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  • 特開-マスキングテープの巻取装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185176
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】マスキングテープの巻取装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/165 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
E04F21/165 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092667
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】591189258
【氏名又は名称】カモ井加工紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 陸
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 哲男
(72)【発明者】
【氏名】米光 壮士
(57)【要約】
【課題】
特別な資材を使用する必要がなく廃材を利用して使用済みのマスキングテープを巻き取ることが可能であり、ユーザーの手が届きにくい位置に施工された使用済みのマスキングテープを巻き取ることができるマスキングテープの巻取装置を提供する。
【解決手段】
使用済みのマスキングテープを巻き取る装置であり、当該装置は、シャフト部と把持部とを備えており、シャフト部と把持部とは直列に配置され、前記シャフト部は、1個以上のテープロールの芯材を着脱可能に固定することができるマスキングテープの巻取装置である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みのマスキングテープを巻き取る装置であり、
当該装置は、シャフト部と把持部とを備えており、シャフト部と把持部とは直列に配置され、
前記シャフト部は、1個以上のテープロールの芯材を着脱可能に固定することができるマスキングテープの巻取装置。
【請求項2】
前記シャフト部は、その外径を大小自在に変更するための機構を備える請求項1に記載のマスキングテープの巻取装置。
【請求項3】
前記シャフト部は、自動又は手動により、把持部に対して回転可能に構成された請求項1又は2に記載のマスキングテープの巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスキングテープの巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外壁塗装、防水塗装、コーキング材によるシーリング等を行う際などには、建築物の非施工箇所にマスキングテープを貼り付けて、施工箇所以外の部分に塗料やコーキング材が付着しないようにする。また、マスキングテープで養生することにより、施工箇所と非施工箇所の境界を美しく仕上げることができる。施工完了後には、非施工箇所からマスキングテープを剥がす作業を行う。
【0003】
使用済みのマスキングテープを剥がす際には貼着されたマスキングテープの端部を剥がし、スクレーパーにマスキングテープの端部を貼り付けて、スクレーパーを両手で回転させて、使用済みのマスキングテープをスクレーパーで巻き取っていく。マスキングテープを剥がす際には、作業者の手や衣服が使用済みのマスキングテープで汚染されることがあり煩わしい作業であった。作業者の手や衣服が汚れるとその汚れが建築物を汚す原因になる。マスキングテープは数十メートルにわたって施工される場合もあり、そのような場合は、極めて煩わしい作業になる。また、高所で使用済みのマスキングテープをスクレーパーに巻き取る作業を行う際には、両手が塞がってしまうため、危険であった。
【0004】
スクレーパーを利用したマスキングテープの回収方法の他には、以下の特許文献1又は特許文献2に記載された装置を用いてマスキングテープを回収する方法が知られている。
【0005】
特許文献1には、マスキングテープの回収装置が記載されており、当該装置は、筒体と、筒体の両端部に設けられたハンドルと、筒体の内部に折り畳まれた状態で収納されたフィルムとを有する。内部に収納されたフィルムを引き出して、フィルムで筒体の円筒部を覆い隠すようにして、フィルムの上に使用済みのマスキングテープを巻き取っていく。
【0006】
特許文献2には、マスキングテープの回収装置が記載されており、当該装置は、2本の板状のハンドルバーと、当該2本のハンドルバーに対して両端部が支持されたハンドル軸と、前記2本のハンドルバーに両端部が回転可能な状態で支持されたテーパーローラーとを有する。テーパーローラーは、両端部の外径に比して、中央部の外径が小さくされたテーパー状であり、中央部において上下に分割可能に構成されている。テーパーローラーを分割して、中央部に2個のマスキングテープの芯を挿し込み、当該芯に使用済みのマスキングテープを巻き取っていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-89604号公報
