(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185262
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】真空ポンプおよびリークディテクタ
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
F04D19/04 D
F04D19/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092813
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】西村 太貴
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131AA07
3H131BA06
3H131CA01
3H131CA11
3H131CA31
(57)【要約】
【課題】真空ポンプにおいて、ケーシングと、ケーシングに固定する部品の間にガス溜まりが生じ、スローリークが発生するのを防止する。
【解決手段】真空ポンプ100、100aは、所定の回転方向に回転可能なロータ20と、ロータ20を収容するケーシング11と、ケーシング11の内壁と対向するように配置される固定部品30、40とを備え、ケーシング11の内壁と、固定部品30、40との間には、隙間S1、S1aが形成されており、ケーシング11の内壁と、固定部品30,40とのいずれかには、隙間S1,S1aと、ケーシング11の内部の排気経路と、を連通させる溝111a、111b、311、411が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転方向に回転可能なロータと、
前記ロータを収容するケーシングと、
前記ケーシングの内壁と対向するように配置される固定部品とを備え、
前記ケーシングの内壁と、前記固定部品との間には、隙間が形成されており、
前記ケーシングの内壁と、前記固定部品とのいずれかには、前記隙間と、前記ケーシングの内部の排気経路と、を連通させる溝が形成されている、
真空ポンプ。
【請求項2】
前記ケーシングは、径方向に延びる面と軸方向に延びる面とを有する段差を有し、
前記固定部品は、径方向に延びる面と軸方向に延びる面とを有する段差を有し、
前記ケーシングの段差と前記固定部品の段差とが互いに嵌合することによって、前記ケーシングの段差と前記固定部品の段差との間に前記隙間が形成されている、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記真空ポンプは、
前記ロータ翼とともにターボ分子ポンプを構成するステータ翼と、
前記ステータ翼を軸方向に上下から挟み、位置決めする複数のスペーサと、
をさらに備え、
前記隙間は、前記複数のスペーサと前記ケーシングの内壁との間に形成された隙間を介して、前記ケーシングの内部の排気経路と連通している、請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記固定部品は、永久磁石磁気軸受の永久磁石を保持するマグネットホルダである、
請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記溝は、前記マグネットホルダに形成されている、
請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記マグネットホルダは、中心から放射方向に延びる梁と、前記梁の外周側で前記梁に接続され、前記ケーシングと接する外輪部とを有し、
前記溝は、前記外輪部の前記梁に接続する部分に形成されている、
請求項5に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記ロータは、ロータ翼を備え、
前記真空ポンプは、
前記ロータ翼とともにターボ分子ポンプを形成するステータ翼と、
前記ステータ翼を軸方向に上下から挟み、位置決めする複数のスペーサと、
をさらに備え、
前記固定部品は、前記複数のスペーサのうちの最上段のスペーサである、
請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記溝は、前記最上段のスペーサに形成されている、
請求項7に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
前記溝は、前記ケーシングに形成されている、
請求項1~4、または、7に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の真空ポンプであって、第1吸気口と、排気口と、前記第1吸気口と前記排気口との間の排気経路に接続された第2吸気口とを備えた真空ポンプと、
