(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185286
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】車両、及び充電方法
(51)【国際特許分類】
B60L 53/64 20190101AFI20221207BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221207BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20221207BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20221207BHJP
【FI】
B60L53/64
H02J7/00 P
H02J7/04 H
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092859
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 大輝
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
5L049
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA05
5G503BA01
5G503BB02
5G503BB03
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD05
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC23
5H125BE02
5H125CC04
5H125CD10
5H125DD03
5H125EE21
5H125EE41
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】給電設備の最大供給電力に応じて充電料金が変わる料金体系で課金される充電を行なうときに、適切な最大供給電力を選ぶことができる車両及び充電方法を提供する。
【解決手段】車両において蓄電装置の充電制御を行なう制御装置が、車両外部の給電設備を用いて蓄電装置の充電を開始する前に、給電設備の最大供給電力ごとの充電料金情報を示す料金テーブルを取得する取得部と、最大供給電力を選ぶための基準を設定する設定部と、設定部により設定された基準に従い、料金テーブルの中から1つの最大供給電力を選択する選択部と、選択部により選択された最大供給電力を給電設備に通知する通知部とを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、前記蓄電装置の充電制御を行なう制御装置とを備える車両であって、
前記制御装置は、
車両外部の給電設備を用いて前記蓄電装置の充電を開始する前に、前記給電設備の最大供給電力ごとの充電料金情報を示す料金テーブルを取得する取得部と、
最大供給電力を選ぶための基準を設定する設定部と、
前記設定部により設定された前記基準に従い、前記料金テーブルの中から1つの最大供給電力を選択する選択部と、
前記選択部により選択された最大供給電力を前記給電設備に通知する通知部と、
を備える、車両。
【請求項2】
前記設定部は、ユーザからの入力に応じて、所定の選択肢の中から1つの前記基準を設定するように構成される、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記料金テーブルは、最大供給電力が大きくなるほど課金レートが高くなる料金体系を示し、
前記所定の選択肢は、充電時間が最も短い最大供給電力を選択する第1基準と、充電料金が最も安い最大供給電力を選択する第2基準とを含む、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記所定の選択肢は、充電時間及び充電料金の総合評価が最も良い最大供給電力を選択する第3基準をさらに含む、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記料金テーブルが示す課金レートは、単位時間あたりの課金レートであり、
前記選択部は、前記料金テーブルを用いて充電時間を予測し、前記予測された充電時間と、前記単位時間あたりの課金レートとを用いて、充電料金を算出するように構成される、請求項3又は4に記載の車両。
【請求項6】
前記給電設備は、公共の給電設備であり、
前記設定部は、前記給電設備の位置を用いて、前記基準を設定するように構成される、請求項1に記載の車両。
【請求項7】
前記給電設備は、直流電力を供給するように構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記選択部は、前記蓄電装置の入力電力が入力上限値以下に制限されている場合に、前記料金テーブルが示す最大供給電力のうち、前記蓄電装置の入力電力が前記入力上限値を超える最大供給電力を除外し、残った最大供給電力の中から1つの最大供給電力を選択するように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の車両。
【請求項9】
前記取得部は、車両外部のサーバに前記給電設備を特定するための特定情報を送って、前記特定情報によって特定される前記給電設備の前記料金テーブルの送信を前記サーバに要求するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の車両。
【請求項10】
前記特定情報は、前記給電設備を識別するための識別コードと、前記給電設備の位置とを含む、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
最大供給電力に応じて充電料金が変わる給電設備を用いて、車両に搭載された蓄電装置を充電する方法であって、
前記車両が、最大供給電力を選ぶための基準を設定することと、
前記車両が、前記給電設備を用いて前記蓄電装置の充電を開始する前に、前記給電設備の最大供給電力ごとの充電料金情報を示す料金テーブルを取得することと、
前記車両が、前記設定された基準に従い、前記料金テーブルの中から1つの最大供給電力を選択することと、
前記車両が、前記選択された最大供給電力を前記給電設備に通知することと、
前記給電設備が、前記料金テーブルに従い、前記通知された最大供給電力に対応する前記充電料金情報に基づいて課金しながら、前記通知された最大供給電力の条件で、前記蓄電装置を充電するための電力を前記車両へ供給することと、
を含む、充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両、及び車両に搭載された蓄電装置の充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-74673号公報(特許文献1)には、利用時間に従って課金される給電設備を用いて、車両に搭載された蓄電装置を充電する方法が開示されている。特許文献1に開示される充電方法では、コストパフォーマンス(単位料金あたりの充電電力量)を予測し、コストパフォーマンスが悪い場合にはユーザに報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、充電にかかる時間は、給電設備の最大供給電力が大きいほど短くなる。しかし、車両の仕様又は状態によっては、大電力の給電に車両が対応できない可能性がある。このため、今後、最大供給電力を変更可能に構成される給電設備が普及することが予想される。なお、最大供給電力は、充電中に給電設備から車両に供給される電力の最大電力値である。
