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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185249
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】空冷式燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20221207BHJP
   H01M 8/0263 20160101ALI20221207BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221207BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0263
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092785
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】野々山 順朗
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD04
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE06
5H126EE22
5H126EE23
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】耐久性能及び発電性能を向上させることができる空冷式燃料電池を提供する。
【解決手段】第2セパレータ、膜電極ガス拡散層接合体、第1セパレータ、及び、冷却板をこの順に有し、第3流路の流路幅とリブ幅の和は、第1流路の流路幅とリブ幅の和及び第2流路の流路幅とリブ幅の和より大きく、前記第1セパレータ、前記第2セパレータ及び前記冷却板は、これらを上面視したときに前記膜電極ガス拡散層接合体と重なる発電領域において、前記第1流路、前記第2流路、及び、前記第3流路は、少なくとも一部が互いに交差し、前記第1流路と前記第2流路とのなす角θ12は15°以上であり、前記第1流路と前記第3流路とのなす角θ13、及び、前記第2流路と前記第3流路とのなす角θ23が40°以上であることを特徴とする空冷式燃料電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空冷式燃料電池であって、
前記空冷式燃料電池は、第1セパレータと第2セパレータと冷却板とを有し、
前記第1セパレータは、複数の溝状の第1流路を周期的に有し、
前記第2セパレータは、複数の溝状の第2流路を周期的に有し、
前記冷却板は、複数の溝状の第3流路を周期的に有し、
前記空冷式燃料電池は、前記第2セパレータ、膜電極ガス拡散層接合体、前記第1セパレータ、及び、前記冷却板をこの順に有し、
前記第3流路の流路幅とリブ幅の和は、前記第1流路の流路幅とリブ幅の和及び前記第2流路の流路幅とリブ幅の和より大きく、
前記第1セパレータ、前記第2セパレータ及び前記冷却板は、これらを上面視したときに前記膜電極ガス拡散層接合体と重なる発電領域において、前記第1流路、前記第2流路、及び、前記第3流路は、少なくとも一部が互いに交差し、
前記第1流路と前記第2流路とのなす角θ12は15°以上であり、
前記第1流路と前記第3流路とのなす角θ13、及び、前記第2流路と前記第3流路とのなす角θ23が40°以上であることを特徴とする空冷式燃料電池。
【請求項2】
前記第1流路及び前記第2流路の少なくともいずれか一方は、波状溝である、請求項1に記載の空冷式燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空冷式燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、1つの単セル(以下、セルと記載する場合がある)又は複数の単セルを積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)で構成され、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、実際に燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、酸化・還元に寄与しないガスとの混合物である場合が多い。特に酸化剤ガスは酸素を含む空気である場合が多い。
なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。また、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
