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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185181
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】室内機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/56 20180101AFI20221207BHJP
【FI】
F24F11/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092679
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮介
(72)【発明者】
【氏名】小山 陽平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽太
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和陽
(72)【発明者】
【氏名】粉川 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】東山 伸
(72)【発明者】
【氏名】堀田 浩介
(72)【発明者】
【氏名】石関 晋一
(72)【発明者】
【氏名】熊田 俊昭
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA66
3L260JA02
(57)【要約】
【課題】空気調和機に適用できる室内機について、室外機との物理的な接続の認識を、空気調和機の各形態に適した通信状態で行うようにする。
【解決手段】室外機を備える空気調和機に含まれている室内機3は、受電回路PR2と第1受信回路である低周波送受信回路306と送受信回路である高周波送受信回路304と制御部であるMCU303とを備える。低周波送受信回路306は、給電配線W1に含まれている電力線L1で形成されるカレントループを用いて室外機2から送信される電流信号を受信できる。MCU303は、室外機2との物理的な接続の認識を行う第1通信状態と、室外機2との間で空気調和機の運転のための通信を行う第2通信状態に関し、第1通信状態及び第2通信状態における低周波送受信回路306と高周波送受信回路304の使用を選択する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機(2,2a,2b)を備える空気調和機(110,121,122,131,132)に含まれている室内機(3,3a~3f)であって、
給電配線によって、前記室外機に接続して前記室外機を介して受電でき、及び前記室外機以外に接続して受電できる受電回路(PR2)と、
前記給電配線に含まれている電力線で形成されるカレントループを用いて前記室外機から送信される電流信号を受信できる第1受信回路(304)と、
電圧の変化を用いる通信のための電圧信号を送受信できる送受信回路(306)と、
前記室外機との物理的な接続の認識を行う第1通信状態と、前記室外機との間で前記空気調和機の運転のための通信を行う第2通信状態とに関し、前記第1通信状態及び前記第2通信状態における前記送受信回路と前記第1受信回路の使用を選択する制御部(303)と
を備える、室内機(3,3a~3f)。
【請求項2】
前記送受信回路が通信に用いる周波数が、前記第1受信回路が通信に用いる周波数よりも高い、
請求項1に記載の室内機(3,3a~3f)。
【請求項3】
前記制御部は、前記電流信号を受信し且つ前記電圧信号を受信したときは、前記第1通信状態のときに前記第1受信回路及び前記送受信回路を用い、前記第2通信状態のときに前記第1受信回路を用いずに前記送受信回路を用いる、
請求項1または請求項2に記載の室内機(3,3a~3f)。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1通信状態において、前記第1受信回路が受信する前記電流信号の周波数が前記給電配線に印加される電源の周波数と同じである、
請求項3に記載の室内機(3,3a~3f)。
【請求項5】
前記送受信回路は、電力線通信であり且つマルチチャネル通信である通信方法により前記電圧信号の送受信を行う、
請求項1から4のいずれか一項に記載の室内機(3,3a~3f)。
【請求項6】
前記送受信回路が、前記給電配線以外の信号線を用いて送受信可能である、
請求項1または請求項2に記載の室内機(3,3a~3f)。
【請求項7】
電圧の変化を用いる通信のための低周波電圧信号を前記給電配線以外の前記信号線を用いて受信する第2受信回路(305)を備え、
前記送受信回路は、前記低周波電圧信号よりも周波数が高い高周波電圧信号を送受信し、
前記制御部は、前記電流信号を受信せず且つ前記低周波電圧信号を受信したときは、前記第1通信状態のときに前記第1受信回路を用いずに前記第2受信回路と前記送受信回路を用い、前記第2通信状態のときに前記第1受信回路と前記第2受信回路とを用いずに前記送受信回路を用いる、
請求項6に記載の室内機(3,3a~3f)。
【請求項8】
前記第1受信回路は、前記室外機との間で前記カレントループを用いて電流信号の送受信ができるカレントループ通信回路であり、
前記制御部は、前記第1通信状態で前記室外機との物理的な接続の認識ができなかったときは、前記第2通信状態のときに前記第2受信回路と前記送受信回路を用いずに前記カレントループ通信回路を用いて前記室外機との送受信を行う、
請求項7に記載の室内機(3,3a~3f)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
室外機を備える空気調和機に含まれている室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1(特開2013-137119号公報)に記載されているように、空気調和機において、室外機と室内機を繋いで電力を供給するための配線によって通信を行う場合がある。例えば、店舗用のマルチタイプの空気調和機及び住宅用の空気調和機では、1台の室外機に接続される室内機の数が少ないので、室外機と室内機を直接配線で接続して電力供給を行うように構成することが容易である。そのため、店舗用のマルチタイプの空気調和機及び住宅用の空気調和機では、室外機と室内機を直接配線で接続して電力供給を行うように構成されることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載されている室内機がビル用のマルチタイプの空気調和機にも用いることができる場合、1台の室外機に多数の室内機が接続されるので、店舗用及び住宅用の空気調和機と同様の構成を取ることが難しくなる。例えば、ビル用のマルチタイプの空気調和機において、1台の室外機から多数の室内機に電力を供給しようとすると配線が長くなったり、室外機の電力供給部が大掛かりなものになったりする。そのため、ビル用のマルチタイプの空気調和機において、室内機は、室外機以外から電力の供給を受けるように構成される。
【0004】
このような複数の形態の空気調和機に適用できる室内機には、室外機との物理的な接続の認識を、空気調和機の各形態に適した通信状態で行うようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の室内機は、室外機を備える空気調和機に含まれている室内機である。室内機は、受電回路と第1受信回路と送受信回路と制御部とを備える。受電回路は、給電配線によって、室外機に接続して室外機を介して受電でき、及び室外機以外に接続して受電できる。第1受信回路は、給電配線に含まれている電力線で形成されるカレントループを用いて室外機から送信される電流信号を受信できる。送受信回路は、電圧の変化を用いる通信のための電圧信号を送受信できる。制御部は、室外機との物理的な接続の認識を行う第1通信状態と、室外機との間で空気調和機の運転のための通信を行う第2通信状態に関し、第1通信状態及び第2通信状態における送受信回路と第1受信回路の使用を選択する。
【0006】
第1観点の室内機では、給電配線によって室外機と受電回路とが接続される場合に、ノイズに強いカレントループによる通信を用いることにより室外機との物理的な接続の認識ができる。給電配線により室外機と接続されない場合には、カレントループ通信以外の送受信回路を用いた通信により室外機との物理的な接続の認識ができる。
【0007】
第2観点の室内機は、送受信回路が通信に用いる周波数が、第1受信回路が通信に用いる周波数よりも高い。
【0008】
第3観点の室内機は、第1観点または第2観点の室内機であって、制御部は、電流信号を受信し且つ電圧信号を受信したときは、第1通信状態のときに第1受信回路及び送受信回路を用い、第2通信状態のときに第1受信回路を用いずに送受信回路を用いる。
【0009】
第3観点の室内機では、給電配線によって室外機と受電回路とが接続される場合に、インピーダンスの低い給電配線を使い、ノイズに強いカレントループによる通信を用いることにより、室外機との物理的な接続の認識を確実に行うことができる。
