(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018525
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ビニールハウス環境制御システム、ビニールハウス環境制御方法及びビニールハウス環境制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20220120BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A01G9/24 A
A01G7/00 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121685
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】517408298
【氏名又は名称】株式会社MAYA SUSTAINERGY
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【弁理士】
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 圭代
(74)【代理人】
【識別番号】100165146
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 博喜
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 則浩
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
【Fターム(参考)】
2B022DA15
2B022DA17
2B022DA19
2B022DA20
2B029MA01
2B029MA06
2B029MA08
2B029MA09
2B029PA01
2B029SF01
2B029TA01
2B029TA04
(57)【要約】
【課題】 設定された時間間隔で取得する測定データとは別に、異なる時間間隔すなわち、きめ細かな時間間隔で測定データを取得して、環境状態の異変の発生時から回復時までのタイムラグを可及的に極小化する。
【解決手段】 ビニールハウス内の環境状態を管理する管理機器と、管理機器を駆動制御する駆動制御部と、ビニールハウス内の環境状態を測定して測定データを出力するセンサと、測定データを長い時間間隔で取得する長間隔データ取得部と、長間隔データ取得部の測定データとビニールハウス内の環境状態の変化を把握する基準値Pとに基づいて駆動データを出力するデータ演算部と、短い時間間隔で測定データを取得する短間隔データ取得部と、短間隔データ取得部の測定データに応じて、長間隔データ取得部の測定データを取得する時間間隔をビニールハウス内の環境変化に対応させる時間間隔調節部と、を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニールハウス内の環境を管理するビニールハウス環境制御システムであって、
前記ビニールハウス内の環境状態を管理する管理機器と、
前記管理機器を駆動データに基づいて駆動制御する駆動制御部と、
前記ビニールハウス内の環境状態を測定して測定データを出力するセンサと、
前記測定データを長い時間間隔で取得する長間隔データ取得部と、
前記長間隔データ取得部の取得する前記測定データとビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値とに基づいて前記駆動データを出力するデータ演算部と、
前記長い時間間隔と異なる短い時間間隔で前記測定データを取得する短間隔データ取得部と、
前記短間隔データ取得部の取得する前記測定データに応じて、前記長間隔データ取得部の前記測定データを取得する時間間隔を前記ビニールハウス内の環境変化に対応させる時間間隔調節部と、
を有することを特徴とするビニールハウス環境制御システム。
【請求項2】
前記長間隔データ取得部の取得する前記測定データと前記短間隔データ取得部の取得する前記測定データとに基づいて、ビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値を設定する基準値設定部を有することを特徴とする請求項1に記載のビニールハウス環境制御システム。
【請求項3】
前記長間隔データ取得部の測定データ取得の時間間隔>前記短間隔データ取得部の測定データの時間間隔の関係に設定することを特徴とする請求項1に記載のビニールハウス環境制御システム。
【請求項4】
前記短間隔データ取得部の取得する前記測定データに基づいて前記ビニールハウス内の環境の状態を外部に告知する告知手段を装備したことを特徴とする請求項1に記載のビニールハウス環境制御システム。
【請求項5】
長い時間間隔で取得する前記測定データを平均化処理する平均化処理部を有し、
前記データ演算部は、前記平均化処理した測定データに基づいて前記駆動データを出力することを特徴とする請求項1に記載のビニールハウス環境制御システム。
【請求項6】
ビニールハウス内の環境を管理するビニールハウス環境制御方法であって、
前記ビニールハウス内の環境状態を管理する管理機器を駆動データに基づいて駆動制御する駆動制御ステップと、
前記ビニールハウス内の環境状態を測定して測定データを出力する測定ステップと、
前記測定データを長い時間間隔で取得する長間隔データ取得ステップと、
前記長間隔データ取得部の取得する前記測定データとビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値とに基づいて前記駆動データを出力するデータ演算ステップと、
前記長い時間間隔と異なる短い時間間隔で前記測定データを取得する短間隔データ取得ステップと、
前記短い時間間隔で取得する前記測定データに応じて、前記測定データを取得する長い時間間隔を前記ビニールハウス内の環境変化に対応させる時間間隔調節ステップと、
を実行させることを特徴とするビニールハウス環境制御方法。
【請求項7】
ビニールハウス内の環境を管理するためのビニールハウス環境制御プログラムであって、
前記ビニールハウス内に設置したコントローラのコンピュータに、
前記ビニールハウス内の環境状態を測定して測定データを出力する測定機能と、前記ビニールハウス内の環境状態を管理する管理機器を駆動データに基づいて駆動制御する駆動制御機能と、を実行させ、
前記コントローラに通信網で接続されたサーバのコンピュータに、
前記測定データを長い時間間隔で取得する長間隔データ取得機能と、前記長い時間間隔と異なる短い時間間隔で取得する短間隔データ取得機能と、前記長い時間間隔で取得する前記測定データとビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値とに基づいて前記駆動データを出力するデータ演算機能と、前記短い時間間隔で取得する前記測定データに応じて、前記長い時間間隔を前記ビニールハウス内の環境変化に対応させる時間間隔調節機能、を実行させることを特徴とするビニールハウス環境制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウス内の環境を栽培に適した最適環境に制御するビニールハウス環境制御システム、ビニールハウス環境制御方法及びビニールハウス環境制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICT(Information and Communication Technology(情報通信技術))等の先端技術を活用して超省力化や高品質生産を実現する新しい農業の取り組みが行われている。
【0003】
例えば、ネットワークによる一元管理、温室のモニタリング・遠隔監視、栽培用水の殺菌、太陽光・地熱エネルギー発電、経営・販売管理、生産管理等、ICT等の先端技術を活用することで省力化や生産効率を向上させることが可能となる。今まで熟練の農作業者が知識と経験で行っていたことを、システム化、数値化することで脱属人化した農業が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6292698号
【特許文献2】特開平1-191620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、インターネットを介して複数の植物工場施設から送信される養液情報と、ハウス内環境情報と、ハウス内映像と、ハウス外環境情報と、日報データとを受信する栽培関連データサーバーを備えることで、複数の植物工場施設の植物栽培状況をリアルタイムに把握し、一元管理することが開示されている。また、インターネットを介して植物工場施設における養液濃度とハウス内環境の数値を遠隔で制御可能であること、また、各植物工場施設の植物購入者はインターネットを介して栽培状況をみることができる構成が開示されている。
【0006】
特許文献2には、外部環境計測センサによって計測された施設外方の温度、気圧、湿度データが、演算制御部にて定められた時間間隔と順序に従い、温度入力部、気圧入力部、外部データ入力部にそれぞれ取り込まれ、その取り込まれたデータを予め定められた初期値との差を温度差演算部、気圧差演算部、湿度差演算部によって演算する。そして、その演算による偏差値が時間経過に対して増加傾向にあるか、減少傾向にあるかが、温度差評価出力部、気圧差評価出力部、湿度差評価出力部にて演算評価され、時間経過に対して増加傾向の場合には(+)、また減少傾向の場合には(-)の信号を出力することが開示されている。
【0007】
特許文献1及び特許文献2のいずれにおいて、環境評価用測定データを定期的に取り込み、前記測定データに基づいてビニールハウス内を設定環境に制御しているため、ビニールハウス内の環境状態は前記測定データを定期的に取り込む時間間隔で制御することになる。ビニールハウス内は定常状態ではなく、朝方に太陽光線が照射し始め、日中に太陽光線が十分に照射され、夕方に太陽が沈み、夜間に太陽光線が全く照射されない環境に変化する。
【0008】
特許文献1及び特許文献2は測定データを定期的に取り込む、即ち時間間隔で環境状態を制御するため、環境状態は時間間隔の期間中に制御されることがなく、その時間間隔の期間中にビニールハウス内の環境状態が設定値を超えて変化した場合、その環境の異変は時間間隔の期間の経過後まで把握することができない。
【0009】
従って、その環境の異変の発生時から回復までの間にタイムラグが生じ、そのタイムラグによってビニールハウス内の栽培植物等に悪影響を与えて成長を阻害してしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、予め設定された時間間隔で取得する測定データとは別に、異なる時間間隔すなわち、きめ細かな時間間隔で測定データを取得して、環境状態の異変の発生時から回復時までのタイムラグを可及的に極小化することを主目的としたビニールハウス環境制御システム、ビニールハウス環境制御方法及びビニールハウス環境制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係るビニールハウス環境制御システムはビニールハウス内の環境を管理するビニールハウス環境制御システムであって、前記ビニールハウス内の環境状態を管理する管理機器と、前記管理機器を駆動データに基づいて駆動制御する駆動制御部と、前記ビニールハウス内の環境状態を測定して測定データを出力するセンサと、前記測定データを長い時間間隔で取得する長間隔データ取得部と、前記長間隔データ取得部の取得する前記測定データとビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値とに基づいて前記駆動データを出力するデータ演算部と、前記長い時間間隔と異なる短い時間間隔で前記測定データを取得する短間隔データ取得部と、前記短間隔データ取得部の取得する前記測定データに応じて、前記長間隔データ取得部の前記測定データを取得する時間間隔を前記ビニールハウス内の環境変化に対応させる時間間隔調節部と、を有することを特徴とする。
