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  • 特開-光ファイバ着色用のインク供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185309
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】光ファイバ着色用のインク供給装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20221207BHJP
   B05C 3/12 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092906
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 茂樹
【テーマコード(参考)】
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4F040AA27
4F040AB04
4F040BA49
4F040DA07
4F040DA14
4F040DA17
4F042AA24
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA08
4F042CA01
4F042CA09
4F042CB03
4F042CB10
4F042CB19
4F042DF34
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】インクタンク内のインクを最後まで供給することが可能な光ファイバ着色用のインク供給装置を提供する。
【解決手段】光ファイバ着色用のインク供給装置は、密閉容器と、インクタンクと、インク吸引管と、弾性体とを備えている。インクタンクには、光ファイバを着色するダイスに供給するインクが充填される。密閉容器は、インクタンクを収容する。インク吸引管は、密閉容器に固定されている。インク吸引管は、インクタンクの内部に挿入されている先端を有する。弾性体は、密閉容器の内部に配置されている。弾性体は、インクタンクの内部のインクの重量に応じて伸縮してインクタンクの高さを変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを着色するダイスに供給するインクが充填されるインクタンクと、
前記インクタンクを収容する密閉容器と、
前記密閉容器に固定されており、前記インクタンクの内部に挿入されている先端を有するインク吸引管と、
前記密閉容器の内部に配置されており、前記インクタンクの内部の前記インクの重量に応じて伸縮して前記インクタンクの高さを変更する弾性体と、
を備えている、光ファイバ着色用のインク供給装置。
【請求項2】
前記インクタンクは、前記インクタンクの底面が傾斜した状態で前記密閉容器に収容されている、請求項1に記載の光ファイバ着色用のインク供給装置。
【請求項3】
前記インク吸引管は、前記インクタンクにインクが充填されていない場合に前記インク吸引管の先端が前記インクタンクの内部の最下部に配置されるように、前記密閉容器に固定されている、請求項1または請求項2に記載の光ファイバ着色用のインク供給装置。
【請求項4】
前記インクタンクの内部の前記インクの重量を計測する重量計をさらに備えている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ着色用のインク供給装置。
【請求項5】
前記インクタンクの高さを調整する高さ調整機構をさらに備えている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光ファイバ着色用のインク供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバ着色用のインク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インクタンクからダイスへインクを供給する構成を開示している。ダイスは、光ファイバにインクを塗布することにより、光ファイバを着色する。また、特許文献1には、インクタンクを傾けて配置した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-97133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、インクタンク内のインクを最後まで供給することが可能な光ファイバ着色用のインク供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の光ファイバ着色用のインク供給装置は、
光ファイバを着色するダイスに供給するインクが充填されるインクタンクと、
前記インクタンクを収容する密閉容器と、
前記密閉容器に固定されており、前記インクタンクの内部に挿入されている先端を有するインク吸引管と、
