(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185279
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】溶接記録生成装置、溶接記録生成システムおよび溶接記録生成方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/10 20060101AFI20221207BHJP
B23K 9/095 20060101ALI20221207BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B23K9/10 Z
B23K9/095 515Z
B23K31/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092840
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川上 達彦
(72)【発明者】
【氏名】多羅沢 湘
(72)【発明者】
【氏名】曽我 幸弘
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AA03
4E082AA04
4E082AA08
4E082EC03
4E082EC13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】センサ配置が制限される狭隘部での溶接作業においても、溶接作業および溶接現象の特徴量を溶接施工を行った位置に関連付けて記録する溶接記録生成装置および溶接記録生成方法を提供する。
【解決手段】本発明の溶接記録生成装置1は、溶接作業の計測データの特徴に基づき、溶接作業の時間を指定する時間識別番号を生成する溶接作業評価部2と、溶接ビードの計測データの特徴に基づき、溶接ビードの位置を指定する空間識別番号を生成する溶接ビード評価部3と、時間識別番号と空間識別番号とを関連付けて記録する記録部4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接作業の計測データの特徴に基づき、溶接作業の時間を指定する時間識別番号を生成する溶接作業評価部と、
溶接ビードの計測データの特徴に基づき、溶接ビードの位置を指定する位置識別番号を生成する溶接ビード評価部と、
前記時間識別番号と前記位置識別番号とを関連付けて記録する記録部と、を備える溶接記録生成装置。
【請求項2】
前記記録部は、溶接トーチのウィービング回数と前記溶接ビードの溶接痕の数から、前記時間識別番号と前記位置識別番号とを対応させることを特徴とする請求項1に記載の溶接記録生成装置。
【請求項3】
前記溶接作業評価部は、溶接トーチの軌跡に基づき、前記時間識別番号を生成することを特徴とする請求項1に記載の溶接記録生成装置。
【請求項4】
前記溶接ビード評価部は、前記溶接ビードの色情報または高さ情報に基づき、前記位置識別番号を生成することを特徴とする請求項1に記載の溶接記録生成装置。
【請求項5】
前記溶接ビードの前記位置識別番号に対応する前記溶接作業の計測データを、前記記録部の記録に基づいて決定し、前記溶接ビードの前記位置識別番号に対応する入熱量を前記溶接作業の計測データから算出する入熱量評価部と、
前記溶接ビードの前記位置識別番号に対応する前記入熱量を記録する入熱量記録部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の溶接記録生成装置。
【請求項6】
前記入熱量評価部で算出した入熱量が適正範囲内であることを判定する入熱量判定部と、
前記入熱量および前記入熱量判定部による判定結果を前記溶接ビードの位置に対応させて表示する表示部と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の溶接記録生成装置。
【請求項7】
溶接体を溶接する溶接トーチを有する溶接機と、
溶接作業を計測する溶接作業計測装置と、
溶接ビードを評価する溶接ビード評価装置と、
前記溶接機、前記溶接作業計測装置および前記溶接ビード評価装置に接続される溶接作業生成装置と、を備え、
前記溶接作業生成装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載の溶接記録生成装置であることを特徴とする溶接記録生成システム。
【請求項8】
溶接作業の計測データの特徴に基づき、溶接作業の時間を指定する時間識別番号を生成する溶接作業評価ステップと、
溶接ビードの計測データの特徴に基づき、溶接ビードの位置を指定する位置識別番号を生成する溶接ビード評価ステップと、
