(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185259
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】測温装置
(51)【国際特許分類】
G01K 7/16 20060101AFI20221207BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20221207BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221207BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20221207BHJP
【FI】
G01K7/16 M
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/0432
H01M8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092801
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 真一
(72)【発明者】
【氏名】岸本 将史
(72)【発明者】
【氏名】岩井 裕
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126BB06
5H127AA07
5H127DB47
(57)【要約】
【課題】多数の計測点の温度測定を可能としつつ、省スペース化を図りやすい測温装置を提供すること。
【解決手段】測定対象2における3箇所以上の計測点21の温度を計測するための測温装置1。測温装置1は、各計測点21に配され、温度に応じて抵抗値が変化する測温素子3と、測温素子3同士を互いに接続する接続配線4と、接続配線4から引き出された3本以上の引出配線5と、を有する。引出配線5の本数は計測点21の数以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象(2)における3箇所以上の計測点(21)の温度を計測するための測温装置(1)であって、
上記各計測点に配され、温度に応じて抵抗値が変化する測温素子(3)と、
該測温素子同士を互いに接続する接続配線(4)と、
該接続配線から引き出された3本以上の引出配線(5)と、を有し、
上記引出配線の本数は上記計測点の数以下である、測温装置。
【請求項2】
上記引出配線の本数は上記計測点の数よりも少ない、請求項1に記載の測温装置。
【請求項3】
上記接続配線は同一の材料にて構成されている、請求項1又は2に記載の測温装置。
【請求項4】
上記測温素子と上記接続配線とは、同一平面上に配列されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の測温装置。
【請求項5】
上記接続配線は、外周側に配置された閉回路状の外周配線(41)と、該外周配線の内側に配置された内側配線(42)とを有し、上記引出配線は上記外周配線から引き出されている、請求項4に記載の測温装置。
【請求項6】
固体酸化物型燃料電池(7)の温度分布の計測に用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の測温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、燃料電池モジュールの側面における複数の計測点に、それぞれ熱電対を配置して、各部位の温度を計測する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された構成においては、一箇所の計測点につき、2本の引出配線を設けることとなる。それゆえ、多数の計測点に熱電対を配置する場合、引出配線の数が多くなりすぎ、引出配線を設けるスペースを大きくする必要がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、多数の計測点の温度測定を可能としつつ、省スペース化を図りやすい測温装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、測定対象(2)における3箇所以上の計測点(21)の温度を計測するための測温装置(1)であって、
上記各計測点に配され、温度に応じて抵抗値が変化する測温素子(3)と、
該測温素子同士を互いに接続する接続配線(4)と、
該接続配線から引き出された3本以上の引出配線(5)と、を有し、
