(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185303
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】溶融押出ラミネート用アンカーコート剤及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20221207BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20221207BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20221207BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20221207BHJP
C08G 18/54 20060101ALI20221207BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20221207BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/00 D
C08G18/73
C08G18/28 015
C08G18/54
C08G18/65
B32B27/40
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092892
(22)【出願日】2021-06-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】大内 将郁
【テーマコード(参考)】
4F100
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK01C
4F100AK51A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100EH23C
4F100GB15
4F100JA06A
4F100JA07A
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4F100JK03
4F100JK06
4F100JL14
4J034BA08
4J034BA09
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4J034CC12
4J034CC61
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4J034EA11
4J034HA01
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4J034HA14
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034RA05
4J034RA06
4J038DG001
4J038KA06
4J038MA14
4J038NA12
4J038NA27
4J038PB04
4J038PC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バイオマス由来の原料を用いた、良好な接着強度を有する積層体が得られる溶融押出ラミネート用アンカーコート剤を提供する。
【解決手段】ポリオール組成物(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含み、ポリオール組成物(A)が、下記式(1)で表されるポリオール(a1)と下記式(2)で表される化合物(a2)とを含むバイオマスポリオール組成物を含み、化合物(a2)の割合がGPCにおいて3~30面積%であり、ポリイソシアネート(B)が脂肪族ポリイソシアネート(b1)を含み、(B)中の(b1)の割合が20質量%以上であり、(A)/(B)で表される質量比が1/99~90/10であるアンカーコート剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール組成物(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含み、
前記ポリオール組成物(A)が、下記式(1)で表されるポリオール(a1)と下記式(2)で表される化合物(a2)とを含むバイオマスポリオール組成物を含み、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる前記バイオマスポリオール組成物全体に対する前記化合物(a2)の割合が、3~30面積%であり、
前記ポリイソシアネート(B)が、脂肪族ポリイソシアネート(b1)を含み、
前記ポリイソシアネート(B)の総質量に対する前記脂肪族ポリイソシアネート(b1)の割合が、20質量%以上であり、
前記ポリオール組成物(A)/前記ポリイソシアネート(B)で表される質量比が、1/99~90/10であることを特徴とする溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
【化1】
ただし、R
1は炭素数15の直鎖炭化水素基を示し、
R
2は水素原子又は置換基を示し、
R
3は水素原子又は炭素数が1~8のアルキル基を示し、
nは0以上の数を示す。
【請求項2】
前記バイオマスポリオール組成物が、カシューナッツシェルリキッドを原料とする請求項1に記載の溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
【請求項3】
前記バイオマスポリオール組成物の25℃における粘度が1000mPa・s以上、数平均分子量が500以上である請求項1又は2に記載の溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
【請求項4】
前記バイオマスポリオール組成物の水酸基価が130mgKOH/g以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
【請求項5】
前記バイオマスポリオール組成物の25℃における粘度が10000mPa・s以上である請求項1~4のいずれか一項に記載の溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
【請求項6】
