリマー複合体に結合することができる。或いは、抗体は、TNFαのみを含む化合物-トリマー複合体に特異的(又は選択的)に結合するが、他の任意のTNFスーパーファミリーメンバーを含む化合物-トリマー複合体には結合することができない。例えば、抗体は、TNFαを含む化合物-トリマー複合体に結合するが、TNFβを含む化合物-トリマー複合体又はCD40Lを含む化合物-トリマー複合体には結合することができない。抗体は、最大2つ、3つ、4つ又は最大で全部のTNFスーパーファミリーメンバーを含む化合物-トリマー複合体に特異的(又は選択的)に結合することができる。
【0134】
特異的(又は選択的)とは、抗体が、TNFスーパーファミリーのトリマーの非存在下の試験化合物又は試験化合物の非存在下のTNFスーパーファミリーメンバーのトリマーを含んでもよい、任意の他の分子に有意に交差反応することなく、目的の化合物-トリマー複合体に結合することと理解される。交差反応性を、本明細書に記載の任意の好適な方法によって評価することができる。化合物-トリマー複合体の抗体と、化合物-トリマー複合体以外の分子との交差反応性は、抗体が目的の化合物-トリマー複合体に結合する強さの少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%95%又は100%の強さで他の分子に結合する場合、有意と考えることができる。化合物-トリマー複合体に特異的(又は選択的)である抗体は、それが化合物-トリマー複合体に結合する強さの約90%、85%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%又は20%未満の強さで別の分子に結合することができる。抗体は、それが化合物-トリマー複合体に結合する強さの約20%未満、約15%未満、約10%未満又は約5%未満、約2%未満又は約1%未満の強さで他の分子に結合することができる。抗体は、(i)化合物の非存在下のトリマー形態のTNFα及び/又は(ii)TNFαトリマーの非存在下の化合物と比較して化合物-トリマー複合体に特異的(又は選択的)に結合する。
【0135】
抗体が化合物-トリマー複合体に結合する速度は、本明細書では「結合」速度kon-abと呼ばれ、抗体が化合物-トリマー複合体から解離する速度は、本明細書では「解離」速度又はkoff-abと呼ばれる。本明細書で使用される記号「KD-ab」は、化合物-トリマー複合体に対する抗体の結合親和性(解離定数)を指す。KD-abはkoff-ab/kon-abと定義される。抗体は、化合物-トリマー複合体の質量スペクトル分析及び抗体のピーク強度によって分で測定することができる遅い「結合」速度を有してもよい。抗体のKD-ab値を、異なる抗体:化合物-トリマー複合体比でこの測定を繰り返すことによって見積もることができる。
【0136】
化合物-トリマー複合体に対する結合に関する抗体のKD-ab値は、化合物の非存在下でのトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合に関する抗体のKD-ab値及び/又はトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下での化合物に対する結合に関する抗体のKD-ab値の少なくとも約1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1、200分の1、300分の1又は400分の1でもよい。化合物-トリマー複合体に対する結合に関する抗体のKD-ab値は、試験化合物の非存在下でTNFスーパーファミリー受容体に結合するTNFスーパーファミリートリマーのKD-ab値の約10分の1、約100分の1、約200分の1、又は約300分の1に減少してもよい、すなわち、化合物-トリマー複合体に対する抗体の結合親和性は、典型的には、化合物の非存在下でのトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに対する抗体の結合親和性及び/又はトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下での化合物に対する抗体の結合親和性と比較して少なくとも約10倍、好適には少なくとも約100倍、より好適には少なくとも約200倍、最も好適には少なくとも約300倍増加する。
【0137】
結合親和性を、結合親和性(KD-ab)を単位として与えることができ、μM、nM又はpMなどの任意の適切な単位で与えることができる。KD-ab値が小さいほど、化合物-トリマー複合体に対する抗体の結合親和性は大きい。
【0138】
化合物-トリマー複合体に対する結合に関する抗体のKD-ab値は、化合物の非存在下でのトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合に関する抗体のKD-ab値及び/又はトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下での化合物に対する結合に関する抗体のKD-ab値の少なくとも約1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1であるか、又はさらに低くてもよい。
【0139】
化合物の非存在下でトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに結合する抗体のKD-ab値及び/又はトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下での化合物に対する結合に関する抗体のKD-ab値と比較した化合物-トリマー複合体に対する結合に関する抗体のKD-ab値の減少は、化合物の非存在下でトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに結合する抗体及び/又はトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下で化合物に結合する抗体と比較した、化合物-トリマー複合体に結合する抗体の結合速度(kon-ab)の増加;並びに/又は化合物の非存在下でトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに結合する抗体及び/又はトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下で化合物に結合する抗体と比較した解離速度(koff-ab)の減少の結果生じてもよい。
【0140】
化合物-トリマー複合体に結合する抗体の結合速度(kon-ab)は、化合物の非存在下でトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに結合する抗体及び/又はトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下で化合物に結合する抗体の結合速度と比較して増加する。化合物-トリマー複合体に結合する抗体の解離速度(koff-ab)は、化合物の非存在下でトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに結合する抗体及び/又はトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下で化合物に結合する抗体の解離速度と比較して減少する。化合物の非存在下でトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに結合する抗体及び/又はトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下で化合物に結合する抗体と比較して、化合物-トリマー複合体に結合する抗体の結合速度(kon-ab)は増加し、化合物-トリマー複合体に結合する抗体の解離速度(koff-ab)は減少する。
【0141】
化合物-トリマー複合体に結合する抗体のkon-ab値は、化合物の非存在下でトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに結合する抗体及び/又はトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下で化合物に結合する抗体のkon-ab値と比較して少なくとも約1.5倍若しくは少なくとも2倍、少なくとも約3倍増加してもよく、並びに/又は化合物-トリマー複合体に結合する抗体のkoff-ab値は、化合物の非存在下でトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに結合する抗体及び/若しくはトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの非存在下で化合物に結合する抗体のkoff-ab値と比較して、約2分の1、約10分の1、約20分の1、約30分の1、約40分の1、約50分の1、約60分の1、約70分の1、約80分の1、より好適には約90分の1に減少してもよい。
【0142】
on-ab値、koff-ab値、及びKD-ab値を、任意の適切な技術、例えば、表面プラズモン共鳴、質量分析及び等温熱量測定を使用して決定することができる。
【0143】
化合物-トリマー複合体に結合する抗体のKD-ab値は、1nM、900pM、700pM、500pM、100pM、10pM以下(典型的には約1pMまで下がる)であってもよい。本発明の抗体は、高い親和性で、例えば、ピコモル濃度範囲で本発明の化合物-トリマー複合体に結合する。化合物-トリマー複合体に結合する抗体のKD-ab値は、1nM以下、900pM以下、700pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、100pM以下、90pM以下、80pM以下、70pM以下、60pM以下、50pM以下、40pM以下、30pM以下、20pM以下、10pM以下(再度、約1pMまで下がる)であってもよい。
【0144】
一度、好適な抗体が同定及び選択されたら、抗体のアミノ酸配列を、当業界で公知の方法によって同定することができる。抗体をコードする遺伝子を、縮重プライマーを使用してクローニングすることができる。抗体を、日常的な方法によって組換え的に産生させることができる。
【0145】
抗体は、TNFαへの結合について、H鎖/L鎖、HCVR/LCVR又はCDR配列に関して上記で定義されたものと同じエピトープと競合するか、又はそれに結合することができる。特に、抗体は、TNFαへの結合について、配列番号4/5/6/1/2/3又は配列番号19/20/21/1/17/18のHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3配列組合せを含む抗体と同じエピトープと競合するか、又はそれに結合することができる。抗体は、TNFαへの結合について、配列番号8/7又は配列番号23/22のHCVR及びLCVR配列対を含む抗体と同じエピトープと競合するか、又はそれに結合することができる。
【0146】
用語「エピトープ」は、抗体により結合される抗原の領域である。エピトープを、構造的又は機能的と定義することができる。機能的エピトープは、一般的には、構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。エピトープはまた、立体的であってもよい、すなわち、非線状アミノ酸から構成されていてもよい。ある特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面基である決定基を含んでもよく、ある特定の実施形態では、特異的な三次元構造特性、及び/又は特異的電荷特性を有してもよい。
【0147】
当業者であれば、当業界で公知の日常的な方法を使用して、抗体が参照抗体と同じエピトープに結合するか、又はそれと結合について競合するかどうかを決定することができる。例えば、試験抗体が本発明の参照抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体を、飽和条件下でタンパク質又はペプチドに結合させる。次に、試験抗体がタンパク質又はペプチドに結合する能力を評価する。試験抗体が参照抗体との飽和結合後にタンパク質又はペプチドに結合することができる場合、試験抗体は参照抗体と異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。他方、試験抗体が参照抗体との飽和結合後にタンパク質又はペプチドに結合することができない場合、試験抗体は本発明の参照抗体により結合されるエピトープと同じエピトープに結合することができる。
【0148】
抗体が参照抗体と結合について競合するかどうかを決定するために、上記の結合方法を2つの方向で実施する。第1の方向では、参照抗体を、飽和条件下でタンパク質/ペプチドに結合させた後、試験抗体の、タンパク質/ペプチド分子に対する結合を評価する。第2の方向では、試験抗体を飽和条件下でタンパク質/ペプチドに結合させた後、参照抗体のタンパク質/ペプチドに対する結合を評価する。両方向において、第1の(飽和)抗体のみがタンパク質/ペプチドに結合することができる場合、試験抗体と参照抗体はタンパク質/ペプチドに対する結合について競合すると結論付けられる。当業者であれば理解できるように、参照抗体と結合について競合する抗体は、参照抗体と同一のエピトープに必ずしも結合しないが、重複又は隣接エピトープに結合することによって参照抗体の結合を立体的に遮断してもよい。
【0149】
2つの抗体は、それぞれが他方の、抗原に対する結合を競合的に阻害する(遮断する)場合、同じか、又は重複するエピトープに結合する。すなわち、1、5、10、20又は100倍過剰の一方の抗体は、競合結合アッセイ(例えば、Junghansら、Cancer Res、1990:50:1495~1502頁を参照されたい)において測定された場合、他方の結合を少なくとも50%、75%、90%又はさらには99%阻害する。或いは、2つの抗体は、一方の抗体の結合を減少させるか、又は除去する抗原中の本質的に全てのアミノ酸突然変異が他方の結合を減少させるか、又は除去する場合、同じエピトープを有する。2つの抗体は、一方の抗体の結合を減少させるか、又は除去するいくつかのアミノ酸突然変異が他方の結合を減少させるか、又は除去する場合、重複エピトープを有する。
【0150】
次いで、さらなる日常的な実験(例えば、ペプチド突然変異及び結合分析)を実行して、試験抗体の結合の観察される欠如が実際に参照抗体と同じエピトープに対する結合に起因するかどうか、又は立体的な遮断(若しくは別の現象)が観察される結合の欠如の原因となるかどうかを確認することができる。この種類の実験を、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー又は当業界で利用可能な他の任意の定量的若しくは定性的抗体結合アッセイを使用して実施することができる。
【0151】
本発明の抗体は、トリマーTNFαの少なくとも以下の残基:(a)Y115;(b)Q149;並びに(c)N137及び/又はK98(つまり、N137若しくはK98、又はN137及びK98の両方)を含むエピトープに結合し、Y115及びQ149が、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、N137及びK98が、トリマーTNFαのA鎖上に存在し、残基ナンバリングが配列番号36のTNFαに相当する(に従う)。以下でさらに考察されるように、配列番号36は、ヒト可溶性TNFαの配列である。場合によって、抗体は、Y115、Q149、N137及びK98の全てを含むエピトープに結合する。
