(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185331
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ノズルの洗浄方法、及び、再生ノズルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20221207BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20221207BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221207BHJP
B05D 3/10 20060101ALI20221207BHJP
B05B 15/55 20180101ALN20221207BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
C08G59/40
B05D7/24 302U
B05D7/24 303A
B05D3/10 F
B05B15/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092943
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 純奈
(72)【発明者】
【氏名】進藤 有希
(72)【発明者】
【氏名】岡林 浩大
(72)【発明者】
【氏名】荻野 啓志
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4J036
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
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4J036AA01
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4J036FA05
4J036JA05
4J036JA06
4J036JA07
4J036KA05
(57)【要約】
【課題】エポキシ樹脂及び固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用したノズルを、詰まりを抑制しながら洗浄できる洗浄方法を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂及び(B)固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用されたノズルの洗浄方法であって;前記洗浄方法が、液状有機物で前記ノズルを洗浄する工程(I)、及び、有機溶媒で前記ノズルを洗浄する工程(II)、をこの順に含み;前記液状有機物が、前記工程(II)で使用される前記有機溶媒で活性化する固体分散型潜在性硬化剤(a)、及び、前記エポキシ樹脂組成物中に存在する(B)固体分散型潜在性硬化剤を活性化する有機溶媒(b)を、実質的に含まない、ノズルの洗浄方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂及び(B)固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用されたノズルの洗浄方法であって;
前記洗浄方法が、
液状有機物で前記ノズルを洗浄する工程(I)、及び、
有機溶媒で前記ノズルを洗浄する工程(II)、
をこの順に含み;
前記液状有機物が、
前記工程(II)で使用される前記有機溶媒で活性化する固体分散型潜在性硬化剤(a)、及び、
前記エポキシ樹脂組成物中に存在する(B)固体分散型潜在性硬化剤を活性化する有機溶媒(b)
を、実質的に含まない、ノズルの洗浄方法。
【請求項2】
前記液状有機物が、液状樹脂である、請求項1に記載のノズルの洗浄方法。
【請求項3】
前記液状有機物が、液状エポキシ樹脂である、請求項1又は2に記載のノズルの洗浄方法。
【請求項4】
前記ノズルが、前記エポキシ樹脂組成物が収納されたシリンジにおいて、前記エポキシ樹脂組成物を吐出するために使用されるノズルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のノズルの洗浄方法。
【請求項5】
前記ノズルが、前記エポキシ樹脂組成物を収納可能なシリンジを備えるディスペンサにおいて、前記エポキシ樹脂組成物を吐出するために使用されるノズルである、請求項1~4のいずれか一項に記載のノズルの洗浄方法。
【請求項6】
前記工程(II)で使用される前記有機溶媒が、200℃以下の沸点を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のノズルの洗浄方法。
【請求項7】
前記工程(II)が、前記有機溶媒によって前記ノズルを洗浄することを複数回含み、
少なくとも最後の洗浄が、100℃以下の沸点を有する有機溶媒で行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載のノズルの洗浄方法。
【請求項8】
前記(II)工程の後に、(III)前記ノズルを乾燥させる工程を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のノズルの洗浄方法。
【請求項9】
前記工程(III)が、前記ノズルを加熱乾燥することを含む、請求項8に記載のノズルの洗浄方法。
【請求項10】
(A)エポキシ樹脂及び(B)固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用された使用済ノズルから、再生ノズルを製造する製造方法であって、
液状有機物で前記使用済ノズルを洗浄する工程(I)、及び、
有機溶媒で前記使用済ノズルを洗浄する工程(II)、
をこの順に含み、
前記液状有機物が、
前記工程(II)で使用される前記有機溶媒で活性化する固体分散型潜在性硬化剤(a)、及び、
前記エポキシ樹脂組成物中に存在する(B)固体分散型潜在性硬化剤を活性化する有機溶媒(b)
を、実質的に含まない、再生ノズルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物の塗布に使用したノズルの洗浄方法、及び、再生ノズルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス及びプリント配線板の製造において、複数の部材間の接着又は電気的接続を行うため、また配線及び電極の形成のために、ディスペンサにより、シリンジに収納された導電性ペースト等の接着剤をニードル等のノズルから吐出させて、塗布が行われる場合がある(特許文献1)。また、導電ペースト等の接着剤がシリンジに収納された形態で販売される場合がある。
【0003】
ペースト状の接着剤としては、保管及び取り扱いが容易であることから、エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤を含む一液型のエポキシ樹脂組成物が使用されることがある。また、エポキシ樹脂組成物の保存安定性に優れる潜在性硬化剤として、固体分散型潜在性硬化剤が知られている。固体分散型潜在性硬化剤としては、例えば、アミンアダクト型潜在性硬化剤、結晶型潜在性硬化剤などが存在する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-177843号公報
【特許文献2】特開平11-256013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ペースト状の接着剤をノズルから吐出させた後に、ノズルを放置すると、接着剤が乾燥又は硬化して、ノズルの内部が詰まることがある。したがって、接着剤の吐出に用いたノズルは、その内部を有機溶媒で洗浄して、接着剤を除去することが望ましい。
