(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185064
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】プロテインLを用いたタンパク質精製
(51)【国際特許分類】
C07K 1/22 20060101AFI20221206BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20221206BHJP
C07K 14/33 20060101ALI20221206BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C07K1/22 ZNA
C07K14/195
C07K14/33
C07K16/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159371
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2019537206の分割
【原出願日】2018-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2017036614
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017247614
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チェン チェン
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】若林 哲也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タンパク質を精製するおよび/または産生する方法を提供する。
【解決手段】いくつかの態様において、本発明の方法は、導電率を下げることにより、タンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む。いくつかの態様において、タンパク質は抗体である。本発明はまた、抗体を提供する。いくつかの態様において、本発明の抗体は、κ可変領域およびλ定常領域を含む軽鎖を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電率を下げることにより、少なくとも2種類の異なるタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階
を含む、タンパク質を精製する方法であって、
タンパク質のそれぞれが、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む、方法。
【請求項2】
溶出段階において、ある特定の数のプロテインL結合モチーフを含むタンパク質のうちの1種類が、他のタンパク質から分離される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
プロテインL結合モチーフが、プロテインLへの結合能を有する抗体κ鎖可変領域またはその断片である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
抗体κ鎖可変領域が、ヒト可変κサブグループ1(VK1)、ヒト可変κサブグループ3(VK3)、ヒト可変κサブグループ4(VK4)、マウス可変κサブグループ1(VK1)、およびそれらの変種からなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
タンパク質のうちのいずれか1種類が抗体である、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
抗体が全抗体または抗体断片である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
抗体が単一特異性抗体または多重特異性抗体である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2種類の異なるタンパク質が、
(i)2本の軽鎖を含む抗体であって、それらのうちの一方がプロテインL結合モチーフを含み、かつ他方がプロテインL非結合モチーフを含む、抗体、および
(ii)2本の軽鎖を含む抗体であって、それらのうちの両方がプロテインL結合モチーフを含む、抗体
を含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
タンパク質のうちの少なくとも1種類が、0.01~16 mS/cmの導電率でプロテインLマトリックスから溶出される、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
導電率が、溶出段階中に勾配様式または段階的様式で下げられる、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
タンパク質のうちの少なくとも1種類が、酸性pHでプロテインLマトリックスから溶出される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
タンパク質のうちの少なくとも1種類が、pH 2.4~3.3でプロテインLマトリックスから溶出される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
pHが、溶出段階中に一定のままであるかまたは実質的に変化しないままである、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
(a)導電率を下げることにより、少なくとも2種類の異なるタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階、および
(b)溶出されたタンパク質のうちの1種類を回収する段階
を含む、タンパク質を産生する方法であって、
タンパク質のそれぞれが、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む、方法。
【請求項15】
κ可変領域およびλ定常領域を含む軽鎖を含む、抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインLを用いてタンパク質を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二重特異性抗体の産生に関する以前の報告がいくつか存在する。一般に、二重特異性抗体は、2種類の重鎖および2種類の軽鎖から構成される。それら4つの構成要素を共に発現させることによって二重特異性抗体を組換え的に産生しようとする場合、2本の重鎖および2本の軽鎖の不適正な組み合わせに起因して、10種類の異なる抗体が産生され得るという困難が通常生じる。そのような場合、10種類の抗体の混合物から目的の単一の二重特異性抗体を単離することが必要となる。二重特異性抗体を産生する効率を改善するために、2本の重鎖のヘテロ二量体化を促進するためのいくつかの方法がこれまでに報告されており、これらには例えば、重鎖中へのアミノ酸置換の導入が含まれる(例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3を参照されたい)。その一方で、VHとVLの対が不適正である抗体を効率的に除去する方法を開発する別の必要性も存在する。
【0003】
プロテインLは、細菌種ペプトストレプトコッカス・マグヌス(Peptostreptococcus magnus)から最初に単離され、免疫グロブリンに結合することが見出された(例えば、非特許文献1を参照されたい)。プロテインLの発見は、抗体の精製、検出、および固定化のために広く用いられている他の免疫グロブリン(Ig)結合試薬、プロテインAおよびプロテインGを補完した。プロテインLは、ヒト、ウサギ、ブタ、マウス、およびラットなどの哺乳動物種に由来する、IgG、IgM、IgE、IgD、およびIgAなどの免疫グロブリンのκ軽鎖に結合すると報告されている。研究により、プロテインLの主要な結合部位が、κ軽鎖の可変領域内に含まれることが示されている(例えば、非特許文献2を参照されたい)。より具体的には、プロテインLは、ある特定のサブグループのκ軽鎖に高親和性で結合することが示されている。例えば、プロテインLは、ヒトVκI、VκIII、およびVκIVサブグループに結合するが、VκIIサブグループには結合しない。マウス免疫グロブリンの結合は、VκI軽鎖を有するものに限定される。プロテインL結合部位がこの特有の位置にあることで、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、およびscFvなどの抗体断片がこうした特定の種類のκ軽鎖の可変領域を有する場合に限り、プロテインLはそれら抗体断片にも結合することができる。Fabとの複合体におけるプロテインLの結晶構造もまた解析されている(例えば、非特許文献3を参照されたい)。
【0004】
健常人によって産生される抗体の約75%がκ軽鎖を有すると言われている。加えて、多くの治療用モノクローナル抗体および抗体断片は、κ軽鎖を含有する。近年、プロテインLとある特定の抗体改変技法とを併用して、κ軽鎖を含む二重特異性抗体を精製するいくつかのアプローチも試みられている(例えば、特許文献4および特許文献5を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO1996/027011
【特許文献2】WO2006/106905
【特許文献3】WO2009/089004
【特許文献4】WO2013/088259
【特許文献5】WO2017/005649
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bjorck L, (1988) J Immunol, 140(4): 1194-1197
【非特許文献2】Nilson et al, (1992) J Biol Chem, 267(4): 2234-2239
【非特許文献3】Graille et al, (2001) Structure, 9(8): 679-687
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、タンパク質を精製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タンパク質を精製する方法を提供する。
【0009】
いくつかの態様において、本発明の方法は、導電率を下げることにより、少なくとも2種類の異なるタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含み、
ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む。
【0010】
いくつかの態様において、本発明の方法は、
(a)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、少なくとも2種類の異なるタンパク質を含む溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、および
(b)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階
を含み、
ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む。
【0011】
いくつかの態様においては、ある特定の数のプロテインL結合モチーフを含むタンパク質が、異なる数のプロテインL結合モチーフを含むタンパク質から分離される。いくつかの態様においては、1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質が、2つまたはそれ以上のプロテインL結合モチーフを含むタンパク質から分離される。
【0012】
いくつかの態様において、プロテインL結合モチーフは、プロテインLへの結合能を有する抗体κ鎖可変領域またはその断片である。さらなる態様において、抗体κ鎖可変領域は、ヒト可変κサブグループ1(VK1)、ヒト可変κサブグループ3(VK3)、ヒト可変κサブグループ4(VK4)、マウス可変κサブグループ1(VK1)、およびそれらの変種からなる群より選択される。
【0013】
いくつかの態様において、タンパク質のうちのいずれか1種類は、単一のポリペプチドを含む単量体タンパク質、または2つもしくはそれ以上のポリペプチドを含む多量体タンパク質である。いくつかの態様において、タンパク質のうちのいずれか1種類は抗体である。ある特定の態様において、抗体は全抗体または抗体断片である。ある特定の態様において、抗体は単一特異性抗体または多重特異性抗体である。
【0014】
いくつかの態様において、抗体は2本の軽鎖を含み、それらのうちの一方はプロテインL結合モチーフを含む。さらなる態様において、抗体は2本の軽鎖を含み、それらのうちの他方はプロテインL非結合モチーフを含む。いくつかの態様において、抗体の2本の重鎖は同一または非同一である。
【0015】
いくつかの態様において、溶液は、
(i)2本の軽鎖を含む抗体であって、それらのうちの一方がプロテインL結合モチーフを含み、かつ他方がプロテインL非結合モチーフを含む、抗体、および
(ii)2本の軽鎖を含む抗体であって、それらのうちの両方がプロテインL結合モチーフを含む、抗体
を含む。
【0016】
いくつかの態様において、溶液は、
(i)2本の軽鎖を含む抗体であって、それらのうちの一方がプロテインL結合モチーフを含み、かつ他方がプロテインL非結合モチーフを含む、抗体、
(ii)2本の軽鎖を含む抗体であって、それらのうちの両方がプロテインL結合モチーフを含む、抗体、および
(iii)2本の軽鎖を含む抗体であって、それらのうちの両方がプロテインL非結合モチーフを含む、抗体
を含む。
【0017】
いくつかの態様において、タンパク質のうちの少なくとも1種類は、0.01~16 mS/cmの導電率でプロテインLマトリックスから溶出される。さらなる態様において、1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、0.01~16 mS/cmの導電率でプロテインLマトリックスから溶出される。いくつかの態様において、導電率は、溶出段階中に勾配様式または段階的様式で下げられる。
【0018】
いくつかの態様において、タンパク質のうちの少なくとも1種類は、酸性pHでプロテインLマトリックスから溶出される。さらなる態様において、タンパク質のうちの少なくとも1種類は、pH 2.4~3.3でプロテインLマトリックスから溶出される。さらなる態様において、1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、pH 2.4~3.3でプロテインLマトリックスから溶出される。いくつかの態様において、pHは、溶出段階中に一定のままであるかまたは実質的に変化しないままである。
【0019】
本発明はまた、タンパク質を産生する方法を提供する。
【0020】
いくつかの態様において、本発明の方法は、
(a)導電率を下げることにより、少なくとも2種類の異なるタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階、および
(b)溶出されたタンパク質のうちの1種類を回収する段階
を含み、
ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む。
【0021】
いくつかの態様において、本発明の方法は、