この燃料電池の単セルは、通常、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を備える。
【0003】
燃料電池車両(以下車両と記載する場合がある)に車載されて用いられる燃料電池に関して、様々な技術が提案されている。
例えば特許文献1では、冷媒供給系に過大な負荷を及ぼすことなく、適度に速い流速の反応ガスの供給が可能で、効率よく運転できるものとする固体高分子電解質型燃料電池が開示されている。
【0004】
特許文献2では、拡散層に溜まった水を迅速に排出することができ、しかも、拡散層が破損し難い燃料電池の電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開1998-308227号公報
【特許文献2】特開2007-299654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池のガスや冷媒の流路は、セパレータに設けられたディンプルや溝などによって形成される。複数のセパレータを積層する際に、本来それらのディンプルや溝の凸部どうしが対向するように積層されるべきものがズレて積層されると、それらに挟まれる部材である電解質膜やガス拡散層にせん断力が加わり、局所的に荷重が増加する部分と減少する部分とが生じて、燃料電池の性能低下や劣化を引き起こす。
水冷式燃料電池のセパレータでは、比較的狭い溝ピッチの流路でありかつ2枚のセパレータの場合のため、流路どうしを交差させていれば上記の問題は生じない。しかし空冷式燃料電池では、冷却用空気の流路は熱伝達向上や圧損低減のために広い溝ピッチの流路とする必要があり対向する凸部の間隔が広くなるため、荷重が減少する領域が大きくなりやすい。セパレータとは別に冷却板を設け3枚構成となった場合でも同様である。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐久性能及び発電性能を向上させることができる空冷式燃料電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の空冷式燃料電池は、空冷式燃料電池であって、
前記空冷式燃料電池は、第1セパレータと第2セパレータと冷却板とを有し、
前記第1セパレータは、複数の溝状の第1流路を周期的に有し、
前記第2セパレータは、複数の溝状の第2流路を周期的に有し、
前記冷却板は、複数の溝状の第3流路を周期的に有し、
前記空冷式燃料電池は、前記第2セパレータ、膜電極ガス拡散層接合体、前記第1セパレータ、及び、前記冷却板をこの順に有し、
前記第3流路の流路幅とリブ幅の和は、前記第1流路の流路幅とリブ幅の和及び前記第2流路の流路幅とリブ幅の和より大きく、
前記第1セパレータ、前記第2セパレータ及び前記冷却板は、これらを上面視したときに前記膜電極ガス拡散層接合体と重なる発電領域において、前記第1流路、前記第2流路、及び、前記第3流路は、少なくとも一部が互いに交差し、
前記第1流路と前記第2流路とのなす角θ12は15°以上であり、
前記第1流路と前記第3流路とのなす角θ13、及び、前記第2流路と前記第3流路とのなす角θ23が40°以上であることを特徴とする。
【0009】
本開示の空冷式燃料電池においては、前記第1流路及び前記第2流路の少なくともいずれか一方は、波状溝であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の空冷式燃料電池によれば、耐久性能及び発電性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1セパレータの第1流路と第2セパレータの第2流路とのなす角θ12と、第1セパレータの第1流路と冷却板の第3流路とのなす角θ13と、第2セパレータの第2流路と冷却板の第3流路とのなす角θ23のそれぞれの交差角度と荷重抜けΦとの関係を示す図である。
図2図2は、本開示の空冷式燃料電池の単セルの一例を示す分解斜視図である。
図3図3は、実施例1の燃料電池の第1流路、第2流路、第3流路を重ね合わせた模式図である。
図4図4は、実施例1の第1セパレータと第2セパレータを重ね合わせて示す模式図である。
図5図5は、実施例1の第1セパレータと冷却板を重ね合わせて示す模式図である。
図6図6は、実施例1の第2セパレータと冷却板を重ね合わせて示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の空冷式燃料電池は、空冷式燃料電池であって、
前記空冷式燃料電池は、第1セパレータと第2セパレータと冷却板とを有し、
前記第1セパレータは、複数の溝状の第1流路を周期的に有し、
前記第2セパレータは、複数の溝状の第2流路を周期的に有し、
前記冷却板は、複数の溝状の第3流路を周期的に有し、
