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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185196
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】燃料電池船
(51)【国際特許分類】
   B63B 11/04 20060101AFI20221207BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20221207BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20221207BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20221207BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20221207BHJP
   B63H 21/17 20060101ALI20221207BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221207BHJP
【FI】
B63B11/04 A
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/04 H
B63B35/00 T
B63H20/00 600
B63H21/17
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092706
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 行彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛広
(72)【発明者】
【氏名】山口 安美
(72)【発明者】
【氏名】平岩 琢也
(72)【発明者】
【氏名】品川 学
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC02
5H127AC16
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA59
5H127BB02
5H127CC07
5H127EE03
5H127EE04
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】燃料に由来する危険性を低減することができる燃料電池船を提供する。
【解決手段】例示的な燃料電池船は、燃料の電気化学反応により発電を行う燃料電池から供給される電力を用いて船体を推進する燃料電池船であって、前記燃料を入れる燃料タンクが設置されるタンク区画を備える。前記タンク区画は、前記船体の甲板下に他の区画と分離して設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の電気化学反応により発電を行う燃料電池から供給される電力を用いて船体を推進する燃料電池船であって、
前記燃料を入れる燃料タンクが設置されるタンク区画を備え、
前記タンク区画は、前記船体の甲板下に他の区画と分離して設けられる、燃料電池船。
【請求項2】
前記タンク区画は、前記船体の外部に先端を有するベント管と接続される、請求項1に記載の燃料電池船。
【請求項3】
前記燃料が内部を通る燃料配管を更に備え、
前記燃料配管を放出源とする前記燃料の放出は、前記ベント管を用いて行われる、請求項2に記載の燃料電池船。
【請求項4】
前記燃料配管には、前記燃料タンクと前記燃料電池とを接続する燃料供給配管が含まれ、
前記燃料供給配管は、管内の圧力を減少させる弁を介して前記ベント管と接続される、請求項3に記載の燃料電池船。
【請求項5】
前記燃料タンクは、溶融により前記燃料タンク内の流体の放出を許容する溶栓弁を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンクから燃料電池に燃料を供給し、燃料電池で発生する電力によって推進装置を駆動する燃料電池船が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1においては、燃料電池ユニットおよび水素燃料タンクを収容する収納部の蓋部材が不正開放された場合に、水素燃料タンクから水素が積極的に排出されることで、素早く燃料を枯渇させ、盗難を防ぐ構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-92815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池に供給される燃料は、例えば水素等の可燃ガスである。このため、燃料電池船においては、燃料に由来する危険性を考慮した安全な設計や、安全対策が望まれる。従来においては、上述のように燃料の盗難防止を目的とした燃料電池船は知られるが、安全対策について改良の余地があると考えられる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、燃料に由来する危険性を低減することができる燃料電池船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な燃料電池船は、燃料の電気化学反応により発電を行う燃料電池から供給される電力を用いて船体を推進する燃料電池船であって、前記燃料を入れる燃料タンクが設置されるタンク区画を備える。前記タンク区画は、前記船体の甲板下に他の区画と分離して設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料に由来する危険性を低減し、安全性を向上した燃料電池船を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態に係る燃料電池船の概略の構成を示す説明図
図2】上記燃料電池船の内部構造を模式的に示す説明図
図3】本発明の実施の一形態に係る燃料電池船の詳細例を示す平面図
図4図3に示す燃料電池船からキャビン等の一部の構成を取り除いた場合の斜視図
図5図4に示す燃料電池船が備える燃料電池区画、タンク区画、およびダクト区画を抽出して示した概略斜視図
図6図5に示す燃料電池区画の天壁を取り除いた概略斜視図
図7図5に示すタンク区画の天壁の一部を取り除いた概略斜視図
図8図3のVIII-VIIIで切った断面の一部を拡大して示す図
図9】燃料タンクが有する溶栓弁について説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本明細書では、では、方向を以下のように定義する。まず、燃料電池船の船尾から船首に向かう方向を「前」とし、船首から船尾に向かう方向を「後」とする。そして、前後方向に垂直な横方向を左右方向とする。このとき、燃料電池船の前進時に操船者から見て左側を「左」とし、右側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。また、以下においては、燃料が気体である場合を例に説明するが、燃料は気体に限定されず、液体であってもよい。
【0010】
〔1.燃料電池船の概略の構成〕
まず、図1を参照して、本実施形態に係る燃料電池船SHについて説明する。図1は、燃料電池船SHの概略の構成を示す説明図である。燃料電池船SHは、船体1と、キャビン2と、を備える。キャビン2は、船体1の上側に配置される。なお、本実施形態では、キャビン2はブリッジを含む。
【0011】
燃料電池船SHは、燃料電池システム3と、燃料ガス貯留部4と、蓄電池システム5と、推進装置6と、複数の周辺機器11と、制御装置12と、をさらに備える。なお、図1では、制御信号または高電圧での電力供給ラインを実線で示し、制御信号または低電圧の電力供給ラインを一点鎖線で示す。
【0012】
燃料電池システム3は、主電源として機能する。燃料電池システム3は、燃料ガスを消費して電力(具体的には直流電力)を発生する。燃料ガスは、可燃ガスである。典型的には、燃料ガスは水素ガスである。燃料電池システム3は、発生した電力を、推進装置6および周辺機器11に供給する。また、燃料電池システム3は、蓄電池システム5に電力を供給して、蓄電池システム5を充電することもできる。
【0013】
燃料ガス貯留部4は、燃料電池システム3に供給する燃料ガスを貯留する。燃料ガス貯留部4から燃料電池システム3への燃料ガスの供給は、後述する燃料ガス供給配管32(図2参照)を介して行われる。
【0014】
蓄電池システム5は、蓄電池を有する。蓄電池は、例えばリチウムイオン二次電池であるが、ニッケル-カドミウム蓄電池、ニッケル-水素蓄電池などであってもよい。蓄電池システム5は、蓄電した電力(具体的には直流電力)を、推進装置6および周辺機器11に供給する補助電源として機能する。このように、蓄電池システム5が補助電源として機能することにより、燃料電池システム3から推進装置6等への電力の供給不足を補うことができる。なお、蓄電池システム5は、制御装置12に電力を供給してもよい。
【0015】
推進装置6は、燃料電池システム3の後述する燃料電池31(図2参照)から供給される電力によって駆動され、船体1に推進力を発生させる。つまり、燃料電池船SHは、燃料電池31から供給される電力を用いて船体1を推進する。
【0016】
なお、推進装置6は、蓄電池システム5が有する蓄電池から供給される電力のみによって駆動されてもよいし、燃料電池31および蓄電池の両方から供給される電力によって駆動されてもよい。つまり、推進装置6は、燃料電池および蓄電池の少なくとも一方から供給される電力によって駆動されて、船体1に推進力を発生させてもよい。
【0017】
推進装置6は、電力変換装置6aと、推進モータ6bと、プロペラ6cとを有する。電力変換装置6aは、燃料電池システム3から供給される電力を、推進モータ6bの規格に応じた電力に変換する。例えば、電力変換装置6aは、直流電力を交流電力に変換する。この場合、電力変換装置6aは、例えばインバータを有する。推進モータ6bは、電力変換装置6aから供給される電力(例えば交流電力)によって駆動される。推進モータ6bが駆動されると、推進モータ6bの回転力がプロペラ6cに伝達される。その結果、プロペラ6cが回転して、船体1に推進力が発生する。なお、推進モータ6bとプロペラ6cとの間にマリンギアを有する構成としてもよい。