前記時間識別番号と前記位置識別番号とを関連付けて記録する記録ステップと、
を有することを特徴とする溶接記録生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接記録生成装置、溶接記録生成システムおよび溶接記録生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接施工の品質管理のために、溶接作業の動作や溶接条件を記録する装置について、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1に開示されている装置は、溶接の開先形状を含む溶接方法を溶接方法データベースから選択させる溶接方法指定部と、溶接開始から溶接終了までの溶接時間における計測データと、各層および各パスを特定する識別番号とを対応付けた溶接記録データとして記録する溶接記録部と、溶接の開先形状に対して、溶接記録データの各層および各パスを特定する識別番号を溶接の順序に沿って記載した積層図データを作成し、溶接記録データと対応付けて記録する積層図生成部と、を有することを特徴としている。
【0003】
特許文献2に開示されている装置は、溶接作業者が溶接施工を行う際の溶接動作および溶接現象を計測する計測部と、計測部で取得したデータに基づいて溶接動作特徴量と溶接現象特徴量との適切な組み合わせを時間または座標と相関させて抽出するデータ解析部とデータ解析部の抽出結果に基づいてデータベースを作成するデータ蓄積部とを有することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-189304号公報
【特許文献2】国際公開第2021009963号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶接施工における溶接動作や溶接現象の記録は、溶接施工を行った位置に関連付けられることが望ましい。これにより、例えば、溶接体に溶接状態の不良が発見された場合に、不良発生位置に関連する記録に迅速にアクセスでき、原因究明を効率的に行える。
【0006】
特許文献1に開示された装置では、多層盛溶接の層数、パス数を指定し、指定した層番号、パス番号だけの溶接記録を大量の溶接記録から絞り込んでアクセスできるが、パス内の任意の位置における溶接記録までは追及(トレース)できないという課題があった。
【0007】
特許文献2に開示された装置では、モーションキャプチャシステムを用いることで、溶接動作および溶接現象の特徴量を、溶接施工を行った位置に関連付けて記録することができるが、センサ配置が制限される狭隘部での溶接作業では、モーションキャプチャシステムを適用できないという課題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、センサ配置が制限される狭隘部での溶接作業においても、溶接作業の動作や溶接条件を、溶接施工を行った位置に関連付けて記録できる溶接記録生成装置、溶接記録生成システムおよび溶接記録生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、溶接作業の計測データの特徴に基づき、溶接作業の時間を指定する時間識別番号を生成する溶接作業評価部と、溶接ビード表面の計測データの特徴に基づき、溶接ビードの位置を指定する空間識別番号を生成する溶接ビード評価部と、時間識別番号と空間識別番号とを関連付けて記録する記録部と、を備える溶接記録生成装置である。
【0010】
また、本発明の他の態様は、上記本発明の溶接記録生成装置を備える溶接記録生成システムである。
【0011】
また、本発明の他の態様は、溶接作業の計測データの特徴に基づき、溶接作業の時間を指定する時間識別番号を生成する溶接作業評価ステップと、溶接ビードの計測データの特徴に基づき、溶接ビードの位置を指定する位置識別番号を生成する溶接ビード評価ステップと、時間識別番号と位置識別番号とを関連付けて記録する記録ステップと、を有することを特徴とする溶接記録生成方法である。
【0012】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る溶接記録生成装置によれば、センサ配置が制限される狭隘部での溶接作業においても、溶接作業の動作や溶接条件を、溶接施工を行った位置に関連付けて記録することができる溶接記録生成装置、溶接記録生成システムおよび溶接記録生成方法を提供できる。
【0014】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の溶接記録生成装置を備えた溶接記録生成システムの一例を示す構成図
