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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185295
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】車両のサスペンションタワー構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
B62D25/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092879
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】楢原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】出先 祐典
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA33
3D203BB16
3D203BB34
3D203BB35
3D203BB38
3D203BB43
3D203BC14
3D203CA73
3D203CB09
3D203CB19
3D203DA20
3D203DA76
3D203DA85
3D203DA87
(57)【要約】
【課題】サスペンションタワーで部品を支持する場合に、合理的な構造でサスペンションタワーの剛性を確保する。
【解決手段】サスペンションタワー構造は、ダンパー50を支持するサスタワー6と、サスタワー6に固定される部品取付用のブラケット14とを備える。サスタワー6は、車体のフロントサイドフレーム8に接合されて上方に延びる湾曲状の側壁部20と、ダンパー50の上端部を支持する頂上部22とを含む。側壁部20には、膨出部分からなる一対の取付部24、26が形成されている。取付部24、26は、車幅方向と平行に延びる平面であってかつダンパー50の中心軸を通る平面と側壁部20とが交わることにより形成される仮想のラインL1を挟んで車両前後方向の互いに異なる側に形成されている。ブラケット14は、ラインL1を跨いで取付部24、26に固定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロントコンパートメント内の側方部に形成されてダンパーを支持するサスペンションタワーと、このサスペンションタワーに固定される部品取付用のブラケットとを備えた、車両のサスペンションタワー構造であって、
前記サスペンションタワーは、前記車体のフロントサイドフレームに接合されて上方に延びる湾曲状の側壁部と、当該側壁部の上端部に配置されて前記ダンパーの上端部を支持する頂上部とを含み、
前記側壁部には、車幅方向内側に向かって膨出する部分からなる、前記ブラケット用の一対の取付部が形成され、
前記一対の取付部は、前記ブラケットの取付面を有し、かつ、少なくとも各々の取付面が、車幅方向と平行に延びる平面であって前記ダンパーの中心軸を含む平面と前記側壁部とが交わることにより形成されるラインを挟んで車両前後方向の互いに異なる側に位置するように形成されており、
前記ブラケットは、前記ラインを跨ぐように配置されて前記一対の取付部に固定されている、ことを特徴とする車両のサスペンションタワー構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のサスペンションタワー構造において、
前記一対の取付部は、上下方向にオフセットされている、ことを特徴とする車両のサスペンションタワー構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両のサスペンションタワー構造において、
前記サスペンションタワーは、前記側壁部の上部から前記頂上部に亘る、少なくとも前記ラインに沿った断面が湾曲状に形成されている、ことを特徴とする車両のサスペンションタワー構造。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両のサスペンションタワー構造において、
前記ブラケットは、前記一対の取付部に固定される固定位置同士を結んだ線分に交差するように延びる稜線部を有している、ことを特徴とする車両のサスペンションタワー構造。
【請求項5】
請求項4に記載の車両のサスペンションタワー構造において、
