(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185182
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】システム構成機器
(51)【国際特許分類】
F24F 11/58 20180101AFI20221207BHJP
【FI】
F24F11/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092680
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮介
(72)【発明者】
【氏名】小山 陽平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽太
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和陽
(72)【発明者】
【氏名】粉川 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】東山 伸
(72)【発明者】
【氏名】堀田 浩介
(72)【発明者】
【氏名】石関 晋一
(72)【発明者】
【氏名】熊田 俊昭
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA52
3L260BA56
3L260BA66
3L260CB85
3L260DA10
3L260EA06
3L260FC33
3L260GA17
3L260JA17
(57)【要約】
【課題】空調システムを構成するシステム構成機器のデータ送信について、ノイズの影響よる不具合を抑制する。
【解決手段】制御部であるMCU203は、空調システム1が所定条件を満たすか否かを判断する。MCU203は、所定条件が満たされたとき、室内機3,3a-3f及び集中コントローラ4に対し、同じ情報を含む第1データ送信と第2データ送信の両方を、高周波送受信回路204、高周波送受信回路204と低周波送信回路205の組みまたは高周波送受信回路204と低周波送信回路205の組みに行わせる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに通信できるように通信線(L1,L2,W2)で繋がれていて、目的とする空間の空気調和を行う空調システム(1)を構成しているシステム構成機器群の中の1つのシステム構成機器(2,2a,2b,3,3a-3f,4)であって、
前記システム構成機器群の中の他の機器(3,3a-3f,4,2,2a,2b)に対し前記通信線を介して第1周波数帯でデータ送信を行う第1データ送信を行い、前記他の機器に対し前記通信線を介して前記第1周波数帯とは異なる第2周波数帯でデータ送信を行う第2データ送信とを行う送信部(204,205,206,304)と、
前記空調システムが所定条件を満たすか否かを判断する制御部(203,303)と
を備え、
前記制御部は、前記所定条件が満たされたとき、前記送信部に、前記第1データ送信と前記第2データ送信の両方を用いて同じ情報を、前記他の機器に対して送信させる、システム構成機器(2,2a,2b,3,3a-3f,4)。
【請求項2】
前記送信部(204,303)は、マルチチャンネル通信によって、前記第1データ送信と前記第2データ送信とを行う、
請求項1に記載のシステム構成機器(2,2a,2b,3,3a-3f,4)。
【請求項3】
前記送信部は、マルチチャンネル通信によって前記第1データ送信を行う第1送信部(204)と、カレントループ通信によって前記第2データ送信を行う第2送信部(206)とを含む、
請求項1に記載のシステム構成機器(2,2a,2b,3,3a-3f,4)。
【請求項4】
前記送信部は、周波数帯ごとに通信不能または通信困難の判定を行い、通信不能または通信困難と判定した周波数帯を前記第1周波数帯として用いないように構成されている、
請求項2または請求項3に記載のシステム構成機器(2,2a,2b,3,3a-3f,4)。
【請求項5】
前記送信部(204)は、前記マルチチャンネル通信であり且つ電力線通信である通信方式によって、前記第1データ送信を行う、
請求項2から4のいずれか一項に記載のシステム構成機器(2,2a,2b,3,3a-3f,4)。
【請求項6】
前記制御部は、前記所定条件として、前記空調システムが初期動作の状態にあるという条件、前記空調システムが異常状態にあるという条件、または前記空調システムにおいて冷媒の漏洩が検知されたという条件を用いて、前記所定条件が満たされたか否かを判断し、
前記制御部は、前記空調システムが初期動作の状態にあるとき、前記空調システムが異常状態にあるとき、または前記空調システムにおいて冷媒の漏洩が検知されたとき、前記送信部に、前記第1データ送信と前記第2データ送信の両方を用いて前記他の機器に対し、同じ情報を送信させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム構成機器(2,2a,2b,3,3a-3f,4)。
【請求項7】
前記制御部は、前記所定条件として、前記空調システムが運転状態にあるという条件を用いて、前記所定条件が満たされたか否かを判断し、
前記制御部は、前記空調システムが運転状態にあるとき、前記送信部に、前記第1データ送信と前記第2データ送信の両方を用いて前記他の機器に対し、同じ情報を送信させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム構成機器(2,2a,2b,3,3a-3f,4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空調システムを構成しているシステム構成機器群の中の1つのシステム構成機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1(特開2020-167580号公報)に記載されているように、空調システムにおいて周波数が異なる高周波信号と低周波信号を用いて、空調システムを構成する室外機及び室内機などの複数のシステム構成機器の間で通信が行われている。特許文献1の空調システムでは、システム構成機器が互いに通信できるように通信線で繋がれている。例えば熱エネルギーを運ぶ冷媒に関連する一群のシステム構成機器群について系統認識を行うために、低周波信号が用いられる。このようにネットワーク化された空調システムのシステム構成機器群では、系統認識後に、同一系統に属するシステム構成機器群の間で情報を伝達して空調システムを運転するためのデータ通信に、高周波信号が用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されている空調システムでは、例えば、高周波信号のデータ送信がノイズによる影響を受けた場合、高周波信号のデータ送信に不具合が発生する場合がる。例えば、異常の発生により空調システムを緊急に停止させるデータを高周波信号でデータ送信した場合に、停止を通知するためのデータ送信に不具合が発生すると、空調システムに重大な損傷が発生することが考えられる。
【0004】
このように空調システムを構成するシステム構成機器には、ノイズの影響よるデータ送信の不具合を抑制するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点のシステム構成機器は、互いに通信できるように通信線で繋がれていて、目的とする空間の空気調和を行う空調システムを構成しているシステム構成機器群の中の1つのシステム構成機器である。システム構成機器は、システム構成機器群の中の他の機器に対し通信線を介して第1周波数帯でデータ送信を行う第1データ送信を行い、他の機器に対し通信線を介して第1周波数帯とは異なる第2周波数帯でデータ送信を行う第2データ送信とを行う送信部と、空調システムが所定条件を満たすか否かを判断する制御部とを備えている。制御部は、所定条件が満たされたとき、送信部に、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を、他の機器に対して送信させる。
【0006】
第1観点のシステム構成機器では、第1データ送信と第2データ送信のいずれかでノイズの影響を受けたとしても、異なる第1周波数帯と第2周波数帯で同じ情報が送られているので、ノイズの影響を受けなかったデータ送信により、ノイズに起因して情報が他の機器で受信できなくなる不具合を抑制することができる。
【0007】
第2観点のシステム構成機器は、第1観点のシステム構成機器であって、送信部が、マルチチャンネル通信によって、第1データ送信と第2データ送信とを行う。
【0008】
第2観点のシステム構成機器では、マルチチャンネル通信を行える一つの送信部を使って、第1データ送信と第2データ送信を行えるネットワークを構築すればよいので、空調システムの構成が複雑になるのを抑制できる。
【0009】
第3観点のシステム構成機器は、第1観点のシステム構成機器であって、送信部が、マルチチャンネル通信によって第1データ送信を行う第1送信部と、カレントループ通信によって第2データ送信を行う第2送信部とを含む。
【0010】
第3観点のシステム構成機器では、カレントループ通信がノイズによる影響を受けにくいので、ノイズに起因して情報が他の機器で受信できなくなる不具合を十分に抑制することができる。
