(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185160
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20221207BHJP
【FI】
H01S5/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019207968
(22)【出願日】2019-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳昭
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AD05
5F173AL04
5F173MA08
5F173MC12
5F173MC13
5F173MD12
5F173MD16
5F173MD17
5F173MD18
5F173MD63
5F173MD65
5F173MD84
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光半導体素子の光出射部に加わる応力の集中が緩和された光半導体装置を提供する。
【解決手段】光半導体装置100は、金属ロウ材40を介してサブマウント10に実装された半導体レーザアレイ20を備えている。サブマウントの前方側面10cには、複数の溝部が左右方向に互いに間隔をあけて形成されている。上面視で、半導体レーザアレイの光出射部21aは、溝部の底面から前方に突出して配置されている。金属ロウ材からなるフィレット50は、複数の溝部のそれぞれに埋め込まれるとともに、光出射部の下面の一部を覆っている。半導体レーザアレイの表面に形成された表面電極と金属ロウ材とが接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と前記支持部材の上面に金属ロウ材を介して実装された光半導体素子とを少なくとも備えた光半導体装置であって、
前記支持部材の前方側面には、前記支持部材の上面から下方にそれぞれ延びる複数の溝部がその延在方向と交差する方向に互いに間隔をあけて形成されており、
上面視で、前記光半導体素子の光出射部は、前記溝部の底面から前方に突出して配置され、
前記金属ロウ材からなるフィレットは、前記複数の溝部のそれぞれに埋め込まれるとともに、前記光出射部の下面の一部を覆っており、
前記光半導体素子の表面に形成された表面電極と前記金属ロウ材とが接合されていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光半導体装置において、
前記複数の溝部のそれぞれは、前記支持部材の上面から前記支持部材の下面まで延びていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光半導体装置において、
前記複数の溝部のそれぞれは、前記支持部材の上面から前記支持部材の前方側面の途中まで延びていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光半導体装置において、
前記複数の溝部のそれぞれの底面は、前記溝部が下方に向かうにつれて浅くなるように傾斜していることを特徴とする光半導体装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
互いに隣り合う前記溝部の間は、突起部として構成され、
前記突起部の上面と前記光半導体素子とが、前記金属ロウ材を介して接触していることを特徴とする光半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光半導体装置において、
上面視で、前記溝部の底面は、前記突起部の側面と直角をなすように形成されていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項7】
請求項5に記載の光半導体装置において、
上面視で、前記溝部の底面は、前記突起部の側面と鋭角をなすように設けられていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項8】
請求項5に記載の光半導体装置において、
上面視で、前記溝部の底面は、前記突起部の側面と鈍角をなすように設けられていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項9】
請求項5に記載の光半導体装置において、
上面視で、前記溝部は、半円状または半楕円状であることを特徴とする光半導体装置。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
前記突起部の上面と側面とは、傾斜面を介して連続していることを特徴とする光半導体装置。
【請求項11】
請求項5ないし10のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
前記光半導体素子は、複数の単位発光部を有しており、
前記複数の単位発光部は、互いに間隔をあけて前記複数の溝部の配列方向と平行な方向に配列されており、
前記表面電極は、複数の分割電極で構成され、前記複数の分割電極のそれぞれは、前記複数の単位発光部のそれぞれを覆うとともに、互いに間隔をあけて前記複数の溝部の配列方向と平行な方向に配列されており、