リーク検査用ガスを検出する分析管と、
を備え、
前記分析管は、前記真空ポンプの第1吸気口に接続され、
被試験体は、前記真空ポンプの第2吸気口に接続されている、
リークディテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空ポンプおよびリークディテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプは、超高真空用の真空ポンプ、リークディテクタ用の真空ポンプとして利用されている。ターボ分子ポンプは、ケーシング内部にロータを収容し、ロータを数万回転で回転させることにより、真空排気を行う。
【0003】
高速回転を行うロータにおいては、部品の組み合わせ部分において密閉空間が生じると、密閉空間に閉じ込められた気体が徐々に漏れ出すスローリークが発生するとの課題があった。特許文献1においては、ロータの部分における密閉空間を解消することで、スローリークを解消する手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真空ポンプにおいては、ケーシングと、ケーシングに固定する部品においてもガス溜まりが生じ、スローリークが発生する可能性がある。本開示は、そのようなガス溜まりを解消し、スローリークを解消する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の真空ポンプは、
所定の回転方向に回転可能なロータと、
前記ロータを収容するケーシングと、
前記ケーシングの内壁と対向するように配置される固定部品とを備え、
前記ケーシングの内壁と、前記固定部品との間には、隙間が形成されており、
前記ケーシングの内壁と、前記固定部品とのいずれかには、前記隙間と、前記ケーシングの内部の排気経路と、を連通させる溝が形成されている。
【0007】
本開示のリークディテクタは、
本開示の真空ポンプであって、第1吸気口と、排気口と、前記第1吸気口と前記排気口との間の排気経路に接続された第2吸気口とを備えた真空ポンプと、
リーク検査用ガスを検出する分析管と、
を備え、
前記分析管は、前記真空ポンプの第1吸気口に接続され、
被試験体は、前記真空ポンプの第2吸気口に接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の真空ポンプは、ケーシングと、ケーシングの内壁に嵌め合わせて配置される固定部品との間に隙間が形成されており、この隙間を排気するための溝が、ケーシング又は固定部品に設けられているので、スローリークを抑制できる。
【0009】
また、本開示のリークディテクタは、真空ポンプのスローリークが抑制されているために、1回のテストにおける、リークレートがバックグラウンド近くまで低下する時間が短縮され、迅速なリークチェックを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の真空ポンプ100の断面図である。
【
図2】第1実施形態のケーシング11の内壁の段差と、マグネットホルダ30の嵌め合い部分の拡大図である。
【
図3】第1実施形態のマグネットホルダ30の斜視図である。
【
図4】第1実施形態のマグネットホルダ30の一部を、上面から見た図である。
【
図5】変形例1Aのケーシング11の内壁の段差と、マグネットホルダ30の嵌め合い部分の拡大図である。
【
図6】変形例1Bのケーシング11の内壁の段差と、マグネットホルダ30の嵌め合い部分の拡大図である。
【
図7】第2実施形態の真空ポンプ100aの断面図である。
【
図8】第2実施形態のケーシング11の内壁の段差と、スペーサ40の嵌め合い部分の拡大図である。
【
図9】第3実施形態のリークディテクタ500の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
第1実施形態の真空ポンプ100は、
図1に示すように、筐体10と、ロータ20と、モータ28と、マグネットホルダ30と、複数段のステータ翼ユニット23と、ステータ円筒部26と、軸受51、52、55とを備えている。筐体10は、ケーシング11と、ベース12とで構成されている。筐体10は、ロータ20と、モータ28と、マグネットホルダ30と、複数段のステータ翼ユニット23と、ステータ円筒部26と、軸受51、52、55とを収容している。
【0012】
筐体10は、