【0018】
周辺機器11としては、例えば、コンプレッサ、電磁弁、ポンプなどが含まれる。なお、周辺機器11には、照明機器、空調機器などの電気機器も含まれるが、周辺機器11の種類は特に限定されない。
【0019】
制御装置12は、燃料電池システム3、燃料ガス貯留部4、蓄電池システム5、推進装置6、および複数の周辺機器11を制御する。制御装置12は、例えば、1つまたは2以上のコンピュータによって構成される。コンピュータは、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。制御装置12は、PLC(Programable Logic Controller)を用いて構成されてもよい。制御装置12には、図示しないバッテリ(例えば鉛電池)、または蓄電池システム5の蓄電池から電力が供給される。
【0020】
制御装置12は、制御部12aと、記憶部12bと、を有する。制御部12aは、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含む。記憶部12bは、記憶装置を含み、データおよびコンピュータプログラムを記憶する。具体的には、記憶部12bは、半導体メモリのような主記憶装置と、半導体メモリ、ソリッドステートドライブ、および/または、ハードディスクドライブのような補助記憶装置と、を含む。記憶部12bは、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。
【0021】
制御部12aのプロセッサは、記憶部12bの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、燃料電池システム3、燃料ガス貯留部4、蓄電池システム5、推進装置6、および複数の周辺機器11を制御する。
【0022】
〔2.燃料電池船の内部構造の概要〕
次に、図2を参照して、燃料電池船SHの内部構造について説明する。図2は、燃料電池船SHの内部構造を模式的に示す説明図である。なお、図2では、空気の流れを、破線の矢印で示す。図2では、図面右側を船首側(前側)とし、図面左側を船尾側(後側)とした上で、各部材を図示しているが、各部材の接続関係が維持されるのであれば、各部材の位置は図2で示した位置には限定されない。
【0023】
燃料電池船SHは、機関室13と、燃料室14と、を備える。機関室13および燃料室14は、船体1の甲板1aの下部に配置される。機関室13は燃料室14に対して前側に位置する。甲板1aの下部には、前側から後側に向かって順に隔壁W1、W2およびW3が位置している。機関室13は、隔壁W1およびW2によって他の空間から仕切られている。燃料室14は、隔壁W2およびW3によって他の空間から仕切られている。隔壁W1~W3は、例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)で構成されるが、鉄板等であってもよい。
【0024】
(2-1.燃料電池システムの構成)
燃料電池船SHの燃料電池システム3は、機関室13内に位置する。燃料電池システム3は、燃料電池31と、燃料ガス供給配管32と、燃料電池側遮断弁33と、を有する。
【0025】
燃料電池31は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電力(具体的には直流電力)を発生させる。典型的には、酸化剤ガスは空気であり、酸化剤は酸素である。つまり、燃料電池31は、燃料の電気化学反応により発電を行う。
【0026】
燃料電池31は、積層された複数のセルによって構成される燃料電池スタックである。例えば、燃料電池31の各セルは、固体高分子電解質膜と、アノード極と、カソード極と、一対のセパレータとを有する。アノード極とカソード極とは、固体高分子電解質膜を挟む。アノード極は、負極(燃料極)である。アノード極は、アノード触媒層およびガス拡散層を含む。カソード極は、正極(空気極)である。カソード極は、カソード触媒層およびガス拡散層を含む。アノード極と固体高分子電解質膜とカソード極とは、膜-電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を構成する。一対のセパレータは、膜-電極接合体を挟む。各セパレータは複数の溝を有する。一方のセパレータの各溝は、燃料ガスの流路を形成する。他方のセパレータの各溝は、酸化剤ガスの流路を形成する。
【0027】
燃料電池31の上記構成において、アノード極側では、燃料ガスに含まれる水素が触媒によって水素イオンと電子とに分解される。水素イオンは固体高分子電解質膜を透過してカソード極側に移動する。一方、電子は外部回路を通ってカソード極側に移動する。これにより、電流が発生する(発電する)。カソード極側では、酸化剤ガスに含まれる酸素が、外部回路を流れてきた電子と、固体高分子電解質膜を透過した水素イオンと結合して水を生成する。生成された水は、排出配管31aを介して船外に排出される。
【0028】
燃料電池31は、発電した電力を、図1で示した推進装置6および周辺機器11に供給する。なお、燃料電池31は、発電した電力を、DC/DCコンバータ等の回路を介して間接的に、推進装置6および周辺機器11に供給してもよい。
【0029】
燃料ガス供給配管32は、燃料ガス貯留部4の後述する燃料タンク41に収容された燃料ガスを、燃料電池31のアノード極に供給するための配管である。つまり、燃料電池船SHは、燃料タンク41から燃料電池31に燃料ガスを供給する燃料ガス供給配管32を備える。
【0030】
燃料電池側遮断弁33は、燃料ガス供給配管32の流路を開放または閉塞する遮断弁SVの一例である。燃料電池側遮断弁33の開閉は、制御部12a(図1参照)によって制御される。具体的には、燃料電池側遮断弁33は、制御部12aの制御に基づき、燃料タンク41から燃料電池31への燃料ガスの供給と供給停止とを切り替える。燃料電池側遮断弁33は、燃料電池31が配置される燃料電池区画30内で、燃料ガス供給配管32に1つだけ設けられているが、2つ以上設けられてもよい。なお、燃料電池船SHが備える燃料電池区画30の詳細については後述する。
【0031】
燃料電池システム3は、冷却媒体タンク38と、冷却媒体配管39と、さらに有する。冷却媒体タンク38は、燃料電池31を冷却するための冷却媒体を貯留する。冷却媒体は、例えば電気伝導率の低い不凍液であってよい。不凍液は、例えば、純水とエチレングリコールとを所定割合で混合した液体である。冷却媒体タンク38は、密閉されているが、上部が開放されていてもよい。
【0032】
冷却媒体配管39は、燃料電池31と図示しない熱交換器の間で冷却媒体を循環させるための配管である。なお、冷却媒体配管39の途中には、図示しない循環ポンプも設けられる。循環ポンプを駆動して、熱交換器から冷却媒体配管39を介して燃料電池31に冷却媒体を供給することにより、燃料電池31が冷却される。燃料電池31の冷却に供された冷却媒体は、冷却媒体配管39を介して冷却媒体タンク38にも供給され、そこで、冷却媒体の温度変化に伴う容積変化が吸収されるとともに、冷却媒体の液量が監視される。
【0033】
(2-2.燃料ガス貯留部の構成)
燃料電池船SHの燃料ガス貯留部4は、燃料タンク41と、ガス充填配管42と、タンク側遮断弁43と、を有する。
【0034】
燃料タンク41は、燃料を収容する容器である。本実施形態では、燃料タンク41は、燃料電池31に供給する燃料ガスを収容する。燃料タンク41は、例えば、ボンベ、シリンダ、複数のシリンダを集結させたカードル等であってよい。図2では、便宜上、燃料タンク41を1つのみ図示しているが、燃料タンク41の個数は特に限定されず、複数個であってもよい。
【0035】
ガス充填配管42は、燃料タンク41に燃料ガスを補給する、または不活性ガスを充填するための配管である。ガス充填配管42の一端側は、燃料タンク41に接続される。ガス充填配管42の他端側は、2つに分岐しており、それぞれ燃料ガス充填口82および不活性ガス充填口84と接続される。燃料ガス充填口82および不活性ガス充填口84は、詳細は後述するダクト区画90(特に上部ダクト区画80)に設けられる。
【0036】
上記の不活性ガスは、例えば窒素ガスである。例えば、ドック(船渠)内で燃料電池船SHの点検または修理などのメンテナンスを行う際に、燃料タンク41に燃料ガスが残っていると、何らかの原因で燃料ガスに引火したときに爆発が生じる危険性がある。そこで、燃料電池船SHのメンテナンス時には、燃料タンク41に不活性ガスを充填し、燃料タンク41から燃料ガスを取り除く。これにより、上記爆発の危険性を回避することができる。
【0037】
前述した燃料ガス供給配管32において、燃料電池31との接続側とは反対側は、燃料タンク41に接続される。燃料タンク41と燃料電池31とは、燃料ガス供給配管32を介して接続される。つまり、燃料電池船SHは、燃料タンク41と燃料電池31とを接続する燃料供給配管をさらに備える。燃料ガス供給配管32は、燃料供給配管の一例である。
【0038】
タンク側遮断弁43は、燃料ガス供給配管32の流路を開放または閉塞する遮断弁SVの一例である。タンク側遮断弁43の開閉は、制御部12aによって制御される。具体的には、タンク側遮断弁43は、制御部12aの制御に基づき、燃料タンク41から燃料電池31への燃料ガスの供給と供給停止とを切り替える。タンク側遮断弁43は、燃料タンク41が設置されるタンク区画40内で、燃料ガス供給配管32に1つだけ設けられているが、2つ以上設けられてもよい。なお、燃料電池船SHが備えるタンク区画40の詳細については後述する。
【0039】
〔3.区画の詳細について〕
燃料電池船SHは、燃料の放出源を含む複数の区画を備える。本実施形態では、燃料は燃料ガスであり、詳細には水素ガスである。燃料の放出源は、燃料ガスを放出する可能性がある部分を広く含む。燃料の放出源は、例えば、燃料電池31、燃料ガス供給配管32、および燃料タンク41等である。
