(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185206
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20221207BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A01C11/02 331C
A01B69/00 303A
A01B69/00 303V
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092722
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】林田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】宇山 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】難波 晟史
(72)【発明者】
【氏名】三島 拓生
【テーマコード(参考)】
2B043
2B062
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043BA03
2B043BB06
2B043DA01
2B043DA15
2B043ED13
2B043EE05
2B043EE06
2B062AA02
2B062AA09
2B062CA12
(57)【要約】
【課題】自動直進制御が実行可能な制御部を備えた移植機において、自動直進制御の実行が開始されるタイミングをオペレータが余裕を持って把握することによって作業走行中の様々な操作をより確実に行うことのできる移植機を提供することを課題とする。
【解決手段】走行機体と、植付作業機と、昇降シリンダと、植付クラッチと、位置情報取得ユニットと、前記走行機体の操向操作を制御する操舵ユニットと、制御部とを備え、前記制御部は、前記植付作業機によって圃場面への植付作業を行うときに、前記走行機体が直進走行するように前記操舵ユニットを制御する直進走行制御が実行可能に構成され、前記直進走行制御は、前記植付クラッチが切断状態から接続状態に切換えられてから予め設定された所定の猶予時間が経過した後に、前記操舵ユニットによる操向制御を実行するように構成された。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドルによって操舵される走行機体と、
前記走行機体の後部に昇降可能に連結された植付作業機と、
前記植付作業機を昇降作動させる昇降シリンダと、
前記植付作業機側に伝動されるエンジン動力を断続する植付クラッチと、
前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットと、
前記走行機体の操向操作を制御する操舵ユニットと、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記植付作業機によって圃場面への植付作業を行うときに、前記位置情報取得ユニットにより検出された位置情報に基づいて前記走行機体が直進走行するように前記操舵ユニットを制御する直進走行制御が実行可能に構成され、
前記直進走行制御は、前記植付クラッチが切断状態から接続状態に切換えられてから予め設定された所定の猶予時間が経過した後に、前記操舵ユニットによる操向制御を実行するように構成された
移植機。
【請求項2】
オペレータへの報知を行う報知手段を設け、
前記制御部は、前記猶予時間中であることをオペレータに報知するように構成された
請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記制御部は、前記猶予時間中に所定のキャンセル操作が検出された場合には、猶予時間を経過しても前記直進走行制御を実行しないように構成された
請求項1又は2に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直進走行するようにステアリング操作を制御する制御部を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングハンドルによって操舵される走行機体と、前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットと、前記走行機体の操向操作を制御する操舵ユニットと、制御部とを備え、前記走行機体を予め設定した目標走行経路に沿って自動走行させることができる特許文献1に記載の作業車両が従来公知である。
【0003】
さらに、ステアリングハンドルによって操舵される走行機体と、前記走行機体の後部に昇降可能に連結された植付作業機と、前記植付作業機を昇降作動させる昇降シリンダと、エンジン動力の前記植付作業機側への伝動を断続操作する植付クラッチと、前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットと、前記走行機体の操向操作を制御する操舵ユニットと、前記位置情報取得ユニットにより検出された位置情報に基づいて前記走行機体が直進走行するように前記操舵ユニットを制御する直進走行制御が実行可能に構成された制御部とを備え、圃場面で植付作業を行う際に前記走行機体が直進走行するように前記操舵ユニットを制御する特許文献2に記載の移植機が従来公知である。
【0004】
上記特許文献2の移植機によれば、前記制御部は、圃場端側で旋回走行が完了した後に植付作業を再開するために前記植付クラッチを切断状態から接続状態に切り替えた場合に、自動的に直進走行制御が実行されるため、直進走行制御の実行開始を操作するための手間を減らすことができるものである。
【0005】
その一方で、特許文献2の構成によれば、オペレータは一方の手でクラッチの接続操作をした直後に、他方の手で操作中のステアリングハンドルの操作が急に制御されることになるため、かえって焦ってしまい心理的余裕がなくなってしまう場合があるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-154012号公報