【0152】
これらの残基はヒト可溶性TNFαの特定の配列について提供されるが、当業者であれば、日常的な技術を使用して、これらの残基の位置を他のTNFα配列(マウス又はラット)に容易に外挿することができる。したがって、これらの他のTNF配列内の対応する残基を含むエピトープに結合する抗体も、本発明によって提供される。
【0153】
Y115及びQ149は、化合物の非存在下ではTNFαトリマー内に隠れている(及び非接近性である)。しかしながら、TNFトリマーが本明細書に開示される化合物によって結合される場合、これらの残基は、トリマーの歪曲したコンフォメーション内で接近可能となる。したがって、少なくともY115及びQ149を含むエピトープに結合する本発明の抗体は、トリマーの歪曲したコンフォメーション(TNFのシグナル伝達を調節する)を認識するが、化合物の非存在下でトリマーの通常のコンフォメーションを認識しない。 K98はまた、対称TNFトリマー中にある程度埋め込まれている。
【0154】
「A」及び「C」鎖とは、TNFトリマーを構成する第1及び第3のモノマーを指す。したがって、本発明の抗体は、TNFトリマーの2個のモノマーにわたる立体構造エピトープを認識する。
【0155】
より詳細には、TNFαトリマーの結晶構造を側面から見た場合、それはほぼピラミッド/コーンのような形状である。モノマー終端が見る者の方に向かっているN及びC末端を有するトリマー軸を見下ろすと、トリマーの「太い」末端が見える。化合物を含む歪んだ構造では、裂け目はAとCサブユニットの間で開き、理論によって束縛されるものではないが、そこに本発明の抗体が結合する。
【0156】
どの鎖がA、B又はCであるかを、3個の同一の残基、例えば、それぞれの鎖中のP117(G121も適切である)の3個のC-アルファ原子間の3つの距離を測定することによって確認することができる。
【0157】
3つの距離は、アポTNF中では等辺であるが、化合物が結合する場合は歪曲している三角形を形成する。最も短い距離はBC間であり、最も長い距離はAC間である(例えば、AC=13.8Å、AB=12.3Å、BC=10.2Å);したがって、見る者に向かって指し示すN/C末端を有する分子の軸を介して下を見ると、最も長い距離はCを規定し、次いで、A鎖は反時計回りに進み、次いで、B及びCは再度反時計回りに続く。
【0158】
本発明の抗体は、トリマーTNFαのC鎖上にE146、トリマーTNFαのC鎖上にP117、又はE146及びP117の両方をさらに含むエピトープに結合してもよい。P117はまた、(化合物の非存在下で)アポ形態のTNFトリマー中に実質的に埋め込まれている。場合によって、本発明の抗体は、E146及びP117の両方を含むエピトープに結合する。
【0159】
本発明の抗体はまた、トリマーTNFαのC鎖上に存在する残基であるA145をさらに含むエピトープに結合してもよい。
【0160】
本発明の抗体はまた、TNFαのA鎖上に存在する残基であるQ88をさらに含むエピトープに結合してもよい。
【0161】
エピトープはまた、
(a)L63;
(b)L94;
(c)S95;及び
(d)A96
からなる群から選択される1又は複数の残基をさらに含んでもよく、L63は、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、L94、S95及びA96は、トリマーTNFαのA鎖上に存在する。これらの残基は全て、アポ形態のTNFトリマー中にある程度埋め込まれている。
【0162】
場合によって、本発明の抗体は、L63、L94、S95及びA96の全てをさらに含むエピトープに結合する。
【0163】
エピトープはまた、
(a)I97;
(b)L93;及び
(c)S81
からなる群から選択される1又は複数の残基をさらに含んでもよく、I97、L93及びS81は、全てトリマーTNFαのA鎖上に存在する。場合によって、抗体は、これらの残基の全てをさらに含むエピトープに結合する。
【0164】
さらに、抗体は、以下の群:
(a)K65;
(b)Q67;
(c)P113;
(d)D143;
(e)T77;
(f)T79;
(g)I83;
(h)T89;
(g)K90;
(i)V91;
(j)N92;
(k)E135;
(l)I136;及び
(m)R138
から選択される1又は複数の残基をさらに含むエピトープに結合してもよく、K65、Q67、P113及びD143は、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、T77、T79、I83、T89、K90、V91、N92、E135、I136及びR138は、トリマーTNFαのA鎖上に存在する。場合によって、本発明の抗体は、これらの残基の全てをさらに含むエピトープに結合する。
【0165】
本発明の抗体はまた、以下の群から選択される1又は複数の残基:
(a)Y119;
(b)Q47;及び
(c)S133
をさらに含むエピトープに結合してもよく、Y119、Q47及びS133の全ては、トリマーTNFαのA鎖上に存在する。場合によって、本発明の抗体は、これらの残基の全てをさらに含むエピトープに結合してもよい。
【0166】
場合によって、本発明の抗体は、Q27若しくはR131のいずれか、又はQ27及びR131の両方をさらに含むエピトープに結合してもよく、これらの残基は、トリマーTNFαのA鎖上に存在する。
【0167】
上記で考察された通り、残基ナンバリングは、配列番号36に従って示す。
【0168】
本発明の抗体は、配列番号36のTNFαの以下の残基:
(a)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、T77、T79、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、K65、Q67、Y115、A145、E146及びQ149;
(b)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、T77、T79、I83、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、K98、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、L63、K65、Q67、P113、Y115、D143、A145、E146及びQ149;
(c)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、T77、T79、S81、I83、Q88、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、K98、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、L63、K65、Q67、P113、Y115、P117、D143、A145、E146及びQ149;
(d)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、Q27、Q47、T77、T79、S81、I83、Q88、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、K98、Y119、R131、S133、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、L63、K65、Q67、P113、Y115、P117、D143、A145、E146及びQ149
の全てを含むエピトープに結合してもよい。
【0169】
特定のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies, Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., NY)に記載されたものなど通常の遮断アッセイを実行することができる。他の方法としては、アラニン走査突然変異体、ペプチドブロット(Reineke (2004) Methods Mol Biol 248:443-63)、又はペプチド切断分析が挙げられる。さらに、エピトープ切り出し、エピトープ抽出及び抗原の化学的改変などの方法を用いることができる(Tomer (2000) Protein Science 9: 487-496)。そのような方法は、当業界で周知である。
【0170】
抗体エピトープを、X線結晶解析によって決定することもできる。したがって、本発明の抗体を、TNFαトリマーに結合した抗体のX線結晶解析によって評価することができる。特に、抗体パラトープ残基の4Å以内のTNFα上の残基を決定することにより、この方法でエピトープを同定することができる。また5Åを限界として使用して残基を決定してもよい。
【0171】
本発明の抗体はまた、本明細書に記載のTNFα残基を含むエピトープに結合する抗体と競合してもよい。そのような抗体を同定する方法は、本発明において考察されている。
【0172】
本発明の抗体を使用して、本明細書に記載の本発明の化合物を同定することができる。本発明の抗体を、ターゲットエンゲージメントバイオマーカーとして使用することもできる。ターゲットエンゲージメントバイオマーカーを使用して、遭遇、すなわち、リガンドの、目的の標的に対する結合を検出することができる。本発明の場合、本発明の抗体は、本発明の化合物とトリマーTNFαとの複合体にのみ結合する。したがって、本発明の抗体が化合物-トリマー複合体に結合することができる場合、これは、リガンド(化合物)が目的の標的(TNFαトリマー)に結合したことの証拠である。本発明の抗体を改変して、本明細書に記載の検出可能マーカーを付加することができる。したがって、本発明の化合物と標的TNFαとの遭遇を、そのような抗体を使用して検出することができる。
【0173】
ターゲットエンゲージメントバイオマーカーとしての本発明の抗体の使用は、試料を、本発明に従って処置される対象から取得することができる臨床又は前臨床環境において潜在的に有用である。対象から得られる試料を、本発明の抗体で処理して、対象を処置するために使用される化合物が標的TNFαに結合したかどうか(又は本発明の非対称性TNFαトリマーが対象中で形成されたこと)を決定することができる。対象から得られる試料は、血液、血漿又は尿などの、任意の適切な組織又は流体であってよい。対象は、ヒトを含む任意の哺乳動物であってよい。
【0174】
したがって、本発明は、トリマーTNFαと、トリマーTNFαに結合することができる化合物とを含み、それによって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFα受容体に結合し、対象から得られた試料中で受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節する化合物-トリマー複合体の検出のためのターゲットエンゲージメントバイオマーカーとしての本発明の抗体の使用を提供する。調節は、好適には、TNFR1のシグナル伝達の拮抗作用である。
【0175】
同様に、本発明は、化合物のトリマーTNFαとのターゲットエンゲージメントを検出し、それにより、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節する方法であって、
(a)前記化合物を投与された対象から試料を取得するステップ;
(b)本発明の抗体が検出可能である場合、前記抗体を、前記試料及び対照試料と接触させるステップ;
(c)前記検出可能抗体の、前記試料及び前記対照試料に対する結合の量を決定するステップ
を含み、前記検出可能抗体の前記対照試料に対する結合よりも高い、前記検出可能抗体の前記試料に対する結合が、前記化合物の前記トリマーTNFαに対するターゲットエンゲージメントを示す、上記方法を提供する。
【0176】
抗体を検出する方法、及び抗体の標的に対する結合の量を測定する方法は、当業界で周知である。典型的には、抗体を標識することができる。そのような標識としては、酵素、ビオチン/ストレプトアビジン、蛍光タンパク質及び蛍光染料が挙げられる。
【0177】
抗体の標的に対する結合を、例えば、イムノアッセイ法によって測定することができる。イムノアッセイとしては、ウェスタンブロッティング、ELISA、免疫蛍光、免疫組織化学及びフローサイトメトリーが挙げられる。任意の適切な技術を使用して、抗体のTNFαに対する結合を測定することができる。
【0178】
検出可能抗体の、化合物を投与された対象からの試料に対する結合を、抗体の対象試料に対する結合と比較する。対象試料は、任意の適切な試料であってもよい。対象試料は、典型的には、化合物の非存在下での抗体のトリマーTNFαに対する結合を表す「陰性対照」である。例えば、試料を、化合物の投与前に患者から取得することができる。対象試料はまた、例えば、化合物の非存在下で異なる対象に由来するいくつかの試料から以前に決定された測定値に基づくものであってもよい。約5、10、20、50又は100の対象に由来する測定値を、対照値の決定において使用することができる。対照は、平均値、又は得られた全ての値の範囲であってもよい。
【0179】
実験条件、例えば、検出方法は、化合物を投与された対象に由来する試料について、及び対照試料について同じである。抗体も、両事例において同じである。
【0180】
抗体の対照試料に対する結合と比較して、検出可能抗体の、化合物を投与された患者由来試料に対する結合が高いほど(結合が増加するほど)、化合物のトリマーTNFαに対するターゲットエンゲージメントを示す。換言すれば、対照と比較して化合物を投与された患者由来試料について等価な、又はそれより低い結合(結合の低下)は、前記化合物のターゲットエンゲージメントがないことを示す。換言すれば、2つの量における有意差がないことは、ターゲットエンゲージメントがないことを示す。
【0181】
当業者であれば、対照と比較して結合の増加が存在する場合を容易に決定することができる。例えば、対照がデータの範囲である場合、ターゲットエンゲージメントを、データの広がり、対照データと、問題の試料中での抗体の検出される結合との差異、及び算出される信頼レベルに基づいて決定することができる。また、問題の試料に関する検出される結合が任意の陰性対照中で検出される結合の最大量よりも高い場合、ターゲットエンゲージメントを同定することもできる。
【0182】
抗体の結合が対照範囲における最高量と比較して約30%以上増加する場合、ターゲットエンゲージメントを検出することができる。また、抗体の結合が対照範囲と比較して約40%以上、又は約50%以上増加する場合、ターゲットエンゲージメントを検出することもできる。対照が平均値、又は化合物の投与前の患者由来試料に基づく単一の値である場合、同じことが適用される。勿論、対照と比較した増加パーセンテージに上限はない。
【0183】
本発明の抗体を使用して、トリマーTNFαにおけるコンフォメーション変化であって、トリマーTNFαの結合に対する必要なTNFα受容体のシグナル伝達を調節する、上記コンフォメーション変化を惹起する化合物についてスクリーニングすることができる。非限定的な例では、調節は、TNFR1のシグナル伝達の拮抗作用であってもよい。
【0184】
本発明の抗体を、病状の処置及び/又は予防において使用することができる。したがって、ヒト又は動物の身体に対して実行される治療方法における使用のための本発明の抗体が提供される。本発明はまた、本発明の抗体の対象への投与を含む治療方法も提供する。本発明の抗体を、本明細書に記載の任意の治療適応及び/又は医薬組成物において使用することができる。