【0040】
図2に示すように、本実施形態では、複数の区画には、燃料電池区画30とタンク区画40とが含まれる。つまり、燃料電池船SHはタンク区画40を備える。燃料電池区画30は、燃料電池31が設置される区画である。タンク区画40は、燃料を入れる燃料タンク41が設置される区画である。
【0041】
本実施形態では、複数の区画には、ダクト区画90がさらに含まれる。ダクト区画90は、燃料供給配管の一部を収容する区画である。詳細には、ダクト区画90は、下部ダクト区画70と上部ダクト区画80とで構成される。下部ダクト区画70が、燃料供給配管の一例である燃料ガス供給配管32の一部を収容する。「燃料ガス供給配管32の一部」は、燃料ガス供給配管32の燃料電池区画30とタンク区画40との間に位置する部分の全部、或いは一部であってよい。本実施形態では、下部ダクト区画70は、燃料ガス供給配管32の燃料電池区画30とタンク区画40との間に位置する部分の一部を収容する。なお、ダクト区画90は、必須の構成ではなく、場合によっては設けられなくてもよい。
【0042】
以下、燃料電池区画30、タンク区画40、およびダクト区画90の詳細構成について説明する。図3は、燃料電池船SHの詳細例を示す平面図である。図4は、図3に示す燃料電池船SHからキャビン2等の一部の構成を取り除いた場合の斜視図である。なお、図4においては、タンク区画40やダクト区画90が見えるように、甲板1aの一部も取り除かれている。図5は、図4に示す燃料電池船SHが備える燃料電池区画30、タンク区画40、およびダクト区画90を抽出して示した概略斜視図である。
【0043】
なお、図3に示す燃料電池船SHにおいては、ダクト区画90の一部である上部ダクト区画80がキャビン2を用いて構成される。このために、キャビン2を取り除いた燃料電池船SHを示す図4においては、上部ダクト区画80は図示されていない。また、図5においても、上部ダクト区画80の詳細は示されておらず、上部ダクト区画80が設けられる位置の近辺を破線枠で示している。
【0044】
図4および図5に示すように、本実施形態では、燃料電池船SHは、船体1の左側(左舷)と右側(右舷)とのそれぞれに、燃料電池区画30、タンク区画40、およびダクト区画90が配置される。すなわち、船体1の左右のそれぞれに、燃料電池31を利用した発電を行うために必要な設備が備えられる。このために、上述の図2は、詳細には、船体1の片側分(片舷分)の構成を示す図である。
【0045】
本実施形態では、左右のそれぞれにおいて、前方から後方に向けて燃料電池区画30、ダクト区画90、タンク区画40が、この順で並ぶ。各区画30、40、90の構成は、左右のそれぞれで同様である。本実施形態では、燃料電池区画30、タンク区画40、およびダクト区画90の区画セットを2つとしている。ただし、これは例示であり、当該区画セットの数は1つでも3つ以上であってもよい。
【0046】
(3-1.燃料電池区画)
燃料電池区画30は、燃料電池31を収容する収容体である(例えば図2、後述の図6参照)。燃料電池区画30は、機関室13に配置される(例えば図2図4参照)。燃料電池区画30は、中空の形状を有する。燃料電池区画30は、燃料電池31を収容する、容器、チャンバー、またはボックスと捉えることもできる。
【0047】
本実施形態では、燃料電池区画30は、中空の直方体形状を有する。燃料電池区画30を構成する外壁は、例えば、天壁30a、底壁30b、後壁30c、前壁30d、左壁30e、および右壁30fを有する(例えば図2図5、後述の図6参照)。なお、燃料電池区画30の形状は、燃料電池31を収容できる空間を有する限り、特に限定されない。燃料電池区画30の外壁の素材は、例えばFRPであるが、鉄板等であってもよい。
【0048】
詳細には、燃料電池区画30は、底壁30b、後壁30c、前壁30d、左壁30e、および右壁30fが単一の部材で構成される箱形部材に、天壁30aを取り付けた構成である。図6は、図5に示す燃料電池区画30の天壁30aを取り除いた概略斜視図である。詳細には、図6は、船体1の左側に配置される燃料電池区画30である。図6に示すように、燃料電池区画30には、詳細には、燃料電池31の他にDC/DCコンバータ311が収容される。DC/DCコンバータ311は、詳細には、燃料電池31で発電された電力の電圧を昇圧する。なお、DC/DCコンバータ311は、燃料電池区画30の外に配置されてもよい。
【0049】
図2に示すように、燃料電池区画30内には、さらに、前述した燃料ガス供給配管32の一部と、燃料電池側遮断弁33と、が収容される。また、燃料電池区画30内には、さらに、電池区画内部ガス検知器34aが収容される。電池区画内部ガス検知器34aは、燃料電池区画30の内部に配置される燃料ガス検知器である。例えば、燃料ガスが水素ガスである場合、電池区画内部ガス検知器34aは、水素ガス検知センサで構成される。
【0050】
電池区画内部ガス検知器34aは、燃料電池区画30の上部に位置する天壁30aの内面に配置される。燃料ガスとしての水素ガスは、空気よりも軽く、上昇する。このため、燃料電池区画30の天壁30aに電池区画内部ガス検知器34aが配置されることにより、燃料電池区画30内で燃料ガスが漏れた場合でも、漏れた燃料ガスを電池区画内部ガス検知器34aによって適切に検知することができる。
【0051】
電池区画内部ガス検知器34aが燃料電池区画30内で燃料ガスを検知したとき、その検知信号は、電池区画内部ガス検知器34aから制御部12aに送られる。これにより、制御部12aは、燃料ガス供給配管32に設けられた燃料電池側遮断弁33を制御して、燃料タンク41から燃料電池31への燃料ガスの供給を停止させることができる。
【0052】
燃料電池区画30は、当該区画の内部の換気を行う換気口を有する。詳細には、図2および図6に示すように、燃料電池区画30の換気口は、電池区画給気口30gと電池区画排気口30hとを含む。
【0053】
電池区画給気口30gは、燃料電池区画30の左右の外壁の一方に設けられる。船体1の左側の燃料電池区画30においては、電池区画給気口30gは、左壁30eを左右方向に貫通する開口を含んで構成される。船体1の右側の燃料電池区画30においては、電池区画給気口30gは、右壁30fを左右方向に貫通する開口を含んで構成される。電池区画給気口30gは、後述する電池区画給気管35と接続される。なお、電池区画給気口30gが設けられる場所は、適宜変更されてよく、燃料電池区画30を構成する他の外壁であってもよい。
【0054】
電池区画排気口30hは、船体1の左右に配置される燃料電池区画30のそれぞれにおいて、燃料電池区画30の後壁30cに設けられる。電池区画排気口30hは、後壁30cを前後方向に貫通する開口を含んで構成される。電池区画排気口30hは、詳細は後述するダクト区画90と連通している。なお、電池区画排気口30hは、燃料電池区画30において、後壁30c以外の外壁に設けられてもよい。
【0055】
燃料電池区画30には、電池区画給気管35が接続される。電池区画給気管35は、燃料電池区画30の電池区画給気口30gから甲板1aまで延びており、甲板1aより上に露出する。電池区画給気管35の甲板1a側の端部には、電池区画給気装置36と、電池区画外部ガス検知器37と、が配置される。電池区画給気装置36および電池区画外部ガス検知器37は、詳細には、甲板1aの上部に配置される。
【0056】
電池区画給気装置36は、燃料電池区画30の外部の空気(本例では船外の空気)を、電池区画給気管35および電池区画給気口30gを介して、燃料電池区画30の内部に供給する。燃料電池区画30の外部の空気の供給により、燃料電池区画30の内部の空気は、電池区画排気口30hを介してダクト区画90に排出される。これにより、燃料電池区画30の内部が換気される。その結果、燃料電池区画30内で可燃ガス(例えば燃料電池31から漏れた燃料ガス)が滞留することを抑制することができる。
【0057】
電池区画給気装置36は、例えば安価な非防爆型の給気ファンで構成されるが、防爆型の給気ファンで構成されてもよい。電池区画給気装置36の駆動は、制御部12aによって制御される。電池区画給気装置36は、甲板1a上に固定配置される給気装置筐体BO1(例えば図3図5参照)内に収容される。給気装置筐体BO1を構成する素材は、特に限定されないが、例えばステンレス等の金属で構成される。
【0058】
電池区画給気装置36を収容する給気装置筐体BO1には、フィルタ部FP1が隣接して配置される。給気装置筐体BO1の内部と、フィルタ部FP1の内部とは連通する。フィルタ部FP1の内部には、1つ以上のフィルタが配置される。フィルタ部FP1が配置されることにより、塵埃等が燃料電池区画30内に入ることを抑制することができる。本実施形態では、フィルタ部FP1内には、防塵フィルタと塩害対策フィルタとが配置される。これにより、燃料電池区画30内に塵埃および海塩粒子が入ることを抑制することができる。
【0059】
なお、フィルタ部FP1内に塩害対策フィルタのみを配置する構成としてもよく、この構成でも、塵埃および海塩粒子を除去することができる。ただし、フィルタ部FP1内に防塵フィルタと塩害対策フィルタとを配置する構成として、防塵フィルタを塩害対策フィルタに対して電池区画給気装置36によって発生する気流の上流側に配置することが好ましい。このように構成することで、塩害対策フィルタの手前で防塵フィルタにより塵埃を除去することができ、高価な塩害対策フィルタの寿命を延ばしつつ、塵埃および海塩粒子を除去することができる。
【0060】
電池区画外部ガス検知器37は、燃料電池区画30の外部から内部に流入する可燃ガス(例えば船体1の周囲に漂う水素ガスなど)を検知する。電池区画外部ガス検知器37は、例えば水素ガスセンサなどの可燃ガスセンサである。本実施形態では、電池区画外部ガス検知器37は、給気装置筐体BO1内に配置される。電池区画外部ガス検知器37は、例えば、電池区画給気装置36に対して電池区画給気管35とは反対側、つまり、燃料電池区画30の外部から内部に向かう空気の流れの上流側に配置される。なお、電池区画外部ガス検知器37は、水素ガス以外の可燃ガスを検知するガスセンサで構成されてもよい。水素ガス以外の可燃ガスには、例えばメタン、エタン、プロパン、一酸化炭素などが含まれる。