図1に示すように、第1吸気口P11、第2吸気口P12、P13と、排気口P21とを備えている。排気対象空間を備えた排気対象装置は、吸気口P11に接続される。排気口には、補助ポンプが接続される。筐体10の内部空間には、第1吸気口P11から排気口P21に至る排気経路が形成される。この排気経路には、複数の第2吸気口P12、P13が接続されている。真空ポンプ100をリークディテクタとして用いるときには、複数の第2吸気口P12、P13に、それぞれ試験体からの配管が接続される。
【0013】
ロータ20は、シャフト27と、複数段のロータ翼ユニット21と、ロータ円筒部25とを含む。
【0014】
シャフト27は、ロータ20の軸線方向A1に延びている。以下の説明において、軸線方向A1において、ケーシング11からベース12に向かう方向が下方と定義され、その反対の方向が上方と定義される。
【0015】
シャフト27は、軸受51、52、磁気軸受55によって、筐体10に回転可能な状態で固定されている。より詳細には、シャフト27の上方は、軸受51、磁気軸受55によって、マグネットホルダ30に固定され、マグネットホルダ30は、ケーシング11に固定されている。シャフト27の下方は、軸受52によって、ベース12に固定されている。
【0016】
モータ28は、ロータ20を回転駆動する。モータ28は、モータロータ28aとモータステータ28bとを含む。モータロータ28aは、シャフト27に取り付けられている。モータステータ28bは、ベース12に取り付けられている。モータステータ28bは、モータロータ28aと向かい合って配置されている。
【0017】
複数のロータ翼ユニット21は、それぞれシャフト27に接続されている。複数段のロータ翼ユニット21は、軸線方向A1に互いに間隔をおいて配置されている。それぞれのロータ翼ユニット21は、複数のロータ翼22を含む。図示を省略するが、複数のロータ翼22は、それぞれシャフト27を中心として放射状に延びている。なお、図面においては、複数のロータ翼ユニット21の1つ、及び、複数のロータ翼22の1つのみに符号が付されており、他のロータ翼ユニット21及び他のロータ翼22の符号は省略されている。
【0018】
複数段のステータ翼ユニット23は、上下に配置される2つのスペーサ45に挟み込まれて、ケーシング11の内面に積層されている。複数段のステータ翼ユニット23は、軸線方向A1において、互いに間隔をおいて配置されている。複数段のステータ翼ユニット23は、それぞれ複数段のロータ翼ユニット21の間に配置されている。それぞれのステータ翼ユニット23は、複数のステータ翼24を含む。図示を省略するが、複数段のステータ翼24は、それぞれシャフト27を中心として放射状に延びている。
【0019】
複数段のロータ翼ユニット21と複数段のステータ翼ユニット23とは、ターボ分子ポンプを構成する。なお、図面においては、複数のステータ翼ユニット23の1つ、及び、複数のステータ翼24の1つのみに符号が付されており、他のステータ翼ユニット23及び他のステータ翼24の符号は省略されている。
【0020】
ロータ円筒部25は、ロータ翼ユニット21の下方に配置されている。ロータ円筒部25は、軸線方向A1に延びている。
【0021】
ステータ円筒部26は、ロータ円筒部25の径方向外方に配置されている。ステータ円筒部26は、筐体10に固定されている。ステータ円筒部26は、ロータ円筒部25の径方向において、ロータ円筒部25と向かい合って配置されている。ステータ円筒部26の内周面には、らせん状溝が設けられている。ロータ円筒部25とステータ円筒部26とは、ネジ溝ポンプを構成する。
【0022】
マグネットホルダ30は、磁気軸受55の内周側の永久磁石を保持するとともに、内周側の永久磁石の径方向および軸方向の位置決めを行うものである。マグネットホルダ30は、ケーシング11の内壁に嵌合することで、ロータ20のシャフト27の上方部分に配置されている。マグネットホルダ30は、
図3に示すように、中央部33と、外輪部31と、中央部33と外輪部31とを接続する梁32とを備えている。外輪部31は、ケーシング11の内壁に嵌めあわされている。中央部33には、磁気軸受55の内周側の永久磁石が固定されている。一方、磁気軸受55の外周側の永久磁石は、ロータ20に固定されている。、磁気軸受55の内周側の永久磁石と外周側の永久磁石との磁力による反発力により、ロータ20を軸線方向A1の上方に向けて所定位置に浮上させている。
【0023】
図3に示すように、マグネットホルダ30の外輪部31には段差がある。段差は、外周面31aと径方向の面31bとで構成されている。また、ケーシング11の内壁にも段差がある。段差は、
