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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185233
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01H 19/06 20060101AFI20221207BHJP
   H01H 19/03 20060101ALI20221207BHJP
   H01H 9/04 20060101ALI20221207BHJP
   H01H 19/00 20060101ALI20221207BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221207BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01H19/06
H01H19/03
H01H9/04 D
H01H19/00 Y
G03B17/02
H04N5/225 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092764
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】里村 章悟
(72)【発明者】
【氏名】浅井 良和
(72)【発明者】
【氏名】秋本 高寛
(72)【発明者】
【氏名】長津 頌
(72)【発明者】
【氏名】神谷 淳
【テーマコード(参考)】
2H100
5C122
5G052
5G219
【Fターム(参考)】
2H100AA18
2H100CC07
2H100EE00
2H100EE06
5C122EA02
5C122GE11
5C122GE20
5G052AA05
5G052BB02
5G052HA13
5G219HT02
5G219HU01
5G219KS10
5G219NS03
(57)【要約】
【課題】回転操作部材を有し、防塵防滴性能に優れた電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器100は、回転操作が可能な回転操作部材200と、回転操作部材を回転可能に保持するベース部材240と、回転操作部材と一体回転可能であり、N極とS極が回転方向に交互に着磁された磁石210と、回転操作部材の回転中心軸が延びる軸方向において磁石を間に挟んだ両側に配置され、それぞれ中心部から径方向外側に向かって放射状に延びる複数の櫛歯部221、231を有する第1の磁性体220および第2の磁性体230とを有する。軸方向において、第1の磁性体、磁石および第2の磁性体は、ベース部材を挟んで回転操作部材とは反対側に配置されている。回転操作部材は、その外周部の一部が電子機器の外装部材10に設けられた開口部11から外部に露出し、磁石、第1の磁性体および第2の磁性体は、外装部材により覆われている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作が可能な回転操作部材と、
前記回転操作部材を回転可能に保持するベース部材と、
前記回転操作部材と一体回転可能であり、N極とS極が回転方向に交互に着磁された磁石と、
前記回転操作部材の回転中心軸が延びる軸方向において前記磁石を間に挟んだ両側に配置され、それぞれ中心部から径方向外側に向かって放射状に延びる複数の櫛歯部を有する第1の磁性体および第2の磁性体とを有する電子機器であって、
前記軸方向において、前記第1の磁性体、前記磁石および前記第2の磁性体は、前記ベース部材を挟んで前記回転操作部材とは反対側に配置されており、
前記回転操作部材は、その外周部の一部が前記電子機器の外装部材に設けられた開口部から外部に露出し、
前記磁石、前記第1の磁性体および前記第2の磁性体は、前記外装部材により覆われていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記ベース部材は、
前記外装部材に対して前記開口に繋がる隙間をあけて近接する第1の面と、
前記隙間における前記開口とは反対側の開口端に面する第2の面とを有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記外装部材に対して前記開口に繋がる隙間をあけて近接しており、
前記ベース部材と前記外装部材との間に前記隙間を塞ぐシール部材が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記第1の磁性体の前記櫛歯部の間を延びる延長部を有し、
前記シール部材の少なくとも一部が、前記延長部に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体は、それらの前記軸方向での距離を決めるスペーサ部材を間に挟んで前記ベース部材に固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記スペーサ部材が、前記回転中心軸を挟んだ互いに反対側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記スペーサ部材は、前記距離を決めるとともに、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の前記軸方向に直交する方向での位置を決めることを特徴とする請求項5または6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記第2の磁性体を保持し、前記ベース部材に対して前記回転方向での回転が阻止され、かつ前記軸方向における所定量の移動が可能な磁性体保持部材を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記磁石を保持する磁石保持部材を有し、
