(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185220
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20221207BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
E04B2/56 645B
E04B2/56 605Z
E04B1/76 200Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092743
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓樹
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001DD03
2E001DD04
2E001FA04
2E002FB11
2E002FB22
2E002MA33
(57)【要約】
【課題】より快適性の向上を図ることができる建築物を提供する。
【解決手段】建築物1は、所定高さ及び所定幅を有する規格サイズで構成されたパネル部材Pを平面方向に複数枚連結して壁部10を構成したものであって、壁部10の少なくとも1つの面は、その幅が所定幅のN倍(Nは2以上の整数)である場合において、幅方向に(N-α(αは0以上の整数であってNより小さい数))枚だけ並んで配置されたパネル部材Pと、α枚分の面積に応じた窓部Wとで構成され、壁部10の少なくとも1つの面は、その幅が所定幅のM倍(Mは2以上の整数)に対して余りがある場合において、幅方向に(M-β(βは0以上の整数であってMより小さい数))枚だけ並んで配置されたパネル部材Pと、β枚分+余りの面積に応じた窓部Wとで構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定高さ及び所定幅を有する規格サイズで構成され、内部に真空層を有した真空断熱パネル、一面側から他面側への熱貫流を許容し他面側から一面側への熱貫流を抑制するヒートパイプパネル、及び、吸着式若しくは吸着式による冷凍機能を発揮する冷凍機パネルの少なくとも1種であるパネル部材を、平面方向に複数枚連結して壁部を構成した建築物であって、
前記壁部の少なくとも1つの面は、その幅が所定幅のN倍(Nは2以上の整数)である場合において、幅方向に(N-α(αは0以上の整数であってNより小さい数))枚だけ並んで配置された前記パネル部材と、α枚分の面積に応じた窓部とを有し、
前記壁部の少なくとも1つの面は、その幅が所定幅のM倍(Mは2以上の整数)に対して所定幅未満の余りがある場合において、幅方向に(M-β(βは0以上の整数であってMより小さい数))枚だけ並んで配置された前記パネル部材と、β枚分+余りの面積に応じた窓部とを有する
ことを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記壁部の特定壁は、その高さが所定高さの整数倍とされ、前記パネル部材が当該整数の枚数積み上げられており、
前記特定壁が前記特定壁と対向する対向壁と高さが異なる場合、前記壁部のうち前記特定壁と前記対向壁とを接続する接続壁は、複数枚の前記パネル部材と、上端において使用される三角形又は台形の窓部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記窓部は、窓ガラスを設置するための窓ガラス設置部と、室内外に貫通する貫通孔を有した板材を設置するための貫通板設置部とを有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の建築物。
【請求項4】
前記パネル部材は、前記ヒートパイプパネル又は前記冷凍機パネルの少なくとも1種の空調パネルであって、
トイレ、バスルーム及びキッチンの少なくとも1つが前記壁部から離れた中央部に設置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項5】
前記壁部のうち対向する一方壁と他方壁とのそれぞれに面して複数階層を縦貫する複数の吹き抜けと、
前記一方壁側の吹き抜けと前記他方壁側の吹き抜けとの低い方の最上階層同士を連通する上部連通路と、
前記一方壁側の吹き抜けと前記他方壁側の吹き抜けの前記上部連通路よりも下側の階層同士を連通する下部連通路と、を備え、
前記複数の吹き抜け及び前記上部連通路の少なくとも1つは、前記空調パネルによる空調対象となっている