【0010】
第4観点の室内機は、第3観点の室内機であって、制御部は、第1通信状態において、第1受信回路が受信する電流信号の周波数が給電配線に印加される電源の周波数と同じである。
【0011】
第4観点の室内機では、室外機の電流信号の発信源に電源から供給される電源周波数を用いることができ、室内機に接続する室外機の構成を簡素化し易くなる。
【0012】
第5観点の室内機は、第1観点から第4観点のいずれかの室内機であって、送受信回路は、電力線通信であり且つマルチチャネル通信である通信方法により電圧信号の送受信を行う。
【0013】
第6観点の室内機は、第1観点または第2観点の室内機であって、送受信回路が、給電配線以外の信号線を用いて送受信可能である。
【0014】
第6観点の室内機では、受電回路が室外機以外に接続される場合でも、給電配線以外の信号線を用いて、室外機との空気調和機の運転のための通信を行うことができる。
【0015】
第7観点の室内機は、第6観点の室内機であって、電圧の変化を用いる通信のための低周波電圧信号を給電配線以外の信号線を用いて受信する第2受信回路を備える。送受信回路は、低周波電圧信号よりも周波数が高い高周波電圧信号を送受信する。制御部は、電流信号を受信せず且つ低周波電圧信号を受信したときは、第1通信状態のときに第1受信回路を用いずに第2受信回路と送受信回路を用い、第2通信状態のときに第1受信回路と第2受信回路とを用いずに送受信回路を用いる。
【0016】
第8観点の室内機は、第7観点の室内機であって、前記第1受信回路は、前記室外機との間で前記カレントループを用いて電流信号の送受信ができるカレントループ通信回路である。前記制御部は、前記第1通信状態で前記室外機との物理的な接続の認識ができなかったときは、前記第2通信状態のときに前記第2受信回路と前記送受信回路を用いずに前記カレントループ通信回路を用いて前記室外機との送受信を行う。
【0017】
第8観点の室内機では、一つの室外機から見て室内機が常に一つ決まるような接続の場合に、カレントループだけを用いて室外機との間で通信する形態にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ビル用マルチ型の空気調和機の構成の一例を示す模式図である。
図2】業務用の空気調和機の構成の一例を示す模式図である。
図3】業務用の空気調和機の構成の他の例を示す模式図である。
図4】住宅用の空気調和機の構成の一例を示す模式図である。
図5】住宅用の空気調和機の構成の他の例を示す模式図である。
図6】室内委の構成の一例を示すブロック図である。
図7】室内機が組み込まれている空気調和機の判定の手順の一例を示すフローチャートである。
図8】系統認識のための空気調和機の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】業務用の空気調和機を形成している室外機及び室内機の通信に関わる構成を説明するためのブロック図である。
図10図9の空気調和機における複数の室内機の接続の一例を示すブロック図である。
図11】ビル用マルチ型の空気調和機を形成している室外機及び室内機の通信に関わる構成を説明するためのブロック図である。
図12図11の空気調和機における複数の室内機の接続の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)空気調和機の構成
(1-1)ビル用マルチ型の空気調和機
図1に示されている空気調和機110は、複数の室外機2と、複数の室内機3と、集中コントローラ4とを備えている。この空気調和機110では、複数の室外機2と、複数の室内機3と、集中コントローラ4が互いに通信できるように繋がれていて、目的とする空間の空気調和を行う。図1には示されていないが、複数の室外機2及び複数の室内機3は、空気調和のために、例えば熱交換器を備えている。ここでは、空気調和機110が集中コントローラ4を備える場合について説明するが、空気調和機110は、集中コントローラ4を備えていないものであってもよい。
【0020】
空気調和機110は、ビル用マルチ型である。ビル用マルチ型の空気調和機110は、室外機2への電力供給のために室外機2は商用電源901に接続され、室内機3への電力供給のために室内機3は商用電源902に接続されている。このように、ビル用マルチ型の空気調和機110においては、室外機2を駆動するための商用電源901と、室内機3を駆動するための商用電源902が別系統になっている。
【0021】
複数の室外機2には、第1室外機2a及び第2室外機2bが含まれている。複数の室内機3には、第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが含まれている。空気調和機110は、2つの冷媒系統である第1冷媒系統RS1と第2冷媒系統RS2とを備えている。
【0022】
第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cが第1冷媒系統RS1の中核をなす第1冷媒回路RC1を形成している。そのため、第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cが冷媒配管P1で接続され、これら室外機2及び室内機3の中を同一の冷媒が循環している。第1冷媒系統RS1には、第1冷媒回路RC1の管理または運用に用いられる集中コントローラ4が含まれる。
【0023】
第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが第2冷媒系統RS2の中核をなす第2冷媒回路RC2を形成している。そのため、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが冷媒配管P2で接続され、これら室外機2及び室内機3の中を同一の冷媒が循環している。第2冷媒系統RS2には、第2冷媒回路RC2の管理または運用に用いられる集中コントローラ4が含まれる。
【0024】
(1-2)業務用の空気調和機
(1-2-1)集中コントローラを備える業務用の空気調和機
図2に示されている空気調和機121は、図1のビル用マルチ型の空気調和機110と同様に、複数の室外機2と、複数の室内機3と、集中コントローラ4とを備えている。業務用の空気調和機121でも、複数の室外機2と、複数の室内機3と、集中コントローラ4が互いに通信できるように繋がれていて、目的とする空間の空気調和を行う。
【0025】
空気調和機121は、業務用の空気調和機である。業務用の空気調和機121は、ビル用マルチ型の空気調和機110とは異なり、室外機2への電力供給のために室外機2は商用電源901に接続され、室内機3への電力供給は、例えば室外機2を介して商用電源901から行われる。このように、業務用の空気調和機121においては、室外機2と室内機3とを駆動するための商用電源901が同系統になっている。
【0026】
複数の室外機2には、第1室外機2a及び第2室外機2bが含まれている。複数の室内機3には、第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが含まれている。空気調和機121は、2つの冷媒系統である第1冷媒系統RS1と第2冷媒系統RS2とを備えている。
【0027】
第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cが第1冷媒系統RS1の中核をなす第1冷媒回路RC1を形成している。そのため、第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cが冷媒配管P1で接続され、これら室外機2及び室内機3の中を同一の冷媒が循環している。第1冷媒系統RS1には、第1冷媒回路RC1の管理または運用に用いられる集中コントローラ4が含まれる。
【0028】
第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが第2冷媒系統RS2の中核をなす第2冷媒回路RC2を形成している。そのため、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが冷媒配管P2で接続され、これら室外機2及び室内機3の中を同一の冷媒が循環している。第2冷媒系統RS2には、第2冷媒回路RC2の管理または運用に用いられる集中コントローラ4が含まれる。
【0029】
(1-2-2)室内機が集中コントローラと通信しない業務用の空気調和機
図3に示されている空気調和機122は、少なくとも、室外機2と、複数の室内機3とを備えている。業務用の空気調和機122では、室外機2と複数の室内機3とが互いに通信できるように繋がれていて、目的とする空間の空気調和を行う。図2に示されている業務用の空気調和機121と、図3に示されている業務用の空気調和機122とが異なる点は、集中コントローラ4が直接室内機3と接続されているか否かである。ただし、集中コントローラ4が例えば室外機2のみと接続されていて、室外機2を経由して室内機3と集中コントローラ4が間接的に接続されている空気調和機も、室内機が集中コントローラと通信しない業務用の空気調和機122である。このような態様の空気調和機122では、室内機3から見ると、室外機2と通信しているだけであるため、室内機3は、集中コントローラ4との通信についての制御を必要としない。