(a)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、少なくとも2種類の異なるタンパク質を含む溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、
(b)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階、および
(c)溶出されたタンパク質のうちの1種類を回収する段階
を含み、
ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む。
【0022】
いくつかの態様において、本発明の方法は、
(a)少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むポリペプチドの発現に適した条件下で細胞を培養する段階、
(b)該細胞内で発現された少なくとも2種類の異なるタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数の該ポリペプチドを含む、段階、
(c)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、
(d)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階、
(e)溶出されたタンパク質のうちの1種類を回収する段階
を含む。
【0023】
いくつかの態様において、本発明の方法は、
(a)少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むポリペプチドをコードする核酸を単離する段階、
(b)該核酸を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換する段階、
(c)該ポリペプチドの発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階、
(d)宿主細胞内で発現された少なくとも2種類の異なるタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数の該ポリペプチドを含む、段階、
(e)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、および
(f)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階、および
(g)溶出されたタンパク質のうちの1種類を回収する段階
を含む。
【0024】
本発明はまた、抗体を提供する。
【0025】
いくつかの態様において、抗体は、κ可変領域およびλ定常領域を含む軽鎖を含む。さらなる態様において、抗体は、(i)κ可変領域およびκ定常領域、(ii)λ可変領域およびλ定常領域、(iii)κ可変領域およびλ定常領域、または(iv)λ可変領域およびκ定常領域のうちのいずれか1つを含む、別の軽鎖を含む。ある特定の態様において、抗体は多重特異性抗体である。
【0026】
本発明は、以下のものを提供する:
[1]導電率を下げることにより、少なくとも2種類の異なるタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階
を含む、タンパク質を精製する方法であって、
タンパク質のそれぞれが、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む、方法。
[2]溶出段階において、ある特定の数のプロテインL結合モチーフを含むタンパク質のうちの1種類が、他のタンパク質から分離される、[1]の方法。
[3]プロテインL結合モチーフが、プロテインLへの結合能を有する抗体κ鎖可変領域またはその断片である、[1]または[2]の方法。
[4]抗体κ鎖可変領域が、ヒト可変κサブグループ1(VK1)、ヒト可変κサブグループ3(VK3)、ヒト可変κサブグループ4(VK4)、マウス可変κサブグループ1(VK1)、およびそれらの変種からなる群より選択される、[3]の方法。
[5]タンパク質のうちのいずれか1種類が抗体である、[1]~[4]のいずれか1つの方法。
[6]抗体が全抗体または抗体断片である、[5]の方法。
[7]抗体が単一特異性抗体または多重特異性抗体である、[5]の方法。
[8]少なくとも2種類の異なるタンパク質が、
(i)2本の軽鎖を含む抗体であって、それらのうちの一方がプロテインL結合モチーフを含み、かつ他方がプロテインL非結合モチーフを含む、抗体、および
(ii)2本の軽鎖を含む抗体であって、それらのうちの両方がプロテインL結合モチーフを含む、抗体
を含む、[5]の方法。
[9]タンパク質のうちの少なくとも1種類が、0.01~16 mS/cmの導電率でプロテインLマトリックスから溶出される、[1]~[8]のいずれか1つの方法。
[10]導電率が、溶出段階中に勾配様式または段階的様式で下げられる、[1]~[9]のいずれか1つの方法。
[11]タンパク質のうちの少なくとも1種類が、酸性pHでプロテインLマトリックスから溶出される、[1]~[10]のいずれか1つの方法。
[12]タンパク質のうちの少なくとも1種類が、pH 2.4~3.3でプロテインLマトリックスから溶出される、[11]の方法。
[13]pHが、溶出段階中に一定のままであるかまたは実質的に変化しないままである、[11]または[12]の方法。
[14]
(a)導電率を下げることにより、少なくとも2種類の異なるタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階、および
(b)溶出されたタンパク質のうちの1種類を回収する段階
を含む、タンパク質を産生する方法であって、
タンパク質のそれぞれが、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む、方法。
[15]κ可変領域およびλ定常領域を含む軽鎖を含む、抗体。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実験に使用された様々な抗体の構造の略図を示す。Ab#1、Ab#3、Ab#5、およびAb#7は、2本の異なる重鎖ポリペプチドおよび2本の異なる軽鎖ポリペプチドから構成される二重特異性抗体である。Ab#2、Ab#4、Ab#6、およびAb#8は、唯一の重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの2コピーから構成される単一特異性抗体である。Ab#3 Ab#4、Ab#7、およびAb#8は、κ定常ドメインに融合されたκ可変ドメイン、および/またはλ定常ドメインに融合されたλ可変ドメインを有する。Ab#1およびAb#5は、λ定常ドメインに融合されたκ可変ドメインから構成される1つのアームを有する。Ab#2およびAb#6は、λ定常ドメインに融合されたκ可変ドメインから構成される両アームを有する。Ab#9は、Ab#8に由来する1アーム抗体である。Ab#10は、1つのκ可変ドメインおよび1つのλ可変ドメインを有する2つの一本鎖可変断片からなる二重特異性抗体である。
【
図2】
図2A~2Dは、実施例4に記載されるような、CIEX法を用いることによる抗体の同定を示す。
図2Aは、Ab#1とAb#2の代表的なUV-トレース図面の重ね合わせを示すグラフである。
図2Bは、Ab#3とAb#4の代表的なUV-トレース図面の重ね合わせを示すグラフである。
図2Cは、Ab#5とAb#6の代表的なUV-トレース図面の重ね合わせを示すグラフである。
図2Dは、Ab#7とAb#8の代表的なUV-トレース図面の重ね合わせを示すグラフである。
【
図3】
図3A~3Dは、実施例5に記載されるような、pH 2.4、2.7、3.0、および3.3における導電率勾配による、Ab#1とAb#2の分離を示す。
図3Aは、pH 2.4において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図3Bは、pH 2.7において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図3Cは、pH 3.0において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図3Dは、pH 3.3において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
【
図4】
図4A~4Bは、実施例6に記載されるような、pH 2.7および3.0における2段階溶出による、Ab#1とAb#2の分離を示す。
図4Aは、pH 2.7において塩段階溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。各ピークにおける含有量を要約する表が存在する。
図4Bは、pH 3.0において塩段階溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。各ピークにおける含有量を要約する表が存在する。
【
図5】
図5A~5Bは、実施例7に記載されるような、pH 2.7における導電率勾配および段階溶出による、Ab#3とAb#4の分離を示す。
図5Aは、pH 2.7において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図5Bは、pH 2.7において塩段階溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。各ピークにおける含有量を要約する表が存在する。
【
図6】
図6A~6Dは、実施例8に記載されるような、pH 2.4、2.7、3.0、および3.3における導電率勾配による、Ab#5とAb#6の分離を示す。
図6Aは、pH 2.4において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図6Bは、pH 2.7において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図6Cは、pH 3.0において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図6Dは、pH 3.3において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
【
図7】
図7A~7Bは、実施例9に記載されるような、pH 2.7および3.0における2段階溶出による、Ab#5とAb#6の分離を示す。
図7Aは、pH 2.7において塩段階溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。各ピークにおける含有量を要約する表が存在する。
図7Bは、pH 3.0において塩段階溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。各ピークにおける含有量を要約する表が存在する。
【
図8】
図8A~8Bは、実施例10に記載されるような、pH 3.0における導電率勾配および段階溶出による、Ab#7とAb#8の分離を示す。
図8Aは、pH 3.0において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図8Bは、pH 3.0において塩段階溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。各ピークにおける含有量を要約する表が存在する。
【
図9】
図9A~9Cは、実施例11に記載されるような、pH 3.0における導電率勾配および段階溶出による、Ab#8とAb#9の分離を示す。
図9Aは、pH 3.0において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図9Bは、pH 3.0において塩段階溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図9Cは、
図9Bに示されるピーク1およびピーク2における画分に由来するタンパク質試料の、非還元条件下で解析されたSDS-PAGE画像である。MWMは分子量マーカーを示す。クマシーブリリアントブルーでゲルを染色した。
【
図10】
図10A~10Bは、実施例12に記載されるような、pH 2.7における導電率勾配による、単量体BiTE抗体とオリゴマーBiTE抗体(Ab#10)の分離を示す。
図10Aは、pH 2.7において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)-HPLC解析のために、画分C7、C12、D5、D8、D11、E6、E11、F4、およびF9を選択した。
図10Bは、
図10Aに示されるピーク1およびピーク2からの各画分の、SEC-HPLCクロマトグラムのセットを示す。分子量マーカー(MWM)の解析結果もまた、一番下のパネルに示してある。各画分中の単量体BiTE抗体(Ab#10)の含有量を、右側のパネルに要約してある。
【
図11】
図11A~11Bは、実施例13に記載されるような、HiTrapプロテインLカラムを用いたpH 3.0における導電率勾配および段階溶出による、Ab#5とAb#6の分離を示す。
図11Aは、pH 3.0において100 mM NaClから0 mMまでの塩勾配溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。
図11Bは、pH 3.0において塩段階溶出を用いるプロテインLアフィニティークロマトグラフィーの代表的なUV-トレース図面を示すグラフである。各ピークにおける含有量を要約する表が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
態様の説明
本発明は、一部には、プロテインLを用いてタンパク質を精製する方法に関する。本発明はまた、一部には、プロテインLを用いてタンパク質を分離する方法に関する。本発明はまた、一部には、プロテインLを用いてタンパク質を単離する方法に関する。本発明はまた、一部には、プロテインLを用いてタンパク質を産生する方法に関する。
【0029】
1つの局面において、本発明は、導電率を下げることにより、タンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。いくつかの態様において、タンパク質は少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含む。いくつかの態様において、少なくとも2種類の異なるタンパク質がプロテインLマトリックスから溶出され、ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む。ある特定の態様において、本発明は、導電率を下げることにより、少なくとも2種類の異なるタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供し、ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む。
【0030】
別の局面において、本発明の方法は、タンパク質をプロテインLマトリックスと接触させる段階をさらに含む。いくつかの態様において、タンパク質は、ある特定の導電率でプロテインLマトリックスに結合する。いくつかの態様において、タンパク質は溶液中に含まれ得る。ある特定の態様において、本発明は、(a)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、少なくとも2種類の異なるタンパク質を含む溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、および(b)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供し、ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む。
