(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185157
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】電子部品搭載用パッケージ、電子装置及び電子モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20221207BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01S5/022
H01L23/12 Q
H01L23/12 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019194295
(22)【出願日】2019-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】北原 光
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MB01
5F173MC20
5F173MD23
5F173MD58
5F173ME22
(57)【要約】
【課題】高周波特性が向上された電子部品搭載用パッケージを提供することを目的とする。良好な高周波特性を有する電子装置及び電子モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】電子部品搭載用パッケージは、信号線(11p)と外部導体(11o)とを有する同軸線路(11)と、同軸線路の延長方向から延長方向に交差する方向へ曲がる信号配線(20)を有するマイクロストリップ基板(20N)とを備え、信号配線(20)は、信号線(11p)の一端に接続される側の端部である第1部分(21)と、前記延長方向と交差する方向に延びる第2部分(22)と、第1部分(21)と第2部分(22)との間に位置する第3部分(23)とを有し、第1部分の幅(L1)は信号線の幅(La1)及び第2部分の幅(L11)よりも広く、信号配線の外周側における第3部分(23)の縁が外に凸の曲線である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線と外部導体とを有する同軸線路と、
前記同軸線路の延長方向から前記延長方向に交差する方向へ曲がる信号配線を有するマイクロストリップ基板とを備え、
前記信号配線は、
前記信号線の一端に接続される側の端部である第1部分と、
前記延長方向と交差する方向に延びる第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間に位置する第3部分と、
を有し、
前記第1部分の幅は前記信号線の幅及び前記第2部分の幅よりも広く、
前記信号配線の外周側における前記第3部分の縁が外に凸の曲線である、
電子部品搭載用パッケージ。
【請求項2】
前記第1部分の幅は、前記外部導体の内径よりも広い、
請求項1記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項3】
前記信号配線は、前記第1部分から前記第3部分にかけて、前記同軸線路の延長方向に直交する方向の幅が漸次狭まる、
請求項1又は請求項2に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項4】
前記外周側における前記第1部分の縁が外に凸の曲線である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項5】
前記外周側における前記第1部分の縁と、前記外周側における前記第3部分の縁とが、曲率が連続する1つの曲線上に位置する、
請求項4に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項6】
前記外周側における前記第1部分の縁と、前記外周側における前記第3部分の縁とが、同一円周上に位置する、
請求項5に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項7】
前記外周側における前記第2部分の縁が外に凸の曲線である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項8】
前記外周側における前記第1部分、前記第3部分及び前記第2部分の各縁が、曲率が連続する1つの曲線上に位置する、
請求項7に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項9】
前記外周側における前記第1部分、前記第3部分及び前記第2部分の各縁が、同一円周上に位置する、
請求項8に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項10】