【特許文献2】特開平7-328499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の巻き取り装置は、装置の内部に収納されたフィルムに使用済みのマスキングテープを巻き取って、巻き取り作業が完了した後には、フィルムごと巻き取ったマスキングテープを廃棄する。装置や作業者が汚染されにくい点で優れたものである。しかしながら、この装置では、特別な資材として筒状のフィルムを用意する必要がある。また、筒状のフィルムは、通常の塗装やシーリングでは発生しない余剰の産業廃棄物となる。
【0009】
特許文献2の巻き取り装置は、ユーザーがハンドル軸を把持して、マスキングテープの芯を、マスキングテープの面に押し付けながら、マスキングテープの長手方向に装置を移動させることにより、テーパーローラーの摩擦を利用してマスキングテープを剥がすとされている。
【0010】
特許文献2の装置は、上記のような構成と使用方法を採用しているため、ユーザーの手が届きにくい位置に施工されたマスキングテープを剥がす作業には向いていない。また、コーキング材や塗料が硬化していない状態で巻き取り装置を押し付けると、巻き取り装置、ユーザーの手などが汚染されてしまう。また、未硬化のコーキング材や塗料に対してテーパーローラーを押し付けると、施工したコーキング材や塗料が剥がれて、仕上がり後の美感が著しく損なわれる。
【0011】
本発明は、特別な資材を使用する必要がなく廃材を利用して使用済みのマスキングテープを巻き取ることが可能であり、ユーザーの手が届きにくい位置に施工された使用済みのマスキングテープを巻き取ることができるマスキングテープの巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
使用済みのマスキングテープを巻き取る装置であり、当該装置は、シャフト部と把持部とを備えており、シャフト部と把持部とは直列に配置され、前記シャフト部は、1個以上のテープロールの芯材を着脱可能に固定することができるマスキングテープの巻取装置(以下、単に巻取装置と称することがある。)により、上記の課題を解決する。
【0013】
上記の巻き取り装置は、シャフト部と把持部とが直列に配置された形状であるため、ユーザーの手の届きにくい箇所に施工された使用済みのマスキングテープも円滑に巻き取ることが可能である。また、シャフト部に固定されたテープロールの芯材に対して使用済みのマスキングテープを巻き取るため、上述のフィルムのような特別な資材を必要とせず、廃材であるテープロールの芯材を利用して、使用済みのマスキングテープを巻き取ることができる。使用済みのマスキングテープを回収した後は、シャフト部から前記芯材を取り外して、前記芯材に巻き取られた使用済みのマスキングテープを廃棄すればよい。ユーザーは、使用済みのマスキングテープに触れることなく、使用済みのマスキングテープを巻き取って廃棄することができる。
【0014】
上記のマスキングテープの巻取装置において、前記シャフト部は、その外径を大小自在に変更するための機構を備える構成とすることが好ましい。これにより、シャフト部に対して、テープロールの芯材を取り付けたり取り外したりする操作を繰り返し行うことが可能になる。
【0015】
上記のマスキングテープの巻取装置において、前記シャフト部は、自動又は手動により、把持部に対して回転可能に構成することが好ましい。ユーザーが把持部を把持した状態で、シャフト部を回転させることにより、より円滑に使用済みのマスキングテープをテープロールの芯材に巻き取ることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特別な資材を使用する必要がなく廃材を利用して使用済みのマスキングテープを巻き取ることが可能であり、ユーザーの手が届きにくい位置に施工された使用済みのマスキングテープを巻き取ることができるマスキングテープの巻取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るマスキングテープの巻取装置の正面図である。
図2図1のマスキングテープの巻取装置のシャフト部に内蔵された外径を変更させる機構を示す断面図である。
図3】高所に施工されたマスキングテープを図1の巻取装置で巻き取る様子を示す説明図である。
図4】マスキングテープを剥がす際に、マスキングテープが形成する角度を説明する図である。
図5】第2実施形態に係るマスキングテープの巻取装置の正面図である。