前記脂肪族ポリイソシアネート(b1)が、3官能脂肪族イソシアネートを含む請求項1~5のいずれか一項に記載の溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート(B)が、前記脂肪族ポリイソシアネート(b1)のみからなる請求項1~6のいずれか一項に記載の溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
【請求項8】
前記ポリオール組成物(A)/前記ポリイソシアネート(B)で表される質量比が、10/90~40/60である請求項1~7のいずれか一項に記載の溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
【請求項9】
基材と、前記基材上に設けられたアンカーコート層と、前記アンカーコート層上に溶融押出ラミネートにより設けられた樹脂層とを備え、
前記アンカーコート層が、請求項1~8のいずれか一項に記載の溶融押出ラミネート用アンカーコート剤から形成された層であることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融押出ラミネート用アンカーコート剤及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム材及びシート材(以下、これらをまとめてフィルム材とも記す。)には、その用途等に応じて、種々の特性が求められることがあり、1種のフィルム材では、要求特性の全てを満足することが困難なことも多い。そのため、複数種のフィルム材等を積層して、それぞれの材料の長所を生かしたり短所を補ったりすることによって種々の特性を満たした積層体が様々な分野で広く用いられている。
例えば食品、医薬品、化粧品等を包装する包装材(包装容器、包装資材等)には、プラスチックフィルム、紙、布、及び金属箔等から選ばれる複数の層を積層したフィルム状又はシート状の積層体(ラミネートフィルム)が多く用いられている。
【0003】
ラミネートフィルムを製造する際の一つの手法として、プラスチックフィルム等のフィルム材に、溶融状態の樹脂を押し出して積層する溶融押出ラミネート法が知られている。
一般的に、溶融押出ラミネート法によりラミネートフィルム(溶融押出ラミネートフィルム)を製造する場合、押し出される樹脂が積層される側の材料(被積層材)と、押し出される樹脂で形成される樹脂層との間には、高い接着強度が要求される。そのため、被積層材と押し出される樹脂との間には、良好な接着強度を示すように、アンカーコート層と称される接着層が設けられることがある。
溶融押出ラミネートフィルムの製造においてアンカーコート層の形成に用いられるアンカーコート剤としては、ポリオールとポリイソシアネートとを含むものが知られている(特許文献1)。
【0004】
近年、環境中の二酸化炭素量の増加を抑制するため、化石資源由来の原料を、植物等のバイオマス由来の原料で代替した製品への要望が高まっている。
バイオマス由来の原料の一つとして、カシューナッツシェルリキッドやその誘導体が知られている。カシューナッツシェルリキッドの誘導体の一つとして、カシューナッツシェルリキッドをポリオール樹脂化したものが知られている(特許文献2~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-218438号公報
【特許文献2】特表2005-511465号公報
【特許文献3】特表2016-540071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が、アンカーコート剤のポリオールとして、カシューナッツシェルリキッドを原料とするポリオール樹脂を用いることを検討したところ、充分な接着強度が得られないことがあった。
本発明は、バイオマス由来の原料を用いた、良好な接着強度を有する積層体が得られる溶融押出ラミネート用アンカーコート剤及びこれを用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
[1]ポリオール組成物(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含み、
前記ポリオール組成物(A)が、下記式(1)で表されるポリオール(a1)と下記式(2)で表される化合物(a2)とを含むバイオマスポリオール組成物を含み、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる前記バイオマスポリオール組成物全体に対する前記化合物(a2)の割合が、3~30面積%であり、
前記ポリイソシアネート(B)が、脂肪族ポリイソシアネート(b1)を含み、
前記ポリイソシアネート(B)の総質量に対する前記脂肪族ポリイソシアネート(b1)の割合が、20質量%以上であり、
前記ポリオール組成物(A)/前記ポリイソシアネート(B)で表される質量比が、1/99~90/10であることを特徴とする溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
【0008】
【0009】
ただし、R1は炭素数15の直鎖炭化水素基を示し、
R2は水素原子又は置換基を示し、
R3は水素原子又は炭素数が1~8のアルキル基を示し、
nは0以上の数を示す。
[2]前記バイオマスポリオール組成物が、カシューナッツシェルリキッドを原料とする前記[1]の溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
[3]前記バイオマスポリオール組成物の25℃における粘度が1000mPa・s以上、数平均分子量が500以上である前記[1]又は[2]の溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
[4]前記バイオマスポリオール組成物の水酸基価が130mgKOH/g以上である前記[1]~[3]のいずれかの溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
[5]前記バイオマスポリオール組成物の25℃における粘度が10000mPa・s以上である前記[1]~[4]のいずれかの溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
[6]前記脂肪族ポリイソシアネート(b1)が、3官能脂肪族イソシアネートを含む前記[1]~[5]のいずれかの溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
[7]前記ポリイソシアネート(B)が、前記脂肪族ポリイソシアネート(b1)のみからなる前記[1]~[6]のいずれかの溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
