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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185223
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】車両接触回避装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20221207BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20221207BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20221207BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W50/14
B60W60/00
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092746
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板摺 一貴
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BA33
3D241BA60
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB12Z
3D241DC33Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC14
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】自車両と道路脇に存在する構造物との接触を回避するための警報等の接触回避制御を不必要に実行することなく接触回避制御により自車両とその構造物との接触を回避することができる車両接触回避装置を提供する。
【解決手段】車両接触回避装置10は、自車両100が走行している道路RDの脇に存在する構造物STと自車両との接触を回避するための接触回避制御を自車両が構造物に所定距離まで近づいたときに実行する。車両接触回避装置は、構造物の高さが自車両のサイドミラーの高さよりも低い場合、第1距離を前記所定距離として設定し、構造物の高さがサイドミラーの高さ以上である場合、第1距離よりも長い第2距離を所定距離として設定する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行している道路の脇に存在する構造物と前記自車両との接触を回避するための接触回避制御を実行する車両接触回避装置であって、
前記自車両が前記構造物に所定距離まで近づいたときに前記接触回避制御を実行するように構成されている車両接触回避装置において、
前記構造物の高さが前記自車両のサイドミラーの高さよりも低い場合、第1距離を前記所定距離として設定し、
前記構造物の高さが前記サイドミラーの高さ以上である場合、前記第1距離よりも長い第2距離を前記所定距離として設定する、
ように構成されている、
車両接触回避装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両接触回避装置において、
前記接触回避制御は、前記自車両の運転者に対する警告を行う制御である、
車両接触回避装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両接触回避装置において、
前記接触回避制御は、前記自車両が前記構造物から離れるように前記自車両を強制的に操舵する制御である、
車両接触回避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両接触回避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車線から路肩側への自車両の逸脱量が閾値を超えた場合に警報を行うことにより、自車両が車線から逸脱していることを自車両の運転者に知らせて運転者のハンドル操作を促し、路肩の向こう側に設置されているガードレールや防音壁と自車両との接触を回避するための車両接触回避装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-56484号公報
【発明の概要】
【0004】
自車両に取り付けられているサイドミラーは、自車両の側面よりも外側に突き出ている。従って、道路脇に存在する構造物の側に自車両が車線から逸れ、その構造物に自車両が接触したときにその構造物に接触する自車両の部分は、その構造物の高さがサイドミラーよりも低いか或いは高いかによって異なる。具体的には、その構造物の高さがサイドミラーよりも高い場合、構造物に接触する自車両の部分は、サイドミラーであり、その構造物の高さがサイドミラーよりも低い場合、構造物に接触する自車両の部分は、自車両の側面である。
【0005】
従って、構造物の高さが自車両のサイドミラーよりも高い場合、構造物と自車両の側面との間の距離が比較的長くても、サイドミラーが構造物に接触してしまう可能性がある。このため、高さの高い構造物に自車両が近づいているときに、構造物と自車両の側面との間の距離が短くなるまで、警報を行わなければ、運転者が自車両と構造物との接触の可能性に気づかず、自車両のサイドミラーが構造物に接触してしまう可能性がある。
【0006】