前記ブラケットは、前記側壁部に沿う基準面部と、この基準面部から前記サスペンションタワー側に各々膨出するように形成された一対の固定部と、前記基準面部から反サスペンションタワー側に延びる部品組付部とを含み、
前記固定部は、その内底面の部分であって前記取付部に固定される固定面部と、前記基準面部と前記固定面部とを繋ぐ連結面部とを含み、前記基準面部及び前記固定面部と前記連結面部との境界部分に各々前記稜線部を備えている、ことを特徴とする車両のサスペンションタワー構造。
【請求項6】
請求項5に記載の車両のサスペンションタワー構造において、
前記部品組付部は、車両前後方向において前記一対の固定部の間に位置する、ことを特徴とする車両のサスペンションタワー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパー(ショックアブソーバ)等からの入力荷重を支持する、車両のサスペンションタワー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車体側部には、ダンパーやコイルスプリング等で構成されるサスペンション装置からの入力荷重を支持する、サスペンションタワー(ダンパーハウジング)が設けられている。
【0003】
周知の通り、サスペンションタワー(以下、サスタワーと略す)は、タイヤハウスに隣接してエンジンルーム(モータルーム)内に迫り出すように設けられる。エンジンルーム内では、サスタワーに沿って各種ワイヤハーネスが配索され、当該サスタワーでワイヤハーネスが支持される場合も多い。例えば特許文献1には、サスタワーの側壁部にブラケットを固定し、このブラケットを介してワイヤハーネスをサスタワーで支持する、ワイヤハーネスの配索構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-055686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブラケットを介してサスタワーでワイヤハーネスを支持する場合には、サスタワーにブラケットの取付部が形成され、この取付部にボルトナットでブラケットが締結される構造が採用される。取付部は、サスタワーの一部を湾曲(膨出)させるなどして形成されるため、ダンパーからの荷重入力の際に、構造上、取付部には応力が集中し易くなる。このような構造が直ちに車体強度に影響を与えることは殆ど無いが、サスタワーの剛性低下の要因の一つとなるため、サスペンション装置から過大な荷重が繰り返し入力すると、サスタワーが変形等することも考えられる。特に、ウエストラインから下側の領域を幅広として、比較的サイズ(径)の大きい車輪を装備する車両では、サスタワーの上下方向長及び前後方向長が共に長くなる傾向があるため、上記変形等を防止する観点から、サスタワーの剛性確保が重要となる。ワイヤハーネス以外の部材を、ブラケットを介してサスタワーで支持する場合も同様である。
【0006】
このような不都合を解消するために、補強部材によりサスタワーを補強することも考えられるが(例えば特開2009-35059号公報)、部品点数の増加による重量の増大やコストアップを伴うため、必ずしも望ましいとは言えない。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ブラケットを介してワイヤハーネス等の部品をサスペンションタワーで支持する構造において、合理的な構造でサスペンションタワーの剛性を確保することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る車両のサスペンションタワー構造は、車体のフロントコンパートメント内の側方部に形成されてダンパーを支持するサスペンションタワーと、このサスペンションタワーに固定される部品取付用のブラケットとを備えた、車両のサスペンションタワー構造であって、前記サスペンションタワーは、前記車体のフロントサイドフレームに接合されて上方に延びる湾曲状の側壁部と、当該側壁部の上端部に配置されて前記ダンパーの上端部を支持する頂上部とを含み、前記側壁部には、車幅方向内側に向かって膨出する部分からなる、前記ブラケット用の一対の取付部が形成され、前記一対の取付部は、前記ブラケットの取付面を有し、かつ、少なくとも各々の取付面が、車幅方向と平行に延びる平面であって前記ダンパーの中心軸を含む平面と前記側壁部とが交わることにより形成されるラインを挟んで車両前後方向の互いに異なる側に位置するように形成されており、前記ブラケットは、前記ラインを跨ぐように配置されて前記一対の取付部に固定されていることを特徴とする。
