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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185290
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】被膜剥離装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20221207BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H02G1/12 060
B26D3/00 603Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092867
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直樹
【テーマコード(参考)】
5G353
【Fターム(参考)】
5G353AB05
5G353AC04
5G353CA05
5G353EA08
(57)【要約】
【課題】平角線の絶縁被膜の剥離中であっても剥離屑を良好に除去可能な被膜剥離装置を実現する。
【解決手段】本開示の一形態に係る被膜剥離装置(1)は、剥離刃(22)を有するパンチ(2)と、平角線(8)を支持する支持面(31)とパンチ(2)の挿入孔(32)とを有するダイ(3)と、平角線(8)をダイ(3)の支持面(31)と共に挟み込む支持面(41)とパンチ(2)の挿入孔(42)とを有するクランパ(4)と、クランパ(4)からエアを噴出する第1のエア経路(51)とクランパ(4)を介してパンチ(2)からエアを噴出する第2のエア経路(52)とを有する第1のエア供給部(5)と、を備える。パンチ(2)によって平角線(8)の絶縁被膜を剥離するために当該パンチ(2)がダイ(3)の挿入孔(32)に挿入された状態で、第2のエア経路(52)からエアが噴出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角線の絶縁被膜を剥離する被膜剥離装置であって、
前記平角線の絶縁被膜を剥離する剥離刃を有するパンチと、
前記平角線を支持する支持面と、前記パンチが挿入される挿入孔と、を有するダイと、
前記平角線を前記ダイの支持面と共に挟み込む支持面と、前記パンチが挿入される挿入孔と、を有するクランパと、
前記クランパからエアを噴出する第1のエア経路と、前記クランパを介して前記パンチにおける前記剥離刃に対して当該パンチの先端の側からエアを噴出する第2のエア経路と、を有する第1のエア供給部と、
を備え、
前記パンチによって前記平角線の絶縁被膜を剥離するために当該パンチが前記ダイの挿入孔に挿入された状態で、前記第2のエア経路からエアが噴出する、被膜剥離装置。
【請求項2】
前記第1のエア経路は、
前記クランパにおける前記ダイと向かい合う側の面に形成されたエア噴出口と、
前記クランパに形成され、前記エア噴出口に接続されたエア通過部と、
を備える、請求項1に記載の被膜剥離装置。
【請求項3】
前記第2のエア経路は、
前記クランパに形成された第1のエア噴出口と、
前記クランパに形成され、前記第1のエア噴出口に接続された第1のエア通過部と、
前記パンチに形成され、前記パンチが前記ダイの挿入孔に挿入された状態で前記第1のエア噴出口と連通するエア供給口と、
前記パンチに形成された第2のエア噴出口と、
前記パンチに形成され、前記エア供給口と前記第2のエア噴出口とに接続された第2のエア通過部と、
を備える、請求項1又は2に記載の被膜剥離装置。
【請求項4】
前記第1のエア噴出口は、前記クランパの貫通孔の周面に形成されており、
前記パンチのエア供給口は、前記パンチが前記クランパの貫通孔に挿入された状態で、前記パンチにおける前記第1のエア噴出口と向かい合う側の側面に形成されている、請求項3に記載の被膜剥離装置。
【請求項5】
前記パンチのエア供給口は、前記パンチの移動方向に延在するザグリ部を備える、請求項3又は4に記載の被膜剥離装置。
【請求項6】
前記ダイの挿入孔にエアを供給する第2のエア供給部を備え、
前記第2のエア供給部は、
前記ダイに形成されたベンチュリー部と、
前記ダイの挿入孔の周面に形成され、前記ベンチュリー部と連続するコアンダ面と、
を有し、
前記コアンダ面に沿って流れるエアのコアンダ効果によって、前記ダイの挿入孔に前記クランパの側から侵入したエアを当該クランパの側に対して逆側に引き込む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被膜剥離装置。