【0030】
業務用の空気調和機122も、ビル用マルチ型の空気調和機110とは異なり、室外機2への電力供給のために室外機2は商用電源901に接続され、室内機3への電力供給は、例えば室外機2を介して商用電源901から行われる。
【0031】
複数の室内機3には、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cが含まれている。ここでは、業務用の空気調和機122が、1つの冷媒系統である第1冷媒系統RS1を備えている場合について説明するが、図1に示されているビル用マルチ型の空気調和機110と同様に複数の冷媒系統を備えるように構成されてもよい。
【0032】
室外機2、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cが第1冷媒系統RS1の中核をなす第1冷媒回路RC1を形成している。そのため、室外機2、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cが冷媒配管P1で接続され、これら室外機2と複数の室内機3の中を同一の冷媒が循環している。
【0033】
(1-3)住宅用の空気調和機
(1-3-1)集中コントローラを備える住宅用の空気調和機
図4に示されている空気調和機131は、図2の業務用の空気調和機121と同様に、室外機2と室内機3と集中コントローラ4とを備えている。しかし、住宅用の空気調和機131に含まれている室外機2と室内機3とはそれぞれ1台ずつであり、互いにペアになっている。住宅用の空気調和機131では、室外機2と室内機3とが互いに通信できるように繋がれ、室内機3と集中コントローラ4とが互いに通信できるように繋がれていて、目的とする空間の空気調和を行う。
【0034】
住宅用の空気調和機131も、業務用の空気調和機121と同様に、室外機2への電力供給のために室外機2は商用電源901に接続され、室内機3への電力供給は、例えば室外機2を介して商用電源901から行われる。このように、住宅用の空気調和機131においては、室外機2と室内機3とを駆動するための商用電源901が同系統になっている。
【0035】
住宅用の空気調和機131では、室外機2と室内機3が冷媒配管P1で接続され、これら1台の室外機2と1台の室内機3の中を同一の冷媒が循環する。このように第1冷媒回路RC1には1台の室外機2と1台の室内機3のみが含まれ、冷媒系統である第1冷媒系統RS1に属する機器が、1台の室外機2と1台の室内機3との接続に限定される。そのため、住宅用の空気調和機131では、後述する複数の室内機3が何れの冷媒系統に属しているかを認識するための系統認識を行う必要がない。室内機3の管理または運用に用いられる集中コントローラ4は、室内機3に接続されている。
【0036】
(1-3-2)集中コントローラを備えていない住宅用の空気調和機
図5に示されている住宅用の空気調和機132は、図4に示されている住宅用の空気調和機131とは、集中コントローラ4を備えていない点で異なる。しかし、図5に示されている住宅用の空気調和機132において、集中コントローラ4を備えていない以外の構成は、図4に示されている住宅用の空気調和機131と同じである。
【0037】
(1-4)室内機3の構成
図1から図5に示されている空気調和機110,121,122,131,133にいずれも同じ構成の室内機3を用いることができる。図6には、室内機3の内部構成のうちの主に電気系統に関する内部の構成の一例が示されている。室内機3は、図2から図5に示されている室外機2を経由して商用電源901から電力を受けて、室内機3の内部の機器に電力を供給するための受電回路PR2を備えている。また、この受電回路PR2は、図1に示されているように、商用電源902に接続して商用電源902から電力の供給を受けることもできる。
【0038】
室内機3は、受電回路PR2によって室内機3の内部に供給される電力によって駆動するファンインバータ302、MCU303、高周波送受信回路304、低周波受信回路305及び低周波送受信回路306を備えている。ファンインバータ302は、室内機3に備えられている室内熱交換器(図示せず)に室内空気の気流を発生させるファン(図示せず)を作動させるためのインバータである。MCU303は、各室内機3の内部機器を制御するための制御部として機能する。
【0039】
受電回路PR2には、インピーダンスアッパー310と、第3のノイズフィルタ311と、整流回路312と、平滑回路313と、スイッチング電源314とが含まれている。インピーダンスアッパー310は、受電回路PR2のインピーダンスを上げて、カレントループCLを通して行われるカレントループ通信の信号が受電回路PR2に吸い込まれるのを抑制する。第3のノイズフィルタ311は、商用電源901または商用電源902から供給される電力に含まれているノイズを低減する。整流回路312は、ノイズフィルタ211でノイズが低減された交流電力を直流電力に変換する整流を行って直流電力を出力する。平滑回路313は、整流回路312の出力に含まれている脈動を低減する。平滑回路313から出力される直流電力は、ファンインバータ302及びスイッチング電源314に供給される。スイッチング電源314は、平滑回路313から与えられる電圧よりも小さな直流電圧に変換して室内機3の内部の機器に供給する。スイッチング電源314は、例えば、MCU303、高周波送受信回路304、低周波受信回路305及び低周波送受信回路306に電力を供給する。
【0040】
室内機3は、給電配線W1の中の電力線L1と給電配線W1以外の信号線L2によって、室外機2との間でカレントループCLを形成できる。室内機3は、低周波送受信回路306よって、カレントループCLを介して低周波の電流信号の送受信を行うことができる。
【0041】
室内機3は、バンドパスフィルタ321と、結合回路322と、第4のノイズフィルタ323とを備えている。バンドパスフィルタ321は、高周波送受信回路304で送受信される高周波の電圧信号を通過させる。バンドパスフィルタ321は、結合回路322とノイズフィルタ323を介してカレントループCLの配線に接続されている。高周波の電圧信号の送受信のために、結合回路322は、直流成分を通過させずに交流成分を通過させる回路であって、例えばカップリングコンデンサにより、カレントループCLの配線で送信する高周波信号を通過させ、ノイズフィルタ323はノイズの低減を行う。高周波送受信回路304は、カレントループCLの配線を介して高周波の電圧信号を送受信することができる。なお、ノイズフィルタ323は、室内機3の構成から省くことができる。
【0042】
室内機3の高周波送受信回路304は、ハイパスフィルタ331を介して、信号配線W2に接続される。室内機3の低周波受信回路305は、ローパスフィルタ332を介して、信号配線W2に接続される。高周波送受信回路304は、信号配線W2を通して、高周波信号の送受信を行うことができる。室内機3の低周波受信回路305は、信号配線W2を通して、低周波信号を送信することができる。信号配線W2を通して送受信される低周波信号及び高周波信号は、電圧の変化によって情報を伝達する電圧信号である。
【0043】
(1-5)室内機の接続判定
室内機3のMCU303は、室外機2と協働して空気調和を行うために、空気調和機110,121,122,131,132のいずれに含まれているかを判定する。MCU303は、室外機2と協働して空気調和を行うために、低周波受信回路305、低周波送受信回路306及び高周波送受信回路304の使用についての選択を行う。
【0044】
低周波送受信回路306は、カレントループCLを用いて室外機2から送信される電流信号を受信できる第1受信回路である。低周波受信回路305は、電圧の変化を用いる通信のための低周波電圧信号を給電配線W1以外の信号配線W2を用いて受信する第2受信回路である。高周波送受信回路304は、電圧の変化を用いる通信のための電圧信号を送受信できる送受信回路である。高周波送受信回路304は、カレントループCLの配線を経由して、電圧の変化を用いる通信のための電圧信号を送受信する場合と、信号配線W2を経由して電圧信号を送受信する場合とがある。
【0045】
室内機3のMCU303は、例えば、図7に示されている判定のフローに従って、空気調和機110,121,122,131,132のいずれに含まれているかを判定する。まず、低周波送受信回路306からの入力信号があるか否かを判断する(ステップST1)。言い換えると、カレントループCLを用いて電流信号を受信しているか否かを判断する。MCU303は、低周波送受信回路306からの入力信号がない場合(ステップST1でNoの場合)には、低周波受信回路305からの系統認識の入力があるか否かを判断する(ステップST2)。MCU303は、低周波受信回路305からの系統認識の入力がある場合(ステップST2でYesの場合)には、室内機3が図1に示されているようなビル用マルチ型の空気調和機110に含まれていると判定する(ステップST3)。MCU303は、低周波受信回路305からの系統認識の入力がないと判断した場合(ステップST2でNoの場合)は、ステップST1に戻って判定を繰り返す。