【0012】
前記長間隔データ取得部の取得する前記測定データと前記短間隔データ取得部の取得する前記測定データとに基づいて、ビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値を設定する基準値設定部を有することを特徴とする。
【0013】
前記長間隔データ取得部の測定データ取得の時間間隔>前記短間隔データ取得部の測定データの時間間隔の関係に設定することを特徴とする。
【0014】
前記短間隔データ取得部の取得する前記測定データに基づいて前記ビニールハウス内の環境の状態を外部に告知する告知手段を装備したことを特徴とする。
【0015】
長い時間間隔で取得する前記測定データを平均化処理する平均化処理部を有し、
前記データ演算部は、前記平均化処理した測定データに基づいて前記駆動データを出力することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るビニールハウス環境制御方法は、ビニールハウス内の環境を管理するビニールハウス環境制御方法であって、前記ビニールハウス内の環境状態を管理する管理機器を駆動データに基づいて駆動制御する駆動制御ステップと、前記ビニールハウス内の環境状態を測定して測定データを出力する測定ステップと、前記測定データを長い時間間隔で取得する長間隔データ取得ステップと、前記長い時間間隔で取得する前記測定データとビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値とに基づいて前記駆動データを出力するデータ演算ステップと、前記長い時間間隔と異なる短い時間間隔で前記測定データを取得する短間隔データ取得ステップと、前記短い時間間隔で取得する前記測定データに応じて、前記測定データを取得する長い時間間隔を前記ビニールハウス内の環境変化に対応させる時間間隔調節ステップと、を実行させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るビニールハウス環境制御プログラムは、ビニールハウス内の環境を管理するためのビニールハウス環境制御プログラムであって、前記ビニールハウス内に設置したコントローラのコンピュータに、前記ビニールハウス内の環境状態を測定して測定データを出力する測定機能と、前記ビニールハウス内の環境状態を管理する管理機器を駆動データに基づいて駆動制御する駆動制御機能と、を実行させ、前記コントローラに通信網で接続されたサーバのコンピュータに、前記測定データを長い時間間隔で取得する長間隔データ取得機能と、前記長い時間間隔と異なる短い時間間隔で取得する短間隔データ取得機能と、前記長い時間間隔で取得する前記測定データとビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値とに基づいて前記駆動データを出力するデータ演算機能と、前記短い時間間隔で取得する前記測定データに応じて、前記長い時間間隔を前記ビニールハウス内の環境変化に対応させる時間間隔調節機能、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明は、ビニールハウス内の環境状態を管理する管理機器と、前記管理機器を駆動データに基づいて駆動制御する駆動制御部と、前記ビニールハウス内の環境状態を測定して測定データを出力するセンサと、前記測定データを長い時間間隔で取得する長間隔データ取得部と、前記長間隔データ取得部の取得する前記測定データとビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値とに基づいて前記駆動データを出力するデータ演算部と、前記長い時間間隔と異なる短い時間間隔で前記測定データを取得する短間隔データ取得部と、前記短間隔データ取得部の取得する前記測定データに応じて、前記長間隔データ取得部の前記測定データを取得する時間間隔を前記ビニールハウス内の環境変化に対応させる時間間隔調節部と、を有している。これにより、予め設定された時間間隔で取得する測定データとは別に、異なる時間間隔すなわち、きめ細かな時間間隔で測定データを取得して、環境の変化に即座に対応し、環境状態の異変の発生時から回復時までのタイムラグを可及的に極小化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るビニールハウス環境制御システムの基本構成を図示化した図である。
【
図2】
図1に示すビニールハウス環境制御システムの基本構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1に示すビニールハウス内に設置したコントローラの具体例を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示す遠隔地に設置したサーバの具体例を示すブロック図である。
【
図5】
図1に示すビニールハウス内に設置したコントローラによる環境を管理するための具体例を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るビニールハウス環境制御システムによる処理過程を説明するフローチャートである。
【
図7】
図1に示すサーバの表示部に表示する表示画面の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るビニールハウス環境制御システムにおけるビニールハウスの詳細を示す構造図である。
【
図9】ビニールハウスの外気気象のうち温度に特化して24時間の外気温度の変化を例示した特性図である。
【
図10】
図9に示す外気温度変化に伴うビニールハウス内の温度変化と設定温度との関係を例示した特性図である。
【
図11】環境状態を管理する時間間隔を10分に設定してビニールハウス内の温度を管理する状態を例示した特性図である。
【
図12】環境状態を管理する時間間隔を1分に設定してビニールハウス内の温度を管理する状態を例示した特性図である。
【
図13】告知手段による告知の際に端末の示部に表示するアラートホップアップを示す図である。
【
図14】
図2に示すビニールハウス環境制御システムにおける画像処理を実行するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0021】
ビニールハウスは、栽培植物等の栽培に最適な環境を創出する一種の農業機具であり、本発明の実施形態は
図8に示すように、4棟のビニールハウスを組として3組のビニールハウスを設置している。第1組のビニールハウスN-1、N-2、N-3、N-4、第2組のビニールハウスN-5、N-6、N-11、N-12、第3組のビニールハウスN-7、N-8、N-9、N-10として4棟のビニールハウスを区分けしている。なお、ビニールハウスを設置する棟数や組数は
図8に示す実施形態の例に限られるものではない。
【0022】
図8に示すように、メインのビニールハウスN-1、N-6、N-7にはコントローラ1-1をそれぞれ設置しており、他のビニールハウスN-2、N-3、N-4、N-5、N-11、N-12、N-8、N-9、N-10にはコントローラ1-2をそれぞれ設置している。
【0023】
コントローラ1-1及びコントローラ1-2は、電力会社が供給の電力で駆動する。
【0024】
図8に示すコントローラ1-1、1-2は、環境状態を測定する機器として、ビニールハウス内の温度及び湿度を測定する温度測定センサ3、ビニールハウスへの日射量を測定する日射量測定センサ5、ビニールハウス内のCO2濃度を測定するCO2濃度測定センサ4を装備している。温度測定センサ3は
図8に図示したように湿度センサを併設したものでもよい。
【0025】
ビニールハウスN-1、N-6、N-7の側壁には外気をビニールハウス内に取り込む換気扇6を設置し、換気扇6でビニールハウスの内部空気を外部に排気するとともにビニールハウスの外気をビニールハウス内に取り入れて内部空気を冷却することにより温度を管理する。ビニールハウスN-1、N-6、N-7内には内部空気を循環させる循環扇7を設置し、循環扇7で内部空気を循環させて内部温度の均一化を図っている。
図8の例では、換気扇6を2台、循環扇7を3台設置しているが、その設置台数に限られるものではない。
【0026】
ビニールハウスN-1~N-12内には、ビニールハウス内の湿度を管理するドライミスト8を設置している。ドライミスト8からビニールハウスN-1~N-12内に水を微細な霧の状態にして噴射することにより、湿度を管理するとともに、太陽熱を受けて蒸発する際の気化熱の吸収を利用してビニールハウスN-1~N-12内の局所を冷却することにより温度を管理する。
【0027】
ビニールハウスN-1~N-12に渡って温水パイプ9を設置し、温水パイプ9から各ビニールハウスN-1~N-12に分岐パイプ10を配管している。温水パイプ9は、図示しない温水源に電磁弁11を介して接続し、分岐パイプ10にはそれぞれ電磁弁12が設けられており、電磁弁11の調節により図示しない温水源から温水パイプ9に供給される温水量を調節し、電磁弁12の調節によりそれぞれの分岐パイプ10に供給される温水量を調節している。
【0028】
図8に示す例では図示しない温水源として温泉を用い、その温泉から湧き出る温泉水を温水パイプ9に供給しているが、温水源は温泉に限られるものではなく、加熱ボイラーにより加熱された温水を温水源としても良い。または、気候に応じて常温の水を用いてもよく、水質や水温は適宜調整すればよい。
【0029】
分岐パイプ10は、全ビニールハウス(N-1~N-12)へと接続されており、水耕栽培用の水や散水等に用いるための水を供給する。ビニールハウスN-5、N-11は水の温度制御や供給量の制御を行う温泉水制御盤13を設置している。温泉水制御盤13は、ビニールハウスN-1~N-4、N-6~N-10、N-12にそれぞれ設置しても良い。
【0030】
ビニールハウスN-1、N-6、N-7には、ビニールハウスN-1~N-12の土壌又は水耕栽培用水に薬液(肥料)を補給するための測定データを出力するセンサの機能を有する肥料管理機14、肥料管理機14の測定データに基づいてポンプ監視盤14aで駆動制御される薬液ポンプ15を設置し、その薬液ポンプ15から薬液パイプ16をビニールハウスN-1~N-12にそれぞれ配管している。肥料管理機14が出力する測定データは、ビニールハウスN-1~N-12に個別に供給される肥料成分量(薬液量)の調節に用いるばかりでなく、その供給される肥料(薬液)の温度等の調節にも用いられる。また、薬液の温度調節に温水パイプ9内を流れる温泉水を用いてもよい。
【0031】
ビニールハウスN-2、N-3、N-4、N-5、N-8、N-9、N-10、N-11、N-12のコントローラ1-2には、電源制御盤17を併設して、その電源制御盤17により、換気扇6、循環扇7、ドライミスト8を駆動制御している。
【0032】
ビニールハウスN-1、N-6、N-7のコントローラ1-1は、電源制御盤(電源制御盤17に相当する)を内蔵しており、その内蔵した電源制御盤により、換気扇6、循環扇7、ドライミスト8、肥料管理機14、ポンプ監視盤14a及び薬液ポンプ15を駆動制御し、蓄電システム2で発電した電力を制御する太陽光発電用の制御盤をも内蔵している。
【0033】
ビニールハウスN-1~N-12内では、それぞれの環境に適合する環境制御を実施して最適な環境を形成することになり、ビニールハウスは鉄パイプの骨枠におよそ0.01~0.2mmの厚みのビニールを張ることにより内部に栽培用の空間を確保する構造になっている。なお、上記ビニールの厚みは一例であり、環境に応じて適宜調整すればよいものである。