前記空冷式燃料電池は、前記第2セパレータ、膜電極ガス拡散層接合体、前記第1セパレータ、及び、前記冷却板をこの順に有し、
前記第3流路の流路幅とリブ幅の和は、前記第1流路の流路幅とリブ幅の和及び前記第2流路の流路幅とリブ幅の和より大きく、
前記第1セパレータ、前記第2セパレータ及び前記冷却板は、これらを上面視したときに前記膜電極ガス拡散層接合体と重なる発電領域において、前記第1流路、前記第2流路、及び、前記第3流路は、少なくとも一部が互いに交差し、
前記第1流路と前記第2流路とのなす角θ12は15°以上であり、
前記第1流路と前記第3流路とのなす角θ13、及び、前記第2流路と前記第3流路とのなす角θ23が40°以上であることを特徴とする。
【0013】
燃料電池の流路において、ディンプルやストレート溝どうしが重なる界面があると、積層ズレが発生した際にその界面で接地面積の変化、荷重集中、荷重抜け等が起こり、燃料電池の性能低下、劣化等を引き起こす。
接地面積の変化は、燃料電池の熱伝導、電気抵抗、荷重分布等に影響する。
荷重は、例えば、局所荷重の増大により、流路がGDLにめり込むことで、圧損が増加し、燃料電池の性能を低下させたり、単セルを複数個積層させた場合に各単セルで性能のばらつきが発生したりする。また、局所荷重抜けにより、電解質膜の押さえが無くなり、電解質膜の膨潤収縮により電解質膜が動き、電解質膜が裂ける。さらに、局所荷重抜けにより、燃料電池の電気抵抗、及び熱伝導が悪化し、局所的にヒートスポットが発生し、燃料電池の劣化が促進してしまう。
厚板セパレータにすれば、接地面積の変化、荷重集中、荷重抜け等の問題は発生しないが、セパレータの生産性が悪く、セパレータが重く、セパレータのコストが高い。
水冷式燃料電池の場合は、2枚のセパレータのそれぞれの流路間の問題であるが、空冷式燃料電池の場合は2枚のセパレータと冷却板の3枚構成になるため、それぞれの流路間の関係において接地面積の変化、荷重集中、荷重抜け等の発生を抑制する必要がある。
【0014】
本開示では、反応用空気流路と燃料ガス流路と冷却用空気流路とを有する空冷式燃料電池において、各溝流路が発電部の主な領域において平行にならないように配置する。例えば、反応用空気流路と燃料ガス流路との交差角度を浅く、反応用空気流路と冷却用空気流路との交差角度および燃料ガス流路と冷却用空気流路との交差角度を深くする。
本開示によれば、燃料電池の発電領域において、電解質膜、ガス拡散層等にかかる荷重を従来と比較してより均一化することができる。これにより、電解質膜、ガス拡散層等へのダメージを軽減することができ、結果として燃料電池の耐久性能及び発電性能の向上を図ることができる。
【0015】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、乾燥空気等であってもよい。
【0016】
本開示の燃料電池は、空冷式燃料電池である。
空冷式燃料電池は、冷媒として空気を用いる。本開示においては、冷媒としての空気を冷却用空気と称する場合がある。本開示においては、酸化剤ガスとしての空気を反応用空気と称する場合がある。
【0017】
空冷式燃料電池は、第1セパレータと第2セパレータと冷却板とを有する。
空冷式燃料電池は、具体的には第2セパレータ、膜電極ガス拡散層接合体、第1セパレータ、及び、冷却板をこの順に有する。
空冷式燃料電池は、具体的には第2セパレータ、膜電極ガス拡散層接合体、第1セパレータ、及び、冷却板をこの順に有する単セルを1つ有するものであってもよい複数の単セルを積層した燃料電池スタックであってもよい。
【0018】
膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)は、第1ガス拡散層、第1触媒層、電解質膜、第2触媒層、及び、第2ガス拡散層をこの順に有する。
膜電極ガス拡散層接合体は、具体的には、アノード側ガス拡散層及び、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
【0019】
第1触媒層と第2触媒層は、一方がカソード触媒層であり、もう一方がアノード触媒層である。
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層及びカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層及びアノード側ガス拡散層を含む。
第1触媒層及び第2触媒層をまとめて触媒層と称する。カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
【0020】
第1ガス拡散層と第2ガス拡散層は、一方がカソード側ガス拡散層であり、もう一方がアノード側ガス拡散層である。
