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特開2022-185328光学式選別機、選別シミュレーション装置、および、光学式選別機を用いた被選別物の選別についてのシミュレーション方法
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  • 特開-光学式選別機、選別シミュレーション装置、および、光学式選別機を用いた被選別物の選別についてのシミュレーション方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185328
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】光学式選別機、選別シミュレーション装置、および、光学式選別機を用いた被選別物の選別についてのシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
G01N21/85 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092936
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】特許業務法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏明
(72)【発明者】
【氏名】石突 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知幸
(72)【発明者】
【氏名】有井 宏典
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA04
2G051AB01
2G051AB02
2G051BA20
2G051BB01
2G051CA03
2G051CB01
2G051CB02
2G051DA13
2G051EB02
(57)【要約】
【課題】 光学式選別機における品質制御を改善する。
【解決手段】 光学式選別機のコントローラは、光学式選別機から良品として排出される被選別物における不良品の混入許容率に関しての目標品質条件の候補の入力を受け付け、被選別物の少なくとも一部に関する、不良品の混入率を表す品質情報の入力を受け付け、目標品質条件の候補を達成可能に選別装置によって選別がなされた場合の良品として排出される被選別物の量および/または歩留りに関する選別結果を品質情報に基づいてシミュレーションして、シミュレーション結果を出力し、選別装置によって選別を行う際に採用すべき最終的な目標品質条件の入力を受け付け、最終的な目標品質条件を達成可能な選別制御パラメータに基づいて選別を実行するように構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式選別機であって、
移送中の被選別物に光を照射するように構成された光源と、
前記光源から照射され、前記被選別物に関連付けられた光を検出するように構成された光学センサと、
前記光学センサによって取得された信号に基づいて不良品と判定された被選別物の少なくとも一部を選別するように構成された選別装置と、
前記光学式選別機の動作を制御するように構成されたコントローラと
を備え、
前記コントローラは、
前記光学式選別機から良品として排出される被選別物における前記不良品の混入許容率に関しての目標品質条件の候補の入力を受け付け、
前記被選別物の少なくとも一部に関する、前記不良品の混入率を表す品質情報の入力を受け付け、
前記目標品質条件の候補を達成可能に前記選別装置によって選別がなされた場合の前記良品として排出される前記被選別物の量および/または歩留りに関する選別結果を前記品質情報に基づいてシミュレーションして、シミュレーション結果を出力し、
前記選別装置によって選別を行う際に採用すべき最終的な目標品質条件の入力を受け付け、
前記最終的な目標品質条件を達成可能な選別制御パラメータに基づいて選別を実行するように構成された
光学式選別機。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式選別機であって、
前記コントローラは、前記不良品と判定された前記被選別物のうちの一部の被選別物のみを選別するように前記選別装置を制御可能に構成され、
前記選別制御パラメータは、前記不良品と判定された前記被選別物のうちの選別すべき被選別物の割合である選別率に関する設定値を含む
光学式選別機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学式選別機であって、
前記選別制御パラメータは、前記不良品の判定のための閾値を含む
光学式選別機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の光学式選別機であって、
前記選別装置は、
前記エアを選択的に噴射可能な複数のノズルであって、前記被選別物の移送方向に直交する方向に配列された複数のノズルを備え、
前記複数のノズルから前記被選別物に前記エアを選択的に噴射して、前記不良品と判定された前記被選別物の少なくとも一部を選別するように構成され、
前記コントローラは、前記被選別物に対する前記エアの噴射範囲を可変に設定可能に構成され、
前記選別制御パラメータは、前記エアの前記噴射範囲に関する設定を含む
光学式選別機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の光学式選別機であって、
前記光学式選別機は、一次選別系統と二次選別系統とを備え、
前記一次選別系統および前記二次選別系統の各々は、前記光源、前記光学センサおよび前記選別装置によって光学的な選別を行うように構成され、
前記光学式選別機は、
前記一次選別系統へ投入された前記被選別物が第1の被選別物群と第2の被選別物群とに選別され、前記第1の被選別物群が前記一次選別系統から前記良品として排出され、前記第2の被選別物群が前記二次選別系統に投入され、前記二次選別系統において、前記第2の被選別物群が第3の被選別群と第4の被選別物群とに選別されるように構成されるとともに、
前記第3の被選別群の排出先を、前記一次選別系統への再投入と、前記良品としての排出との間で切替可能に構成され、および/または、前記第4の被選別群の排出先を、前記良品としての排出と、前記不良品としての排出と、の間で切替可能に構成され、
前記選別制御パラメータは、前記第3の被選別群および/または前記第4の被選別群の前記排出先に関する設定を含む
光学式選別機。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の光学式選別機であって、
前記コントローラは、選別運転中において、前記光学センサによって取得された前記信号に基づいて、所定期間内における前記被選別物に占める前記不良品の混入状況を検出し、前記混入状況に基づいて、前記選別制御パラメータを変更可能に構成された
光学式選別機。
【請求項7】
請求項6に記載の光学式選別機であって、
前記コントローラは、前記選別運転中において、前記混入状況に基づいて、前記所定期間内における前記目標品質条件に関する選別結果を演算し、前記演算された選別結果に基づいて前記選別制御パラメータを変更可能に構成された
光学式選別機。
【請求項8】
請求項5を従属元に含む請求項7に記載の光学式選別機であって、
前記コントローラは、前記選別運転中において、前記前記一次選別系統および前記二次選別系統の各々において取得された前記信号に基づいて、前記所定期間内における前記目標品質条件に関する前記選別結果を演算するように構成された
光学式選別機。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の光学式選別機であって、
前記コントローラは、前記演算された選別結果が表す品質が前記最終的な目標品質条件を所定の程度、下回っているときは、前記演算された選別結果が表す品質が前記最終的な目標品質条件に近づく方向に前記選別制御パラメータを変更するように構成された
光学式選別機。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の光学式選別機であって、
前記コントローラは、前記演算された選別結果が表す品質が前記最終的な目標品質条件を所定の程度、上回っているときは、前記良品として排出される前記被選別物の歩留りが向上する方向に前記選別制御パラメータを変更するように構成された
光学式選別機。
【請求項11】
選別シミュレーション装置であって、
コントローラを備え、
前記コントローラは、
光学式選別機を用いて被選別物を選別した場合に前記光学式選別機から良品として排出される被選別物における不良品の混入許容率に関しての目標品質条件の候補の入力を受け付け、
前記被選別物の少なくとも一部に関する、前記不良品の混入率を表す品質情報の入力を受け付け、
前記目標品質条件の候補を達成可能に前記光学式選別機によって選別がなされた場合の前記良品として排出される前記被選別物の量および/または歩留りに関する選別結果を前記品質情報に基づいてシミュレーションして、シミュレーション結果を出力する
ように構成された
選別シミュレーション装置。
【請求項12】
光学式選別機を用いた被選別物の選別についてのシミュレーション方法であって、
前記光学式選別機から良品として排出される被選別物における不良品の混入許容率に関しての目標品質条件の候補をユーザが決定する工程と、
前記被選別物の少なくとも一部に関する、前記不良品の混入率を表す品質情報を取得する工程と、
前記目標品質条件の候補を達成可能に前記光学式選別機によって選別がなされた場合の前記良品として排出される前記被選別物の量および/または歩留りに関しての選別結果を前記品質情報に基づいてシミュレーションし、ユーザに提示する工程と、
を備えるシミュレーション方法。
【請求項13】
光学式選別機であって、
移送中の被選別物に光を照射するように構成された光源と、
前記光源から照射され、前記被選別物に関連付けられた光を検出するように構成された光学センサと、
前記光学センサによって取得された信号に基づいて前記不良品と判定された被選別物の少なくとも一部を選別するように構成された選別装置と、
前記光学式選別機の動作を制御するように構成されたコントローラと
を備え、
前記コントローラは、
前記被選別物の少なくとも一部に関する、前記不良品の混入率を表す品質情報の入力を受け付け、
前記光学式選別機から良品として排出される被選別物における不良品の混入許容率に関しての目標品質条件の複数の候補ごとに、該目標品質条件の候補を達成可能に前記光学式選別機によって選別がなされた場合の前記良品として排出される前記被選別物の量および/または歩留りに関する選別結果を前記品質情報に基づいてシミュレーションし、
シミュレーションの結果に基づいて、前記選別装置によって選別を行う際に採用すべき最終的な目標品質条件を決定し、
前記最終的な目標品質条件を達成可能な選別制御パラメータに基づいて選別を実行するように構成された
