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  • 特開-制御装置 図1
  • 特開-制御装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185327
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092935
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】小田島 巨弥
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS05
5H730AS13
5H730BB13
5H730DD03
5H730XX15
5H730XX24
5H730XX35
(57)【要約】
【課題】コンバータに短絡故障が発生したときに、コンバータの下流側の素子を保護する。
【解決手段】制御装置(30)は、バッテリ(151)と、電源ヒューズ(152)と、電源ライン及びグランドライン間に直列に接続された上アームのスイッチング素子(161)及び下アームのスイッチング素子(162)を有するコンバータ(16)と、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子との間に一端が接続され、グランドラインに他端が接続されたフィルタコンデンサ(24)とを備える電源装置においてコンバータを制御する。当該制御装置は、上アームのスイッチング素子に過電流が流れたことを条件に、下アームのスイッチング素子のオンオフ制御を実施する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリの正極と電源ラインとの間及び前記バッテリの負極とグランドラインとの間の少なくとも一方に配置された電源ヒューズと、前記電源ライン及び前記グランドライン間に直列に接続された上アームのスイッチング素子及び下アームのスイッチング素子を有するコンバータと、前記上アームのスイッチング素子と前記下アームのスイッチング素子との間に一端が接続され、前記グランドラインに他端が接続されたフィルタコンデンサとを備える電源装置において前記コンバータを制御する制御装置であって、
当該制御装置は、前記上アームのスイッチング素子に過電流が流れたことを条件に、前記下アームのスイッチング素子のオンオフ制御を実施する
ことを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータの制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、車両の高圧電源を低電圧に降圧するコンバータを備える電動パワーステアリング装置が提案されている(特許文献1参照)。その他関連する技術として特許文献2及び3が挙げられる。特許文献2には、バッテリからDC/DCコンバータを介して駆動用モータに電力が供給される車両において、DC/DCコンバータの下アームに短絡故障が発生した場合に、該下アームのスイッチング素子とグランドラインとの間に設けられているリレーをオフにして下アームの短絡状態を解消した上で、バッテリからDC/DCコンバータを介して走行用モータに電力を供給して退避走行を可能にする技術が記載されている。特許文献3には、第1低電圧端が主電源に接続されているとともに、第1高電圧端が走行用モータを駆動するインバータに接続されている第1電圧コンバータにおいて、第1高電圧端の正極と負極との間に接続されているスイッチング素子の短絡故障が検出されたときに、昇圧スイッチング素子と直列に接続されているヒューズが溶断していない場合には、第2電圧コンバータを作動させて上記ヒューズを溶断する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-121896号公報
【特許文献2】特許6128214号公報
【特許文献3】特開2017-103949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高圧電源電力をコンバータにより降圧して負荷に供給する電源装置において、コンバータに短絡故障が発生すると、コンバータの下流側の素子に高電圧が印加され、該素子が故障する可能性があるという技術的問題点がある。上述した特許文献1乃至3に記載の技術では、この問題点に対処することは難しい。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、コンバータに短絡故障が発生したときに、コンバータの下流側の素子を保護することができる制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る制御装置は、バッテリと、前記バッテリの正極と電源ラインとの間及び前記バッテリの負極とグランドラインとの間の少なくとも一方に配置された電源ヒューズと、前記電源ライン及び前記グランドライン間に直列に接続された上アームのスイッチング素子及び下アームのスイッチング素子を有するコンバータと、前記上アームのスイッチング素子と前記下アームのスイッチング素子との間に一端が接続され、前記グランドラインに他端が接続されたフィルタコンデンサとを備える電源装置において前記コンバータを制御する制御装置であって、当該制御装置は、前記上アームのスイッチング素子に過電流が流れたことを条件に、前記下アームのスイッチング素子のオンオフ制御を実施するというものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
制御装置に係る実施形態について図1及び図2を参照して説明する。図1において、車両1は、その前輪に駆動力を与えるモータ11と、その後輪に駆動力を与えるモータ13とを備える。モータ11は、インバータ12を介してバッテリ15に電気的に接続されている。モータ13は、インバータ14を介して電源15に電気的に接続されている。