【請求項7】
前記ダイの挿入孔に侵入したエアを吸引するエア吸引部を備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の被膜剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被膜剥離装置に関し、例えば、平角線の絶縁被膜を剥離する被膜剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な被膜剥離装置は、例えば、特許文献1に開示されているように、クランパとダイとで平角線を挟み込んだ状態で、クランパの挿入孔及びダイの挿入孔に一対のパンチを挿入し、各々のパンチの向かい合う側面に設けられた剥離刃によって平角線の絶縁被膜を剥離する構成とされている。
【0003】
このとき、剥離された絶縁被膜などの剥離屑が次回に平角線の絶縁被膜を剥離する際に当該平角線に付着しないように、剥離屑を除去する必要がある。そのため、特許文献1の被膜剥離装置は、ダイにおける平角線を支持する支持面に連続するコアンダ面に沿ってエアを流して当該支持面にエアを供給しつつ、ダイの挿入孔からエアを吸引する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-115937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人は、以下の課題を見出した。特許文献1の被膜剥離装置は、平角線の絶縁被膜を剥離するためにパンチをダイの挿入孔に挿入した状態で、パンチとダイの挿入孔との隙間が塞がり、エアがダイの支持面から挿入孔に流れ込み難くなる。そのため、特許文献1の被膜剥離装置は、平角線の絶縁被膜の剥離中において、剥離屑を良好に除去できない場合がある。
【0006】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、平角線の絶縁被膜の剥離中であっても剥離屑を良好に除去可能な被膜剥離装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る被膜剥離装置は、平角線の絶縁被膜を剥離する被膜剥離装置であって、
前記平角線の絶縁被膜を剥離する剥離刃を有するパンチと、
前記平角線を支持する支持面と、前記パンチが挿入される挿入孔と、を有するダイと、
前記平角線を前記ダイの支持面と共に挟み込む支持面と、前記パンチが挿入される挿入孔と、を有するクランパと、
前記クランパからエアを噴出する第1のエア経路と、前記クランパを介して前記パンチにおける前記剥離刃に対して当該パンチの先端の側からエアを噴出する第2のエア経路と、を有する第1のエア供給部と、
を備え、
前記パンチによって前記平角線の絶縁被膜を剥離するために当該パンチが前記ダイの挿入孔に挿入された状態で、前記第2のエア経路からエアが噴出する。
【0008】
上述の被膜剥離装置において、前記第1のエア経路は、
前記クランパにおける前記ダイと向かい合う側の面に形成されたエア噴出口と、
前記クランパに形成され、前記エア噴出口に接続されたエア通過部と、
を備えることが好ましい。
【0009】
上述の被膜剥離装置において、前記第2のエア経路は、
前記クランパに形成された第1のエア噴出口と、
前記クランパに形成され、前記第1のエア噴出口に接続された第1のエア通過部と、
前記パンチに形成され、前記パンチが前記ダイの挿入孔に挿入された状態で前記第1のエア噴出口と連通するエア供給口と、
前記パンチに形成された第2のエア噴出口と、
前記パンチに形成され、前記エア供給口と前記第2のエア噴出口とに接続された第2のエア通過部と、
を備えることが好ましい。
【0010】
上述の被膜剥離装置において、前記第1のエア噴出口は、前記クランパの貫通孔の周面に形成されており、
前記パンチのエア供給口は、前記パンチが前記クランパの貫通孔に挿入された状態で、前記パンチにおける前記第1のエア噴出口と向かい合う側の側面に形成されていることが好ましい。
【0011】
上述の被膜剥離装置において、前記パンチのエア供給口は、前記パンチの移動方向に延在するザグリ部を備えることが好ましい。
【0012】
上述の被膜剥離装置は、前記ダイの挿入孔にエアを供給する第2のエア供給部を備え、
前記第2のエア供給部は、
前記ダイに形成されたベンチュリー部と、