光学式選別機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式選別機における選別技術に関する。
【背景技術】
【0002】
事業者が生産者から米を買い取る場合、目視や、穀粒判別器によるサンプル測定結果に基づいて、米の等級判定が行われる。等級については、農産物検査規格として、不良品の混入率に応じて高品質な順に1等級、2等級、3等級が定められている。米の等級が高いほど買い取り価格が高くなるので、生産者は1等級の米の出荷を目指すこととなる。また、製品歩留りが高いほど高収益が得られるので、生産者は高歩留りを目指すこととなる。
【0003】
このようなことから、光学式選別機を使用して、出荷前の米から不良品を除去して、製品としての米の品質を向上させることが従来から行われている。また、下記の特許文献1,2は、胴割米を全て除去するのではなく、敢えて胴割米の一部のみを除去することによって、製品の歩留りを向上させる技術を開示している。具体的には、特許文献1は、胴割米と判定された米のうちの予め設定された割合の米のみを除去する選別機を開示している。また、特許文献2は、予め設定された閾値以上の亀裂長さを有する胴割米のみを除去する選別機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5035696号公報
【特許文献2】特許第5071712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載の光学式選別機は、品質制御の面で改善の余地を残している。例えば、胴割米と判定された米のうちの、どの程度の胴割米を除去するかは、ユーザが予め設定しなければならないが、ユーザは、選別処理によって、どの程度の品質および歩留りの製品が得られるのかを選別処理前に把握できないので、適切な除去割合を設定できないおそれがある。
【0006】
また、一般的に、製品品質と歩留りとはトレードオフの関係にあるので、必ずしも、品質をできる限り向上させることが高収益に繋がるとは言えない。例えば、収穫した米の品質が悪い場合(つまり、不良品の混入率が非常に高い場合)には、大量の不良品を除去して等級を上げると、歩留りが著しく低下し、その結果、収益がかえって低下することも生じ得る。
【0007】
このようなことから、光学式選別機における品質制御を改善することが求められる。上記の問題は、米に限らず、任意の種類の粒状物(例えば、米以外の任意の穀類、樹脂など)にも共通する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
本発明の第1の形態によれば、光学式選別機が提供される。この光学式選別機は、移送中の被選別物に光を照射するように構成された光源と、光源から照射され、被選別物に関連付けられた光を検出するように構成された光学センサと、光学センサによって取得された信号に基づいて不良品と判定された被選別物の少なくとも一部を選別するように構成された選別装置と、光学式選別機の動作を制御するように構成されたコントローラと、を備えている。コントローラは、光学式選別機から良品として排出される被選別物における不良品の混入許容率に関しての目標品質条件の候補の入力を受け付け、被選別物の少なくとも一部に関する、不良品の混入率を表す品質情報の入力を受け付け、目標品質条件の候補を達成可能に選別装置によって選別がなされた場合の良品として排出される被選別物の量および/または歩留りに関する選別結果を品質情報に基づいてシミュレーションして、シミュレーション結果を出力し、選別装置によって選別を行う際に採用すべき最終的な目標品質条件の入力を受け付け、最終的な目標品質条件を達成可能な選別制御パラメータに基づいて選別を実行するように構成される。
【0010】
「被選別物に関連付けられた光」とは、被選別物で反射した光である反射光であってもよいし、被選別物を透過した光である透過光であってもよいし、あるいは、反射光と透過光との両方であってもよい。あるいは、反射光および/または透過光に代えて、または、加えて、「被選別物に関連付けられた光」には、蛍光物質を含む被選別物に光を照射した際に蛍光発光によって生じた光が含まれ得る。「良品として排出される被選別物」とは、良品のみに限られず、選別(除去)不要と判断された不良品が含まれてもよい。
【0011】
この光学式選別機によれば、ユーザは、目標品質条件の候補を採用した場合の、良品として排出される被選別物の量および/または歩留りに関するシミュレーション結果を、選別運転を開始する前に確認することができる。このため、ユーザは、シミュレーション結果に基づいて、良品として排出される被選別物の量および/または歩留りを考慮して、採用すべき最終的な目標品質条件を決定できる。したがって、所望の品質および歩留りの被選別物を得ることができる。
【0012】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、コントローラは、不良品と判定された被選別物のうちの一部の被選別物のみを選別するように選別装置を制御可能に構成される。選別制御パラメータは、不良品と判定された被選別物のうちの選別すべき被選別物の割合である選別率に関する設定値を含む。この形態によれば、不良品の混入率を直接的に制御できるので、最終的な目標品質条件を満たすように品質および歩留りを制御しやすい。
【0013】
本発明の第3の形態によれば、第1または第2の形態において、選別制御パラメータは、不良品の判定のための閾値を含む。この形態によれば、不良品と判定される被選別物の数を制御できるので、品質および歩留りを制御できる。
【0014】
本発明の第4の形態によれば、第1ないし第3のいずれかの形態において、選別装置は、エアを選択的に噴射可能な複数のノズルであって、被選別物の移送方向に直交する方向に配列された複数のノズルを備え、複数のノズルから被選別物にエアを選択的に噴射して、不良品と判定された被選別物の少なくとも一部を選別するように構成される。コントローラは、被選別物に対するエアの噴射範囲を可変に設定可能に構成される。選別制御パラメータは、エアの噴射範囲に関する設定を含む。
【0015】
被選別物に対するエアの「噴射範囲」とは、ある瞬間においてエアが噴射される範囲に限らず、移送中の被選別物とともに移動する座標系における範囲を意味する。例えば、移送中の被選別物と、エアが噴射される領域と、の相対的な位置関係は、被選別物の移送に伴って刻々と変化するが、被選別物とともに移動する座標系においてエアが一瞬でも当たる座標領域の全体が被選別物に対するエアの「噴射範囲」となり得る。そのようなエアの噴射範囲は、例えば、噴射期間を変更することによって変更され得る。あるいは、エアの噴射範囲は、複数のノズルのうちのエアを噴射すべきノズルの数を変更することによって変更され得る。具体的には、複数のノズルのうちの一つのノズルからエアを噴射するか、それとも、一つのノズルと、当該一つのノズルに隣接するノズルと、からエアを噴射するかによって、噴射範囲が変更され得る。つまり、「エアの噴射範囲に関する設定」とは、噴射期間の設定であってもいし、複数のノズルの配列方向における被選別物の検出位置に関しての噴射担当範囲の割り当てについての設定であってもよいし、あるいは、それらの両方であってもよい。
【0016】
第4の形態によれば、不良品の除去精度、または、巻き添え除去(除去すべき被選別物に対してエアを噴射した際に、当該除去すべき被選別物に隣接して存在する被選別物が一緒に除去されること)の発生頻度を制御できるので、品質および歩留りを制御できる。
【0017】
本発明の第5の形態によれば、第1ないし第4のいずれかの形態において、光学式選別機は、一次選別系統と二次選別系統とを備えている。一次選別系統および二次選別系統の各々は、光源、光学センサおよび選別装置によって光学的な選別を行うように構成される。光学式選別機は、一次選別系統へ投入された被選別物が第1の被選別物群と第2の被選別物群とに選別され、第1の被選別物群が一次選別系統から良品として排出され、第2の被選別物群が二次選別系統に投入され、二次選別系統において、第2の被選別物群が第3の被選別群と第4の被選別物群とに選別されるように構成される。さらに、光学式選別機は、第3の被選別群の排出先を、一次選別系統への再投入と、良品としての排出との間で切替可能に構成されることと、第4の被選別群の排出先を、良品としての排出と、不良品としての排出と、の間で切替可能に構成されることと、の少なくとも一方を満たす。選別制御パラメータは、第3の被選別群および/または第4の被選別群の排出先に関する設定を含む。この形態によれば、第3の被選別群および/または第4の被選別群の排出先を変更することによって、品質および歩留りを制御できる。
【0018】
本発明の第6の形態によれば、第1ないし第5のいずれかの形態において、コントローラは、選別運転中において、光学センサによって取得された信号に基づいて、所定期間内における被選別物に占める不良品の混入状況を検出し、混入状況に基づいて、選別制御パラメータを変更可能に構成される。不良品の実際の混入状況と品質情報とは、必ずしも一致しないが、本形態によれば、不良品の実際の混入状況に応じて選別制御パラメータを変更できる。したがって、目標品質条件をより確実に達成できる。
【0019】
本発明の第7の形態によれば、第6の形態において、コントローラは、選別運転中において、混入状況に基づいて、所定期間内における目標品質条件に関する選別結果を演算し、演算された選別結果に基づいて選別制御パラメータを変更可能に構成される。この形態によれば、不良品の実際の混入状況と、選別制御パラメータの設定と、に基づいて、光学式選別機から良品として排出される被選別物の品質を演算できる。そして、選別運転中において、演算結果から把握される最終的な目標品質条件の達成状況に応じて選別制御パラメータを変更可能となる。したがって、実際の選別処理の結果が最終的な目標品質条件に近づくようにフィードバック制御を行うことができる。
【0020】
本発明の第8の形態によれば、第5の形態を含む第7の形態において、コントローラは、選別運転中において、一次選別系統および二次選別系統の各々において取得された信号に基づいて、所定期間内における目標品質条件に関する選別結果を演算するように構成される。一次選別系統から良品として排出される被選別物は、一次選別系統へ投入された被選別物から二次選別系統へ投入された被選別物を差し引いたものであるから、本形態によれば、一次選別系統および二次選別系統の各々へ投入された被選別物の実際の品質に基づいて、一次選別系統から良品として排出される被選別物の品質をより正確に把握できる。
【0021】
本発明の第9の形態によれば、第7または第8の形態において、コントローラは、演算された選別結果が表す品質が最終的な目標品質条件を所定の程度、下回っているときは、演算された選別結果が表す品質が最終的な目標品質条件に近づく方向に選別制御パラメータを変更するように構成される。この形態によれば、最終的な目標品質条件を確実に達成することができる。
【0022】
