(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185225
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物、合成皮革、及び樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20221207BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20221207BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20221207BHJP
D06N 3/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L21/00
C08K5/10
D06N3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092750
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 頼成
(72)【発明者】
【氏名】青木 優香
【テーマコード(参考)】
4F055
4J002
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055AA03
4F055AA21
4F055BA13
4F055DA08
4F055EA01
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4F055EA30
4F055FA06
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4F055FA11
4F055FA15
4F055FA39
4F055GA32
4J002BD041
4J002BP012
4J002CF003
4J002EH026
4J002EH086
4J002EH146
4J002FD023
4J002FD026
4J002GC00
4J002GF00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】
耐寒特性により優れた合成皮革を提供することを目的とする。
【解決手段】
本技術は、エラストマーと、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、を含有する樹脂組成物を提供する。前記エラストマーは、スチレン系樹脂でありうる。前記スチレン系樹脂は、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)からなる群から選ばれた1種以上のものでありうる。前記エラストマーは、ポリエチレン系樹脂でありうる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと、
塩化ビニル系樹脂と、
可塑剤と、
を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記エラストマーは、スチレン系樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂は、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)からなる群から選ばれた1種以上のものである、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エラストマーは、ポリエチレン系樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤、テレフタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、エポキシ系エステル可塑剤、及びポリエステル系可塑剤からなる群から選ばれた1種以上のものである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ガラス転移温度(Tg)が、-37℃以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
液体状の可塑剤と、エラストマーとを混合して液体状の混合物を得る第1混合工程と、
当該第1混合工程で得られた前記混合物と、塩化ビニル系樹脂とを混合する第2混合工程を経て得られる、樹脂組成物。
【請求項8】
表皮層と、
当該表皮層の少なくとも一方の主面上に樹脂層が設けられ、
当該樹脂層は、エラストマーと、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、を含有する樹脂組成物から形成される合成皮革。
【請求項9】
液体状の可塑剤と、エラストマーとを混合して液体状の混合物を得る第1混合工程と、
当該第1混合工程で得られた前記混合物と、塩化ビニル系樹脂とを混合する第2混合工程と、
を備える、樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、合成皮革、及び樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成皮革は、天然皮革の代替素材として、様々な用途に広く採用されている。近年、特に、自動車、鉄道車両、航空機等の内装部品として、天然皮革の代わりに、耐久性が優れる合成皮革が使用されている。このような合成皮革としては、基布の上に表皮層として、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系を含む樹脂層が積層されたものがある。
【0003】
塩化ビニル系樹脂は、比較的安価であり、優れた加工性を有し、良好な難燃性や手触り感を有するため、合成皮革の樹脂層に使用されている。
【0004】