【0046】
MCU303は、低周波送受信回路306からの入力信号があると判断した場合(ステップST1でYesの場合)には、高周波送受信回路304への電圧信号の入力があるか否かを判断する(ステップST4)。言い換えると、MCU303は、室内機3が空気調和に使用する高周波通信と系統認識を行う低周波通信とが同じカレントループCLの配線で送受信されているか否かを判断する。MCU303は、高周波送受信回路304への電圧信号の入力がある場合(ステップST4でYesの場合)には、低周波受信回路305からの信号入力があるか否かを判断する(ステップST5)。MCU303は、低周波受信回路305からの信号入力がある場合(ステップST5でYesの場合)には、室内機3が図2に示されているような業務用の空気調和機121に含まれていると判定する(ステップST6)。MCU303は、低周波受信回路305からの信号入力がない場合(ステップST5でNoの場合)には、室内機3が図3を用いて説明した業務用の空気調和機122に含まれていると判定する(ステップST7)。
【0047】
MCU303は、高周波送受信回路304への電圧信号の入力がない場合(ステップST4でNoの場合)には、低周波送受信回路306からの入力が室外機2との通常通信か否かを判断する(ステップST8)。ここで、室外機2との通常通信とは、系統認識のための通信以外の住宅用の空気調和機131,132の運転のための通信である。MCU303は、低周波送受信回路306からの入力が通常通信であると判断した場合(ステップST8でYesの場合)には、低周波受信回路305への信号入力があるか否かを判断する(ステップST9)。MCU303は、低周波受信回路305からの信号入力がある場合(ステップST9でYesの場合)には、室内機3が図4に示されている住宅用の空気調和機131に含まれていると判定する(ステップST10)。MCU303は、低周波受信回路305からの信号入力がない場合(ステップST9でNoの場合)には、室内機3が図5に示されている住宅用の空気調和機132に含まれていると判定する(ステップST11)。MCU303は、低周波送受信回路306からの入力が通常通信で無いと判断した場合(ステップST8でNoの場合)は、ステップST1に戻って判定を繰り返す。
【0048】
(1-6)室内機の通信に関する選択
MCU303は、ステップST3,ST6,ST7,ST10,ST11の判定結果に基づいて、室内機3の通信に用いる通信回路の選択を行う。
【0049】
MCU303は、室内機3がビルマル用マルチ型の空気調和機110に含まれていると判定した場合(ステップST3の場合)には、室外機2との物理的な接続の認識を行う第1通信状態で用いる通信回路として、低周波受信回路305の使用を選択する。この第1通信状態とは、言い換えると系統認識を行う通信状態である。空気調和機110の室内機3は、信号配線W2と低周波受信回路305を用いて、低周波の電圧信号により系統認識を行う、という通信に関する選択を行う。この系統認識により、室外機2と室内機3と集中コントローラ4の間で、空気調和機110の運転のための通信が可能になる。系統認識が終了した後、MCU303は、室外機2との間で空気調和機110の運転のための通信を行う第2通信状態で用いる通信回路として、高周波送受信回路304の使用を選択する。ビルマル用マルチ型の空気調和機110の運転のための通信では、高周波送受信回路304及び信号配線W2を使用して、室外機2と室内機3との間で高周波の電圧信号による送受信が行われる。このビルマル用マルチ型の空気調和機110では、室内機3の空気調和に使用する高周波通信と系統認識を行う低周波通信とが同じ信号配線W2で送信されている。
【0050】
MCU303は、室内機3が業務用の空気調和機121に含まれていると判定した場合(ステップST6の場合)には、系統認識を行う通信状態で用いる通信回路として、低周波受信回路305及び低周波送受信回路306の使用を選択する。空気調和機121の室内機3は、低周波送受信回路306とカレントループCLを用いて、低周波の電流信号により系統認識を行うとともに、低周波受信回路305と信号配線W2を用いて低周波の電圧信号により系統認識を行う、という通信に関する選択を行う。低周波送受信回路306とカレントループCLを用いて室内機3と室外機2との間の系統認識を行い、低周波受信回路305と信号配線W2を用いて室内機3と室外機2と集中コントローラ4との間で系統認識を行う。このように、空気調和機121が持っている2つの通信手段(低周波送受信回路306とカレントループCLを用いる通信手段と低周波受信回路305と信号配線W2を用いる通信手段)について、2つの系統認識が行われる。これら系統認識により、室外機2と室内機3と集中コントローラ4の間で、空気調和機121の運転のための通信が可能になる。
【0051】
系統認識が終了した後、MCU303は、室外機2及び集中コントローラ4との間で空気調和機121の運転のための通信を行う第2通信状態で用いる通信回路として、高周波送受信回路304の使用を選択する。業務用の空気調和機121の運転のための通信では、高周波送受信回路304並びにカレントループCLの配線及び信号配線W2を使用して、室外機2と室内機3と集中コントローラ4の間で高周波の電圧信号による送受信が行われる。業務用の空気調和機121では、室内機3が空気調和に使用する高周波通信と系統認識を行う低周波通信とが同じカレントループCLの配線で送受信され、また室内機3の空気調和に使用する高周波通信と系統認識を行う低周波通信とが同じ信号配線W2で送信されている。集中コントローラ4に対してカレントループCLを使って配線することが実用的ではないため、集中コントローラ4が同一系統に含まれる場合には、カレントループCLを用いる通信手段以外の通信手段である、信号配線W2を用いる通信手段を使用している。
【0052】
MCU303は、室内機3が業務用の空気調和機122に含まれていると判定した場合(ステップST7の場合)には、系統認識を行う通信状態で用いる通信回路として、低周波送受信回路306の使用を選択する。空気調和機121の室内機3は、低周波送受信回路306とカレントループCLを用いて、低周波の電流信号により系統認識を行う、という通信に関する選択を行う。この系統認識により、室外機2と室内機3の間で、空気調和機122の運転のための通信が可能になる。系統認識が終了した後、MCU303は、室外機2との間で空気調和機122の運転のための通信を行う第2通信状態で用いる通信回路として、高周波送受信回路304の使用を選択する。業務用の空気調和機122の運転のための通信では、高周波送受信回路304及びカレントループCLの配線を使用して、室外機2と室内機3との間で高周波の電圧信号による送受信が行われる。業務用の空気調和機122では、室内機3が空気調和に使用する高周波通信と系統認識を行う低周波通信とが同じカレントループCLの配線で送受信されている。
【0053】
MCU303は、室内機3が住宅用の空気調和機131に含まれていると判定した場合(ステップST10の場合)には、系統認識を行う通信状態で用いる通信回路としては、いずれの回路も選択しない。言い換えると、MCU303は、接続されている室外機2との通信を、系統認識を行うことなく、空気調和機131の運転のために行えることを認識する。また、MCU303は、信号配線W2を用い、系統認識のための通信とは異なる通信によって集中コントローラ4との通信を確立する。MCU303は、室外機2及び集中コントローラ4との間で空気調和機131の運転のための通信を行う第2通信状態で用いる通信回路として、高周波送受信回路304及び低周波送受信回路306の使用を選択する。住宅用の空気調和機131の運転のための室外機2との通信にはカレントループCLと低周波送受信回路306を使用し、住宅用の空気調和機131の運転のための集中コントローラ4との通信には信号配線W2と高周波送受信回路304を使用する。
【0054】
MCU303は、室内機3が住宅用の空気調和機132に含まれていると判定した場合(ステップST11の場合)には、系統認識を行う通信状態で用いる通信回路としては、いずれの回路も選択しない。言い換えると、MCU303は、接続されている室外機2との通信を、系統認識を行うことなく、空気調和機132の運転のために行えることを認識する。MCU303は、室外機2との間で空気調和機132の運転のための通信を行う第2通信状態で用いる通信回路として、低周波送受信回路306の使用を選択する。住宅用の空気調和機132の運転のための室外機2との通信にはカレントループCLと低周波送受信回路306を使用する。