[8]前記ポリオール組成物(A)/前記ポリイソシアネート(B)で表される質量比が、10/90~40/60である前記[1]~[7]のいずれかの溶融押出ラミネート用アンカーコート剤。
[9]基材と、前記基材上に設けられたアンカーコート層と、前記アンカーコート層上に溶融押出ラミネートにより設けられた樹脂層とを備え、
前記アンカーコート層が、前記[1]~[8]のいずれかの溶融押出ラミネート用アンカーコート剤から形成された層であることを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バイオマス由来の原料を用いた、良好な接着強度を有する積層体が得られる溶融押出ラミネート用アンカーコート剤及びこれを用いた積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
〔溶融押出ラミネート用アンカーコート剤〕
本発明の一態様に係る溶融押出ラミネート用アンカーコート剤(以下、単に「アンカーコート剤」とも記す。)は、ポリオール組成物(A)とポリイソシアネート(B)とを含む。
本態様のアンカーコート剤は、必要に応じて、ポリオール組成物(A)及びポリイソシアネート(B)以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0014】
<ポリオール組成物(A)>
ポリオール組成物(A)は、特定のバイオマスポリオール組成物を含む。
本発明において「ポリオール組成物」とは、ポリオールのみからなる組成物、又はポリオール及びモノオールからなる組成物である。「バイオマスポリオール組成物」とは、構成成分(ポリオール、モノオール)がバイオマス由来であるポリオール組成物である。
ポリオール組成物(A)は、バイオマスポリオール組成物に加えて、バイオマスに由来しないポリオール(以下、「他のポリオール」とも記す。)を含んでいてもよい。
【0015】
バイオマスポリオール組成物の含有量は、アンカーコート剤のバイオマス比率を高める観点から、ポリオール組成物(A)の総質量に対し、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0016】
(バイオマスポリオール組成物)
バイオマスポリオール組成物は、下記式(1)で表されるポリオール(a1)と下記式(2)で表される化合物(a2)とを含む。化合物(a2)は、カルダノールである。
【0017】
【0018】
R1は炭素数15の直鎖炭化水素基を示す。直鎖炭化水素基は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。不飽和炭化水素基としては、例えば、2重結合を1~3個有するものが挙げられる。R1の具体例としては、-(CH2)14CH3、-(CH2)6CH=CH(CH2)6CH3、-(CH2)6CH=CHCH2CH=CH(CH2)3CH3、-(CH2)6CH=CHCH2CH=CH(CH2)2CH=CH2が挙げられる。
式(1)中の(n+2)個のR1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0019】
R2は水素原子又は置換基を示す。置換基は、水素原子以外の原子又は原子団を示す。
R2における置換基としては、特に限定されず、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、置換基を有していてもよい炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、シアノ基、カルバモイル基、イミド基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、アゾ基、ウレア基、ウレタン基、スルホ基、チオール基、シリル基、ホスフィノ基等が挙げられる。
炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、アラルキル基(ベンジル基等)等が挙げられる。炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)ヒドロキシ基、アルコキシ基、エーテル基、エステル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、シアノ基、カルバモイル基、イミド基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、アゾ基、ウレア基、ウレタン基、スルホ基、チオール基、シリル基、ホスフィノ基等が挙げられる。炭化水素基が有する置換基は1つでも2つ以上でもよい。
式(1)中の(n+2)個のR2は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0020】
R3は水素原子、又は炭素数が1~8のアルキル基を示す。
nは0以上の数を示す。nは、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。nは、1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。nが上記下限値以上であれば、バイオマスポリオール組成物の数平均分子量が後述する好ましい下限値以上となりやすい。nが上記上限値以下であれば、バイオマスポリオール組成物の数平均分子量が後述する好ましい上限値以下となりやすい。
【0021】
ポリオール(a1)は、例えば、下記反応式に示すように、化合物(a2)とアルデヒド(下記式(3))とを反応(縮合反応)させ、得られた縮合物(下記式(4))とエポキシ化合物(下記式(5))とを反応(付加反応)させる方法により合成される。縮合反応及び付加反応は公知の方法により実施できる。
【0022】
【0023】
バイオマスポリオール組成物は、ポリオール(a1)以外のポリオールや化合物(a2)以外のモノオールをさらに含んでいてもよい。ポリオール(a1)以外のポリオールとしては、バイオマス由来のものであればよく、例えば、カルドール、2-メチルカルドールが挙げられる。化合物(a2)以外のモノオールとしては、バイオマス由来のものであればよく、例えば、アナカルド酸が挙げられる。
【0024】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」とも記す。)によるバイオマスポリオール組成物全体(100面積%)に対する化合物(a2)の割合は、3~30面積%であり、5~20面積%が好ましく、7~15面積%がより好ましい。化合物(a2)の割合が上記範囲内であれば、良好な接着強度を有する積層体が得られる。