例えば、焼却処分される場合や火災等の発生により燃焼する場合の塩化水素ガスの発生を充分に抑制することができ、かつ、優れた耐屈曲性を有する塩化ビニル系樹脂レザーとして、炭酸カルシウム及び塩化ビニル系樹脂を含む上層と、炭酸カルシウム及び塩化ビニル系樹脂を含む下層とからなり、上層における塩化ビニル系樹脂100質量部に対する炭酸カルシウムの含有量が下層における塩化ビニル系樹脂100質量部に対する炭酸カルシウムの含有量よりも少ない塩化ビニル系樹脂積層体と基布とが積層されたものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、塩化ビニル系樹脂を含む上層と塩化ビニル系樹脂を含む下層での炭酸カルシウムの含有量を相違させる塩化ビニル系樹脂レザーでは、耐寒特性により優れた合成皮革を得ることができないという問題がある。
【0007】
本技術は、耐寒特性により優れた合成皮革を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、エラストマーと、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含有する樹脂組成物を使用することにより、耐寒特性に優れた合成皮革を実現できることを見出した。
【0009】
すなわち、本技術は、
エラストマーと、
塩化ビニル系樹脂と、
可塑剤と、
を含有する樹脂組成物を提供する。
前記エラストマーは、スチレン系樹脂でありうる。
前記スチレン系樹脂は、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)からなる群から選ばれた1種以上のものでありうる。
前記エラストマーは、ポリエチレン系樹脂でありうる。
前記可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤、テレフタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、エポキシ系エステル可塑剤、及びポリエステル系可塑剤からなる群から選ばれた1種以上のものでありうる。
ガラス転移温度(Tg)は、-37℃以下でありうる。
また、本技術は、
液体状の可塑剤と、エラストマーとを混合して液体状の混合物を得る第1混合工程と、
当該第1混合工程で得られた前記混合物と、塩化ビニル系樹脂とを混合する第2混合工程を経て得られる、樹脂組成物を提供する。
また、本技術は、
表皮層と、
当該表皮層の少なくとも一方の主面上に樹脂層が設けられ、
当該樹脂層は、エラストマーと、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、を含有する樹脂組成物から形成される合成皮革を提供する。
また、本技術は、
液体状の可塑剤と、エラストマーとを混合して液体状の混合物を得る第1混合工程と、
当該第1混合工程で得られた前記混合物と、塩化ビニル系樹脂とを混合する第2混合工程と、
を備える、樹脂組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本技術により、耐寒特性に優れた合成皮革を提供することができる。
なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0012】
本技術について、以下の順序で説明を行う。
1.本技術の説明
2.第1の実施形態(エラストマーとしてスチレン系樹脂を使用する樹脂組成物の例)
(1)樹脂組成物の構成
(2)各成分の説明
(3)物性
(4)樹脂組成物の製造方法
3.第2の実施形態(エラストマーとしてポリエチレン系樹脂を使用する樹脂組成物の例)
(1)樹脂組成物の構成
(2)各成分の説明
4.第3の実施形態(合成皮革の例)
(1)合成皮革の構成
(2)各構成の説明
(3)合成皮革の製造方法
5.実施例
【0013】
1.本技術の説明
【0014】
樹脂組成物のガラス転移温度が低下すると、樹脂組成物のゴム領域が増加して耐寒特性の向上が期待される。本発明者は、エラストマーと、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含有させることにより、得られる樹脂組成物のガラス転移温度を低下させることができることを見出した。
【0015】
本技術に係る樹脂組成物は、エラストマーと、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含有する。
【0016】
前記エラストマーは、好ましくはスチレン系樹脂であってよい。
前記スチレン系樹脂は、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)及びスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)からなる群から選ばれた1種以上のものであってよい。
【0017】
前記エラストマーは、好ましくはポリエチレン系樹脂であってよい。
前記ポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のほか、エチレンの共重合割合が50重量%を超えるエチレン-プロピレン共重合体やエチレン-酢酸ビニル共重合体等であってもよい。
【0018】
前記可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤、テレフタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、エポキシ系エステル可塑剤、及びポリエステル系可塑剤からなる群から選ばれた1種以上のものであってよい。
【0019】
本技術に係る樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは-37℃以下、より好ましくは-38℃以下、さらに好ましくは-39℃以下、さらにより好ましくは-40℃以下であってよい。
【0020】
2.第1の実施形態(エラストマーとしてスチレン系樹脂を使用する樹脂組成物の例)
【0021】