【0185】
抗体アッセイ
本明細書に記載されるように、本発明は、化合物のみに対する、又は化合物の非存在下ではTNFαに対するその結合と比較して、本明細書に記載の少なくとも1つの化合物-トリマー複合体に選択的に結合する抗体を提供する。これらの抗体を使用して、同じ特性を有するさらなる化合物又は化合物のクラスを同定することができる。
【0186】
モノクローナル抗体を、本明細書に記載の標準的な技術を使用して、TNFαに対して生成させることができる。次いで、これらの抗TNFα抗体を、本発明の化合物-トリマー複合体に結合する抗体について、又はTNFαへの結合が本明細書に記載の化合物によって阻害されるモノクローナル抗体についてスクリーニングすることができる。
【0187】
或いは、モノクローナル抗体を、特定のTNFαのトリマー-化合物複合体に対して生成させることができる。次いで、これらの抗体を、化合物の非存在下でのTNFαへのその結合と比較して、化合物の存在下でTNFαに選択的に結合するモノクローナル抗体についてスクリーニングすることができる。
【0188】
一度、化合物のみ又は化合物の非存在下でのTNFαへのその結合と比較して本発明の少なくとも1つの化合物-トリマー複合体に選択的に結合する抗体が生成されたら、それを使用して、試験化合物と同じ活性を有する他の化合物についてスクリーニングするために使用することができる。例えば、本明細書に記載のような化合物(1)~(7)を、他の化合物についてスクリーニングするために使用することができる。
【0189】
したがって、本発明は、本発明の化合物を同定するためのアッセイであって、
a)試験化合物-トリマー複合体の、本発明の抗体に対する結合親和性を測定するための結合アッセイを実行するステップ;
b)ステップ(a)で測定された結合親和性と、ステップ(a)に記載の抗体に高い親和性で結合することが知られる異なる化合物-トリマー複合体の結合親和性とを比較するステップ;及び
c)その測定された結合親和性が、ステップ(b)に記載の比較に照らして考慮した場合に許容される場合、ステップ(a)の化合物-トリマー複合体中に存在する化合物を選択するステップ
を含む、上記アッセイを提供する。
【0190】
理解されるように、上記のステップ(b)に記載された「異なる」化合物-トリマー複合体は、一般的には、ステップ(a)の化合物-トリマー複合体と同じTNFαトリマーであるが、異なる化合物を含有する複合体である。ステップ(b)の化合物は、化合物(1)~(7)のいずれかであってよい。
【0191】
ステップ(c)における「許容される」とは、ステップ(a)に記載の化合物-トリマー複合体の結合親和性と、ステップ(b)に記載の異なる化合物-トリマー複合体の結合親和性とが少なくとも同等であることを意味する。ステップ(a)に記載の化合物-トリマー複合体の結合親和性は、ステップ(b)に記載の異なる化合物-トリマー複合体の結合親和性に対して少なくとも同じであってよい。結合親和性は、ステップ(b)の化合物と比較してステップ(a)の化合物がさらに高く(つまり、より低いK値)てもよい。前記抗体の前記複合体に対する選択的結合は、化合物の非存在下での前記抗体のTNFαに対する結合又はTNFαの非存在下での前記抗体の化合物に対する結合と比較して測定される。
【0192】
ステップ(a)に記載の化合物-トリマー複合体の結合親和性は、一般に、ステップ(b)に記載の異なる化合物-トリマー複合体の結合親和性よりも優れている。ステップ(b)に記載の異なる化合物-トリマー複合体の結合親和性と比較したステップ(a)に記載の化合物-トリマー複合体の結合親和性の差異は、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍又は500倍の限界内にある。
【0193】
化合物のライブラリーを、本発明の抗体を使用してアッセイすることができる。ライブラリー化合物を、TNFαの存在下及び非存在下で前記抗体と共にインキュベートすることができる。TNFαと化合物の両方の存在下でのみ本発明の抗体に結合する化合物-トリマー複合体の一部を形成する化合物は、本明細書に記載の化合物と同じ活性を有する候補である可能性が高い。次いで、本明細書に開示されるアッセイを使用して、試験化合物が本明細書に記載の化合物であるかどうかを検証することができる。
【0194】
本発明の1又は複数の抗体を、アッセイにおいて使用することができる。本発明の任意の化合物と、特定のTNFαとの複合体に結合することができる一般的抗体を、本発明の抗体アッセイにおいて使用することができる。
【0195】
異なる化合物-トリマー複合体に特異的である本発明の複数の抗体のパネルを、本発明の抗体アッセイにおいて使用することができる。抗体のパネルは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40又は少なくとも50の抗体(例えば、最大75の抗体)を含んでもよい。
【0196】
本発明の抗体アッセイは、短期間で多数の試験化合物をスクリーニングして、本発明の化合物を同定することができる高効率アッセイであってもよい。
【0197】
TNFα及びその受容体を、精製するか、又は培養細胞、組織試料、体液若しくは培養培地中などの混合物中に提供することができる。定性的又は定量的であるアッセイを開発することができ、後者は試験化合物の、トリマー形態のTNFαに対する結合パラメータ(親和性定数及び動力学)、また、化合物-トリマー複合体の必要なTNF受容体に対する結合パラメータを決定するのに有用である。
【0198】
TNFαと化合物とを含む試料は、不安定化剤をさらに含んでもよい。カオトロピックとしても知られる不安定化剤は、低モル濃度(例えば、1M)の尿素、グアニジン又はアセトニトリル、高濃度(例えば、6M以上)のこれらの試薬を含み、TNFαトリマーの完全な解離及び構成するTNFαモノマーサブユニットのアンフォールディングをもたらす。不安定化剤は、DMSOであり、典型的には、5%、10%以上の濃度であってもよい。
【0199】
試験化合物は、上記で考察された特性のいずれか又は/全部を有してもよい。
【0200】
TNFスーパーファミリー及びその受容体
現在公知の22種のTNFスーパーファミリーメンバーが存在する:TNFα(TNFSF1A)、TNFβ(TNFSF1B)、CD40L(TNFSF5)、BAFF(TNFSF13B/BlyS)、APRIL(TNFSF13)、OX40L(TNFSF4)、RANKL(TNFSF11/TRANCE)、TWEAK(TNFSF12)、TRAIL(TNFSF10)、TL1A(TNFSF15)、LIGHT(TNFSF14)、リンホトキシン、リンホトキシンβ(TNFSF3)、4-1BBL(TNFSF9)、CD27L(TNFSF7)、CD30L(TNFSF8)、EDA(エクトジスプラシン)、EDA-A1(エクトジスプラシンA1)、EDA-A2(エクトジスプラシンA2)、FASL(TNFSF6)、NGF及びGITRL(TNFSF18)。
【0201】
本発明では、TNFスーパーファミリーメンバーはTNFαである。TNFαは、可溶性(TNFα)と膜結合型(TNFα)の両方で存在する。本明細書でTNFαを言う場合、これはTNFα型とTNFα型の両方を包含する。TNFαは、典型的には、TNFα型にある。TNFαは、配列番号35若しくは配列番号36、又はそのバリアント(上記)の配列を含んでもよい。
【0202】
本発明のアッセイを使用して、TNFαのモジュレータを同定することができる。具体的には、本発明のアッセイを使用して、TNFα、特に、トリマー形態のTNFαに結合し、必要なTNF受容体に結合することができ、前記受容体を介するシグナル伝達を調節するコンフォメーションにこれらのトリマーを安定化する化合物を同定することができる。TNFαは、TNFαであってもよい。
【0203】
本明細書に記載の化合物は、少なくともTNFαのモジュレータであってもよい。TNFαは、典型的にはTNFαである。
【0204】
本発明の化合物-トリマー複合体は、TNFαのトリマー形態を含む。TNFαは、典型的には、TNFαである。
【0205】
TNFスーパーファミリーのメンバーは、TNF受容体に結合し、それを介するシグナル伝達を開始させる。現在、34種の公知のTNF受容体が存在する:4-1BB(TNFRSF9/CD137)、NGF R(TNFRSF16)、BAFF R(TNFRSF13C)、オステオプロテグリン(TNFRSF11B)、BCMA(TNFRSF17)、OX40(TNFRSF4)、CD27(TNFRSF7)、RANK(TNFRSF11A)、CD30(TNFRSF8)、RELT(TNFRSF19L)、CD40(TNFRSF5)、TACI(TNFRSF13B)、DcR3(TNFRSF6B)、TNFRH3(TNFRSF26)、DcTRAIL R1(TNFRSF23)、DcTRAIL R2(TNFRSF22)、TNF-R1(TNFRSF1A)、TNF-R2(TNFRSF1B)、DR3(TNFRSF25)、TRAIL R1(TNFRSF10A)、DR6(TNFRSF21)、TRAIL R2(TNFRSF10B)、EDAR、TRAIL R3(TNFRSF10C)、Fas(TNFRSF6/CD95)、TRAIL R4(TNFRSF10D)、GITR(TNFRSF18)、TROY(TNFRSF19)、HVEM(TNFRSF14)、TWEAK R(TNFRSF12A)、TRAMP(TNFRSF25)、リンホトキシンβ R(TNFRSF3)及びXEDAR。
【0206】
本明細書に記載されるTNF-Rは、TNF-R1とTNF-R2の細胞外ドメイン(ECD)などの、TNF-R1とTNF-R2の両方を包含する。本発明のアッセイを使用して、任意の必要なTNF受容体を介するTNFαのシグナル伝達を調節する化合物を同定することができる。本発明のアッセイを使用して、TNF-R1又はTNF-Rを介するTNFαのシグナル伝達を調節する化合物を同定することができる。TNFスーパーファミリーメンバーはTNFαであり、TNF受容体はTNF-R1であってもよい。本発明の実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーはTNFαsであてもよく、TNF受容体はTNF-R1であってもよい。本発明のアッセイを使用して、TNF-R1を介するTNFαのシグナル伝達を特異的に調節することによって作用する化合物を同定することができる。特に、化合物は、TNF-R1を介するTNFαのシグナル伝達を調節することによって作用することができるが、TNF-R2を介するTNFαのシグナル伝達に対する効果はない。
【0207】
治療指標
TNFαは、TNFスーパーファミリーの典型的なメンバーである。TNFαは、免疫調節及び炎症応答を媒介する多面的なサイトカインである。in vivoでは、TNFαは細菌、寄生虫及びウイルス感染に対する応答に関与することも知られている。特に、TNFαは、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(クローン病を含む)、乾癬、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、疼痛、てんかん、骨粗鬆症、喘息、敗血症、発熱、全身性エリテマトーデス(SLE)及び多発性硬化症(MS)並びにがんにおいて役割を有することが知られている。TNFαはまた、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、虚血性脳卒中、免疫複合体媒介性糸球体腎炎、ループス腎炎(LN)、抗好中球細胞質抗体(ANCA-)関連糸球体腎炎、微小変化型疾患、糖尿病性腎症(DN)、急性腎傷害(AKI)、閉塞性尿路疾患、腎同種移植拒絶、シスプラチン誘導性AKI及び閉塞性尿路疾患における役割を有することが知られている。
【0208】
TNFスーパーファミリーの他のメンバーは、自己免疫疾患及び免疫不全に関与することが公知である。特に、TNFスーパーファミリーのメンバーは、RA、SLE、がん、MS、喘息、鼻炎、骨粗鬆症及び多発性ミエローマ(MM)に関与することが公知である。TL1Aは、臓器移植片拒絶において役割を果たすことが公知である。
【0209】
本明細書に記載の化合物を使用して、従来のTNFスーパーファミリーメンバーモジュレータによって処置、防止又は改善することができる任意の状態を処置、防止又は改善することができる。化合物を、単独で、又は従来のTNFスーパーファミリーメンバーモジュレータと組み合わせて使用することができる。原理的には、TNFスーパーファミリーメンバーによるTNF受容体を介する病的シグナル伝達から、又はTNFスーパーファミリーメンバーによるTNF受容体を介するシグナル伝達の欠陥から、部分的又は全体的に生じる任意の状態を、処置、防止又は改善することができる。TNFスーパーファミリーメンバーによるTNF受容体を介する病的シグナル伝達は、正常な生理学的レベルのシグナル伝達を超えるTNF受容体を介するシグナル伝達の増加、最初は正常であったが、正常な生理学的シグナルに応答して停止することができないTNF受容体を介するシグナル伝達、及び正常の生理学的規模範囲内にあるが、非生理的手段によって開始するTNF受容体を介するシグナル伝達を含むが、それだけに限定されない。本発明は、TNFαによって媒介又は影響される状態の処置、防止又は改善に関する。
【0210】
TNFαと相互作用する化合物は、したがって、様々なヒトの病気の処置及び/又は防止において有益である。これらのものとしては、自己免疫障害及び炎症障害;神経障害及び神経変性障害;疼痛障害及び侵害障害;並びに心血管障害が挙げられる。
【0211】
炎症障害及び自己免疫障害としては、全身性自己免疫障害、自己免疫性内分泌障害及び臓器特異的自己免疫障害が挙げられる。全身性自己免疫障害としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、血管炎、多発性筋炎、強皮症、多発性硬化症、強直性脊椎炎、関節リウマチ及びシェーグレン症候群が挙げられる。自己免疫性内分泌障害としては、甲状腺炎が挙げられる。臓器特異的自己免疫障害としては、アジソン病、溶血性貧血又は悪性貧血、糸球体腎炎(グッドパスチャー症候群を含む)、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病、インスリン依存性糖尿病、若年性糖尿病、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、天疱瘡、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肺炎、自己免疫性心臓炎、重症筋無力症、自然不妊症、骨粗鬆症、喘息及び筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む)が挙げられる。
【0212】
神経障害及び神経変性障害としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、頭部外傷、発作及びてんかんが挙げられる。
【0213】
心血管障害としては、血栓症、心臓肥大、高血圧、心臓の不規則収縮(例えば、心不全中の)、及び性的障害(勃起障害及び女性性的機能障害を含む)が挙げられる。
【0214】