図2に示すように、上下方向に延びる面11aと径方向に延びる面11bとで構成されている。マグネットホルダ30の外周面31aは、ケーシング11の内壁面11aに接するように、嵌め合わされている。また、マグネットホルダ30の面31bは、ケーシング11の段差を構成する面11bに接している。このような構成に起因して、ケーシング11の内壁の段差においては、ケーシング11とマグネットホルダ30の間に隙間S1が形成されている。隙間S1が閉じた空間であると、ガス溜まりとなり、スローリークの原因となる。
【0024】
本実施形態においては、マグネットホルダ30の外輪部31の外周面31aに、溝311が形成されている。溝311は、隙間S1をケーシング11内部の他の空間と連通させる。他の空間は、排気経路となっている。したがって、隙間S1が排気されやすくなり、スローリークが抑制される。詳細には、溝311は、スペーサ45とケーシング11との間に存在する微小な隙間(
図1参照)に連通している。スペーサ45とケーシング11との間に存在する隙間は、下方において吸気口P12と連通しているので、ターボ分子ポンプとネジ溝ポンプとの間の排気経路に連通している。従って、隙間S1内の気体は、溝311、スペーサ45とケーシング11との間に存在する隙間を経由して、ターボ分子ポンプとネジ溝ポンプとの間の排気経路に排気される。
【0025】
溝311は、
図4に示すように、外輪部31の梁32に接続する部分に形成されているのが好ましい。この部分は、溝311を加工する際に、梁32のために剛性が高く、歪みにくい。マグネットホルダ30が歪むと、ロータ20の回転軸が中心からずれるなど好ましくない。溝311は、梁32と外輪部31の接続部のアールR1,R2の外側の端部を通る半径R11、R22(半径とは、当該端部と外輪部31の中心とを結ぶ直線をいう。)の間に配置されるのが好ましい。
【0026】
<第1実施形態の変形例1A>
上記第1実施形態においては、
図2に示すように、ケーシング11とマグネットホルダ30の間の隙間S1と、ケーシング11内部の排気経路とを連通させる溝311がマグネットホルダ30に形成されている。変形例1Aにおいては、
図5に示すように、溝111aは、ケーシング11の上下方向に延びる面11aに形成されている。その他の変形例1Aの構成は第1実施形態と同じである。変形例1Aの場合も、ケーシング11とマグネットホルダ30の間の隙間S1に溜まるガスが溝111aを経由して、排気経路に排出されやすくなり、スローリークの発生が抑制される。
【0027】
<第1実施形態の変形例1B>
変形例1Aにおいては、溝111aは、ケーシング11の上下方向に延びる面11aに形成されている。これに対して、変形例1Bでは、
図6に示すように、溝111bは、ケーシング11の段差の径方向に延びる面11bに形成されている。その他の変形例1Bの構成は、第1実施形態と同じである。変形例1Bの場合も、ケーシング11とマグネットホルダ30の間の隙間S1に溜まるガスが溝111bを経由して、排気経路に排出されやすくなり、スローリークの発生が抑制される。詳細には、溝111は、軸線方向の上方においてマグネットホルダ30とケーシング11との間に存在する隙間に連通している。軸線方向の上方においてマグネットホルダ30とケーシング11との間に存在する隙間は、マグネットホルダ30の上方の空間に連通している。従って、隙間S1内の気体は、溝311、マグネットホルダ30とケーシング11との間に存在する隙間を経由して、ターボ分子ポンプの上流の排気経路に排気される。
【0028】
<第2実施形態>
第1実施形態の真空ポンプ100においては、ケーシング11の段差にマグネットホルダ30が嵌め合わせられている。これに対して、第2実施形態の真空ポンプ100aは、
図7に示すように、ケーシング11の段差に、スペーサ40が嵌め合わせられている。第2実施形態の真空ポンプ100aのその他の部分の構成は、第1実施形態の真空ポンプ100の構成と同じである。第2実施形態においては、マグネットホルダ30は、ケーシング11の内壁の段差以外の部分に固定されている。または、マグネットホルダ30は、ケーシング11と一体となっている。
【0029】
スペーサ40、45は、ステータ翼ユニット23をケーシング11に固定するための部品である。スペーサ40は、最上段のスペーサであり、スペーサ45よりも、軸線方向A1の上方に配置されている。スペーサ40、45は、リング状である。スペーサ40の外周面41は、ケーシング11の内壁の段差の上下方向に延びる面11aに接するように嵌め合わせて配置されている。
【0030】
スペーサ40は、