(1)樹脂組成物の構成
【0022】
本実施形態に係る樹脂組成物は、エラストマーとしてスチレン系樹脂を使用する。すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物は、スチレン系樹脂と、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含有する。
【0023】
(2)各成分の説明
【0024】
[スチレン系樹脂]
【0025】
本実施形態に係る樹脂組成物に使用されるスチレン系樹脂とは、スチレンに代表される芳香族ビニル単量体をモノマーの一成分として重合して得られる樹脂をいう。このようなスチレン系樹脂として、芳香族ビニル単量体の単独重合体、芳香族ビニル単量体を主成分として他の共重合性を有する単量体を共重合させた共重合体が挙げられる。他の共重合性を有する単量体としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソなどが挙げられる。これらを芳香族ビニル単量体と共重合させる場合は、1種類を単独で使用しても、2種以上の化合物を併用してもよい。また、スチレン系樹脂は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
スチレン系樹脂は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
スチレン系樹脂として、具体的には、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)又はその水添物(SEEPS-OH:末端水酸基変性)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)等が挙げられる。スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)の市販品として、商品名「セプトン(登録商標)2002」(クラレ社製)、商品名「セプトン(登録商標)2104」(クラレ社製)等を挙げることができる。スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)の市販品として、商品名「セプトン(登録商標)4033」(クラレ社製)等が挙げられる。スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)又はその水添物の市販品として、商品名「セプトン(登録商標)HG252」(クラレ社製)等が挙げられる。スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)の市販品として、商品名「セプトン(登録商標)8007L」(クラレ社製)等が挙げられる。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)の市販品として、商品名「SIS5505P」(JSR社製)等が挙げられる。スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)の市販品として、商品名「TR2000」(JSR社製)等が挙げられる。
【0027】
スチレン系樹脂の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらにより好ましくは4%以上であってよい。また、スチレン系樹脂の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは6%以下、5%以下であってよい。
【0028】
[塩化ビニル系樹脂]
【0029】
塩化ビニル系樹脂(PVC)とは、塩化ビニル単量体をモノマーの一成分として重合して得られる樹脂をいう。このような塩化ビニル系樹脂(PVC)としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体を挙げることができる。
【0030】
上記共重合可能な他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフイン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、塩化ビニル系樹脂は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。さらに、塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルブレンド樹脂であってもよい。
【0031】
上記共重合可能な他の単量体の共重合体における含有量は、好ましくは、50重量%以下、より好ましくは10重量%以下であってよい。
【0032】
塩化ビニル系樹脂の市販品として、商品名「PSH-24」(カネカ社製)等が挙げられる。また、塩化ビニルブレンド樹脂の市販品として、商品名「PBM-B5F」(カネカ社製)等が挙げられる。
【0033】
塩化ビニル系樹脂の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であってよい。また、塩化ビニル系樹脂の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下であってよい。
【0034】
[可塑剤]
【0035】