【0005】
しかしながら、給電設備の最大供給電力が大きくなると、給電設備に電力を供給する電力系統の消費電力量が一時的に大きくなり、電力系統の需給バランスが崩れやすくなる。ユーザの利便性と電力系統のエネルギーマネジメントとの両立を図るために、給電設備の最大供給電力に応じて充電料金が変わる料金体系を採用することが考えられる。具体的には、給電設備の最大供給電力が大きくなるほど充電料金(たとえば、単位時間あたりの課金レート)を高くすることで、電力系統の消費電力量が過剰に大きくならないように調整することが考えられる。
【0006】
上記のような料金体系が採用された場合、ユーザが望む最大供給電力は状況によって変わることが予想される。しかし、こうした充電システムにおいて適切な最大供給電力を選ぶことについては未だ十分な検討がなされていない。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、給電設備の最大供給電力に応じて充電料金が変わる料金体系で課金される充電を行なうときに、適切な最大供給電力を選ぶことができる車両及び充電方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の観点に係る車両は、蓄電装置と、蓄電装置の充電制御を行なう制御装置とを備える。そして、制御装置は、次に示す取得部、設定部、選択部、及び通知部を備える。
【0009】
取得部は、車両外部の給電設備を用いて蓄電装置の充電を開始する前に、その給電設備の最大供給電力ごとの充電料金情報を示す料金テーブルを取得するように構成される。設定部は、最大供給電力を選ぶための基準を設定するように構成される。選択部は、設定部により設定された基準に従い、料金テーブルの中から1つの最大供給電力を選択するように構成される。通知部は、選択部により選択された最大供給電力を給電設備に通知するように構成される。
【0010】
最大供給電力は、充電中に給電設備から車両に供給される電力の最大電力値である。充電料金情報は、課金レートを示す情報であってもよいし、1回の充電に対する充電料金を示す情報であってもよい。
【0011】
上記車両では、設定部により設定された基準に従って適切な最大供給電力が選択される。このため、適切な最大供給電力を選んで給電設備に通知することが可能になる。
【0012】
上記設定部は、ユーザからの入力に応じて、所定の選択肢の中から1つの基準を設定するように構成されてもよい。こうした構成を有する車両では、ユーザが基準を選ぶことができる。このため、ユーザの要望に合った最大供給電力を選んで給電設備に通知することが可能になる。
【0013】
上記料金テーブルは、最大供給電力が大きくなるほど課金レートが高くなる料金体系を示してもよい。そして、上記所定の選択肢は、充電時間が最も短い最大供給電力を選択する第1基準と、充電料金が最も安い最大供給電力を選択する第2基準とを含んでもよい。
【0014】
上記構成によれば、ユーザは、状況に応じて、充電時間を短くしたり、充電料金を安くしたりすることができる。料金テーブルによって示される課金レートは、単位時間あたりの課金レートであってもよいし、単位供給電力量あたりの課金レートであってもよい。
【0015】
上記所定の選択肢は、充電時間及び充電料金の総合評価が最も良い最大供給電力を選択する第3基準をさらに含んでもよい。こうした構成によれば、ユーザは、充電時間及び充電料金のバランスがとれた最大供給電力を選ぶことが可能になる。
【0016】
上記料金テーブルが示す課金レートは、単位時間あたりの課金レートであってもよい。上記選択部は、料金テーブルを用いて充電時間を予測し、予測された充電時間と、単位時間あたりの課金レートとを用いて、充電料金を算出するように構成されてもよい。
【0017】
上記構成によれば、最大供給電力ごとの充電時間及び充電料金を適切に評価しやすくなる。選択部は、最大供給電力が大きいほど充電時間が短くなると予測してもよい。
【0018】
上記給電設備は、公共の給電設備であってもよい。上記設定部は、給電設備の位置を用いて基準を設定するように構成されてもよい。こうした構成を有する車両では、給電設備の位置に応じて基準が自動的に設定される。公共の給電設備は、様々な場所に存在する。上記構成によれば、給電設備の位置に合った最大供給電力を選んで給電設備に通知することが可能になる。
【0019】
上記給電設備は直流電力を供給するように構成されてもよい。
交流電力を供給するAC給電設備(交流方式の給電設備)を用いて車両の蓄電装置を充電する場合には、一般に、AC給電設備から供給される交流電力を車両が直流電力に変換して、その直流電力が蓄電装置に供給される。また、AC給電設備では、最大供給電力が充電ケーブルの容量で決まることが多い。一方、直流電力を供給するDC給電設備(直流方式の給電設備)を用いて車両の蓄電装置を充電する場合には、車両におけるAC/DC変換(交流から直流への電力変換)は不要になる。このため、適切な最大供給電力が車両からDC給電設備に通知されることで、車両では電力変換を行なわず、DC給電設備から供給される直流電力をそのまま車両の蓄電装置に供給することが可能になる。
【0020】
上記選択部は、蓄電装置の入力電力が入力上限値以下に制限されている場合に、料金テーブルが示す最大供給電力のうち、蓄電装置の入力電力が入力上限値を超える最大供給電力を除外し、残った最大供給電力の中から1つの最大供給電力を選択するように構成されてもよい。
【0021】
たとえば蓄電装置又はその周辺部品を保護するために、蓄電装置の入力電力が入力上限値以下に制限されることがある。上記構成によれば、蓄電装置の入力上限値に合った最大供給電力を選んで給電設備に通知することが可能になる。
【0022】
上記取得部は、車両外部のサーバに給電設備を特定するための特定情報を送って、特定情報によって特定される給電設備の料金テーブルの送信をサーバに要求するように構成されてもよい。
【0023】
上記構成によれば、対象となる給電設備(すなわち、今回の充電で利用する給電設備)の料金テーブルを車両外部のサーバから取得することができる。なお、上記サーバは、複数の給電設備の情報を一元的に管理するコンピュータであってもよい。
【0024】
上記特定情報は、給電設備を識別するための識別コードと、給電設備の位置とを含んでもよい。
【0025】
上記構成によれば、対象となる給電設備を特定しやすくなる。たとえば、1つの国の中では識別コードだけで給電設備を特定できたとしても、全ての国を含む全世界を見ると、同じ識別コードを使った給電設備が複数存在することがある。また、同一機種の給電設備でも、設置場所(たとえば、設置される国)によって充電料金が変わることがある。上記構成では、給電設備の位置を用いることで、より適切に給電設備を特定することが可能になる。なお、車両は、給電設備から識別コードを取得してもよい。識別コードは、数字、記号、及び文字の少なくとも1つで構成されてもよい。