【0009】
このサスペンションタワー構造によれば、合理的な構造でサスペンションタワーの剛性を確保することが可能となる。すなわち、ダンパーからの荷重の入力により、サスペンションタワーには、車幅方向と平行に延びる平面であってダンパーの中心軸を含む平面と側壁部とが交わることにより形成されるライン(仮想ライン)に沿った領域に主に上下方向の力(荷重)が作用する。上記のサスペンションタワー構造では、ブラケット用の一対の取付部は、少なくともそれらの取付面が前記ラインを挟んで車両前後方向の互いに異なる側に位置するように設けられている。つまり、各取付部は、前記ライン上に存在しないか、存在するとしても膨出量が小さい部分となる(側壁部の変化量が小さい部分となる)。これにより、取付部への応力の集中が抑制乃至回避され、当該取付部に起因するサスペンションタワーの剛性低下が抑制される。
【0010】
しかも、前記ラインを跨ぐようにブラケットがサスペンションタワーの側壁部(取付部)に固定されているため、これにより、ブラケット自体がサスペンションタワーの補強部材として機能し、側壁部における前記ライン両側の領域の相対変位が抑制される。
【0011】
従って、前記ブラケットを介してワイヤハーネス等の部品をサスペンションタワーで支持するような場合、専用の補強部材を別途設けることなく、合理的にサスペンションタワーの剛性を確保することができる。
【0012】
上記のサスペンションタワー構造において、前記一対の取付部は、上下方向にオフセットされているのが好適である。
【0013】
この構造によれば、側壁部において前記ラインを挟んだ前後両側の領域が互いにねじれるように変形することが抑制される。よって、サスペンションタワーの剛性を確保する上でより有効となる。
【0014】
上記のサスペンションタワー構造においては、前記側壁部の上部から前記頂上部に亘る、少なくとも前記ラインに沿った断面が湾曲状に形成されているのが好適である。
【0015】
この構造によれば、側壁部の上部から頂上部に亘る部分に稜線部分が形成されていないため、当該部分において応力集中が起き難くい。よって、サスペンションタワーの剛性を確保する上でより有効となる。
【0016】
上記のサスペンションタワー構造において、前記ブラケットは、前記一対の取付部に固定される固定位置同士を結んだ線分に交差するように延びる稜線部を有しているのが好適である。
【0017】
この構造によれば、前記ラインを挟んで前後両側の側壁部がねじれるように変形することが抑制される。よって、サスペンションタワーの剛性を確保する上でより有効となる。
【0018】
この場合、前記ブラケットは、前記側壁部に沿う基準面部と、この基準面部から前記サスペンションタワー側に各々膨出するように形成された一対の固定部と、前記基準面部から反サスペンションタワー側に延びる部品組付部とを含み、前記固定部は、その内底面の部分であって前記取付部に固定される固定面部と、前記基準面部と前記固定面部とを繋ぐ連結面部とを含み、前記基準面部及び前記固定面部と前記連結面部との境界部分に各々前記稜線部を備えている。
【0019】
この構造によれば、ブラケットのうち、サスペンションタワー(取付部)に対して固定される固定面部がサスペンションタワー側にオフセットされているため、その分、取付部の膨出量を抑えることができる。つまり、ブラケットに組付けられる部品とサスペンションタワーとを一定距離だけ離間させる必要がある場合でも、取付部側の膨出量を抑えることが可能となる。従って、当該膨出量が大きい場合に比べ、取付部における応力集中を低減でき、サスペンションタワーの剛性を確保する上で有効となる。しかも、ブラケットには、基準面部及び前記固定面部と前記連結面部との境界部分に稜線部が設けられているため、当該稜線部による上記作用効果を併せて享受することも可能となる。
【0020】
この場合、前記部品組付部は、車両前後方向において前記一対の固定部の間に位置するのが好適である。
【0021】
上記のサスペンションタワー構造では、ブラケットがサスペンションタワー(側面部)の補強部材として機能する。そのため、当該ブラケットの一対の固定部の間に部品組付部が配置された上記構造によると、組付けられる部品の位置安定性が良いものとなる。
【発明の効果】
【0022】