前記信号配線の内周側における前記第1部分、前記第3部分及び前記第2部分の縁には、直線及び内に凸の角部が含まれる、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項11】
前記内周側における前記第1部分及び前記第3部分の縁は、前記同軸線路の延長方向に平行な直線を含む、
請求項10記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項12】
前記内に凸の角部は、前記内周側における前記第2部分又は前記第3部分の縁に位置する内に凸の直角部である、
請求項10又は請求項11に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項13】
前記信号配線の内周側における前記第2部分又は前記第3部分の縁は、内に凸の曲線を含み、
前記内に凸の曲線の曲率中心が、前記外に凸の曲線の曲率中心よりも、前記信号配線に近い、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項14】
前記マイクロストリップ基板に垂直な方向から見て、前記信号線の中心線は、前記第1部分の幅方向の中心よりも、前記外周側に位置する、
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項15】
前記外部導体の内面の前記外周側における一端が、前記第1部分の前記外周側における一端よりも外方に位置し、
前記第1部分の内周側における一端が、前記外部導体の内面の前記内周側における一端よりも内方に位置する、
請求項14記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項16】
前記同軸線路は、前記第1部分に接続される第1同軸線路と、第2同軸線路とを含み、
前記信号配線は、更に、前記第2同軸線路の信号線に接続される側の端部である第4部分と、前記第2部分と前記第4部分の間に位置する第5部分とを有し、
前記第4部分及び前記第5部分は、前記外周側における縁が外に凸の曲線であり、
前記外周側における前記第1部分、前記第3部分、前記第2部分、前記第5部分及び前記第4部分の縁が、曲率が連続する1つの曲線上に位置する、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項17】
前記外周側における前記第1部分、前記第3部分、前記第2部分、前記第5部分及び前記第4部分の縁が、同一円周上に位置する請求項16記載の電子部品搭載用パッケージ。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の電子部品搭載用パッケージと、
前記信号配線に接続される電子部品と、
を備える電子装置。
【請求項19】
請求項18に記載の電子装置と、
前記電子装置が搭載されるモジュール用基板と、
を備える電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品搭載用パッケージ、電子装置及び電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、TO(Transistor Outline)-CAN型の半導体レーザ装置が示されている。この装置は、同軸線路とマイクロストリップラインとが接続された構造を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同軸線路の信号線とマイクロストリップ基板の信号配線とが接続される構造を有する電子部品搭載用パッケージにおいては、高周波特性の更なる改善が望まれる。
【0005】
本開示は、高周波特性が向上された電子部品搭載用パッケージを提供することを目的とする。さらに、本開示は、良好な高周波特性を有する電子装置及び電子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電子部品搭載用パッケージは、
信号線と外部導体とを有する同軸線路と、
前記同軸線路の延長方向から前記延長方向に交差する方向へ曲がる信号配線を有するマイクロストリップ基板とを備え、
前記信号配線は、
前記信号線の一端に接続される側の端部である第1部分と、
前記延長方向と交差する方向に延びる第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間に位置する第3部分と、
を有し、
前記第1部分の幅は前記信号線の幅及び前記第2部分の幅よりも広く、
前記信号配線の外周側における前記第3部分の縁が外に凸の曲線である。
【0007】
本開示に係る電子装置、
上記の電子部品搭載用パッケージと、
