(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185184
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】樹脂封止装置及び樹脂封止方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20221207BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20221207BHJP
B29C 43/32 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01L21/56 R
B29C43/18
B29C43/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092689
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 秀作
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
【テーマコード(参考)】
4F204
5F061
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AC01
4F204AD19
4F204AH37
4F204AJ08
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FB17
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ38
5F061AA01
5F061BA01
5F061BA03
5F061BA04
5F061BA07
5F061CA22
5F061CB03
5F061DA06
5F061DA08
5F061DA09
5F061DA14
5F061DA16
5F061DE01
5F061DE05
5F061DE06
(57)【要約】
【課題】下型にキャビティを有する構成における課題の解決を図ると共に、樹脂封止する際のワークへのダメージが小さく、且つ、成形品質を向上させることが可能な樹脂封止装置及び樹脂封止方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂封止装置1は、上型204及び下型206を備える封止金型202を用いて、基材Waに電子部品Wbが搭載されたワークWを樹脂Rにより封止して成形品Wpに加工する樹脂封止装置であって、上型204を所定温度に加熱する加熱機構と、上型204の下面側に配設されたキャビティ208内にフィルムFを吸引保持する吸着機構と、上面214aに樹脂Rが載置される押圧部材214と、押圧部材214を上方へ移動させて、所定温度に加熱された状態の上型204におけるキャビティ208内で、載置された樹脂Rを押圧してフィルムFの下面に貼着させる移動貼着機構215とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型を備える封止金型を用いて、基材に電子部品が搭載されたワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止装置であって、
前記上型を所定温度に加熱する加熱機構と、
前記上型の下面側に配設されたキャビティ内にフィルムを吸引保持する吸着機構と、
上面に前記樹脂が載置される押圧部材と、
前記押圧部材を上方へ移動させて、所定温度に加熱された状態の前記上型における前記キャビティ内で、載置された前記樹脂を押圧して前記フィルムの下面に貼着させる移動貼着機構と、を備えること
を特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
前記押圧部材における前記上面よりも高い位置まで外周部の全周を囲う周壁部を有するガードと、
前記押圧部材に伴って前記ガードを上方へ移動させるガード移動機構と、をさらに備え、
前記ガードの前記周壁部が前記上型に当接した状態において、前記押圧部材が前記ガードに対して上方へ移動可能に構成されていること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
前記樹脂は、前記押圧部材への載置時に顆粒状、粉砕状、粉末状であること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
前記樹脂が載置された状態の押圧部材を振動させる振動機構をさらに備えること
を特徴とする請求項3記載の樹脂封止装置。
【請求項5】
前記フィルムの下面に貼着させる前の前記樹脂を加熱する予備加熱機構をさらに備えること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂封止装置。
【請求項6】
前記押圧部材は、前記上面において前記樹脂の付着を防止する表面処理が施されていること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂封止装置。
【請求項7】
前記フィルムには、複数の吸引孔が設けられており、
前記上型は、前記吸着機構によって、前記キャビティ内に前記フィルムを介在させた状態でヒートスプレッダーを吸引保持可能に構成されていること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂封止装置。
【請求項8】
上型及び下型を備える封止金型を用いて、基材に電子部品が搭載されたワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止方法であって、
前記上型を所定温度に加熱する加熱工程と、
前記上型のキャビティ内にフィルムを吸引保持する第1吸着工程と、
押圧部材の上面に前記樹脂を載置する載置工程と、
前記上面に前記樹脂が載置された前記押圧部材を上方へ移動して、前記フィルムに前記樹脂を押圧して貼着する移動貼着工程と、を備えること
を特徴とする樹脂封止方法。
【請求項9】
前記載置工程は、前記押圧部材における前記上面よりも高い位置まで外周部の全周をガードによって囲った状態で、前記樹脂を前記上面に載置する工程を有し、
前記移動貼着工程は、前記ガードによって囲った状態の前記押圧部材と前記ガードとを同時に上方へ移動し、前記ガードが前記上型に当接した後、前記押圧部材のみをさらに上方へ移動して、前記上型の前記キャビティ内へ移動する工程を有すること
を特徴とする請求項8記載の樹脂封止方法。
【請求項10】