【0055】
(2)空気調和機における系統認識と通信
空気調和機110,121,122は、空調制御に使用する高周波通信と系統内の機器接続の確認を行う低周波通信を同じ通信線路を用いて行う。これら空気調和機110,121,122は、系統認識に、高周波信号と低周波信号の少なくとも2つの異なる周波数の信号を用いる。高周波信号は、低周波信号よりも周波数の高い信号である。ここで、高周波信号を用いて行われる通信が高周波通信であり、低周波信号を用いて行われる通信が低周波通信である。本開示においては、高周波信号は、周波数が100kHz以上の信号であり、低周波信号は、周波数数が10kHz以下の信号である。
【0056】
(2-1)系統認識のための通信
上述のように、空気調和機110,121,122は、室外機2と室内機3の間で冷媒を循環させて、目的とする空間の空気調和を行うため、冷媒による熱エネルギーの移送を室外機2と室内機3の間で行う。そのため、空気調和機110,121,122は、空気調和のための操作を行う前に、冷媒の循環に合わせて通信対象を認識する。空気調和機110,121,122では、冷媒の循環に合った通信対象の認識が、系統認識である。
【0057】
本開示において共通する系統認識の概念は、熱エネルギーを運ぶ同一の媒体に関連している同一系統に属する機器を認識することである。系統認識で認識される同一系統には、空調を行うための熱エネルギーを運ぶ物理的に接続された経路を構成する室外機2と室内機3及び、それら室外機2と室内機3の管理または運用に用いられる集中コントローラ4が属する。熱エネルギーを運ぶ媒体には、蒸気圧縮式冷凍サイクルに用いられる冷媒、全空気熱輸送方式に用いられる空気、液温を管理しながら循環させられる水または熱媒体が含まれる。
【0058】
系統認識を行うときの空気調和機110,121,122の通信について、図8を用いて説明する。まず、系統認識のための通信を行うために、空気調和機110,121,122の電源が投入される(ステップST11)。第1信号配線Sg1に接続されている第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3c及び集中コントローラ4、または、空気調和機110,121については第2信号配線Sg2に接続されている第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e、第6室内機3f及び集中コントローラ4が、通信のためのネットワークを確立する(ステップST12)。空気調和機110,121では、例えば、第1室外機2aまたは第2室外機2bが、高周波信号を使い、第1信号配線Sg1と第2信号配線Sg2に接続されている構成機器に対して、通信信号の送受信を行うことにより、ネットワークの確立を行う。空気調和機122では、例えば、室外機2が、高周波信号を使い、第1信号配線Sg1に接続されている構成機器に対して、通信信号の送受信を行うことにより、ネットワークの確立を行う。
【0059】
ネットワークを確立した後、構成機器は、それぞれ、通信アドレスを取得する(ステップST13)。構成機器は、例えばMCU(Micro-Control Unit(マイクロコントローラ))を備えており、MCUを用いて自動的に通信アドレスを取得する機能を有している。構成機器は、前述の機能を使って、互いに重複しない通信アドレスを取得することができる。
【0060】
室外機2、または集中コントローラ4を備える場合には室外機2及び集中コントローラ4は、高周波信号を使った通信により協調し、ネットワーク上の1台の認識機器を選出する(ステップST14)。図1図2の空気調和機110,121の場合、第1室外機2aと第2室外機2bと集中コントローラ4が競合関係になるが、いずれかが選出されるように予め設定されている。例えば、第1室外機2aと第2室外機2bと集中コントローラ4のうち、先に高周波信号を送信した機器が、認識機器に選出されるように設定されている。図3の空気調和機122の場合は、競合関係になる機器がないので認識機器は室外機2に決定される。
【0061】
以降の説明は、図1図2の空気調和機110,121について行う。図1図2の空気調和機110,121において、例えば、第1室外機2aが選出された場合について説明する。第1室外機2aが選出されると、第2室外機2bと集中コントローラ4は、認識機器の候補から被認識機器に、役割を変更する。認識機器の候補から被認識機器に役割を変更するとは、言い換えると、第2室外機2bと集中コントローラ4が第1室外機2aから送られてくる低周波信号を受信可能な状態になるということである。
【0062】
選出された認識機器は、冷媒系統を認識するために、低周波信号を送信する(ステップST15)。例えば、第1室外機2aが選出された場合、第1室外機2aは、第1信号配線Sg1に第1冷媒系統RS1を認識のため低周波信号を送信する。第1信号配線Sg1を使って送信される低周波信号は、第2信号配線Sg2に接続されている第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fには伝わらない。第1信号配線Sg1に送信された低周波信号が第2信号配線Sg2に送信されないようにするために、例えば、第1信号配線Sg1と第2信号配線Sg2が、高周波信号を通過させ且つ低周波信号を通過させないハイパスフィルタ(図示せず)を介して接続されている。
【0063】
第1室外機2aは、低周波信号の送信と同時に、または低周波信号の送信と前後して、自己の通信アドレスを、高周波信号で送信する。第1信号配線Sg1を通して低周波信号を受信し且つ高周波信号で第1室外機2aの通信アドレスを受信した第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4は、それぞれのMCUのメモリ(図示せず)に、受信した通信アドレス(第1室外機2aの通信アドレス)を記憶する。
【0064】
低周波信号と認識機器の通信アドレスを受信した被認識機器は、自己の通信アドレスを、高周波信号を使って、認識機器の通信アドレス宛に送信する(ステップST16)。第1室外機2aが選出された場合、第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4が自己の通信アドレスを、第1室外機2aの通信アドレス宛に高周波信号を使って第1信号配線Sg1を通して送信する。第1室外機2aが選出された場合、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fは、第1室外機2aから低周波信号を受信していないので、第1室外機2aに対して自己の通信アドレスを送信することはない。
【0065】
選出された認識機器は、送られてきた被認識機器の通信アドレスを持つ構成機器を同一系統のリストに登録する(ステップST17)。第1室外機2aが選出された場合、第1室外機2aは、第1信号配線Sg1を通して自己の通信アドレスに宛てて送られてきた第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4の通信アドレスを同一系統リストに順次追加していく。第1室外機2aは、同一系統リストを保持することで、自己に加え、自己以外のいずれの構成機器が第1冷媒系統RS1に属している構成機器であるか、ということを認識することができるようになる。
【0066】
選出された認識機器は、自己が属する冷媒系統の全ての被認識機器の登録を完了すると、自己が属する冷媒系統の系統認識が完了したことをネットワーク全体に通知する(ステップST18)。第1室外機2aが選出された場合、第1信号配線Sg1に接続されている構成機器の登録を完了すると、第1室外機2aは、第1信号配線Sg1及び第2信号配線Sg2を通して、第1冷媒系統RS1の系統認識が完了したことをネットワーク全体に通知する。
【0067】
一つの冷媒系統の系統認識が完了した通知を受けると、系統認識が完了していない認識機器があるか否かの判断が行われる(ステップST19)。先に、第1室外機2aが選出された場合、第1室外機2aによる系統認識が完了しても、第2室外機2bによる第2冷媒系統RS2の系統認識が完了していない(ステップST19のYes)。このような場合には、室外機2と集中コントローラ4は、高周波信号を使った通信により協調し、第2室外機2bを認識機器として選出する(ステップST14)。第2室外機2bが認識機器として選出された後は、上述の第1室外機2aが選出された場合と同様に、ステップST15からステップST19までの操作が繰り返される。これらの操作により、第2冷媒系統RS2の構成機器の系統認識が行われる。
【0068】
上述の系統認識のための通信の例では、第1信号配線Sg1と第2信号配線Sg2を通した高周波信号を使った通信によって、通信アドレスを使って通信先または通信元を特定する場合について説明した。しかし、通信先または通信元の特定は、通信アドレスを使った特定に限られるものではない。例えば、複数の室外機2、複数の室内機及び集中コントローラ4のそれぞれが有している固有のIDを使って、空気調和機110,121は、通信先または通信元を特定するように構成されてもよい。