【0034】
上記のような構成を有するビニールハウスにおいて、本発明者は、外気温度の変化に応じてビニールハウス内の温度等も変化する点に着目して、ビニールハウス内の環境状態を制御し適切なビニールハウス内の管理を行なおうとするものである。
【0035】
そこで、ビニールハウス内の温度変化については、
図9に示すように、5月の外気温度の変化を24時間測定しており、太陽により外気が暖められると、ビニールハウス内の朝方の温度Cが日中に掛けて時間の経過と共に上昇し、日中には約40度に達し、真夏日には40度を超える温度Cになる。さらに、夕方になれば、太陽で暖められる外気温度が低くなり、夜間はビニールハウス内に閉じ込められた温度Cで内部が保温されることになる。
【0036】
ビニールハウス内の温度Cを通年で一定に維持することができれば、野菜などを1年通して栽培して出荷することができ、また、野菜などの品種等に合わせた温度管理もできる。
【0037】
図10に示すように、ビニールハウス内の温度Cを設定温度Pに維持するために、朝方から日中にかけてはビニールハウス内を暖房して温度C1を設定温度Pに接近させる。日中のビニールハウス内の温度C2は設定温度Pを超えて高温になるので、外気を取り入れる或いはドライミスト等を駆動させることにより設定温度Pに接近させる。さらに、夕方になるにつれて外気温度が徐々に低下し、それに伴いビニールハウス内の温度が低下するため、暖房によりビニールハウス内の温度C3を設定温度Pに接近させる。
【0038】
前述したビニールハウス内の温度管理等については、ビニールハウス内の環境状態を測定した測定データを定期的に取り込み、この測定データに基づいてビニールハウス内の環境を制御することが行われている。
図11に示す例では、先ず時間t1にビニールハウス内の温度管理を実施し、一定時間経過後の時間t2にビニールハウス内の温度管理を再び実施する。すなわち、
図11に示す例では、時間t1から時間t2までの時間間隔は10分に設定している。
【0039】
図9に示すように、外気温度とビニールハウス内の温度の関係をみると、太陽が昇るにつれてビニールハウス内の温度は指数関数的に上昇することが経験的に分かっている。すなわち、
図9に示すように、朝方から日中に向けたビニールハウス内の温度は指数関数的に上昇し、
図11に示すように、10分の時間間隔であっても、ビニールハウス内の温度Cは急激に変化する。したがって、時間t1でビニールハウス内の温度管理を実施した後、10分経過の時間t2にビニールハウス内の温度管理を実施した際には、ビニールハウス内の温度Cは設定温度Pに対して指数関数的に上昇して設定温度Pから乖離してしまうという課題が生じる。
【0040】
以上の説明では、温度測定センサ3の測定した測定データに基づいてビニールハウス内の温度・湿度の変化に対応しうる環境管理について記述したが、環境管理の対象は温度・湿度に限られない。日射量測定センサ5及びCO2濃度測定センサ4を組み合わせてビニールハウス内のCO2濃度の変化に対応しうる環境管理や、肥料管理機14及びポンプ監視盤14a並びに薬液ポンプ15を組み合わせてビニールハウス内の肥料成分の変化に対応し得る環境管理を組み合わせてよい。温度・湿度の変化を把握するために基準値として設定温度Pを設定しているが、CO2濃度の管理や肥料成分の管理等の場合においても、ビニールハウス内のCO2濃度や肥料成分の変化等を把握するためのそれぞれの基準値Pを設定する。
【0041】
[図の相互関係]
本発明の実施形態の説明に用いる
図1~
図5の相互関係を説明する。
図1は本発明の実施形態の基本構成を図示化しており、
図2は本発明の実施形態の基本構成の機能を示している。
図3は
図2のセンサに温度測定センサやCO2濃度測定センサや肥料管理機を用いた場合のビニールハウス内に設置するコントローラの機能を示している。
図4は
図3のコントローラに接続するサーバの機能を示している。
図5は
図3のサーバに接続する管理機器の機能を示している。
図3及び
図4並びに
図5は、
図2の時間間隔調節部や告知手段や基準値設定部を省略して、コントローラ及びサーバの機能のみを示している。
【0042】
[構成]
本発明者は、
図11に示すような急激な温度変化やCO2濃度変化や肥料成分の変化等にも対応し得る環境管理が可能な発明を考案したものである。すなわち、本発明の実施形態は
図1及び
図2に示すように、ビニールハウスN-1~N-12内に設置したコントローラ1-1、1-2と、サーバ18とを組み合わせている。
【0043】
図2に示すように、本発明の実施形態では、ビニールハウスN-1~N-12に、ビニールハウスN-1~N-12内の環境状態を管理する管理機器19と、管理機器19を駆動データに基づいて駆動制御する駆動制御部20と、ビニールハウスN-1~N-12内の環境状態を測定して測定データを出力するセンサ21と、を装備している。駆動制御部20はコントローラ1-1、1-2のコンピュータにプログラムを実行させることにより構築している。
図2に示すセンサ21には
図1及び
図8に示す温度測定センサ3やCO2濃度測定センサ4や肥料管理機14等が包含される。また、センサ21に
図8に示す日射量測定センサ5を含めてもよい。管理機器19には、
図8に示す循環扇7や換気扇6やドライミスト8、
図8に示すセンサの機能を有する肥料管理機14の測定データに基づいてポンプ監視盤14aで駆動制御される薬液ポンプ15や薬液パイプ16が包含される。
【0044】
図2に示すサーバ18は遠隔地の監視室内に設置され、
図1及び
図2に示す通信網22でコントローラ1-1、1-2のコンピュータに接続される。
図1及び
図2に示すサーバ18には、センサ21が測定した測定データ23を長い時間間隔24で取得する長間隔データ取得部26と、長間隔データ取得部26の取得する測定データ23とビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値Pとに基づいて前記駆動データを出力するデータ演算部28と、長い時間間隔24と異なる短い時間間隔25で測定データ23を取得する短間隔データ取得部27と、短間隔データ取得部27の取得する測定データ23に応じて長間隔データ取得部26の測定データ23を取得する時間間隔24をビニールハウスN-1~N-12内に環境変化に対応させる時間間隔調節部29と、を有している。
長間隔データ取得部26の測定データを取得する時間間隔24>短間隔データ取得部27が測定データを取得する時間間隔25の関係に設定する。
【0045】
また、短間隔データ取得部27の取得する測定データ23に基づいてビニールハウスN-1~N-12内の環境の状態を外部に告知する告知手段30をサーバ18に装備している。
【0046】
[測定データの取得間隔を長間隔と短間隔に仕分ける]
本発明は、24時間ビニールハウスの環境管理において、各種センサーによる温度等のデータを予め設定された時間間隔で取得することが前提である。
従来におけるデータ取得の時間間隔は、ビニールハウスの環境管理の開始時点で予め設定されており、その時間間隔の設定は、時間帯によって変更する、或いはランダムに変更することがなかった。
しかして、ビニールハウス内の温度管理やCO2濃度等の管理を行う場合に、栽培している品種の変更があるとき等は、その品種に合わせた温度管理の時間間隔が適切であるかどうかがわからない場合があるが、従来はデータを一定の時間間隔で取得しており、そのようなデータ管理では、ビニールハウス内に急激な環境変化が起きた場合等、栽培する品種に合わないような場合も出てくることがあり、ビニールハウス内で栽培している品種全体の成長に影響が出てくる場合もある。
また、ビニールハウスを取り巻く外気温度が昼夜で変化することは例年の気温変化に基づいて把握されているが、熱帯夜や寒波等の突然の気温変化には対応できないような場合もある。また、本発明が計画しているように、ビニールハウスが複数棟設置されている場合には、ビニールハウスの立地条件等によりビニールハウス同士が同一の環境にあるとは限らない。
そのような場合に、ビニールハウス内の環境変化に対応して、速やかに、データの取得時間の間隔を変えて取得し、適切な環境に設定したい場合がある。
【0047】
そこで、発明では、予め設定された時間間隔24で取得する測定データ23とは別に、異なる時間、すなわち、きめ細かな時間間隔25で測定データを取得して、品種に合わせた温度管理等を行うことを目的とする。
きめ細かな時間間隔25のデータは、常時取得することも考えられるが、そのようなデータの取得では、データ量も多くなるので、ビニールハウス内の環境を整える初期設定の場合、品種を変えた場合の時や温度変化が時間間隔24で取得しているデータが通常のデータの変化を逸脱したような場合等に取得して、異なる時間間隔25でデータを取得して適切な管理を行うことができるようにしたものである。また、データ量の削減として、きめ細かな時間間隔25の測定したデータを必要な際のみに使用し、それ以外の場合には記憶させることなく放出する手法を採用することもできる。
本発明では、時間間隔調節部29は短間隔データ取得部27が取得する短い時間間隔25で取得する測定データに応じて長間隔データ取得部26の測定データ23を取得する時間間隔24をビニールハウスN-1~N-12内の環境変化に対応させるように調節している。すわなち、長間隔データ取得部26が測定データ23を取得する時間間隔が長く設定されているため、ビニールハウス内の環境変化が長い時間間隔24で取得している環境変化を逸脱してしまう。
そこで、短間隔データ取得部27で短い時間間隔25で測定データ23を取得し、短間隔データ取得部27が取得する短い時間間隔25で取得する測定データに応じて、長間隔データ取得部26の測定データ23を取得する時間間隔24をビニールハウスN-1~N-12内の環境変化に対応させるように調節する。
具体的には、本発明では、ビニールハウス内の環境管理を行う場合に、設定した基準値Pに対する上限値及び下限値を選定し、上限値と下限値を閾値とする許容範囲を設定する。
そこで、短間隔データ取得部27が取得する短い時間間隔25で取得する測定データに応じる、すなわち、短い時間間隔25の測定データ23の環境変化を基準値Pの上限値及び下限値と対比し、その環境変化が許容範囲であるか否かを時間間隔調節部29が判定する。
時間間隔調節部29が許容範囲内の環境変化であると判定した場合、時間間隔調節部29は、長間隔データ取得部26が測定データ23を取得する時間間隔が適正であるとして、その時間間隔を維持する。
時間間隔調節部29が許容範囲を逸脱した環境変化であると判定した場合、時間間隔調節部29は、長間隔データ取得部26が測定データ23を取得する時間間隔を調節する。
時間間隔調節部29は、許容範囲を逸脱した環境変化量が大である場合に時間間隔の調節量を大、許容範囲を逸脱した環境変化量が小である場合に時間間隔の調節量を小に設定し、その調節量に応じた環境変化を短い時間間隔25の測定データに基づいて基準値Pの上限値及び下限値と対比し、その環境変化が許容範囲内に収まった長い時間間隔24に長間隔データ取得部26の測定データ23の取得する時間間隔を調節する。
【0048】
[ビニールハウス内の環境状態の告知]
監視室内のサーバ18の告知手段30は、短い時間間隔で得られるデータに基づいて、品種やビニールハウス内の環境変化が激しい場合、すなわち許容範囲を逸脱して閾値を超える場合に、ビニールハウス30内の環境変化の状態を外部に告知する。
図13に示すように、ユーザの端末35の表示部37には告知用のアラートポップアップによる表示及び/又は警報37aを鳴動して、ビニールハウス内の環境状態を外部に告知する。ユーザは、アラートポップアップの表示及び/又は警報37aでビニールハウス内の環境状態に変化が生じたことを察知し、その応急措置を講じることとなる。