ことを特徴とする請求項4に記載の建築物。
【請求項6】
前記吹き抜けを空調対象とする前記空調パネルが冷房機能を発揮する場合には当該吹き抜けに下降流が生じるようにし、前記吹き抜けを空調対象とする前記空調パネルが暖房機能を発揮する場合には当該吹き抜けに上昇流が生じるようにアシストするファンを備える
ことを特徴とする請求項5に記載の建築物。
【請求項7】
前記下部連通路は、床下を通じて下側の階層同士を連通する床下連通路であって、
前記床下連通路に設置される空調機器をさらに備える
ことを特徴とする請求項5又は請求項6のいずれかに記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物内の快適性を保つために、建築物の外壁に真空断熱パネルが用いられることがある。さらに、近年では、パネル自体に空調機能を持たせ、一面から他面に向けて熱貫流させるが他面から一面への熱貫流を阻止するヒートパイプパネルや、吸収式又は吸着式の冷凍機をパネル状にした冷凍機パネルといった空調パネルも提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-042529号公報
【特許文献2】特開2008-134043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、真空断熱パネルや空調パネルはパネル内に真空部を有していることから、建築物の外壁として使用する場合に、切断を行うことができない。また、真空断熱パネルや空調パネルは、建築物に合わせて様々な大きさのものを作っておくことが困難であり、例えば幅182cm及び高さ91cm等の規格サイズで量産しておくことが好ましい。
【0005】
このような真空断熱パネルや空調パネルを建築物の壁として使用する場合、壁が規格サイズの整数倍でないことが多く、規格サイズのパネルで埋められない半端部分が生じる。さらにトイレの窓、バスルームの窓、キッチンの窓の位置が決められるとその周囲でも多くの半端部分が生じる。この結果、建築物のある壁面において、規格サイズのパネルが占める面積は小さくなってしまい、建築物の快適性の低下につながってしまう。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、より快適性の向上を図ることができる建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る建築物は、所定高さ及び所定幅を有する規格サイズで構成され、内部に真空層を有した真空断熱パネル、一面側から他面側への熱貫流を許容し他面側から一面側への熱貫流を抑制するヒートパイプパネル、及び、吸着式若しくは吸着式による冷凍機能を発揮する冷凍機パネルの少なくとも1種であるパネル部材を、平面方向に複数枚連結して壁部を構成した建築物であって、前記壁部の少なくとも1つの面は、その幅が所定幅のN倍(Nは2以上の整数)である場合において、幅方向に(N-α(αは0以上の整数であってNより小さい数))枚だけ並んで配置された前記パネル部材と、α枚分の面積に応じた窓部とで構成され、前記壁部の少なくとも1つの面は、その幅が所定幅のM倍(Mは2以上の整数)に対して余りがある場合において、幅方向に(M-β(βは0以上の整数であってMより小さい数))枚だけ並んで配置された前記パネル部材と、β枚分+余りの面積に応じた窓部とで構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より快適性の向上を図ることができる建築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る建築物の一例を示す斜視図であり、(a)は一面側の斜視状態を示し、(b)は他面側の斜視状態を示している。
【
図3】本実施形態に係る窓部の一例を示す正面図である。
【
図4】本実施形態に係る建築物より壁部を取り除いたときの構造を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示した建築物の第1階層を示す平面図である。
【
図6】
図4に示した建築物の第2階層を示す平面図である。
【
図7】
図5に示した第1階層の一部拡大斜視図である。
【
図8】
図5に示した第1階層の他の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る建築物の一例を示す斜視図であり、(a)は一面側の斜視状態を示し、(b)は他面側の斜視状態を示している。