【
図2】本発明の実施例1の溶接記録生成方法の一例を示すフローチャート
【
図3】溶接記録生成装置が計測する溶接作業の一例を示す図
【
図4(a)】ウィービング方向の経時変化を示すグラフ
【
図4(b)】時間IDと
図4(a)の溶接作業時間を対応させた表
【
図5(a)】溶接ビード色情報計測装置9で取得した溶接ビードの色情報計測データの一例
【
図5(b)】位置IDと
図5(a)の溶接方向位置を対応させた表
【
図6(a)】溶接ビード色情報計測装置10で取得した溶接ビードの高さ情報計測データの一例
【
図6(b)】位置IDと
図6(a)の溶接方向位置を対応させた表
【
図8】実施例2の溶接記録生成方法の一例を示すフローチャート
【
図10】実施例2の溶接記録生成装置の表示部の表示画面の一例
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するため形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施例では、溶接作業者12が溶接トーチ6を移動させる手動溶接または半自動溶接を行う構成とするが、自動走行装置が溶接トーチ6を移動させる自動溶接を行う構成としてもよい。
【実施例0017】
図1は本発明の溶接記録生成装置を備えた溶接記録生成システムの一例を示す構成図である。
図1に示すように、溶接記録生成システム100は、溶接記録生成装置1と、溶接機5と、溶接作業計測装置9と、溶接ビード評価装置13とを備える。溶接ビード評価装置13は、溶接ビードの色情報計測装置10および溶接ビードの高さ情報計測装置11を有する。溶接作業計測装置9の計測結果は、溶接記録生成装置1の溶接作業評価部2に送信される。また、溶接ビード評価装置13の計測結果は、溶接記録生成装置1の溶接ビード評価部3に送信される。
【0018】
溶接機5は、溶接作業を行う溶接トーチ6と、溶接記録生成装置1に接続されている。
【0019】
溶接作業者12は、溶接体7に対して、溶接トーチ6をゆっくり移動させながら、溶接体7と図示しない溶加材を溶かし、混合することによって、溶接ビード8を形成する。溶接体7および溶加材の材質は、例えば、炭素鋼、高張力鋼、ステンレス鋼である。
図1に示すようなV型開先を有する溶接体7では、溶接トーチ6を溶接方向(
図1のX方向)に対して垂直方向(
図1のY方向)に動かすウィービング動作によって、幅の広い溶接ビードを形成する。
【0020】
溶接機5は、溶接トーチ6にアークを発生させるための電力を供給する。アークは、気体に高電圧を印加した際に、持続的に絶縁破壊が生じて発生する放電現象のことであり、高熱を伴うため、溶接に利用される。溶接機5には、操作パネルが設けられており、供給する電力(あるいは溶接電流、溶接電圧)などの溶接条件を設定できる。溶接機5が供給する電力は、溶接トーチ6と溶接体7の相対位置、角度によって変化することがあるため、溶接機5が供給する電力を監視するために、溶接機5に溶接機5が出力する溶接電流または溶接電圧を測定するためのセンサが備えられていてもよい。
【0021】
溶接体7の溶接方法は、例えば、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接や、MIG(Metal Inert Gas)溶接またはMAG(Metal Active Gas)溶接である。TIG溶接は、溶接トーチに保持されたタングステン電極と母材の間にアークを発生させ、その周囲をアルゴンなどの不活性ガスで包んで、大気中の酸素や窒素の影響を受けないように保護しながら,溶接を行う方法である。MIG溶接は、金属製の電極と母材との間にアークを発生させ、その周囲をアルゴンのなどの不活性ガスで包んで、溶接を行う方法である。MAG溶接は、金属製の電極と母材との間にアークを発生させ、その周囲を酸化性のガスで包んで、溶接を行う方法である。いずれの溶接方法においても、溶加材を添加しながら溶接を行うが、TIG溶接は溶加材の供給を溶接作業者が行うのに対して、MIG溶接およびMAG溶接は溶加材の供給が自動的に行われるため、半自動溶接と呼ばれる。
【0022】
溶接作業計測装置9は、例えば、デジタルカメラなどの光学カメラであり、溶接作業者12の動作や、溶接現象を計測する。溶接作業ではアークが点弧している箇所から高輝度の光が発せられるため、溶接作業の動作や溶接現象などの計測対象に応じて最適な計測装置を選定する必要がある。アーク光の特性を考慮すると、可視光領域から赤外領域の波長まで含めた光を受光できるセンサを搭載したカメラとすることが望ましい。また、アーク光によって画像内の輝度が飽和するハレーションの発生を防止するため、ダイナミックレンジが大きく、露光調整が可能なカメラとすることが望ましい。さらに、必要に応じて、外部光源による照明や、光学フィルタによる減光を行うことが望ましい。