側面視で、前記単位発光部は前記突起部と重ならないように配置される一方、前記分割電極の端面は前記突起部の互いに対向する2つの側面の内側に位置していることを特徴とする光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光半導体装置に関し、特に、支持部材とその上面に金属ロウ材を介して実装された光半導体素子とを少なくとも備えた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザ素子に代表される光半導体素子は、金-スズ系合金(以下、AuSn合金という)等の金属ロウ材を接着材としてサブマウント等の支持部材の上面に接合、実装される。このとき、光半導体素子の光出射部が溶融した金属ロウ材に埋没しないようにするために種々の構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光出射部が設けられた光半導体素子の前端部をサブマウントの側面から外側に突出するように配置する構成が開示されている。また、サブマウントから突き出した光半導体素子の下面からサブマウントの側面にかけて金属ロウ材からなるフィレットを形成し、光半導体素子とサブマウントとの接合を強固にしている。また、フィレットを介して、光出射部から外部に放熱している。
【0004】
また、特許文献2には、接着層である金属ロウ材の材質を光半導体素子の光出射部とそれ以外の部分とで変更する構成が開示されている。光出射部側に設けられた金属ロウ0の融点をそれ以外の部分よりも高くすることで、光半導体素子とサブマウントとの接合時に、光出射部側で金属ロウ材が濡れ拡がって光出射面を覆うのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-318475号公報
【特許文献2】特開2017-191899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光半導体素子の動作時には、光出射部での発熱量が最も大きくなる。また、光半導体素子の光出力が大きいと、光出射部での発熱量もそれに応じて大きくなる。
【0007】
しかし、特許文献2に開示された従来の構成では、光出射部側の接合層が溶融しにくく、光半導体素子とサブマウントとの接合不良あるいは未接合が生じるおそれがあった。このようなことが生じると、光出射部からサブマウントを介して熱が放散されにくくなり、光半導体素子の特性が変化したり、動作寿命が低下したりするおそれがあった。また、特許文献2の実施例に記載されるように、前端部側の接着層であるAuSn合金において、Auの組成比がSnとの共晶組成比を越える場合、その融点は大幅に高くなる。このため、光半導体素子とサブマウントとの接合温度が高くなる。その結果、光半導体素子に残留する歪が増大し、動作寿命が低下するおそれがあった。
【0008】
また、特許文献1に開示される従来の構成では、光半導体素子とサブマウントとの接合時に金属ロウ材が冷却、凝固される過程において、フィレットの端部から加わる引っ張り応力が光出射部の一部に集中し、光半導体素子にクラック等を生じさせて破壊に至らしめるおそれがあった。
【0009】
しかし、特許文献1には、このような応力集中による光半導体素子の破壊やその防止策等について何ら開示されていない。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、フィレットから光半導体素子の光出射部に加わる応力の集中が緩和された光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る光半導体装置は、支持部材と前記支持部材の上面に金属ロウ材を介して実装された光半導体素子とを少なくとも備えた光半導体装置であって、前記支持部材の前方側面には、前記支持部材の上面から下方にそれぞれ延びる複数の溝部がその延在方向と交差する方向に互いに間隔をあけて形成されており、上面視で、前記光半導体素子の光出射部は、前記溝部の底面から前方に突出して配置され、前記金属ロウ材からなるフィレットは、前記複数の溝部のそれぞれに埋め込まれるとともに、前記光出射部の下面の一部を覆っており、前記光半導体素子の表面に形成された表面電極と前記金属ロウ材とが接合されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、フィレットを介して、光出射部から支持部材や外部雰囲気に効率良く放熱できる。また、フィレットが複数の溝部に埋め込まれることで、フィレットから加わる引っ張り応力が光出射部の一部に集中して、光半導体素子が破壊されるのを抑制できる。また、光半導体素子の動作寿命が低下するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光半導体装置によれば、光半導体素子の破壊や動作寿命の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係る光半導体装置の斜視図である。
【
図3A】光半導体装置の要部を前から見た模式図である。
【
図3B】
図3AのIIIB-IIIB線での断面模式図である。
【
図4】比較のための光半導体装置における応力集中の状態を示した図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る光半導体装置の斜視図である。
【
図7A】光半導体装置の要部を前から見た模式図である。
【
図7B】
図7AのVIIB-VIIB線での断面模式図である。
【
図8A】比較のための溝部を上から見た模式図である。
【
図8B】変形例1に係る溝部を上から見た模式図である。
【
図8C】変形例1に係る別の溝部を上から見た模式図である。
【
図9】サブマウントの前方側面における金属ロウ材の流れを示す模式図である。
【
図10】変形例2に係るサブマウントの要部の模式図である。
【
図11A】変形例2に係る光半導体装置の要部を前から見た模式図である。