前記ダイの挿入孔の周面に形成され、前記ベンチュリー部と連続するコアンダ面と、
を有し、
前記コアンダ面に沿って流れるエアのコアンダ効果によって、前記ダイの挿入孔に前記クランパの側から侵入したエアを当該クランパの側に対して逆側に引き込むことが好ましい。
【0013】
上述の被膜剥離装置は、前記ダイの挿入孔に侵入したエアを吸引するエア吸引部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、平角線の絶縁被膜の剥離中であっても剥離屑を良好に除去可能な被膜剥離装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態の被膜剥離装置の基本的な構成を示す斜視図である。
図2】実施の形態の被膜剥離装置のパンチを示す斜視図である。
図3】実施の形態の被膜剥離装置のクランパを示す斜視図である。
図4】実施の形態の被膜剥離装置において、パンチが最もZ軸+側に配置された初期状態での第1のエア供給部を示す図である。
図5】実施の形態の被膜剥離装置において、パンチがZ軸-側に配置された剥離状態での第1のエア供給部を示す図である。
図6】実施の形態の被膜剥離装置において、パンチに形成されたエア供給口、第2のエア噴出口及び第2のエア通過部を示す図である。
図7】実施の形態の被膜剥離装置の第2のエア供給部及びエア吸引部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0017】
先ず、本実施の形態の被膜剥離装置の基本的な構成を説明する。図1は、本実施の形態の被膜剥離装置の基本的な構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、説明を明確にするために、三次元(XYZ)座標系を用いて説明する。
【0018】
本実施の形態の被膜剥離装置1は、銅などの導電部材がエナメル樹脂などの絶縁被膜によって被覆された平角線の当該絶縁被膜の一部を剥離する際に好適である。被膜剥離装置1は、図1に示すように、一対のパンチ2、ダイ3及びクランパ4を備えている。
【0019】
図2は、本実施の形態の被膜剥離装置のパンチを示す斜視図である。一対のパンチ2は、平角線の絶縁被膜を剥離する。一対のパンチ2は、Z軸方向に移動可能であり、図1及び図2に示すように、Y軸方向に間隔を開けて配置されている。
【0020】
パンチ2は、例えば、略四角柱形状を基本形態としており、他方のパンチ2と向かい合う面におけるZ軸-側の部分がZ軸-側に向かうに従って当該他方のパンチ2の側に対して逆側に向かう傾斜面21に形成されている。
【0021】
そして、パンチ2における他方のパンチ2と向かい合う面には、傾斜面21に対してZ軸+側の部分に剥離刃22が設けられている。剥離刃22のZ軸-側の端部は、例えば、X軸+側に向かうに従ってZ軸-側に向かうように傾斜している。
【0022】
ダイ3は、平角線の絶縁被膜を剥離する際に当該平角線を支持する。ダイ3は、図1に示すように、支持面31及び一対の挿入孔32を備えている。支持面31は、ダイ3のZ軸+側の面に形成されており、X軸方向に延在している。
【0023】
支持面31は、例えば、平角線のZ軸-側の面に略面接触することができるように、XY平面と略平行な平坦面である。但し、支持面31の形状は、平角線の形状や配置などに応じて、適宜、変更することができる。
【0024】
挿入孔32は、ダイ3をZ軸方向に貫通する。各々の挿入孔32には、パンチ2をガイドするために当該パンチ2が挿入される。そのため、挿入孔32は、挿入孔32をZ軸方向から見て、例えば、パンチ2における剥離刃22の近傍の周形状と対応する略四角形状である。このとき、一対の挿入孔32は、Y軸方向で支持面31を挟み込むように配置されている。
【0025】
図3は、本実施の形態の被膜剥離装置のクランパを示す斜視図である。クランパ4は、図1に示すように、ダイ3に対してZ軸+側に配置されており、Z軸方向に移動可能である。クランパ4は、平角線の絶縁被膜を剥離する際に当該平角線をダイ3と共に挟み込む。
【0026】
クランパ4は、図3に示すように、支持面41及び一対の挿入孔42を備えている。支持面41は、クランパ4のZ軸-側の面におけるダイ3の支持面31と向かい合う位置に形成されており、X軸方向に延在している。
【0027】
支持面41は、例えば、平角線のZ軸+側の面に略面接触することができるように、XY平面と略平行な平坦面である。但し、支持面41の形状は、平角線の形状や配置などに応じて、適宜、変更することができる。