化合物を使用して、炎症障害、CNS障害、免疫障害及び自己免疫障害、疼痛、骨粗鬆症、発熱及び臓器移植拒絶を処置又は防止することができる。化合物を使用して、関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病を含む)、乾癬、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん、喘息、敗血症、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、喘息、鼻炎、がん及び骨粗鬆症を処置又は防止することができる。化合物を使用して、関節リウマチ(RA)、非特異的炎症性関節炎、浸食性骨疾患、軟骨炎、軟骨変性及び/又は破壊、若年性炎症性関節炎、スティル病(若年及び/又は成人開始型)、若年性特発性関節炎、若年性特発性関節炎(少関節炎型と多関節炎型の両方)、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎、不確定大腸炎、回腸嚢炎を含む)、乾癬、乾癬性関節症、強直性脊椎炎、シェーグレン病、アルツハイマー病(AD)、ベーチェット病、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、虚血性脳卒中、疼痛、てんかん、骨粗鬆症、骨減少症、慢性疾患の貧血、悪液質、糖尿病、脂質異常症、代謝症候群、喘息、慢性閉塞性気道(又は肺)疾患、敗血症、発熱、呼吸窮迫症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、免疫複合体媒介性糸球体腎炎、ループス腎炎(LN)、抗好中球細胞質抗体(ANCA-)関連糸球体腎炎、微小変化型疾患、糖尿病性腎症(DN)、急性腎傷害(AKI)、閉塞性尿路疾患、腎同種移植拒絶、シスプラチン誘導性AKI及び閉塞性尿路疾患、眼疾患(糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、未熟児網膜症、加齢黄斑変性、黄斑浮腫、増殖性及び/又は非増殖性網膜症、新血管形成を含む角膜血管新生、網膜静脈閉塞、様々な形態のブドウ膜炎及び角膜炎を含む)、甲状腺炎、様々な形態の肝線維症、様々な形態の肺線維症を含む線維化障害、全身硬化症、強皮症、がん並びにがん関連合併症(骨格合併症、悪液質及び貧血を含む)を処置又は防止することができる。
【0215】
上記で考察された通り、本発明の抗体を、本明細書に記載の化合物又は複合体による処置の有効性を評価するためのターゲットエンゲージメントバイオマーカーとして使用することができる。一実施形態では、本明細書に記載の化合物又は複合体で処置された対象から採取された試料を、本発明の抗体と接触させることができる。次いで、抗体を使用して、試料中に存在するTNFα-化合物複合体の量を決定することができる。抗体を使用して決定された複合体の量を、処置の有効性と関連付けることができる。例えば、本発明の抗体によって検出される複合体が多いほど、処置は有効である。抗体を使用して決定された複合体の量は、処置の有効性に正比例する。例えば、抗体を使用して決定された複合体の量が2倍になることは、処置の有効性も2倍になることを示してもよい。
【0216】
任意の適切な技術を使用して、本発明の抗体を使用して化合物-トリマー複合体の量を決定することができる。標準的な技術は当業界で公知であり、本明細書に開示される。例えば、本発明の抗体を用いるELISA及びウェスタンブロッティングを使用して、化合物-トリマー複合体の量を決定することができる。
【0217】
化合物-トリマー複合体の量を、化合物-トリマー複合体の質量、化合物-トリマー複合体の濃度、及び化合物-トリマー複合体のモル濃度を測定することによって決定することができる。この量を、任意の適切な単位で与えることができる。例えば、化合物-トリマー複合体の濃度を、pg/ml、ng/ml又はμg/mlで与えることができる。化合物-トリマー複合体の質量を、pg、ng又はμgで与えることができる。
【0218】
目的の試料中の化合物-トリマー複合体の量を、本明細書に記載のように、対照試料などの別の試料中の化合物-トリマー複合体のレベルと比較することができる。そのような方法では、試料中の化合物-トリマー複合体の質量、モル量、濃度又はモル濃度などの、化合物-トリマー複合体の実際の量を評価することができる。化合物-トリマー複合体の量を、化合物-トリマー複合体の質量、モル量、濃度又はモル濃度を定量することなく、別の試料中でのものと比較することができる。したがって、本発明による試料中の化合物-トリマー複合体の量を、2つ以上の試料間の比較に基づいて、化合物-トリマー複合体の相対質量、相対モル量、相対濃度又は相対モル濃度などの、相対量として評価することができる。
【0219】
医薬組成物、用量及び用量レジメン
本発明の抗体、化合物又は複合体を、医薬組成物中に提供することができる。医薬組成物は、通常、滅菌されており、典型的には、薬学的に許容される担体及び/又はアジュバントを含む。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容されるアジュバント及び/又は担体をさらに含んでもよい。
【0220】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、生理的に適合する任意且つ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。担体は、例えば、注射又は輸注による、非経口、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、眼内、腹腔内、皮下、脊髄又は他の非経口投与経路にとって好適であってよい。或いは、担体は、局所、表皮又は粘膜投与経路などの非経口(non-parenteral)投与にとって好適であってよい。担体は、経口投与にとって好適なものであってもよい。投与経路に応じて、モジュレータを、酸の作用及び化合物を不活化し得る他の自然条件から化合物を保護するための材料中でコーティングすることができる。
【0221】
本発明の医薬組成物は、1又は複数の薬学的に許容される塩を含んでもよい。「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の望ましい生物活性を保持し、いかなる望ましくない毒性効果も与えない塩を指す。そのような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。
【0222】
薬学的に許容される担体は、水性担体又は希釈剤を含む。本発明の医薬組成物中で用いることができる好適な水性担体の例としては、水、緩衝化水及び塩水が挙げられる。他の担体の例としては、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びその好適な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、又は塩化ナトリウムを含むことが望ましい。
【0223】
治療組成物は、典型的には、製造及び保存の条件下で無菌性であり、安定でなければならない。組成物を、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度にとって好適な他の規則的構造として製剤化することができる。
【0224】
本発明の医薬組成物は、さらなる活性成分を含んでもよい。
【0225】
また、本発明の抗体、化合物及び/又は複合体と、使用のための指示書とを含むキットも本発明の範囲内にある。キットは、上記で考察されたさらなる治療剤又は予防剤などの、1又は複数のさらなる試薬をさらに含有してもよい。
【0226】
本発明の方法及び/又は抗体によって同定される化合物、並びに本発明の抗体又はその製剤若しくは組成物を、予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。
【0227】
治療的適用では、化合物を、状態又は1若しくは複数のその症状を治癒させる、軽減する、又は部分的に停止させるのに十分な量で、上記の障害又は状態に既に罹患している対象に投与する。そのような治療的処置は、疾患症状の重症度の低下、又は無症状期間の頻度若しくは持続時間の増大をもたらし得る。これを達成するのに十分な量を、「治療有効量」と定義する。
【0228】
予防的適用では、製剤を、状態又は1若しくは複数のその症状のその後の効果を防止する、又は減少させるのに十分な量で、上記の障害又は状態のリスクがある対象に投与する。これを達成するのに十分な量を、「予防有効量」と定義する。それぞれの目的のための有効量は、疾患又は傷害の重症度並びに対象の体重及び全身状態に依存する。
【0229】
投与のための対象は、ヒト又は非ヒト動物であってもよい。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、は虫類などを含む。本発明の実施形態は、ヒトへの投与である。
【0230】
本発明の化合物又は医薬組成物を、1又は複数の当業界で公知の様々な方法を使用して、1又は複数の投与経路により投与することができる。当業者であれば理解できるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化する。本発明の化合物又は医薬組成物のための投与経路の例としては、例えば、注射又は輸注による、静脈内、筋肉内、皮内、眼内、腹腔内、皮下、脊髄又は他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書で使用される語句「非経口投与」は、通常は注射による、腸内投与及び局所投与以外の投与様式を意味する。或いは、本発明の化合物又は医薬組成物を、局所、表皮又は粘膜投与経路などの、非非経口経路により投与することができる。本発明の化合物又は医薬組成物は、経口投与のためのものであってもよい。
【0231】
本発明の化合物又は医薬組成物の好適な用量を、技術のある医師によって決定することができる。本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者にとって毒性的であることなく、特定の患者のための望ましい治療応答、組成、及び投与様式を達成するのに有効である活性成分の量を得るために変化し得る。選択される用量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与の時間、用いられる特定の化合物の排出速度、処置の持続時間、用いられる特定の組成物と共に使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、年齢、性別、体重、状態、処置される患者の全身の健康及び以前の病歴、並びに医学界で周知の因子などの、様々な薬物動態学的因子に依存する。
【0232】
好適な用量は、例えば、処置される患者の約0.01μg/kg~約1000mg/kg体重、又は約0.1μg/kg~約100mg/kg体重の範囲であってもよい。非限定的な例として、好適な用量は、1日当たり約1μg/kg~約10mg/kg体重又は1日当たり約10μg/kg~約5mg/kg体重であってもよい。
【0233】
用量レジメンを、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)を提供するように調整することができる。例えば、治療状況の緊急性によって示されるように、単回用量を投与してもよく、数回に分割された用量を経時的に投与してもよく、又は用量を比例的に減少若しくは増加させてもよい。本明細書で使用される用量単位形態とは、処置される対象にとって単一用量として適する物理的に個別の単位を指す;それぞれの単位は、必要とされる薬学的担体と関連する所望の治療効果をもたらすように算出される活性化合物の所定量を含有する。
【0234】
投与は、単一又は複数の用量にあってもよい。複数用量を、同じか、又は異なる経路により、同じか、又は異なる位置に投与することができる。或いは、用量は、持続放出製剤によるものであってもよく、その場合、低頻度の投与が必要である。用量及び頻度は、患者におけるアンタゴニストの半減期及び望ましい処置の持続時間に応じて変化してもよい。
【0235】
上記のように、本発明の化合物又は医薬組成物を、1又は複数の他の治療剤と共に同時投与することができる。例えば、他の薬剤は、鎮痛剤、麻酔剤、免疫抑制剤又は抗炎症剤であってもよい。
【0236】
2つ以上の薬剤の組合せ投与を、いくつかの異なる方法で達成することができる。両方とも単一の組成物中で一緒に投与するか、又はそれらを組合せ治療の一部として別々の組成物中で投与してもよい。例えば、一方を、他方の前、後に、又はそれと同時に投与してもよい。
【0237】
以下の例を、どのように本発明の方法及び組成を作製し、使用するかの完全な開示及び説明を当業者に提供するために下記に示す。これらの例は、発明者等が彼らの発明とみなすことの範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例0238】
(例1) - 化合物の合成
(例1(A)) - 式(1)~(63)及び(65)の化合物の合成
化合物(1)の合成は、WO2013/186229(例44)に開示されている。
化合物(2)の合成は、WO2013/186229(例89)に開示されている。
化合物(3)の合成は、WO2014/009295(例129)に開示されている。
化合物(4)の合成は、WO2014/009295(例173)に開示されている。
化合物(5)の合成は、WO2014/009295(例319)に開示されている。
化合物(6)の合成は、WO2013/186229(例490)に開示されている。
化合物(7)の合成は、WO2013/186229(例156)に開示されている。
【0239】
(例2) - 抗体誘導
5匹のSprague Dawleyラットを、ベンゾイミダゾール化合物(1)との複合体のヒトTNFαで免疫した後、免疫B細胞を96ウェルプレートで培養して、クローン増殖及び抗体分泌を誘導した(Tickle, S. et al., High throughput screening for high affinity antibodies Journal of Laboratory Automation 2009 14: 303-307)。均一なビーズベースFMATアッセイにおいて、培養上清を、アポヒトTNFαと比較して化合物(1)との複合体のヒトTNFαに優先的に(50倍モル過剰で)結合するIgG抗体について、スクリーニングした。ヒトTNFα(+/-化合物(1))を、ビオチン化抗ヒトFc(Jacksonカタログ番号109-066-098)に結合されたヒトTNF-受容体I-Fc融合タンパク質(R&D Systemsカタログ番号372-Rl-050)を使用する捕捉システムによって、ビーズ表面(superavidin被覆Bangs Beads、カタログ番号CP01N)に提示した。
【0240】
TNFα-化合物(1)複合体への優先的な結合を示した抗体を「コンフォメーション選択的」と名付け、クローニングへ進めた。蛍光Foci法(米国特許第7993864号/欧州特許第1570267B1号)を使用して陽性ウェル由来の抗原特異的B細胞を識別及び単離し、特異的抗体可変領域遺伝子を逆転写(RT)-PCRによって単一細胞から収集した。
【0241】
ヒト及びマウスTNFα+化合物の両方にコンフォメーション選択的結合を示した2つの代表的な抗体、CA185_01974及びCA185_01979のアミノ酸配列を以下に示す:
CA185_01974.0(VR0001837)
軽鎖可変領域(LCVR)配列番号7(CDRは下線部)
【数1】