前記磁石保持部材は、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体のうち少なくとも一方と前記磁石との間にギャップを設けるための凸部を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記第1の磁性体の前記櫛歯部の間から前記磁石に向かって突出する延長部を有し、
該延長部により前記第1の磁性体と前記磁石との間にギャップが設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項11】
前記磁性体保持部材は、前記第2の磁性体の前記櫛歯部の間から前記磁石に向かって突出する延長部を有し、
該延長部により前記第2の磁性体と前記磁石との間にギャップが設けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項12】
前記磁石と前記第1の磁性体および前記第2の磁性体のうち少なくとも一方の磁性体との間に、該一方の磁性体と前記磁石との間のギャップを設けるためのスペーサ部材が配置されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項13】
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体のうち回転操作された前記回転操作部材が前記軸方向にて片寄せされる側の一方の磁性体と前記磁石との間のギャップが、他方の磁性体と前記磁石との間のギャップよりも狭いことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項14】
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体のうち回転操作された前記回転操作部材が前記軸方向にて片寄せされる側の一方の磁性体の前記軸方向での厚みが、他方の磁性体の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項15】
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体のうち回転操作された前記回転操作部材が前記軸方向にて片寄せされる側の一方の磁性体の外径が、他方の磁性体の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項16】
前記磁石において、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体のうち回転操作された前記回転操作部材が前記軸方向にて片寄せされる側の一方の磁性体と対向する面の表面積が、他方の磁性体と対向する面の表面積よりも広いことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項17】
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体のうち回転操作された前記回転操作部材が前記軸方向にて片寄せされる側の一方の磁性体における前記磁石に対向する面の表面積が、他方の磁性体における前記磁石に対向する面の表面積よりも広いことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項18】
前記回転操作部材において回転操作を受ける操作面は、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体のうち回転操作された前記回転操作部材が前記軸方向にて片寄せされる側に向かって径が大きくなる傾斜形状を有することを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気(磁力)を利用してユーザに回転操作部材の操作感を与えたり回転操作部材の回転検出を行ったりする電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置等の多くの電子機器には、回転操作部材(ダイヤル)が設けられている。例えば撮像装置では、ユーザがダイヤルを回転操作することで、撮像に関する設定値の変更や撮像に関する機能の選択を行うことができる。
【0003】
特許文献1には、回転操作部材に一体回転可能に取り付けられて回転方向にN極とS極が交互に着磁された円環状の永久磁石と、該永久磁石の着磁面に対向する放射状の複数の櫛歯部を備えた磁性体とを軸方向に重ねた回転操作装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-87672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された回転操作装置では、電子機器の外部に磁石と磁性体が露出する構造を有するため、磁石と磁性体に鉄粉等の磁性塵埃が付着し易い。また、防塵防滴性能も不十分である。