一方、構造物の高さが自車両のサイドミラーよりも低い場合、構造物と自車両の側面との間の距離が比較的長いうちに警報を行ってしまうと、運転者が自身のハンドル操作により自車両と構造物との接触を回避しようとしているにもかかわらず、警報が行われることになり、運転者にとって煩わしい。
【0007】
本発明の目的は、自車両と道路脇に存在する構造物との接触を回避するための警報等の接触回避制御を不必要に実行することなく接触回避制御により自車両とその構造物との接触を回避することができる車両接触回避装置を提供することにある。
【0008】
本発明に係る車両接触回避装置は、自車両が走行している道路の脇に存在する構造物と前記自車両との接触を回避するための接触回避制御を実行する装置であって、前記自車両が前記構造物に所定距離まで近づいたときに前記接触回避制御を実行するように構成されている。そして、本発明に係る車両接触回避装置は、前記構造物の高さが前記自車両のサイドミラーの高さよりも低い場合、第1距離を前記所定距離として設定し、前記構造物の高さが前記サイドミラーの高さ以上である場合、前記第1距離よりも長い第2距離を前記所定距離として設定するように構成されている。
【0009】
自車両が近づいている構造物の高さが自車両のサイドミラーの高さ以上である場合、自車両がその構造物に接触するとすれば、自車両の側面よりも先に自車両のサイドミラーが構造物に接触する可能性がある。本発明に係る車両接触回避装置によれば、構造物の高さが自車両のサイドミラーの高さ以上である場合、第1距離よりも長い第2距離が所定距離として設定されるため、自車両が車線から逸れてその構造物に近づいたとき、構造物の高さが自車両のサイドミラーの高さよりも低い場合に比べ、早いタイミングで接触回避制御が開始される。
【0010】
又、構造物の高さが自車両のサイドミラーの高さよりも低い場合、自車両がその構造物に接触するとすれば、自車両の側面がその構造物に接触する。本発明に係る車両接触回避装置によれば、構造物の高さが自車両のサイドミラーの高さよりも低い場合、第2距離よりも短い第1距離が所定距離として設定されるため、自車両が車線から逸れてその構造物に近づいたとき、構造物の高さが自車両のサイドの高さ以上である場合に比べ、遅いタイミングで接触回避制御が開始される。
【0011】
このため、自車両と構造物との接触を回避するための接触回避制御を不必要に実行することなく接触回避制御により自車両とその構造物との接触を回避することができる。
【0012】
尚、本発明に係る車両接触回避装置において、前記接触回避制御は、例えば、前記自車両の運転者に対する警告を行う制御である。
【0013】
これによれば、自車両が構造物に接触する可能性があるときに、そのことを自車両の運転者に知らせ、運転者に自車両とその構造物との接触を回避するための運転操作を行うことを促すことができる。
【0014】
又、本発明に係る車両接触回避装置において、前記接触回避制御は、例えば、前記自車両が前記構造物から離れるように前記自車両を強制的に操舵する制御である。
【0015】
これによれば、自車両が構造物に接触する可能性があるときに、自車両がその構造物から強制的に離されるので、自車両と構造物との接触を確実に回避することができる。
【0016】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両接触回避装置及びその車両接触回避装置が搭載された車両(自車両)を示した図である。
図2図2の(A)は、自車走行車線及びそれを規定する区画線等を示した図であり、図2の(B)は、自車両のヨー角を示した図であり、図2の(C)も、自車両のヨー角を示した図である。
図3図3は、接触回避制御が実行される場面を示した図である。
図4図4の(A)は、自車両の左側に構造物が存在する場合における自車両と構造物との間の距離を示した図であり、図4の(B)は、自車両の右側に構造物が存在する場合における自車両と構造物との間の距離を示した図である。
図5図5の(A)は、自車走行車線の左側に高さの高い構造物が存在する様子を示した図であり、図5の(B)は、自車走行車線の左側に高さの低い構造物が存在する様子を示した図である。
図6図6の(A)は、自車走行車線の左側に高さの高い構造物であるガードレールが設置されているときに接触回避制御が実行された場面を示した図であり、図6の(B)は、自車走行車線の左側に高さの低い構造物である縁石が設けられているときに接触回避制御が実行された場面を示した図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る車両接触回避装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
図8図8は、本発明の実施形態に係る車両接触回避装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施形態に係る車両接触回避装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両接触回避装置について説明する。図1に示したように、本発明の実施形態に係る車両接触回避装置10は、自車両100に搭載されている。以下の説明において、自車両100の運転者を「運転者DR」と表記する。
【0019】
<ECU>
車両接触回避装置10は、ECU90を備えている。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称である。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース等を含む。CPUは、ROMに格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。