【0011】
第4観点のシステム構成機器は、第2観点または第3観点のシステム構成機器であって、送信部が、周波数帯ごとに通信不能または通信困難の判定を行い、通信不能または通信困難と判定した周波数帯を第1周波数帯として用いないように構成されている。
【0012】
第4観点のシステム構成機器では、送信部で通信不能または通信困難と判定した周波数帯を送信部が第1周波数帯として用いないことによって、第1データ送信を用いたデータ送信の確実性を向上させることができる。
【0013】
第5観点のシステム構成機器は、第2観点から第4観点のいずれかのシステム構成機器であって、送信部が、マルチチャンネル通信であり且つ電力線通信である通信方式によって、第1データ送信を行う。
【0014】
第6観点のシステム構成機器は、第1観点から第5観点のいずれかのシステム構成機器であって、制御部は、所定条件として、空調システムが初期動作の状態にあるという条件、空調システムが異常状態にあるという条件、または空調システムにおいて冷媒の漏洩が検知されたという条件を用いて、所定条件が満たされたか否かを判断する。制御部は、空調システムが初期動作の状態にあるとき、空調システムが異常状態にあるとき、または空調システムにおいて冷媒の漏洩が検知されたとき、送信部に、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて他の機器に対し、同じ情報を送信させる。
【0015】
第6観点のシステム構成機器では、初期動作の状態のとき、異常状態のときまたは冷媒の漏洩が検知されたときに、情報を受け取れないことによって生じる重大な不具合を抑制することができる。
【0016】
第7観点のシステム構成機器は、第1観点から第5観点のいずれかのシステム構成機器であって、制御部は、所定条件として、空調システムが運転状態にあるという条件を用いて、所定条件が満たされたか否かを判断する。制御部は、空調システムが運転状態にあるとき、送信部に、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて他の機器に対し、同じ情報を送信させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】空調システムの構成の一例を示す模式図である。
【
図2】系統認識のための空調システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】店舗用マルチエアコンを形成している室外機及び室内機の通信に関わる構成を説明するためのブロック図である。
【
図4】
図3の空調システムにおける複数の室内機の接続の一例を示すブロック図である。
【
図5】ビル用マルチエアコンを形成している室外機及び室内機の通信に関わる構成を説明するためのブロック図である。
【
図6】
図5の空調システムにおける複数の室内機の接続の一例を示すブロック図である。
【
図7】室外機と室内機の相互の送受信にカレントループ通信を用いる場合の構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)空調システムの構成
図1に示されている空調システム1は、複数の室外機2と、複数の室内機3と、集中コントローラ4とを備えている。この空調システム1は、互いに通信できるように通信線でシステム構成機器が繋がれていて、目的とする空間の空気調和を行う空調システムの一例である。
図1には示されていないが、複数の室外機2及び複数の室内機3は、空気調和のために、例えば熱交換器を備えている。また、複数の室外機2、複数の室内機3及び集中コントローラ4が、空調システムを構成しているシステム構成機器群を形成している。ここでは、空調システム1が集中コントローラ4を備える場合について説明するが、空調システム1において集中コントローラ4は選択的に設けられるシステム構成機器である。従って、集中コントローラ4を備えていない空調システムも存在する。集中コントローラ4を備えていない空調システムにも、本開示の技術は適用できる。
【0019】
複数の室外機2には、第1室外機2a及び第2室外機2bが含まれている。複数の室内機3には、第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが含まれている。従って、第1室外機2a、第2室外機2b、第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c、第4室内機3d、第5室内機3e、第6室内機3f及び集中コントローラ4が、それぞれ、システム構成機器群の中の1つのシステム構成機器に該当する。空調システム1は、2つの冷媒系統である第1冷媒系統RS1と第2冷媒系統RS2とを備えている。
【0020】
第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cが第1冷媒系統RS1の中核をなす第1冷媒回路RC1を形成している。そのため、第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cが冷媒配管P1で接続され、これら空調機器の中を同一の冷媒が循環している。第1冷媒系統RS1には、第1冷媒回路RC1の管理または運用に用いられる集中コントローラ4が含まれる。
【0021】
第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが第2冷媒系統RS2の中核をなす第2冷媒回路RC2を形成している。そのため、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが冷媒配管P2で接続され、これら空調機器の中を同一の冷媒が循環している。第2冷媒系統RS2には、第2冷媒回路RC2の管理または運用に用いられる集中コントローラ4が含まれる。
【0022】
(2)空調システム1における系統認識と通信
空調システムは、空調制御に使用する高周波通信と系統内の機器接続の確認を行う低周波通信を同じ通信線路を用いて行う。この空調システム1は、系統認識に、高周波信号と低周波信号の少なくとも2つの異なる周波数の信号を用いる。高周波信号は、低周波信号よりも周波数の高い信号である。高周波信号を用いて行われる通信が高周波通信であり、低周波信号を用いて行われる通信が低周波通信である。高周波信号を用いて行われる通信が高周波通信であり、低周波信号を用いて行われる通信が低周波通信である。本開示においては、高周波信号は、周波数が100kHz以上の信号であり、低周波信号は、周波数数が10kHz以下の信号である。
【0023】
(2-1)系統認識のための通信
上述のように、空調システム1は、室外機2と室内機3の間で冷媒を循環させて、目的とする空間の空気調和を行うため、冷媒による熱エネルギーの移送を室外機2と室内機3の間で行う。そのため、空調システム1は、空気調和のための操作を行う前に、冷媒の循環に合わせて通信対象を認識する。空調システム1では、冷媒の循環に合った通信対象の認識が、系統認識である。
【0024】
本開示において共通する系統認識の概念は、熱エネルギーを運ぶ同一の媒体に関連している同一系統に属する機器を認識することである。系統認識で認識される同一系統には、空調を行うための熱エネルギーを運ぶ物理的に接続された経路を構成する空調機器及び、それら空調機器の管理または運用に用いられる機器が属する。熱エネルギーを運ぶ媒体には、蒸気圧縮式冷凍サイクルに用いられる冷媒、全空気熱輸送方式に用いられる空気、液温を管理しながら循環させられる水または熱媒体が含まれる。
【0025】
系統認識を行うときの空調システム1の通信について、
図2を用いて説明する。まず、系統認識のための通信を行うために、空調システム1の電源が投入される(ステップST1)。第1信号配線Sg1に接続されている第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3c及び集中コントローラ4または、第2信号配線Sg2に接続されている第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e、第6室内機3f及び集中コントローラ4が、通信のためのネットワークを確立する(ステップST2)。例えば、第1室外機2aまたは第2室外機2bが、高周波信号を使い、第1信号配線Sg1と第2信号配線Sg2に接続されているシステム構成機器に対して、通信信号の送受信を行うことにより、ネットワークの確立を行う。
【0026】
ネットワークを確立した後、システム構成機器は、それぞれ、通信アドレスを取得する(ステップST3)。システム構成機器は、例えばMCU(Micro-Control Unit(マイクロコントローラ))を備えており、MCUを用いて自動的に通信アドレスを取得する機能を有している。システム構成機器は、前述の機能を使って、互いに重複しない通信アドレスを取得することができる。
【0027】
室外機2及び集中コントローラ4は、高周波信号を使った通信により協調し、ネットワーク上の1台の認識機器を選出する(ステップST4)。
図1の空調システム1の場合、第1室外機2aと第2室外機2bと集中コントローラ4が競合関係になるが、いずれかが選出されるように予め設定されている。例えば、第1室外機2aと第2室外機2bと集中コントローラ4のうち、先に高周波信号を送信した機器が、認識機器に選出されるように設定されている。
