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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185268
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/10 20060101AFI20221207BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20221207BHJP
【FI】
B60K17/10 C
F16H57/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092821
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高橋 颯太
(72)【発明者】
【氏名】安藤 智一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 正慈
(72)【発明者】
【氏名】木戸 康貴
(72)【発明者】
【氏名】ハント 誇倫
【テーマコード(参考)】
3D042
3J063
【Fターム(参考)】
3D042AA06
3D042AA07
3D042AB11
3D042BA02
3D042BA05
3D042BA08
3D042BA12
3D042BA19
3D042BB02
3D042BB05
3D042BC03
3J063AA12
3J063AB44
3J063AC04
3J063BA11
3J063BA13
3J063BA15
3J063BB01
3J063BB39
3J063CD42
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD56
3J063XD62
3J063XD64
3J063XE04
3J063XE38
3J063XF23
3J063XG22
3J063XH42
(57)【要約】
【課題】作業車において、変速ケースの内部の空気を抜く構成を備えながら、機体(伝動ケース及び変速ケース)が大きく傾斜しても、変速ケースの内部に十分な潤滑油が保持されるように構成する。
【解決手段】原動部4の動力が伝達される伝動軸40を収容する伝動ケース20と、伝動軸40の動力が伝達される油圧ポンプ35及び油圧モータ36を有する無段変速装置32と、伝動ケース20に連結され無段変速装置32を収容する変速ケース21とが備えられる。伝動ケース20に貯留された潤滑油を作動油として無段変速装置32に供給可能なチャージポンプ48が備えられる。伝動ケース20と変速ケース21とに亘って設けられ、伝動ケース20の内部と変速ケース21の内部とに亘る空気の通過が可能で、潤滑油の通過に抵抗を与える絞り通路56,57が備えられる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動部の動力が伝達される伝動軸を収容する伝動ケースと、
前記伝動軸の動力が伝達される油圧ポンプ及び動力を出力する油圧モータを有する静油圧式の無段変速装置と、
前記伝動ケースに連結され、前記無段変速装置を収容する変速ケースと、
前記油圧モータの動力が伝達されて駆動される走行装置とが備えられ、
前記伝動ケースに貯留された潤滑油を、作動油として前記無段変速装置に供給可能なチャージポンプと、
前記伝動ケースと前記変速ケースとに亘って設けられ、前記伝動ケースの内部と前記変速ケースの内部とに亘る空気の通過が可能で、潤滑油の通過に抵抗を与える絞り通路とが備えられている作業車。
【請求項2】
前記油圧ポンプが、前記油圧モータよりも高い位置に配置され、
前記絞り通路が、前記油圧モータよりも高い位置に配置されている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記油圧ポンプを支持し、前記変速ケースに回転可能に支持され、前記伝動軸と連結される入力軸と、
前記入力軸における前記伝動軸の側の部分を支持可能で、前記変速ケースに取り付けられたベアリングとが備えられ、
前記絞り通路は、前記変速ケースにおける前記ベアリングのアウターレースが取り付けられる取付面部に、前記伝動ケースの内部と前記変速ケースの内部とに亘って設けられた溝部である請求項1又は2に記載の作業車。
【請求項4】
前記アウターレースを止めるストッパーリングが、前記変速ケースに取り付けられ、
前記ストッパーリングが、前記溝部に入り込んで前記溝部の開口面積を絞っている請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記変速ケースに連結され、前記走行装置を駆動する車軸を有し、前記油圧モータの動力を前記車軸に伝達する伝動系を収容する車軸ケースが備えられ、
前記変速ケースと前記車軸ケースとに亘って設けられ、前記変速ケースの内部と前記車軸ケースの内部とに亘る潤滑油の通過が可能な第1通路と、
前記伝動ケースと前記車軸ケースとに亘って設けられ、前記伝動ケースの内部と前記車軸ケースの内部とに亘る潤滑油の通過が可能な第2通路とが備えられている請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記第1通路は、前記変速ケースと前記車軸ケースとを仕切る壁部に、前記変速ケースの内部と前記車軸ケースの内部とに亘って開口された貫通孔である請求項5に記載の作業車。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記壁部における前記油圧ポンプと前記油圧モータとの間の部分に開口されている請求項6に記載の作業車。
【請求項8】
前記第2通路は、前記伝動ケースと前記車軸ケースとに亘って接続された管部材であり、
前記管部材における前記伝動ケースとの接続部分が、前記管部材における前記車軸ケースとの接続部分よりも低い位置に配置されている請求項5~7のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項9】