【0020】
<走行装置>
又、自車両100には、走行装置20が搭載されている。走行装置20は、駆動装置21、制動装置22及び操舵装置23を含んでいる。
【0021】
<駆動装置>
駆動装置21は、自車両100を走行させるために自車両100に付加される駆動トルク(駆動力)を出力する装置であり、例えば、内燃機関及びモータ等である。駆動装置21は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、駆動装置21の作動を制御することにより駆動装置21から出力される駆動トルクを制御することができる。
【0022】
<制動装置>
制動装置22は、自車両100を制動するために自車両100に付加される制動トルク(制動力)を出力する装置であり、例えば、ブレーキ装置である。制動装置22は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、制動装置22の作動を制御することにより制動装置22から出力される制動トルクを制御することができる。
【0023】
<操舵装置>
操舵装置23は、自車両100を操舵するために自車両100に付加される操舵トルク(操舵力)を出力する装置であり、例えば、パワーステアリング装置である。操舵装置23は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、操舵装置23の作動を制御することにより操舵装置23から出力される操舵トルクを制御することができる。
【0024】
<センサ等>
更に、自車両100には、アクセルペダル31、アクセルペダル操作量センサ32、ブレーキペダル33、ブレーキペダル操作量センサ34、ハンドル35、ステアリングシャフト36、操舵角センサ37、操舵トルクセンサ38、車両運動量検出装置50、周辺情報検出装置60及び警告装置70が搭載されている。
【0025】
<アクセルペダル操作量センサ>
アクセルペダル操作量センサ32は、アクセルペダル31の操作量を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。アクセルペダル操作量センサ32は、検出したアクセルペダル31の操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてアクセルペダル31の操作量をアクセルペダル操作量APとして取得する。ECU90は、アクセルペダル操作量AP及び自車速V100(自車両100の走行速度)に基づいて要求駆動トルク(要求駆動力)を取得し、その要求駆動トルクが駆動装置21から出力されるように駆動装置21の作動を制御する。
【0026】
<ブレーキペダル操作量センサ>
ブレーキペダル操作量センサ34は、ブレーキペダル33の操作量を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。ブレーキペダル操作量センサ34は、検出したブレーキペダル33の操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてブレーキペダル33の操作量をブレーキペダル操作量BPとして取得する。ECU90は、ブレーキペダル操作量BPに基づいて要求制動トルク(要求制動力)を取得し、その要求制動が制動装置22から出力されるように制動装置22の作動を制御する。
【0027】
<操舵角センサ>
操舵角センサ37は、中立位置に対するステアリングシャフト36の回転角度を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。操舵角センサ37は、検出したステアリングシャフト36の回転角度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてステアリングシャフト36の回転角度を操舵角θsとして取得する。
【0028】
<操舵トルクセンサ>
操舵トルクセンサ38は、運転者DRがハンドル35を介してステアリングシャフト36に入力したトルクを検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。操舵トルクセンサ38は、検出したトルクの情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて運転者DRがハンドル35を介してステアリングシャフト36に入力したトルク(ドライバー入力トルク)を取得する。ECU90は、後述する操舵回避処理を実行していない場合、操舵角θs、ドライバー入力トルク及び自車速V100(自車両100の走行速度)に基づいて要求操舵トルク(要求操舵力)を取得し、その要求操舵トルクが操舵装置23から出力されるように操舵装置23の作動を制御する。
【0029】
<車両運動量検出装置>
車両運動量検出装置50は、自車両100の運動量を検出する装置であり、本例においては、車速検出装置51、縦加速度センサ52、横加速度センサ53及びヨーレートセンサ54を備えている。
【0030】
<車速検出装置>
車速検出装置51は、自車両100の車速(自車速V100)を検出する装置であり、例えば、車輪速センサである。車速検出装置51は、ECU90に電気的に接続されている。車速検出装置51は、検出した自車両100の車速の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車速V100を取得する。
【0031】
<縦加速度センサ>