【0028】
ここでは、例えば、第1室外機2aが選出された場合について説明する。第1室外機2aが選出されると、第2室外機2bと集中コントローラ4は、認識機器の候補から被認識機器に、役割を変更する。認識機器の候補から被認識機器に役割を変更するとは、言い換えると、第2室外機2bと集中コントローラ4が第1室外機2aから送られてくる低周波信号を受信可能な状態になるということである。
【0029】
選出された認識機器は、冷媒系統を認識するために、低周波信号を送信する(ステップST5)。例えば、第1室外機2aが選出された場合、第1室外機2aは、第1信号配線Sg1に第1冷媒系統RS1を認識のため低周波信号を送信する。第1信号配線Sg1を使って送信される低周波信号は、第2信号配線Sg2に接続されている第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fには伝わらない。第1信号配線Sg1に送信された低周波信号が第2信号配線Sg2に送信されないようにするために、例えば、第1信号配線Sg1と第2信号配線Sg2が、高周波信号を通過させ且つ低周波信号を通過させないハイパスフィルタ(図示せず)を介して接続されている。
【0030】
第1室外機2aは、低周波信号の送信と同時に、または低周波信号の送信と前後して、自己の通信アドレスを、高周波信号で送信する。第1信号配線Sg1を通して低周波信号を受信し且つ高周波信号で第1室外機2aの通信アドレスを受信した第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4は、それぞれのMCUのメモリ(図示せず)に、受信した通信アドレス(第1室外機2aの通信アドレス)を記憶する。
【0031】
低周波信号と認識機器の通信アドレスを受信した被認識機器は、自己の通信アドレスを、高周波信号を使って、認識機器の通信アドレス宛に送信する(ステップST6)。第1室外機2aが選出された場合、第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4が自己の通信アドレスを、第1室外機2aの通信アドレス宛に高周波信号を使って第1信号配線Sg1を通して送信する。第1室外機2aが選出された場合、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fは、第1室外機2aから低周波信号を受信していないので、第1室外機2aに対して自己の通信アドレスを送信することはない。
【0032】
選出された認識機器は、送られてきた被認識機器の通信アドレスを持つシステム構成機器を同一系統のリストに登録する(ステップST7)。第1室外機2aが選出された場合、第1室外機2aは、第1信号配線Sg1を通して自己の通信アドレスに宛てて送られてきた第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4の通信アドレスを同一系統リストに順次追加していく。第1室外機2aは、同一系統リストを保持することで、自己に加え、自己以外のいずれのシステム構成機器が第1冷媒系統RS1に属しているシステム構成機器であるか、ということを認識することができるようになる。
【0033】
選出された認識機器は、自己が属する冷媒系統の全ての被認識機器の登録を完了すると、自己が属する冷媒系統の系統認識が完了したことをネットワーク全体に通知する(ステップST8)。第1室外機2aが選出された場合、第1信号配線Sg1に接続されているシステム構成機器の登録を完了すると、第1室外機2aは、第1信号配線Sg1及び第2信号配線Sg2を通して、第1冷媒系統RS1の系統認識が完了したことをネットワーク全体に通知する。
【0034】
一つの冷媒系統の系統認識が完了した通知を受けると、系統認識が完了していない認識機器があるか否かの判断が行われる(ステップST9)。先に、第1室外機2aが選出された場合、第1室外機2aによる系統認識が完了しても、第2室外機2bによる第2冷媒系統RS2の系統認識が完了していない(ステップST9のYes)。このような場合には、室外機2と集中コントローラ4は、高周波信号を使った通信により協調し、第2室外機2bを認識機器として選出する(ステップST4)。第2室外機2bが認識機器として選出された後は、上述の第1室外機2aが選出された場合と同様に、ステップST5からステップST9までの操作が繰り返される。これらの操作により、第2冷媒系統RS2のシステム構成機器の系統認識が行われる。
【0035】
上述の系統認識のための通信の例では、第1信号配線Sg1と第2信号配線Sg2を通した高周波信号を使った通信によって、通信アドレスを使って通信先または通信元を特定する場合について説明した。しかし、通信先または通信元の特定は、通信アドレスを使った特定に限られるものではない。例えば、複数の室外機2、複数の室内機及び集中コントローラ4のそれぞれが有している固有のIDを使って、空調システム1は、通信先または通信元を特定するように構成されてもよい。
【0036】
(2-2)系統認識後の通信
系統認識が完了すると、第1室外機2aの同一系統のリストに、第1信号配線Sg1に接続されている第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4の通信アドレスが第1冷媒系統RS1として登録され、第4室内機3d、第5室内機3e、第6室内機3f及び集中コントローラ4の通信アドレスが第2冷媒系統RS2として登録される。
【0037】
第1室外機2aは、同一系統リストを使って、同じ冷媒系統に属する第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4を特定することができる。これら特定された第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4、並びに第1室外機2aが相互にデータを伝送することにより、第1冷媒系統RS1の蒸気圧縮式冷凍サイクルを適切に実施することができる。
【0038】
(2-2-1)空調システム1の初期動作にあるときの通信
例えば、空調システム1を設置して最初に起動する初期動作の状態のときに、空調システム1は、第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cを他のシステム構成機器と区別することにより、第1冷媒回路RC1を適切に動作させることができる。第1冷媒回路RC1の設置後の起動のために、第1冷媒系統RS1に属する室外機2、室内機3または集中コントローラ4から送信された高周波信号は、第1信号配線Sg1だけでなく、第2信号配線Sg2にも伝わる。しかしながら、第1冷媒回路RC1の起動のために送信された高周波信号は、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが属する第2冷媒系統RS2には無関係な高周波信号になる。系統認識が完了していることにより、これら第2冷媒回路RC2に含まれる室外機2及び室内機3は、第1冷媒回路RC1の起動のために第1冷媒系統RS1に属するシステム構成機器から送信された高周波信号に含まれるデータを、第2冷媒回路RC2の通常運転のための情報として使用しなくなる。例えば、第1室外機2aから第1冷媒回路RC1に属する室内機3への指示は、第1信号配線Sg1を通して高周波信号を使って行うことができる。このとき、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2信号配線Sg2にも伝わるが、第1室外機2aにとって第2冷媒回路RC2が系統外である。そのため、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2冷媒回路RC2に含まれる室内機3に対する起動のための信号として認識されることはない。同様に、空調システム1の初期状態のときに、空調システム1は、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fを他のシステム構成機器と区別することにより、第2冷媒回路RC2を適切に動作させることができる。例えば、第2室外機2bから第2冷媒回路RC2に属する室内機3への指示は、第2信号配線Sg2を通して高周波信号を使って行うことができる。空調システム1の初期状態は、その時点の動作のために過去の空調システム1の動作状態に関する情報を連続して用いることができない状態である。例えば、空調システム1の設置後に最初に起動するとき及び空調システム1の更新後に最初に起動するときなどは、起動以前及び更新以前のことを考慮に入れずに新たに動作が始まる。空調システム1の設置後に最初に起動するとき及び空調システム1の更新後に最初に起動するときは、空調システム1の初期状態の例である。
【0039】
(2-2-2)空調システム1の通常の運転状態にあるときの通信