【0031】
タンパク質中に含まれるプロテインL結合モチーフの数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上であってよい。特定の態様において、溶液は2種類のタンパク質を含み、それらは、(i)1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質、および(ii)2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質である。必要に応じて、溶液は、プロテインL結合モチーフを含まないタンパク質をさらに含み得る。特定の態様において、溶液は3種類のタンパク質を含んでよく、それらは、(i)1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質、(ii)2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質、および(iii)プロテインL結合モチーフを含まないタンパク質である。
【0032】
本発明の可能性ある効果の1つは、そのそれぞれが異なる数のプロテインL結合モチーフを含む少なくとも2種類の異なるタンパク質の混合物から、1種類のタンパク質を分離できることである。本発明においては、後に記載されるように、2種類のタンパク質の溶出位置が異なる場合、および/またはそれらの純度が、精製の前と比較して上昇している場合に、2種類のタンパク質が分離されていると判断され得る。いかなる特定の理論によって拘束されることも望まないが、上記の効果は、プロテインLに対するタンパク質の異なる結合親和性に基づくと推測され得る。本発明において、ある特定の数のプロテインL結合タンパク質モチーフを含むタンパク質は、異なる数のプロテインL結合タンパク質モチーフを含むタンパク質から分離され得る。例えば、1つのプロテインL結合タンパク質モチーフを含むタンパク質は、2つまたはそれ以上のプロテインL結合タンパク質モチーフを含むタンパク質から、および必要に応じてプロテインL結合モチーフを含まないタンパク質から分離され得る。
【0033】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるプロテインL結合モチーフは、抗体κ鎖可変領域である。プロテインLに対する結合能を有する限り、任意の動物種に由来する任意のサブグループのκ鎖可変領域を、プロテインL結合モチーフとして使用することができる。特定の態様において、プロテインL結合モチーフは、ヒト可変κサブグループ1(VK1、本明細書においてはVκ1とも記載される)、ヒト可変κサブグループ3(VK3、本明細書においてはVκ3とも記載される)、ヒト可変κサブグループ4(VK4、本明細書においてはVκ4とも記載される)、およびマウス可変κサブグループ1(VK1、本明細書においてはVκ1とも記載される)からなる群より選択される。さらなる態様において、例えば、ヒトVK1は、VK1-5、VK1-6、VK1-8、VK1-9、VK1-12、VK1-13、VK1-16、VK1-17、VK1-22、VK1-27、VK1-32、VK1-33、VK1-35、VK1-37、VK1-39、VK1D-8、VK1D-12、VK1D-13、VK1D-16、VK1D-17、VK1D-22、VK1D-27、VK1D-32、VK1D-33、VK1D-35、VK1D-37、VK1D-39、VK1D-42、VK1D-43、およびVK1-NL1からなる群より選択され;ヒトVK3は、VK3-7、VK3-11、VK3-15、VK3-20、VK3-25、VK3-31、VK3-34、VK3D-7、VK3D-11、VK3D-15、VK3D-20、VK3D-25、VK3D-31、およびVK3D-34からなる群より選択され;ヒトVK4は、VK4-1からなる群より選択され;ならびにマウスVK1は、VK1-35、VK1-88、VK1-99、VK1-108、VK1-110、VK1-115、VK1-117、VK1-122、VK1-131、VK1-132、VK1-133、VK1-135、およびVK1-136からなる群より選択される。上記の抗体κ鎖可変領域のアミノ酸配列の具体例は、例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991において見出すことができる。ある特定の態様においては、アミノ酸改変を有する上記κ鎖可変領域の変種もまた、プロテインLに対する結合能をなお有する限り、プロテインL結合モチーフに含まれる。上記κ鎖可変領域の断片もまた、プロテインLに対する結合能をなお有する限り、プロテインL結合モチーフに含まれ得る。先行技術において、プロテインLとの相互作用に関与するいくつかのVLアミノ酸残基が既に同定されている(例えば、Graille et al(2002), Structure 9(8): 679-687を参照されたい)。そのような情報を参照して、当業者は、過度の負担なく、プロテインLに対する結合能を有する抗体κ鎖可変領域の断片を設計し調製することができるであろう。
【0034】
その一方で、プロテインLに結合しない軽鎖可変領域は、本発明においてプロテインL非結合モチーフとして定義される。プロテインLに対する結合能を有さない限り、任意の動物種に由来する任意のサブグループの軽鎖可変領域を、プロテインL非結合モチーフとして使用することができる。例えば、以下の軽鎖可変領域はプロテインL非結合モチーフに分類される:ヒト可変κサブグループ2(VK2, 本明細書においてはVκ2とも記載される)、任意のサブグループのヒト可変λ、および任意のサブグループのマウス可変λ。さらなる態様において、例えば、ヒトVK2は、VK2-4、VK2-10、VK2-14、VK2-18、VK2-19、VK2-23、VK2-24、VK2-26、VK2-28、VK2-29、VK2-30、VK2-36、VK2-38、VK2-40、VK2D-10、VK2D-14、VK2D-18、VK2D-19、VK2D-23、VK2D-24、VK2D-26、VK2D-28、VK2D-29、VK2D-30、VK2D-36、VK2D-38、およびVK2D-40からなる群より選択され;ヒト可変λは、VL1-36、VL1-40、VL1-41、VL1-44、VL1-47、VL1-50、VL1-51、VL1-62、VL2-5、VL2-8、VL2-11、VL2-14、VL2-18、VL2-23、VL2-28、VL2-33、VL2-34、VL3-1、VL3-2、VL3-4、VL3-6、VL3-7、VL3-9、VL3-10、VL3-12、VL3-13、VL3-15、VL3-16、VL3-17、VL3-19、VL3-21、VL3-22、VL3-24、VL3-25、VL3-26、VL3-27、VL3-29、VL3-30、VL3-31、VL3-32、VL4-3、VL4-60、およびVL4-69からなる群より選択され;マウス可変λは、VL1、VL2、VL3、VL4、およびVL8からなる群より選択される。上記の軽鎖可変領域のアミノ酸配列の具体例は、例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991において見出すことができる。ある特定の態様においては、アミノ酸改変を有する上記軽鎖可変領域の変種もまた、プロテインLに対する結合能をなお有さない限り、プロテインL非結合モチーフに含まれる。他の態様においては、プロテインLに対する結合能を失うアミノ酸改変を有するプロテインL結合モチーフ(例えば、ヒトVK1、ヒトVK3、ヒトVK4、またはマウスVK1など)の変種もまた、プロテインL非結合モチーフに含まれる。例えば、(Kabat番号付けシステムに従う番号付けで)12位のSerがProで置換された、ヒトVK1のS12P変異体は、プロテインL非結合モチーフの一例である。上記軽鎖可変領域の断片もまた、プロテインLに対する結合能をなお有さない限り、プロテインL非結合モチーフに含まれ得る。
【0035】
本明細書において記載される少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、単一のポリペプチドのみを含む単量体タンパク質、または2つもしくはそれ以上のポリペプチドを含む多量体タンパク質であってよい。多量体タンパク質は、ホモ多量体タンパク質またはヘテロ多量体タンパク質であってよい。少なくとも2つの異なるポリペプチドを含むヘテロ多量体タンパク質の場合には、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフがタンパク質中に含まれる限り、ポリペプチドのそれぞれは、任意の数のプロテインL結合モチーフを含んでよく、またはプロテインL結合モチーフを含まなくてもよい。特定の態様において、ヘテロ多量体タンパク質は2つの異なるポリペプチドを含み、それらのうちの一方は1つのプロテインL結合モチーフを含み、それらのうちの他方はプロテインL結合モチーフを含まない。少なくとも2つの同一のポリペプチドを含むホモ多量体タンパク質の場合には、少なくとも2つのプロテインL結合モチーフがタンパク質中に含まれる限り、ポリペプチドのそれぞれは、任意の数のプロテインL結合モチーフを含んでよい。特定の態様において、ホモ多量体タンパク質は2つの同一のポリペプチドを含み、その両方が1つのプロテインL結合モチーフを含む。
【0036】
いくつかの態様において、本明細書において記載される少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、抗体である。本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含むがこれらに限定されない様々な抗体構造を包含する。抗体は、全抗体または抗体断片であってよい。一般に、多重特異性抗体は、2種類またはそれ以上の異なる抗体に由来する複数の抗原結合ドメインを含む。多重特異性抗体のエピトープは、複数の抗原上または単一の抗原上に位置し得る。二重特異性抗体は、例えば、2つの異なる軽鎖および2つの異なる重鎖の組み合わせを含み得る。あるいは、二重特異性抗体は、2つの異なる軽鎖および1つの共通の重鎖の組み合わせ、または1つの共通の軽鎖および2つの異なる重鎖の組み合わせを含み得る。他の態様においては、人工的に改変された形式の抗体、例えば、CrossMab、CrossMab-Fab、二重作用Fab(DAF)、DutaMab、LUZ-Y、SEEDbody、DuoBody、κ-λボディ、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig)、scFab-IgG、Fab-scFab-IgG、IgG-scFv、およびIgG-Fabなど(例えば、Spiess et al. (2015) Mol Immunol 67:95-106、Brinkmann U et al. (2017) MAbs 9(2):182-212を参照されたい)もまた、所望の抗原結合活性を有する限り、「抗体」という用語に含まれる。他の態様においては、1つもしくは複数の他のポリペプチドと融合された抗体、または1つもしくは複数の他の作用物質(例えば、薬物、毒素、放射性同位体、およびポリマー)とコンジュゲートされた抗体などの抗体誘導体もまた、所望の抗原結合活性を有する限り、「抗体」という用語に含まれる。
【0037】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、天然に存在する免疫グロブリン構造と実質的に同様の構造を有する抗体を指す。例えば、天然IgG分子は、ジスルフィド結合された2本の同一の軽鎖および2本の同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変ドメイン(VL)、続いて定常ドメイン(CL)を有する。同様に、N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変ドメイン(VH)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。本明細書において記載される抗体は、任意のクラスおよび任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、およびIgM)のものであってよい。抗体の重鎖定常ドメインは、IgA(α)、IgD(δ)、IgE(ε)、IgG(γ)、またはIgM(μ)に由来し得る。抗体の軽鎖は、κまたはλであってよい。抗体は、抗原に対する動物の免疫化、および以下に記載されるような組換え宿主細胞による産生を含むがこれらに限定されない様々な技法によって作製され得る。例えば米国特許第4,816,567号もまた参照されたい。
【0038】
「抗体断片」とは、全抗体が結合する抗原に結合する、全抗体の一部を含む全抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fv、単一ドメイン抗体(sdAb)、一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、scFv二量体、タンデムscFv(taFv)、(scFv)2、一本鎖ダイアボディ(scDb)、一本鎖Fab(scFab)、タンデムscDb(TandAb)、トリアボディ、テトラボディ、ヘキサボディ、1アーム抗体、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体、例えばFab-scFv、scFv-Fc、Fab-scFv-Fc、scDb-Fc、およびtaFv-Fcなどが含まれるが、これらに限定されない。抗体断片は、全抗体のタンパク質分解消化、および以下に記載されるような組換え宿主細胞による産生を含むがこれらに限定されない様々な技法によって作製され得る。ある特定の抗体断片の総説については、例えば、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003)を参照されたい。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp. 269-315 (1994)を参照されたい;WO1993/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号もまた参照されたい。Fab断片およびF(ab')2断片の考察については、例えば米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0039】
ダイアボディは、二価または二重特異性であってよい2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP 404,097;WO1993/01161;Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003);およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)を参照されたい。トリアボディおよびテトラボディもまた、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
【0040】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部を含む抗体断片である。ある特定の態様において、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい)。
【0041】