【
図12】変形例2に係る別のサブマウントの要部の模式図である。
【
図13】変形例2に係るさらなる別のサブマウントの要部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0016】
(実施形態1)
[光半導体装置の構成]
図1は、本実施形態に係る光半導体装置の斜視図を、
図2は、サブマウントの斜視図をそれぞれ示す。
図3Aは、光半導体装置の要部を前から見た模式図を、
図3Bは、
図3AのIIIB-IIIB線での断面模式図をそれぞれ示す。
【0017】
なお、説明の便宜上、
図1及び
図3A,3Bにおいて、半導体レーザアレイ20の構造を一部省略して図示している。また、なお、以降に示す図面において、光半導体装置100及び各部の構造は模式図として例示的に示している。したがって、各図において、各部の形状、位置、配置関係、寸法は実際の関係とは異なるものである。
【0018】
また、以降の説明において、半導体光共振器30の共振器方向を前後方向と、溝部11または突起部12の配列方向を左右方向と、前後方向及び左右方向とそれぞれ直交する方向を上下方向とそれぞれ呼ぶことがある。また、前後方向において、光出射面である前端面21aが設けられた側を前側または前方と、その反対側を後側または後方とそれぞれ呼ぶことがある。上下方向において、半導体光共振器30が設けられた側を上側または上方と、サブマウント10が設けられた側を下側または下方とそれぞれ呼ぶことがある。
【0019】
図1に示すように、光半導体装置100は、サブマウント(支持部材)10と金属ロウ材40と半導体レーザアレイ(光半導体素子)20とを有しており、サブマウント10の上面10aに金属ロウ材40を介して半導体レーザアレイ20が接合、実装された構造となっている。
【0020】
図1,2に示すように、サブマウント10は、導電性材料からなる板状の部材である。本実施形態におけるサブマウント10の材質は、銅タングステン合金(CuW)である。また、図示しないが、前方側面10c及び上面10aを含むサブマウント10の表面にはメッキ層が形成されている。このメッキ層は、金属ロウ材40の濡れ性を向上させるために形成される。メッキ層として、例えば、ニッケル(Ni)と金(Au)の積層体が形成される。
【0021】
サブマウント10の前方側面10cには、左右方向に互いに間隔をあけて複数の溝部11が形成されている。複数の溝部11のそれぞれは、サブマウント10の上面10aから下面10bまで上下方向に一定の幅で延びて形成されている。また、互いに隣り合う溝部11の間は、突起部12として構成されている。本実施形態では、溝部11の左右方向の幅W1(以下、単に溝部11の幅W1という)は150μmに、突起部12の左右方向の幅W2(以下、単に突起部12の幅W2という)は75μmにそれぞれ設定されている(
図3A参照)。また、溝部11の前後方向の深さD1(以下、単に溝部11の深さD1という)は30μmに設定されている(
図3B参照)。本実施形態では、溝部11の幅W1と突起部12の幅W2と溝部11の深さD1とがサブマウント10の上面10aから下面10bまで一定となるように、溝部11及び突起部12が形成されている。
【0022】
なお、溝部11の幅W1と突起部12の幅W2と溝部11の深さD1の寸法は前述の値に特に限定されるものではなく、後で述べる半導体光共振器30及び表面電極37の左右方向の幅やフィレット50から半導体レーザアレイ20の光出射部21が受ける応力の大きさによって適宜変更されうる。
【0023】
また、本願明細書において、「一定」とは、部材の加工公差を含んで一定という意味であり、厳密な意味で一定であることまでを意味するものではない。
【0024】
金属ロウ材40は、例えば、AuSn合金からなり、
図2に示すように、所定の形状にパターニングされて、サブマウント10の上面10aに設けられている。半導体レーザアレイ20とサブマウント10を加熱接合する際、金属ロウ材40が押し拡げられ、その一部がサブマウント10の上面10aから前方側面10cに流れ出てフィレット50(
図1参照)が形成される。なお、
図3A及び後で示す
図7A、
図11Aにおいて、突起部12の上面に連続する溝部11の上端は、フィレット50に隠れて見えないため、フィレット50の内側で左右方向に延びる破線として示している。
【0025】
図3Bに示すように、半導体レーザアレイ20は、溝部11の底面11aから前方に突出して配置されている。半導体レーザアレイ20の前端面21aは、レーザ光が出射される光出射面であり、サブマウント10の前方側面10cから前方に突出した部分は、半導体レーザアレイ20の光出射部21に相当する。フィレット50は、サブマウント10の前方側面10cから光出射部21の下面にかけて形成されている。また、
図1及び
図3Aに示すように、フィレット50は、複数の溝部11のそれぞれを埋め込むように、この場合は、サブマウント10の上面10aから所定の距離だけ下方に下がった部分までを埋め込むように形成されている。
【0026】
なお、
図3Bに示す突き出し長さD2は、溝部11の底面11aから半導体レーザアレイ20の前端面21aまでの前後方向に沿った長さである。また、溝部の底面11aから前方をプラスと、後方をマイナスとして突き出し長さD2を設定している。溝部の深さD1は、サブマウント10に対する半導体レーザアレイ20の実装位置精度と突き出し長さD2に基づいて設定される。本実施形態では、前述の実装位置が最大で±10μmばらつくと仮定して、実際の突き出し長さD2を+5μm以上確保するように、溝部11の深さD1が設定されている。したがって、実装位置精度や、確保したい突き出し長さD2の値によって、溝部11の深さD1は適宜変更されうる。また、本実施形態では、突き出し長さD2がプラスの値に設定されている。このことにより、光出射部21の下面の一部(突起部12の上面12aと平面視で重なる、左右方向及び前後方向で構成される複数の領域)は、金属ロウ材40を介して突起部12の上面12aにさらに支持される。