上記の各態様に係る車両のサスペンションタワー構造によれば、サスペンションタワーでワイヤハーネス等の部品を支持する場合に、合理的な構造でサスペンションタワーの剛性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】車両のエンジンルーム内(右側部)の斜視図である。
図2】ワイヤハーネスを取外した状態の前記エンジンルーム内の斜視図である。
図3】前記エンジンルーム内においてサスペンションタワーを左方側から視た図(ブラケットを取付けた状態)である。
図4】前記エンジンルーム内においてサスペンションタワーを左方側から視た図(ブラケットを取外した状態)である。
図5】前記サスペンションタワーの断面図(図4のV-V線断面図)である。
図6】前記サスペンションタワーの断面図(図4のVI-VI線断面図)である。
図7】(a)~(c)はブラケットを示す図である。
図8】サスペンションタワーの変形を説明するための図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
図1は、車両(自動車)のエンジンルーム1を示す斜視図であり、主にエンジンルーム1内の右側部を示している。なお、エンジンルーム1は、車両(車体)に設けられるフロントコンパートメントの一例である。
【0026】
同図に示す車両の車体は、エンジンルーム1と図外の車室とを仕切るダッシュパネル2と、エンジンルーム1内に迫り出すように設けられた左右一対のサスペンションタワー6(以下、サスタワー6と略す)と、ダッシュパネル2の上側に配設された、車幅方向(左右方向)に延びるカウルパネル4等を備えている。図中のFr、Re、Le、Riは車体の前後左右の各方向を示している。
【0027】
ダッシュパネル2の前面下端部には、左右1対のフロントサイドフレーム8の後端部が結合されている。エンジンルーム1の左右両端部分には、前後方向に延びる左右一対のホイールエプロンレインフォースメント10(以下、エプロンレイン10と略す)が各々配設されてエンジンルーム1の左右両側壁を形成している。これら一対のエプロンレイン10は、下方に配設されたフロントサイドフレーム8の途中部分に、連結フレーム12を介して各々連結されている。フロントサイドフレーム8、エプロンレイン10及び連結フレーム12が協働してサスタワー6を車体に対して支持している。
【0028】
カウルパネル4、サスタワー6及び連結フレーム12に沿ってワイヤハーネス16が配されている。当該車両がハイブリッド車両である場合には、ワイヤハーネス16には、バッテリとインバータとを接続するハーネス等が含まれる。サスタワー6にはブラケット14が固定されており、ワイヤハーネス16の一部分(途中部分)が、このブラケット14を介してサスタワー6に支持されている。
【0029】
図2は、ワイヤハーネス16を取外した状態のエンジンルーム1内の斜視図であり、図3及び図4は、エンジンルーム1内においてサスタワー6を左方側から視た図である。なお、図3は、ブラケット14が固定された状態を、図4は、ブラケット14が取り外された状態を各々示している。
【0030】
サスタワー6は、エプロンレイン10から車幅方向内側(エンジンルーム1内)に迫り出すように形成されている。サスタワー6は、湾曲状の側壁部20と、頂上部22とを含む。側壁部20と頂上部22は、何れも鋼板からなるプレス加工部品からなり、これらが溶接により接合一体化されることによりサスタワー6が形成されている。
【0031】
側壁部20は、鉛直方向に対して上方がやや後側に傾斜する軸心を有するように湾曲した部分筒状の湾曲部20aと、その前端部から前方に張り出し、右側程上方に延びる前側フランジ部20bと、湾曲部20aの後端部から後方に張り出した後側フランジ部20cとが一体に形成されている。「部分筒状」とは、断面形状が筒の一部を形成するような湾曲した形状を意味する。側壁部20のうち、前側フランジ部20bは、連結フレーム12の後端側部分に接合されている。また、後側フランジ部20cの上半部分はエプロンレイン10の側壁部に接合され、下半部分は図外のホイールハウスの上部に接合されている。
【0032】
頂上部22は、部分筒状に形成された前記湾曲部20aの上端部を塞ぐように設けられている。頂上部22は、上端が略平坦なドーム型のダンパベース部22aと、ダンパベース部22aの右端部から右方に張り出し、前後方向に延びるフランジ部22bとを備えている。頂上部22のうち、ダンパベース部22aの周縁部(裾野部分)は側壁部20の内側に配置され、当該側壁部20に一体に接合されている。また、フランジ部22bは、エプロンレイン10に接合されている。