前記樹脂は、前記押圧部材への載置時に顆粒状、粉砕状、粉末状であること
を特徴とする請求項8または請求項9記載の樹脂封止方法。
【請求項11】
前記移動貼着工程において前記フィルムに前記樹脂を押圧して貼着する際に、前記樹脂が載置された状態の押圧部材を振動させる振動工程をさらに備えること
を特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の樹脂封止方法。
【請求項12】
前記フィルムには、複数の吸引孔が設けられており、
前記第1吸着工程の後に、前記上型の前記キャビティ内に前記フィルムを介在させた状態でヒートスプレッダーを吸引保持する第2吸着工程をさらに備えること
を特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載の樹脂封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止装置及び樹脂封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に電子部品が搭載されたワークを封止樹脂(以下、単に「樹脂」と称する場合がある)により封止して成形品に加工する樹脂封止装置及び樹脂封止方法の例として、圧縮成形方式によるものが知られている。
【0003】
圧縮成形方式は、上型と下型とを備えて構成される封止金型に設けられる封止領域(キャビティ)に所定量の樹脂を供給すると共に当該封止領域にワークを配置して、上型と下型とでクランプする操作によって樹脂封止する技術である。一例として、上型にキャビティを設けた封止金型を用いる場合、ワーク上の中心位置に一括して樹脂を供給して成形する技術等が知られている。一方、下型にキャビティを設けた封止金型を用いる場合、当該キャビティを含む金型面をフィルムで覆って均等な厚みで樹脂を供給して成形する技術等が知られている(特許文献1:特開2019-145550号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の圧縮成形方式においては、下型にキャビティを有し、キャビティ内で樹脂を液状化させて樹脂封止する構成の方が、特にワイヤー付電子部品が搭載されたワーク等に対してダメージが小さく、優位性があると考えられていた。その一方で、下型にキャビティを有する構成の場合、キャビティ内の最外周位置まで均等に樹脂を供給(散布)することが難しく、成形品質を悪化させる原因になるという課題があった。また、キャビティ内から樹脂の漏れ(こぼれ落ち)が生じないようにすることが成形品質を良好に保つために重要となるが、特に粒状の樹脂は散布時に粒同士の隙間に含まれる空気が加熱や減圧によって発泡するため、樹脂の漏れが生じ易いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、上型にキャビティを有する構成の採用によって、下型にキャビティを有する構成における上記課題の解決を図ると共に、樹脂封止する際のワークへのダメージが小さく、且つ、成形品質を向上させることが可能な樹脂封止装置及び樹脂封止方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る樹脂封止装置は、上型及び下型を備える封止金型を用いて、基材に電子部品が搭載されたワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止装置であって、前記上型を所定温度に加熱する加熱機構と、前記上型の下面側に配設されたキャビティ内にフィルムを吸引保持する吸着機構と、上面に前記樹脂が載置される押圧部材と、前記押圧部材を上方へ移動させて、所定温度に加熱された状態の前記上型における前記キャビティ内で、載置された前記樹脂を押圧して前記フィルムの下面に貼着させる移動貼着機構と、を備えることを要件とする。
【0009】
これによれば、従来の下型にキャビティを有する構成においては、特に粒状の樹脂がキャビティ内から漏れないようにすることが難しいという課題、また、キャビティ内の最外周位置まで樹脂を散布することが難しく、成形品質が悪化し易いという課題、さらに、粒状の樹脂は粒同士が隙間のある状態で積み上がることで生じる嵩張りにより成形時に樹脂の隙間の空気が発泡(脱泡)し、樹脂の漏れが生じ易いという課題があったが、上型にキャビティを有する構成の採用によって、これらの課題の解決を図ることができる。また、樹脂封止する際に、特にワイヤー付電子部品が搭載されたワーク等に対するダメージも、下型にキャビティを有する構成と比較して劣ることがなく、且つ、キャビティ内の最外周位置まで樹脂を偏りなく行き渡らせることができるため、成形品質を向上させることができる。
【0010】
また、前記押圧部材における前記上面よりも高い位置まで外周部の全周を囲う周壁部を有するガードと、前記押圧部材に伴って前記ガードを上方へ移動させるガード移動機構と、をさらに備え、前記ガードの前記周壁部が前記上型に当接した状態において、前記押圧部材が前記ガードに対して上方へ移動可能に構成されていることが好ましい。これによれば、押圧部材に載置された樹脂をキャビティ内へ搬送する途中において樹脂の漏れ(こぼれ落ち)が生じないようにすることができる。また、ガードが上型に当接した状態で、さらに押圧部材を上方に移動させてキャビティ内に進入させ、キャビティ内から樹脂の漏れ(こぼれ落ち)が生じないようにしながら、フィルムへの貼着を行うことができる。
【0011】
また、前記樹脂が載置された状態の押圧部材を振動させる振動機構をさらに備えることが好ましい。これによれば、顆粒状、粉砕状、粉末状の樹脂が押圧部材に載置された状態で、貼着時にガード内で押圧部材を振動させることによって、押圧部材の上面に載置された樹脂を均一な厚さでフィルムに貼着させることができる。したがって、成形不良の発生を防止して、成形品質の安定化を図ることができる。
【0012】
また、前記フィルムの下面に貼着させる前の前記樹脂を加熱する予備加熱機構をさらに備えることが好ましい。これによれば、樹脂の粒同士を溶着させ一体化させることで、短時間でフィルムの下面に樹脂を貼着し、樹脂粒が押圧部材に残ってしまうのを防止することもできる。
【0013】
また、前記押圧部材は、前記上面において前記樹脂の付着を防止する表面処理が施されていることが好ましい。これによれば、樹脂をフィルムに押圧して貼着させた後、押圧部材を下方に移動(降下)させた際に、当該樹脂が押圧部材に付着してしまって上型にセットできなくなるという不具合の発生を防止できる。
【0014】
