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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185208
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ノイズ関連情報記憶装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20221207BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20221207BHJP
   F24F 11/58 20180101ALI20221207BHJP
   H04L 13/00 20060101ALI20221207BHJP
   H04B 3/54 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H04L12/28 200M
F24F11/52
F24F11/58
H04L13/00 313
H04B3/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092724
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮介
(72)【発明者】
【氏名】小山 陽平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽太
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和陽
(72)【発明者】
【氏名】粉川 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】東山 伸
(72)【発明者】
【氏名】堀田 浩介
【テーマコード(参考)】
3L260
5K033
5K035
5K046
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA56
3L260BA64
3L260BA66
3L260CB85
3L260DA15
3L260EA07
3L260FC33
3L260GA17
3L260JA17
5K033AA05
5K033CA08
5K033DA13
5K033DB23
5K033EA02
5K033EA06
5K033EA07
5K035AA03
5K035CC08
5K035DD01
5K035EE25
5K035JJ01
5K035KK01
5K046AA03
5K046PS29
5K046PS51
(57)【要約】
【課題】本開示が解決しようとする課題は、ノイズ源が通信に与える影響度合いを把握して、ノイズ解消を図る手段を構築することである。
【解決手段】ノイズ情報管理装置230では、特定の機器の運転中に機器間の通信がノイズによって障害を受けることがあっても、この事象がノイズ関連情報としてメモリ230bに記憶されることによって、ノイズ要因の解消の手掛かりとすることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機を構成する第1機器、第2機器および第3機器が通信線によって接続された通信ネットワークのノイズに関する情報を記憶する記憶部(230b)と、
前記第1機器または前記第1機器の部品が動作しているときの前記第1機器、前記第2機器および前記第3機器の間の通信のノイズに関する情報を第1情報として取得し、前記第1情報を前記記憶部に記憶させる制御部(230a)と、
を備える、
ノイズ関連情報記憶装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1機器または前記第1機器の部品が動作していないときの前記第1機器、前記第2機器および前記第3機器の間の通信のノイズに関する情報を第2情報として取得し、前記第1情報と前記第2情報とを比較して、比較結果を前記記憶部に記憶させる、
請求項1に記載のノイズ関連情報記憶装置。
【請求項3】
前記第1情報、前記第2情報または前記第1情報と前記第2情報との比較結果を表示する表示部をさらに備える、
請求項2に記載のノイズ関連情報記憶装置。
【請求項4】
通信はマルチチャネルで行われ、
前記第1情報は、実際に通信しているチャネル数である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のノイズ関連情報記憶装置。
【請求項5】
前記第1情報は、通信のノイズ比である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のノイズ関連情報記憶装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ノイズ比が0を下回ったとき、ノイズによる通信障害が生じていると判断する、
請求項5に記載のノイズ関連情報記憶装置。
