(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185189
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】プリテンショナ、リトラクタ及びシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/46 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
B60R22/46 128
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092698
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 清史
(72)【発明者】
【氏名】浅子 忠之
(72)【発明者】
【氏名】田中 康二
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018MA02
(57)【要約】
【課題】作動ガスの放出を抑制しつつプリテンショナの設計に対する制約条件を緩和することができる、プリテンショナ、リトラクタ及びシートベルト装置を提供する。
【解決手段】プリテンショナ3の動力伝達装置32は、ガス発生器32cと動力伝達部材32aとの間に配置されたピストン32dと、案内部材32bに形成されピストン32dを拘束する拘束部32gと、を含む。ピストン32dは、前後の空間を連通する貫通孔(第一貫通孔32r及び第二貫通孔32s)と、貫通孔に作動ガスを案内する案内流路(第一溝321c及び第二溝321d)と、を備える。案内流路は、少なくとも一つの屈曲部(第一屈曲部321e及び第二屈曲部321f)を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を拘束するウェビングの巻き取りを行うスプールに接続されたリングギアと、緊急時に前記リングギアに動力を伝達する動力伝達装置と、を含むプリテンショナにおいて、
前記動力伝達装置は、前記リングギアに動力を伝達する動力伝達部材と、該動力伝達部材を前記リングギアに案内する筒形状の案内部材と、該案内部材の内部に作動ガスを供給するガス発生器と、該ガス発生器と前記動力伝達部材との間に配置されたピストンと、該ピストンと前記案内部材との隙間を密封するシール部材と、前記案内部材に形成され前記ピストンを拘束する拘束部と、を含み、
前記ピストンは、前後の空間を連通する貫通孔と、該貫通孔に前記作動ガスを案内する案内流路と、を備え、
前記案内流路は、少なくとも一つの屈曲部を備えている、
ことを特徴とするプリテンショナ。
【請求項2】
前記案内流路は、前記ピストンに装着されたプラグによって形成されている、請求項1に記載のプリテンショナ。
【請求項3】
前記案内流路は、前記プラグの外面に形成された溝と前記ピストンの内面との隙間によって形成される、請求項2に記載のプリテンショナ。
【請求項4】
前記案内流路は、前記プラグの軸方向に形成された細孔によって形成される、請求項2に記載のプリテンショナ。
【請求項5】
前記プラグは、前記貫通孔に所定の隙間を空けて挿入可能に形成された突出部を備える、請求項2に記載のプリテンショナ。
【請求項6】
前記ピストンは、前記貫通孔を有する頭部と、該頭部の後方に形成された筒形状の胴部と、を備えている請求項2に記載のプリテンショナ。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記拘束部に到達するまで前記ピストンの前方に位置する部材により封止可能に構成されている、請求項1に記載のプリテンショナ。
【請求項8】
前記貫通孔は、径の異なる複数の孔により多段に構成されている、請求項1に記載のプリテンショナ。
【請求項9】
前記動力伝達装置は、前記ピストンと前記動力伝達部材との間に配置され前記拘束部を通過可能に構成された弾性体を備える、請求項1に記載のプリテンショナ。
【請求項10】
前記動力伝達装置は、前記弾性体と前記動力伝達部材との間に配置され前記弾性体を保護する樹脂製の保護部材を備える、請求項9に記載のプリテンショナ。
【請求項11】
前記動力伝達部材は、樹脂製のロッド形状を有している、請求項1に記載のプリテンショナ。
【請求項12】
前記動力伝達部材は、後端が球面形状を有している、請求項11に記載のプリテンショナ。
【請求項13】
前記拘束部は、前記案内部材の一部に形成された絞り部である、請求項1に記載のプリテンショナ。
【請求項14】
請求項1~請求項13の何れか一項に記載されたプリテンショナを備える、ことを特徴とするリトラクタ。
【請求項15】
請求項1~請求項13の何れか一項に記載されたプリテンショナを備えたリトラクタを有する、ことを特徴とするシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリテンショナ、リトラクタ及びシートベルト装置に関し、特に、ガス発生器により動力伝達部材を移動させる構成に適した、プリテンショナ、リトラクタ及びシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、一般に、乗員が着座する腰掛部と乗員の背面に位置する背もたれ部とを備えたシートに乗員を拘束するシートベルト装置が設けられている。かかるシートベルト装置は、乗員を拘束するウェビングと、ウェビングの巻き取りを行うリトラクタと、シートの側面に配置されたバックルと、ウェビングに配置されたトングとを含み、トングをバックルに嵌着させることによってウェビングにより乗員をシートに拘束している。また、リトラクタは、車両衝突時等の緊急時にウェビングの弛みを除去するプリテンショナを有していることが一般的になってきている。