また、本発明に係る樹脂封止方法は、上型及び下型を備える封止金型を用いて、基材に電子部品が搭載されたワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止方法であって、前記上型を所定温度に加熱する加熱工程と、前記上型のキャビティ内にフィルムを吸引保持する第1吸着工程と、押圧部材の上面に前記樹脂を載置する載置工程と、前記上面に前記樹脂が載置された前記押圧部材を上方へ移動して、前記フィルムに前記樹脂を押圧して貼着する移動貼着工程と、を備えることを要件とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上型にキャビティを有する構成の採用によって、下型にキャビティを有する構成における前述の課題の解決を図ることができる。また、樹脂封止する際のワークへのダメージが小さく、且つ、成形品質を向上させることが可能な樹脂封止装置及び樹脂封止方法が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る樹脂封止装置の例を示す平面図である。
【
図2】
図1の樹脂封止装置の封止金型の例を示す断面図である。
【
図3】
図1の樹脂封止装置の押圧部材及びガードの例を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る樹脂封止装置の例を示す断面図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
(全体構成)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る樹脂封止装置1の例を示す平面図(概略図)である。また、
図2は、樹脂封止装置1の封止金型202の例を示す側面断面図(概略図)であり、
図3は、樹脂封止装置1の押圧部材214及びガード216の例を示す側面断面図(概略図)である。尚、説明の便宜上、図中において矢印により樹脂封止装置1における前後、左右、上下の方向を説明する場合がある。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰返しの説明は省略する場合がある。
【0018】
本実施形態に係る樹脂封止装置1は、上型204及び下型206を備える封止金型202を用いて、ワーク(被成形品)Wを樹脂封止する装置である。以下、樹脂封止装置1として、下型206でワークWを保持し、上型204に設けられたキャビティ208(金型面204aを一部含む)をリリースフィルム(以下、単に「フィルム」と称する場合がある)Fで覆って樹脂Rを供給して、上型204と下型206とのクランプ動作を行い、樹脂RでワークWを樹脂封止する圧縮成形装置を例として説明する。
【0019】
先ず、成形対象であるワークWは、基材Waに複数の電子部品Wbが行列状に搭載された構成を備えている。より具体的には、基材Waの例として、短冊状に形成された樹脂基板、セラミックス基板、金属基板、キャリアプレート、リードフレーム、ウェハ等の板状の部材(いわゆる、短冊ワーク)が挙げられる。また、電子部品Wbの例として、半導体チップ、MEMSチップ、受動素子、放熱板、導電部材、スペーサ等が挙げられる。尚、基材Waの他の例として、円形状、正方形状等に形成された上記部材を用いる構成としてもよい(不図示)。
【0020】
基材Waに電子部品Wbを搭載する方法の例として、ワイヤボンディング実装、フリップチップ実装等による搭載方法がある。あるいは、樹脂封止後に成形品から基材(ガラス製や金属製のキャリアプレート)Waを剥離する構成の場合には、熱剥離性を有する粘着テープや紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂を用いて電子部品Wbを貼付ける方法もある。
【0021】
一方、樹脂Rの例として、顆粒状(円柱状等を含む)、粉砕状、もしくは粉末状(本願において「粒状」と総称する場合がある)の熱硬化性樹脂(例えば、フィラー含有のエポキシ系樹脂等)が用いられる。尚、樹脂Rは、上記の状態に限定されるものではなく、液状、板状、シート状等、他の状態(形状)であってもよく、エポキシ系熱硬化性樹脂以外の樹脂であってもよい。
【0022】
また、フィルムFの例として、耐熱性、剥離容易性、柔軟性、伸展性に優れたフィルム材、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン重合体)、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。本実施形態においては、フィルムFとしてロール状のフィルムが用いられる。尚、変形例として、短冊状のフィルム用いる構成としてもよい(不図示)。また、フィルムFとしては、空気を透過しない密なフィルムを使用してもよいし、空気の透過を許容する多孔質のフィルムを使用してもよい。
【0023】
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1の概要について説明する。
図1に示すように、樹脂封止装置1は、ワークWの供給、及び樹脂封止後の成形品Wpの収納を主に行うワーク処理ユニット100A、フィルムFの供給及び収納(廃棄)、並びにワークWを樹脂封止して成形品Wpへの加工を主に行うプレスユニット100B、樹脂Rの供給を主に行うディスペンスユニット100Cを主要構成として備えている。尚、本実施形態においては、一つの上型204に二つのキャビティ208を設けると共に、一つの下型206に二つのワークW(例えば、短冊状等のワーク)を配置して一括して樹脂封止を行い、同時に二つの成形品Wpを得る構成を例に挙げて説明する。ただし、これに限定されるものではなく、一つの上型204に一つのキャビティを設けると共に、一つの下型206に一つのワークW(例えば、円形状、正方形状等のワーク)を配置して樹脂封止を行い、一つの成形品Wpを得る構成としてもよい(不図示)。
【0024】
本実施形態においては、ワーク処理ユニット100A、プレスユニット100B、及びディスペンスユニット100Cが、左右方向において、右からその順に並設されている。尚、各ユニット間を跨いで任意の数のガイドレール(不図示)が直線状に設けられており、ワークW及び成形品Wpを搬送する第1ローダ210、及び樹脂Rを搬送する第2ローダ212が、任意のガイドレールに沿って所定のユニット間を移動可能に設けられている。
【0025】
尚、樹脂封止装置1は、ユニットの構成を変えることによって、全体の構成態様を変更することができる。例えば、