第1ガス拡散層は、第1触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側ガス拡散層であり、第1触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側ガス拡散層である。
第2ガス拡散層は、第2触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側ガス拡散層であり、第2触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側ガス拡散層である。
第1ガス拡散層と第2ガス拡散層をまとめてガス拡散層又は拡散層と称する。カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層又は拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0021】
空冷式燃料電池は、触媒層とガス拡散層との間にマイクロポーラス層(MPL)を有していてもよい。マイクロポーラス層は、PTFE等の撥水性樹脂とカーボンブラック等の導電性材料との混合物を含んでいてもよい。
【0022】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0023】
第1セパレータと第2セパレータは、一方がカソード側セパレータであり、もう一方がアノード側セパレータである。
第1セパレータは、第1触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側セパレータであり、第1触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側セパレータである。
第2セパレータは、第2触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側セパレータであり、第2触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側セパレータである。
第1セパレータと第2セパレータをまとめてセパレータと称する。アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータと称する。
膜電極ガス拡散層接合体は、第1セパレータと第2セパレータにより挟持される。
セパレータは、反応ガス及び冷媒等の流体を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔等のマニホールドを有していてもよい。冷媒としては、冷却用の空気等を用いることができる。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよい。
【0024】
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、熱硬化樹脂、熱可塑樹脂、樹脂繊維等の樹脂材、及び、カーボン粉末、カーボン繊維等のカーボン材を含む混合物をプレス成形したカーボンコンポジット材、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、チタン、鉄、アルミニウム、及び、SUS等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
セパレータの形状は、長方形、横長6角形、横長8角形、円形、長丸形状等であってもよい。
【0025】
第1セパレータは、複数の溝状の第1流路を周期的に有する。具体的には第1セパレータは、流路となる溝とリブを交互に所定の溝ピッチで周期的に有する。
第2セパレータは、複数の溝状の第2流路を周期的に有する。具体的には第2セパレータは、流路となる溝とリブを交互に所定の溝ピッチで周期的に有する。
溝ピッチとは、溝幅とリブ幅の和の繰り返し単位を意味する。溝ピッチは例えば、1.0~1.8mmであってもよく、1.2~1.6mmであってもよい。
第1流路及び第2流路の少なくともいずれか一方は、波状溝であってもよく、両方とも波状溝であってもよい。
第1流路及び第2流路のいずれか一方は、ストレート溝であってもよい。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。第1セパレータの第1流路は、反応ガス流路及び冷媒流路の少なくともいずれか一方であってもよく、反応ガス流路及び冷媒流路のいずれもが第1流路であってもよい。第2セパレータの第2流路は、反応ガス流路及び冷媒流路の少なくともいずれか一方であってもよく、反応ガス流路及び冷媒流路のいずれもが第2流路であってもよい。
セパレータは、ガス分配部を有していてもよい。ガス分配部は、セパレータのマニホールドと流路との間の領域に配置され、マニホールドから発電領域へガス流れを広げるか又は収束させる部分である。マニホールドが供給孔の場合は、ガス分配部は、ガス流れを広げる構造を有する。マニホールドが排出孔の場合は、ガス分配部は、ガス流れを収束させる構造を有する。