【0061】
電池区画外部ガス検知器37は、例えば、可燃ガスの濃度を示す検知信号を制御部12aに出力する。これにより、制御部12aは、上記検知信号に基づいて、可燃ガスの濃度が所定の閾値以上であるか否かを判断することができる。そして、制御部12aは、上記濃度が所定の閾値以上である場合には、燃料電池側遮断弁33を制御して、燃料タンク41から燃料電池31への燃料ガスの供給を停止させることができる。なお、上記所定の閾値は、実験および/または経験に基づいて定められればよい。
【0062】
なお、上述した電池区画内部ガス検知器34a(図2参照)は、燃料電池区画30の上部に位置する天壁30aにおいて、電池区画排気口30hに近い位置または電池区画排気口30hの内部に配置されることが好ましい。燃料電池区画30内で燃料ガスが万が一漏れた場合、漏れた燃料ガスは、電池区画排気口30hを通って排気される。つまり、電池区画排気口30hは、燃料電池区画30内で燃料ガスが漏れたときに、上記燃料ガスが流れる流路の最も下流側に位置する。したがって、電池区画排気口30hに近い位置または電池区画排気口30hの内部に電池区画内部ガス検知器34aが配置されることにより、燃料電池区画30内で燃料ガスがどの位置で漏れた場合でも、漏れた燃料ガスの検知を行うことができる可能性を向上できる。つまり、電池区画内部ガス検知器34aは、燃料ガスが漏れたときに、燃料ガスが流れる流路の最も下流側に位置する構成であってよい。
【0063】
燃料電池区画30は、電池区画給気口30gおよび電池区画排気口30hを除いて密閉された空間を内部に有する。すなわち、燃料電池区画30は、電池区画給気口30gおよび電池区画排気口30hを除いて密閉されている。別の言い方をすると、燃料電池区画30は、当該区画(自区画)の内部の換気を行う換気口を除いて密閉されている。当該密閉構造により、原則として、電池区画給気装置36の駆動により電池区画給気口30gから燃料電池区画30内に入った空気は、電池区画排気口30hを通って燃料電池区画30から排気される。
【0064】
密閉を確保するために、隙間が生じる可能性がある場所には、適宜、シール材が配置される。例えば、複数の部材を組み合わせて配置する部分に、シール材が配置される。例えば、底壁30b、後壁30c、前壁30d、左壁30e、および右壁30fを構成する箱形部材と、天壁30aとの間にシール材が配置される。また、例えば。螺子止め部分にシール材が配置れる。また、例えば、電気配線および配管を通すために燃料電池区画30に設けられた孔の適所に適宜シール材が配置される。
【0065】
(3-2.タンク区画)
タンク区画40は、燃料タンク41を収容する収容体である(例えば図2、後述の図7参照)。タンク区画40は、燃料室14に配置される(例えば図2図4参照)。タンク区画40は、中空の形状を有する。タンク区画40は、燃料タンク41を収容する、容器、チャンバー、またはボックスと捉えることもできる。
【0066】
なお、図4に示すように、本実施形態では、機関室13の後方に設けられてタンク区画40が配置される燃料室14は、2つに分かれている。すなわち、本実施形態では、燃料室14は2つである。2つの燃料室14の左右方向の間には、蓄電池システム5の蓄電池(不図示)を収容するバッテリ室15が配置される。このように船体1の後方に燃料室14とバッテリ室15とを纏めて配置することで、船体1の空間を効率良く利用して、船体1の小型化を図ることができる。
【0067】
本実施形態では、タンク区画40は、中空の略直方体形状を有する。タンク区画40は、その長手方向を前後方向として燃料室14に配置される。タンク区画40を構成する外壁は、例えば、天壁40a、底壁40b、後壁40c、前壁40d、左壁40e、および右壁40fを有する(例えば図2図5、および後述の図7参照)。なお、タンク区画40の形状は、少なくとも1つの燃料タンク41を収容できる空間を有する限り、特に限定されない。タンク区画40の外壁の素材は、例えばFRPであるが、鉄板等であってもよい。
【0068】
詳細には、タンク区画40は、底壁40b、後壁40c、前壁40d、左壁40e、および右壁40fが単一の部材で構成される箱形部材に、天壁40aを取り付けた構成である。図7は、図5に示すタンク区画40の天壁40aの一部を取り除いた概略斜視図である。詳細には、図7は、船体1の左側に配置されるタンク区画40である。
【0069】
タンク区画40を構成する上述の箱形部材は、本実施形態ではFRPである。なお、左壁40eおよび右壁40fには、左右方向の厚みが他の部分に比べて薄く設けられた薄肉部401が設けられる。薄肉部401は、左壁40eおよび右壁40fにそれぞれ複数設けられる。複数の薄肉部401は、矩形状であり、前後方向に間隔をあけて並ぶ。左壁40eの薄肉部401と、右壁40fの薄肉部401とは左右方向に対向配置される。本実施形態では、左壁40eの薄肉部401と、右壁40fの薄肉部401とは、上述の箱形部材を左右に二等分する二等分面に対して対称に配置される。薄肉部401が設けられることにより、タンク区画40を構成する収容体に必要な強度を保ちつつ、重量を軽くすることができる。なお、薄肉部401は設けられなくてもよい。また、薄肉部401を設ける場合、薄肉部401の形状、数、および配置は、本実施形態の構成から適宜変更されてよい。
【0070】
タンク区画40を構成する上述の箱形部材の上部には、例えばアルミニウム等の金属で構成されるフレーム部材402が配置される。フレーム部材402の配置により、タンク区画40を構成する収容体の強度を向上することができる。また、フレーム部材402にアイボルト等の部材を取り付けることにより、船体建造時にタンク区画40をクレーン等で吊り上げて設置することができる。フレーム部材402は、上方からの平面視において矩形状の枠部402aと、枠部402aの左右部分を橋渡しする複数の橋渡し部402bとを有する。枠部402aは、上述の箱形部材の外縁上に配置される。左右方向に延びる複数の橋渡し部402bは、いずれも直線状であり、前後方向に間隔をあけて配置される。複数の橋渡し部402bが設けられることにより、フレーム部材402に囲まれた部分には、矩形状のフレーム部材開口部402cが前後方向に複数並ぶ。
【0071】
タンク区画40を構成する天壁40aは、詳細には複数に分割された構成である。すなわち、天壁40aは複数である。なお、天壁40aは、1つでも良いが、複数に分けることで、例えば取り扱い性を向上することができる。複数の天壁40aのそれぞれは、各フレーム部材開口部402cを覆うように配置される。
【0072】
本実施形態では、タンク区画40の前壁40dに、タンク区画40から前方に突出する燃料ガス供給配管32およびガス充填配管42を覆う筒部403が設けられる。筒部403が設けられることによって二重管構造とすることができ、燃料ガス供給配管32又はガス充填配管42から燃料ガスが漏れた場合でも、燃料室14に燃料ガスが漏れ出すことを防止できる。なお、本実施形態では、1つの筒部403に2つの配管32、42が通る構成としているが、配管32、42ごとに筒部が設けられてもよい。すなわち、タンク区画40に二重管構造を形成する筒部が複数設けられてもよい。
【0073】
図7に示すように、タンク区画40内には、4つの燃料タンク41が配置される。タンク区画40内に収容される燃料タンク41の数は、適宜変更されてよく、1つ以上であればよい。図2に示すように、タンク区画40内には、さらに、前述した燃料ガス供給配管32の一部と、タンク側遮断弁43と、が収容される。また、タンク区画40内には、さらに、タンク区画内部ガス検知器44aが収容される。タンク区画内部ガス検知器44aは、タンク区画40の内部に配置される燃料ガス検知器である。例えば、燃料ガスが水素ガスである場合、タンク区画内部ガス検知器44aは、水素ガス検知センサで構成される。
【0074】
タンク区画内部ガス検知器44aは、タンク区画40の上部に位置する天壁40aの内面に配置される。燃料ガスとしての水素ガスは、空気よりも軽く、上昇する。このため、タンク区画40の天壁40aにタンク区画内部ガス検知器44aが配置されることにより、タンク区画40内で燃料ガスが漏れた場合でも、漏れた燃料ガスをタンク区画内部ガス検知器44aによって適切に検知することができる。
【0075】
タンク区画内部ガス検知器44aがタンク区画40内で燃料ガスを検知したとき、その検知信号は、タンク区画内部ガス検知器44aから制御部12aに送られる。これにより、制御部12aは、燃料ガス供給配管32に設けられたタンク側遮断弁43を制御して、燃料タンク41から燃料電池31への燃料ガスの供給を停止させることができる。
【0076】
タンク区画40は、当該区画の内部の換気を行う換気口を有する。詳細には、図2および図7に示すように、タンク区画40の換気口は、タンク区画給気口40gとタンク区画排気口40hとを含む。
【0077】
タンク区画給気口40gは、タンク区画40の後壁40cに設けられる。タンク区画給気口40gは、後壁40cを前後方向に貫通する開口を含んで構成される。タンク区画給気口40gは、後述するタンク区画給気管45と接続される。なお、タンク区画給気口40gが設けられる場所は、適宜変更されてよく、タンク区画40を構成する他の外壁であってもよい。
【0078】
タンク区画排気口40hは、タンク区画40の天壁40aに設けられる。上述のように、本実施形態ではタンク区画40の天壁40aは、前後方向に並ぶ複数枚で構成される。複数の天壁40aのうち、最も前方に配置される天壁40aにタンク区画排気口40hが配置される。ただし、複数の天壁40aのうち、タンク区画排気口40hが設けられる天壁40aは最前の天壁40a以外であってもよい。タンク区画排気口40hは、天壁40aを上下方向に貫通する開口を含んで構成される。タンク区画排気口40hは、ベント管10と連通している。ベント管10は、タンク区画40の内部の空気を船外に導くための配管である。なお、タンク区画排気口40hは、タンク区画40において、天壁40a以外の外壁に設けられてもよい。