図6】シャフト部に内蔵された外径を変更させる機構の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のマスキングテープの巻取装置の実施形態について説明する。以下に示す各実施形態、本発明の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
【0019】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るマスキングテープの巻取装置1を図1ないし図3に示す。本実施形態の巻取装置1は、シャフト部11と把持部12とを備えている。シャフト部11と把持部12とは直列に配置され、装置全体の形状は、図1に示した通り棒状である。シャフト部11は、図3に示したように、1個以上のテープロールの芯材21を着脱可能に固定することができる長さを有する。図3の例では、使用済みのマスキングテープの芯材4個を固定しているが、芯材の個数、及びシャフト部の長さは、適宜変更することができる。
【0020】
本実施形態の巻取装置1は、図2に示したように、シャフト部11は、円柱状の棒状部材であり、内部に空洞を備えており、当該空洞にシャフト部11の外径を大小自在に変更するための機構を内蔵する。図2の機構は、シャフト部11の延在方向に沿って延びる長尺部材である保持部材31と、保持部材31を上昇させてシャフト部11を拡径した状態と、保持部材31を下降させてシャフト部11が拡径した状態に比して、シャフト部11が縮径した状態とを切り替えることができるように構成されている。なお、図2では、把持部12を省略して、シャフト部11の要部のみを示す。後述する図6においても同様である。
【0021】
拡径した状態と縮径した状態とは、操作部32により変更することができる。縮径した状態でシャフト部11に芯材21を挿入して、この状態で、保持部材31を上昇させる。芯材21は、保持部材31により拡径したシャフト部11により保持される。芯材21を外す際には、操作部32を操作して、保持部材31を下降させれば、簡単に芯材21をシャフト部11から取り外すことができる。なお、保持部材31は、シャフト部11に設けた貫通孔を経て、シャフト部11の円筒面から突出するように上昇し、シャフト部の円筒面から低くなるように下降する。
【0022】
図2の例では、リンク機構を利用して、保持部材31を上昇させたり、下降させたりする。操作部32は、レバーで構成され、操作部32の中央部はシャフト部11に対して軸で固定される。操作部32の一端部は、ユーザーが手指で操作するための部分を構成する。操作部32の一端部を動かすと、前記軸を支点として、操作部の他端部が変位する。操作部32の他端部は、第1関節41を介して、第1リンク部材33の一端部に固定される。第1リンク部材33の他端部は、第2関節42を介して、第2リンク部材34の一端部に固定される。第2リンク部材34の他端部は、第3関節43を介して、保持部材31の一端部に固定される。保持部材31の他端部は、第4関節44を介して、第3リンク部材35の一端部に固定される。第3リンク部材35の他端部は、第5関節45を介して、第4リンク部材36に固定される。第4リンク部材36は、シャフト部11に対して変位しないように固定されている。なお、第1リンク部材33、第2リンク部材34、第3リンク部材35、及び第4リンク部材36は、それぞれ、棒状の部材で構成される。また、上記の関節は、一方向にのみ屈曲することを回転可能にするため、回転方向の規制手段が設けられている。
【0023】
ユーザーが操作部32を操作すると、図2の下段に示したように、操作部32の他端部が保持部材31に接近するように変位し、第2リンク部材34及び第3リンク部材35が保持部材31に向かって、斜め上方を向くように、屈曲し保持部材31が上昇する。保持部材31には、芯材21の滑り止めを目的として、凹凸部が形成されている。凹凸部は、保持部材31は、側面視において、三角形状が長手方向に連続する形状である。
【0024】
本実施形態の巻取装置1では、把持部12は、ユーザーが把持しやすくするために、シャフト部11の外径に比して、外径が小さい円柱形状の部材としている。上記のシャフト部11は、把持部12に対して、回転可能な状態で、固定されている。把持部12は、内部に図示しない電動モーターを内蔵している。把持部12に設けられたスイッチ121を操作することにより、電動モーターが作動する。シャフト部11は電動モーターの動力により、図1において矢印で示したように、シャフト部11の周方向に対して回転する。
【0025】
本実施形態の巻取装置1は、例えば、図3に示したようにして、使用する。まず、シャフト部11の保持部材31を下降させた状態で、環状のテープロールの芯材21の孔をシャフト部11に挿し通す。この状態で操作部32を操作し、保持部材31を上昇させて、芯材21を確実に固定する。次に、コーキング材41を施工した被施工体43に貼着された使用済みのマスキングテープ42の一端部を剥がして、芯材21に貼着する。この状態で、スイッチ121を押してシャフト部11を回転させて、使用済みのマスキングテープ42を芯材に巻き取っていく。このとき、把持部12は、回転しない。ユーザーは把持部を手で握って、巻取装置を操作する。