重鎖可変領域(HCVR)配列番号8(CDRは下線部)
【数2】

CA185_01979.0(VR0001842)
軽鎖可変領域(LCVR)配列番号22(CDRは下線部)
【数3】

重鎖可変領域(HCVR)配列番号23(CDRは下線部)
【数4】
【0242】
(例3) - 誘導された抗体の潜在的エピトープ
ラット誘導抗体が化合物の存在下でヒト及びマウスTNFαの両方に結合する能力を考慮して、ラット、マウス及びヒトアミノ酸配列の詳細な解析並びにTNFαのX線結晶構造を、可能性のあるエピトープが決定されうるかを確認するために行った。
【0243】
ラット UniProt P16599(配列番号32)
【数5】

マウス UniProt P06804(配列番号33)
【数6】

ヒト UniProt P01375(配列番号34)
【数7】
【0244】
ラット、マウス及びヒトのTNFαUniProt配列のアラインメント及び比較から、成熟した切断産物においてラットアミノ酸配列がヒトと異なり、ヒト配列とマウス配列とが一致する例には、N168、I194、F220及びA221(ヒト配列からの残基及びナンバリング)が含まれる。
【0245】
これらの残基を、ヒトTNFαの結晶構造(1TNF)において強調する(図1)。これらのアミノ酸のいずれかが抗体CA185_01974及びCA185_01979によって標的とされるエピトープに含まれている可能性がある。
【0246】
マウスIgG及びマウスFab(ヒンジなし)ベクターへ抗体可変領域をクローニングした後、抗体CA185_01974及びCA185_01979の結合のコンフォメーション選択的性質を、TNFαに結合する様々な試験化合物を使用して、HPLC、BIAcore、ELISA及び細胞ベースアッセイで確認した。
【0247】
CA185_01979に対するエピトープのより包括的な解析を下記例9及び10に示す。
【0248】
(例4) - 抗体特徴を決定するための高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
マウスFab断片の特異的結合を、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、CA185_01974と化合物(1)で複合体化したヒトTNFαとの間の複合体形成により実証した。結果を図2に示す。この図に示されるように、0.5×モル過剰のFabでの優勢ピークは、結合したFab及びトリマー-化合物複合体に相当する(但し、Fabに結合していない一部のトリマー-化合物複合体の存在を示す小さなピークがある)。1.0×モル過剰のFabに、トリマー-化合物複合体に結合したFabに相当する、1つのより高分子量のピークがある。1.5×及び2×モル過剰のFabに、未結合のFabに相当する増大するより低分子量のピークがある。
【0249】
したがって、化学量論は、1.5×及び2×のモル過剰を示す過剰Fabを有する、1Fab:1TNFαトリマーと決定された。
【0250】
また化合物(1)で複合体化したヒトTNFα複合体へのCA185_01979の結合を、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して調べた。結果を図3に示す。CA185_01974について、化学量論は、1.5×及び2×のモル過剰を示す過剰Fabを有する、1Fab:1TNFαトリマーと決定された。
【0251】
(例5) - 抗体特徴を決定するためのBIAcoreアッセイ
表面プラズモン共鳴を、25℃でBIAcoreT200(GE Healthcare)を使用して行った。抗マウスFc(Jackson115-006-071)を、CM5センサチップ(GE Healthcare)に、アミンカップリング化学を介して固定化し、約6000反応単位の捕捉レベルとした。HBS-EPバッファー(10mMのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.05%(v/v)界面活性剤P20-GE Healthcare)+1%DMSOを、ランニングバッファーとして使用した。各IgGの1μg/mlでの10μlの注入液を、固定化抗マウスFcによる捕捉のために使用して、TNFα-結合表面を作製した。ヒト又はマウスTNFα(インハウス)を50nMで、HBS-EP+(1%DMSO)中2μMの化合物と共に5時間プレインキュベートした。
【0252】
ヒト又はマウスのTNFα+/-試験化合物の3分注入液を、30μl/分の流量で各捕捉IgGに通した。表面を10μl/分の流量で、60秒の40mMのHCl×2及び30秒の5mMのNaOHの注入により再生した。二重参照バックグラウンド減算結合曲線を、T200 Evaluationソフトウェア(バージョン1.0)を使用して標準手法に従って解析した。動態パラメータを適応アルゴリズムから決定した。
【0253】
2つの化合物系統からの試験化合物の存在下及び非存在下におけるヒト及びマウスTNFαの動態結合データを、下記表1及び2に示す。
【表2】
【0254】
2つの化合物系統からの代表的試験化合物であるCA185_01974とCA185_01979の両方が、化合物-変形したヒトTNFαに対して、>2logの選択的結合を示した。
【表3】
【0255】
2つの化合物系統からの代表的試験化合物であるCA185_01974とCA185_01979の両方が、化合物-変形したマウスTNFαに対して、>1.5及び>2logの選択的結合を示した。
【0256】
(例6) - 抗体特徴を決定するためのELISA
サンドイッチELISAを展開して、本発明の化合物に結合されたTNFαの濃度を、これらの化合物との複合体であるときのTNFαのコンフォメーションを特異的に検出する抗体CA185_01974.0を使用して測定した。簡単に述べると、試験化合物との複合体のTNFαを固定化するために、マイクロタイタープレートを、CA185_01974.0でコーティングした。TNFαを50×モル過剰の試験化合物と共に2~8℃で一晩インキュベートした。この一晩のインキュベーション後、TNFαを、ヘテロフィリックな抗体ブロッカーの存在下、内因性TNFαを枯渇させた純粋なヒト血漿で段階的に希釈して、コーティングされたプレートに加えた。曲線を0.78pg/ml~50pg/mlのTNFαの濃度範囲で作成した。ビオチン化ポリクローナル抗TNFα抗体を使用して、結合されたTNFαを検出し、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ及びTMB基質を用いて比色定量シグナルを得た。Perkin ElmerからのELASTキットを使用し、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼとTMB基質との間の追加ステップとしてチラミドシグナル増幅を使用して、アッセイの感度を増加させた。
【0257】
またELISAを展開して、全TNFα(遊離TNFα+試験化合物との複合体でのTNFα)を並行して測定した。このアッセイのために、コーティング抗体を、市販の抗TNFαポリクローナル抗体(Invitrogen AHC3812)に置き換えた。また試料インキュベーション時間を3時間に増加させた。他の全てのステップは、コンフォメーション特異的アッセイと同一であった。これにより、試験化合物との複合体でのTNFαの量を、全TNFαに対する割合として計算することができる。
【0258】
化合物(3)、(4)及び(5)との全TNFαELISAの結果を図4に示す。
【0259】
CA185_01974.0並びに化合物(3)、(4)及び(5)を用いたコンフォメーション特異的TNFαELISAの結果を図5に示す。アポTNFαはこのアッセイでシグナルを示さず、化合物結合TNFαに対する抗体CA185_01974の結合の特異的性質を実証した。抗体は、様々な化合物系統由来の様々な試験化合物で結合されたTNFαを認識することができた。
【0260】
(例7) - 抗体特徴を決定するための細胞ベースアッセイ
組換え抗体をまた、化合物-変形したTNFαに対する結合について、FACSアッセイで、1μg/mlのドキシサイクリンで2.5時間誘導した後のTNF-RIを過剰発現するヒト胚性腎(HEK)JumpIn細胞を使用して試験した。HEK細胞をトリプシン処理し、培地中で2時間インキュベートして消化TNFRIレベルを回復させた。2μg/mLのヒトTNFαを、40μMの化合物(1)又は0.4%のDMSOと共に37℃で1時間プレインキュベートした。プレインキュベーション混合物を、氷上で1時間、細胞に加えた(1:4希釈液、最終濃度:0.5μg/mLのヒト-TNFα+/-10μMの化合物(1)又は0.1%のDMSO)。細胞を洗浄し、固定して(1.5%PFA)、氷上で1時間、1又は10μg/mLの抗体(二次抗体:抗マウス-Alexa488)を用いて染色した後、受容体結合TNFαについて解析した。
【0261】
図6に示されるように、1及び10μg/mlのCA185_01974及びCA185_01979を用いた染色のFACSヒストグラムプロットは、抗体が、化合物(1)とプレインキュベートしたTNFαのみを認識することを実証する。DMSO対照では染色はなかった。
【0262】
さらに、CA185_01974及びCA185-01979Fab断片の特異的結合が、化合物-変形した膜結合TNFαを用いて実証された。TACE切断部位のノックアウトにより膜TNFαを過剰発現する改変NS0細胞系を、0.001~10μMの化合物(1)又は0.1%のDMSOと共に37℃で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、固定して、氷上で1時間、0.01又は0.1μg/mlの抗体Fab断片を用いて染色した(二次抗体は、Jackson ImmunoResearchからの抗マウスFab-DyeLight488を用いた)。
【0263】
CA185_01974(図7)及びCA185_01979Fab断片を用いた染色のFACSヒストグラムプロットは、抗体が、化合物(1)とプレインキュベートしたTNFのみを認識することを実証する。DMSO対照では染色はなかった。
【0264】
(例8) - 抗体CA185_01974は、ヒトTNF-化合物(4)複合体に対して300倍の選択性を示す
化合物(4)を、ヒト及びカニクイザルTNFとインキュベートし、マウス全長抗体CA185_01974に対して滴定して、正確な親和性値を決定した。実験には、以下の対照を含めた:(i)1974に対してヒト又はカニクイザルTNF+DMSO;(ii)抗体なしに対してヒト又はカニクイザルTNF+DMSO;及び(iii)抗体なしに対してヒト又はカニクイザルTNF+化合物(4)。それぞれの試料及び対照は二連で実施し、それぞれ複製で4種の濃度を使用した。
【0265】
図8及び9に示されるように、hTNF+化合物(4)及びcTNF+化合物(4)のバックグラウンド結合は、アッセイの経過にわたって5~10RU増加した。これは、第2の二連における、CA185_01974に対するh/cTNF+化合物(4)結合のより高い応答でみられる。化合物(4)の非存在下でのhTNF及びcTNFの結合は一貫して非常に低かった。
【0266】
このアッセイにおけるマウス全長IgG CA185_1974_P8に結合するhTNF+DMSOの動態は、先の単一濃度解析と非常に類似していた。しかしながら、マウス全長IgG CA185_1974_P8に対するカニクイザルTNFの親和性は類似しているが、動態は異なる。
【0267】
表3は、CA185_1974_P8に対する各解析物の結合の動態を示す。表4は、CA185_1974_p8に対するTNFの動態の平均値及び+/-化合物(4)の倍率差を示す。図8は、cTNF+/-化合物(4)の二連両方のセンソグラムを示す。図9は、hTNF+/-化合物(4)の二連両方のセンソグラムを示す。
【表4】