図1に示す構成は、プレスユニット100Bを三台設置した例であるが、プレスユニット100Bを一台のみ設置する、あるいは二台もしくは四台以上設置する構成等も可能である。また、他のユニットを設置する構成等も可能である(いずれも不図示)。
【0026】
(ワーク処理ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるワーク処理ユニット100Aについて詳しく説明する。
【0027】
ワーク処理ユニット100Aは、複数のワークWが収納される供給マガジン102と、複数の成形品Wpが収納される収納マガジン112とを備えている。ここで、供給マガジン102、収納マガジン112には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられる。
【0028】
次に、ワーク処理ユニット100Aは、供給マガジン102の後方に配設されて、供給マガジン102から取り出されたワークWが載置される供給レール104を備えている。本実施形態においては、公知のプッシャ等(不図示)を用いて、供給マガジン102から中継レール106を経由して供給レール104にワークWが供給される。また同様に、ワーク処理ユニット100Aは、収納マガジン112の後方に配設されて、封止金型202から取り出された成形品Wpが載置される収納レール(不図示)を備えている。本実施形態においては、公知のプッシャ等(不図示)を用いて、収納レール(不図示)から中継レール(不図示)を経由して収納マガジン112に成形品Wpが収納される。
【0029】
次に、ワーク処理ユニット100Aは、ワークW及び成形品Wpを搬送する第1ローダ210を備えている。具体的に、第1ローダ210は、その下面に保持機構を有して供給レール104上のワークWを保持し、下型206の所定保持位置へ搬送する第1保持部210Aを備えている。また、第1ローダ210は、その下面に保持機構を有して下型206上の樹脂封止された成形品Wpを保持し、封止金型202外の所定位置(例えば、収納レール上等)へ搬送する第2保持部210Bを備えている。ここで、第1保持部210AにおけるワークWの保持機構は、供給レール104上の二つのワークWを保持可能なように、左右方向に二列並設された構成となっている。また、第2保持部210Bにおける成形品Wpの保持機構は、下型206上の二つの成形品Wpを保持可能なように、左右方向に二列並設された構成となっている。これらの構成を備えることにより、第1ローダ210は、ワークW及び成形品Wpのいずれに対しても、その長手方向を平行させて二つ並べて保持、搬送することが可能となっている。尚、上記保持機構には、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0030】
また、ワーク処理ユニット100Aは、第1ローダ210によって搬送されるワークWを下面側(基材Wa側)から加熱するワークヒータ116を備えている。一例として、ワークヒータ116には、公知の加熱機構(例えば、電熱線ヒータ、赤外線ヒータ、等)が用いられる。これにより、ワークWが封止金型202内に搬入されて加熱される前に予備加熱をしておくことができる。尚、ワークヒータ116を備えない構成としてもよい。
【0031】
(プレスユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるプレスユニット100Bについて詳しく説明する。
【0032】
プレスユニット100Bは、開閉される一対の金型(例えば、合金工具鋼からなる複数の金型ブロック、金型プレート、金型ピラー等やその他の部材が組み付けられたもの)を有する封止金型202を備えている。本実施形態においては、一対の金型のうち、鉛直方向において上方側の一方の金型を上型204とし、下方側の他方の金型を下型206としている。この封止金型202は、上型204と下型206とが相互に接近・離反することで型閉じ・型開きがなされる。すなわち、鉛直方向(上下方向)が型開閉方向となる。
【0033】
尚、封止金型202は、公知の型開閉機構(不図示)によって型開閉が行われる。例えば、型開閉機構は、一対のプラテンと、一対のプラテンが架設される複数の連結機構(タイバーや柱部)と、プラテンを可動(昇降)させる駆動源(例えば、電動モータ)及び駆動伝達機構(例えば、トグルリンク)等を備えて構成されている(いずれも不図示)。
【0034】
ここで、封止金型202は、当該型開閉機構の一対のプラテンの間に配設されている。本実施形態においては、固定型となる上型204が固定プラテン(連結機構に固定されるプラテン)に組み付けられ、可動型となる下型206が可動プラテン(連結機構に沿って昇降するプラテン)に組み付けられている。ただし、この構成に限定されるものではなく、上型204を可動型、下型206を固定型としてもよく、あるいは、上型204、下型206共に可動型としてもよい。
【0035】
次に、封止金型202の上型204について詳しく説明する。
図2に示すように、上型204は、上プレート222、キャビティ駒226、クランパ228等を備え、これらが組み付けられて構成されている。本実施形態においては、上型204の下面(下型206側の面)にキャビティ208が設けられている。
【0036】
より具体的に、キャビティ駒226は、上プレート222の下面に対して固定して組み付けられる。一方、クランパ228は、キャビティ駒226を囲うように環状に構成されると共に、付勢部材232を介して、上プレート222の下面に対して離間(フローティング)して上下動可能に組み付けられる。このキャビティ駒226がキャビティ208の奥部(底部)を構成し、クランパ228がキャビティ208の側部を構成する。尚、本実施形態においては、
図1に示すように、一つの上型204にキャビティ208が左右方向に二つ並設されて、ワークWを二つずつ同時に樹脂封止する構成となっている。ただし、この構成に限定されるものではない。
【0037】
ここで、クランパ228に対向する下型206の金型面206aには吸引溝(不図示)が設けられ、これが吸引装置(不図示)に連通している。また、これらを囲うシール構造が設けられることで、吸引装置を駆動させて減圧することにより、型閉じされた状態でキャビティ208内の脱気を行うことが可能となる。
【0038】