前記管部材における前記伝動ケースとの接続部分が、前記伝動ケースに貯留された潤滑油の油面よりも低い位置に配置されている請求項8に記載の作業車。
【請求項10】
原動部の動力が伝達される伝動軸を収容する伝動ケースと、
前記伝動軸の動力が伝達される油圧ポンプ及び動力を出力する油圧モータを有する静油圧式の無段変速装置と、
前記伝動ケースに連結され、前記無段変速装置を収容する変速ケースと、
走行装置と、
前記変速ケースに連結され、前記走行装置を駆動する車軸を有し、前記油圧モータの動力を前記車軸に伝達する伝動系を収容する車軸ケースとが備えられ、
前記伝動ケースに貯留された潤滑油を、作動油として前記無段変速装置に供給可能なチャージポンプと、
前記伝動ケースと前記変速ケースとに亘って設けられ、前記伝動ケースの内部と前記変速ケースの内部とに亘る空気の通過が可能で、潤滑油の通過に抵抗を与える絞り通路と、
前記変速ケースと前記車軸ケースとに亘って設けられ、前記変速ケースの内部と前記車軸ケースの内部とに亘る潤滑油の通過が可能な第1通路と、
前記伝動ケースと前記車軸ケースとに亘って設けられ、前記伝動ケースの内部と前記車軸ケースの内部とに亘る潤滑油の通過が可能な第2通路とが備えられている作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の変速装置として静油圧式の無段変速装置を備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例である草刈り機では、特許文献1に開示されているように、エンジン(原動部に相当)の動力が伝動軸に伝達され、伝動軸の動力が静油圧式の無段変速装置の油圧ポンプに伝達されて、無段変速装置の油圧モータの動力が走行用の車輪(走行装置に相当)に伝達されるように構成されたものがある。
【0003】
特許文献1では、エンジンの動力が伝達される伝動軸が伝動ケースに収容され、無段変速装置が変速ケースに収容されており、伝動ケースと変速ケースとが連結されている。伝動ケースに貯留された潤滑油が、チャージポンプにより作動油として無段変速装置に供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-108525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チャージポンプにより潤滑油が作動油として無段変速装置に供給されている場合、無段変速装置の油圧ポンプ及び油圧モータから変速ケースの内部に潤滑油がリークするので、変速ケースの内部の空気を抜く構成が必要である。
【0006】
作業車が傾斜地を走行して作業を行う場合、機体が大きく傾斜し、伝動ケース及び変速ケースが大きく傾斜するので、変速ケースの内部に十分な潤滑油が保持されるようにすることが、無段変速装置の耐久性の向上の面で重要である。
【0007】
本発明は、作業車において、変速ケースの内部の空気を抜く構成を備えながら、機体(伝動ケース及び変速ケース)が大きく傾斜しても、変速ケースの内部に十分な潤滑油が保持されるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の作業車は、原動部の動力が伝達される伝動軸を収容する伝動ケースと、前記伝動軸の動力が伝達される油圧ポンプ及び動力を出力する油圧モータを有する静油圧式の無段変速装置と、前記伝動ケースに連結され、前記無段変速装置を収容する変速ケースと、前記油圧モータの動力が伝達されて駆動される走行装置とが備えられ、前記伝動ケースに貯留された潤滑油を、作動油として前記無段変速装置に供給可能なチャージポンプと、前記伝動ケースと前記変速ケースとに亘って設けられ、前記伝動ケースの内部と前記変速ケースの内部とに亘る空気の通過が可能で、潤滑油の通過に抵抗を与える絞り通路とが備えられている。
【0009】
本発明によると、原動部の動力が伝達される伝動軸を収容する伝動ケースと、無段変速装置を収容する変速ケースとが連結された構成において、絞り通路が伝動ケースと変速ケースとに亘って設けられている。
これにより、伝動ケースに貯留された潤滑油が、チャージポンプにより作動油として無段変速装置に供給されている場合、無段変速装置の油圧ポンプ及び油圧モータから変速ケースの内部に潤滑油がリークするのに伴って、変速ケースの内部の空気が絞り通路を通って伝動ケースに抜ける。
【0010】
また、絞り通路は潤滑油の通過に抵抗を与えるように構成されているので、前述のように機体(伝動ケース及び変速ケース)が大きく傾斜して、変速ケースの内部の潤滑油の油面が絞り通路に達しても、絞り通路において変速ケースから伝動ケースへの潤滑油の流れが抑えられる。
これにより、機体(伝動ケース及び変速ケース)が大きく傾斜しても、変速ケースの潤滑油の減少を抑えることができるのであり、この間に、無段変速装置の油圧ポンプ及び油圧モータから変速ケースの内部に潤滑油がリークすることによって、変速ケースの内部に十分な潤滑油が保持される。
【0011】
以上のように、本発明によると、空気の通過が可能で潤滑油の通過に抵抗を与える絞り通路を、伝動ケースと変速ケースとに亘って設けることにより、変速ケースの内部の空気を抜くことができ、且つ、機体(伝動ケース及び変速ケース)が大きく傾斜しても、変速ケースの内部に十分な潤滑油を保持することができて、無段変速装置の耐久性を向上させることができる。
【0012】
本発明において、前記油圧ポンプが、前記油圧モータよりも高い位置に配置され、前記絞り通路が、前記油圧モータよりも高い位置に配置されていると好適である。
【0013】
本発明によると、絞り通路が変速ケースにおいて比較的高い位置に配置される。これにより、機体(伝動ケース及び変速ケース)が大きく傾斜しても、変速ケースの内部の潤滑油の油面が絞り通路に達し難くなるので、変速ケースから伝動ケースへの潤滑油の流れを抑えて、変速ケースの内部に十分な潤滑油を保持するという面で有利である。