【表5】
【0268】
(例9) - Maら(2014)及びSilvianら(2011)の化合物及び複合体は、本発明の化合物及び複合体と異なる特徴を有する
Ma et al. (2014) JBC 289:12457-12466, C87の12458頁に記載されているように、C87は、TNFβの外部表面との相互作用において、TNFR1のループ2/ドメイン2由来の7アミノ酸ペプチドによって占められる空間に適応する分子を見つけることを試みるバーチャルスクリーニングを通じて発見された。MaらからのC87化合物、及びSilvian et al. (2011) ACS Chemical Biology 6:636-647からのBIO8898化合物を、本発明者によって試験した。
【0269】
知見の要約
Maらで記載されたC87についてのBiacore観察結果は再現することができなかった。
【0270】
細胞におけるTNF特異的阻害の証拠は観察されなかった。
【0271】
さらにC87は、ミリモルの親和性に感受性である質量分析で結合が観察されなかった。
【0272】
広範な結晶学的試みで、アポ-TNF(化合物なしのTNF)のみが製造された。
【0273】
蛍光偏光(FP)アッセイにおいて、C87は、蛍光読出しを有する化合物の干渉レベルを超える有意な阻害を示さなかった。
【0274】
TNFαの熱融解温度の安定化を測定するThermofluorで、C87についての小さな安定化が示された。
【0275】
要約すると、トリマーの中心にC87が結合している証拠は見つからなかった。圧倒的多数のデータが、TNFαとの直接的相互作用がないことを示唆した。BIO8898もTNFαに結合しないことが分かった。
【0276】
細胞-TNF誘導性HEK NFKBレポーター遺伝子アッセイ
C87を、TNFαと1時間プレインキュベートしてから、NFκBの制御下にSEAPで安定的にトランスフェクトしたHEK-293細胞に加えた。適切なカウンタースクリーンも、非TNF関連(オフターゲット)活性を検出するために試験した。アッセイを一晩インキュベートした後、阻害を、対照化合物による100%ブロッキングと比較して測定した。最大C87濃度は10,000nMであり、3倍段階希釈した。
【0277】
阻害効果は検出されず、オフターゲット活性に帰属させることはできなかった。
【0278】
Biacore
avi-タグリンカーを使用してTNFを固定化し、C87にチップを通過させた。一実験では、最高濃度の10μMからC87の用量応答を行った。結合は何ら観察されなかった。
【0279】
第2の実験では、チップを通過するC87の流量は減少した。小さなシフトが観察されたが、全体的な結合は無視できる程度であった。
【0280】
Maらに記載のTNFへのC87の結合は、Y軸上のRU値に基づいた超化学量論である可能性が高かった。チップ上の標準TNF密度で、この値は、単純な1:1結合について、予測されるよりも30倍高い領域にあった。
【0281】
別の実験では、BIO8898を、Biacore4000機器のSPRにより、CD40Lの固定化可溶性形態及びTNFαの可溶性形態に対して試験した。17μMの幾何平均IC50がCD40Lに対する結合について決定され、一方で、このアッセイにおいて、TNFαに対する結合は100μMまでの濃度で検出されなかった。
【0282】
質量分析
400μMの濃度でC87のヒトTNFα(20μM)への結合の証拠はなかった。より低い分子量(約473Da)種が、5%未満の占有率で結合しているようである。C87は、503Daの分子量を有する。400μMの濃度での占有率に基づいて、低分子量種の1mMを超える親和性が予測される。
【0283】
結晶学
全体的に、TNFαとのC87の結晶化について、本出願に記載の化合物における通常的手段の試験条件を含め、多大な努力が注がれた。これには、様々リガンド濃度、様々なタンパク質濃度、及び様々な浸漬時間での多数の結晶化の試みの設定が含まれる。いくつかの結晶が観察され、解析によって、塩、つまり化合物を有しないTNFであることが分かった。
【0284】
蛍光偏光(FP)
C87を、蛍光化合物(プローブ)に対するアッセイの前に1時間、TNFαと共にプレインキュベートした。蛍光化合物との直接的(同じ部位で結合する)又は間接的(TNFを妨害する)のいずれかの競合が、FPの減少により検出される。
【0285】
阻害曲線の外挿により、約100μMのIC50が得られた。しかしながら、最高濃度の阻害剤で蛍光消光が観察され、差し引くと、このアッセイでC87の阻害は無視できる程度となった。
【0286】
Thermofluor
Thermofluorは、タンパク質を安定化又は妨害のいずれかをする化合物によるTNFαの融解温度(Tm)の変化を測定する。3.8℃での安定化効果が500μMの濃度のC87で観察されることから、非特異的でありうる弱い結合の可能性が示唆される。
【0287】
(例10) - hTNFα及びFab1974複合体構造
1)タンパク質発現及び精製
ヒトTNFα(CID2043、UniProt P01375、残基77~233)の可溶性形態を、大腸菌(E.Coli)で融合タンパク質として発現させ、以下の最終配列を得た:
【数8】

を得た。
【0288】
配列番号35の最初の「S」は、クローニングの人為生成物で、TNFの天然配列の一部ではない。したがって、配列番号35の残基番号は、Vから開始する、つまりV1、R2、S3などである。配列番号36は、この最初の「S」残基がない配列番号35を表し、つまり
【数9】

である。
【0289】
細胞を濃縮培地中37℃でプレインキュベートし、0.1%のアラビノースの添加で誘導し、25℃で一晩、ベクターpEMB54で発現させた。このベクターは、切断可能なN末端His6Smt-タグを導入する。細胞を溶解し、Ni-NTAキレートクロマトグラフィーにより精製した。融合タンパク質を、イミダゾールを含有するバッファーを用いて溶出し、プロテアーゼの添加により切断した。最終切断TNFαタンパク質を、減算型Niキレートクロマトグラフィー工程で精製して融合タグを除去し、さらに、サイズ排除クロマトグラフィーで精製して残余の不純物を除去した。最終TNFα産物を、典型的に20.0mg/mlに濃縮し、液体窒素中で急速凍結した。
【0290】
N54D及びC182S変異を有するヒトTNFR1(CID5602、UniProt P19438、残基42-184)の細胞外ドメインを、バキュロウイルスを感染させた昆虫細胞中で分泌タンパク質として発現させ、以下の最終配列を得た:
【数10】
【0291】
配列番号37の最初の「G」は、クローニングの人為生成物で、TNFR1の天然配列の一部ではない。したがって、配列番号37の残基ナンバリングは、Sから開始する、つまり、S1、V2、C3などである。配列番号38は、この最初の「G」残基がない配列番号37、つまり、
【数11】