上記引出配線の本数は上記計測点の数以下である、測温装置にある。
【発明の効果】
【0007】
上記測温装置においては、上記引出配線の本数が上記計測点の数以下である。それゆえ、計測点を多くしつつ、引出配線の本数を抑制することができる。その結果、多数の計測点の温度測定を可能としつつ、省スペース化を図りやすくすることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、多数の計測点の温度測定を可能としつつ、省スペース化を図りやすい測温装置を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1における、測温装置の平面説明図。
【
図2】実施形態1における、測温装置を搭載したSOFC及び測温装置の、斜視説明図。
【
図3】実施形態1における、測温装置による測温方法の説明図。
【
図4】実施形態1における、電源を接続する引出配線を変更した状態を示す、測温方法の説明図。
【
図5】実施形態1における、1回目の計測の説明図。
【
図6】実施形態1における、2回目の計測の説明図。
【
図7】実施形態1における、3回目の計測の説明図。
【
図8】実験例における、測温素子と熱電対の配置を示す、説明図。
【
図9】実験例における、試験装置の一部の断面説明図。
【
図10】実施形態2における、測温装置の平面説明図。
【
図11】変形形態における、測温装置の平面説明図。
【
図12】更なる変形形態における、測温装置の平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
測温装置に係る実施形態について、
図1~
図7を参照して説明する。
本形態の測温装置1は、
図1に示すごとく、測定対象2における3箇所以上の計測点21の温度を計測するための装置である。測温装置1は、測温素子3と、接続配線4と、3本以上の引出配線5と、を有する。
【0011】
測温素子3は、各計測点21に配され、温度に応じて抵抗値が変化する素子である。接続配線4は、測温素子3同士を互いに接続する配線である。引出配線5は、接続配線4から引き出された配線である。引出配線5の本数は計測点21の数以下である。なお、
図1において、引出配線5を接続配線4よりも細い線にて描いているが、これは便宜的なものであり、特に各配線の太さを表すものではない。他の図においても同様である。
【0012】
本形態において、測温素子3は、例えば、測温抵抗体、すなわちRTD(Resistance Temperature Detectorの略)とすることができる。RTDは、金属にて構成された抵抗体であり、電気抵抗値と温度との間に、一定の関係を有する抵抗体である。RTDを構成する金属としては、例えば、白金、銅、ニッケル等を用いることができる。本形態においては、白金からなるRTDを、測温素子3として用いるものとする。
【0013】
接続配線4は同一の材料にて構成されている。引出配線5も同一の材料にて構成されている。接続配線4と引出配線5とは、互いに同じ材料にて構成されている。本形態において、接続配線4及び引出配線5は、例えば、耐熱性に優れた金属からなる。例えば、白金、銀等によって、接続配線4及び引出配線5を構成することができる。
ただし、測温素子3として、RTDとは異なる材料を用いた場合、接続配線4と引出配線5とを同一材料とすることが望ましい。この場合、接続配線4と引出配線5とを異なる材料とすると、回路上に温度分布が存在したとき熱起電力が生じ、測定誤差の要因となるためである。
【0014】
図1に示すごとく、本形態の測温装置1において、引出配線5の本数は計測点21の数よりも少ない。具体的には、計測点21が12箇所であり、引出配線5は8本である。
【0015】
測温素子3と接続配線4とは、同一平面上に配列されている。12個の測温素子3は、
図1に示すように、測定対象2の表面に分散配置されている。そして、これらの測温素子3を互いに繋ぐように、接続配線4が測定対象2の表面に沿って配置されている。測温素子3は一対の電極を有し、これら一対の電極のそれぞれに、接続配線4が接続されている。
【0016】
接続配線4は、外周側に配置された閉回路状の外周配線41と、外周配線41の内側に配置された内側配線42とを有する。引出配線5は外周配線41から引き出されている。
本形態において、外周配線41は、矩形の輪郭に沿って配置されている。内側配線42は、互いに略直交する直線に沿って、それぞれ配置されている。交差した2つの内側配線42は、交差点において互いに電気的に接続されている。また、内側配線42と外周配線41とも、電気的に接続されている。