図1に示す例に係る建築物1は、壁部10と、天井部20とによって構成されている。壁部10は、パネル部材Pと、窓部Wとを備えて構成されている。なお、窓部Wはスライド開閉式のものであってもよいし、奥行き開閉式のものであってもよいし、固定されて開閉できないフィックス式のものであってもよい。
【0012】
本実施形態に係るパネル部材Pは、例えば外壁から内装材までを兼用する1枚の板部材によって構成されたものであって、所定幅及び所定高さに統一された規格サイズのものとなっている。ここで、所定幅は、例えば90cm以上5m未満の幅であって、より好ましくは182cm幅である。また、所定高さは、例えば45cm以上2m未満の高さであって、より好ましくは91cmの高さである。このようなパネル部材Pは、真空断熱パネル、ヒートパイプパネル、及び冷凍機パネルの少なくとも1種によって構成されている。
【0013】
真空断熱パネルは、真空引きされた真空層を内部に有したパネルである。ヒートパイプパネルは、一面側から他面側への熱貫流を許容し他面側から一面側への熱貫流を抑制するパネルである。このヒートパイプは、内部に作動液を有し、一面側において作動液が蒸発して熱を奪い、蒸発により生じた蒸気が他面側に到達して他面側から凝縮熱を破棄することで、一面側から他面側への熱貫流を許容したパネルである。このヒートパイプパネルは、内部に傾斜構造を有しており、他面側において凝縮した作動液が自重によって一面側に戻る構造となっている。また、ヒートパイプパネルは、内部が真空等となっており、他面側から一面側への熱貫流が抑制されている。冷凍機パネルは、吸収式若しくは吸着式による冷凍機能を発揮するパネルであって、吸収冷凍サイクルを構成する再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器、又は、吸着冷凍サイクルを構成する吸着器、凝縮器、及び蒸発器が板状に構成されたものである。
【0014】
ここで、このような真空断熱パネルは内部に真空層を有し、ヒートパイプパネルは内部に真空層及び作動液を有し、冷凍機パネルは、蒸発器内の真空部や吸収液や冷媒を有することから、切断することができないものである。このため、本実施形態に係る建築物1は、パネル部材Pを切断することなく規格サイズのままで極力多く使用することとしている。
【0015】
パネル部材Pを多く使用するために、本実施形態に係る壁部10は、規格サイズのパネル部材Pを平面方向に複数枚連結して(長辺同士又は短辺同士を連結して)例えば立面とし、立面の一部にパネル部材Pの非連結部を設け、その非連結部が窓部Wとされているものである。すなわち、一般の建築物では、最初にリビング、トイレ、バスルーム等の間取りが決定し、リビング等の各室に応じた窓が決定され、窓でない部分を壁で埋め尽くすように設計される。これに対して、本実施形態に係る建築物1は、パネル部材Pを多く利用するために、複数枚のパネル部材Pを連結して壁を構成するが、一部にはパネル部材Pを連結しない部分を設けて、そこを窓とする。
【0016】
詳細に説明すると、壁部10の各面が所定幅のN倍(Nは2以上の整数であって、
図1に示す例では3又は5)である場合、壁部10は、(N-α(αは0以上整数であってNより小さい数、
図1(a)に示す例では1又は2、
図1(b)に示す例では1))枚並んで配置されたパネル部材Pと、α枚分の面積に応じた窓部Wとによって構成される。具体的に説明すると、ある高さ位置H1においてαが「0」となり、他の高さ位置H2においてαが「2」となる。
【0017】
なお、建築物1については玄関も必要要素となることから、
図1(b)に示す例では、玄関Eについても窓部Wと同様にして構成される。すなわち、玄関が設けられる高さ位置H3において壁部10は、(N-α)枚並んで配置されたパネル部材Pと、α枚分の面積に応じた玄関Eとによって構成される。なお、高さ位置H3には玄関Eしか設けられていないが、更に窓部Wが設けられていてもよい。
【0018】
図2は、壁部10の他の例を示す平面図である。壁部10は、所定幅のN倍とは限らず、所定幅未満の余りを有することもある。このため、余りを有する場合、壁部10は、以下のように構成される。
【0019】
壁部10は、その幅が所定幅のM倍(Mは2以上の整数であって、
図2に示す例では3)に対して余りがある場合において、幅方向に(M-β(βは0以上の整数であってMより小さい数))枚だけ並んで配置されたパネル部材Pと、β枚分+余りの面積に応じた窓部Wとで構成される。具体的に説明すると、ある高さ位置H4において、βは「0」となり、余りの面積に応じた窓部Wとされる。また、他の高さ位置H5において、βは「1」となり、1枚分+余りの面積に応じた窓部Wとされる。