【特許文献2】特開2020-31558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、走行機体が直進走行するように前記操舵ユニットを制御する自動直進制御が実行可能な制御部を備えた移植機において、自動直進制御の実行が開始されるタイミングをオペレータが落ち着いた状態で把握することによって余裕をもって作業走行中の様々な操作を確実に行うことのできる移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願発明は第1に、ステアリングハンドルによって操舵される走行機体と、前記走行機体の後部に昇降可能に連結された植付作業機と、前記植付作業機を昇降作動させる昇降シリンダと、前記植付作業機側に伝動されるエンジン動力を断続する植付クラッチと、前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得ユニットと、前記走行機体の操向操作を制御する操舵ユニットと、制御部とを備え、前記制御部は、前記植付作業機によって圃場面への植付作業を行うときに、前記位置情報取得ユニットにより検出された位置情報に基づいて前記走行機体が直進走行するように前記操舵ユニットを制御する直進走行制御が実行可能に構成され、前記直進走行制御は、前記植付クラッチが切断状態から接続状態に切換えられてから予め設定された所定の猶予時間が経過した後に、前記操舵ユニットによる操向制御を実行するように構成されたことを特徴としている。
【0009】
第2に、オペレータへの報知を行う報知手段を設け、前記制御部は、前記猶予時間中であることをオペレータに報知するように構成されたことを特徴としている。
【0010】
第3に、前記制御部は、前記猶予時間中に所定のキャンセル操作が検出された場合には、猶予時間を経過しても前記直進走行制御を実行しないように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
前記制御部は、前記植付クラッチが切断状態から植付状態に切換えられてから直進走行制御の実行を開始するまでに所定の猶予時間を設けたことにより、植付クラッチの接続作動と、前記操舵ユニットによってステアリング操作を制御する自動直進制御の実行開始のタイミングをずらして順番に実行することができるため、オペレータがより落ち着いた心理状態で作業走行中の操作を順番に実行することができる。言い換えると、オペレータが植付クラッチの接続とステアリング制御とが同時に実行されることで心理的に焦ってしまい、かえって作業走行中の操作が難しくなる事態を防止することができる。
【0012】
また、オペレータへの報知を行う報知手段を設け、前記制御部は、前記猶予時間中であることをオペレータに報知するように構成されたものによれば、オペレータは直進走行制御の実行が開始されるまでの時間とタイミングを知ることができるため、より落ち着いた心理状態で作業走行中の操作を行うことができる。
【0013】
さらに、前記制御部は、前記猶予時間中に所定のキャンセル操作が検出された場合には、猶予時間を経過しても前記直進走行制御を実行しないように構成されたものによれば、オペレータによって操向操作又は作業機操作の誤操作によって前記直進走行制御の実行が開始されそうな場合でも早急にキャンセル操作ができるため、操作性と安全性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体斜視図である。
【
図2】(A)は、操縦部の要部正面図であり、(B)は、表示パネルを示した図であり、(C)は、主変速レバーの把持部を示した図である。
【
図3】(A)は、操舵ユニットの取付状態を示した要部斜視図であり、(B)は、操作パネルを示した正面図である。
【
図4】自動直進制御を実行した場合の植付経路を示した図である。
【
図5】旋回時制御を実行した場合の旋回経路と植付作業機の昇降作動のタイミングを示した図である。
【
図9】自動直進制御のメインフローを示した図である。
【
図10】自動直進開始制御1のサブルーチンを示した処理フロー図である。
【
図11】自動直進開始制御2のサブルーチンを示した処理フロー図である。
【
図12】自動直進猶予制御のサブルーチンを示した処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体斜視図であり、
図2(A)は、操縦部の要部正面図であり、
図2(B)は、表示パネルを示した図であり、
図2(C)は、主変速レバーの把持部を示した図であり、
図3(A)は、操舵ユニットの取付状態を示した要部斜視図であり、
図3(B)は、操作パネルを示した正面図である。本乗用田植機は、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2によって支持される走行機体3と、前記走行機体3の後方に昇降リンクを介して昇降自在に連結された植付作業機6と、前記植付作業機6と前記後輪2との間に配置された整地作業機7とを備えている。
【0016】
前記走行機体3は、前部側に搭載されたエンジン(図示しない)を囲繞するボンネット8と、前記ボンネット8の後方に配置された操縦部9とが設けられており、前記走行機体3の前部には予備苗を前記走行機体の前方から後方に搬送する苗搬送台11と、測位衛星から前記走行機体の位置情報を取得(受信)するGNSSユニット(GPSユニット、受信ユニット)12とが支持されている(
図1参照)。
【0017】
前記操縦部9は、作業者が着座する座席13と、前記前輪を操向操作するステアリングハンドル14と、前記ステアリングハンドル14の前方側に配置される表示パネル16と、前記ステアリングハンドル14の左右一方側(図示する例では左側)に配置された主変速レバー17と、前記ステアリングハンドル14の左右他方側(図示する例では右側)に配置された作業機レバー18とが設けられている。
【0018】
上記作業機レバー18は、上下揺動操作されることによって、詳しくは後述する制御部50による作業機操作制御によって、前記植付作業機6の昇降操作と、前記植付作業機6へ伝動されるエンジン動力を断続する植付クラッチ(作業機クラッチ)30の断続操作とをすることができるように構成されている。前記制御部50の詳細については後述する。
【0019】
なお、上記作業機レバー18は、上下揺動操作可能であって、図示しない付勢部材等によって中立位置に付勢されている。これにより、オペレータが前記作業機レバー18を上下揺動操作した後に該作業機レバー18から手を離すと、前記作業機レバー18が自動的に中立位置に復帰するように構成されている。
【0020】
上記主変速レバー17は、前後揺動操作されることにより図示しない走行HSTを操作することで、前記走行機体3の主変速操作を実行できるように構成されている。また、該主変速レバー17の把持部の内側には、前記作業機レバー18と同様に前記植付作業機6の昇降作動と前記植付クラッチ30の断続操作を行うことができる一対のスイッチ操作具が設けられている。
【0021】
具体的には、前記主変速レバー17の把持部内側には前記スイッチ操作具として、前記植付作業機の上昇作動及び植付停止(植付クラッチの切断)を操作する作業機上昇スイッチ17Aと、前記植付作業機6の下降作動及び植付駆動(植付クラッチの接続)を操作する作業機下降スイッチ17Bとが設けられている(
図2(C)参照)。
【0022】