【0023】
溶接作業者12の動作の計測では、溶接トーチ6や溶加材の位置、またはそれらを把持する溶接作業者12の手の位置が視野内に入るような視野サイズとすることが望ましい。
【0024】
溶接現象の計測では、溶接トーチ6の電極先端や溶加材の添加位置が視野内に入るような視野サイズとすることが望ましい。また、溶融金属の挙動を観察する場合は、溶融現象の時間スケールに応じたフレームレートとすることが望ましい。
【0025】
溶接作業計測装置9は、三脚などの固定手段によって設置される。または、溶接作業計測装置9は、溶接作業者12が頭部に装着する溶接防護具に設置されていてもよい。その場合、センサ配置が制限される狭隘部の溶接作業においても、溶接作業の動作や溶接現象を計測することができる。
【0026】
溶接ビード色情報計測装置10は、例えば、デジタルカメラなどの光学カメラであり、溶接作業が終了した後に溶接ビード8の表面を撮影する。その際、溶接ビード8の位置情報を取得できるように、溶接ビード8に対してカメラ位置が校正されていることが望ましい。または、後から校正できるように、校正用のスケールを溶接ビード8周辺に配置した状態で撮影してもよい。もしくは、カメラをラインスキャンカメラなどとして自動走行装置によって走査させて、カメラ位置と画像位置を対応付けるようにしてもよい。
【0027】
溶接ビード高さ情報計測装置11は、例えば、3Dスキャナー、レーザ変位計、ステレオカメラなどの光学測定機であり、溶接作業が終了した後の溶接ビード8の高さを溶接計測する。その際、溶接ビード8の位置情報を取得できるように、溶接ビード8に対して光学測定器の位置が校正されていることが望ましい。または、後から校正できるように、校正用のマーカ等を計測範囲内に配置した状態で計測してもよい。あるいは、光学測定器を自動走行装置によって走査させて、光学測定器の位置と高さの計測値を対応付けるようにしてもよい。
【0028】
溶接ビード色情報計測装置10および溶接ビード高さ情報計測装置11は、溶接作業計測装置9と同様に溶接作業中に計測を行ってもよい。その場合には、溶接作業計測装置9で説明したように、アーク光の影響を抑制できるような計測装置とすることが望ましい。
【0029】
溶接記録生成装置1は、溶接作業評価部2と、溶接ビード評価部3と、記録部4とを有する。
【0030】
溶接記録生成装置1は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置、マウス、キーボード等の入力部、ディスプレイ等の表示部、メモリ、ハードディスク等の記憶部および通信部を備える。記憶部に読み込んだプログラムを実行することにより、各処理部により構成される制御部を動作させる。
【0031】
溶接作業評価部2は、溶接作業計測装置9で取得した溶接作業の計測データを読み込み、溶接作業の計測データの特徴に基づき、溶接作業の時間を指定する時間識別番号を生成し、時間識別番号テーブルを作成する。時間識別番号テーブルについては、追って詳述する。
【0032】
溶接ビード評価部3は、溶接ビード色情報計測装置10または溶接ビード高さ情報計測装置11の計測データを読み込み、溶接ビードの計測データの特徴に基づき、溶接ビード8の位置を指定する位置識別番号を生成し、位置識別番号テーブルを作成する。位置識別番号テーブルについては、追って詳述する。
【0033】
記録部4は、溶接作業評価部2で作成した時間識別番号テーブルと、溶接ビード評価部3で作成した位置識別番号テーブルとを関連付けた結合テーブルを作成し、記録する。
【0034】
図2は本発明の実施例1の溶接記録生成方法の一例を示すフローチャートである。このフローは、溶接記録生成装置1が実行する。
【0035】
ステップS101において、溶接作業評価部2は溶接作業計測装置9で取得した溶接作業の計測データを読み込む。
【0036】
ステップS102において、溶接作業評価部2は溶接作業計測装置9で取得した溶接作業の計測データの特徴に基づき、溶接作業の時間識別番号を生成する。ここで、溶接作業の時間識別番号の生成方法を
図3および
図4を用いて説明する。
図3は溶接記録生成装置が計測する溶接作業の一例を示す図である。画像21は溶接作業者12の近くに設置した固定カメラによって撮影した画像であり、溶接作業中の溶接作業者12と溶接トーチ6、溶接体7、溶接ビード8が映っている。
【0037】