【0033】
図5及び図6は、サスタワー6の断面図であり、図5は、図4のV-V線に沿った断面図であり、図6は、図4のVI-VI線に沿った断面図である。
【0034】
図4図6中に仮想線で示すように、サスタワー6の内側には、ダンパー50(ショックアブソーバ)及びコイルスプリング52が配置されている。ダンパー50及びコイルスプリング52は、図外のロアアームと共にフロントサスペンション装置を構成するものであり、車両走行時に路面の凹凸による衝撃を吸収して、車体の振動を低減する機能を有する。当例の車両に搭載されるフロントサスペンション装置は、例えば、ダンパー50とコイルスプリング52とが一体化されたストラット式サスペンション装置である。
【0035】
ダンパー50の上端部分には、コイルスプリング52を支持するスプリングシート50aが結合されている。スプリングシート50aは、マウントラバーを介してサスタワー6の頂上部22(ダンパベース部22a)に下側から当接され、ボルトナットで当該ダンパベース部22aに締結されている。これにより、ダンパー50がサスタワー6(ダンパベース部22a)に組付けられている。つまり、ダンパー50はサスタワー6に支持されている。
【0036】
サスタワー6に支持されたダンパー50は、鉛直方向に対して上方がやや後側に傾斜するように傾いている。図3及び図4中に一点鎖線で示すラインL1は、車幅方向と平行に延びる平面であってダンパー50の中心軸を通る平面とサスタワー6とが交わることにより形成される仮想のラインを示している。従って、このラインL1は、図3及び図4では、ダンパー50の中心軸と同一視できる。
【0037】
図2図4に示すように、サスタワー6の側壁部20のうち、湾曲部20aには、ブラケット取付用の前後一対の取付部24、26が形成され、これら取付部24、26に前記ブラケット14が固定されている。
【0038】
取付部24、26は、何れも湾曲部20aに形成された膨出部分からなり、前側の取付部24(適宜、前側取付部24と称す)と後側取付部26(適宜、後側取付部26と称す)とは、前記ラインL1を挟んで互いに異なる側に設けられている。また、後側取付部26は、前側取付部24に対してやや下方にオフセットされている。このような取付部24、26の配置が、後述する通り、サスタワー6の剛性を確保する上で有効となっている。
【0039】
図4及び図6に示すように、取付部24、26は、平坦な取付面24a、26aを頂上部分に有した略錐台形状であり、各取付面24a、26aは、略同一の平面上に位置している。各取付面24a、26aには、ウエルドボルトからなる取付ボルトB(図4では省略)が、当該取付面24a、26aに対して垂直に突設されている。
【0040】
図7は、前記ブラケット14を示しており、(a)は、サスタワー6に固定された状態の斜視図(図2の要部拡大図)で、(b)は、正面図で、(c)は、側面図で各々ブラケット14を示している。
【0041】
ブラケット14は、板金のプレス成型部品である。ブラケット14は、平坦なベース面部30(本発明の「基準面部」に相当する)と、このベース面部30の前後両端に設けられた固定部34、36と、ベース面部30の下端部に設けられた第1部品組付部32と、ベース面部30の上端部に設けられた第2部品取付部38とを備える。
【0042】
固定部34、36は、ブラケット14のうち、サスタワー6(湾曲部20a)に固定される部分である。前側の固定部34(適宜、前側固定部34と称す)がサスタワー6の前側取付部24に、後側の固定部36(適宜、後側固定部36と称す)がサスタワー6の後側取付部26に各々固定される。
【0043】
固定部34、36は、ベース面部30からサスタワー6(側壁部20)側に各々膨出するように、例えば絞り加工により形成されている。これにより、前側固定部34は、ベース面部30からサスタワー6側にオフセットされた平坦な固定面部34aと、この固定面部34aとベース面部30とを繋ぐ連結面部34bとを有するとともに、連結面部34bとベース面部30との境界に稜線部341を、連結面部34bと固定面部34aとの境界に稜線部342を各々有している。固定面部34aには、前記取付ボルトBに対応した固定孔35が形成されている。
【0044】