【0006】
本発明は、回転操作部材を有し、防塵防滴性能に優れた電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての電子機器は、回転操作が可能な回転操作部材と、回転操作部材を回転可能に保持するベース部材と、回転操作部材と一体回転可能であり、N極とS極が回転方向に交互に着磁された磁石と、回転操作部材の回転中心軸が延びる軸方向において磁石を間に挟んだ両側に配置され、それぞれ中心部から径方向外側に向かって放射状に延びる複数の櫛歯部を有する第1の磁性体および第2の磁性体とを有する。軸方向において、第1の磁性体、磁石および第2の磁性体は、ベース部材を挟んで回転操作部材とは反対側に配置されている。回転操作部材は、その外周部の一部が電子機器の外装部材に設けられた開口部から外部に露出し、磁石、第1の磁性体および第2の磁性体は、外装部材により覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転操作部材を有し、防塵防滴性能に優れた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のカメラの斜視図。
図2】実施例1のカメラの構成を示すブロック図。
図3】実施例1のカメラに設けられたメインダイヤルユニットを示す斜視図および断面図。
図4】実施例1におけるメインダイヤルユニットの斜視図。
図5】実施例2におけるダイヤルユニットの磁石と磁性体の位置関係を示す断面図。
図6】実施例3おけるダイヤルユニットの斜視図。
図7】実施例4におけるダイヤルユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例0011】
図1(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施例1である電子機器(撮像装置)としてのデジタルカメラ(以下、単にカメラという)100を示している。図1(a)は斜め前側から見たカメラ100を示し、図1(b)は斜め後ろ側から見たカメラ100を示している。カメラ100には、不図示の撮像レンズユニットが着脱可能に装着される。
【0012】
カメラ100の上面には、シャッターボタン30、メインダイヤル200およびモード切替えダイヤル40が設けられている。シャッターボタン30はユーザが撮像を指示するために操作する操作部材である。メインダイヤル200は、ユーザがシャッター速度や絞り値等の撮像に関する各種設定値を変更するために時計回り方向および反時計回り方向に回転操作可能な回転操作部材である。シャッターボタン30とメインダイヤル200は、カメラ100のグリップ部の上面において、グリップ部を把持したユーザの右手の人差し指で操作し易い位置に配置されている。
【0013】
メインダイヤル200は、その外周面をユーザが操作し易いように、カメラ100の外装部材としての上面カバー10のうちメインダイヤル200の周辺部分よりもメインダイヤル200の一部が径方向に突出(露出)するように配置されている。メインダイヤル200の回転中心軸が延びる方向を、以下の説明において軸方向という。
【0014】
モード切替えダイヤル40は、ユーザが撮像に関するモードを切り替えるために操作する操作部材である。また、カメラ100の上面には電源スイッチ50が設けられている。電源スイッチ50は、ユーザがカメラ100の電源をONまたはOFFするために操作する操作部材である。
【0015】
カメラ100の背面には、画像表示部70およびSETボタン60が設けられている。画像表示部70は、TFT液晶や有機EL等の表示デバイスにより構成され、各種設定値を選択したり変更したりするためのメニュー画面や撮像により得られた画像を表示する。SETボタン60はユーザがメニュー画面内の選択項目を決定する等のために操作する操作部材である。
【0016】
図2は、図1に示したカメラ100の電気的および磁気的な構成を示している。図2中の構成要素のうち図1を用いて説明した構成要素については説明を省略する。
【0017】
カメラ100内には、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであるROM101と、揮発性メモリであるRAM102が設けられている。ROM101には、CPU130上で動作するプログラムが格納されている。RAM102は、撮像により得られた画像や画像処理により得られた画像データを一時的に記憶するバッファとして用いられたり、CPU130のワークメモリとして用いられたりする。
【0018】
電源部105は、一次電池または二次電池やACアダプタ等により構成され、前述した電源スイッチ50がON操作されると、直接または不図示のDC-DCコンバータ等を介してカメラ100の各部に電源を供給する。
【0019】
CPU130は、カメラ100の動作全体を制御する。また、CPU130は、後述する検出部140により検出されたメインダイヤル200の操作に応じて、シャッター速度や絞り値等の各種設定値を変更し、さらに画像表示部70の表示を変更する。