である。
【0292】
融合タンパク質プラスミドを、pEMB50発現ベクターへクローニングした。これは切断可能なN末端の分泌シグナル及びHis-タグ付け融合タンパク質をコードする。ウイルスを、バキュロウイルス発現システムを使用して作出した。感染した昆虫細胞は、培地中に融合タンパク質を分泌した。融合タンパク質を、Ni-NTAキレートクロマトグラフィーにより精製し、イミダゾール濃度勾配を使用してNiカラムから溶出した。溶出タンパク質をプロテアーゼで切断して、N末端His-融合タグを外した。次いで、切断TNFR1を減算型Niキレートクロマトグラフィー工程で精製し、さらに、サイズ排除クロマトグラフィーで精製した。最終TNFR1産物を、典型的に10.0mg/mlに濃縮し、液体窒素中で急速凍結した。
【0293】
複合体を形成するために、333μlの300mMの精製ヒトTNFαを、4,567μlのSECバッファー(10mMのHEPES、pH7.5、150mMのNaCl)及び100μLの化合物(2)(DMSO中10mM、約10モル過剰)と混合し、4℃で一晩インキュベートした。翌日、4080μlのSECバッファーを、700μlのTNFR1、5,000μlのTNFα/UCB1478733混合物及び220μlの500mMのFab1974へ添加して、複合体を形成した;反応物の全量は10mlで、最終モル比は、3TNFαモノマー(1トリマーに対して当量):2.5TNFR1受容体:1.2Fabであった。三元複合体(サイトカイン、リガンド、受容体、及びFab)を、4℃で1時間インキュベートした。次いで、試料を、1.5mlまで濃縮し、10mMのHEPES、pH7.5、150mMのNaClで予め平衡化したSuperdex200 16/600サイズ排除カラム(120ml)に1回の注入で載せた。三元複合体のピーク画分を選択し、13.7mg/mlまで濃縮し、直ちに結晶化の試みに用いた。
【0294】
2)結晶化
三元複合体を、0.5μlの複合体と0.5μlのWizard III/IV:0.1MのHEPES、pH7.0、10%のPEG6,000(条件B8)を、80μlの同じ結晶化溶液の上方で混合することによる、シッティングドロップ蒸気拡散法により結晶化した。結晶を、初期設定後約2カ月、データ収集のために採取した。結晶を、5-10-15%のグリセロールで段階的に凍結保護し、次いで、2016年6月8日の、Argonne National LaboratoryのAdvanced Photon SourceでのLife Sciences Collaborative Access Team(LS-CAT)、ビームライン21-ID-Fでのデータ収集のために、液体窒素中で直接凍結した。
【0295】
3)構造決定
リガンド化合物(2)を伴った、ヒトTNFα(CID2043)とヒトTNFR1(CID5602)とFab1974との複合体の構造を、Phenix.Phaserを使用して、既に決定されている、UCB1478733と結合したヒトTNFα、ヒトTNFR1、Fab1979の構造、及び別で決定された単離Fab1974の構造に基づいた導入モデルを用いて、分子置換により解明した。データをXDSで積分し、XSCALE1を使用してスケーリングした。初期構造決定及び精密化には、単結晶からの3.00Å分解能までのデータを使用した。Phenix.Refine2でCoot3を使用して、反復マニュアルモデル構築を、R及びRfreeがR=0.201、Rfree=0.259となるまで継続した。モデルの質を、Coot及びMolProbity4を使用して検証した。最終データ処理及び精密化統計を下表に列挙する。
【0296】
4)参考文献
【0297】
【表6】
【0298】
6)構造の考察及び図
図11は、ヒトTNFα非対称トリマーと化合物(2)と2つのヒトTNFR1受容体との複合体に結合したFab1974の構造を示す。
【0299】
TNFαとFabとの間の主な接触は、重鎖及び置換TNFαモノマーAを介する。重鎖CDR2及び3は、モノマーAの外表面との接触を形成し、CDR3は、歪んだA/C受容体結合部位の開いた裂け目の中へ深く突き出ている。この裂け目中にCDR3が位置することによって、CDR3のTyr103とモノマーCのTyr115との間でパイスタッキングが生じる、CA1974重鎖とTNFαモノマーCとの間の接触だけがもたらされる。
【0300】
CA1974の軽鎖もまた、TNFαとの実質的な接触を形成し、歪んだA/C受容体結合裂け目と架橋する。軽鎖CDR2は、裂け目の下部に向かって、排他的にモノマーCと接触する。CDR1の2残基のみが裂け目の内表面上でTNFαと接触し、1つはモノマーCと、もう1つはモノマーAと結合する。軽鎖CDR3は、モノマーAと単独で会合し、裂け目の上部に向かって残基と相互作用する。
【0301】
図12に、図11と同じ構造であるが、計算的にモデル化した対称トリマー(つまり、リガンドの非存在下での変形していないトリマー)を伴う場合を示す。この対称トリマーを伴う場合、トリマーのA鎖は、Fab断片との相互作用を保持している。しかしながら、Fab断片とトリマーのC鎖との間の立体的衝突がある。
【0302】
(例11) - エピトープ残基の同定
プログラムNCONT(CCP4結晶解析プログラムパッケージの一部)を使用して、Fab1974とTNF非対称トリマーとの間の、4.0Å以内の距離にある残基を同定した。その距離内にある残基由来のTNFαの全ての原子を、エピトープ残基として同定した。エピトープを、抗体原子の4.0Å以内にある抗原の原子として定義することは、当技術分野の常套手段である(例えば、Andersen et al(2006), Protein Science, 15, 2258-2567を参照されたい)。
【0303】
この実験的に決定されたエピトープの結果を図13に示す。このように同定されたTNFαのA鎖の残基は、T77、T79、I83、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、K98、E135、I136、N137及びR138であった。この方法で同定されたTNFαのC鎖上の残基は、L63、K65、Q67、P113、Y115、D143、A145、E146及びQ149であった。残基ナンバリングは、配列番号36(「S」クローニング人為生成物のない可溶性ヒトTNFα配列)に基づく。
【0304】
5.0Å近接内に次のさらなるA鎖残基(これらの残基もより広範なエピトープの一部を潜在的に形成する)を同定した:Q27、Q47、S81、Q88、Y119、R131及びS133。5.0Å近接内に(これらの残基もより広範なエピトープの一部を潜在的に形成する)次のさらなるC鎖残基:P117を同定した。再度、残基ナンバリングは、配列番号36に基づく。これらの4.0及び5.0Å残基を、Fab1974上の残基と共に下記の表にまとめる。
【表7】
【0305】
(例12) - 標的占有率試薬としての1974の評価
CA1974の、飽和レベルの低分子とプレインキュベートした組換えヒトTNFαの様々な濃度の範囲を検出する能力を試験した。TNFαの過剰の化合物とのプレインキュベーションは、0.1%(w/v)BSA/PBS中で、10μg/mlのTNFαを、1%(v/v)DMSO又は10μMの化合物(2)いずれかと混合し、低分子阻害剤をTNFαの約50倍のモル過剰にすることにより達成した。
【0306】
一晩インキュベーションした後、複合体を、インハウス抗TNFαモノクローナル抗体を使用する免疫沈降法により内因性TNFαを枯渇させたヒト血漿で、様々な濃度に希釈した。低分子結合TNFαを、サンドウィッチELISAを使用して測定した。96ウェルELISAプレート(Nunc)を、PBS中0.1μg/mlのCA1974で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、洗浄バッファー(0.05%(v/v)Tween-20/PBS)で3回洗浄した後、2%(w/v)BSA/PBSで、室温で少なくとも1時間ブロッキングした。各試料100μlを、ブロッキングしたELISAプレートに載せ、室温で、200rpmで振盪しながら30分間インキュベートした。プレートは、洗浄バッファーで3回洗浄した後、ウェル当たり100μlのビオチン化抗TNFα検出抗体(BAF210、R&D Systems)を1%(w/v)BSA/洗浄バッファー中0.1μg/mlの濃度で添加し、室温で1時間、200rpmで振盪した。3回の洗浄の後、1%BSA/洗浄バッファー中100ng/mlストレプトアビジン-ホースラディッシュペルオキシダーゼ(SA-HRP、Sigma)をウェル当たり100μl添加し、室温で、200rpmで振盪しながら45分間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した後、Perkin ElmerからのELASTシステムを使用して、ビオチン-チラミド(B-T)増幅工程を組み込み、さらなる増幅を得た。B-T溶液をELASTバッファーで100倍に希釈し、ウェル当たり100μlを添加し、プレートを、室温で、200rpmで振盪しながら、正確に15分間インキュベートした後、洗浄バッファーで4回洗浄した。ELAST SA-HRPとのインキュベーションを実行した後、4回洗浄し、ウェル当たり100μlのTMB(二液式、KPL)を添加した。適切な色の変化に達した時点で、ウェル当たり100μlの2.5M硫酸を添加して反応を停止した。450nmでの吸光度を、Ascent Softwareバージョン2.6(Thermo)を備えるMultiskan EXプレートリーダーを使用して測定した。
【0307】
アポTNFαバックグラウンドを超える、TNFα+過剰の低分子阻害剤が検出されうる濃度を決定するために、TNFα+DMSOのODの結果の3つの標準偏差を、これらの値の平均に加えた。この値を超えるTNFα+低分子の注入の結果は全て、少なくとも0.999の確率で、アポTNFαに対して有意に異なると考えられた。
【0308】
図14にみられるように、TNFα-低分子複合体は、純粋な血漿中では25pg/ml以上で検出することができ(少なくとも0.999の確率で)、アポTNFαとのバックグラウンド交差反応性は認められなかった。このことは、CA1974が、複合体生物学的試料における標的占有率の測定に有用な試薬でありうることを実証する。
【0309】
(例13) - 直接固定化された又はCA1974による捕捉を介するヒトTNFαへ結合する化合物(1)のシングルサイクルカイネティクス
化合物(1)の、直接固定化されたTNFα又はCA1974で捕捉されたTNFαのいずれかに対するシングルサイクルカイネティクスのプロファイリングのために、表面プラズモン共鳴を、25℃でBIAcore T200(GE Healthcare)を使用して行った。ヒトTNFαを、流路(Fc)2上に繋ぎ留めた(約2000RU)。CA1974 IgG(>10,000反応単位)を、CM5センサチップ(GE Healthcare)に固定化したFc3、4及びFc1ブランク上に、アミンカップリング化学を介して繋ぎ留めた。表面を、ランニングバッファーとして使用したHBS-Pバッファー(10mM HEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、0.0005%(v/v)界面活性剤P20、GE Healthcare)+5%DMSOで安定化した。ヒトTNFαを、約2,000RUの捕捉レベルまで、Fc4上へ流した。化合物(1)を、直列の4つのフローセル(1.875μM、3.75μM、7.5μM及び30μM)全てにわたって100μl/分で流した。二重参照バックグラウンド-減算結合曲線を、T200 Evaluationソフトウエア(バージョン1.0)を使用して標準手法に従って作成した。結果を図15に示す。
【0310】
示したように、動態は、コンフォメーション選択的抗体CA1974を介して捕捉した場合、直接固定化されたアポTNFとの「遅い結合-遅い解離」から「速い結合-速い解離」へ変わる。このことは、抗体が、通常の環境下ではエントロピー的に不利である新規の化学物質の同定を容易にする可能性がある、代替の、おそらく開いたコンフォメーションを、安定化することができることを示す。
【0311】
興味深いことに、CA1974は、構造モデルから、対称形態のアポTNFαとの主要側鎖の衝突が示されているものの(図12)、Biacore及びSE-HPLCの両実験から、アポTNFαと相互作用しうることが示唆された。その相互作用の親和性は、典型的には、TNFα-低分子複合体で観察された親和性の100分の1未満であった。SE-HPLCから、CA1974が、アポTNFαの低分子画分(21%)と相互作用し、1:1(Fab:アポTNFαトリマー)複合体と一致する溶出特性を有する複合体を産生することが示唆された。まとめると、これらの観察は、アポTNFαが、対称分子上の部分的エピトープへの抗体結合よりもむしろ抗体認識を可能にする「開いた」コンフォメーションを自然に採用するという仮説を支持する。Fab-TNFα-低分子複合体と比較してSE-HPLC実験で存在する複合体が少量であることと、観察されたアポTNFαへの親和性がより低かったことは、この「開いた」コンフォメーションが、自然にとられるが一時的に存在するものであること、また、この形態のアポTNFαが、低分子で安定化された形態よりもエネルギー的に安定性が非常に低く、それ故、抗体相互作用が損なわれることを意味する可能性がある。これらの知見は、これまでの分子動力学シミュレーション研究と、任意の1回にトリマーの6%が自然にとられた非対称の開いた状態を採用すると予想する、スピン標識TNFαを用いたDEER実験とで得られた結論を支持する。SEC HPLC実験におけるCA1974の存在は、開いた状態のコンフォメーションをとる方向へ平衡を導き、非対称トリマーの割合を高める可能性が高い。
【0312】
これは、標的タンパク質の稀にとられるコンフォメーションを規定する抗体が、どのように、他のエントロピー的に不利な化合物の結合を可能にすることにより低分子断片のスクリーニングを容易にしうるのか(図15)、又は既定の不活性コンフォメーションを安定化しうる新規化学物質を検出する「センサ」として作用するのかを強調する。逆に言えば、標的タンパク質の稀にとられるコンフォメーションを安定化する低分子によって、誘導された新生エピトープを認識する抗体の生成を増大させることが可能である。
【数12-1】