【0003】
かかるプリテンショナは、ウェビングの巻き取りを行うスプールを回転させる動力伝達部材と、該動力伝達部材を案内する細長い筒形状のパイプ(案内部材)と、該パイプ内に作動ガスを供給することによって動力伝達部材に推進力を付与するガス発生器と、を含む動力伝達装置を備えていることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたように、プリテンショナの作動時に動力伝達部材が全てパイプから排出された場合には、作動ガスが外部に放出され、騒音や硝煙が発生する可能性がある。そこで、特許文献1には、作動ガスがパイプの外部に放出されないように、動力伝達部材(質量体又は駆動シリンダ)でパイプの最終セクションを閉鎖する手段が種々提案されている。
【0005】
ところで、近年、プリテンショナの動力伝達部材として、樹脂製の細長いロッド形状の部品を用いることが研究・開発されている。例えば、特許文献2には、減速要素及び密封要素を備えたピストンが、パイプの内側に形成されたストッパーに接触し、減速要素によってストッパーを塑性変形させることによってピストンをパイプ内で停止させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4654204号公報
【特許文献2】特表2016-523198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載された発明は、何れもパイプに沿って移動する移動体(質量体、ピストン等)によりパイプを完全に密封するように構成されている。プリテンショナは瞬間的(例えば、1秒以内)にウェビングを巻き取る必要があることから、移動体の運動エネルギーは必然的に大きくなりやすい。
【0008】
したがって、移動体を完全にパイプ内で停止させるためには、移動体とストッパーとの衝突時に移動体の運動エネルギーに対抗し得る構造に設計しなければならず、プリテンショナの設計に対する制約条件が厳しいという問題がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、作動ガスの放出を抑制しつつプリテンショナの設計に対する制約条件を緩和することができる、プリテンショナ、リトラクタ及びシートベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、乗員を拘束するウェビングの巻き取りを行うスプールに接続されたリングギアと、緊急時に前記リングギアに動力を伝達する動力伝達装置と、を含むプリテンショナにおいて、前記動力伝達装置は、前記リングギアに動力を伝達する動力伝達部材と、該動力伝達部材を前記リングギアに案内する筒形状の案内部材と、該案内部材の内部に作動ガスを供給するガス発生器と、該ガス発生器と前記動力伝達部材との間に配置されたピストンと、該ピストンと前記案内部材との隙間を密封するシール部材と、前記案内部材に形成され前記ピストンを拘束する拘束部と、を含み、前記ピストンは、前後の空間を連通する貫通孔と、該貫通孔に前記作動ガスを案内する案内流路と、を備え、前記案内流路は、少なくとも一つの屈曲部を備えている、ことを特徴とするプリテンショナが提供される。
【0011】
前記案内流路は、前記ピストンに装着されたプラグによって形成されていてもよい。
【0012】
前記案内流路は、前記プラグの外面に形成された溝と前記ピストンの内面との隙間によって形成されていてもよい。
【0013】
前記案内流路は、前記プラグの軸方向に形成された細孔によって形成されていてもよい。
【0014】
前記プラグは、前記貫通孔に所定の隙間を空けて挿入可能に形成された突出部を備えていてもよい。
【0015】
前記ピストンは、前記貫通孔を有する頭部と、該頭部の後方に形成された筒形状の胴部と、を備えていてもよい。
【0016】
前記貫通孔は、前記拘束部に到達するまで前記ピストンの前方に位置する部材により封止可能に構成されていてもよい。
【0017】
前記貫通孔は、径の異なる複数の孔により多段に構成されていてもよい。
【0018】
前記動力伝達装置は、前記ピストンと前記動力伝達部材との間に配置され前記拘束部を通過可能に構成された弾性体を備えていてもよい。
【0019】
前記動力伝達装置は、前記弾性体と前記動力伝達部材との間に配置され前記弾性体を保護する樹脂製の保護部材を備えていてもよい。
【0020】
前記動力伝達部材は、樹脂製のロッド形状を有していてもよい。
【0021】
前記動力伝達部材は、後端が球面形状を有していてもよい。
【0022】
前記拘束部は、前記案内部材の一部に形成された絞り部であってもよい。
【0023】
また、本発明によれば、上述した構成のプリテンショナを備えることを特徴とするリトラクタが提供される。
【0024】
また、本発明によれば、上述した構成のプリテンショナを備えたリトラクタを有する、ことを特徴とするシートベルト装置が提供される。
【発明の効果】
【0025】
上述した本発明に係るプリテンショナ、リトラクタ及びシートベルト装置によれば、ピストンに貫通孔及び案内流路を形成したことにより、ピストンが拘束部に拘束された後、案内流路を介して貫通孔から作動ガスを放出することができ、ピストンの運動エネルギーを低減することができる。
