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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185037
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】リチウムイオン蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20221206BHJP
【FI】
H01M4/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155801
(22)【出願日】2022-09-29
(62)【分割の表示】P 2021115470の分割
【原出願日】2016-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2015134671
(32)【優先日】2015-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】小國 哲平
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(72)【発明者】
【氏名】門間 裕史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】炭素系材料を用いた蓄電池を提供する。また、蓄電池において両極の直接的な接触を防ぎつつ、所望のイオン伝導性及び機械的強度を有するグラフェン化合物膜を提供する。または、長期信頼性の確保を実現する。
【解決手段】正極101と、負極102と、外装体107と、を有し、正極と、負極と、の間にセパレータ109を有し、正極と負極の一方は、第1の膜に包まれており、正極と、負極と、セパレータと、は、外装体に収納されているリチウムイオン蓄電池である。なお、第1の膜103は、第1の領域を有し、第1の領域において、第1の膜は第1の官能基を有するリチウムイオン蓄電池としてもよい。第1の膜は、さらに第2の領域を有し、第2の領域において、第1の膜は第2の官能基を有し、第1の官能基は、第2の官能基とは異なるリチウムイオン蓄電池としてもよい。また、第1の膜はグラフェン化合物膜としてもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、外装体と、を有し、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の材料と異なる正極活物質層と、を有し、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の材料と異なる負極活物質層と、を有し、
前記正極または前記負極の少なくとも一方は、第1の膜に少なくとも一部が包まれており、
前記第1の膜は、前記正極集電体と前記正極活物質層の周囲、または前記負極集電体と前記負極活物質層の周囲を覆っており、
前記第1の膜は、グラフェン化合物を有し、
前記正極と、前記負極と、は、前記外装体に収納されているリチウムイオン蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、リチウムイオン蓄電池及び電子機器に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の
一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明
の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・
オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明
の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装
置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として
挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
近年、リチウムイオン蓄電池等の蓄電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々
の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウム
イオン蓄電池は、携帯電話やスマートフォン、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯
情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ等の電子機器、あるいは医療機器、ハイブ
リッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)
等の次世代クリーンエネルギー自動車など、半導体産業の発展に伴い急速にその需要が拡
大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなってい
る。
【0004】
リチウムイオン蓄電池に求められる特性として、高エネルギー密度化、サイクル特性の向
上及び様々な動作環境での安全性、長期信頼性の向上などがある。
【0005】
また、近年、頭部に装着する表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)など、人体や湾曲
面に装着して使用される可撓性を有する表示装置が提案されている。そのため可撓性を有
する表示装置と合わせて用いることが可能な、湾曲面に装着可能な可撓性を有する蓄電池
が求められている。
【0006】
ところで、リチウムイオン蓄電池の一例としては、少なくとも、正極、負極、および電解
液を有している(特許文献1)。
【0007】
一方で、近年グラフェンは高い導電率や移動度という優れた電気特性、柔軟性や機械的強
度という物理的特性のためにさまざまな製品に応用することが試みられている(特許文献
2乃至特許文献4参照)。
【0008】
ここで、製品として販売されている充電可能な蓄電装置である蓄電池においては、その負
極として、例えば黒鉛(グラファイト)などの炭素系材料が用いられている。黒鉛は、s
混成軌道を持つ炭素が規則正しく平面状に配列し、積層した結晶構造を有する。正極
からのリチウムイオンが、積層した結晶構造の層間に吸蔵されることを利用して蓄電池の
充放電が行われる。
【0009】
ただし、炭素系材料は蓄電池の軽量化に有用であり、また材料としての安全性が高いこと
から、蓄電池へのより広い適用が検討されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-9418号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0070146号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0110627号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0131915号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
セパレータは、正極と負極の間に設けられ、両極を隔離する機能を有する。リチウムイオ
ン蓄電池は、蓄電池の両極がショートすると、両極間で制御不能な大電流が流れ、大きな
発熱等を生じ、安全上の問題を引き起こす場合がある。また、安全上の問題とまでの事態
とはならない場合でも、自己放電が生じて劣化し、電池としての機能が損なわれる。
【0012】
また、リチウムイオン蓄電池の製造または充放電の過程において、充放電に寄与するキャ
リアイオンの一部が負極表面に析出し不可逆成分となる。当該不可逆成分は電池の機能を
損なわせる。さらに、負極表面のリチウムの析出が大きく進行すると、ひげ状の構造物(
ウィスカー)となり成長する場合もあるが、セパレータの性質次第で該構造物がセパレー
タの孔を経て、両極間をショートするに至る場合もあり、これも問題となる。
【0013】
さらに、可撓性を有するリチウムイオン蓄電池においては、蓄電池の形状変化に応じて蓄
電池の内部に様々な応力が生じる。蓄電池に該応力を緩和する構造を有していなければ、
容易に蓄電池のいずれかの箇所でせん断破壊が発生し、蓄電池としての機能が失われる。
【0014】
また、材料として潜在的に高い性能を有する炭素系材料を蓄電池に用いることができれば
、軽量で安全かつ高品位な蓄電池を提供することができる。
【0015】
上記に鑑み、本発明の一態様は、炭素系材料を用いたリチウムイオン蓄電池を提供するこ
とを課題の一つとする。また、蓄電池において両極の直接的な接触を防ぎつつ、所望のイ
オン伝導性及び機械的強度を有するグラフェン化合物膜を用いた蓄電池を提供することを
課題の一つとする。または、長期信頼性の確保を実現することを課題の一つとする。
【0016】
また、本発明の一態様は、新規なグラフェン化合物膜を用いた蓄電池を提供することを課
題の一つとする。または、本発明の一態様は、新規の蓄電装置などを提供することを課題
の一つとする。
【0017】
また、本発明の一態様は、形状が変化することができる機能を有する蓄電池、つまり可撓
性を有する蓄電池を提供することを課題の一つとする。また、形状変化に耐え得る新規の
グラフェン化合物膜を用いた可撓性を有する新規な蓄電池を提供することも課題の一つと
する。
【0018】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書で開示する発明の一態様の構成は、正極と、負極と、外装体と、を有し、正極ま
たは負極の少なくとも一方は、第1の膜に少なくとも一部が包まれており、第1の膜は、
グラフェン化合物を有し、正極と、負極と、は、外装体に収納されているリチウムイオン
蓄電池である。
【0020】
本明細書の開示する発明の一態様において、グラフェン化合物とは、グラフェンまたはマ
ルチグラフェンが、炭素以外の原子、または炭素以外の原子を有する原子団に修飾された
化合物である。また、グラフェンまたはマルチグラフェンが、アルキル基、アルキレン等
の炭素を主とした原子団に修飾された化合物であってもよい。例えば、グラフェン化合物
としてグラフェンと酸素とを有してもよく、また、酸化グラフェンであってもよい。
【0021】
また、本明細書で開示する発明の他の一態様の構成は、正極と、負極と、外装体と、を有
し、正極と、負極と、の間にセパレータを有し、正極または負極の少なくとも一方は、第
1の膜に少なくとも一部が包まれており、第1の膜は、グラフェン化合物を有し、正極と
、負極と、セパレータと、は、外装体に収納されているリチウムイオン蓄電池である。
【0022】
なお、本発明の一態様において、第1の膜は、第1の領域を有し、第1の領域において、
第1の膜は第1の官能基を有することを特徴とするリチウムイオン蓄電池としてもよい。
第1の膜は、さらに第2の領域を有し、第2の領域において、第1の膜は第2の官能基を
有し、第1の官能基は、第2の官能基とは異なることを特徴とするリチウムイオン蓄電池
としてもよい。
【0023】
また、本発明の一態様において、第1の膜は、第1の領域を有し、第1の領域において、
第1の膜は第1の修飾を施されていることを特徴とするリチウムイオン蓄電池としてもよ
い。第1の膜は、さらに第2の領域を有し、第2の領域において、第1の膜は第2の修飾
を施されており、第1の修飾は、第2の修飾とは異なる修飾であることを特徴とするリチ
ウムイオン蓄電池としてもよい。なお、第1の膜は、酸化グラフェン膜であることを特徴
とするリチウムイオン蓄電池としてもよい。
【0024】
また、本明細書で開示する発明の他の一態様の構成は、正極と、負極と、外装体と、を有
し、正極は、第1の膜に少なくとも一部が包まれており、負極は、第2の膜に少なくとも
一部が包まれており、第1の膜は、グラフェン化合物を有し、第2の膜は、グラフェン化
合物を有し、正極と、負極と、は、外装体に収納されているリチウムイオン蓄電池である
【0025】
また、本明細書で開示する発明の他の一態様の構成は、正極と、負極と、外装体と、を有
し、正極と、負極と、の間にセパレータを有し、正極は、第1の膜に少なくとも一部が包
まれており、負極は、第2の膜に少なくとも一部が包まれており、第1の膜は、グラフェ
ン化合物を有し、第2の膜は、グラフェン化合物を有し、正極と、負極と、セパレータと
、は、外装体に収納されているリチウムイオン蓄電池である。
【0026】
なお、本発明の一態様において、第1の膜は、第1の領域を有し、第1の領域において、
第1の膜は第1の官能基を有することを特徴とするリチウムイオン蓄電池としてもよい。
第1の膜は、さらに第2の領域を有し、第2の領域において、第1の膜は第2の官能基を
有し、第1の官能基は、第2の官能基とは異なることを特徴とするリチウムイオン蓄電池
としてもよい。第2の膜は、第3の領域を有し、第3の領域において、第2の膜は第3の
官能基を有することを特徴とするリチウムイオン蓄電池としてもよい。第2の膜は、第4
の領域を有し、第4の領域において、第2の膜は第4の官能基を有し、第3の官能基は、
第4の官能基とは異なることを特徴とするリチウムイオン蓄電池としてもよい。
【0027】
また、本発明の一態様において、第1の膜は、第1の領域を有し、第1の領域において、
第1の膜は第1の修飾を施されていることを特徴とするリチウムイオン蓄電池としてもよ
い。第1の膜は、さらに第2の領域を有し、第2の領域において、第1の膜は第2の修飾
を施されており、第1の修飾は、第2の修飾とは異なる修飾であることを特徴とするリチ
ウムイオン蓄電池としてもよい。第2の膜は、さらに第3の領域を有し、第3の領域にお
いて、第2の膜は第3の修飾を施されていることを特徴とするリチウムイオン蓄電池とし
てもよい。第2の膜は、さらに第4の領域を有し、第4の領域において、第2の膜は第4
の修飾が施されており、第3の修飾は、第4の修飾とは異なることを特徴とするリチウム
イオン蓄電池としてもよい。なお、第1の膜は、酸化グラフェン膜であり、第2の膜は、
酸化グラフェン膜であることを特徴とするリチウムイオン蓄電池としてもよい。
【0028】
本発明の一態様において、リチウムイオン蓄電池は可撓性を有してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様により、炭素系材料を用いたリチウムイオン蓄電池を提供することができ
る。また、蓄電池において両極の直接的な接触を防ぎつつ、所望のイオン伝導性及び機械
的強度を有するグラフェン化合物膜を用いた蓄電池を提供することができる。または、長
期信頼性の確保を実現することができる。
【0030】
また、本発明の一態様により、新規なグラフェン化合物膜を用いたリチウムイオン蓄電池
を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規の蓄電装置などを提供す
ることができる。
【0031】
また、本発明の一態様により、形状が変化することができる機能を有する蓄電池、つまり
可撓性を有する蓄電池を提供することができる。また、可撓性を有する蓄電池において、
形状変化に耐え得る新規のグラフェン化合物膜を提供することができる。
【0032】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は
、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面
、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】リチウムイオン蓄電池を説明する図。
図2】リチウムイオン蓄電池の断面模式図。
図3】リチウムイオン蓄電池の断面模式図。
図4】リチウムイオン蓄電池の内部構造物の断面模式図。
図5】酸化グラフェン膜に包まれる負極を示す図。
図6】リチウムイオン蓄電池の組み立てを説明する図。
図7】曲率半径を説明する図。
図8】曲率半径を説明する図。
図9】コイン型の蓄電池を説明する図。
図10】円筒型の蓄電池を説明する図。
図11】積層型の蓄電池を説明する図。
図12】蓄電池の外観を示す図。
図13】蓄電池の外観を示す図。
図14】蓄電池の作製方法を説明するための図。
図15】可撓性を有する蓄電池を説明する図。
図16】蓄電池の例を説明するための図。
図17】蓄電池の例を説明するための図。
図18】蓄電池の例を説明するための図。
図19】蓄電池の例を説明するための図。
図20】蓄電池の例を説明するための図。
図21】蓄電池の応用形態を示す図。
図22】本発明の一態様を説明するブロック図。
図23】本発明の一態様を説明する概念図。
図24】本発明の一態様を説明する回路図。
図25】本発明の一態様を説明する回路図。
図26】本発明の一態様を説明する概念図。
図27】本発明の一態様を説明するブロック図。
図28】本発明の一態様を説明するフローチャート。
図29】リチウムイオン蓄電池の断面模式図。
図30】電極及び酸化グラフェン膜の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれ
ば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈さ
れるものではない。
【0035】
なお、本明細書で説明する各図において、正極、負極、活物質層、セパレータ、外装体な
どの各構成要素の大きさや厚さ等は、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合が
ある。よって、必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相
対的な大きさに限定されない。
【0036】
また、本明細書等において、第1、第2、第3などとして付される序数詞は、便宜上用い
るものであって工程の順番や上下の位置関係などを示すものではない。そのため、例えば
、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられ
る序数詞は一致しない場合がある。
【0037】
また、本明細書等で説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部
分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また
、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さ
ない場合がある。
【0038】
また、本明細書において可撓性とは、物体が柔軟であり、曲がることが可能である性質を
指す。物体にかかる外力に応じて物体が変形することができる性質であり、弾性や変形前
の形状への復元性の有無を問題にはしない。可撓性を有する蓄電池は、外力に応じて変形
することができる。可撓性を有する蓄電池は、変形した状態で固定して使用することもで
き、繰り返し変形させて使用してもよく、変形していない状態で使用することもできる。
また、本明細書等において、外装体の内部とは、リチウムイオン蓄電池において外装体で
囲われた領域を指し、正極、負極、活物質層、セパレータ等の構造物、及び、電解液等が
収納される領域である。
【0039】
また、本明細書において修飾とは、酸化グラフェン膜を化学的に変化させ、酸化グラフェ
ン膜の機能または性質を変化させることをいう。さらに、特定の機能または性質を有する
官能基を付加することをいう場合もある。
【0040】
また、この発明を実施するための形態に記載の内容は、適宜組み合わせて用いることがで
きる。
【0041】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るリチウムイオン蓄電池100と、その作製方法
について説明する。本発明の一態様として、グラフェン化合物の一例である、酸化グラフ
ェンを用いた場合について示す。
【0042】
図1(A)は、本発明の一態様に係るリチウムイオン蓄電池100を示した図である。リ
チウムイオン蓄電池100は、外装体107に収納された正極101、負極102、酸化
グラフェン膜103、およびセパレータ109を有している。ただし、酸化グラフェン膜
103がセパレータとしての機能を有する場合、セパレータ109は省略することができ
