(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185280
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】温度調節装置及び温度調節方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/04 20060101AFI20221207BHJP
B29C 33/70 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B29C33/04
B29C33/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092841
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000146054
【氏名又は名称】株式会社松井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田爪 良幸
(72)【発明者】
【氏名】柏野 兼良
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AK13
4F202AM10
4F202CA09
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CN13
4F202CN24
4F202CS02
(57)【要約】
【課題】異物の除去が可能でありながらも、メンテナンス性を向上し得る温度調節装置及び温度調節方法を提供する。
【解決手段】媒体貯留部10と温度調節対象4との間を送媒路6及び返媒路7を介して温調媒体を循環させて前記温度調節対象を温度調節する温度調節装置1であって、前記媒体貯留部の下端部13には、前記温調媒体を循環させた状態で異物を含む温調媒体を排出させる排出口14が設けられており、該排出口から排出された量に応じた温調媒体を前記媒体貯留部に補給する補給路30を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体貯留部と温度調節対象との間を送媒路及び返媒路を介して温調媒体を循環させて前記温度調節対象を温度調節する温度調節装置であって、
前記媒体貯留部の下端部には、前記温調媒体を循環させた状態で異物を含む温調媒体を排出させる排出口が設けられており、該排出口から排出された量に応じた温調媒体を前記媒体貯留部に補給する補給路を備えていることを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記排出口に接続される排出路に、温調媒体の排出量の調整が可能な排出弁が設けられていることを特徴とする温度調節装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記排出口は、前記媒体貯留部の内底面において開口するように設けられ、該内底面は、外周側端部から前記排出口に向かうに従い下る傾斜面状に形成されていることを特徴とする温度調節装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記媒体貯留部には、前記送媒路に接続される送媒管が、該媒体貯留部の内面から該媒体貯留部内に向けて突出するように、かつ前記排出口よりも上方側において開口するように設けられていることを特徴とする温度調節装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記媒体貯留部内には、前記返媒路に接続される返媒管の軸方向下流側に位置するように邪魔板状部が設けられていることを特徴とする温度調節装置。
【請求項6】
媒体貯留部と温度調節対象との間を送媒路及び返媒路を介して温調媒体を循環させて前記温度調節対象を温度調節する温度調節方法であって、
前記温調媒体を循環させた状態で、前記媒体貯留部下端部の排出口から異物を含む温調媒体を排出させ、かつ排出された量に応じた温調媒体を前記媒体貯留部に補給することを特徴とする温度調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節対象を温度調節する温度調節装置及び温度調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金型などの温度調節対象に対して送媒路及び返媒路を介して温調媒体を循環させて温度調節する温度調節装置及び温度調節方法が知られている。このような装置及び方法においては、温度調節対象の媒体流路内等の錆や温調媒体に含まれるシリカ等の不純物(スケール)等の異物を除去することが望まれる。
