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  • 特開-下降窓開閉補助具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185204
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】下降窓開閉補助具
(51)【国際特許分類】
   B61D 25/00 20060101AFI20221207BHJP
   F16H 21/10 20060101ALI20221207BHJP
   E05F 1/16 20060101ALI20221207BHJP
   E05F 11/44 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B61D25/00 B
F16H21/10 H
E05F1/16 E
E05F11/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092717
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】安川 祥平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 岳広
(72)【発明者】
【氏名】寺村 弘
(72)【発明者】
【氏名】広沢 賢
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA48
3J062AB27
3J062AC07
3J062BA12
3J062BA16
3J062BA22
3J062CB02
3J062CB14
3J062CB27
3J062CB32
3J062CB42
(57)【要約】
【課題】厚さをコンパクトに設計できると共に、耐久性の向上が可能な下降窓開閉補助具を提供する。
【解決手段】下降窓開閉補助具1は、下降窓の下方に配置される本体2と上下に旋回可能であり先端にローラ4aを有するアーム4を備えている。本体2は、内側にリンク部6、バネ部8及び支持部12を備える。リンク部6は、本体2の一部を固定節とする両てこ機構で構成されている。両てこ機構の原動節6aにはアーム4が一体回動可能に取り付けられている。バネ部8は並列に配置されたコイルバネ8aの両端に連結金具8b、8cが連結されている。バネ部8の一端の連結金具8bが、両てこ機構の従動節6c上の連結点6ccに連結され、他端の連結金具8cは、バネ固定ピン10を介して支持部12に支持される。バネ部8の伸縮方向に平行であって、連結点6ccを通る仮想直線は、常に、従動節6cの両端のジョイントの間を通るように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の下降窓の開閉操作を補助する下降窓開閉補助具であって、
前記下降窓の下方に配置される本体と、
一端が前記下降窓の下方で上下に旋回できるように、他端が前記本体に軸支されているアームと、
前記本体の一部を固定節とする両てこ機構で構成され、原動節が前記アームと一体に旋回可能であるリンク部と、
一端が前記リンク部の従動節上の連結点に連結され、他端が前記本体に固定されているバネ部とを備え、
前記連結点を通り、且つ、前記バネ部の伸縮方向と平行な仮想直線が、常に前記従動節の両端のジョイントの間を通る
ことを特徴とする下降窓開閉補助具。
【請求項2】
前記本体のうち前記バネ部の前記他端側に上下方向へ延びるように配置される溝形鋼と、
前記溝形鋼の対向する壁部を貫通して配置され、前記バネ部の前記他端側が連結されるバネ固定ピンと
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の下降窓開閉補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の窓の開閉機構に関するものであり、特に、通勤用途に適した近郊型車両において、側下降窓の開閉操作を容易にするための下降窓開閉補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の下降窓の昇降機構に対して用いられるバランサ(釣合装置)としては、主に2種類のタイプのものが知られている。
【0003】
一つは、下降窓を閉方向(上向き)に付勢する揺動アームを用いた揺動アーム式(シュリーレン式とも呼ばれる。)のバランサであり、もう一つは、スパイラル式のバランサである。スパイラル式は軽量窓(単板ガラス構造)にしか対応できないが、揺動アーム式はスパイラル式と比較して質量の大きい昇降窓にも対応可能である。このうち、揺動アーム式の構成を図5に示す。
【0004】
図5に示すように、揺動するアーム203で下降窓の下方側を支える揺動アーム式のバランサ200は、リンク機構201と複数本のバネ202を用いて構成されている。ところで、複層ガラス構造による1000mm幅の窓の質量は約30kgになり、乗客が補助無しで容易に持ち上げられるものではない。この高重量の窓を揺動アーム式のバランサ200で支える場合、20~24本のバネが必要となる。揺動アーム式の機構では、窓の質量と操作力とを考慮して補助に必要なバネの本数を変更できる構造となっている。このような揺動アーム式のバランサの構成については、特許文献1に開示されている。
【0005】
一方、スパイラル式のバランサは、窓一つに対して両側に設置される2本のスパイラルバネのねじり量に応じて生じる反発力によって窓の開閉操作を補助する構造となっている。このようなスパイラル式のバランサの構成については、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭33-017450号公報