本発明の第10の形態によれば、第7ないし第9のいずれかの形態において、コントローラは、演算された選別結果が表す品質が最終的な目標品質条件を所定の程度、上回っているときは、良品として排出される被選別物の歩留りが向上する方向に選別制御パラメータを変更するように構成される。この形態によれば、最終的な目標品質条件を達成しつつ、歩留りを向上させることができる。
【0023】
本発明の第11の形態によれば、選別シミュレーション装置が提供される。この選別シミュレーション装置は、コントローラを備えている。コントローラは、光学式選別機を用いて被選別物を選別した場合に光学式選別機から良品として排出される被選別物における不良品の混入許容率に関しての目標品質条件の候補の入力を受け付け、被選別物の少なくとも一部に関する、不良品の混入率を表す品質情報の入力を受け付け、目標品質条件の候補を達成可能に光学式選別機によって選別がなされた場合の良品として排出される被選別物の量および/または歩留りに関する選別結果を品質情報に基づいてシミュレーションして、シミュレーション結果を出力するように構成される。この選別シミュレーション装置によれば、第1の形態と同様の効果が得られる。
【0024】
本発明の第12の形態によれば、光学式選別機を用いた被選別物の選別についてのシミュレーション方法が提供される。この方法は、光学式選別機から良品として排出される被選別物における不良品の混入許容率に関しての目標品質条件の候補をユーザが決定する工程と、被選別物の少なくとも一部に関する、不良品の混入率を表す品質情報を取得する工程と、目標品質条件の候補を達成可能に光学式選別機によって選別がなされた場合の良品として排出される被選別物の量および/または歩留りに関しての選別結果を品質情報に基づいてシミュレーションし、ユーザに提示する工程と、光学式選別機によって選別を行う際に採用すべき最終的な目標品質条件をユーザが決定する工程と、最終的な目標品質条件を達成可能な選別制御パラメータに基づいて、光学式選別機によって選別を実行する工程と、を備えている。この方法によれば、第1の形態と同様の効果が得られる。
【0025】
本発明の第13の形態によれば、光学式選別機が提供される。この光学式選別機は、移送中の被選別物に光を照射するように構成された光源と、光源から照射され、被選別物に関連付けられた光を検出するように構成された光学センサと、光学センサによって取得された信号に基づいて不良品と判定された被選別物の少なくとも一部を選別するように構成された選別装置と、光学式選別機の動作を制御するように構成されたコントローラと、を備えている。コントローラは、被選別物の少なくとも一部に関する、不良品の混入率を表す品質情報の入力を受け付け、光学式選別機から良品として排出される被選別物における不良品の混入許容率に関しての目標品質条件の複数の候補ごとに、目標品質条件の候補を達成可能に光学式選別機によって選別がなされた場合の良品として排出される被選別物の量および/または歩留りに関する選別結果を品質情報に基づいてシミュレーションし、シミュレーションの結果に基づいて、選別装置によって選別を行う際に採用すべき最終的な目標品質条件を決定し、最終的な目標品質条件を達成可能な選別制御パラメータに基づいて選別を実行するように構成される。
【0026】
目標品質条件の複数の候補は、予め定められ、光学式選別機のメモリに記憶されていてもよいし、あるいは、ユーザによって入力され、コントローラが、その入力を受け付けてもよい。コントローラは、最も歩留りが高くなる目標品質条件の候補を最終的な目標品質条件として決定してもよいし、あるいは、良品として排出される被選別物の量に、予め定められた製品単価を乗じて、製品売上高予測値を算出し、製品売上高予測値が最も高くなる目標品質条件の候補を、最終的な目標品質条件として決定してもよい。コントローラは、最終的な目標品質条件の決定後に選別を自動的に実行してもよいし、あるいは、シミュレーション結果および/または製品売上高予測値を画像表示装置に出力して、ユーザに提示し、ユーザから選別実行指示を受け付けてから選別を実行してもよい。
【0027】
この光学式選別機によれば、コントローラが、歩留り、または、製品売上高予測値ができるだけ高くなる最適な選別制御パラメータを設定して、選別を実行することができる。第13の形態に、第2ないし第10のいずれかの形態を付加することもできる。
【0028】
本発明の第14の形態によれば、光学式選別機が提供される。この光学式選別機は、移送中の被選別物に光を照射するように構成された光源と、光源から照射され、被選別物に関連付けられた光を検出するように構成された光学センサと、光学センサによって取得された信号に基づいて不良品と判定された被選別物の少なくとも一部を選別するように構成された選別装置と、光学式選別機の動作を制御するように構成されたコントローラと、を備えている。コントローラは、光学式選別機から良品として排出される被選別物における不良品の混入許容率に関しての目標品質条件の入力を受け付け、選別運転中において、光学センサによって取得された信号に基づいて、所定期間内における被選別物に占める不良品の混入状況を検出し、混入状況と目標品質条件とに基づいて、選別制御パラメータを変更可能に構成される。この光学式選別機によれば、不良品の実際の混入状況に応じて、目標品質条件を達成可能な選別制御パラメータを設定できる。したがって、目標品質条件を確実に達成できる。第14の形態に、第7ないし第10のいずれかの形態を付加することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態による光学式選別機における被選別物の流れを示すブロック図である。
図2】一次選別系統および二次選別系統の概略構成を示す模式図である。
図3】一実施形態による選別処理の流れを示すフローチャートである。
図4】一実施形態によるパラメータ変更処理の流れを示すフローチャートである。
図5】目標品質条件を受け付けてシミュレーション結果を出力するためのユーザインタフェースの一例を示す図である。
図6】各ノズルの噴射担当範囲の設定の一例を示す模式図である。
図7】光学センサによって取得された信号に基づいて選別結果を演算する方法の一例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の一実施形態としての光学式選別機(以下、単に選別機と呼ぶ)20の概略構成を示す模式図である。本実施形態では、選別機20は、被選別物90の一例としての米粒(より具体的には、玄米)から不良品(整粒でないことを意味し、例えば、未熟粒、着色粒、異物(例えば、小石、泥、ガラス片など)などが含まれる)を選別するために使用される。
【0031】
図1に示すように、選別機20は、搬送ライン11から被選別物90を受け入れるように構成される。搬送ライン11は、籾摺り機(図示せず)によって脱ぷされた玄米(被選別物90)を籾摺り機から選別機20まで搬送する。
【0032】
搬送ライン11の途中には、計測装置12が配置されている。計測装置12は、サンプル採取機構と、カメラと、判定部と、を備えている。サンプル採取機構は、搬送ライン11によって搬送される被選別物90の一部をサンプルとして自動的に採取する。サンプル採取機構には、任意の公知の機構を使用することができる。サンプル採取機構は、例えば、搬送ライン11との連通状態を開閉可能なシャッタを有するシュートであってもよい。この場合、シャッタが開けられたときに、搬送ライン11上の被選別物90の一部がシュートに落下して計測装置12に供給されてもよい。あるいは、サンプル採取機構は、ロボットアームであってもよい。
【0033】
計測装置12のカメラは、採取されたサンプルを撮像して、画像データを取得する。計測装置12の判定部は、画像データに基づいて、被選別物90の品質情報を計測する。ここでの品質情報とは、サンプルにおける不良品の混入率(本実施形態では、重量比)を意味する。本実施形態では、不良品は、農産物検査法によって定められた農産物検査規格に準拠して定義される。具体的には、不良品とは、被害粒、死米、着色粒、異種穀物および異物を意味する。被害粒とは、損傷を受けた粒を意味し、例えば、胴割粒、砕粒などが含まれる。異種異物とは、玄米以外の穀粒を意味する。異物とは、穀粒以外の物を意味する。
【0034】
具体的には、判定部は、米の粒ごとに、当該米が、整粒であるか、不良品であるか(より具体的には、どのような種類の不良品であるか)を判定する。この判定は、周知のように、例えば、画像データの階調値と、予め設定された閾値と、を比較することによって行われる。この判定部の機能は、例えば、メモリに記憶された所定のプログラムをCPUが実行することによって実現される。本実施形態では、計測装置12で計測が行われたサンプルは、搬送ライン11に戻される。
【0035】
このようなカメラおよび判定部として穀粒判別器が使用されてもよい。穀粒判別器は周知であり、例えば、特開2016-125867号公報、特開2016-118455号公報、または、米国特許出願公開第2017/350825号明細書に記載された装置であってもよい。
【0036】
本実施形態では、計測装置12は、選別機20のコントローラ25に電気的に接続されており、計測装置12によって取得された品質情報はコントローラ25に出力される。コントローラ25は、選別機20の動作全般を制御する。コントローラ25の機能は、所定のプログラムをCPUが実行することによって実現されてもよいし、専用回路によって実現されてもよいし、これらの組み合わせによって実現されてもよい。コントローラ25の各機能は、一体的な一つの装置によって実現されてもよい。例えば、コントローラ25の各機能が、一つのCPUによって実現されてもよい。あるいは、コントローラ25の各機能は、少なくとも二つの装置に分散配置されてもよい。例えば、コントローラ25は、後述する一次選別系統20a専用のコントローラと、二次選別系統20b専用のコントローラと、それらを統括するコントローラと、を備えていてもよい。
【0037】
計測装置12が搬送ライン11に設けられる代わりに、選別機20が計測装置12を備えていてもよい。この場合、選別機20における被選別物90の流れの一次選別系統20aよりも上流側に、計測装置12が配置される。
【0038】
図1に示すように、選別機20は、一次選別系統20aと二次選別系統20bとを備えている。本実施形態では、一次選別系統20aおよび二次選別系統20bは同一の装置構造を有している。このため、以下では、一次選別系統20aおよび二次選別系統20bを代表して、一次選別系統20aの概略構成について図2を参照して説明する。図2に示すように、一次選別系統20aは、光源31,32と、光学センサ41,42と、選別装置50と、貯留タンク71と、フィーダ72と、シュート73と、良品排出樋74と、不良品排出樋75と、を備えている。
【0039】
貯留タンク71は、被選別物90を一時的に貯留する。フィーダ72は、貯留タンク71に貯留された被選別物90を、被選別物移送手段の一例としてのシュート73上に供給する。シュート73上に供給された被選別物90は、シュート73上を下方に向けて滑走し、シュート73下端から落下する。シュート73は、多数の被選別物90を同時に落下させることができる所定幅を有している。以下の説明では、シュート73から落下した後に被選別物90が移送される方向(換言すれば、被選別物90の落下方向)を移送方向D1とも呼ぶ。また、移送方向D1に直交する方向(換言すれば、シュート73の幅方向)を直交方向D2とも呼ぶ。