例えば、下記特許文献1には、金型に形成された温調通路に温調管路を介して接続される流入ヘッダの本体筒内に、熱媒体に混入する異物を取り除くストレーナを設けた金型温度調節装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された金型温度調節装置では、ストレーナに目詰りが生じれば、流入ヘッダの蓋を本体筒から外してストレーナを取り出し、ストレーナの掃除または交換を行う必要があり、更なる改善が望まれる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、異物の除去が可能でありながらも、メンテナンス性を向上し得る温度調節装置及び温度調節方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る温度調節装置は、媒体貯留部と温度調節対象との間を送媒路及び返媒路を介して温調媒体を循環させて前記温度調節対象を温度調節する温度調節装置であって、前記媒体貯留部の下端部には、前記温調媒体を循環させた状態で異物を含む温調媒体を排出させる排出口が設けられており、該排出口から排出された量に応じた温調媒体を前記媒体貯留部に補給する補給路を備えていることを特徴とする。
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る温度調節方法は、媒体貯留部と温度調節対象との間を送媒路及び返媒路を介して温調媒体を循環させて前記温度調節対象を温度調節する温度調節方法であって、前記温調媒体を循環させた状態で、前記媒体貯留部下端部の排出口から異物を含む温調媒体を排出させ、かつ排出された量に応じた温調媒体を前記媒体貯留部に補給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る温度調節装置及び温度調節方法は、上述のような構成としたことで、異物の除去が可能でありながらも、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る温度調節装置の一例を模式的に示す一部省略概略正面図である。
【
図2】(a)~(c)は、同温度調節装置が備える媒体貯留部の一例を模式的に示し、(a)は、概略側面図、(b)は、(a)におけるX-X線矢視に対応させた概略横断面図、(c)は、(b)におけるY-Y線矢視に対応させた概略縦断面図である。
【
図3】(a)は、同温度調節装置の概略システム図、(b)は、同温度調節装置を用いて実行される温度調節方法の一例を模式的に示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
図3(a)では、温調媒体等が通過する経路となる管路(配管)等を、実線及び波線にて模式的に示している。
図3(b)における概略タイムチャートでは、各機器のON/OFF動作や開閉動作等を模式的に示している。
以下の実施形態では、本実施形態に係る温度調節装置を設置した状態を基準として上下方向等の方向を説明する。
【0011】
図1~
図3は、本実施形態に係る温度調節装置の一例及びこれを用いて実行される本実施形態に係る温度調節方法の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る温度調節装置1は、
図1及び
図3(a)に示すように、媒体貯留部10と温度調節対象としての金型4との間を送媒路6及び返媒路7を介して温調媒体を循環させて金型4を温度調節する構成とされている。つまり、本実施形態では、温度調節装置1は、金型4を温度調節する金型温度調節装置を構成する。
【0012】
金型4は、
図3(a)に示すように、例えば、固定型と可動型とを有した構成とされており、これら固定型及び可動型には、温調媒体を流通させる媒体流通路5,5がそれぞれに設けられている。これら媒体流通路5,5の入口(送媒接続口)側には、送媒路6が接続され、媒体流通路5,5の出口(返媒接続口)側には、返媒路7が接続される。
送媒路6と媒体流通路5,5の入口とは、単一の送媒路6を複数に分岐させるマニホールド部やこのマニホールド部の複数の接続口に接続されたホースやチューブ等の可撓性を有した配管材を介して接続されていてもよい。また、マニホールド部や管路等の適所に、媒体流通路5,5に向けて送媒される温調媒体の通過を許容または遮断する送媒バルブを設けた例を示している。
【0013】
返媒路7と媒体流通路5,5の出口とも略同様、単一の返媒路7を複数に分岐させるマニホールド部やこのマニホールド部の複数の接続口に接続されたホースやチューブ等の可撓性を有した配管材を介して接続されていてもよい。また、マニホールド部や管路等の適所に、媒体流通路5,5から返媒される温調媒体の通過を許容または遮断する返媒バルブを設けた例を示している。