【0006】
ところが、固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物を用いた場合、有機溶媒を用いた洗浄が困難となる場合がある。例えば、使用済みのノズルに残留するエポキシ樹脂組成物を有機溶媒で洗浄した場合、ノズル内でエポキシ樹脂組成物の硬化が進行し、ノズルが詰まることがあった。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたものであり、エポキシ樹脂及び固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用したノズルを、詰まりを抑制しながら洗浄できる洗浄方法;エポキシ樹脂及び固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用したノズルを、詰まりを抑制しながら洗浄して、再生ノズルを製造できる再生ノズルの製造方法;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、ノズルの有機溶媒による洗浄に先立って、固体分散型潜在性硬化剤および固体分散型潜在性硬化剤を活性化する有機溶媒を実質的に含有しない液状有機物でノズルを洗浄し、その後に、有機溶媒でノズルを洗浄することにより、ノズル内部の詰りや硬化物の付着を生じさせることなく、ノズルを洗浄することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0009】
〔1〕 (A)エポキシ樹脂及び(B)固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用されたノズルの洗浄方法であって;
前記洗浄方法が、
液状有機物で前記ノズルを洗浄する工程(I)、及び、
有機溶媒で前記ノズルを洗浄する工程(II)、
をこの順に含み;
前記液状有機物が、
前記工程(II)で使用される前記有機溶媒で活性化する固体分散型潜在性硬化剤(a)、及び、
前記エポキシ樹脂組成物中に存在する(B)固体分散型潜在性硬化剤を活性化する有機溶媒(b)
を、実質的に含まない、ノズルの洗浄方法。
〔2〕 前記液状有機物が、液状樹脂である、〔1〕に記載のノズルの洗浄方法。
〔3〕 前記液状有機物が、液状エポキシ樹脂である、〔1〕又は〔2〕に記載のノズルの洗浄方法。
〔4〕 前記ノズルが、前記エポキシ樹脂組成物が収納されたシリンジにおいて、前記エポキシ樹脂組成物を吐出するために使用されるノズルである、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のノズルの洗浄方法。
〔5〕 前記ノズルが、前記エポキシ樹脂組成物を収納可能なシリンジを備えるディスペンサにおいて、前記エポキシ樹脂組成物を吐出するために使用されるノズルである、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のノズルの洗浄方法。
〔6〕 前記工程(II)で使用される前記有機溶媒が、200℃以下の沸点を有する、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のノズルの洗浄方法。
〔7〕 前記工程(II)が、前記有機溶媒によって前記ノズルを洗浄することを複数回含み、
少なくとも最後の洗浄が、100℃以下の沸点を有する有機溶媒で行われる、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載のノズルの洗浄方法。
〔8〕 前記(II)工程の後に、(III)前記ノズルを乾燥させる工程を含む、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のノズルの洗浄方法。
〔9〕 前記工程(III)が、前記ノズルを加熱乾燥することを含む、〔8〕に記載のノズルの洗浄方法。
〔10〕 (A)エポキシ樹脂及び(B)固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用された使用済ノズルから、再生ノズルを製造する製造方法であって、
液状有機物で前記使用済ノズルを洗浄する工程(I)、及び、
有機溶媒で前記使用済ノズルを洗浄する工程(II)、
をこの順に含み、
前記液状有機物が、
前記工程(II)で使用される前記有機溶媒で活性化する固体分散型潜在性硬化剤(a)、及び、
前記エポキシ樹脂組成物中に存在する(B)固体分散型潜在性硬化剤を活性化する有機溶媒(b)
を、実質的に含まない、再生ノズルの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エポキシ樹脂及び固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用したノズルを、詰まりを抑制しながら洗浄できる洗浄方法;エポキシ樹脂及び固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用したノズルを、詰まりを抑制しながら洗浄して、再生ノズルを製造できる再生ノズルの製造方法;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一例としてのノズルを模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、一例としてのノズルを取り付けられたシリンジを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は下記に示す実施形態及び例示物に限定されず、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において変更して実施しうる。
【0013】
以下の説明において、量を表す「ppm」は、別に断らない限り、質量基準である。
【0014】
[1.洗浄方法の概要]
本発明の一実施形態に係るノズルの洗浄方法は、(A)エポキシ樹脂及び(B)固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の塗布に使用されたノズルの洗浄方法である。この洗浄方法は、
(I)液状有機物でノズルを洗浄する工程、及び、
(II)有機溶媒でノズルを洗浄する工程、
をこの順に含む。以下の説明では、工程(I)においてノズルの洗浄に使用される液状有機物を「有機洗浄液」と呼ぶことがある。また、以下の説明では、工程(II)においてノズルの洗浄に使用される有機溶媒を「洗浄溶媒」と呼ぶことがある。
【0015】
本実施形態に係る洗浄方法では、有機洗浄液が、特定の組成を有する。具体的には、有機洗浄液は、下記の固体分散型潜在性硬化剤(a)及び有機溶媒(b)を、実質的に含まない。
工程(II)で使用される洗浄溶媒で活性化する固体分散型潜在性硬化剤(a)。
エポキシ樹脂組成物中に存在する(B)固体分散型潜在性硬化剤を活性化する有機溶媒(b)。
ここで、固体分散型潜在性硬化剤の「活性化」とは、固体分散型潜在性硬化剤がエポキシ樹脂の狭義の硬化剤として機能する場合はエポキシ樹脂の硬化をさせる状態になることをいい、硬化促進剤として機能する場合はエポキシ樹脂の硬化を促進できる状態になることをいう。
【0016】
前記の洗浄方法によれば、エポキシ樹脂組成物の塗布に使用したノズルを、詰まりを抑制しながら洗浄することができる。このように優れた利点が得られる仕組みを、本発明者は、下記の通りと推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記に説明する仕組みによって制限されるものではない。
【0017】