可塑剤とは、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂と混合することにより、当該熱可塑性樹脂に塑性を付与しうるものをいう。このような可塑剤として、例えば、フタル酸ジアルキル(C9~C11)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、及びフタル酸ジブチル(DBP)等のフタル酸エステル系可塑剤;テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)等のテレフタル酸エステル系可塑剤;アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)等のクエン酸エステル系可塑剤;アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)等のアジピン酸エステル系可塑剤;ジプロピレングリコールビス安息香酸エステル等の安息香酸エステル系可塑剤;4,5-エポキシ-1,2-シクロヘキサンカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)等のエポキシエステル系可塑剤;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)等の非フタル酸系可塑剤が挙げられる。また、難燃性可塑剤として、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル系可塑剤が挙げられる。
【0036】
フタル酸エステル系可塑剤の市販品として、商品名「PL-200」(シージーエスター社製)、商品名「DINP」(シージーエスター社製)等が挙げられる。テレフタル酸エステル系可塑剤の市販品として、商品名「GL300」(LGケミカル社製)等が挙げられる。クエン酸エステル系可塑剤の市販品として、商品名「ATBC」(田岡化学社製)等が挙げられる。アジピン酸エステル系可塑剤の市販品として、商品名「DINA」(田岡化学社製)等が挙げられる。安息香酸エステル系可塑剤の市販品として、商品名「PN-6120」(ADEKA社製)等が挙げられる。エポキシエステル系可塑剤の市販品として、商品名「モノサイザー(登録商標)W-150」(DIC社製)等が挙げられる。非フタル酸系可塑剤の市販品として、商品名「Hexamoll(登録商標)DINCH(登録商標)」(BASFジャパン)等が挙げられる。難燃性可塑剤の市販品として、商品名「TCP」(大八化学工業社製)等が挙げられる。
【0037】
前記可塑剤の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であってよい。また、前記可塑剤の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下であってよい。
【0038】
[その他の添加剤]
【0039】
本実施形態に係る樹脂組成物は、可塑剤以外の添加剤を含有してもよい。添加剤として、炭酸カルシウム、発泡剤、セル調整剤、増粘剤、減粘剤、界面活性剤、消泡剤、脱泡剤、熱安定剤、光安定剤、耐アミン防止剤、難燃剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、分散剤等が挙げられる。
【0040】
前記添加剤の含有量は、本技術の効果を損なわない限り、特に限定されない。炭酸カルシウムの含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは1~60%、より好ましくは3~40%、さらに好ましくは5~30質量%であってよく、難燃剤の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは0.1~20%、より好ましくは0.5~15%、さらに好ましくは1~10質量%であってよく、帯電防止剤の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは0.1~20%、より好ましくは0.5~15%、さらに好ましくは1~10質量%であってよく、その他の添加剤の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは0.01~15%、より好ましくは0.1~10%、さらに好ましくは0.5~5質量%であってよい。
【0041】
(3)物性
【0042】
[ガラス転移温度(Tg)]
【0043】
本実施形態に係る樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは-37℃以下、より好ましくは-38℃以下、さらに好ましくは-39℃以下、さらにより好ましくは-40℃以下であってよい。
ガラス転移温度(Tg)が、-37℃以下であるとゴム状態で存在できる温度域が増え、耐寒特性が向上する。
【0044】
ガラス転移温度(Tg)の測定は、例えば、示差走査熱量測定装置(製品名「DSC6220」、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用して行うことができる。
【0045】
(4)樹脂組成物の製造方法
【0046】
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、液体状の可塑剤と、エラストマーとを混合して液体状の混合物を得る第1混合工程と、当該混合工程で得られた前記混合物と、塩化ビニル系樹脂とを混合する第2混合工程と、を備える。本実施形態に係る樹脂組成物は、液体状の可塑剤と、エラストマーとを混合して液体状の混合物を得る第1混合工程と、当該第1混合工程で得られた前記混合物と、塩化ビニル系樹脂とを混合する第2混合工程を経て得られる。以下、各工程について説明する。
【0047】
[第1混合工程]
【0048】
第1混合工程では、液体状の可塑剤とエラストマーとを混合して液体状の混合物を得る。本工程において、液体状の可塑剤とエラストマーとを混合して液体状の混合物を得る。本工程で使用する可塑剤及びエラストマーは、上記2の(2)で説明したものと同じなので説明は省略する。通常、エラストマーは常温で固体であり、エラストマーを液体状の可塑剤と混合し、エラストマーを可塑剤に溶解させるために、混合する際に加温するのが好ましい。加温する温度は、好ましくは90℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であってよく、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下、さらに好ましくは135℃以下であってよい。