GPCの測定条件は、後述する実施例に記載のとおりである。
【0025】
GPCによるバイオマスポリオール組成物全体に対するポリオール(a1)の割合は、積層体の接着強度の観点から、10~97面積%が好ましく、50~96面積%がより好ましく、75~95面積%がさらに好ましく、80~93面積%が特に好ましい。
【0026】
GPCによるバイオマスポリオール組成物全体に対するポリオール(a1)及び化合物(a2)の合計の割合は、積層体の接着強度の観点から、70面積%以上が好ましく、80面積%以上がより好ましく、90面積%以上がさらに好ましく、100面積%であってもよい。
【0027】
バイオマスポリオール組成物の25℃における粘度は、1500mPa・s以上が好ましく、2000mPa・s以上がより好ましく、10000mPa・s以上がさらに好ましい。粘度が上記下限値以上であれば、積層体の易引き裂き性がより優れる傾向がある。
バイオマスポリオール組成物の25℃における粘度は、150000mPa・s以下が好ましく、130000mPa・s以下がより好ましく、90000mPa・s以下がさらに好ましく、50000以下が特に好ましい。粘度が上記上限値以下であれば、包材の切れ性がより優れる傾向がある。
バイオマスポリオール組成物の粘度は、B型粘度計により測定される。以下、特に記載がなければ、粘度は25℃における値を示すものとする。
バイオマスポリオール組成物の粘度は、化合物(a2)の割合、数平均分子量等により調整できる。
【0028】
バイオマスポリオール組成物の数平均分子量(以下、「Mn」とも記す。)は、500以上が好ましく、750以上がより好ましく、1000以上がさらに好ましい。Mnが上記下限値以上であれば、基材との密着性がより優れる傾向がある。
バイオマスポリオール組成物のMnは、500000以下が好ましく、300000以下がより好ましく、100000以下がさらに好ましく、10000以下が特に好ましく、5000以下が最も好ましい。Mnが上記上限値以下であれば、ラミネートフィルムとした際のカット性がより優れる傾向がある。
バイオマスポリオール組成物のMnは、GPCにより測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0029】
バイオマスポリオール組成物は、上述の好ましい粘度及び好ましいMnの両方を満たすことが好ましい。例えば、粘度が1500mPa・s以上、数平均分子量が1000以上であることが好ましい。
【0030】
バイオマスポリオール組成物の水酸基価は、130mgKOH/g以上が好ましく、145mgKOH/g以上がより好ましく、160mgKOH/g以上がさらに好ましい。水酸基価が上記下限値以上であれば、積層体の接着強度がより優れる傾向がある。
バイオマスポリオール組成物の水酸基価は、250mgKOH/g以下が好ましく、230mgKOH/g以下がより好ましく、210mgKOH/g以下がさらに好ましい。水酸基価が上記上限値以下であれば、耐加水分解性がより優れる傾向がある。
水酸基価は、ASTM D4274により求められる。
【0031】
バイオマスポリオール組成物は、原料コスト、排出二酸化炭素量の削減の観点から、カシューナッツシェルリキッド(Cashew Nut Shell Liquid)(以下、「CNSL」とも記す。)を原料とすることが好ましい。
CNSLは、カシューナッツの殻から得られるオイル状の液体である。本明細書におけるCNSLは、通常、カシューナッツの殻から取り出された粗CNSLを蒸留したものであり、化合物(a2)を含む。化合物(a2)のほかに、カルドール、メチルカルドール、アナカルド酸等を含むことがある。CNSLは種々のグレードのものが市販されており、化合物(a2)単体に比べて安価に入手可能である。
前記したポリオール(a1)の合成において、出発原料としてCNSLを用いると、ポリオール(a1)を含む反応物が得られる。反応物が未反応の化合物(a2)を前記した割合で含む場合は、得られた反応物をそのままバイオマスポリオール組成物として用いることができる。反応物に化合物(a2)等を添加してバイオマスポリオール組成物としてもよい。
【0032】
(他のポリオール)
他のポリオールとしては、低分子ポリオール、高分子ポリオール等が挙げられる。低分子ポリオールとしては、多価(2価以上の)アルコール等が挙げられる。高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール(別名プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、及び1,4-シクロヘキサンジオール等の脂環構造を有するジオール;1,4-ベンゼンメタノール、1,3-ベンゼンメタノール、及び1,4-ジヒドロキシベンゼン等の芳香族ジオール;グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びソルビトール等の3価以上のアルコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸と、多価アルコール又は第2~3級アミン類との脱水重縮合反応で得られる、ポリエステルポリオール又はポリエステルアミドポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールの製造に用い得る多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸;並びにトリメリット酸等のポリカルボン酸;並びにそれらの酸エステル;並びにそれらの酸無水物等が挙げられる。ポリエステルポリオールの製造に用い得る多価アルコールとしては、例えば、上述した多価アルコールの具体例等が挙げられる。ポリエステルアミドポリオールの製造に用い得る第2~3級アミン類の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、及びイソホロンジアミン等の低分子アミン化合物等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子アルコール化合物及び低分子アミノアルコール化合物等を開始剤として、ε-カプロラクトン及びγ-バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーを開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオールを用いることもできる。