【0028】
挿入孔42は、クランパ4をZ軸方向に貫通する。各々の挿入孔42には、パンチ2をガイドするために当該パンチ2が挿入される。そのため、一対の挿入孔42は、Z軸方向から見て、ダイ3の挿入孔32と略重なるように配置されている。
【0029】
挿入孔42は、Z軸方向から見て、例えば、パンチ2における剥離刃22の近傍の周形状と対応する略四角形状である。このとき、一対の挿入孔42は、Z軸方向から見て、Y軸方向で支持面41を挟み込むように配置されている。
【0030】
このような被膜剥離装置1は、ダイ3の支持面31とクランパ4の支持面41とで平角線を挟み込んだ状態で、一対のパンチ2をZ軸-側に移動させてダイ3の挿入孔32及びクランパ4の挿入孔42に挿入しつつ、パンチ2の剥離刃22で平角線の絶縁被膜を削ぎ落とすことで、平角線の絶縁被膜を剥離することができる。
【0031】
次に、本実施の形態の被膜剥離装置1において、パンチ2の剥離刃22で平角線の絶縁被膜を剥離した際に発生する剥離屑を除去するための機構を説明する。図4は、本実施の形態の被膜剥離装置において、パンチが最もZ軸+側に配置された初期状態での第1のエア供給部を示す図である。図5は、本実施の形態の被膜剥離装置において、パンチがZ軸-側に配置された剥離状態での第1のエア供給部を示す図である。図6は、本実施の形態の被膜剥離装置において、パンチに形成されたエア供給口、第2のエア噴出口及び第2のエア通過部を示す図である。図7は、本実施の形態の被膜剥離装置の第2のエア供給部及びエア吸引部を示す図である。
【0032】
ここで、図4などでは、図が煩雑にならないように、部材の一部を省略して示している。また、図4及び図5では、パンチ2及び平角線8を仮想線(二点鎖線)で示している。
【0033】
被膜剥離装置1は、上述の構成に加えて、図4乃至図7に示すように、第1のエア供給部5、第2のエア供給部6及びエア吸引部7を備えている。第1のエア供給部5は、図3乃至図5に示すように、第1のエア経路51、第2のエア経路52及びエア供給装置53を備えている。
【0034】
第1のエア経路51は、クランパ4からエアを噴出するための経路である。本実施の形態では、図3などに示すように、一対の第1のエア経路51がクランパ4に形成されている。但し、第1のエア経路51の個数は、一つ又は三つ以上でもよい。
【0035】
一対の第1のエア経路51は、例えば、Z軸方向から見て、大凡、クランパ4の所定の点を中心とした点対称となるように、クランパ4のX軸+側の部分とX軸-側の部分とに配置されている。ここで、重複した説明を省略するために、X軸+側の第1のエア経路51を代表して説明する。
【0036】
第1のエア経路51は、図3などに示すように、エア噴出口51a、エア供給口51b及びエア通過部51cを備えている。エア噴出口51aは、クランパ4のZ軸-側の面に形成されている。エア噴出口51aは、例えば、クランパ4の支持面41における挿入孔42の近傍に配置されているとよい。
【0037】
但し、エア噴出口51aは、後述するパンチ2が最もZ軸+側に配置された初期状態で、ダイ3の支持面31の近傍にエアを噴出することができるように、クランパ4に形成されていればよい。
【0038】
エア供給口51bは、クランパ4のX軸+側の面に形成されている。エア通過部51cは、エア噴出口51aとエア供給口51bとを接続している。但し、エア供給口51b及びエア通過部51cの配置は、上述の限りではなく、エア噴出口51aにエアを流し込むことができるように配置されていればよい。
【0039】
第2のエア経路52は、クランパ4を介してパンチ2からエアを噴出するための経路である。本実施の形態では、図4及び図5に示すように、一対の第2のエア経路52がパンチ2及びクランパ4に形成されている。
【0040】
一対の第2のエア経路52は、例えば、Z軸方向から見て、大凡、クランパ4の所定の点を中心とした点対称となるように、パンチ2及びクランパ4のX軸+側の部分とX軸-側の部分とに配置されている。ここで、重複した説明を省略するために、X軸+側の第2のエア経路52を代表して説明する。
【0041】
第2のエア経路52は、図3及び図6に示すように、第1のエア噴出口52a、第1のエア通過部52b、エア供給口52c、第2のエア噴出口52d及び第2のエア通過部52eを備えている。第1のエア噴出口52aは、クランパ4におけるY軸+側の挿入孔42のX軸+側の側面に形成されている。