セパレータがアノード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、アノード側セパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面に燃料ガス供給孔から燃料ガス排出孔に燃料ガスを流す燃料ガス流路を有していてもよく、必要に応じてアノード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがカソード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、カソード側セパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面に酸化剤ガス供給孔から酸化剤ガス排出孔に酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路を有していてもよく、必要に応じてカソード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
【0026】
冷却板は、複数の溝状の第3流路を周期的に有する。具体的には冷却板は、流路となる溝とリブを交互に所定の溝ピッチで周期的に有する。
第3流路は、波状溝であってもよく、ストレート溝であってもよい。
冷却板は、冷媒流路として機能する複数の溝を有するコルゲート状の板であってもよい。
冷却板はアルミ、Ti、SUS等の金属板をコルゲート状に折り曲げ加工されたもの等を用いることができる。冷却板は、表面に銀、ニッケル、カーボン等の導電処理がされていてもよい。
冷却板の溝は、折り曲げ加工により形成してもよい。
溝の深さは例えば、1.0~2.0mmであってもよい。
折り曲げ加工は、例えば溝深さ1.0~2.0mm、幅1.0~2.0mmのピッチで凹凸成型してもよい。
冷却板は、面方向において少なくともMEGAと対向する領域に配置されていてもよい。
冷却板は、面方向において隣り合う2つの単セルの間のガスケットが配置される領域以外の領域に配置されていてもよい。
冷却板は単セル外形から突出した突出部を有していてもよい。
冷却板の形状は、長方形、横長6角形、横長8角形、円形、長丸形状等であってもよい。
【0027】
冷却板の第3流路の流路幅とリブ幅の和は、第1セパレータの第1流路の流路幅とリブ幅の和及び第2セパレータの第2流路の流路幅とリブ幅の和より大きい。
第1セパレータ、第2セパレータ及び冷却板は、これらを上面視したときに膜電極ガス拡散層接合体と重なる発電領域において、第1流路、第2流路、及び、第3流路は、少なくとも一部が互いに交差する。発電領域において、第1流路、第2流路、及び、第3流路は、少なくとも一部が互いに交差していればよい。燃料電池の耐久性を向上させる観点から、発電領域の全域において、第1流路、第2流路、及び、第3流路は、互いに交差していてもよい。
第1セパレータ、第2セパレータ及び冷却板は、これらを上面視したときにセパレータのガス分配部が配置されるガス分配領域においても第1流路、第2流路、及び、第3流路は、少なくとも一部が互いに交差していてもよい。
【0028】
図1は、第1セパレータの第1流路と第2セパレータの第2流路とのなす角θ12と、第1セパレータの第1流路と冷却板の第3流路とのなす角θ13と、第2セパレータの第2流路と冷却板の第3流路とのなす角θ23のそれぞれの交差角度と荷重抜けΦとの関係を示す図である。
第1セパレータの第1流路と第2セパレータの第2流路とのなす角θ12は15°以上であればよく、荷重抜けΦを小さくし燃料電池の耐久性を向上させる観点から、20°以上であってもよく、90°以下であってもよい。
第1セパレータの第1流路と冷却板の第3流路とのなす角θ13、及び、第2セパレータの第2流路と冷却板の第3流路とのなす角θ23が40°以上であればよく、荷重抜けΦを小さくし燃料電池の耐久性を向上させる観点から、50°以上であってもよく、90°以下であってもよい。
第1流路、第2流路、及び、第3流路が互いに交差することにより、第1セパレータ、第2セパレータ及び冷却板等が積層ズレした際に接地面積の変化、荷重の変化が小さく、単セル間の性能バラツキが減り、積層ズレに対して、燃料電池のロバスト性を向上させることができる。
空冷式の場合、冷媒流路の圧損低減のために冷却板の冷媒流路はセパレータの流路と比較して深く広い溝形状となる。そのため荷重抜けエリアΦ23及びΦ13が大きくなりやすい。図1に示すようにθ13、θ23を40°以上と深く交差させることで、荷重抜けエリアを小さくすることができる。
【0029】