【請求項7】
前記第1情報は、通信のPhyレートである、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のノイズ関連情報記憶装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記Phyレートが60Mbpsを下回ったとき、ノイズによる通信障害が生じていると判断する、
請求項7に記載のノイズ関連情報記憶装置。
【請求項9】
前記ノイズ関連情報記憶装置が、前記第1機器に配置され、前記第1機器の部品の動作が前記第1機器、前記第2機器および前記第3機器の間の通信に与えるノイズに関する情報を記憶する、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のノイズ関連情報記憶装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のノイズ関連情報記憶装置を備えた通信ネットワークシステムであって、
通信ネットワークが、電力線通信によって実現されている、
通信ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
機器間の高周波通信に利用される、ノイズ関連情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機を構成する機器間の高周波通信において、通信線に圧縮機などの配線が並走すると、圧縮機運転時のノイズにより複数ある通信チャネルのうちのいくつかが通信し難くなることがある。また、機器間の通信配線は現地工事により配線されるので、ノイズ源と並走するように配線されることがあり、現地工事の品質に左右されやすい(例えば、特許文献1(特開2016-219983号公報)を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それゆえ、ノイズ源が通信に与える影響度合いを把握して、ノイズ解消を図る手段を構築するという課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点のノイズ関連情報記憶装置は、記憶部と、制御部とを備えている。記憶部は、空調機を構成する第1機器、第2機器および第3機器が通信線によって接続された通信ネットワークのノイズに関する情報を記憶する。制御部は、第1機器または第1機器の部品が動作しているときの第1機器、第2機器および第3機器の間の通信のノイズに関する情報を第1情報として取得し、第1情報を記憶部に記憶させる。
【0005】
このノイズ関連情報記憶装置では、特定機器の運転中に機器間の通信がノイズによって障害を受けることがあっても、この事象がノイズ関連情報として記憶部に記憶されることによって、ノイズ要因の解消の手掛かりとすることができる。
【0006】
第2観点のノイズ関連情報記憶装置は、第1観点のノイズ関連情報記憶装置であって、制御部が、第1機器または第1機器の部品が動作していないときの第1機器、第2機器および第3機器の間の通信のノイズに関する情報を第2情報として取得する。さらに、制御部は、第1情報と第2情報とを比較して、比較結果を記憶部に記憶させる。
【0007】
このノイズ関連情報記憶装置では、制御部が特定の機器が運転しているときと運転していないときの機器間の通信状態を比較することによって、ノイズ源を特定し、当該ノイズの影響度合いを把握することができる。
【0008】
第3観点のノイズ関連情報記憶装置は、第2観点のノイズ関連情報記憶装置であって、第1情報、第2情報または第1情報と第2情報との比較結果を表示する表示部をさらに備えている。
【0009】
このノイズ関連情報記憶装置では、表示部によってノイズ源の影響度合いを可視化することができるので、空調機の据え付け施工時およびサービス対応時にノイズの影響度合いを表示し、ノイズの解消に利用することができる。
【0010】
第4観点のノイズ関連情報記憶装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つのノイズ関連情報記憶装置であって、通信がマルチチャネルで行われる。そして、第1情報は実際に通信しているチャネル数である。
【0011】
このノイズ関連情報記憶装置では、ノイズによって通信のチャネル数が減少している場合に、実際に通信しているチャネル数が確認されることによって、ノイズ源の影響度合いを把握することができる。
【0012】
第5観点のノイズ関連情報記憶装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つのノイズ関連情報記憶装置であって、第1情報が通信のノイズ比である、
このノイズ関連情報記憶装置では、ノイズ比が確認されることによって、ノイズ源の影響度合いを把握することができる。
【0013】
第6観点のノイズ関連情報記憶装置は、第5観点のノイズ関連情報記憶装置であって、制御部が、ノイズ比が0を下回ったときにノイズによる通信障害が生じていると判断する。