【0014】
本発明において、前記油圧ポンプを支持し、前記変速ケースに回転可能に支持され、前記伝動軸と連結される入力軸と、前記入力軸における前記伝動軸の側の部分を支持可能で、前記変速ケースに取り付けられたベアリングとが備えられ、前記絞り通路は、前記変速ケースにおける前記ベアリングのアウターレースが取り付けられる取付面部に、前記伝動ケースの内部と前記変速ケースの内部とに亘って設けられた溝部であると好適である。
【0015】
作業車では、無段変速装置において、油圧ポンプを支持した入力軸が変速ケースに回転可能に支持され、入力軸と伝動ケースの伝動軸とが連結されて、伝動軸により入力軸及び油圧ポンプが回転駆動されるように構成されることがある。
【0016】
本発明によると、入力軸における伝動軸の側の部分を支持可能に変速ケースに取り付けられたベアリングにおいて、ベアリングのアウターレースが取り付けられる変速ケースの取付面部に、伝動ケースの内部と変速ケースの内部とに沿って、絞り通路としての溝部が設けられている。
これにより、ベアリングのアウターレースが取り付けられる変速ケースの取付面部という既存の部分に溝部を設けるという簡単な加工によって、絞り通路を得ることができるので、構造の簡素化及び低コスト化の面で有利である。
【0017】
本発明において、前記アウターレースを止めるストッパーリングが、前記変速ケースに取り付けられ、前記ストッパーリングが、前記溝部に入り込んで前記溝部の開口面積を絞っていると好適である。
【0018】
変速ケースの取付面部にベアリングのアウターレースが取り付けられる場合、ベアリングのアウターレースを止めるストッパーリングが、変速ケースに取り付けられることがあり、ストッパーリングは変速ケースの取付面部に沿って取り付けられる。
【0019】
本発明によると、ストッパーリングが溝部と交差するように溝部に入り込むことによって、断面積の比較的大きな溝部であっても、ストッパーリングという既存の部材を有効に利用して、溝部の断面積を部分的に小さくすることが容易に行え、絞り通路を容易に得ることができるので、構造の簡素化の面で有利である。
【0020】
本発明において、前記変速ケースに連結され、前記走行装置を駆動する車軸を有し、前記油圧モータの動力を前記車軸に伝達する伝動系を収容する車軸ケースが備えられ、前記変速ケースと前記車軸ケースとに亘って設けられ、前記変速ケースの内部と前記車軸ケースの内部とに亘る潤滑油の通過が可能な第1通路と、前記伝動ケースと前記車軸ケースとに亘って設けられ、前記伝動ケースの内部と前記車軸ケースの内部とに亘る潤滑油の通過が可能な第2通路とが備えられていると好適である。
【0021】
作業車では、走行装置を駆動する車軸を有する車軸ケースが変速ケースに連結され、変速ケースの無段変速装置の油圧モータの動力が、車軸ケースの内部の伝動系を介して、車軸に伝達されるように構成されることがある。
【0022】
本発明によると、前述の構成において、第1通路が変速ケースと車軸ケースとに亘って設けられ、第2通路が伝動ケースと車軸ケースとに亘って設けられている。
これにより、伝動ケースに貯留された潤滑油が、チャージポンプにより作動油として無段変速装置に供給され、無段変速装置の油圧ポンプ及び油圧モータから変速ケースの内部に潤滑油がリークし、変速ケースの潤滑油が第1通路を通って車軸ケースの内部に入り、車軸ケースの潤滑油が第2通路を通って伝動ケースに戻るというような、潤滑油の流れの発生が期待できる。
このような潤滑油の流れが発生することにより、潤滑油の冷却が促進されるので、潤滑油の劣化防止の面で有利である。
【0023】
本発明において、前記第1通路は、前記変速ケースと前記車軸ケースとを仕切る壁部に、前記変速ケースの内部と前記車軸ケースの内部とに亘って開口された貫通孔であると好適である。
【0024】
本発明によると、変速ケースと車軸ケースとを仕切る壁部に、貫通孔を開口することにより、第1通路を得ることができるので、構造の簡素化の面で有利である。
【0025】
本発明において、前記貫通孔は、前記壁部における前記油圧ポンプと前記油圧モータとの間の部分に開口されていると好適である。
【0026】
無段変速装置の油圧ポンプと油圧モータとの間の部分は、無段変速装置の油圧ポンプ及び油圧モータの両方からリークする潤滑油にとって近い位置であり、変速ケースの内部の略中央に位置する。
本発明によると、貫通孔を油圧ポンプと油圧モータとの間に設けることにより、変速ケースの潤滑油が貫通孔に入り易くなるので、変速ケースから車軸ケースへの潤滑油の流れを発生させるという面で有利である。
【0027】
本発明において、前記第2通路は、前記伝動ケースと前記車軸ケースとに亘って接続された管部材であり、前記管部材における前記伝動ケースとの接続部分が、前記管部材における前記車軸ケースとの接続部分よりも低い位置に配置されていると好適である。
【0028】
本発明によると、第2通路として管部材を設けた場合、管部材における伝動ケースとの接続部分が、管部材における車軸ケースとの接続部分よりも低い位置に配置されていることにより、伝動ケースの潤滑油が管部材を通って車軸ケースに流れるという状態は発生し難い。
これにより、変速ケースの潤滑油が第1通路を通って車軸ケースの内部に入り、車軸ケースの潤滑油が第2通路を通って伝動ケースに戻るというような、潤滑油の流れを発生させる面で有利である。
【0029】
本発明において、前記管部材における前記伝動ケースとの接続部分が、前記伝動ケースに貯留された潤滑油の油面よりも低い位置に配置されていると好適である。
【0030】
本発明によると、管部材における伝動ケースとの接続部分が、伝動ケースに貯留された潤滑油の油面よりも低い位置に配置されていることにより、潤滑油が管部材から伝動ケースに戻る際に、空気の泡が伝動ケースの潤滑油に入ることが少ない。