【特許文献2】特開2008-057653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、ダブルスキン構造を有するアルミニウム合金製の構体が主流となっており、従来のステンレス鋼を用いたシングルスキン構造の構体よりも窓の下の空間が狭くなっていることが多い。これに対して、揺動アーム式のバランサでは、複数のバネを使用し複雑なリンク機構を用いていることから装置の厚みが大きくなる。よって、たとえば、ダブルスキン構造において、一定の客室空間を確保するためには、側構体の一部を切り欠くといった対応が必要になる。場合によっては、十分な設置スペースを確保できないために、適用できない車種もある。また、一部が切り欠かれた側構体には、補強を入れるなどの対策が必要となる。さらに、バネ本数が多い並びに複雑なリンク構成では、メンテナンスに時間を要する上に、装置の重量が増大してしまう。
【0008】
また、スパイラル式のバランサでは、比較的バネの反発力が小さいので、上で述べたように軽量窓にしか適用できない。そして、設置の際の調整は一つの窓に対して同時に2人で行う必要があり、揺動アーム式の倍の作業時間を要する。取り付け後の再調整では、カーテンを収納するカーテンキセや、カーテン下端の横棒をガイドする溝が形成されたカー
テン溝島などを取り外さなければならないため、復旧に時間を要する。
【0009】
そこで、本発明は、厚さをコンパクトに設計できると共に、耐久性の向上が可能な下降窓開閉補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の下降窓開閉補助具は、鉄道車両の下降窓の開閉操作を補助する下降窓開閉補助具であって、前記下降窓の下方に配置される本体と、一端が前記下降窓の下方で上下に旋回できるように、他端が前記本体に軸支されているアームと、前記本体の一部を固定節とする両てこ機構で構成され、原動節が前記アームと一体に旋回可能であるリンク部と、一端が前記リンク部の従動節上の連結点に連結され、他端が前記本体に固定されているバネ部とを備え、前記連結点を通り、且つ、前記バネ部の伸縮方向と平行な仮想直線が、常に前記従動節の両端のジョイントの間を通ることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の下降窓開閉補助具は、上記構成に加えて、前記本体のうち前記バネ部の前記他端側に上下方向へ延びるように配置される溝形鋼と、前記溝形鋼の対向する壁部を貫通して配置され、前記バネ部の前記他端側が連結されるバネ固定ピンとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、連結点を通り、バネ部の伸縮方向と平行な仮想直線が、常に従動節の両端のジョイントの間にある。これにより、従動節と原動節とを繋ぐ中間節と重ならないような配置でバネ部の端部を連結点に連結する構成を採用できる。よって、従動節、中間節及びバネ部の端部が同時に重なることがないので、厚さ方向の寸法を抑えた設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る下降窓開閉補助具を示す斜視図である。
図2図1の下降窓開閉補助具の使用状態を示す正面図である。
図3】本体内部の動作を表し、(a)は下降窓の閉状態、(b)は中間位置の状態、(c)は開状態を示す図である。
図4】本体の支持部周辺の横断面図である。
図5】従来の下降窓開閉補助具の内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る下降窓開閉補助具1の斜視図である。
図1に示すように、下降窓開閉補助具1は、本体2と、この本体2に対して旋回可能に一端が軸支されたアーム4を備えている。アーム4の先端には、回転自在にローラ4aが設けられている。アーム4はアーム旋回軸4bを中心に揺動可能に構成されている。
【0016】
本体2の内部は、大きく分けて、リンク部6、バネ部8及び支持部12の部分を有している。これらを順に説明する。
【0017】
リンク部6は、本体2を固定節とする両てこ機構で構成されている。すなわち、本実施の形態における構成では、後述の原動節6a及び従動節6cが回動自在に連結されている本体ケース2aの一部を固定節としている。原動節6aは、上述のアーム旋回軸4bと一体となって旋回可能に本体ケース2aに軸支されている。そして、この原動節6aが中間
節6bを介して従動節6cに連結されている。従動節6cの一端は、原動節6aと同様に本体ケース2aに軸支されている。本実施の形態に係る構成では、原動節6aよりも従動節6cの方が長くなっている。そして、中間節6bは、外側に凸となるように湾曲している。
【0018】
バネ部8は、並列に配置された複数のコイルバネ8aと、これらのコイルバネ8aの両端のそれぞれに、取り付けられた連結金具8b、8cとから構成されている。連結金具8bはリンク部6の従動節6c上の連結点6ccに回動可能に連結されている。一方、連結金具8cは、バネ固定ピン10を介して支持部12に連結されている。
【0019】
支持部12は、上下に延びる溝形鋼で構成されている。この溝形鋼の対向壁部12aを貫通するようにバネ固定ピン10が取り付けられる。バネ固定ピン10はネジ軸を有しているので、軸方向への位置を変更することによって、バネ部8のコイルバネ8aの伸び率を調整することができる。
【0020】
図2は、下降窓開閉補助具1の使用状態を示す正面図である。図1に示した下降窓開閉補助具1が、側構体100の下降窓101の下方空間に設けられている。上述のように、旋回するアーム4の先端にはローラ4aが設けられており、このローラ4aを下降窓101の下端に当接させるようにして持ち上げて、下降窓101を支える構成となっている。バネ部8の弾性力に基づく付勢が、下降窓101に対して持ち上げる向きにアーム4に作用しており、下降窓101の重量を軽減できるように設定されている。