【0027】
半導体レーザアレイ20は、
図3Aに示す半導体光共振器30が左右方向に沿って所定の間隔をあけて複数配列された端面放射型の光半導体素子である。つまり、半導体光共振器30は、半導体レーザアレイ20の単位発光部である。なお、本実施形態の半導体レーザアレイ20は、一つの単位発光部としての半導体光共振器30が42個集積された構造となっている所謂レーザダイオードバー(LDバー)である。半導体レーザアレイ20に含まれる半導体光共振器30の個数は適宜変更されうる。
【0028】
図3Aに示すように、半導体光共振器30は、活性層32と電流狭窄層33とコンタクト層34とを含む半導体積層体31の裏面と表面に、それぞれ裏面電極36と表面電極37とが形成されてなる。半導体積層体31は、図示しない基板や、活性層32を上下方向に挟むクラッド層をさらに有しており、半導体積層体31の各層は化合物半導体材料からなる。コンタクト層34は表面電極37と、半導体積層体31の裏面は裏面電極36とそれぞれオーミック接触している。互いに隣り合う半導体光共振器30は、分離溝35により熱的に、かつ電気的に分離されている。表面電極37は複数の分割電極37aで構成されており、分割電極37aは半導体光共振器30毎に設けられている。よって、互いに隣り合う分割電極37aは、左右方向に所定の間隔をあけて形成されている。ただし、複数の分割電極37aのそれぞれに加わる電圧は同じである。
【0029】
ここで、半導体レーザアレイ20の動作について説明する。表面電極37と裏面電極36との間にしきい値以上の電圧が印加されると、活性層32に電流が注入され、注入された電流は電流狭窄層33によって活性層32と平行な方向に閉じ込められる。
【0030】
注入された電流によって、活性層32のエネルギー障壁に応じた波長の光が発生する。発生した光は、図示しない一対のクラッド層により活性層32に光学的に閉じ込められる。また、半導体レーザアレイ20の前端面21aと後端面には互いに反射率の異なる誘電体膜が積層された誘電反射層(図示せず)が形成されており、半導体光共振器30はレーザ光の共振器を構成している。後端面よりも反射率が低い前端面21aからレーザ光が出射される。なお、
図1及び
図3Aには、レーザ光の出射点を発光点として示している。
【0031】
半導体レーザアレイ20の左右方向の幅は10mm程度であり、前後方向の長さは4mm程度である。1つの半導体光共振器30における左右方向の幅は225μmで、分割電極37aの左右方向の幅W3(以下、単に分割電極37aの幅W3という)は185μmである。つまり、分割電極37aの幅W3は、溝部11の幅W1よりも狭くなるように設定されている。
【0032】
また、
図3Aに示すように、溝部11と半導体光共振器30の発光点とは、左右方向に沿った中心位置が、前後方向の前方向から見て揃うように配置されている。言い換えると、前後方向の前方向から見て、半導体光共振器30の発光点は突起部12と重ならないように配置されている。また、溝部11の幅W1は、サブマウント10に対する半導体レーザアレイ20の実装位置精度と溝部11の加工精度とに基づいて設定される。本実施形態では、前述の実装位置が最大で±10μmばらつき、溝部11の加工公差が最大で±10μmであると仮定して、突起部12と分割電極37aとの左右方向の重なり量が、最小でも2.5μmを確保するように、溝部11及び突起部12の幅W1,W2や分割電極37aの幅W3がそれぞれ設定されている。したがって、実装位置精度や、溝部11の加工精度によって、これらの値は適宜変更されうる。
【0033】
また、
図3Aに示すように、側面視で、分割電極37aの端面は、突起部12の互いに対向する両側面12bの内側に位置している。
【0034】
次に、フィレット50から半導体レーザアレイ20に加わる応力について説明する。
【0035】
図4は、比較のための光半導体装置における応力集中の状態を示し、光半導体装置100は、サブマウント10の前方側面10cに溝部11が形成されていない点を除いては、
図1及び
図3A,3Bに示す光半導体装置100と同じ構造を有している。
【0036】
半導体レーザアレイ20とサブマウント10とが接合される過程において、金属ロウ材40は一度、溶融、軟化した後に冷却されて凝固する。この冷却凝固過程で、
図4に示すように、半導体レーザアレイ20の光出射部21のうち、フィレット50の端部が位置する部分において、引っ張り応力が集中し、半導体レーザアレイ20を構成する半導体材料にせん断応力として作用する。このせん断応力が半導体材料の破壊点を超える場合には、半導体レーザアレイ20の光出射面である前端面21aにクラックが生じて、半導体レーザアレイ20が破壊されるに到る。つまり、半導体レーザアレイ20の初期不良が増加し、また、動作寿命が低下するおそれがあった。また、せん断応力が前述の破壊点を超えない場合でも、半導体レーザアレイ20には大きな歪が発生し、例えば、レーザ光の光軸が所定の位置からずれるおそれがあった。
図4に示す例では、応力が集中するのは、フィレット50の左右方向の両端部の計2箇所である。
【0037】
一方、本実施形態の光半導体装置100によれば、