【0026】
また、案内流路に屈曲部を形成したことにより、作動ガスの放出時における直進性を阻害することができ、作動ガスの温度を低下させることもできる。したがって、本発明によれば、作動ガスの放出を最小限に抑制しつつプリテンショナの設計に対する制約条件を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリトラクタを示す部品展開図である。
【
図2】
図1に示したプラグの拡大図であり、(A)は斜視図、(B)は装着時における溝部を含む断面図、(C)は装着時における溝部を含まない断面図、を示している。
【
図3】プラグの変形例を示す斜視図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、を示している。
【
図4】ピストンの変形例を示す断面図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。
【
図5】プラグの変形例を示す断面図であり、(A)は第三変形例、(B)は第四変形例、(C)は第五変形例、を示している。
【
図6】
図1に示したピストンの作用を説明する概念図であり、(A)はガス発生器が作動する前の状態、(B)はガス発生器が作動した後の状態、(C)はピストンが拘束部に到達した状態、(D)はピストンから作動ガスが放出した状態、を示している。
【
図7】
図1に示したプリテンショナの作動を示す断面図であり、(A)は作動前の状態、(B)はピストンが拘束部に到達した状態、(C)はピストンから作動ガスが放出した状態、を示している。
【
図8】
図1に示した動力伝達装置の変形例を示す概念図であり、(A)はガス発生器が作動する前の状態、(B)は弾性体が拘束部に到達した状態、(C)は弾性体が拘束部を通過している状態、(D)はピストンから作動ガスが放出した状態、を示している。
【
図9】本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図9を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係るリトラクタを示す部品展開図である。
図2は、
図1に示したプラグの拡大図であり、(A)は斜視図、(B)は装着時における溝部を含む断面図、(C)は装着時における溝部を含まない断面図、を示している。
【0029】
本発明の一実施形態に係るリトラクタ1は、
図1に示したように、乗員を拘束するウェビングの巻き取りを行うスプール2と、緊急時にウェビングを巻き取って弛みを除去するプリテンショナ3と、を含み、プリテンショナ3は、スプール2に接続されたリングギア31と、緊急時にリングギア31に動力を伝達する動力伝達装置32と、を含んでいる。なお、
図1において、ウェビングの図は省略してある。
【0030】
動力伝達装置32は、例えば、リングギア31に動力を伝達する樹脂製のロッド形状を有する動力伝達部材32aと、動力伝達部材32aをリングギア31に案内する筒形状の案内部材32bと、案内部材32bの内部に作動ガスを供給するガス発生器32cと、ガス発生器32cと動力伝達部材32aとの間に配置されたピストン32dと、ピストン32dと案内部材との隙間を密封するシール部材32eと、ガス発生器32cとピストン32dとの隙間を埋めるスペーサ32fと、案内部材32bに形成されピストン32dを拘束する拘束部32gと、動力伝達部材32aとリングギア31との噛合開始時に動力伝達部材32aを支持するガイド部材32hと、を備えている。
【0031】
スプール2は、ウェビングを巻き取る巻胴であり、リトラクタ1の骨格を形成するベースフレーム11内に回転可能に収容されている。ベースフレーム11は、例えば、対峙する第一端面111及び第二端面112と、これらの端面を連結する側面113と、を有している。ベースフレーム11は、側面113と対峙し第一端面111及び第二端面112に接続されるタイプレート114を備えていてもよい。また、側面113には、ベースフレーム11を固定するためのブラケット115が固定されていてもよい。
【0032】
また、例えば、第一端面111側にスプリングユニット4が配置され、第二端面112側にプリテンショナ3及びロック機構5が配置される。なお、スプリングユニット4、プリテンショナ3、ロック機構5等の配置は、図示した構成に限定されるものではない。
【0033】
また、ベースフレーム11の第一端面111には、スプール2の軸部を挿通する開口部111aが形成されており、ベースフレーム11の第二端面112には、ロック機構5のパウル(図示せず)と係合可能な内歯を有する開口部112aが形成されている。また、ベースフレーム11の第二端面112の内側には、プリテンショナ3の一部(例えば、リングギア31)が配置される。また、ベースフレーム11の第二端面112の外側にはロック機構5が配置され、ロック機構5はリテーナカバー51内に収容される。
【0034】
リテーナカバー51には、車体の急減速や傾きを検出するビークルセンサ6が配置されていてもよい。ビークルセンサ6は、例えば、球形の質量体(図示せず)と、質量体の移動によって揺動されるセンサレバー61と、を有している。ビークルセンサ6は、ベースフレーム11の第二端面112に形成した開口部112bに嵌め込まれて固定されていてもよい。
【0035】