(B)固体分散型潜在性硬化剤は、水又は有機溶媒に触れると活性化することがある。例えば、アミンアダクト型の固体分散型潜在性硬化剤(以下「アミンアダクト型潜在性硬化剤」ということがある。)は、水又は有機溶媒に触れると高分子構造が膨潤してアミン部分が露出し、活性化されることがある。また、結晶型の固体分散型潜在性硬化剤(以下「結晶型潜在性硬化剤」ということがある。)は、水又は有機溶媒に触れると結晶が溶解して、活性化されることがある。(B)固体分散型潜在性硬化剤が活性化されると、(A)エポキシ樹脂の硬化反応が進行しうる。したがって、エポキシ樹脂組成物が残留した使用済みのノズルを有機溶媒で洗浄すると、その残留したエポキシ樹脂組成物が硬化することがありえた。エポキシ樹脂組成物が硬化すると、ノズルの洗浄が困難になり、ノズル内部の詰まりの原因となりうる。
【0018】
これに対し、本実施形態に係る洗浄方法では、有機洗浄液でノズルを洗浄し、その後で、当該ノズルを洗浄溶媒によって洗浄する。固体分散型潜在性硬化剤(a)及び有機溶媒(b)を実質的に含まない有機洗浄液は、(B)固体分散型潜在性硬化剤を実質的に活性化させない。よって、有機洗浄液による洗浄によれば、ノズルからエポキシ樹脂組成物を除去できる。その後、ノズルに残留しうる有機洗浄液を洗浄溶媒で除去することにより、詰まりを抑制しながらノズルの洗浄を達成することができる。
【0019】
また、本実施形態に係る洗浄方法によれば、前記のようにノズル中にエポキシ樹脂組成物の硬化物が形成されることを抑制できる。したがって、通常は、硬化物によってノズル中の流路が詰まることを抑制できるだけでなく、硬化物によって流路が狭くなることも抑制できる。よって、ノズル内部に付着した硬化物により吐出量が不均一となることを抑制できるので、洗浄後に得られるノズルを通したエポキシ樹脂組成物の吐出量の均一性を高めることができる。
【0020】
[2.洗浄対象としてのノズルの説明]
以下、洗浄対象であるノズルについて説明する。
図1は、一例としてのノズル100を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、ノズル100は、エポキシ樹脂組成物を吐出することができる部材であり、その内部にエポキシ樹脂組成物が流通しうる流路110を有する。流路110の端部には、エポキシ樹脂組成物を供給されることができる流入口120が形成されている。また、流路110の別の端部には、エポキシ樹脂組成物を吐出できる吐出口130が形成されている。ここでは、流路110、流入口120及び吐出口130がそれぞれ1個形成されたノズル100の例を示すが、流路110、流入口120及び吐出口130は、それぞれ複数形成されていてもよい。
【0021】
通常、ノズル100は、当該ノズル100をシリンジに装着するためのコネクタ部140を備える。前記の流入口120は、一般に、このコネクタ部140で開口するように形成される。本実施形態においては、コネクタ部140と、このコネクタ部140に接続された管状のニードル部150とを備え、コネクタ部140で開口する流入口120からニードル部150の先端に開口する吐出口130まで連通するように流路110が形成されたノズル100を例に挙げて説明する。
【0022】
図2は、一例としてのノズル100を取り付けられたシリンジ200を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、ノズル100は、通常、シリンジ200に取り付けて使用される。シリンジ200は、ノズル100を取り付けることができるように設けられたノズル装着部210を備える。例えば、シリンジ200のノズル装着部210にスクリュー状の係止部211を設け、ノズル100のコネクタ140に形成された突起部141を前記の係止部211が係止して、ノズル110をノズル装着部210に固定してもよい。また、シリンジ200は、エポキシ樹脂組成物300を収納可能に設けられている。一般に、シリンジ200は筒状に形成され、よってその内部には、エポキシ樹脂組成物300を収納できる中空部220が形成されている。中空部220は、ノズル装着部210に装着されたノズル100の流入口120に連通できるように、ノズル装着部210に形成された送出口230において開口している。また、中空部220には、エポキシ樹脂組成物300を押して送出口230を通してノズル100内の流路110に送出できるように、移動可能に中空部220を閉塞するプランジャ240が設けられている。
【0023】
通常、中空部220の送出口230とは反対側には開口部250が形成されている。したがって、
図2に示すようにノズル100をシリンジ200のノズル装着部210に装着した場合、ノズル100及びシリンジ200は、シリンジ200の開口部250からノズル100の吐出口130まで連続する管を形成しうる。よって、開口部250を通して挿入されるプランジャロッド(図示せず)による押圧、開口部250を通して供給されるエアーの圧力などの力により、プランジャ240が押されると、エポキシ樹脂組成物300はノズル100の流入口120を通って流路110に進入し、吐出口130を通って吐出されることができる。
【0024】
通常、前記のノズル100及びシリンジ200の使用時には、ディスペンサ(図示せず)を用いてエポキシ樹脂組成物300の塗布を行う。具体的には、エポキシ樹脂組成物300が収納されたシリンジ200がディスペンサに取り付けられ、そのディスペンサが、エアー圧力又はプランジャロッドによる機械的圧力などの圧力によって、プランジャ240を押す。プランジャ240が押されることで、ノズル100の吐出口130からエポキシ樹脂組成物300が吐出される。そして、このエポキシ樹脂組成物300が物品に付着することにより、エポキシ樹脂組成物300の塗布が達成される。
【0025】
前記のようにノズル100を用いたエポキシ樹脂組成物300の塗布が行われると、当該塗布後のノズル100内には、エポキシ樹脂組成物300が残留しうる。本実施形態に係る洗浄方法では、このように残留したエポキシ樹脂組成物300が付着したノズル100からエポキシ樹脂組成物300を除去して、再びエポキシ樹脂組成物300等の液状組成物の塗工に使用可能なノズルを得ることができる。
【0026】
前記のノズル100の寸法は、エポキシ樹脂組成物300の具体的な組成及び物性、ノズル100から吐出されたエポキシ樹脂組成物300が形成する塗布部の形状(点状、線状等)によって異なりうるが、例を挙げると、長さは0.5mm~30mm、外径は0.2mm~3mm、内径は0.1mm~2.5mmでありうる。また、ノズル100は、曲がったカーブノズル、ノズル内部がテーパー形状となっているテーパーノズル、1つの本体からノズルが複数本突出したマルチノズルであってもよい。
【0027】
[3.エポキシ樹脂組成物]
ノズルを用いて塗布されるエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び(B)固体分散型潜在性硬化剤を含む。
【0028】
[3.1.(A)エポキシ樹脂]
(A)エポキシ樹脂は、エポキシ基を含む化合物である。(A)エポキシ樹脂としては、1分子当たり平均して2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。また、エポキシ樹脂は、液状であってもよく、固形状であってもよく、液状と固形状を併用してもよいが、塗布に適した液状のエポキシ樹脂組成物を得る観点から、(A)エポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂の合計量100質量%に対し、液状エポキシ樹脂の量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。液状エポキシ樹脂の量の上限は、特に制限はなく、エポキシ樹脂の合計量100質量%に対し、100質量%であってもよく、100質量%未満であってもよく、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。液状エポキシ樹脂とは、別に断らない限り、室温(25℃)において液状のエポキシ樹脂を表す。