【0035】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、開始剤に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、並びにテトラヒドロフラン等を付加重合(開環重合)させて得られるものが挙げられる。開始剤としては、例えば、上述の多価アルコールのほか、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、及びジエチレントリアミン等の低分子アミン化合物等が使用され得る。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(別名ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(別名ポリプロピレングリコール)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、及びソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
【0036】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前述の多価アルコールとホスゲンとの脱塩酸反応で得られるもの、低分子アルコール化合物と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0037】
高分子ポリオールの重量平均分子量(以下、「Mw」とも記す。)は、5,000~100,000が好ましく、8,000~80,000がより好ましく、10,000~60,000がさらに好ましい。
ポリオールのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0038】
<ポリイソシアネート(B)>
ポリイソシアネート(B)は、脂肪族ポリイソシアネート(b1)を含む。
ポリイソシアネート(B)は、脂肪族ポリイソシアネート(b1)以外の他のポリイソシアネートをさらに含んでいてもよい。
【0039】
ポリイソシアネート(B)の総質量に対する脂肪族ポリイソシアネート(b1)の割合は、20質量%以上である。脂肪族ポリイソシアネート(b1)の割合が20質量%以上であれば、積層体の接着強度、易引き裂き性に優れる。
ポリイソシアネート(B)の総質量に対する脂肪族ポリイソシアネート(b1)の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。すなわち、ポリイソシアネート(B)が、脂肪族ポリイソシアネート(b1)のみからなることが特に好ましい。
【0040】
ポリイソシアネート(B)の総質量に対する他のポリイソシアネートの割合は、0~50質量%が好ましく、0~30質量%がより好ましい。
【0041】
(脂肪族ポリイソシアネート(b1))
脂肪族ポリイソシアネート(b1)としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の2官能脂肪族ポリイソシアネート;2官能脂肪族ポリイソシアネートのアダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体及びアロファネート体が挙げられる。これらの脂肪族ポリイソシアネートは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
脂肪族ポリイソシアネート(b1)としては、3官能脂肪族イソシアネートが好ましい。脂肪族ポリイソシアネート(b1)が3官能脂肪族イソシアネートを含むと、積層体の接着強度、易引き裂き性がより優れる傾向がある。
3官能脂肪族イソシアネートとしては、例えば、HDIのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体及びアロファネート体が挙げられる。
【0043】
(他のポリイソシアネート)
他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、及び3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;芳香族ジイソシアネートのアダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体及びアロファネート体が挙げられる。
【0045】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、水素添加トリレンジイソシアネート(水添TDI)、水素添加キシレンジイソシアネート(H6XDI)、及び水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)等の脂環族ジイソシアネート;脂環族イソシアネートのアダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体及びアロファネート体が挙げられる。
【0046】
他のポリイソシアネートとしては、3官能イソシアネート(3官能芳香族イソシアネート、3官能脂環族イソシアネート等)が好ましい。ポリイソシアネート(B)が3官能イソシアネート化合物を含むと、積層体の接着強度、易引き裂き性がより優れる傾向がある。
3官能イソシアネート化合物としては、例えば、TDI、XDI、IPDI又はH6XDIのTMPアダクト体が挙げられる。
【0047】
<他の成分>
アンカーコート剤は、液状媒体を含んでいてもよい。アンカーコート剤は通常、液状媒体を含む状態で被積層材に塗布される。
液状媒体としては、特に限定されず、アンカーコート層が設けられる対象となる被積層材の材質やアンカーコート剤を用いて製造される積層体の用途等に応じて適宜選択することができる。
液状媒体としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、及び酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、及びイソプロパノール(IPA)等のアルコール系溶剤;並びに水等が挙げられる。これらの液状媒体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