【0049】
[第2混合工程]
【0050】
第2混合工程では、前記第1混合工程で得られた前記混合物と、塩化ビニル系樹脂とを混合する。本工程で使用する塩化ビニル系樹脂は、上記2の(2)で説明したものと同じなので説明は省略する。また、本工程では、前記混合物に塩化ビニル系樹脂をそのまま混合してもよく、さらに、炭酸カルシウム、発泡剤、セル調整剤、増粘剤、減粘剤、界面活性剤、消泡剤、脱泡剤、熱安定剤、光安定剤、耐アミン防止剤、難燃剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、分散剤等の添加剤を混合させてもよい。
【0051】
3.第2の実施形態(エラストマーとしてポリエチレン系樹脂を使用する樹脂組成物の例)
【0052】
(1)樹脂組成物の構成
【0053】
本実施形態に係る樹脂組成物は、エラストマーとしてポリエチレン系樹脂を使用する。すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂と、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含有する。
【0054】
(2)各成分の説明
【0055】
[ポリエチレン系樹脂]
【0056】
本実施形態に係る樹脂組成物に使用されるポリエチレン系樹脂とは、エチレンを主単量体(すなわち、単量体のなかの主成分)とする樹脂をいう。また、エチレン単量体を主成分として他の共重合性を有する単量体を共重合させた共重合体が挙げられる。他の共重合性を有する単量体としては、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。これらをエチレン単量体と共重合させる場合は、1種類を単独で使用しても、2種以上の化合物を併用してもよい。また、ポリエチレン系樹脂は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0057】
ポリエチレン系樹脂として、具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のほか、エチレンの共重合割合が50重量%を超えるエチレン-プロピレン共重合体やエチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ポリエチレン系樹脂の市販品として、商品名「フローセン(登録商標)Q16190N」(住友精化社製)、商品名「ウルトラセン(登録商標)626」(東ソー社製)、商品名「ウルトラセン(登録商標)751」(東ソー社製)、商品名「ウルトラセン(登録商標)13B53D」(東ソー社製)等を挙げることができる。
【0059】
ポリエチレン系樹脂の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、さらに好ましくは4.0質量%以上であってよい。また、ポリエチレン系樹脂の含有量は、樹脂組成物の質量に対して、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下であってよい。
【0060】
本実施形態に係る樹脂組成物に含有される可塑剤、その他の添加剤は、上記2.(2)と同じものなので説明を省略する。また、本実施形態に係る樹脂組成物の物性及び樹脂組成物の製造方法は、上記2.(3)、(4)と同じものなので説明を省略する。
【0061】
4.第3の実施形態(合成皮革の例)
【0062】
(1)合成皮革の構成
【0063】
本実施形態に係る合成皮革は、表皮層と、当該表皮層の少なくとも一方の主面上に樹脂層が設けられ、当該樹脂層は、エラストマーと、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、を含有する樹脂組成物から形成される。
なお、樹脂層に含まれるエラストマーと、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤、及び他の添加剤は上記2の(2)で説明したものと同じなので説明は省略する。
【0064】
(2)各構成の説明
【0065】
[表皮層]
【0066】
本実施形態における表皮層は、後述する基布層の主面の一方の面に配置されうる。良好な弾力性、良好な耐久性及び表面に凹凸を形成する際の加工性を良好なものとする観点から、表皮層は、好ましくはウレタン系樹脂を含みうる。表皮層は、ウレタン系樹脂の他に、他の樹脂を含みうる。表皮層に含まれる他の樹脂として、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0067】
表皮層に含まれるウレタン系樹脂としては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン等が好ましい。
【0068】
表皮層は、ウレタン系樹脂を1種類のみ含んでもよく、また、2種以上を含んでもよい。さらに、表皮層は、上記樹脂以外の樹脂、充填剤、安定化剤、着色剤、難燃剤等の添加剤を含んでもよい。
【0069】
表皮層の形成方法は、例えば、上記のウレタン系樹脂、他の樹脂、添加剤等の各成分を含む表皮層形成用樹脂組成物を調製し、塗布法、ペースト加工法、カレンダー法、溶融押出法等によりシート状に成形して表皮層を形成してもよい。なお、表皮層の厚みは、特に制限されないが、柔軟性、感触等の観点から、表皮層の厚みは、好ましくは、5~350μmの範囲内であってよく、より好ましくは、20~200μmの範囲内であってよい。
【0070】
[樹脂層]
【0071】
本実施形態で使用する樹脂層は、エラストマーと、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含有する樹脂層形成用樹脂組成物から形成される。また、前記樹脂層は、炭酸カルシウム、可塑剤以外の添加剤を含有してもよい。このような添加剤として、発泡剤、セル調整剤、増粘剤、減粘剤、界面活性剤、消泡剤、脱泡剤、熱安定剤、光安定剤、耐アミン防止剤、難燃剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、分散剤等が挙げられる。