スプール2は、中心部に空洞を有し、軸心を形成するトーションバー21が挿通されていてもよい。トーションバー21は、第一端部がスプール2の端部に接続されたロック機構5のロッキングベース52に接続されており、第二端部がスプール2に固定されるとともにスプリングユニット4のスプリングコアに接続されている。したがって、スプール2は、ロッキングベース52及びトーションバー21を介して、スプリングユニット4に接続されており、スプリングユニット4に格納されたゼンマイバネによりウェビングを巻き取る方向に付勢されている。
【0036】
なお、スプール2に巻き取り力を付与する手段は、スプリングユニット4に限定されるものではなく、電動モータ等を用いた他の手段であってもよい。
【0037】
ロッキングベース52は、その側面部から出没可能に配置されたパウル(図示せず)を備えている。ロック機構5の作動時には、パウルをロッキングベース52の側面部から突出させることにより、ベースフレーム11の開口部112aに形成された内歯に係合させ、ロッキングベース52のウェビング引き出し方向の回転を拘束する。
【0038】
したがって、ロック機構5が作動した状態で、ウェビング引き出し方向に荷重が負荷された場合であっても、トーションバー21に閾値以上の荷重が生じるまでは、スプール2を非回転状態に保持することができる。そして、トーションバー21に閾値以上の荷重が生じた場合には、トーションバー21が捻れることによって、スプール2が相対的に回転運動を生じ、ウェビングが引き出される。
【0039】
また、ロック機構5は、ロッキングベース52に隣接するように配置されたロックギア53を備えている。ロックギア53は、揺動可能に配置されたフライホイール(図示せず)を備えており、ウェビングが通常の引き出し速度よりも早い場合には、フライホイールが揺動してリテーナカバー51に形成された内歯に係合する。また、ビークルセンサ6が作動した場合には、センサレバー61がロックギア53の側面に形成された外歯に係合する。
【0040】
このように、ロックギア53は、フライホイール又はビークルセンサ6の作動により回転が規制される。そして、ロックギア53の回転が規制されると、ロッキングベース52とロックギア53との間に相対回転が生じ、この相対回転に伴ってパウルがロッキングベース52の側面部から突出される。
【0041】
なお、ロック機構5は、図示した構成に限定されるものではなく、従来から存在している種々の構成のものを任意に選択して使用することができる。また、スプール2は、トーションバー21の代わりに、シャフトとワイヤ状又はプレート状の塑性変形部材との組み合わせによって構成される衝撃吸収機構を備えていてもよい。
【0042】
プリテンショナ3は、例えば、外周に係合歯を備えたリングギア31と、動力伝達装置32と、リングギア31を格納するプリテンショナカバー33と、動力伝達部材32aの移動を規制するピン34と、を備えている。また、図示しないが、プリテンショナ3は、プリテンショナカバー33内において、動力伝達部材32aの移動空間を形成するガイドスペーサを備えていてもよい。
【0043】
リングギア31は、プリテンショナカバー33とベースフレーム11(第二端面112)との間に形成された空間に位置するように配置される。なお、リングギア31は駆動輪や回転部材と称することもある。
【0044】
プリテンショナカバー33は、例えば、ベースフレーム11の第二端面112の内側に配置される。また、プリテンショナカバー33は、例えば、留め具35により、案内部材32bとともに又は直にベースフレーム11(第二端面112)に固定される。
【0045】
動力伝達装置32は、例えば、筒形状のパイプによって構成される案内部材32bの後端から先端に向かって、ガス発生器32c、スペーサ32f、シール部材32e、ピストン32d、動力伝達部材32aの順に配置されている。動力伝達部材32a、シール部材32e及びピストン32dは、案内部材32b内に収容されており、案内部材32bの後端に配置されたガス発生器32cから発生した作動ガスによって案内部材32b内を移動する。
【0046】
動力伝達部材32aは、案内部材32bに挿入する前の状態では、直線形状を有する棒状に形成されており、例えば、案内部材32bの先端側から案内部材32b内に圧入することによって、
図1に示したように、案内部材32bの形状に沿った状態で案内部材32bの内部に収容される。動力伝達部材32aは、例えば、後端(ピストン32d側の端部)が球面形状を有している。なお、動力伝達部材32aの後端は平面形状であってもよい。
【0047】
案内部材32bは、例えば、
図1に示したように、第一端面111の上部、タイプレート114の上部、第二端面112の上部を通り、第二端面112及び側面113によって形成される角隅部内側の上部から下方に向かって延設するように湾曲した形状を有している。
【0048】
案内部材32bの先端部には、ガイド部材32hが配置される。また、案内部材32bの先端部には、ガイド部材32hに案内された動力伝達部材32aを案内部材32bからプリテンショナカバー33により形成された空間に放出する開口部32iが形成されている。また、案内部材32bは、案内部材32bの先端部から開口部32iまで連通する切欠部32jと、開口部32iの下方に形成された留め具35を挿通する挿通孔32kと、を備えている。
【0049】