【0029】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以下、より好ましくは2000以下、特に好ましくは1000以下である。下限は、特段の制限は無いが、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、特に好ましくは300以上である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算で測定できる。
【0030】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、特段の制限は無いが、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定することができる。
【0031】
(A)エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
固形状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がさらに好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「JER-630」、「JER-630LSD」、ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂(アデカグリシロール))、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
液状エポキシ樹脂は、粘度を調整するために室温(25℃)での粘度が100mPa・S以下の低粘度の液状エポキシ樹脂を含むことが好ましい。低粘度の液状エポキシ樹脂としては、例えば、ADEKA社製EP4085S、EP4088S;日鉄ケミカル&マテリアル社(旧新日鐵化学社)製ZX-1542、ZX-1658;ナガセケムテックス社製デナコールEX201;日本化薬社製GOT、GAN;信越化学工業社製X-22-163、KF-105;三菱ケミカル社(旧三菱化学社)製の630、YED216D;などが挙げられる。
【0035】
液状エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1000以下、より好ましくは900以下、特に好ましくは800以下である。下限は、特段の制限は無いが、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、特に好ましくは300以上である。
【0036】
液状エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、特段の制限は無いが、好ましくは50g/eq.~1000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~800g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~600g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~500g/eq.である。
【0037】
(A)エポキシ樹脂の量は、エポキシ樹脂組成物の用途に応じて設定しうる。(A)エポキシ樹脂の具体的な量は、エポキシ樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、11質量%以上、13質量%以上又は14質量%以上であってもよい。上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下であり、70質量%以下、30質量%以下、23質量%以下、20質量%以下又は19質量%以下であってもよい。
【0038】
[3.2.(B)固体分散型潜在性硬化剤]
(B)固体分散型潜在性硬化剤は、室温(25℃)ではエポキシ樹脂に不溶の固体であるが、加熱することにより可溶化し、エポキシ樹脂の硬化を促進できる。この(B)固体分散型潜在性硬化剤には、エポキシ樹脂と反応してエポキシ樹脂を硬化させることができる狭義の硬化剤、及び、エポキシ樹脂と反応せず触媒として機能してエポキシ樹脂の硬化を促進させることができる硬化促進剤、の両方が包含される。(B)固体分散型潜在性硬化剤としては、例えば、アミンアダクト型潜在性硬化剤、結晶型潜在性硬化剤が挙げられる。
【0039】
アミンアダクト型潜在性硬化剤としては、例えば、アミン化合物とエポキシ化合物との反応生成物(アミン-エポキシアダクト型潜在性硬化剤);アミン化合物と、イソシアネート化合物または尿素化合物との反応生成物(尿素系アダクト型潜在性硬化剤);これらの硬化剤の表面をイソシアネート化合物又は酸性化合物で処理したもの;が挙げられる。
【0040】
アミンアダクト型潜在性硬化剤の製造原料として用いられるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシノールなど多価フェノール、またはグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシ酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びm-アミノフェノールなどとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルアミン化合物;エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン等の多官能性エポキシ化合物;ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等の単官能性エポキシ合物;等が挙げられる。エポキシ化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
アミンアダクト型潜在性硬化剤の製造原料として用いられるアミン化合物は、エポキシ基又はイソシアネート基と付加反応しうる活性水素を分子内に1以上有し、かつ1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群より選ばれる官能基を少なくとも分子内に1以上有するものが好ましい。このようなアミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン等の脂肪族アミン化合物;4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-メチルアニリン等の芳香族アミン化合物;2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジンなどの窒素原子が含有された複素環化合物;等が挙げられる。
【0042】