【0014】
第7観点のノイズ関連情報記憶装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つのノイズ関連情報記憶装置であって、第1情報が通信のPhyレートである。
【0015】
このノイズ関連情報記憶装置では、Phyレートが確認されることによって、ノイズ源の影響度合いを把握することができる。
【0016】
第8観点のノイズ関連情報記憶装置は、第7観点のノイズ関連情報記憶装置であって、制御部が、Phyレートが60Mbpsを下回ったときにノイズによる通信障害が生じていると判断する。
【0017】
第9観点のノイズ関連情報記憶装置は、第1観点から第8観点のいずれか1つのノイズ関連情報記憶装置であって、ノイズ関連情報記憶装置が、第1機器に配置され、第1機器の部品の動作が第1機器、第2機器および第3機器の間の通信に与えるノイズに関する情報を記憶する。
【0018】
第10観点の通信ネットワークシステムは、第1観点から第9観点のいずれか1つのノイズ関連情報記憶装置を備えた通信ネットワークシステムである。通信ネットワークは、電力線通信によって実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】空調システムの構成図である。
図2図1に記載された系統K2で表現される空調機の外観斜視図である。
図3図1に記載されている系統K2の回路ブロック図である。
図4】室外機と室内機との間の通信における、周波数とノイズ比との関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1)空調システムの概要
図1は、空調システムの構成図である。図1において、空調システムは、集中コントローラおよび室外機、または室外機および室内機で構成され、配線で物理的に接続された単位を系統と呼ぶ。
【0021】
系統K1では、複数の系統K2、K3、K4に跨って制御するために、系統K2、K3、K4が系統間接続配線にて接続され、当該系統間接続配線に集中コントローラ101が接続されている。具体的には、集中コントローラ101と室外機201、301、401とが配線111、112、113によって接続されて、第1ネットワーク10が構成されている。
【0022】
系統K2では、機器としての室外機201、202、203、室内機204、205、206が、配線211、212、213、214、215によって接続されて、第2ネットワーク20が構成されている。
【0023】
系統K3では、機器としての室外機301、302、室内機303、304、305が、配線311、312、313、314によって接続されて、第3ネットワーク30が構成されている。
【0024】
系統K4では、機器としての室外機401、室内機402、403、404が、配線411、412、413によって接続されて、第4ネットワーク40が構成されている。
【0025】
機器間の通信は、例えば、電力線通信による通信である。通信は、周波数が100kHz以上の高周波で行われる。また、電源投入後に集中コントローラ、室外機および室内機が、自己が系統K1、K2、K3、K4のいずれの系統に属するのかを認識する系統認識は、10kHz以下の低周波の検知信号が用いられる。
【0026】
(2)空調機200
上記(1)で記載した系統K1、K2、K3、K4は、配線で物理的に接続された単位であるが、系統K2、K3、K4は冷媒配管で接続された単位である冷媒系統と一致する。
【0027】
図2は、図1に記載された系統K2(冷媒系統)で表現される空調機200の外観斜視図である。図2おいて、空調機200は、マルチタイプの空調機であり、3台の室外機201、202、203と、それに接続される3台の室内機204、205、206とで構成されている。
【0028】
(2-1)室外機201、202、203
室外機201、202、203は、建物の屋上や地下に設置される熱源機であり、室内機204、205、206とともに運転制御されて室内空間の空気調和を行なうものである。
【0029】
室外機201、202、203は、制御装置261、262、263を搭載している。制御装置261、262、263は、圧縮機251、252、253など室外機201、202、203の動作に必要な機器を制御する。
【0030】
(2-2)室内機204、205、206
室内機204、205、206は、施設内の各部屋の天井に設置され、室内空間に向かって空気吸込口や空調空気吹出口が露出し、室内空間の空気調和を行なう。室内機204、205、206は制御装置264、265、266を搭載している。
【0031】
(3)通信ネットワークの構成
以下、図1に記載されている系統K2を例にして、通信ネットワークの構成と動作について説明する。
【0032】
図3は、図1に記載されている系統K2の回路ブロック図である。図2および図3において、室外機201、202、203の制御装置261、262、263(図2参照)は、通信制御回路221、222、223を含んでいる。また、室内機204、205、206の制御装置264、265、266(図2参照)は、通信制御回路224、225、226を含んでいる。