前記信号配線に接続される電子部品と、
を備える。
【0008】
本開示に係る電子モジュールは、
上記の電子装置と、
前記電子装置が搭載されるモジュール用基板と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高周波特性が向上された電子部品搭載用パッケージを提供できる。さらに、本開示によれば、良好な高周波特性を有する電子装置及び電子モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態1の電子部品搭載用パッケージの一部を示す平面図である。
【
図3】
図2のB-B線の位置における電子部品搭載用パッケージの断面図である。
【
図4】マイクロストリップ基板の信号配線のパターンを説明する平面図である。
【
図5】マイクロストリップ基板の信号配線のパターンを説明する平面図である。
【
図6】マイクロストリップ基板の信号配線のパターンを説明する平面図である。
【
図7】実施形態の複数の信号配線のパターンと比較例1との高周波特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】実施形態1の信号配線のパターンと比較例2との反射損失のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図10】実施形態1の信号配線のパターンと比較例2との挿入損失のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図11】比較例2の信号配線のパターンを示す平面図である。
【
図12】本開示の実施形態2に係る電子部品搭載用パッケージの一部を示す平面図である。
【
図13】本開示の実施形態に係る電子装置及び電子モジュールを示す一部破断の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、本開示の実施形態1の電子部品搭載用パッケージの一部を示す平面図である。
図2は、
図1のA-A線における断面図である。
図3は、
図2のB-B線における断面図である。
図3では、接合部材E1、E2が省略されている。
【0013】
以下では、電子部品搭載用パッケージ1の各方向を互いに直交するXYZの三軸方向を用いて示す。Y方向は同軸線路11の中心軸Oa(
図3)が延びる方向、X方向はマイクロストリップ基板20Nの第1主面20Naに平行でかつY方向に直交する方向、Z方向は第1主面20Naに垂直な方向である。Y方向は同軸線路11の延長方向に相当し、X方向はY方向と交差する方向に相当し、Z方向はマイクロストリップ基板20Nに垂直な方向に相当する。また、信号配線の曲がった部分の外側に沿った縁を外周側、曲がった部分の内側に沿った縁を内周側と呼ぶ。また、外方とは、X-Y平面上において信号配線20の内周側から外周側へ向く方向を意味し、内方とは、X-Y平面において信号配線20の外周側から内周側を向く方向を意味する。
【0014】
実施形態1の電子部品搭載用パッケージ1は、高周波駆動される電子素子、あるいは、高周波信号が入力又は出力される電子素子が搭載されるパッケージである。電子部品搭載用パッケージ1は、同軸線路11、12と、マイクロストリップ基板20Nとを備える。同軸線路11、12は、ピン状の信号線11p、12pと、信号線11p、12pを囲う円筒内面を有する外部導体11o、12oとを含む。外部導体11oは、信号線11pを信号線11pの径方向から囲う導体であり、同軸線路11に伝送される信号の電界成分をシールドする導体を意味する。円筒内面より外側の形状は特に制限されない。信号線11pと外部導体11oの内面とは同軸であり、信号線11pと外部導体11oとの間には、ガラスなどの絶縁体又は誘電体が介在する。すなわち、信号線11pの外周と外部導体11oの内面とは、絶縁体又は誘電体と接している。もう一方の信号線12pと外部導体12oとについても同様である。マイクロストリップ基板20Nは、第1主面20Naに位置する信号配線20と、第1主面20Naとは反対の第2主面20Nbに位置する接地導体28とを有する。
【0015】
電子部品搭載用パッケージ1は、さらに、ベースブロック2と、ステージブロック3とを備える。電子部品搭載用パッケージ1は、TO-CAN型のパッケージであり、ベースブロック2は、金属から構成され、ステムと呼んでもよい。ステージブロック3は、ベースブロック2と一体化された金属から構成され、ヒートシンクとして機能してもよい。ベースブロック2には、電子部品71をモニタリングするためのその他の電子部品に接続される電極ピン61a、61b、及び接地ピン61c(
図1)が固定されていてもよい。電子部品搭載用パッケージ1は、ベースブロック2に接合されてステージブロック3を覆うキャップ65(