なお、サーバ18の告知手段30は、長い時間間隔で得られるデータに基づいて、品種やビニールハウス内の環境変化が激しい場合、すなわち許容範囲を逸脱して閾値を超える場合に、ビニールハウス30内の環境変化の状態を外部に告知するようにしてもよい。
【0049】
さらには、告知手段30はデータ演算部28に信号を送信すると、データ演算部28は応急措置のための駆動データを出力する。駆動制御部20は、データ演算部28が出力する応急措置用の駆動データに基づいて管理機器19を急遽駆動制御して応急措置を施す。管理機器19は、ビニールハウス内にドライミスト8からミストを放出する及び/又は換気扇6や循環扇7の回転速度を変更する(
図7参照)、肥料管理機14の測定データに基づいてポンプ監視盤14aで薬液ポンプ15を駆動制御して薬液パイプ16で薬液を送り込む(
図8参照)などの応急措置を施して品種への影響を極力減らす。
【0050】
[基準値Pの設定]
ビニールハウス内の環境管理を行う場合に、設定した基準値Pに上限値及び下限値を組み込み、上限値と下限値を閾値とする許容範囲を設けるが、
図8に示すように、ビニールハウスが複数棟併設される場合には、ビニールハウスの立地条件や気象条件等により基準値Pはビニールハウス毎に異なる。
ビニールハウスN-1~N-12内で栽培される品種に対応する最適な環境を設定するにあたって、基準値Pを設定し、その基準値Pを中心として環境変化の上限値及び下限値を設定し、その上限値及び下限値を閾値として環境変化の許容範囲を定める。
基準値Pの設定には、長間隔データ取得部26が取得する測定データ23のみに基づいて基準値Pを設定することが考えられるが、長間隔データ取得部26の取得した測定データ23のみに基づいて環境状態の変化を把握するには、長い時間間隔が経過した後でなければならず、早期の段階に基準値Pが適正であるか否かを判断することができない。また、基準値Pは予め設定された状態に維持して環境管理をすることが一般に行われており、不適切な基準値Pに基づいて環境管理が行われて栽培に影響を与えてしまうことが考えられる。
本発明では、長間隔データ取得部26の取得する測定データに基づいて環境変化の推移を検証し、長間隔データ取得部26の取得する測定データに基づく環境変化が閾値を超える場合には、短間隔データ取得部27の取得する測定データ23に基づく環境変化の検証に基づいて長間隔データ取得部26の取得する測定データに基づく環境変化が閾値を超える時期を把握し、その結果を長間隔データ取得部26の取得する測定データ23に基づく環境変化の検証にフィードバックし、そのフィードバックに基づいて基準値Pを基準値設定部31が変更する。
長間隔データ取得部26の取得する測定データに基づく環境変化が許容範囲の環境変化に抑制されるまで以上の処理を繰り返して行い、最適な基準値Pを選定する。
【0051】
本発明では、
図2に示すように、長間隔データ取得部26の取得する測定データ23と短間隔データ取得部27の取得する測定データ23とに基づいて、長間隔データ取得部26の測定データ23に基づく環境変化を把握するための最適な基準値Pに基準値設定部31で変更設定する。この基準値設定部31はサーバ18に装備している。
基準値設定部31は、最終的に選定した基準値Pを記憶部32に記憶させる。データ演算部28は、長間隔データ取得部26の取得する測定データ23と記憶部32の基準値Pに基づいて測定データの上限値及び下限値が基準値Pを中心とした許容範囲内に収まっているか否かを検証し、許容範囲を逸脱している場合、ビニールハウス内の環境変化が許容範囲内に納めるような駆動データを駆動制御部20に出力するとともに、その駆動データを時系列でデータベース33に記録する。
【0052】
[測定データの取得する時間間隔の設定]
ビニールハウス内の環境変化を把握するためには、通常は、長い時間間隔24を10分に設定して環境管理を行っていれば、植物の栽培にとってのデータ取得としては不都合なものではないと考えられるが、環境変化を把握する対象には、温度・湿度やCO2濃度や肥料成分が含まれており、これらの環境管理における長い時間間隔24は同一に設定する必要がない。すなわち、一般的な野菜の栽培の場合と果物の栽培などは、肥料を与える時間が異なるから、長い時間間隔が10分である必要がなく、60分に延長してもよく、温度・湿度やCO2濃度の制御に対応する長い時間間隔が10分、肥料成分の制御に対応する長い時間間隔が60分であってもよい。
本発明では、長間隔データ取得部26の測定データ取得の時間間隔24>短間隔データ取得部27の測定データの時間間隔25の関係に設定する。この関係設定により、長間隔データ取得部26の取得する測定データ23に基づく環境変化に、短間隔データ取得部27の取得する測定データ23に基づく環境変化を補完する時間間隔の設定関係であれば、上記設定例に限られるものではない。長い時間間隔24と短い時間間隔25との関係は不等式>の関係にあればよく、この不等式>の関係は、長い時間間隔24に対して短い時間間隔25は1/10以下或いは1/2以下、好ましくは1/3以下の設定が好ましい。
【0053】
[長い時間間隔と短い時間間隔でのデータ取得の関係]
長い時間間隔24と短い時間間隔25でのデータ取得の関係は異なる設定を可能とするものであるが、管理機器19が正常に運転され、その管理も適切に行われていれば、長い時間間隔24の測定データ23で環境管理することは、特に問題がないと考えられる。
しかしながら、本発明は24時間管理であり、複数棟のビニールハウス毎の環境が異なることが前提となっており、特定のビニールハウスで所定の管理機器19に異常が生じたり、機械的な損傷によって故障したりしたような場合には、管理者も気が付かないような場合があり、その対応の遅れによって重大な損害をもたらすおそれもある。
機器等の損傷は、それぞれの管理機器19からの信号の停止等により判明するが、機械的な損傷の修復の遅れによってビニールハウス内の環境が粗悪な環境となることを防止するために、本発明では、短い時間間隔25で取得する測定データ23に基づく環境変化の検証を併用することにより、データ取得を速やかに行い、適切な環境に整える。
長い時間間隔24の測定データ取得が定期的に取得されるのであるが、短い時間間隔25の測定データ23の取得が開始される場合には、ビニールハウス内の環境変化が起こっているものと判断することができる。その環境変化に対して速やかに原因を究明することができるが、それらに異常が見られないと判断したときには、これらの以外の原因による障害が生じたものと判断することができ、修復を速やかに行うことが可能となる。
【0054】
このように、本発明によれば、
図7に示す表示画面上で集中的にデータを判断することによって、ビニールハウス内の環境変化が、温度・湿度やCO2濃度や肥料成分等のいずれの環境に影響しているかどうかの原因究明を行うことができ、原因がわかったら、そのポイントで原状回復をすることができる。
本発明は、少なくとも、温度、湿度、CO2濃度、肥料成分について、長い時間間隔、短い時間間隔のデータ取得が可能であるので、それらについては直接的に判断することが可能であるが、これらのデータに異常がない場合で環境変化が起きている場合には、その他の個所に原因があるものとして判断することができる。
【0055】
図2に示すデータ演算部28は、駆動データをデータベース33に時系列で記憶すると共に、CSVデータとして通信網34でユーザの端末35の記憶部36にダウンロードする。また、短間隔データ取得部27は、短い時間間隔25で取得した測定データ23を通信網34でユーザの端末35の表示部37に送信する。表示部37は短間隔データ取得部27から送られる測定データ23を表示画面に表示する。表示画面に表示されるビニールハウス内の環境変化は短い時間間隔で取得した測定データ23であるから、直近の環境変化を把握することができる。
【0056】
[ビニールハウス内の温度及びCO2濃度及び肥料成分の管理の関係]
図3は、ビニールハウスN-1~N-12内の温度及びCO2濃度及び肥料成分の管理を行う場合の構成を示しており、
図2に示すビニールハウスN-1~N-12内に
図3に示す温度測定センサ3やCO2濃度測定センサ4や肥料管理機14を装備している。
さらに、温度測定センサ3が測定した温度測定データ3-1を長い時間間隔24で出力する長間隔温度データ出力部38と、温度測定センサ3が測定した温度測定データ3-1を短い時間間隔25で出力する短間隔温度データ出力部39とを温度測定センサ3に対応してコントローラ1-1、1-2に装備している。
また、CO2濃度測定センサ4が測定したCO2濃度測定データ4-1を長い時間間隔24で出力する長間隔CO2濃度データ出力部40と、CO2濃度測定センサ4が測定したCO2濃度測定データ4-1を短い時間間隔25で出力する短間隔CO2濃度データ出力部41とをCO2濃度測定センサ4に対応してコントローラ1-1、1-2に装備している。
また、肥料管理機14が測定した肥料成分測定データ14-1を長い時間間隔24で出力する長間隔肥料成分データ出力部42と、肥料管理機14が測定した肥料成分測定データ14-1を短い時間間隔25で出力する短間隔肥料成分データ出力部43とを肥料管理機14に対応してコントローラ1-1、1-2に装備している。
【0057】
また、長い時間間隔24で取得する測定データ3-2を平均化処理する平均化処理部を有している。すなわち、長間隔温度データ出力部38が出力する長い時間間隔24の温度測定データ3-2を平均化処理する温度平均化処理部46と、長間隔CO2濃度データ出力部40が出力する長い時間間隔24のCO2濃度測定データ4-2を平均化処理するCO2濃度平均化処理部47と、長間隔肥料成分データ出力部42が出力する長い時間間隔24の肥料成分測定データ14-2を平均化処理する肥料成分平均化処理部48とを、コントローラ1-1、1-2に装備している。
【0058】
[長間隔測定データ出力部と平均化処理部の関係]
図3において、温度測定センサ3が温度測定データ3-1を1秒毎に出力し、CO2濃度測定センサ4がCO2濃度測定データ4-1を1秒毎に出力し、肥料管理機14が肥料成分測定データ14-1を30秒毎に出力することが前提であるが、これらのデータの出力の秒数はこれらに限られない。
温度平均化処理部46が長い時間間隔24の温度測定データ3-2を10分間の平均処理を行い、CO2濃度平均化処理部47が長い時間間隔24のCO2濃度測定データ4-2を10分間の平均処理を行い、肥料成分平均化処理部48が長い時間間隔24の肥料成分測定データ14-2を10分間の平均処理を行う。
【0059】
そのため、長間隔温度データ出力部38が、1秒毎に出力される温度測定データ3-1をデータバッファ45に計時部44の出力する時刻情報に基づいて積算し、計時部44の時刻情報が10分を経過した際に、10分間積算した温度測定データを長い時間間隔24の測定した温度測定データ3-2として温度平均化処理部46に出力する。温度平均化処理部46は、10分間積算した長い時間間隔24の温度測定データ3-2を平均処理し、平均化した温度測定データ3-3を出力する。
また、長間隔CO2濃度データ出力部40が、1秒毎に出力されるCO2濃度測定データ4-1をデータバッファ45に計時部44の出力する時刻情報に基づいて積算し、計時部44の時刻情報が10分を経過した際に、10分間積算したCO2濃度測定データを長い時間間隔24の測定したCO2濃度測定データ4-2としてCO2濃度平均化処理部47に出力する。CO2濃度平均化処理部47は、10分間積算した長い時間間隔24のCO2濃度測定データ4-2を平均処理し、平均化したCO2濃度測定データ4-3を出力する。