これらのアミン化合物の中で、特に分子内に3級アミノ基を有する化合物は、優れた硬化促進能を有するアミンアダクト型潜在性硬化剤を与える原料として用いうる。そのようなアミン化合物の例としては、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N-メチルピペラジンなどのアミン化合物や、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物のような、分子内に3級アミノ基を有する1級もしくは2級アミン化合物;2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ブトキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-β-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ジメチルアミノエタンチオール、2-メルカプトピリジン、2-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、4-メルカプトピリジン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N-ジメチルグリシンヒドラジド、N,N-ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジドなどのような、分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類およびヒドラジド類;等が挙げられる。アミン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記のエポキシ化合物とアミン化合物とを付加反応せしめアミンアダクト型潜在性硬化剤を製造する際、その反応系は、更に分子内に活性水素を2以上有する活性水素化合物を含んでいてもよい。この活性水素化合物には、アミン化合物を含めない。このような活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フェノールノボラック樹脂などの多価フェノール類;トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類;アジピン酸、フタル酸などの多価カルボン酸類;1,2-ジメルカプトエタン、2-メルカプトエタノール、1-メルカプト-3-フェノキシ-2-プロパノール、メルカプト酢酸、アントラニル酸、乳酸等が挙げられる。活性水素化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
アミンアダクト型潜在性硬化剤の製造原料として用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート等の単官能イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(例:2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物;並びに、これら多官能イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応によって得られる、末端イソシアネート基含有化合物;等が挙げられる。末端イソシアネート基含有化合物の例としては、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物、トリレンジイソシアネートとペンタエリスリトールとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物などが挙げられる。イソシアネート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
アミンアダクト型潜在性硬化剤の製造原料として用いられる尿素化合物として、例えば、尿素、チオ尿素などが挙げられる。尿素化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
アミンアダクト型潜在性硬化剤は、例えば、上記の製造原料を混合し、室温から200℃の温度において反応させた後、冷却固化してから粉砕する方法によって、製造できる。また、アミンアダクト型潜在性硬化剤は、例えば、上記の製造原料を混合し、室温から200℃の温度においてメチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させ、脱溶媒後、固形分を粉砕することによって製造できる。
【0047】
アミンアダクト型潜在性硬化剤としては、市販品を用いてもよい。市販のアミン-エポキシアダクト型潜在性硬化剤としては、例えば、味の素ファインテクノ社製「アミキュアPN-23」、「アミキュアPN-H」、「アミキュアPN-F」、「アミキュアMY-24」;エー・シー・アール社製「ハードナーX-3661S」、「ハードナーX-3670S」;旭化成社製「ノバキュアHX-3742」、「ノバキュアHX-3721」などが挙げられる。また、市販の尿素系アダクト型潜在性硬化剤としては、T&K TOKA社製「FXE-1000」、「FXR-1030」、「FXR-1081」などが挙げられる。
【0048】
アミンアダクト型潜在性硬化剤としては、例えば、特開平7-196776号公報、特開2019-143134号公報に記載のものを用いてもよい。
【0049】
結晶型潜在性硬化剤は、融点の存在する室温(25℃)で固体の結晶性物質であり、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、ジメチルウレア化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。ジヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。ジメチルウレア化合物としては、例えば、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(DCMU)、芳香族ジメチルウレア(例えば、サンアプロ社製「U-CAT3512T」)、脂肪族ジメチルウレア(例えば、サンアプロ社製「U-CAT3513N」)等が挙げられる。イミダゾール化合物としては、例えば、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2-メチルイミダゾリル-(1))-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1)’)-エチル-S-トリアジン・イソシアヌール酸付加物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール-トリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール-トリメリテート、N-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)-尿素、N,N’-(2-メチルイミダゾリル-(1)-エチル)-アジボイルジアミド等が挙げられる。
【0050】
(B)固体分散型潜在性硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。よって、(B)固体分散型潜在性硬化剤としては、1種類又は2種類以上のアミンアダクト型潜在性硬化剤を用いてもよく、1種類又は2種類以上の結晶型潜在性硬化剤を用いてもよく、アミンアダクト型潜在性硬化剤と結晶型潜在性硬化剤とを組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(B)固体分散型潜在性硬化剤の量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、特に好ましくは5.0質量部以上であり、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。
【0052】
(B)固体分散型潜在性硬化剤の量は、エポキシ樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは3.0質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0053】
[3.3.(C)硬化剤((B)固体分散型潜在性硬化剤を除く。)]