【0033】
通信制御回路221、222、223には制御用マイコン(以下、MCU231a、232a、233aという。)、メモリ231b、232b、233b、通信回路PHY、低周波信号送信回路PS、2つの低周波信号受信回路PD、および低周波信号の伝搬を阻害し高周波信号を透過する高周波透過フィルタHPFが設けられている。
【0034】
通信制御回路224、225、226にはMCU234a、235a、236a、メモリ234b、235b、236b、通信回路PHY、および低周波信号受信回路PDが設けられている。
【0035】
室外機201、202、203と室内機204、205、206とは、配線で物理的に接続されており、電源が投入されると、通信制御回路221、222、223、224、225、226が高周波通信により通信ネットワークを確立する。
【0036】
しかし、通信ネットワークが確立されても、室外機201、202、203と室内機204、205、206とは、自己がどの系統に属しているのか認識していないので、系統認識を開始する。
【0037】
同一系統の室外機・室内機の認識を行うため、「認識役候補」である全ての室外機201、202、203のMCU231a、232a、233aは、ランダムな待ち時間が経過した後に、低周波信号送信回路PSを介して送信元の情報を含む低周波の検知信号を送信する。
【0038】
同一系統内では、最も早く検知信号を送信した室外機が「認識役」となり、当該検知信号を受信した他の室外機は「被認識役」となる。
【0039】
MCU231a、232a、233aは、信号衝突の発生の有無を判断する。室外機のMCUは、検知信号の送信が完了する前に、他の室外機からの検知信号を検知した場合、信号衝突が発生したと判定する。
【0040】
複数の室外機それぞれは、ランダムな待ち時間の経過後に検知信号を送信するが、待ち時間がランダムであるため、稀に複数の室外機からの検知信号の送信タイミングが一致することもある。それゆえ、信号衝突の発生の有無を判断する必要がある。室外機は、信号衝突の発生を検知したときは、リトライ要求を通知し、最初からやり直す。
【0041】
室外機201、202、203の低周波信号送信回路PSから出力された検知信号は、室内機204、205、206の低周波信号受信回路PDにのみ入力されるが、他の系統に流出しないように、高周波透過フィルタHPFによって阻止される。また、検知信号の他の系統への流出は高周波透過フィルタHPFによって阻止されるが、通信は阻害されないので、全ての機器間で通信することができる。
【0042】
(系統認識の概要)
以下、図3において、室外機202、203がランダムな待ち時間の間に室外機201から送信された検知信号を受信し、室外機201が「認識役」となり、室外機202、203は検知信号を送信せず、「被認識役」に遷移したという前提で説明する。
【0043】
検知信号を受信した「被認識役」である室外機202、203、室内機204、205、206のMCU232a、233a、234a、235a、236aは、当該検知信号の送信元情報から当該検知信号がどの室外機から送信されたものであるかを判別する。MCU232a、233a、234a、235a、236aは、室外機201のMCU231aに通信にて応答を返し、室外機201のグループである系統K2に参加する。
【0044】
そして、室外機201のMCU231aは、応答があった室外機202、203、室内機204、205、206を同一の系統K2に所属する機器であると認識して、その情報を記憶する。
【0045】
具体的には、室外機201は、室外機202、203、室内機204、205、206のIDまたは通信アドレスを同一系統リストに追加する。そして、室外機201のMCU231aは、系統認識が完了したことをネットワーク全体に通知する。
【0046】
図1に記載の他の系統K1、K3、K4においても、系統K2と同様の系統認識を行う。
【0047】
(4)ノイズ対策
空調機200は、機器(室外機201、202、203、室内機204、205、106)の間の通信を電力線通信で行っている。電力線通信は、高周波を広域にわたって使用する。
【0048】
図2において、配線211、212、213、214、215に、圧縮機251、252、253の配線が並走すると、圧縮機251、252、253の動作中に、複数の通信チャネルのうちの幾つかのチャネルがノイズによって通信し難くなることが、出願人の実験により判明している。
【0049】
(ノイズ情報管理装置230)
機器間の通信配線は現地工事により配線されるため、ノイズ源との並走配線を行ってしまうなど現地工事の質により通信品質自体が左右される可能性がある。そこで、本実施形態では、ノイズ源による通信に与える影響度合いを記憶し、比較し、さらにその比較結果を記憶している。
【0050】