アンカーコート剤は、種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、触媒、接着付与剤、粘着付与剤、表面調整剤、シランカップリング剤、顔料、染料、分散剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、架橋剤、無機粒子、紫外線吸収剤、光安定剤、界面活性剤、防腐剤、及び防錆剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
アンカーコート剤において、ポリオール組成物(A)/ポリイソシアネート(B)で表される質量比(以下、「A/B比」とも記す。)は、1/99~90/10であり、5/95~60/40が好ましく、10/90~40/60がより好ましい。A/B比が上記範囲内であれば、積層体の接着強度、易引き裂き性に優れる。
【0050】
ポリオール組成物(A)とポリイソシアネート(B)との合計の含有量は、アンカーコート剤の固形分全体の質量に対し、10質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0051】
アンカーコート剤中の液状媒体の含有量は、特に限定されず、アンカーコート剤の固形分濃度に応じて調節できる。
アンカーコート剤中の添加剤の含有量は、例えば、アンカーコート剤の固形分全体の質量に対し、0~90質量%であってよく、0~70質量%であってよい。
【0052】
アンカーコート剤の固形分濃度は特に限定されず、被積層材にアンカーコート層を設ける際の印刷等の手法に応じて、適当な粘度となるように調節できる。濃縮した(濃厚な)アンカーコート剤を用意しておき、被積層材に塗布する際に上述した液状媒体で希釈して使用してもよい。
被積層材に塗布するときのアンカーコート剤の固形分濃度は、アンカーコート剤の総質量に対し、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、7~12質量%がさらに好ましい。
【0053】
本態様のアンカーコート剤は、溶融押出ラミネート用であり、溶融押出ラミネート法による積層体の製造に用いることができる。
溶融押出ラミネート法による積層体の製造においては、樹脂を溶融させて押し出し、押し出された樹脂を被積層材に積層する。アンカーコート剤は、押し出された樹脂と被積層材との間に設けられるアンカーコート層を形成する。典型的には、押し出された樹脂と被積層材を積層する前に、被積層材にアンカーコート剤を塗布し、アンカーコート層を形成する。
積層体及びその製造方法については後で詳しく説明する。
【0054】
本態様のアンカーコート剤を用いて得られる積層体は、良好な接着強度を示す。また、易引き裂き性も良好であり、積層体を手で容易に引き裂くことができる。易引き裂き性が良好であれば、例えば、積層体で構成された包装袋を手で容易に開封できる。
【0055】
〔積層体〕
図1に、本態様の積層体の一例を示す。なお、
図1における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
この例の積層体10は、基材11と、基材11上に設けられたアンカーコート層13と、アンカーコート層13上に溶融押出ラミネートにより設けられた樹脂層15とを備える。
本態様の積層体は、基材11とアンカーコート層13の間にインキ層を備えてもよく、樹脂層15上に樹脂フィルムを備えてもよい。
【0056】
<基材>
基材11は、押し出された樹脂が積層される被積層材である。
基材11としては、プラスチックフィルム、紙、布、金属箔等の各種のフィルム材が挙げられ、プラスチックフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶性ポリエチレンテレフタレート(A-PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリ乳酸等のポリエステルフィルム;低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンフィルム;セロファン等のセルロースフィルム;ポリスチレン(PS)フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂フィルム;エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂フィルム;ポリアミド(Ny)フィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリイミドフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリエステルフィルム及びNyフィルムが好ましく、PETフィルム及びNyフィルムがより好ましい。
上述のプラスチックフィルムとしては、例えば、二軸延伸PPフィルム及び無延伸PPフィルム等のように、延伸及び無延伸のいずれのプラスチックフィルムも用いることができる。プラスチックフィルムの表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0057】
基材11は多層であってもよい。多層の基材としては、例えば、プラスチックフィルム等のフィルム材の上に他の層が設けられたもの、複数のフィルム材が積層されたもの等が挙げられる。
他の層としては、例えば、蒸着層、インキ層、その他の各種のコート層が挙げられる。
蒸着層としては、アルミニウム蒸着等の金属蒸着層、アルミナ及びシリカ等の透明蒸着層の蒸着層等が挙げられる。
インキ層は、加飾等を目的として印刷等により設けられる。インキ層を形成するインキとしては、ウレタン樹脂系インキ、アクリル樹脂系インキ、シリコーン樹脂系インキ、アクリルウレタン樹脂系インキ、及びアクリルシリコーン樹脂系インキ等が挙げられる。インキ層を形成するインキは、1液型インキでもよく、2液硬化型インキでもよい。これらのなかでも、ウレタン樹脂系1液型インキ、及びウレタン樹脂系2液硬化型インキが好ましい。
【0058】
基材11の厚さは、5~500μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、10~60μmであることがさらに好ましい。
【0059】
<アンカーコート層>
アンカーコート層13は、前記したアンカーコート剤から形成された層である。
アンカーコート層13は、基材11上にアンカーコート剤を塗布し、乾燥させることで形成できる。アンカーコート層13の形成方法については後で詳しく説明する。