【0020】
CPU130には、タイマ131およびカウンタ132が備えられている。タイマ131は計時動作を行い、カウンタ132はメインダイヤル200その他の操作部材の操作回数をカウントする。
【0021】
磁力方式の回転操作装置としてのダイヤルユニット20は、前述したメインダイヤル200、磁石210、検出部140、第1の磁性体220および第2の磁性体230より構成されている。磁石210は、リング状の永久磁石であり、S極とN極が周方向(回転方向)にて交互に所定ピッチで軸方向に着磁されている。磁石210は、メインダイヤル200に対して一体回転可能に取り付けられている。メインダイヤル200がユーザにより回転操作されることで磁石210が回転すると、後述する検出部140が磁石210からの磁束密度の変化を検出する。
【0022】
第1の磁性体220および第2の磁性体230は、メインダイヤル200とともに回転する磁石210との間で磁力による回転抵抗力を発生するために設けられている。この回転抵抗力は、メインダイヤル20を回転操作するユーザに適度な操作感(クリック感)を与える。
【0023】
検出部140は、第1の磁場検出部141と第2の磁場検出部142とを有する。各磁場検出部としては、ホールICセンサやMRセンサ等を用いることができる。第1の磁場検出部141と第2の磁場検出部142のそれぞれに対して、上限閾値と下限閾値が設定されている。第1の磁場検出部141と第2の磁場検出部142は、検出した磁束密度が上限閾値を超えたとき又は下限閾値を下回ったときに検出信号を出力する。CPU130は、所定のタイミングで第1の磁場検出部141と第2の磁場検出部142から出力される検出信号を読み込み、メインダイヤル200の回転方向と回転量を取得する。
図3(a)は、ダイヤルユニット20の機械的構成を示している。図3(b)は、ダイヤルユニット20をメインダイヤル200の回転中心軸に沿った断面を示している。なお、図3(a)では、図3(b)に示した上面カバー10の図示を省略している。
【0024】
メインダイヤル200は、これを操作するユーザが触れる外周面である操作面201と、メインダイヤル200の回転中心となる回転軸部202とを有する。操作面201は、
軸方向に対して平行または若干傾きを有する面である。回転軸部202は、ベース部材240の軸受け部241により回転可能に支持されている。回転軸部202は、軸方向においてベース部材240の軸受け部241を貫通した先まで延びており、その先端には接着等により磁石保持部材250が固定されている。磁石固定部材250の外周には、接着またはインサート成形等によって磁石210が固定されている。これにより、メインダイヤル200と磁石210が一体回転可能となる。なお、回転軸部202に相当する回転軸部を磁石保持部材250に設け、該回転軸部にメインダイヤル200を取り付けてもよい。
【0025】
また、磁石210を挟む軸方向両側には、第1の磁性体220と第2の磁性体230が配置されている。磁石210と第1の磁性体220および第2の磁性体230との間には、これらが磁石210の回転時に直接接触すると摩耗が生じ易いため、後述するスペース部材によって隙間が設けられている。
【0026】
第1の磁性体220と第2の磁性体230は、同一形状を有しており、磁石210の極数と同数かつ同ピッチで中心部から径方向外側に向かって放射状に延びる櫛歯部221、231をそれぞれ有する。これら櫛歯部221、231と磁石210の磁極との回転方向での位置関係の変化に応じて、メインダイヤル200に対する回転抵抗力が発生する。
【0027】
また、第1の磁性体220と第2の磁性体230は、一部の櫛歯部221、231かららさらに径方向外側に延びる一対の腕部222、232を有する。一対の腕部222、232はそれぞれ、第1の磁性体220と第2の磁性体230の中心部を挟んだ互いに反対側(両側)に設けられている。各腕部222、232の先端にはビス締結部が設けられている。第1の磁性体220と第2の磁性体230は、両側のビス締結部間に前述したスペーサ部材260、270を挟んだ状態で、ビス締結部に挿入されたビスによって、ベース部材240とともにカバー部材280に共締め固定されている。これらスペーサ部材260、270によって、第1の磁性体220と第2の磁性体230との間の軸方向での距離が決まるとともに、第1の磁性体220と第2の磁性体230の軸方向に直交する方向での位置が決まる。
【0028】
本実施例では、第1の磁性体220と第2の磁性体230を同一形状の共通部品にしており、これにより部品公差によるずれが少なくなり、発生する回転抵抗力を安定させ易い。なお、各磁性体の形状や固定方法は上述したものに限られず、他の形状および固定方法の一例については後述する。
【0029】
検出部140(第1の磁場検出部141と第2の磁場検出部142)は、基板143に実装されている。基板143は、検出部140が磁石210の外周面に近接する一に配置されるようにベース部材240にビス止めされている。
【0030】