縦加速度センサ52は、自車両100の前後方向の加速度を検出するセンサである。縦加速度センサ52は、ECU90に電気的に接続されている。縦加速度センサ52は、検出した加速度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100の前後方向の加速度を縦加速度Gxとして取得する。
【0032】
<横加速度センサ>
横加速度センサ53は、自車両100の横方向(幅方向)の加速度を検出するセンサである。横加速度センサ53は、ECU90に電気的に接続されている。横加速度センサ53は、検出した加速度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100の横方向の加速度を横加速度Gyとして取得する。
【0033】
<ヨーレートセンサ>
ヨーレートセンサ54は、自車両100のヨーレートYRを検出するセンサである。ヨーレートセンサ54は、ECU90に電気的に接続されている。ヨーレートセンサ54は、検出したヨーレートYRの情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100のヨーレートYRを取得する。
【0034】
<周辺情報検出装置>
周辺情報検出装置60は、自車両100の周辺の情報を検出する装置であり、本例においては、電波センサ61及び画像センサ62を備えている。電波センサ61は、例えば、レーダセンサ(ミリ波レーダ等)である。画像センサ62は、例えば、カメラである。尚、周辺情報検出装置60は、超音波センサ(クリアランスソナー)等の音波センサやレーザーレーダ(LiDAR)等の光センサを備えていてもよい。
【0035】
<電波センサ>
電波センサ61は、ECU90に電気的に接続されている。電波センサ61は、電波を発信するとともに、物体で反射した電波(反射波)を受信する。電波センサ61は、発信した電波及び受信した電波(反射波)に係る情報(検知結果)をECU90に送信する。別の言い方をすると、電波センサ61は、自車両100の周辺に存在する物体を検知し、その検知した物体に係る情報(検知結果)をECU90に送信する。ECU90は、その情報(電波情報)に基づいて自車両100の周辺に存在する物体に係る情報(周辺検出情報IS)を取得することができる。尚、本例において、物体は、カードレール、遮音壁、ポール、縁石、他車両、自動二輪車、自転車及び人等である。
【0036】
<画像センサ>
画像センサ62も、ECU90に電気的に接続されている。画像センサ62は、自車両100の周辺を撮像し、撮像した画像に係る情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報(カメラ画像情報)に基づいて自車両100の周辺に関する情報(周辺検出情報IS)を取得する。
【0037】
図2の(A)に示したように、道路には、車線LNを規定する左側の区画線(左側区画線LML)及び右側の区画線(右側区画線LMR)が設けられている。ECU90は、周辺検出情報ISに基づいて自車両100が走行している車線(自車走行車線LN)を規定する左側区画線LML及び右側区画線LMRを認識し、認識した左側区画線LML及び右側区画線LMRに基づいて自車走行車線LNの範囲を特定することができる。
【0038】
又、ECU90は、認識した左側区画線LML及び右側区画線LMRに基づいて自車両100のヨー角YAを取得することもできる。ヨー角YAは、図2の(B)及び(C)に示したように、自車走行車線延在ラインLNC(自車走行車線LNが延在する方向を表すライン)と自車中央前後ラインCL(自車両100の幅方向中央を自車両100の前後方向に延びるライン)との間の角度である。
【0039】
<警告装置>
警告装置70は、運転者DRに対する警告を行うために用いられる装置であり、本例においては、音響装置71及び表示装置72を備えている。音響装置71は、例えば、ブザー又はスピーカー等である。表示装置72は、例えば、コンビネーションメーター又はヘッドアップディスプレイ又はカーナビゲーションディスプレイ等である。
【0040】
<音響装置>
音響装置71は、ECU90に電気的に接続されている。音響装置71は、ECU90からの指令に従って各種音を出力する。音響装置71がブザーである場合、ブザーは、ECU90からの指令に従ってブザー音を出力する。又、音響装置71がスピーカーである場合、スピーカーは、ECU90からの指令に従って音声アナウンスを出力する。
【0041】
<表示装置>
表示装置72は、ECU90に電気的に接続されている。表示装置72は、ECU90からの指令に従って各種画像を表示する。
【0042】
<車両接触回避装置の作動の概要>
次に、車両接触回避装置10の作動の概要について説明する。
【0043】
図3に示したように、自車両100が走行している道路(自車走行道路RD)の脇に構造物STが存在することがある。こうした構造物STとしては、例えば、縁石、ポール、ガードレール及び遮音壁等である。このように構造物STが存在する道路を自車両100が走行しているときに何らかの原因で自車両100が自車走行車線LNから逸れて構造物STに近づいてしまうことがある。このときに自車両100がそのまま走行すると、自車両100が構造物STに接触してしまう。
【0044】
そこで、車両接触回避装置10は、自車走行道路RDの脇に存在する構造物ST(対象構造物ST)と自車両100との接触を回避するために自車両100が対象構造物STに所定距離Dthまで近づいたときに接触回避制御を実行するように構成されている。以下、この接触回避制御について説明する。
【0045】
車両接触回避装置10は、対象構造物ST(自車走行道路RDの脇に存在する構造物ST)が存在するか否かを判定している。対象構造物STが存在するか否かの判定は、周辺検出情報ISに基づいて行われる。