図8に示すように、外周面41と上面42とを備えている。また、ケーシング11の内壁の段差は、上下方向に延びる面11aと径方向に延びる面11bとで構成されている。スペーサ40の外周面41は、ケーシング11の内壁面11aに接するように、嵌め合わされている。また、スペーサ40の上面42は、ケーシング11の段差を構成する面11bに接している。ケーシング11の内壁の段差においては、ケーシング11とスペーサ40の間に隙間S1aが形成されている。隙間S1aが閉じた空間であると、ガス溜まりとなり、スローリークの原因となる。
【0031】
本実施形態においては、スペーサ40の外周面41に、溝411が形成されている。溝411は、隙間S1aをケーシング11内部の他の空間と連通させる。他の空間は、排気経路となっている。したがって、隙間S1aが排気されやすくなり、スローリークが抑制される。詳細には、溝411は、最上段のスペーサ40よりも排気下流側に位置する他のスペーサ45とケーシング11との間に存在する微小な隙間(
図7参照)に連通している。スペーサ45とケーシング11との間に存在する隙間は、下方において吸気口P12と連通しているので、ターボ分子ポンプとネジ溝ポンプとの間の排気経路に連通している。従って、隙間S1a内の気体は、溝411、スペーサ45とケーシング11との間に存在する隙間を経由して、ターボ分子ポンプとネジ溝ポンプとの間の排気経路に排気される。
【0032】
第2実施形態では、溝411がスペーサ40に形成されている場合について説明した。溝は、変形例1A、変形例1Bと同様に、ケーシング11に形成されていてもよい。この場合も、第2実施形態と同様に、隙間S1aが排気されやすくなり、スローリークが抑制される。
【0033】
上記の実施形態に係る真空ポンプ100、100aは、ターボ分子ポンプとネジ溝ポンプとが一体化された複合型ポンプである。しかし、ターボ分子ポンプは省略されてもよい。すなわち、真空ポンプ100、100aは、ネジ溝ポンプのみで構成されてもよい。逆に、ネジ溝ポンプは省略されてもよい。すなわち、真空ポンプ100、100aは、ターボ分子ポンプのみで構成されてもよい。
【0034】
<第3実施形態>
本実施形態は、第1実施形態の真空ポンプ100または第2実施形態の真空ポンプ100aを用いたリークディテクタ500である。なおここでは、真空ポンプ100とは、第1実施形態の真空ポンプ100または第2実施形態の真空ポンプ100aを指すものとする。
【0035】
リークディテクタ500は、
図9に示すように、真空ポンプ100と、分析管200と、粗引きポンプ300と、テストポート401と、校正用標準リーク110と、真空計120と、バルブ101~106と、それらを接続する配管L1~L5とを備えている。
【0036】
リークディテクタ500は、試験体のキャリアガス漏れ試験方法に適用することができる。試験方法は、試験体の内部を真空状態にし、外部から試験体内部に侵入するキャリアガスを分析するか、または、試験体内部にキャリアガスを充填し、試験体外部に漏れ出すキャリアガスを分析するかのいずれかである。キャリアガスは、ヘリウムガスが好ましい。
【0037】
テストポート401は、漏れたキャリアガスを捕集できるように、試験体400に、または、試験体400を収容する容器に接続される。テストポート401は、配管L1によって、粗引きポンプ300に接続される。配管L1の途中には、粗引きバルブ103が配置されている。粗引きポンプ300は、たとえば、油回転ポンプである。
【0038】
分析管200は、配管L5により、真空ポンプ100の第1吸気口P11に接続されている。つまり、分析管200は、真空ポンプ100により排気される。真空ポンプ100の排気口P21は、配管L4を経由して、粗引きポンプ300に接続されている。配管L4の途中には、フォアラインバルブ106が配置されている。つまり、粗引きポンプ300は、真空ポンプ100の補助ポンプとして利用される。
【0039】
テストポート401は、配管L2、テストバルブ104を経由して、真空ポンプ100の第2吸気口P12に接続されている。また、テストポート401は、配管L3、テストバルブ105を経由して、真空ポンプ100の第2吸気口P13に接続されている。真空ポンプ100の内部において、第1吸気口P11から排気口P21に至る排気経路が形成されている。第2吸気口P12、P13は、排気経路の中途に接続されている。第2吸気口P12は、別の第2吸気口P13よりも排気経路の上流側に接続されている。第2吸気口P12は、真空ポンプ100のターボ分子ポンプとネジ溝ポンプの間に接続されている。別の第2吸気口P13は、ネジ溝ポンプの途中に接続されている。
【0040】