【0020】
以上のように、パネル部材Pと窓部Wとが構成されることで、幅方向についてパネル部材Pの利用率を高めるようにしている。
【0021】
再度
図1を参照する。
図1(a)に示すように、壁部10の特定壁10aは、その高さが規格サイズの所定高さの整数倍(
図1(a)に示す例において6倍)とされており、パネル部材Pが当該整数枚積み上げられている(積み上げられた部分を有する)。
【0022】
ここで、
図1(b)に示すように、特定壁10aの高さが、特定壁10aと対向する対向壁10bの高さと異なる場合、特定壁10aと対向壁10bとを接続する接続壁10cについては、複数枚(特に前記整数倍の枚数又は整数倍よりも少ない枚数)のパネル部材Pと、上端において使用される三角部T1又は台形部T2とを有することとなる。本実施形態において三角部T1及び台形部T2の1つが建築用の板材であり、台形部T2の残りの1つが窓部Wとされている。なお、
図1に示す例では台形部T2が窓部Wとされているが、これに限らず、三角部T1が窓部Wとされていてもよい。
【0023】
このように、半端となる上端の少なくとも一部を窓部Wとすることで、半端部分を採光部分として利用し、上端よりも下側において窓部Wの数を減じることに貢献することとなる。結果として、パネル部材Pの利用率を高めることとなる。
【0024】
図3は、本実施形態に係る窓部Wの一例を示す正面図である。本実施形態において窓部Wは、全てが窓ガラスWGを設置するための窓ガラス設置部WGPで構成されるわけではなく、室内外に貫通する貫通孔THを有した板材B(
図3のハッチング部分)を設置するための貫通板設置部THPを有することが好ましい。
【0025】
ここで、パネル部材Pは切断することができないだけでなく、貫通孔THを形成することもできない。一方、建築物1には換気口、排気口、電力線や電話線等の取り込み、アンテナ配線等の外壁貫通要素が必要である。このため、このような外壁貫通要素については、窓部Wに設けることとし、パネル部材Pに貫通孔THを形成しなくともよいようにしている。
【0026】
図4は、本実施形態に係る建築物1より壁部10を取り除いたときの構造を示す斜視図である。
図5は、
図4に示した建築物1の第1階層を示す平面図であり、
図6は、
図4に示した建築物1の第2階層を示す平面図である。
図7は、
図5に示した第1階層の一部拡大斜視図であり、
図8は、
図5に示した第1階層の他の拡大斜視図である。
【0027】
本実施形態においてパネル部材P(
図1及び
図2参照)がヒートパイプパネル及び冷凍機パネルの少なくとも1種の空調パネルP1(
図1及び
図2参照)である場合には、室内側について、以下の1)~8)で説明するように構成することが好ましい。
【0028】
1)まず、
図5に示すように、建築物1は、トイレTO、キッチンK及びバスルームBAが壁部10から離れた中央部に設置されていることが好ましい。一般に、トイレTO、キッチンK及びバスルームBAは、比較的小さな小部屋で構成されることが多い。このような小部屋は、空調パネルP1によって室内側が空調されたとしても、空調された空気を閉じ込めてしまう要素となる。よって、これらを壁部10から離れた中央部に設置することで、空調された空気を小部屋に閉じ込めることなく、快適性の向上に寄与することができる。
【0029】
なお、
図5に示す例では、トイレTO、キッチンK及びバスルームBAが壁部10から離れた中央部に設置されているが、収納部屋についても中央部に設置することが好ましい。加えて、これら全てが中央部に設置されていなくともよく、いずれか1つが中央部に設置されていてもよい。さらに、収納部屋、トイレTO、キッチンK及びバスルームBAの少なくとも2つ以上は、予め工場にて一体のユニットとして製造されていることが好ましい。
【0030】
2)また、
図4及び
図6に示すように、建築物1(
図1参照)は、一方壁W1(本実施形態においては対向壁10bと同じ)に面して複数階層(
図4に示す例では第1及び第2階層)を縦貫する第1吹き抜けA1と、一方壁W1に対向する他方壁W2(
図4及び
図6に示す例においては特定壁10aと同じ)に面して複数階層(
図4に示す例では床下、第1及び第2階層)を縦貫する第2吹き抜けA2とを有することが好ましい。
【0031】
なお、