【0046】
車両接触回避装置10は、対象構造物STが存在すると判定した場合、その対象構造物STと自車両100との間の距離(対象距離D)を取得する。本例においては、車両接触回避装置10は、図4の(A)に示したように、対象構造物STが自車両100の左側に存在する場合には、自車両100の左前方コーナー部分100Lと対象構造物STとの間の距離を対象距離Dとして取得し、図4の(B)に示したように、対象構造物STが自車両100の右側に存在する場合には、自車両100の右前方コーナー部分100Rと対象構造物STとの間の距離を対象距離Dとして取得する。
【0047】
車両接触回避装置10は、対象構造物STを検知している間、対象距離Dを所定演算周期で取得し、対象距離Dが所定警告距離Da_thまで短くなったか否かを監視する。
【0048】
車両接触回避装置10は、図3に示したように、自車両100が地点Paまで進んだときに対象距離Dが所定警告距離Da_thまで短くなったと判定した場合、接触回避制御として警告処理を実行する。警告処理は、自車両100が対象構造物STと接触する可能性があることを運転者DRに気づかせるための警報音又は知らせるための音声アナウンスを音響装置71から出力させる処理及び/又は自車両100が対象構造物STと接触する可能性があることを運転者DRに気づかせるための画像を表示装置72に表示する処理である。これにより、自車両100と対象構造物STとの接触を回避するためのハンドル操作を運転者DRに促すことができ、運転者DRがハンドル操作を行えば、自車両100と対象構造物STとの接触が回避される。
【0049】
更に、車両接触回避装置10は、対象構造物STを検知している間、対象距離Dが所定操舵介入距離Ds_thまで短くなったか否かも監視している。
【0050】
車両接触回避装置10は、図3に示したように、自車両100が地点Psまで進んだときに対象距離Dが所定操舵介入距離Ds_thまで短くなったと判定した場合、接触回避制御として操舵回避処理を実行する。操舵回避処理は、自車両100が対象構造物STから離れて自車走行車線LNの中央に戻るように操舵装置23により自車両100を強制的に操舵する処理である。これにより、自車両100と対象構造物STとの接触を回避することができる。
【0051】
尚、対象距離Dが短くても、自車両100のヨー角YAがゼロであれば、自車両100は、対象構造物STと平行に走行するので、対象構造物STと接触する可能性は低い。こうした場合に接触回避制御が実行されると、その接触回避制御の実行は、不要な実行となる。
【0052】
そこで、車両接触回避装置10は、対象距離Dだけでなく、自車両100のヨー角YAを考慮して接触回避制御を実行するか否かを決定するように構成されてもよい。
【0053】
この場合、車両接触回避装置10は、対象構造物STが自車両100の左側に存在する場合において、自車両100のヨー角YAが左回りにゼロよりも大きいときには、ヨー角YAが大きいほど所定警告距離Da_th及び所定操舵介入距離Ds_thを長くする。そして、車両接触回避装置10は、対象距離Dがその長くした所定警告距離Da_thまで短くなったと判定した場合、警告処理を実行し、対象距離Dがその長くした所定操舵介入距離Ds_thまで短くなったと判定した場合、操舵回避処理を実行する。同様に、車両接触回避装置10は、対象構造物STが自車両100の右側に存在する場合において、自車両100のヨー角YAが右回りにゼロよりも大きいときには、ヨー角YAが大きいほど所定警告距離Da_th及び所定操舵介入距離Ds_thを長くする。そして、車両接触回避装置10は、対象距離Dがその長くした所定警告距離Da_thまで短くなったと判定した場合、警告処理を実行し、対象距離Dがその長くした所定操舵介入距離Ds_thまで短くなった場合、操舵回避処理を実行する。
【0054】
ところで、図5に示したように、自車両100の左右の側面(自車両側面100S)には、それぞれ、サイドミラー100Mが取り付けられている。これらサイドミラー100Mは、それぞれ、自車両100の左右の側面(自車両側面100S)よりも外側に突き出ている。従って、対象構造物STの側に自車両100が自車走行車線LNから逸れ、対象構造物STに自車両100が接触したときに対象構造物STに接触する自車両100の部分は、対象構造物STの高さHsがサイドミラー100Mの高さHm(本例においては、地面からサイドミラー100Mの下端までの高さ)よりも低いか或いは高いかによって異なる。
【0055】
具体的には、図5の(A)に示したように、対象構造物STの高さHsがサイドミラー100Mの高さHmよりも高い場合、対象構造物STに接触する自車両100の部分は、サイドミラー100Mであり、図5の(B)に示したように、対象構造物STの高さHsがサイドミラー100Mの高さHmよりも低い場合、対象構造物STに接触する自車両100の部分は、自車両側面100Sである。
【0056】
従って、対象構造物STの高さHsが自車両100のサイドミラー100Mの高さHmよりも高い場合、対象構造物STと自車両側面100Sとの間の距離(対象距離D)が比較的長くても、サイドミラー100Mが対象構造物STに接触してしまう可能性がある。このため、高さの高い対象構造物STに自車両100が近づいているときに、その対象構造物STと自車両側面100Sとの間の距離(対象距離D)が短くなるまで、接触回避制御を実行しなければ、運転者DRが自車両100と対象構造物STとの接触の可能性に気づかず、自車両100のサイドミラー100Mが対象構造物STに接触してしまう可能性がある。