る。セパレータ109を省略した場合を図1(B)に示す。また、正極101は正極リー
ド104に電気的に接続されており、負極102は負極リード105に電気的に接続され
ている。
【0043】
図2(A)は、本発明の一態様に係るリチウムイオン蓄電池100を、図1(A)のA1
-A2で切断した際の断面図と、その拡大図である。本実施の形態において説明するリチ
ウムイオン蓄電池100は、図2(A)に示す通り、電解液106、正極101、負極1
02、酸化グラフェン膜103、及びセパレータ109を有する。なお、本実施の形態に
おいて説明するリチウムイオン蓄電池100が有する正極、負極、酸化グラフェン膜、お
よびセパレータの数は主に各1であるが、これに限定されない。正極101は、正極集電
体101a、および正極活物質層101bを有し、負極102は、負極集電体102a、
および負極活物質層102bを有している。また、図29(A)は、図1(A)のB1-
B2で切断した際の断面図である。また、図29(B)は、図1(B)のB1-B2で切
断した際の断面図である。
【0044】
また、本実施の形態において説明するリチウムイオン蓄電池100において、図2(A)
に示す通り、負極102が酸化グラフェン膜103に包まれているが、本発明の一態様は
これに限定されず、正極101が酸化グラフェン膜103に包まれていてもよい。さらに
、正極101及び負極102の両方がそれぞれ酸化グラフェン膜に包まれていてもよい。
図3(A)のリチウムイオン蓄電池100は、正極101及び負極102の両方が、それ
ぞれ酸化グラフェン膜に包まれている。
【0045】
図2(B)は、本発明の一態様に係るリチウムイオン蓄電池100がセパレータを有さな
い場合を示しており、該蓄電池を図1(B)のA1-A2で切断した際の断面図と、その
拡大図である。本実施の形態において説明するリチウムイオン蓄電池100において、図
2(B)は図2(A)と同様に、負極102が酸化グラフェン膜103に包まれているが
、本発明の一態様はこれに限定されず、正極101が酸化グラフェン膜103に包まれて
いてもよい。さらに、正極101及び負極102の両方がそれぞれ酸化グラフェン膜に包
まれていてもよい。図3(B)のリチウムイオン蓄電池100は、正極101及び負極1
02の両方がそれぞれ酸化グラフェン膜に包まれている。
【0046】
本発明の一態様において、酸化グラフェン膜103の表面は平坦でかつ摩擦係数を小さく
することができる。この場合、リチウムイオン蓄電池100が変形しても、リチウムイオ
ン蓄電池100の内部において、各構成物は互いに摺動することができるため、応力によ
る損傷が生じにくく、蓄電池の耐久性は向上する。また、各構成物が互いに摺動する場合
でも、正極101、負極102の一方または両方が酸化グラフェン膜に包まれているため
露出することがない。そのため、対極とショートする事態を避けることができるため、リ
チウムイオン蓄電池100の安全性を高めることができる。
【0047】
本発明の一態様に係る可撓性を有する積層型のリチウムイオン蓄電池100において、リ
チウムイオン蓄電池100が変形すると外装体及び内部の構造物も変形し、該変形に起因
する応力がかかる。ここで、積層型リチウムイオン蓄電池の内部構造の変形前後の様子を
図4を用いて説明する。
【0048】
図4(A)は、酸化グラフェン膜に包まれた正極101と、酸化グラフェン膜に包まれた
負極102と、を有するリチウムイオン蓄電池100の内部断面構造を示す図であり、正
極101と負極102の間には、セパレータ109が存在する。図4(B)は、可撓性を
有する積層型リチウムイオン蓄電池を変形させたときの内部構造物の様子を表した断面図
である。図4(B)において、正極101と負極102は、それぞれ酸化グラフェン膜1
03に包まれており、酸化グラフェン膜103の表面は、活物質が形成された電極の表面
よりも滑らかで摩擦が小さいため、正極101、負極102、セパレータ109が互いに
容易に摺動することができる。従って、各部間で、蓄電池の変形により生ずる応力が緩和
されるため、該応力に起因する損傷が生じにくい。なお、酸化グラフェン膜103自身も
伸縮性を有するため、該応力に起因する損傷が生じにくい。また、酸化グラフェン膜10
3が正極101及び負極102をそれぞれ包んでいるため、正極101及び負極102が
電解液中に露出し両者がショートする事故を防止することができる。
【0049】
よって、正極101及び負極102をそれぞれ包む酸化グラフェン膜103により、曲げ
に対する耐久性の高い可撓性を有するリチウムイオン蓄電池を実現できる。
【0050】
次に、本発明の一態様に係る蓄電池の作製方法について説明する。なお、下記の説明にお
いては、特段の記載がない限り、主として図2(A)に示すリチウムイオン蓄電池につい
て説明するが、他の図に示すリチウムイオン蓄電池についても、本実施の形態の記載を参
酌できることは言うまでもない。
【0051】
[1.酸化グラフェン膜]
酸化グラフェン膜103は、グラフェン化合物を酸化して形成してもよく、修飾された酸
化グラフェンでもよい。シート状の酸化グラフェンを形成して、これに電極を収納して酸
化グラフェン膜103としてもよく、図5(A)乃至図5(D)はその工程を示している
。予め、負極集電体に負極活物質層を形成し、リードを取り付けた状態の負極102を用
意し、シート状の酸化グラフェンを折りたたみ、負極102を内包した状態で外縁部に接
合部108を設け接合することで、負極102を包む酸化グラフェン膜103を形成する
ことができる。この際、負極は、リードのために、酸化グラフェン膜103から少なくと
も一部を露出しなければならない。そのため、本発明の一態様に係るリチウムイオン蓄電
池において、酸化グラフェン膜103に包まれる負極102は、負極102のすべてが包
まれることには限定されないことは言うまでもなく、部分的に包まれていてもよく、少な
くとも一部が包まれていればよい。また、酸化グラフェン膜103と負極102とが直接
接していることにも限定されず、酸化グラフェン膜103と負極102との間に他の構造
物を有していてもよい。なお、負極102をシート状の酸化グラフェン膜103で包むと
き、接合部108を設けなくてもよい。また、図30(A)、図30(B)及び図30
C)に、酸化グラフェン膜103に包まれた負極の断面模式図の一例を示す。
【0052】
酸化グラフェン膜103を形成する他の方法として、液体の分散媒中に粒子状の酸化グラ
フェンを分散しておき、これに電極を漬け込み引き揚げ、電極表面から分散媒を除去する
ことにより酸化グラフェン膜103を形成してもよい。また、キャスト法を用いてもよい
。すなわち、液体の分散媒中に粒子状の酸化グラフェンを分散しておき、これを電極上に
導入し電極表面に展開し、分散媒を除去することにより酸化グラフェン膜103を形成す
ることもできる。
【0053】
また、シート状の酸化グラフェンにより負極が包まれる例について示したが、正極が包ま
れる場合も同様となる。本発明の一態様においては、正極と負極の一方、または両方が酸
化グラフェン膜103により包まれた構造とする。なお、酸化グラフェン膜103は、酸
化されていないグラフェンを用いることができる場合もある。酸化グラフェン膜103に
用いることができるグラフェン化合物について、詳細は後述する。
【0054】
リチウムを用いる蓄電池では、充電を繰り返すと負極上にリチウムが析出する場合がある
。特に、リチウムが針状に析出すると、析出したリチウムを介して負極と正極が短絡しや
すくなる。ところで、酸化グラフェン膜103は、表面は平坦でかつ摩擦係数が小さい。
負極102を表面が平坦でかつ摩擦係数が小さい酸化グラフェン膜103で覆うことによ
り、リチウムイオン蓄電池100の曲げ伸ばし動作において負極活物質層102b表面と
酸化グラフェン膜103が摺動し、負極活物質層102b表面に析出したリチウムを物理
的に除去することができる。よって、正極101と負極102の短絡を防ぎ、リチウムイ
オン蓄電池100の機能低下を防ぐことができる。また、リチウムイオン蓄電池100の
信頼性を向上することができる。特に、負極集電体102aの両面に負極活物質層102
bを設けた場合、リチウムイオン蓄電池100の曲げ伸ばし動作において負極活物質層1
02b表面に析出したリチウムを両面同時に除去することができる。リチウムイオン蓄電
池100を意図的に曲げ伸ばしすることで、上記の効果をより高めることができる。
【0055】
また、酸化グラフェン膜103は、表面は平坦でかつ摩擦係数が小さいため、負極活物質
層102b以外の構造物との接触箇所においても、容易に摺動することができる。そのた
め、蓄電池の変形に伴い各構造物に応力を生じた際、各構造物が応力に従い容易に摺動す
ることができるため、応力が緩和されやすくなる。したがって、該蓄電池は変形に対する
強度が高い。
【0056】
なお、ここでは負極102が酸化グラフェン膜103に覆われている場合について述べて
いるが、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、酸化グラフェン膜103に覆
われていなくてもよい。例えば、負極102の代わりに、正極101が酸化グラフェン膜
103に覆われていてもよい。または、図3(A)及び図3(B)に示す通り、例えば、
負極102だけでなく、正極101も同様に、酸化グラフェン膜103に覆われていても
よい。
【0057】
また、酸化グラフェン膜103の少なくとも一部が修飾されていてもよい。酸化グラフェ
ン膜103の特定の部分のみを修飾し、その他の部分を修飾しない構成としてもよい。ま
た、酸化グラフェン膜103の一部とその他の部分に異なる修飾を行う構成としてもよい
。例えば、酸化グラフェン膜103の、正極と負極との間に存在する部分は、リチウムイ
オンが容易に透過することができることが望ましく、その他の部分は両電極間のショート
を確実に防止できることが望ましい。そのため、酸化グラフェン膜103の第1の領域と
第2の領域とで、修飾状態が異なることが望ましい場合がある。
【0058】
なお、本明細書において、修飾状態とは、グラフェン化合物に行われる修飾の状態のこと
をいう。また、2つの領域で修飾状態が異なるとは、2つの領域で行われる修飾の種類が
異なることだけではなく、同じ種類の修飾が行われる場合においてその修飾の強度が異な
ることをも指す。また、一方の領域において修飾が行われ、もう一方の領域において修飾
が行われない場合についても、修飾状態が異なるという。したがって、修飾状態が異なる
2つの領域は、グラフェン化合物に導入される原子または原子団の種類が異なる場合があ
り、導入される原子または原子団の種類が同じ場合であっても導入量が異なる。
【0059】
酸化グラフェン膜103の第1の領域及び第2の領域の修飾状態が異なる場合を図4(C
)に示す。図4(C)において、例えば、第1の領域103aは、リチウムイオンが透過
しやすい修飾状態として、第2の領域103bは、機械的な強度が高い修飾状態とするこ
とができる。
【0060】
なお、酸化グラフェンを含んだグラフェン化合物の修飾については、詳細は後述する。
【0061】
[2.グラフェン化合物]
本発明の一態様において、正極、負極の一方または両方は酸化グラフェン膜103に包ま
れるが、酸化グラフェン膜103は酸化グラフェンに限らずその他のグラフェン化合物を
用いることができる場合がある。また、グラフェン化合物は酸化グラフェン膜103以外
の構造物に用いてもよい。例えば、正極集電体101a、正極活物質層101b、負極集
電体102a、負極活物質層102b、セパレータ109、外装体107、電解液106
のいずれか少なくとも一つにグラフェン化合物を用いることができる。グラフェン化合物
は後述の通り、修飾により構造及び特性を幅広く選択することができるため、グラフェン
化合物を適用しようとする部材に応じて、好ましい性質を発現させることができる。また
、グラフェン化合物は機械的強度が高いため、グラフェン化合物は可撓性を有する蓄電装
置を構成する各部材にも適用することができる。以下、グラフェン化合物について説明す
る。
【0062】
グラフェンは、炭素原子が1原子層配列したものであり、炭素原子間にπ結合を有する。
グラフェンが2層以上100層以下重なったものを、マルチグラフェンと呼ぶ場合がある
。グラフェンおよびマルチグラフェンは、例えば、長手方向、あるいは面における長軸の
長さが50nm以上100μm以下または800nm以上50μm以下である。
【0063】
本明細書等において、グラフェンまたはマルチグラフェンを基本骨格として有する化合物
を「グラフェン化合物(「グラフェンコンパウンド:Graphene Compoun
d」ともいう)」と呼ぶ。グラフェン化合物には、グラフェンとマルチグラフェンを含む
【0064】
以下に、グラフェン化合物について詳細を説明する。
【0065】
グラフェン化合物は例えば、グラフェンまたはマルチグラフェンが、炭素以外の原子、ま
たは炭素以外の原子を有する原子団に修飾された化合物である。また、グラフェンまたは
マルチグラフェンが、アルキル基、アルキレン等の炭素を主とした原子団に修飾された化
合物であってもよい。なお、グラフェンまたはマルチグラフェンを修飾する原子団を、置
換基、官能基、または特性基等と呼ぶ場合がある。ここで、本明細書等において修飾とは
、置換反応、付加反応またはその他の反応により、グラフェン、マルチグラフェン、グラ
フェン化合物、または酸化グラフェン(後述)に、炭素以外の原子、または炭素以外の原
子を有する原子団、または炭素を主とした原子団を導入することをいう。
【0066】
なお、グラフェンの表面側と裏面側は、それぞれ異なる原子や原子団により修飾されてい
てもよい。また、マルチグラフェンにおいては、それぞれの層が異なる原子や原子団に修
飾されていてもよい。
【0067】
上述の原子または原子団により修飾されたグラフェンの一例として、酸素または酸素を含
む官能基に修飾されたグラフェンまたはマルチグラフェンが挙げられる。ここで酸素を含
む官能基として例えば、エポキシ基、カルボキシル基などのカルボニル基、または水酸基
等が挙げられる。酸素または酸素を有する官能基により修飾されたグラフェン化合物を、
酸化グラフェンと呼ぶ場合がある。また、本明細書においては、酸化グラフェンは多層の
酸化グラフェンをも含むものとする。
【0068】
酸化グラフェンにおける修飾の一例として、酸化グラフェンのシリル化について説明する
。まず、窒素雰囲気中において、容器内に酸化グラフェンを入れ、容器にn-ブチルアミ
ン(CNH)を加え、60℃に保ち1時間撹拌する。次に、容器にトルエンを加
え、シリル化剤として、アルキルトリクロロシランをさらに加えて、窒素雰囲気中におい
て、60℃に保ち5時間撹拌する。次に、容器にさらにトルエンを加え、吸引濾過して固
体粉末を得て、これをエタノール中に分散させる。さらにこれを吸引濾過して固体粉末を
得て、アセトンに分散させる。さらに、これを吸引濾過して固体粉末を得て、液体成分を
気化してシリル化された酸化グラフェンが得られる。
【0069】
なお、酸化グラフェンにおける修飾の一例としてシリル化について示したが、シリル化は
酸化グラフェンにおける修飾には限定されず、酸化されていないグラフェンに対しても適
用できる場合がある。また、本実施の形態で説明する修飾についても酸化グラフェンに対
する修飾に限定するものではなく、広くグラフェン化合物に適用することができる場合が
ある。また、修飾はシリル化に限定されず、シリル化も上述の方法に限定されない。
【0070】
修飾は、1種類の原子または原子団を導入するだけでなく、複数の種類の修飾を施し、複
数の種類の原子または原子団を導入してもよい。また、修飾は、水素、ハロゲン原子、炭
化水素基、芳香族炭化水素基、複素環化合物基を付加する反応でもよい。また、グラフェ
ンに原子団を導入する反応として、付加反応、置換反応等が挙げられる。また、フリーデ
ル・クラフツ(Friedel-Crafts)反応、ビンゲル(Bingel)反応等
を行ってもよい。グラフェンに対してラジカル付加反応を行ってもよく、シクロ付加反応
によりグラフェンと原子団との間に環を形成してもよい。
【0071】
グラフェン化合物に特定の原子団を導入することで、グラフェン化合物の物性を変化させ
ることができる。従って、グラフェン化合物の用途に応じて望ましい修飾を施すことによ
り、グラフェン化合物に所望の性質を意図的に発現させることができる。
【0072】
次に、酸化グラフェンの作製方法の一例を説明する。酸化グラフェンは、上記グラフェン
またはマルチグラフェンを酸化して得ることができる。または、酸化グラフェンは、酸化
グラファイトを分離して得ることができる。酸化グラファイトは、グラファイトを酸化し
て得ることができる。ここで、酸化グラフェンに、さらに上述の原子または原子団を修飾
してもよい。
【0073】
酸化グラフェンを還元して得られる化合物を、「RGO(Reduced Graphe
ne Oxide)」と呼ぶ場合がある。なお、RGOには、酸化グラフェンに含まれる
酸素は全て脱離されずに、一部の酸素または酸素を含む原子団が結合した状態で残存する
場合がある。例えばRGOは、エポキシ基、カルボキシル基などのカルボニル基、または
水酸基等の官能基を有する場合がある。
【0074】
グラフェン化合物は、複数のグラフェン化合物が部分的に重なりながら1枚のシート状と
なっていてもよい。このようなグラフェン化合物を、グラフェン化合物シートと呼ぶ場合
がある。グラフェン化合物シートは例えば、厚さが0.33nm以上10mm以下、より
好ましくは0.34nmより大きく10μm以下の領域を有する。グラフェン化合物シー
トは、炭素以外の原子、炭素以外の原子を有する原子団、またはアルキル基等の炭素を主
とした原子団等により修飾されていてもよい。また、グラフェン化合物シートが有する複
数の層のそれぞれにおいて、異なる原子または原子団により修飾されていてもよい。
【0075】
グラフェン化合物は、炭素で構成される六員環の他に、炭素で構成される五員環や、炭素
で構成される七員環以上の多員環を有してもよい。ここで、七員環以上の多員環の近傍で
は、リチウムイオンが通過可能な領域が生じる場合がある。
【0076】
また例えば、複数のグラフェン化合物が集まって、シート状の形状となっていてもよい。
グラフェン化合物は平面的な形状を有するため、面接触を可能とする。
【0077】
グラフェン化合物は薄くても導電性が高い場合があり、また面接触によりグラフェン化合
物同士、あるいはグラフェン化合物と活物質との間の接触面積を増加させることができる
。よって、体積あたりの量が少なくても効率よく導電パスを形成することができる。
【0078】
一方で、グラフェン化合物を絶縁体として用いることもできる。例えばグラフェン化合物
シートをシート状の絶縁体として用いることができる。ここで例えば、酸化グラフェンは
酸化されていないグラフェン化合物と比較して絶縁性が高い場合がある。また、原子団に
修飾されたグラフェン化合物は、修飾する原子団の種類により、絶縁性を高めることがで
きる場合がある。
【0079】
ここで、本明細書等においてグラフェン化合物は、グラフェン前駆体を有してもよい。グ
ラフェン前駆体とは、グラフェンを製造するために用いられる物質のことをいい、グラフ
ェン前駆体には例えば、上述の酸化グラフェンや、酸化グラファイトなどを含んでもよい
【0080】
なお、アルカリ金属を有するグラフェンや、酸素等の炭素以外の元素を有するグラフェン
を、グラフェン類似体と呼ぶ場合がある。本明細書等においてグラフェン化合物には、グ
ラフェン類似体も含まれる。
【0081】
また、本明細書等におけるグラフェン化合物は、層間に原子、原子団、およびそれらのイ
オンを有してもよい。なお、グラフェン化合物が層間に原子、原子団、およびそれらのイ
オンを有することにより、グラフェン化合物の物性、例えば電気伝導性やイオン伝導性が
変化する場合がある。例えば、グラフェン化合物に、リチウム塩を混合することで、グラ
フェン化合物のイオン伝導性を高めることができる。リチウム塩として、LiPF、L
iClO、LiAsF、LiBF、LiAlCl、LiSCN、LiBr、Li
I、LiSO、Li10Cl10、Li12Cl12、LiCFSO
LiCSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiN
(CFSO、LiN(CSO)(CFSO)、LiN(C