【0009】
電源15は、バッテリ151と、該バッテリ151の正極と電源ラインLとの間に配置された電源ヒューズ152とを有する。尚、電源ヒューズ152は、バッテリ151の負極とグランドラインGNDとの間に配置されていてもよい。或いは、電源ヒューズ152は、バッテリ151の正極と電源ラインLとの間、及び、バッテリ151の負極とグランドラインGNDとの間の両方に配置されていてもよい。
【0010】
電源15とインバータ12との間には、平滑コンデンサ21が電源15と電気的に並列に接続されている。電源15とインバータ14との間には、平滑コンデンサ22が電源15と電気的に並列に接続されている。
【0011】
電源15とインバータ14との間には、降圧コンバータ16が配置されている。降圧コンバータ16は、スイッチング素子としてのトランジスタ161及び162と、トランジスタ161及び162に夫々対応する逆並列ダイオードとを有する。ここで、トランジスタ161と、その逆並列ダイオードとは、降圧コンバータ16の上アームを構成している。トランジスタ162と、その逆並列ダイオードとは、降圧コンバータ16の下アームを構成している。
【0012】
トランジスタ161とトランジスタ162との間には、コイル23の一端が電気的に接続されている。コイル23の他端は、フィルタコンデンサ24及びDC/DCコンバータ17に電気的に接続されている。
【0013】
上述の如く構成された車両1において、制御装置30は、降圧コンバータ16を制御するように構成されている。尚、降圧コンバータ16の基本的な制御については、既存の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0014】
ところで、降圧コンバータ16にショート故障が発生したときに何らの対策もとらなければ、例えばフィルタコンデンサ24に比較的高い電圧が印加され、フィルタコンデンサ24の故障が引き起こされる可能性があるという問題点がある。
【0015】
本実施形態において、トランジスタ161及び162は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。そして、トランジスタ161及び162は、過電流検知機能を有するIGBTである。
【0016】
制御装置30の動作について図2のフローチャートを参照して説明する。図2において、制御装置30は、例えばトランジスタ161により過電流が検知されたか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101の処理において過電流が検知されていないと判定された場合(ステップS101:No)、図2に示す動作は終了される。なぜなら、降圧コンバータ16にショート故障が発生していないとみなせるからである。その後、所定期間(例えば、数十ミリ秒から数百ミリ秒)が経過した後に、ステップS101の処理が行われてよい。つまり、図2に示す動作は、所定期間に応じた周期で繰り返し行われてよい。
【0017】
ステップS101の処理において、過電流が検知されたと判定された場合(ステップS101:Yes)、制御装置30は、下アームのスイッチング素子であるトランジスタ162を常時ONにする、又は、トランジスタ162に係るON時間を長くする(ステップS102)。ステップS102の処理と並行して、制御装置30は、ステップS102の処理に起因してトランジスタ162により過電流が検知されないように所定の過電流検知マスク処理を行う(ステップS103)。
【0018】
上記ステップS102の処理に起因して、降圧コンバータ16の下アームにも過電流が流れる。この結果、下アームがショート故障する(言い換えれば、下アームを意図的に破壊する)。すると、電源15の電源ヒューズ152に比較的大きな電流が流れ、該電源ヒューズが溶断される。
【0019】
(技術的効果)
上述したように本実施形態に係る制御装置30は、降圧コンバータ16にショート故障が発生したときに、下アームを意図的にショートさせることによって、電源ヒューズ152を溶断する。この結果、バッテリ151と、例えばフィルタコンデンサ24との電気的接続が断たれる。従って、本実施形態によれば、降圧コンバータ16にショート故障が発生したときに、例えばフィルタコンデンサ24に比較的高い電圧が印加されることを好適に抑制することができる。つまり、本実施形態によれば、降圧コンバータ16にショート故障が発生したときに、降圧コンバータ16の下流側の素子を保護することができる。
【0020】
以上に説明した実施形態から導き出される発明の態様を以下に説明する。
【0021】
発明の一態様に係る制御装置は、バッテリと、前記バッテリの正極と電源ラインとの間及び前記バッテリの負極とグランドラインとの間の少なくとも一方に配置された電源ヒューズと、前記電源ライン及び前記グランドライン間に直列に接続された上アームのスイッチング素子及び下アームのスイッチング素子を有するコンバータと、前記上アームのスイッチング素子と前記下アームのスイッチング素子との間に一端が接続され、前記グランドラインに他端が接続されたフィルタコンデンサとを備える電源装置において前記コンバータを制御する制御装置であって、当該制御装置は、前記上アームのスイッチング素子に過電流が流れたことを条件に、前記下アームのスイッチング素子のオンオフ制御を実施するというものである。
【0022】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0023】
1…車両、11、13…モータ、12、14…インバータ、15…電源、16…降圧コンバータ、17…DC/DCコンバータ、21、22…平滑コンデンサ、23…コイル、24…フィルタコンデンサ、151…バッテリ、152…電源ヒューズ、161、162…トランジスタ
図1
図2