【0026】
上述したいずれかの車両は、上記蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行する電動車両であってもよい。電動車両には、EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車両)、及びPHV(プラグインハイブリッド車両)のほか、FC車(燃料電池自動車)、レンジエクステンダーEVなども含まれる。
【0027】
本開示の第2の観点に係る充電方法では、最大供給電力に応じて充電料金が変わる給電設備を用いて、車両に搭載された蓄電装置を充電する。そして、この充電方法は、次に示す処理A~Eを含む。処理Aでは、車両が、最大供給電力を選ぶための基準を設定する。処理Bでは、車両が、給電設備を用いて蓄電装置の充電を開始する前に、その給電設備の最大供給電力ごとの充電料金情報を示す料金テーブルを取得する。処理Cでは、車両が、設定された基準に従い、料金テーブルの中から1つの最大供給電力を選択する。処理Dでは、車両が、選択された最大供給電力を給電設備に通知する。処理Eでは、給電設備が、料金テーブルに従い、通知された最大供給電力に対応する充電料金情報に基づいて課金しながら、通知された最大供給電力の条件で、蓄電装置を充電するための電力を車両へ供給する。
【0028】
上記充電方法によっても、給電設備の最大供給電力に応じて充電料金が変わる料金体系で課金される充電を行なうときに、前述した車両と同様、適切な最大供給電力を選ぶことが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、給電設備の最大供給電力に応じて充電料金が変わる料金体系で課金される充電を行なうときに、適切な最大供給電力を選ぶことができる車両及び充電方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の実施の形態に係る充電システムを示す図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る給電設備が5つの最大供給電力の各々で給電を行なった場合の供給電力の推移を示す図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係るECU(車両に搭載された制御装置)の構成要素を機能別に示す機能ブロック図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る給電設備の料金テーブルを示す図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る設定部によって実行される基準の設定に係る処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図5に示した処理において表示される入力画面の一例を示す図である。
【
図7】本開示の実施の形態に係る充電方法を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施の形態に係る選択部が充電時間及び充電料金を予測する方法について説明するための図である。
【
図9】本開示の実施の形態において、第3基準(バランスモード)における充電時間及び充電料金の評価方法について説明するための図である。
【
図10】蓄電装置の入力上限値を設定するためのマップの一例を示す図である。
【
図11】
図7に示した処理の変形例を示す図である。
【
図12】
図5に示した処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0032】
図1は、この実施の形態に係る充電システムを示す図である。
図1を参照して、この充電システムは、サーバ30、EVSE40、及び車両50を含む。車両50は、走行用の電力を蓄電するバッテリ130を備える。車両50は、バッテリ130に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。この実施の形態に係る車両50は、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(EV)である。
【0033】
車両50は、電子制御装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」と称する)150を備える。ECU150は、バッテリ130の充電制御及び放電制御を行なうように構成される。また、ECU150は、車両50の外部との通信を制御するように構成される。
【0034】
バッテリ130は、たとえばリチウムイオン電池又はニッケル水素電池のような二次電池を含んで構成される。この実施の形態では、二次電池として、複数のリチウムイオン電池を含む組電池を採用する。組電池は、複数の二次電池(一般に「セル」とも称される)が互いに電気的に接続されて構成される。なお、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタのような他の蓄電装置を採用してもよい。この実施の形態に係るバッテリ130は、本開示に係る「蓄電装置」の一例に相当する。
【0035】
車両50は、車両50の外部から供給される電力を受電するインレット110と、バッテリ130の状態を監視する監視モジュール131と、バッテリ130とインレット110との間に位置する充電リレー120とをさらに備える。
【0036】
監視モジュール131は、バッテリ130の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU150へ出力する。監視モジュール131は、上記センサ機能に加えて、SOC(State Of Charge)推定機能、SOH(State of Health)推定機能、セル電圧の均等化機能、診断機能、及び通信機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。ECU150は、監視モジュール131の出力に基づいてバッテリ130の状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC、及び内部抵抗)を取得することができる。
【0037】
インレット110は、後述するEVSE40の充電ケーブル42のコネクタ43が接続可能に構成される。充電リレー120は、インレット110からバッテリ130までの電力経路の接続/遮断を切り替えるように構成される。
【0038】
EVSE40は、EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)の一例に相当する。EVSEは、車両外部の給電設備に相当する。EVSE40は、たとえば不特定多数のユーザが使用可能な公共のEVSEである。EVSE40は、外部電源PGと電気的に接続可能に構成される。外部電源PGは、電力会社によって提供される電力系統(電力網)であってもよい。外部電源PGは、マイクログリッドであってもよい。外部電源PGは、EVSE40に交流電力を供給する。
【0039】