また、本実施形態においては、フィルム供給機構250(後述)から供給されるフィルムFを上型204に吸引保持する吸着機構が設けられている。この吸着機構は、一例として、クランパ228を貫通して配設された吸引路230a、230b、及び上プレート222、キャビティ駒226を貫通して配設された吸引路230cを介して吸引装置(不図示)に連通している。具体的には、吸引路230a、230b、230cの一端が上型204の金型面204aに通じ、他端が上型204外に配設される吸引装置と接続される。これにより、吸引装置を駆動させて吸引路230a、230b、230cからフィルムFを吸引し、キャビティ208の内面を含む金型面204aにフィルムFを吸着させて保持することが可能となる。
【0039】
このように、キャビティ208の内面、及び上型204の金型面204a(一部)を覆うフィルムFを設けることにより、成形品Wpの上面における樹脂Rの部分を容易に剥離させることができるため、成形品Wpを封止金型202(上型204)から容易に取り出すことが可能となる。
【0040】
尚、クランパ228の内周面とキャビティ駒226の外周面との間に設けられる所定寸法の隙間は、上記の吸引路230aの一部を構成する。そのため、当該隙間の所定位置にシール部材234(例えば、Oリング)が配設されて、フィルムFを吸引する際のシール作用をなす。
【0041】
また、本実施形態においては、上型204を所定温度に加熱する上型加熱機構が設けられている。この上型加熱機構は、ヒータ(例えば、電熱線ヒータ)、温度センサ、制御部、電源等(いずれも不図示)を備えており、加熱及びその制御が行われる。一例として、ヒータは、上プレート222やこれらを収容する金型ベース(不図示)に内蔵され、主に上型204全体及び樹脂Rに熱を加える構成となっている(後述)。これにより、上型204が所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整されて加熱される。
【0042】
また、本実施形態においては、ロール状でシート面に開口(孔)の無いフィルムFを封止金型202の内部へ搬送(供給)するフィルム供給機構250が設けられている。このフィルム供給機構250は、巻出し部252及び巻取り部254を備え、巻出し部252から巻取り部254へフィルムFを搬送する構成となっている。これにより、巻出し部252と巻取り部254との間に配置される封止金型202にフィルムFが供給される。すなわち、
図1に示すように、巻出し部252から送り出された未使用のフィルムFが型開きした封止金型202に供給され、封止金型202で樹脂封止に使用されて、使用済みのフィルムFが巻取り部254で巻取られる。尚、一連の工程は、樹脂封止装置1に設けられる制御部(不図示)によって制御される。
【0043】
次に、封止金型202の下型206について詳しく説明する。
図2に示すように、下型206は、下プレート224、キャビティプレート236等を備え、これらが組み付けられて構成されている。ここで、キャビティプレート236は、下プレート224の上面(上型204側の面)に対して固定して組み付けられている。
【0044】
また、本実施形態においては、ワークWをキャビティプレート236の下面における所定位置に保持するワーク保持機構が設けられている。このワーク保持機構は、一例として、キャビティプレート236及び下プレート224を貫通して配設された吸引路240aを介して吸引装置(不図示)に連通している。具体的には、吸引路240aの一端が下型206の金型面206aに通じ、他端が下型206外に配設される吸引装置と接続される。これにより、吸引装置を駆動させて吸引路240aからワークWを吸引し、金型面206a(ここでは、キャビティプレート236の上面)にワークWを吸着させて保持することが可能となる。さらに、吸引路240aを備える構成と並設して、ワークWの外周を挟持する保持爪を備える構成としてもよい(不図示)。
【0045】
尚、本実施形態においては、前述の上型204の構成(キャビティ208が左右方向に二つ並設される構成)に対応して、一つの下型206にワーク保持機構が左右方向に二つ並設されて、ワークWを二つずつ同時に樹脂封止する構成となっている。ただし、この構成に限定されるものではない。
【0046】
また、本実施形態においては、下型206を所定温度に加熱する下型加熱機構が設けられている。この下型加熱機構は、ヒータ(例えば、電熱線ヒータ)、温度センサ、制御部、電源等(いずれも不図示)を備えており、加熱及びその制御が行われる。一例として、ヒータは、下プレート224やこれらを収容する金型ベース(不図示)に内蔵され、主に下型206全体及びワークWに熱を加える構成となっている。これにより、下型206が所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整されて加熱される。
【0047】
(ディスペンスユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるディスペンスユニット100Cについて詳しく説明する。
【0048】
ディスペンスユニット100Cは、樹脂Rを供給するディスペンサ312と、供給された樹脂を封止金型202内へ搬送する第2ローダ212とを備えている。本実施形態においては、二つのキャビティ208に対応して設けられる二つの押圧部材214(後述)に対して、同時に樹脂Rの供給が可能なように二つのディスペンサ312を備えている。
【0049】
また、ディスペンスユニット100Cは、ディスペンサ312に隣接する位置等に、第2ローダ212によって搬送される樹脂Rを加熱する樹脂ヒータ314を備えている。一例として、樹脂ヒータ314には、公知の加熱機構(例えば、電熱線ヒータ、赤外線ヒータ、等)が用いられる。これにより、押圧部材214に載置された粒状の樹脂Rの表面を加熱して溶融もしくは軟化状態とすることができ、搬送中の塵埃(樹脂の微細粉末等)の発生を防止して、製品の成形不良や、装置の動作不良の発生を防止することができる。尚、樹脂ヒータ314を備えない構成としてもよい。
【0050】
ここで、第2ローダ212には、ディスペンサ312から投下された樹脂Rを上面214aに載置させる押圧部材214と、押圧部材214における上面214aよりも高い位置まで外周部の全周を囲う周壁部216aを有するガード216とが設けられている。本実施形態は、一つの上型204に二つのキャビティ208を設けると共に、一つの下型206に二つのワークW(例えば、短冊状等のワーク)を配置して一括して樹脂封止を行い、同時に二つの成形品Wpを得る構成であるため、キャビティ208の位置に対応する二つの押圧部材214と、当該押圧部材214の全周を囲うガード216が配設されている。すなわち、ガード216は、各押圧部材214の周囲に設けられる枠体として構成されている。尚、一例として、二つの押圧部材214を一つのガード216で囲う構成としているが、変形例として、二つの押圧部材214をそれぞれ囲う二つのガード216を設ける構成としてもよい(不図示)。