上記表示パネル16は、燃料や肥料の残量を報知する報知ランプの他、後述する植付自動スイッチ35によって植付自動モード(のON状態)へ切換えられたことを報知する植付自動ランプ26と、後述する自動直進制御が実行中であることを報知する自動直進ランプ27と、前記植付作業機6の作動状態を報知する作業機ランプ28が設けられている(
図2(B)参照)。
【0023】
ちなみに、
図3に示されるように、前記操縦部内の前記ステアリングハンドル14側には、前記ステアリングハンドル14の操作位置を検出する操舵角センサ(操作位置検出センサ)25と、前記ステアリングハンドル14を自動的に操舵可能な操舵ユニット(操舵装置)20とが設けられている(
図3等参照)。
【0024】
前記操舵ユニット20は、前記ステアリングハンドル14が接続されるステアリング軸の上端側に着脱可能に構成されたケース体であって、前記ステアリング軸を軸回転させることによってステアリング操作(操向操作)を制御するステアリングモータ21と、該ステアリングモータ21を制御する前記制御部50と、該操舵ユニット20を操作するための操作パネル22とを有している(
図3(A)参照)。
【0025】
上記操作パネル22は、左右方向のパネル状に形成されて前記ステアリングハンドルの真下側に配置されている。該操作パネル22には、詳しくは後述する前記自動直進制御(直進自動制御、自動操舵制御)の実行と停止を操作する自動操舵スイッチ(直進スイッチ、自動スイッチ)31と、自動直進制御(後述するティーチング制御)を実行するための基準線L0を設定する際に用いる始点(A点)を設定する始点(A点)登録スイッチ32と、終点(B点)を設定する終点(B点)登録スイッチ33と、後述する旋回時制御時の作業モードを切換える作業モードスイッチ34とが設けられており、該操作パネル22の左右外側(図示する例では左側)には、前記操舵ユニット20への電力供給のON・OFFを操作する動作スイッチ(作業準備スイッチ)36が設けられている(
図3(B)参照)。各種スイッチを用いた具体的な制御内容については後述する。
【0026】
また、上記操作パネル22には、各スイッチ操作具の近傍に報知ランプが配置されている。具体的には、前記自動操舵スイッチ31の上側には自動直進制御が実行中であることをオペレータに報知する自動直進制御報知ランプ31Aが設けられ、前記始点登録スイッチ32と前記終点登録スイッチ33の上側には、それぞれ始点と終点とが設定されたことを報知する始点ランプ32Aと終点ランプ33Aとが設けられ、該操作パネル22の端部(図示する例では右端側)には前記自動直進制御の実行中に前記走行機体3が目標ライン上を走行しているか否かを報知する目標ラインランプ37が設けられている(
図3(B)参照)。
【0027】
前記GNSSユニット12は、前記ボンネット8を左右方向に跨ぐように延設されて下方が開放されたコ字状に形成された支持フレーム39と、前記支持フレーム39に左右一対設けられた受信装置(GNSSアンテナ)41、41と、後述するRTK基地局からの補正情報を取得する補正信号受信装置42と、前記支持フレームの左右中央側に配置されたGNSS制御部60とを備えている(
図1参照)。
【0028】
前記GNSSユニット(GNSS制御部60)12は、コントロールエリアネットワーク(CAN)等を介して前記制御部50に接続されており、前記制御部50に測位衛星システムから取得された前記走行機体の位置情報、方位情報等を入力することができるように構成されている。
【0029】
上記受信装置41のうち、左右一方側の受信装置41は、前記走行機体3の基準となる位置情報を受信するための受信アンテナであり、左右他方側の受信装置41は、前記走行機体4の方位情報を取得するための受信アンテナである。すなわち、前記受信装置41,41は、所定距離以上離間させて左右一対設けることによって前記走行機体3の測位精度を向上させることができる。
【0030】
上記補正信号受信装置42は、作業走行する圃場面からある程度離れた場所に設置されたRTK基地局43から補正情報(具体的には、RTK基地局の座標データと、前記走行機体とRTK基地局との間の距離データ)を受信するように構成されている。これにより、前記受信装置41によって取得された前記走行機体3の位置情報を補正することによって、位置情報の精度をセンチメートル単位まで向上させることができる。
【0031】
ちなみに、前記GNSS制御部60は、無線通信(Bluetooth(登録商標)、wifi等)を介してタブレット端末40等の情報端末(報知手段56)が接続可能に構成されている。該タブレット端末40には、ナビゲーションソフトがインストールされており、後述の制御部によるティーチング制御や旋回時制御、自動直進制御の実行を補助することができる。また、該タブレット端末40によれば、オペレータに対してディスプレイや音声(音)を介して各種報知を行うこともできる。
【0032】
前記植付作業機6は、圃場に植付けられる苗が載置される苗載台と、該苗載台に載置された苗の圃場側への植付作業を行う植付部とを備え、前記走行機体3の後部側に昇降シリンダ48を介して昇降作動可能に連結されるとともに、植付クラッチ30によってエンジンから伝動される動力が断続されるように構成されている。
【0033】
また、前記植付作業機6は、前記制御部50により、前記植付作業機6が上昇作動する上昇状態と、前記植付作業機6が下降作動する下降状態(又は下端側で下降停止した下降停止状態)と、前記植付作業機6を任意の高さ位置で固定した固定状態と、下降停止状態において前記植付部47を駆動させることで植付作業を行う植付状態とに切換える前記作業機操作制御が実行可能に構成されている。
【0034】
すなわち、前記制御部50は、前記作業機レバー18の上下揺動操作に応じて、前記植付作業機6の昇降作動と、前記植付クラッチ30の断続、言い換えると、前記植付作業機6の作業状態(上昇状態・下降状態・下降停止状態・固定状態・植付状態)を切換えることができる前記作業機操作制御が実行可能に構成されている。前記作業機操作制御の具体的な制御内容については後述する。
【0035】
次に、
図4に基づいて、自動直進制御の制御例について説明する。
図4は、自動直進制御を実行した場合の植付経路を示した図である。
【0036】
上述の移植機(作業車両)は、圃場内で植付作業をしながら直進走行する植付走行と、植付作業を停止した状態で隣接する植付条列に向けて旋回する旋回走行とを交互に繰返すことで外周を除いた圃場面内側の全体に植付作業を行う工程(
図4参照)と、最後に残った圃場の外周に沿って植付作業を行う工程を実行することによって、圃場面全体に植付作業を行うことができる。
【0037】
このとき、前記制御部50は、前記自動操舵スイッチ31により直進自動モードがON状態に操作されている場合、前記植付走行を実行する際に、前記走行機体3が圃場面を所定の目標ラインL1に沿って真っすぐ直進走行するように前記操舵ユニット20を介してステアリング操作を自動的に制御する前記自動直進制御(直進自動制御)が実行可能に構成されている。