【0069】
(2-2)系統認識後の通信
系統認識が完了すると、第1室外機2aの同一系統のリストに、第1信号配線Sg1に接続されている第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4の通信アドレスが第1冷媒系統RS1として登録され、第4室内機3d、第5室内機3e、第6室内機3f及び集中コントローラ4の通信アドレスが第2冷媒系統RS2として登録される。
【0070】
第1室外機2aは、同一系統リストを使って、同じ冷媒系統に属する第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4を特定することができる。これら特定された第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4、並びに第1室外機2aが相互にデータを伝送することにより、第1冷媒系統RS1の蒸気圧縮式冷凍サイクルを適切に実施することができる。
【0071】
(2-3)空気調和機の構成の違いによる室内機の通信回路の違い
空気調和機110の室内機3(第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3f)は、系統認識のための通信に、低周波受信回路305及び信号配線W2を用いる。空気調和機110の室内機3は、系統認識後の空気調和機110の運転のための通信に、高周波送受信回路304及び信号配線W2を用いる。
【0072】
空気調和機121,122の室内機3は、系統認識のための通信に、低周波送受信回路306及びカレントループCLを用いる。空気調和機121,122の室内機3は、系統認識後の空気調和機121,122の運転のための通信に、高周波送受信回路304及びカレントループCLの配線を用いる。
【0073】
(2-2-1)空気調和機1の初期動作にあるときの通信
例えば、空気調和機110,121を設置して最初に起動する初期動作の状態のときに、空気調和機1は、第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cを他の構成機器と区別することにより、第1冷媒回路RC1を適切に動作させることができる。第1冷媒回路RC1の設置後の起動のために、第1冷媒系統RS1に属する室外機2、室内機3または集中コントローラ4から送信された高周波信号は、第1信号配線Sg1だけでなく、第2信号配線Sg2にも伝わる。しかしながら、第1冷媒回路RC1の起動のために送信された高周波信号は、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが属する第2冷媒系統RS2には無関係な高周波信号になる。系統認識が完了していることにより、これら第2冷媒回路RC2に含まれる室外機2及び室内機3は、第1冷媒回路RC1の起動のために第1冷媒系統RS1に属する構成機器から送信された高周波信号に含まれるデータを、第2冷媒回路RC2の通常運転のための情報として使用しなくなる。例えば、第1室外機2aから第1冷媒回路RC1に属する室内機3への指示は、第1信号配線Sg1を通して高周波信号を使って行うことができる。このとき、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2信号配線Sg2にも伝わるが、第1室外機2aにとって第2冷媒回路RC2が系統外である。そのため、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2冷媒回路RC2に含まれる室内機3に対する起動のための信号として認識されることはない。同様に、空気調和機110,121の初期状態のときに、空気調和機110,121は、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fを他の構成機器と区別することにより、第2冷媒回路RC2を適切に動作させることができる。例えば、第2室外機2bから第2冷媒回路RC2に属する室内機3への指示は、第2信号配線Sg2を通して高周波信号を使って行うことができる。空気調和機110,121の初期状態は、その時点の動作のために過去の空気調和機110,121の動作状態に関する情報を連続して用いることができない状態である。例えば、空気調和機110,121の設置後に最初に起動するとき及び空気調和機110,121の更新後に最初に起動するときなどは、起動以前及び更新以前のことを考慮に入れずに新たに動作が始まる。空気調和機110,121の設置後に最初に起動するとき及び空気調和機110,121の更新後に最初に起動するときは、空気調和機110,121の初期状態の例である。
【0074】
(2-2-2)空気調和機110,121の通常の運転状態にあるときの通信
空気調和機110,121の第1冷媒系統RS1が通常の運転状態にあるとき、第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4は、高周波信号を用いて相互に通信することができ、第1冷媒系統RS1の運転に必要な情報を相互に交換することができる。また、空気調和機110,121の第2冷媒系統RS2が通常の運転状態にあるとき、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e、第6室内機3f及び集中コントローラ4は、高周波信号を用いて相互に通信することができ、第2冷媒系統RS2の運転に必要な情報を相互に交換することができる。
【0075】
第1冷媒回路RC1の通常運転の情報を送るために第1冷媒系統RS1に属する室外機2、室内機3または集中コントローラ4から送信された高周波信号は、第1信号配線Sg1だけでなく、第2信号配線Sg2にも伝わる。しかしながら、第1冷媒回路RC1の通常運転に係る情報を送るための高周波信号は、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが属する第2冷媒系統RS2には無関係の高周波信号になる。系統認識が完了していることにより、第2冷媒回路RC2に含まれる室外機2及び室内機3は、第1冷媒回路RC1の通常運転のために第1冷媒系統RS1に属する構成機器から送信された高周波信号に含まれるデータを、第2冷媒回路RC2の通常運転のための情報として使用しなくなる。例えば、通常運転時に、第1室外機2aは、第1冷媒系統RS1に属する構成機器である第1室内機3a、第2室内機3bまたは第3室内機3cに対し、空調能力を変更するように、高周波信号を使い、第1信号配線Sg1を通して指示することができる。このとき、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2信号配線Sg2にも伝わるが、第1室外機2aにとって第2冷媒回路RC2が系統外である。そのため、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2冷媒回路RC2に含まれる室内機3に対する空調能力を変更するための信号として認識されることはない。通常運転時に、第2室外機2bが第2冷媒系統RS2に属する室内機3に対し、空調能力を変更するように、高周波信号を使い、第2信号配線Sg2を通して指示することができるのは、前述の第1室外機2aの通常運転時と同様である。
【0076】
(3)室外機2と室内機3の配線の接続
業務用の空気調和機121の室外機2と室内機3の接続の一例が図9及び図10に示されている。業務用の空気調和機121に室内機3が用いられている場合、室内機3は、室外機2から電力が供給される。室外機2には、商用電源901から電力が供給される。
【0077】
(3-1)室外機
室外機2は、商用電源901から電力を受けて、室外機2の内部の機器に電力を供給するための受電回路PR1を備えている。室外機2は、受電回路PR1によって室外機2の内部に供給される電力によって駆動するインバータ201、ファンインバータ202、MCU203、高周波送受信回路204、低周波送信回路205及び低周波送受信回路206を備えている。インバータ201は、例えば圧縮機(図示せず)を駆動させるための電力を圧縮機に供給する。ファンインバータ202は、室外機2に備えられている室外熱交換器(図示せず)に室外空気の気流を発生させるファン(図示せず)を作動させるためのインバータである。MCU203は、室外機2の内部機器を制御するための制御部として機能する。
【0078】
受電回路PR1には、第1のノイズフィルタ211と、整流回路212と、平滑回路213と、スイッチング電源214とが含まれている。第1のノイズフィルタ211は、商用電源901から供給される電力に含まれているノイズを低減する。整流回路212は、ノイズフィルタ211でノイズが低減された交流電力を直流電力に変換する整流を行って直流電力を出力する。平滑回路213は、整流回路212の出力に含まれている脈動を低減する。平滑回路213から出力される直流電力は、インバータ201及びファンインバータ202に供給される。スイッチング電源214は、ノイズフィルタ211でノイズが低減された交流電力を直流電力に変換する整流を行って直流電力を室外機2の内部の機器に出力する。スイッチング電源214は、例えば、MCU203、高周波送受信回路204、低周波送信回路205及び低周波送受信回路206に電力を供給する。