また、長間隔肥料成分データ出力部42が、30秒毎に出力される肥料成分測定データ14-1をデータバッファ45に計時部44の出力する時刻情報に基づいて積算し、計時部44の時刻情報が10分を経過した際に、10分間積算したCO2濃度測定データを長い時間間隔24の測定したCO2濃度測定データ14-2としてCO2濃度平均化処理部47に出力する。CO2濃度平均化処理部47は、10分間積算した長い時間間隔24のCO2測定データ14-2を平均処理し、平均化した肥料成分測定データ14-3を出力する。
【0060】
[短間隔測定データ出力部の出力]
本発明では、長間隔データ取得部26の測定データ取得の時間間隔24>短間隔データ取得部27の測定データの時間間隔25の関係に設定し、
図3に示すように、温度測定センサ3、CO2濃度測定センサ4、肥料管理機14が出力する測定データを取得するようにしている。
そのため、温度測定センサ3が測定した温度測定データ3-1を短い時間間隔25で出力する短間隔温度データ出力部39を長間隔温度データ出力部38と並列に設けている。
また、CO2濃度測定センサ4が測定したCO2濃度測定データ4-1を短い時間間隔25で出力する短間隔CO2濃度データ出力部41を長間隔CO2濃度データ出力部40と並列に設けている。
また、肥料管理機14が測定した肥料成分測定データ14-1を短い時間間隔25で出力する短間隔肥料成分データ出力部43を長間隔肥料成分データ出力部42に並列に設けている。
また、短間隔温度データ出力部39、短間隔CO2濃度データ出力部41、短間隔肥料成分データ出力部43をコントローラ1-1、1-2に装備している。
また、短間隔温度データ出力部39、短間隔CO2濃度データ出力部41、短間隔肥料成分データ出力部43は、1分毎に測定データを出力するようになっている。
【0061】
そのため、短間隔温度データ出力部39が、1秒毎に出力される温度測定データ3-1をデータバッファ45に計時部44の出力する時刻情報に基づいて積算し、計時部44の時刻情報が1分を経過した際に、1分間積算した温度測定データ3-1を短い時間間隔25の測定した温度測定データ3-4として出力する。また、温度測定データ3-4を温度平均化処理部で平均して出力するようにしてもよい。
また、短間隔CO2濃度データ出力部41が、1秒毎に出力されるCO2濃度測定データ4-1をデータバッファ45に計時部44の出力する時刻情報に基づいて積算し、計時部44の時刻情報が1分を経過した際に、1分間積算したCO2濃度測定データ4-1を短い時間間隔25の測定したCO2濃度測定データ4-4として出力する。また、CO2濃度測定データ4-4をCO2濃度平均化処理部で平均して出力してもよい。
また、短間隔肥料成分データ出力部43が、30秒毎に出力される肥料成分測定データ14-1をデータバッファ45に計時部44の出力する時刻情報に基づいて積算し、計時部44の時刻情報が1分を経過した際に、1分間積算したCO2濃度測定データ14-1を短い時間間隔25の測定したCO2濃度測定データ14-4として出力する。また、CO2濃度測定データ14-4をCO2濃度平均化処理部で平均して出力してもよい。
【0062】
[短間隔データ取得部のデータ取得の設定及び起動]
図2に示す短間隔データ取得部27の測定データ取得の時間間隔は、長間隔データ取得部26の測定データ取得の時間間隔の設定とは異なり、任意の設定で行うことができる。これは、短間隔データ取得部27の測定データの取得によってサーバ18が記録するデータ容量が増大することを防ぐとともに、長間隔データ取得部26が取得する測定データに基づいて異常なデータかどうかを判断するような場合等に測定データを取得して適切な判定を行うためである。このような動作環境にすることが本発明として求められるものである。
短間隔データ取得部27の測定データを取得する時間間隔は、温度・CO2濃度の場合に1分、肥料成分の場合に10分というような任意に設定する。
また、短間隔データ取得部27で測定データを取得する場合は、(1)ビニールハウスN-1~N-12が
図2に示すように複数棟併設した場合のビニールハウスN-1~N-12毎の環境管理の基準値Pを初期設定する場合、(2)ビニールハウスN-1~N-12内の栽培対象の品種を変更した場合、(3) 長間隔データ取得部26の取得する測定データで基準値Pへの準拠ができないような異常状態態の測定データが取得された場合に、短間隔データ取得部27で測定データを取得する場合等が想定される。
また、短間隔データ取得部27の起動は、基本的にサーバ18が判断することになるが、予め起動設定を定めて置くことが好ましい。
また、短間隔データ取得部27の作動タイミングは、監視室のオペレータが手動で作動させる場合、ビニールハウスN-1~N-12内の品種変更があったような場合、長間隔データ取得部26の取得する測定データに基づいて異常な測定データが取得されたような場合に作動させればよい。
さらに、短間隔データ取得部27の回路にON/OFF切替スイッチを設け、このスイッチのON/OFFをサーバ18の指令で行うか、監視室のオペレータの手動操作で行うようにしてもよい。
【0063】
[データ演算部の駆動データの生成]
図4は、
図5に示す管理機器19の換気扇6や循環扇7やドライミスト8を駆動制御する駆動データを出力するサーバ18の構成を示す構成図である。
図3に示すように、ビニールハウスN-1~N-12内の温度及びCO2濃度及び肥料成分の管理を行うため、温度測定センサ3やCO2濃度測定センサ4や肥料管理機14を装備しており、
図4では、温度測定センサ3やCO2濃度測定センサ4や肥料管理機14からの測定データに基づいて駆動データが出力されている。
そのため、短間隔温度データ演算部49、長間隔温度データ演算部50、短間隔CO2濃度データ演算部51、長間隔CO2濃度データ演算部52、短間隔肥料成分データ演算部53、長間隔肥料成分データ演算部54をサーバ18に装備している。
【0064】
短間隔温度データ演算部49は、短間隔温度データ出力部39が1分毎に出力する温度測定センサ3の測定データ3-4と、記憶部32から読み出した基準値Pの閾値の上限値及び下限値に基づいて駆動データを算出する。具体的には、短間隔温度データ演算部49は、1分毎に出力される温度測定センサ3の測定データ3-4と基準値Pの閾値の上限値及び下限値とを対比して差分を割り出し、その差分が環境変化の許容範囲であるか否かを判定する。
短間隔温度データ演算部49は、差分が環境変化の許容範囲であると判定した場合に、駆動データ55-2の出力を休止する。
図2に示す駆動制御部20は管理機器19への駆動データ55-2を出力しないため、管理機器19の換気扇6や循環扇7やドライミスト8の運転が停止し、ビニールハウスN-1~N-12の温度環境が制御されない、すなわち、ビニールハウスN-1~N-12の温度環境が最適である。
短間隔温度データ演算部49は、差分が環境変化の許容範囲を逸脱していると判定した場合に、短間隔温度データ出力部39が1分毎に出力する温度測定センサ3の測定データ3-4の変化と基準値Pの上限値及び下限値の差分を縮小して温度変化が許容範囲内に収まるデータ量を算出し、そのデータ量を持つ駆動データ55-2を
図2の駆動制御部20に出力する。駆動制御部20は、送信された駆動データ55-2に基づいて管理機器19の換気扇6や循環扇7やドライミスト8を運転する。管理機器19が駆動すると、ビニールハウスN-1~N-12の温度が下がる。
ビニールハウスN-1~N-12内の温度が下がると、温度測定センサ3が測定する測定データが低下して短間隔温度データ出力部39の1分毎の測定データ3-4の変化が小さくなり、その変化が温度変化の許容範囲に収まると、短間隔温度データ演算部49は駆動データ55-2の出力を停止する。これにより、ビニールハウスN-1~N-12の温度が最適値に維持される。
【0065】
短間隔CO2濃度データ演算部51は、短間隔CO2濃度データ出力部41が1分毎に出力するCO2濃度測定センサ4の測定データ4-4と、記憶部32から読み出した基準値Pの閾値の上限値及び下限値に基づいて駆動データを算出する。具体的には、短間隔CO2濃度データ演算部51は、1分毎に出力される温度測定センサ3の測定データ4-4と基準値Pの閾値の上限値及び下限値とを対比して差分を割り出し、その差分が環境変化の許容範囲であるか否かを判定する。
短間隔CO2濃度データ演算部51は、差分が環境変化の許容範囲であると判定した場合に、駆動データ56-2の出力を休止する。これにより、図示しないCO2濃度を制御するためのCO2濃度制御器の運転が停止し、ビニールハウスN-1~N-12のCO2濃度環境が制御されない、すなわち、ビニールハウスN-1~N-12のCO2濃度環境が最適である。
短間隔CO2濃度データ演算部51は、差分が環境変化の許容範囲を逸脱していると判定した場合に、短間隔CO2濃度データ出力部41が1分毎に出力するCO2濃度測定センサ4の測定データ4-4の変化と基準値Pの上限値及び下限値の差分を縮小してCO2濃度変化が許容範囲内に収まるデータ量を算出し、そのデータ量を持つ駆動データ56-2を
図2の駆動制御部20に出力する。駆動制御部20は、送信された駆動データ56-2に基づいて、図示しないCO2濃度制御器を運転する。図示しないCO2濃度制御器が駆動すると、ビニールハウスN-1~N-12のCO2濃度が制御される、すなわち不足分のCO2が補給される。
ビニールハウスN-1~N-12内のCO2が補給されると、CO2濃度測定センサ4が測定する測定データが低下して短間隔CO2濃度データ出力部41の1分毎の測定データの変化が小さくなり、その変化がCO2濃度変化の許容範囲に収まると、短間隔CO2濃度データ演算部51は駆動データの出力を停止する。これにより、ビニールハウスN-1~N-12のCO2濃度が最適値に維持される。
【0066】
短間隔肥料成分データ演算部53は、短間隔肥料成分データ出力部43が1分毎に出力する肥料管理機14の測定データ14-4と、記憶部32から読み出した基準値Pの閾値の上限値及び下限値に基づいて駆動データを算出する。具体的には、短間隔肥料成分データ演算部53は、1分毎に出力される肥料管理機14の測定データ14-4と基準値Pの閾値の上限値及び下限値とを対比して差分を割り出し、その差分が環境変化の許容範囲であるか否かを判定する。
短間隔肥料成分データ演算部53は、差分が環境変化の許容範囲であると判定した場合に、駆動データ57-2の出力を休止する。これにより、肥料管理機14のデータで駆動する薬液ポンプ15の運転が停止し、ビニールハウスN-1~N-12の肥料成分が制御されない、すなわち、ビニールハウスN-1~N-12の肥料成分が最適である。
短間隔肥料成分データ演算部53は、差分が環境変化の許容範囲を逸脱していると判定した場合に、短間隔肥料成分データ出力部43が1分毎に出力する肥料管理機14の測定データ14-4の変化と基準値Pの上限値及び下限値の差分を縮小して温度変化が許容範囲内に収まるデータ量を算出し、そのデータ量を持つ駆動データ57-2を出力する。これにより、薬液ポンプ15が運転する。薬液ポンプ15が駆動すると、ビニールハウスN-1~N-12の肥料成分が補給される。
ビニールハウスN-1~N-12内の肥料成分が補給されると、肥料管理機14が測定する測定データが低下して短間隔肥料成分データ出力部43の1分毎の測定データ14-4の変化が小さくなり、その変化が肥料成分変化の許容範囲に収まると、短間隔肥料成分データ演算部53は駆動データ57-2の出力を停止する。これにより、ビニールハウスN-1~N-12の肥料成分が最適値に維持される。
【0067】
長間隔温度データ演算部50は、長間隔温度データ出力部38の測定データ3-2を温度平均化処理部46で平均化して10分毎に出力する温度測定センサ3の測定データ3-3と、記憶部32から読み出した基準値Pの閾値の上限値及び下限値に基づいて駆動データを算出する。具体的には、長間隔温度データ演算部50は、10分毎に出力される温度測定センサ3の測定データ3-3と基準値Pの閾値の上限値及び下限値とを対比して差分を割り出し、その差分が環境変化の許容範囲であるか否かを判定する。