開口部32iは、案内部材32bのガイド部材32hと隣接する位置に形成されており、動力伝達部材32aの出口部を構成している。また、切欠部32jは、ガイド部材32hの周方向の位置決めをする機能を有し、切欠部32jにはガイド部材32hの突起部が挿入される。
【0050】
ガイド部材32hは、例えば、案内部材32bの先端部に挿入可能な略円柱形状を有し、その挿入側の端部に動力伝達部材32aを開口部32iに案内する摺動面32mが斜めに形成されている。摺動面32mは、動力伝達部材32aの外形に沿って湾曲した溝形状を有していてもよい。
【0051】
また、摺動面32mの下部には、留め具35を挿通する切欠部32nが形成されている。また、摺動面32mの背面側には、ガイド部材32h及び案内部材32bをベースフレーム11(側面113)に固定するボルト(図示せず)を螺合させるボルト穴32o(
図7参照)が形成されている。
【0052】
拘束部32gは、動力伝達部材32aを通過させ、ピストン32dを案内部材32b内で停止させる部分である。拘束部32gは、例えば、案内部材32bの一部に形成された絞り部であり、案内部材32bの内側の突出した凸部を形成している。拘束部32gは、例えば、案内部材32bの外周の一部をプレスすることによって形成される。なお、拘束部32gは、案内部材32bにピン等の別部品を固定することによって形成してもよい。
【0053】
スペーサ32fは、また、プリテンショナ3の組立時に生じるガス発生器32cとピストン32dとの隙間を埋める部品である。スペーサ32fを配置することにより、通常時におけるピストン32dの移動によって発生する異音を低減することができる。スペーサ32fは、例えば、金属製のコイルスプリングにより構成される。
【0054】
ピストン32dは、例えば、
図1及び
図2(B)に示したように、略球面形状を有する頭部32pと、頭部32pの後方(平面側)に形成された略円筒形状の胴部32qと、により構成される金属製の部品である。
【0055】
頭部32pは、拘束部32gの内径よりも大きな外径を有している。頭部32pの中心部にはピストン32dの前後の空間を連通する第一貫通孔32r及び第二貫通孔32sが形成されている。第一貫通孔32rは第二貫通孔32sよりも小さい径に形成されている。このように、貫通孔は径の異なる複数の孔により多段に構成されていてもよい。
【0056】
第一貫通孔32rは、ピストン32dが拘束部32gに到達するまでピストン32dの前方に位置する部材(例えば、動力伝達部材32a)の後端により封止可能に構成されている。また、第一貫通孔32rの径の大きさにより、作動ガスの放出量を制御することができる。また、第二貫通孔32sの径を大きくすることにより、ピストン32dの軽量化を図ることもできる。
【0057】
胴部32qの外周には、シール部材32eが配置される。シール部材32eは、例えば、略円筒形状のエラストマー製の部品である。シール部材32eの外径は、例えば、案内部材32bの内径よりも僅かに大きく形成されており、案内部材32b内に圧入される。したがって、シール部材32eは、ガス発生器32cから供給された作動ガスの圧力によって案内部材32bの内面に接触した状態を保持しながら移動する。
【0058】
また、胴部32qの内径は、例えば、第二貫通孔32sの径よりも大きく形成される。胴部32qには、例えば、
図2(A)に示したプラグ321が圧入により装着される。なお、胴部32qは、円筒形状に限定されるものではなく、矩形の筒形状であってもよい。
【0059】
プラグ321は、例えば、胴部32qに挿入される軸部321aと、胴部32qの後端側に配置されるフランジ部321bと、を備えている。また、軸部321aの外面には、軸方向に沿って第一溝321cが形成されている。フランジ部321bのピストン32d側の面には、第一溝321cに連通する第二溝321dが形成されている。
【0060】
プラグ321の装着時には、
図2(C)に示したように、ピストン32dの胴部32qの内面を封止する部分と、
図2(B)に示したように、ピストン32dの胴部32qの内面に第二貫通孔32sと連通する空間を構成する部分とが形成される。したがって、第一溝321c及び第二溝321dにより、貫通孔に作動ガスを案内する案内流路が形成される。
【0061】
案内流路は、
図2(B)に示したように、胴部32qの内面と第二貫通孔32sとの間に形成される段差部と軸部321aの先端部との間に形成される第一屈曲部321eと、第一溝321cと第二溝321dとの間に形成される第二屈曲部321fと、を備えている。
【0062】
このように、プラグ321をピストン32dに装着することにより、折れ曲がった案内流路を形成し、作動ガスがピストン32dを直進して通過しないようにすることができる。かかる案内流路を形成することにより、作動ガスのピストン32dの通過時における抵抗を大きくして作動ガスがピストン32dに接触する時間を長くすることにより、作動ガスの温度をピストン32dとの熱交換作用によって低下させることができる。
【0063】
案内流路の経路は、図示した構成に限定されるものではなく、例えば、プラグ321はピストン32dと一体に構成されていてもよいし、プラグ321とピストン32dとは別の部分で分離された構成であってもよいし、第一溝321c及び第二溝321dは周方向に捻れていてもよい。
【0064】
また、本実施形態では一対の案内流路(第一溝321c及び第二溝321d)を相対する位置に配置しているが、案内流路は一本であってもよいし、三本以上であってもよい。複数本の案内流路を形成する場合には、周方向に均等な間隔で配置することが好ましい。