1アーム抗体は、例えば、WO2005/063816;Martens et al, Clin Cancer Res (2006), 12: 6144に記載されている。アンタゴニスト機能を必要とする病的状態の処置のために、および抗体が二価であることで望ましくないアゴニスト効果を生じる場合に、1アーム抗体(すなわち、単一の抗原結合ドメインを含む抗体)の一価形質は、標的分子に対する抗体の結合時に、アンタゴニスト機能を生じ、かつ/または確実にする。さらに、Fc領域を含む1アーム抗体は、類似した/実質的に同一の抗原結合特性を有するFab形態と比較して、優れた薬物動態特質(インビボにおける半減期の向上および/またはクリアランス速度の低下)を特徴とし、よって従来の一価Fab抗体の使用における主な欠点を克服する。1アーム抗体を作製するための技法には、「ノブ・イン・ホール(knobs-in-holes)」工学が含まれるが、これらに限定されない(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)。
【0042】
多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖および軽鎖対の組換え同時発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、WO1993/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。二重特異性抗体を開発する上での大きな障害の1つは、ハイブリッドハイブリドーマ法および化学的結合法などの伝統的な技術によって十分な質および量の物質を作製することが困難であることであった。異なる重鎖および軽鎖からなる2種類の抗体を宿主細胞において同時発現させると、所望の二重特異性抗体に加えて、抗体副産物の混合物が生じ得る。
【0043】
複数の結合特異性を有する分子によって提供される治療機会に取り組むために、数多くの多重特異性抗体の形式が当技術分野で開発されている。特定の抗体軽鎖または断片と特定の抗体重鎖または断片とが対合する二重特異性抗体を調製するためのいくつかのアプローチが、記載されている。
【0044】
例えば、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)は、抗体CH3ドメインのヘテロ二量体化技術である。これまで、ノブ・イントゥ・ホール技術は、単一の共通の軽鎖(LC)を有するヒト全長二重特異性抗体の産生に適用されてきた(Merchant et al. (1998) Nat Biotechnol. 16: 677-681;Jackman et al. (2010) J Biol Chem. 285: 20850-20859; WO1996/027011)。
【0045】
Schaeferらは、人工的なリンカーを使用せずに、2つの既存抗体に由来する2本の重鎖および2本の軽鎖を組み合わせて二重特異性抗体を作る方法を記載している(PNAS (2011) 108(27): 11187-11192、およびUS2009/0232811)。重鎖のヘテロ二量体化を可能にするノブ・イントゥ・ホール技術に基づいて、二重特異性抗体の半分のFab内における重鎖ドメインと軽鎖ドメインとの交換によって、軽鎖とそれらの同族重鎖との正確な会合が達成される(CrossMab)。この「交差」は、抗原結合親和性を保持するが、軽鎖の誤対合がもはや起こり得ないほど2つのアームを異なるものにする(例えば、WO2009/080251、WO2009/080252、WO2009/080253、およびWO2009/080254を参照されたい)。
【0046】
国際特許公開第WO2011/131746号は、還元条件下でのインキュベーションにより、2つの単一特異性IgG4またはIgG4様抗体間の指向性「Fabアーム」または「半分子」交換を引き起こすために、2つの単一特異性出発抗体のCH3領域に非対称変異が導入された二重特異性抗体を作製するためのインビトロ法を記載している。Stropらは、2つの目的の抗体を別々に発現させて精製し、次いで特定の酸化還元条件下でそれらを混合することによって、安定した二重特異性抗体を産生する方法を記載している(J Mol Biol. (2012) 420: 204-219)。
【0047】
ホモ二量体よりもヘテロ二量体の形成に対して強い優先性を有する他のヘテロ二量体化ドメインを、多重特異性抗体の形式に組み込んでもよい。実例には、例えば、WO2007/147901(Kjaergaardら、イオン相互作用を記載);WO2009/089004(Kannanら、静電的ステアリング効果を記載);WO2010/034605(Christensenら、コイルドコイルを記載)が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
Zhuらは、定常ドメインを完全に欠いている可変ドメイン抗体断片からなるダイアボディ構築物のVL/VH界面において変異を操作し、ヘテロ二量体ダイアボディを作製した(Protein Science (1997) 6:781-788)。同様に、Igawaらも、ダイアボディの選択的発現を促進し、その立体構造異性化を阻害するために、一本鎖ダイアボディのVL/VH界面において変異を操作した(Protein Engineering, Design & Selection (2010) 23:667-677)。
【0049】
二重特異性T細胞誘導(BiTE)分子(例えば、Wolf et al. (2005) Drug Discovery Today 10:1237-1244)を参照されたい)に使用される別の形式は、scFvモジュールに基づく。BiTEでは、特異性の異なる2つのscFv断片が一本鎖上にタンデムに連結されている。この配置は、2コピーの同じ重鎖可変領域を有する分子の産生を妨げる。加えて、それぞれの軽鎖および重鎖の正確な対合を確実にするように、リンカー配置が設計される。
【0050】
上記の少なくとも1つの抗体κ鎖可変領域を含む、任意の形式の任意の抗体分子を、本明細書において記載される少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質として使用することができる。
【0051】
本明細書において記載される抗体は、任意の動物種に由来する任意の種類の軽鎖定常領域を含み得る。2つのクラスの軽鎖(κおよびλ)に関して、可変領域および定常領域は、同じクラス、または互いに異なるクラスに属し得る。例えば、軽鎖は、κ可変領域とκ定常領域との組み合わせを含んでよい。あるいは、軽鎖は、κ可変領域とλ定常領域との組み合わせを含んでよい。加えて、可変領域および定常領域は、同じ動物種、または互いに異なる動物種に由来し得る。例えば、軽鎖は、ヒト由来可変領域とヒト由来定常領域との組み合わせを含んでよい。あるいは、軽鎖は、マウス由来可変領域とヒト由来定常領域との組み合わせを含んでよい。ある特定の態様において、ヒトκ定常領域は配列番号: 1のアミノ酸配列を有し、ヒトλ定常領域は配列番号: 2のアミノ酸配列を有する。
【0052】
本発明において、κ可変領域およびλ定常領域を含む軽鎖を含む抗体が提供される。本発明において、λ可変領域およびκ定常領域を含む軽鎖を含む抗体もまた提供される。さらなる態様において、抗体は、(i)κ可変領域およびκ定常領域、(ii)λ可変領域およびλ定常領域、(iii)κ可変領域およびλ定常領域、または(iv)λ可変領域およびκ定常領域のうちのいずれか1つを含む、別の軽鎖を含む。本発明において、一方がκ可変領域およびλ定常領域を含み、他方が、(i)κ可変領域およびκ定常領域、(ii)λ可変領域およびλ定常領域、(iii)κ可変領域およびλ定常領域、または(iv)λ可変領域およびκ定常領域のうちのいずれか1つを含む、2本の軽鎖を含む、抗体が提供される。本発明において、一方がλ可変領域およびκ定常領域を含み、他方が、(i)κ可変領域およびκ定常領域、(ii)λ可変領域およびλ定常領域、(iii)κ可変領域およびλ定常領域、または(iv)λ可変領域およびκ定常領域のうちのいずれか1つを含む、2本の軽鎖を含む、抗体もまた提供される。抗体は、単一特異性抗体または多重特異性(例えば、二重特異性)抗体であってよい。あるいは、抗体は、例えば、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、一本鎖Fab(scFab)、および1アーム抗体などの抗体断片であってよい。ある特定の態様において、抗体は、κ可変領域としてプロテインL結合モチーフを含む。
【0053】
いくつかの態様において、本明細書において記載される抗体は2本の軽鎖を含み、それらのうちの一方は1つのプロテインL結合モチーフを含む。さらなる態様において、抗体の2本の軽鎖のうちの他方は、1つのプロテインL非結合モチーフを含む。さらなる態様において、抗体の2本の重鎖は同一であってもよいし、または非同一であってもよい。ある特定の態様において、抗体は、単一特異性抗体または多重特異性(例えば、二重特異性)抗体であってよい。単一特異性抗体は通常、2本の同一の軽鎖および2本の同一の重鎖を含む。二重特異性抗体は通常、2本の異なる軽鎖および2本の異なる重鎖を含む。あるいは、二重特異性抗体は、2本の異なる軽鎖および1本の共通の重鎖、または1本の共通の軽鎖および2本の異なる重鎖を含み得る。
【0054】
本発明において、1つのプロテインL結合モチーフを含む抗体(抗体Aと称される)および2つのプロテインL結合モチーフを含む抗体(抗体Bと称される)の両方が、混合物として溶液中に存在し得る。本発明の方法をそのような混合物に対して適用することにより、抗体Aが抗体Bから分離することが予測され得る。ある特定の態様において、抗体Aは、一方がプロテインL結合モチーフを含み他方がプロテインL非結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体であってよい。ある特定の態様において、抗体Bは、両方がプロテインL結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体であってよい。特定の態様において、溶液は2種類の抗体を含んでよく、それらは、(i)一方がプロテインL結合モチーフを含み他方がプロテインL非結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体、および(ii)両方がプロテインL結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体である。別の態様において、溶液は2種類の抗体を含んでよく、それらは、(i)一方がプロテインL結合モチーフを含み他方がプロテインL非結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体、および(ii)両方が、プロテインL結合モチーフを含む(i)に記載された抗体の軽鎖と同じである、2本の軽鎖を含む、抗体である。さらなる態様において、(i)に記載された抗体は二重特異性抗体であり、(ii)に記載された抗体は単一特異性抗体である。さらなる態様において、(i)に記載された抗体の2本の重鎖のうちの一方は、(ii)に記載された抗体の重鎖と同じである。さらなる態様において、(i)に記載された抗体の重鎖と軽鎖の2対のうちの一方は、(ii)に記載された抗体の重鎖と軽鎖の対と同じである。本発明において、(i)および(ii)に記載された抗体は、それぞれ、1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質および2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質として働き得る。本発明の方法を上記2種類の抗体の混合物に対して適用することにより、(i)に記載された抗体が(ii)に記載された抗体から分離することが予測され得る。
【0055】
必要に応じて、溶液は3種類の抗体を含んでよく、それらは、(i)一方がプロテインL結合モチーフを含み他方がプロテインL非結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体、および(ii)両方がプロテインL結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体、および(iii)両方がプロテインL非結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体である。別の態様において、溶液は3種類の抗体を含んでよく、それらは、(i)一方がプロテインL結合モチーフを含み他方がプロテインL非結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体、(ii)両方が、プロテインL結合モチーフを含む(i)に記載された抗体の軽鎖と同じである、2本の軽鎖を含む、抗体、および(iii)両方が、プロテインL非結合モチーフを含む(i)に記載された抗体の軽鎖と同じである、2本の軽鎖を含む、抗体である。さらなる態様において、(i)に記載された抗体は二重特異性抗体であり、(ii)および(iii)に記載された抗体は単一特異性抗体である。さらなる態様において、(i)に記載された抗体の2本の重鎖のうちの一方は、(ii)に記載された抗体の重鎖と同じであり、(i)に記載された抗体の2本の重鎖のうちの他方は、(iii)に記載された抗体の重鎖と同じである。さらなる態様において、(i)に記載された抗体の重鎖と軽鎖の2対のうちの一方は、(ii)に記載された抗体の重鎖と軽鎖の対と同じであり、(i)に記載された抗体の重鎖と軽鎖の2対のうちの他方は、(iii)に記載された抗体の重鎖と軽鎖の対と同じである。本発明において、(i)、(ii)、および(iii)に記載された抗体は、それぞれ、1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質、2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質、およびプロテインL結合モチーフを含まないタンパク質として働き得る。本発明の方法を上記3つの抗体の混合物に対して適用することにより、(i)に記載された抗体が(ii)および(iii)に記載された抗体から分離することが予測され得る。
【0056】
いくつかの態様において、本明細書において記載される1アーム抗体は、プロテインL結合モチーフを含む1本の軽鎖のみを含む。1アーム抗体は通常、1本の軽鎖、1本の重鎖、および1つの重鎖Fc領域を含む。
【0057】
本発明において、1つのプロテインL結合モチーフを含む抗体(抗体Aと称される)および2つのプロテインL結合モチーフを含む抗体(抗体Bと称される)の両方が、混合物として溶液中に存在し得る。本発明の方法をそのような混合物に対して適用することにより、抗体Aが抗体Bから分離することが予測され得る。ある特定の態様において、抗体Aは、プロテインL結合モチーフを含む1本の軽鎖のみを含む抗体であってよい。ある特定の態様において、抗体Bは、両方がプロテインL結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体であってよい。特定の態様において、溶液は2種類の抗体を含んでよく、それらは、(i)プロテインL結合モチーフを含む1本の軽鎖のみを含む抗体、および(ii)両方がプロテインL結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体である。別の態様において、溶液は2種類の抗体を含んでよく、それらは、(i)プロテインL結合モチーフを含む1本の軽鎖のみを含む抗体、および(ii)両方が、プロテインL結合モチーフを含む(i)に記載された抗体の軽鎖と同じである、2本の軽鎖を含む、抗体である。さらなる態様において、(i)に記載された抗体は1アーム抗体であり、(ii)に記載された抗体は全抗体である。さらなる態様において、(i)に記載された抗体の重鎖は、(ii)に記載された抗体の重鎖と同じである。さらなる態様において、(i)に記載された抗体の重鎖と軽鎖の対は、(ii)に記載された抗体の重鎖と軽鎖の対と同じである。本発明において、(i)および(ii)に記載された抗体は、それぞれ、1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質および2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質として働き得る。本発明の方法を上記2種類の抗体の混合物に対して適用することにより、(i)に記載された抗体が(ii)に記載された抗体から分離することが予測され得る。