【0038】
まず、前記制御部50は、前記自動直進制御を実行する前に、圃場内で前記植付走行を開始する位置で前記始点登録スイッチ32を押すことで始点(A点)の座標を記録し、オペレータの操作によって植付走行(直進走行)を行い、圃場体側で旋回走行する直前で前記終点登録スイッチ33を押すことで終点(B点)の座標を記録することにより、基準線L0を設定するティーチング制御が実行可能に構成されている(
図4参照)。
【0039】
これにより、前記制御部50(自動直進制御)は、前記移植機(走行機体)が植付作業(植付走行)を再開する植付再開位置から前記基準線(基準ライン)L0と平行な線を引くことによって、これから植付走行を行う基準線となる目標ラインL1を設定することができる。また、前記制御部50(自動直進制御)は、移植機が前記目標ラインL1に沿って植付走行が実行されるように、前記操舵ユニット20を介してステアリング操作を制御することができるように構成されている。具体的な制御内容については後述する。
【0040】
ちなみに、前記制御部50は、圃場端側で隣接する植付条列に向けて旋回走行を行う場合に、前記植付作業機の昇降作動と植付クラッチ30の断続操作とを自動制御する旋回時制御が実行可能に構成されている(
図4及び
図5参照)。以下、説明する。
【0041】
次に、
図4及び
図5に基づいて、旋回時制御の制御例について説明する。
図5は、旋回時制御を実行した場合の旋回経路と植付作業機の昇降作動のタイミングを示した図である。前記制御部50は、前記植付自動スイッチ35により植付自動モードに切換えられた状態で、走行機体3を旋回操作した場合に、旋回走行中の旋回位置に応じて、前記植付作業機6を植付状態→上昇状態→下降状態→植付状態の順番で自動的に切換える旋回時制御が実行可能に構成されている。
【0042】
具体的に説明すると、前記旋回時制御は、前記植付作業機6を植付状態に切換えて作業走行(植付走行)をし、圃場端側でオペレータによるステアリング操作(旋回操作)が検出された場合(
図5のD0参照)、前記植付作業機6を植付状態から上昇状態へと自動的に切換えるとともに旋回走行時の走行距離のカウントを開始し、前記走行機体3が旋回走行開始後から所定距離旋回走行したことが検出された場合(
図5のD1参照)、前記植付作業機6を上昇状態(又は最上昇位置で固定状態)から下降状態に自動的に切換え、前記走行機体3が植付再開位置まで到達した場合(
図5のD2参照)、前記植付作業機6を植付状態に自動的に切換えて、植付作業を再開するように構成されている。
【0043】
該構成によれば、圃場端側での旋回走行時に前記植付作業機6の昇降操作と植付クラッチ30の断続操作とを自動制御することができるため、オペレータの操作の手間が大幅に削減され植付作業時の操作性が大幅に向上する。これにより、オペレータは旋回走行のステアリング操作に集中できるため、誤操作も減る。
【0044】
ちなみに、前記制御部50による自動直進制御は、前記旋回時制御の実行の有無にかかわらず圃場端側での旋回走行後に所定のタイミングで前記自動直進制御を自動的に開始するための自動直進開始制御(後述する自動直進開始制御1、自動直進開始制御2)と、前記自動直進制御の自動的な実行を開始する条件が整った後に、前記自動直進制御の実行を猶予する自動直進猶予制御とを有し、前記操舵ユニット20を介した操向制御が所定のタイミングで自動的に実行されるように構成されている。
【0045】
特に、前記自動直進猶予制御は、隣接する植付条列への旋回走行が終了し、前記植付作業機6が植付状態に切換えられてから、前記操舵ユニット20によるステアリング制御(自動直進制御)が実行されるまでの間に、所定の猶予時間を設けるように構成されている。
【0046】
該構成によれば、前記走行機体3の旋回走行終了後に、前記植付作業機6の植付状態への切換作動と、前記操舵ユニット20によるステアリング操作の制御とが同時に実行されると、オペレータの心理的余裕がなくなって焦ってしまうことがあるため、二つの制御が実行されるタイミングをずらすことでオペレータに心理的余裕を持たせて誤操作を減らすことができる。上述の自動直進制御の具体的な制御内容については、後述する。
【0047】
次に、
図6乃至12に基づいて、前記制御部による各種制御について説明する。
図6は、制御部のブロック図である。
【0048】
前記GNSS制御部60の入力側には、前記受信装置(GNSSアンテナ)41,41と、前記補正信号受信装置42と、前記タブレット端末40とが接続されており、CANと介して前記制御部50側と接続されている(
図6参照)。
【0049】
前記制御部50の入力側には、前記始点(A点)登録スイッチ32と、前記終点(B点)登録スイッチ33と、前記自動操舵スイッチ31と、植付自動モードのON・OFFを操作する植付自動スイッチ35と、前記動作スイッチ(作業準備スイッチ)36と、前記操舵角センサ25(操作位置検出センサ)と、前記走行機体3の車速を検出する車速センサ51と、前記走行機体3の走行距離を検出する回転センサ52と、前記植付作業機6の昇降位置を検出するリフト角ポテンショ(昇降位置検出センサ)53と、前記植付作業機6を昇降作動する前記昇降シリンダ48を操作する作業機操作カム(図示しない)の操作位置を検出することにより前記植付作業機6の昇降状態を検出する作業機操作カムポテンショ54とが接続されている。
【0050】
前記制御部50の出力側には、前記ステアリングモータ21と、オペレータへの報知を行う報知手段56と、前記報知ランプ(報知表示部)と、前記植付クラッチ30と、前記昇降シリンダ48とが接続されている。
【0051】
また、前記制御部50は、後述する猶予時間をカウントするタイマ58と、記憶装置59とを備えている。
【0052】
図7は、作業機操作制御の処理フロー図である。前記制御部50によって作業機操作制御が実行されると、ステップS11に進む。ステップS11では、作業機レバー18の下降操作(又は作業機下降スイッチ17Bの押操作)が検出されたか否かが確認され、前記植付作業機6の下降操作が検出された場合には、ステップS12に進む。
【0053】
ステップS12では、前記作業準備スイッチ36のON・OFF状態を確認し、作業準備スイッチ36のON状態が検出された場合には、ステップS13に進む。ステップS13では、前記作業機操作カムポテンショ54により前記植付作業機6が上昇状態であるか否かを検出し、上昇状態以外であることが検出された場合には、ステップS14に進む。
【0054】
ステップS14では、前記作業機操作カムポテンショ54と植付クラッチ30により前記植付作業機6が下降状態であるか否かを検出し、下降状態以外の状態(具体的には固定状態又は植付状態)が検出された場合には、ステップS15に進む。ステップS15では、前記作業機操作カムポテンショ54により前記植付作業機6が固定状態か否かを検出し、固定状態であることが検出された場合には、ステップS16に進む。