図9に示すように、配管L1には、ベントバルブ101、校正用バルブ102、真空計120が接続されている。校正用バルブ102には、校正用標準リーク110が接続されている。校正用標準リーク110は着脱可能である。ベントバルブ101は、配管L1を大気圧に開放する。真空計120は、配管L1内の圧力を検出できる。
【0041】
次に、リークディテクタ500を用いた試験体のリークチェック方法について説明する。なお、リークチェック方法は、逆拡散測定法と呼ばれる原理を用いている。逆拡散測定法は、真空ポンプ100の排気経路の中途又は下流側にキャリアガス(リーク検査用ガス)を供給して、排気経路を上流側に逆拡散したキャリアガスを分析管200で検出してリーク量を求めるものである。
【0042】
リークディテクタ500を起動すると、粗引きポンプ300、真空ポンプ100、分析管200が起動される。バルブ106は開状態とされ、その他のバルブ101~105は閉状態とされる。分析管200内を真空ポンプ100を用いて所定のバックグラウンド値(真空度)になるまで排気する。
【0043】
テストポート401に蓋をした後に、粗引きバルブ103が開かれて配管L1が粗引きポンプ300により排気される。配管L1が所定圧力になったら、粗引きバルブ103を閉じた後に、テストバルブ105および校正用バルブ102を開く。その結果、校正用標準リーク110内の校正用キャリアガス(ヘリウムガス)が配管L1へと流出し、テストバルブ105を介して吸気口P13から真空ポンプ100の排気経路に達し、校正が行われる。
【0044】
次に試験体のリーク検査を行う。パッケージのような小さな容器を試験体としてリーク検査をする場合について説明する。試験体にはキャリアガスを充填する。試験体を、テストポート401に接続された真空容器にいれる。粗引きバルブ103が開いて、配管L1内を粗引きポンプ300により排気する。配管L1内が所定圧力になったならば、粗引きバルブ103を閉じ、テストバルブ105を開く。試験体からリークしたキャリアガスは、テストバルブ105を介して、真空ポンプ100の第2吸気口P13を介して真空ポンプ100内の排気経路に達する。逆拡散したキャリアガスが分析管200により検出されて、リーク量が測定される。
【0045】
以上は、配管L3、テストバルブ105、第2吸気口P13を利用して、リーク量を測定する場合について説明した。同様にして、配管L2、テストバルブ104、第2吸気口P12を利用して、リーク量を測定すれば、より高感度の測定を行うことができる。
【0046】
本実施形態においては、第1実施形態の真空ポンプ100または第2実施形態の真空ポンプ100aを用いるので、ケーシング11と他の部品(マグネットホルダ30またはスペーサ40)のとの間の隙間S1、S1aが排気されやすくなっている。したがって、隙間S1、S1aに閉じ込められた気体の、分析管200におけるキャリアガス検出に対する影響を低減することができる。リークガスの検出速度を上げることができる。
【0047】
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(3)態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0048】
(第1項)一態様に係る真空ポンプは、
所定の回転方向に回転可能なロータと、
前記ロータを収容するケーシングと、
前記ケーシングの内壁と対向するように配置される固定部品とを備え、
前記ケーシングと内壁と、前記固定部品との間には、隙間が形成されており、
前記ケーシングの内壁と、前記固定部品とのいずれかには、前記隙間と、前記ケーシングの内部の排気経路と、を連通させる溝が形成されている。
【0049】
第1項に記載の真空ポンプは、ケーシングと、ケーシングの内壁に対向して配置される固定部品との間に隙間が形成されており、この隙間を排気するための溝が、ケーシング又は固定部品に設けられているので、スローリークを抑制できる。
【0050】
(第2項)第1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記ケーシングは、径方向に延びる面と軸方向に延びる面とを有する段差を有し、
前記固定部品は、径方向に延びる面と軸方向に延びる面とを有する段差を有し、
前記ケーシングの段差と前記固定部品の段差とが互いに嵌合することによって、前記ケーシングの段差と前記固定部品の段差との間に前記隙間が形成されている。
【0051】
第2項に記載の真空ポンプは、ケーシングの段差と、固定部品の段差が互いに嵌め合わされて構成されているので、隙間が形成されやすく、ケーシング又は固定部品に溝を形成することで、スローリークを抑制できる。
【0052】
(第3項)第1項または第2項に記載の真空ポンプにおいて、