【0040】
光源31は、被選別物90の移送経路95(換言すれば、被選別物90の落下軌跡)に対して一方側(フロント側とも呼ぶ)に配置されており、光源32は、被選別物90の移送経路95に対して他方側(リア側とも呼ぶ)に配置されている。光源31,32は、移送経路95上を移送中の被選別物90(つまり、シュート73から滑り落ちた被選別物90)に光33,34をそれぞれ照射する。本実施形態では、光源31,32の各々は、赤色光を放出する複数のLEDと、緑色光を放出する複数のLEDと、青色光を放出する複数のLEDと、近赤外光を放出する複数のLEDと、を備えている。ただし、光源31,32の仕様(例えば、数、発光形式、光33,34の波長領域など)は、特に限定されない。例えば、光源31,32として、可視光を放出するLEDのみ、または、近赤外光を放出するLEDのみが使用されてもよい。あるいは、近赤外光を放出するLEDは、フロント側およびリア側のうちの一方側のみに配置されてもよい。あるいは、光源31,32の一方が省略されてもよい。
【0041】
光学センサ41はフロント側に配置されており、光学センサ42はリア側に配置されている。光学センサ41,42は、光源31,32から照射され、被選別物90に関連付けられた光を検出する。具体的には、フロント側の光学センサ41は、フロント側の光源31から照射され、被選別物90で反射した光33と、リア側の光源32から照射され、被選別物90を透過した光34と、を検出可能である。リア側の光学センサ42は、リア側の光源32から照射され、被選別物90で反射した光34と、フロント側の光源31から照射され、被選別物90を透過した光33と、を検出可能である。
【0042】
光学センサ41,42の各々は、本実施形態では、カラーCCDセンサおよび近赤外センサであり、直線状に配列された複数の受光素子を備えている。複数の受光素子は、直交方向D2(つまり、シュート73の幅方向)に配列されている。このため、光学センサ41,42は、シュート73の所定幅にわたって移送される多数の被選別物90を同時に撮像することができる。光学センサ41,42の仕様は、特に限定されず、光源31,32の仕様に応じて任意に決定され得る。また、光学センサ41,42の一方が省略されてもよい。
【0043】
光学センサ41,42からの出力、すなわち、検出された光の強度を表すアナログ信号は、AC/DCコンバータ(図示省略)によって、所定のゲインで増幅され、さらに、デジタル信号に変換される。このデジタル信号(換言すれば、アナログ信号に対応する階調値)は、コントローラ25(図1参照)に入力される。コントローラ25は、入力された光の検出結果(つまり画像)に基づいて、被選別物90のうちの不良品を判別する。具体的には、不良品の種類ごとに予め定められた色(波長)に対応する画像の階調値(換言すれば、画像の濃度)と、不良品の種類ごとに予め定められた閾値(以下、濃度閾値とも呼ぶ)と、を比較し、その大小関係に基づいて、被選別物90が整粒であるか、それとも、不良品であるかが判定される。あるいは、同様の比較によって、被選別物90を表す画像の各画素が不良部分を表しているか否かが判定される。この判定には、光学センサ41によって検出される反射光33、透過光34、および、反射光33と透過光34とが合成された光、ならびに、光学センサ42によって検出される反射光34、透過光33、および、反射光33と透過光34とが合成された光のうちの少なくとも一つに基づく画像が使用され得る。また、特定の種類の不良品については、不良部分(不良を表す画素)のサイズに関する閾値(以下、サイズ閾値)が設けられてもよい。例えば、胴割粒については、亀裂長さに関するサイズ閾値が設定され、サイズ閾値以上の亀裂長さを有する被選別物90のみが胴割粒であると判定されてもよい。また、砕粒については、粒の大きさ(例えば、面積または長さ)に関するサイズ閾値が設定され、サイズ閾値以下の粒の大きさを有する被選別物90が砕粒であると判定されてもよい。また、砕粒以外の任意の種類の不良品についても、サイズ閾値が設定され、サイズ閾値以上の大きさの不良部分を有する被選別物90のみが不良品であると判定されてもよい。
【0044】
選別装置50は、不良品と判定された被選別物90の少なくとも一部に向けてエアを噴射して、当該被選別物90を選別する。具体的には、選別装置50は、複数のノズル51と、ノズル51に対応する数(本実施形態では、ノズル51と同数であるが、ノズル51の数と異なっていてもよい)のバルブ52と、を備えている。複数のノズル51は、直交方向D2(つまり、シュート73の幅方向)に配列されている。バルブ52として、例えば、ピエゾバルブ、電磁バルブなどを使用することができる。
【0045】
複数のノズル51は、複数のバルブ52をそれぞれ介して、コンプレッサ(図示せず)に接続されている。コントローラ25からの制御信号に応じて複数のバルブ52が選択的に開かれることによって、複数のノズル51は、被選別物90に向けてエア53を選択的に噴射する。より具体的には、複数のノズル51の各々には、直交方向D2における被選別物90の各検出位置に関しての噴射担当範囲が対応付けられる。そして、複数のノズル51の各々は、対応する噴射担当範囲内に不良品(または、不良品のうちの不良部分)が位置するとき、または、対応する噴射担当範囲内に不良品(または、不良品のうちの不良部分)の所定位置(例えば、中心)が位置するときにエア53を噴射する。このように、複数のノズル51の各々には、直交方向D2における被選別物90の各検出位置に関しての、エア53の噴射を担当すべき範囲が割り当てられている。実際には、噴射担当範囲は、コントローラ25に入力される画像上の直交方向D2の位置によって定義される。
【0046】
不良品と判定された被選別物90の全部または一部にはエア53が噴射される(全部または一部のいずれにエア53を噴射するかについては、後述する)。エア53を噴射された被選別物90は、エア53によって吹き飛ばされ、シュート73からの落下軌道(つまり、移送経路95)から逸脱して不良品排出樋75に導かれる(図2に被選別物91として示す)。一方、整粒と判定された被選別物90には、エア53は噴射されない。このため、整粒は、落下軌道を変えることなく、良品として、良品排出樋74に導かれる(図2に被選別物92として示す)。上述の説明から明らかなように、良品排出樋74に導かれる「良品」には、整粒の他に、エア53によって噴射されなかった不整粒が含まれ得る。また、エア53の噴射によって、除去すべき被選別物90の周囲に存在する被選別物90が一緒に除去される(上述の巻き添え除去)が発生すると、良品として排出されるべき被選別物90(つまり、整粒)が不良品として排出されることになる。このため、不良品排出樋75に導かれる「不良品」には、整粒も含まれ得る。
【0047】
なお、シュート73から落下した後の被選別物90に向けてエア53を噴射する構成に代えて、シュート73上を滑走中の被選別物90に向けてエア53を噴射して、被選別物90の移送経路を変更してもよい。また、被選別物移送手段として、シュート73に代えて、ベルトコンベヤが使用されてもよい。この場合、ベルトコンベヤの一端から落下する被選別物に向けてエアが噴射されてもよい。あるいは、ベルトコンベヤ上で搬送中の被選別物に向けてエアが噴射されてもよい。
【0048】
ここで説明を図1に戻す。一次選別系統20a(より具体的には良品排出樋74)から良品として排出される被選別物90は、良品21ホッパに貯留される。良品21ホッパ内の被選別物90は、その後工程に設置された設備(例えば、計量・梱包装置)に供給される。一方、一次選別系統20a(より具体的には不良品排出樋75)から不良品として排出される被選別物90は、二次選別系統20bに投入される。二次選別系統20bに投入された被選別物90は、一次選別系統20aと同様に被選別物90を選別する。
【0049】
本実施形態では、選別機20は、二次選別系統20bから良品として排出される被選別物90の排出先を切替バルブ23によって切替可能に構成される。具体的には、当該排出先は、一次選別系統20aへの再投入(図1に実線の矢印で示す)と、良品としての排出(図1に点線の矢印で示す)、すなわち、良品21ホッパへの排出と、の間で切替可能である。ユーザは、ユーザインタフェースを使用して、このような排出先の切替操作を行うことができる。通常時には、この排出先は、一次選別系統20aへの再投入に設定される。この設定によれば、一次選別系統20aにおいて巻き添え除去された被選別物90を、再度、一次選別系統20aに投入して、最終的には良品として回収することができる。このため、良品として回収される被選別物90の歩留りを向上できる。
【0050】
さらに、選別機20は、二次選別系統20bから不良品として排出される被選別物90の排出先を切替バルブ24によって切替可能に構成される。具体的には、当該排出先は、良品としての排出(図1に点線の矢印で示す)、すなわち、良品21ホッパへの排出と、不良品としての排出(図1に実線の矢印で示す)、すなわち、不良品容器22への排出と、の間で切替可能である。ユーザは、ユーザインタフェースを使用して、このような排出先の切替操作を行うことができる。通常時には、この排出先は、不良品容器22への排出に設定される。
【0051】
本実施形態では、二次選別系統20bの選別精度は、一次選別系統20aの選別精度よりも低く設定される。つまり、二次選別系統20bから良品として排出される被選別物90は、一次選別系統20aから良品として排出される被選別物90よりも、不良品の混入率が高くなる。このような設定は、例えば、二次選別系統20bにおける不良品の感度を、一次選別系統20aにおける不良品の感度よりも低く設定することによって(換言すれば、濃度閾値および/またはサイズ閾値の大きさを調節することによって)実現可能である。このような設定によれば、歩留りをさらに向上することができる。ただし、二次選別系統20bの選別精度は、一次選別系統20aの選別精度と同等に設定されてもよい。
【0052】
上述した選別機20は、良品として回収される被選別物90の品質(具体的には、不良品の種類ごとの混入率)が、ユーザが求める品質となるように選別を実行する機能を有している。そのような機能の詳細について以下に説明する。図3は、選別機20によって実行される選別処理の流れの一例を示すフローチャートである。この処理では、コントローラ25は、まず、原料、すなわち、一次選別系統20aへ投入される被選別物90の品質情報の入力を受け付ける(ステップS110)。本実施形態では、この品質情報は、計測装置12からコントローラ25へ入力される。つまり、コントローラ25は、計測装置12において計測された、サンプルについての不良品の混入率の入力を受け付ける。本実施形態では、コントローラ25は、被害粒、死米、着色粒、異種穀物(より具体的には、籾、麦、その他異種穀物ごと)、異物ごとの混入率(重量比)の入力を受け付ける。