空冷式燃料電池は樹脂フレームを備えていてもよい。
樹脂フレームは、膜電極ガス拡散層接合体の外周に配置され、且つ、第1セパレータと第2セパレータとの間に配置されてもよい。
また、樹脂フレームは、クロスリークや膜電極ガス拡散層接合体の触媒層同士の電気的短絡を防ぐための部材であってもよい。
樹脂フレームは、骨格部と、開口部と、供給孔と、排出孔を有していてもよい。
骨格部は、膜電極ガス拡散層接合体と接続する樹脂フレームの主要部分である。
開口部は、膜電極ガス拡散層接合体の保持領域であり、膜電極ガス拡散層接合体を収納するために骨格部の一部を貫通する貫通孔である。開口部は、樹脂フレームにおいて、膜電極ガス拡散層接合体の周囲(外周部)に骨格部が配置される位置に配置されていればよく、樹脂フレームの中央に有していてもよい。
供給孔及び排出孔は、反応ガス及び冷媒等を単セルの積層方向に流通させる。樹脂フレームの供給孔は、セパレータの供給孔と連通するように位置合わせされて配置されていてもよい。樹脂フレームの排出孔は、セパレータの排出孔と連通するように位置合わせされて配置されていてもよい。
樹脂フレームは、枠状のコア層と、コア層の両面に設けられた枠状の二つのシェル層、即ち、第1シェル層と第2シェル層とを含んでいてもよい。
第1シェル層及び第2シェル層は、コア層と同様に、コア層の両面に枠状に設けられていてもよい。
【0030】
コア層は、ガスシール性、絶縁性を有する構造部材であればよく、燃料電池の製造工程での熱圧着時の温度条件下でも構造が変化しない材料により形成されていてもよい。具体的には、コア層の材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、PC(ポリカーボネート)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PA(ポリアミド)、PI(ポリイミド)、PS(ポリスチレン)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、シクロオレフィン、PES(ポリエーテルサルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、LCP(液晶ポリマー)、エポキシ樹脂等の樹脂等であってもよい。コア層の材料は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、フッ素系ゴム、シリコン系ゴム等のゴム材であってもよい。
コア層の厚さは、絶縁性を担保する観点から、5μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、セル厚さを低減する観点から、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。
【0031】
第1シェル層及び第2シェル層は、コア層とアノード側セパレータ及びカソード側セパレータとを接着してシール性を確保するために、他の物質との接着性が高く、熱圧着時の温度条件下で軟化し、コア層よりも粘度及び融点が低い性質を有していてもよい。具体的には、第1シェル層及び第2シェル層は、ポリエステル系及び変性オレフィン系等の熱可塑性樹脂であってもよく、変性エポキシ樹脂である熱硬化性樹脂であってもよい。第1シェル層及び第2シェル層は、接着剤層と同種の樹脂であってもよい。
第1シェル層を構成する樹脂と第2シェル層を構成する樹脂とは、同種の樹脂であってもよく、異なる種類の樹脂であってもよい。コア層の両面にシェル層を設けることで、樹脂フレームと2つのセパレータとの間の加熱プレスによる接着が容易になる。
第1シェル層及び第2シェル層のそれぞれのシェル層の厚さは、接着性を担保する観点から、5μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、セル厚さを低減する観点から、100μm以下であってもよく、40μm以下であってもよい。
【0032】
樹脂フレームにおいて、第1シェル層及び第2シェル層は、それぞれアノード側セパレータ及びカソード側セパレータと接着する部分にのみに設けられていてもよい。コア層の一方の面に設けられた第1シェル層は、カソード側セパレータと接着していてもよい。コア層の他方の面に設けられた第2シェル層は、アノード側セパレータと接着していてもよい。そして、樹脂フレームは、一対のセパレータにより挟持されてもよい。
【0033】
空冷式燃料電池は隣り合う2つの単セルの間にガスケットを備えていてもよい。
ガスケットは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)ゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー樹脂等を材料として用いてもよい。