これにより、伝動ケースに貯留された潤滑油が、チャージポンプにより作動油として無段変速装置に供給される際、無段変速装置に空気の泡が入り難くなるので、空気の泡が入ることによる無段変速装置の作動不良を少なくすることができる。
【0031】
本発明の作業車は、原動部の動力が伝達される伝動軸を収容する伝動ケースと、前記伝動軸の動力が伝達される油圧ポンプ及び動力を出力する油圧モータを有する静油圧式の無段変速装置と、前記伝動ケースに連結され、前記無段変速装置を収容する変速ケースと、走行装置と、前記変速ケースに連結され、前記走行装置を駆動する車軸を有し、前記油圧モータの動力を前記車軸に伝達する伝動系を収容する車軸ケースとが備えられ、前記伝動ケースに貯留された潤滑油を、作動油として前記無段変速装置に供給可能なチャージポンプと、前記伝動ケースと前記変速ケースとに亘って設けられ、前記伝動ケースの内部と前記変速ケースの内部とに亘る空気の通過が可能で、潤滑油の通過に抵抗を与える絞り通路と、前記変速ケースと前記車軸ケースとに亘って設けられ、前記変速ケースの内部と前記車軸ケースの内部とに亘る潤滑油の通過が可能な第1通路と、前記伝動ケースと前記車軸ケースとに亘って設けられ、前記伝動ケースの内部と前記車軸ケースの内部とに亘る潤滑油の通過が可能な第2通路とが備えられている。
【0032】
本発明によると、原動部の動力が伝達される伝動軸を収容する伝動ケースと、無段変速装置を収容する変速ケースとが連結された構成において、絞り通路が伝動ケースと変速ケースとに亘って設けられている。
これにより、伝動ケースに貯留された潤滑油が、チャージポンプにより作動油として無段変速装置に供給されている場合、無段変速装置の油圧ポンプ及び油圧モータから変速ケースの内部に潤滑油がリークするのに伴って、変速ケースの内部の空気が絞り通路を通って伝動ケースに抜ける。
【0033】
前述の構成において、作業車が傾斜地を走行して作業を行う場合、機体(伝動ケース及び変速ケース)が大きく傾斜して、変速ケースの内部の潤滑油の油面が絞り通路に達した際に、変速ケースの潤滑油が絞り通路を通り伝動ケースに流れて、変速ケースの潤滑油が一時的に少なくなる可能性が考えられる。
【0034】
本発明によると、絞り通路は潤滑油の通過に抵抗を与えるように構成されているので、前述のように機体(伝動ケース及び変速ケース)が大きく傾斜して、変速ケースの内部の潤滑油の油面が絞り通路に達しても、絞り通路において変速ケースから伝動ケースへの潤滑油の流れが抑えられる。
これにより、機体(伝動ケース及び変速ケース)が大きく傾斜しても、変速ケースの潤滑油の減少を抑えることができるのであり、この間に、無段変速装置の油圧ポンプ及び油圧モータから変速ケースの内部に潤滑油がリークすることによって、変速ケースの内部に十分な潤滑油が保持される。
【0035】
以上のように、本発明によると、空気の通過が可能で潤滑油の通過に抵抗を与える絞り通路を、伝動ケースと変速ケースとに亘って設けることにより、変速ケースの内部の空気を抜きながら、機体(伝動ケース及び変速ケース)が大きく傾斜しても、変速ケースの内部に十分な潤滑油を保持することができて、無段変速装置の耐久性を向上させることができる。
【0036】
作業車では、走行装置を駆動する車軸を有する車軸ケースが変速ケースに連結され、変速ケースの無段変速装置の油圧モータの動力が、車軸ケースの内部の伝動系を介して、車軸に伝達されるように構成されることがある。
【0037】
本発明によると、前述の構成において、第1通路が変速ケースと車軸ケースとに亘って設けられ、第2通路が伝動ケースと車軸ケースとに亘って設けられている。
これにより、伝動ケースに貯留された潤滑油が、チャージポンプにより作動油として無段変速装置に供給され、無段変速装置の油圧ポンプ及び油圧モータから変速ケースの内部に潤滑油がリークし、変速ケースの潤滑油が第1通路を通って車軸ケースの内部に入り、車軸ケースの潤滑油が第2通路を通って伝動ケースに戻るというような、潤滑油の流れの発生が期待できる。
このような潤滑油の流れが発生することにより、潤滑油の冷却が促進されるので、潤滑油の劣化防止の面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】草刈り機の右側面図である。
図2】草刈り機の平面図である。
図3】機体付近の縦断右側面図である。
図4】機体付近の横断平面図である。
図5】エンジンから伝動ケース、左右の変速ケース、左右の車軸ケース及び草刈り装置への伝動系を示す概略図である。
図6】伝動ケース、左右の変速ケース、左右の無段変速装置、左右の車軸ケースの油圧系を示す概略図である。
図7】伝動ケース、左右の変速ケース及び左右の車軸ケースの平面図である。
図8】伝動ケース、左右の変速ケース及び左右の車軸ケースの正面図である。
図9】伝動ケース、左右の変速ケース及び左右の車軸ケースの背面図である。
図10】伝動ケース、左右の変速ケース及び左右の車軸ケースの縦断背面図である。
図11図10においてXI-XI方向から視た断面図である。
図12図11においてXII-XII方向から視た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1図12に、作業車の一例である遠隔操作型の草刈り機が示されており、図1図12において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0040】
(草刈り機の全体構成)
図1図4に示すように、左右のクローラ型式の走行装置2により機体1が支持され、機体1の前部に作業装置である草刈り装置3が支持されて、機体1の後部にエンジン4(原動部に相当)が支持されており、伝動ケース20、左右の変速ケース21及び左右の車軸ケース22が機体1に連結されて、草刈り機の全体が構成されている。
【0041】