前記密閉容器の内部に配置されており、前記インクタンクの内部の前記インクの重量に応じて伸縮して前記インクタンクの高さを変更する弾性体と、
を備えている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、インクタンク内のインクを最後まで供給することが可能な光ファイバ着色用のインク供給装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る光ファイバ着色用のインク供給装置の概略構成を示す部分断面模式図である。
図2図2は、インク供給装置の使用例を示す模式図である。
図3図3は、インク残量が多い場合のインク供給装置を示す模式図である。
図4図4は、インク残量がない場合のインク供給装置を示す模式図である。
図5図5は、インクタンクの高さを調整する高さ調整機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の光ファイバ着色用のインク供給装置は、
(1)光ファイバを着色するダイスに供給するインクが充填されるインクタンクと、
前記インクタンクを収容する密閉容器と、
前記密閉容器に固定されており、前記インクタンクの内部に挿入されている先端を有するインク吸引管と、
前記密閉容器の内部に配置されており、前記インクタンクの内部の前記インクの重量に応じて伸縮して前記インクタンクの高さを変更する弾性体と、
を備えている。
【0009】
上記構成によれば、例えば、インクタンク内のインクの重量(すなわち、インクタンク内のインク残量)が減少した場合、弾性体が伸張することにより、インクタンク自体を上昇させ、インク吸引管の先端をインクタンクの底面に近づけさせることができる。これにより、インク残量が少なくなった場合でも確実にインクを吸引することができ、インクタンク内のインクを最後まで供給することができる。
【0010】
(2)前記インクタンクは、前記インクタンクの底面が傾斜した状態で前記密閉容器に収容されてもよい。
【0011】
上記構成によれば、インクタンクの底面が傾斜しているので、インクをインクタンクの最下部に集中させて溜めるようにすることができる。これにより、インク残量が少なくなった場合でも、インクタンクの底面が傾斜していない場合に比べてインクを容易に吸引することができる。
【0012】
(3)前記インク吸引管は、前記インクタンクにインクが充填されていない場合に前記インク吸引管の先端が前記インクタンクの内部の最下部に配置されるように、前記密閉容器に固定されてもよい。
【0013】
上記構成によれば、インクタンク内のインク残量が少ない場合、インク吸引管の先端をインクタンクの最下部に配置させることができる。これにより、インクタンク内のインクを最後まで吸引することができる。
【0014】
(4)前記インクタンクの内部の前記インクの重量を計測する重量計をさらに備えてもよい。
【0015】
上記構成によれば、インクタンク内のインク残量を把握することができる。これにより、例えば、インクタンク交換時期の予測が可能となり、インクがなくなる前にインクタンクを交換することができる。
【0016】
(5)前記インクタンクの高さを調整する高さ調整機構をさらに備えてもよい。
【0017】
上記構成によれば、インクタンク内のインク液面に対するインク吸引管の先端の高さを容易に調整することができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光ファイバ着色用のインク供給装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
以下の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0020】
図1は、一実施形態に係る光ファイバ着色用のインク供給装置10の概略構成を示す部分断面模式図である。インク供給装置10は、図2に例示されるように、例えば、接続路200を介してダイス100に接続されており、ダイス100にインクIを供給する。光ファイバFは、ダイス100によりインクIを塗布されて所定の色に着色される。
【0021】
インク供給装置10は、図1に例示されるように、密閉容器11と、インクタンク12と、インク吸引管13と、コイルバネ14とを備えている。
【0022】
密閉容器11の内部は、圧力調整口111に接続された圧力調整機構(図示せず)により加圧または減圧される。
【0023】
インクタンク12は、密閉容器11に収容されている。インクタンク12には、所定の色のインクIが充填される。
【0024】
インク吸引管13は、密閉容器11に固定されている。インク吸引管13の先端13Aはインクタンク12の内部に挿入されている。インク吸引管13の後端は、図2に例示されるように、密閉容器11の外部へ延びており、接続路200を介してダイス100と連通している。密閉容器11の内部が加圧されると、インクタンク12内のインクIは圧送されてインク吸引管13に吸い込まれる。吸い込まれたインクIは、接続路200を介してダイス100へ供給される。