この金型4の成形機としては、金型4の固定型と可動型とによって形成されるキャビティー等に、シリンダ等で溶融させた材料としての合成樹脂をノズル等から射出して充填し、成形品を逐次、成形する射出成形機等でもよく、圧縮成形機等の他の成形機でもよい。成形材料としては、合成樹脂材料に、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含有させた繊維強化合成樹脂材料等でもよい。
温度調節対象としては、金型4に限られず、温調媒体が供給されて温度調節される構成とされていればよく、例えば、床暖房装置や、その他、種々の機械等であってもよい。
【0014】
温度調節装置1は、
図1及び
図3(a)に示すように、温調媒体を満たした状態(満水状態)で貯留し、送媒路6及び返媒路7並びに金型4の媒体流通路5,5とによって循環経路を構成する媒体貯留部10を備えている。温度調節装置1は、温調媒体を加熱するヒーター20と、温調媒体を冷却する冷却器40と、温調媒体を循環させるポンプ22と、を備えている。この温度調節装置1には、これらヒーター20等を含む装置の各部に信号線等を介して接続され、後記する基本動作等を実行するCPU等の制御部や、後記する基本動作の一例を含むプログラム等を記憶するROMやRAM等の各種のメモリー(記憶部)、操作部、表示部等を含む制御盤が設けられている。
【0015】
媒体貯留部10の下端部(本実施形態では、底壁部)13には、温調媒体を循環させた状態で異物を含む温調媒体を排出させる排出口14が設けられている。温度調節装置1は、排出口14から排出された量に応じた温調媒体を媒体貯留部10に補給する補給路30を備えている。このような構成とすれば、温調媒体を循環させながら、つまり、当該温度調節装置1を起動させた状態で、温調媒体に含まれる異物を除去することができる。これにより、温度調節装置1を停止させてストレーナを取り出して清掃等する必要がなく、メンテナンス性を向上させることができる。また、異物を含む温調媒体が排出された量に応じて温調媒体が補給されるので、循環経路内への空気の混入や、媒体貯留部10に設けられるヒーター20が部分的にいわゆる空焼き状態となるようなことを抑制することができる。
【0016】
本実施形態では、排出口14に接続される排出路15に、温調媒体の排出量の調整が可能な排出弁16が設けられている。このような構成とすれば、排出口14から排出される温調媒体の排出量を調整することができる。これにより、例えば、温度調節装置1の起動初期には、新たに接続された金型4等の温度調節対象の媒体流通路5,5内の異物が効果的に除去されるように排出量を大とするなど、使用状況や循環経路、供給圧等に応じて排出量を調整することができる。例えば、温調媒体の供給圧は、媒体供給源2によって異なる場合がある。このような場合において後記するような減圧弁31が設けられていない場合などにおいても、当該温度調節装置1に接続される媒体供給源2の供給圧に応じて排出量を調整することもできる。この排出弁16としては、制御部による制御によって排出量の調整が可能な電磁式等の流量調整弁であってもよいが、本実施形態では、手動で排出量の調整が可能なグローブバルブ等の手動調整弁とされている。
【0017】
排出口14は、本実施形態では、
図2(c)に示すように、媒体貯留部10の内底面13aにおいて開口するように設けられている。このような構成とすれば、例えば、媒体貯留部10の周壁部12の内周面12aの下端部において開口するように排出口14が設けられた構成と比べて、異物を含む温調媒体を効果的に排出させることができる。この内底面13aは、周壁部12側となる外周側端部から排出口14に向かうに従い下る傾斜面状に形成されている。このような構成とすれば、傾斜面状とされた内底面13aに沿って異物が排出口14に向けて誘導され、異物を効果的に排出させることができる。つまり、内底面13aは、排出口14が最も低い位置となるように形成されている。
【0018】
媒体貯留部10は、
図2(a)~(c)に示すように、有底筒状のタンク状とされ、当該温度調節装置1の稼働中には、原則的には温調媒体で満たされ満レベルとされる。この媒体貯留部10は、上側を区画する天壁部11と、外周側を区画する周壁部12と、底側を区画する底壁部13と、を備えている。本実施形態では、媒体貯留部10は、円筒状とされている。図例では、媒体貯留部10は、高さ寸法(上下寸法)よりも直径が大とされている。
天壁部11は、厚さ方向が上下方向となる略円板状とされている。本実施形態では、この天壁部11に、ヒーター20が設置されている(
図1参照)。このヒーター20は、例えば、媒体貯留部10内に挿入される筒状の発熱部を有した構成とされている。天壁部11の中央部(円心部)には、ヒーター20の発熱部が挿入される挿入口が厚さ方向に貫通するように設けられている。媒体貯留部10の適所(例えば、天壁部11)には、このヒーター20周囲の温度を検出する過温防止用の温度センサー18と、この温度センサー18による検出値に基づいてヒーター20を停止させる過温防止用のサーモスタット19と、が設けられている(