【0079】
タンク区画40には、タンク区画給気管45が接続される。タンク区画給気管45は、タンク区画40のタンク区画給気口40gから甲板1aまで延びており、甲板1aより上に露出する。タンク区画給気管45の甲板1a側の端部には、タンク区画給気装置46と、タンク区画外部ガス検知器47と、が配置される。タンク区画給気装置46およびタンク区画外部ガス検知器47は、甲板1aの上部に配置される。
【0080】
タンク区画給気装置46は、タンク区画40の外部の空気(本例では船外の空気)を、タンク区画給気管45およびタンク区画給気口40gを介して、タンク区画40の内部に供給する。タンク区画40の外部の空気の供給により、タンク区画40の内部の空気は、タンク区画排気口40hを介してベント管10に排出される。これにより、タンク区画40の内部が換気される。その結果、タンク区画40内で燃料タンク41から燃料ガスが漏れた場合でも、その燃料ガスの滞留を抑制することができる。
【0081】
タンク区画給気装置46は、例えば安価な非防爆型の給気ファンで構成されるが、防爆型の給気ファンで構成されてもよい。タンク区画給気装置46の駆動は、制御部12aによって制御される。タンク区画給気装置46は、上述の電池区画給気装置36と同様に、甲板1a上に固定配置される給気装置筐体BO2(例えば図5参照)内に収容される。また、タンク区画給気装置46を収容する給気装置筐体BO2には、フィルタ部FP2が接続される。
【0082】
なお、フィルタ部FP2の構成は、上述した電池区画給気装置36の場合と概ね同様である。ただし、タンク区画給気装置46を収容する給気装置筐体BO2に接続されるフィルタ部FP2は、給気装置筐体BO2に隣接しておらず、接続配管CPを介して、給気装置筐体BO2に接続されている。このように接続配管CPを設けることで、タンク区画給気装置46を駆動した場合における外部空気の吸い込み口を安全性に配慮した適切な位置に配置することができる。例えば、タンク区画40に通じる開口部(フィルタ部FP2の大気側開放部)から他の機器や給気口への距離を所定距離以上とすることが可能となる。
【0083】
タンク区画外部ガス検知器47は、タンク区画40の外部から内部に流入する可燃ガス(例えば船体1の周囲に漂う水素ガスなど)を検知する。タンク区画外部ガス検知器47は、例えば水素ガスセンサなどの可燃ガスセンサである。本実施形態では、タンク区画外部ガス検知器47は、給気装置筐体BO2内に配置される。タンク区画外部ガス検知器47は、タンク区画給気装置46に対してタンク区画給気管45とは反対側、つまり、タンク区画40の外部から内部に向かう空気の流れの上流側に配置される。なお、タンク区画外部ガス検知器47は、水素ガス以外の可燃ガスを検知するガスセンサで構成されてもよい。
【0084】
タンク区画外部ガス検知器47は、例えば、可燃ガスの濃度を示す検知信号を制御部12aに出力する。これにより、制御部12aは、上記検知信号に基づいて、可燃ガスの濃度が所定の閾値以上であるか否かを判断することができる。そして、制御部12aは、上記濃度が所定の閾値以上である場合には、タンク側遮断弁43を制御して、燃料タンク41から燃料電池31への燃料ガスの供給を停止させることができる。なお、上記所定の閾値は、実験および/または経験に基づいて定められればよい。
【0085】
なお、上述したタンク区画内部ガス検知器44a(図2参照)は、タンク区画40の上部に位置する天壁40aにおいて、タンク区画排気口40hに近い位置またはタンク区画排気口40hの内部に配置される。タンク区画40内で、燃料タンク41から燃料ガスが万が一漏れた場合、漏れた燃料ガスは、タンク区画排気口40hを通ってベント管10に向かう。つまり、タンク区画排気口40hは、タンク区画40内で燃料ガスが漏れたときに、上記燃料ガスが流れる流路の最も下流側に位置する。したがって、タンク区画排気口40hに近い位置またはタンク区画排気口40hの内部にタンク区画内部ガス検知器44aが配置されることにより、タンク区画40内で燃料ガスがどの位置で漏れた場合でも、漏れた燃料ガスの検知を行うことができる可能性を向上することができる。つまり、タンク区画内部ガス検知器44aは、燃料ガスが漏れたときに、燃料ガスが流れる流路の最も下流側に位置する構成であってよい。
【0086】
タンク区画40は、タンク区画給気口40gおよびタンク区画排気口40hを除いて密閉された空間を内部に有する。すなわち、タンク区画40は、タンク区画給気口40gおよびタンク区画排気口40hを除いて密閉されている。別の言い方をすると、タンク区画40は、当該区画(自区画)の内部の換気を行う換気口を除いて密閉されている。当該密閉構造により、原則として、タンク区画給気装置46の駆動によりタンク区画給気口40gからタンク区画40内に入った空気は、タンク区画排気口40hを通ってタンク区画40から排気される。なお、密閉を確保するために、燃料電池区画30の場合と同様に、隙間が生じる可能性がある場所には、適宜、シール材が配置される。例えば、タンク区画40が有する筒部403の内部には、燃料ガス供給配管32およびガス充填配管42と、筒部403の内周面との間の隙間を埋めるシール材が配置される。
【0087】
本実施形態では、燃料の放出源を含む燃料電池区画30およびタンク区画40が各区画の内部の換気を行う換気口を除いて密閉されているために、燃料の放出源を含まない区域を、燃料の放出源を含む区域と隔離することができる。すなわち、燃料の放出源を含まない区域に燃料が侵入して発火や爆発が生じる可能性を低下させることができる。
【0088】
(3-3.ダクト区画)
図8は、図3のVIII-VIIIで切った断面の一部を拡大して示す図である。図8は、船体1の左側に配置されるダクト区画90およびその周辺の構成を示す図である。すなわち、図8に示されるダクト区画90およびタンク区画40は、船体1の右側と左側とに配置される2つの区画セットのうち、左側(左舷側)の区画セットに属する。
【0089】
ダクト区画90は、各種の配管を収容する収容体である(例えば図2参照)。上述のように、ダクト区画90は、例えば、燃料ガス供給配管32の一部を収容する。また、上述のように、ダクト区画90は、下部ダクト区画70と上部ダクト区画80とを含む。下部ダクト区画70の内部と上部ダクト区画80の内部とは、上下に延びるダクト連通部91を介して連通している。ダクト連通部91は、ダクト区画90の一部とでみなすことができる。
【0090】
なお、本実施形態では、詳細には、下部ダクト区画70と上部ダクト区画80とを連通するダクト連通部91は2つ存在する(図4図5参照)。ダクト連通部91の数は2つに限らず、1つでも3つ以上でもよい。以下、下部ダクト区画70および上部ダクト区画80の詳細について説明する。
【0091】
《3-3-1.下部ダクト区画》
下部ダクト区画70は、甲板1aの下方に配置される。具体的には、下部ダクト区画70は、機関室13に配置される。機関室13内では、下部ダクト区画70は、燃料電池区画30よりも後方側に位置する。つまり、下部ダクト区画70は、甲板1aの下方において、燃料電池区画30とタンク区画40との前後方向間に位置する。下部ダクト区画70は、燃料ガス供給配管32の一部を収容するとともに、ガス充填配管42の一部を収容する。
【0092】
下部ダクト区画70が収容する「燃料ガス供給配管32の一部」は、上述のように、燃料ガス供給配管32の燃料電池区画30とタンク区画40との間に位置する部分の全部、或いは一部であってよい。また、下部ダクト区画70が収容する「ガス充填配管42の一部」とは、ガス充填配管42のうち、タンク区画40と上部ダクト区画80との間に位置する部分の全部、或いは一部であってよい。本実施形態では、下部ダクト区画70は、ガス充填配管42のタンク区画40と上部ダクト区画80との間に位置する部分の一部を収容する。
【0093】
下部ダクト区画70は中空の形状を有する。下部ダクト区画70は、燃料ガス供給配管32の一部等を収容する、容器、チャンバー、またはボックスと捉えることもできる。本実施形態では、下部ダクト区画70は、中空の略直方体形状を有する。下部ダクト区画70を構成する外壁は、例えば、天壁70a、底壁70b、後壁70c、前壁70d、左壁70e、および右壁70fを有する(例えば図2図5図8参照)。なお、下部ダクト区画70の形状は、燃料ガス供給配管32の一部等を収容できる空間を有する限り、特に限定されない。下部ダクト区画70の素材は、例えばFRPであるが、鉄板等であってもよい。また、本実施形態では、下部ダクト区画70の後壁70cは、機関室13と燃料室14とを仕切る隔壁W2を用いて構成されているが、隔壁W2を利用しない構成としてもよい。
【0094】
図2に示すように、下部ダクト区画70は、さらに、燃料ガス排出配管71の一部を収容する。燃料ガス排出配管71は、下部ダクト区画70内に位置する燃料ガス供給配管32から分岐して設けられる配管である。例えば、燃料ガス排出配管71は、2つの遮断弁SVの間において、燃料ガス供給配管32から分岐して設けられる。
【0095】
より具体的には、燃料ガス排出配管71は、タンク区画40内のタンク側遮断弁43と、燃料電池区画30内の燃料電池側遮断弁33との間において、燃料ガス供給配管32から分岐して設けられる。燃料ガス排出配管71は、下部ダクト区画70の内部から、後述の下部ダクト区画連通口70hおよびダクト連通部91を介して、上部ダクト区画80の内部に延び、さらにベント管10の内部に連通する。したがって、下部ダクト区画70が収容する「燃料ガス排出配管71の一部」とは、燃料ガス排出配管71において、燃料ガス供給配管32との分岐部と、上部ダクト区画80との間に位置する部分の全部、或いは一部であってよい。本実施形態では、下部ダクト区画70は、燃料ガス排出配管71の、燃料ガス供給配管32との分岐部と、上部ダクト区画80との間に配置される部分の一部を収容する。なお、燃料ガス排出配管71のベント管10の内部と合流する部分は、図2に示すように、燃料ガスの吐出方向が、ベント管10の開放口側(先端側)であることが好ましい。このように構成することにより、燃料ガス排出配管71からベント管10内に吐出した燃料ガスがタンク区画40に向けて流れることを抑制することができる。この結果、燃料ガス排出配管71からベント管10内に吐出した燃料ガスが、タンク区画40にあるタンク区画内部ガス検知器44aによって誤検知されることを抑制することができる。