【0051】
さらに、第2ローダ212には、押圧部材214を上方へ移動させて、載置された樹脂Rをキャビティ208内でフィルムFに押圧させる移動貼着機構215と、押圧部材214に伴ってガード216を上方へ移動させるガード移動機構217と、が設けられている。このとき、ガード216の周壁部216aが上型204(一例として、クランパ228における金型面204a)に当接した状態において、押圧部材214がガード216に対して上方へ移動可能となるように構成されている。
【0052】
上記の構成によれば、移動貼着機構215によって押圧部材214を上方へ移動させると共に、同時にガード移動機構217によってガード216を上方へ移動させることができる。次いで、ガード216の周壁部216aが上型204に当接した状態でガード216の移動を停止させ、さらに、移動貼着機構215によって押圧部材214を上方へ移動させることができる。次いで、所定温度に加熱された状態の上型204におけるキャビティ208内で、押圧部材214に載置された樹脂RをフィルムFに押圧させて、当該樹脂Rを当該フィルムFの下面(下型206側の面)に貼着させることができる。
【0053】
尚、押圧部材214は、上面214aにおいて樹脂Rの付着を防止する表面処理が施されている構成が好適である。その理由として、樹脂RをフィルムFに押圧して貼着させた後、押圧部材214を下方に移動(降下)させた際に、当該樹脂Rが押圧部材214に付着してしまって、上型204にセットできない不具合を防止できるからである。
【0054】
(樹脂封止動作)
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1を用いて樹脂封止を行う動作(すなわち、本実施形態に係る樹脂封止方法)について、
図4~
図10を参照しながら説明する。ここでは、一つの上型204に二つのキャビティ208を設けると共に、一つの下型206に二つのワークW(例えば、短冊状等のワーク)を配置して一括して樹脂封止を行い、同時に二つの成形品Wpを得る構成を例に挙げる。
【0055】
先ず、上型加熱機構によって、上型204を所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整して加熱する加熱工程(上型加熱工程)を実施する。また、下型加熱機構によって、下型206を所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整して加熱する加熱工程(下型加熱工程)を実施する。
【0056】
次いで、
図4に示すように、第2ローダ212によって、二つの押圧部材214がそれぞれ二つのディスペンサ312のノズル312aの直下位置となるように、押圧部材214の周囲を囲うガード216と共に搬送する。このとき、押圧部材214における上面214aよりも高い位置まで外周部の全周をガード216(周壁部216a)によって囲った状態となっている。その状態において、二つのノズル312aから、それぞれの押圧部材214の上面214aに規定量の樹脂Rを投下(供給)して載置する載置工程を実施する。前述の通り、ガード216は、押圧部材214の外周部の全周を囲って配設される枠体である。したがって、樹脂Rを投下する際に、押圧部材214から樹脂Rがこぼれ落ちないようにすることができる。
【0057】
上記の載置工程の後、
図5に示すように、押圧部材214及びガード216を振動させて、押圧部材214の上面214aに載置された樹脂Rを最外周位置まで行き渡らせ、且つ、厚さを平準化させる工程を実施することが好適である。尚、最初から平坦に樹脂Rを供給してもよい。
【0058】
次いで、樹脂ヒータ314によって、第2ローダ212による搬送中の樹脂Rの加熱(予備加熱)を行ってもよい。例えば、樹脂Rが完全に溶融もしくは溶解しない温度(例えば、60℃)に加熱部分の押し当てや輻射熱により予備加熱し、樹脂Rの粒同士を溶着させ一体化させることができる。
【0059】
次いで、フィルム供給機構250によって、巻出し部252から巻取り部254へフィルムFを搬送して(送り出して)封止金型202における所定位置(上型204と下型206との間の位置)にフィルムFを供給する工程(フィルム供給工程)を実施する。
【0060】
次いで、
図6に示すように、吸着機構によって、キャビティ208の内面を含む金型面204aにフィルムFを吸着させて保持させる吸着工程(第1吸着工程)を実施する。これと同時に(もしくは前後して)、第2ローダ212によって、押圧部材214及びガード216を封止金型202内(上型と下型との間)へ搬送する。
【0061】
その状態から、以下の移動貼着工程を実施する。具体的には、
図7に示すように、移動貼着機構215によって押圧部材214を上方へ移動すると共に、ガード移動機構217によって、ガード216を上方へ移動する。ここで、ガード216の周壁部216aが上型204(この場合は、クランパ228の金型面204a)に当接した状態となったときにガード216の移動が停止する。
【0062】
その状態から、
図8に示すように、移動貼着機構215によって、さらに押圧部材214のみが上方へ(すなわち、キャビティ208内へ)移動し、上面214aに載置された樹脂RをフィルムFの下面に押圧して貼着する工程を実施する。
【0063】
この構成によれば、所定温度に加熱された状態の上型204におけるキャビティ208内で、押圧部材214に載置された樹脂RをフィルムFに押圧することができる。したがって、フィルムFを介して上型204の熱を樹脂Rに伝えることができるため、樹脂Rが軟化(溶融)状態となって接着力が発生し、フィルムFの下面に貼着する作用が得られる。尚、貼着工程は、輻射熱や樹脂Rを介した熱伝達により移動貼着機構215が加熱されることのないよう、短時間で行うことが好ましい。この点において、上述したように事前に樹脂Rを一体化させる工程を行うことで、フィルムFの下面への樹脂Rの貼着工程を効率的に行うことができる。具体的には、樹脂Rが一体化していることで、短時間でフィルムFの下面への樹脂Rの貼着を行うことができる。また、樹脂Rが一体化していることで樹脂Rの粒が押圧部材214に残ってしまうのを防止することもできる。
【0064】
その状態から、
図9に示すように、移動貼着機構215によって押圧部材214を下方へ移動すると共に、ガード移動機構217によって、ガード216を下方へ移動する工程を実施する。
【0065】