【0053】
代替実施形態では、品質情報は、ユーザインタフェースを介してユーザによって入力されてもよい。この場合、ユーザは、穀粒判別器を用いてサンプルの品質を計測し、その計測結果を入力してもよい。あるいは、ユーザは、サンプルの品質を目視確認し、その確認結果を入力してもよい。また、計測装置12からコントローラ25へ入力される混入率が粒数比で与えられる場合には、コントローラ25は、不良品の種類ごとに設定された比重を用いて、重量比を算出してもよい。
【0054】
次いで、コントローラ25は、選別機20のユーザインタフェース(図示せず)を介してユーザによって入力される原料の基本情報の入力を受け付ける(ステップS120)。この基本情報には、投入量、品種、性状(水分など)などが含まれ得る。
【0055】
次いで、コントローラ25は、ユーザによって入力される目標品質条件の候補を受け付ける(ステップS130)。目標品質条件とは、選別機20から良品として排出される被選別物90における不良品の混入許容量に関する条件である。換言すれば、選別機20から良品として排出される被選別物90に対してユーザが所望する品質条件である。上述の農産物検査規格では、品位として、1等、2等、3等が定められている。この等級が高いほど(つまり、等級数が小さいほど)、製品(被選別物90)は高品位であり、高値で取引される。各品位には、死米、着色粒、異種穀物および異物のそれぞれの混入率の上限値、ならびに、被害粒、死米、着色粒、異種穀物および異物の合計(換言すれば、非整粒)の混入率の上限値が定められている。
【0056】
図5は、目標品質条件を受け付けるためのユーザインタフェースの一例を示す図である。図示するユーザインタフェース60は、タッチパネル式のグラフィカルユーザインタフェースである。ユーザインタフェース60の原料品質表示領域61には、コントローラ25がステップS110で受け付けた品質情報が表示される。本実施形態では、原料品質表示領域61には、品質情報に加えて、ステップS120で受け付けた基本情報が表示される。図5の例では、原料品質表示領域61には、ステップS120で受け付けた投入量300kgが表示されている。ステップS130では、ユーザは、目標品質入力領域62を介して、目標品質条件の候補を入力することができる。目標品質入力領域62は、選択可能な等級入力領域63および混入率入力領域64を備えている。
【0057】
等級入力領域63では、ユーザは、農産物検査規格に準拠した等級数を入力可能である。具体的には、ユーザは、「+」ボタンまたは「-」ボタンを押す回数に応じて、目標品質条件の候補として、1等、2等、3等、および、それらの中間の等級を選択可能である。図5では、等級入力領域63が選択され、さらに、1等が選択された状態を示している。
【0058】
等級入力領域63および混入率入力領域64のうちから混入率入力領域64が選択された場合には、混入率入力領域64では、ユーザは、目標品質条件の候補として、不良品の種類ごとに、任意の値の混入率上限値を入力することができる。具体的には、ユーザは、「+」ボタンまたは「-」ボタンを押すことで、混入率上限値の数値を増減できる。現在設定されている混入率上限値は、「+」ボタンと「-」ボタンとの間に表示される。
【0059】
本実施形態では、等級入力領域63と混入率入力領域64とは、互いに連動するように構成される。具体的には、等級入力領域63において、いずれかの等級が選択されると、混入率入力領域64では、その選択された等級に対応する、不良品の種類ごとの混入率上限値が表示される。図5では、混入率入力領域64には、等級入力領域63で選択された1等に対応する不良品の種類ごとの混入率上限値が表示されている。また、混入率入力領域64において、不良品の種類ごとに、任意の値の混入率上限値が入力されると、その入力内容に対応する等級が等級入力領域63に表示される。例えば、入力内容が、不良品の種類によって、1等に対応する混入率上限値と、2等に対応する混入率上限値と、を含む場合には、良品全体としては2等に相当するので、等級入力領域63では、2等が選択されたときと同じ表示が行われる。
【0060】
次いで、コントローラ25は、ステップS130で受け付けた目標品質条件の候補を達成可能に選別機20によって選別がなされた場合の、選別機20から良品として排出される被選別物90の量および歩留りに関する選別結果をシミュレーションし、シミュレーション結果を出力する(ステップS140)。
【0061】
具体的には、コントローラ25は、まず、目標品質条件の候補に基づいて、不良品の種類ごとに制御目標値を設定する。この制御目標値は、目標品質条件の候補に対応する混入率上限値以下に設定される。例えば、1等が選択される場合、1等に相当する死米の混入率上限値は7%である。このため、制御目標値は7%以下の値に設定される。本実施形態では、制御目標値は、目標品質条件の候補に対応する混入率上限値と同じ値に設定される。代替実施形態では、制御目標値は、目標品質条件の候補に対応する混入率上限値に対して安全係数を乗じた値に設定される。安全係数は、目標品質条件の候補を確実に達成するための余裕代を発生させるための係数であり、1未満の正の数である。安全係数は、例えば、0.7以上、1未満の任意の値であってもよい。安全係数を過剰に小さくしないことによって、歩留りの低下を抑制できる。
【0062】
次いで、コントローラ25は、不良品の種類ごとの制御目標値がちょうど達成されるように(つまり、選別結果が制御目標値と一致するように)選別が行われた場合の、選別機20から良品として排出される被選別物90の量および歩留りを演算する。例えば、品質情報における死米の割合が10%であり、死米の制御目標値が7%である場合には、選別機20から良品として排出される被選別物90に占める死米の割合が7%となるように、選別機20に投入された全ての死米の一部のみを選別(除去)したときの、選別機20から良品として排出される被選別物90の量および歩留りが演算される。つまり、制御目標値を越える過剰な選別は行われない前提で、演算が行われる。全く選別しなくても制御目標値を達成できる不良品の種類については、選別(除去)が一切行われないものとして演算が行われる。
【0063】
次いで、コントローラ25は、演算結果すなわちシミュレーション結果をユーザインタフェース60に出力する。図5では、シミュレーション結果を表示するための推定値表示領域65において、選別機20から良品として排出される被選別物90の量が「製品量」として表示されるとともに、歩留りが表示されている。製品量は、ステップS120で受け付けた投入量に基づいて算出される。
【0064】
ステップS140では、このようにしてシミュレーション結果が表示されるので、ユーザは、ステップS130で入力した目標品質条件の候補で選別を行うと、どのような選別結果(つまり、製品量および歩留り)が得られるのかを、選別処理が開始される前に知ることができる。ステップS140で表示された製品量および歩留りがユーザの所望する範囲にない場合には、ユーザは、再度、目標品質条件の別の候補を入力してもよい。その場合、コントローラ25は、再度、ステップS130,140を実行し、目標品質条件の別の候補で選別を行った場合の製品量および歩留りを表示することになる。このような操作によって、ユーザは、目標品質条件と、製品量および歩留りと、の複数の組み合わせを確認することができ、これらの組み合わせの中から、目標品質条件と、製品量および歩留りと、の所望の組み合わせに対応する目標品質条件を、選別機20によって選別を行う際に採用すべき最終的な目標品質条件として決定することができる。
【0065】
代替実施形態では、コントローラ25は、目標品質条件の複数の候補の各々について選別結果をシミュレーションして、当該複数の候補の各々についてのシミュレーション結果を同時に表示してもよい。この場合、複数の候補は、予め定められていてもよいし(例えば、1等、2等および3等として定められていてもよい)、あるいは、ユーザが複数の候補を1画面で入力できるユーザインタフェースを選別機20が備えていてもよい。さらなる代替実施形態では、製品量および歩留りのうちのいずれか一方のみが表示されてもよい。
【0066】
次いで、コントローラ25は、ユーザによって入力される最終的な目標品質条件の入力を受け付ける(ステップS150)。次いで、コントローラ25は、最終的な目標品質条件を達成可能な選別制御パラメータを設定する(ステップS160)。
【0067】
この選別制御パラメータには、不良品と判定された被選別物90のうちの、選別すべき(換言すれば、エア噴射によって除去すべき)被選別物90の割合(以下、選別率とも呼ぶ)に関する設定値(以下、選別率設定値)が含まれる。
【0068】
この選別率設定値は、品質情報と、最終的な目標品質条件に対応する制御目標値と、に応じて、不良品の種類ごとに設定される。具体的には、最終的な目標品質条件に対応する制御目標値をちょうど達成する選別率(つまり、選別結果が制御目標値と一致する場合の選別率)が、品質情報と当該制御目標値とに基づいて演算によって求められる。例えば、品質情報に基づく死米の混入率が10%であり、死米に関する制御目標値が7%であり、投入量が300kgであり、シミュレーションに基づく製品量が285kgである場合、投入量における死米の混入量は、300kg×10%=30kgとなり、製品における死米の混入許容量は、285kg×7%=19.95kgとなる。このため、除去すべき死米の量は、30kg-19.95kg=10.05kgとなり、制御目標値をちょうど達成する選別率は、10.05kg÷30kg=33.5%となる。一次選別系統20aについては、選別率設定値は、制御目標値をちょうど達成する選別率と同じ値、または、当該選別率に対して安全係数(1よりも大きい値)を乗じた値に設定される。本実施形態では、二次選別系統20bの選別率設定値は、二次選別系統20bから良品として排出される被選別物90における不良品の種類ごとの混入率が原料品質(すなわち、ステップS110で受け付けた品質情報に基づく混入率)と一致するように設定される。
【0069】
さらに、選別制御パラメータには、不良品の判定のための閾値、すなわち、不良品の種類ごとに予め定められた上述の閾値(濃度閾値、または、濃度閾値およびサイズ閾値)が含まれる。不良品の判定のための閾値は、不良品の感度を規定する。本実施形態では、不良品の判定のための閾値は、品質情報、および、最終的な目標品質条件に対応する制御目標値の如何にかかわらず、初期値に設定される。初期値は、実験等によって予め定められる。
【0070】
さらに、選別制御パラメータには、不良品を除去するためのエア53の噴射範囲に関する設定が含まれる。ここでのエア噴射範囲とは、移送中の被選別物90とともに移動する座標系における範囲を意味する。噴射範囲に関する設定には、エア53の噴射期間(すなわち、噴射を継続する時間)の設定が含まれ得る。噴射期間が長いほど、移送方向D1における被選別物90に対するエア53の噴射範囲が大きくなるので、不良品をより確実に除去することができるが、その一方で、巻き添え除去が発生する確率が上がる。
【0071】