空調システム1の第1冷媒系統RS1が通常の運転状態にあるとき、第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4は、高周波信号を用いて相互に通信することができ、第1冷媒系統RS1の運転に必要な情報を相互に交換することができる。また、空調システム1の第2冷媒系統RS2が通常の運転状態にあるとき、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e、第6室内機3f及び集中コントローラ4は、高周波信号を用いて相互に通信することができ、第2冷媒系統RS2の運転に必要な情報を相互に交換することができる。
【0040】
第1冷媒回路RC1の通常運転の情報を送るために第1冷媒系統RS1に属する室外機2、室内機3または集中コントローラ4から送信された高周波信号は、第1信号配線Sg1だけでなく、第2信号配線Sg2にも伝わる。しかしながら、第1冷媒回路RC1の通常運転に係る情報を送るための高周波信号は、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが属する第2冷媒系統RS2には無関係の高周波信号になる。系統認識が完了していることにより、第2冷媒回路RC2に含まれる室外機2及び室内機3は、第1冷媒回路RC1の通常運転のために第1冷媒系統RS1に属するシステム構成機器から送信された高周波信号に含まれるデータを、第2冷媒回路RC2の通常運転のための情報として使用しなくなる。例えば、通常運転時に、第1室外機2aは、第1冷媒系統RS1に属するシステム構成機器である第1室内機3a、第2室内機3bまたは第3室内機3cに対し、空調能力を変更するように、高周波信号を使い、第1信号配線Sg1を通して指示することができる。このとき、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2信号配線Sg2にも伝わるが、第1室外機2aにとって第2冷媒回路RC2が系統外である。そのため、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2冷媒回路RC2に含まれる室内機3に対する空調能力を変更するための信号として認識されることはない。通常運転時に、第2室外機2bが第2冷媒系統RS2に属する室内機3に対し、空調能力を変更するように、高周波信号を使い、第2信号配線Sg2を通して指示することができるのは、前述の第1室外機2aの通常運転時と同様である。
【0041】
(2-2-3)空調システム1の異常状態にあるときの通信
空調システム1の第1冷媒系統RS1が異常状態にあるとき、第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4は、高周波信号を用いて相互に通信することができる。そのため、第1冷媒系統RS1に生じた異常への対応に必要な情報を相互に交換することができる。また、空調システム1の第2冷媒系統RS2が異常状態にあるとき、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e、第6室内機3f及び集中コントローラ4は、高周波信号を用いて相互に通信することができ、第2冷媒系統RS2における異常状態の対応に必要な情報を相互に交換することができる。
【0042】
第1冷媒回路RC1に関する異常状態の情報を送るために、第1冷媒系統RS1に属する室外機2、室内機3または集中コントローラ4から送信された高周波信号は、第1信号配線Sg1だけでなく、第2信号配線Sg2にも伝わる。しかしながら、第1冷媒回路RC1に関する異常状態の情報を送るために送信された高周波信号は、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが属する第2冷媒系統RS2には無関係な高周波信号になる。系統認識が完了していることにより、第2冷媒回路RC2に含まれる室外機2及び室内機3は、第1冷媒回路RC1の異常状態の情報を送るために送信された高周波信号に含まれるデータを、第2冷媒回路RC2の異常状態の情報としては使用しない。例えば、第1室外機2aの圧縮機(図示せず)の吐出温度が異常に高くなったときに、第1室外機2aは、第1冷媒系統RS1に属する第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4に対して、圧縮機の吐出温度異常に対応するように指示することができる。第1室外機2aから第1冷媒回路RC1に属する室内機3への指示及び集中コントローラ4への指示は、第1信号配線Sg1を通して高周波信号を使って行うことができる。このとき、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2信号配線Sg2にも伝わるが、第1室外機2aにとって第2冷媒回路RC2が系統外である。そのため、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2冷媒回路RC2に含まれる室内機3に対する圧縮機の吐出温度異常への対応の指示を与える信号として認識されることはない。このように、空調システム1の動作に異常状態が発生したとき、異常状態に関連する冷媒系統に属するシステム構成機器に限って、空調システム1は、異常状態への対策のための動作を指示することができる。ただし、空調システム1の異常状態は、圧縮機の吐出温度が過度に上昇するものには限られない。
【0043】
(2-2-4)空調システム1に冷媒漏洩が検知されたときの通信
空調システム1の第1冷媒系統RS1で冷媒の漏洩が検知されたとき、第1室外機2a、第1室内機3a、第2室内機3b、第3室内機3c及び集中コントローラ4は、高周波信号を用いて相互に通信することができ、第1冷媒系統RS1における冷媒漏洩への対応に必要な情報を相互に交換することができる。また、空調システム1の第2冷媒系統RS2で冷媒漏洩が検知されたとき、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e、第6室内機3f及び集中コントローラ4は、高周波信号を用いて相互に通信することができ、第2冷媒系統RS2における冷媒漏洩への対応に必要な情報を相互に交換することができる。
【0044】
第1冷媒回路RC1の冷媒漏洩に係る情報を送るために第1冷媒系統RS1に属する室外機2、室内機3または集中コントローラ4から送信された高周波信号は、第1信号配線Sg1だけでなく、第2信号配線Sg2にも伝わる。しかしながら、第1冷媒回路RC1の冷媒漏洩に係る情報を送るための高周波信号は、第2室外機2b、第4室内機3d、第5室内機3e及び第6室内機3fが属する第2冷媒系統RS2には無関係の高周波信号になる。系統認識が完了していることにより、第2冷媒回路RC2に含まれる室外機2及び室内機3は、第1冷媒回路RC1の冷媒漏洩に対応するために第1冷媒系統RS1に属するシステム構成機器から送信された高周波信号に含まれるデータを、第2冷媒回路RC2の冷媒漏洩の対応のための情報として使用しなくなる。例えば、第1冷媒回路RC1で冷媒漏洩が検知されたとき、第1室外機2aは、第1冷媒回路RC1を構成している第1室内機3a、第2室内機3b及び第3室内機3cに対して、第1冷媒回路RC1の冷媒漏洩に対応するように指示することができる。第1室外機2aから第1冷媒回路RC1に属する室内機3への指示は、第1信号配線Sg1を通して高周波信号を使って行うことができる。このとき、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2信号配線Sg2にも伝わるが、第1室外機2aにとって第2冷媒回路RC2が系統外である。そのため、第1室外機2aの送信した高周波信号は、第2冷媒回路RC2に含まれる室内機3に対する冷媒漏洩への対応の指示を与える信号として認識されることはない。第2冷媒回路RC2で冷媒漏洩が検知されたときも、同様に、第2室外機2bは、第2冷媒回路RC2を構成している第4室内機3d、第5室内機3e、第6室内機3fに対して第2信号配線Sg2を通して指示を行うことができる。このように、空調システム1の冷媒漏洩が検知されたとき、冷媒の漏洩している冷媒回路が属する冷媒系統のシステム構成機器に限って、空調システム1は、冷媒漏洩の対策のための動作を指示することができる。
【0045】
(3)室外機2と室内機3の配線の接続
空調システム1が店舗用マルチエアコンとして使用されている場合の室外機2と室内機3の接続の一例が
図3に示されている。空調システム1が店舗用マルチエアコンとして使用される場合、室内機3は、室外機2から電力が供給される。室外機2には、商用電源101から電力が供給される。
【0046】
(3-1)室外機
室外機2は、商用電源101から電力を受けて、室外機2の内部の機器に電力を供給するための受電回路PR1を備えている。室外機2は、受電回路PR1によって室外機2の内部に供給される電力によって駆動するインバータ201、ファンインバータ202、MCU203、高周波送受信回路204、低周波送信回路205及び低周波送信回路206を備えている。インバータ201は、例えば圧縮機(図示せず)を駆動させるための電力を圧縮機に供給する。ファンインバータ202は、室外機2に備えられている室外熱交換器(図示せず)に室外空気の気流を発生させるファン(図示せず)を作動させるためのインバータである。MCU203は、室外機2の内部機器を制御するための制御部として機能する。
【0047】