【0072】
前記樹脂層の厚みは、特に限定されないが、例えば、好ましくは1μm以下、より好ましくは700μm以下、さらに好ましくは500μm以下であってよい。また、前記樹脂層の厚みは、例えば、好ましくは30μm以上、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは200μm以上であってよい。
【0073】
[基布層]
【0074】
本実施形態で使用する基布層は特に限定されず、このような基布層として、例えば、綿、絹等の天然繊維、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ビニロン系等の合成繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維から形成された織布、編布等を挙げることができる。上記基布層の厚さは、特に限定されない。
【0075】
前記基布層の厚みは、特に限定されないが、例えば、好ましくは10mm以下、より好ましくは1.5mm以下であってよい。また、前記基布層の厚みは、例えば、好ましくは0.15mm以上、より好ましくは0.3mm以上であってよい。
【0076】
[接着層]
【0077】
本実施形態に係る合成皮革において、前記基布層と樹脂層との間に接着層を有していてもよい。接着層は、基布層と樹脂層とを接着させる機能を有しうる。このような接着層は、基布層表面に接着剤を付与し、乾燥することにより形成されてもよい。基布層表面に接着剤を付与する方法として、例えば、塗布法、転写法等が挙げられる。このような接着剤として、例えば、ウレタン系接着剤、塩化ビニル系接着剤、2液硬化型ポリエステル系接着剤、2液硬化型ウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0078】
[表面処理層]
【0079】
本実施形態に係る合成皮革において、表皮層の、樹脂層側とは反対側の主面に、表面処理層を有していてもよい。表面処理層を有することにより、さらに、合成皮革に良好な感触を付与することができ、外観や耐久性を向上させることができる。表面処理層は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂を含んでもよく、有機粒子、着色剤等を含んでいてもよい。
【0080】
前記表面処理層の厚みは、特に限定されないが、例えば、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下であってよい。また、前記基布層の厚みは、例えば、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であってよい。
【0081】
(3)合成皮革の製造方法
【0082】
本実施形態に係る合成皮革は、以下に示される合成皮革の製造方法によって製造されるのが好ましい。
本実施形態に係る合成皮革の製造方法は、前記表皮層形成用樹脂組成物を用いて、表皮層を形成する表皮層形成工程と、前記表皮層の一方の主面に、前記樹脂層形成用樹脂組成物を付与して、前記表皮層と樹脂層との積層体を形成する樹脂層積層体形成工程と、前記樹脂層積層体の樹脂層側の主面に、基布層を接着する接着工程を有していてもよい。
【0083】
[表皮層形成工程]
【0084】
本工程において、ウレタン系樹脂を含む表皮層形成用樹脂組成物を使用して、表皮層を形成する。なお、表皮層形成用樹脂組成物は、上記で説明したものと同じなので説明は省略する。
表皮層を形成する方法は、特に制限されないが塗布法、ペースト加工法、カレンダー法、溶融押出法等が挙げられる。
好ましくは、剥離基材の表面に、表皮層形成用樹脂組成物を、ナイフコーターを使用して、塗布する塗布法により表皮層を形成してもよい。
また、カレンダー法により、表皮層形成用樹脂組成物をシート状に成形して表皮層を形成してもよい。
【0085】
[樹脂層積層体形成工程]
【0086】
本工程は、表皮層形成工程で形成した表皮層の一方の主面に前記樹脂層形成用樹脂組成物を付与して、前記表皮層と樹脂層との積層体を形成する工程である。
樹脂層形成用樹脂組成物は、上記で説明したものと同じなので説明は省略する。
表皮層に樹脂層形成用樹脂組成物を付与する方法としては、液状の樹脂層形成用樹脂組成物をナイフコーターなどによって表皮層の主面に塗布する塗布法等が挙げられる。液状の樹脂層形成用樹脂組成物が塗布された表皮層を乾燥し、前記樹脂層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、表皮層と樹脂層との樹脂層積層体を形成することができる。
【0087】
[接着工程]
【0088】
本工程は、樹脂層積層体形成工程で得た表皮層と樹脂層との積層体の、樹脂層側の主面に、基布層を接着する工程である。
樹脂層側の主面と基布層との接着は、液状の樹脂層形成用樹脂組成物が完全に硬化する前に、樹脂層側に基布層を圧着し、その後、前記樹脂層形成用樹脂組成物を硬化させてもよく、また、基布層又は樹脂層の表面に接着剤を塗布し、加熱、乾燥させることにより接着層を形成し、当該接着層を介して樹脂層と接着してもよい。接着層を形成する接着剤は、上記したものと同じなので説明は省略する。
【0089】
本実施形態においては、さらに、表皮層の他方の主面(表皮層の基布層側とは反対側の主面)に、表面処理層を形成する表面処理層形成工程を有してもよい。
表面処理層形成工程においては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂、有機粒子、着色剤等を含む表面処理層形成用樹脂組成物を表皮層の他方の主面に付与することにより行われる。表面処理層の形成は、例えば、グラビアプリント法、リバースコーター、ダイレクトコーター等のコーティング装置による塗布法等により行うのが好ましい。