EVSE40は、直流電力を提供するDC給電設備(直流方式の給電設備)である。EVSE40は、制御装置41と、充電ケーブル42と、電力変換回路421と、電力変換回路421の状態を監視する監視モジュール422と、タッチパネルディスプレイ44とを備える。充電ケーブル42はEVSE40の本体に接続されている。充電ケーブル42は、EVSE40の本体に対して着脱可能であってもよい。充電ケーブル42は、先端にコネクタ43を有し、内部に電力線及び通信線を含む。
【0040】
制御装置41はコンピュータであってもよい。制御装置41は、プロセッサを含み、電力変換回路421及びタッチパネルディスプレイ44を制御するように構成される。タッチパネルディスプレイ44は、ユーザから入力された情報(指示を含む)を制御装置41へ出力したり、制御装置41からの指示に従って情報を表示したりする。
【0041】
電力変換回路421は、外部電源PGから供給される交流電力を直流電力に変換してコネクタ43へ出力する。電力変換回路421は、整流回路、力率改善(Power Factor Correction)回路、絶縁回路、変圧器(たとえば、絶縁トランス)、及びフィルタ回路の少なくとも1つをさらに含んでもよい。電力変換回路421は、制御装置41によって制御される。
【0042】
監視モジュール422は、電力変換回路421の状態を検出する各種センサを含み、検出結果を制御装置41へ出力する。この実施の形態では、監視モジュール422が、電力変換回路421に入力される電圧及び電流と、電力変換回路421から出力される電圧及び電流とを検出するように構成される。監視モジュール422は、EVSE40の給電電力を検出可能に構成される。
【0043】
車両50は、接触充電のためのインレット110を備える。EVSE40の本体につながる充電ケーブル42のコネクタ43が車両50のインレット110に接続(プラグイン)されることによって、車両50がプラグイン状態になる。プラグイン状態では、車両50とEVSE40との間での通信が可能になるとともに、EVSE40と車両50との間で電力の授受を行なうことが可能になる。プラグイン状態の車両50では、外部充電(すなわち、EVSE40から供給される電力によってバッテリ130を充電すること)が可能になる。外部充電のための電力は、EVSE40から充電ケーブル42を通じてインレット110に供給される。外部充電を実行するときには充電リレー120が閉状態(接続状態)にされ、外部充電を実行しないときには充電リレー120が開状態(遮断状態)にされる。
【0044】
ECU150(車両50)と制御装置41(EVSE40)との通信方式は任意であり、たとえば、CAN(Controller Area Network)であってもよいし、PLCであってもよい。なお、
図1には、EVSE40の給電方式に対応するインレット110のみを示しているが、車両50は、複数種の給電方式(たとえば、AC方式及びDC方式)に対応できるように複数のインレットを備えてもよい。
【0045】
この実施の形態では、EVSE40が、5段階で最大供給電力を変更可能に構成される。すなわち、EVSE40は、5つの最大供給電力で給電可能に構成される。
図2は、EVSE40が5つの最大供給電力の各々で給電を行なった場合の供給電力の推移を示す図である。
【0046】
図1とともに
図2を参照して、線L1、L2、L3、L4、L5は、それぞれEVSE40が最大供給電力150kW、125kW、100kW、75kW、50kWの条件で給電を行なった場合の供給電力の推移を示している。
図2に示す供給電力は、EVSE40が供給する電力であり、たとえばEVSE40から車両50に供給される電力である。最大供給電力は、たとえばバッテリ130の充電中にEVSE40から車両50に供給される電力の最大電力値である。線L1~L5で示されるように、EVSE40の供給電力は、充電が開始されると上昇し、最大供給電力に到達すると最大供給電力に維持され、充電終了が近くなると、最大供給電力から徐々に低下する。ただし、EVSE40の供給電力の推移は、
図2に示す例に限られない。
【0047】
再び
図1を参照して、ECU150は、プロセッサ151、RAM(Random Access Memory)152、記憶装置153、及びタイマ154を含んで構成される。ECU150はコンピュータであってもよい。プロセッサ151はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。RAM152は、プロセッサ151によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置153は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置153は、たとえばROM(Read Only Memory)及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶装置153には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置153に記憶されているプログラムをプロセッサ151が実行することで、ECU150における各種制御が実行される。ただし、ECU150における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。なお、ECU150が備えるプロセッサの数は任意であり、所定の制御ごとにプロセッサが用意されてもよい。
【0048】
車両50は、走行駆動部140と、入力装置161と、メータパネル162と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVI」と称する)170と、通信機器180とをさらに備える。
【0049】
走行駆動部140は、図示しないPCU(Power Control Unit)とMG(Motor Generator)とを含み、バッテリ130に蓄えられた電力を用いて車両50を走行させるように構成される。PCUは、たとえば、インバータと、コンバータと、リレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)と(いずれも図示せず)を含んで構成される。PCUは、ECU150によって制御される。MGは、たとえば三相交流モータジェネレータである。MGは、PCUによって駆動され、車両50の駆動輪を回転させるように構成される。PCUは、バッテリ130から供給される電力を用いてMGを駆動する。また、MGは、回生発電を行ない、発電した電力をバッテリ130に供給するように構成される。SMRは、バッテリ130からMGまでの電力経路の接続/遮断を切り替えるように構成される。SMRは、車両50の走行時に閉状態(接続状態)にされる。
【0050】
入力装置161は、ユーザからの入力を受け付ける装置である。入力装置161は、ユーザによって操作され、ユーザの操作に対応する信号をECU150へ出力する。入力装置161の例としては、各種スイッチ、各種ポインティングデバイス、キーボード、タッチパネルが挙げられる。入力装置161は、音声入力を受け付けるスマートスピーカを含んでもよい。
【0051】