図13)を備えていてもよい。
【0016】
同軸線路11、12はベースブロック2に位置する。同軸線路11、12の外部導体11o、12oは、ベースブロック2と一体化されていてもよい。すなわち、本実施形態においては、ベースブロック2に、外部導体11o、12oの2つの円筒内面が位置している。同軸線路11、12の中心軸Oa、Ob(
図3)は、マイクロストリップ基板20Nの第1主面20Naと略平行で、かつ、第1主面20NaからZ方向に離れて位置する(
図2)。同軸線路11の中心軸Oaと、同軸線路12の中心軸Obとは平行であってもよい。
【0017】
マイクロストリップ基板20Nはステージブロック3に搭載されている。信号配線20の一端21eは、一方の同軸線路11に対向し、導電性を有する接合部材E1を介して信号線11pと接続される。信号配線20の他端24eは、他方の同軸線路12に対向し、導電性を有する接合部材E2を介して信号線12pと接続される。
【0018】
信号配線20(又はその信号経路と言ってもよい)は、一端21eから他端24eにかけて、同軸線路11の軸方向と平行なY方向からX方向へ曲がり、さらに、X方向から同軸線路12の軸方向と平行な-Y方向へ曲がる。信号配線20は、途中に分断部20Kを有し、電子部品71(
図13)の2つの端子が分断部20Kの一方と他方とにそれぞれ電気的に接続される。分断部20Kでは、電子部品71を介して分断部20Kを跨るように信号が流れる。電子部品71を搭載した場合の信号配線20の高周波特性は、電子部品71を搭載せずに分断部20Kを導体で埋めた場合の信号配線20の高周波特性と比例するものである。以下では、分断部20Kが導体で埋められている場合について特性を説明する。
【0019】
<信号配線のパターン>
図4~
図6は、信号配線20のパターンを説明する平面図である。
図4及び
図6中、同軸線路11、12の先端部を仮想線で示す。信号配線20は、第1部分21と第2部分22と第3部分23とを有する。第1部分21は、同軸線路11に接続される側の端部である。第2部分22は、同軸線路11の延長方向(Y方向)に直交するX方向に延びている。第3部分23は、第1部分21と第2部分22との間に位置する。さらに、信号配線20は、同軸線路12に接続される側の端部である第4部分24と、第4部分24と第2部分22との間に位置する第5部分25とを有する。続いて、各部分の構成(A)~(H1)を列挙する。ここで構成とは、形状、大小関係、配置関係、又はそれら複数を含む概念である。
【0020】
(A)第1部分21の幅L1は、同軸線路11の信号線11pの幅La1よりも広い(
図4を参照)。信号線11p、12pの幅、並びに、信号配線20の幅とは、X-Y平面に沿った方向で、信号の進行方向に垂直な方向の長さを意味する。例えば、同軸線路11の信号線11pの幅La1は、X-Y平面に沿った方向でかつ信号線11pの軸方向に垂直な方向における長さとしてもよく、同様に、第1部分21の幅L1は、X-Y平面に沿った方向でかつ信号線11pの軸方向に垂直な方向における長さとしてもよい。なお、本実施形態においては、信号線11pは断面が円形状の円柱形状であるため、信号線11pの幅La1は一定である。第1部分21の幅L1は、同軸線路11の外部導体11oの内径La2よりも広くてよい。
【0021】
(A1)第1部分21の幅L1は、同軸線路11のインピーダンスよりも、第1部分21のインピーダンスを大きくする長さを有する。例えば、同軸線路11は25Ωである。第1部分21のインピーダンスを25Ωにする幅が665μmであるところ、第1部分21の幅L1は750μmであってもよい。すなわち、第1部分21のインピーダンスは、21.5Ω~24.5Ωなど、同軸線路11のインピーダンスの92%~100%であってもよい。
【0022】
(A2)第1部分21の幅L1は、第2部分22の幅L11、L12、L13よりも大きい。第1部分21の幅L1は、第2部分22の最小の幅L11、L13よりも大きければよく、さらに、第2部分22の最大の幅L12よりも大きくてもよい。第2部分22の幅は、例えば、信号の進行方向に直交する方向の長さを意味する。より具体的には、
図4に示す実施形態においては、第2部分22の幅は、Y方向に沿う第2部分22の長さである。
【0023】
(B)第3部分23の外周側の縁F23は、外に凸の曲線である(
図5を参照)。曲線とは、角部及び直線を含まない線を意味してもよい。角部とは、線が折れ曲がった部分を意味する。例えば、角部とは、直線と直線とが交わる部分のほか、曲線と曲線とが交わる部分であってもよい。信号配線20の外周側の縁が、外に凸の曲線であるとは、信号配線20の外に向かって凸の曲線、より具体的には、外方に向かって凸の曲線、すなわち、内周側から外周側に向かって凸の曲線であることを意味する。後述する各部分における外に凸の曲線についても、同様に解することができる。