【0090】
本技術に係る樹脂組成物は、耐寒特性に優れた合成皮革を製造するために好適に使用される。本技術に係る樹脂組成物は、特に、車両用合成皮革の製造に使用されるのが好ましい。
【0091】
本技術は、以下のような構成を採用することもできる。
[1]
エラストマーと、
塩化ビニル系樹脂と、
可塑剤と、
を含有する樹脂組成物。
[2]
前記エラストマーは、スチレン系樹脂である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記スチレン系樹脂は、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)からなる群から選ばれた1種以上のものである、[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記エラストマーは、ポリエチレン系樹脂である、[1]に記載の樹脂組成物。
[5]
前記可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤、テレフタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、エポキシ系エステル可塑剤、ポリエステル系可塑剤からなる群から選ばれた1種以上のものである、[1]~[4]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[6]
ガラス転移温度(Tg)が、-37℃以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[7]
液体状の可塑剤と、エラストマーとを混合して液体状の混合物を得る第1混合工程と、
当該第1混合工程で得られた前記混合物と、塩化ビニル系樹脂とを混合する第2混合工程を経て得られる、樹脂組成物。
[8]
表皮層と、
当該表皮層の少なくとも一方の主面上に樹脂層が設けられ、
当該樹脂層は、エラストマーと、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、を含有する樹脂組成物から形成される合成皮革。
[9]
液体状の可塑剤と、エラストマーとを混合して液体状の混合物を得る第1混合工程と、
当該第1混合工程で得られた前記混合物と、塩化ビニル系樹脂とを混合する第2混合工程と、
を備える、樹脂組成物の製造方法。
【実施例0092】
5.実施例
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものでない。
【0093】
本実施例において、ガラス転移温度は、上述の一実施形態にて説明した測定方法により求められたものである。
【0094】
[実施例1]
【0095】
可塑剤としてフタル酸ジアルキル(C9~C11)(商品名「PL-200」、シージーエスター社製)90質量部に、スチレン系樹脂(商品名「セプトン(登録商標)2002」、クラレ社製)10質量部を混合し、130℃で溶解させた。スチレン系樹脂が溶解したフタル酸ジアルキル(C9~C11)を放冷した。その後、スチレン系樹脂とフタル酸ジアルキル(C9~C11)の混合物にペーストPVC(商品名「PSH-24」、カネカ社製)100質量部、BaZn系安定剤(商品名「AC-285」、ADEKA社製)3質量部を混合し、樹脂組成物を得た。
【0096】
得られた樹脂組成物についてDSCを使用してガラス転移温度を測定した。ガラス転移温度の測定の際、樹脂組成物を20℃から120℃まで昇温し一度ゲル化させた。その後、120℃から-75℃まで冷却し、再び50℃まで昇温させた際のガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表1に示されるとおりの値を有した。
【0097】
[実施例2]
【0098】
可塑剤としてフタル酸ジイソノニル(商品名「DINP」、シージーエスター社製)を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表1に示されるとおりの値を有した。
【0099】
[実施例3]
【0100】
可塑剤としてテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(商品名「GL300」、LGケミカル社製)を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表1に示されるとおりの値を有した。
【0101】
[実施例4]
【0102】
可塑剤としてフタル酸ジアルキル(C9~C11)(商品名「PL-200」、シージーエスター社製)45質量部、及びアセチルクエン酸トリブチル(商品名「ATBC」、田岡化学社製)45質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表1に示されるとおりの値を有した。
【0103】
[実施例5]
【0104】
可塑剤としてフタル酸ジアルキル(C9~C11)(商品名「PL-200」、シージーエスター社製)45質量部、及びアジピン酸ジイソノニル(商品名「DINA」、田岡化学社製)45質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表1に示されるとおりの値を有した。
【0105】
[実施例6]
【0106】
可塑剤としてフタル酸ジアルキル(C9~C11)(商品名「PL-200」、シージーエスター社製)45質量部、及びグリコールジエステル(商品名「PN-6120」、ADEKA社製)45質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表1に示されるとおりの値を有した。
【0107】
[実施例7]
【0108】
可塑剤としてエポキシ系エステル(商品名「W-150」、DIC社製)90質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表1に示されるとおりの値を有した。