メータパネル162は、車両50に関する情報を表示するように構成される。メータパネル162は、たとえば車両50に搭載された各種センサによって計測された車両50に関する各種情報を表示する。メータパネル162に表示される情報は、外気温、車両50の走行速度、バッテリ130のSOC、車両50の電費、及び車両50の走行距離の少なくとも1つを含んでもよい。メータパネル162は、タッチパネルディスプレイであってもよい。メータパネル162は、ECU150によって制御される。ECU150は、所定の条件が成立する場合に、ユーザに対するメッセージ又は警告灯をメータパネル162に表示させてもよい。
【0052】
NAVI170は、プロセッサと、記憶装置と、タッチパネルディスプレイと、GPS(Global Positioning System)モジュールと(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、地図情報を記憶している。タッチパネルディスプレイは、ユーザからの入力を受け付けたり、地図及びその他の情報を表示したりする。GPSモジュールは、GPS衛星からの信号(以下、「GPS信号」と称する)を受信するように構成される。NAVI170は、GPS信号を用いて車両50の位置を特定することができる。NAVI170は、ユーザからの入力に基づき、車両50の現在位置から目的地までの走行ルート(たとえば、最短ルート)を見つけるための経路探索を行ない、経路探索により見つかった走行ルートを地図上に表示するように構成される。
【0053】
通信機器180は、各種通信I/F(インターフェース)を含んで構成される。通信機器180は、DCM(Data Communication Module)を含んでもよい。通信機器180は、5G(第5世代移動通信システム)対応の通信I/Fを含んでもよい。ECU150は、通信機器180を通じて車両外部の通信装置と無線通信を行なうように構成される。
【0054】
車両50に搭載された通信機器180は、携帯端末80及びサーバ30の各々と無線通信可能に構成される。サーバ30は制御装置31と通信装置32とを備える。制御装置31はコンピュータであってもよい。通信装置32は各種通信I/Fを含む。制御装置31は、プロセッサを含み、所定の情報処理を行なうとともに、通信装置32を通じて外部と通信するように構成される。
【0055】
サーバ30は、クラウドサービスを提供する。サーバ30は、複数のEVSEの情報を一元的に管理するように構成される。サーバ30が提供するクラウドCLは、各EVSEの情報(料金情報を含む)を保有する。サーバ30は、対象となるEVSEの識別コード及び位置情報を用いて検索することで、対象となるEVSEの情報(たとえば、後述する料金テーブル)をクラウドCL内の各種情報から抽出することができる。サーバ30は、本開示に係る「車両外部のサーバ」の一例に相当する。
【0056】
ECU150は、無線通信により携帯端末80を制御して、ユーザに対する報知を携帯端末80に行なわせることができる。通信機器180と携帯端末80との通信は、Bluetooth(登録商標)のような近距離通信(たとえば、車内及び車両周辺の範囲での直接通信)であってもよい。
【0057】
図3は、ECU150の構成要素を機能別に示す機能ブロック図である。
図3を参照して、ECU150は、取得部501と、設定部502と、選択部503と、通知部504を含む。この実施の形態では、
図1に示したプロセッサ151と、プロセッサ151により実行されるプログラムとによって、上記各部が具現化される。ただしこれに限られず、これら各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。ECU150は、本開示に係る「制御装置」の一例に相当する。
【0058】
取得部501は、給電設備(たとえば、EVSE40)でバッテリ130の充電を開始する前に、その給電設備の最大供給電力ごとの充電料金情報を示す料金テーブルを取得するように構成される。詳細は後述するが、この実施の形態に係る取得部501は、
図1に示したサーバ30から料金テーブルを取得する。
図4は、料金テーブルの一例を示す図である。
図4に示される料金テーブルは、EVSE40の料金テーブルである。
【0059】
図4を参照して、この料金テーブルは、最大供給電力が大きくなるほど課金レートが高くなる料金体系を示している。課金レートは、従量制課金における充電料金単価に相当する。この例では、課金方式として、充電時間に応じて課金される従量制の課金方式が採用されている。
図4に示される課金レートは、単位時間あたりの課金レートである。
図4に示される課金レートは、本開示に係る「充電料金情報」の一例に相当する。
【0060】
図4に示す料金テーブルは、EVSE40が切替え可能な5つの最大供給電力(50kW、75kW、100kW、125kW、及び150kW)の各々について課金レートを示している。具体的には、最大供給電力50kW又は75kWの条件で給電が行なわれる場合には、1分あたり0.25ドルの課金レートが採用される。最大供給電力100kW又は125kWの条件で給電が行なわれる場合には、1分あたり0.69ドルの課金レートが採用される。最大供給電力150kWの条件で給電が行なわれる場合には、1分あたり0.99ドルの課金レートが採用される。このように、
図4に示される料金テーブルは、EVSE40の最大供給電力ごとの課金レート(充電料金情報)を示している。
【0061】
再び
図3を参照して、設定部502は、最大供給電力を選ぶための基準(以下、「選定基準」とも称する)を設定するように構成される。具体的には、設定部502は、ユーザからの入力に応じて、所定の選択肢の中から1つの選定基準を設定するように構成される。この実施の形態では、設定部502が、以下に説明する
図5に示す処理を実行する。
【0062】
図5は、選定基準の設定に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえばユーザからの要求に応じて開始される。ユーザは、たとえば入力装置161又は携帯端末80を操作してECU150に処理開始を要求することができる。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
【0063】
図3とともに
図5を参照して、S11では、設定部502が所定の表示装置に入力画面を表示させる。入力画面は、ユーザからの入力を受け付ける画面である。S12では、入力画面に対してユーザが入力を行なったか否かを、設定部502が判断する。そして、入力画面に対してユーザが入力を行なうまでS11及びS12が繰り返される。この実施の形態では、
図1に示したメータパネル162(たとえば、タッチパネルディスプレイ)を、所定の表示装置とする。ただしこれに限られず、所定の表示装置はNAVI170又は携帯端末80であってもよい。
【0064】
図6は、
図5のS11で表示される入力画面の一例を示す図である。
図6を参照して、この入力画面は、「時間優先モード」ボタンM11と、「料金優先モード」ボタンM12と、「バランスモード」ボタンM13とを含む。ユーザは、ボタン操作によって、各ボタンに対応するモード(料金優先モード/時間優先モード/バランスモード)を選択することができる。ユーザがいずれかのボタンを操作すると、