図4に示す例において第1吹き抜けA1と第2吹き抜けA2とは縦貫する最上階層が同じ第2階層となっているが、これに限るものではない。例えば、建築物1が4階層で構成され、第1吹き抜けA1が2~4階層を縦貫し、第2吹き抜けA2が1~3階層を縦貫する等、それぞれの最上階層が異なっていてもよい。
【0032】
3)また、建築物1は、一方壁W1側の第1吹き抜けA1と他方壁W2側の第2吹き抜けA2との低い方の最上階層同士を連通する上部連通路UL1を有することが好ましい。本実施形態においては、第1吹き抜けA1と第2吹き抜けA2とは縦貫する最上階層が同じ第2階層であることから、上部連通路UL1は、第2階層同士を連通することとなる。ここで、
図6に示す上部連通路UL1は、常時連通するものであるが、特にこれに限らず、開放可能な引き戸や、向こう側が見通せるように動作するルーバー等が設けられて、住居者により連通させられるようになっていてもよい。
【0033】
4)加えて、建築物1は、
図5に示すように、一方壁W1側の第1吹き抜けA1と他方壁W2側の第2吹き抜けA2の上部連通路UL1よりも下側の階層同士を連通する下部連通路UL2を備えることが好ましい。本実施形態に係る建築物1は、
図5及び
図7に示すように、土台Lが一部むき出しとなっており、第1階層から床下階層が視認可能となっている。
【0034】
また、
図8に示すように、第1階層は一方壁W1側の床面に通風孔VHが形成されている。第1階層から視認される土台Lから通風孔VHまでは、床下においてつながった状態となっている。すなわち、本実施形態に係る建築物1は、床下階層が下部連通路UL2として機能するようになっている。
【0035】
なお、本実施形態に係る建築物1は、床下階層が下部連通路UL2として機能しているが、これに限らず、第1階層等の他の階層に下部連通路UL2が形成されるようになっていてもよい。また、居住空間への影響を少なくするために、上部連通路UL1が屋根裏(小屋裏)を水平通気し、下部連通路UL2が1階の床下(床下階層)を水平通気することが好ましい。さらに、下部連通路UL2は、上部連通路UL1と同様に、常時連通するものに限らず、住居者により連通させられるものであってもよい。以下、下部連通路UL2については床下連通路UL2とも称するものとする。
【0036】
5)さらに、建築物1は、第1吹き抜けA1、第2吹き抜けA2及び上部連通路UL1の少なくとも1つが空調パネルP1による空調対象となっていることが好ましい。
【0037】
以上の2)~5)の構成を採用することで、空調パネルP1によって冷暖房された空気の循環構造を提供できることとなる。例えば、空調パネルP1によって冷暖房された空気は、第1吹き抜けA1を上昇していき、上部連通路UL1から第2吹き抜けA2に至り、第2吹き抜けA2を下降して床下連通路UL2に至り、床下連通路UL2から通風孔VHを通じて第1吹き抜けA1に戻る。よって、冷暖房された空気が建築物1内に行き渡り易くなり、快適性の向上を図ることができる。
【0038】
6)加えて、建築物1は、吹き抜けA1,A2を空調対象とする空調パネルP1が冷房機能を発揮する場合には当該吹き抜けA1,A2に下降流が生じるようにし、吹き抜けA1,A2を空調対象とする空調パネルP1が暖房機能を発揮する場合には当該吹き抜けA1,A2に上昇流が生じるようにアシストするファンF(
図5参照)を備えることが好ましい。これにより、より好適に空気を循環させることができるからである。
【0039】
なお、
図5に示す例においてファンFは床下(床下連通路UL2)に設けられているが、これに限らず、吹き抜けA1,A2や上部連通路UL1に設けられていてもよい。特に、ファンFは、吹き抜けA1,A2を空調対象とする空調パネルP1に近接して設けることで、空調直後の空気を素早く循環させることとなり、好ましいといえる。
【0040】
7)さらには、建築物1は、床下連通路UL2にエアコン等の室外機を有する空調機器ARを備えることが好ましい。一般に上層階層に室外機を有する空調機器ARを設置した場合、上層の空調機器ARから室外機まで接続する配管が壁面を沿うこととなったり、室外機が上層壁面に設けられたりする。しかし、空調機器ARを床下に設けることで、このような問題が発生せず美観が向上することとなる。
【0041】
8)加えて、建築物1は、
図4及び
図6に示すように、いわゆるスキップフロアとなっていることが好ましい。より詳細に建築物1は、第2階層(他の階層でも可)に一段低い床面LFを有すると共に、一段低い床面LFと通常高さの床面NFとの間に空間Sが形成されていることが好ましい。この空間Sによって、より一層空気を循環させることができるからである。