【0060】
アンカーコート剤の塗布量は、特に限定されないが、塗布面の単位面積当たりの乾燥(固形分)質量で、0.01~2g/m2が好ましく、0.05~1g/m2がより好ましく、0.1~0.5g/m2がさらに好ましい。
上記塗布量は、アンカーコート層13の単面積当たりの質量に相当する。
アンカーコート層13の厚さは、特に限定されず、例えば、0.01~1μm程度とすることができ、好ましくは0.01~0.5μm程度とすることができる。
【0061】
<樹脂層>
樹脂層15を形成する樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンが好ましい。なかでも、LDPE、LLDPE、HDPEが好ましく、LLDPEがより好ましい。
樹脂層15の厚さは、1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましく、10~100μmがさらに好ましい。
【0062】
<積層体の製造方法>
積層体10は、例えば、基材11上にアンカーコート剤を塗布し、乾燥させてアンカーコート層13を形成し、アンカーコート層13の上に溶融押出ラミネート法により樹脂層15を形成する方法により製造できる。
【0063】
アンカーコート剤の塗布方式としては、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、エアナイフコーティング、ワイヤーバーコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、及び浸漬コーティングが挙げられる。
アンカーコート剤は、積層体10を製造する際に用いられる溶融押出ラミネート設備に付設されているコーター(例えばロールコーター等)によって、塗布されることが好ましい。
塗布されたアンカーコート剤の乾燥温度は、特に限定されず、例えば、40~200℃の範囲とすることができる。乾燥時間も特に限定されず、例えば、1~600秒の範囲とすることができる。
【0064】
基材11上に設けられたアンカーコート層13上への樹脂層15の形成は、公知の溶融押出ラミネート法により行うことができる。
溶融押出ラミネート法では、例えば、樹脂層を形成する樹脂(熱可塑性樹脂)を加熱して溶融させ、フィルム状に押し出し、押し出された溶融物を、アンカーコート層13上に積層し、冷却する。押し出された溶融物をアンカーコート層13上に積層し、さらにその上に別の樹脂フィルムを貼り合わせる方法(いわゆる溶融押出サンドイッチラミネート法や溶融押出タンデムラミネート法)をとることも可能である。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、樹脂層15を形成する樹脂と同様のものが挙げられる。
【0065】
積層体10は、例えば、包装材として用いることができる。
包装材の用途としては、例えば、食品、飲料品、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、及び化学薬品等を内容物とする各種包装容器、並びにフィルム及び紙等の各種包装資材等が挙げられる。包装材が用いられる用途として、さらには、電子部品、電気部品、電気製品、自動車部品、各種のシート及びカード、並びに製品に設けられるラベル及びタグ等も挙げられる。
包装材の具体的な態様としては、例えば、紙箱、包装紙、包装フィルム、包装ラベル、包装袋、並びにプラスチックケース及びプラスチックボトル等のプラスチック容器等が挙げられる。これらのなかでも、包装袋がより好ましい。包装袋の好適な用途としては、例えば、食品用包装袋、医薬品用包装袋、及び化粧品用包装袋等が挙げられる。
【0066】
なお、本態様の積層体は、図示例のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例0067】
以下、実施例によって本発明を詳細に示す。ただし、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の文中において「部」及び「%」との記載は、特に断らない限り、質量基準(それぞれ「質量部」及び「質量%」)である。
【0068】
〔測定方法〕
<水酸基価(OH価)>
ASTM D4274に規定の方法により測定した。
【0069】
<粘度>
ASTM D2196に規定の方法により測定した。
【0070】
<数平均分子量(Mn)>
GPC分析により測定した。GPCの測定条件は後述する。
【0071】
<バイオコンテント量>
ASTM D6866に規定の方法により測定した。
【0072】
<含水量>
Karl-Fischer法により測定した。
【0073】
<カルダノール量>
バイオマスポリオール組成物について、以下の条件でGPC測定を行い、全ピーク面積の合計(バイオマスポリオール組成物全体)に対する化合物(a2)(カルダノール)のピーク面積の割合(%)を求め、その値をカルダノール量とした。
(GPC測定条件)
装置名:日立ハイテクサイエンス社製Chromaster、
カラム: 東ソー社製TSKgel Super H1000、TSKgel Super H2000、TSKgel Super H3000を連結したもの、
試料溶媒:テトラヒドロフラン(HPLCグレード)、
溶液注入量:10μL、
流量:1mL/分、
測定温度:40℃、
検出装置:UV検出器(日立Chromaster 5410)、
基準物質:標準ポリスチレン。
【0074】
〔使用材料〕
<ポリオール組成物(A)>
以下のバイオマスポリオール組成物を用意した。各バイオマスポリオール組成物はいずれもCNSL由来である。各バイオマスポリオール組成物の特性を表1に示す。
A-1:カードライト社製「Cardlite NX-9015」。
A-2:カードライト社製「Cardlite NX-9006」。
A-3:カードライト社製「Cardlite LITE-9006」。
A-4:カードライト社製「Cardlite NX-9007」。
A-5:カードライト社製「Cardlite NX-5285」。
A-6:カードライト社製「Cardlite NX-9001」。
A-7:カードライト社製「Cardlite NX-9001LV」。
A-8:カードライト社製「Cardlite LITE-9001」。
A-9:カードライト社製「Cardlite NX-9005」。
これらのバイオマスポリオール組成物はそれぞれ、酢酸エチルで最終的な固形分濃度が50%となるように希釈して使用した。
【0075】
【0076】
<ポリイソシアネート(B)>