【0024】
(C)信号配線20は、第1部分21から第3部分23にかけて、X方向の幅L1~L6が漸次狭まる(
図4を参照)。より具体的には、
図4に示す実施形態においては、第1部分21から第3部分23の途中にかけて、信号配線20のX方向の幅Lが漸次狭くなっている。なお、第3部分23は、信号経路に沿った始端から終端に渡って、信号配線20のX方向の幅Lが漸次狭くなっていてもよい。
【0025】
(D)第1部分21の外周側の縁F21が外に凸の曲線である(
図5を参照)。さらに、第1部分21及び第3部分23の外周側の縁F21、F23は、曲率が連続する1つの曲線上(例えば円弧、楕円の外形線)に位置していてもよい。或る部分の縁が或る曲線上に位置するとは、例えば、実質的に或る部分の縁の全部が或る曲線に重なることを意味する。
【0026】
(E)第2部分22の外周側の縁F22は、外に凸の曲線である(
図5を参照)。第1部分21、第3部分23及び第2部分22の外周側の各縁F21、F23、F22は、曲率が連続する1つの曲線上(例えば円弧、楕円の外形線)に位置していてもよい。
【0027】
(E1)第2部分22は、信号経路に沿った始端と終端の幅L11、L13よりも、信号経路の中盤の幅L12の方が広い(
図4を参照)。第2部分22の幅は、例えば、信号の進行方向に直交する方向の長さを意味する。より具体的には、
図4に示す実施形においては、第2部分22の幅は、Y方向に沿う第2部分22の長さである。中盤の幅L12の箇所のインピーダンスが、同軸線路11、12のインピーダンスと整合される。
【0028】
(F)第1部分21、第3部分23及び第2部分22の内周側の縁I21、I23、I22には、直線d1、d2及び内に凸の角部a1が含まれる(
図5を参照)。例えば、第1部分21及び第3部分23の内周側の縁I21、I23はY方向に平行な直線d1を含んでいてもよい。第2部分22は、X方向に平行な直線d2を含んでいてもよい。第2部分22、第3部分23又はこれらの間の内周側の縁I22、I23は、内に凸の直角部a1を含んでいてもよい。すなわち、直線d1及び直線d2の間に、内に凸の角部a1が位置していてもよい。ここで、信号配線20の内周側の縁が、内に凸の角部を含むとは、信号配線20の内周側の縁の一部に、信号配線20の内に向かって凸の角、より具体的には、外方に向かって凸の角、すなわち、内周側から外周側に向かって凸の角を含むことを意味する。後述する内に凸の角部についても同様に解することができる。
【0029】
(G)Z方向から見て、信号線11pの中心軸Oaは、第1部分21の幅方向の中心線x1よりも外周側に位置する(
図6を参照)。中心軸Oaと中心線x1のZ方向から見た位置の差δ1は、信号線11pの幅に対して15%以内であってもよい。
【0030】
(G1)外部導体11oの内面の外周側における一端p11が、第1部分21の外周側における一端p1よりも外方に位置し、第1部分21の内周側における一端p2が、外部導体11oの内面の内周側における一端p12よりも内方に位置していてもよい(
図6を参照)。なお、ここでいう外方及び内方は上述した通りであり、より具体的には、外方とは、X-Y平面上において第1部分21の内周側から外周側へ向く方向を意味し、内方とは、X-Y平面において第1部分21の外周側から内周側を向く方向を意味する。
【0031】
(G2)
図1~
図6とは異なるが、Z方向から見て、信号線11pの外周側の一端p13(
図6を参照)が、第1部分21の外周側の一端p1とX方向において同位置であってもよく、一端p13が一端p1よりも外方に位置していてもよい。
【0032】
(H)信号配線20の第4部分24及び第5部分25は、上記の(A)~(G2)と同様の構成を有している。ただし、第4部分24及び第5部分25に適用する場合、上記の(A)~(G2)の記載において、第1部分21は第4部分24、第2部分22は第5部分25、同軸線路11は同軸線路12と読み替えられる。
【0033】
(H1)信号配線20の第1部分21、第3部分23、第2部分22、第5部分25及び第4部分24の外周側の各縁F21、F23、F22、F25、F24は、曲率が連続する1つの曲線上(例えば円周上、楕円の外形線状など)に位置する(
図5を参照)。
【0034】
<各構成の作用>