長間隔温度データ演算部50は、差分が環境変化の許容範囲であると判定した場合に、駆動データ55-1の出力を休止する。
図2に示す駆動制御部20は管理機器19への駆動データ55-1を出力しないため、管理機器19の換気扇6や循環扇7やドライミスト8の運転が停止し、ビニールハウスN-1~N-12の温度環境が制御されない、すなわち、ビニールハウスN-1~N-12の温度環境が最適である。
長間隔温度データ演算部50は、差分が環境変化の許容範囲を逸脱していると判定した場合に、長間隔温度データ出力部38が10分毎に出力する温度測定センサ3の測定データ4-3の変化と基準値Pの上限値及び下限値の差分を縮小して温度変化が許容範囲内に収まるデータ量を算出し、そのデータ量を持つ駆動データ55-1を
図2の駆動制御部20に出力する。駆動制御部20は、送信された駆動データ55-1に基づいて管理機器19の換気扇6や循環扇7やドライミスト8を運転する。管理機器19が駆動すると、ビニールハウスN-1~N-12の温度が下がる。
ビニールハウスN-1~N-12内の温度が下がると、温度測定センサ3が測定する測定データが低下して長間隔温度データ出力部38の10分毎の測定データ3-3の変化が小さくなり、その変化が温度変化の許容範囲に収まると、長間隔温度データ演算部50は駆動データ55-1の出力を停止する。これにより、ビニールハウスN-1~N-12の温度が最適値に維持される。
【0068】
長間隔CO2濃度データ演算部52は、長間隔CO2濃度データ出力部40が10分毎に出力しCO2濃度平均化処理部47が平均処理したCO2濃度測定センサ4の測定データ4-3と、記憶部32から読み出した基準値Pの閾値の上限値及び下限値に基づいて駆動データを算出する。具体的には、長間隔CO2濃度データ演算部52は、10分毎に出力されるCO2濃度センサ4の測定データ4-3と基準値Pの閾値の上限値及び下限値とを対比して差分を割り出し、その差分が環境変化の許容範囲であるか否かを判定する。
長間隔CO2濃度データ演算部52は、差分が環境変化の許容範囲であると判定した場合に、駆動データ56-1の出力を休止する。これにより、図示しないCO2濃度を制御するためのCO2濃度制御器の運転が停止し、ビニールハウスN-1~N-12のCO2濃度環境が制御されない、すなわち、ビニールハウスN-1~N-12のCO2濃度環境が最適である。
長間隔CO2濃度データ演算部52は、差分が環境変化の許容範囲を逸脱していると判定した場合に、長間隔CO2濃度データ出力部40が10分毎に出力しCO2濃度平均化処理部47が平均化処理するCO2濃度測定センサ4の測定データ4-3の変化と基準値Pの上限値及び下限値の差分を縮小してCO2濃度変化が許容範囲内に収まるデータ量を算出し、そのデータ量を持つ駆動データ56-1を
図2の駆動制御部20に出力する。駆動制御部20は、送信された駆動データ56-1に基づいて、図示しないCO2濃度制御器を運転する。図示しないCO2濃度制御器が駆動すると、ビニールハウスN-1~N-12のCO2濃度が制御される、すなわち不足分のCO2が補給される。
ビニールハウスN-1~N-12内のCO2が補給されると、CO2濃度測定センサ4が測定する測定データが低下して長間隔CO2濃度データ出力部40の10分毎の測定データ4-2の変化が小さくなり、その変化がCO2濃度変化の許容範囲に収まると、長間隔CO2濃度データ演算部52は駆動データ56-1の出力を停止する。これにより、ビニールハウスN-1~N-12のCO2濃度が最適値に維持される。
【0069】
長間隔肥料成分データ演算部54は、長間隔肥料成分データ出力部42が10分毎に出力し肥料成分平均化処理部48が平均化した肥料管理機14の測定データ14-3と、記憶部32から読み出した基準値Pの閾値の上限値及び下限値に基づいて駆動データを算出する。具体的には、長間隔肥料成分データ演算部54は、10分毎に出力される肥料管理機14の測定データ14-3と基準値Pの閾値の上限値及び下限値とを対比して差分を割り出し、その差分が環境変化の許容範囲であるか否かを判定する。
長間隔肥料成分データ演算部54は、差分が環境変化の許容範囲であると判定した場合に、駆動データ57-1の出力を休止する。これにより、肥料管理機14のデータで駆動する薬液ポンプ15の運転が休止し、ビニールハウスN-1~N-12の肥料成分が制御されない、すなわち、ビニールハウスN-1~N-12の肥料成分が最適である。
長間隔肥料成分データ演算部54は、差分が環境変化の許容範囲を逸脱していると判定した場合に、長間隔肥料成分データ出力部42が10分毎に出力し肥料成分平均化処理部48が平均化処理した肥料管理機14の測定データ14-3の変化と基準値Pの上限値及び下限値の差分を縮小して温度変化が許容範囲内に収まるデータ量を算出し、そのデータ量を持つ駆動データ57-1を出力する。これにより、図示しない肥料成分を制御する肥料成分管理機が運転する。図示しない肥料成分管理機が駆動すると、ビニールハウスN-1~N-12の肥料成分が補給される。
ビニールハウスN-1~N-12内の肥料成分が補給されると、肥料管理機14が測定する測定データが低下して長間隔肥料成分データ出力部42の10分毎の測定データ14-3の変化が小さくなり、その変化が肥料成分変化の許容範囲に収まると、長間隔肥料成分データ演算部54は駆動データ57-1の出力を停止する。これにより、ビニールハウスN-1~N-12の肥料成分が最適値に維持される。
【0070】
[管理機器の動作]
図5は、
図2のデータ演算部28の駆動データに基づいて駆動制御部20で制御される管理機器19を示しており、管理機器19としての換気扇6や循環扇7やドライミスト8は、ビニールハウスN-1~N-12内に設置され、ビニールハウスN-1~N-12内の温度に関する環境を管理する。
換気扇6は、短間隔温度データ演算部49が出力する駆動データ55-2に基づいて
図2の駆動制御部20で駆動制御される。また、換気扇6は、長間隔温度データ演算部50が出力する駆動データ55-1に基づいて
図2の駆動制御部20で駆動制御される。
また、循環扇7は、短間隔温度データ演算部49が出力する駆動データ55-2に基づいて
図2の駆動制御部20で駆動制御される。また、循環扇7は、長間隔温度データ演算部50が出力する駆動データ55-1に基づいて
図2の駆動制御部20で駆動制御される。
また、ドライミスト8は、短間隔温度データ演算部49が出力する駆動データ55-2に基づいて
図2の駆動制御部20で駆動制御される。また、ドライミスト8は、長間隔温度データ演算部50が出力する駆動データ55-1に基づいて
図2の駆動制御部20で駆動制御される。
これらの換気扇6や循環扇7やドライミスト8が駆動することにより、ビニールハウスN-1~N-12内の温度変化が許容範囲内に収まるように管理される。
【0071】
次に、本発明の実施形態に係るビニールハウス環境制御システムによりビニールハウスN-1~N-12内の環境状態を管理する場合を
図1~
図7に基づいて説明する。
【0072】
ビニールハウスN-1~N-12の温度状態はビニールハウスN-1~N-12の外気温度に左右されて24時間を通して変動するものであるから、ビニールハウスN-1~N-12の温度を24時間管理する必要がある。ビニールハウスN-1~N-12のCO2濃度はビニールハウスN-1~N-12内の植物の生長度すなわち光合成の活性化に応じて漸減するから、ビニールハウスN-1~N-12内のCO2濃度を管理する必要がある。ビニールハウスN-1~N-12内で野菜を栽培するには温度やCO2が必要であるが、野菜は土壌に含まれる栄養分を吸収して成長するものであり、ビニールハウスN-1~N-12内の植物等に栄養分(肥料)を逐次補給する必要がある。
【0073】
図2に例示した環境状態の管理では、ビニールハウスN-1~N-12内の温度管理、CO2濃度管理及び栄養分を補給する肥料管理に特化して説明するが、これに加えてビニールハウスN-1~N-12内の湿度を管理してもよく、更にはビニールハウスN-1~N-12への日射量を測定し、これらの測定データに基づいて温度管理やCO2濃度管理や肥料管理や湿度管理等を実施するようにしてもよい。
【0074】
図1及び
図7において、ビニールハウスN-1~N-12内の温度を測定する温度測定センサ3、ビニールハウスN-1~N-12内のCO2濃度を測定するCO2濃度センサ4は汎用のものを用いているので、その詳細な説明は省略する。
【0075】
ビニールハウスN-1~N-12の土壌には栄養分として養液(肥料)が
図3の肥料管理機14で測定した肥料成分測定データ14-1に基づいて
図2に示す薬液ポンプ15で補給される。養液を補給するに当たっては、ビニールハウスN-1~N-12内の環境状態に起因して養液の水分蒸発及び土壌の乾燥度或いは土壌に植えられている植物の種類や本数等により土壌の肥料成分が漸減することがあるため、ビニールハウスN-1~N-12の土壌のpHをpH計で計測し、土壌の電気伝導度(EC)を電気伝導検出器で計測し、土壌の温度を温度計で計測し、肥料管理機14はpH計や電気伝導検出器や温度計等で計測した測定データに基づいて、養液のpH(液体pH)調節、養液の電気伝導度(液体EC)調節、養液の液体温度調節を行って養液を30秒毎に補給している。
肥料管理機14が測定した測定データである土壌のpHや土壌の電気伝導度(EC)や養液の液体温度、温度測定センサ3が測定する温度・湿度、日射量等が
図7に示すサーバ18の表示画面58の表示欄59に表示される。
【0076】
図2及び
図3において、ビニールハウスN-1、N-6、N-7に設置したコントローラ1-1、1-2が待機状態(
図6のステップS1)から運転を開始すると、温度測定センサ3はビニールハウスN-1~N-12内の温度を継続して測定し温度測定データ3-1を1秒毎に出力する。CO2濃度測定センサ4は植物等に必要なビニールハウスN-1~N-12内のCO2濃度を継続して測定しCO2濃度測定データ4-1を1秒毎に出力する。肥料管理機14は、植物等の栽培に必要な土壌の肥料量を継続して測定し肥料成分測定データ14-1を30秒毎に出力する。
【0077】
コントローラ1-1、1-2が運転を開始すると、計時部44が計時を開始し計時情報を短間隔温度データ出力部39、長間隔温度データ出力部38、短間隔CO2濃度データ出力部41、長間隔CO2濃度データ出力部40、短間隔肥料成分データ出力部43、長間隔肥料成分データ出力部42にそれぞれ出力する(
図6のステップS2)。
【0078】
短間隔温度データ出力部39は計時部44からの計時情報に基づいて計時開始のt1時からt2時までの1分間隔毎に温度測定センサ3の温度測定データ3-1を受け取り、1分間隔毎に取得した温度測定データ3-4を通信網22で短間隔温度データ演算部49に出力する。
【0079】
短間隔CO2濃度データ出力部41は計時部44からの計時情報に基づいて計時開始のt1時からt2時までの1分間隔毎にCO2濃度測定センサ4のCO2濃度測定データ4-1を受け取り、1分間隔毎にCO2濃度測定データ4-1を通信網22で短間隔CO2濃度データ演算部51に出力する。
【0080】
短間隔肥料成分データ出力部43は計時部44からの計時情報に基づいて計時開始のt1時からt2時までの1分間隔毎に肥料管理機14の肥料成分測定データ14-1を受け取り、1分間隔毎に肥料成分測定データ14-1を通信網22で短間隔肥料成分データ演算部53に出力する。
【0081】
計時部44が出力する時間情報が1分に至った際に、短間隔温度データ演算部49は記憶部32に記憶されているデータを読み出し(