【0017】
外周配線41と内側配線42とによって、縦2行、横2列の状態で、矩形状のマス目が4つ形成される。各マス目の各辺に、測温素子3が配置され、接続配線4と接続されている。本形態においては、上記マス目は2行×2列の4個が形成されているが、マス目の個数、配列、形状等は、種々変更しうる(後述する実施形態2等参照)。
【0018】
本形態の測温装置1は、固体酸化物型燃料電池(以下において、適宜「SOFC」ともいう。)の温度分布の計測に用いることができる。
図2に示すごとく、SOFC7は、一対のエンドプレート72の間に、平板状の単セル71を複数積層してなる。各単セル71は、固体電解質層と、固体電解質層の一方の面に配された燃料極と、固体電解質層の他方の面に配された空気極と、を有する(図示略)。燃料極は、燃料ガス(例えば水素)が接する電極であり、空気極は、空気が接する電極である。
【0019】
測温装置1は、単セル71の温度分布を計測する。SOFC7における一部の単セル71の温度分布を測定する。
つまり、本形態において、測定対象2は、SOFC7の単セル71となる。
図2の右側に示すように、単セル71の表面における3箇所以上の計測点21に、測温素子3を配置するよう構成することができる。測定対象2である単セル71の平坦な表面上に、12個の測温素子3と、これらを互いに接続する接続配線4とが配設されている。なお、測温装置1は、SOFC7のすべての単セル71に配設することもできるし、一部の単セル71に配設することもできる。また、シート状の絶縁基板上に測温素子3及び接続配線4を形成したものを、単セル71と共に積層するよう構成することもできる。
【0020】
次に、本形態の測温装置1による、各計測点21の測温方法の一例につき、説明する。
図3に示すごとく、測温装置1における各引出配線5に、電源61及び電圧測定器62を接続する。本形態においては、電源61として直流電源を用い、電圧測定器62として、データロガーを用いる。電圧測定器62は、7個以上の入力端子を備え、各入力端子に、各引出配線5が接続されている。
【0021】
8本の引出配線5は、接続配線4における複数の箇所、すなわち、
図3において、P0~P8を付した電位点の中で、電位点P7以外の8つの電位点にそれぞれ接続されている。なお、電位点P7には、引出配線5は接続されていない。
電位点P0からの引出配線5は、グランドに接続する。電位点P1~P6、P8からの引出配線5は、電圧測定器62における各入力端子に接続する。
【0022】
この状態において、電位点P0、P7以外の一つの電位点に、電流を流し込む。ここでは、電位点P1に電源61を接続して電流を流し込む。つまり、電位点P1に接続された引出配線5に電源61の正極を接続する。このときの各電位点P1~P6、P8の電圧を、電圧測定器62において計測する。得られた各電圧を、後述する複数の支配方程式に代入する。
【0023】
次いで、例えば
図4に示すごとく、電源61に接続する引出配線5を変更して、各電位点P1~P6、P8の電圧について、同様の計測を行う。ここでは、電位点P2に接続された引出配線5に電源61を接続して、電位点P2に電流を流し込む。このときの各電位点P1~P6、P8の電圧を、電圧測定器62において計測する。得られた各電圧を、後述する複数の支配方程式に代入する。
【0024】
このように、電源61に接続する引出配線5の変更と、各電位点の電圧の計測とを、繰り返す。すなわち、少なくとも支配方程式を解くために必要なデータが集まるまで、上記の引出配線5の変更と電圧計測とを繰り返す。
その後、支配方程式を解いて、各測温素子3(本形態ではRTD)の抵抗値を算出する。得られた抵抗値から、各計測点21の温度を導くことができる。
【0025】
支配方程式としては、キルヒホッフの第一法則に基づく方程式と、オームの法則に基づく方程式とを用いる。以下、具体例を示しつつ、説明する。
【0026】
上述のように、まず、電位点P1に電流を流し込んで、各電位点P1~P6、P8の電圧を計測する。これを、便宜的に「1回目の計測」という。1回目の計測時における各部の電圧値V
1
1~V
6
1、V
8
1と、電流値I
1
1~I
12
1とを、
図5に示す。
図5~
図7においては、引出配線5及び電圧測定器62等を省略している。
【0027】
図5~
図7において太字にて記載した物理量、すなわちV
0、V
1
1~V
6
1、V
8
1、V
1、I
1、V
1
2~V
6
2、V
8
2、V
2、I
2、V
1
3~V
6
3、V