エポキシ樹脂組成物は、任意の成分として、更に(C)硬化剤を含んでいてもよい。ただし、(C)硬化剤には、上述した(B)固体分散型潜在性硬化剤を含めない。(C)硬化剤としては、室温(25℃)で液状のエポキシ樹脂組成物を得る観点から、室温(25℃)で液状の硬化剤が好ましい。そのような硬化剤としては、例えば、ポリチオール化合物、液状フェノール樹脂、酸無水物、イミダゾール等が挙げられ、ポリチオール化合物及び液状フェノール樹脂が好ましく、ポリチオール化合物が特に好ましい。
【0054】
ポリチオール化合物としては、分子内に2以上のチオール基を有する化合物を用いうる。ポリチオール化合物1分子中のチオール基の数は、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。このようなポリチオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(略称:TMTP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(略称:PEMP)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(略称:DPMP)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(略称:TEMPIC)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート(略称:TMPIC)、チオグリコール酸オクチル(略称:OTG)、エチレングリコールビスチオグリコレート(略称:EGTG)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート(略称:TMTG)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(略称:PETG)、3-メルカプトプロピオン酸(略称:3-MPA)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)(略称:TPMB)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)(略称:TEMB)、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、4,4’-イソプロピリデンビス[(3-メルカプトプロポキシ)ベンゼン]等が挙げられる。
【0055】
(C)硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(C)硬化剤の官能基当量は、特に制限されない。例えば、ポリチオール化合物のチオール基当量は、好ましくは50g/eq.~500g/eq.、より好ましくは75g/eq.~300g/eq、特に好ましくは100g/eq.~200g/eqである。官能基当量とは、1当量の官能基を含む樹脂の質量を表す。
【0057】
(C)硬化剤の量は、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数と、(C)硬化剤の官能基の合計数との比((C)硬化剤の官能基/(A)エポキシ樹脂のエポキシ基)が特定の範囲に収まるように設定することが好ましい。前記の比((C)硬化剤の官能基/(A)エポキシ樹脂のエポキシ基)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.7以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.0以下である。ここで、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各(A)エポキシ樹脂の質量をエポキシ当量で割り算した値をすべての(A)エポキシ樹脂について合計した値を表す。また、(C)硬化剤の官能基の合計数とは、各(C)硬化剤の質量を官能基当量で割り算した値をすべての(C)硬化剤について合計した値を表す。
【0058】
(C)硬化剤の量は、エポキシ樹脂組成物100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0059】
[3.4.(D)無機充填材]
エポキシ樹脂組成物は、任意の成分として、更に(D)無機充填材を含んでいてもよい。(D)無機充填材は、無機材料で形成された粒子でありうる。無機材料としては、例えば、アエロジル、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ガラス、カーボンファイバー、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等の非導電性無機材料;金属等の導電性無機材料;が挙げられる。金属としては、銀、錫、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、等が挙げられる。これらの材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。よって、(D)無機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
好ましい一例において、(D)無機充填材は、銀粒子を含むことが好ましく;銀粒子と、錫粒子、亜鉛粒子及びアルミニウム粒子からなる群より選ばれる1種類以上の粒子とを組み合わせて含むことがより好ましい。
【0061】
(D)無機充填材の粒子形状は、例えば球状、フレーク状、針状などが挙げられ、特に制限されない。中でも、金属粒子は、フレーク状が好ましい。フレーク状とは、板のような形状であり(JIS Z2500:2000参照)、鱗のように薄い板状であることからりん片状とも言われることがある。
【0062】
(D)無機充填材の平均粒径は、ノズルからの吐出が可能な範囲で特に制限は無い。具体的な平均粒径は、ノズルの寸法によって異なりうるが、好ましい一例においては、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上、特に好ましくは100nm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは12.5μm以下、特に好ましくは10μm以下である。平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」が挙げられる。
【0063】
(D)無機充填材の比表面積は、ノズルからの吐出が可能な範囲で特に制限は無い。具体的な比表面積は、好ましい一例においては、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.15m2/g以上、特に好ましくは0.2m2/g以上であり、好ましくは1.5m2/g以下、より好ましくは1.0m2/g以下、特に好ましくは0.9m2/g以下である。比表面積は、比表面積測定装置(例えば、マウンテック社製「Macsorb HM-1210」)を使用してBET(Brunauer、EmmettおよびTellerによって拡張された多分子層吸着モデルに基づく比表面積の測定方法で3人の頭文字をとってBETという。)一点法で測定しうる。
【0064】
(D)無機充填材は、表面処理を施されていなくてもよいが、必要に応じて表面処理剤によって表面処理を施されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤が挙げられる。表面処理剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(D)無機充填材の量は、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物に求められる物性に応じて設定しうる。(D)無機充填材の量は、エポキシ樹脂組成物100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上であってもよい。また、上限は、90質量%以下、85質量%以下、83質量%以下、80質量%以下、などでありうる。