【0109】
[実施例8]
【0110】
可塑剤としてフタル酸ジアルキル(C9~C11)(商品名「PL-200」、シージーエスター社製)45質量部、及びフタル酸系ポリエステル(商品名「W-23-S」、DIC社製)45質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表1に示されるとおりの値を有した。
【0111】
[実施例9]
【0112】
可塑剤として1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(商品名「DINCH」、BASFジャパン社製)90質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表1に示されるとおりの値を有した。
【0113】
[比較例1]
【0114】
スチレン系樹脂(商品名「セプトン(登録商標)2002」、クラレ社製)を配合しない点以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表1に示されるとおりの値を有した。
【0115】
試験結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
[実施例10]
【0118】
スチレン系樹脂(商品名「セプトン(登録商標)2002」、クラレ社製)20質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表2に示されるとおりの値を有した。
【0119】
[実施例11]
【0120】
スチレン系樹脂(商品名「セプトン(登録商標)2104」、クラレ社製)10質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表2に示されるとおりの値を有した。
【0121】
[実施例12]
【0122】
スチレン系樹脂(商品名「セプトン(登録商標)HG-252」、クラレ社製)10質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表2に示されるとおりの値を有した。
【0123】
[実施例13]
【0124】
スチレン系樹脂(商品名「セプトン(登録商標)4033」、クラレ社製)10質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表2に示されるとおりの値を有した。
【0125】
[実施例14]
【0126】
スチレン系樹脂(商品名「セプトン(登録商標)8007L」、クラレ社製)10質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表2に示されるとおりの値を有した。
【0127】
[実施例15]
【0128】
スチレン系樹脂(商品名「SIS 5505P」、JSR社製)10質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表2に示されるとおりの値を有した。
【0129】
試験結果を表2に示す。
【0130】
【0131】
[実施例16]
【0132】
ポリエチレン系樹脂(商品名「フローセン(登録商標)Q16190N」、住友精化社製)5質量部、可塑剤としてフタル酸ジアルキル(C9~C11)(商品名「PL-200」、シージーエスター社製)95質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表3に示されるとおりの値を有した。
【0133】
[実施例17]
【0134】
ポリエチレン系樹脂(商品名「ウルトラセン(登録商標)626」、東ソー社製)5質量部、可塑剤としてフタル酸ジアルキル(C9~C11)(商品名「PL-200」、シージーエスター社製)95質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表3に示されるとおりの値を有した。
【0135】
[実施例18]
【0136】
ポリエチレン系樹脂(商品名「ウルトラセン(登録商標)751」、東ソー社製)5質量部、可塑剤としてフタル酸ジアルキル(C9~C11)(商品名「PL-200」、シージーエスター社製)95質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表3に示されるとおりの値を有した。
【0137】
[実施例19]
【0138】
ポリエチレン系樹脂(商品名「ウルトラセン(登録商標)13B53D」、東ソー社製)10質量部を使用する以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物を調製し、ガラス転移温度を測定した。得られた樹脂組成物の構成及び物性は、表3に示されるとおりの値を有した。
【0139】
試験結果を表3に示す。
【0140】
【0141】
表1~3から、以下のことが分かる。
【0142】
実施例1~19の樹脂組成物はいずれも、ガラス転移温度が-37℃以下であり、耐寒特性に優れていることが分かる。また、エラストマーを配合しない比較例1と実施例1とを比較すると実施例1は、比較例1よりもガラス転移温度が低く、耐寒特性に優れていることが示されている。
【0143】
以上、本技術の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0144】
例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等を用いてもよい。
【0145】
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等は、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0146】
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。