図5のS12においてYESと判断され、処理がS13に進む。この実施の形態では、ユーザがモードを選ぶためのボタンとして、タッチパネルディスプレイに表示される仮想的なボタンが採用されているが、仮想的なボタンに代えて物理的なボタンが採用されてもよい。
【0065】
再び
図3とともに
図5を参照して、S13では、設定部502が、ユーザが選択したモードに対応する選定基準を選択部503に設定する。たとえば、
図6に示した入力画面に対してユーザが「時間優先モード」ボタンM11を操作した場合には、第1基準が選択部503に設定される。第1基準は、充電時間が最も短い最大供給電力を選択することを定める。充電時間は、充電開始から充電完了までの時間である。また、
図6に示した入力画面に対してユーザが「料金優先モード」ボタンM12を操作した場合には、第2基準が選択部503に設定される。第2基準は、充電料金が最も安い最大供給電力を選択することを定める。充電料金は、1回の充電(対象となる充電)に対して課金される料金(金額)である。また、
図6に示した入力画面に対してユーザが「バランスモード」ボタンM13を操作した場合には、第3基準が選択部503に設定される。第3基準は、充電時間及び充電料金の総合評価が最も良い最大供給電力を選択することを定める。充電時間及び充電料金の評価方法については後述する。
【0066】
上記のように、この実施の形態では、設定部502が、ユーザからの入力に応じて、第1~第3基準の中から1つの選定基準を設定する。この実施の形態では、ユーザが、メータパネル162(タッチパネルディスプレイ)を通じて、選定基準の設定に関する入力を行なう。しかしこれに限られず、ユーザは、メータパネル162の代わりに、入力装置161、NAVI170、又は携帯端末80を操作して上記入力を行なってもよい。
【0067】
再び
図3を参照して、選択部503は、設定部502により設定された選定基準(上述した第1~第3基準のいずれか)に従い、料金テーブル(詳しくは、取得部501が取得した料金テーブル)の中から1つの最大供給電力を選択する。そして、通知部504は、選択部503により選択された最大供給電力を給電設備(すなわち、今回の充電で利用する給電設備)に通知する。
【0068】
図7は、充電時に車両50及びEVSE40において実行される処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえば車両50とEVSE40とが充電ケーブル42を介して接続されて車両50がプラグイン状態になると、開始される。
【0069】
図1及び
図3とともに
図7を参照して、S31では、EVSE40の制御装置41が、ユーザによって所定の開始操作が行なわれたか否かを判断する。この実施の形態では、EVSE40に設けられた開始スイッチをユーザが押す操作を、所定の開始操作とする。開始スイッチは、タッチパネルディスプレイ44に表示された仮想的なボタンであってもよいし、物理的なボタンであってもよい。
【0070】
ユーザによって所定の開始操作が行なわれると(S31にてYES)、EVSE40の制御装置41は、S32において、車両50との通信を開始する。これに応じて、車両50のECU150も、S21において、EVSE40との通信を開始する。これにより、制御装置41(EVSE40)とECU150(車両50)との通信が開始される。
【0071】
続けて、制御装置41は、S33において、EVSE40の特定情報をECU150へ送信する。制御装置41は、ECU150からの要求に応じて特定情報を送信してもよいし、自発的に特定情報を送信してもよい。EVSE40の特定情報は、EVSE40を特定するための情報である。この実施の形態では、制御装置41が、S33において、特定情報としてEVSE40の識別コードを送信する。EVSE40の識別コードは、EVSE40の識別番号であってもよい。
【0072】
ECU150は、S22において、EVSE40が送信した上記識別コードを受信する。また、ECU150は、NAVI170の位置検出機能を利用して車両50の位置(たとえば、緯度及び経度)を検出する。車両50はEVSE40と接続されているため、車両50の位置をEVSE40の位置とみなすことができる。こうして取得されるEVSE40の位置も、EVSE40の特定情報に相当する。この実施の形態では、ECU150がEVSE40の位置情報をNAVI170から取得しているが、ECU150は、EVSE40の識別コードと一緒にEVSE40の位置情報をEVSE40から取得してもよい。
【0073】
続けて、ECU150の取得部501(
図3)が、S23において、サーバ30に上記特定情報を送って、その特定情報によって特定される給電設備の料金テーブルの送信をサーバ30に要求する。この実施の形態では、取得部501が、EVSE40の特定情報(すなわち、識別コード及び位置情報)に基づいてEVSE40の料金テーブルをサーバ30に照会する。サーバ30は、取得部501(車両50)からの要求に応じて、EVSE40の特定情報に基づいてEVSE40の料金テーブルをクラウドCL内の各種情報から抽出し、EVSE40の料金テーブルを車両50へ送信する。取得部501は、サーバ30から送信されたEVSE40の料金テーブルを受信する。このように、車両50がEVSE40を利用してバッテリ130の充電を行なう場合には、充電開始前に取得部501がEVSE40の料金テーブル(
図4参照)を取得する。
【0074】
続けて、ECU150の選択部503(
図3)が、S24において、設定部502により設定された選定基準(
図5参照)に従い、EVSE40の料金テーブルが示す最大供給電力(50kW、75kW、100kW、125kW、及び150kW)の中から1つの最大供給電力を選択する。この実施の形態では、選択部503が、料金テーブルを用いて充電時間を予測し、予測された充電時間と、その最大供給電力に対応する単位時間あたりの課金レートとを用いて、充電料金を算出する。
図8は、選択部503によって予測された充電時間及び充電料金の一例を示す図である。
図8において、線グラフは充電料金、棒グラフは充電時間を示す。
【0075】
図4とともに
図8を参照して、選択部503は、最大供給電力が大きくなるほど充電時間が短くなると予測する。
図8に示す例では、最大供給電力が50kW、75kW、100kW、125kW、150kWである場合の充電時間がそれぞれ、55分、38分、31分、28分、26分と予測されている。そして、選択部503は、予測された充電時間と、料金テーブルが示す課金レート(
図4参照)とを乗算することにより、充電料金を算出する。たとえば、
図4に示した料金テーブルによると、最大供給電力が100kWである場合には、1分あたり0.69ドルの課金レートが採用される。このため、最大供給電力が100kWである場合の充電料金は、式「充電料金=31分×0.69ドル/分」に従って21ドルと算出される。同様にして、最大供給電力が50kW、75kW、125kW、150kWである場合の充電料金はそれぞれ、14ドル、10ドル、19ドル、26ドルと算出される。
【0076】
設定部502により設定された選定基準が第1基準(時間優先モード)である場合には、選択部503は、
図7のS24において、充電時間が最も短い150kWを、最大供給電力として選択する。設定部502により設定された選定基準が第2基準(料金優先モード)である場合には、選択部503は、