【0055】
ステップS16では、前記植付作業機6を固定状態から下降状態にセットし、その後、リターンする。その一方で、ステップS15において、固定状態でないことが検出された場合、すなわち、前記植付作業機6の植付状態が検出された場合には、そのままリターンする。
【0056】
また、ステップS14において、前記植付作業機の下降状態が検出された場合には、ステップS17に進む。
【0057】
ステップS17では、前記作業機レバー18の下降操作の操作時間Tが予め設定された所定時間T0よりも短いか否かが確認され、操作時間T<T0が検出された場合には、ステップS18に進む。なお、ステップS17において、前記作業機レバー18の下降操作の操作時間Tが所定の操作時間T0以上であることが検出された場合には、その後、リターンする。
【0058】
ステップS18では、前記リフト角ポテンショ53により前記植付作業機6が植付高さ(下端側)に到達して下降作動が停止しているか否かが確認され、前記植付作業機6が植付高さで下降作動が停止していることが検出された場合には、ステップS19に進む。ステップS19では、前記植付作業機6を植付状態にセットし、その後、リターンする。
【0059】
また、ステップS18において、前記植付作業機6が下降作動中であることが検出された場合には、ステップS20に進む。ステップS20では、前記植付作業機6を植付クラッチ入り待ち状態にセットし、その後、リターンする。
【0060】
また、ステップS13において、前記植付作業機6の上昇状態が検出された場合には、ステップS21に進む。ステップS21では、前記植付作業機6を固定状態にセットし、その後、リターンする。
【0061】
また、ステップS12において、前記作業準備スイッチ36のOFF状態が検出された場合には、ステップS22に進む。ステップS22では、前記作業機操作カムポテンショ54により前記植付作業機6が上昇状態であるか否かを検出し、前記植付作業機6の上昇状態が検出された場合には、ステップS21に進み、前記植付作業機6を固定状態にセットし、その後、リターンする。
【0062】
その一方で、ステップS22において、前記植付作業機6の上昇状態以外の状態が検出された場合には、ステップS23に進む。
【0063】
ステップS23では、前記作業機操作カムポテンショ54等により前記植付作業機6が固定状態であるか否かを検出し、前記植付作業機6の固定状態が検出された場合には、ステップS24に進む。ステップS24では、前記植付作業機6をその自重によって下降作動させる自動(下降)状態)にセットし、その後、リターンする。その一方で、ステップS23において、前記植付作業機6が固定状態以外であることが検出された場合には、その後、リターンする。これにより、作業準備スイッチ36がOFFの場合には植付状態への切換が実行されないように構成されている。
【0064】
すなわち、前記制御部50は、前記植付作業機6の下降操作が検出された際に、前記植付作業機6が植付状態であった場合には、植付状態が維持され、前記植付作業機6が任意の高さ位置で固定された固定状態であった場合には、下降状態に切換えられ、前記作業準備スイッチ36が入状態で且つ前記植付作業機6が下降作動中であった場合には、前記植付作業機6が下端側(植付高さ・作業高さ)に到達すると同時に植付状態に切換えられる植付クラッチ入り待ち状態に切換えられ、前記植付作業機6が上昇状態であった場合には、前記植付作業機6の上昇作動を停止させて固定状態に切換えられるように構成されている。
【0065】
なお、前記制御部50は、前記植付作業機6が下降作動中に前記植付作業機6の下降操作が所定時間以上続けてされたことが検出された場合には、前記植付作業機6の昇降位置によらず、植付状態の切換えが規制される。
【0066】
該構成によれば、オペレータが植付状態への切換操作を望まないタイミングで前記植付作業機6の下降作動中に前記作業機レバー18を下降操作(誤操作)した場合であっても、オペレータが前記作業機レバー18の下降操作を所定以上維持することによって、前記植付状態への切換えをキャンセル(規制)することができるため、操作性がより向上する。
【0067】
上記ステップS11において、前記作業機レバー18の下降操作(又は作業機下降スイッチ17Bの押操作)が検出されなかった場合には、ステップS25に進む。ステップS25では、前記作業機レバー18の上昇操作(又は作業機上昇スイッチ17Aの押操作)がされたか否かが確認され、前記植付作業機6の上昇操作が検出された場合には、ステップS26に進む。
【0068】
ステップS26では、前記作業機操作カムポテンショ54と植付クラッチ30により前記植付作業機6が上昇状態であるか否かを検出し、前記植付作業機6が上昇状態以外の状態であることが検出された場合には、ステップS27に進む。なお、ステップS26において、前記植付作業機6の上昇状態が検出された場合には、該上昇状態を維持したまま、その後、リターンする。
【0069】
ステップS27では、前記作業機操作カムポテンショ54と植付クラッチ30により前記植付作業機6が下降状態であるか否かを確認し、前記植付作業機6が下降状態以外の状態(具体的には固定状態又は植付状態)が検出された場合には、ステップS28に進む。
【0070】
ステップS28では、前記作業機操作カムポテンショ54と植付クラッチ30により前記植付作業機6が植付状態であるか否かが確認され、前記植付作業機6の植付状態が検出された場合には、ステップS29に進む。ステップS29では、前記植付作業機6を植付状態から下降(自動)状態に切換え、その後、リターンする。
【0071】
また、ステップS28において、前記植付作業機6の植付状態以外の状態(具体的には固定状態)が検出された場合には、ステップS30に進む。ステップS30では、前記植付作業機6を固定状態から上昇状態に切換え、その後、リターンする。
【0072】
また、ステップS27において、前記植付作業機6の下降状態が検出された場合には、ステップS31に進む。ステップS31では、前記リフト角ポテンショ53により前記植付作業機6が下端(植付高さ)まで到達して下降作動が停止しているか否かが確認され、前記植付作業機6が植付高さで下降作動が停止していることが検出された場合には、ステップS30に進み、前記植付作業機6を上昇状態に切換え、その後、リターンする。
【0073】
その一方で、ステップS31において、前記植付作業機6が下降作動中であることが検出された場合には、ステップS32に進む。ステップS32では、前記植付作業機6を固定状態に切換えて下降作動を停止させ、その後、リターンする。
【0074】