受電回路PR1には、第1のノイズフィルタ211と、整流回路212と、平滑回路213と、スイッチング電源214とが含まれている。第1のノイズフィルタ211は、商用電源101から供給される電力に含まれているノイズを低減する。整流回路212は、ノイズフィルタ211でノイズが低減された交流電力を直流電力に変換する整流を行って直流電力を出力する。平滑回路213は、整流回路212の出力に含まれている脈動を低減する。平滑回路213から出力される直流電力は、インバータ201及びファンインバータ202に供給される。スイッチング電源214は、ノイズフィルタ211でノイズが低減された交流電力を直流電力に変換する整流を行って直流電力を室外機2の内部の機器に出力する。スイッチング電源214は、例えば、MCU203、高周波送受信回路204、低周波送信回路205及び低周波送信回路206に電力を供給する。
【0048】
室外機2には、商用電源101からの電力を室内機3に供給するための給電配線W1が接続されている。室外機2は、給電配線W1で室内機3に電力を与えるために電力に重畳した高周波ノイズを低減するためのローパスフィルタ207を備えている。
【0049】
室外機2は、給電配線W1の中の電力線L1と給電配線W1以外の信号線L2によって、室内機3との間でカレントループCL1を形成している。室外機2は、低周波送信回路206よって、カレントループCL1を介して低周波の電流信号を送信する。
【0050】
室外機2は、バンドパスフィルタ221と、結合回路222と、第2のノイズフィルタ223とを備えている。バンドパスフィルタ221は、高周波送受信回路204で送受信される高周波の電圧信号を通過させる。バンドパスフィルタ221は、結合回路222とノイズフィルタ223を介してカレントループCL1に接続されている。高周波の電圧信号の送受信のために、結合回路222は直流成分を通過させずに交流成分を通過させ、ノイズフィルタ223はノイズの低減を行う。高周波送受信回路204は、カレントループCL1の配線を介して高周波の電圧信号を送受信することができる。
【0051】
室外機2の高周波送受信回路204は、ハイパスフィルタ231を介して、信号配線W2に接続されている。室外機2の低周波送信回路205は、ローパスフィルタ232を介して、信号配線W2に接続されている。高周波送受信回路204は、信号配線W2を通して、高周波信号の送受信を行うことができる。室外機2の低周波送信回路205は、信号配線W2を通して、低周波信号を送信することができる。
【0052】
(3-2)複数の室内機
複数の室内機3は、室外機2を経由して商用電源101から電力を受けて、室内機3の内部の機器に電力を供給するための受電回路PR2を備えている。後述するように、この受電回路PR2は、商用電源102(
図5参照)に接続して商用電源102から電力の供給を受けることもできる。各室内機3は、受電回路PR2によって室内機3の内部に供給される電力によって駆動するファンインバータ302、MCU303、高周波送受信回路304、低周波受信回路305及び低周波受信回路306を備えている。ファンインバータ302は、室内機3に備えられている室内熱交換器(図示せず)に室内空気の気流を発生させるファン(図示せず)を作動させるためのインバータである。MCU303は、各室内機3の内部機器を制御するための制御部として機能する。
【0053】
受電回路PR2には、インピーダンスアッパー310、第3のノイズフィルタ311と、整流回路312と、平滑回路313と、スイッチング電源314とが含まれている。インピーダンスアッパー310は、受電回路PR2のインピーダンスを上げて、カレントループCL1を通して行われるカレントループ通信の信号が受電回路PR2に吸い込まれるのを抑制する。第3のノイズフィルタ311は、商用電源101から供給される電力に含まれているノイズを低減する。整流回路312は、ノイズフィルタ211でノイズが低減された交流電力を直流電力に変換する整流を行って直流電力を出力する。平滑回路313は、整流回路312の出力に含まれている脈動を低減する。平滑回路313から出力される直流電力は、ファンインバータ302及びスイッチング電源314に供給される。スイッチング電源314は、平滑回路313から与えられる電圧よりも小さな直流電圧に変換して室内機3の内部の機器に供給する。スイッチング電源314は、例えば、MCU303、高周波送受信回路304、低周波受信回路305及び低周波受信回路306に電力を供給する。
【0054】
室内機3は、給電配線W1の中の電力線L1と給電配線W1以外の信号線L2によって、室外機2との間でカレントループCL1を形成している。室内機3は、低周波受信回路306よって、カレントループCL1を介して低周波の電流信号を受信する。
【0055】
室内機3は、バンドパスフィルタ321と、結合回路322と、第4のノイズフィルタ323とを備えている。バンドパスフィルタ321は、高周波送受信回路304で送受信される高周波の電圧信号を通過させる。バンドパスフィルタ321は、結合回路322とノイズフィルタ323を介してカレントループCL1に接続されている。高周波の電圧信号の送受信のために、結合回路222は、直流成分を通過させずに交流成分を通過させる回路であって、例えばカップリングコンデンサにより、カレントループCL1の配線で送信する高周波信号を通過させ、ノイズフィルタ323はノイズの低減を行う。高周波送受信回路304は、カレントループCL1の配線を介して高周波の電圧信号を送受信することができる。なお、ノイズフィルタ323は、室内機3の構成から省くことができる。
【0056】
室内機3の高周波送受信回路304は、ハイパスフィルタ331を介して、信号配線W2に接続されている。室内機3の低周波受信回路305は、ローパスフィルタ332を介して、信号配線W2に接続されている。高周波送受信回路304は、信号配線W2を通して、高周波信号の送受信を行うことができる。室内機3の低周波受信回路305は、信号配線W2を通して、低周波信号を送信することができる。信号配線W2を通して送受信される低周波信号及び高周波信号は、電圧の変化によって情報を伝達する電圧信号である。
【0057】
(3-3)集中コントローラ4
集中コントローラ4は、信号配線W2を使って、室外機2及び室内機3と接続することができる。集中コントローラ4は、図示を省略するが、例えば、MCUと高周波送受信回路と低周波受信回路とハイパスフィルタとローパスフィルタとを備えている。集中コントローラ4のMCUと高周波送受信回路と低周波受信回路とハイパスフィルタとローパスフィルタは、例えば、室内機3のMCU303と高周波送受信回路304と低周波受信回路305とハイパスフィルタ331とローパスフィルタ332と同様に構成される。または、集中コントローラ4のMCUと高周波送受信回路と低周波受信回路とハイパスフィルタとローパスフィルタは、例えば、室外機2のMCU203と高周波送受信回路204と低周波送信回路205とハイパスフィルタ231とローパスフィルタ232と同様に構成される。
【0058】
(4)空調システム1の通信手段
(4-1)給電配線W1を用いる通信
例えば、室外機2と複数の室内機3が給電配線W1で接続されている場合、室外機2と室内機3は、給電配線W1を使ってカレントループ通信を行うことができる。カレントループCL1を用いるカレントループ通信で使用される低周波信号は、室外機2の低周波送信回路206から、電力線L1及び信号線L2を通して、室内機3の低周波受信回路306に送られる。この低周波信号は、電力線L1と信号線L2を流れる電流の変化による電流信号である。このカレントループCL1を使って送信される低周波信号は、例えば、前述の系統認識に用いられる。
【0059】
給電配線W1を用いる通信において、高周波信号は、室外機2の高周波送受信回路204から、バンドパスフィルタ221、結合回路222、ノイズフィルタ223、電力線L1と信号線L2、ノイズフィルタ323、結合回路322及びバンドパスフィルタ321を介して、室内機3の高周波送受信回路304に送信される。また、高周波信号は、室内機3の高周波送受信回路304から、バンドパスフィルタ321、結合回路322、ノイズフィルタ323、電力線L1と信号線L2、ノイズフィルタ223、結合回路222及びバンドパスフィルタ221を介して、室外機2の高周波送受信回路204に送信される。バンドパスフィルタ221は、ノイズフィルタ223と結合回路222を介してカレントループCL1に接続されている。ノイズフィルタ223は、カレントループCL1の配線から受信される高周波信号のノイズを低減する。高周波の電圧信号の送受信のために、結合回路322は、直流成分を通過させずに交流成分を通過させる回路である。結合回路322は、例えばカップリングコンデンサにより、高周波信号を通過させるこの高周波信号は、電力線L1と信号線L2に生じる電圧の変化による電圧信号である。この電力線L1及び信号線L2を使って送信される高周波信号は、例えば、前述の系統認識及び、系統認識後の空調システム1の通常運転時の室外機2と室内機3の間の通信に用いられる。なお、ノイズフィルタ223は、室外機2の構成から省くこともできる。
【0060】
(4-2)信号配線W2を用いる通信