後側固定部36も同様であり、ベース面部30からサスタワー6側にオフセットされた平坦な固定面部36aと、当該固定面部36aとベース面部30とを繋ぐ連結面部36bとを有するとともに、連結面部36bとベース面部30との境界に稜線部361を、連結面部36bと固定面部36aとの境界に稜線部362を各々有している。固定面部36aには、固定孔37が形成されている。
【0045】
固定部34、36に形成される稜線部341、342、361、362は、取付部24、26に対するブラケット14の固定位置、詳しくは、固定孔35、37の中心位置を結ぶ線分(直線のラインL2)に対して交差するように形成されている。
【0046】
ブラケット14は、図2及び図3に示すように、固定孔35、37に取付ボルトBを貫通させた状態で取付部24、26に固定部34、36が重ねられ、取付ボルトBに対してナットNが螺合されることより、サスタワー6(側壁部20)に締結されている。これにより、両取付部24、26に跨がった状態で、ブラケット14がサスタワー6に固定されている。
【0047】
第1部品組付部32は、前後方向において両固定部34、36の間に設けられている。第1部品組付部32は、ベース面部30から反サスタワー6側に向かって延びる短冊状に形成されており、その先端近辺には、ワイヤハーネス16の取付孔32aが形成されている。
【0048】
第2部品取付部38は、ベース面部30から反サスタワー6側にオフセットされた取付面部38aと、この取付面部38aとベース面部30とを繋ぐ連結面部38bとを有している。取付面部38aは、後方かつ右方に向かって屈曲しながら延びている。取付面部38aの前端近辺、中央近辺、及び後端近辺(右端近辺)には、ワイヤハーネス16の取付孔39が各々形成されている。
【0049】
図1に示すように、ワイヤハーネス16は、その途中部分に組込まれた配線固定用パーツ16aが、取付孔32aを用いてボルトナットで第1部品組付部32に固定されることにより、当該第1部品組付部32に固定されている。また、ワイヤハーネス16は、その一部が、第2部品取付部38の取付孔39に装着されたクリップで保持されることにより、当該第2部品取付部38に固定されている。これにより、ワイヤハーネス16は、ブラケット14を介してサスタワー6に支持されている。
【0050】
[作用効果]
上記車両では、サスタワー6の側壁部20に膨出部分からなる取付部24、26が形成され、これら取付部24、26に固定されたブラケット14を介してハーネス16がサスタワー6で支持されている。このようなサスタワー構造では、何ら対策が施されていない場合には、ダンパーからサスタワーに荷重が入力した際に、取付部に応力が集中してサスタワーの剛性を低下させるおそれがある。
【0051】
この点に鑑み、実施形態のサスタワー構造では、既述の通り、取付部24、26が前記ラインL1を挟んで互いに前後の異なる側に設けられている(図3及び図4)。このラインL1は、上記の通り、車幅方向と平行に延びる平面であってダンパー50の中心軸を通る平面とサスタワー6とが交わることにより形成されるライン(仮想ライン)である。ダンパー50からサスタワー6に入力した荷重は、側壁部20のうち、主にこのラインL1に沿った領域に作用する。そのため、このラインL1の前後両側に取付部24、26が振り分けられている、実施形態のサスタワー構造によれば、取付部24、26に応力が集中することが回避され、当該応力集中によるサスタワー6の剛性低下が抑制される。しかも、ブラケット14が両取付部24、26に跨がってブラケット14が固定されているので、ブラケット14自体がサスタワー6の補強部材として機能し、側壁部20におけるラインL1両側の領域の相対変位が抑制される。
【0052】
従って、実施形態のサスタワー構造によれば、ブラケット14を介してサスタワー6でワイヤハーネス16を支持する構造において、専用の補強部材を別途設けることなく、合理的にサスタワー6の剛性を確保することができる。
【0053】
また、実施形態のサスタワー構造では、取付部24、26が、上下方向にオフセットされているため、側壁部20において前記ラインL1を挟んだ前後両側の領域が互いにねじれるように変形することが抑制される。すなわち、例えば図8中に矢印で示すように、ラインL1の前側領域では、上部が左方に下部が右方に各々向かうように側壁部20が変位(実線矢印)し、ラインL1の後側領域では、逆に上部が右方に下部が左方に向かうように側壁部20が変位(破線矢印)することが抑制される。よって、上記実施形態のサスタワー構造によれば、この点でも、サスタワー6の剛性が確保される。
【0054】