以下、図2および図3を参照しながら、空調機のノイズ対策について説明する。室外機201、202、203のMCU231a、232a、233aと、それらに対応するメモリ231b、232b、233bとが一組となってノイズ情報記憶部231、232、233を構成している。
【0051】
同様に、室内機204、205、206のMCU234a、235a、236aと、それたに対応するメモリ234b、235b、236bとが一組となってノイズ情報記憶部234、235、236を構成している。
【0052】
説明の便宜上、集中コントローラ101と、ノイズ情報記憶部231、232、233、234、235、236とをノイズ情報管理装置230と呼ぶ。
【0053】
また、室外機201、202、203のMCU231a、232a、233aおよび室内機204、205、206のMCU234a、235a、236aを総称してMCU230aと呼ぶ。
【0054】
また、室外機201、202、203のメモリ231b、232b、233bおよび室内機204、205、206のメモリ234b、235b、236bを総称してメモリ230bと呼ぶ。
【0055】
本実施形態における通信は、電力線通信を利用した、マルチチャネルの通信である。ここでは、前提条件として、室外機201が冷媒制御の親機となり、室内機204~206との通信は室外機201が取りまとめて行うものとする。空調機200の室外機と室内機との通信において、チャネル毎に通信できているか否かの情報をメモリ230bが記憶する。
【0056】
したがって、MCU230aは、ノイズにより使用することができないチャネルがあるときは、そのチャネルを避けて通信を行う。
【0057】
本実施形態では、「ノイズにより使用することができない」状態の指標として、通信することができるデータ量を意味するPhyレート(単位:Mbps)を用いている。本実施形態の電力線通信では、Phyレートは理論上260Mbpsであるが、通常は120Mbpsで通信している。MCU230aは、Phyレートが60Mbpsを下回ると、送信すべきデータ量を送信することが困難になるので、「ノイズにより使用することができない」と判断する。
【0058】
MCU230aは、Phyレートを随時または定期的にメモリ230bに記憶させている。そのため、MCU230aは、3台の室外機201、202、203の全ての室外機が稼働しているとき、2台の室外機が稼働しているとき、および1台の室外機が稼働しているときのPhyレートを比較することができる。
【0059】
例えば、空調機200において、室外機201、202の2台が稼働しているとき、室内機204、205、206が、室外機201、202に対して「能力アップ」を要求し、その結果、室外機203が稼働し始めたとする。ここで、室外機の稼働とは、圧縮機253の運転、またはファンモータ(図示せず)の回転を伴う動作のことをいう。
【0060】
このとき、室外機201と室内機204、205、206との通信において、幾つかのチャネルのPhyレートが60Mbpsを下回った場合、室外機201と室内機204、205、206のMCU231a、234a、235a、236aは、当該チャネルの使用を避ける。
【0061】
一方、室外機203が稼働しているときであっても、室外機201と、室外機202、203との間ではPhyレートが60Mbpsを下回っていない場合には、たとえ室外機201と室内機204、205、206との間で使用されないチャネルであっても、室外機201と、室外機202、203との間では当該チャネルの使用は可能である。
【0062】
また、図1に示すように、空調システムの通信ネットワークでは、集中コントローラ101、全ての室外機、および全ての室内機との間で通信が可能である。
【0063】
集中コントローラ101は、ノイズ情報記憶部231、232、233、234、235、236に記憶されているノイズ関連情報(チャネル数およびPhyレート)を取得することができる。集中コントローラ101は、取得したノイズ関連情報をモニタ101aに表示することもできる。
【0064】
サービスパーソンは、集中コントローラ101のモニタ101aを介して、室外機203が稼働しているときの、室外機201と室内機204、205、206との間の通信に使用されているチャネル数が減っていること、幾つかのチャネルのPhyレートが60Mbpsを下回っていることを確認することができる。
【0065】
サービスパーソンは、現地に赴き、ノイズ要因として、室外機203の圧縮機253のハーネスまたはファンモータのハーネスが室外機201と室内機204、205、206とを接続する配線と並走していないか否か、或いは、決められた配線距離が保たれているか否を確認し、ノイズ要因の解消を図る。
【0066】
ノイズによる通信不良は、発生したタイミングで確認しなければ、ノイズ発生要因を特定できないが、ノイズ情報管理装置230によって、通信不良の発生前、発生後の機器間の通信におけるノイズ情報を記憶し、比較して、表示することは、ノイズ要因除去に資する。