信号配線20に上記の{(A)、(A2)及び(B)}、又は、{(A1)、(A2)及び(B)}の構成を採用することによって、マイクロストリップ基板20Nにおけるインピーダンスを整合値とする際に、同軸線路11とマイクロストリップ基板20Nとの不連続性とこの不連続性に続いて存在する信号経路の曲がった形状とに起因して生じる信号の電力損失を、低減できるという作用を及ぼす。すなわち、同軸線路11とマイクロストリップ基板20Nとの間では、信号の伝搬モードの切り替わりがあり、通常では、信号配線20の容量成分が不足する。そこで、(A2)の構成と、(A)又は(A1)の構成とを採用することで、第2部分においてインピーダンスを整合値に近づけてインピーダンスの不整合に起因する反射量を低減しつつ、伝搬モードの切り替わり部分における信号配線20の容量成分を増やして、伝搬モードの切り替わりに起因する信号の電力損失を低減することができる。さらに、(A)又は(A1)の構成を採用し信号配線20の幅が広くなると、曲がり箇所における外周側において信号の電力損失が増加しやすくなる。しかし、本実施形態の信号配線20においては、加えて(B)の構成を採用することで、外周側における信号の電力損失の増加を低減することができる。その結果、電子部品搭載用パッケージ1において、総合的に信号の電力損失を低減できる。
【0035】
(C)の構成によれば、(A)又は(A1)の構成を採用することで生じる、同軸線路11のインピーダンスと、第1部分21のインピーダンスとの不一致を、徐々に解消でき、かつ、信号配線20のうち電子部品71を搭載する箇所において所望のインピーダンスを得る際に、インピーダンスの急激な変化が生じるのを低減する。さらに、X方向の幅が漸次狭まる箇所が、第1部分21から始まることで、インピーダンスが不一致の区間を短くすることができる。したがって、インピーダンスの不一致に基づく信号の反射を低減し、反射特性の劣化を低減できる。
【0036】
(D)の構成によれば、信号が伝送される経路(信号経路)の外周側がより緩やかになるため、信号経路の曲がりに起因する電力損失をより低減できる。さらに、(E)の構成によれば、第3部分23から第2部分22にかけて信号が伝送される経路の外周側も緩やかになるため、この部分の信号経路の曲がりに起因する電力損失も低減できる。また、(E)の構成によれば、各部分の外周側の縁の曲率を一定にすることで、信号配線20の形状変化割合が一定となるため、より反射損失を低減できる。
【0037】
(E1)の構成においても、(E)の構成の効果と同様の効果を得ることができる。
【0038】
(F)の構成によれば、信号配線20の内周側において信号の電力損失が生じることを低減しつつ、(C)の構成(第1部分21及び第3部分23にかけたX方向の幅を漸次狭める構成)を実現しやすく、より短い区間でインピーダンスの差を解消できる。このとき、信号配線20の内周側においては、外周側に比べて、伝送路の角張った縁の影響は少なく、この影響よりも、(C)の構成を短い区間で適用できる方が、総合的な高周波特性を向上できる。特に、第1部分21から第3部分23にかけた内周側の直線が、同軸線路11の延長方向と平行に近く、角が90°以上であると、伝送路の内周側の縁の影響がより少なく、かつ、(B)、(D)の構成についての外周側の曲線を緩やかにしつつ、(C)の構成を短い区間で実現できるという効果が得られる。その結果、設計の自由度が高まり、マイクロストリップ基板20Nの小型化が図れる。
【0039】
(G)、(G1)、(G2)又はこれら複数の構成によれば、信号の伝送モードの切り替わりに対して、信号配線20の幅L1を大きくして信号の電力損失を小さくする場合に、信号配線20が外周側に広がってマイクロストリップ基板20Nの全体のサイズが大きくなることを低減できる。
【0040】
(H)、(H1)又はこれら両方の構成によれば、上述した作用が、信号配線20の第4部分24及び第5部分25においても得ることができる。なお、2つの同軸線路11、12に逆位相の差動信号が入力される場合には、信号配線20の第1部分21、第3部分23及び第2部分22の信号特性は、信号配線20の第4部分24、第5部分25及び第2部分22の信号特性とほぼ一致する。
【0041】
<シミュレーション1>
図7は、実施形態の複数の信号配線のパターンと比較例1との高周波特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
図8は、比較例1の構成を示す一部破断の平面図である。
【0042】
シミュレーション1では、信号配線20の外周側の縁F21、F23、F20、F25、F24が位置する円の半径(図の凡例において「R」と記す)が異なる複数の実施形態の信号配線のパターンと、
図8の比較例1の信号配線のパターンとで、反射損失の模擬計測を行った。実施形態の複数の信号配線のパターンは、前記円の半径Rとして1000μm~1500μmを採用した。これら複数の信号配線のパターンは、前記円の半径が異なる他は、
図1~
図3と同様の構成を有している。
【0043】