図3Aに示すように、フィレット50は、複数の溝部11にそれぞれに埋め込まれている。フィレット50をこのように形成することで、フィレット50が左右方向に分割される。言い換えると、フィレット50の端部が左右方向に沿って複数形成される。また、溝部11の内面、つまり、溝部11の底面11aと両側面の計3面でフィレット50と接触しているため、接合工程後の冷却過程で、フィレット50の凝固収縮を抑制できる。このことにより、フィレット50から半導体レーザアレイ20の光出射部21に加わる引っ張り応力は、
図4に示す場合に比べて低減されるとともに、左右方向で分散されて引っ張り応力の集中が緩和される。つまり、半導体レーザアレイ20に加わるせん断応力が緩和される。このことにより、半導体レーザアレイ20が破壊されるのを抑制できる。また、半導体レーザアレイ20に大きな歪が発生するのを抑制し、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。
【0038】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係る光半導体装置100は、サブマウント(支持部材)10とサブマウント10の上面10aに金属ロウ材40を介して実装された半導体レーザアレイ(光半導体素子)20とを少なくとも備えている。
【0039】
サブマウント10の前方側面10cには、サブマウント10の上面10aから下方にそれぞれ延びる複数の溝部11がその延在方向である上下方向と交差する左右方向に互いに間隔をあけて形成されている。
【0040】
上面視で、半導体レーザアレイ20の光出射部21は、溝部11の底面11aから前方に突出して配置され、金属ロウ材40からなるフィレット50は、複数の溝部11のそれぞれに埋め込まれるとともに、光出射部21の下面の一部を覆っている。半導体レーザアレイ20の表面に形成された表面電極37と金属ロウ材40とが接合されている。
【0041】
本実施形態によれば、光出射部21が、溝部11の底面11aから前方に突出しているため、金属ロウ材40が光出射部21の下面に回り込んでフィレット50が形成される。このフィレット50を介して、光出射部21からサブマウント10や外部雰囲気に効率良く放熱できる。また、フィレット50が複数の溝部11に埋め込まれることで、フィレット50から光出射部21に加わる引っ張り応力が分散され、光出射部21に過度の引っ張り応力が集中して加わるのを緩和できる。このことにより、半導体レーザアレイ20が破壊されるのを抑制できる。また、半導体レーザアレイ20の動作寿命が低下するのを抑制できる。
【0042】
また、互いに隣り合う溝部11の間は、突起部12として構成され、突起部12の上面12aと半導体レーザアレイ20の光出射部21の下面の一部とが、金属ロウ材40を介して接触している。また、光出射部21が突起部12に支持されている。
【0043】
このことにより、光出射部21からサブマウント10への放熱経路を確保でき、放熱効率をさらに高められる。また、半導体レーザアレイ20とサブマウント10の接合面積が増加するため、接合強度を高められ、半導体レーザアレイ20とサブマウント10との接合時に、光出射部21が上方に反るのを抑制できる。このことにより、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。また、半導体レーザアレイ20とサブマウント10との熱的接触を強固にして、半導体レーザアレイ20に加わるせん断応力を低減し、光半導体装置100の信頼性を向上できる。
【0044】
半導体レーザアレイ20は、単位発光部である半導体光共振器30を複数有しており、複数の半導体光共振器30は、互いに間隔をあけて溝部11の配列方向である左右方向に配列されている。
【0045】
表面電極37は、複数の分割電極37aで構成され、複数の分割電極37aのそれぞれは、複数の半導体光共振器30のそれぞれを覆うとともに、互いに間隔をあけて左右方向に配列されている。
【0046】
側面視で、半導体光共振器30は突起部12と重ならないように配置される一方、分割電極37aの端面は突起部12の互いに対向する2つの側面12bの内側に位置している。
【0047】
半導体光共振器30を突起部12と重ならないように配置することで、半導体レーザアレイ20とサブマウント10との接合時に、仮に、突起部12の上面12aに沿って不要な金属ロウ材40が噴出しても、光出射面である半導体レーザアレイ20の前端面21aにこの金属ロウ材40は付着しない。したがって、レーザ光が遮られたり、一部がけられたりして、半導体レーザアレイ20の光学特性を損なうことがない。
【0048】
また、分割電極37aの端面を突起部12の両側面12bの内側に位置させることで、溝部11の内側でフィレット50が形成される領域に分割電極37aの端面が重ならないようにすることができる。半導体積層体31と分割電極37aを構成する材料とは熱膨張係数が異なるため、分割電極37aの端面に沿って、つまり、上下方向に沿って、半導体光共振器30に応力が加わっっている。このため、フィレット50が形成される領域に分割電極37aの端面が重なっていると、光出射部21に加わる引っ張り応力が局所的に増加するおそれがあった。
【0049】
一方、本実施形態によれば、分割電極37aと突起部12との配置関係を前述のように規定することで、局部的な応力集中の発生を抑制できる。このことにより、半導体レーザアレイ20の破壊や動作寿命の低下を確実に抑制できる。
【0050】
また、複数の溝部11のそれぞれは、サブマウント10の上面10aから下面10bまで延びている。通常、サブマウント10は母材となる板材をソーイング等により切り出して得られる。このため、ソーイングを用いることで、同じ設備で溝部11を形成でき、サブマウント10の製造コストの増加を抑制できる。また、サブマウント10の上面10aから下面10bまでを切削するようにすることで、溝部11を容易に形成できる。なお、溝部11の幅W1や深さD1は、ソーの刃先の形状を変更することで容易に調整できる。