【0057】
一方、対象構造物STの高さHsが自車両100のサイドミラー100Mの高さHmよりも低い場合、対象構造物STと自車両側面100Sとの間の距離(対象距離D)が比較的長いうちに接触回避制御を実行してしまうと、運転者DRが自身のハンドル操作により自車両100と対象構造物STとの接触を回避しようとしているにもかかわらず、接触回避制御が実行されることになり、運転者DRにとって煩わしい。
【0058】
そこで、車両接触回避装置10は、対象構造物STの高さHsに応じて所定警告距離Da_th及び所定操舵介入距離Ds_thを設定することにより、接触回避制御を不必要に実行することなく接触回避制御により自車両100と対象構造物STとの接触を回避することができるようなっている。
【0059】
具体的には、車両接触回避装置10は、対象構造物STを検知したときにその高さHsを周辺検出情報ISに基づいて取得する。
【0060】
車両接触回避装置10は、対象構造物STの高さHsを取得すると、その高さHsがサイドミラー100Mの高さHmよりも低いか否かを判定する。尚、サイドミラー100Mの高さHmは、予め車両接触回避装置10に記憶されている。
【0061】
車両接触回避装置10は、対象構造物STの高さHsがサイドミラー100Mの高さHmよりも低い場合、所定警告距離Da_thとして基準となる距離(第1警告距離Da_1)を設定するとともに、所定操舵介入距離Ds_thとして基準となる距離(第1操舵介入距離Ds_1)を設定する。尚、第1警告距離Da_1は、第1操舵介入距離Ds_1よりも長い距離に設定されている。
【0062】
一方、車両接触回避装置10は、対象構造物STの高さHsがサイドミラー100Mの高さHm以上である場合、所定警告距離Da_thとして第1警告距離Da_1よりも長い距離(第2警告距離Da_2)を設定するとともに、所定操舵介入距離Ds_thとして第1操舵介入距離Ds_1よりも長い距離(第2操舵介入距離Ds_2)を設定する。尚、第2警告距離Da_2は、第2操舵介入距離Ds_2よりも長い距離に設定されている。
【0063】
これによれば、対象構造物STの高さHsがサイドミラー100Mの高さHm以上であり、自車両側面100Sよりも先にサイドミラー100Mが対象構造物STに接触する可能性がある場合、図6の(A)に示したように、自車両100が地点Pa2まで進んで対象距離Dが第2警告距離Da_2まで短くなると、警告処理が開始され、自車両100が地点Ps2まで進んで対象距離Dが第2操舵介入距離Ds_2まで短くなると、操舵回避処理が開始される。
【0064】
一方、対象構造物STの高さHsがサイドミラー100Mの高さHmよりも低く、自車両100がその対象構造物STに接触する場合、サイドミラー100Mがその対象構造物STに接触するのではなく、自車両側面100Sが接触するときには、図6の(B)に示したように、自車両100が地点Pa1まで進んで対象距離Dが第1警告距離Da_1まで短くなると、警告処理が開始され、自車両100が地点Ps1まで進んで対象距離Dが第1操舵介入距離Ds_1まで短くなると、操舵回避処理が開始される。
【0065】
従って、対象構造物STの高さHsがサイドミラー100Mの高さHm以上であり、自車両側面100Sよりも先にサイドミラー100Mが対象構造物STに接触する可能性がある場合、そうではない場合に比べ、自車両100が対象構造物STに近づいたときに、早めに警告処理が実行され、又、早めに操舵回避処理が実行される。このため、自車両100と対象構造物STとの接触をより確実に回避することができる。
【0066】
一方、対象構造物STの高さHsがサイドミラー100Mの高さHmよりも低く、自車両100が対象構造物STに接触する場合、サイドミラー100Mが対象構造物STに接触するのではなく、自車両側面100Sが接触するときには、自車両100が対象構造物STの比較的近くまで近づいたときに警告処理が実行され、又、操舵回避処理が実行される。このため、不必要な警告処理及び操舵回避処理の実行を回避することができる。
【0067】
従って、車両接触回避装置10によれば、不必要な警告処理及び操舵回避処理の実行を回避しつつ、自車両100と対象構造物STとの接触をより確実に回避することができる。
【0068】
<車両接触回避装置の具体的な作動>
次に、車両接触回避装置10の具体的な作動について説明する。車両接触回避装置10のECU90のCPUは、図7に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、図7のステップ700から処理を開始し、その処理をステップ705に進め、対象構造物STが存在するか否かを判定する。
【0069】
CPUは、ステップ705にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ710に進め、対象構造物STの高さHsがサイドミラー100Mの高さHm以下であるか否かを判定する。
【0070】
CPUは、ステップ710にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ715に進め、所定警告距離Da_thとして第1警告距離Da_1を設定する。次いで、CPUは、処理をステップ720に進め、所定操舵介入距離Ds_thとして第1操舵介入距離Ds_1を設定する。その後、CPUは、処理をステップ795に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0071】