また、上記説明では言及していないが、図5に示すように、サスタワー6のうち、側壁部20の上部から頂上部22に亘る領域(符号Rで示す領域)は、少なくとも前記ラインL1に沿った断面が湾曲状に形成されている。このような構造によると、側壁部20の上部から頂上部22に亘る部分に稜線部分が形成されないため、当該部分において応力集中が起き難くなり、当該応力集中に起因するサスタワー6の変形が抑制される。よって、上記実施形態のサスタワー構造によれば、この点でも、サスタワー6の剛性が確保される。
【0055】
さらに、上記実施形態のブラケット14によれば、サスタワー6に対して固定される固定面部34a、36aがベース面部30に対してサスタワー6側にオフセットされているため、その分、サスタワー6(側壁部20)側における取付部24、26の膨出量h1(図5(c)参照)を抑えることが可能となる。つまり、ワイヤハーネス16とサスタワー6とを一定距離だけ離間させる必要がある場合、固定面部34a、36aのオフセット量h2だけ、取付部24、26側の膨出量h1を小さく抑えることが可能となる。従って、取付部24の当該膨出量h1が大きいに比べて、応力集中による取付部24、26の変形を抑制することが可能となる。よって、上記実施形態のサスタワー構造によれば、この点でも、サスタワー6の剛性が確保されると言える。
【0056】
しかも、ブラケット14は、取付部24、26に対する固定位置(固定孔35、37の中心位置)同士を結ぶラインL2に対して交差するよう形成された稜線部341、342、361、362を有している(図5(b))。これら稜線部341、342、361、362は、側壁部20のねじれ変形(図2中の矢印参照)、すなわち、既述のように、ラインL1を挟んだ前後両側の領域が互いにねじれるように変形することを抑制する。よって、実施形態のサスタワー構造によれば、この点もサスタワー6の剛性確保に寄与する。
【0057】
また、上記ブラケット14では、第1部品組付部32が、車両前後方向において両固定部34、36の間に位置する。このようにブラケット14のうち、サスタワー6(側壁部20)へ固定される固定部34、36の間に第1部品組付部32が備えられた構造によると、当該第1部品組付部32の位置が変位し難く、よって当該第1部品組付部32に支持されるワイヤハーネス16の位置的安定性が向上するという利点もある。
【0058】
[変形例等]
以上説明した車両のサスタワー構造は、本発明に係るサスペンションタワー構造の好ましい実施形態の例示であって、サスペンションタワー6やこれに固定されるブラケット14のより具体的な構造は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0059】
例えば、実施形態では、サスタワー6(側壁部20)の一対の取付部24、26は、前記ラインL1を挟んで車両前後方向の互いに異なる側に位置する。しかし、取付部24、26は、少なくともそれらの取付面24a、26aがラインL1を挟んで車両前後方向の互いに異なる側に位置するように設けられていれば、取付部24、26の全体が完全にラインL1を挟んで車両前後方向の互いに異なる側に位置していることは求められない。つまり、取付部24、26は、ラインL1上に存在しないか、存在するとしても膨出量が小さい部分であればよい。この構成によれば、取付部24、26への応力集中を抑制乃至回避することが可能であり、当該取付部24、26に起因するサスタワー6の剛性低下を抑制することが可能となる。
【0060】
また、実施形態では、ブラケット14は、サスタワー6(側壁部20)に形成された一対の取付部24、26に固定されているが、ブラケット14は、3つ以上の取付部に対して固定される構造であってもよい。この場合、一対の取付部は、少なくとも各々の取付面がラインL1を挟んで車両前後方向の互いに異なる側に位置し、残りの取付部は、少なくともその取付面がラインL1上に位置しないように設けられていればよい。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジンルーム
6 サスペンションタワー
14 ブラケット
16 ワイヤハーネス
20 側壁部
22 頂上部
24、26 取付部
24a、26a 取付面
32 第1部品組付部
38 第2部品取付部
50 ダンパー
L1、L2 ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8