【0051】
(実施形態2)
図5は、本実施形態に係る光半導体装置の斜視図を、
図6は、サブマウントの斜視図をそれぞれ示す。
図7Aは、光半導体装置の要部を前から見た模式図を、
図7Bは、
図7AのVIIB-VIIB線での断面模式図をそれぞれ示す。
【0052】
なお、説明の便宜上、
図5及び
図7A,7Bにおいて、半導体レーザアレイ20の構造を一部省略して図示している。また、
図5~7B及び以降に示す各図面において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施形態に示す光半導体装置100は、複数の溝部13のそれぞれが、サブマウント10の上面10aから前方側面10cの途中まで延びて形成されている点で実施形態1に示す光半導体装置100と異なる。
【0054】
また、本実施形態において、溝部13の幅及び突起部14の幅は、実施形態1に示す溝部11の幅W1及び突起部12の幅W3とそれぞれ同じである。一方、本実施形態において、複数の溝部13のそれぞれが下方に向かうにつれて浅くなるように、溝部13の底面13aは直線的に傾斜している。このため、サブマウント10の上面10aの近傍で、溝部13の深さは実施形態1と同じく30μmであるのに対して、下端部では溝部13の深さはゼロとなり、溝部13はサブマウント10の前方側面10cに連続している。また、
図7Aに示すように、突起部14の上面14aと半導体レーザアレイ20の光出射部21の下面の一部とが、金属ロウ材40を介して接触している。また、
図7Bに示すように、光出射部21が突起部14に支持されている。
【0055】
本実施形態によれば、溝部13の内部に埋め込まれたフィレット50とサブマウント10との接触面積を実施形態1に示す場合に比べて大きくすることができる。このため、フィレット50を介してサブマウント10に放散される熱量を実施形態1に示す場合よりも大きくできる。このことにより、半導体レーザアレイ20からサブマウント10への放熱効率をさらに高めることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、溝部13の底面13aが直線的に傾斜する例を示したが、特にこれに限られない。例えば、断面視で、溝部13の底面13aを下に凸となる曲面となるように形成してもよい。また、図示しないが、断面視で、溝部13を段差状に形成してもよい。この場合は、下端部まで溝部13の深さが一定であり、下端部に、サブマウンの上面10aと平行となる面が形成される。
【0057】
また、複数の溝部13のそれぞれの容積は、フィレット50の体積と同じになるようにするのが好ましく、このようにすることで、半導体レーザアレイ20からサブマウント10の放熱効率を高めつつ、フィレット50の体積を小さくできる。フィレット50の体積を小さくすることで、フィレット50から光出射部21に加わる引っ張り応力をトータルで低減できる。なお、放熱効率を低下させないようにするため、溝部13の上下方向の長さL1(
図5,6参照)は短い方が好ましい。
【0058】
<変形例1>
図8Aは、比較のための溝部を上から見た模式図を、
図8Bは、本変形例に係る溝部を上から見た模式図を、
図8Cは、本変形例に係る別の溝部を上から見た模式図をそれぞれ示す。
【0059】
図8Aに示す溝部11は、実施形態1に示す溝部11と同じであり、上面視で、溝部11の底面11aが、突起部12aの側面12bと直角をなすように形成されている。
【0060】
しかし、溝部の形状は特にこれに限られず、
図8Bに示すように、上面視で、溝部15の底面15aが、突起部12の側面12bと鈍角をなすように形成されていてもよい。この場合、上面視で、溝部15が台形となる。また、
図8Cに示すように、上面視で、溝部16が半円状であってもよい。
【0061】
なお、
図8B及び
図8Cにそれぞれ示す溝部15,16において、開口部の幅は、前述の幅W1(=150μm)と同じである。また、溝部15,16の深さは、前述の深さD1(=30μm)と同じである。
図8B及び
図8Cにそれぞれ示す突起部12において、先端の幅は、前述の幅W2(=75μm)と同じである。
【0062】
一方、溝部15の底面15aの幅W4は、溝部15の幅W1よりも狭くなっている。溝部15の底面15aを基準として、半導体レーザアレイ20の前端面21aが最小突き出し長さD3(=5μm)だけ前方に配置された位置において、溝部15の幅が半導体光共振器30の左右方向の幅よりも広くなるように、溝部15の底面15aの幅W4が設定される。また、突起部12の基端、つまり、サブマウント10に近い側の幅は、突起部12の幅W2よりも広くなっている。
【0063】
同様に、溝部16の基端側の幅W4は、溝部16の幅W1よりも狭くなっている。半導体レーザアレイ20の前端面21aが最小突き出し長さD3(=5μm)だけ前方に配置された位置において、溝部16の幅が半導体光共振器30の左右方向の幅よりも広くなるように、溝部16の基端側の幅W4が設定される。また、突起部12の基端、つまり、サブマウント10に近い側の幅は、突起部12の幅W2よりも広くなっている。
【0064】
本変形例によれば、
図8B,8Cにそれぞれ示すように、溝部15,16の底面から光出射面である半導体レーザアレイ20の前端面21aまでの範囲において、
図8Aに示す場合よりも突起部12の幅を広げられる。このことにより、光出射部21からサブマウント10への放熱効率をさらに高められる。また、半導体レーザアレイ20とサブマウント10の接合面積が