【0034】
図2は、本開示の空冷式燃料電池の単セルの一例を示す分解斜視図である。
空冷式燃料電池(単セル)11は、冷却板15、第1セパレータ12、MEGAを開口部に収容する樹脂フレーム14、第2セパレータ13をこの順に有する。
冷却板15は、空冷式燃料電池11の第1セパレータ12の面上のMEGAと対向する領域に配置されている。
第1セパレータ12、樹脂フレーム14、第2セパレータ13には、矢印で示すように酸化剤ガスである反応用空気又は燃料ガスである水素が流通可能なマニホールド16である酸化剤ガス供給孔、酸化剤ガス排出孔、燃料ガス供給孔、燃料ガス排出孔が設けられている。
第1セパレータ12には、矢印で示すように酸化剤である反応用空気が流通可能な酸化剤ガス流路となる複数の溝状の第1流路21が設けられている。
第2セパレータ13には、矢印で示すように燃料ガスである水素が流通可能な燃料ガス流路となる複数の溝状の第2流路22が設けられている。
冷却フィン15には、矢印で示すように冷媒である冷却用空気が流通可能な冷媒流路となる複数の溝状の第3流路23が設けられている。
なお、燃料電池は、側面を冷媒が流れる構造を有していてもよい。
【実施例0035】
(実施例1)
以下の第1セパレータ、第2セパレータ及び冷却板を用いて燃料電池の単セルを作成した。
・第1セパレータ:長辺方向のストレート溝(第1流路,反応用空気 1.4mm溝ピッチ)
・第2セパレータ:長辺方向の波状溝 斜め部分は30度傾斜(第2流路,水素,1.5mm溝ピッチ)
・冷却板:短辺方向のストレート溝(第3流路,冷却用空気,3mm溝ピッチ)
θ12=30°、θ13=90°、θ23=60°となるようにした。
【0036】
図3は、実施例1の燃料電池の第1流路、第2流路、第3流路を重ね合わせた模式図である。
第1流路21は、長辺方向のストレート溝である。
第2流路22は、長辺方向の波状溝である。
第3流路23は、短辺方向のストレート溝である。
第1流路21、第2流路22、第3流路23は、互いに交差している。
【0037】
図4は、実施例1の第1セパレータと第2セパレータを重ね合わせて示す模式図である。
第1セパレータのリブ31と第2セパレータのリブ32は、第1流路と第2流路のなす角と同様にθ12=30°で交差する。
Φ12は、第1セパレータと第2セパレータとの間で発生する荷重抜けである。例えば、第1セパレータのリブ31と第2セパレータのリブ32が重なる領域は、MEGAが、上下面とも押さえられ、拘束された領域となる。一方、第1セパレータのリブ31と第2セパレータのリブ32が重ならない片面溝または両面溝となる領域は、MEGAが拘束されない領域であり、荷重抜けΦ12は、当該領域に描くことができる最大の円の直径とすることができる。
図1に照らし合わせると、θ12=30°のときの荷重抜けΦは2.3mm以下であり、荷重分布が均一であり、燃料電池の所望の耐久性を確保することができる。
【0038】
図5は、実施例1の第1セパレータと冷却板を重ね合わせて示す模式図である。
第1セパレータのリブ31と冷却板のリブ33は、第1流路と第3流路のなす角と同様にθ13=90°で交差する。
Φ13は、第1セパレータと冷却板との間で発生する荷重抜けである。荷重抜けΦ13は、第1セパレータのリブ31と冷却板のリブ33が重ならない片面溝または両面溝となる領域に描くことができる最大の円の直径とすることができる。
図1に照らし合わせると、θ13=90°のときの荷重抜けΦは2.3mm以下であり、荷重分布が均一であり、燃料電池の所望の耐久性を確保することができる。
【0039】
図6は、実施例1の第2セパレータと冷却板を重ね合わせて示す模式図である。
第2セパレータのリブ32と冷却板のリブ33は、第2流路と第3流路のなす角と同様にθ23=60°で交差する。
Φ23は、第2セパレータと冷却板との間で発生する荷重抜けである。荷重抜けΦ23は、第2セパレータのリブ32と冷却板のリブ33が重ならない片面溝または両面溝となる領域に描くことができる最大の円の直径とすることができる。
図1に照らし合わせると、θ23=60°のときの荷重抜けΦは2.3mm以下であり、荷重分布が均一であり、燃料電池の所望の耐久性を確保することができる。
【0040】
荷重抜けΦが2.3mm以下であれば燃料電池の所望の耐久性を有すると判断でき、荷重抜けΦが小さいほど燃料電池の耐久性が高いと言える。
【符号の説明】
【0041】
11 空冷式燃料電池(単セル)
12 第1セパレータ
13 第2セパレータ
14 樹脂フレーム
15 冷却板
16 マニホールド
21 第1流路
22 第2流路
23 第3流路
31 第1セパレータのリブ
32 第2セパレータのリブ
33 冷却板のリブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6