【0058】
必要に応じて、溶液は3種類のタンパク質を含んでよく、それらは、(i)プロテインL結合モチーフを含む1本の軽鎖のみを含む抗体、(ii)両方がプロテインL結合モチーフを含む2本の軽鎖を含む、抗体、および(iii)2つの重鎖Fc領域を含む二量体タンパク質である。別の態様において、溶液は3種類のタンパク質を含んでよく、それらは、(i)プロテインL結合モチーフを含む1本の軽鎖のみを含む抗体、(ii)両方が、プロテインL結合モチーフを含む(i)に記載された抗体の軽鎖と同じである、2本の軽鎖を含む、抗体、および(iii)2つの重鎖Fc領域を含む二量体タンパク質である。さらなる態様において、(i)に記載された抗体は1アーム抗体であり、(ii)に記載された抗体は全抗体である。さらなる態様において、(i)に記載された抗体の重鎖は、(ii)に記載された抗体の重鎖と同じである。さらなる態様において、(i)に記載された抗体の重鎖と軽鎖の対は、(ii)に記載された抗体の重鎖と軽鎖の対と同じである。本発明において、(i)、(ii)、および(iii)に記載されたタンパク質は、それぞれ、1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質、2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質、およびプロテインL結合モチーフを含まないタンパク質として働き得る。本発明の方法を上記3つのタンパク質の混合物に対して適用することにより、(i)に記載された抗体が(ii)および(iii)に記載されたタンパク質から分離することが予測され得る。
【0059】
いくつかの態様において、例えば、本明細書において記載される一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、scFv二量体、タンデムscFv(taFv)、(scFv)2、一本鎖ダイアボディ(scDb)、一本鎖Fab(scFab)、タンデムscDb(TandAb)、トリアボディ、およびテトラボディなどの抗体断片は、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含む。さらなる態様において、抗体断片は、少なくとも1つのプロテインL非結合モチーフをさらに含み得る。例えば、scFvは通常、1つの軽鎖可変領域および1つの重鎖可変領域を含む。例えば、ダイアボディ、scFv二量体、taFv、(scFv)2、scDb、およびscFabは通常、2つの軽鎖可変領域および2つの重鎖可変領域を含む。例えば、トリアボディは通常、3つの軽鎖可変領域および3つの重鎖可変領域を含む。例えば、TandAbおよびテトラボディは通常、4つの軽鎖可変領域および4つの重鎖可変領域を含む。
【0060】
本発明において、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含む抗体断片およびその多量体(例えば、二量体)の両方が、混合物として溶液中に存在し得る。一般に、scFv、ダイアボディ、scFv二量体、taFv、(scFv)2、scDb、scFab、TandAb、トリアボディ、およびテトラボディなどの一本鎖抗体断片は、例えば、一方の断片上に存在するVHドメインともう一方の断片上に存在するVLドメインとの間の相互作用により、多量体(例えば、二量体)へと会合する傾向がある。本発明の方法をそのような混合物に対して適用することにより、抗体断片がその多量体(例えば、二量体)から分離することが予測され得る。ある特定の態様において、溶液は2種類のタンパク質を含んでよく、それらは、(i)少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含む抗体断片、および(ii)(i)に記載された抗体断片の多量体(例えば、二量体)である。さらなる態様において、(i)に記載された抗体断片は、scFv、ダイアボディ、scFv二量体、taFv、(scFv)2、scDb、scFab、TandAb、トリアボディ、およびテトラボディのうちのいずれか1つである。本発明において、(i)および(ii)に記載されたタンパク質は、それぞれ、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質および少なくとも2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質として働き得る。本発明の方法を上記2種類のタンパク質の混合物に対して適用することにより、(i)に記載された抗体断片が(ii)に記載されたその多量体(例えば、二量体)から分離することが予測され得る。
【0061】
本発明において、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質をコードする単離された核酸が提供される。本発明はまた、そのような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。本発明はまた、そのような核酸を含む宿主細胞を提供する。1つの態様において、宿主細胞は、(1)抗体の軽鎖をコードする第1核酸および抗体の重鎖をコードする第2核酸を含むベクター、または(2)抗体の軽鎖をコードする核酸を含む第1ベクターおよび抗体の重鎖をコードする核酸を含む第2ベクターを含む(例えば、それで形質転換されている)。別の態様において、宿主細胞は、多重特異性抗体の軽鎖および重鎖をコードする2つより多くの核酸を含む、1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)を含む。本明細書において用いられる「宿主細胞」という用語は、そのような細胞の子孫も含め、外因性の核酸が導入されている細胞を指す。本発明はまた、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質を作製する方法を提供し、その方法は、該タンパク質の発現に適した条件下で、該タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞を培養する段階、および必要に応じて宿主細胞(または宿主細胞培養液)から該タンパク質を回収する段階を含む。抗体は、例えば米国特許第4,816,567号に記載されているように、組換え方法および組成物を用いて産生することができる。
【0062】
本明細書において記載される少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質を組換えで産生するには、該タンパク質をコードする核酸を単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のために1つまたは複数のベクター中に挿入する。このような核酸は、従来の手順を用いて(例えば、目的の核酸に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いて)、容易に単離し配列決定することができる。
【0063】
ベクターのクローニングまたは発現に適した宿主細胞には、原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、特にグリコシル化が必要でない場合には、タンパク質を細菌において産生させることができる。細菌における抗体断片の発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照されたい(大腸菌(E. coli)における抗体断片の発現について記載している、Charlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp. 245-254もまた参照されたい)。発現後、タンパク質を細菌細胞ペーストから可溶性画分中に単離することができ、さらに精製することができる。原核生物に加えて、真菌、酵母、植物、昆虫、または哺乳動物細胞などの真核細胞もまた、グリコシル化タンパク質のクローニングまたは発現に適した宿主である。有用な哺乳動物細胞株の例は、COS7、293、BHK、CV1、VERO76、HeLa、MDCK、BRL3A、W138、HepG2、MMT060562、TRI、MRC5、FS4、CHO、Y0、NS0、およびSp2/0細胞である。抗体産生に適したある特定の哺乳動物宿主細胞株の総説については、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003)を参照されたい。
【0064】
別の局面において、本発明の方法は、プロテインLマトリックスから溶出されたタンパク質を回収する段階をさらに含む。ある特定の態様において、本発明は、(a)導電率を下げることにより、少なくとも2種類の異なるタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階、および(b)溶出されたタンパク質のうちの1種類を回収する段階を含む方法を提供し、ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む。ある特定の態様において、本発明は、(a)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、少なくとも2種類の異なるタンパク質を含む溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、(b)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階、および(c)溶出されたタンパク質のうちの1種類を回収する段階を含む方法を提供し、ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む。
【0065】
別の局面において、本発明の方法は、(a)タンパク質を発現する細胞を培養する段階、および(b)該タンパク質を回収する段階をさらに含む。いくつかの態様において、細胞は、適切な条件下で培養された場合に、1種または複数種のタンパク質を発現する。いくつかの態様において、タンパク質のうちのいずれか1種類は、細胞の内部に発現されるか、または細胞培養液中に分泌される。いくつかの態様において、発現されたタンパク質は、細胞または細胞培養液から回収される。該タンパク質を発現する限り、天然の細胞、外因性核酸で形質転換された細胞、ならびにハイブリドーマおよびハイブリッドハイブリドーマ(クアドローマ)などの融合細胞のような、任意の種類の細胞を使用することができる。単一種類の細胞、または2種類もしくはそれ以上の種類の細胞の混合物を培養することができる。ある特定の態様において、本発明は、(a)少なくとも2種類の異なるタンパク質の発現に適した条件下で細胞を培養する段階、(b)該細胞内で発現された該タンパク質を含む溶液を回収する段階、(c)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、および(d)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供し、ここで、タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む。
【0066】
さらなる態様において、ポリペプチドは少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含む。さらなる態様において、そのそれぞれが異なる数のポリペプチドを含む、少なくとも2種類の異なるタンパク質が形成される。ある特定の態様において、本発明は、(a)少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むポリペプチドの発現に適した条件下で細胞を培養する段階、(b)該細胞内で発現された少なくとも2種類の異なるタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、ここで、タンパク質のそれぞれが、異なる数の該ポリペプチドを含む、段階、(c)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、および(d)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。
【0067】
別の局面において、本発明の方法は、(a)核酸を単離する段階、および(b)該核酸で宿主細胞を形質転換する段階をさらに含む。いくつかの態様において、該核酸は、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むポリペプチドをコードする。いくつかの態様において、該核酸は、1つまたは複数の発現ベクターに挿入される。ある特定の態様において、本発明は、(a)少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むポリペプチドをコードする核酸を単離する段階、(b)該核酸を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換する段階、(c)該ポリペプチドの発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階、(d)宿主細胞内で発現された少なくとも2種類の異なるタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、ここで、タンパク質のそれぞれが、異なる数の該ポリペプチドを含む、段階、(e)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、および(f)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。
【0068】
本明細書の以下において、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むポリペプチドをポリペプチドAと称し、プロテインL結合モチーフを含まないポリペプチドをポリペプチドBと称する。ある特定の態様において、そのそれぞれがポリペプチドAとポリペプチドBとの異なる組み合わせを含む、少なくとも3つの異なる多量体(例えば、二量体)タンパク質が形成される。特定の態様において、本発明は、(a)ポリペプチドAおよびポリペプチドBの発現に適した条件下で細胞を培養する段階、(b)該細胞内で発現された少なくとも3種類のタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)少なくとも1つのポリペプチドAおよび少なくとも1つのポリペプチドBを含むヘテロ多量体(例えば、ヘテロ二量体)タンパク質、(ii)少なくとも2つのポリペプチドAを含むホモ多量体(例えば、ホモ二量体)タンパク質、ならびに(iii)少なくとも2つのポリペプチドBを含むホモ多量体(例えば、ホモ二量体)タンパク質である、段階、(c)少なくとも1つのポリペプチドAを含むタンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(d)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。