図7のS24において、充電料金が最も安い75kWを、最大供給電力として選択する。また、設定部502により設定された選定基準が第3基準(バランスモード)である場合には、選択部503は、たとえば以下に説明する方法により、各最大供給電力の充電時間及び充電料金を総合的に評価する。
【0077】
図9は、第3基準(バランスモード)における充電時間及び充電料金の評価方法について説明するための図である。
図9を参照して、選択部503は、1分を1ポイントとして充電時間を評価値に換算するとともに、1ドルを1ポイントとして充電料金を評価値に換算する。そして、充電時間の評価値と充電料金の評価値とを足し合わせることによって、各最大供給電力の総合評価値を得る。
図9に示すように、最大供給電力50kW、75kW、100kW、125kW、150kWの総合評価値(ポイント)はそれぞれ、69、48、52、47、52と算出される。この評価方法では、ポイント(pt)が少ないほど評価は良い。このため、設定部502により設定された選定基準が第3基準(バランスモード)である場合には、選択部503は、
図7のS24において、充電時間及び充電料金の総合評価が最も良い125kWを、最大供給電力として選択する。
【0078】
再び
図1及び
図3とともに
図7を参照して、S25では、ECU150の通知部504(
図3)が、上記S24で選択部503が選択した最大供給電力を制御装置41(EVSE40)に通知する。そして、制御装置41は、S34において、ECU150が送信した上記最大供給電力を受信する。
【0079】
続けて、EVSE40の制御装置41は、S35において、EVSE40の料金テーブル(
図4)に従い、S34で受信した最大供給電力に対応する課金レートに基づいて課金しながら、S34で受信した最大供給電力の条件で、バッテリ130を充電するための電力を車両50へ供給する。制御装置41は、電力変換回路421を制御して、S34で受信した最大供給電力になるまで供給電力を上昇させる(
図2参照)。そして、制御装置41は、S36において、給電を終了するか否かを判断する。制御装置41は、S36においてYES(給電終了)と判断されるまで給電及び課金(S35)を継続する。制御装置41は、ECU150(車両50)から充電完了の通知を受けたときに、S36においてYESと判断する。
【0080】
一方、車両50のECU150は、S26において、充電リレー120を閉状態にして、EVSE40から供給される電力(この実施の形態では、直流電力)を用いてバッテリ130の外部充電を実行する。そして、ECU150は、S27において、充電が完了したか否かを判断する。ECU150は、S27においてYES(充電完了)と判断されるまで外部充電(S26)を継続する。ECU150は、バッテリ130のSOC(State Of Charge)が所定SOC値(たとえば、満充電を示すSOC値)以上になったときに、S27においてYESと判断する。この実施の形態では、バッテリ130が満充電になるまで外部充電が継続される。充電中は、制御装置41(EVSE40)が、ECU150(車両50)と通信しながら、バッテリ130のSOCに応じて供給電力を制御する(
図2参照)。
【0081】
バッテリ130の充電が完了したと判断されると(S27にてYES)、ECU150は、S28において、充電完了を制御装置41に通知するとともに、充電リレー120を開状態にする。これにより、バッテリ130の充電が終了する。
【0082】
また、EVSE40の制御装置41は、ECU150から充電完了の通知を受けると、S36においてYESと判断し、処理をS37に進める。制御装置41は、S37において、電力変換回路421を制御して、車両50に対する電力の供給を停止する。これにより、EVSE40による給電が終了する。また、給電終了後に、制御装置41は、今回の充電(給電)に対する料金(すなわち、S35で課金された充電料金)を車両50のユーザに請求する。充電料金を請求する通知は、制御装置41がECU150及び携帯端末80の少なくとも一方に対して行なってもよい。
【0083】
以上説明したように、この実施の形態に係る充電方法では、最大供給電力に応じて充電料金が変わるEVSE40(
図4参照)を用いて、車両50に搭載された蓄電装置(バッテリ130)を充電する。そして、この実施の形態に係る充電方法は、車両50が、最大供給電力を選ぶための基準(選定基準)を設定すること(
図5)と、車両50が、EVSE40を用いてバッテリ130の充電を開始する前に、EVSE40の最大供給電力ごとの課金レート(充電料金情報)を示す料金テーブル(
図4)を取得すること(
図7のS23)と、車両50が、設定された選定基準に従い、上記料金テーブルの中から1つの最大供給電力を選択すること(
図7のS24)と、車両50が、選択された最大供給電力をEVSE40に通知すること(
図7のS25)と、EVSE40が、上記料金テーブルに従い、通知された最大供給電力に対応する課金レート(充電料金情報)に基づいて課金しながら、通知された最大供給電力の条件で、バッテリ130を充電するための電力を車両50へ供給すること(
図7のS35)とを含む。
【0084】
上記充電方法によれば、給電設備の最大供給電力に応じて充電料金が変わる料金体系で課金される充電を行なうときに、適切な最大供給電力を選ぶことが可能になる。そして、車両50は、適切な最大供給電力で給電を受けて、バッテリ130の充電を行なうことが可能になる。
【0085】
選択部503は、バッテリ130の入力電力が入力上限値以下に制限されている場合に、料金テーブルが示す最大供給電力のうち、バッテリ130の入力電力が入力上限値を超える最大供給電力を除外し、残った最大供給電力の中から1つの最大供給電力を選択するように構成されてもよい。たとえば、ECU150は、所定のマップに基づいてバッテリ130の入力上限値を設定し、設定された入力上限値以下にバッテリ130の入力電力を制限してもよい。
図10は、バッテリ130の入力上限値を設定するためのマップの一例を示す図である。
図10を参照して、このマップでは、バッテリ130の温度に応じてバッテリ130の入力上限値が変化する。入力上限値はバッテリ130に入力可能な電力(すなわち、入力電力の最大値)を示す。ECU150は、車両50の走行中においては、たとえば走行駆動部140を制御することにより、入力上限値を超える電力がバッテリ130に入力されないようにする。バッテリ130の入力上限値は、たとえばバッテリ130又はその周辺部品を保護するために設定される。
【0086】
図11は、
図7に示した処理の変形例を示す図である。
図7のS24の代わりに、
図11に示すS24A及びS24Bが採用されてもよい。
図1及び
図3とともに
図11を参照して、S24Aでは、ECU150の選択部503が、EVSE40の料金テーブルが示す最大供給電力のうち、バッテリ130の入力電力が入力上限値を超える最大供給電力を除外する。たとえば、EVSE40から150kWの電力が車両50に供給された場合にバッテリ130の入力電力が入力上限値を超えることが予想される場合には、選択部503は、最大供給電力の選択肢から150kWを除外する。