比較例1のパッケージ201は、マイクロストリップ基板220Nの信号配線220が、実施形態1と同様に、一方の同軸線路211の軸方向と平行なY方向からX方向に曲がり、さらに、X方向からもう一方の同軸線路212の軸方向と平行な-Y方向へ曲がる。一方、比較例1の信号配線220は、実施形態1と異なり、外周側の縁が曲線を含まず、直線と角部とを有する屈曲したパターンを採用している。さらに、比較例1の信号配線220は、信号経路に沿ってほぼ同一の幅を有し、よって、信号配線220のインピーダンスが信号配線220の全長に亘って同軸線路211、212のインピーダンスと整合されている。
【0044】
実施形態1の電子部品搭載用パッケージ1は、
図7に示すように、比較例1と比べて、良好な反射損失特性が得られる。特に、50GHz周辺などの高周波帯域において、比較例1と比べて10dB程度又はそれ以上の反射損失の低減が確認された。
【0045】
<シミュレーション2>
図9及び
図10は、
図1~
図3に示す実施形態1の信号配線のパターンと比較例2の信号配線のパターンとの高周波特性のシミュレーション結果を示すグラフである。具体的には、
図9は、実施形態1の信号配線のパターンと比較例2との反射損失のシミュレーション結果を示すグラフである。
図10は、実施形態1の信号配線のパターンと比較例2との挿入損失のシミュレーション結果を示すグラフである。
図11は、比較例2の信号配線のパターンを示す平面図である。
【0046】
シミュレーション2では、実施形態1の信号配線20のパターンと、
図11の比較例2の信号配線250のパターンとについて、反射損失と挿入損失とを比較した。比較例2の信号配線250は、実施形態1と同様の外周側の縁F250を有する一方、信号配線250の幅が一定になるように、内周側に大きな半径の曲線の縁I250を有する。すなわち、比較例2の信号配線250は、上述の(A)、(A1)及び(B)の構成を有しているが、上述の(C)の構成(幅L1~L6が漸次狭まる構成、
図4を参照)を有さない。比較例2において、同軸線路とマイクロストリップ基板250Nとの接合構造及び相対位置は、実施形態1と同様である。
【0047】
図10に示すように、50GHz以上の高周波帯域において、比較例2は、内周側の縁I250が緩やかになる分、挿入損失が改善している。しかし、実施形態1と比較して、挿入損失の改善は小さい(例えば55GHzで0.5dB程度、60GHzで1.9dB程度)。一方、
図9に示すように、50GHz以上の高周波帯域において、実施形態1のパターンは、比較例2のパターンと比べて、大幅に反射損失が改善される(例えば55GHzで2.8dB程度、60GHzで4.3dB程度)。したがって、実施形態1のパターンの方が、比較例2のパターンに比べて、総合的に良好な高周波特性が得られることが確認される。
【0048】
以上、実施形態1の電子部品搭載用パッケージ1及び該パッケージ1の信号配線20に用いることが可能なパターンについて、
図1~
図11を用いて説明した。
【0049】
なお、
図4に示すように、第3部分23には、信号経路に沿った始端から終端の間に極小の幅L8を有する部分を含んでもよい。このような極小の幅L8を有した第3部分23であっても、信号線を徐々に細くすることができるとともに、信号配線20の途中に幅が狭い区間があることで、変換部で追加した容量を打ち消すことができる。
【0050】
また、第1部分21の幅L1は、信号経路に沿った始端から終端にかけて一定であってもよい。このような形状であれば、変換部で不足する容量を更に補うことができる。
【0051】
さらに、
図4~
図6に示す実施形態においては、第2部分22の幅L11~L13は、信号経路に沿った始端から中盤にかけて増加したのち、終端にむかって減少しているが、第2部分22の形状はこれに限らない。例えば、第2部分22の幅も、信号経路に沿った始端から終端にかけて一定であってもよい。このような形状であっても、第3部分23の幅を徐々に減少させることができ、反射損失を改善することができる。
【0052】
(実施形態2)
図12は、本開示の実施形態2に係る電子部品搭載用パッケージの一部を示す平面図である。実施形態2の電子部品搭載用パッケージ1Aは、マイクロストリップ基板20Nの信号配線20Aの内周側の縁に小半径の曲線c1、c2が含まれる点で、実施形態1と異なる。実施形態1と同様の構成要素については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0053】
実施形態2の信号配線20Aの内周側の縁は、内に凸の曲線c1、c2を含んでいる。曲線c1、c2の曲率中心p21、p23は、それぞれ外周側の縁の曲率中心p22、p24よりも信号配線20Aに近い。より具体的には、曲線c1の曲率中心p21は、外周側の縁F21、F23、F22の曲率中心p22よりも、信号配線20Aに近い。この構成により、内周側の縁I21、I23、I22に直線d1、d2を含みつつ、実施形態1の(C)の構成(幅L1~L6が漸次狭まる構成、