【0079】
室外機2には、商用電源901からの電力を室内機3に供給するための給電配線W1が接続されている。室外機2は、給電配線W1で室内機3に電力を与えるために電力に重畳した高周波ノイズを低減するためのローパスフィルタ207を備えている。
【0080】
室外機2は、給電配線W1の中の電力線L1と給電配線W1以外の信号線L2によって、室内機3との間でカレントループCLを形成している。室外機2は、低周波送受信回路206よって、カレントループCLを介して低周波の電流信号の送受信を行う。室外機2の低周波送受信回路206及び室内機3の低周波送受信回路306は、電流信号の周波数が給電配線W1に印加される商用電源901の周波数と同じに設定されることが好ましい。
【0081】
室外機2は、バンドパスフィルタ221と、結合回路222と、第2のノイズフィルタ223とを備えている。バンドパスフィルタ221は、高周波送受信回路204で送受信される高周波の電圧信号を通過させる。バンドパスフィルタ221は、結合回路222とノイズフィルタ223を介してカレントループCLに接続されている。高周波の電圧信号の送受信のために、結合回路222は直流成分を通過させずに交流成分を通過させ、ノイズフィルタ223はノイズの低減を行う。高周波送受信回路204は、カレントループCLの配線を介して高周波の電圧信号を送受信することができる。
【0082】
室外機2の高周波送受信回路204は、ハイパスフィルタ231を介して、信号配線W2に接続されている。室外機2の低周波送信回路205は、ローパスフィルタ232を介して、信号配線W2に接続されている。高周波送受信回路204は、信号配線W2を通して、高周波信号の送受信を行うことができる。室外機2の低周波送信回路205は、信号配線W2を通して、低周波信号を送信することができる。
【0083】
(4)空気調和機121,122の通信手段
(4-1)給電配線W1を用いる通信
例えば、室外機2と複数の室内機3が給電配線W1で接続されている場合、室外機2と室内機3は、給電配線W1を使ってカレントループ通信を行うことができる。カレントループCLを用いるカレントループ通信で使用される低周波信号は、室外機2の低周波送受信回路206から、電力線L1及び信号線L2を通して、室内機3の低周波送受信回路306に送られる。この低周波信号は、電力線L1と信号線L2を流れる電流の変化による電流信号である。このカレントループCLを使って送信される低周波信号は、例えば、前述の系統認識に用いられる。
【0084】
給電配線W1を用いる通信において、高周波信号は、室外機2の高周波送受信回路204から、バンドパスフィルタ221、結合回路222、ノイズフィルタ223、電力線L1と信号線L2、ノイズフィルタ323、結合回路322及びバンドパスフィルタ321を介して、室内機3の高周波送受信回路304に送信される。また、高周波信号は、室内機3の高周波送受信回路304から、バンドパスフィルタ321、結合回路322、ノイズフィルタ323、電力線L1と信号線L2、ノイズフィルタ223、結合回路222及びバンドパスフィルタ221を介して、室外機2の高周波送受信回路204に送信される。バンドパスフィルタ221は、ノイズフィルタ223と結合回路222を介してカレントループCLに接続されている。ノイズフィルタ223は、カレントループCLの配線から受信される高周波信号のノイズを低減する。高周波の電圧信号の送受信のために、結合回路322は、直流成分を通過させずに交流成分を通過させる回路である。結合回路322は、例えばカップリングコンデンサにより、高周波信号を通過させるこの高周波信号は、電力線L1と信号線L2に生じる電圧の変化による電圧信号である。この電力線L1及び信号線L2を使って送信される高周波信号は、例えば、前述の系統認識及び、系統認識後の空気調和機121の通常運転時の室外機2と室内機3の間の通信に用いられる。なお、ノイズフィルタ223は、室外機2の構成から省くこともできる。
【0085】
電力線L1と信号線L2の組を用いる場合の通信は、マルチチャンネル通信であり且つ電力線通信である通信方式による通信であることが好ましい。このような通信方式には、例えば、高速電力線搬送通信がある。高速電力線搬送方式には、例えば、HD-PLC(登録商標)がある。高周波送受信回路304は、周波数帯ごとに通信不能または通信困難の判定を行い、通信不能または通信困難と判定した周波数帯を第1周波数帯として用いないように構成されていることが好ましい。通信不能または通信困難と判定した周波数帯は、MCU303が記憶するように構成されてもよく、高周波送受信回路304が記憶するように構成されてもよく、MCU303及び高周波送受信回路304の外部に在るメモリ(図示せず)が記憶するように構成されてもよい。
【0086】
(4-2)信号配線W2を用いる通信
空気調和機121は、例えば、室外機2と複数の室内機3と集中コントローラ4が信号配線W2で接続されている場合、室外機2と室内機3と集中コントローラ4は、信号配線W2を使って通信を行うことができる。集中コントローラ4は、例えば、室外機2または室内機3と同様のMCUと高周波送受信回路と低周波受信回路を備えていて、高周波信号及び低周波信号での通信を行うことができる。集中コントローラ4の通信用の内部構成に室外機2または室内機3と同様の構成を用いることができるため、ここでは、集中コントローラ4の通信のための構成については説明を省略する。
【0087】
信号配線W2で送信される低周波信号は、室外機2の低周波送信回路205から、ローパスフィルタ232、信号配線W2及びローパスフィルタ332を介して、室内機3の低周波受信回路305に送られる。この低周波信号は、信号配線W2で発生する電圧の変化による電圧信号である。この信号配線W2を使って送信される低周波信号は、例えば、前述の系統認識に用いられる。
【0088】
信号配線W2を用いる通信において、高周波信号は、室外機2の高周波送受信回路204から、ハイパスフィルタ231、信号配線W2及びハイパスフィルタ331を介して、室内機3の高周波送受信回路304に送信される。また、高周波信号は、室内機3の高周波送受信回路304から、ハイパスフィルタ331、信号配線W2及びハイパスフィルタ231を介して、室外機2の高周波送受信回路204に送信される。この高周波信号は、信号配線W2に生じる電圧の変化による電圧信号である。この信号配線W2を使って送信される高周波信号は、例えば、前述の系統認識及び、系統認識後の空気調和機121の通常運転時の室外機2と室内機3の間の通信に用いられる。
【0089】
室外機2と室内機3の間で行われる低周波信号及び高周波信号の送受信と同様に、室外機2と集中コントローラ4との間で低周波信号と高周波信号の送受信を行うことができる。この場合、また、集中コントローラ4と室内機3との間で高周波信号の送受信を行うことができる。なお、集中コントローラ4と室内機3との高周波信号での通信は、集中コントローラ4の高周波送受信回路と室内機3の高周波送受信回路304とを用いて行うことができる。
【0090】
また、室外機2と室内機3の間で行われる低周波信号及び高周波信号の送受信と同様に、集中コントローラ4と室外機2及び室内機3との間で低周波信号と高周波信号の送受信を行うことができるように構成されてもよい。このように構成されるときには、例えば集中コントローラの通信ための構成は、室外機2の通信のための構成と同様に構成することができる。この場合、集中コントローラ4が送信した低周波信号を室外機2及び室内機3が受信する。
【0091】
なお、空気調和機122は、集中コントローラ4と室内機3が直接接続されることはない。従って、空気調和機122では、信号配線W2を用いた通信は行われない。
【0092】
(5)空気調和機110の通信手段
ビル用マルチ型の空気調和機110の場合、室内機3は、室外機2以外の商用電源902から電力が供給される。室外機2には、商用電源902とは異なる商用電源901から電力が供給される。空気調和機110では、室外機2と室内機3が給電配線W1で接続されていない。従って、ビル用マルチ型の室外機2は、カレントループ通信による通信手段を有していない。
【0093】
(5-1)信号配線W2を用いる通信
ビル用マルチ型の空気調和機110は、高周波送受信回路204と低周波送信回路205を用い、信号配線W2を通して、複数の室内機3及び集中コントローラ4との通信を行う。例えば、室外機2と複数の室内機3と集中コントローラ4が信号配線W2で接続されている場合、室外機2と室内機3と集中コントローラ4は、信号配線W2を使って通信を行うことができる。信号配線W2を用いた高周波送受信回路204と低周波送信回路205による通信については、上記実施形態で説明したので、ここではその説明を省略する。図11には、室内機3が一つしか示されていないが、図12に示されているように、空気調和機110には、互いに通信線で接続された複数の室内機3が含まれる。ビル用マルチ型の空気調和機110は、カレントループCLによる通信を行わないため、カレントループ通信に必要な構成が省かれている。