8
3、V
3、I
3は計測値又は既知の値であり、それ以外の値は未知数である。「V
a
b」は、b回目の計測時における電位点Paの電圧を意味する。「R
c」は、各測温素子3の抵抗値を意味する。「I
c
b」は、b回目の計測時における、R
cを付した測温素子3に流れる電流値を意味する。また、「V
b」は、b回目の計測時における電源61の電圧を意味し、「I
b」は、b回目の計測時における電源61から供給される電流を意味する。また、「V
0」は、電位点P0の電位であり、ここでは接地電位となる。なお、a、b、cは、それぞれ自然数である。この「V
a
b」、「I
c
b」、「R
c」の表記の仕方は、後述する第2回目の計測以降における物理量についても、同様である。
【0028】
この1回目の計測における物理現象を表す支配方程式として、以下の式(1)~式(20)を立てることができる。ここで、式(1)~(8)が、キルヒホッフの第一法則に基づく方程式であり、式(9)~(20)が、オームの法則に基づく方程式である。
【0029】
【0030】
この段階では、未知数が25個であるのに対して、式数が20個である。それゆえ、この段階では、支配方程式を解くことはできない。そこで、次の2回目の計測を行う。
【0031】
ここでは、2回目の計測として、
図6に示すごとく、電位点P5に電流を流し込んで、各電位点P1~P6、P8の電圧を計測する。2回目の計測時における各部の電圧値V
1
2~V
6
2、V
8
2と、電流値I
1
2~I
12
2とを、
図6に示す。
【0032】
この2回目の計測における物理現象を表す支配方程式として、以下の式(21)~式(40)を立てることができる。ここで、式(21)~(28)が、キルヒホッフの第一法則に基づく方程式であり、式(29)~(40)が、オームの法則に基づく方程式である。
【0033】
【0034】
この段階では、1回目の計測と併せて、未知数が38個であるのに対して、式数が40個である。それゆえ、理論上は、この段階で、方程式を解くことが可能である。つまり、この段階で、上記の方程式を解いて、各測温素子3の抵抗値R1~R12を算出することも可能である。ただし、この段階で方程式を解くにあたっては、非常に複雑な計算が必要となる。そこで、次の3回目の計測を行う。
【0035】
ここでは、3回目の計測として、
図7に示すごとく、電位点P3に電流を流し込んで、各電位点P1~P6、P8の電圧を計測する。3回目の計測時における各部の電圧値V
1
3~V
6
3、V
8
3と、電流値I
1
3~I
12
3とを、
図7に示す。
【0036】
この3回目の計測における物理現象を表す支配方程式として、以下の式(41)~式(60)を立てることができる。ここで、式(41)~(48)が、キルヒホッフの第一法則に基づく方程式であり、式(49)~(60)が、オームの法則に基づく方程式である。
【0037】
【0038】
この段階では、1回目の計測および2回目の計測と併せて、未知数が51個であるのに対して、式数が60個である。これにより、未知数に対して式数が充分に多くなり、比較的、方程式を解くための計算がしやすくなる。そこで、上記の方程式を解いて、各測温素子3の抵抗値R1~R12を算出する。
【0039】
具体的には、上記60個の式からなる連立方程式を解いて、下記の式(61)~式(72)のように、抵抗値R1~R12を表すことができる。
【0040】
【0041】
これらの式(61)~式(72)の右辺には、未知数として、I1
1、I2
1、I8
1、I10
1が残っている。しかし、これらの未知数I1
1、I2
1、I8
1、I10
1も、上記の式(1)~(60)を基に、下記の式(73)~式(76)のように表すことができる。
【0042】
【0043】
これらの式(73)~式(76)の右辺には、未知数は存在しない。それゆえ、式(73)~式(76)を、上記の式(61)~式(72)に代入することで、抵抗値R11~R12を算出することができる。その結果、各計測点21の温度を、それぞれ計測することができる。
【0044】
次に、本形態の作用効果につき、説明する。
上記測温装置1においては、引出配線5の本数が計測点21の数以下である。それゆえ、計測点21を多くしつつ、引出配線5の本数を抑制することができる。その結果、多数の計測点21の温度測定を可能としつつ、省スペース化を図りやすくすることができる。
【0045】
本形態においては、引出配線5の本数は計測点21の数よりも少ない。これにより、一層、省スペース化を図りやすくすることができる。
【0046】