図8Aに示す場合よりも増加するため、接合強度をさらに高められ、半導体レーザアレイ20とサブマウント10との接合時に、光出射部21が上方に反るのを抑制できる。このことにより、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。また、半導体レーザアレイ20とサブマウント10との熱的接触を強固にして、半導体レーザアレイ20に加わるせん断応力を低減し、光半導体装置100の信頼性を向上できる。
【0065】
また、半導体レーザアレイ20の前端面21aが配置される位置では、溝部15,16は、半導体光共振器30の左右方向の幅よりも広くなっている。つまり、半導体光共振器30を突起部12と重ならないように配置することができる。このことにより、半導体レーザアレイ20とサブマウント10との接合時に、突起部12の上面12a(
図3A参照)に沿って不要な金属ロウ材40が噴出しても、半導体レーザアレイ20の前端面21aにこの金属ロウ材40は付着しない。したがって、レーザ光が遮られたり、一部がけられたりして、半導体レーザアレイ20の光学特性を損なうことがない。
【0066】
また、上面視で台形状の溝部15や半円状の溝部16は、ソーイングによる切削加工や機械的な研磨により容易に形成することができる。なお、溝部を、上面視で半楕円状となるように形成してもよい。
【0067】
<変形例2>
図9は、サブマウントの前方側面10cにおける金属ロウ材の流れを示す。
図10は、本変形例に係るサブマウントの要部の模式図を、
図11Aは、本変形例に係る光半導体装置の要部を前から見た模式図を、
図11Bは、
図11AのXIB-XIB線での断面模式図をそれぞれ示す。
図12は、別のサブマウントの要部の模式図を、
図13は、さらなる別のサブマウントの要部の模式図をそれぞれ示す。
【0068】
なお、
図10~
図13にそれぞれ示す溝部11において、開口部の幅は、前述の幅W1(=150μm)と同じである。また、溝部11の深さは、前述の深さD1(=30μm)と同じである。
図10~
図13にそれぞれ示す突起部12,17,18において、先端の幅は、前述の幅W2(=75μm)と同じである。また、各溝部11は、サブマウント10の上面10aから下面10bにかけて延びていることは、実施形態1に示すのと同様である。サブマウント10と半導体レーザアレイ20との前後方向の配置関係も実施形態1に示すのと同様である。なお、
図11A,11Bに示す突起部12は、
図10に示す突起部12と同じ形状である。
【0069】
前述したように、半導体レーザアレイ20とサブマウント10を加熱接合する際、金属ロウ材40の一部がサブマウント10の前方側面10cに流れ出てフィレット50が形成される。
図9は、この場合の金属ロウ材40の流れを上から模式的に見た図である。実線の矢印は、実装中の金属ロウ材40の流れを示し、破線は、金属ロウ材40の表面の位置を示す。なお、
図10,12,13のそれぞれの(a)図にも、実線の矢印や破線で実装中の金属ロウ材40の流れや金属ロウ材40の表面の位置を示している。ただし、図面を簡素化するため、
図10,12,13において、図中の説明文は省略している。
【0070】
図9に示すように、金属ロウ材40は溝部11の内部に流れ込むとともに、突起部12の上面12aに沿っても流れ出す。このとき、半導体レーザアレイ20とサブマウント10と接合時の加圧力や加圧力の変化速度によっては、金属ロウ材40の流れが溝部11のコーナー部で変則的となり、突起部12の上面12aに沿って前方に流れ出す金属ロウ材40の量が増加してしまうことがある。この量が大きくなりすぎると、半導体レーザアレイ20の前端面21aに金属ロウ材40がはみ出して付着する場合があった。
【0071】
一方、本変形例によれば、突起部の形状を実施形態1に示す上面視で矩形状から変更することで、突起部12の上面12aで、半導体レーザアレイ20の前端面21aにはみ出す金属ロウ材40の量を抑制できる。
【0072】
例えば、
図10に示すように、突起部12の上面12aと両側面12bとが接する部分がそれぞれ面取り加工されて傾斜面12cが形成されるようにしてもよい。つまり、突起部12の上面12aと側面12bとが、傾斜面12cを介して連続するようにしてもよい。
【0073】
突起部12の上面12aと側面12bとの間に傾斜面12cを設けることで、突起部12の上面12aに沿って前方に流れる金属ロウ材40の一部は、傾斜面12cを伝って下方に流れるようになり、
図11A,11Bに示すように、冷却凝固後に、傾斜面12の上に留まる部分と合わせて、フィレット50の第2部分52を構成する。
【0074】
この第2部分52は、突起部12とあわせて光出射部21の下面を支持している。また、溝部11に埋め込まれたフィレット50の第1部分51と連続して、フィレット50を構成する。
【0075】
このフィレット50は、実施形態1に示すフィレット50に比べて体積が増加しており、また、光出射部21の下面との接触面積が大きくなっている。
【0076】
フィレット50をこのように構成することで、半導体レーザアレイ20の光学特性が損なわれるのを防止できるとともに、フィレット50を介した半導体レーザアレイ20の放熱効率をさらに高めることができる。また、半導体レーザアレイ20とサブマウント10との実効的な接合面積が低減するのを抑制できる。このことにより、両者の接合強度を高められ、半導体レーザアレイ20とサブマウント10との接合時に、光出射部21が上方に反ることで生じるレーザ光の光軸ずれを抑制できる。また、半導体レーザアレイ20とサブマウント10との熱的接触を強固にして、半導体レーザアレイ20に加わるせん断応力を低減し、光半導体装置100の信頼性を向上できる。