【0042】
次に、本実施形態に係る建築物1の建築方法の概略を説明する。まず、予め工場において、収納部屋、トイレTO、キッチンK及びバスルームBAの少なくとも2つ以上が一体とされたユニットが製造される。次いで、他の建築物と同様に土台Lを形成し、その後骨組、床面、及び天井部20を形成すると共にユニットを室内空間となる所定位置に配置する。
【0043】
次に、多数のパネル部材Pを連結して積み上げていく。そして、一部には非連結となる空隙を形成しておく。その後、空隙部分に窓ガラスWGやドア等を設置して、窓部Wと玄関Eとを形成する。なお、この順番に限らず、通常の通り、窓ガラスWGやドア等を設置してからパネル部材Pを設置してもよい。
【0044】
次に、本実施形態に係る建築物1の作用を説明する。まず、
図1に示すように、本実施形態においては規格サイズのパネル部材Pを切断することなく、規格サイズのままで埋め尽くされるように壁部10が形成され、壁部10の一部が窓部W等とされる。特に、壁部10の幅が所定幅(規格サイズ)のN倍である場合、壁部10は、特定の高さ位置H1,H2において、(N-α)枚並んで配置されたパネル部材Pと、α枚分の面積に応じた窓部Wとによって構成される。
【0045】
さらに、
図2に示すように、壁部10の幅が所定幅のM倍に対して余りがある場合において、壁部10は、特定の高さ位置H4,H5において、幅方向に(M-β)枚並んで配置されたパネル部材Pと、β枚分+余りの面積に応じた窓部Wとで構成される。
【0046】
なお、玄関Eについても上記窓部Wと同様にされる。
【0047】
よって、幅方向については、窓部Wや玄関Eの必要要素以外が規格サイズのパネル部材Pで埋め尽くされることとなり、パネル部材Pの利用率が高まることとなる。
【0048】
さらに、
図1に示す接続壁10cについては、複数のパネル部材Pが使用されると共に、上端が三角部T1又は台形部T2とされ、三角部T1又は台形部T2が窓部Wとされる。このため、上端の半端部分を採光部分として利用することで、上端よりも下側において窓部Wを減らすことに貢献でき、パネル部材Pの利用率を高めることとなる。
【0049】
また、
図3に示すように、窓部Wは、貫通孔THを有した板材Bを設置するための貫通板設置部THPを備えるため、換気口、排気口、電力線や電話線等の取り込み、アンテナ配線等の外壁貫通要素のため、パネル部材Pに貫通孔THを形成しなくともよく、パネル部材Pが機能を失ってしまう等の事態を防止することとなる。
【0050】
さらに、パネル部材Pが空調パネルP1であり、
図5に示すように、収納部屋、トイレTO、バスルームBAが壁部10から離れた中央部に設置されている。このため、空調パネルP1によって冷暖房された空気が、収納部屋、トイレTO、キッチンK及びバスルームBAのような比較的小さな小部屋に閉じ込められることが抑制され、快適性の向上に寄与することとなる。
【0051】
加えて、建築物1は、第1吹き抜けA1、第2吹き抜けA2、及び上部連通路UL1の少なくとも1つが空調パネルP1によって空調対象とされ、第1吹き抜けA1、第2吹き抜けA2、上部連通路UL1及び床下連通路UL2により空気の循環構造をなしていることから、冷暖房された空気が建築物1内を循環することとなる。このため、快適性の向上に寄与している。
【0052】
また、空調パネルP1が吹き抜けA1,A2を冷房する場合には下降流が生じるように、暖房する場合には上昇流が生じるようにアシストするファンFを備えるため、より一層冷暖房された空気が建築物1内に行き渡り易くなって、快適性の向上に寄与することとなる。
【0053】
さらに、床下連通路UL2に空調機器ARを備える場合には、空調機器ARのよる快適性の向上のみならず、室外機の設置や配管による美観の低下も抑制されることとなる。
【0054】
また、建築物1は、スキップフロアを有し、一段低い床面LFと通常高さの床面NFとの間が空間Sとされることから、より一層空気を循環させることとなる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る建築物1によれば、壁部10が規格サイズの所定幅のN倍である場合、幅方向には(N-α)枚のパネル部材Pを並んで配置させ、α枚分の面積に応じた窓部Wとする。また、壁部10が規格サイズの所定幅のM倍に対して余りがある場合、幅方向には(M-β)枚のパネル部材Pを並んで配置させ、β枚分+余りの面積に応じた窓部Wとする。このように構成することで、規格サイズのパネル部材Pで埋められない半端部分を極力少なくすることとなり、壁部10におけるパネル部材Pの利用率を高めることとなる。従って、より快適性の向上を図ることができる建築物1を提供することができる。