【0065】
ここで、
図3は、プラグの変形例を示す斜視図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、を示している。
図3(A)に示したプラグ321は、
図2(A)に示したプラグ321のフランジ部321bを省略し、軸部321aのみで構成したものである。かかる構成によっても第一溝321cにより少なくとも一つの屈曲部(第一屈曲部321e)を形成することができる。
【0066】
図3(B)に示したプラグ321は、軸部321aの周方向にC字形状の凸部321gを複数配置したものである。隣接する凸部321gの開放部は隣り合わないように配置される。かかる凸部321gは、プラグ321の装着時に胴部32qの内面との間に軸方向及び周方向に沿って形成される溝部(案内流路)を構成する。
【0067】
なお、凸部321gの形状はC字形状に限定されるものではなく、周方向に複数の開放部を構成する円弧形状であってもよいし、プラグ321の両端まで形成された螺旋形状であってもよい。また、
図3(B)に示したプラグ321にフランジ部321bを形成してもよい。
【0068】
ここで、
図4は、ピストンの変形例を示す断面図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。
図4(A)に示したピストン32dは、貫通孔を一つの貫通孔32tにより形成したものである。このように貫通孔は単数であってもよいし、上述した実施形態のように多段に構成されていてもよい。
【0069】
図4(B)に示したピストン32dは、頭部32pの先端に凹部32uを形成したものである。かかる構成により、動力伝達部材32aの球面形状に適合させやすくすることができる。
図4(C)に示したピストン32dは、第二貫通孔32sに中空部32vを形成したものである。かかる構成により、ピストン32dの軽量化を図ることができる。
【0070】
ここで、
図5は、プラグの変形例を示す断面図であり、(A)は第三変形例、(B)は第四変形例、(C)は第五変形例、を示している。
図5(A)に示したプラグ321は、
図2(B)に示したプラグ321の軸部321aの先端に突出部321hを形成したものである。突出部321hは、ピストン32dの第二貫通孔32sに所定の隙間を空けて挿入可能に形成された略円柱形状部である。
【0071】
かかる構成により、突出部321hと第二貫通孔32sとの隙間により案内流路の一部を形成することができる。また、ピストン32dの第一貫通孔32rと第二貫通孔32sとの間に形成される段差部により第三屈曲部321iを形成することができる。したがって、第三変形例のプラグ321を採用することにより、作動ガスの温度をより低下させることができる。
【0072】
図5(B)に示したプラグ321は、
図5(A)に示した第三変形例のプラグ321に形成された第一溝321c及び第二溝321dに替えて、軸部321aに軸方向に延びた細孔321jにより案内流路を形成したものである。細孔321jは、軸部321aと突出部321hとの段差部を貫通するように形成される。
【0073】
すなわち、細孔321jは、軸部321aと突出部321hとの段差部の径方向幅よりも小さい径を有する貫通孔である。かかる第四変形例の構成によれば、案内流路に第一屈曲部321e及び第三屈曲部321iを形成することができる。細孔321jは、一本であってもよいし、複数本であってもよい。なお、細孔321jは、第一屈曲部321eに向かって作動ガスを放出可能な位置に形成される。
【0074】
図5(C)に示したプラグ321は、
図4(A)に示した第一変形例のピストン32dに軸部321a・フランジ部321b・細孔321jを有するプラグ321を装着したものである。かかる構成によっても、案内流路に少なくとも一つの第一屈曲部321eを形成することができる。なお、細孔321jは、第一屈曲部321eに向かって作動ガスを放出可能な位置に形成される。
【0075】
次に、ピストン32dの作用について、
図6(A)~
図6(D)を参照しつつ説明する。ここで、
図6は、
図1に示したピストンの作用を説明する概念図であり、(A)はガス発生器が作動する前の状態、(B)はガス発生器が作動した後の状態、(C)はピストンが拘束部に到達した状態、(D)はピストンから作動ガスが放出した状態、を示している。
【0076】
図6(A)に示したように、ガス発生器32cの作動前の状態では、ピストン32dはスペーサ32fにより動力伝達部材32aの後端に押し付けられた状態で案内部材32b内に挿入されている。
【0077】
ガス発生器32cが作動して案内部材32b内に作動ガスが供給されると、
図6(B)に示したように、ピストン32dは、作動ガスの圧力によって、動力伝達部材32aの後端に接触した状態のまま動力伝達部材32aを前方に移動させる。
【0078】
その後、
図6(C)に示したように、ピストン32dが拘束部32gに到達すると、
図6(D)に示したように、ピストン32dは拘束部32gに衝突して停止し、動力伝達部材32aは慣性力及び第一貫通孔32rから負荷される作動ガスの圧力により前方に移動する。第一貫通孔32rから放出された作動ガスは、最終的に動力伝達部材32aと案内部材32bとの隙間から案内部材32bの外部に放出される。
【0079】