等から選ばれた一又は複数を用いることができる。また、層間距離が大きくなる
場合がある。
【0082】
グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および高
い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェン
化合物は、修飾の種類に応じて、導電性を極めて低くし絶縁体とすることができる場合が
ある。また、グラフェン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗
の低い面接触を可能とする。
【0083】
[3.正極]
正極101は、正極集電体101aと、正極集電体101a上に形成された正極活物質層
101bなどにより構成される。本実施の形態では、シート状(又は帯状)の正極集電体
101aの一方の面に正極活物質層101bを設けた例を示しているが、これに限られず
、正極活物質層101bを正極集電体101aの両面に設けてもよい。正極活物質層10
1bを正極集電体101aの両面に設けることで、リチウムイオン蓄電池100の容量を
大きくすることができる。また、本実施の形態では、正極活物質層101bは、正極集電
体101a上の全域に設けているが、これに限られず、正極集電体101aの一部に設け
ても良い。例えば、正極集電体101aの、正極リード104と電気的に接する部分(以
下、「正極タブ」ともいう。)には、正極活物質層101bを設けない構成とするとよい
【0084】
正極集電体101aには、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン
等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化
しない材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、
モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることが
できる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シ
リコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフ
ニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト
、ニッケル等がある。正極集電体101aは、箔状、板状(シート状)、網状、パンチン
グメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。正極集電体10
1aは、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。また、正極集電体101
aの表面に、グラファイトなどを用いてアンダーコート層を設けてもよい。
【0085】
正極活物質層101bは、正極活物質の他、正極活物質の密着性を高めるための結着剤(
バインダ)、正極活物質層101bの導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。
【0086】
正極活物質層101bに用いる正極活物質としては、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型
の結晶構造、またはスピネル型の結晶構造を有する複合酸化物等がある。正極活物質とし
て、例えば、LiFeO、LiCoO、LiNiO、LiMn、V
Cr、MnO等の化合物を用いる。
【0087】
特に、LiCoOは、容量が大きいこと、LiNiOに比べて大気中で安定であるこ
と、LiNiOに比べて熱的に安定であること等の利点があるため、好ましい。
【0088】
また、LiMn等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材
料に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiOやLiNi1-x(0<x<1
)(M=Co、Al等))を混合すると、マンガンの溶出を抑制する、電解液の分解を抑
制する等の利点があり好ましい。
【0089】
または、複合材料(一般式LiMPO(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(I
I)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPOの代表例と
しては、LiFePO、LiNiPO、LiCoPO、LiMnPO、LiFe
NiPO、LiFeCoPO、LiFeMnPO、LiNiCo
PO、LiNiMnPO(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiF
NiCoPO、LiFeNiMnPO、LiNiCoMnPO
(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFeNi
MnPO(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0
<i<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
【0090】
特にLiFePOは、安全性、安定性、高容量密度、高電位、初期酸化(充電)時に引
き抜けるリチウムイオンの存在等、正極活物質に求められる事項をバランスよく満たして
いるため、好ましい。
【0091】
または、一般式Li(2-j)MSiO(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(
II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等の複合材料を用いることができる。一般
式Li(2-j)MSiOの代表例としては、Li(2-j)FeSiO、Li(2
-j)NiSiO、Li(2-j)CoSiO、Li(2-j)MnSiO、Li
(2-j)FeNiSiO、Li(2-j)FeCoSiO、Li(2-j
FeMnSiO、Li(2-j)NiCoSiO、Li(2-j)Ni
MnSiO(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2-j)Fe
CoSiO、Li(2-j)FeNiMnSiO、Li(2-j)Ni
CoMnSiO(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)
、Li(2-j)FeNiCoMnSiO(r+s+t+uは1以下、0<r
<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウム化合物を材料として用いるこ
とができる。
【0092】
また、正極活物質として、A(XO(A=Li、Na、Mg、M=Fe、M
n、Ti、V、Nb、Al、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナ
シコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe(MnO
、Fe(SO、LiFe(PO等がある。また、正極活物質として
、LiMPOF、LiMP、LiMO(M=Fe、Mn)の一般式で表
される化合物、NaFeF、FeF等のペロブスカイト型フッ化物、TiS、Mo
等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO等の逆
スピネル型の結晶構造を有する酸化物、バナジウム酸化物系(V、V13、L
iV等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を用いることができる。
【0093】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金
属イオンの場合、正極活物質として、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナト
リウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリ
ウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。例えば、NaFeOや、Na
/3[Fe1/2Mn1/2]Oなどのナトリウム含有層状酸化物を正極活物質として
用いることができる。
【0094】
また、正極活物質として、上記材料を複数組み合わせた材料を用いてもよい。例えば、上
記材料を複数組み合わせた固溶体を正極活物質として用いることができる。例えば、Li
Co1/3Mn1/3Ni1/3とLiMnOの固溶体を正極活物質として用い
ることができる。
【0095】
なお、図示しないが、正極活物質層101bの表面に炭素層などの導電性材料を設けても
よい。炭素層などの導電性材料を設けることで、電極の導電性を向上させることができる
。例えば、正極活物質層101bへの炭素層の被覆は、正極活物質の焼成時にグルコース
等の炭水化物を混合することで形成することができる。
【0096】
粒状の正極活物質層101bの一次粒子の平均粒径は、50nm以上100μm以下のも
のを用いるとよい。
【0097】
導電助剤としては、アセチレンブラック(AB)、グラファイト(黒鉛)粒子、カーボン
ナノチューブ、グラフェン化合物、フラーレンなどを用いることができる。
【0098】
導電助剤により、正極101中に電子伝導のネットワークを形成することができる。導電
助剤により、正極活物質層101bどうしの電気伝導の経路を維持することができる。正
極活物質層101b中に導電助剤を添加することにより、高い電子伝導性を有する正極活
物質層101bを実現することができる。
【0099】
また、バインダとして、代表的なポリフッ化ビニリデン(PVDF)の他、ポリイミド、
ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマ
ー、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ
酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等を用いるこ
とができる。
【0100】
正極活物質層101bの総量に対するバインダの含有量は、1wt%以上10wt%以下
が好ましく、2wt%以上8wt%以下がより好ましく、3wt%以上5wt%以下がさ
らに好ましい。また、正極活物質層101bの総量に対する導電助剤の含有量は、1wt
%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
【0101】
塗布法を用いて正極活物質層101bを形成する場合は、正極活物質とバインダと導電助
剤を混合して正極ペースト(スラリー)を作製し、正極集電体101a上に塗布して乾燥
させればよい。
【0102】
また、正極活物質層101bはスパッタ法により形成してもよい。
【0103】
また、正極を酸化グラフェン膜103で包むとき、キャスト法により正極を包む酸化グラ
フェン膜103を形成してもよい。図30(A)乃至図30(C)は、負極を酸化グラフ
ェン膜で包む場合の断面模式図であるが、このようにして作製した正極及び酸化グラフェ
ン膜の断面模式図も同様となる。
【0104】
[4.負極]
負極102は、負極集電体102aと、負極集電体102a上に形成された負極活物質層
102bなどにより構成される。本実施の形態では、シート状(又は帯状)の負極集電体
102aの一方の面に負極活物質層102bを設けた例を示しているが、これに限られず
、負極活物質層102bは、負極集電体102aの両面に設けてもよい。負極活物質層1
02bを負極集電体102aの両面に設けることで、リチウムイオン蓄電池100の容量
を大きくすることができる。また、本実施の形態では、負極活物質層102bは、負極集
電体102a上の全域に設けているが、これに限られず、負極集電体102aの一部に設
けても良い。例えば、負極集電体102aの、負極リード105と電気的に接する部分(
以下、「負極タブ」ともいう。)には、負極活物質層102bを設けない構成とするとよ
い。
【0105】
負極集電体102aには、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、チタン等の金属、及び
これらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用
いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成して
もよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チ
タン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン
、コバルト、ニッケル等がある。負極集電体102aは、箔状、板状(シート状)、網状
、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。負極
集電体102aは、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。また、負極集
電体102aの表面に、グラファイトなどを用いてアンダーコート層を設けてもよい。
【0106】
負極活物質層102bは、負極活物質の他、負極活物質の密着性を高めるための結着剤(
バインダ)、負極活物質層102bの導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。
【0107】
負極活物質層102bは、リチウムの溶解・析出、又はリチウムイオンの挿入・脱離が可
能な材料であれば、特に限定されない。負極活物質層102bの材料としては、リチウム
金属やチタン酸リチウムの他、蓄電分野に一般的な炭素系材料や、合金系材料等が挙げら
れる。
【0108】
リチウム金属は、酸化還元電位が低く(標準水素電極に対して-3.045V)、重量及
び体積当たりの比容量が大きい(それぞれ3860mAh/g、2062mAh/cm
)ため、好ましい。
【0109】
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハー
ドカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン化合物、カーボンブラック等が挙げら
れる。
【0110】
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ
系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛が挙げられる。
【0111】
黒鉛は、リチウムイオンが層間に挿入されたときに(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時
に)、リチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1乃至0.3V vs.Li/Li
)。これにより、リチウムイオン電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒
鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金
属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0112】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可
能な合金系材料も用いることができる。キャリアイオンがリチウムイオンである場合、合
金系材料としては、例えば、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ag、Zn、
Cd、In、Ga等のうち少なくとも一つを含む材料が挙げられる。このような元素は炭
素に対して容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと飛躍的に高い
。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。このような元素を用いた合
金系材料としては、例えば、MgSi、MgGe、MgSn、SnS、VSn
、FeSn、CoSn、NiSn、CuSn、AgSn、AgSb、
NiMnSb、CeSb、LaSn、LaCoSn、CoSb、InSb
、SbSn等が挙げられる。
【0113】
また、負極活物質層102bとして、SiO、SnO、SnO、酸化チタン(TiO
)、リチウムチタン酸化物(LiTi12)、リチウム-黒鉛層間化合物(Li
)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(M
oO)等の酸化物を用いることができる。
【0114】
また、負極活物質層102bとして、リチウムと遷移金属の複窒化物である、LiN型
構造をもつLi3-xN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、
Li2.6Co0.4は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/c
)を示し好ましい。
【0115】
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、
正極活物質としてリチウムイオンを含まないV、Cr等の材料と組み合わせ
ることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも
、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させておくことで、負極活物質
としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0116】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質層102bとして用いることもでき
る。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の
、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバ
ージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe、CuO、CuO、RuO
、Cr等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn、C
N、Ge等の窒化物、NiP、FeP、CoP等のリン化物、FeF
、BiF等のフッ化物でも起こる。なお、上記フッ化物の電位は高いため、負極活物質
層102bとして用いてもよい。
【0117】
塗布法を用いて負極活物質層102bを形成する場合は、負極活物質と結着剤を混合して
負極ペースト(スラリー)を作製し、負極集電体102a上に塗布して乾燥させればよい
。なお、負極ペーストに導電助剤を添加してもよい。また、負極活物質層102bはスパ
ッタ法により形成してもよい。
【0118】
その後、キャスト法により負極活物質層を包む酸化グラフェン膜103を形成してもよい
。その場合、負極及び酸化グラフェン膜の断面構造の一例を図30(A)乃至図30(C
)に示す。
【0119】
また、負極活物質層102bの表面に、グラフェン化合物を形成してもよい。例えば、負
極活物質層102bをシリコンとした場合、充放電サイクルにおけるキャリアイオンの吸
蔵・放出に伴う体積の変化が大きいため、負極集電体102aと負極活物質層102bと
の密着性が低下し、充放電により電池特性が劣化してしまう。そこで、シリコンを含む負
極活物質層102bの表面にグラフェン化合物を形成すると、充放電サイクルにおいて、
シリコンの体積が変化したとしても、負極集電体102aと負極活物質層102bとの密
着性の低下を抑制することができ、電池特性の劣化が低減されるため好ましい。
【0120】
また、負極活物質層102bの表面に、酸化物等の被膜を形成してもよい。充電時におい