次いで、第1ローダ210によって、ワークWを封止金型202内へ搬送する工程を実施する。予め、ワークヒータ116によって、第1ローダ210による搬送中のワークWの予備加熱を行ったうえで、
図10に示すように、第1ローダ210によって封止金型202内へ搬送したワークWを下型206の所定位置に保持する。本実施形態においては、二つのワークWを並設状態で保持する。尚、第1ローダ210によるワークWの封止金型202内への搬送工程は、樹脂Rの貼着工程の前に実施してもよい。
【0066】
これ以降の工程は、従来の樹脂封止方法と同様であって、封止金型202の型閉じを行い、上型204と下型206とで二つのワークWをクランプする工程を実施する。このとき、二つのキャビティ208において、それぞれキャビティ駒226が相対的に下降して、二つのワークWに対して樹脂Rを加熱加圧する。これにより、樹脂Rが熱硬化して樹脂封止(圧縮成形)が完了する。次いで、封止金型202の型開きを行い、二つの成形品Wpと使用済みフィルムFとを分離する工程を実施する。次いで、第1ローダ210によって、二つの成形品Wpを封止金型202内から搬送する工程を実施する。また、フィルム供給機構250によって、巻出し部252から巻取り部254へフィルムFを搬送することにより、使用済みフィルムFを送り出す工程(フィルム排出工程)を実施する。
【0067】
以上が樹脂封止装置1を用いて行う樹脂封止の主要動作である。ただし、上記の工程順は一例であって、支障がない限り先後順の変更や並行実施が可能である。例えば、本実施形態においては、複数(一例として三台)のプレスユニットを備える樹脂封止装置を用いているため、上記の動作を並行して実施することで、効率的な成形品形成が可能となる。
【0068】
尚、本実施形態においては、前述の吸着機構によって、事前に、キャビティ208の内面を含む金型面204aにフィルムFを吸着させて保持させた状態とした後、移動貼着機構215によって押圧部材214を上方へ移動させて樹脂RをフィルムFに押圧させて、フィルムFの下面に貼着させる構成としている。ただし、この構成に限定されるものではなく、変形例として、以下のような構成としてもよい。具体的に、上型204と下型206との間の所定位置(具体的には、押圧部材214の上面214aと、キャビティ208の内面との間の位置)において、フィルムFをキャビティ208の内面を含む金型面204aに吸着させない状態で用意する。次いで、移動貼着機構215により押圧部材214を上方へ移動させることによって、押圧部材214がフィルムFに当接してフィルムFを上方へ移動させる。次いで、キャビティ208の内面を含む金型面204aにフィルムFを吸着させつつ、押圧部材214(上面214a)に載置された樹脂RをフィルムFに押圧させて、フィルムFの下面に貼着させる構成である。
【0069】
また、別の変形例として、第2ローダ212に押圧部材214を振動させる振動機構(不図示)を設けて、前述の移動貼着工程において、すなわち、押圧部材214(上面214a)に載置された状態の樹脂RをフィルムFに押圧して貼着させる際に、押圧部材214を振動させる振動工程を実施してもよい。これによれば、樹脂Rが押圧部材214に載置された状態で、貼着時に当該押圧部材214をガード216内で振動させることによって、当該樹脂Rをより均一な厚さでフィルムFに貼着させることができる。したがって、成形不良の発生防止及び品質の安定化の観点で、より効果的である。
【0070】
以上、説明した通り、従来は下型にキャビティを設けて、キャビティ内で樹脂を液状化させた状態で樹脂封止する方式の方が、特にワイヤー付製品の樹脂封止において、ワイヤーへのダメージが小さく、優位性があると考えられていた。これに対し、本願発明者らは鋭意研究を行い、上型204にキャビティ208を設けて、キャビティ208内で樹脂Rを軟化・貼着させた状態で樹脂封止する方式を案出し、下型にキャビティを設ける方式に劣ることのない樹脂封止装置・方法を実現した。
【0071】
その結果、上型204にキャビティ208を設ける方式を遜色なく採用することが可能となり、下型にキャビティを設ける方式における課題の解決が可能となっている。具体的には、下型にキャビティを設ける方式においては、特に粒状の樹脂がキャビティ内から漏れないようにすることが難しいという課題、また、キャビティ内の最外周位置まで樹脂を散布することが難しく、成形品質が悪化し易いという課題、さらに、粒状の樹脂は粒同士が隙間のある状態で積み上がることで生じる嵩張りにより成形時に樹脂の隙間の空気が発泡(脱泡)し、樹脂の漏れが生じ易いという課題があったが、これらの課題の解決を図ることができる。また、樹脂封止する際に、特にワイヤー付電子部品が搭載されたワーク等に対するダメージも、下型にキャビティを設ける方式と比較して劣ることがなく、且つ、キャビティ208内の最外周位置まで樹脂を偏りなく行き渡らせることができるため、より一層の成形品質向上もなし得る。
【0072】
また、押圧部材214に載置された樹脂Rを、ガード216によって囲われた状態で封止金型202内へ搬送することができるため、搬送中に押圧部材214(上面214a)から樹脂の漏れ(こぼれ落ち)が生じないようにすることができる。さらに、ガード216が上型204に当接した状態で、さらに押圧部材214を上方に移動させてキャビティ208内に進入させることができるため、キャビティ208内から樹脂Rの漏れ(こぼれ落ち)が生じないようにすることができる。したがって、樹脂Rの漏れ(こぼれ落ち)による成形品質の悪化を防ぐことができ、成形品質の安定化(高品質の維持)を図ることができる。
【0073】
[第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、ヒートスプレッダーHが設けられる製品(成形品Wp)となるワークWを樹脂封止する場合の構成例である。具体的には、一面(基材Waが設けられる側と逆側の面)にヒートスプレッダーHが露出する成形品Wpとなる。以下、前述の第1の実施形態との相違点を中心に説明する。ここで、
図11は、前述の第1の実施形態の
図3に相当する側面断面図(概略図)である。
【0074】
本実施形態に係る樹脂封止装置1においては、リリースフィルムFとして、ロール状でシート面に複数の孔(吸引孔)Faが形成されたフィルムが用いられる。また、上型204は、前述の吸着機構によって、キャビティ208内にフィルムFを介在させた状態でヒートスプレッダーHを吸引保持可能に構成されている。具体的には、先ず針状の孔あけ部材を用いて孔Faを形成し、