図6のステップS3)、短間隔温度データ出力部30から出力される温度測定データ3-4と読み出したデータを比較して差分を演算する(
図6のステップS4)。差分がない場合、待機状態に移行する(
図6のステップS1)。
【0082】
差分がある場合、短間隔温度データ演算部49は差分量に応じて演算処理して温度制御の駆動データ55-2を算出し(
図6のステップS5)、データベース33に記憶させることなく駆動制御部20に出力する。駆動制御部20は駆動データ55-2に基づいて管理機器19の換気扇6や循環扇7やドライミスト8を駆動制御し、処理を終了させる(
図6のステップS6)。
【0083】
計時部44が出力する時間情報が1分に至った際に、短間隔CO2濃度データ演算部51は記憶部32に記憶されているデータを読み出し(
図6のステップS3)、短間隔CO2濃度データ出力部41が取得したCO2濃度測定データ4-4と読み出したデータを比較して差分を演算する(
図6のステップS4)。差分がない場合、待機状態に移行する(
図6のステップS1)。
【0084】
差分がある場合、短間隔CO2濃度データ演算部51は差分量に応じてCO2濃度制御の駆動データ4-4を算出して(
図6のステップS5)、駆動データ4-4をデータベース33に記憶させることなく駆動制御部20に出力する。駆動制御部20は駆動データ4-4に基づいて図示しないCO2濃度管理機を駆動制御し、処理を終了させる(
図6のステップS6)。
【0085】
計時部44が出力する時間情報が1分に至った際に、短間隔肥料成分データ演算部53は記憶部32に記憶されているデータを読み出し(
図6のステップS3)、短間隔肥料成分データ出力部43が取得した肥料成分測定データ14-4と読み出したデータを比較して差分を演算する(
図6のステップS4)。差分がない場合、待機状態に移行する(
図6のステップS1)。
【0086】
差分がある場合、短間隔肥料成分データ演算部53は差分量に応じて演算処理して肥料成分制御の駆動データ57-2を算出して(
図6のステップS5)、データベース33に記憶させることなく駆動制御部20に出力する。駆動制御部20は駆動データ57-2に基づいて薬液ポンプ15を駆動制御し、処理を終了させる(
図6のステップS6)。
【0087】
温度平均化処理部46は計時部44からの計時情報に基づいて計時開始のt1時からt2時までの10分間の温度測定センサ3の温度測定データ3-2を長間隔温度データ出力部38から受け取り、10分の時間間隔で温度測定データ3-2を平均化処理し、その平均化処理した温度測定データ3-3を通信網22で長間隔温度データ演算部50に出力する。
【0088】
CO2濃度平均化処理部47は計時部44からの計時情報に基づいて計時開始のt1時からt2時までの10分間のCO2濃度測定センサ4のCO2濃度測定データ4-2を長間隔CO2濃度データ出力部40から受け取り、10分の時間間隔でCO2濃度測定データ4-2を平均化処理し、その平均化処理したCO2濃度測定データ4-3を通信網22で長間隔CO2濃度データ演算部52に出力する。
【0089】
肥料成分平均化処理部48は計時部44からの計時情報に基づいて計時開始のt1時からt2時までの10分間の肥料管理機14の肥料成分測定データ14-2を長間隔肥料成分データ出力部42から受け取り、10分の時間間隔で肥料成分測定データ14-2を平均化処理し、その平均化処理した肥料成分測定データ14-3を通信網22で長間隔肥料成分データ演算部54に出力する。
【0090】
計時部44が出力する時間情報が10分に至った際に、長間隔温度データ演算部50は記憶部32に記憶されているデータを読み出し(
図6のステップS7)、温度平均化処理部46が平均化処理した温度測定データ3-3と読み出した設定値を比較して差分を演算する(
図6のステップS8)。差分がない場合、待機状態に移行する(
図6のステップS1)。
【0091】
差分がある場合、長間隔温度データ演算部50は差分量に応じて10分の時間間隔で演算処理して温度制御の駆動データ55-1を算出し(
図6のステップS9)、その温度制御の駆動データ55-1をデータベース33に記憶させるとともに、駆動制御部20に出力する。駆動制御部20は駆動データ55-1に基づいて管理機器19を駆動制御し、処理を終了させる(
図6のステップS10、ステップ11)。
【0092】
計時部44が出力する時間情報が10分に至った際に、長間隔CO2濃度データ演算部52は記憶部32に記憶されているデータを読み出し(
図6のステップS7)、CO2濃度平均化処理部47が平均化処理したCO2濃度測定データ4-3と読み出したデータを比較して差分を演算する(
図6のステップS8)。差分がない場合、待機状態に移行する(
図6のステップS1)。
【0093】
差分がある場合、長間隔CO2濃度データ演算部52は差分量に応じて演算処理してCO2濃度制御の駆動データ56-1を算出し(
図6のステップS9)、CO2濃度制御の駆動データ56-1をデータベース33に記憶させるとともに駆動制御部20に出力する。駆動制御部20は駆動データ56-1に基づいて図示しないCO2濃度管理機を駆動制御し、処理を終了させる(
図6のステップS10、ステップ11)。
【0094】
計時部44が出力する時間情報が10分に至った際に、長間隔肥料成分データ演算部54は記憶部32に記憶されているデータを読み出し(
図6のステップS7)、肥料成分平均化処理部48が平均化処理した肥料成分測定データ14-3と読み出したデータを比較して差分を演算する(
図6のステップS8)。差分がない場合、待機状態に移行する(
図6のステップS1)。
【0095】
差分がある場合、長間隔肥料成分データ演算部54は差分量に応じて演算処理して肥料成分制御の駆動データ57-1を算出し(
図6のステップS9)、肥料成分制御の駆動データ57-1をデータベース33に記憶させるとともに駆動制御部20に出力する。駆動制御部20は駆動データ57-1に基づいて図示しないCO2濃度管理機を駆動制御し、処理を終了させる(
図6のステップS10、ステップ11)。
【0096】
サーバ18は
図7に示すように、表示画面58に監視対象のビニールハウスの内部状態をイラストで表示する。表示画面58のビニールハウス60には、2台の換気扇6及び3台の循環扇7、コントローラ1-1、1-2、蓄電システム2、ドライミスト8等が映し出される。さらに、表示画面58にはビニールハウス60の内部の温度、湿度、日射量、CO2、液体(肥料)EC、液体(肥料)pH、液体温度などが表示欄59に表示される。
また、短間隔温度データ演算部49の駆動データ55-2、短間隔CO2濃度データ演算部51の駆動データ56-2、短間隔肥料成分データ演算部53の駆動データ57-2が表示画面58に表示される。
また、短間隔温度データ出力部39が取得する測定データ3-4、短間隔CO2濃度データ出力部41が取得する測定データ4-4、短間隔肥料成分データ出力部43が取得する測定データ14-4が表示画面58に表示される。
管理者はサーバ18の表示画面58に表示される各種のデータに基づいてビニールハウスN-1~N-12内の環境状態を把握する。
【0097】
短間隔温度データ演算部49、短間隔CO2濃度データ演算部51及び短間隔肥料成分データ演算部53は駆動データ55-2、56-2、57-2をデータベース33に記憶させることなくユーザの端末35に出力する。また、短間隔温度データ出力部39が取得する測定データ3-4、短間隔CO2濃度データ出力部41が取得する測定データ4-4、短間隔肥料成分データ出力部43が取得する測定データ14-4がユーザの端末35の表示部37に表示される。また、短間隔温度データ演算部49、短間隔CO2濃度データ演算部51及び短間隔肥料成分データ演算部53は駆動データ55-2、56-2、57-2がユーザの端末35の表示部37に表示される。
ユーザは、端末35の表示部37に表示される測定データ3-4、4-4、14-4及び駆動データ55-2、56-2、57-2により、温度やCO2濃度や肥料成分の変動をモニタリングする。
【0098】
本発明では、測定データ3-1、4-1、14-1の取得間隔を長間隔と短間隔に仕分けして各種の課題に対応する。
【0099】
長間隔データ取得部26が測定データ23を取得する時間間隔が長く設定されているため、ビニールハウス内の環境変化が長い時間間隔24で取得している環境変化を逸脱する課題がある。
そこで、短間隔データ取得部27が取得する短い時間間隔25で取得する測定データに応じる、すなわち、短い時間間隔25の測定データ23の環境変化を基準値Pの上限値及び下限値と対比し、その環境変化が許容範囲であるか否かを時間間隔調節部29が判定する。時間間隔調節部29が許容範囲内の環境変化であると判定した場合、時間間隔調節部29は、長間隔データ取得部26が測定データ23を取得する時間間隔が適正であるとして、その時間間隔を維持する。
時間間隔調節部29が許容範囲を逸脱した環境変化であると判定した場合、時間間隔調節部29は、長間隔データ取得部26が測定データ23を取得する時間間隔を調節する。
【0100】
監視室内のサーバ18の告知手段30は、短い時間間隔で得られるデータに基づいて、ビニールハウス内の環境変化が激しい場合、すなわち許容範囲を逸脱して閾値を超える場合に、ビニールハウス30内の環境変化の状態を外部に告知する。さらには、告知手段30はデータ演算部28に信号を送信すると、データ演算部28は応急措置のための駆動データを出力する。駆動制御部20は、データ演算部28が出力する応急措置用の駆動データに基づいて管理機器19を急遽駆動制御して応急措置を施す。
【0101】
ビニールハウス内の環境管理を行う場合に、設定した基準値Pに上限値及び下限値を組み込み、上限値と下限値を閾値とする許容範囲を設けるが、
図8に示すように、ビニールハウスが複数棟併設される場合には、ビニールハウスの立地条件や気象条件等により基準値Pはビニールハウス毎に異なる。
ビニールハウスN-1~N-12内で栽培される品種に対応する最適な環境を設定するにあたって、基準値Pを設定し、その基準値Pを中心として環境変化の上限値及び下限値を設定し、その上限値及び下限値を閾値として環境変化の許容範囲を定める。その基準値Pを設定するには、長間隔データ取得部26の取得する測定データに基づいて環境変化の推移を検証し、長間隔データ取得部26の取得する測定データに基づく環境変化が閾値を超える場合には、短間隔データ取得部27の取得する測定データ23に基づく環境変化の検証に基づいて長間隔データ取得部26の取得する測定データに基づく環境変化が閾値を超える時期を把握し、その結果を長間隔データ取得部26の取得する測定データ23に基づく環境変化の検証にフィードバックする。そして、長間隔データ取得部26の取得する測定データ23と短間隔データ取得部27の取得する測定データ23とに基づいて、長間隔データ取得部26の測定データ23に基づく環境変化を把握するための最適な基準値Pに基準値設定部31で変更設定する。
【0102】
また、ビニールハウス内の環境管理は24時間管理であり、複数棟のビニールハウス毎の環境が異なることが前提となっており、特定のビニールハウスで所定の管理機器19に異常が生じたり、機械的な損傷によって故障したりしたような場合には、管理者も気が付かないような場合があり、その対応の遅れによって重大な損害をもたらすおそれもある。
機器等の損傷は、それぞれの管理機器19からの信号の停止等により判明するが、機械的な損傷の修復の遅れによってビニールハウス内の環境が粗悪な環境となることを防止するために、短い時間間隔25で取得する測定データ23に基づく環境変化の検証を併用することにより、データ取得を速やかに行い、適切な環境に整える。