【0069】
特定の態様において、本発明は、(a)ポリペプチドAをコードする核酸およびポリペプチドBをコードする核酸を単離する段階、(b)該核酸を含む1つまたは複数の発現ベクターで宿主細胞を形質転換する段階、(c)ポリペプチドAおよびポリペプチドBの発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階、(d)宿主細胞内で発現された少なくとも3種類のタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)少なくとも1つのポリペプチドAおよび少なくとも1つのポリペプチドBを含むヘテロ多量体(例えば、ヘテロ二量体)タンパク質、(ii)少なくとも2つのポリペプチドAを含むホモ多量体(例えば、ホモ二量体)タンパク質、ならびに(iii)少なくとも2つのポリペプチドBを含むホモ多量体(例えば、ホモ二量体)タンパク質である、段階、(e)少なくとも1つのポリペプチドAを含むタンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(f)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。
【0070】
いくつかの態様において、本発明における少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、抗体である。ある特定の態様において、抗体は2本の軽鎖を含み、それらのうちの一方は1つのプロテインL結合モチーフを含み(軽鎖Aと称される)、それらのうちの他方は1つのプロテインL非結合モチーフを含む(軽鎖Bと称される)。ある特定の態様において、そのそれぞれが軽鎖Aと軽鎖Bとの異なる組み合わせを含む、3種類の抗体が形成される。特定の態様において、本発明は、(a)軽鎖A、軽鎖B、および1本または複数本の重鎖の発現に適した条件下で細胞を培養する段階、(b)該細胞内で発現された3種類の抗体を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)1本の軽鎖Aおよび1本の軽鎖Bを含む抗体、(ii)2本の軽鎖Aを含む抗体、ならびに(iii)2本の軽鎖Bを含む抗体である、段階、(c)少なくとも1本の軽鎖Aを含む抗体がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(d)導電率を下げることにより、結合している抗体をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。さらなる態様において、(i)に記載された抗体は二重特異性抗体であり、(ii)および(iii)に記載された抗体は単一特異性抗体である。
【0071】
特定の態様において、本発明は、(a)軽鎖Aをコードする核酸、軽鎖Bをコードする核酸、および1つまたは複数の重鎖をコードする核酸を単離する段階、(b)該核酸を含む1つまたは複数の発現ベクターで宿主細胞を形質転換する段階、(c)軽鎖A、軽鎖B、および重鎖の発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階、(d)宿主細胞内で発現された3種類の抗体を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)1本の軽鎖Aおよび1本の軽鎖Bを含む抗体、(ii)2本の軽鎖Aを含む抗体、ならびに(iii)2本の軽鎖Bを含む抗体である、段階、(e)少なくとも1本の軽鎖Aを含む抗体がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(f)導電率を下げることにより、結合している抗体をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。さらなる態様において、(i)に記載された抗体は二重特異性抗体であり、(ii)および(iii)に記載された抗体は単一特異性抗体である。
【0072】
ある特定の態様において、そのそれぞれが異なる数のポリペプチドAを含む、少なくとも3つの異なる多量体(例えば、二量体)タンパク質が形成される。特定の態様において、本発明は、(a)ポリペプチドAの発現に適した条件下で細胞を培養する段階、(b)該細胞内で発現された少なくとも3種類のタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)少なくとも1つのポリペプチドAを含むヘテロ多量体(例えば、ヘテロ二量体)タンパク質、(ii)少なくとも2つのポリペプチドAを含むホモ多量体(例えば、ホモ二量体)タンパク質、および(iii)ポリペプチドAを含まないホモ多量体(例えば、ホモ二量体)タンパク質である、段階、(c)少なくとも1つのポリペプチドAを含むタンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(d)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。
【0073】
特定の態様において、本発明は、(a)ポリペプチドAをコードする核酸を単離する段階、(b)該核酸を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換する段階、(c)ポリペプチドAの発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階、(d)宿主細胞内で発現された少なくとも3種類のタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)少なくとも1つのポリペプチドAを含むヘテロ多量体(例えば、ヘテロ二量体)タンパク質、(ii)少なくとも2つのポリペプチドAを含むホモ多量体(例えば、ホモ二量体)タンパク質、および(iii)ポリペプチドAを含まないホモ多量体(例えば、ホモ二量体)タンパク質である、段階、(e)少なくとも1つのポリペプチドAを含むタンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(f)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。
【0074】
いくつかの態様において、本発明における少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、1アーム抗体である。ある特定の態様において、抗体は、1つのプロテインL結合モチーフを含む1本の軽鎖(軽鎖Aと称される)のみを含む。ある特定の態様において、そのそれぞれが異なる数の軽鎖Aを含む、3つの異なるタンパク質が形成される。特定の態様において、本発明は、(a)軽鎖A、重鎖、および重鎖Fc領域の発現に適した条件下で細胞を培養する段階、(b)該細胞内で発現された3種類のタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)1本の軽鎖Aのみを含む抗体、(ii)2本の軽鎖Aを含む抗体、および(iii)2つの重鎖Fc領域を含む二量体タンパク質である、段階、(c)少なくとも1本の軽鎖Aを含む抗体がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(d)導電率を下げることにより、結合している抗体をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。さらなる態様において、(i)に記載された抗体は1アーム抗体であり、(ii)に記載された抗体は全抗体である。
【0075】
特定の態様において、本発明は、(a)軽鎖Aをコードする核酸、重鎖をコードする核酸、および重鎖Fc領域をコードする核酸を単離する段階、(b)該核酸を含む1つまたは複数の発現ベクターで宿主細胞を形質転換する段階、(c)軽鎖A、重鎖、および重鎖Fc領域の発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階、(d)宿主細胞内で発現された3種類のタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)1本の軽鎖Aのみを含む抗体、(ii)2本の軽鎖Aを含む抗体、および(iii)2つの重鎖Fc領域を含む二量体タンパク質である、段階、(e)少なくとも1本の軽鎖Aを含む抗体がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(f)導電率を下げることにより、結合している抗体をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。さらなる態様において、(i)に記載された抗体は1アーム抗体であり、(ii)に記載された抗体は全抗体である。
【0076】
本発明において、(i)、(ii)、および(iii)に記載されたタンパク質は、それぞれ、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質、少なくとも2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質、およびプロテインL結合モチーフを含まないタンパク質として働き得る。タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含むため、タンパク質のそれぞれがプロテインLマトリックスから別々に溶出され、その結果として、(i)に記載されたタンパク質が、(ii)および(iii)に記載されたタンパク質から分離されることが予測され得る。
【0077】
ある特定の態様において、ポリペプチドAは、2つまたはそれ以上のポリペプチドAを含む多量体(例えば、二量体)タンパク質を形成する。特定の態様において、本発明は、(a)ポリペプチドAの発現に適した条件下で細胞を培養する段階、(b)該細胞内で発現された少なくとも2種類のタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)少なくとも1つのポリペプチドAを含むタンパク質、および(ii)(i)に記載されたタンパク質の多量体(例えば、二量体)タンパク質である、段階、(c)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(d)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。
【0078】
特定の態様において、本発明は、(a)ポリペプチドAをコードする核酸を単離する段階、(b)該核酸を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換する段階、(c)ポリペプチドAの発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階、(d)宿主細胞内で発現された少なくとも2種類のタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)少なくとも1つのポリペプチドAを含むタンパク質、および(ii)(i)に記載されたタンパク質の多量体(例えば、二量体)タンパク質である、段階、(e)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(f)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。
【0079】
いくつかの態様において、本発明における少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、抗体断片である。ある特定の態様において、抗体断片は、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むポリペプチド(ポリペプチドAと称される)から形成される。ある特定の態様において、抗体断片は、2つまたはそれ以上の抗体断片を含む多量体(例えば、二量体)タンパク質に会合する。さらなる態様において、ポリペプチドAは、少なくとも1つのプロテインL非結合モチーフをさらに含み得る。特定の態様において、本発明は、(a)ポリペプチドAの発現に適した条件下で細胞を培養する段階、(b)該細胞内で発現された少なくとも2種類のタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)少なくとも1つのポリペプチドAを含む抗体断片、および(ii)(i)に記載された抗体断片の多量体(例えば、二量体)タンパク質である、段階、(c)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(d)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。さらなる態様において、抗体断片は、scFv、ダイアボディ、scFv二量体、taFv、(scFv)2、scDb、scFab、TandAb、トリアボディ、およびテトラボディのうちのいずれか1つである。
【0080】
特定の態様において、本発明は、(a)ポリペプチドAをコードする核酸を単離する段階、(b)該核酸を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換する段階、(c)ポリペプチドAの発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階、(d)宿主細胞内で発現された2種類のタンパク質を含む溶液を回収する段階であって、それらが(i)少なくとも1つのポリペプチドAを含む抗体断片、および(ii)(i)に記載された抗体断片の多量体(例えば、二量体)タンパク質である、段階、(e)タンパク質がプロテインLマトリックスに結合するように、ある特定の導電率で、該溶液をプロテインLマトリックスと接触させる段階、ならびに(f)導電率を下げることにより、結合しているタンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させる段階を含む方法を提供する。さらなる態様において、抗体断片は、scFv、ダイアボディ、scFv二量体、taFv、(scFv)2、scDb、scFab、TandAb、トリアボディ、およびテトラボディのうちのいずれか1つである。
【0081】
本発明において、(i)および(ii)に記載されたタンパク質は、それぞれ、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質、および少なくとも2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質として働き得る。タンパク質のそれぞれは、異なる数のプロテインL結合モチーフを含むため、タンパク質のそれぞれがプロテインLマトリックスから別々に溶出され、その結果として、(i)に記載されたタンパク質が、(ii)に記載されたタンパク質から分離されることが予測され得る。
【0082】
上記の方法のいずれかによって産生された、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質もまた、本発明に含まれる。
【0083】