【0026】
本実施形態の巻取装置1は、シャフト部11、及び把持部12を備える装置全体が棒状の形態とされている。このため、マスキングテープ42を巻き取る際に、マスキングテープ42がちぎれたり、大きな抵抗が巻取装置1にかからない最適な位置に巻取装置を移動させることができる。図4に示したように、マスキングテープが貼着されていた被施工体43の面と、剥がされたマスキングテープ42の面とがなす剥がし角度θを想定する。剥がし角度θが大きくなると、マスキングテープ42が破れやすくなる。マスキングテープを破れにくくするには、θを100°以下にすることが好ましい。マスキングテープの剥がす作業は、θが20°以上とすると作業性がよい。このため、剥がし角は、20°以上100°以下にすることが好ましく、85°以上95°以下にすることがより好ましい。本実施形態の巻取装置1は、装置全体が棒状であるので、マスキングテープを施工した箇所がユーザーの手の届きにくい位置にある場合であっても、剥がし角度θが最適の角度になるように、巻取装置1を移動させることが容易である。
【0027】
[第2実施形態]
本実施形態の巻取装置1bは、把持部12bの構成が、上記の巻取装置1とは異なる。本実施形態の巻取装置1bは、図5に示したように、円柱状の把持部12bと、当該把持部12bに挿通された軸部材121bとを有する。軸部材121bの一端部は、シャフト部11に固定される。軸部材121bの他端部は、クランク状に屈曲した形状とされる。把持部12bは、軸部材121bに対して回転可能な状態で、軸部材121bにより支持されている。
【0028】
ユーザーは、一方の手で把持部12bを握り、他方の手で軸部材121bのクランク状に屈曲した部分を回転させる。これにより、把持部12bに対して、軸部材121bと軸部材121bに連結されたシャフト部11とが一体に回転する。このようにして、シャフト部11を回転させることで、上記と同様の要領で、マスキングテープ42をシャフト部11に固定されたテープロールの芯材に巻き取ることができる。
【0029】
シャフト部の外径を変更する機構は、上記の巻取装置1、1bの例に、限定されるものではない。前記機構は、図6のようにしてもよい。図6の例では、シャフト部11cは、円柱状部材111と、円柱状部材111の軸方向に対して変位可能な状態で取り付けられた第1支持部材112と、円柱状部材111に固定される第2支持部材113と、複数の第1リンク部材114と、複数の第2リンク部材115と、複数の保持部材116とを有する棒状の部材である。第1支持部材112、及び第2支持部材113は、共に、環状の部材である。複数の第1リンク部材114の一端部は、第1支持部材112の端部に対して第1関節を介して連結される。複数の第1リンク部材114の他端部は、複数の保持部材116の一端部に対して、第2関節を介して連結される。複数の第2リンク部材115の一端部は、第2支持部材113の端部に対して第3関節を介して連結される。複数の第2リンク部材115の他端部は、保持部材116の他端部に対して、第4関節を介して連結される。
【0030】
図6において矢印で示したように、前記第1支持部材112を、前記第2支持部材113に対して、接近する方向に変位させることで、図6に示したように、複数の第1リンク部材114、及び複数の第2リンク部材115は、保持部材116に向かって斜め上方を向くように屈曲する。その結果、複数の保持部材116が、シャフト部11bの半径方向外側に向かって変位して、シャフト部11cの外径が大きくなる。前記第1支持部材112を、前記第2支持部材から、離れる方向に変位させることで、複数の保持部材116は、元の状態に戻り、シャフト部11cの外径は小さくなる。なお、第1リンク部材114、第2リンク部材115、及び保持部材116は、いずれも棒状の部材で構成されている。
【0031】
シャフト部の外径を変更するための機構は、リンクと関節(ジョイント)を利用した上記の昇降機構に限定されず、外径を変更することにより、芯材を着脱することができるものであればよい。例えば、シャフト部を弾性を有する素材で構成し、シャフト部の内部に圧縮空気を溜めることにより、シャフト部の外径を増大することができるように、構成したものであってもよい。
【0032】
把持部は、シャフト部と把持部とが直列に配置され、ユーザーが把持できる形状であればよく、上記の例に限定されるものではない。例えば、把持部は、電動ドリルのようなガングリップ形状であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 マスキングテープの巻取装置
1b マスキングテープの巻取装置
11 シャフト部
11c シャフト部
12 把持部
12b 把持部
21 芯材
42 マスキングテープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6