【0042】
第1のエア通過部52bは、図3に示すように、第1のエア経路51のエア通過部51cから分岐しており、第1のエア経路51のエア供給口51bと第2のエア経路52の第1のエア噴出口52aとを接続している。
【0043】
エア供給口52cは、図2及び図6に示すように、Y軸+側のパンチ2のX軸+側の側面に形成されている。このとき、エア供給口52cには、ザグリ部(即ち、凹み部)52fが形成されているとよい。
【0044】
ザグリ部52fは、Z軸方向に延在しており、例えば、図5に示すように、パンチ2で平角線8の絶縁被膜を剥離するために当該パンチ2がZ軸-側に移動する際に、X軸方向から見て第1のエア噴出口52aとザグリ部52fとが重なった状態が維持されるように配置されている。
【0045】
例えば、ザグリ部52fは、X軸方向から見てパンチ2の剥離刃22がダイ3のZ軸+側の面に到達してから当該パンチ2が最もZ軸-側に移動するまで第1のエア噴出口52aと重なった状態が維持されるように配置されているとよい。
【0046】
第2のエア噴出口52dは、図2及び図6に示すように、Y軸+側のパンチ2のY軸-側の側面における剥離刃22に対してZ軸-側の部分に形成されている。第2のエア噴出口52dは、例えば、Y軸+側のパンチ2の傾斜面21のZ軸+側の部分に配置されているとよい。つまり、第2のエア噴出口52dは、Y軸+側のパンチ2の剥離刃22のZ軸-側の端部近傍に配置されているとよい。
【0047】
第2のエア通過部52eは、図6に示すように、エア供給口52cと第2のエア噴出口52dとを接続している。但し、第2のエア経路52は、後述するように、パンチ2で平角線8の絶縁被膜を剥離するために当該パンチ2がZ軸方向に移動する際に、パンチ2における剥離刃22に対してZ軸-側の部分からエアを噴出できる経路が確保されていればよい。また、第2のエア経路52の個数は、一つ又は三つ以上でもよい。
【0048】
エア供給装置53は、コンプレッサなどを備えており、図3に示すように、第1のエア経路51のエア供給口51bと接続されている。
【0049】
第2のエア供給部6は、図7に示すように、ダイ3の挿入孔32にエアを供給する。第2のエア供給部6は、ベンチュリー部61、コアンダ面62及びエア供給装置63を備えている。
【0050】
ベンチュリー部61は、ダイ3に形成されており、ベンチュリー部61の一方の端部がダイ3の挿入孔32に到達している。つまり、ベンチュリー部61は、ダイ3に形成されたエア通過部64の絞り部である。
【0051】
コアンダ面62は、エア通過部64におけるダイ3の挿入孔32の側の部分のZ軸-側の面を形成しており、ベンチュリー部61から連続するようにダイ3の挿入孔32の側に向かうに従ってなだらかにZ軸-側に向かって湾曲している。
【0052】
エア供給装置63は、コンプレッサなどを備えており、エア通過部64におけるダイ3の挿入孔32の側に対して逆側の端部に接続されている。エア吸引部7は、バキュウムポンプなどを備えており、ダイ3の挿入孔32の内部のエアをZ軸-側に吸引するために、例えば、ダイ3の挿入孔32と接続されている。
【0053】
次に、本実施の形態の被膜剥離装置1を用いて平角線8の絶縁被膜を剥離する流れを説明する。ここで、平角線8の絶縁被膜を剥離する間、第1のエア供給部5のエア供給装置53からエアが供給されると共に、第2のエア供給部6のエア供給装置63からエアが供給されているものとする。また、エア吸引部7からエアが吸引されているものとする。
【0054】
先ず、図4に示すように、パンチ2及びクランパ4が最もZ軸+側に配置された初期状態とされる。このとき、図4に示すように、ダイ3のZ軸+側の面とクランパ4のZ軸-側の面との間に隙間があるため、第1のエア供給部5のエア供給装置53から供給されたエアは、第1のエア経路51のエア供給口51b及びエア通過部51cを介してエア噴出口51aからダイ3の支持面31の近傍に噴出する。
【0055】
それと共に、第2のエア供給部6のエア供給装置63から供給されたエアは、ベンチュリー部61のベンチュリー効果によって、エア通過部64からベンチュリー部61に良好に引き込まれる。そして、コアンダ面62に沿って流れるエアのコアンダ効果と、エア吸引部7の吸引効果と、によって、ダイ3の支持面31の近傍に噴出されて挿入孔32の内部に侵入したエアをZ軸-側に引き込む。
【0056】