すなわち、前記制御部50は、前記植付作業機6の上昇操作が検出された際、前記植付作業機6が下降状態で且つ下端(植付高さ、作業高さ)で下降作動が停止している場合、若しくは、前記植付作業機6が任意の高さ位置で固定状態になっている場合には、前記植付作業機6が上昇状態に切換えられ、前記植付作業機6が下降作動中となっていた場合には、前記植付作業機6が固定状態に切換えられ、前記植付作業機6が上昇状態であった場合には、前記植付作業機6の上昇状態が維持されるように構成されている。
【0075】
上記ステップS25において、前記植付作業機6の上昇操作が検出されなかった場合には、ステップS33に進む。ステップS33では、前記植付作業機6が植付クラッチ入り待ち状態がセットされているか否かが確認され、植付クラッチ入り待ち状態にセットされていることが検出された場合には、ステップS34に進む。なお、ステップS33において、植付クラッチ入り待ち状態がセットされていなかった場合には、その後、リターンする。
【0076】
ステップS34では、前記リフト角ポテンショ53により前記植付作業機6が下端(植付高さ)に到達して下降作動が停止しているか否かが確認され、前記植付作業機6の下降作動が植付高さで停止していることが検出された場合には、ステップS35に進む。
【0077】
ステップS35では、前記植付作業機6が植付状態に切換えられ、その後、リターンする。なお、ステップS34において、前記植付作業機6が下降作動中であった場合には、その後、リターンする。
【0078】
図8は、旋回時制御の処理フロー図である。前記制御部50によって旋回時制御が実行されると、ステップS41に進む。ステップS41では、前記作業準備スイッチ36のON・OFF状態を確認し、作業準備スイッチ36のON状態が検出された場合には、ステップS42に進む。
【0079】
ステップS42では、前記操舵角センサ25によって予め設定した所定切れ角β以上の操向操作(旋回操作)があったか否かが確認され、所定以上の操向操作(旋回操作)が検出された場合には、ステップS43に進む。
【0080】
ステップS43では、前記植付自動スイッチ35によって、自動上昇モード(前記植付作業機6が制御部によって上昇状態に切換えられた状態)か否かが確認され、前記植付作業機6の上昇状態が検出されなかった場合には、ステップS44に進む。
【0081】
ステップS44では、植付自動モードのON・OFF状態が確認され、植付自動モードのON状態が検出された場合には、ステップS45に進む。なお、ステップS44において、植付自動モードのOFF状態が検出された場合には、その後、リターンする。
【0082】
ステップS45では、旋回走行距離Dt(所定以上の旋回操作が検出されてからの走行距離)のカウントを開始し、前記報知手段56によって旋回時制御による前記植付作業機6の昇降・植付クラッチ30の断続の制御が開始されたことを報知し、植付自動フラグをONにセットし、ステップS46に進む。ステップS46では、前記植付作業機6を自動的に(植付状態から)上昇状態へと切換え(自動上昇モードON)、その後、リターンする。
【0083】
なお、ステップS43において、前記植付作業機6が上昇状態(自動上昇モード)であった場合には、ステップS46に進み、前記植付作業機6の上昇状態が維持されて、その後、リターンする。
【0084】
すなわち、前記制御部50は、前記植付自動スイッチ35により植付自動モードに切換えられた状態で、所定以上のステアリング操作(切れ角β以上の操向操作)が検出された場合には、前記植付作業機6の上昇状態への切換と、前記植付クラッチ30の切断操作とを自動的に制御するため、旋回走行時のオペレータの操作を削減することができる。
【0085】
また、ステップS42において、前記操舵角センサ25により所定切れ角β以上の旋回操作が検出されなかった場合には、ステップS47に進む。ステップS47では、前記植付自動スイッチ35により操作される植付自動モードのON・OFF状態が確認され、植付自動モードのON状態が検出された場合には、ステップS48に進む。なお、ステップS47において、植付自動モードのOFF状態が検出された場合には、その後、リターンする。
【0086】
ステップS48では、前記植付作業機6の昇降操作等を操作する操作具である前記作業機レバー18(昇降スイッチ17A,17B)の操作の有無が確認され、前記操作具の操作が検出されなかった場合には、ステップS49に進む。
【0087】
ステップS49では、前記旋回走行距離Dtが予め定めた所定の旋回距離D2以上(
図5のD2参照)であるか否かが確認され、旋回走行距離Dt<D2であることが検出された場合には、ステップS50に進む。
【0088】
ステップS50では、カウント中の旋回走行距離Dtが予め定めた所定の旋回距離D1以上(
図5のD1参照)であるか否かが確認され、Dt≧D1が検出された場合には、ステップS51に進む。
【0089】
ステップS51では、前記植付作業機6を下降状態に切換え、その後、リターンする。なお、ステップS50において、カウント中の旋回走行距離DtがD1より短かった場合には、その後、リターンする。
【0090】
すなわち、前記制御部50は、旋回時制御の実行中に、旋回走行距離DtがD1以上となったことが検出されると、前記植付作業機6が自動的に下降状態に切換えられるため、オペレータの操作の手間を削減することができる。
【0091】
また、ステップS49において、カウント中の旋回走行距離Dtが所定の旋回走行距離D2以上であることが検出された場合には、ステップS52に進む。ステップS52では、前記操舵角センサ25により前記ステアリングハンドル14による操向操作が予め設定された所定の切れ角α以下であるか否かが確認され、前記ステアリングハンドル14の操向操作が切れ角α以下であること(旋回操作が終了していること)が検出された場合には、ステップS53に進む。なお、ステップS52において、前記ステアリングハンドルの操向操作が切れ角αより大きかった場合には、その後、リターンする。
【0092】
ステップS53では、前記植付作業機6を(下降状態から)植付状態に自動的に切換え、ステップS54に進む。
【0093】
ステップS54では、旋回走行距離Dtのカウントをクリア(停止)し、前記報知手段によって旋回時制御の実行が終了したことをオペレータに報知し、植付自動フラグをOFFにセットし、その後、リターンする。
【0094】
すなわち、前記制御部50は、旋回時制御の実行中に、旋回走行距離DtがD2以上となったことが検出されると、前記植付クラッチ30を制御して前記植付作業機6を自動的に植付状態に切換えることができる。このため、オペレータの操作の手間を削減することができる。
【0095】
なお、ステップS48において、前記作業機レバー18等による作業機操作が検出された場合には、ステップS48から直接ステップS54に進む。
【0096】