前記ロータ翼とともにターボ分子ポンプを構成するステータ翼と、
前記ステータ翼を軸方向に上下から挟み、位置決めする複数のスペーサと、
をさらに備え、
前記隙間は、前記複数のスペーサと前記ケーシングの内壁との間に形成された隙間を介して、前記ケーシングの内部の排気経路と連通している。
【0053】
第3項に記載の真空ポンプは、ケーシングと固定部品の間の隙間が、前記溝と、スペーサと前記ケーシングの内壁との間に形成された隙間を介して、前記ケーシングの内部の排気経路と連通している。これによって、ケーシングと固定部品の間の隙間がガス溜まりとなって、スローリークの原因となるのを防止する。
【0054】
(第4項)第1項または第2項に記載の真空ポンプにおいて、前記固定部品は、永久磁石磁気軸受の永久磁石を保持するマグネットホルダである。
【0055】
第4項に記載の真空ポンプは、マグネットホルダを備えているので、永久磁石磁気軸受の永久磁石を適切に保持できる。また、ケーシングと、マグネットホルダとの間に隙間が形成されており、この隙間を排気するための溝が、ケーシング又はマグネットホルダに設けられているので、スローリークを抑制できる。
【0056】
(第5項) 第4項に記載の真空ポンプにおいて、前記溝は、前記マグネットホルダに形成されている。
【0057】
第5項に記載の真空ポンプは、マグネットホルダに溝が形成されているので、ケーシングに溝を形成するのに比べて加工が容易である。
【0058】
(第6項)第5項に記載の真空ポンプにおいて、
前記マグネットホルダは、中心から放射方向に延びる梁と、前記梁の外側で前記梁に接続され、前記ケーシングと接する外輪部とを有し、
前記溝は、前記外輪部の前記梁に接続する部分に形成されている。
【0059】
第6項に記載の真空ポンプは、剛性の高い梁に接続する部分に溝が形成されているため、溝を形成する際に、マグネットホルダがひずみにくい。
【0060】
(第7項)第1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記ロータは、ロータ翼を備え、
前記真空ポンプは、
前記ロータ翼ととともにターボ分子ポンプを形成するステータ翼と、
前記ステータ翼を軸方向に上下から挟み、位置決めする複数のスペーサと、
をさらに備え、
前記固定部品は、前記複数のスペーサのうちの最上段のスペーサである。
【0061】
第7項に記載の真空ポンプによれば、ケーシングと、スペーサとの間に隙間が形成されており、この隙間を排気するための溝が、ケーシング又はスペーサに設けられているので、スローリークを抑制できる。
【0062】
(第8項)第7項に記載の真空ポンプにおいて、前記溝は、前記最上段のスペーサに形成されている。
【0063】
第8項に記載の真空ポンプは、スペーサに溝が形成されているので、ケーシングに溝を形成するのに比べて加工が容易である。
【0064】
(第9項)第1項~第4項または第7項に記載の真空ポンプにおいて、前記溝は、前記ケーシングに形成されている。
【0065】
第9項に記載の真空ポンプは、ケーシングに溝が形成されているため、固定部品に溝を形成する場合に歪が入るリスクを抑制することができる。
【0066】
(第10項)一態様に係るリークディテクタは、
第1項~第9項のいずれか1項に記載の真空ポンプであって、第1吸気口と、排気口と、前記第1吸気口と前記排気口との間の排気経路に接続された第2吸気口とを備えた真空ポンプと、
リーク検査用ガスを検出する分析管と、
を備え、
前記分析管は、前記真空ポンプの第1吸気口に接続され、
被試験体は、前記真空ポンプの第2吸気口に接続されている。
【0067】
第10項に記載のリークディテクタにおいては、ケーシングと他の部品との間の隙間S1、S1aが排気されやすくなっている。したがって、隙間S1、S1aに閉じ込められた気体の、分析管200におけるキャリアガス検出に対する影響を低減することができる。リークガスの検出速度を上げることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 筐体
11 ケーシング
12 ベース
20 ロータ
21 ロータ翼ユニット
22 ロータ翼
23 ステータ翼ユニット
24 ステータ翼
25 ロータ円筒部
26 ステータ円筒部
27 シャフト
28 モータ
30 マグネットホルダ
31 マグネットホルダの外輪部
32 マグネットホルダの梁
40 スペーサ
100 真空ポンプ
200 分析管
300 粗引きポンプ
400 試験体
111a、111b、311、411 溝
P11 第1吸気口
P12、P13 第2吸気口
P21 排気口
R1、R2 アール部
R11、R22 半径
S1、S1a 隙間