て電解液の分解等により形成される被膜は、その形成時に消費された電荷量を放出するこ
とができず、不可逆容量を形成する。これに対し、酸化物等の被膜をあらかじめ負極活物
質層102bの表面に設けておくことで、不可逆容量の発生を抑制又は防止することがで
きる。
【0121】
このような負極活物質層102bを被覆する被膜には、ニオブ、チタン、バナジウム、タ
ンタル、タングステン、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、クロム、アルミニウム
若しくはシリコンのいずれか一の酸化膜、又はこれら元素のいずれか一とリチウムとを含
む酸化膜を用いることができる。このような被膜は、従来の電解液の分解生成物により負
極表面に形成される被膜に比べ、十分緻密な膜である。
【0122】
例えば、酸化ニオブ(Nb)は、電気伝導度が10-9S/cmと低く、高い絶縁
性を示す。このため、酸化ニオブ膜は負極活物質と電解液との電気化学的な分解反応を阻
害する。一方で、酸化ニオブのリチウム拡散係数は10-9cm/secであり、高い
リチウムイオン伝導性を有する。このため、リチウムイオンを透過させることが可能であ
る。また、酸化シリコンや酸化アルミニウムを用いてもよい。
【0123】
負極活物質層102bを被覆する被膜の形成には、例えばゾル-ゲル法を用いることがで
きる。ゾル-ゲル法とは、金属アルコキシドや金属塩等からなる溶液を、加水分解反応・
重縮合反応により流動性を失ったゲルとし、このゲルを焼成して薄膜を形成する方法であ
る。ゾル-ゲル法は液相から薄膜を形成する方法であるから、原料を分子レベルで均質に
混合することができる。このため、溶媒の段階の金属酸化膜の原料に、黒鉛等の負極活物
質を加えることで、容易にゲル中に活物質を分散させることができる。このようにして、
負極活物質層102bの表面に被膜を形成することができる。当該被膜を用いることで、
蓄電池の容量の低下を防止することができる。
【0124】
[5.電解液]
リチウムイオン蓄電池100に用いる電解液106の溶媒としては、非プロトン性有機溶
媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC
)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-
ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカー
ボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、
酪酸メチル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、
ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾ
ニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2
種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0125】
また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安
全性が高まる。また、二次電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材
料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチ
レンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等が
ある。
【0126】
また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ
又は複数用いることで、蓄電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、
蓄電池の破裂や発火などを防ぐことができる。
【0127】
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、キャリアにリチウムイオンを用いる場合
、例えばLiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiAlCl、Li
SCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、Li12Cl
、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiC(C
SO、LiN(CFSO、LiN(CSO)(CFSO
)、LiN(CSO等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を
任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0128】
また、蓄電池に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に
「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい
。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、よ
り好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。また、電解液にビニレンカーボネー
トなどの添加剤を加えてもよい。
【0129】
[6.外装体]
二次電池の構造としては、様々な構造があるが、本実施の形態では、外装体107の形成
にフィルムを用いる。なお、外装体107を形成するためのフィルムは金属フィルム(ア
ルミニウム、ステンレス、ニッケル鋼など)、有機材料からなるプラスチックフィルム、
有機材料(有機樹脂や繊維など)と無機材料(セラミックなど)とを含むハイブリッド材
料フィルム、炭素含有無機フィルム(カーボンフィルム、グラファイトフィルムなど)か
ら選ばれる単層フィルムまたはこれら複数からなる積層フィルムを用いる。金属フィルム
は、エンボス加工を行いやすく、エンボス加工を行って凹部または凸部を形成すると外気
に触れる外装体107の表面積が増大するため、放熱効果に優れている。
【0130】
また、外部から力を加えてリチウムイオン蓄電池100の形状を変化させた場合、リチウ
ムイオン蓄電池100の外装体107に外部から曲げ応力が加わり、外装体107の一部
が変形または一部破壊が生じる恐れがある。外装体107の表面に凹部または凸部を形成
することにより、外装体107に加えられた応力によって生じるひずみを緩和することが
できる。よって、リチウムイオン蓄電池100の信頼性を高めることができる。なお、ひ
ずみとは物体の基準(初期状態)長さに対する物体内の物質点の変位を示す変形の尺度で
ある。外装体107の表面に凹部または凸部を形成することにより、蓄電池の外部から力
を加えて生じるひずみによる影響を許容範囲内に抑えることができる。よって、信頼性の
良い蓄電池を提供することができる。
【0131】
[7.セパレータ]
本発明の一態様において、例えば、図1(A)、図2(A)および図3(A)に示す通り
、正極101と負極102の間にセパレータ109を設けてもよい。
【0132】
セパレータ109は、紙、不織布、ガラス繊維、あるいは、ナイロン(ポリアミド)、ビ
ニロン(ビナロンともいう)(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル
、ポリオレフィン、ポリウレタンといった合成繊維等を用いればよい。また、上述のグラ
フェン化合物を用いることもできる。ただし電解液に溶解しない材料を選ぶ必要がある。
【0133】
より具体的に、セパレータ109の材料として、例えば、フッ素系ポリマー、ポリエチレ
ンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリエチレン、ポリプロピレン
等のポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリ
レート、ポリメチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリロニトリル、ポ
リビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン、ポ
リスチレン、ポリイソプレン、ポリウレタン系高分子及びこれらの誘導体、セルロース、
紙、不織布から選ばれる1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0134】
ただし、酸化グラフェン膜103がセパレータとしての機能を発現することができる場合
、別途セパレータ109を設ける必要はないが、本発明の一態様はこれに限定されない。
セパレータ109を別途設けることにより、本発明の一態様に係るリチウムイオン蓄電池
をより安全に駆動できる場合がある。
【0135】
[8.蓄電池の組み立て及びエージング]
次に、上述の構成部材を組み合わせて、外装体107を封止することにより図1図2
図3に示す通り、正極101と、負極102と、酸化グラフェン膜103とを積み重ね
、電解液106とともに外装体107により封止された状態とする。外装体107の内部
に各構成部材を収納する工程を図6(A)及び図6(B)に示す。図6では図示しないが
、セパレータ109を用いる場合、正極101と負極102との間に配置する。
【0136】
なお、封止部の形状は、蓄電池の内部の構造物の形状に沿って曲線、波線、円弧、または
、複数の変曲点を有する形状としてもよい。封止部の形状が内部の構造物の形状に沿った
形状であると、蓄電池の変形により外装体と内部の構造物とに異なる応力がかかる場合で
あっても、内部の構造物の意図しない大きさの摺動を防止することができる。ただし、封
止部の形状はこれに限定されない。
【0137】
次に、エージング工程を行う。まず環境温度を例えば室温程度に保ち、低いレートで一定
電圧まで定電流充電を行う。次に、充電により外装体内部の領域に発生したガスを、外部
に放出させる。次に、さらに初回の充電よりも高いレートで充電を行う。
【0138】
その後、やや高い温度環境下で長時間保存する。例えば40℃以上の環境下で24時間以
上保存する。例えば、70℃以上の環境下で保存してもよい。また80℃以上の環境下で
保存してもよい。さらに、90℃以上の環境下で保存してもよい。100℃以上の環境下
で保存してもよい。また、36時間以上保存してもよい。さらに48時間以上保存しても
よい。72時間以上保存してもよい。危険のない範囲で環境温度を高くすることで、十分
なエージング工程となり、蓄電池の劣化の抑制に寄与する場合がある。また、危険のない
範囲で保存時間を長くすることによっても十分なエージング工程とすることができるため
、やはり、蓄電池の劣化の抑制に寄与する場合がある。
【0139】
やや高い温度環境下で長時間保存した後、再び外装体内部の領域に発生したガスを放出さ
せる。さらに室温環境下で0.2Cのレートで放電し、同レートにて充電し、再び同レー
トで放電した後、さらに同レートで充電する。そして、同レートで放電することによりエ
ージング工程を終了する。
【0140】
以上のようにして、本発明に係るリチウムイオン蓄電池を製造することができる。
【0141】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0142】
なお、本明細書等においては、ある一つの実施の形態において述べる図または文章におい
て、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概念を導き出すことは
、当業者であれば容易に理解される。したがって、ある一つの実施の形態において述べる
図または文章において、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概
念も、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可
能である。そして、その発明の一態様は、明確であると言える。
【0143】
なお、本明細書等においては、少なくとも図に記載した内容(図の中の一部でもよい)は
、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能で
ある。したがって、ある内容について、図に記載されていれば、文章を用いて述べていな
くても、その内容は、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構
成することが可能である。同様に、図の一部を取り出した図についても、発明の一態様と
して開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。そして、そ
の発明の一態様は明確であると言える。
【0144】
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形態
において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定さ
れない。つまり、本実施の形態および他の実施の形態では、様々な発明の態様が記載され
ているため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。例えば、本発明の一態様と
して、リチウムイオン蓄電池に適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに
限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、様々な二次
電池、鉛蓄電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・
カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、
固体電池、空気電池、一次電池、キャパシタ、または、電気二重層キャパシタ、ウルトラ
・キャパシタ、スーパー・キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、などに適用してもよ
い。または例えば、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、酸化グ
ラフェン膜103を適用しなくてもよい。
【0145】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、可撓性を有するリチウムイオン蓄電池について説明する。
【0146】
≪可撓性の蓄電池≫
本実施の形態にて示された各部材の材料から、可撓性を有する材料を選択して用いると、
可撓性を有するリチウムイオン蓄電池を作製することができる。近年、変形可能なデバイ
スの研究及び開発が盛んである。そのようなデバイスに用いる蓄電池として、可撓性を有
する蓄電池の需要が生じている。
【0147】
図7を用いて、蓄電池の変形について説明する。2枚のフィルムを外装体として電極・電
解液などの電池材料1805を挟む蓄電池を湾曲させた場合には、蓄電池の曲率中心18
00に近い側のフィルム1801の曲率半径1802は、曲率中心1800から遠い側の
フィルム1803の曲率半径1804よりも小さい(図7(A))。蓄電池を湾曲させて
断面を円弧状とすると曲率中心1800に近いフィルムの表面には圧縮応力がかかり、曲
率中心1800から遠いフィルムの表面には引っ張り応力がかかる(図7(B))。
【0148】
可撓性を有するリチウムイオン蓄電池を変形させたとき、外装体に大きな応力がかかるが
、外装体の表面に凹部または凸部で形成される模様を形成すると、蓄電池の変形により圧
縮応力や引っ張り応力がかかったとしても、ひずみによる影響を抑えることができる。そ
のため、蓄電池は、曲率中心に近い側の外装体の曲率半径が50mm以下となるまで変形
することができ、さらに30mm以下となるまで蓄電池が変形することができる場合があ
る。
【0149】
面の曲率半径について、図を用いて説明する。図8(A)において、曲面1700を切断
した平面1701において、曲面1700に含まれる曲線1702の一部を円の弧に近似
して、その円の半径を曲率半径1703とし、円の中心を曲率中心1704とする。図8
(B)に曲面1700の上面図を示す。図8(C)に、平面1701で曲面1700を切
断した断面図を示す。曲面を平面で切断するとき、曲面に対する平面の角度や切断する位
置に応じて、断面に現れる曲線の曲率半径は異なるものとなるが、本明細書等では、最も
小さい曲率半径を面の曲率半径とする。
【0150】
なお、蓄電池の断面形状は、単純な円弧状に限定されず、一部が円弧を有する形状にする
ことができ、例えば図7(C)に示す形状や、波状(図7(D))、S字形状などとする
こともできる。蓄電池の曲面が複数の曲率中心を有する形状となる場合は、複数の曲率中
心それぞれにおける曲率半径の中で、最も曲率半径が小さい曲面において、2枚の外装体
の曲率中心に近い方の外装体の曲率半径が、50mmとなるまで変形することができ、さ
らに30mmとなるまで蓄電池が変形することができる場合がある。
【0151】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0152】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電池の構造について、図9乃至図11を参照
して説明する。
【0153】
≪コイン型蓄電池≫
図9(A)は、コイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、図9(B)は、その断
面図である。
【0154】
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶3
02とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正
極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306に
より形成される。正極活物質層306は、正極活物質の他、正極活物質の密着性を高める
ための結着剤(バインダー)、正極活物質層の導電性を高めるための導電助剤等を有して
もよい。
【0155】
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層
309により形成される。負極活物質層309は、負極活物質の他、負極活物質の密着性
を高めるための結着剤(バインダー)、負極活物質層の導電性を高めるための導電助剤等
を有してもよい。また、正極活物質層306と負極活物質層309との間には、セパレー
タ310と、電解質(図示せず)とを有する。さらに、正極304と負極307の少なく
とも一方は、酸化グラフェン膜(図示せず)に包まれている。
【0156】
各構成部材には、実施の形態1で示した材料を用いることができる。
【0157】
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐腐食性のある、ニッケル、チタン等
の金属、またはこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用
いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケル等を被覆することが好
ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接
続する。
【0158】
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解質に含浸させ、図9(B)に
示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極
缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して
圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
【0159】
ここで図9(C)を用いて蓄電池の充電時の電流の流れを説明する。リチウムを用いた蓄