上下向きの左右のフレーム9、上下向きの左右のフレーム10、左右向きの前後のフレーム11、前後向きの左右のフレーム12が、正方形の枠状に連結されている。左右のトラックフレーム17がフレーム9,10の下部に連結されて、左右方向に沿った前後のフレーム5,6が、トラックフレーム17に亘って連結されている。以上のように、機体1は、フレーム5,6,9~12及びトラックフレーム17等を有している。
【0042】
走行装置2は、トラックフレーム17に支持された4個の転輪16と、車軸ケース22に支持された駆動輪15と、駆動輪15及び転輪16に取り付けられたクローラベルト19とを有している。
【0043】
(伝動ケース 変速ケース及車軸ケースの構成)
図7図10に示すように、伝動ケース20が機体1の左右中央A1(図4参照)に配置されており、伝動ケース20に対して、左右の変速ケース21及び左右の車軸ケース22が設けられている。
【0044】
変速ケース21は、平板状のポートブロック24(壁部に相当)に、収容ケース23が連結されて構成されている。ポートブロック24は収容ケース23よりも長いものに構成されており、収容ケース23が、ポートブロック24の前部(上部)に連結されて、ポートブロック24の後部(下部)が、収容ケース23から後方(下方)に出ている。
【0045】
右の変速ケース21(収容ケース23)が、伝動ケース20の上部の右の横側部に連結されており、左の変速ケース21(収容ケース23)が、伝動ケース20の上部の左の横側部に連結されている。左右の変速ケース21において、ポートブロック24が収容ケース23に対して左右の横外側に位置している。
【0046】
右の車軸ケース22が、右の変速ケース21(ポートブロック24)の右の横側部の後部(下部)に連結されており、右の変速ケース21のポートブロック24が、右の変速ケース21と右の車軸ケース22とを仕切る壁部となっている。右の変速ケース21のポートブロック24の前部(上部)が、右の車軸ケース22から前方(上方)に出ている。
【0047】
左の車軸ケース22が、左の変速ケース21(ポートブロック24)の左の横側部の後部(下部)に連結されており、左の変速ケース21のポートブロック24が、左の変速ケース21と左の車軸ケース22とを仕切る壁部となっている。左の変速ケース21のポートブロック24の前部(上部)が、左の車軸ケース22から前方(上方)に出ている。
【0048】
(伝動ケース、左右の変速ケース及び左右の車軸ケースと機体との連結の構成)
図1及び図4に示すように、左右の連結ブラケット13が、トラックフレーム17における前後のフレーム5,6の間の部分に連結され、機体1の左右中央A1に向けて延出されている。左右の連結ブラケット14が、連結ブラケット13に連結され、上方に向けて延出されている。左右の連結ブラケット30が、フレーム9におけるトラックフレーム17とフレーム11との間の部分に連結されて、斜め後方下方に向けて延出されている。
【0049】
右の変速ケース21のポートブロック24の後部(下部)における機体1の左右中央A1の側の部分が、右の連結ブラケット14に連結されており、左の変速ケース21のポートブロック24の後部(下部)における機体1の左右中央A1の側の部分が、左の連結ブラケット14に連結されている。
【0050】
右の変速ケース21のポートブロック24の前部(上部)における右の横側部が、右の連結ブラケット30に連結されており、左の変速ケース21のポートブロック24の前部(上部)における左の横側部が、左の連結ブラケット30に連結されている。
【0051】
以上の構成により、伝動ケース20、左右の変速ケース21及び左右の車軸ケース22が、平面視で機体1の左右方向に沿って配置されており、伝動ケース20が平面視で機体1の左右中央A1に配置されている。
【0052】
側面視において、変速ケース21が、伝動ケース20の上部から斜め後方下方に向けて延出されており、走行装置2が水平面に接地した状態で、変速ケース21(収容ケース23)の前部が、変速ケース21(収容ケース23)の後部よりも高い位置に配置される。
【0053】
側面視において、車軸ケース22が、斜め後方下方に延出された姿勢となっており、走行装置2が水平面に接地した状態で、車軸ケース22の前部が、車軸ケース22の後部よりも高い位置に配置される。
【0054】
(エンジンから伝動ケースへの伝動系の構成)
図1図4に示すように、平板状のエンジンフレーム7が、後のフレーム6に連結されて、後方に向けて延出されており、空冷単気筒型式のエンジン4が、エンジンフレーム7に支持されている。
【0055】
図3及び図5に示すように、ギヤ伝動部8が、エンジン4のクランクケースの前部に連結されている。ギヤ伝動部8の内部に、入力軸25及び出力軸26が前後方向に沿って支持されている。ギヤ伝動部8の入力軸25がエンジン4の出力軸4aに接続されており、入力軸25の伝動ギヤ25aと出力軸26の伝動ギヤ26aとが咬合している。
【0056】
図3,4,5に示すように、伝動ケース20の後部の上部に、入力軸27が後向きに突出しており、入力軸27は平面視で機体1の左右中央A1に配置されている。出力軸26が入力軸27と同芯状に配置されており、伝動軸18が出力軸26と入力軸27とに亘って接続されている。
【0057】
以上の構成により、エンジン4の動力が、エンジン4の出力軸4aからギヤ伝動部8の入力軸25に伝達され、入力軸25の伝動ギヤ25a及び出力軸26の伝動ギヤ26aにより逆転され、出力軸26及び伝動軸18を介して、伝動ケース20の入力軸27に伝達される。
【0058】
(伝動ケースの内部の伝動系の構成)
図5及び図10に示すように、伝動ケース20の内部の上部に、伝動軸40が左右方向に沿って支持されており、入力軸27のベベルギヤ27aと伝動軸40のベベルギヤ40aとが咬合している。伝動ケース20の内部の下部に、伝動軸41が前後方向に沿って支持されており、入力軸27の伝動ギヤ27bと伝動軸41の伝動ギヤ41aとが咬合している。