したがって、本実施形態によれば、ピストン32dが拘束部32gに拘束された後、案内流路(第一溝321c及び第二溝321d)を介して第一貫通孔32rから作動ガスを放出することができ、ピストン32dの運動エネルギーを低減することができ、作動ガスの放出を最小限に抑制しつつプリテンショナの設計に対する制約条件を緩和することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、案内流路に屈曲部(第一屈曲部321e及び第二屈曲部321f)を形成したことにより、作動ガスの放出時における直進性を阻害することができ、作動ガスの温度を低下させることもでき、プリテンショナの設計に対する制約条件をより緩和することができる。
【0081】
ここで、プリテンショナ3の作動について、
図7(A)~
図7(C)を参照しつつ説明する。
図7は、
図1に示したプリテンショナの作動を示す断面図であり、(A)は作動前の状態、(B)はピストンが拘束部に到達した状態、(C)はピストンから作動ガスが放出した状態、を示している。
【0082】
図7(A)に示したように、プリテンショナ3の作動前の状態において、動力伝達部材32aは案内部材32b内に収容されている。このとき、動力伝達部材32aの先端部は、ガイド部材32hに臨む位置まで挿入されている。
【0083】
車両衝突時等の緊急時にはプリテンショナ3が作動し、ガス発生器32cから案内部材32b内に作動ガスが供給され、ピストン32dを介して動力伝達部材32aが押し出され、案内部材32bに沿って移動する。このとき、動力伝達部材32aの先端部は、ガイド部材32hの摺動面32mに衝突し、開口部32iに向かって偏向され、摺動面32mに沿って移動し、リングギア31の外周に形成された係合歯に向かって放出される。
【0084】
案内部材32bから放出された動力伝達部材32aは、リングギア31の係合歯に衝突し、リングギア31を回転させる。その後、動力伝達部材32aは、リングギア31の係合歯によって塑性変形しながらプリテンショナカバー33によって形成された通路に沿って移動する。
【0085】
図7(B)に示したように、動力伝達部材32aの移動がピン34により規制された状態でピストン32dが移動すると、ピストン32dは拘束部32gに衝突して到達する。そして、
図7(C)に示したように、ピストン32dは拘束部32gに衝突して停止し、動力伝達部材32aは慣性力及び作動ガスの圧力によって圧縮され、動力伝達部材32aの後端はピストン32dから離脱する。
【0086】
したがって、ピストン32dの拘束時には作動ガスを案内部材32b内に封じ込めることなく、ピストン32dの第一貫通孔32rから作動ガスを外部に放出することができ、ピストン32dの運動エネルギーを低減することができる。また、本実施形態では、案内流路を形成したことにより、第一貫通孔32rから放出される作動ガスの温度を低下させることもできる。
【0087】
なお、図示しないが、動力伝達部材32aは、ウェビングの弛みを巻き取り終えることによって停止することから、ウェビングの弛み量が少ない場合には、ピストン32dが拘束部32gに到達する前に動力伝達部材32aの移動が停止する場合もあり得る。
【0088】
次に、動力伝達装置32の変形例について、
図8(A)~
図8(D)を参照しつつ説明する。ここで、
図8は、
図1に示した動力伝達装置の変形例を示す概念図であり、(A)はガス発生器が作動する前の状態、(B)は弾性体が拘束部に到達した状態、(C)は弾性体が拘束部を通過している状態、(D)はピストンから作動ガスが放出した状態、を示している。
【0089】
図8(A)~
図8(D)に示した動力伝達装置32は、ピストン32dと動力伝達部材32aとの間に配置され拘束部32gを通過可能に構成された弾性体322と、弾性体322と動力伝達部材32aとの間に配置され弾性体322を保護する樹脂製の保護部材323と、を備えている。
【0090】
弾性体322は、例えば、略円柱形状に形成されたエラストマー製の部品である。弾性体322は、無負荷状態において案内部材32bの内径よりも小さい外径を有し、圧縮時に案内部材32bの内面に接触可能に構成されている。また、弾性体322は、圧縮時に拘束部32gを通過可能な形状に変形可能な弾性力を備えている。また、弾性体322は、保護部材323を係止する留め穴を有していてもよい。
【0091】
保護部材323は、例えば、動力伝達部材32aと同じ素材により構成される。保護部材323は、例えば、断面略T字形状を有し、動力伝達部材32aの後端と面接触可能に構成されている。また、保護部材323は、弾性体322に係止可能な突起を有していてもよい。
【0092】
弾性体322と保護部材323とを一体化することにより、プリテンショナ3の組立時に取り扱いやすくすることができる。なお、保護部材323は、必ずしも弾性体322に連結しなければならない部品ではなく、必要に応じて、突起及び留め穴の形状を変更したり、突起及び留め穴を省略したりしてもよい。
【0093】
なお、弾性体322及び保護部材323の構成は、図示した構成に限定されるものではなく、例えば、連結構造を変更してもよいし、必要に応じて保護部材323を省略するようにしてもよい。
【0094】
弾性体322及び保護部材323は、
図8(A)に示したように、ガス発生器32cの作動前の状態では、動力伝達部材32aとピストン32dとの間に挿入されている。その後、ガス発生器32cが作動して案内部材32b内に作動ガスが供給されると、