以上のように構成されたダイヤルユニット20は、図3(b)に示すように、上面カバー10に設けられた開口部11からメインダイヤル200の外周部の一部が外部に露出(突出)するように、上面カバー10に内側から取り付けられている。開口部11付近において、上面カバー10とベース部材240およびカバー部材280は、ギャップAを挟んで互いに近接している。ギャップAは、そこを通ってカメラ100内に水や塵埃が入り込みにくいように狭く設定されている。
【0031】
さらに、ギャップAの奥(開口部11とは反対側)には、ギャップAから入り込んだ水や塵埃がそれ以上内部に侵入するのを塞ぐためのシール部材290を設置するスペースとしてギャップBが設けられている。シール部材290は、ギャップBよりも少し厚く、水分を通しにくい材質のものが使用されている。
【0032】
本実施例のダイヤルユニット20では、磁石210、第1磁性体220および第2の磁性体230のそれぞれの直径と厚みが大きいほど、メインダイヤル200に対する回転抵抗力が強くなる。ただし、それらの直径を大きくするには、上面カバー10に円弧状に膨らむように形成されたバルジ部12の外径を大きくする必要があり、その結果、メインダイヤル200の操作性が損なわれるおそれがある。一方、それらの厚みを大きくすると、ダイヤルユニット20の厚みが増加し、カメラ100の小型化が難しくなる。
【0033】
このため本実施例では、ダイヤルユニット20の厚みの増加を抑えるため、磁石210、第1磁性体220および第2の磁性体230をメインダイヤル200に近づけて配置している。このとき、前述したシール部材290による十分な防塵防滴性能を得るためには、シール部材290が少なくとも1.0mm程度の幅を有することが望ましい。しかし、このシール部材290を固定するための貼り付け面(固定面)をベース部材240における第1の磁性体220よりもメインダイヤル200側の部分だけで確保する場合には、第1の磁性体220をメインダイヤル200から少し遠ざける必要がある。この結果、ダイヤルユニット20の厚みの増加を十分に抑えることができない。
【0034】
そこで本実施例では、図3(b)および図4に示すように、ベース部材240に、第1の磁性体220の櫛歯部221の間を磁石210側に延びる複数の延長部242を形成している。そして、この延長部242とベース部材240における第1の磁性体220よりもメインダイヤル200側の部分とをシール部材290用の貼り付け面としている。これにより、第1の磁性体220を十分にメインダイヤル200に近づけて配置することが可能となり、ダイヤルユニット20の厚みを十分に小さくしつつ、良好な防塵防滴性能を得ることができる。
【0035】
なお、本実施例では防塵防滴性能を得るためにシール部材290を設けた場合について説明した。しかし、シール部材290を設ける代わりに図7に示すような構成を採用してもよい。図7では、ベース部材240に、ギャップAをあけて上面カバー10に近接する近接面(第1の面)と、ギャップAの奥側の開口端に面する(塞ぐ)ように軸方向に対して角度を有する塞ぎ面(第2の面)245を設けて防塵防滴効果を得るようにしてもよい。図7に示した塞ぎ面245は、軸方向に対して約90°の角度を有する。
【0036】
また、本実施例では、磁石210を挟むように第1の磁性体220と第2の磁性体230を配置しているため、磁石210から発生する磁束の大部分は各磁性体に流れ、磁石210の外周部から外側に漏れる磁束はほとんどなくなる。これにより、磁石210が上面カバー10の外観面近傍に配置されていても、砂鉄を寄せ集める等の磁場の影響はほとんど生じない。
【0037】
以上説明したように、本実施例によれば、厚みが抑えられて、防塵防滴性能に優れた磁気方式のダイヤルユニット20を実現することができる。
【実施例0038】
次に、本発明の実施例2について説明する。図5は、実施例2のダイヤルユニット20Aにおける磁石210、第1の磁性体220および第2の磁性体230の位置関係をメインダイヤル200の回転中心軸に沿った断面で示している。本実施例の構成要素のうち実施例1の構成要素と共通するものには実施例1と同符号を付している。
【0039】
磁力を利用して発生させるメインダイヤル200の回転抵抗力には磁石210と各磁性体(220、230)間に発生する磁束密度が大きく影響し、磁束密度のばらつきを抑えて回転抵抗力を安定化させることが重要である。先に示した特許文献1では、磁石の回転により磁石と磁性体の位置関係が変化することで回転抵抗力を発生させることは説明されているが、回転抵抗力を安定化させる方法については言及されていない。これに対して、本実施例では、磁束密度のばらつきを抑えて回転抵抗力を安定化させるための構成について説明する。
【0040】
磁束密度は磁石210と磁性体との距離に依存しており、該距離に対して非線形ではあるが、距離が短いほど磁束密度が高くなる。このため、メインダイヤル200に対する回転抵抗力を安定化させるためには、磁石210と各磁性体との距離をなるべく短くした上で磁束密度のばらつきが少なくなるように該距離を管理する必要がある。
【0041】
このため、実施例1でも説明したように磁石210を軸方向にて挟む両側に配置された第1の磁性体220と第2の磁性体230との間の距離をスペーサ部材260、270で固定した上で以下のような構成を採用することか好ましい。図5に示すように、第1の磁性体220と第2の磁性体230間の距離をF、磁石210の厚みをC、磁石210と第1の磁性体220との距離(ギャップ)をD、磁石210と第2の磁性体230との距離(ギャップ)をEとする。このとき、距離F=C+D+Eとなる。