画像21は、溶接作業者12が溶接トーチ6を動かしながら、溶接ビード8を形成する様子を撮影したものである。画像21の中には、溶接トーチ6の端点22の軌跡23を示している。溶接作業者12は、溶接方向24に溶接トーチ6を前進させながら、ウィービング方向25に溶接トーチ6を振るウィービング動作を行うため、軌跡23はジグザグな軌道を描いている。
【0038】
軌跡23は、溶接作業者12付近に設置した固定カメラによって撮影した時系列画像から、画像処理によって抽出する。画像処理の方法は、例えば、画像上での濃度分布の変化により動きを抽出するオプティカルフローや、画像間の差分演算により動きを抽出するフレーム間差分法、画像内の特徴点の動きを検出する特徴点検出法である。
【0039】
図4(a)はウィービング方向の経時変化を示すグラフであり、
図4(b)は時間IDと
図4(a)の溶接作業時間を対応させた表である。
図4(a)は、溶接トーチ6の端点22のウィービング方向位置を時間に対してプロットした結果26を示す。溶接トーチ6の端点22のウィービング方向位置が極大になる時間t
1、t
2、t
3に対して、時間識別番号(時間ID)1、2、3を付与し、時間t
1、t
2、t
3と時間識別番号1、2、3の対応関係を表す時間識別番号テーブル27を作成する。このときの時間識別番号は、溶接作業者12がウィービングを行った回数に対応する。
【0040】
時間識別番号は、溶接トーチ6の端点22のウィービング方向位置の時間変化の特徴を抽出できる時間に対して付与する。したがって、ウィービング方向位置が極小になる時間や、ウィービング方向位置が極大と極小の中間の値をとる時間に対し、時間識別番号を付与してもよい。また、溶接開始時刻から数えて、5番目、10番目、15番目の時間といった一定回数おきに付与してもよい。さらに、溶接トーチ6の端点22のウィービング方向位置の振れ幅が大きい時間や小さい時間、周期が大きい時間や小さい時間といった、溶接トーチ6の端点22のウィービング方向位置の時間変化の波形の振幅や周期に特徴が表れる時間に付与してもよい。
【0041】
図3、
図4(a)および
図4(b)では、溶接作業の計測データとしてカメラで撮影した画像21を使用したが、溶接作業の計測データは、溶接作業での溶接作業者12の動きや溶接現象を計測したデータであればよく、例えば、溶接作業者12が身に着ける溶接保護具や手袋に取り付けた加速度センサによる加速度の計測データや、放射温度計などによる溶接体7の温度の計測データであってもよい。
【0042】
図2のステップS103では、溶接ビード評価部3は溶接ビード色情報計測部10または溶接ビード高さ情報計測装置11の計測データを読み込む。
【0043】
ステップS104で、溶接ビード評価部3は、溶接ビードの色情報計測装置10または溶接ビード高さ情報計測装置11の計測データから、溶接ビードの位置間識別番号を生成する。ここで、溶接ビードの位置識別番号の生成方法を
図5および
図6を用いて説明する。
図5(a)は、溶接ビード色情報計測装置9で取得した溶接ビード色情報計測データの一例であり、
図5(b)は位置IDと
図5(a)の溶接方向位置を対応させた表である。画像31は溶接作業後にカメラによって撮影した画像であり、溶接ビード8が映っている。カメラは、溶接体7に対する位置を校正することで、画像内の位置と溶接ビード8の位置の対応関係が分かっている。画像31の横方向は溶接方向24、縦方向はウィービング方向25である。
【0044】
溶接トーチ6をウィービングさせながら溶接を行うと、
図5に示すようなウロコ状の溶接痕が重なり合うような溶接ビードが形成される。そこで、画像31から溶接ビード8のウロコ状の溶接痕の境界線を検出し、溶接ビード8の中心線32と溶接痕の境界線が交わる点の溶接方向位置x
1、x
2、x
3に対して、位置識別番号(位置ID)1、2、3を付与し、溶接方向位置x
1、x
2、x
3と位置識別番号1、2、3の対応関係を表す位置識別番号テーブル33を作成する。このときの位置識別番号は、溶接作業者12がウィービングを行った回数に対応する。
【0045】
位置識別番号は、溶接ビード8の空間変化の特徴を抽出できる位置に対して付与する。したがって、ウロコ状の溶接痕の上端や下端、溶接痕の境界線同士の中間位置に対して、位置識別番号を付与してもよい。また、溶接開始位置から数えて、5番目、10番目、15番目の位置といった一定回数おきに付与してもよい。さらに、溶接ビード8の幅が大きい位置や小さい位置、ピッチが大きい位置や小さい位置といった、溶接ビード8の幅やピッチに特徴が表れる位置に付与してもよい。
【0046】
図5(a)および