【0059】
出力軸28(図3及び図8参照)が、伝動ケース20の前部の下部に前向きに突出するように支持され、伝動軸41と同芯状に配置されており、伝動軸41と出力軸28との間に、油圧操作型式の作業クラッチ42が設けられている。
【0060】
(左右の変速ケースに収容された無段変速装置の構成)
図5及び図10に示すように、静油圧式の左右の無段変速装置32が、左右の変速ケース21に収容されている。無段変速装置32は、入力軸33、出力軸34、可変容量型のアキシャルプランジャ型の油圧ポンプ35、アキシャルプランジャ型の油圧モータ36及びポートブロック24等を有している。
【0061】
入力軸33は、外周部に油圧ポンプ35を支持しており、収容ケース23のベアリング43及びポートブロック24により、変速ケース21の前部(上部)に回転可能に支持されている。伝動ケース20の内部において、入力軸33と伝動軸40とがスプライン構造により連結されている。
【0062】
出力軸34は、外周部に油圧モータ36を支持しており、収容ケース23、ポートブロック24及び車軸ケース22により、変速ケース21の後部(下部)に回転可能に支持されている。
【0063】
図6に示すように、ポートブロック24の内部において、油圧ポンプ35と油圧モータ36とを接続する一対の油路37が設けられており、油路37に亘ってチャージ油路38が接続されている。
【0064】
前述の(伝動ケース 変速ケース及車軸ケースの構成)及び図3に示すように、走行装置2が水平面に接地した状態で、変速ケース21(収容ケース23)の前部が、変速ケース21(収容ケース23)の後部よりも高い位置に配置されることにより、無段変速装置32において、油圧ポンプ35が油圧モータ36よりも高い位置に配置される。
【0065】
図7,8,9に示すように、左右のブラケット39が、伝動ケース20の後部の右部及び左部に連結され、左右のブラケット45がブラケット39の上部に連結されている。左右のブラケット46が、変速ケース21のポートブロック24の前端部(上端部)に連結されている。
【0066】
図1,2,3,8,9に示すように、電動モータ31aを有する左右の操作機構31がブラケット45,46に亘って連結されており、右の操作機構31が右の変速ケース21の上方に配置され、左の操作機構31が左の変速ケース21の上方に配置されている。左右の操作機構31の電動モータ31aにより、左右の無段変速装置32の油圧ポンプ35の斜板35a(図10参照)が操作され、左右の無段変速装置32が別々に前進側及び後進側に無段階に変速操作される。
【0067】
(車軸ケースの内部の伝動系の構成)
図5及び図10に示すように、左右の車軸ケース22の内部において、無段変速装置32の出力軸34が挿入されており、出力軸34を制動可能な左右のブレーキ47が設けられている。
【0068】
左右の車軸44が、左右方向に沿って車軸ケース22及びポートブロック24に支持されており、出力軸34の伝動ギヤ34a(伝動系に相当)と、車軸44の伝動ギヤ44a(伝動系に相当)とが咬合している。車軸44が車軸ケース22から左右の横外側に突出しており、車軸44の突出部分に駆動輪15が連結されている。
【0069】
前述の(エンジンから伝動ケースへの伝動系の構成)に記載のように、伝動ケース20の入力軸27に伝達された動力が、前述の(伝動ケースの内部の伝動系の構成)に記載の入力軸27のベベルギヤ27a及び伝動軸40のベベルギヤ40a、伝動軸40、入力軸33を介して左右の無段変速装置32に伝達される。無段変速装置32の出力軸34の動力が、出力軸34の伝動ギヤ34a及び車軸44の伝動ギヤ44a、車軸44を介して、駆動輪15に伝達され、駆動輪15によりクローラベルト19が回転駆動される。
【0070】
前述の(左右の変速ケースに収容された無段変速装置の構成)に記載のように、操作機構31により左右の無段変速装置32が別々に前進側及び後進側に無段階に変速操作されることによって、機体1の前進及び後進、停止、前進及び後進での右及び左への旋回、信地旋回及び超信地旋回が行える。
【0071】
(草刈り装置の構成)
図1及び図2に示すように、草刈り装置3は、天井部と左右の横側部とが設けられたケーシング63に、多数の刈刃64が支持されたドラム65が、左右方向に沿った軸芯周りに回転可能に支持されて構成されている。丸パイプ状の補強フレーム66が、ケーシング63の後部の右部及び左部と、ケーシング63のブラケット63aとに亘って連結されており、キャスター車輪型式の左右の接地輪67が、ケーシング63の前部に支持されている。
【0072】
図1図4に示すように、出力ケース68が前のフレーム5に連結され、ブラケット69が左のフレーム9に連結されており、丸パイプ状の支持フレーム70が、左右方向に沿って出力ケース68とブラケット69とに亘って連結されている。チャンネル状のブラケット73が、右のフレーム9に連結されている。
【0073】
支持アーム71が、左右方向に沿った軸芯P1周りに上下揺動可能に、ブラケット73に支持されて、前方に向けて延出されている。支持アーム72が、軸芯P1周りに上下揺動可能に支持フレーム70に支持されて、前方に向けて延出されている。
【0074】
支持アーム71の前部が補強フレーム66に連結され、支持アーム72の前部がケーシング63の左の横側部に連結されており、草刈り装置3が支持アーム71,72により昇降可能に機体1に支持されている。前のフレーム5と補強フレーム66とに亘って、単動型の昇降シリンダ74が接続されており、昇降シリンダ74により草刈り装置3が昇降操作される。
【0075】
(草刈り装置への伝動系の構成)
図3及び図5に示すように、出力ケース68において、円筒状の入力軸75が出力ケース68の後部に前後方向に沿って支持されている。伝動ケース20の出力軸28が入力軸75に挿入されて、スプライン構造により入力軸75と出力軸28とが連結されている。
【0076】