【0094】
(6)空気調和機131,132の通信手段
住宅用の空気調和機131の室外機2と室内機3と集中コントローラ4の接続は、図9に示されている空気調和機121の接続と同じになる。また、住宅用の空気調和機132の室外機2と室内機3の接続は、図9に示されている空気調和機121の接続から信号配線W2による接続を除いたものと同じになる。
【0095】
(7)変形例
(7-1)変形例A
上記実施形態では、空気調和機1において熱エネルギーを運ぶ媒体として、蒸気圧縮式冷凍サイクルに用いられる冷媒を例に挙げて説明した。しかし、熱エネルギーを運ぶ媒体は冷媒には限られない。空気調和機1において熱エネルギーを運ぶ媒体としては、例えば、全空気熱輸送方式に用いられる空気、液温を管理しながら循環させられる水または熱媒体がある。液温を管理しながら循環させられる水の場合の空気調和機としては、例えば、ファンコイルユニットと熱源機との組み合わせがある。また、全空気熱輸送方式に用いられる空気の場合の空気調和機としては、例えば、エアハンドリングユニットとエアハンドリングユニットから送られる空気を室内に吹出す吹出装置との組合せがある。
【0096】
(7-2)変形例B
上記実施形態の室内機3は、低周波送受信回路306を備え、住宅用の空気調和機131,132に組み込めるように構成されている。しかし、室内機3は、ビル用マルチ型の空気調和機110及び業務用の空気調和機121,122に組み込めるように構成し、住宅用の空気調和機131,132に組み込めない構成とすることもできる。その場合には、室内機3の低周波送受信回路306に変えて受信のみができる低周波受信回路を用い、室外機2の低周波送受信回路206に低周波送信回路を用いてもよい。
【0097】
(8)特徴
(8-1)
上記実施形態及び変形例に係る室内機3は、室外機2を備える空気調和機121,122に組み込むことができる。空気調和機121,122の室内機3は、受電回路PR2と第1受信回路である低周波送受信回路306と送受信回路である高周波送受信回路304と制御部であるMCU303とを備える。受電回路PR2は、給電配線W1によって、室外機2に接続して室外機2を介して受電でき、及び室外機2以外に接続しても受電できる。受電回路PR2は、室外機2以外の商用電源902に接続して受電できる。低周波送受信回路306は、給電配線W1に含まれている電力線L1で形成されるカレントループCLを用いて室外機2から送信される電流信号を受信できる。高周波送受信回路304は、電圧の変化を用いる通信のための電圧信号を送受信できる。MCU303は、室外機2との物理的な接続の認識を行う第1通信状態である系統認識のための通信状態と、室外機2との間で空気調和機121,122の運転のための通信を行う第2通信状態に関して通信回路の選択を行う。
【0098】
空気調和機121,122では、MCU303が、系統認識の通信状態では、カレントループCLを用いて通信する低周波送受信回路306を選択する。空気調和機121,122では、MCU303が、カレントループCLの配線を用いて通信する高周波送受信回路304を選択する。給電配線W1によって室外機2と室内機3の受電回路PR2とが接続される場合に、ノイズに強いカレントループCLによる通信を用いることにより室外機2との物理的な接続の認識ができる。給電配線W1により室外機2と接続されない場合には、MCU303により、例えば、空気調和機110のように、信号配線W2を用いた高周波送受信回路304を使用する、カレントループ通信以外の通信によって、室外機2との物理的な接続の認識ができる。
【0099】
(8-2)
空気調和機121,122の送受信回路である高周波送受信回路304が通信に用いる周波数は、第1受信回路である低周波送受信回路306が通信に用いる周波数よりも高い。係る構成により、空気調和機121,122の運転のための通信では、多くのデータ量を短時間で送受信することができる。
【0100】
(8-3)
空気調和機121,131の制御部であるMCU303は、図7のステップST6,ST10と判定した場合のように、カレントループCLを用いて電流信号を受信し且つ信号配線W2を通して電圧信号を受信する場合がある。このような場合には、MCU303は、系統認識の通信状態(第1通信状態の例)のときに第1受信回路である低周波送受信回路306及び送受信回路である高周波送受信回路304の使用を選択する。このような選択により、室外機2と室内機3だけでなく、集中コントローラ4も含めて系統認識を行うことができる。MCU303は、空気調和機121,131の運転のための通信を行う第2通信状態のときには、低周波送受信回路306ではなく、高周波送受信回路304の使用を選択する。室内機3では、給電配線W1によって室外機2と室内機3の受電回路PR2とが接続される場合に、インピーダンスの低い給電配線W1を使い、ノイズに強いカレントループCLによる通信を用いることにより、室外機2との物理的な接続の認識を確実に行うことができる。
【0101】
(8-4)
系統認識の通信状態において、低周波送受信回路306が受信する電流信号の周波数は、給電配線W1に印加される商用電源901の周波数と同じに設定してもよい。このように設定されている場合、室外機2の電流信号の発信源に商用電源901から供給される電源周波数を用いることができ、室内機3に接続する室外機2の構成を簡素化し易くなる。
【0102】
(8-5)
室内機3の高周波送受信回路304は、電力線通信であり且つマルチチャネル通信である通信方法により電圧信号の送受信を行うことが好ましい。このような通信方式には、例えば、高速電力線搬送通信がある。高速電力線搬送方式には、例えば、HD-PLC(登録商標)がある。高速電力線搬送通信を用いることで、室外機2と室内機3との間で通信用の配線を増やすことなく、高速でデータの送受信を行わせることができる。
【0103】
(8-6)
空気調和機110,121,131に組み込まれた室内機3の送受信回路である高周波送受信回路304は、給電配線W1以外の信号線である信号配線W2を用いて送受信を行う。このように構成された室内機3では、受電回路PR2が室外機2以外に接続される場合でも、給電配線W1以外の信号配線W2を用いて、室外機2との空気調和機110,121,131の運転のための通信を行うことができる。
【0104】
(8-7)
空気調和機110に組み込まれた室内機3は、電圧の変化を用いる通信のための低周波電圧信号を給電配線W1以外の信号配線W2を用いて受信する第2受信回路である低周波受信回路305を備える。空気調和機110の室内機3の高周波送受信回路304は、低周波電圧信号よりも周波数が高い高周波電圧信号を送受信する。空気調和機110の室内機3のMCU303は、電流信号を受信せず且つ低周波電圧信号を受信したときは、第1通信状態である系統認識の通信状態のときに第1受信回路である低周波送受信回路306を用いずに低周波受信回路305と高周波送受信回路304を用いる。第2通信状態である空気調和機110の運転のための通信状態のときには、低周波送受信回路306と低周波受信回路305とを用いずに高周波送受信回路304を用いる。このように、室内機3は、ビル用マルチ型の空気調和機110に適用することができる。
【0105】
(8-8)
住宅用の空気調和機131,132に組み込まれた室内機3では、低周波送受信回路306は、室外機2との間でカレントループCLを用いて電流信号の送受信ができるカレントループ通信回路として機能する。空気調和機131,132の制御部であるMCU303は、系統認識の通信状態(第1通信状態)で室外機2との物理的な接続の認識ができなかったときは、空気調和機131,132の運転のための通信状態(第2通信状態)のときに低周波受信回路305と高周波送受信回路304を用いずに低周波送受信回路306(カレントループ通信回路)を用いて室外機2との送受信を行う。一つの室外機2から見て室内機3が常に一つ決まるような接続の場合に、室内機3は、カレントループCLだけを用いて室外機2との間で通信する住宅用の空気調和機131,132のような形態にも対応できる。
【0106】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0107】
2,2a,2b 室外機
3,3a~3f 室内機
303 MCU(制御部の例)
304 高周波送受信回路(送受信回路の例)
305 低周波受信回路(第2受信回路の例)
306 低周波送受信回路(第1受信回路の例)
PR2 受電回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】
【特許文献1】特開2013-137119号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12