【0096】
下部ダクト区画70は、放出弁72をさらに収容する。すなわち、ダクト区画90は、放出弁72を収容する。放出弁72は、燃料ガス排出配管71に設置されて、燃料ガス排出配管71の流路を開放または閉塞する開閉弁である。放出弁72の開閉は、制御部12aによって制御される。なお、放出弁72は、上部ダクト区画80に設置されてもよい。
【0097】
このように、タンク区画40に設置される遮断弁SVをタンク側遮断弁43とし、燃料電池区画30に設置される遮断弁SVを燃料電池側遮断弁33としたとき、燃料電池船SHは、タンク側遮断弁43と燃料電池側遮断弁33との間において、燃料ガス供給配管32から分岐して設けられる燃料ガス排出配管71と、燃料ガス排出配管71に設置される放出弁72と、をさらに備える。
【0098】
下部ダクト区画70は、下部ダクト区画内部ガス検知器73をさらに収容する。下部ダクト区画内部ガス検知器73は、下部ダクト区画70の内部に配置される燃料ガス検知器である。例えば、燃料ガスが水素ガスである場合、下部ダクト区画内部ガス検知器73は、水素ガス検知センサで構成される。
【0099】
下部ダクト区画内部ガス検知器73は、下部ダクト区画70の上部に位置する天壁70aの内面に配置される。燃料ガスとしての水素ガスは、空気よりも軽く、上昇する。このため、下部ダクト区画70の天壁70aに下部ダクト区画内部ガス検知器73が配置されることにより、下部ダクト区画70内で燃料ガスが漏れた場合でも、漏れた燃料ガスを下部ダクト区画内部ガス検知器73によって適切に検知することができる。
【0100】
下部ダクト区画内部ガス検知器73が下部ダクト区画70内で燃料ガスを検知したとき、その検知信号は、下部ダクト区画内部ガス検知器73から制御部12aに送られる。これにより、制御部12aは、燃料ガス供給配管32に設けられた遮断弁SVを制御して、燃料タンク41から燃料電池31への燃料ガスの供給を停止させることができる。
【0101】
図2に示すように、下部ダクト区画70の底壁70bには、下部ダクト区画給気口70gが設けられている。下部ダクト区画給気口70gは、上下方向に貫通する開口を含んで構成される。下部ダクト区画給気口70gは、後述するダクト区画給気管74と接続される。なお、下部ダクト区画給気口70gは、下部ダクト区画70において、底壁70b以外の外壁に設けられてもよい。
【0102】
下部ダクト区画70の天壁70aには、下部ダクト区画連通口70hが設けられている。下部ダクト区画連通口70hは、上下方向に貫通する開口を含んで構成される。下部ダクト区画連通口70hは、上述したダクト連通部91と連通している。なお、下部ダクト区画連通口70hは、下部ダクト区画70において、天壁70a以外の外壁に設けられてもよい。
【0103】
また、下部ダクト区画70の前壁70dには、電池区画連通口70iが設けられている。電池区画連通口70iは、前後方向に貫通する開口を含んで構成される。電池区画連通口70iは、前述した燃料電池区画30の電池区画排気口30hと、前後方向に延びる連通管92を介して接続される。これにより、電池区画給気装置36を駆動させると、燃料電池区画30の内部の空気は、電池区画排気口30h、連通管92および電池区画連通口70iを介して下部ダクト区画70内に流れる。なお、電池区画連通口70iは、下部ダクト区画70において、前壁70d以外の外壁に設けられてもよい。
【0104】
本実施形態では、連通管92の内部には、燃料ガス供給配管32が通る。換言すると、連通管92は、燃料ガス供給配管32の外側に配置されて燃料ガス供給配管32とともに二重管を構成する。すなわち、燃料電池船SHは、燃料供給配管の外側に配置されて燃料供給配管とともに二重管を構成する外管をさらに備える。燃料供給配管を外管で囲む二重管が採用されることにより、燃料供給配管において燃料漏れが生じた場合でも、燃料が機関室13に侵入する可能性を低減することができる。
【0105】
連通管92の前端は、燃料電池区画30に設けられる電池区画排気口30hを囲んで燃料電池区画30に接続される。すなわち、二重管を構成する外管の一端は、燃料電池区画の排気用の換気口を囲んで燃料電池区画に接続される。このように構成すると、安全を確保するために設けられる二重管構造を、燃料電池区画の換気のための排気経路に有効利用することができる。
【0106】
また、本実施形態では、連通管92の後端は、下部ダクト区画70に設けられる電池区画連通口70iを囲んで下部ダクト区画70に接続される。このために、下部ダクト区画70と燃料電池区画30とは、連通管92を介して連通する。すなわち、ダクト区画と燃料電池区画とは、二重管を構成する外管を介して連通する。このために、燃料電池区画の換気のための排気をダクト区画の内部に送り込み、ダクト区画の換気のための排気と纏めて外部に放出することができる。すなわち、燃料電池船SHにおける換気のための排気経路を、コンパクトに構成することができる。
【0107】
なお、二重管の内管を構成する燃料ガス供給配管32と、外管を構成する連通管92とは、同等の耐圧性能を有する素材で構成することが好ましい。例えば燃料ガス供給配管32がステンレスで構成される場合、連通管92もステンレスで構成することが好ましい。ただし、例えば、内管において燃料ガスの漏れが生じても外管が破裂することを避けて燃料電池船SHの外部に安全に燃料ガスを逃す構造が採用されている場合等においては、外管が内管よりも耐圧性能が低くてもよい。本実施形態では、当該構造が採用されているために、燃料ガス供給配管32はステンレスで構成され、連通管92はFRPで構成されている。
【0108】
下部ダクト区画70には、ダクト区画給気管74が接続される(例えば図2図8参照)。ダクト区画給気管74は、下部ダクト区画70の下部ダクト区画給気口70gから甲板1aまで延びており、甲板1aより上に露出する。ダクト区画給気管74の甲板1a側の端部には、ダクト区画給気装置75と、ダクト区画外部ガス検知器76と、が配置される。ダクト区画給気装置75およびダクト区画外部ガス検知器76は、甲板1aの上部に配置される。
【0109】
ダクト区画給気装置75は、下部ダクト区画70(ダクト区画90)の外部の空気(本例では船外の空気)を、ダクト区画給気管74および下部ダクト区画給気口70gを介して、下部ダクト区画70の内部に供給する。下部ダクト区画70の外部の空気の供給により、下部ダクト区画70の内部の空気は、下部ダクト区画連通口70hおよびダクト連通部91を介して上部ダクト区画80に排出される。これにより、下部ダクト区画70の内部が換気される。その結果、下部ダクト区画70内で燃料ガス供給配管32等の配管から燃料ガスが漏れた場合でも、その燃料ガスの滞留を抑制することができる。
【0110】
ダクト区画給気装置75は、例えば安価な非防爆型の給気ファンで構成されるが、防爆型の給気ファンで構成されてもよい。ダクト区画給気装置75の駆動は、制御部12aによって制御される。ダクト区画給気装置75には、上述の電池区画給気装置36と同様に、甲板1a上に固定配置される給気装置筐体BO3(例えば図3図5参照)内に収容される。また、ダクト区画給気装置75を収容する給気装置筐体BO3には、上述した電池区画給気装置36の場合と同様のフィルタ部FP3が接続される。
【0111】
ダクト区画外部ガス検知器76は、ダクト区画90の外部から内部に流入する可燃ガス(例えば船体1の周囲に漂う水素ガスなど)を検知する。ダクト区画外部ガス検知器76は、例えば水素ガスセンサなどの可燃ガスセンサである。ダクト区画外部ガス検知器76は、ダクト区画給気装置75に対してダクト区画給気管74とは反対側、つまり、ダクト区画90の外部から内部に向かう空気の流れの上流側に配置される。なお、ダクト区画外部ガス検知器76は、水素ガス以外の可燃ガスを検知するガスセンサで構成されてもよい。
【0112】
ダクト区画外部ガス検知器76は、例えば、可燃ガスの濃度を示す検知信号を制御部12aに出力する。これにより、制御部12aは、上記検知信号に基づいて、可燃ガスの濃度が所定の閾値以上であるか否かを判断することができる。そして、制御部12aは、上記濃度が所定の閾値以上である場合には、遮断弁SVを制御して、燃料タンク41から燃料電池31への燃料ガスの供給を停止させることができる。なお、上記所定の閾値は、実験および/または経験に基づいて定められればよい。
【0113】
なお、上述した下部ダクト区画内部ガス検知器73は、下部ダクト区画70の上部に位置する天壁70aにおいて、下部ダクト区画連通口70hに近い位置、または下部ダクト区画連通口70hの内部に配置される。下部ダクト区画70内で、燃料ガス供給配管32等から燃料ガスが万が一漏れた場合、漏れた燃料ガスは、下部ダクト区画連通口70hを通って上部ダクト区画80に向かう。つまり、下部ダクト区画連通口70hは、下部ダクト区画70内で燃料ガスが漏れたときに、上記燃料ガスが流れる流路の最も下流側に位置する。したがって、下部ダクト区画連通口70hに近い位置または下部ダクト区画連通口70hの内部に下部ダクト区画内部ガス検知器73が配置されることにより、下部ダクト区画70内で燃料ガスがどの位置で漏れた場合でも、漏れた燃料ガスの検知を行うことができる可能性を向上することができる。
【0114】
下部ダクト区画70は、下部ダクト区画給気口70g、下部ダクト区画連通口70hおよび電池区画連通口70iを除いて密閉された空間を内部に有する。すなわち、下部ダクト区画70は、下部ダクト区画給気口70g、下部ダクト区画連通口70hおよび電池区画連通口70iを除いて密閉されている。当該密閉構造により、原則として、ダクト区画給気装置75および電池区画給気装置36の駆動時においては、下部ダクト区画給気口70gおよび電池区画連通口70iから下部ダクト区画70内に入った空気は、下部ダクト区画連通口70hを通って下部ダクト区画70から排気される。密閉を確保するために、隙間が生じる可能性がある場所には、適宜、シール材が配置される。