【0066】
特に、銀粒子を用いる場合、その銀粒子の量は、エポキシ樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。
【0067】
また、錫粒子を用いる場合、その錫粒子の量は、エポキシ樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、特に好ましくは9質量%以上であり、好ましくは24重量%以下、より好ましくは22重量%以下、更に好ましくは21重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。
【0068】
また、亜鉛粒子を用いる場合、その亜鉛粒子の量は、エポキシ樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは3質量%以上であり、好ましくは24重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。
【0069】
さらに、アルミニウム粒子を用いる場合、そのアルミニウム粒子の量は、エポキシ樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上であり、好ましくは24重量%以下、より好ましくは22重量%以下である。
【0070】
[3.5.(E)その他の任意の成分]
エポキシ樹脂組成物は、上述した成分に組み合わせて、更に別の任意の成分を含んでいてもよい。
【0071】
エポキシ樹脂組成物は、任意の成分として、接着性の向上及び応力緩和性の付与のために、コアシェルポリマーを含んでいてもよい。コアシェルポリマーは、コア部とシェル部を有するポリマーを表す。コア部は、相対的に柔らかい部分でありえ、シェル部は、相対的に硬い部分でありうる。このコアシェルポリマーは、例えば、ジエン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び/又はビニル単量体から調製されるゴム弾性体、ポリシロキサンゴム系弾性体、あるいはこれらの混合物から調製されるコア部分に対して、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル、エポキシアルキルビニルエーテル、不飽和酸誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体及び/又はマレイミド誘導体から調製されるシェル部を重合して得られうる。市販のコアシェルポリマーとしては、例えば、カネカ社製のMX120、MX125、MX130、MX135、MX960、MX965;レジナス化成社製のRKB3040、RKB1133;三菱ケミカル社(旧三菱レイヨン社)製のJF-001、JF-003;ガンツ化成社製のF351G;が挙げられる。コアシェルポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、コアシェルポリマーは、単独の粉体の状態でも、エポキシ樹脂に分散されたものでも、使用しうる。コアシェルポリマーの量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは15質量部~30質量部、好ましくは17質量部~30質量部である。
【0072】
エポキシ樹脂組成物は、任意の成分として、エポキシ樹脂組成物とそのエポキシ樹脂組成物が塗布される物品との密着性を向上させるため、シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤の例としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤の量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部~3質量部、より好ましくは1質量部~2質量部である。
【0073】
エポキシ樹脂組成物は、任意の成分として、ホウ酸エステルを含んでいてもよい。ホウ酸エステルの例としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル等が挙げられる。ホウ酸エステルは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ホウ酸エステルの量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部~1.2質量部、より好ましくはし0.7質量部~1質量部である。
【0074】
更に別の任意の成分の例としては、アエロジル等のチキソ付与剤;ベンゾイミダゾール等の腐食抑制剤;カーボンブラック等の着色剤;難燃剤;増粘剤、消泡剤、レベリング剤などが挙げられる。これら任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
ただし、エポキシ樹脂組成物は、通常、有機溶媒を実質的に含まない。有機溶媒としては、工程(II)において用いられる洗浄溶媒と同じ例が挙げられる。エポキシ樹脂組成物に含まれる有機溶媒の量は、エポキシ樹脂組成物100質量%に対して、通常1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、特に好ましくは300ppm以下であり、理想的には0ppmである。
【0076】
[3.6.エポキシ樹脂組成物の物性]
エポキシ樹脂組成物は、ノズルを用いた塗布が実施される温度条件において、液状でありうる。エポキシ樹脂組成物の塗布は一般に室温において行われるので、エポキシ樹脂組成物は、室温(25℃)において、通常は液状である。
【0077】
エポキシ樹脂組成物の粘度は、ノズルからエポキシ樹脂組成物を吐出できる範囲で、適切に設定することが好ましい。例えば、25℃におけるエポキシ樹脂組成物の粘度は、良好な塗布性を得る観点から、好ましくは1Pa・s以上、より好ましくは5Pa・s以上、特に好ましくは10Pa・s以上であり、好ましくは100Pa・s以下、より好ましくは80Pa・s以下、特に好ましくは60Pa・s以下である。
【0078】
粘度は、下記の方法によって測定できる。サンプルの温度を25℃(±2℃)に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE-85U」、3°×R9.7ロータ)を用いて、測定サンプル量0.22ml、回転数20rpmの測定条件にて、粘度(Pa・s)を測定できる。
【0079】
[4.工程(I):有機洗浄液による洗浄]
上述したエポキシ樹脂組成物の塗布に用いた使用済みのノズルには、通常、エポキシ樹脂組成物が付着している。例えば、吐出されずに残留したエポキシ樹脂組成物が、ノズルの内部に充填されたり付着していたりすることがありうる。また、例えば、ノズルから吐出されたエポキシ樹脂組成物の一部が吐出口の付近に残ることにより、ノズルの外側にエポキシ樹脂組成物が付着していることがありうる。本実施形態に係るノズルの洗浄方法では、このようにエポキシ樹脂組成物が付着した使用済みのノズルを液状有機物としての有機洗浄液で洗浄する工程(I)を行う。工程(I)での洗浄により、ノズルからエポキシ樹脂組成物が除去される。
【0080】
工程(I)での洗浄に使用される有機洗浄液は、工程(II)で使用される有機溶媒としての洗浄溶媒で活性化する固体分散型潜在性硬化剤(a)を、実質的に含まない。ここで、有機洗浄液が固体分散型潜在性硬化剤(a)を「実質的に」含まない、とは、工程(II)において洗浄溶媒に接触した有機洗浄液がノズルを詰まらせるほど大規模な硬化を生じさせない程度の量であれば、有機洗浄液が固体分散型潜在性硬化剤(a)を含んでいてもよいことを表す。中でも、有機洗浄液は、固体分散型潜在性硬化剤(a)を全く含まないことが好ましい。有機洗浄液に含まれる固体分散型潜在性硬化剤(a)の具体的な量は、有機洗浄液100質量%に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下であり、理想的には0質量%である。