電池を一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向きになる
。なお、リチウムを用いた蓄電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極
)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電
極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、
充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を
流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極
」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノ
ード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆にな
ってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極
)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソ
ード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極
)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0160】
図9(C)に示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池400が充電される。蓄電池
400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。図9(C)では、蓄電池400の
外部の端子(タブ電極)から、正極402の方へ流れ、蓄電池400の中の電解液406
と、電解液406中のセパレータ408と、を通して、正極402から負極404の方へ
流れ、負極から蓄電池400の外部の端子(タブ電極)の方へ流れる電流の向きを正の向
きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。
【0161】
≪円筒型蓄電池≫
次に、円筒型の蓄電池の一例について、図10を参照して説明する。円筒型の蓄電池60
0は図10(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び
底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)6
02とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0162】
図10(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶
602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲
回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲
回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には
、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれら
と他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液に
よる腐食を防ぐため、ニッケル等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側におい
て、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、
609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電
解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の蓄電池と同様のものを用
いることができる。
【0163】
正極604及び負極606は、上述したコイン型の蓄電池の正極及び負極と同様に製造す
ればよいが、円筒型の蓄電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物
質を形成する点において異なる。また、図示しないが、正極604と負極606の少なく
とも一方は、酸化グラフェン膜で包まれている。該酸化グラフェン膜は蓄電池の内部構造
物の捲回をする際は、構造物間に生じる摩擦を低減し、応力を緩和することができる。正
極604には正極端子(正極タブ電極)603が接続され、負極606には負極端子(負
極タブ電極)607が接続される。正極端子603及び負極端子607は、ともにアルミ
ニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負
極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PT
C素子(Positive Temperature Coefficient)611
を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧
の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続
を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する
熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである
。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO)系半導体セラミックス等を用いる
ことができる。
【0164】
≪積層型蓄電池≫
次に、積層型の蓄電池の一例について、図11(A)を参照して説明する。積層型の蓄電
池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機
器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
【0165】
図11(A)に示す積層型の蓄電池500は、正極集電体501および正極活物質層50
2を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極50
6と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509
内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。ま
た、外装体509内は、電解液508で満たされている。電解液508には、実施の形態
1で示した電解液を用いることができる。また、図11(A)及び図11(B)では図示
しないが、正極503と負極506の少なくとも一方は、酸化グラフェン膜で包まれてい
る。
【0166】
図11(A)に示す積層型の蓄電池500において、正極集電体501および負極集電体
504は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体5
01および負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するように配置して
もよい。また、正極集電体501および負極集電体504を、外装体509から外側に露
出させず、タブ電極を用いてそのタブ電極と正極集電体501、或いは負極集電体504
と超音波接合させてタブ電極を外側に露出するようにしてもよい。
【0167】
積層型の蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウ
ム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上
に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設
けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。
【0168】
また、積層型の蓄電池500の断面構造の一例を図11(B)に示す。図11(A)では
簡略のため、2枚の電極で構成する例を示しているが、実際は、複数の電極で構成する。
【0169】
図11(B)では、一例として、電極枚数を16としている。なお、電極枚数を16とし
ても蓄電池500は、可撓性を有する。図11(B)では負極506が8枚と、正極50
3が8枚の合計16枚の構造を示している。なお、図11(B)は負極の取り出し部の断
面も示しており、8枚の負極集電体504を超音波接合させている。勿論、電極枚数は1
6に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極枚数が多い場合には、より多く
の容量を有する蓄電池とすることができる。また、電極枚数が少ない場合には、薄型化で
き、可撓性に優れた蓄電池とすることができる。
【0170】
ここで、積層型の蓄電池500の外観図の一例を図12及び図13に示す。図12及び図
13は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、酸化グラフェン膜
531、正極タブ電極510及び負極タブ電極511を有する。なお、積層型の蓄電池に
おいては負極506及び正極503をそれぞれ複数枚ずつ使用するが、図12及び図13
においては煩雑とならないようにそれぞれ1枚ずつで図示している。
【0171】
図14(A)は正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体50
1を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正極
503は正極集電体501が一部露出する領域を有する。該領域はタブ電極と接続される
領域、またはタブ電極として機能する領域であり、タブ領域と呼ぶ。負極506は負極集
電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形成されている。ま
た、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。正
極及び負極が有するタブ領域の面積や形状は、図14(A)に示す例に限られない。また
、負極506及び正極503の少なくとも一方は酸化グラフェンに包まれている。
【0172】
≪積層型蓄電池の作製方法≫
ここで、図12に外観図を示す積層型蓄電池の作製方法の一例について、図14(B)、
(C)を用いて説明する。
【0173】
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。図14(B)に積層さ
れた負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5枚、正極を
4枚使用する例を示す。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ
領域への正極タブ電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波接合等を用いればよ
い。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極タブ
電極511の接合を行う。また、ここでは負極506は酸化グラフェン膜531に包まれ
ている。
【0174】
次に外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
【0175】
次に、図14(C)に示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。その
後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時
、後に電解液508を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)に
接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
【0176】
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液508を外装体509の内側へ導入
する。電解液508の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性ガス雰囲気下で行うことが好
ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、積層型の蓄電池である蓄電
池500を作製することができる。
【0177】
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン型、積層型及び円筒型の蓄電池を示した
が、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。ま
た、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレータが
捲回された構造であってもよい。
【0178】
また、可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例を図15に示す。フレキシブルな形
状を備える蓄電池を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又は
テレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタ
ルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともい
う)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機な
どが挙げられる。
【0179】
また、フレキシブルな形状を備える蓄電池を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の
内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0180】
図15(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401
に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、ス
ピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電
池7407を有している。
【0181】
図15(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機740
0を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電池7
407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電池7407の状態を図15(C)に
示す。蓄電池7407は積層型の蓄電池である。
【0182】
図15(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、
筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電池7104を備える。ま
た、図15(E)に曲げられた蓄電池7104の状態を示す。
【0183】
≪蓄電池の構造例≫
蓄電池の構造例について、図16乃至図20を用いて説明する。ただし、図示しないが図
16乃至図20において、蓄電池の正極または負極は酸化グラフェン膜に包まれている。
【0184】
図16(A)及び図16(B)は、蓄電池の外観図を示す図である。蓄電池は、回路基板
900と、蓄電池913と、を有する。蓄電池913には、ラベル910が貼られている
。さらに、図16(B)に示すように、蓄電池は、端子951と、端子952と、アンテ
ナ914と、アンテナ915と、を有する。
【0185】
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951
、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお、
端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子
などとしてもよい。
【0186】
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914及
びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、
平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体
アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は
、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能する
ことができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アン
テナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけ
でなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
【0187】
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これによ
り、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
【0188】
蓄電池は、アンテナ914及びアンテナ915と、蓄電池913との間に層916を有す
る。層916は、例えば蓄電池913による電磁界への影響を防止することができる機能
を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0189】
なお、蓄電池の構造は、図16に限定されない。
【0190】
例えば、図17(A-1)及び図17(A-2)に示すように、図16(A)及び図16
(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよ
い。図17(A-1)は、上記一対の面の一方の側方向から見た外観図であり、図17
A-2)は、上記一対の面の他方の側方向から見た外観図である。なお、図16(A)及
図16(B)に示す蓄電池と同じ部分については、図16(A)及び図16(B)に示
す蓄電池の説明を適宜援用できる。
【0191】
図17(A-1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアン
テナ914が設けられ、図17(A-2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方
に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電池913によ
る電磁界への影響を防止することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性
体を用いることができる。
【0192】
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ915の両方のサイズを大きく
することができる。
【0193】
又は、図17(B-1)及び図17(B-2)に示すように、図16(A)及び図16
B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けても
よい。図17(B-1)は、上記一対の面の一方の側方向から見た外観図であり、図17
(B-2)は、上記一対の面の他方の側方向から見た外観図である。なお、図16(A)