長い時間間隔24の測定データ取得が定期的に取得されるのであるが、短い時間間隔25の測定データ23の取得が開始される場合には、ビニールハウス内の環境変化が起こっているものと判断し、その環境変化に対して速やかに原因を究明する。
【0103】
また、短間隔データ取得部27で測定データを取得する場合は、(1)ビニールハウスN-1~N-12が
図2に示すように複数棟併設した場合のビニールハウスN-1~N-12毎の環境管理の基準値Pを初期設定する場合、(2)ビニールハウスN-1~N-12内の栽培対象の品種を変更した場合、(3)長間隔データ取得部26の取得する測定データで基準値Pへの準拠ができないような異常状態態の測定データが取得された場合に、短間隔データ取得部27で測定データを取得する。
【0104】
以上説明したように本発明の実施形態は、ビニールハウス内の環境状態を管理する管理機器と、前記管理機器を駆動データに基づいて駆動制御する駆動制御部と、前記ビニールハウス内の環境状態を測定して測定データを出力するセンサと、前記測定データを長い時間間隔で取得する長間隔データ取得部と、前記長間隔データ取得部の取得する前記測定データとビニールハウス内の環境状態の変化を把握するための基準値とに基づいて前記駆動データを出力するデータ演算部と、前記長い時間間隔と異なる短い時間間隔で前記測定データを取得する短間隔データ取得部と、前記短間隔データ取得部の取得する前記測定データに応じて、前記長間隔データ取得部の前記測定データを取得する時間間隔を前記ビニールハウス内の環境変化に対応させる時間間隔調節部と、を有している。これにより、予め設定された時間間隔で取得する測定データとは別に、異なる時間間隔すなわち、きめ細かな時間間隔で測定データを取得して、環境の変化に即座に対応し、環境状態の異変の発生時から回復時までのタイムラグを可及的に極小化することができる。
【0105】
長い時間間隔で取得する測定データを平均化処理し、長間隔制御演算部は平均化処理した測定データと設定値の差分に基づいてビニールハウス内の環境状態を制御する制御量を演算するため、前記演算した制御量に基づいて制御される環境状態の推移を的確に把握して最適な環境状態に管理することができる。
【0106】
長い時間間隔で取得する測定データに平均化処理を行い、短い時間間隔で測定する測定データを平均化処理することなく生の測定データとして環境状態の補正に用いることにより、ビニールハウス内の環境状態の管理情報には2種類の情報即ち平均化処理した測定データと平均化処理しない生の測定データが存在することになる。
【0107】
従って、平均化処理した測定データによる環境状態の管理によれば、長い時間間隔で制御されるビニールハウス内の環境状態の傾向を把握して環境状態の管理を的確に実施することができる。平均化処理しない生の測定データによる環境状態の管理によれば、長い時間間隔の期間中でのビニールハウス内の環境状態の変動を短い時間間隔で最新の環境状態として把握することができ、長い時間間隔の期間中の環境状態の変動に迅速に対応することができる。
【0108】
これらは、ビニールハウス内の環境状態の管理情報に2種類の情報即ち平均化処理した測定データと平均化処理しない生の測定データを含め、それぞれの測定データの特性に応じてビニールハウス内の環境状態を管理することによって生じる独自の効果である。
【0109】
さらに、長い時間間隔での制御量(環境管理データ)を数値化してデータベースに記憶保存することにより、ビニールハウス内における通年の気象情報を取得することができる。さらに、前記データベースに記録保存した気象情報を分析することにより、農業経験の浅い農業従事者にベテランの高い技術を伝承することができ、10年で取得する農業技術を2年で6~7割伝承することができる。
【0110】
上述したように、農業技術の伝承を短期間で実行することができるため、ビニールハウスを利用した農業への参入を推進することができ、農業産業の活性化を実現することができる。
【0111】
図14は、
図2に示すビニールハウス環境制御システムにおける画像処理を実行するためのブロック図である。
【0112】
図2に示すサーバ18は、
図14に示すように物理サーバ68上にサイズの異なる仮想サーバ68aと仮想サーバ68bを形成した構成になっている。コントローラ用物理サーバ68上の仮想サーバ68aに短間隔温度データ演算部49、短間隔CO2濃度データ演算部51、短間隔肥料成分データ演算部53を1分間隔(t1-t2間のt時間間隔)で並行処理させ、の仮想サーバ61bに長間隔温度データ演算部50、長間隔CO2濃度データ演算部52、長間隔肥料成分データ演算部54を10分間隔(t1-t2間のt時間間隔)で並行処理させている。
【0113】
第1の仮想サーバ68aは1分間隔(t1-t2間のt時間間隔)で処理を実行し、第2の仮想サーバ68bは10分間隔(t1-t2間のt時間間隔)で処理を実行しており、
図14に示す実施形態は上述した処理時間間隔が異なる構成をビニールハウス内の画像監視に応用している。
【0114】
ビニールハウスN-1~N-12には監視用カメラ69が設置され、ビニールハウスN-1~N-12の様子(野菜の栽培状況や第三者の侵入の有無等)を監視することがある。監視用カメラ69での監視にコントロール室とビニールハウス間のそれぞれに専用回線を敷設することになるが、費用が嵩むなどの課題が考えられる。
【0115】
図14に示す実施形態は、第1、第2の仮想サーバ68a、68bが上述したビニールハウス内の環境状態の管理する処理の際に生じる処理の隙間を利用して監視用の動画画像データを伝送する構成を構築したことを特徴とするものである。
【0116】
ビニールハウス内の様子を監視する動画画像を分析すると、ビニールハウス内の様子には、栽培作物が順調に成長している或いは第三者の侵入がない状態などの定常状態と、栽培作物が枯れかけている或いは第三者が侵入しているなどの異常状態が存在する。
【0117】
定常状態の動画画像を分析すると、動画画像のうち前後の静止画像の内容を比較すると、その静止画像の変化率が小さいものであるが、異常状態では前後の静止画像の変化率が大きいものであり、その変化率に基づいて定常状態と異常状態を区分けすることができる。定常状態と異常状態を区分けする回路構成を
図14に基づいて説明する。
【0118】
監視用動画処理は
図14に示すように、ビニールハウスN-1~N-12内に設置した監視用カメラ69と、監視用カメラ69から動画画像データを受け取る画像入力部70と、画像入力部70が前後に出力する静止画像のうち前の静止画像を一時保存する第1メモリ71と、後の静止画像を一時保存する第2メモリ72と、第1メモリ71と第2メモリ72に保存される静止画像を比較し静止画像の変化率を算出する比較部73と、比較部73が出力する静止画像の変化率に基づいて定常状態の動画画像を第1の仮想サーバ68aに振分けるとともに異常状態の動画画像を第2の仮想サーバ68bに振り分ける振分部74を有している。
【0119】
監視用カメラ69はビニールハウスN-1~N-12内の様子を常時撮影し、静止画像を連続させた動画画像を逐次出力している。画像入力部70は監視用カメラ69が出力する動画画像をフレーム毎に分析し前後する静止画像のうち前の静止画像を第1メモリ71に、後の静止画像を第2メモリ72にそれぞれ送り込む。第1メモリ71は前の静止画像、第2メモリ72は後の静止画像をそれぞれ一時保存する。
【0120】
比較部73は第1メモリ71から前の静止画像、第2メモリ72から後の静止画像をそれぞれ読み出し、それらの静止画像のデータを比較することにより静止画像の変化率を算出する。振分部74は、比較部73が出力する静止画像の変化率に基づいて定常状態の動画画像を第1の仮想サーバ68aに振分けるとともに異常状態の動画画像を第2の仮想サーバ68bに振り分ける。
【0121】
第1の仮想サーバ68aは振分部74から定常状態の動画画像を受け取ると、1分間隔で環境状態を管理するための処理の隙間を利用して定常状態の動画画像を通信網22に通してサーバ18に送り込む。サーバ18は動画画像を受け取ると、通信網34に通してユーザが所有する端末35に送り込み、端末35の表示部37にビニールハウス内の様子を動画画像で表示する。
【0122】
第1の仮想サーバ68aの処理する時間間隔は1分であり、隙間時間が短いものであるが、定常状態の動画画像における前後の静止画像相互間での変化率が小さいものであり、しかも、第1の仮想サーバ68aの処理の間隔は短いものであるから、サーバ18を通して端末35の表示部37に静止画像が短い期間で逐次表示される。
【0123】
一般に表示画面に動画画像を映し出すには、人間の眼による残像効果を利用して静止画像を逐次表示部37に映し出すことにより、ユーザは連続した動画画像として視覚可能にしている。
【0124】
従って、端末35が表示部37に静止画像を短い期間で逐次表示することにより、ユーザは表示部37に映し出された動画画像に基づいてビニールハウスN-1~N-12内の様子を監視する。
【0125】
第2の仮想サーバ68bは振分部74から異常状態の動画画像を受け取ると、10分間隔で環境状態を管理するための処理の隙間を利用して異常状態の動画画像を通信網22に通して
図1のサーバ18に送り込む。サーバ18は動画画像を受け取ると、通信網34に通してユーザが所有する端末35に送り込み、表示部37にビニールハウス内の様子を動画画像で表示する。
【0126】
異常状態の動画画像における前後の静止画像相互間での変化率が大きいものであり、ビニールハウスN-1~N-12内の異常状態を監視するには監視用の静止画像の駒数が多いことが望ましいものである。
【0127】
第2の仮想サーバ68bの処理する時間間隔は10分であって隙間時間を長く確保することが可能であるから、監視用の静止画像の駒数を多くすることが可能であり、駒数の多い静止画像からなる動画画像を比較的長い時間にわたって端末35の表示部37に表示することになる。
【0128】
従って、端末35が表示画面に静止画像を比較的長い時間にわたって連続して表示することにより、ユーザは端末35の表示部37に映し出された動画画像に基づいてビニールハウスN-1~N-12内の異常な様子を把握し、異常状態が発生したビニールハウスに駆けつけて異常状態に対処することになる。
【0129】
図14に示す実施形態は、第1の仮想サーバ68aと第2の仮想サーバ68bの処理の隙間の長短に応じて定常状態と異常状態の動画画像を送り出すようにしたので、新たに通信回線を敷設する必要がなく、コストパフォーマンスを向上させることができるばかりでなく、第1の仮想サーバ68aと第2の仮想サーバ68bの稼働率を向上させることができるばかりでなく、第1、第2の仮想サーバ68a、68bの処理の隙間を動画画像の伝送に用いるので、機器の省力化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明によれば、測定用データを取り込む時間間隔を異ならせて設定し、その異なる時間間隔の測定用データに基づいてビニールハウス内の環境を最適値に制御することに応用することができるものである。
【符号の説明】
【0131】
1-1、1-2 コントローラ
3 温度測定センサ
4 CO2濃度測定センサ
5 日射量測定センサ
6 換気扇
7 循環扇
8 ドライミスト
14 肥料管理機
18 サーバ
22 通信網
38 長間隔温度データ出力部
39 短間隔温度データ出力部
40 長間隔CO2濃度データ出力部
41 短間隔CO2濃度データ出力部
42 長間隔肥料成分データ出力部
43 短間隔肥料成分データ出力部
46 温度平均化処理部
47 CO2濃度平均化処理部
48 肥料成分平均化処理部
49 短間隔温度データ演算部
50 長間隔温度データ演算部
51 短間隔CO2濃度データ演算部
52 長間隔CO2濃度データ演算部
53 短間隔肥料成分データ演算部
54 長間隔肥料成分データ演算部
N-1~N-12 ビニールハウス