【0115】
《3-3-2.上部ダクト区画》
上部ダクト区画80は、甲板1aの上部に配置される。具体的には、上部ダクト区画80は、甲板1a上で、下部ダクト区画70からタンク区画40にまたがって配置される。本実施形態では、上部ダクト区画80は、キャビン2の後方に配置され、キャビン2を構成する部材を用いて構成される。すなわち、上部ダクト区画80は、キャビン2の一部であるということができる。上部ダクト区画80は、燃料ガス排出配管71の一部を収容するとともに、ガス充填配管42の一部を収容する。
【0116】
本実施形態では、上部ダクト区画80が収容する「燃料ガス排出配管71の一部」は、燃料ガス排出配管71のうち、ダクト連通部91の上端からベント管10に至る部分である。また、上部ダクト区画80が収容する「ガス充填配管42の一部」は、ガス充填配管42のうち、上部ダクト区画80に設けられる燃料ガス充填口82から、ダクト連通部91に至る部分である。なお、ダクト連通部91は、燃料ガス排出配管71およびガス充填配管42とともに二重管を構成する。これにより、燃料ガス排出配管71又はガス充填配管42において燃料ガスの漏れが生じた場合でも、燃料ガスが機関室13に侵入することを防ぐことができる。ダクト連通部91は、例えばFRP又はステンレス等で構成される。
【0117】
上部ダクト区画80は中空の形状を有する。上部ダクト区画80は、燃料ガス排出配管71の一部等を収容する、容器、チャンバー、またはボックスと捉えることもできる。本実施形態では、図2および図8に示すように、上部ダクト区画80を構成する外壁は、例えば、天壁80a、底壁80b、後壁80c、前壁80d、左壁(不図示)および右壁(不図示)を有する。詳細には、後壁80cは、下方に向かうにつれて後方に位置する傾斜構造である。より詳細には、後壁80cは、傾斜角度が異なる複数の傾斜部で構成され、複数の傾斜部は下部側より上部側の方が大きな傾斜を有する構造となっている。上部ダクト区画80の素材は、例えばFRPであるが、鉄板等であってもよい。また、上部ダクト区画80の形状は、燃料ガス排出配管71の一部等を収容できる空間を有する限り、特に限定されない。
【0118】
図2に示すように、上部ダクト区画80には、燃料ガス充填口82と、燃料ガス逆止弁83と、が設けられる。燃料ガス充填口82は、ガス充填配管42と接続されている。燃料ガス逆止弁83は、ガス充填配管42に設けられている。より詳しくは、燃料ガス逆止弁83は、ガス充填配管42と後述の不活性ガス配管87との分岐部と、燃料ガス充填口82との間に位置する。
【0119】
燃料ガス充填口82から燃料ガスが供給されると、上記燃料ガスは、燃料ガス逆止弁83を介してガス充填配管42を通り、タンク区画40内の燃料タンク41に供給される。これにより、燃料タンク41に燃料ガスが充填され、貯留される。燃料ガス逆止弁83は、燃料タンク41側から燃料ガス充填口82への燃料ガスの逆流を防止するために設けられている。
【0120】
上部ダクト区画80には、不活性ガス充填口84と、開閉弁85と、不活性ガス逆止弁86と、不活性ガス配管87と、がさらに設けられる。不活性ガス充填口84は、不活性ガス配管87と接続されている。不活性ガス配管87は、上部ダクト区画80内でガス充填配管42から分岐して設けられる。開閉弁85および不活性ガス逆止弁86は、不活性ガス配管87に設けられる。不活性ガス配管87において、開閉弁85は、不活性ガス充填口84と不活性ガス逆止弁86との間に位置する。
【0121】
開閉弁85は、不活性ガス配管87の流路を開放または閉塞する。なお、不活性ガス配管87に不活性ガス逆止弁86が設けられる構成では、開閉弁85の設置は省略されてもよい。
【0122】
燃料ガス充填口82に燃料ガスが供給されていない状態において、不活性ガス充填口84に不活性ガスが供給され、開閉弁85が不活性ガス配管87の流路を開放すると、上記不活性ガスは、不活性ガス逆止弁86を通り、不活性ガス配管87およびガス充填配管42を介して、タンク区画40内の燃料タンク41に供給される。加えて、タンク側遮断弁43が燃料ガス供給配管32の流路を開放し、燃料電池側遮断弁33が燃料ガス供給配管32の流路を閉塞し、放出弁72が燃料ガス排出配管71の流路を開放することにより、燃料タンク41内に残存する燃料ガスは、燃料ガス供給配管32および燃料ガス排出配管71を介してベント管10に排出される。これにより、燃料タンク41から燃料ガスを取り除くことができる(パージ処理)。なお、ガス充填配管42から直接、燃料タンク41とタンク側遮断弁43との間の燃料ガス供給配管32に繋がる配管が存在していてもよい(タンク方式)。この構成では、燃料タンク41の不活性ガスのパージ処理の際に、タンク側遮断弁43を閉塞した状態で燃料タンク41内に不活性ガスを充填し、その後、不活性ガスを燃料タンク41から放出することを容易にする目的でタンク側遮断弁43を開放することが必要である。
【0123】
また、上部ダクト区画80内には、上部ダクト区画内部ガス検知器88が収容される。上部ダクト区画内部ガス検知器88は、上部ダクト区画80の内部に配置される燃料ガス検知器である。例えば、燃料ガスが水素ガスである場合、上部ダクト区画内部ガス検知器88は、水素ガス検知センサで構成される。
【0124】
上部ダクト区画内部ガス検知器88は、上部ダクト区画80の上部に位置する天壁80aに配置される。燃料ガスとしての水素ガスは空気よりも軽く、上昇する。このため、上部ダクト区画80内で燃料ガスが漏れた場合でも、漏れた燃料ガスを上部ダクト区画内部ガス検知器88で適切に検知することができる。
【0125】
上部ダクト区画内部ガス検知器88が上部ダクト区画80内で燃料ガスを検知したとき、その検知信号は、上部ダクト区画内部ガス検知器88から制御部12aに送られる。これにより、制御部12aは、燃料ガス供給配管32に設けられた遮断弁SVを制御して、燃料タンク41から燃料電池31への燃料ガスの供給を停止させることができる。
【0126】
上部ダクト区画80の底壁80bには、上部ダクト区画給気口80gが設けられている。上部ダクト区画給気口80gは、上下方向に貫通する開口を含んで構成される。上部ダクト区画給気口80gは、ダクト連通部91と連通する。したがって、上部ダクト区画80は、上部ダクト区画給気口80g、ダクト連通部91、および下部ダクト連通口70hを介して下部ダクト区画70と連通する。なお、上部ダクト区画給気口80gは、上部ダクト区画80において、底壁80b以外の外壁に設けられてもよい。
【0127】
上部ダクト区画80の後壁80cの、天壁80aとの境目近傍には、上部ダクト区画排気口80hが設けられている。上部ダクト区画排気口80hは、後壁80cを貫通する開口を含んで構成される。上部ダクト区画排気口80hは、ベント管連通部81と連通している。ベント管連通部81は配管である。上部ダクト区画80の内部は、上部ダクト区画排気口80hおよびベント管連通部81を介してベント管10と連通している。すなわち、ベント管連通部81は、上部ダクト区画80の内部とベント管10とを連通する配管である。
【0128】
ベント管10は、タンク区画40から上方に延び、上部ダクト区画80の内部を通る。より詳しくは、ベント管10は、上部ダクト区画80の底壁80bを貫通して上部ダクト区画80の内部に入り、後壁80cを突き抜ける。
【0129】
ダクト区画給気装置75の駆動している状態で、上部ダクト区画80の内部の空気は、ベント管連通部81およびベント管10を介して船外に排出される。これにより、上部ダクト区画80の内部の換気を行うことができる。また、上部ダクト区画80内で、燃料ガス排出配管71から燃料ガスが漏れた場合でも、漏れた燃料ガスは、ベント管連通部81およびベント管10を介して船外に排出される。これにより、漏れた燃料ガスが上部ダクト区画80内で滞留することを抑制することができる。
【0130】
さらに、上部ダクト区画80と下部ダクト区画70とは、ダクト連通部91を介して連通している。これにより、(1)ダクト区画給気管74を介して下部ダクト区画70の内部に取り込まれた空気、(2)下部ダクト区画70内の燃料ガス供給配管32から何らかの原因で漏れた燃料ガス、(3)燃料電池区画30から連通管92を介して下部ダクト区画70に排出された空気または燃料ガスを、上部ダクト区画80およびベント管10を介して船外に放出することができる。これにより、下部ダクト区画70の内部および燃料電池区画30の内部での燃料ガスの滞留を抑制することができる。
【0131】
なお、上述した上部ダクト区画内部ガス検知器88は、上部ダクト区画排気口80hに近い位置、または上部ダクト区画排気口80hの内部に配置される。上部ダクト区画80内で、燃料ガス排出配管71又はガス充填配管42から燃料ガスが万が一漏れた場合、漏れた燃料ガスは、上部ダクト区画排気口80hを通ってベント管10に向かう。つまり、上部ダクト区画排気口80hは、上部ダクト区画80内で燃料ガスが漏れたときに、上記燃料ガスが流れる流路の最も下流側に位置する。したがって、上部ダクト区画排気口80hに近い位置または上部ダクト区画排気口80hの内部に上部ダクト区画内部ガス検知器88が配置されることにより、上部ダクト区画80内で燃料ガスがどの位置で漏れた場合でも、漏れた燃料ガスの検知を行うことができる。なお、本実施形態では、好ましい形態として、上部ダクト区画内部ガス検知器88は、上部ダクト区画80の天板に滞留した水素ガスを検知できる位置に設置されている。これにより、換気のための通風が無い状態でも水素ガスの漏洩を迅速に検知することができる。
【0132】
上部ダクト区画80は、上部ダクト区画給気口80gおよび上部ダクト区画排気口80hを除いて密閉された空間を内部に有する。すなわち、上部ダクト区画80は、上部ダクト区画給気口80gおよび上部ダクト区画排気口80hを除いて密閉されている。当該密閉構造により、原則として、ダクト区画給気装置75および電池区画給気装置36の駆動時においては、上部ダクト区画給気口80gから上部ダクト区画80内に入った空気は、上部ダクト区画排気口80hを通って上部ダクト区画80から排気される。密閉を確保するために、隙間が生じる可能性がある場所には、適宜、シール材が配置される。