図5(b)では、溶接ビードの計測データとして溶接ビードの色情報計測装置9で取得した画像31を使用したが、溶接ビードの計測データは、溶接ビード色情報計測装置9で取得した画像であってもよい。
図6(a)は溶接ビード高さ情報計測装置10で取得した溶接ビードの高さ情報計測データの一例であり、
図6(b)は位置IDと
図6(a)の溶接方向位置を対応させた表である。グラフ34は溶接作業後にレーザ変位計によって計測した溶接ビード8の中心線における高さプロファイルである。レーザ変位計は、溶接体7との位置があらかじめ校正されており、計測位置と溶接ビード8の位置の対応関係が分かっている。グラフ34から高さが極小となる溶接方向位置x
1、x
2、x
3に対して、位置識別番号(位置ID)1、2、3を付与し、溶接方向位置x
1、x
2、x
3と位置識別番号1、2、3の対応関係を表す位置識別番号テーブル33を作成する。このときの位置識別番号は、溶接作業者12がウィービングを行った回数に対応する。
【0047】
図7は結合テーブルの生成方法の説明図である。
図2のステップS105において、記録部4は、
図7に示すように、ステップS104で作成した位置識別番号テーブル33と、ステップS102で作成した時間識別番号テーブル27を結合した結合テーブル41を作成し、記録する。溶接ビード8のウロコ状の溶接痕は溶接トーチ6を動作させたときの位置と相関があるため、溶接ビード8のウロコ状の溶接痕の特徴と、ステップS102で抽出した溶接トーチ6の位置の時間変化の特徴とを対応付けることができる。例えば、溶接トーチ6のウィービングを行った回数と、溶接ビード8のウロコ状の溶接痕の数を参考として、時間識別番号と位置識別番号を対応付けられる。さらに、溶接トーチ6のウィービングの振幅と周期が、溶接ビード8の幅とピッチに対応することから、それらの特徴を参考として、対応付けられる。
【0048】
以上説明した本実施形態では、以下の効果が得られる。溶接記録生成装置1は、記録部4に溶接ビード8の位置に溶接作業の時間が関連付けられた結合テーブル41を記録する。これにより、溶接ビード8のある位置における溶接条件を確認したい場合に、結合テーブル41を参照することで、その位置の溶接作業が行われた時間を絞り込むことができる。本発明は、溶接ビード1層の状態の平均ではなく、溶接ビード1層の中の任意の位置の状態から、任意の位置を特定して参照することが可能である。
【0049】
例えば、溶接体に溶接状態の不良が発見された場合に、不良発生位置に関連付けられた溶接作業の計測データに迅速にアクセスできるため、原因究明を効率的に行える。同様に、溶接作業のある時間における溶接品質を確認したい場合にも、結合テーブル41を参照することで、その時間に関連付けられた溶接ビード8の位置を絞り込むことができる。
【0050】
また、本発明は、センサ配置が制限される狭隘部にも適用可能な計測手段のみを用いて、溶接動作および溶接現象の特徴量を、溶接施工を行った位置に関連付けて記録することができるため、狭隘部での溶接作業の品質管理にも適用することができる。
入熱量は、溶接ビード8の形成に影響する重要なパラメータである。適正範囲外の入熱量は、溶接金属および熱影響部に対して悪影響を及ぼすことがある。入熱量が過大な場合、溶接金属の強度が低下し、割れが生じやすくなる。逆に入熱量が小さすぎる場合、急冷によって母材金属組織の劣化が起きることがある。したがって、入熱量が適正範囲内になるように、溶接作業の動作や溶接条件を調整することが重要である。
以上説明した本実施形態では、以下の効果が得られる。溶接記録生成装置1は、記録部4に溶接ビード8の位置に溶接作業の入熱量が関連付けられた入熱量の参照テーブル51を記録する。これにより、参照テーブル51を参照することで、溶接ビード8の任意の位置における入熱量を確認できる。例えば、溶接体に溶接状態の不良が発見された場合に、不良発生位置における入熱量を確認し、溶接作業の動作や溶接条件にフィードバックすることができる。また、溶接記録生成装置1は、入熱量判定部が入熱量が適正範囲内か否かを判定し、表示部に入熱量と判定結果を表示するため、溶接作業者は、溶接施工の良否をすぐに確認することができ、もし適正範囲外の入熱があった場合は、その位置における異常の有無を確認し、廃棄や補修を行うなどの適正な処置をとることができる。
以上、説明したように、本発明によれば、センサ配置が制限される狭隘部での溶接作業においても、溶接作業の動作や溶接条件を、溶接施工を行った位置に関連付けて記録することができる溶接記録生成装置および溶接記録生成方法を提供できることが示された。
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。