ある特定の態様において、本明細書において用いられるプロテインLは、目的のタンパク質のアフィニティー精製のために、固相担体またはマトリックス上に固定化される。プロテインLリガンドを備えた市販のマトリックスは、例えば、HiTrap(商標)プロテインL(GE Healthcare)、Capto(商標)L(GE Healthcare)、Pierce(商標)プロテインLアガロース(Thermo Scientific)、プロテインL-アガロース HC(ProteNova)、TOYOPEARL(登録商標)AF rプロテインL-650F(Tosoh Bioscience)、KanCap(商標)L(Kaneka)、プロテインL樹脂(Genscript)、MabAffinity(登録商標)プロテインL High Flow Beads(ACRO Biosystems)、AmintraプロテインL樹脂(Expedeon)、およびProL(商標)rプロテインLアガロース樹脂(Amicogen)である。プロテインLが元来有する免疫グロブリン結合能を維持する限り、WO2016/096643およびWO2016/096644に記載されているアルカリ安定化プロテインL、または親和性増加型プロテインLなどのプロテインL変種もまた、アフィニティーリガンドとして使用することができる。アガロース、セルロース、デキストラン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸、ラテックス、調節多孔ガラス、および球状シリカなどの物質を、マトリックスとして利用することができる。アフィニティーリガンドをマトリックスに結合する方法は、精製の技術分野において周知である。例えば、Affinity Separations: A Practical Approach(Practical Approach Series), Paul Matejtschuk(Ed.), (Irl Pr: 1997);およびAffinity Chromatography, Herbert Schott (Marcel Dekker, New York: 1997)を参照されたい。
【0084】
本発明において、ある特定の導電率でプロテインLマトリックスに結合しているタンパク質は、導電率を下げることにより、プロテインLマトリックスから溶出させることができる。そのそれぞれが異なる数のプロテインL結合モチーフを含む、2種類またはそれ以上の異なるタンパク質が溶液中に存在する場合、それらのタンパク質は、プロテインLに対するそれらの結合親和性の違いにより、プロテインL結合モチーフの数の昇順にプロテインLマトリックスから溶出されると予測される。タンパク質のそれぞれが溶出される際の導電率値は、必ずしも一定でなくてよく、pHなどの他の要因に応じて変動し得る。ある特定の態様において、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、0.01~16 mS/cmの導電率でプロテインLマトリックスから溶出され得る。ある特定の態様において、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、導電率を16 mS/cmから0.01 mS/cmまで下げる溶出段階中に、プロテインLマトリックスから溶出され得る。少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質がプロテインLマトリックスから溶出される際の実際の導電率値は、例えば、0.01~1 mS/cm、1~2 mS/cm、2~3 mS/cm、3~4 mS/cm、4~5 mS/cm、5~6 mS/cm、6~7 mS/cm、7~8 mS/cm、8~9 mS/cm、9~10 mS/cm、10~11 mS/cm、11~12 mS/cm、12~13 mS/cm、13~14 mS/cm、14~15 mS/cm、または15~16 mS/cmの導電率であってよい。1つの例示的態様において、1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、例えば2~16 mS/cmの導電率でプロテインLマトリックスから溶出され得る。1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質がプロテインLマトリックスから溶出される際の実際の導電率値は、例えば、2~3 mS/cm、3~4 mS/cm、4~5 mS/cm、5~6 mS/cm、6~7 mS/cm、7~8 mS/cm、8~9 mS/cm、9~10 mS/cm、10~11 mS/cm、11~12 mS/cm、12~13 mS/cm、13~14 mS/cm、14~15 mS/cm、または15~16 mS/cmの導電率であってよい。さらなる態様において、2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質よりも低い導電率で、プロテインLマトリックスから溶出され得る。別の例示的態様において、2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、例えば0.01~8 mS/cmの導電率でプロテインLマトリックスから溶出され得る。2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質がプロテインLマトリックスから溶出される際の実際の導電率値は、例えば、0.01~1 mS/cm、1~2 mS/cm、2~3 mS/cm、3~4 mS/cm、4~5 mS/cm、5~6 mS/cm、6~7 mS/cm、7~8 mS/cmの導電率であってよい。プロテインL結合モチーフを含まないタンパク質は、プロテインLマトリックスに結合しないと予測され、フロースルー画分中または第1洗浄段階において溶出されると予測される。本発明において、導電率は、勾配様式で、段階的様式で、または勾配様式と段階的様式との組み合わせで下げることができる。溶出条件の最適化は、当業者の能力の範囲内である。
【0085】
プロテインLを用いてタンパク質を精製する従来法では、タンパク質を、通常はある特定のpHでプロテインLマトリックスに結合させ、次いでpHを下げることによって溶出させる。一方、本発明では、pHを変更することなく、タンパク質をプロテインLマトリックスから溶出させることができる。ある特定の態様において、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質のプロテインLマトリックスからの溶出段階中に、pHは一定のままであるかまたは実質的に変化しないままである。ある特定の態様において、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、溶出の前と後でpHが一定のままであるかまたは実質的に変化しないままで、プロテインLマトリックスから溶出され得る。特定の態様において、少なくとも1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、酸性pHでプロテインLマトリックスから溶出され得る。特定の態様において、1つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質および/または2つのプロテインL結合モチーフを含むタンパク質は、酸性pHでプロテインLマトリックスから溶出され得る。さらなる態様において、酸性pHはpH 7.0未満であり、例えば1.0、1.5、または2.0よりも高く、かつ3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、または7.0よりも低いpHである。特定の態様において、酸性pHはpH 2.4~3.3である。特定の態様において、酸性pHは、例えば、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、および3.3などのpHである。
【0086】
「導電率」という用語は、水溶液が2つの電極間に電流を伝導する能力を指す。溶液中で、電流はイオン輸送によって流れる。したがって、水溶液中に存在するイオンの量が増加するにつれて、溶液の導電率は高くなる。導電率の測定単位はmmhos(mS/cm)である。溶液の導電率は、溶液中のイオンの濃度を変えることによって変更することができる。例えば、所望の導電率を達成するために、溶液中の緩衝剤および/または塩(例えば、NaClもしくはKCl)の濃度を変更することができる。導電率の実際の値は、例えばHORIBAによって販売されている市販の導電率計を用いて測定することができる。
【0087】
本発明において、ある特定の数のプロテインL結合モチーフを含む所望のタンパク質が、異なる数のプロテインL結合モチーフを含む他のタンパク質(副産物)から分離されることが、可能性のある効果の1つとして予測され得る。所望のタンパク質の濃度もまた、精製の前と比較して、組成物中の副産物の濃度に対して増加すると予測され得る。いくつかの態様において、プロテインLマトリックスから溶出された後のタンパク質の純度および/または割合は、例えば、70%もしくはそれ以上、75%もしくはそれ以上、80%もしくはそれ以上、85%もしくはそれ以上、90%もしくはそれ以上、95%もしくはそれ以上、または98%もしくはそれ以上である。タンパク質の純度および/または割合は、疎水性相互作用-高速液体クロマトグラフィー(HIC-HPLC)、イオン交換-高速液体クロマトグラフィー(IEX-HPLC)、陽イオン交換-高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)、逆相-高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、SDS-PAGE、免疫ブロッティング、キャピラリー電気泳動(CE)-SDS、または等電点電気泳動(IEF)などの、当技術分野において認識されている種々の解析法によって決定することができる。あるいは、それは、本発明の実施例4に記載される方法によって決定することもできる。
【実施例0088】
以下は、本発明の方法および組成物の例である。上記に提供される一般的な説明を考慮して、様々な他の態様が実施され得ることが理解される。
【0089】
実施例1:組換え抗体の作製
他所で公表された従来法を用いて、表1および
図1に記載される組換え抗体を作製した。これらには、FreeStyle293-F細胞株またはExpi293細胞株(Thermo Fisher)などの哺乳動物細胞を用いた一過性発現、ならびにプロテインAおよびゲル濾過クロマトグラフィーを用いる精製が含まれる。精製抗体の調製は1x D-PBS(-)で行い、その導電率はおよそ15.4 mS/cmであった。
【0090】
(表1)作製された抗体の機能および構造特性
*抗体#1および#3のアームBは、ヒトCD3εのN末端ペプチドを標的とする。
‡抗体#10のアームBは、ヒトCD3εγまたはヒトCD3εδヘテロ二量体の立体構造エピトープを標的とする。
【0091】
実施例2:導電率およびpHの測定
導電率は導電率計(HORIBA scientific、B-771 COND)またはpH/ORP/CONDメーター(HORIBA scientific、D-74)を用いて測定し、pHはpHメーター(Mettler Toledo、S220-Bio)またはpH/イオンメーター(HORIBA scientific、F-72)を用いて測定した。導電率およびpHはまた、AKTA Avant25またはAKTAexplorer 10S (GE Healthcare)などの精製システムに付随するUnicornソフトウェア(GE Healthcare)を用いてモニターした。
【0092】
実施例3:プロテインL精製のためのシステム
0.7 x 2.5 cm プロテインL-アガロース HC(ProteNova、P-044-1-5)カラム[カラム体積(CV)= 1 mL]または0.7 x 2.5 cm HiTrapプロテインL(GE Healthcare、29-0486-65)カラム[カラム体積(CV)= 1 mL]に接続されたAKTA Avant25またはAKTAexplorer 10S(GE Healthcare)を、それぞれ実施例5~12または実施例13において使用して、流速1 mL/分でプロテインL精製を行った。使用された緩衝液および酸は、各項において記載されている。
【0093】
実施例4:単一特異性抗体および二重特異性抗体を同定するためのタンパク質解析法
Alliance HPLCシステム(Waters)において、陽イオン交換クロマトグラフィー(CIEX)をProPac(商標)WCX-10 LCカラム、10 μm、4 mm x 250 mm(Thermo Fisher)で流速0.5 ml/分にて実施した。カラム温度は40℃に設定した。カラムを移動相A(CX-1 pH勾配緩衝液A、pH5.6、Thermo Fisher)で平衡化した後、4 μgの試料を負荷した。次いで、0%から100%の移動相B(CX-1 pH勾配緩衝液B、pH 10.2、Thermo Fisher)の直線勾配で、カラムを50分間にわたり溶出した。検出はUV検出器(280 nm)で行った。
図2に示されるように、抗体#1および#2、#3および#4、#5および#6、ならびに#7および#8を表すピークの保持時間は、それぞれ明らかに互いに異なった。これにより、それぞれのペアの中から各抗体を同定することが可能となった。プロテインL溶出液中の各抗体の割合は、各ピークの面積から算出した。
【0094】
実施例5:様々な酸性pH下で導電率を下げることによる、1つのVκ1を有する抗体と2つのVκ1を有する抗体の分離(パート1)
抗体#1は、一方のアーム上に、キメラVκ1-Cλ軽鎖(LC)を有する抗HER2を有し、もう一方のアームはλLCを有する抗CD3を有する、二重特異性抗体である。加えて、抗体#2は、両アーム上にキメラVκ1-Cλ LCを有する抗HER2を有する単一特異性抗体である。κLCの定常領域内には、プロテインLと接触する残基が数個しか存在しないため、プロテインL結合にはκLCの可変領域で十分であると考えるのが妥当である[1]。したがって、抗体#1はプロテインLに対する1つの結合部位を有し、抗体#2は2つの結合部位を有する。
【0095】
抗体#1と#2を、それぞれプロテインL結合樹脂に対する一価結合 対 二価結合の違いを用いて分離することができるかどうかを試験するために、各0.5 mgの抗体#1と#2を混合し、プロテインLカラムにアプライした。カラムを1x D-PBS(-)で洗浄した後、以下の4つの条件のうちの1つにおいて、15 CVの直線勾配溶出を行った:[pH 2.4 +/- 0.1] 500 mM Na-酢酸、100 mM NaCl、11.34 +/- 0.01 mS/cm(緩衝液A1)から500 mM Na-酢酸、1.12 +/- 0.01 mS/cm(緩衝液B1);[pH 2.7 +/- 0.1] 150 mM Na-酢酸、100 mM NaCl、11.22 +/- 0.05 mS/cm(緩衝液A2)から150 mM Na-酢酸、0.65 +/- 0.01 mS/cm(緩衝液B2);[pH 3.0 +/- 0.1] 50 mM Na-酢酸、100 mM NaCl、11.02 +/- 0.07 mS/cm(緩衝液A3)から50 mM Na-酢酸、0.37 +/- 0.01 mS/cm(緩衝液B3);[pH 3.3 +/- 0.1] 20 mM Na-酢酸、100 mM NaCl、11.12 +/- 0.07 mS/cm(緩衝液A4)から20 mM 酢酸、0.22 +/- 0.00 mS/cm(緩衝液B4)。結果として、pH 2.7およびpH 3.0下で試験した場合に、2つの異なるタンパク質ピークが観察された(
図3Bおよび3C)。両方のpH条件について、各ピーク画分のタンパク質同一性をCIEXで解析したところ、第1ピークは、一価でプロテインLに結合する抗体#1であり、第2ピークは、二価でプロテインLに結合する抗体#2であった。その一方で、pH 2.4およびpH 3.3では、分離はそれほど明確ではなかった(