図8(B)に示したように、弾性体322及び保護部材323は、動力伝達部材32aとピストン32dとの間に挟まれて圧縮され、案内部材32bの内面に接触するように変形した状態で、ピストン32dとともに前方に移動する。
【0095】
弾性体322及び保護部材323は拘束部32gに到達すると、
図8(C)に示したように、拘束部32gに沿って弾性変形しながら拘束部32gを通過する。そして、
図8(D)に示したように、ピストン32dが拘束部32gに到達すると、ピストン32dは拘束部32gに衝突して停止し、弾性体322及び保護部材323は拘束部32gを完全に通過する。
【0096】
したがって、ピストン32dの第一貫通孔32rが開放され、作動ガスが放出される。第一貫通孔32rから放出された作動ガスは、動力伝達部材32a・弾性体322・保護部材323と案内部材32bとの隙間から案内部材32bの外部に放出される。
【0097】
次に、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置について、
図9を参照しつつ説明する。ここで、
図9は、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。なお、
図9において、説明の便宜上、シートベルト装置以外の構成部品については、一点鎖線で図示している。
【0098】
図9に示した本実施形態に係るシートベルト装置100は、乗員を拘束するウェビングWと、ウェビングWの巻き取りを行うリトラクタ1と、車体側に設けられウェビングWを案内するガイドアンカー101と、ウェビングWを車体側に固定するベルトアンカー102と、シートSの側面に配置されたバックル103と、ウェビングWに配置されたトング104と、を備え、リトラクタ1は、例えば、
図1に示した構成を有している。
【0099】
以下、リトラクタ1以外の構成部品について、簡単に説明する。シートSは、例えば、乗員が着座する腰掛部S1と、乗員の背面に位置する背もたれ部S2と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト部S3とを備えている。リトラクタ1は、例えば、車体のBピラーRに内蔵される。また、一般に、バックル103は腰掛部S1の側面に配置されることが多く、ベルトアンカー102は腰掛部S1の下面に配置されることが多い。また、ガイドアンカー101は、BピラーRに配置されることが多い。そして、ウェビングWは、一端がベルトアンカー102に接続され、他端がガイドアンカー101を介してリトラクタ1に接続されている。
【0100】
したがって、トング104をバックル103に嵌着させる場合、ウェビングWはガイドアンカー101の挿通孔を摺動しながらリトラクタ1から引き出されることとなる。また、乗員がシートベルトを装着した場合や降車時にシートベルトを解除した場合には、リトラクタ1のスプリングユニット4の作用により、ウェビングWは一定の負荷がかかるまで巻き取られる。
【0101】
上述したシートベルト装置100は、前部座席における通常のシートベルト装置に、上述した実施形態に係るリトラクタ1を適用したものである。したがって、本実施形態に係るシートベルト装置100によれば、ピストン32dが拘束部32gに拘束された後、案内流路を介して貫通孔から作動ガスを放出することができ、ピストン32dの運動エネルギーを低減することができるとともに作動ガスの温度を低下させることができる。
【0102】
なお、本実施形態に係るシートベルト装置100は、前部座席への適用に限定されるものではなく、例えば、ガイドアンカー101を省略して後部座席にも容易に適用することができる。また、本実施形態に係るシートベルト装置100は、車両以外の乗物にも使用することができる。
【0103】
また、上述した実施形態では、動力伝達部材32aが樹脂製のロッド形状を有する場合について説明しているが、動力伝達部材32aは金属製の球体(ボール)形状であってもよいし、ラック・アンド・ピニオン駆動方式のラックであってもよい。
【0104】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0105】
1 リトラクタ
2 スプール
3 プリテンショナ
4 スプリングユニット
5 ロック機構
6 ビークルセンサ
11 ベースフレーム
21 トーションバー
31 リングギア
32 動力伝達装置
32a 動力伝達部材
32b 案内部材
32c ガス発生器
32d ピストン
32e シール部材
32f スペーサ
32g 拘束部
32h ガイド部材
32i 開口部
32j 切欠部
32k 挿通孔
32m 摺動面
32n 切欠部
32o ボルト穴
32p 頭部
32q 胴部
32r 第一貫通孔
32s 第二貫通孔
32t 貫通孔
32u 凹部
32v 中空部
33 プリテンショナカバー
34 ピン
35 留め具
51 リテーナカバー
52 ロッキングベース
61 センサレバー
100 シートベルト装置
101 ガイドアンカー
102 ベルトアンカー
103 バックル
104 トング
111 第一端面
111a 開口部
112 第二端面
112a,112b 開口部
113 側面
114 タイプレート
115 ブラケット
321 プラグ
321a 軸部
321b フランジ部
321c 第一溝
321d 第二溝
321e 第一屈曲部
321f 第二屈曲部
321g 凸部
321h 突出部
321i 第三屈曲部
321j 細孔
322 弾性体
323 保護部材