仮に、各計測点21に熱電対を配置して温度測定する場合には、計測点21の個数の倍の本数の引出配線が必要となる。例えば計測点21が12箇所である場合には、引出配線が24本となる。これに対して、本形態によれば、引出配線5を6本とすることができる。このように、計測点21を多くしつつ、引出配線5の本数を抑制することができる。
【0047】
接続配線4は同一の材料にて構成されている。これにより、測温装置1の構成を簡素化することができる。また、測定精度を向上させやすくすることができる。また、引出配線5も接続配線4と同一の材料にて構成することで、より簡素化、測定精度の向上を図りやすくなる。
【0048】
測温素子3と接続配線4とは、同一平面上に配列されている。これにより、測定対象2の平坦な表面の温度分布を測定するにあたり、測温装置1の占有スペースを小さくすることができる。それゆえ、測定対象2に測温装置1を取り付ける場合に、測定対象2の体格が大きくなることを抑制することができる。その結果、測温装置1を取り付けることにより、測定対象2の温度分布への影響を抑制することができる。
【0049】
例えば、SOFCの単セルに測温装置1を取り付ける際、測温素子3と接続配線4とが同一平面上に配列していることにより、SOFCの体格や構造に影響を与えにくくすることができる。その結果、測定対象2である単セルの温度分布に与える影響を抑制して、その測定精度を向上させることができる。
【0050】
また、接続配線4は、外周配線41と内側配線42とを有し、引出配線5は外周配線41から引き出されている。これにより、引出配線5を接続配線4と立体交差させる必要がなくなる。それゆえ、測定対象2の表面に直交する方向に、測温装置1の体格が大きくなることを防ぐことができる。
【0051】
上述のように、本形態の測温装置1は、SOFCの温度分布の計測に用いられる。SOFCは、発電時において、例えば、700~1000℃という高温の状態となる。このとき、単セルにおいて温度分布の偏りが大きくなりすぎると、固体電解質層の損傷などの要因となり得る。それゆえ、SOFCの故障を未然に防ぐべく、単セルの面内の温度分布を計測することが有用となる。しかし、単セルにおける多数の計測点を測定するために、引出配線も多くなると、省スペース化を図り難くなる。そこで、計測点21を多くしても、引出配線5の数を抑制することができる、本形態の測温装置1が有用となる。
【0052】
また、SOFCの発電効率をより向上させる観点では、単セルの全体にわたり、適切な温度範囲に制御することが望ましい。それゆえ、少ない引出配線5によって多数の計測点21の温度計測が可能となる本形態の測温装置1が有用となる。
【0053】
また、SOFCの温度分布の確認は、逐次行う必要は必ずしもなく、例えば、数時間に1回程度、或いは1日に1回程度とすれば充分であるともいえる。上述のように、本形態の測温装置1は、異なる電位点に電流を流し込んで、複数回にわたって、各電位点における電圧の計測を行うこととなる。それゆえ、温度分布の計測を瞬時に行うことが困難ではあるが、上記のようなSOFCの温度分布の計測であれば、充分にその役割を果たすことができる。
【0054】
また、かかる観点において、本形態の測温装置1は、温度分布が正常であるかを定期的(例えば、1回/時間、1回/日、1回/年、等)に確認する要請がある測定対象の温度測定に適しているといえる。したがって、SOFCに限らず、例えば、バッテリー、原子力発電装置等における温度分布の計測等、他の測定対象の測温に用いることができる。
【0055】
以上のごとく、本形態によれば、多数の計測点の温度測定を可能としつつ、省スペース化を図りやすい測温装置を提供することができる。
【0056】
(実験例)
本例においては、実施形態1の測温装置1による温度分布の測定精度を検証した。
本例の試験においては、
図8、
図9に示すごとく、70mm四方の金属板82における12箇所の計測点21のそれぞれに、熱電対83と、測温素子3とを、重ねて配置した。測温素子3はRTDである。熱電対83は、伝熱グリス831と共に、測温素子3における金属板82側の面に配置した。
【0057】
金属板82としては、ステンレス鋼板を用いた。金属板82の一方の面に、2枚のカプトンテープ84を重ねて貼着するとともに、2枚のカプトンテープ84の間に、熱電対83と、測温素子3とを配置した。接続配線4及び引出配線5も、2枚のカプトンテープ84の間に配置した。各引出配線5の一端は、カプトンテープ84から露出させている。また、金属板82の他方の面に、ヒータ85を配置し、金属板82を加熱できるよう構成した。ヒータ85は、金属板82の面内において温度分布ができるように、敢えて金属板82に対してオフセットさせて配置した。