例えば、室外機2と複数の室内機3と集中コントローラ4が信号配線W2で接続されている場合、室外機2と室内機3と集中コントローラ4は、信号配線W2を使って通信を行うことができる。集中コントローラ4は、例えば、室外機2または室内機3と同様のMCUと高周波送受信回路と低周波受信回路を備えていて、高周波信号及び低周波信号での通信を行うことができる。集中コントローラ4の通信用の内部構成に室外機2または室内機3と同様の構成を用いることができるため、ここでは、集中コントローラ4の通信のための構成については説明を省略する。
【0061】
信号配線W2で送信される低周波信号は、室外機2の低周波送信回路205から、ローパスフィルタ232、信号配線W2及びローパスフィルタ332を介して、室内機3の低周波受信回路305に送られる。この低周波信号は、信号配線W2で発生する電圧の変化による電圧信号である。この信号配線W2を使って送信される低周波信号は、例えば、前述の系統認識に用いられる。
【0062】
信号配線W2を用いる通信において、高周波信号は、室外機2の高周波送受信回路204から、ハイパスフィルタ231、信号配線W2及びハイパスフィルタ331を介して、室内機3の高周波送受信回路304に送信される。また、高周波信号は、室内機3の高周波送受信回路304から、ハイパスフィルタ331、信号配線W2及びハイパスフィルタ231を介して、室外機2の高周波送受信回路204に送信される。この高周波信号は、信号配線W2に生じる電圧の変化による電圧信号である。この信号配線W2を使って送信される高周波信号は、例えば、前述の系統認識及び、系統認識後の空調システム1の通常運転時の室外機2と室内機3の間の通信に用いられる。
【0063】
室外機2と室内機3の間で行われる低周波信号及び高周波信号の送受信と同様に、室外機2と集中コントローラ4との間で低周波信号と高周波信号の送受信を行うことができる。この場合、また、集中コントローラ4と室内機3との間で高周波信号の送受信を行うことができる。なお、集中コントローラ4と室内機3との高周波信号での通信は、集中コントローラ4の高周波送受信回路と室内機3の高周波送受信回路304とを用いて行うことができる。
【0064】
また、室外機2と室内機3の間で行われる低周波信号及び高周波信号の送受信と同様に、集中コントローラ4と室外機2及び室内機3との間で低周波信号と高周波信号の送受信を行うことができるように構成されてもよい。このように構成されるときには、例えば集中コントローラの通信ための構成は、室外機2の通信のための構成と同様に構成することができる。この場合、集中コントローラ4が送信した低周波信号を室外機2及び室内機3が受信する。
【0065】
(5)所定条件を満たす場合の通信
(5-1)室外機2から送信する場合
空調システム1において、室外機2は、互いに通信できるように通信線で室内機3に繋がれている。この空調システム1では、さらに、室外機2は、通信線で繋がれている集中コントローラ4と互いに通信できるように構成されてもよい。室外機2は、目的とする空間の空気調和を行う空調システム1を構成しているシステム構成機器群の中の1つのシステム構成機器である。
【0066】
室外機2は、空調システム1が所定条件を満たすか否かを判断する制御部として、MCU203を備えている。空調システム1において、所定条件とは、例えば、上述の(2-2-1)で説明した空調システム1の初期動作の状態にあるという条件、(2-2-2)で説明した空調システム1が運転状態にあるという条件、(2-2-3)で説明した空調システム1が異常状態にあるという条件、または(2-2-4)で説明した空調システム1で冷媒の漏洩が検知されたという条件である。
【0067】
室外機2の送信部は、室内機3に対し通信線を介して第1周波数帯で第1データ送信を行い、室内機3に対し同一の通信線を介して第1周波数帯とは異なる第2周波数帯で第2データ送信を行う。また、室外機2の送信部は、集中コントローラ4に対し通信線を介して第1周波数帯で第1データ送信を行い、集中コントローラ4に対し同一の通信線を介して第1周波数帯とは異なる第2周波数帯で第2データ送信を行うことができるように構成されてもよい。なお、本開示の説明において、第1周波数帯と第2周波数帯は、相互に異なる周波数帯であることを示すための表現である。従って、以下の説明で、同じ第1周波数帯という表現を用いて説明する場合でも、異なる周波数帯を指していることがあり、第2周波数帯につても同様である。室外機2のMCU203は、所定条件が満たされたとき、室内機3または集中コントローラ4に対し、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を、送信部に送信させる。第1データ送信と第2データ送信には、後述するように、室外機2の送信部の構成によって複数の形態が考えられる。
【0068】
室外機2は、同じ情報を送信するための第1データ送信と第2データ送信を行う送信部として、高周波送受信回路204と低周波送信回路205、高周波送受信回路204と低周波送信回路206、または高周波送受信回路204を備えている。
【0069】
(5-1-1)高周波送受信回路204のみによる第1データ送信と第2データ送信
高周波送受信回路204が、周波数の異なる第1周波数帯と第2周波数帯でマルチチャンネル通信を行えるように構成することができる。高周波送受信回路204がマルチチャンネル有線通信に対応しているとき、MCU203は、所定条件が満たされたとき、高周波送受信回路204に、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を、室内機3に対して送信させる。言い換えると、所定条件が満たされたとき、高周波送受信回路204のみを使用し、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いた同じ情報の送信が行われる。
【0070】
このような場合、高周波送受信回路204による高周波通信は、通信線として、電力線L1と信号線L2の組を用いる場合と、信号配線W2に含まれる信号線を用いる場合がある。どちらの通信線を用いた通信とするかは、MCU203が決定する。電力線L1と信号線L2の組を用いる場合の通信は、マルチチャンネル通信であり且つ電力線通信である通信方式による通信になる。このような通信方式には、例えば、高速電力線搬送通信がある。高速電力線搬送方式には、例えば、HD-PLC(登録商標)がある。高周波送受信回路204は、周波数帯ごとに通信不能または通信困難の判定を行い、通信不能または通信困難と判定した周波数帯を第1周波数帯及び第2周波数帯として用いないように構成されていることが好ましい。通信不能または通信困難と判定した周波数帯は、MCU203が記憶するように構成されてもよく、高周波送受信回路204が記憶するように構成されてもよく、MCU203及び高周波送受信回路204の外部に在るメモリ(図示せず)が記憶するように構成されてもよい。
【0071】
(5-1-2)高周波送受信回路204と低周波送信回路206による第1データ送信と第2データ送信
MCU203が、高周波送受信回路204に第1データ送信を行わせ、低周波送信回路206に第2データ送信を行わせるように、構成することができる。MCU203は、所定条件が満たされたとき、室内機3及び集中コントローラ4に対し高周波送受信回路204に第1データ送信を行わせるとともに、低周波送信回路206に第2データ送信を行わせる。このときの高周波送受信回路204の第1データ送信と低周波送信回路206の第2データ送信には同じ情報が含まれている。この場合、高周波送受信回路204は、第1データ送信をマルチチャンネル通信に対応した通信に送信できるものであることが好ましい。このようなマルチチャンネル通信方式には、例えば、高速電力線搬送通信がある。高速電力線搬送方式には、例えば、HD-PLC(登録商標)がある。高周波送受信回路204は、周波数帯ごとに通信不能または通信困難の判定を行い、通信不能または通信困難と判定した周波数帯を第1周波数帯及び第2周波数帯として用いないように構成されていることが好ましい。通信不能または通信困難と判定した周波数帯は、MCU203が記憶するように構成されてもよく、高周波送受信回路204が記憶するように構成されてもよく、MCU203及び高周波送受信回路204の外部に在るメモリ(図示せず)が記憶するように構成されてもよい。
【0072】
(5-1-3)高周波送受信回路204と低周波送信回路205による第1データ送信と第2データ送信
MCU203が、高周波送受信回路204に第1データ送信を行わせ、低周波送信回路205に第2データ送信を行わせるように、室外機2を構成することができる。このように構成された室外機2において、MCU203は、所定条件が満たされたとき、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いた同じ情報の送信を行わせるため、同じ情報を含む第1データ送信と第2データ送信を高周波送受信回路204と低周波送信回路205に行わせる。
【0073】
(5-2)室内機3から送信する場合
空調システム1において、室内機3は、互いに通信できるように通信線で室外機2に繋がれている。
図4に示されているように、複数の室内機3も、互いに接続についている。この空調システム1では、さらに、室内機3は、通信線で繋がれている集中コントローラ4と互いに通信できるように構成されてもよい。室内機3は、目的とする空間の空気調和を行う空調システム1を構成しているシステム構成機器群の中の1つのシステム構成機器である。
【0074】