図3Aおよび3D)。よって、この結果から、プロテインLカラムに一価で結合する抗体と二価で結合する抗体は、酸性pHの範囲内で、すなわちpH 2.4~pH 3.3で、導電率をおよそ11.34 mS/cmから0.22 mS/cmまで下げることにより、別々に溶出され得ることが示唆された。
【0096】
実施例6:酸性pH下での異なる導電率による、1つのVκ1を有する抗体と2つのVκ1を有する抗体の段階的分離(パート1)
pH 2.7およびpH 3.0下で導電率を徐々に下げることにより、二重特異性抗体(#1)と単一特異性抗体(#2)との分離が観察されたため(
図3)、より実用的な使用を目的としてこの方法を単純化するために、段階的溶出による分離をさらに評価した。pH 2.7およびpH 3.0で段階的溶出を実施するために、第1溶出段階のための導電率を、
図3に示されるような各pH下での直線勾配溶出中の第1ピークから測定された導電率の辺りに設定した。この第1溶出段階は、プロテインLに一価結合する抗体を溶出させることを意図したものである。第1段階に使用された溶出緩衝液は、それぞれ、70%の緩衝液A2と30%の緩衝液B2との混合物(およそ8.50 mS/cm、pH 2.7)または55%の緩衝液A3と45%の緩衝液B3との混合物(およそ6.66 mS/cm、pH 3.0)であった。二価でプロテインLに結合する抗体を溶出させることを目的とした、第2段階のための溶出緩衝液は、それぞれ緩衝液B2(pH 2.7)または緩衝液B3(pH 3.0)であった。
【0097】
抗体#1と#2(各0.5 mg)の混合物をプロテインLカラムに負荷し、1x D-PBS(-)で洗浄し、次いで上記の溶出緩衝液を用いて1段階当たり15 CVで段階的溶出を行った。pH 2.7およびpH 3.0下での各段階において出現したピークを、CIEX法で解析した。結果として、第1溶出段階からのピークは、92.0~94.8%の抗体#1と微量の抗体#2(1.8~5.6%)を含有し、第2溶出段階からのピークは、主として抗体#2(84.7~86.0%)といくらかの抗体#1(14.0~15.3%)を含有した(
図4)。したがって、この結果から、プロテインLカラムに一価で結合する抗体と二価で結合する抗体は、低pHにおいて異なる導電率を用いる段階的溶出によって、別々に溶出され得ることが明らかに実証された。
【0098】
実施例7:酸性pH下で導電率を下げることによる、1本の全長κLCを有する抗体と2本の全長κLCを有する抗体の分離(パート1)
全長κ1 LCがVκ1-CλキメラLCと同様に挙動することを確認するために、それぞれ抗体#1および#2におけるVκ1-CλキメラLCの代わりに全長κ1 LCを有する抗CD3/抗HER2二重特異性抗体(抗体#3)および抗HER2単一特異性抗体(抗体#4)を調製し、プロテインL分離により評価した。結果は、抗体#1および#2を用いて得られた結果(
図3)と同様であると推測されたため、実施例5に記載された条件下で勾配溶出を用いて、pH 2.7のみを試験した。予測通り、2つのピークが観察され、CIEX解析により、第1ピークが抗体#3であり、第2ピークが抗体#4であることが示された(
図5A)。
【0099】
次に、実施例6において行われたように、段階的溶出をpH 2.7下で試験した。第1段階のための溶出緩衝液は、70%の緩衝液A2と30%の緩衝液B2との混合物(およそ8.50 mS/cm、pH 2.7)であり、第2段階のための溶出緩衝液は、100%の緩衝液B2であった。結果として、各段階においてピークが観察された:ピーク1は抗体#3を96.5%含有し、ピーク2は主として抗体#4を84.2%含有していた(
図5B)。この結果は実施例6と同等であり、全長κ1 LCを有する抗体#3とキメラVκ1-Cλ LCを有する抗体#1とは、プロテインLに対する結合表面の数の点で同じであるため、妥当な結果であった。したがって、プロテインLに対する一価結合と二価結合との分離は、全長κ1 LCとキメラVκ1-Cλ LCとの間で同様に実施され得る。
【0100】
実施例8:様々な酸性pH下で導電率を下げることによる、1つのVκ1を有する抗体と2つのVκ1を有する抗体の分離(パート2)
実施例5および6から得られた結果を確認するために、抗体の別のセットを調製した:一方のアーム上にキメラVκ1-Cλ LC(抗IL6R)を有し、もう一方のアームがκ2 LC(抗GPC3)を有する二重特異性抗体(抗体#5)、および両アーム上に、キメラVκ1-Cλ LCを有する抗GPC3を有する単一特異性抗体(抗体#6)。注目すべきことには、κ2 LCはプロテインLに結合できないことが公知であり[1]、したがって抗体#5はプロテインLに一価で結合し得るのに対して、抗体#6は二価で結合し得る。
【0101】
実施例5と同様に、各0.5 mgの抗体#5と#6を混合してプロテインLカラムにアプライし、1x D-PBS(-)で洗浄し、記載されるような4つの異なるpH下で、15 CVの直線導電率勾配溶出により溶出した。結果として、pH 2.4、pH 2.7、およびpH 3.0下で試験した場合に、2つの異なるタンパク質ピークが観察されたのに対して、pH 3.3に示された分離はより小さかった(
図6)。明確な分離を示した3つのpHについて、各ピーク画分のタンパク質を同定するための解析をCIEXにより行ったところ、第1ピークは、一価でプロテインLに結合する抗体#5であり、第2ピークは、二価でプロテインLに結合する抗体#6であった。よって、この結果により、プロテインLカラムに一価で結合する抗体と二価で結合する抗体は、酸性pHの範囲内で、すなわちpH 2.4~pH 3.3で、導電率をおよそ11.34 mS/cmから0.22 mS/cmまで下げることにより、別々に溶出され得るという、実施例5で得られた結果が支持される。
【0102】
実施例9:酸性pH下での異なる導電率による、1つのVκ1を有する抗体と2つのVκ1を有する抗体の段階的分離(パート2)
#5と#6の抗体ペアでも段階的分離が可能であることを確認するために、pH 2.7およびpH 3.0での段階的溶出をさらに評価した。導電率勾配実験における第1ピークの導電率値(
図6)を考慮して、実施例6に記載される方法に従って、それぞれ、70%の緩衝液A2/30%の緩衝液B2、pH 2.7(およそ8.54 mS/cm)または50%の緩衝液A3/50%の緩衝液B3、pH 3.0(およそ6.13 mS/cm)を第1溶出段階に使用し、それぞれ緩衝液B2または緩衝液B3を第2溶出段階に使用した。結果として、両方のpH下で、第1溶出段階からのピークは高純度(95.3~98.0%)の抗体#5を含有し、第2溶出段階からのピークは主として抗体#6(およそ80%)を含有した(
図7)。したがって、この結果から、低pHでの異なる導電率による段階的溶出によって、プロテインLに一価で結合する抗体が、二価で結合する抗体から分離され得ることがさらに確認された。
【0103】
実施例10:酸性pH下で導電率を下げることによる、1本の全長κLCを有する抗体と2本の全長κLCを有する抗体の分離(パート2)
pH 3.0において、それぞれ抗体#5および#6におけるVκ1-CλキメラLCの代わりに全長κ1 LCを有する抗IL6R/抗GPC3二重特異性抗体(抗体#7)および抗IL6R単一特異性抗体(抗体#8)を用いることにより、実施例7と同じセットの実験を行った。予測通り、2つのピークが観察され、CIEX解析により、第1ピークが抗体#7であり、第2ピークが抗体#8であることが示された(
図8A)。
【0104】
次に、段階的溶出を同じpH下で試験した。第1段階のための溶出緩衝液は、50 mM Na-酢酸、60 mM NaCl、pH 3.0(7.40 mS/cm)であり、第2段階のための溶出緩衝液は緩衝液B3であった。結果として、予測通り、各段階においてピークが観察された:ピーク1は抗体#7をおよそ100.0%含有し、ピーク2は86.6のパーセンテージで主として抗体#8を含有した(
図8B)。これにより、プロテインLに対する一価結合と二価結合との分離は、全長κ1 LCとキメラVκ1-Cλ LCとの間で同様に実施され得るという概念が再度支持される。
【0105】
実施例11:酸性pH下で導電率を下げることによる、全長κLCを有する1アーム抗体と2アーム抗体の分離
本発明において、プロテインL結合部位の数の違いが、分離にとって重要である。そのような状況において、1つのプロテインL結合部位を有する1アーム抗体と2つのプロテインL結合部位を有する2アーム抗体もまた、同じ概念の下で分離され得るはずである。このことを試験するために、全長κ1 LCを有する1アーム抗IL6R抗体(抗体#9)と2アーム抗IL6R単一特異性抗体(抗体#8)各0.5 mgを混合してプロテインLカラムにアプライし、1x D-PBS(-)で洗浄し、実施例5で用いられたのと同じ緩衝液条件下でpH 3.0にて、30 CVの直線導電率勾配溶出により溶出した。結果として、予測通り、2つのピークが観察された:第1ピークは7.47 mS/cmにおいて出現し、第2ピークは1.48 mS/cmにおいて出現した(
図9A)。1アーム抗体と2アーム抗体の分子量は異なるため(それぞれ約1x10E5 対 約1.5x10E5)、各ピークからの画分を、SDS-PAGEにより非還元条件下で解析した。SDS-PAGE解析により、第1ピークが抗体#9であり、第2ピークが抗体#8であることが示された(データは示さず)。
次に、段階的溶出を同じpH下で試験した。第1段階に使用された溶出緩衝液は、50 mM Na-酢酸、50 mM NaCl、pH 3.0(およそ6.23 mS/cm)であり、第2段階のための溶出緩衝液は緩衝液B3であった。結果として、各段階においてピークが観察された(
図9B):ピーク1および2からの画分の非還元SDS-PAGE解析によると、予測通り、ピーク1は1アーム抗体#9のみを含有し、ピーク2は主として2アーム抗体#8を含有した(
図9C)。これにより、プロテインLに対する一価結合と二価結合との分離は、1アーム抗体と2アーム抗体との間で同様に実施され得るという概念が再度支持される。
【0106】
実施例12:酸性pH下で導電率を下げることによる、単量体BiTE抗体とオリゴマーBiTE抗体の分離
BiTE抗体は、異なる抗体の2つの一本鎖可変断片(scFv)からなる融合タンパク質である。scFv中にVκ1ドメインを有することで、BiTEもまたプロテインLによって精製され得る。その一方で、BiTE抗体はFcドメインを有さないために、通常はプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製されない。発現時に、BiTE抗体はある割合で凝集体を形成する傾向があることが公知であり、したがって単量体と凝集体とを分離するための簡便な方法が所望される。低pHにおいて導電率を徐々に下げることにより、プロテインLカラムが単量体BiTE抗体とオリゴマーBiTE抗体を分離することができるかどうかを試験するために、Vκ1ドメインを有する1つのscFvとVλドメインを有する他のscFvとを有するBiTE抗体(抗体#10)を調製した。本発明において用いられた単量体形のBiTE抗体は、単一のプロテインL結合部位を有するのに対して、オリゴマーBiTE抗体は、1つの凝集体中に2つより多くのプロテインL結合部位を含むことに留意されたい。
このことを試験するために、21.93%のオリゴマーを含有する精製BiTE抗体1.0 mgを、プロテインLカラムに適用した。カラムを1x D-PBS(-)で洗浄した後、以下の緩衝液:150 mM Na-酢酸、100 mM NaCl、11.22 +/- 0.05 mS/cm(緩衝液A2)および150 mM Na-酢酸、0.65 +/- 0.01 mS/cm(緩衝液B2)を用いてpH 2.7下で、30 CVの直線勾配溶出を行った。結果として、2つの異なるタンパク質ピークが観察された(
図10A)。単量体とオリゴマーとの間には明確なサイズの違いがあるため、ピーク1および2からの画分を、TSKgel G3000SW
XLカラム(Tosoh Bioscience)を用いるSEC-HPLCによって解析した。ピーク面積を算出したところ、ピーク1からの画分は、高純度(93.75~100%)の単量体BiTE抗体を含有し、ピーク2は、いくらかの単量体と共に主としてオリゴマーからなった(
図10B)。よって、この結果から、低pHにおいて導電率を下げることによるプロテインL分離が、BiTE抗体の単量体形とオリゴマー形を分離し得ることが明らかに実証された。この結果から、本発明において記載される方法が、分子当たり1つのプロテインL結合部位を含む任意の他のタンパク質の単量体とオリゴマーとの分離にも適用できることが示唆される。
【0107】
実施例13:異なるプロテインL結合カラムの使用
実施例5~12では、ProteNova製のプロテインL-アガロース HCという名称のプロテインL結合樹脂を使用して、分離実験を行った。本発明におけるプロテインL分離法が、普遍的に、異なるプロテインL結合カラムにも同様に適用できることを確認するために、異なるプロテインLカラム:GE HealthcareのHiTrapプロテインLを用いて、抗体#5と#6の分離を行った。注目すべきことには、ProteNovaの樹脂に用いられているプロテインLのアミノ酸配列は、少なくともアルカリ耐性を加えるために改変されているはずであるため、ProteNovaの樹脂とGE Healthcareの樹脂に用いられているプロテインLのアミノ酸配列は、わずかに異なっている可能性がある。
HiTrapプロテインLを分離に使用することができるかどうかを試験するために、各0.5 mgの抗体#5と#6を混合してHiTrapプロテインLカラムにアプライし、1x D-PBS(-)で洗浄し、実施例5の緩衝液と同じ緩衝液を用いてpH 3.0下で、20 CVの直線導電率勾配溶出により溶出した。結果として、2つの異なるタンパク質ピークが観察された(
図11A)。各ピーク画分のタンパク質を同定するための解析をCIEXにより行ったところ、8.68 mS/cmにおける第1ピークは、一価でプロテインLに結合する抗体#5であり、5.81 mS/cmにおける第2ピークは、二価でプロテインLに結合する抗体#6であった。次の段階として、導電率勾配実験における第1ピークの導電率値(
図11A)を考慮して、75%の緩衝液A3/25%の緩衝液B3、pH 3.0(およそ8.86 mS/cm)を第1溶出段階に使用し、緩衝液B3を第2溶出段階に使用した。結果として、第1溶出段階からのピークは高純度(99.61%から)の抗体#5を含有し、第2溶出段階からのピークは主として抗体#6(およそ94%)を含有した(
図11B)。したがって、この結果から、低pHにおいて異なる導電率を用いるプロテインL分離が、種々のプロテインL結合樹脂によって実施され得ることが示唆された。
【0108】
参考文献
1. Graille, M., Stura, E. A., Housden, N. G., Beckingham, J. A., Bottomley, S. P., Beale, D., Taussig, M. J., Sutton, B. J., Gore, M. G., and Charbonnier, J. (2001) Structure 9, 679-687
【0109】
明確に理解できるように、例示および実施例によって前述の本発明をある程度詳細に説明してきたが、これらの説明および実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用されるすべての特許および科学文献の開示内容は、全体として参照により明確に組み入れられる。
抗体κ鎖可変領域が、ヒト可変κサブグループ1(VK1)、ヒト可変κサブグループ3(VK3)、ヒト可変κサブグループ4(VK4)、マウス可変κサブグループ1(VK1)、およびそれらの変種からなる群より選択される、請求項3記載の方法。