【0042】
ギャップDを確保するために第1の磁性体220と磁石210との間には円環シート状の第1のスペーサ部材311が配置され、ギャップEを確保するために第2の磁性体220と磁石210との間に円環シート状の第2のスペーサ部材312が配置される。第1のスペーサ部材311の厚みをd、第2のスペーサ部材312の厚みをe、各部品の公差を考慮して第1の磁性体220と第1のスペーサ部材311との間に設けられたギャップの厚みをgとする。このとき、D+E=d+e+gとなる。
【0043】
なお、スペーサ部材311、312は、図に示すように磁石保持部材250に貼り付けてもよいし、第1の磁性体220と第2の磁性体230に貼り付けてもよい。
【0044】
他の構成例としては、図3(b)に示すように、磁石保持部材250の軸方向における両端面に円環状の第1の凸部251と第2の凸部252を形成してもよい。凸量dの第1の凸部251を第1の磁性体220に対向させ、凸量eの第2の凸部252を第2の磁性体230に対向させることで、ギャップD、Eを確保することができる。また、図5に示すように、延長部242を第1の磁性体220よりもdだけ突出させて第1のスペーサ部材311の代わりとして用いてもよい。
【0045】
このような構成では、第1の磁性体220と第2の磁性体230との間で磁石210が軸方向にギャップgの分だけ移動可能である。磁石210がギャップDがgだけ増える方向に移動するとギャップEはgだけ減り、磁石210がギャップDがgだけ減る方向に移動するとギャップEはgだけ増える。つまり、磁石210が軸方向でどこに位置してもギャップgによる回転抵抗力への影響が相殺される。このため、本構成における部品の製造誤差や寸法ばらつきについて、スペーサ部材260、270の厚みFと磁石210の厚みCのみを考慮すればよくなり、これらを精度良く管理することで、回転抵抗力のばらつきを低減することができる。
【実施例0046】
次に、本発明の実施例3について説明する。図6は、メインダイヤル200に対する回転抵抗力を安定化させるための構成を有するダイヤルユニット20Bを示している。本実施例の構成要素のうち実施例1の構成要素と共通するものには実施例1と同符号を付している。
【0047】
本実施例では、第2の磁性体230を軸方向(図6中の矢印方向)に移動可能に保持する磁性体保持部材300を介してベース部材240に取り付けている点が実施例1、2と異なる。
【0048】
磁性体保持部材300は、ベース部材240に対してビス等により固定されておらず、回転阻止部243と抜け止め部244とを有する。回転阻止部243は、磁性体保持部材300の磁石210との共回りを阻止するようにベース部材240に係合している。抜け止め部244は、磁性体保持部材300の軸方向でのベース部材240に対する所定量の移動を可能としつつ磁性体保持部材300がベース部材240から脱落しないようにベース部材240に係合している。本実施例では、磁石210と第1の磁性体220および第2の磁性体230とが磁力によって軸方向にて引きつけ合うため、実施例2で説明したギャップgを設ける必要がなくなり、磁石210と第1の磁性体220とを実施例2よりも近接させることができる。
【0049】
本実施例では、実施例2で説明したギャップD、Eはそれぞれ、g=0であるため、D=d、E=eとなる。ギャップd、eは、実施例2で説明した第1のスペーサ部材311と第2のスペーサ部材312や、図3(b)で示した第1の凸部251と第2の凸部252や、延長部242によって確保することができる。なお、本実施例では、磁性体保持部材300に第2の磁性体230の櫛歯部231の間を通って磁石210側に突出する延長部を設けて第2のスペーサ部材312の代わりにギャップeを確保してもよい。
【0050】
本実施例では、磁石210と第1の磁性体220および第2の磁性体230との間のギャップD、Eがそれぞれ第1のスペーサ部材311と第2のスペーサ部材312(またはこれに代わる構成)の厚さのみで決まる。このため、発生する回転抵抗力のばらつきを低減することができる。また、ギャップgが設けられないことにより、ギャップgを設ける場合よりも磁束密度も高めることができ、メインダイヤル200に対する回転抵抗力を強めることも可能となる。
【実施例0051】
次に、本発明の実施例4について説明する。実施例1~3のように磁石210を挟むように第1の磁性体220と第2の磁性体230を配置する構成では、磁石210は第1の磁性体220と第2の磁性体230の間で常にそれらに対して平行で、かつそれらの間の中央に位置する状態が維持されるわけではない。実際には、磁石210の位置は、第1の磁性体220と第2の磁性体230のうち磁石210との間に発生する磁束密度が高くて磁力が強い磁性体側に寄る。また、その磁性体の櫛歯部のうち磁石210との間に発生する磁力が強い櫛歯部に向かって磁石210が傾いた姿勢となる。
【0052】