【0067】
(5)特徴
(5-1)
ノイズ情報管理装置230では、特定の機器の運転中に機器間の通信がノイズによって障害を受けることがあっても、この事象がノイズ関連情報としてメモリ230bに記憶されることによって、ノイズ要因の解消の手掛かりとすることができる。
【0068】
(5-2)
ノイズ情報管理装置230では、MCU230aが特定の機器が運転しているときと運転していないときの機器間の通信状態を比較することによって、ノイズ源を特定し、当該ノイズの影響度合いを把握することができる。
【0069】
(5-3)
ノイズ情報管理装置230では、集中コントローラ101のモニタ101aによってノイズ源の影響度合いを可視化することができるので、空調機200の据え付け施工時およびサービス対応時にノイズの影響度合いを表示し、ノイズの解消に利用することができる。
【0070】
(5-4)
ノイズ情報管理装置230では、ノイズによって通信のチャネル数が減少している場合に、実際に通信しているチャネル数が確認されることによって、ノイズ源の影響度合いを把握することができる。
【0071】
(5-5)
ノイズ情報管理装置230では、MCU230aは、Phyレートが所定値(例えば、60Mbps)を下回ったときにノイズによる通信障害が生じていると判断する。
【0072】
(5-6)
ノイズ情報管理装置230では、構成要素であるノイズ情報記憶部231、232、233、234、235、236が、対応する室外機201、202、203、室内機204、205、206に配置されている。例えば、室外機203のノイズ情報記憶部233は、室外機203の圧縮機253の動作が室外機201、202、室内機24、205、206の間の通信に与えるノイズに関する情報を記憶する。
【0073】
(5-7)
通信ネットワークは、電力線通信によって実現されている。
【0074】
(6)変形例
上記実施形態のノイズ情報管理装置230では、チャネル数またはPhyレートをノイズ関連情報としているが、それに限定されるものではない。例えば、MCU230aは、ノイズ比が0を下回ったときにノイズによる通信障害が生じていると判断してもよい。
【0075】
図4は、室外機201と室内機204との間の通信における、周波数とノイズ比との関係を表したグラフである。図4において、横軸が周波数であり、縦軸がノイズ比である。図4に示すように、周波数10MHzにおいてノイズ比が0以下に落ちている。ノイズ比は、dB表示されるので、通信波形に対してノイズが大きい場合にマイナス側に振れる。
【0076】
ここで、説明の便宜上、図4のような「周波数とノイズ比との関係」を表した波形を「ノイズ波形」と定義する。
【0077】
前提として、室内機204のノイズ情報記憶部234は、室外機201から室内機204に送信されてきた信号のノイズ波形について、室外機203が稼働しているときのノイズ波形では図4のように周波数10MHzにおいてノイズ比が0以下に落ちており、室外機203が稼働していないときのノイズ波形では周波数10MHzにおいてノイズ比が0以下に落ちていなかった、ことを記憶している。
【0078】
ノイズ情報記憶部234のMCU234aは、室外機203が稼働しているときに周波数10MHzで通信障害があることを把握し、室外機201のノイズ情報記憶部231のMCU231aとの間で、室外機203が稼働しているときは、お互いに周波数10MHzの使用を避けることを決定する。
【0079】
集中コントローラ101は、ノイズ情報記憶部234のメモリ234bに記憶しているノイズ波形、および当該ノイズ波形が生じたときに室外機203が稼働していたという状況をノイズ関連情報として、モニタ101aに表示する。
【0080】
サービスパーソンは、モニタ101aに表示されたノイズ波形から、室外機203の稼働がノイズ要因と推定し、現地に赴き、室外機203の圧縮機253のハーネスまたはファンモータのハーネスが室外機201と室内機204、205、206とを接続する配線と並走していないか否か、或いは、決められた配線距離が保たれているか否を確認し、ノイズ要因の解消を図る。
【0081】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0082】
101 集中コントローラ(ノイズ関連情報記憶装置)
101a モニタ(表示部)
230 ノイズ情報管理装置(ノイズ関連情報記憶装置)
231、232、233 ノイズ情報記憶部(ノイズ関連情報記憶装置)
234、235、236 ノイズ情報記憶部(ノイズ関連情報記憶装置)
230a MCU(制御部)
231a、232a、233a MCU(制御部)
234a、235a、236a MCU(制御部)
230b メモリ(記憶部)
231b、232b、233b メモリ(記憶部)
234b、235b、236b メモリ(記憶部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開2016-219983号公報
図1
図2
図3
図4