【0025】
コイルバネ14は、インクタンク12内のインクIの重量に応じて伸縮して、インクタンク12の高さを変更するように構成されている。コイルバネ14は、弾性体の一例である。本例においては、図1に例示されるように、二つのコイルバネ14が、インクタンク12の下側に配置されており、支持部15を介してインクタンク12を支持するように構成されている。コイルバネ14としては、インクタンク12内のインクIの重量に応じて所定の量の伸縮を行うように所定の材質および形状を有するコイルバネが適宜選択される。
【0026】
コイルバネ14は、図3に例示されるように、インクタンク12内のインクIの重量に応じて下方に圧縮される。インクタンク12は、密閉容器11の底面112からの高さがh1となる位置でコイルバネ14により支持される。インクタンク12内のインクIがダイス100へ供給されて、図1に例示されるように、インクタンク12内のインクIの重量が減少すると、コイルバネ14は上方に伸張する。インクタンク12は、コイルバネ14の伸張に伴い上方に移動させられて、密閉容器11の底面112からの高さがh1よりも大きいh2となる位置でコイルバネ14により支持される。
【0027】
このように、インクタンク12の高さがインクタンク12内のインクIの重量(すなわち、インク残量)に応じて変化する。これにより、インクタンク12内のインク残量が減少した場合でも、インク吸引管13の先端13Aをインクタンク12の底面121に近づけさせることができ、インク液面がインク吸引管13の先端13Aより下方に位置することを防ぐことができる。したがって、インク残量が少なくなった場合でも確実にインクIを吸引することができ、インクタンク12内のインクIを最後まで供給することができる。
【0028】
ところで、インクタンク12内のインク液面付近のインクIと底面121付近のインクIとを比較すると、インク液面付近の方が気泡が抜けやすいことからインクIの内部に残留する気泡が少なくなっている。インク残量が少なくなった場合でも確実にインクIを吸引するために、例えば、インクタンク12の高さを変化させずに(コイルバネ14を設けずに)インク吸引管13の先端13Aをインクタンク12の底面121に配置することが考えられる。しかしながら、この場合は、インク液面付近のインクIよりも気泡が多い底面121付近のインクIが常に吸引される。このため、インクIの内部に残留する気泡を除去するために、例えば、インクタンク12を密閉容器11に収容した後、インクIの供給を開始する前に密閉容器11の内部を減圧することが考えられる。しかしながら、この場合でも、気泡を完全に除去することはできないので、依然としてインク液面付近の方が底面121付近より気泡が少なくなっている。これに対して、本実施形態のインク供給装置1によれば、コイルバネ14によりインクタンク12の高さが変化するので、インク液面付近のインクIをダイス100に供給することができる。これにより、ダイス100の内部に気泡が混入しにくく、光ファイバFに塗布されるインクIに気泡が混入することを抑制できる。
【0029】
本実施形態においては、インクタンク12は、図1に例示されるように、インクタンク12の底面121が水平方向に対して所定の角度θだけ傾斜した状態で、密閉容器11に収容されている。例えば、θは、2度以上30度以下に設定される。図1においては、インクタンク12の底面121は筒状の本体部122に対して垂直に形成されており、インクタンク12は、その中心軸Cが鉛直方向に対して所定の角度θだけ傾斜した状態で支持部15に搭載されている。このような構成によれば、インクタンク12の底面121が傾斜しているので、インクIをインクタンク12の最下部123に集中させて溜めることができる。これにより、インクタンク12内のインク残量が少なくなった場合でも、インクタンク12の底面121が傾斜していない場合に比べて、インクIを容易に吸引することができる。
【0030】
本実施形態においては、支持部15は、図1に例示されるように、ベース部151と保持部152を有している。ベース部151と保持部152は、単一部材(モノリシック)から形成されてもよく、異なる部材を一体化することにより形成されてもよい。ベース部151は、コイルバネ14に接続されており、コイルバネ14の伸縮により上下方向に移動する。保持部152は、インクタンク12を所定の姿勢で保持する。図1においては、ベース部151の上面が水平方向に対して傾斜しており、インクタンク12は鉛直方向に対して傾いた姿勢で保持部152により保持されている。このような構成によれば、インクタンク12を所定の姿勢で上下方向に移動させることができる。
【0031】