図4を参照)と同様の構成が実現される。第4部分24及び第5部分25の内周側の縁I24、I25についても同様である。ここで、曲率中心とは、対象の曲線と円周とが重なる円の中心を意味する。本実施形態においては、信号配線20Aの内周側の縁から角部が排斥されることで、信号経路の挿入損失の改善が図られる。
【0054】
(電子装置及び電子モジュール)
図13は、本開示の実施形態に係る電子装置及び電子モジュールを示す一部破断の側面図である。本開示の実施形態に係る電子装置60は、電子部品搭載用パッケージ1と、マイクロストリップ基板20Nに搭載された電子部品71と、を備える。電子部品71は、信号配線20の第2部分22に搭載される。電子部品71は、例えばレーザダイオードであるが、発光ダイオード、その他、高周波駆動される素子、高周波信号を入力又は出力する素子など、様々な素子が適用されてもよい。キャップ65は、電子部品71から光線を出力する窓65sを有する。
【0055】
本開示の実施形態に係る電子モジュール100は、モジュール用基板110に電子装置60を実装して構成される。モジュール用基板110には、電子装置60に加え、他の電子装置、電子素子及び電気素子などが実装されていてもよい。電子装置60は、信号線11p、12p、電極ピン61a、61b及び接地ピン61cがモジュール用基板110に接合され、同軸線路11、12に、インピーダンス整合された信号線が接合される。このように、電子装置60は、モジュール用基板110に実装される際に、信号線11p、12p、電極ピン61a、61b及び接地ピン61cによって支持される。モジュール用基板110は、FPC(Flexible printed circuits)基板であってもよいし、可撓性を有さない基板であってもよいし、両方を含んでいてもよい。
【0056】
本実施形態の電子装置60及び電子モジュール100によれば、電子部品搭載用パッケージ1の改善された高周波特性により、良好な高周波特性を得ることができる。
【0057】
以上、本開示の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られるものでない。
【0058】
例えば、上記実施形態では、TO-CAN型のパッケージを示したが、同軸線路とマイクロストリップ基板とを有するパッケージであれば、その形式は制限されない。
【0059】
また、上記実施形態では、2つの同軸線路11、12がマイクロストリップ基板20Nの信号配線20と接合される例を示したが、1つの同軸線路と信号破線とが接合される構成であってもよい。また、2つの同軸線路は互いの軸方向が平行でなくてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、信号線11pは、幅が一定である円柱状であるものを示したが、信号線11pの形状はこれに制限されず、幅が変化する円形状であってもよい。この場合、信号線11pのうち信号配線20と接合する端部における信号線11pの幅La1よりも、第1部分21の幅L1が広ければよい。信号線12pも同様である。
【0061】
また、上記実施形態では、外部導体11oの内面は、径が一定である円筒形状であるものを示したが、外部導体11oの内面の形状はこれに制限されず、径が変化する円筒形状であってもよい。この場合、外部導体11oの内面のうち信号配線20側に位置する端部において、上述した第1部分21との位置関係を満たせばよい。外部導体12oも同様である。
【0062】
その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 電子部品搭載用パッケージ
2 ベースブロック
3 ステージブロック
11、12 同軸線路
11p、12p 信号線
11o、12o 外部導体
20 信号配線
20N マイクロストリップ基板
21 第1部分
21e 一端
22 第2部分
23 第3部分
24 第4部分
24e 他端
25 第5部分
28 接地導体
E1、E2 接合部材
F21~F25 外周側の縁
I21~I25 内周側の縁
L1~L6、L8、L11、L12、L13、La1 幅
La2 内径
d1、d2 直線
a1 内に凸の角部(内に凸の直角部)
c1、c2 内に凸の曲線
p21、p22 曲率中心
Oa、Ob 中心軸
x1 中心線
p1 第1部分の外周側の一端
p2 第1部分の内周側の一端
p11 外部導体の内面の外周側における一端
p12 外部導体の内面の内周側における一端
p13 信号線の外周側の一端
c1、c2 曲線
60 電子装置
71 電子部品
100 電子モジュール
110 モジュール用基板