図11に示すように、吸引装置を駆動させて吸引路230a、230b、230cからフィルムFを吸引し、キャビティ208の内面を含む金型面204aにフィルムFを吸着させて保持することができる。さらに、金型面204aにフィルムFを吸着させた状態で、フィルムFの吸引孔Faを通じて吸引路230cによる吸引力を作用させて、キャビティ208内にフィルムFを介在させた状態でヒートスプレッダーHを吸着させて保持することができる。
【0075】
次に、本実施形態に係る樹脂封止装置1を用いて樹脂封止を行う動作(すなわち、本実施形態に係る樹脂封止方法)について説明する。基本的な工程は前述の第1の実施形態と同様であるが、本実施形態は、前述の第1吸着工程の後に、上型204のキャビティ208内にフィルムFを介在させた状態でヒートスプレッダーHを吸引保持する吸着工程(第2吸着工程)をさらに備えている。その後、ヒートスプレッダーHを十分に加熱した状態で、上述したように樹脂RをヒートスプレッダーHの下面に貼着し、樹脂封止工程を行うことができる。
【0076】
以上、本実施形態によれば、ヒートスプレッダーHが設けられる成形品WpとなるワークWを樹脂封止する場合であっても、基本構成が第1の実施形態と同じ装置を用いて樹脂封止を行うことが可能となる。
【0077】
[第3の実施形態]
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、樹脂Rを供給し、封止金型202内(具体的には、上型204のキャビティ208内)へ搬送する構成が相違する。以下、
図12~
図17を用いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1及び樹脂封止方法について、当該相違点を中心に説明する。
【0078】
本実施形態の構成例として、第1の実施形態と同様に、一つの封止金型202につき、二つのワークWを一括して樹脂封止を行い、同時に二つの成形品Wpを得る構成を例に挙げる。
【0079】
先ず、
図12に示すように、下面側にフィルムFが保持された状態の搬送具400を準備し、搬送機構(不図示)によって、ディスペンサ312のノズル312aの直下となる位置へ搬送する。一例として、搬送具400は、下面にフィルムFを保持する保持機構(不図示)と、二列の樹脂投入孔(貫通孔)400aとを有する枠体として形成されている。ここで、本実施形態に係るフィルムFには、第1の実施形態におけるロール状のリリースフィルムに代えて、枚葉のリリースフィルムを用いる。
【0080】
次に、
図13に示すように、二つのディスペンサ312のノズル312aから、搬送具400における二つの樹脂投入孔400a内に樹脂Rを投下(供給)する。
【0081】
次に、
図14に示すように、搬送機構によって、フィルムF及び樹脂Rを保持した状態の搬送具400を搬送し、ヒータテーブル310上に載置して、フィルムFを介して樹脂Rの加熱を行う。これによって、樹脂Rは溶融もしくは軟化状態となる。したがって、当該樹脂Rの全体が溶着により塊状化しつつ、フィルムFに密着した状態となる。
【0082】
次に、
図15に示すように、二つの樹脂投入孔400aにそれぞれ押圧部材214を挿入して、溶融もしくは軟化状態の樹脂Rに対して、板面214a(この状態では下面)が密着した状態とする。
【0083】
次に、
図16に示すように、反転機構(不図示)によって、搬送具400及び押圧部材214を上下反転した状態とする。このとき、樹脂RはフィルムFに密着している。
【0084】
その状態から、前述の第1の実施形態における吸着工程(第1吸着工程)及び移動貼着工程と同様の工程を実施する。すなわち、移動貼着機構215によって、上面214a(反転前の下面に相当)に樹脂R(樹脂Rの上面側にフィルムFが密着した状態となっている)が載置された押圧部材214を上方へ(具体的には、上型204のキャビティ208内へ)移動する工程を実施する。このとき、吸着機構によって、キャビティ208の内面を含む金型面204aにフィルムFを吸着させて保持させる工程を実施する。その状態で、移動貼着機構215によって、さらに押圧部材214を上方へ移動し、上面214aに載置された樹脂RをフィルムFの下面に押圧して貼着する工程を実施する。このようにして、フィルムFはキャビティ208内に吸着した状態となり、且つ、樹脂RはフィルムFに貼着した状態となる。
【0085】
これ以降の工程は、前述の第1の実施形態と同様であり、ワークWを封止金型202内へ搬送し、封止金型202の型閉じを行ってワークWの樹脂封止を行い、封止金型202の型開きを行って成形品Wpを取り出す工程を実施する。
【0086】
以上、説明した通り、本発明によれば、上型にキャビティを有する構成の採用によって、下型にキャビティを有する構成における前述の課題の解決を図ることができる。また、樹脂封止する際のワークへのダメージが小さく、且つ、成形品質を向上させることが可能な樹脂封止装置及び樹脂封止方法が実現できる。
【0087】
尚、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、封止樹脂として、顆粒状、粉砕状、粉末状の熱硬化性樹脂を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、液状、板状、シート状等の樹脂を用いる構成にも適用し得る。例えば、シート状の樹脂を用いる構成では、もともと平坦で且つ一体化されたシート状の樹脂RをフィルムFの下面に貼着させればよく、簡易に樹脂封止の準備をすることができる。
【0088】
また、上記の実施形態では、フィルムFを介して上型204の熱を樹脂Rに伝え、樹脂Rを軟化(溶融)状態として接着力を発生させることで、フィルムFの下面に樹脂Rを貼着する構成について説明したが、多孔質のフィルムFを用い、吸引装置を駆動させて吸引路230b、230cからフィルムFを吸引することで、樹脂RをフィルムFの下面に吸着して貼着する構成を採用してもよい。
【0089】
また、上型に二つのキャビティを設けると共に、下型に二つのワークWを配置して一括して樹脂封止を行い、同時に二つの成形品Wpを得る構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、上型に一つ(もしくは三つ以上の複数)のキャビティを設けると共に、下型に一つ(もしくは三つ以上の複数)のワークを配置して樹脂封止を行い、一つ(もしくは三つ以上の複数)の成形品を得る構成にも適用し得る。
【符号の説明】
【0090】
1 樹脂封止装置
204 上型
206 下型
208 キャビティ
214 押圧部材
215 移動貼着機構
216 ガード
W ワーク