【数12-2】

【数12-3】

【数12-4】

【数12-5】
【配列表フリーテキスト】
【0313】
配列番号1:<223>1974のLCDR1
配列番号2:<223>1974のLCDR2
配列番号3:<223>1974のLCDR3
配列番号4:<223>1974のHCDR1
配列番号5:<223>1974のHCDR2
配列番号6:<223>1974のHCDR3
配列番号7:<223>1974のLCVR
配列番号8:<223>1974のHCVR
配列番号9:<223>1974のLCVR DNA
配列番号10:<223>1974のHCVR DNA
配列番号11:<223>1974 LCカッパ全長
配列番号12:<223>1974 HC mIgG1全長
配列番号13:<223>1974 HC mFabヒンジなし全長
配列番号14:<223>1974 LC DNAカッパ全長
配列番号15:<223>1974 HC DNA mIgG1全長
配列番号16:<223>1974 HC DNA mFabヒンジなし全長
配列番号17:<223>1979のLCDR2
配列番号18:<223>1979のLCDR3
配列番号19:<223>1979のHCDR1
配列番号20:<223>1979のHCDR2
配列番号21:<223>1979のHCDR3
配列番号22:<223>1979のLCVR
配列番号23:<223>1979のHCVR
配列番号24:<223>1979のLCVR DNA
配列番号25:<223>1979のHCVR DNA
配列番号26:<223>1979 LCカッパ全長
配列番号27:<223>1979 HC mIgG1全長
配列番号28:<223>1979 HC mFabヒンジなし全長
配列番号29:<223>1979 LC DNAカッパ全長
配列番号30:<223>1979 HC DNA mIgG1全長
配列番号31:<223>1979 HC DNA mFabヒンジなし全長
配列番号37~38:<223>N54D及びC182S変異を有するヒトTNFR1の細胞外ドメイン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2022184988000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリマーTNFαの少なくとも以下の残基:
(a)Y115
(b)Q149;及び
(c)N137若しくはK98、又は両方
を含むエピトープに結合する抗体であって、Y115及びQ149が、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、N137及びK98が、トリマーTNFαのA鎖上に存在し、かつ残基ナンバリングが配列番号36に従う、上記抗体、
TNFαへの結合について上記抗体と競合する抗体、
上記抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド、
上記抗体と、薬学的に許容されるアジュバント及び/又は担体とを含む医薬組成物、
対象から得られた試料中の化合物-トリマー複合体の検出のためのターゲットエンゲージメント(target engagement)バイオマーカーとしての上記抗体の使用であって、前記抗体が検出可能であり、前記複合体がトリマーTNFαと、トリマーTNFαに結合することができる化合物とを含み、それにより、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節する、上記抗体の使用、
化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達を調節する、トリマーTNFαへの化合物のターゲットエンゲージメントを検出する方法であって、
a)前記化合物を投与された対象から試料を取得するステップ;
(b)上記抗体と、前記試料及び対照試料とを接触させるステップであって、前記抗体が検出可能である、ステップ;
(c)前記検出可能抗体の、前記試料及び前記対照試料への結合の量を決定するステップ
を含み、前記検出可能抗体の前記試料への結合が前記検出可能抗体の前記対照試料への結合よりも高いことが、前記化合物の前記トリマーTNFαへのターゲットエンゲージメントを示す、上記方法、
トリマーTNFαのコンフォメーション変化を惹起する化合物のスクリーニングにおける上記抗体の使用であって、前記コンフォメーション変化が、トリマーTNFαの結合に対する必要な受容体のシグナル伝達を調節する、上記使用、
TNFαトリマーと、それに結合する化合物とを含む複合体であって、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節し、前記複合体が、1nM以下のK D-ab で上記抗体に結合する、上記複合体、
TNFαトリマーに結合して複合体を形成することができる化合物であって、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節し、化合物-トリマー複合体が1nM以下のK D-ab で上記抗体に結合する、上記化合物、或いは
TNFαトリマーに結合し、必要な受容体を介するトリマーのシグナル伝達を調節することができる化合物を同定する方法であって、
(a)TNFαトリマーと試験化合物とを含む試験化合物-トリマー複合体の、前記複合体に選択的に結合する上記抗体に対する結合親和性を測定するための結合アッセイを実行するステップ;
(b)ステップ(a)で測定された結合親和性と、ステップ(a)に記載の抗体に高い親和性で結合することが公知の異なる化合物-トリマー複合体の結合親和性とを比較するステップ;及び
(c)ステップ(b)に記載の比較に照らして考慮した場合、その測定された結合親和性が許容される場合、ステップ(a)の化合物-トリマー複合体中に存在する化合物を選択するステップ
を含む、上記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0236
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0236】
2つ以上の薬剤の組合せ投与を、いくつかの異なる方法で達成することができる。両方とも単一の組成物中で一緒に投与するか、又はそれらを組合せ治療の一部として別々の組成物中で投与してもよい。例えば、一方を、他方の前、後に、又はそれと同時に投与してもよい。
本発明は以下の好ましい態様を含む。
(1)
トリマーTNFαの少なくとも以下の残基:
(a)Y115
(b)Q149;及び
(c)N137若しくはK98、又は両方
を含むエピトープに結合する抗体であって、Y115及びQ149が、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、N137及びK98が、トリマーTNFαのA鎖上に存在し、かつ残基ナンバリングが配列番号36に従う、上記抗体。
(2)
トリマーTNFαのC鎖上のE146若しくはトリマーTNFαのC鎖上のP117、又はE146及びP117の両方をさらに含むエピトープに結合する、(1)に記載の抗体。
(3)
トリマーTNFαのC鎖上に存在する残基であるA145をさらに含むエピトープに結合する、(1)又は(2)に記載の抗体。
(4)
TNFαのA鎖上に存在する残基であるQ88をさらに含むエピトープに結合する、(1)から(3)までのいずれかに記載の抗体。
(5)
(a)L63;
(b)L94;
(c)S95;及び
(d)A96
からなる群から選択される1又は複数の残基をさらに含むエピトープに結合し、L63が、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、かつL94、S95及びA96が、トリマーTNFαのA鎖上に存在する、(1)から(4)までのいずれかに記載の抗体。
(6)
(a)I97;
(b)L93;及び
(c)S81
からなる群から選択される1又は複数の残基をさらに含むエピトープに結合し、I97、L93及びS81が、全てトリマーTNFαのA鎖上に存在する、(1)から(5)までのいずれかに記載の抗体。
(7)
(a)K65;
(b)Q67;
(c)P113;
(d)D143;
(e)T77;
(f)T79;
(g)I83;
(h)T89;
(g)K90;
(i)V91;
(j)N92;
(k)E135;
(l)I136;及び
(m)R138
からなる群から選択される1又は複数の残基をさらに含むエピトープに結合し、K65、Q67、P113及びD143が、トリマーTNFαのC鎖上に存在し、かつT77、T79、I83、T89、K90、V91、N92、E135、I136及びR138が、トリマーTNFαのA鎖上に存在する、(1)から(6)までのいずれかに記載の抗体。
(8)
(a)Y119;
(b)Q47;及び
(c)S133
からなる群から選択される1又は複数の残基をさらに含むエピトープに結合し、
Y119、Q47及びS133の全てが、トリマーTNFαのA鎖上に存在する、(1)から(7)までのいずれかに記載の抗体。
(9)
配列番号36のTNFαの以下の残基:
(a)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、T77、T79、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、K65、Q67、Y115、A145、E146及びQ149;
(b)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、T77、T79、I83、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、K98、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、L63、K65、Q67、P113、Y115、D143、A145、E146及びQ149;
(c)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、T77、T79、S81、I83、Q88、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、K98、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、L63、K65、Q67、P113、Y115、P117、D143、A145、E146及びQ149;又は
(d)トリマーTNFαのA鎖上に存在する残基である、Q27、Q47、T77、T79、S81、I83、Q88、T89、K90、V91、N92、L93、L94、S95、A96、I97、K98、Y119、R131、S133、E135、I136、N137及びR138、並びにトリマーTNFαのC鎖上に存在する残基である、L63、K65、Q67、P113、Y115、P117、D143、A145、E146及びQ149
を含むエピトープに結合する、(1)に記載の抗体。
(10)
1nM以下の親和性(K D-ab )を有する、(1)から(9)までのいずれかに記載の抗体。
(11)
200pM以下の親和性を有する、(10)に記載の抗体。
(12)
ヒト化抗体である、(1)から(11)までのいずれかに記載の抗体。
(13)
Fab、改変型Fab、Fab’、改変型Fab’、F(ab’) 、Fv、単一ドメイン抗体又はscFvである、(1)から(12)までのいずれかに記載の抗体。
(14)
トリマーTNFαと、化合物(1)~(7):
【化1-1】

【化1-2】

【化1-3】

のいずれか1つとの複合体に結合する、(1)から(13)までのいずれかに記載の抗体。
(15)
トリマー-化合物複合体に対して1nM以下の親和性(K D-ab )を有する、(14)に記載の抗体。
(16)
親和性が200pM以下である、(15)に記載の抗体。
(17)
TNFαへの結合について(1)から(16)までのいずれかに記載の抗体と競合する抗体。
(18)
(1)から(17)までのいずれかに記載の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
(19)
治療によるヒト又は動物の身体の処置の方法における使用のための(1)から(17)までのいずれかに記載の抗体。
(20)
(1)から(17)までのいずれかに記載の抗体と、薬学的に許容されるアジュバント及び/又は担体とを含む医薬組成物。
(21)
対象から得られた試料中の化合物-トリマー複合体の検出のためのターゲットエンゲージメント(target engagement)バイオマーカーとしての(1)から(17)までのいずれかに記載の抗体の使用であって、前記抗体が検出可能であり、前記複合体がトリマーTNFαと、トリマーTNFαに結合することができる化合物とを含み、それにより、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節する、上記抗体の使用。
(22)
化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達を調節する、トリマーTNFαへの化合物のターゲットエンゲージメントを検出する方法であって、
(a)前記化合物を投与された対象から試料を取得するステップ;
(b)(1)から(17)までのいずれかに記載の抗体と、前記試料及び対照試料とを接触させるステップであって、前記抗体が検出可能である、ステップ;
(c)前記検出可能抗体の、前記試料及び前記対照試料への結合の量を決定するステップ
を含み、前記検出可能抗体の前記試料への結合が前記検出可能抗体の前記対照試料への結合よりも高いことが、前記化合物の前記トリマーTNFαへのターゲットエンゲージメントを示す、上記方法。
(23)
トリマーTNFαのコンフォメーション変化を惹起する化合物のスクリーニングにおける(1)から(17)までのいずれかに記載の抗体の使用であって、前記コンフォメーション変化が、トリマーTNFαの結合に対する必要な受容体のシグナル伝達を調節する、上記使用。
(24)
TNFαトリマーと、それに結合する化合物とを含む複合体であって、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節し、前記複合体が、1nM以下のK D-ab で(1)から(17)までのいずれかに記載の抗体に結合する、上記複合体。
(25)
TNFαトリマーに結合して複合体を形成することができる化合物であって、化合物-トリマー複合体が、必要な受容体に結合し、受容体を介してトリマーにより誘導されるシグナル伝達を調節し、化合物-トリマー複合体が1nM以下のK D-ab で(1)から(17)までのいずれかに記載の抗体に結合する、上記化合物。
(26)
TNFαトリマーに結合し、必要な受容体を介するトリマーのシグナル伝達を調節することができる化合物を同定する方法であって、
(a)TNFαトリマーと試験化合物とを含む試験化合物-トリマー複合体の、前記複合体に選択的に結合する(1)から(17)までのいずれかに記載の抗体に対する結合親和性を測定するための結合アッセイを実行するステップ;
(b)ステップ(a)で測定された結合親和性と、ステップ(a)に記載の抗体に高い親和性で結合することが公知の異なる化合物-トリマー複合体の結合親和性とを比較するステップ;及び
(c)ステップ(b)に記載の比較に照らして考慮した場合、その測定された結合親和性が許容される場合、ステップ(a)の化合物-トリマー複合体中に存在する化合物を選択するステップ
を含む、上記方法。
(27)
抗体が、TNFαトリマーの非存在下での化合物への結合及び/又は化合物の非存在下でのTNFαトリマーへの結合と比較して、TNFαトリマー-化合物複合体に選択的に結合する、(26)に記載の方法。
(28)
抗体が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーへの結合及び/又はTNFαトリマーの非存在下での化合物への結合に関するK D-ab の少なくとも100分の1のK D-ab でTNFαのトリマー-化合物複合体に結合する、(27)に記載の方法。
(29)
抗体が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーへの結合及び/又はTNFαトリマーの非存在下での化合物への結合に関するK D-ab の少なくとも200分の1のK D-ab でTNFαのトリマー-化合物複合体に結合する、(28)に記載の方法。
(30)
高効率アッセイである、(26)から(29)までのいずれかに記載の方法。
(31)
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの安定性と比較して、TNFαトリマーの安定性を増加させる、(26)から(30)までのいずれかに記載の方法。
(32)
安定性の増加が、少なくとも1℃のTNFαトリマーの温度遷移中点(T )の増加をもたらす、(31)に記載の方法。
(33)
安定性の増加が、少なくとも10℃のTNFαトリマーの温度遷移中点(T )の増加をもたらす、(32)に記載の方法。
(34)
TNFαトリマーのT の増加が10℃~20℃である、(33)に記載の方法。
(35)
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対する結合親和性と比較して、TNFαトリマーの、必要な受容体に対する結合親和性を増加させる、(26)から(34)までのいずれかに記載の方法。
(36)
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対する結合に関する結合速度(k on-r )及び解離速度(k off-r )値と比較して、k on-r を増加させること及び/又はk off-r を減少させることによって、TNFαトリマーの、必要な受容体に対する結合親和性を増加させる、(35)に記載の方法。
(37)
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対する結合に関する結合速度(k on-r )値と比較して、k on-r を増加させることによって、TNFαトリマーの、必要な受容体に対する結合親和性を増加させる、(35)に記載の方法。
(38)
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対するK D-r と比較して、TNFαトリマーの、必要な受容体に対するK D-r を減少させ、
a)化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対するK D-r と比較して、TNFαトリマーの、必要な受容体に対するK D-r を少なくとも10分の1に減少させ、
b)化合物の存在下での、必要な受容体への結合に関するTNFαトリマーのK D-r 値が10nM未満である、(35)、(36)又は(37)に記載の方法。
(39)
試験化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対するK D-r と比較して、TNFαトリマーの、必要な受容体に対するK D-r を減少させ、
a)化合物が、化合物の非存在下でのTNFαトリマーの、その受容体に対するK D-r と比較して、TNFαトリマーの、必要な受容体に対するK D-r を少なくとも4分の1に減少させ、
b)化合物の存在下での、必要な受容体への結合に関するTNFαトリマーのK D-r 値が600pM未満である、(35)、(36)又は(37)に記載の方法。
(40)
化合物の存在下での、必要な受容体への結合に関するTNFαトリマーのK D-r 値が200pM未満である、(39)に記載の方法。
(41)
前記試験化合物が500nM以下のIC 50 値を有する、(26)から(40)までのいずれかに記載の方法。
(42)
ステップ(b)における化合物が、化合物(1)~(7)、又はその塩若しくは溶媒和物からなる群から選択される、(26)から(41)までのいずれかに記載の方法。
(43)
受容体がTNF受容体である、(26)から(42)までのいずれかに記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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【外国語明細書】