図3(a)参照)。この媒体貯留部10の適所に、安全弁が設けられていてもよい。
【0019】
周壁部12は、略円筒状とされ、上端部が天壁部11の外周側端部に溶接等によって接合されている。このように接合された態様に代えて、天壁部11が周壁部12に対して適宜の締結具等によって着脱自在とされた態様でもよい。
底壁部13は、平面視して略円形状とされ、外周側端部が周壁部12の下端部に溶接等によって接合されている。このように接合された態様に代えて、底壁部13と周壁部12とが一体成形されていてもよい。この底壁部13は、内底面13aが傾斜面となるように、外周側端部から排出口14が設けられた部位に向かうに従い下方側となるように傾斜状に形成されている。本実施形態では、排出口14は、底壁部13の中央部(円心部)に設けられている。つまり、底壁部13は、中央部に向かうに従い下方側となるように傾斜状に形成されている。図例では、底壁部13は、略半楕円体形状とされているが、略半球体形状や皿形状、略円錐体形状等とされていてもよい。
【0020】
この媒体貯留部10の容積は、一般的な金型温度調節装置のヒーターボックスの容積(例えば、1リットル~10リットル程度)よりも大とされていてもよい。この媒体貯留部10の容積は、例えば、20リットル~200リットル程度でもよく、より好ましくは、50リットル~100リットル程度でもよい。このような構成とすれば、後記する返媒管27を経て送媒管21に向かう温調媒体の流速を媒体貯留部10において減速させることができ、温調媒体に含まれる異物が沈殿し易くなる。これにより、沈殿した異物を排出口14から効果的に排出させることができる。
補給路30は、
図3(a)に示すように、その下流側端部が媒体貯留部10の適所(例えば、周壁部12上端部や天壁部11等)に接続されている。この補給路30の上流側端部は、媒体供給源2に接続されている。この媒体供給源2は、温調媒体としての水(清水)を供給する水道(工業用水道、上水道)であってもよい。このように温調媒体を水(清水)とした場合において常圧の沸点よりも高温に加熱する必要がある場合には、その温度に合わせて温調媒体が沸騰しない圧力となるように系内の圧力が維持されてもよい。
【0021】
この補給路30には、媒体供給源2から供給される温調媒体の供給圧が概ね一定圧力となるように維持する減圧弁31と、温調媒体の圧力の異常上昇を防止するリリーフ弁32と、が下流側に向けてこの順に設けられている。リリーフ弁32の排出側のリリーフ弁排出路33は、媒体貯留部10の上端部(例えば、天壁部11)に接続され媒体貯留部10から温調媒体を排出させる(オーバーフローさせる)上端排出路34に接続されている。この上端排出路34は、媒体貯留部10からオーバーフローする温調媒体を排出し、また、空気抜き管路としても機能する。この上端排出路34には、媒体貯留部10に温調媒体を満たす際に開放される供給弁35が設けられている。この供給弁35は、制御部によって開閉制御される電磁弁等でもよい。温調媒体の設定温度が比較的に高温で系内の圧力を高圧に維持する必要がある場合には、補給路30の適所等に加圧ポンプが設けられていてもよい。上端排出路34側に供給弁35が設けられた態様に代えて、または加えて、補給路30側に供給弁が設けられていてもよい。
【0022】
媒体貯留部10の適所(例えば、天壁部11)には、媒体貯留部10内の温調媒体の媒体レベルを検出するレベル計17が設けられている。このレベル計17は、媒体貯留部10内の媒体レベルとして満レベルを検出する構成とされていてもよい。このようなレベル計17としては、複数の電極棒の電極間の微小電流の有無で液面レベルを検出する電極式レベル計(レベルスイッチ、水位センサー)であってもよい。レベル計17としては、このような電極式レベル計に限られず、フロート式レベル計や、静電容量式等の非接触型センサー等であってもよい。このレベル計17は、媒体貯留部10内の温調媒体の媒体レベルが満レベルから所定レベルに低下すれば異常信号を出力する構成とされていてもよい。
【0023】
媒体貯留部10には、送媒路6に接続される送媒管21が設けられている。この送媒管21は、本実施形態では、
図2に示すように、媒体貯留部10の内面(本実施形態では、内底面)13aから媒体貯留部10内に向けて突出するように、かつ排出口14よりも上方側において開口するように設けられている。このような構成とすれば、媒体貯留部10内の異物が送媒管21内に入り難くなり、つまり、異物が送媒管21を経て再循環することを軽減することができ、温調媒体に含まれる異物を排出口14から効果的に排出させることができる。