【0133】
以上の説明からわかるように、ダクト区画90は、当該区画(自区画)の内部の換気を行う換気口を除いて密閉されている。燃料電池区画30およびタンク区画40に加えて、燃料の放出源を含むダクト区画についても内部の換気を行う換気口を除いて密閉されているために、燃料の放出源を含まない区域に燃料が侵入して発火や爆発が生じる可能性をさらに低下させることができる。
【0134】
(3-4.ベント管についての補足)
図2に示すように、ベント管10の内部において、ベント管連通部81の排出口81aよりも下流側には、ベント管内部ガス検知器101が設けられる。なお、上記の下流側とは、タンク区画40の内部の空気がベント管10の内部を流れて船外に排出されるときの空気の流れ方向の下流側を指す。例えば、燃料ガスが水素ガスである場合、ベント管内部ガス検知器101は、例えば拡散式または吸引式の水素ガス検知センサで構成される。ベント管内部ガス検知器101の検知信号は、制御部12aに送られる。
【0135】
例えば、放出弁72が燃料ガス排出配管71の流路を閉鎖しており、下部ダクト区画内部ガス検知器73および上部ダクト区画内部ガス検知器88が燃料ガスを検知していないにもかかわらず、ベント管内部ガス検知器101が燃料ガスを検知した場合、放出弁72が燃料ガス排出配管71の流路を完全に閉鎖していない、つまり、放出弁72が故障していると判断することができる。この場合、制御部12aは、例えば外部に報知することにより、放出弁72の点検、修理、交換、などをメンテナンス者に促すことができる。なお、外部への報知には、モニタ表示、警報音の出力、外部端末への情報発信などが含まれる。
【0136】
〔4.安全に関わる構成の抜粋〕
以上に説明したように、本実施形態においては、燃料電池区画30と、タンク区画40と、下部ダクト区画70とが、船体1の甲板1aの下に別々に分けられて配置される。つまり、タンク区画40は、船体1の甲板1a下に他の区画と分離して設けられる。このために、タンク区画40内で燃料(例えば水素)が漏れた場合に、燃料の他の区画への拡散を抑制することができる。また、タンク区画40内で爆発が生じた場合に、他の区画、船体1内の機器、および船体1自体に損傷が発生することを極力抑制することができる。さらに、タンク区画40に配置される燃料タンク41を他から隔離することができるために、燃料タンク41に機械的損傷が発生することを抑制することができる。
【0137】
なお、本実施形態では、タンク区画40からの排気の経路と、ダクト区画90の排気の経路とはベント管10を共用する構成となっている。ただし、タンク区画40およびダクト区画90は、それぞれ、別々の空間として設けられ、換気に使用される通風装置46、75を個別に有して独自に換気を行うことができる。このために、タンク区画40とダクト区悪90とは、分けられた区画であり、互いに独立していると言える。すなわち、タンク区画40は、船体1の甲板1a下に他の区画30、70と独立して設けられていると言える。
【0138】
また、本実施形態では、タンク区画40には、タンク区画排気口40hと連通するベント管10が接続される。ベント管10は船体1の外に突き出す。つまり、タンク区画40は、船体1の外部に先端を有するベント管10と接続される。このように構成することによって、タンク区画40から放出される放出ガスを、大気中の安全な場所に導くことができる。また、タンク区画40内で爆発が生じた場合に、ベント管10を利用して船体1の外部に爆発圧力(爆風)を逃がすことができる。その結果、例えば、タンク区画40以外の位置に配置される機器や、船体1自体が損傷することを極力抑制することができる。
【0139】
なお、ベント管10の根元は、甲板1a下に配置されるタンク区画40に直接接続されても、他の配管部材を利用して間接的に接続されてもよい。別の言い方をすると、ベント管10は、船内から船外に通じる構成であっても、船外に設けられる構成であってもよい。
【0140】
本実施形態では、燃料ガス供給配管32およびガス充填配管42から漏れた燃料ガスは、タンク区画40からベント管10を介して、或いは、ダクト区画90からベント管10を介して船外に放出される。また、燃料ガス排出配管71内の燃料ガスは、放出弁72の開放により、ベント管10に放出され、その後、船外に放出される。また、燃料ガス排出配管71から漏れた燃料ガスは、ダクト区画90からベント管10を介して船外に放出される。燃料ガス供給配管32、ガス充填配管42、および燃料ガス排出配管71は、いずれも、燃料が内部を通る配管である。
【0141】
つまり、燃料電池船SHは、燃料が内部を通る燃料配管を備える。そして、燃料配管を放出源とする燃料の放出は、ベント管10を用いて行われる。なお、ベント管10は、燃料を船外に放出する。このような構成とすれば、燃料タンク41だけでなく、燃料配管(燃料配管に取り付けられる弁等の付属品を含む)を放出源とする燃料が船内に溜ることを抑制することができる。その結果、船内における発火や爆発を抑制することができる。
【0142】
なお、本実施形態では、燃料配管に取り付けられる弁には、燃料電池側遮断弁33、タンク側遮断弁43、および、放出弁72が含まれる。
【0143】
別の言い方をすると、燃料電池船SHが備える燃料配管には、燃料タンク41と燃料電池31とを接続する燃料供給配管が含まれる。燃料供給配管は、管内の圧力を減少させる弁(逃がし弁)を介してベント管10と接続される。このような構成とすると、逃し弁を制御することにより燃料供給配管に過度な圧力が加われることを防止することができる。なお、本実施形態の燃料ガス供給配管32が燃料供給配管の一例である。また、本実施形態の放出弁72が逃し弁の一例である。
【0144】
また、本実施形態では、燃料タンク41は、溶融により燃料タンク41内の流体の放出を許容する溶栓弁486(後述の図9参照)を有する。詳細には、溶栓弁486は、燃料タンク41内の燃料ガスのタンク区画40への放出を許容する。このような構成とすれば、例えば火災の発生により燃料タンク41が高温となった場合に、溶栓弁486により燃料タンク41内の燃料ガスを燃料タンク41の外に放出することができる。その結果、燃料タンク41内の燃料ガスを、ベント管10を介して船外に放出することができる。
【0145】
図9は、燃料タンク41が有する溶栓弁486について説明するための模式図である。図9に示すように、燃料タンク41の口金411にバルブアセンブリ48が取り付けられる。バルブアセンブリ48は、導入部481と、流入通路482と、排出通路483と、排出部484と、放出通路485と、溶栓弁486と、を備える。
【0146】
導入部481は、外部から燃料タンク41内に燃料ガスを充填するために設けられ、ガス充填配管42と接続される。流入通路482は、導入部481から入る燃料ガスを燃料タンク41内に導く通路である。排出通路483は、燃料タンク41内の燃料ガスを排出部484へと導く通路である。排出部484は、燃料タンク41から燃料電池31へと燃料ガスを供給するために設けられ、燃料ガス供給配管32と接続される。なお、流入通路482および排出通路483には、不図示の弁が適宜配置されている。
【0147】
放出通路485は、流入通路482に接続される。溶栓弁486は、燃料タンク41の外部に通じる、放出通路485の開口部に配置される。溶栓弁486は、例えば、周囲の温度が所定の温度を超えると溶解する金属などの材料を用いて構成される。溶栓弁486の溶栓部は、例えば鉛や錫等により構成されてよい。溶栓弁486の溶栓部が溶解されると、放出通路485の開口部が外部と連通し、燃料タンク41内の燃料ガスが放出通路485を通って外部に放出される。ここでは、溶栓弁486が設けられる放出通路485が、流入通路482と接続される構成としたが、これは例示である。例えば、溶栓弁486が設けられる放出通路485は、排出通路483に接続される構成としてもよい。また、流入経路482と排出経路483とは同一の構成とされてもよく、この場合には、当該同一の経路に、溶栓弁486が設けられる放出通路485が接続される構成としてもよい。
【0148】
なお、溶栓弁486の溶栓部の溶解により外部と連通する開口部(放出通路485の開口部)は、上方に向けて開口する構成とすることが好ましい。このような構成とすることで、上方に設けられるベント管10に向けてスムーズに燃料ガスを排出することができる。また、燃料タンク41から排出される燃料ガスの圧力が船体1の下部や側部に加われることを抑制することができ、燃料ガスを安全に外部に逃がすことができる。
【0149】
また、本実施形態では、燃料タンク41が溶栓弁486を有する構成としたが、これに限定されず、火災発生時の過圧防止措置を行うことができる溶栓弁以外の熱作動型圧力除去装置が燃料タンク41に備えられる構成としてもよい。
【0150】
また、燃料電池区画30、タンク区画40、およびダクト区画90は、人が立ち入ることができる開口を有さないことが好ましい。ただし、タンク区画40やダクト区画90等には、人が立ち入ることができる開口が設けられてもよい。このような開口が設けられる場合には、当該開口は、蓋により閉められており、工具を使用することなく開放出来ない構造とすることが好ましい。このような構成とすることにより、燃料ガスが漏洩する可能性がある危険区画において不慮の人的被害が発生することを防ぐことができる。
【0151】
〔5.留意事項〕
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【符号の説明】
【0152】
1・・・船体
1a・・・甲板
10・・・ベント管
30・・・燃料電池区画(他の区画)
31・・・燃料電池
32・・・燃料ガス供給配管(燃料配管、燃料供給配管)
40・・・タンク区画
41・・・燃料タンク
42・・・ガス充填配管(燃料配管)
71・・・燃料ガス排出配管
72・・・放出弁(逃し弁)
90・・・ダクト区画(他の区画)
486・・・溶栓弁
SH・・・燃料電池船
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9