室内機3は、空調システム1が所定条件を満たすか否かを判断する制御部として、MCU303を備えている。空調システム1において、所定条件とは、例えば、上述の(2-2-1)で説明した空調システム1の初期動作の状態にあるという条件、(2-2-2)で説明した空調システム1が運転状態にあるという条件、(2-2-3)で説明した空調システム1が異常状態にあるという条件、または(2-2-4)で説明した空調システム1で冷媒の漏洩が検知されたという条件である。
【0075】
室内機3の送信部は、室外機2または室内機3に対し通信線を介して第1周波数帯で第1データ送信を行い、同一の通信線を介して第1周波数帯とは異なる第2周波数帯で第2データ送信を行う。また、室内機3の送信部は、集中コントローラ4に対し通信線を介して第1周波数帯で第1データ送信を行い、集中コントローラ4に対し同一の通信線を介して第1周波数帯とは異なる第2周波数帯で第2データ送信を行うことができるように構成されてもよい。室内機3のMCU303は、所定条件が満たされたとき、室外機2、室内機3または集中コントローラ4に対し、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を、送信部に送信させる。室内機3は、同じ情報を送信するための第1データ送信と第2データ送信を行う送信部として、高周波送受信回路304を備えている。
【0076】
(5-2-1)高周波送受信回路304のみによる第1データ送信と第2データ送信
高周波送受信回路304が、周波数の異なる第1周波数帯と第2周波数帯でマルチチャンネル通信を行えるように構成することができる。高周波送受信回路304がマルチチャンネル有線通信に対応しているとき、MCU203は、所定条件が満たされたとき、高周波送受信回路304に、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を、室外機2、室内機3または集中コントローラ4に対して送信させる。言い換えると、所定条件が満たされたとき、高周波送受信回路304のみを使用し、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いた同じ情報の送信が行われる。
【0077】
このような場合、高周波送受信回路304による高周波通信は、通信線として、電力線L1と信号線L2の組を用いる場合と、信号配線W2に含まれる信号線を用いる場合がある。どちらの通信線を用いた通信とするかは、MCU303が決定する。電力線L1と信号線L2の組を用いる場合の通信は、マルチチャンネル通信であり且つ電力線通信である通信方式による通信になる。このような通信方式には、例えば、高速電力線搬送通信がある。高速電力線搬送方式には、例えば、HD-PLC(登録商標)がある。高周波送受信回路304は、周波数帯ごとに通信不能または通信困難の判定を行い、通信不能または通信困難と判定した周波数帯を第1周波数帯として用いないように構成されていることが好ましい。通信不能または通信困難と判定した周波数帯は、MCU303が記憶するように構成されてもよく、高周波送受信回路304が記憶するように構成されてもよく、MCU303及び高周波送受信回路304の外部に在るメモリ(図示せず)が記憶するように構成されてもよい。
【0078】
(5-3)集中コントローラ4から送信する場合
空調システム1において、集中コントローラ4は、互いに通信できるように通信線で室外機2及び室内機3に繋がれている。室内機3は、目的とする空間の空気調和を行う空調システム1を構成しているシステム構成機器群の中の1つのシステム構成機器である。
【0079】
集中コントローラ4は、空調システム1が所定条件を満たすか否かを判断する制御部として、MCU(図示せず)を備えている。空調システム1において、所定条件とは、例えば、上述の(2-2-1)で説明した空調システム1の初期動作の状態にあるという条件、(2-2-2)で説明した空調システム1が運転状態にあるという条件、(2-2-3)で説明した空調システム1が異常状態にあるという条件、または(2-2-4)で説明した空調システム1で冷媒の漏洩が検知されたという条件である。
【0080】
集中コントローラ4の送信部は、目的とする冷媒系統の室外機2または室内機3に対し通信線を介して第1周波数帯で第1データ送信を行い、同一の通信線を介して第1周波数帯とは異なる第2周波数帯で第2データ送信を行う。例えば、設置後に冷媒系統RS2を起動する際には、冷媒系統RS2に属する第2室外機2b及び室内機3d,3e,3fに対し、同じ情報を含む第1データ送信及び第2データ送信を行う。集中コントローラ4のMCUは、所定条件が満たされたとき、室外機2または室内機3に対し、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を、送信部に送信させる。集中コントローラ4
は、同じ情報を送信するための第1データ送信と第2データ送信を行う送信部として、高周波送受信回路(図示せず)を備えている。
【0081】
(6)変形例
(6-1)変形例A
上記実施形態では、空調システム1が店舗用マルチエアコンである場合について説明した。しかし、空調システム1は、店舗用マルチエアコンに限られるものではない。空調システム1がビル用マルチエアコンとして使用されている場合の室外機2と室内機3の接続の一例が
図5に示されている。空調システム1がビル用マルチエアコンとして使用される場合、室内機3は、室外機2以外の商用電源102から電力が供給される。室外機2には、商用電源102とは異なる商用電源101から電力が供給される。このように、変形例Aの空調システム1では、室外機2と室内機3が給電配線W1で接続されていない。また、変形例Aの室外機2が、カレントループ通信による通信手段を有していない。変形例Aの空調システム1は、高周波送受信回路204と低周波送信回路205を用い、信号配線W2を通して、複数の室内機3及び集中コントローラ4との通信を行う。信号配線W2を用いた高周波送受信回路204と低周波送信回路205による通信については、上記実施形態で説明したので、ここではその説明を省略する。
図5には、室内機3が一つしか示されていないが、
図6に示されているように、空調システム1には、互いに通信線で接続された複数の室内機3が含まれる。
【0082】
(6-2)変形例B
上記実施形態では、カレントループ通信を行うための構成として、室外機2が低周波送信回路206を備え、室内機3が低周波受信回路306を備える場合について説明した。しかし、室外機2と室内機3がカレントループ通信によって送受信を行うように構成してもよい。
図7に示されている空調システム1では、室外機2と室内機3が、カレントループ通信によって相互に送受信を行うことができるカレントループ通信回路208,308を備えている。
【0083】
図7に示されている室外機2のカレントループ通信回路208と室内機3のカレントループ通信回路308は、互いに通信できるように電力線L1と信号線L2で繋がれている。
図7に示されている室外機2と室内機3は、目的とする空間の空気調和を行う空調システム1を構成しているシステム構成機器群の中の1つのシステム構成機器である。
【0084】
室外機2のカレントループ通信回路208は、システム構成機器群の中の他の機器である室内機3に対し、カレントループ通信により第1周波数帯でデータ送信を行う第1データ送信を行い、第2周波数帯でデータ送信を行う第2データ送信を行う送信部である。室外機2のMCU203は、既に説明した所定条件を空調システムが満たすか否かを判断する制御部である。このMCU203は、所定条件が満たされたとき、カレントループ通信回路208に、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を、室内機3に対して送信させる。
【0085】
また、室内機3のカレントループ通信回路308は、システム構成機器群の中の他の機器である室外機2に対し、カレントループ通信により第1周波数帯でデータ送信を行う第1データ送信を行い、第2周波数帯でデータ送信を行う第2データ送信を行う送信部である。室内機3のMCU303は、既に説明した所定条件を空調システムが満たすか否かを判断する制御部である。このMCU303は、所定条件が満たされたとき、カレントループ通信回路308に、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を、室外機2に対して送信させる。
【0086】
(6-3)変形例C
上記実施形態では、空調システム1において熱エネルギーを運ぶ媒体として、蒸気圧縮式冷凍サイクルに用いられる冷媒を例に挙げて説明した。しかし、熱エネルギーを運ぶ媒体は冷媒には限られない。空調システム1において熱エネルギーを運ぶ媒体としては、例えば、全空気熱輸送方式に用いられる空気、液温を管理しながら循環させられる水または熱媒体がある。液温を管理しながら循環させられる水の場合の空調システムとしては、例えば、ファンコイルユニットと熱源機との組み合わせがある。また、全空気熱輸送方式に用いられる空気の場合の空調システムとしては、例えば、エアハンドリングユニットとエアハンドリングユニットから送られる空気を室内に吹出す吹出装置との組合せがある。
【0087】
(7)特徴
(7-1)