伝動軸76が、左右方向に沿って出力ケース68の内部に支持されており、入力軸75のベベルギヤ75aと伝動軸76のベベルギヤ76aとが咬合している。伝動軸77が、出力ケース68及び支持フレーム70の内部に亘って、軸芯P1と同芯状に支持されて、伝動軸76の伝動ギヤ76bと伝動軸77の伝動ギヤ77aとが咬合している。
【0077】
図2及び図5に示すように、駆動プーリー79が伝動軸77の左端部に取り付けられ、従動プーリー80が草刈り装置3のドラム65の駆動軸78に取り付けられており、駆動プーリー79及び従動プーリー80に亘って、伝動ベルト81が取り付けられている。
【0078】
前述の(伝動ケースの内部の伝動系の構成)及び図5に示すように、エンジン4の動力が、伝動ケース20の入力軸27に伝達され、入力軸27から伝動軸41、作業クラッチ42及び出力軸28を介して、出力ケース68の入力軸75に伝達される。
【0079】
出力ケース68において、入力軸75の動力が、入力軸75のベベルギヤ75a、伝動軸76のベベルギヤ76a、伝動軸76、伝動軸76の伝動ギヤ76b及び伝動軸77の伝動ギヤ77a、伝動軸77、伝動ベルト81を介して駆動軸78に伝達される。草刈り装置3において、ドラム65及び刈刃64が図1の反時計方向に回転駆動される。
【0080】
(伝動ケースに貯留された潤滑油を作動油として無段変速装置に供給する構成)
図10に示すように、伝動ケース20に潤滑油が貯留されている。伝動ケース20における潤滑油の油面の位置(オイルレベル)は、走行装置2が水平面に接地した状態で、無段変速装置32の出力軸34と略同じ位置、又は、無段変速装置32の入力軸33と出力軸34との間の位置に設定されている。伝動ケース20の上部に、ブリーザ(図示せず)が設けられている。
【0081】
図6及び図9に示すように、伝動ケース20の後部における入力軸27の部分に、チャージポンプ48が設けられており、入力軸27によりチャージポンプ48が駆動される。ストレーナ49が、伝動ケース20の後部の下部に取り付けられて、伝動ケース20の内部の底部に近接するように配置されており、チャージポンプ48とストレーナ49とに亘って接続された油路50が、伝動ケース20の後部に上下方向に沿って設けられている。
【0082】
図6図9に示すように、草刈り装置3の昇降シリンダ74(前述の(草刈り装置の構成)を参照)に作業油を給排操作する昇降制御弁51、作業クラッチ42(前述の(伝動ケースの内部の伝動系の構成)を参照)に作業油を給排操作する作業制御弁52が、伝動ケース20の後部の上部に設けられている。
【0083】
伝動ケース20の前部の上部に、フィルタ29が設けられており、金属製のパイプ部材53が、伝動ケース20の上部の上方に配置され、チャージポンプ48とフィルタ29とに亘って接続されている。
【0084】
金属製のパイプ状の左右のパイプ部材54が、フィルタ29から左右の横外側に向けて延出されている。右のパイプ部材54が、右の変速ケース21のポートブロック24の前端部(上端部)に接続されて、右の無段変速装置32のチャージ油路38に接続されている。左のパイプ部材54が、左の変速ケース21のポートブロック24の前端部(上端部)に接続されて、左の無段変速装置32のチャージ油路38に接続されている。
【0085】
チャージポンプ48が駆動されることにより、伝動ケース20に貯留された潤滑油が、作動油としてストレーナ49及び油路50を介してチャージポンプ48に供給される。チャージポンプ48からの作動油(潤滑油)が、パイプ部材53を介してフィルタ29に供給され、フィルタ29を通りパイプ部材54を介して、チャージ油路38に供給されて、無段変速装置32に供給される。
【0086】
これと同時に、チャージポンプ48からの作動油(潤滑油)が、昇降制御弁51及び作業制御弁52に供給される。昇降制御弁51が操作されることにより、昇降シリンダ74が伸縮作動して草刈り装置3の昇降操作が行われる。作業制御弁52が操作されることにより、作業クラッチ42が伝動状態及び遮断状態に操作される。
【0087】
(変速ケースの内部の空気を抜く溝部の構成)
前述の(伝動ケースに貯留された潤滑油を作動油として無段変速装置に供給する構成)及び図10に示すように、チャージポンプ48により作動油(潤滑油)が無段変速装置32に供給されている場合、油圧ポンプ35及び油圧モータ36から変速ケース21の内部に潤滑油がリークする。
【0088】
図10,11,12に示すように、収容ケース23の端部に、取付面部23aが形成されている。入力軸33における伝動軸40の側の部分を支持可能なベアリング43(前述の(左右の変速ケースに収容された無段変速装置の構成)を参照)において、ベアリング43のアウターレース43aが収容ケース23の取付面部23aに取り付けられている。ストッパーリング55が収容ケース23の取付面部23aに取り付けられて、ベアリング43のアウターレース43aがストッパーリング55により止められている。
【0089】
収容ケース23の取付面部23aにおいて、入力軸33と同じ高さで入力軸33の後方の部分に、フライス加工が施されている。これにより、収容ケース23の取付面部23aとベアリング43のアウターレース43aとの間において、入力軸33及びベアリング43の半径方向(前後方向)に沿った溝部56(絞り通路に相当)と、入力軸33の長手方向(左右方向)に沿った溝部57(絞り通路に相当)とが形成されている。溝部56,57は、伝動ケース20の内部と変速ケース21の内部とに亘って連通するように、伝動ケース20と左右の変速ケース21とに亘って設けられている。
【0090】
ストッパーリング55が、溝部57に入り込んで溝部57の開口面積を絞っている。ストッパーリング55が取り付けられる溝部よりも、溝部57が深いものに構成されて、ストッパーリング55の外周部が溝部57の底部に達しないように構成されている。これにより、溝部57の底部とストッパーリング55の外周部との間に、狭い隙間が形成されており、溝部57の断面積がストッパーリング55により部分的に小さくなっている。