さらに、噴射範囲に関する設定には、複数のノズル51の配列方向(直交方向D2)における被選別物90の検出位置に関しての噴射担当範囲の割り当てについての設定が含まれ得る。以下では、所定の検出位置に不良品のうちの不良部分の中心が位置するときに、当該検出位置を噴射担当範囲に含むノズル51からエア53が噴射されるものと仮定して、噴射担当範囲の割り当ての設定について具体的に説明する。
【0072】
図6は、噴射担当範囲の割り当ての設定の一例を示す模式図である。図6では、説明の便宜上、直交方向D2に配列された多数のノズル51のうちの配列の途中の3つのノズル51のみをノズル51a~51cとして示している。ノズル51a~51cには、バルブ52a~52cがそれぞれ接続されている。図6において、格子の各々は、コントローラ25に入力された画像80を構成する画素を表している。図6に示すように、ノズル51a~51cには、噴射担当範囲83a~83cがそれぞれ対応付けられている。図6において、ノズル51a,51cと、それらに対応付けられた噴射担当範囲83a,83cと、の対応関係は、1点鎖線で表しており、ノズル51bと、それに対応付けられた噴射担当範囲83bと、の対応関係は、点線で表している。図6に示すように、隣接する二つのノズル51a,51bに対応する二つの噴射担当範囲83a,83bは、オーバラップ領域84aで互いにオーバラップしている。同様に、隣接する二つのノズル51b,51cに対応する二つの噴射担当範囲83b,83cは、オーバラップ領域84bで互いにオーバラップしている。
【0073】
不良部分の中心が画素82に位置しているとき、画素82は噴射担当範囲83bのみに属するので、噴射担当範囲83bに対応するノズル51bのみからエア53が噴射される。一方、不良部分の中心が画素81に位置しているとき、画素81はオーバラップ領域84aに属するので(つまり、噴射担当範囲83a,83bの両方に属するので)、噴射担当範囲83a,83bに対応する二つのノズル51a,51bからエア53が噴射される。このように、噴射担当範囲の割り当て如何によって、複数のノズル51のうちの一つのノズル51からエア53を噴射するか、それとも、当該一つのノズル51と、当該一つのノズル51に隣接するノズル51と、からエア53を噴射するかが定まるのである。オーバラップ領域は、ゼロ以上の任意の画素数で可変に設定され得る。隣接する二つのノズル51からエア53が噴射されると、直交方向D2における被選別物90に対するエア53の噴射範囲が大きくなるので、不良品をより確実に除去することができるが、その一方で、巻き添え除去が発生する確率が上がる。
【0074】
本実施形態では、噴射範囲に関する設定は、品質情報、および、最終的な目標品質条件に対応する制御目標値の如何にかかわらず、初期値に設定される。初期値は、実験等によって予め定められる。
【0075】
さらに、選別制御パラメータには、二次選別系統20bから良品として排出される被選別物90、および、二次選別系統20bから不良品として排出される被選別物90の排出先に関する設定(換言すれば、切替バルブ23,24の設定)が含まれる。本実施形態では、この排出先に関する設定は、品質情報、および、最終的な目標品質条件に対応する制御目標値の如何にかかわらず、初期状態(良品として排出される被選別物90の一次選別系統20aへの再投入、および、不良品として排出される被選別物90の不良品容器22への排出)に設定される。なお、切替バルブ23,24は省略可能であり、切替バルブ23のみが省略される場合には、排出先に関する設定は、不良品として排出される被選別物90の排出先に関する設定となり、切替バルブ24のみが省略される場合には、排出先に関する設定は、良品として排出される被選別物90の排出先に関する設定となる。
【0076】
さらに、選別制御パラメータには、流量(フィーダ72からシュート73への供給量)が含まれる。本実施形態では、この流量に関する設定は、品質情報、および、最終的な目標品質条件に対応する制御目標値の如何にかかわらず、初期値に設定される。初期値は、実験等によって予め定められる。流量が大きいほど、選別機20の処理能力が大きくなるが、その一方で、シュート73から落下した被選別物90間の隙間が小さくなるので、巻き添え除去が発生する確率が上がる。
【0077】
上記の説明から明らかなように、本実施形態では、最終的な目標品質条件を達成可能な選別制御パラメータを設定するに際して、最終的な目標品質条件を達成するための調節は、選別率設定値の調節のみによって行われる。ただし、選別率設定値に加えて、上述したその他の選別制御パラメータのうちの少なくとも一つが調節されてもよい。具体的には、品質情報、および、最終的な目標品質条件に対応する制御目標値に応じて、閾値(濃度閾値、または、濃度閾値およびサイズ閾値)、噴射期間および/またはオーバラップ領域の大きさ、排出先、および、流量のうちの少なくとも一つが変更されてもよい。さらに、コントローラ25は、選別率設定値以外の上述した選別制御パラメータの少なくとも一部に関する初期値または初期状態を、ステップS120で受け付けた品種および/または性状に応じて変更してもよい。
【0078】
このようにして選別制御パラメータを設定すると、コントローラ25は、ステップS160で設定した選別制御パラメータに基づいて、一次選別系統20aおよび二次選別系統20bによる選別を実行する(ステップS170)。
【0079】
ステップS170では、ステップS160で設定された選別率設定値に基づく選別が行われる。例えば、死米の選別率設定値が50%に設定されており、着色粒の選別率設定値が25%に設定されている場合、死米であると判定された被選別物90のうちの50%の被選別物90に対してのみエア53が噴射され、着色粒であると判定された被選別物90のうちの25%の被選別物90に対してのみエア53が噴射される。
【0080】
不良品のこのような選択的な除去は、本実施形態では、以下のようにして行われる。まず、コントローラ25は、所定期間内に取得された画像中の不良品をカウントする。そして、コントローラ25は、選別率設定値に対応する番号が付された不良品のみに対してエア53を噴射する。例えば、死米の選別率設定値が50%である場合には、偶数の番号が付された死米に対してのみエア53が噴射される。また、着色粒の選別率設定値が25%である場合には、4の倍数の番号が付された着色粒に対してのみエア53が噴射される。このような制御において、判別された不良部分の数が不良品の数に等しいものとして、不良品をカウントしてもよい。
【0081】
代替実施形態では、不良品の選択的な除去は、不良部分の濃度に応じた優先順位で行われてもよい。具体的には、高濃度な不良部分(濃度閾値との差が相対的に大きい階調値を有する不良部分)を有する不良品ほど、優先的に除去されてもよい。この構成は、例えば、所定期間内に取得された画像中の不良品を、不良部分の濃度に応じて順位付けし、選別率設定値に対応する順位までの不良部分を有する不良品に対してのみエア53を噴射することによって実現可能である。この構成によれば、より重度の不良(具体的には、濃度がより濃い不良)を有する不良品を優先的に除去して、製品品質を向上できる。例えば、不良品の種類が着色粒であれば、着色濃度が相対的に濃い着色粒を優先的に除去することができる。また、不良品の種類が白死米であれば、白色の濃度が相対的に濃い白死米を優先的に除去することができる。
【0082】
さらなる代替実施形態では、不良品の選択的な除去は、不良部分のサイズに応じた優先順位で行われてもよい。例えば、砕粒以外の不良品については、大きい不良部分(例えば、面積が大きい不良部分、長さが大きい不良部分など)を有する不良品ほど優先的に除去されてもよい。この構成によれば、より重度の不良を有する(具体的には、その不良部分がより大きい)不良品を優先的に除去して、製品品質を向上できる。例えば、不良品に全面着色粒と部分着色粒とが含まれる場合、部分着色粒よりも全面着色粒を優先的に除去できる。あるいは、砕粒については、大きい粒ほど優先的に除去されてもよい。目標品質条件は重量比で設定されるので、大きい粒(つまり、相対的に重い粒)を優先的に除去した方が、1回のエア噴射で除去できる不良品の重量が大きくなる。このため、より少ないエア噴射回数で目標品質条件を効率的に達成することができる。エア噴射回数が減ると、巻き添え除去の発生回数も減るので、この構成によれば、歩留りを向上できる。
【0083】
さらなる代替実施形態では、不良品の種類間で、除去するか否かの判断(以下、除去判断とも呼ぶ)についての優先順位が設定されてもよい。具体的には、制御目標値が厳しい(目標とする混入率が小さい)種類の不良品は、除去判断が優先的に行われてもよい。この場合、例えば、第1の種類の不良と、第1の種類の不良よりも除去判断の優先順位が低い第2の種類の不良と、を有する不良品が存在する場合、第1の種類の不良に関して除去不要と判断されたときには、第2の種類の不良に関しては除去判断が行われず、当該不良品は、良品として扱われる。このような構成によれば、複数の種類の不良を重複して有する不良品が存在する場合に、不良品が制御目標値に対して過剰に除去されることを抑制できる。さらなる代替実施形態では、品質情報と制御目標値との差が大きい種類の不良品は、除去判断が優先的に行われてもよい。
【0084】
本実施形態では、ステップS170では、コントローラ25は、実際の選別処理の結果(つまり、各種類の不良品の混入率)が最終的な目標品質条件に近づくようにフィードバック制御を行うために、パラメータ変更処理を実行可能に構成される。パラメータ変更処理とは、選別運転中において、処理状況に応じて選別制御パラメータを変更する処理である。以下、パラメータ変更処理について説明する。
【0085】
図4は、パラメータ変更処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、選別機20の選別運転中に、定期的(例えば、数秒ごと、または、数分ごと)に繰り返し実行される。パラメータ変更処理が開始されると、コントローラ25は、まず、光学センサ41,42によって取得された信号(より具体的には、画像)に基づいて、所定期間内における目標品質条件に関する選別結果を演算する(ステップS210)。換言すれば、コントローラ25は、実際に処理している被選別物90の画像から、不良品の種類ごとの混入状況を検出し、その検出結果に基づいて、選別機20から良品として排出される被選別物90における不良品の種類ごとの混入率(つまり、選別結果)を演算する。
【0086】
具体的には、一次選別系統20aの光学センサ41,42によって取得される画像に基づけば、一次選別系統20aに投入された被選別物90の全体量および不良品の種類ごとの量を把握できる。また、二次選別系統20bの光学センサ41,42によって取得される画像に基づけば、二次選別系統20bに投入された被選別物90の全体量および不良品の種類ごとの量を把握できる。一次選別系統20aから不良品として排出された被選別物90は、二次選別系統20bに投入されるので、一次選別系統20aから良品(製品)として排出される被選別物90の全体量および不良品の種類ごとの量は、一次選別系統20aに投入された被選別物90の全体量および不良品の種類ごとの量と、二次選別系統20bに投入された被選別物90の全体量および不良品の種類ごとの量と、のそれぞれの差から演算可能である。