この送媒管21は、底壁部13を貫通するように設けられている。図例では、この送媒管21は、略円筒状とされ、底壁部13を貫通する部位及びその下流側の近傍部位を含み、媒体貯留部10内において突出する突出部21aの軸方向が上下方向となるように設けられている。底壁部13の内底面13aと突出部21aの外周面との入隅部に、内底面13aに向かうに従い拡径状となるように傾斜する傾斜面を設けた構成としてもよい。このような構成とすれば、底壁部13の内底面13aと突出部21aの外周面との入隅部における異物の堆積を抑制することができる。
この突出部21aは、平面視して、その軸心が底壁部13の軸心と周壁部12の内周面12aとの間の略中央部に位置するように設けられている。このような態様に代えて、例えば、排出口14を、底壁部13の軸心から偏心させた位置に設け、送媒管21の突出部21aを底壁部13の軸心に位置するように設けた態様等としてもよい。また、排出口14を底壁部13に設けた態様に代えて、周壁部12の下端部に設けた態様等としてもよい。この場合は、例えば、底壁部13の内底面13aを、一方に向かうに従い下るように傾斜する傾斜面状に形成し、その下り傾斜方向先側の周壁部12の下端部に排出口14を設けたような態様等としてもよく、その他、種々の変形が可能である。
【0024】
この突出部21aの内底面13aからの突出寸法は、異物が送媒管21内に入り難くなるように、また、媒体貯留部10内において温調媒体が適度に温度調節されるように適宜の寸法としてもよい。この突出部21aは、開口21bが媒体貯留部10の高さ方向中央部よりも下方側において開口するように設けられていてもよい。図例では、突出部21aは、その上端が上記のように略半楕円体形状とされた底壁部13と周壁部12との境界部よりも下方側に位置するように設けられている。この突出部21aの内底面13aからの突出寸法は、媒体貯留部10の容積等にもよるが、例えば、20mm~200mm程度であってもよい。この突出部21aの上端面は、略水平面状とされ、この上端面において開口21bが上方側に向けて開口している。この開口21bに対向するように邪魔板状部が設けられていてもよい。この送媒管21を、底壁部13を貫通させて設けた態様に代えて、周壁部12の下端部等を貫通させて設けた態様等としてもよい。
【0025】
送媒管21の途中部位には、
図1及び
図3(a)に示すように、ポンプ22が組み込まれている。このポンプ22には、羽根車(インペラー)を収容するケーシングや羽根車を回転させる適宜のモーター等が設けられている。送媒管21の適所には、送媒管21を通過する温調媒体の温度を検出する送媒側温度センサー23が設けられている。送媒管21の適所には、ポンプ22の吐出圧を検出する圧力計24が設けられている。
媒体貯留部10には、返媒路7に接続される返媒管27が設けられている。本実施形態では、
図2に示すように、媒体貯留部10内には、この返媒管27の軸方向下流側に位置するように邪魔板状部29が設けられている。このような構成とすれば、返媒管27を経て媒体貯留部10内に返媒される温調媒体の流れの勢いを邪魔板状部29によって低減させることができ、媒体貯留部10内において異物を沈殿させ易くなり、効果的に排出口14から排出させることができる。
返媒管27の適所には、返媒管27を通過する温調媒体の温度を検出する返媒側温度センサー28が設けられている。この返媒管27と送媒管21とを接続し、温調媒体を金型4の媒体流通路5,5に通過させることなく循環させるバイパス路等が設けられていてもよい。
【0026】
この返媒管27は、本実施形態では、
図2(b)、(c)に示すように、媒体貯留部10の内面(本実施形態では、内周面)12aから媒体貯留部10内に向けて突出するように、かつ送媒管21の開口21bよりも上方側において開口するように設けられている。
この返媒管27は、周壁部12の上端部を貫通するように設けられている。図例では、この返媒管27は、略円筒状とされ、周壁部12を貫通する部位及びその上流側の近傍部位を含み、媒体貯留部10内において突出する突出部27aの軸方向が略水平方向となるように設けられている。この返媒管27は、周壁部12の周方向に対して斜め状に貫通するように設けられている。つまり、返媒管27は、周壁部12に対して接線方向や径方向に貫通していない。図例では、返媒管27は、周壁部12の接線方向に対して略45度の傾斜角度で周壁部12に貫通された例を示しているが、このような傾斜角度に限られない。この返媒管27の突出部27aは、図例では、突出方向先端部が媒体貯留部10内において平面視して周壁部12の軸心から内周面12aまでの中間部よりも内周面12a側(外周側)に位置するように設けられている。この返媒管27を、周壁部12を貫通させて設けた態様に代えて、天壁部11を貫通させて設けた態様等としてもよい。