一方、CPUは、ステップ710にて「No」と判定した場合、処理をステップ725に進め、所定警告距離Da_thとして第2警告距離Da_2を設定する。次いで、CPUは、処理をステップ730に進め、所定操舵介入距離Ds_thとして第2操舵介入距離Ds_2を設定する。その後、CPUは、処理をステップ795に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0072】
又、CPUは、ステップ705にて「No」と判定した場合、処理をステップ795に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0073】
更に、CPUは、図8に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、図8のステップ800から処理を開始し、その処理をステップ805に進め、対象構造物STが存在するか否かを判定する。
【0074】
CPUは、ステップ805にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ810に進め、対象距離Dが所定警告距離Da_th以下であるか否かを判定する。
【0075】
CPUは、ステップ810にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ815に進め、警告処理を実行する。その後、CPUは、処理をステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0076】
一方、CPUは、ステップ810にて「No」と判定した場合、処理をステップ820に進め、警告処理を実行しているときには警告処理を停止する。その後、CPUは、処理をステップ895に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0077】
又、CPUは、ステップ805にて「No」と判定した場合、処理をステップ895に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0078】
更に、CPUは、図9に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、図9のステップ900から処理を開始し、その処理をステップ905に進め、対象構造物STが存在するか否かを判定する。
【0079】
CPUは、ステップ905にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ910に進め、対象距離Dが所定操舵介入距離Ds_th以下であるか否かを判定する。
【0080】
CPUは、ステップ910にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ915に進め、操舵回避処理を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ920に進め、操舵回避中フラグXexeの値を「1」に設定する。操舵回避中フラグXexeは、操舵回避処理の実行中であるか否かを表すフラグであり、その値が「1」である場合、操舵回避処理が実行中であることを表し、その値が「0」である場合、操舵回避処理が実行中ではないことを表している。
【0081】
その後、CPUは、処理をステップ995に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0082】
一方、CPUは、ステップ910にて「No」と判定した場合、処理をステップ925に進め、操舵回避中フラグXexeの値が「1」であるか否かを判定する。
【0083】
CPUは、ステップ925にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ930に進め、操舵回避処理を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ935に進め、操舵回避が完了したか否か、即ち、自車両100が対象構造物STから離れ、自車走行車線LNの中央に戻されたか否かを判定する。
【0084】
CPUは、ステップ935にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ940に進め、操舵回避処理を終了する。次いで、CPUは、処理をステップ945に進め、操舵回避中フラグXexeの値を「0」に設定する。その後、CPUは、処理をステップ995に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0085】
一方、CPUは、ステップ935にて「No」と判定した場合、処理をステップ995に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0086】
又、CPUは、ステップ905又はステップ925にて「No」と判定した場合も、処理をステップ995に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0087】
以上が車両接触回避装置10の具体的な作動である。
【0088】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0089】
10…車両接触回避装置、23…操舵装置、60…周辺情報検出装置、70…警告装置、90…ECU、100…自車両、100M…サイドミラー、100S…自車両側面、ST…構造物

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9