及び図16(B)に示す蓄電池と同じ部分については、図16(A)及び図16(B)に
示す蓄電池の説明を適宜援用できる。
【0194】
図17(B-1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアン
テナ914及びアンテナ915が設けられ、図17(B-2)に示すように、蓄電池91
3の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は
、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918に
は、例えばアンテナ914及びアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用するこ
とができる。アンテナ918を介した蓄電池と他の機器との通信方式としては、NFCな
ど、蓄電池と他の機器との間で用いることができる応答方式などを適用することができる
【0195】
又は、図18(A)に示すように、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電池913に
表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電
気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくて
もよい。なお、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電池と同じ部分については、図1
6(A)及び図16(B)に示す蓄電池の説明を適宜援用できる。
【0196】
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表
示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクト
ロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペー
パーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
【0197】
又は、図18(B)に示すように、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電池913に
センサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的
に接続される。なお、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電池と同じ部分については
図16(A)及び図16(B)に示す蓄電池の説明を適宜援用できる。
【0198】
センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光
、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流
量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定することができる機能を有すればよい
。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電池が置かれている環境を示すデータ(
温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
【0199】
さらに、蓄電池913の構造例について図19及び図20を用いて説明する。
【0200】
図19(A)に示す蓄電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設け
られた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される
。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体
930に接していない。なお、図19(A)では、便宜のため、筐体930を分離して図
示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952
が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料又は樹脂材料を用いる
ことができる。
【0201】
なお、図19(B)に示すように、図19(A)に示す筐体930を複数の材料によって
形成してもよい。例えば、図19(B)に示す蓄電池913は、筐体930aと筐体93
0bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体95
0が設けられている。
【0202】
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナ
が形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、蓄電池913による電界の遮
蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内
部にアンテナ914やアンテナ915などのアンテナを設けてもよい。筐体930bとし
ては、例えば金属材料を用いることができる。
【0203】
さらに、捲回体950の構造について図20に示す。捲回体950は、負極931と、正
極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟ん
で負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体
である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複
数重ねてもよい。
【0204】
負極931は、端子951及び端子952の一方を介して図16に示す端子911に接続
される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して図16に示す端子91
1に接続される。
【0205】
≪電子機器の一例:車両に搭載する例≫
次に、蓄電池を車両に搭載する例について示す。蓄電池を車両に搭載すると、ハイブリッ
ド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の
次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
【0206】
図21において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図21(A)に示す自動車8
100は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、
走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハ
イブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、繰り返し充放電することがで
きる車両を実現することができる。また、自動車8100は蓄電池を有する。蓄電池は電
気モーターを駆動するだけでなく、ヘッドライト8101やルームライト(図示せず)な
どの発光装置に電力を供給することができる。
【0207】
また、蓄電池は、自動車8100が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装
置に電力を供給することができる。また、蓄電池は、自動車8100が有するナビゲーシ
ョンゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
【0208】
図21(B)に示す自動車8200は、自動車8200が有する蓄電池にプラグイン方式
や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる
図21(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8200に搭載された蓄電
池に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方
法やコネクタの規格等は所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に
設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグ
イン技術によって、外部からの電力供給により自動車8200に搭載された蓄電池を充電
することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流
電力に変換して行うことができる。
【0209】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給
して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組
み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電
の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に
太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電池の充電を行ってもよい。このような非接触での
電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0210】
本発明の一態様によれば、蓄電池のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させること
ができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電池の特性を向上することができ、よって
、蓄電池自体を小型軽量化することができる。蓄電池自体を小型軽量化できれば、車両の
軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電
池を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に
商用電源を用いることを回避することができる。
【0211】
(実施の形態4)
実施の形態1乃至3で説明した蓄電池を電池セルとして、これと組み合わせて用いること
ができる電池制御ユニット(Battery Management Unit:BMU
)、及び該電池制御ユニットを構成する回路に適したトランジスタについて、図22乃至
図28を参照して説明する。本実施の形態では、特に直列に接続された電池セルを有する
蓄電池の電池制御ユニットについて説明する。
【0212】
直列に接続された複数の電池セルに対して充放電を繰り返していくと、電池セル間の特性
のばらつきに応じて、容量(出力電圧)が異なってくる。直列に接続された電池セルでは
、全体の放電時の容量が、容量の小さい電池セルに依存する。容量にばらつきがあると放
電時の容量が小さくなる。また、容量が小さい電池セルを基準にして充電を行うと、充電
不足となる虞がある。また、容量の大きい電池セルを基準にして充電を行うと、過充電と
なる虞がある。
【0213】
そのため、直列に接続された電池セルを有する蓄電池の電池制御ユニットは、充電不足や
、過充電の原因となる、電池セル間の容量のばらつきを揃える機能を有する。電池セル間
の容量のばらつきを揃える回路構成には、抵抗方式、キャパシタ方式、あるいはインダク
タ方式等あるが、ここではオフ電流の小さいトランジスタを利用して容量のばらつきを揃
えることのできる回路構成を一例として挙げて説明する。
【0214】
オフ電流の小さいトランジスタとしては、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトラ
ンジスタ(OSトランジスタ)が好ましい。オフ電流の小さいOSトランジスタを蓄電池
の電池制御ユニットの回路構成に用いることで、電池から漏洩する電荷量を減らし、時間
の経過による容量の低下を抑制することができる。
【0215】
チャネル形成領域に用いる酸化物半導体は、In-M-Zn酸化物(Mは、Ga、Sn、
Y、Zr、La、Ce、またはNd)を用いる。酸化物半導体膜を成膜するために用いる
ターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x:y:zとすると
/yは、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z/yは、1
/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z/yを1以
上6以下とすることで、酸化物半導体膜としてCAAC-OS膜が形成されやすくなる。
【0216】
ここで、CAAC-OS膜について説明する。
【0217】
CAAC-OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
【0218】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Micro
scope)によって、CAAC-OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(
高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。
一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバ
ウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC-OS膜は、結
晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0219】
試料面と略平行な方向から、CAAC-OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、
結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、
CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した
形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0220】
一方、試料面と略垂直な方向から、CAAC-OS膜の平面の高分解能TEM像を観察す
ると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認で
きる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0221】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜
のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが
現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属される
ことから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略
垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0222】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜内の一部に、c軸配向性
を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍に
ピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0223】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、
シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコ
ンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化
物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる
要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径
(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の
原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純
物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0224】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物
半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによって
キャリア発生源となることがある。
【0225】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または
実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜
は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、
当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(
ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純
度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導
体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとな
る。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要す
る時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が
高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定と
なる場合がある。
【0226】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性
の変動が小さい。
【0227】
なお、OSトランジスタは、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(Siト
ランジスタ)に比べてバンドギャップが大きいため、高電圧を印加した際の絶縁破壊が生
じにくい。直列に電池セルを接続する場合、数100Vの電圧が生じることになるが、こ
のような電池セルに適用される蓄電池の電池制御ユニットの回路構成には、前述のOSト
ランジスタで構成することが適している。
【0228】
図22には、蓄電池のブロック図の一例を示す。図22に示す蓄電池BT00は、端子対
BT01と、端子対BT02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と
、切り替え回路BT05と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07と、直列に接続
された複数の電池セルBT09を含む電池部BT08と、を有する。
【0229】
また、図22の蓄電池BT00において、端子対BT01と、端子対BT02と、切り替
え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT05と、変圧制御回
路BT06と、変圧回路BT07とにより構成される部分を、電池制御ユニットと呼ぶこ
とができる。
【0230】
切り替え制御回路BT03は、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の動作を
制御する。具体的には、切り替え制御回路BT03は、電池セルBT09毎に測定された