磁石210と各磁性体との間の距離は、それら部品の平面精度や組付け精度のばらつきにより周方向において一定ではない。特に、メインダイヤル200が回転操作される際に磁石210と各磁性体との距離、つまりは磁束密度の分布が変化することで、磁石210の位置や姿勢が変化し易い。磁石210の位置や姿勢が変化すると、その瞬間に異音が発生するおそれがある。先に示した特許文献1では、磁石の軸方向における位置や傾きを管理する方法については言及されていない。
【0053】
これに対して本実施例では、第1の磁性体220と第2の磁性体230の間における磁石210の位置や姿勢を安定化させ、メインダイル200の回転操作時における異音の発生を抑制するための構成を有する。
【0054】
図7は、本実施例のダイヤルユニット20Cのメインダイヤル200の回転中心軸に沿った断面を示している。本実施例の構成要素のうち実施例1、2の構成要素と共通するものには実施例1、2と同符号を付している。
【0055】
第1の磁性体220と第2の磁性体230の間における磁石210の位置を安定化させるためには、磁石210をどちらの磁性体側に片寄せしておくかを予め決めておく必要がある。本実施例では、メインダイヤル200は、カメラのグリップ部を把持したユーザの右手の人差し指がやや前面側(図中の左側)から操作面201に接触した状態で回転操作される。この結果、メインダイヤル200はカメラの前面側から背面側(図中の右側)に押されて片寄せされるので、磁石210も背面側に片寄せするような構成にしておいた方がよい。なお、メインダイヤル200を回転操作時により背面側に寄り易くするため、操作面201を前面側から背面側に向かって径が大きくなって人差し指が接触する面が背面側ほど高くなる傾斜形状に形成することが好ましい。
【0056】
メインダイヤル200とともに磁石210を常に背面側(第2の磁性体230側)に片寄せするためには、磁石210と第2の磁性体(一方の磁性体)230との間に発生する磁束密度が第1の磁性体(他方の磁性体)220との間に発生する磁束密度よりも常に高くすることが好ましい。実施例2で説明したように磁束密度は磁石210と磁性体との距離に依存するため、図5に示した磁石210を片寄せする背面側のギャップEが前面側のギャップDよりも狭くなるように、
D>E
と設定することが好ましい。
【0057】
実施例2と同様にギャップD内に厚みdの第1のスペーサ部材311と部品の寸法公差を考慮したギャップgが設けられ、ギャップE内に厚みeの第2のスペーサ部材312が設けられた場合に、磁力のバランスにより常に磁石210が第2の磁性体230側に片寄せされるためには、
d+g>e
を満足すればよい。
【0058】
一方、磁力により磁石210の第2の磁性体230側への片寄せが保証されていない場合は、磁石210がギャップgの分だけ第1の磁性体220側に動いても常にギャップDよりギャップEが狭い状態とするためには、
d>e+g
を満足すればよい。このようにd、e、gを設定することで、磁石210の位置が安定し易い。図3(b)に示したように第1のスペーサ部材311と第2のスペーサ部材312の代わりに、磁石保持部材250に凸量dの第1の凸部251と凸量eの第2の凸部252を設けたり、ベース部材240に突出量dの延長部242を設けたりする場合も同様である。
【0059】
また、磁石210の各磁性体に対する平行な姿勢を安定的に保つためには、延長部242のようになるべく径方向外側でギャップdを確保する方が効果的である。さらに実施例3でも説明したように、延長部242と同様の延長部を磁性体保持部材300や上面カバー10に設けてギャップeを確保してもよい。
【0060】
その他、磁石210を片寄せする背面側の磁束密度を高くする方法として、以下の方法もある。まず、図7に示すように、背面側の第2の磁性体230の厚みT2を前面側の第1の磁性体220の厚みT1よりも厚くする方法がある。また、第2の磁性体230の外径φS2を第1の磁性体220の外径φS1よりも大きくして、磁石210と対向する面積を広くする方法もある。
【0061】
さらに、磁石210における各磁性体と対向する面の表面積が広いほど磁束密度が高くなる。このため、図7に示すように、磁石210の内周部にフランジ部211を設けて磁束密度を高くする側(メインダイヤル200を片寄せする側)の表面積を反対側の表面積よりも広くする方法もある。図7では、磁石210を磁石保持部材250に接着するための接着部としてフランジ部211を利用している。また、磁束密度を高くする側の磁性体における磁石との対向面の表面積を反対側の磁性体の磁石との対向面の表面積よりも広くしてもよい。
【0062】
以上説明したように、本実施例によれば、第1の磁性体220と第2の磁性体230間における磁石210の位置や姿勢を安定化させて、メインダイヤル200の回転操作時における異音の発生を抑制することができる。
【0063】
上記各実施例では撮像装置に搭載される回転操作装置について説明したが、本発明の回転操作装置は、ゲーム機におけるコントローラとして用いたり、車載電子機器における操作ユニットとして用いたりする等、各種電子機器に使用することができる。
【0064】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
200 メインダイヤル
210 磁石
220 第1の磁性体
230 第2の磁性体
240 ベース部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7