【0021】
本体2は、図1に示したように比較的薄型のリンク部6、バネ部8及び支持部12を本体ケース2aで囲むだけのシンプルな薄型構造となっている。これにより、近年のダブルスキン構造によるアルミニウム合金製の構体内の限られたスペースにも、構体に切り欠きを形成することなく収容できる。
【0022】
次に、下降窓開閉補助具1の動作について説明する。
【0023】
図3は、本体2の内部の動作を表している。図3(a)は下降窓の閉状態、(b)は中間位置の状態、(c)は開状態を示している。なお、ローラ4aを含むアーム4については二点鎖線で表し、動作説明に直接関係しない部分の構成については、便宜的に図示を省略して示している。
【0024】
まず図3(a)を参照する。下降窓101(図2参照)を開くとき、アーム4は付勢に抗して下方へ旋回する。これにより、リンク部6(図1参照)の原動節6aは時計回り方向に回る。よって、従動節6cも時計回りに回転するので、従動節6cの連結点6ccに連結されたバネ部8の一端(連結金具8b)は、コイルバネ8aを伸ばす方向に移動する。
【0025】
図3(b)は、アーム4がほぼ水平となる位置まで旋回した状態を示している。このとき、下降窓101は、半分だけ開いた状態となる。図3(a)の状態と比較して、従動節6c上の連結点6ccは、原動節6a側に大きく引き寄せられている。このため、アーム4が下降窓101を持ち上げる力は図3(a)よりも大きくなり、下降窓開閉補助具1による補助作用が増大している。
【0026】
図3(c)は、アーム4が下方へ大きく傾いた状態を示している。本実施の形態では、アーム4は、図3(b)の水平配置を基準として上下にほぼ同じ角度で旋回可能に構成されている。具体的には、図3(a)の状態で水平位置から上方に約40度となり、図3(c)の状態では水平位置から下方に約40度となっている。
【0027】
上の図3(a)~(c)には、それぞれ、連結点6ccを通る仮想直線Lが一点鎖線で描かれている。これらの仮想直線Lはコイルバネ8aの伸縮方向に平行であり、下降窓101のそれぞれの開度におけるコイルバネ8aの伸縮方向を表している。図3から見て取れるように、本実施の形態に係る構成では、仮想直線Lは常に従動節6cの両端のジョイント6ca、6cbの間を通る。
【0028】
すなわち、中間節6bと従動節6cとを連結するジョイント6cbの可動域が、バネ部8の連結金具8bと重ならないように構成することが可能になる。特に、連結点6ccを通り、且つコイルバネ8aの伸縮方向に延びる仮想直線Lに沿った領域を残して連結金具8bを設計できるので、強度面で優れた構造を採用することが可能となる。
【0029】
また、ジョイント6cbと連結金具8bとが重ならないように構成することにより、従動節6cと連結金具8bとの間の距離を、少なくとも中間節6bの板材の厚さよりも小さくなるように設計することが可能となる。このように、連結金具8bを従動節6cに対して近接できると、連結点6ccで軸支するピンを短くすることができる。この軸支するピンを短くすることで、従動節6cに作用するねじりモーメントが小さくなる。仮に、ねじりモーメントが大きい状態で繰り返し下降窓101の開閉動作が行われると、連結点6cc(の軸支するピン周りの)摩耗が激しくなるので、リンク機構の耐久性が低下する。したがって、本実施の形態に係る構成のように、連結金具8bをできるだけ従動節6c側に近づけて配置することは、リンク機構の耐久性を向上させる点において非常に有効である。特に、建築物とは異なり、鉄道車両に用いられる下降窓101は、常に上下の振動に晒されているので、可動部の摩耗対策が重要になる。
【0030】
図4は、本体2の支持部12の周辺の横断面図を示している。概略の構成について上述したように、支持部12には溝形鋼が用いられている。この溝形鋼の対向壁部12aを貫通するようにバネ固定ピン10が貫通配置されており、連結金具8cは、このバネ固定ピン10に対して回動可能に連結されている。よって、リンク部6が動いて連結点6ccが上下動を生じても、安定してバネ部8を追従させることができる。
【0031】
以上に述べてきたような構成は本発明の一例であり、さらに以下のような変形例も含まれる。
【0032】
上記の実施の形態では、原動節6a及び従動節6cを一枚の板状部材で構成し、中間節6bを二枚の板状部材で構成した例を示した。しかし、何れも少なくとも一枚の板状部材を組み合わせる構成であれば、同様の効果を得ることが可能である。したがって、それぞれのリンク片を構成する板状部材の枚数が同じであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の下降窓開閉補助具は、コンパクトな設計でありながら、高重量の下降窓を力の変化が緩やかな操作感で操作することができるので、鉄道車両に限らず、広く、車両用の昇降窓や開閉扉において有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 下降窓開閉補助具
2 本体
2a 本体ケース
4 アーム
4a ローラ
4b アーム旋回軸
6 リンク部
6a 原動節
6b 中間節
6c 従動節
6ca、6cb ジョイント
6cc 連結点
8 バネ部
8a コイルバネ
8b、8c 連結金具(一端)(他端)
10 バネ固定ピン
12 支持部(溝形鋼)
12a 対向壁部
100 側構体
101 下降窓
L 仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5