電圧に基づいて、放電する電池セル(放電電池セル群)、及び充電する電池セル(充電電
池セル群)を決定する。
【0231】
さらに、切り替え制御回路BT03は、当該決定された放電電池セル群及び充電電池セル
群に基づいて、制御信号S1及び制御信号S2を出力する。制御信号S1は、切り替え回
路BT04へ出力される。この制御信号S1は、端子対BT01と放電電池セル群とを接
続させるように切り替え回路BT04を制御する信号である。また、制御信号S2は、切
り替え回路BT05へ出力される。この制御信号S2は、端子対BT02と充電電池セル
群とを接続させるように切り替え回路BT05を制御する信号である。
【0232】
また、切り替え制御回路BT03は、切り替え回路BT04、切り替え回路BT05、及
び変圧回路BT07の構成を踏まえ、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極
性の端子同士が接続されるように、制御信号S1及び制御信号S2を生成する。
【0233】
切り替え制御回路BT03の動作の詳細について述べる。
【0234】
まず、切り替え制御回路BT03は、複数の電池セルBT09毎の電圧を測定する。そし
て、切り替え制御回路BT03は、例えば、所定の閾値以上の電圧の電池セルBT09を
高電圧の電池セル(高電圧セル)、所定の閾値未満の電圧の電池セルBT09を低電圧の
電池セル(低電圧セル)と判断する。
【0235】
なお、高電圧セル及び低電圧セルを判断する方法については、様々な方法を用いることが
できる。例えば、切り替え制御回路BT03は、複数の電池セルBT09の中で、最も電
圧の高い、又は最も電圧の低い電池セルBT09の電圧を基準として、各電池セルBT0
9が高電圧セルか低電圧セルかを判断してもよい。この場合、切り替え制御回路BT03
は、各電池セルBT09の電圧が基準となる電圧に対して所定の割合以上か否かを判定す
る等して、各電池セルBT09が高電圧セルか低電圧セルかを判断することができる。そ
して、切り替え制御回路BT03は、この判断結果に基づいて、放電電池セル群と充電電
池セル群とを決定する。
【0236】
なお、複数の電池セルBT09の中には、高電圧セルと低電圧セルが様々な状態で混在し
得る。例えば、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルと低電圧セルが混在する中で、
高電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を放電電池セル群とする。また、切
り替え制御回路BT03は、低電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を充電
電池セル群とする。また、切り替え制御回路BT03は、過充電又は過放電に近い電池セ
ルBT09を、放電電池セル群又は充電電池セル群として優先的に選択するようにしても
よい。
【0237】
ここで、本実施形態における切り替え制御回路BT03の動作例を、図23を用いて説明
する。図23は、切り替え制御回路BT03の動作例を説明するための図である。なお、
説明の便宜上、図23では4個の電池セルBT09が直列に接続されている場合を例に説
明する。
【0238】
まず、図23(A)の例では、電池セルa乃至dの電圧を電圧Va乃至電圧Vdとすると
、Va=Vb=Vc>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する3つの高電
圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え
制御回路BT03は、連続する3つの高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定す
る。また、切り替え制御回路BT03は、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する
【0239】
次に、図23(B)の例では、Vc>Va=Vb>>Vdの関係にある場合を示している
。つまり、連続する2つの低電圧セルa、bと、1つの高電圧セルcと、1つの過放電間
近の低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路BT03は、
高電圧セルcを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路BT03は、低
電圧セルdが過放電間近であるため、連続する2つの低電圧セルa及びbではなく、低電
圧セルdを充電電池セル群として優先的に決定する。
【0240】
最後に、図23(C)の例では、Va>Vb=Vc=Vdの関係にある場合を示している
。つまり、1つの高電圧セルaと、連続する3つの低電圧セルb乃至dとが直列に接続さ
れている。この場合、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルaを放電電池セル群と決
定する。また、切り替え制御回路BT03は、連続する3つの低電圧セルb乃至dを充電
電池セル群として決定する。
【0241】
切り替え制御回路BT03は、上記図23(A)乃至(C)の例のように決定された結果
に基づいて、切り替え回路BT04の接続先である放電電池セル群を示す情報が設定され
た制御信号S1と、切り替え回路BT05の接続先である充電電池セル群を示す情報が設
定された制御信号S2を、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05に対してそれ
ぞれ出力する。
【0242】
以上が、切り替え制御回路BT03の動作の詳細に関する説明である。
【0243】
切り替え回路BT04は、切り替え制御回路BT03から出力される制御信号S1に応じ
て、端子対BT01の接続先を、切り替え制御回路BT03により決定された放電電池セ
ル群に設定する。
【0244】
端子対BT01は、対を成す端子A1及びA2により構成される。切り替え回路BT04
は、この端子A1及びA2のうち、いずれか一方を放電電池セル群の中で最も上流(高電
位側)に位置する電池セルBT09の正極端子と接続し、他方を放電電池セル群の中で最
も下流(低電位側)に位置する電池セルBT09の負極端子と接続することにより、端子
対BT01の接続先を設定する。なお、切り替え回路BT04は、制御信号S1に設定さ
れた情報を用いて放電電池セル群の位置を認識することができる。
【0245】
切り替え回路BT05は、切り替え制御回路BT03から出力される制御信号S2に応じ
て、端子対BT02の接続先を、切り替え制御回路BT03により決定された充電電池セ
ル群に設定する。
【0246】
端子対BT02は、対を成す端子B1及びB2により構成される。切り替え回路BT05
は、この端子B1及びB2のうち、いずれか一方を充電電池セル群の中で最も上流(高電
位側)に位置する電池セルBT09の正極端子と接続し、他方を充電電池セル群の中で最
も下流(低電位側)に位置する電池セルBT09の負極端子と接続することにより、端子
対BT02の接続先を設定する。なお、切り替え回路BT05は、制御信号S2に設定さ
れた情報を用いて充電電池セル群の位置を認識することができる。
【0247】
切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の構成例を示す回路図を図24及び図2
5に示す。
【0248】
図24では、切り替え回路BT04は、複数のトランジスタBT10と、バスBT11及
びBT12とを有する。バスBT11は、端子A1と接続されている。また、バスBT1
2は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタBT10のソース又はドレインの
一方は、それぞれ1つおきに交互に、バスBT11及びBT12と接続されている。また
、複数のトランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの
電池セルBT09の間に接続されている。
【0249】
なお、複数のトランジスタBT10のうち、最上流に位置するトランジスタBT10のソ
ース又はドレインの他方は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極
端子と接続されている。また、複数のトランジスタBT10のうち、最下流に位置するト
ランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最下流に位置する
電池セルBT09の負極端子と接続されている。
【0250】
切り替え回路BT04は、複数のトランジスタBT10のゲートに与える制御信号S1に
応じて、バスBT11に接続される複数のトランジスタBT10のうちの1つと、バスB
T12に接続される複数のトランジスタBT10のうちの1つとをそれぞれ導通状態にす
ることにより、放電電池セル群と端子対BT01とを接続する。これにより、放電電池セ
ル群の中で最も上流に位置する電池セルBT09の正極端子は、端子対の端子A1又はA
2のいずれか一方と接続される。また、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セ
ルBT09の負極端子は、端子対の端子A1又はA2のいずれか他方、すなわち正極端子
と接続されていない方の端子に接続される。
【0251】
トランジスタBT10には、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジス
タはオフ電流が小さいため、放電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減
らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高
電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、放電電池セル群の出力電圧が大き
くても、非導通状態とするトランジスタBT10が接続された電池セルBT09と端子対
BT01とを絶縁状態とすることができる。
【0252】
また、図24では、切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT13と、電流制御
スイッチBT14と、バスBT15と、バスBT16とを有する。バスBT15及びBT
16は、複数のトランジスタBT13と、電流制御スイッチBT14との間に配置される
。複数のトランジスタBT13のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互
に、バスBT15及びBT16と接続されている。また、複数のトランジスタBT13の
ソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続され
ている。
【0253】
なお、複数のトランジスタBT13のうち、最上流に位置するトランジスタBT13のソ
ース又はドレインの他方は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極
端子と接続されている。また、複数のトランジスタBT13のうち、最下流に位置するト
ランジスタBT13のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最下流に位置する
電池セルBT09の負極端子と接続されている。
【0254】
トランジスタBT13には、トランジスタBT10と同様に、OSトランジスタを用いる
ことが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、充電電池セル群に属しない
電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することがで
きる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、
充電電池セル群を充電するための電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタBT
13が接続された電池セルBT09と端子対BT02とを絶縁状態とすることができる。
【0255】
電流制御スイッチBT14は、スイッチ対BT17とスイッチ対BT18とを有する。ス
イッチ対BT17の一端は、端子B1に接続されている。また、スイッチ対BT17の他
端は2つのスイッチで分岐しており、一方のスイッチはバスBT15に接続され、他方の
スイッチはバスBT16に接続されている。スイッチ対BT18の一端は、端子B2に接
続されている。また、スイッチ対BT18の他端は2つのスイッチで分岐しており、一方
のスイッチはバスBT15に接続され、他方のスイッチはバスBT16に接続されている
【0256】
スイッチ対BT17及びスイッチ対BT18が有するスイッチは、トランジスタBT10
及びトランジスタBT13と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。
【0257】
切り替え回路BT05は、制御信号S2に応じて、トランジスタBT13、及び電流制御
スイッチBT14のオン/オフ状態の組み合わせを制御することにより、充電電池セル群
と端子対BT02とを接続する。
【0258】
切り替え回路BT05は、一例として、以下のようにして充電電池セル群と端子対BT0
2とを接続する。
【0259】
切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT13のゲートに与える制御信号S2に
応じて、充電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続さ
れているトランジスタBT13を導通状態にする。また、切り替え回路BT05は、複数
のトランジスタBT13のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で
最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子に接続されているトランジスタBT13
を導通状態にする。
【0260】
端子対BT02に印加される電圧の極性は、端子対BT01と接続される放電電池セル群
、及び変圧回路BT07の構成によって変わり得る。また、充電電池セル群を充電する方
向に電流を流すためには、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同
士を接続する必要がある。そこで、電流制御スイッチBT14は、制御信号S2により、
端子対BT02に印加される電圧の極性に応じてスイッチ対BT17及びスイッチ対BT
18の接続先をそれぞれ切り替えるように制御される。
【0261】
一例として、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対BT02に印加
されている状態を挙げて説明する。この時、電池部BT08の最下流の電池セルBT09
が充電電池セル群である場合、スイッチ対BT17は、制御信号S2により、当該電池セ
ルBT09の正極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対BT17の
バスBT16に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対BT17のバスBT1
5に接続されるスイッチがオフ状態となる。一方、スイッチ対BT18は、制御信号S2
により、当該電池セルBT09の負極端子と接続されるように制御される。すなわち、ス
イッチ対BT18のバスBT15に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対B
T18のバスBT16に接続されるスイッチがオフ状態となる。このようにして、端子対
BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端
子対BT02から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御
される。
【0262】
また、電流制御スイッチBT14は、切り替え回路BT05ではなく、切り替え回路BT
04に含まれていてもよい。
【0263】
図25は、図24とは異なる、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の構成例
を示す回路図である。
【0264】
図25では、切り替え回路BT04は、複数のトランジスタ対BT21と、バスBT24
及びバスBT25とを有する。バスBT24は、端子A1と接続されている。また、バス
BT25は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタ対BT21の一端は、それ
ぞれトランジスタBT22とトランジスタBT23とにより分岐している。トランジスタ
BT22のソース又はドレインの一方は、バスBT24と接続されている。また、トラン
ジスタBT23のソース又はドレインの一方は、バスBT25と接続されている。また、
複数のトランジスタ対の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続さ
れている。なお、複数のトランジスタ対BT21のうち、最上流に位置するトランジスタ
対BT21の他端は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と
接続されている。また、複数のトランジスタ対BT21のうち、最下流に位置するトラン
ジスタ対BT21の他端は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極
端子と接続されている。
【0265】
切り替え回路BT04は、制御信号S1に応じてトランジスタBT22及びトランジスタ
BT23の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対BT21の接
続先を、端子A1又は端子A2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタB
T22が導通状態であれば、トランジスタBT23は非導通状態となり、その接続先は端
子A1になる。一方、トランジスタBT23が導通状態であれば、トランジスタBT22
は非導通状態となり、その接続先は端子A2になる。トランジスタBT22及びトランジ
スタBT23のどちらが導通状態になるかは、制御信号S1によって決定される。
【0266】
端子対BT01と放電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対BT21が用
いられる。詳細には、制御信号S1に基づいて、2つのトランジスタ対BT21の接続先
がそれぞれ決定されることにより、放電電池セル群と端子対BT01とが接続される。2
つのトランジスタ対BT21のそれぞれの接続先は、一方が端子A1となり、他方が端子
A2となるように、制御信号S1によって制御される。
【0267】
切り替え回路BT05は、複数のトランジスタ対BT31と、バスBT34及びバスBT
35とを有する。バスBT34は、端子B1と接続されている。また、バスBT35は、
端子B2と接続されている。複数のトランジスタ対BT31の一端は、それぞれトランジ
スタBT32とトランジスタBT33とにより分岐している。トランジスタBT32によ
り分岐する一端は、バスBT34と接続されている。また、トランジスタBT33により
分岐する一端は、バスBT35と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT31
の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。なお、複数
のトランジスタ対BT31のうち、最上流に位置するトランジスタ対BT31の他端は、
電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また
、複数のトランジスタ対BT31のうち、最下流に位置するトランジスタ対BT31の他
端は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている
【0268】
切り替え回路BT05は、制御信号S2に応じてトランジスタBT32及びトランジスタ
BT33の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対BT31の接
続先を、端子B1又は端子B2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタB
T32が導通状態であれば、トランジスタBT33は非導通状態となり、その接続先は端
子B1になる。逆に、トランジスタBT33が導通状態であれば、トランジスタBT32
は非導通状態となり、その接続先は端子B2になる。トランジスタBT32及びトランジ
スタBT33のどちらが導通状態となるかは、制御信号S2によって決定される。
【0269】
端子対BT02と充電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対BT31が用
いられる。詳細には、制御信号S2に基づいて、2つのトランジスタ対BT31の接続先
がそれぞれ決定されることにより、充電電池セル群と端子対BT02とが接続される。2
つのトランジスタ対BT31のそれぞれの接続先は、一方が端子B1となり、他方が端子
B2となるように、制御信号S2によって制御される。
【0270】
また、2つのトランジスタ対BT31のそれぞれの接続先は、端子対BT02に印加され
る電圧の極性によって決定される。具体的には、端子B1が正極、端子B2が負極となる
ような電圧が端子対BT02に印加されている場合、上流側のトランジスタ対BT31は
、トランジスタBT32が導通状態となり、トランジスタBT33が非導通状態となるよ
うに、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対BT31は、ト
ランジスタBT33が導通状態、トランジスタBT32が非導通状態となるように、制御
信号S2によって制御される。また、端子B1が負極、端子B2が正極となるような電圧
が端子対BT02に印加されている場合は、上流側のトランジスタ対BT31は、トラン
ジスタBT33が導通状態となり、トランジスタBT32が非導通状態となるように、制
御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対BT31は、トランジス
タBT32が導通状態、トランジスタBT33が非導通状態となるように、制御信号S2
によって制御される。このようにして、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ
極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対BT02から流れる電流の方向が、充
電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
【0271】
変圧制御回路BT06は、変圧回路BT07の動作を制御する。変圧制御回路BT06は
、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と、充電電池セル群に含まれる電池
セルBT09の個数とに基づいて、変圧回路BT07の動作を制御する変圧信号S3を生
成し、変圧回路BT07へ出力する。
【0272】
なお、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が充電電池セル群に含まれる電
池セルBT09の個数よりも多い場合は、充電電池セル群に対して過剰に大きな充電電圧
が印加されることを防止する必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、充電電池
セル群を充電できる範囲で放電電圧(Vdis)を降圧させるように変圧回路BT07を
制御する変圧信号S3を出力する。
【0273】
また、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる
電池セルBT09の個数以下である場合は、充電電池セル群を充電するために必要な充電
電圧を確保する必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、充電電池セル群に過剰
な充電電圧が印加されない範囲で放電電圧(Vdis)を昇圧させるように変圧回路BT
07を制御する変圧信号S3を出力する。
【0274】
なお、過剰な充電電圧とする電圧値は、電池部BT08で使用される電池セルBT09の
製品仕様等に鑑みて決定することができる。また、変圧回路BT07により昇圧及び降圧
された電圧は、充電電圧(Vcha)として端子対BT02に印加される。
【0275】
ここで、本実施形態における変圧制御回路BT06の動作例を、図26(A)乃至(C)
を用いて説明する。図26(A)乃至(C)は、図23(A)乃至(C)で説明した放電
電池セル群及び充電電池セル群に対応させた、変圧制御回路BT06の動作例を説明する
ための概念図である。なお図26(A)乃至(C)は、電池制御ユニットBT41を図示
している。電池制御ユニットBT41は、上述したように、端子対BT01と、端子対B
T02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT0
5と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07とにより構成される。
【0276】
図26(A)に示される例では、図23(A)で説明したように、連続する3つの高電圧
セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、図23(A
)を用いて説明したように、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルa乃至cを放電電
池セル群として決定し、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する。そして、変圧制
御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の
、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比に基づいて、放電電圧(Vdi
s)から充電電圧(Vcha)への変換比Nを算出する。
【0277】
なお放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電
池セルBT09の個数よりも多い場合に、放電電圧を変圧せずに端子対BT02にそのま
ま印加すると、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09に、端子対BT02を介して
過剰な電圧が印加される可能性がある。そのため、図26(A)に示されるような場合で
は、端子対BT02に印加される充電電圧(Vcha)を、放電電圧よりも降圧させる必
要がある。さらに、充電電池セル群を充電するためには、充電電圧は、充電電池セル群に
含まれる電池セルBT09の合計電圧より大きい必要がある。そのため、変圧制御回路B
T06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の、充電電
池セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比よりも、変換比Nを大きく設定する。
【0278】
変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とし
た時の、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比に対して、変換比Nを1
乃至10%程度大きくするのが好ましい。この時、充電電圧は充電電池セル群の電圧より
も大きくなるが、実際には充電電圧は充電電池セル群の電圧と等しくなる。ただし、変圧
制御回路BT06は変換比Nに従い充電電池セル群の電圧を充電電圧と等しくするために
、充電電池セル群を充電する電流を流すこととなる。この電流は変圧制御回路BT06に
設定された値となる。
【0279】
図26(A)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が3
個で、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の数が1個であるため、変圧制御回路
BT06は、1/3より少し大きい値を変換比Nとして算出する。そして、変圧制御回路
BT06は、放電電圧を当該変換比Nに応じて降圧し、充電電圧に変換する変圧信号S3
を変圧回路BT07に出力する。そして、変圧回路BT07は、変圧信号S3に応じて変
圧された充電電圧を、端子対BT02に印加する。そして、端子対BT02に印加される
充電電圧によって、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09が充電される。
【0280】
また、図26(B)や図26(C)に示される例でも、図26(A)と同様に、変換比N
が算出される。図26(B)や図26(C)に示される例では、放電電池セル群に含まれ
る電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数以下で
あるため、変換比Nは1以上となる。よって、この場合は、変圧制御回路BT06は、放
電電圧を昇圧して充電電圧に変換する変圧信号S3を出力する。
【0281】
変圧回路BT07は、変圧信号S3に基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧を
充電電圧に変換する。そして、変圧回路BT07は、変換された充電電圧を端子対BT0
2に印加する。ここで、変圧回路BT07は、端子対BT01と端子対BT02との間を
電気的に絶縁している。これにより、変圧回路BT07は、放電電池セル群の中で最も下
流に位置する電池セルBT09の負極端子の絶対電圧と、充電電池セル群の中で最も下流
に位置する電池セルBT09の負極端子の絶対電圧との差異による短絡を防止する。さら
に、変圧回路BT07は、上述したように、変圧信号S3に基づいて放電電池セル群の合
計電圧である放電電圧を充電電圧に変換する。
【0282】
また、変圧回路BT07は、例えば絶縁型DC(Direct Current)-DC
コンバータ等を用いることができる。この場合、変圧制御回路BT06は、絶縁型DC-
DCコンバータのオン/オフ比(デューティー比)を制御する信号を変圧信号S3として
出力することにより、変圧回路BT07で変換される充電電圧を制御する。
【0283】
なお、絶縁型DC-DCコンバータには、フライバック方式、フォワード方式、RCC(
Ringing Choke Converter)方式、プッシュプル方式、ハーフブ
リッジ方式、及びフルブリッジ方式等が存在するが、目的とする出力電圧の大きさに応じ
て適切な方式が選択される。
【0284】
絶縁型DC-DCコンバータを用いた変圧回路BT07の構成を図27に示す。絶縁型D
C-DCコンバータBT51は、スイッチ部BT52とトランス部BT53とを有する。
スイッチ部BT52は、絶縁型DC-DCコンバータの動作のオン/オフを切り替えるス
イッチであり、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconduc
tor Field-Effect Transistor)やバイポーラ型トランジス
タ等を用いて実現される。また、スイッチ部BT52は、変圧制御回路BT06から出力
される、オン/オフ比を制御する変圧信号S3に基づいて、絶縁型DC-DCコンバータ
BT51のオン状態とオフ状態を周期的に切り替える。なお、スイッチ部BT52は、使
用される絶縁型DC-DCコンバータの方式によって様々な構成を取り得る。トランス部
BT53は、端子対BT01から印加される放電電圧を充電電圧に変換する。詳細には、
トランス部BT53は、スイッチ部BT52のオン/オフ状態と連動して動作し、そのオ
ン/オフ比に応じて放電電圧を充電電圧に変換する。この充電電圧は、スイッチ部BT5
2のスイッチング周期において、オン状態となる時間が長いほど大きくなる。一方、充電
電圧は、スイッチ部BT52のスイッチング周期において、オン状態となる時間が短いほ
ど小さくなる。なお、絶縁型DC-DCコンバータを用いる場合、トランス部BT53の
内部で、端子対BT01と端子対BT02は互いに絶縁することができる。
【0285】
本実施形態における蓄電池BT00の処理の流れを、図28を用いて説明する。図28
、蓄電池BT00の処理の流れを示すフローチャートである。
【0286】
まず、蓄電池BT00は、複数の電池セルBT09毎に測定された電圧を取得する(ステ
ップS001)。そして、蓄電池BT00は、複数の電池セルBT09の電圧を揃える動
作の開始条件を満たすか否かを判定する(ステップS002)。この開始条件は、例えば
、複数の電池セルBT09毎に測定された電圧の最大値と最小値との差分が、所定の閾値
以上か否か等とすることができる。この開始条件を満たさない場合は(ステップS002
:NO)、各電池セルBT09の電圧のバランスが取れている状態であるため、蓄電池B
T00は、以降の処理を実行しない。一方、開始条件を満たす場合は(ステップS002
:YES)、蓄電池BT00は、各電池セルBT09の電圧を揃える処理を実行する。こ
の処理において、蓄電池BT00は、測定されたセル毎の電圧に基づいて、各電池セルB
T09が高電圧セルか低電圧セルかを判定する(ステップS003)。そして、蓄電池B
T00は、判定結果に基づいて、放電電池セル群及び充電電池セル群を決定する(ステッ
プS004)。さらに、蓄電池BT00は、決定された放電電池セル群を端子対BT01
の接続先に設定する制御信号S1、及び決定された充電電池セル群を端子対BT02の接
続先に設定する制御信号S2を生成する(ステップS005)。蓄電池BT00は、生成
された制御信号S1及び制御信号S2を、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT0
5へそれぞれ出力する。そして、切り替え回路BT04により、端子対BT01と放電電
池セル群とが接続され、切り替え回路BT05により、端子対BT02と放電電池セル群
とが接続される(ステップS006)。また、蓄電池BT00は、放電電池セル群に含ま
れる電池セルBT09の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数とに
基づいて、変圧信号S3を生成する(ステップS007)。そして、蓄電池BT00は、
変圧信号S3に基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧を充電電圧に変換し、端
子対BT02に印加する(ステップS008)。これにより、放電電池セル群の電荷が充
電電池セル群へ移動される。
【0287】
また、図28のフローチャートでは、複数のステップが順番に記載されているが、各ステ
ップの実行順序は、その記載の順番に制限されない。
【0288】
以上、本実施形態によれば、放電電池セル群から充電電池セル群へ電荷を移動させる際、
キャパシタ方式のように、放電電池セル群からの電荷を一旦蓄積し、その後充電電池セル
群へ放出させるような構成を必要としない。これにより、単位時間あたりの電荷移動効率
を向上させることができる。また、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05によ
り、放電電池セル群及び充電電池セル群のうち、変圧回路と接続する電池セルを、個別に
切り替えられる。
【0289】
さらに、変圧回路BT07により、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と
充電電池セル群に含まれる電池セルBT09群の個数とに基づいて、端子対BT01に印
加される放電電圧が充電電圧に変換され、端子対BT02に印加される。これにより、放
電側及び充電側の電池セルBT09がどのように選択されても、問題なく電荷の移動を実
現できる。
【0290】
さらに、トランジスタBT10及びトランジスタBT13にOSトランジスタを用いるこ
とにより、充電電池セル群及び放電電池セル群に属しない電池セルBT09から漏洩する
電荷量を減らすことができる。これにより、充電及び放電に寄与しない電池セルBT09
の容量の低下を抑制することができる。また、OSトランジスタは、Siトランジスタに
比べて熱に対する特性の変動が小さい。これにより、電池セルBT09の温度が上昇して
も、制御信号S1、S2に応じた導通状態と非導通状態の切り替えといった、正常な動作
をさせることができる。
【0291】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0292】
100 リチウムイオン蓄電池
101 正極
101a 正極集電体
101b 正極活物質層
102 負極
102a 負極集電体
102b 負極活物質層
103 酸化グラフェン膜
103a 第1の領域
103b 第2の領域
104 正極リード
105 負極リード
106 電解液
107 外装体
108 接合部
109 セパレータ
300 蓄電池
301 正極缶
302 負極缶
303 ガスケット
304 正極
305 正極集電体
306 正極活物質層
307 負極
308 負極集電体
309 負極活物質層
310 セパレータ
400 蓄電池
402 正極
404 負極
406 電解液
408 セパレータ
500 蓄電池
501 正極集電体
502 正極活物質層
503 正極
504 負極集電体
505 負極活物質層
506 負極
507 セパレータ
508 電解液
509 外装体
510 正極タブ電極
511 負極タブ電極
531 酸化グラフェン膜
600 蓄電池
601 正極キャップ
602 電池缶
603 正極端子
604 正極
605 セパレータ
606 負極
607 負極端子
608 絶縁板
609 絶縁板
610 ガスケット
611 PTC素子
612 安全弁機構
900 回路基板
910 ラベル
911 端子
912 回路
913 蓄電池
914 アンテナ
915 アンテナ
916 層
917 層
918 アンテナ
919 端子
920 表示装置
921 センサ
922 端子
930 筐体
930a 筐体
930b 筐体
931 負極
932 正極
933 セパレータ
951 端子
952 端子
1700 曲面
1701 平面
1702 曲線
1703 曲率半径
1704 曲率中心
1800 曲率中心
1801 フィルム
1802 曲率半径
1803 フィルム
1804 曲率半径
1805 電池材料
7100 携帯表示装置
7101 筐体
7102 表示部
7103 操作ボタン
7104 蓄電池
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7407 蓄電池
8021 充電装置
8022 ケーブル
8100 自動車
8200 自動車
8101 ヘッドライト
S1 制御信号
S2 制御信号
S3 変圧信号
BT00 蓄電池
BT01 端子対
BT02 端子対
BT03 切り替え制御回路
BT04 切り替え回路
BT05 切り替え回路
BT06 変圧制御回路
BT07 変圧回路
BT08 電池部
BT09 電池セル
BT10 トランジスタ
BT11 バス
BT12 バス
BT13 トランジスタ
BT14 電流制御スイッチ
BT15 バス
BT16 バス
BT17 スイッチ対
BT18 スイッチ対
BT21 トランジスタ対
BT22 トランジスタ
BT23 トランジスタ
BT24 バス
BT25 バス
BT31 トランジスタ対
BT32 トランジスタ
BT33 トランジスタ
BT34 バス
BT35 バス
BT41 電池制御ユニット
BT51 絶縁型DC-DCコンバータ
BT52 スイッチ部
BT53 トランス部
S001 ステップ
S002 ステップ
S003 ステップ
S004 ステップ
S005 ステップ
S006 ステップ
S007 ステップ
S008 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30