b1-1:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアダクト体(2官能、商品名「デュラネート D101」、旭化成社製)
b1-2:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のTMPアダクト体(3官能、商品名「タケネート D-160N」、三井化学社製)。
b2-1:トリレンジイソシアネート(TDI)のTMPアダクト体(3官能、商品名「タケネート D-103」、三井化学社製)。
b2-2:キシリレンジイソシアネート(XDI)のTMPアダクト体(3官能、商品名「タケネート D-110N」、三井化学社製)。
これらのポリイソシアネートはそれぞれ、酢酸エチルで最終的な固形分濃度が50%となるように希釈して使用した。
【0077】
〔実施例1~13、比較例1~15〕
<アンカーコート剤の調製>
表2~5に示す成分(単位:部)を混合し、十分に撹拌して、各アンカーコート剤(以下、「AC剤」とも記す。)を調製した。表2~5において、ポリオール組成物(A)及びポリイソシアネート(B)の量(部)は固形分換算の量を表す。
【0078】
<積層体の作製>
各AC剤を用いて、溶融押出ラミネート法(溶融押出サンドイッチラミネート法)により、以下に述べる積層構成を有する積層体を作製した。具体的には、溶融押出ラミネート設備を用いて、以下に述べる積層構成における被積層材の一方の表面全体に、AC剤を塗布量0.3g(乾燥質量)/m2で塗布した後、乾燥炉(温度80℃)にて酢酸エチルを蒸発させてAC剤を乾燥させ、アンカーコート層(以下、「AC層」とも記す。)を形成した。次いで、AC層に、溶融状態の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を、別のLLDPEフィルム(厚さ15~30μm)で挟み込むようにフィルム状に押し出して、AC層と上記LLDPEフィルムとの間に厚さ50μmのLLDPE層を形成し、ラミネートフィルム(幅1m、長さ2m)を得た。
【0079】
[積層構成]
・Ny無地:被積層材がNyフィルム(商品名「ハーデンフィルム N1102」、東洋紡社製、厚さ15μm)であり、この被積層材(Nyフィルム)にAC層を介してLLDPE層及びLLDPEフィルムが積層された構成。
・Ny白:被積層材が、上記Nyフィルムにベタ印刷で設けられた白インキ層であり、この被積層材(白インキ層I1)にAC層を介してLLDPE層及びLLDPEフィルムが積層された構成。
・PET無地:被積層材がPETフィルム(商品名「東洋紡エステルフィルム E5102」、東洋紡社製、厚さ12μm)であり、この被積層材(PETフィルム)にAC層を介してLLDPE層及びLLDPEフィルムが積層された構成。
・PET白:被積層材が、上記PETフィルムにベタ印刷で設けられた白インキ層であり、この被積層材(白インキ層)にAC層を介してLLDPE層及びLLDPEフィルムが積層された構成。
【0080】
上記積層構成における白インキ層には、以下の白インキを使用した。
・白インキ層:1液型ウレタン系インキ(ウレタン樹脂8.5部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂3.0部、セルロースアセテートブチレート(CAB)樹脂0.4部、酢酸エチル22.0部、MEK25.0部、IPA5.5部、PM1.5部、分散剤0.1部、及び酸化チタン34.0部を配合した1液型ウレタン系インキ)。
【0081】
得られた積層体について、以下の手順で、密着性評価及び易引裂性評価を行った。それらの結果を表2~5に示す。
【0082】
(密着性評価)
得られた各積層体から、幅15mm及び長さ100mmの長方形状に切断した試料を採取し、接着強度測定用試料として、T型剥離試験用試料を作製した。この各T型剥離試験用試料について、引張試験機(商品名「テンシロン RTG-1225」、エー・アンド・デイ社製)を用いて、引張速度300mm/minの条件でT型剥離試験を行い、試料における被積層材とLLDPE層との間の接着強度(T型剥離強度)を測定した。また、剥離試験後の剥離状態を目視で評価した。
【0083】
(易引裂性評価)
得られた各ラミネートフィルムから、幅100mm及び長さ150mmの長方形状に切断したラミネートフィルムを1枚採取した。そのラミネートフィルムを、LLDPEフィルムを内側にして長さ方向に半分に折って重ね合わせ、隣り合う2辺に沿った縁(端から10mmの領域)をヒートシールして、開口を有するシール袋を作製した。その後、開口を上記と同様にヒートシールして、3方シール袋を作製した。
この3方シール袋を40℃の恒温室内で48時間保管した。その後、このシール袋における隣り合う2辺に沿ったシール部分のそれぞれに1箇所ずつ(計2箇所)に引き裂き用の切れ目線を入れ、横裂き及び縦裂きを行った。このときの易引き裂き性を、以下の評価基準にしたがって、5段階の点数で評価した。なお、横裂きは、切れ目線の上端縁を持って、切れ目線を中心に左右方向に引っ張るように引き裂くこと(股裂きとも称される)であり、縦裂きは、切れ目線の上端縁を持って、切れ目線から前後に引きちぎるように下方に向かって直線的に引き裂くことである。
5点:シール袋を綺麗に引き裂くことができた。
4点:シール袋を引き裂くことができたが、引き裂きの途中でゆっくり引き裂いた場合にLLDPE層の僅かな伸びが観られた。
3点:LLDPE層の伸びが観られたが、シール袋を引き裂くことはできた。
2点:LLDPE層の伸びが観られ、シール袋の引き裂き困難であったが、強く力を加えるとシール袋を引き裂くことができた。
1点:LLDPE層の伸びが観られ、強く力を加えてもシール袋を引き裂くことができなかった。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
表2~5中、密着性評価における「剥離」は、フィルム(Nyフィルム又はPETフィルム)とLLDPE層との間で剥離したことを示す。「f切」は、フィルム切れが発生していたことを示す。「PE伸び」は、LLDPE層が伸びて切れなかったことを示す。「is剥離」は、白インキ層とLLDPE層との間で剥離したことを示す。
易引裂性評価において、スラッシュ(/)の左側の数値は横裂きの結果を示し、右側の数値は縦裂きの結果を示す。
【0089】
実施例1~13のAC剤を用いた積層体は、比較例1~15のAC剤を用いた積層体に比べて、接着強度に優れていた。特に実施例1~12は、易引き裂き性も良好であった。