該構成によれば、上述の旋回時制御の実行中に前記作業機レバー18等の操作が検出された場合には、旋回時制御による前記植付作業機6の自動的な昇降作動や、前記植付クラッチの自動的な接続操作をキャンセルすることができる。
【0097】
次に、
図9乃至12に基づき、自動直進制御の処理フローについて説明する。
図9は、自動直進制御のメインフローを示した図である。自動直進制御のメインフローが開始されると、ステップS61に進む。
【0098】
ステップS61では、前記植付自動スイッチ35により植付自動モードに切換えられているか否かが確認され、植付自動モードへの切換えが検出されなかった場合には、ステップS62に進む。
【0099】
ステップS62では、後述する自動直進開始制御1のサブルーチンを実行し、ステップS63に進む。ステップS63では、後述する自動直進猶予制御を実行し、その後、リターンする。ここで、自動直進開始制御1は、圃場端での旋回走行時に、上述の旋回時制御を用いなかった場合の処理フローである。詳しくは後述する。
【0100】
また、ステップS61において、植付自動モードに切換えられたことが検出された場合には、ステップS64に進む。
【0101】
ステップS64では、後述する自動直進開始制御2のサブルーチンを実行し、ステップS63に進む。ステップS63では、後述する自動直進猶予制御を実行し、その後、リターンする。ここで、自動直進開始制御2は、圃場端での旋回走行時に、上述の旋回時制御を用いた場合の処理フローである。詳しくは後述する。
【0102】
図10は、自動直進開始制御1のサブルーチンを示した処理フロー図である。自動直進開始制御1のサブルーチンが実行されると、ステップS71に進む。ステップS71では、前記作業準備スイッチ36により前記操舵ユニット20の電源がON・OFFを確認し、前記操舵ユニット20の電源ON状態が検出された場合には、ステップS72に進む。
【0103】
ステップS72では、前記自動操舵スイッチ31により直進自動モードに切換えられているか否かが確認され、直進自動モードに切換えられていることが検出された場合には、ステップS73に進む。
【0104】
ステップS73では、前記操舵角センサ25により所定切れ角β以上のステアリング操作がされたか否かが確認され、所定切れ角β以上のステアリング操作が検出されなかった場合には、ステップS74に進む。
【0105】
ステップS74では、前記回転センサ52により、旋回走行距離Dtが所定の旋回走行距離D2以上であるか否かが確認され、旋回走行距離についてDt≧D2が検出された場合には、ステップS75に進む。ステップS75では、前記植付作業機6が植付状態に切換えられているか否かが確認され、前記植付作業機6が植付状態であることが検出された場合には、ステップS76に進む。なお、ステップS75において、前記植付作業機6が植付状態であることが検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0106】
ステップS76では、前記操舵角センサ25により前記走行機体3が直進走行している直進状態であるか否かが確認され、前記走行機体3が直進状態であることが検出された場合には、ステップS77に進む。
【0107】
ステップS77では、前記GNSSユニット12を介して取得された位置情報から前記ティーチング制御等で設定した基準線L0と平行な線である目標ライン(目標線)L1を設定し、後述する自動直進猶予制御で用いられる自動直進開始フラグをON(セット)し、自動操舵が開始されるまでの猶予時間となるカウントダウンTを開始し、走行距離Dtのカウントをクリアし、その後、リターンする。
【0108】
また、ステップS73において、所定切れ角β以上のステアリング操作が検出された場合には、ステップS78に進む。ステップS78では、前記ティーチング制御によって設定される前記基準線L0が設定されているか否かが確認され、基準線L0が設定されていることが検出された場合には、ステップS79に進む。
【0109】
ステップS79では、目標ラインL1をリセットし、走行距離Dtのカウントを開始し、その後、リターンする。なお、ステップS78において、基準線L0が設定されていなかった場合には、その後、リターンする。
【0110】
すなわち、前記制御部50は、圃場端側での所定以上のステアリング操作(切れ角β以上)が検出された場合には、目標ラインL1をリセットし、旋回走行が終了(Dt≧D2)するとともに、前記植付作業機6が植付状態に切換えられたことが検出された場合には、自動直進制御の実行を開始するためのフラグを立てるように構成されている。
【0111】
言い換えると、前記自動直進開始制御1によれば、上述の旋回時制御を用いずに前記作業機レバー18等を用いて場合であっても、圃場端側での旋回走行と、旋回終了後の前記植付作業機6の植付状態への切換えが検出されると、自動直進制御を開始する(フラグを立てる)ことができる。
【0112】
また、ステップS74において、旋回走行距離Dtが旋回距離D2よりも短かった場合には、ステップS80に進む。ステップS80では、目標ラインL1の設定があるか否かが確認され、目標ラインL1の設定がある場合には、ステップS81に進む。なお、ステップS80において、目標ラインL1の設定がなかった場合には、その後、リターンする。
【0113】
ステップS81では、前記植付作業機6が植付状態から下降状態に切換えられたか否かが確認され、前記植付作業機6の下降状態への切換えが検出された場合には、ステップS82に進む。ステップS82では、自動直進開始フラグをOFFにセットし、その後、リターンする。
【0114】
また、ステップS81において、前記植付作業機6の植付状態から下降状態への切換えが検出されなかった場合には、ステップS83に進む。ステップS83では、前記植付作業機6が下降状態から植付状態に切換えられたか否かが確認され、前記植付作業機6の植付状態への切換えが検出された場合には、ステップS84に進む。なお、ステップS83において、前記植付作業機6の植付状態への切換えが検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0115】
ステップS84では、自動直進開始フラグをON(セット)し、後述する自動直進猶予制御で用いられる自動直進開始フラグをON(セット)し、設定可能なカウントダウンTを開始し、その後、リターンする。
【0116】
すなわち、前記制御部50は、例えば、設定された目標ラインL1上を植付走行している際に、一旦植付作業を停止するために前記植付クラッチ30を切断して前記植付作業機6を下降状態に切換えた場合であっても、目標ラインL1の設定が残っている限り、前記作業機レバー18等を用いて前記植付作業機6を下降状態から植付状態に切換えることによって、自動直進開始フラグをセットして、自動直進制御の実行を再開することができる。
【0117】