【0087】
図7は、ステップS170での演算方法の一例を示す図表である。この例では、単純化のため、二次選別系統20bから良品として排出された被選別物90の一次選別系統20aへの再投入は考慮されていない。一次選別系統20aへの投入量「A(kg)」は、例えば、以下のようにして算出できる。まず、一次選別系統20aの光学センサ41,42で取得された画像を用いて、被選別物90を表す粒の数または画素の数がウントされる。そして、得られた粒数または画素数に、1粒当たりの重量の想定値、または、1画素当たりの重量の想定値を乗じて、投入量「A(kg)」が算出される。整粒と不良品との間、あるいは、不良品の種類間では、粒の比重が異なることがある。このため、代替実施形態では、整粒および不良品の種類ごとに、被選別物90を表す粒の数または画素の数をカウントし、得られた粒数または画素数に、整粒および不良品の種類ごとに設定された1粒または1画素当たりの重量の想定値を乗じて、整粒および不良品の種類ごとの重量が計算されてもよい。この場合、整粒および不良品の種類ごとの重量を足し合わせれば、投入量「A(kg)」が算出される。二次選別系統20bへの投入量「I(kg)」についても、二次選別系統20bの光学センサ41,42で取得された画像を用いて、同様の手法で算出できる。
【0088】
また、一次選別系統20aへ投入された被選別物90に占める整粒の重量比「B(%)」は、例えば、以下のようにして算出できる。まず、一次選別系統20aの光学センサ41,42で取得された画像を用いて、整粒を表す粒の数または画素の数がカウントされる。そして、得られた粒数または画素数に、整粒1粒当たりの重量の想定値、または、整粒1画素当たりの重量の想定値を乗じて、整粒の重量が算出される。そして、整粒の重量を投入量「A(kg)」で割れば、整粒の重量比「B(%)」が算出される。各不良品の重量比C~Hについても、類似の手法で算出できる。具体的には、例えば、まず、不良部分の数が不良品の数と等しいものと仮定して、特定の種類の不良品を表す粒の数がカウントされる。そして、得られた粒数または画素数に、当該種類の不良品1粒当たりの重量の想定値を乗じて、各不良品の重量比C~Hが算出される。あるいは、不良部分の数が不良品の数と等しいものと仮定して、特定の種類の不良部分の数に、当該種類の不良品の1粒当たりの画素数の想定値を乗じ、さらに、当該種類の不良品の1画素当たりの重量の想定値を乗じて、各不良品の重量比C~Hが算出される。また、二次選別系統20bへ投入された被選別物90に占める整粒および各不良品の重量比J~Pも、二次選別系統20bの光学センサ41,42で取得された画像を用いて、一次選別系統20aと同様の手法で算出できる。
【0089】
一次選別系統20aから良品として排出される被選別物90(すなわち、製品)に占める整粒の重量比Tは、一次選別系統20aに投入した被選別物90の量(Akg)と、そのうちの整粒の割合(B%)と、を乗じた量から、二次選別系統20bに投入した被選別物90の量(Ikg)と、そのうちの整粒の割合(J%)と、を乗じた量を差し引いた値を製品量(Skg)で乗じることによって算出できる。製品に占める各不良品の割合(すなわち、混入率)U~Zについても、図7に示すとおり、同様の手法で算出可能である。
【0090】
ここで説明を図4に戻す。ステップS210での演算の基礎となる画像の取得期間(上述の所定期間)は、例えば、前回、パラメータ変更処理が実行されてから現在までであってもよい。あるいは、選別機20の選別運転開始から現在まででもよい。また、ステップS210での演算の基礎となる画像の取得タイミングは、一次選別系統20aの光学センサ41,42で取得される画像(以下、一次選別画像とも呼ぶ)と、二次選別系統20bの光学センサ41,42で取得される画像(以下、二次選別画像とも呼ぶ)と、で同じであってもよい。こうすれば、選別結果を簡単に演算できる。あるいは、二次選別画像は、一次選別画像よりも遅れたタイミングで取得されてもよい。この遅延時間は、一次選別系統20aにおいて撮像された被選別物90が不良品として排出され、二次選別系統20bへ投入され、撮像されるまでの想定時間に相当する。こうすれば、選別結果をより正確に演算できる。
【0091】
上述のように選別結果を演算すると、コントローラ25は、次いで、演算した選別結果が最終的な目標品質条件よりも高いか、それとも、低いかを判断する(ステップS220)。この判断は、不良品の種類ごとに行われる。
【0092】
判断の結果、演算した選別結果が最終的な目標品質条件よりも低ければ(ステップS220:低い)、コントローラ25は、製品の品質が向上する(つまり、演算された選別結果が表す品質が最終的な目標品質条件に近づく)方向に選別制御パラメータを変更する(ステップS230)。具体的には、本実施形態では、コントローラ25は、目標品質条件よりも低い品質であると判断された不良品の種類についての選別率設定値を、現状の設定値よりも大きい値に変更する。新たな選別率設定値は、演算した選別結果(図7のU~Z)と、目標品質条件と、の差に応じて、最終的な目標品質条件が達成されるように計算される。この構成によれば、不良品と判定された被選別物90に対するエア53の噴射頻度が増えるので(換言すれば、意図的に除去しない不良品の数が減るので)、製品の品質を最終的な目標品質条件に近づけることができる。
【0093】
代替実施形態では、コントローラ25は、目標品質条件よりも低い品質であると判断された不良品の種類についての濃度閾値を、現状の設定よりも小さな値に変更する。つまり、不良品に対する感度が高まるように、濃度閾値が変更される。さらなる代替実施形態では、被害粒(砕粒を含む)、死米、着色粒、異種穀物および異物の合計の混入率に関する選別結果が、目標品質条件よりも低い品質であると判断された場合は、コントローラ25は、砕粒についてのサイズ閾値を、現状の設定よりも大きな値に変更する。さらなる代替実施形態では、砕粒以外の任意の種類の不良品が、目標品質条件よりも低い品質であると判断された場合は、コントローラ25は、当該種類の不良品についてのサイズ閾値を現状の設定よりも小さな値に変更する。このように濃度閾値またはサイズ閾値を変更すれば、不良品として判定される被選別物90の数が増えるので、不良品と判定された被選別物90に対するエア53の噴射頻度も増加し、製品の品質を最終的な目標品質条件に近づけることができる。
【0094】
さらなる代替実施形態では、コントローラ25は、目標品質条件よりも低い品質であると判断された不良品の種類についての噴射範囲の設定を、噴射範囲が大きくなるように変更する。具体的には、コントローラ25は、噴射期間を、現状の設定よりも長い値に変更してもよい。あるいは、コントローラ25は、噴射期間の変更に代えて、または、加えて、噴射担当範囲の割り当ての設定を、オーバラップ領域が大きくなるように(つまり、二つのノズル51からエア53が噴射されやすくなるように)変更してもよい。このように噴射範囲を変更すれば、エア53が噴射された際に、不良品をより確実に除去できるので、製品の品質を最終的な目標品質条件に近づけることができる。
【0095】
さらなる代替実施形態では、不良品の全ての種類または一部の種類について、演算した選別結果が最終的な目標品質条件よりも低ければ、コントローラ25は、流量を、現状の設定よりも小さい値に変更する。こうすれば、シュート73から落下した被選別物90間の隙間が大きくなるので、不良品のより正確な検出を行うことができる。したがって、製品の品質を最終的な目標品質条件に近づけることができる。しかも、シュート73から落下した被選別物90間の隙間が大きくなるので、巻き添え除去の発生が抑制され、歩留りも向上できる。
【0096】
さらなる代替実施形態では、上述した各種の選別パラメータの変更のうちの二つ以上を任意に組み合わせてもよい。こうすれば、製品の品質を最終的な目標品質条件に、より確実に近づけることができる。ステップS230によれば、ステップS110で受け付けた品質情報と、実際の不良品混入率と、が異なっていても、最終的な目標品質条件を確実に達成することができる。
【0097】
一方、演算した選別結果が最終的な目標品質条件よりも高ければ(ステップS220:高い)、コントローラ25は、製品の歩留まりが向上する方向に選別制御パラメータを変更する。これは、最終的な目標品質条件を達成できる程度に製品の品質を低下させつつ、歩留りを向上させることを意図している。具体的には、本実施形態では、コントローラ25は、目標品質条件よりも高い品質であると判断された不良品の種類についての選別率設定値を、現状の設定値よりも小さい値に変更する。新たな選別率設定値は、演算した選別結果と、目標品質条件と、の差に応じて、変更後の製品の品質が最終的な目標品質条件を下回らないように計算される。この構成によれば、最終的な目標品質条件を達成しつつ、製品の歩留まりを向上できる。
【0098】
代替実施形態では、コントローラ25は、目標品質条件よりも高い品質であると判断された不良品の種類についての濃度閾値を、現状の設定よりも大きな値に変更する。これにより、不良品の感度が低下するので(つまり、不良品と判断される被選別物90の数が減少するので)、除去される不良品の数も減少し、歩留りを向上できる。さらなる代替実施形態では、被害粒(砕粒を含む)、死米、着色粒、異種穀物および異物の合計の混入率に関する選別結果が、目標品質条件よりも高い品質であると判断された場合は、コントローラ25は、砕粒についてのサイズ閾値を、現状の設定よりも小さな値に変更する。こうしても、歩留りを向上できる。しかも、比較的大粒の(すなわち、重量が比較的大きい)砕粒が除去対象から除外され、比較的小粒の(すなわち、重量が比較的小さい)砕粒が除去対象に留まるので、重量ベースで算出される歩留りを効率的に向上できる。さらなる代替実施形態では、砕粒以外の任意の種類の不良品が、目標品質条件よりも高い品質であると判断された場合は、コントローラ25は、当該種類の不良品についてのサイズ閾値を現状の設定よりも大きな値に変更する。こうしても、不良品の感度が低下するので、歩留りを向上できる。
【0099】
さらなる代替実施形態では、コントローラ25は、目標品質条件よりも高い品質であると判断された不良品の種類についての噴射範囲の設定を、噴射範囲が小さくなるように変更する。具体的には、コントローラ25は、噴射期間を、現状の設定よりも短い値に変更してもよい。あるいは、コントローラ25は、噴射期間の変更に代えて、または、加えて、噴射担当範囲の割り当ての設定を、オーバラップ領域が小さくなるように(つまり、二つのノズル51からエア53が噴射されにくくなるように)変更してもよい。このように噴射範囲を変更すれば、巻き添え除去の発生が抑制され、歩留りを向上できる。
【0100】