本実施形態においては、インク供給装置10は、図1に例示されるように、インクタンク12内のインクIの重量を計測する重量計16をさらに備えている。重量計16は、例えば、コイルバネ14の下側に配置される。インク残量の測定値は、重量計16または密閉容器11に設けられた表示部や外部装置の表示部に表示されうる。これにより、光ファイバFの着色作業を行う作業者は、インク残量を確認することができる。作業者は、インク残量に基づいて、例えばインクタンク交換時期を予測することが可能となり、インクIがなくなる前にインクタンク12を交換することができる。
【0032】
本実施形態においては、インク吸引管13は、図1に例示されるように、インクタンク12内において、その延伸方向の向きが変化する部分Pを有している。図1においては、インク吸引管13は、部分Pまで下方へ鉛直方向に平行に伸びており、部分Pから鉛直方向に対して斜めの方向に下方に伸びている。このような構成によれば、インクタンク12の構造による制約を受けずに、インク吸引管13の先端13Aをインクタンク12内の所望の位置に配置させることができる。
【0033】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0034】
上記の実施形態において、インク吸引管13は、図4に例示されるように、インクタンク12にインクIが充填されていない場合に先端13Aがインクタンク12の内部の最下部123に配置されるように、密閉容器11に固定されうる。このような構成によれば、インクタンク内のインクIを最後まで吸引することができる。
【0035】
上記の実施形態において、インク供給装置10は、図5に例示されるように、インクタンク12の高さを調整する高さ調整機構17をさらに備えてもよい。例えば、高さ調整機構17は、昇降板171を備えている。インクタンク12はコイルバネ14などを介して昇降板171に載置されている。インクタンク12を載せた昇降板171は上下に昇降するように構成されている。高さ調整機構17は、昇降板171を上下に昇降させる構造として、支柱172と、ガイドレール173と、昇降ねじ174とを備えている。昇降板171は支柱172に取り付けられたガイドレール173上を上下にスライド可能であり、ハンドル175が取り付けられた昇降ねじ174を回転させることにより昇降板171が上下に昇降する。なお、インクタンク12が軽量の場合は、昇降板171を上下に昇降させる構造としてラボジャッキ(図示せず)を使用し、ラボジャッキの上に昇降板171が載置されてもよい。このような構成によれば、インクタンク12内のインク液面に対するインク吸引管13の先端13Aの高さを容易に調整することができる。
【0036】
上記の実施形態において、インク吸引管13の先端13Aには、逆流防止バルブが取り付けられてもよい。逆流防止バルブとしては、例えば、Vernay社のダックビルチェックバルブが用いられる。逆流防止バルブにより、インク吸引管13に吸引されたインクIがインクタンク12へ逆流することを防ぐことができる。これにより、例えばインクタンク12を交換するために、インク吸引管13をインクタンク12から引き抜いた場合に、インク吸引管13からインクIが流れ落ちることがなく、密閉容器11を汚さずにインクタンク12を交換することができる。
【0037】
上記の実施形態においては、インクタンク12の中心軸Cが鉛直方向に対して所定の角度θだけ傾斜することにより、インクタンク12の底面121を水平方向に対して所定の角度θだけ傾斜させている。しかしながら、インクタンク12は、中心軸Cが鉛直方向と平行になるように密閉容器11に配置されてもよい。この場合、インクタンク12の底面121を筒状の本体部122に対して傾斜するように形成することにより、インクタンク12の底面121を水平方向に対して所定の角度θだけ傾斜させることができる。
【0038】
上記の実施形態においては、インク吸引管13は、その延伸方向の向きが変化する部分Pを有している。しかしながら、インク吸引管13は、他の形状も取りうる。例えば、インク吸引管13は、一方向に延びた直線形状を有してもよい。
【0039】
上記の実施形態においては、インク供給装置10は、弾性体としてコイルバネ14を備えている。しかしながら、インク供給装置10は、コイルバネの代わりに、板バネを備えてもよいし、空気バネを備えてもよい。
【0040】
上記の実施形態においては、インク供給装置10は、二つのコイルバネ14を備えている。しかしながら、インク供給装置10は、一つまたは三つ以上のコイルバネ14を備えうる。例えば、三つのコイルバネ14を設ける場合は、二つのコイルバネ14に比べてより安定してインクタンク12を支持することができる。
【符号の説明】
【0041】
10:インク供給装置
11:密閉容器
12:インクタンク
13:インク吸引管
13A:先端
14:コイルバネ
15:支持部
16:重量計
17:高さ調整機構
171:昇降板
172:支柱
173:ガイドレール
174:昇降ねじ
175:ハンドル
100:ダイス
111:圧力調整口
112:底面
121:底面
122:本体部
123:最下部
151:ベース部
152:保持部
200:接続路
C:中心軸
F:光ファイバ
I:インク
P:部分
θ:角度
図1
図2
図3
図4
図5