また、ステップS72において、直進自動モードへの切換えが検出されなかった場合と、ステップS71において、前記作業準備スイッチ36により前記操舵ユニット20の電源ONが検出されなかった場合には、ステップS85に進む。ステップS85では、基準線L0の設定がリセットされ、その後、リターンする。
【0118】
図11は、自動直進開始制御2のサブルーチンを示した処理フロー図である。自動直進開始制御1のサブルーチンと異なる点についてのみ説明する。前記自動直進開始制御2は、植付自動モードに切換えられている点、言い換えると、圃場端での旋回走行時に前記植付作業機6の昇降作動と植付クラッチ30の断続を制御する前記旋回時制御が実行されている点が前記自動直進開始制御1と異なる。
【0119】
これに伴い、旋回時制御によって旋回走行距離Dtのカウントが行われるため、ステップS78では、旋回走行距離Dtのカウント開始は実行されず、ステップS77及びステップS84では旋回走行距離Dtのカウントクリアも実行されない(
図10及び
図11参照)。
【0120】
また、ステップS74では、旋回走行距離DtとD2の比較に代わり、前記旋回時制御で所定の切れ角β以上の旋回操作が検出された場合にセットされる植付自動フラグ(
図8のステップS45参照)の有無が確認される。
【0121】
図12は、自動直進猶予制御のサブルーチンを示した処理フロー図である。前記自動直進猶予制御のサブルーチンが実行されると、ステップS91に進む。ステップS91では、自動直進開始フラグがON(セット)されているか否かが確認され、自動直進開始フラグが検出された場合には、ステップS92に進む。なお、ステップS91において、自動直進開始フラグが検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0122】
ステップS92では、前記タイマー58により予め設定されたカウントダウンTが0になったか否かが確認され、カウントダウンT→0が検出された場合には、ステップS93に進む。ステップS93では、前記走行機体3が目標ラインL1に沿って直進走行するように、前記操舵ユニット20を介してステアリング操作を制御する自動直進制御の実行を開始し、自動直進開始フラグをOFFにし、その後、リターンする。
【0123】
また、ステップS92において、前記タイマー58によりカウントダウンTが0になっていないことが検出された場合には、ステップS94に進む。ステップS94では、自動直進制御をカウントダウン中(猶予時間内)にキャンセルする自動直進キャンセル操作がされたか否かが確認され、自動直進キャンセル操作が検出されなかった場合には、ステップS95に進む。
【0124】
ステップS95では、前記報知手段56を用いて、カウントダウンTの残り時間をオペレータに報知し、その後、リターンする。報知手段56による報知方法は、音声によってカウントダウンが0になるまでの時間を報知しても良いし、警告音の間隔を徐々に狭める等することでオペレータにカウントダウンT終了までの時間を報知しても良いし、前記タブレット端末40等を介して画面表示する方法であっても良い。なお、報知方法はこれらには限られない。
【0125】
また、ステップS94において、自動直進キャンセル操作が検出された場合には、ステップS96に進む。ステップS96では、自動直進開始フラグをOFFにセットし、その後、リターンする。ここで、前記報知手段56によって、自動直進制御がキャンセルされた旨をオペレータに報知しても良い。
【0126】
すなわち、前記制御部50は、前記自動直進開始制御1,2で、旋回走行の終了と、前記植付作業機6の植付状態への切換えが完了し、自動直進開始フラグがセットされた場合であっても、予め設定されたカウントダウンTのカウントが終了しない限りは、前記操舵ユニット20を介したステアリング制御(自動直進制御の実行)が開始されないように構成されている。
【0127】
言い換えると、前記制御部50は、旋回走行終了後に、前記植付作業機6の植付状態への切換えが実行されると(自動直進開始フラグがONになると)、所定の猶予時間経過後(カウントダウンT完了後)に、前記走行機体3が直進走行するように前記操舵ユニット20を介したステアリング制御が自動的に実行されるように構成されている。このため、オペレータは自動直進制御の実行開始を落ち着いた状態で迎えることができる。
【0128】
該構成によれば、旋回走行が終了した直後に、前記植付作業機6の植付状態への切換えと、前記操舵ユニット20を介したステアリング制御とが同時に実行されることによって、操作中のオペレータが焦ってしまったり、心理的余裕がなくなったりすることでその後の誤操作につながる事態を防止することができる。
【0129】
また、前記制御部50は、前記自動直進開始フラグがセットされた後であっても、カウントダウンTのカウント中(猶予時間中)に、前記自動直進キャンセル操作が実行された場合には、自動直進制御の実行を中止(キャンセル)することができる。該構成によれば、例えば、オペレータの誤操作によって前記植付作業機6が植付状態に切換えられた場合であっても、その後に自動的にステアリング操作が制御されることを中止し、手動でのステアリング操作を継続できるため、誤操作への対応性も向上する。
【0130】
ちなみに、上述の自動直進キャンセル操作は、自動直進キャンセル操作を実行するために専用の操作具を設けても良いし、既存の操作具を所定の操作することで自動直進キャンセル操作と設定する構成としても良い。具体的には、例えば、前記作業機レバー18を所定時間以上下方揺動操作することを、自動直進キャンセル操作と設定しても良いが、操作方法はこれに限られない。
【0131】
また、上述の自動直進制御は、自動直進開始制御1と、自動直進開始制御2の何れで自動直進開始フラグがセットされた場合であっても、自動直進猶予制御のサブルーチンが実行されるように構成されている。このため、圃場端で隣接する植付条列に向けて旋回走行する際に、オペレータが前記作業機レバー18等を操作して植付再開位置から前記植付作業機6を植付状態に切換えたパターン(自動直進開始制御1)でも、旋回時制御を用いて前記植付作業機6の昇降作動と植付クラッチ30の断続を制御した場合でも、前記植付作業機6を植付状態に切換えてから自動直進制御を実行するまでの間に猶予時間を設けることができる。
【0132】
なお、前記自動直進猶予制御は、植付作業を開始(再開)する位置で前記植付作業機6を植付状態に切換えられた場合には、どのような操作や制御であっても良く、上述の自動直進開始制御1,2のパターンには限られない。
【符号の説明】
【0133】
3 走行機体
6 植付作業機
12 GNSSユニット(位置情報取得ユニット)
14 ステアリングハンドル
20 操舵ユニット
30 植付クラッチ
40 タブレット端末、情報端末(報知手段)
48 昇降シリンダ
50 制御部
56 報知手段