さらなる代替実施形態では、不良品の全ての種類について、演算した選別結果が最終的な目標品質条件よりも高ければ、二次選別系統20bから良品または不良品として排出される被選別物90の排出先に関する設定を変更する。具体的には、二次選別系統20bから良品として排出される被選別物90の排出先が一次選別系統20aへの再投入から良品21ホッパへ切り替わるように、切替バルブ23が切替制御されてもよい。これに代えて、または、加えて、二次選別系統20bから不良品として排出される被選別物90の排出先が不良品容器22から良品21ホッパへ切り替わるように、切替バルブ24が切替制御されてもよい。
【0101】
排出先を初期状態から切り替えるか否か、および、切替バルブ23,24の一方または両方を切替制御するか否かは、演算した選別結果と、最終的な目標品質条件と、の差に応じて決定されてもよい。具体的には、これらの判断は、最終的な目標品質条件を達成できるか否かに基づいて行われる。最終的な目標品質条件を達成できる範囲においては、できるだけ多くの被選別物90が良品21ホッパに導かれるように、切替バルブ23,24が制御される。このような判断は、演算した選別結果(例えば、図7のJ~Z)に基づいて判断できる。この判断のために、二次選別系統20bから良品として排出される各種不良品の混入率が、重量比J~Pと、二次選別系統20bの選別制御パラメータと、に基づいて、推定されてもよい。
【0102】
さらなる代替実施形態では、上述した各種の選別パラメータの変更のうちの二つ以上を任意に組み合わせてもよい。こうすれば、歩留りをいっそう向上できる。ステップS240によれば、最終的な目標品質条件を達成しつつ、歩留りを向上させることができる。
【0103】
こうして、ステップS230またはステップS240が実行されると、パラメータ変更処理は終了となる。なお、図示は省略したが、ステップS220において、演算した選別結果が最終的な目標品質条件と同等である場合には、ステップS230,S240に処理を進めることなく、パラメータ変更処理は終了となる。代替実施形態では、ステップS220では、演算した選別結果と、制御目標値とが比較されてもよい。あるいは、コントローラ25は、ステップS220において、演算した選別結果が、最終的な目標品質条件または制御目標値を所定の程度、下回っていると判断したときに処理をステップS230に進めてもよく、演算した選別結果が、最終的な目標品質条件または制御目標値を所定の程度、上回っていると判断したときに処理をステップS240に進めてもよい。あるいは、ステップS220の判断において、制御ヒステリシスが設定されてもよい。つまり、処理をステップS220からステップS230に進めるための判断基準と、処理をステップS220からステップS240に進めるための判断基準と、は異なっていてもよい。
【0104】
上述した選別機20によれば、ユーザは、目標品質条件の候補を採用した場合の、良品として排出される被選別物90の量および歩留りに関するシミュレーション結果を、選別運転を開始する前に確認することができる。このため、ユーザは、シミュレーション結果に基づいて(換言すれば、良品として排出される被選別物90の量および/または歩留りを考慮して)、採用すべき最終的な目標品質条件を決定できる。したがって、所望の品質および歩留りの被選別物90を製品として得ることができる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0106】
例えば、上述したフローチャートは、一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、フローチャートを構成する各処理は、処理順序の変更や、等価な処理への変更が可能である。
【0107】
例えば、コントローラ25は、ステップS140において、製品量および/または歩留りに加えて、品質条件のシミュレーション結果もユーザインタフェース60に表示してもよい。また、ユーザによる各種情報の入力や、シミュレーション結果の表示は、選別機20のユーザインタフェースを利用して行われる態様に限らず、選別機20に通信可能に接続された他の情報処理装置を利用して行われてもよい。
【0108】
さらに、選別機20が二次選別系統20bを備えていない場合には、コントローラ25は、ステップS210において、一次選別系統20aの光学センサ41,42によって取得される画像のみに基づいて、選別結果を演算してもよい。この場合、例えば、図7に示したA~Hの情報と、選別率設定値と、に基づいて、製品における各種不良品の混入率が演算されてもよい。
【0109】
さらに、ステップS110、S140は省略されてもよい。この場合、コントローラ25は、図4に示したパラメータ変更処理に代えて、選別運転中において、ステップS130で受け付けた目標品質条件と、一次選別系統20a、または、一次選別系統20aおよび二次選別系統20bで取得された画像に基づいて演算された不良品の混入率と、に基づいて、目標品質条件を達成可能な選別制御パラメータを設定してもよい。
【0110】
あるいは、図4に示したパラメータ変更処理に代えて、コントローラ25は、一次選別系統20aで取得された画像に基づいて、一次選別系統20aに投入された被選別物90における不良品の混入状況(換言すれば、不良品の種類ごとの混入率)を演算してもよい。この場合、コントローラ25は、ステップS110で受け付けた品質情報と、演算された不良品の種類ごとの混入率と、の差に応じて、選別制御パラメータを変更してもよい。具体的には、コントローラ25は、品質情報が、演算された混入率よりも所定の程度、低い混入率を示す場合には、ステップS230の処理を実行し、品質情報が、演算された混入率よりも所定の程度、高い混入率を示す場合には、ステップS240の処理を実行してもよい。この制御は、不良品の種類ごとに行われる。
【0111】
このように、コントローラ25は、一次選別系統20a、または、一次選別系統20aおよび二次選別系統20bの光学センサ41,42によって取得された信号に基づいて、所定期間内における被選別物90に占める不良品の混入状況を検出し、当該混入状況に基づいて、選別制御パラメータを変更してもよい。このような構成によれば、実際の不良品の混入率に基づいて、目標品質条件を達成する適切な選別制御パラメータを設定できる。
【0112】
さらに、一次選別系統20aおよび二次選別系統20bの少なくとも一方において、不良品の混入率が高い場合には、不良品と判定された被選別物90に代えて、整粒と判定された被選別物90に向けてエア53が噴射されること(いわゆる逆打ち)によって、不良品と整粒とが選別されてもよい。この場合、不良品と判定された被選別物90の一部に対してもエア53を噴射して、不良品の一部を意図的に整粒に混入させれば、上述の実施形態のように選別率を制御することが可能である。
【0113】
さらに、エア53を噴射する形態の選別装置50に代えて、任意の形態の選別装置を使用することが可能である。例えば、選別装置は、被選別物90の移送経路に隣接して設けられるとともにアクチュエータによって選択的に変位されるように構成された複数の部材(例えば、ルーバー)を備えていてもよい。この場合、不良品が検出された位置に対応する部材を変位させて、不良品に衝突させることによって、不良品の移送経路を変更して、不良品を選別することができる。あるいは、選別装置は、被選別物90の移送経路に隣接して設けられるとともに選択的に駆動されるように構成された複数のエア吸引装置を備えていてもよい。この場合、不良品が検出された位置に対応するエア吸引装置を駆動させて、不良品を吸引することによって、不良品の移送経路を変更して、不良品を選別することができる。
【0114】
さらに、コントローラ25は、ステップS130において、目標品質条件の複数の候補の入力を受け付けてもよい。あるいは、コントローラ25は、ステップS130において、選別機20のメモリに予め記憶された目標品質条件の複数の候補を読み込むことで、それらの入力を受け付けてもよい。これらの構成に加えて、ステップS140においてシミュレーション結果の出力が省略されるとともに、ステップS150が省略されてもよい。この場合、コントローラ25は、ステップS130でのシミュレーションの結果に基づいて最終的な目標品質条件を決定してもよい。この場合、コントローラ25は、最も歩留りが高くなる目標品質条件の候補を最終的な目標品質条件として決定してもよいし、あるいは、良品として排出される被選別物の量に、予め定められた製品単価を乗じて、製品売上高予測値を算出し、製品売上高予測値が最も高くなる目標品質条件の候補を、最終的な目標品質条件として決定してもよい。さらに、この場合、コントローラ25は、最終的な目標品質条件の決定後に選別を自動的に実行してもよい。あるいは、コントローラ25は、シミュレーション結果(すなわち、製品量および/または歩留り)および/または製品売上高予測値をユーザインタフェース60に表示し、ユーザインタフェース60を介してユーザから選別実行指示を受け付けてから選別を実行してもよい。このような構成によれば、ユーザ操作の負荷が低減されるので、利便性が向上する。
【0115】
本発明は、上記で例示した選別機のほか、シミュレーション装置、シミュレーション方法、選別方法、シミュレーション用プログラム、当該プログラムをコンピュータで読み取り可能に記憶する記憶媒体など、種々の形態で実現可能である。本発明をシミュレーション装置として実現する場合、当該シミュレーション装置が上述した穀粒判別器に搭載されてもよく、シミュレーション結果が穀粒判別器のグラフィカルユーザインタフェースに出力されてもよい。こうすれば、ユーザは、穀粒判別器によって品質情報を取得すると同時に、シミュレーション結果も確認できる。あるいは、本発明をシミュレーション装置として実現する場合、当該シミュレーション装置は、所定のプログラムがインストールされた情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ)であってもよい。
【0116】
さらに、被選別物90は、玄米に限られるものではなく、任意の粒状物であってもよい。例えば、被選別物90は、精白米、麦粒、豆類(大豆、ひよこ豆、枝豆など)、樹脂(ペレット等)等であってもよい。この場合、不良品の内容は、求められる選別性能に応じて適宜、定義され得る。
【符号の説明】
【0117】
11…搬送ライン
12…計測装置
20…選別機
20a…一次選別系統
20b…二次選別系統
21…良品ホッパ
22…不良品容器
23,24…切替バルブ
25…コントローラ
31,32…光源
33,34…光
41,42…光学センサ
50…選別装置
51,51a,51b,51c…ノズル
52,52a,52b,52c…バルブ
53…エア
60…ユーザインタフェース
61…原料品質表示領域
62…目標品質入力領域
63…等級入力領域
64…混入率入力領域
65…推定値表示領域
71…貯留タンク
72…フィーダ
73…シュート
74…良品排出樋
75…不良品排出樋
80…画像
81,82…画素
83a,83b,83c…噴射担当範囲
84a,84b…オーバラップ領域
90,91,92…被選別物
95…移送経路
D1…移送方向
D2…直交方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7