【0087】
そして、S24Aの処理後、選択部503は、S24Bにおいて、残った最大供給電力の選択肢の中から1つの最大供給電力を選択する。たとえば、S24Aで150kWが除外された場合には、選択部503は、S24Bにおいて、50kW、75kW、100kW、及び125kWの中から1つの最大供給電力を選択する。この場合、第2基準(料金優先モード)において75kWが選択され、第1基準(時間優先モード)と第3基準(バランスモード)との各々において125kWが選択されることになる。
【0088】
上記変形例に係る選択部503によれば、バッテリ130の入力上限値に合った最大供給電力を選んでEVSE40に通知することが可能になる。
【0089】
上記実施の形態では、第1~第3基準が採用されている。しかし、選定基準の選択肢は適宜変更可能である。たとえば、第1~第3基準のうち、任意の2つの選定基準だけが採用されてもよい。
【0090】
また、第3基準における充電時間及び充電料金の評価方法は、
図9に示した方法に限られず適宜変更可能である。たとえば、選択部503は、充電時間に係数k1を乗算することにより充電時間を評価値に換算するとともに、充電料金に係数k2を乗算することにより充電料金を評価値に換算してもよい。そして、充電時間の評価値と充電料金の評価値とを足し合わせることによって、各最大供給電力の総合評価値を得てもよい。選択部503は、ユーザからの入力に応じて、係数k1及びk2を設定してもよい。たとえば、ユーザが時間優先寄りのバランスモードを希望する場合には、選択部503は、係数k1を1.0、係数k2を1.0未満(たとえば、0.5)に設定してもよい。こうすることで、前述したバランスモード(k1=1.0、k2=1.0)と比べて、充電時間が短い最大供給電力が選ばれやすくなる。また、ユーザが料金優先寄りのバランスモードを希望する場合には、選択部503は、係数k1を1.0未満(たとえば、0.5)、係数k2を1.0に設定してもよい。こうすることで、前述したバランスモード(k1=1.0、k2=1.0)と比べて、充電料金が安い最大供給電力が選ばれやすくなる。
【0091】
図5に示した処理の実行タイミングは適宜変更可能である。たとえば、車両50がプラグイン状態になると、
図5に示した処理が開始されてもよい。
図5に示した処理は、
図7のS21の前に実行されてもよい。
【0092】
上記実施の形態では、設定部502が、ユーザからの入力に応じて選定基準を設定するように構成される。ただしこれに限られず、設定部502は、給電設備の位置を用いて選定基準を設定するように構成されてもよい。設定部502は、
図5に示した処理に代えて、以下に説明する
図12に示す処理を実行してもよい。
【0093】
図12は、
図5に示した処理の変形例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえば車両50とEVSE40とが充電ケーブル42を介して接続されて車両50がプラグイン状態になると、開始される。
図12に示す処理は、
図7のS21の前に実行されてもよい。
【0094】
図1及び
図3とともに
図12を参照して、S51では、設定部502がEVSE40の位置を取得する。取得方法は、前述した
図7のS22と同じであってもよい。続くS52では、EVSE40がユーザの自宅に近いか否かを、設定部502が判断する。たとえば、設定部502は、EVSE40の位置がユーザの自宅から所定距離以内であればEVSE40がユーザの自宅に近い(S52にてYES)と判断し、EVSE40の位置がユーザの自宅から所定距離以内でなければEVSE40がユーザの自宅に近くない(S52にてNO)と判断する。設定部502は、NAVI170と連携して、S52の判断を行なってもよい。
【0095】
EVSE40がユーザの自宅に近い場合(S52にてYES)には、設定部502は、S53において、第2基準を選択部503に設定する。これにより、
図7のS24において、充電料金が安い最大供給電力が選択されやすくなる。EVSE40がユーザの自宅に近くない場合(S52にてNO)には、設定部502は、S54において、第1基準を選択部503に設定する。これにより、
図7のS24において、充電時間が短い最大供給電力が選択されやすくなる。
【0096】
上記変形例に係る設定部502によれば、車両50が給電設備の位置に合った最大供給電力を選んで給電設備に通知することが可能になる。
【0097】
設定部502は、給電設備の位置を用いて給電設備の利用者数を予測し、給電設備の利用者数が多いことが予測される場合には第1基準(時間優先モード)を設定し、給電設備の利用者数が少ないことが予測される場合には第2基準(料金優先モード)を設定するように構成されてもよい。たとえば、給電設備の位置が商業施設の敷地内である場合に、設定部502は、給電設備の利用者数が多いと予測してもよい。また、設定部502は、給電設備の位置が所定の範囲内であれば給電設備の利用者数が少ないと予測し、給電設備の位置が所定の範囲外であれば給電設備の利用者数が多いと予測してもよい。ユーザは、給電設備の利用者数が少ない地域を、上記所定の範囲として設定してもよい。また、AI(人工知能)及びビッグデータを用いた機械学習により、給電設備の利用者数が少ない地域が上記所定の範囲として設定されてもよい。
【0098】
上記実施の形態では、EVSE40が、5段階で最大供給電力を変更可能に構成される。しかしこれに限られず、最大供給電力の変更態様は適宜変更可能である。たとえば、EVSE40は、より細かく最大供給電力を変更できるように構成されてもよい。EVSE40は、たとえば10W刻みで最大供給電力を変更できるように構成されてもよい。
【0099】
給電設備の構成は、
図1に示した構成に限られない。たとえば、電力供給の有無を切り替える遮断器が、外部電源PGと電力変換回路421との間に設けられてもよい。また、給電設備は、DC給電設備に限定されず、HLC(高位レイヤ整合性)通信を行なうAC給電設備であってもよい。
【0100】
車両の構成は、
図1に示した構成に限られない。たとえば、車両は、非接触充電可能に構成されてもよい。車両は、EVに限られず、PHVであってもよい。車両は、乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。車両は、自動運転可能に構成されてもよいし、飛行機能を備えてもよい。車両は、無人で走行可能な車両(たとえば、無人搬送車又は農業機械)であってもよい。
【0101】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
30 サーバ、31 制御装置、32 通信装置、40 EVSE、41 制御装置、42 充電ケーブル、43 コネクタ、44 タッチパネルディスプレイ、50 車両、80 携帯端末、110 インレット、120 充電リレー、130 バッテリ、131 監視モジュール、140 走行駆動部、150 ECU、151 プロセッサ、152 RAM、153 記憶装置、154 タイマ、161 入力装置、162 メータパネル、170 NAVI、180 通信機器、421 電力変換回路、422 監視モジュール、501 取得部、502 設定部、503 選択部、504 通知部、CL クラウド。