【0027】
邪魔板状部29は、この突出部27aの軸方向先側に位置するように設けられている。この邪魔板状部29は、突出部27aの外径と略同径で略同軸状に設けられた略円板状とされている。図例では、突出部27aの先端側部位の筒壁部に開口27bとなる欠如部を部分的に設け、残余の筒壁部の先端縁部に邪魔板状部29が接合されている。図例では、開口27bは、突出部27aの先端側部位の筒壁部における媒体貯留部10軸心側となる略半部を切り欠くようにして形成された例、つまり、媒体貯留部10の軸心側に向けて開口するように形成された例を示しているが、このような形状や向きに限られない。例えば、開口27bは、天壁部11側に向けて開口するように、突出部27aの筒壁部における天壁部11側となる部分を切り欠くように形成されていてもよく、その他、種々の変形が可能である。邪魔板状部29としては、このように突出部27aの筒壁部の一部に接合された例に限られず、例えば、突出部27aの軸方向先側に離間した位置において媒体貯留部10の周壁部12等に支持された構成でもよく、その他、種々の変形が可能である。このように、媒体貯留部10内において温調媒体の勢いが弱められて異物を沈殿し易くする態様に代えて、媒体貯留部10の周壁部12に対して接線方向に返媒管27を接続し、サイクロン効果によって異物を分離させて排出する構造としてもよい。この場合は、媒体貯留部10の容積を、適宜の容積としたり、多段階的に異物を分離可能なように複数段の媒体貯留部10を設けたりしてもよい。
【0028】
この返媒管27の内径は、送媒管21の内径と略同径とされている。媒体貯留部10の内径は、媒体貯留部10内を通過する温調媒体の流速が送媒管21及び返媒管27を通過する温調媒体の流速の1/10~1/100程度となるように、送媒管21及び返媒管27の内径よりも大とされていてもよい。このような構成とすれば、媒体貯留部10内において異物を沈殿させ易くなり、効果的に排出口14から排出させることができる。媒体貯留部10の内径は、例えば、送媒管21及び返媒管27の内径の3倍~10倍程度であってもよい。これら送媒管21及び返媒管27の内径並びに媒体貯留部10の内径、循環経路を循環する温調媒体の流量は、媒体貯留部10内を通過する温調媒体の流速が0.05m/s~0.2m/s程度となるように、好ましくは、0.1m/s以下となるように、適宜、設定するようにしてもよい。
上記した排出口14及び排出路15の内径は、異物の排出が可能なように、また、温調媒体の排出量が循環経路を循環する温調媒体の流量に対して小さくなるように、適宜の径としてもよい。排出口14及び排出路15の内径は、例えば、送媒管21及び返媒管27の内径の1/5~1/20程度でもよい。
【0029】
冷却器40は、
図3(a)に示すように、本実施形態では、循環経路を循環する温調媒体の一部を間接的に冷却する熱交換器とされている。図例では、送媒管21におけるポンプ22の吐出側から分岐された被冷却路25を、冷却器40の高温側流路に連通させ、媒体貯留部10に接続した例を示している。この被冷却路25には、被冷却路25を通過する温調媒体の流量の調整が可能な流量調整弁26が設けられている。この流量調整弁26は、制御部による制御によって流量の調整が可能な電磁式等の流量調整弁であってもよく、手動で流量の調整が可能なグローブバルブ等の手動調整弁でもよい。この被冷却路25の内径は、冷却器40を経て媒体貯留部10に戻される温調媒体の流量が循環経路を循環する温調媒体の流量に対して小さくなるように、適宜の径としてもよい。この被冷却路25の内径は、例えば、送媒管21の内径の1/2~1/5程度でもよい。
【0030】
冷却器40には、熱交換によって高温側流路を通過する温調媒体を間接的に冷却する冷却媒体が通過する低温側流路が設けられている。この低温側流路には、冷却媒体を供給する冷却路36が連通されている。この冷却路36の上流側端部は、冷却媒体供給源3に接続されている。冷却媒体供給源3としては、媒体供給源2と同様、水道でもよく、または、工場等に設置されるクーリングタワー等でもよく、さらには、エタノールやエチレングリコール、その他の冷却媒体等を供給する供給源でもよい。
冷却路36には、冷却媒体の通過を許容または遮断する冷却弁37が設けられている。この冷却弁37を開放させれば、低温側流路を冷却媒体が通過し、高温側流路を通過する温調媒体が間接的に冷却される。この冷却弁37は、制御部によって開閉制御される電磁弁等でもよい。この冷却路36の冷却弁37よりも上流側の部位と、冷却器40の低温側流路を通過した部位と、を接続するバイパス路38が設けられている。このバイパス路38には、このバイパス路38を通過する冷却媒体の流量の調整が可能な流量調整弁39が設けられている。この流量調整弁39は、上記同様、電磁式等の流量調整弁であってもよく、手動調整弁でもよい。