このようにダイ3の挿入孔32へのエアの流れが発生し、ダイ3の支持面31から挿入孔32へのエアによる引き込みが発生することで、前回に平角線8の絶縁被膜を剥離した際の剥離屑は、ダイ3の支持面31の周辺から良好に除去される。これにより、平角線8の絶縁被膜を剥離する前後において、剥離屑を除去することができる。ちなみに、剥離屑は、例えば、エア吸引部7に対してZ軸-側に配置された収容部に収容すればよい。
【0057】
このような状態からダイ3の支持面31に平角線8のZ軸-側の面を略面接触させ、当該支持面31で平角線8を支持する。そして、クランパ4をZ軸-側に移動させてクランパ4の支持面41に平角線8のZ軸+側の面を略面接触させ、ダイ3の支持面31とクランパ4の支持面41とで平角線8を挟み込んで支持する。
【0058】
次に、パンチ2をZ軸-側に移動させて当該パンチ2の剥離刃22によって平角線8の絶縁被膜を剥離する。このとき、パンチ2がZ軸-側に移動して、例えば、パンチ2の剥離刃22のZ軸-側の端部がダイ3のZ軸+側の面に到達すると、図5に示すように、第2のエア経路52の第1のエア噴出口52aとエア供給口52cのザグリ部52fとが重なる。
【0059】
これにより、第1のエア供給部5のエア供給装置53から供給されたエアは、第1のエア経路51のエア供給口51b、エア通過部51c、及び第2のエア経路52の第1のエア通過部52b、第1のエア噴出口52a、エア供給口52c、第2のエア通過部52eを介して第2のエア噴出口52dから噴出する。
【0060】
このとき、パンチ2の剥離刃22によってZ軸-側に押し込まれた剥離屑は、パンチ2の周面における剥離刃22に対してZ軸-側の部分とダイ3の挿入孔32の周面との間に押し込まれるが、パンチ2のZ軸-側の部分に形成された第2のエア噴出口52dから噴出されるエアによってパンチ2の剥離刃22やダイ3の挿入孔32の周辺などから除去される。これにより、平角線8の絶縁被膜を剥離する途中においても、剥離屑を除去することができる。
【0061】
その後、パンチ2及びクランパ4をZ軸-側に移動させて平角線8を除去し、上述の流れを繰り返すことで、平角線8の絶縁被膜を連続的に剥離することができる。
【0062】
このように本実施の形態の被膜剥離装置1は、クランパ4からエアを噴出する第1のエア経路51と、クランパ4を介してパンチ2における剥離刃22に対してZ軸-側の部分からエアを噴出する第2のエア経路52と、を備えている。
【0063】
そのため、クランパ4をZ軸-側に移動させた際に第1のエア経路51のエア噴出口51aがダイ3のZ軸+側の面で塞がれても、第2のエア経路52からエアを噴出することができ、平角線8の絶縁被膜を剥離中も剥離屑を除去することができる。
【0064】
しかも、第2のエア経路52のエア供給口52cにザグリ部52fが形成されている場合、パンチ2をZ軸-側に移動させている間、連続的に第2のエア噴出口52dからエアを噴出することができ、剥離屑を良好に除去することができる。
【0065】
また、被膜剥離装置1が第2のエア供給部6を備えている場合、第2のエア供給部6のベンチュリー効果及びコアンダ効果によって、ダイ3の挿入孔32の内部のエアを良好に排出することができ、剥離屑の除去効率を向上させることができる。
【0066】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0067】
例えば、上記実施の形態の被膜剥離装置1は、エア吸引部7を備えているが、省略してもよい。この場合、第2のエア供給部6のコアンダ面62のコアンダ効果によりZ軸-側へのエアの流れが発生し、挿入孔32からZ軸-側へのエアの流れによって剥離屑を第3の支持面31の周辺から除去することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 被膜剥離装置
2 パンチ、21 傾斜面、22 剥離刃
3 ダイ、31 支持面、32 挿入孔
4 クランパ、41 支持面、42 挿入孔
5 第1のエア供給部
51 第1のエア経路、51a エア噴出口、51b エア供給口、51c エア通過部
52 第2のエア経路、52a 第1のエア噴出口、52b 第1のエア通過部、52c エア供給口、52d 第2のエア噴出口、52e 第2のエア通過部、52f ザグリ部
53 エア供給装置
6 第2のエア供給部
61 ベンチュリー部、62 コアンダ面、63 エア供給装置、64 エア通過部
7 エア吸引部
8 平角線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7