【0091】
前述の(左右の変速ケースに収容された無段変速装置の構成)に記載のように、無段変速装置32において油圧ポンプ35が油圧モータ36よりも高い位置に配置されることにより、入力軸33と同じ高さに配置される溝部56,57は、油圧モータ36よりも高い位置に配置され、伝動ケース20における潤滑油の油面の位置(オイルレベル)(前述の(伝動ケースに貯留された潤滑油を作動油として無段変速装置に供給する構成)を参照)よりも高い位置に配置される。
【0092】
図6,11,12に示すように、変速ケース21の内部の空気は、溝部56,57を通過して伝動ケース20の内部に流れる。変速ケース21の内部の潤滑油が、溝部56,57を通過して伝動ケース20の内部に流れようとしても、溝部56と溝部57とが直交するラビリンス配置による抵抗作用、並びに、ストッパーリング55が溝部57に入り込むことにより溝部57の断面積が部分的に小さくなる絞り作用によって、潤滑油の通過に抵抗が与えられる。
【0093】
(伝動ケース、変速ケース及び車軸ケースでの潤滑油の流れに関する構成)
図6及び図10に示すように、左右の変速ケース21のポートブロック24において、油圧ポンプ35と油圧モータ36との間の部分に、変速ケース21の内部と車軸ケース22の内部とに亘って連通するように、貫通孔60(第1通路に相当)が開口されている。
【0094】
左右の変速ケース21のポートブロック24において、油圧モータ36の後方下方の部分に、変速ケース21の内部と車軸ケース22の内部とに亘って連通するように、貫通孔61(第1通路に相当)が開口されている。
これにより、潤滑油は、変速ケース21の内部と車軸ケース22の内部とに亘って、貫通孔60,61を通過可能である。
【0095】
図6図9に示すように、金属製又はゴム製の左右のパイプ部材62(第2通路及び管部材に相当)が設けられており、左右のパイプ部材62の一方の端部に設けられた接続部58(管部材における車軸ケースとの接続部分に相当)が、左右の車軸ケース22の上部に接続されて、パイプ部材62が車軸ケース22の内部と連通している。
【0096】
接続部59(管部材における伝動ケースとの接続部分に相当)が、伝動ケース20の左部の下部に接続されて、左右のパイプ部材62の他方の端部が接続部59に接続されており、パイプ部材62が伝動ケース20の内部と連通している。
【0097】
これにより、パイプ部材62が伝動ケース20と車軸ケース22とに亘って設けられており、潤滑油は、伝動ケース20の内部と車軸ケース22の内部とに亘って、パイプ部材62を通過可能である。
【0098】
走行装置2が水平面に接地した状態で、接続部59が接続部58よりも低い位置に配置される。接続部59は、伝動ケース20における潤滑油の油面の位置(オイルレベル)(前述の(伝動ケースに貯留された潤滑油を作動油として無段変速装置に供給する構成)を参照)よりも低い位置に配置される。
【0099】
以上の構成により、図6図9に示すように、チャージポンプ48により作動油(潤滑油)が無段変速装置32に供給されて、油圧ポンプ35及び油圧モータ36から変速ケース21の内部に潤滑油がリークすると、変速ケース21の潤滑油が貫通孔60,61を通って車軸ケース22の内部に入り、車軸ケース22の潤滑油がパイプ部材62を通って伝動ケース20に戻るというような、潤滑油の流れの発生が期待できる。
【0100】
(発明の実施の第1別形態)
溝部56,57を、収容ケース23の取付面部23aにおいて、入力軸33の前方の部分に設けてもよく、入力軸33の前方及び後方の両部分に設けてもよい。
【0101】
(発明の実施の第2別形態)
溝部56,57を、収容ケース23の取付面部23aにおいて、入力軸33の軸芯よりも高い位置で、入力軸33の前方や後方の部分に複数設けてもよく、入力軸33の上方の部分に複数設けてもよい。
【0102】
(発明の実施の第3別形態)
溝部56,57を収容ケース23の取付面部23aに設けるのではなく、金属製やゴム製の管部材状の絞り通路を、伝動ケース20の上部と変速ケース21の上部とに亘って、伝動ケース20及び変速ケース21の外部を通るように接続してもよい。
【0103】
(発明の実施の第4別形態)
エンジン4に代えて、電動モータ(図示せず)を原動部として備えてもよい。
【0104】
クローラ型式の走行装置2に代えて、走行用の車輪(図示せず)を走行装置2として備えてもよい。この構成では、左右の無段変速装置32を装備するのではなく、1個の無段変速装置32を装備し、無段変速装置32の動力を左右の車輪に伝達するように構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、草刈り装置3に代えて、除雪装置(図示せず)やロータリ耕耘装置(図示せず)等の別の作業装置を装備した作業車にも適用できるのであり、遠隔操作される作業車ばかりではなく、作業者が搭乗して操縦する作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0106】
2 走行装置
4 エンジン(原動部)
20 伝動ケース
21 変速ケース
22 車軸ケース
23a 取付面部
24 ポートブロック(壁部)
32 無段変速装置
33 入力軸
34a 伝動ギヤ(伝動系)
35 油圧ポンプ
36 油圧モータ
40 伝動軸
43 ベアリング
43a アウターレース
44 車軸
44a 伝動ギヤ(伝動系)
48 チャージポンプ
55 ストッパーリング
56 溝部(絞り通路)
57 溝部(絞り通路)
58 接続部(接続部分)
59 接続部(接続部分)
60 貫通孔(第1通路)
61 貫通孔(第1通路)
62 パイプ部材(第2通路、管部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12