【0056】
また、特定壁10aは、パネル部材Pが整数枚数積み上げられているため、特定壁10aについてパネル部材の利用率を高めることができる。また、接続壁10cについては、複数枚のパネル部材Pと上端における三角形又は台形となる窓部Wとを有するため、上端の半端部分を採光部分として利用することで、上端よりも下側において窓部Wを減らすことに貢献でき、パネル部材Pの利用率を高めることとなる。
【0057】
また、窓部Wは、窓ガラス設置部WGPと、室内外に貫通する貫通孔THを有した板材Bを設置するための貫通板設置部THPとを有するため、換気口、排気口、電力線・電話線等の取り込み、アンテナ配線等の外壁貫通要素によってパネル部材Pに貫通孔THを形成する必要がなく、貫通孔形成によってパネル部材Pが機能を失ってしまい、快適性が低下してしまうことを防止することができる。
【0058】
また、パネル部材Pが建築物1であって、収納部屋、トイレTO、バスルームBA及びキッチンKの少なくとも1つが壁部10から離れた中央部に設置されているため、建築物1によって空調された空気が収納部屋や、トイレTOや、バスルームBAや、キッチンKという狭い空間に閉じ込められ難くなり、快適性の向上に寄与することができる。
【0059】
また、一方壁W1と他方壁W2とのそれぞれに面した複数の吹き抜けA1,A2と、吹き抜けA1,A2の最上階層同士を連通する上部連通路UL1と、吹き抜けA1,A2の下側の階層同士を連通する下部連通路UL2とを備え、吹き抜けA1,A2及び上部連通路UL1の少なくとも1つは空調パネルP1による空調対象となっているため、空調パネルP1によって冷暖房された空気は、吹き抜けA1,A2、上部連通路UL1及び下部連通路UL2により循環することとなる。これにより、冷暖房された空気が建築物1内に行き渡り易くなって、快適性の向上を図ることができる。
【0060】
また、吹き抜けA1,A2を空調対象とする空調パネルP1が冷房機能を発揮する場合には吹き抜けA1,A2に下降流が生じるようにし、吹き抜けA1,A2を空調対象とする空調パネルP1が暖房機能を発揮する場合には当該吹き抜けA1,A2に上昇流が生じるようにアシストするファンFを備える。このため、冷暖房に応じて適切に室内空気を循環させることとなり、より一層冷暖房された空気が建築物1内に行き渡り易くなって、より快適性の向上を図ることができる。
【0061】
また、下部連通路UL2が床下を通じて下側の階層同士を連通する床下連通路UL2であって、床下連通路UL2に設置される空調機器ARをさらに備えるため、上層階に空調機器ARを設置したときのように、上層の空調機器ARから室外機までを接続する配管が壁面を沿う必要がなく、床下の空調機器ARから室外機まで短い配管で接続することも可能となり、建築物1の美観向上に寄与することができる。
【0062】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0063】
例えば、上記実施形態においては、建築物の全ての面の壁部10a~10cにおいて、パネル部材Pが多く利用され、壁部10a~10cは、その幅が所定幅のN倍である場合、幅方向に(N-α)枚だけ並んで配置されたパネル部材Pと、α枚分の面積に応じた窓部Wとを有し、又は、その幅が所定幅のM倍に対して所定幅未満の余りがある場合、幅方向に(M-β)枚だけ並んで配置されたパネル部材と、β枚分+余りの面積に応じた窓部Wとを有する。しかし、全ての面において上記にように構成されている場合に限らず、例えば少なくとも1つの面で上記のようにされていてもよい。これにより、その面については、パネル部材Pの利用率を高めることとなるためである。
【符号の説明】
【0064】
1 :建築物
10 :壁部
10a :特定壁
10b :対向壁
10c :接続壁
A1 :第1吹き抜け
A2 :第2吹き抜け
AR :空調機器
B :板材
BA :バスルーム
F :ファン
K :キッチン
P :パネル部材
P1 :空調パネル
TH :貫通孔
THP :貫通板設置部
TO :トイレ
UL1 :上部連通路
UL2 :下部連通路(床下連通路)
VH :通風孔
W :窓部
W1 :一方壁
W2 :他方壁
WG :窓ガラス
WGP :窓ガラス設置部