【0031】
温度調節装置1に、温調媒体を冷却する冷却手段として上記のような冷却器40を設けた構成に代えて、例えば、冷却媒体が通過する冷却路36を、媒体貯留部10内に設けた構成としてもよい。この場合は、上記のような被冷却路25を設けない構成としてもよい。また、この場合は、例えば、ヒーター20の外周側を囲むように、螺旋状に形成された冷却路36を設けた構成としてもよい。さらには、このように循環経路を循環される温調媒体を間接的に冷却する構成に代えて、低温の温調媒体を、冷却路36または補給路30を介して直接的に媒体貯留部10等に供給して温調媒体を冷却する構成等としてもよい。この場合は、媒体貯留部10に接続された冷却路36の冷却弁37または補給路30に設けられた適宜の弁を開放させるなどして低温の温調媒体を媒体貯留部10に供給する際に、供給弁35を開放させるようにしてもよい。
【0032】
次に、上記構成とされた本実施形態に係る温度調節装置1において実行される基本動作の一例としての温度調節方法の一例を、
図3(b)を参照して説明する。
同温度調節方法は、媒体貯留部10と温度調節対象としての金型4との間を送媒路6及び返媒路7を介して温調媒体を循環させて金型4を温度調節する構成とされている。同温度調節方法は、温調媒体を循環させた状態で、媒体貯留部10下端部の排出口14から異物を含む温調媒体を排出させ、かつ排出された量に応じた温調媒体を媒体貯留部10に補給する構成とされている。このような構成とすれば、上記したように温度調節対象としての金型4を温度調節しながら、温調媒体に含まれる異物を効果的に除去することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0033】
具体的には、温度調節装置1の起動初期等で、媒体貯留部10が空または満レベルよりも低い補給レベルであれば、レベル計17が満レベルを検出するまで供給弁35を開放させ、媒体貯留部10、金型4の媒体流通路5,5、送媒路6及び返媒路7を含む温調媒体の循環経路内に温調媒体を満たすようにしてもよい。この際、図例では、排出弁16を開放させた例を示しているが、つまり、循環経路内に温調媒体を満たす際にも排出口14から異物を含む温調媒体を排出させる例を示しているが、供給弁35が開放されている際には排出弁16を閉鎖させ、供給弁35が閉鎖されれば、排出弁16を開放させるようにしてもよい。そして、循環経路内が温調媒体で満たされれば(レベル計17が満レベルを検出すれば)、供給弁35を閉鎖させる。この状態では、媒体供給源2からは減圧弁31によって調整された概ね一定圧力の温調媒体の供給圧が循環経路内に掛けられた状態であるので、排出弁16が開とされて排出口14から温調媒体が排出されれば、その排出された量に応じて温調媒体が循環経路内に補給される。
【0034】
また、循環経路内が温調媒体で満たされ、供給弁35が閉鎖されれば、ポンプ22を起動して温調媒体を循環させ、温調媒体が予め設定された所定の設定温度となるようにヒーター20及び冷却弁37を制御する。この際、送媒側温度センサー23及び返媒側温度センサー28のうちの一方または両方の検出温度に基づいて、ヒーター20への通電制御による加熱制御及び冷却弁37の開閉制御による冷却制御を実行するようにしてもよい。
そして、循環経路内の温調媒体が設定温度となり、安定すれば、スタンバイ状態となり、図示は省略しているが、金型4の成形機においては、試験打ち等を経て一連の成形工程が実行される。また、この金型4の媒体流通路5,5に、当該温度調節装置1において所定の設定温度となるように温度調節された温調媒体が循環供給され、金型4の温度調節がなされる。
【0035】
上記基本動作は、一例であり、適宜の変形動作の実行が可能である。例えば、上記した例では、温度調節装置1の稼働中は、排出弁16を常時、開放させた例を示しているが、定期的に開放させたり、単位時間当たりの排出量が徐々に少なくなるように、温度調節装置1の起動から時間が経過するに従い単位時間当たりの開放時間を短くしたりしてもよい。さらには、このような排出弁16を設けていない構成としてもよい。この場合は、排出口14から排出される温調媒体の排出量が少量となるように、排出口14やこれに接続される排出路15の径を小径としてもよい。上記した本実施形態に係る温度調節装置1が備える各部の具体的構成としては、上記した構成に限られず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 温度調節装置
10 媒体貯留部
13 底壁部(下端部)
13a 内底面(内面)
14 排出口
15 排出路
16 排出弁
21 送媒管
27 返媒管
29 邪魔板状部
30 補給路
4 金型(温度調節対象)
6 送媒路
7 返媒路