【0058】
このような状態の試験装置を作製し、ヒータ85にて金属板82を加熱しつつ、各計測点21の温度を、測温装置1にて測定すると共に、熱電対83によっても測定した。その結果を、表1に示す。同表において、T1~T12は、
図8においてT1~T12を付した12箇所の計測点21のそれぞれの温度を示す。測温装置1による測定値は、実施形態1において示した支配方程式を解くことを経て算出される各計測点21の温度である。また、表1における「誤差」の欄に記載の値は、熱電対83による測定値から、測温装置1による測定値を引いた値である。
【0059】
【0060】
表1から分かるように、各計測点21における、熱電対83による測定結果と、測温装置1による測定結果とは、概ね一致している。すなわち、熱電対83による測定結果と測温装置1による測定結果との差の、12箇所の平均は、0.42℃と充分に小さい。また、12箇所のうち、熱電対83による測定結果と、測温装置1による測定結果との、最大の差も、0.86℃と充分に小さい。
【0061】
以上の結果から、実施形態1の測温装置1による温度計測方法によっても、充分な制度にて温度計測が可能であることが確認された。
【0062】
(実施形態2)
本形態は、
図10に示すごとく、測温素子3、接続配線4、及び引出配線5の数および配置パターンを変更した形態である。
【0063】
本形態においては、外周配線41と内側配線42とによって、縦3行、横3列の状態で、矩形状のマス目が9つ形成される。各マス目の各辺に、測温素子3が配置され、接続配線4と接続されている。本形態の測温装置1は、24個の測温素子3を有し、24箇所の計測点21を測温することができる。そして、引出配線5は16本である。
【0064】
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0065】
本形態においては、24箇所の計測点21の温度計測を可能としつつ、引出配線5を16本に抑制することができる。それゆえ、省スペース化を図りつつ、計測点21を増やすことができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0066】
なお、実施形態1及び実施形態2においては、すべてのマス目のすべての辺に対応する位置に、測温素子3を配置した形態を示したが、本開示は、これに限られるものではない。例えば、
図11に示すごとく、一部のマス目の一部の辺に対応する位置に、測温素子3を配置しない構成とすることもできる。
【0067】
また、実施形態1及び実施形態2においては、測温素子3と接続配線4とが、矩形の格子状に整列した状態となっているが、本開示は、これに限られるものではない。例えば、更なる変形形態として、
図12に示すごとく、測温素子3と接続配線4とが、異形状に配列された構成とすることもできる。
すなわち、所望の計測点21に応じて、測温素子3の配置と、それに付随する接続配線4の配置は、種々変更しうる。
【0068】
(実施形態3)
本形態は、
図13に示すごとく、複数の測温素子3を、立体的に配置した形態である。
すなわち、本形態においては、測温装置1を構成する複数の測温素子3が、同一平面上に配列されていない。
【0069】
具体的には、例えば、SOFC7の外表面の複数箇所に、それぞれ測温素子3を配設する。
図13に示す配設例では、SOFC7の外表面のうち、互いに異なる面、例えば、上面701、正面702、及び側面703に、それぞれ測温素子3を配設している。そして、これら複数の測温素子3を互いに接続するように、接続配線4も、立体的に配線されている。また、これらの接続配線4から、引出配線5が引き出されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0070】
本形態においては、同一平面上にない複数箇所の計測点21における温度の計測を可能とする、測温装置1を得ることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0071】
なお、上記実施形態においては、測温素子としてRTDを用いたが、測温素子として例えばサーミスタ等、他の素子を用いることもできる。
【0072】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 測温装置
2 測定対象
21 計測点
3 測温素子
4 接続配線
5 引出配線