上記実施形態及び変形例に係るシステム構成機器である室外機2,2a,2b、室内機3,3a-3f、集中コントローラ4は、目的とする空間の空気調和を行う空調システム1を構成しているシステム構成機器群の中の1つのシステム構成機器となり得る機器である。システム構成機器群の複数のシステム構成機器は、互いに通信できるように通信線で繋がれている。室外機2,2a,2b、室内機3,3a-3f、集中コントローラ4に繋がれている通信線としては、電力線L1と信号線L2、及び信号配線W2に含まれる通信線がある。この室外機2,2a,2b、室内機3,3a-3f、集中コントローラ4は、制御部が、所定条件が満たされたとき、送信部に、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を、他の機器に対して送信させるように構成されている。この場合、室外機2,2a,2b、室内機3,3a-3fまたは集中コントローラ4が第1周波数帯の第1データ送信と第2周波数帯の第2データ送信を行う対象であるシステム構成機器群の中の他の機器は、室内機3,3a-3f、集中コントローラ4または室外機2,2a,2bである。室外機2,2a,2bの送信部は、高周波送受信回路204のみ、高周波送受信回路204と低周波送信回路206の組合せ、または、高周波送受信回路204と低周波送信回路205の組合せで構成される。室内機3,3a-3の送信部は、高周波送受信回路304で構成される。集中コントローラ4の送信部は、高周波送受信回路(図示せず)のみ、高周波送受信回路と低周波送信回路(図示せず)の組合せで構成される。空調システム1が所定条件を満たすか否かを判断する制御部は、室外機2ではMCU203であり、室内機3ではMCU303であり、集中コントローラ4でも例えばMCU(図示せず)である。このような室外機2,2a,2b、室内機3,3a-3f、集中コントローラ4では、第1データ送信と第2データ送信のいずれかでノイズの影響を受けたとしても、異なる第1周波数帯と第2周波数帯で同じ情報が送られているので、ノイズの影響を受けなかったデータ送信により、ノイズに起因して情報が室内機3,3a-3f、室外機2,2a,2bまたは集中コントローラ4で受信できなくなる不具合を抑制することができる。
【0088】
(7-2)
空調システム1において、送信部である高周波送受信回路204が、マルチチャンネル通信によって、第1データ送信と第2データ送信とを行うことができるように室外機2,2a,2bを構成することができる。このように構成された室外機2,2a,2bでは、第1データ送信と第2データ送信を行うためのネットワークを得るには、高周波送受信回路204を使った一つのマルチチャンネル通信のネットワークを空調システム1で構築すればよい。このように構成された室外機2,2a,2bを用いる場合、所定条件が満たされたとき、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を送信する空調システム1の構成が複雑になるのを抑制できる。
【0089】
空調システム1において、送信部である高周波送受信回路304が、マルチチャンネル通信によって、第1データ送信と第2データ送信とを行うことができるように室内機3,3a-3fを構成することができる。このように構成された室内機3,3a-3fでは、第1データ送信と第2データ送信を行うためのネットワークを得るには、高周波送受信回路304を使った一つのマルチチャンネル通信のネットワークを空調システム1で構築すればよい。このように構成された室内機3,3a-3fを用いる場合、所定条件が満たされたとき、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて同じ情報を送信する空調システム1の構成が複雑になるのを抑制できる。また、集中コントローラ4において、送信部をマルチチャンネル通信によって第1データ送信と第2データ送信とを行うことができる高周波送受信回路で構成しても、同様の効果を奏する。
【0090】
(7-3)
上記実施形態及び変形例の室外機2,2a,2bにおいて、高周波送受信回路204は、マルチチャンネル通信によって第1データ送信を行う第1送信部となれるように構成されている。また、低周波送信回路206は、カレントループ通信によって第2データ送信を行う第2送信部となれるように構成されている。このように、室外機2,2a,2bを構成する場合、カレントループ通信による第2データ送信がノイズの影響を受け難い。第1データ送信及び第2データ送信で同じ情報を送信することで、上方の欠落を減らすことができるだけでなく、第2データ送信がノイズの影響を受け難いため、ノイズに起因して室内機3,3a-3f及び集中コントローラ4が必要な情報を受信できなくなる不具合を減らすことができる。
【0091】
(7-4)
上記実施形態及び変形例の室外機2,2a,2bでは、マルチチャンネル通信を行う高周波送受信回路204が、周波数帯ごとに通信不能または通信困難の判定を行い、通信不能または通信困難と判定した周波数帯を第1周波数帯として用いないように構成されている。このように構成された室外機2,2a,2bでは、高周波送受信回路204が通信不能または通信困難と判定した周波数帯を第1周波数帯として用いないことによって、第1データ送信を用いたデータ送信の確実性を向上させることができる。周波数帯ごとに通信不能または通信困難の判定を行い、通信不能または通信困難と判定した周波数帯を第1周波数帯として使用しないように、室内機3,3a-3fの高周波送受信回路304または集中コントローラ4の高周波送受信回路を構成することもできる。このように構成された室内機3,3a-3fの高周波送受信回路304または集中コントローラ4の高周波送受信回路を用いることで、第1データ送信を用いたデータ送信の確実性を向上させることができる。
【0092】
(7-5)
上記実施形態及び変形例の室外機2,2a,2b、室内機3,3a-3fは、マルチチャンネル通信であり且つ電力線通信である通信方式によって、第1データ送信を行うことができるように構成されることが好ましい。同じ第1データ送信と第2データ送信に用いる通信については電力線通信であるから、室外機2,2a,2bと室内機3,3a-3fを接続する給電配線W1を用いることができる。その結果、空調システム1において、通信線の本数を減らすことができる。
【0093】
(7-6)
上記実施形態及び変形例の室外機2,2a,2bでは、MCU203は、空調システム1が初期動作の状態にあるとき、空調システム1が異常状態にあるとき、または空調システム1において冷媒の漏洩が検知されたとき、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて他のシステム構成機器、例えば室内機3,3a-3fに対し、室外機2,2a,2bから同じ情報を送信するように制御する。そのため、室外機2,2a,2bは、初期動作の状態のとき、異常状態のときまたは冷媒の漏洩が検知されたときに、室内機3,3a-3fが必要な情報を受け取れないことによって生じる重大な不具合を抑制することができる。
【0094】
上記実施形態及び変形例の室内機3,3a-3fでは、MCU303は、空調システム1が初期動作の状態にあるとき、空調システム1が異常状態にあるとき、または空調システム1において冷媒の漏洩が検知されたとき、第1データ送信と第2データ送信の両方を用いて他のシステム構成機器に対し、室内機3,3a-3fから同じ情報を送信するように制御する。そのため、室内機3,3a-3fは、初期動作の状態のとき、異常状態のときまたは冷媒の漏洩が検知されたときに、他のシステム構成機器が必要な情報を受け取れないことによって生じる重大な不具合を抑制することができる。
【0095】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0096】
1 空調システム
2 室外機 (システム構成機器の例、システム構成機器群の中の他の機器の例)
2a 第1室外機 (システム構成機器の例、システム構成機器群の中の他の機器の例)
2b 第2室外機 (システム構成機器の例、システム構成機器群の中の他の機器の例)
3 室内機 (システム構成機器群の中の他の機器の例、システム構成機器の例)
3a 第1室内機 (システム構成機器群の中の他の機器の例、システム構成機器の例)
3b 第2室内機 (システム構成機器群の中の他の機器の例、システム構成機器の例)
3c 第3室内機 (システム構成機器群の中の他の機器の例、システム構成機器の例)
3d 第4室内機 (システム構成機器群の中の他の機器の例、システム構成機器の例)
3e 第5室内機 (システム構成機器群の中の他の機器の例、システム構成機器の例)
3f 第6室内機 (システム構成機器群の中の他の機器の例、システム構成機器の例)
4 集中コントローラ (システム構成機器群の中の他の機器の例、システム構成機器の例)
203,303 MCU (制御部の例)
204,304 高周波送受信回路 (送信部、第1送信部の例)
205 低周波送信回路 (送信部の例)
206 低周波送信回路 (送信部、第2送信部の例)
L1 電力線 (通信線の例)
L2 信号線 (通信線の例)
W2 信号配線 (通信線の例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0097】