【0077】
なお、
図12に示すように、上面視で、突起部を17先端よりも基端で幅が細くなるように楔形状としてもよい、言い換えると、上面視で、溝部11の底面11aが、突起部17の側面17bと鋭角をなすように設けられていてもよい。
【0078】
この場合は、突起部17の上面17aに沿って前方に流れる金属ロウ材40の一部が、突起部17の基端側で下方に流れるようになり、冷却凝固後に、前述の第2部分52(
図12には図示せず)となる。このように第2部分52が形成されることで、前述した効果を奏することができる。
【0079】
また、
図13に示すように、突起部18を
図10に示す形状と
図12に示す形状とを複合させた形状としてもよい。つまり、突起部18の上面18aと側面18bとを傾斜面18cを介して連続させるとともに、上面視で、溝部11の底面11a、突起部18の側面18cと鋭角をなすように設けてもよい。この場合も、前述の第2部分52(
図13には図示せず)が形成されて、前述した効果を奏することができる。
【0080】
なお、金属ロウ材40がはみ出すのをより抑制するように、突起部の形状を
図10~13に示す形状のいずれかとすることで、半導体レーザアレイ20の前端面21aに金属ロウ材40がはみ出すのを抑制できるため、左右方向において、半導体光共振器30の発光点と突起部12または17あるいは18が一部または全部重なるように配置することもできる。
【0081】
このようにすることで、半導体光共振器30の自己発熱部である発光点の下方をサブマウント10の突起部12または17あるいは18で直接的に支持できるため、半導体レーザアレイ20からサブマウント10への放熱効率をさらに高めることができる。また、半導体レーザアレイ20における半導体光共振器30の配列ピッチや溝部11の配列ピッチの設計に自由度を持たせることができる。
【0082】
ただし、半導体光共振器30の配列ピッチと溝部11の最小加工寸法との関係で、例えば、突起部12の幅W2が決定されるため、1つの半導体光共振器30の発光点の下方に、必ず突起部を設けることができない場合もある。このことに留意して、光半導体装置100のレイアウト設計を行う必要がある。
【0083】
また、この場合、半導体レーザアレイ20の前端面21aの位置によっては、突起部の先端がレーザ光に干渉するおそれもあるので、そうならないように、突起部の先端の形状を調整することも考慮する必要がある。
【0084】
さらに、
図3A,7A及び
図11Aに示すように、側面視で、サブマウント10の溝部11の内側に分割電極37aの端面が位置する。つまり、フィレット50が形成される領域に分割電極37aの端面が重なって、光出射部21に加わる引っ張り応力が局所的に増加するおそれがある。
【0085】
このような懸念を解消するために、例えば、複数の分割電極37aを一体化して1枚の表面電極37とすることで、引っ張り応力の局所的な増加が抑制され、半導体レーザアレイ20の破壊や動作寿命の低下を確実に抑制できる。
【0086】
(その他の実施形態)
各実施形態や各変形例に示した各構成要素を組み合わせて新たな実施形態とすることもできる。例えば、変形例2で述べたように、複数の分割電極37aが一体化された表面電極37を実施形態1や実施形態2に示す構成に適用してもよい。半導体レーザアレイ20における半導体光共振器30の個数が所定以上に少なければ、必ずしも、隣り合う半導体光共振器30の間に分離溝35を設ける必要はなく、また、表面電極37を複数の分割電極37aで構成しなくてもよい。
【0087】
また、実施形態1,2において、光半導体素子が半導体レーザアレイ20である例を示したが、単一の光共振器を有する半導体レーザ素子であってもよい。
【0088】
サブマウント10は、所定の熱膨張係数と熱伝導性とを有していればよく、導電部材であってもよいし、絶縁部材であってもよい。実施形態1に示したように、サブマウント10の材質が、金属ロウ材40との濡れ性が悪い材料であれば、前方側面10cを含むサブマウント10の表面に、金属ロウ材40との濡れ性を向上させるための処理を行う必要がある。例えば、サブマウント10の表面メッキを施す必要がある。ただし、サブマウント10の材質が、金属ロウ材40との濡れ性が良好な材料であれば、このような処理を省略できる。
【0089】
また、半導体レーザアレイ20と接合される支持部材は、サブマウント10に特に限定されない。例えば、ヒートシンクブロックであってもよい。その場合、内部に冷却機構を設けてもよい。例えば、冷媒を通過させる流路が設けられていてもよい。
【0090】
また、裏面電極36の形状は、平坦でなくてもよく、一部がパターニングされていてもよい。また、複数のAuバンプを含むようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の光半導体装置は、フィレットから光半導体素子の光出射部に加わる応力の集中を緩和でき、加工用途等で使用される高出力レーザ光源に適用する上で有用である。
【符号の説明】
【0092】
10 サブマウント(支持部材)
10a サブマウントの上面
10c サブマウントの前方側面
11,13,15,16 溝部
12,14,17,18 突起部
20 半導体レーザアレイ(光半導体素子)
21 光出射部
21a 前端面(光出射面)
30 半導体光共振器
31 半導体積層体
32 活性層
33 電流狭窄層
34 コンタクト層
35 分離溝
36 裏面電極
37 表面電極
37a 分割電極
40 金属ロウ材
50 フィレット
100 光半導体装置