【0081】
また、工程(I)での洗浄に使用される有機洗浄液は、エポキシ樹脂組成物中に存在する(B)固体分散型潜在性硬化剤を活性化する有機溶媒(b)を、実質的に含まない。ここで、有機洗浄液が有機溶媒(b)を「実質的に」含まない、とは、工程(I)において有機洗浄液に接触したエポキシ樹脂組成物がノズルを詰まらせるほど大規模な硬化を生じない程度の量であれば、有機洗浄液が、有機溶媒(b)を含んでいてもよいことを表す。中でも、有機洗浄液は、有機溶媒(b)を全く含まないことが好ましい。有機洗浄液に含まれる有機溶媒(b)の具体的な量は、有機洗浄液100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.03質量%以下であり、理想的には0質量%である。
【0082】
固体分散型潜在性硬化剤(a)及び有機溶媒(b)を実質的に含まない有機洗浄液によれば、ノズルに付着したエポキシ樹脂組成物の硬化を抑制しながら当該エポキシ樹脂組成物を除去できる。よって、工程(I)により、エポキシ樹脂組成物を、ノズルの詰まりの発生を抑制しながら円滑に除去できる。また、この有機洗浄液は、工程(II)で洗浄溶媒と接触しても、その有機洗浄液の硬化は抑制される。よって、工程(II)において洗浄溶媒によって有機洗浄液を除去する際に、有機洗浄液の硬化によるノズルの詰まりを抑制できる。したがって、ノズルの詰まりを抑制しながら当該ノズルの洗浄が可能である。
【0083】
工程(I)でのエポキシ樹脂組成物の硬化を効果的に抑制する観点から、通常、有機洗浄液は、(A)エポキシ樹脂の硬化を促進する硬化剤(c)を実質的に含まない。ここで、硬化剤(c)には、(A)エポキシ樹脂と反応して(A)エポキシ樹脂を硬化させることができる狭義の硬化剤、及び、(A)エポキシ樹脂と反応せず触媒として機能して(A)エポキシ樹脂の硬化を促進させることができる硬化促進剤、の両方が包含される。ただし、硬化剤(c)には、固体分散型潜在性硬化剤は含めない。また、有機洗浄液が硬化剤(c)を「実質的に」含まない、とは、工程(I)において有機洗浄液に接触したエポキシ樹脂組成物がノズルを詰まらせるほど大規模な硬化を生じない程度の量であれば、有機洗浄液が、硬化剤(c)を含んでいてもよいことを表す。中でも、有機洗浄液は、硬化剤(c)を全く含まないことが好ましい。有機洗浄液に含まれる硬化剤(c)の具体的な量は、有機洗浄液100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.03質量%以下であり、理想的には0質量%である。
【0084】
前記の有機洗浄液としては、例えば、液状樹脂、液状ゴム、液状オイル等が挙げられる。また、有機洗浄液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。よって、例えば、2種類以上の化合物を含む液状の組成物を、有機洗浄液として用いてもよい。また、例えば、ある有機洗浄液でノズルを洗浄した後で、別の種類の有機洗浄液でノズルを洗浄してもよい。
【0085】
有機洗浄液は、液状樹脂を含むことが好ましく、液状樹脂のみを含むことがより好ましい。即ち、有機洗浄液が、液状樹脂であることがより好ましい。液状樹脂としては、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。液状樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、エポキシ樹脂組成物を円滑に除去する観点から、液状樹脂としては、液状エポキシ樹脂が好ましい。液状エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂組成物に含まれる(A)エポキシ樹脂の項において説明した液状エポキシ樹脂と同じものが挙げられる。
【0086】
有機洗浄液に含まれる液状エポキシ樹脂の量は、エポキシ樹脂組成物を円滑に除去する観点から、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは80質量%~100質量%、更に好ましくは90質量%~100質量%、特に好ましくは100質量%である。
【0087】
有機洗浄液は、ノズル内に残留するエポキシ樹脂組成物を効率的に排出させて洗浄性を高める観点から、エポキシ樹脂組成物の粘度と同じか、それ以上の粘度を有することが好ましい。有機洗浄液の粘度は、洗浄性の観点から、E型粘度計(25℃、20rpm)の測定値で、1Pa・s以上が好ましく、2Pa・s以上がより好ましく、3Pa・s以上がさらに好ましい。上限は、洗浄性が得られる範囲で特に限定されないが、200Pa・s以下が好ましく、150Pa・s以下がさらに好ましい。
【0088】
工程(I)における洗浄の具体的操作は、エポキシ樹脂組成物をノズルから除去できる範囲で、制限は無い。通常は、ノズルを通して有機洗浄液を吐出させることを含む方法により、ノズルの洗浄を行うことができる。具体例を挙げると、有機洗浄液を収納したシリンジにノズルを装着し、そのシリンジ内の有機洗浄液をノズルを通して吐出させる。シリンジ内を有機洗浄液が通過することにより、シリンジ内が有機洗浄液によって置換洗浄されるので、エポキシ樹脂組成物を除去できる。また、工程(I)における有機洗浄液によるノズルの洗浄は、1回だけ行ってもよく、複数回行ってもよい。
【0089】
[5.工程(II):洗浄溶媒による洗浄]
通常、工程(I)での洗浄後のノズルには、工程(I)での洗浄に用いた有機洗浄液が残留している。そこで、工程(I)の後で、洗浄溶媒でノズルを洗浄する工程(II)を行う。洗浄溶媒でノズルを洗浄することにより、ノズルから有機洗浄液を除去できる。また、有機洗浄液は固体分散型潜在性硬化剤(a)を実質的に含まないので、ノズルに残留しうる有機洗浄液が洗浄溶媒に接触しても、その有機洗浄液の硬化は抑制される。よって、有機洗浄液の硬化によるノズルの詰まりを抑制しながら、ノズルの洗浄が可能である。
【0090】
洗浄後の乾燥を容易にする観点から、洗浄溶媒としては、200℃以下の沸点を有する有機溶媒が好ましく、150℃以下の沸点を有する有機溶媒がより好ましく、100℃以下の沸点を有する有機溶媒がさらに好ましい。洗浄溶媒の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。なお、以下に例示する洗浄溶媒の名称に続いて示すカッコ書きの数値は、当該有機溶媒の沸点を表す。
【0091】
洗浄溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル(34.4℃)、ペンタン(36.1℃)、アセトン(56.1℃)、クロロホルム(61.2℃)、メタノール(64.5℃)、テトラヒドロフラン(66.0℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ヘキサン(68.7℃)、酢酸エチル(77.1℃)、エタノール(95%:78.3℃)、メチルエチルケトン(79.6℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、アセトニトリル(81.6℃)、イソプロピルアルコール(82.2℃)、tert-ブチルアルコール(82.3℃)、1,2-ジメトキシエタン(84.5℃)、1-プロパノール(97.2℃)、ヘプタン(98.4℃)、2-ブタノール(99.5℃)、1,4-ジオキサン(101.3℃)、イソブチルアルコール(107.9℃)、トルエン(110.6℃)、ブタノール(117.7℃)、o-キシレン(144.4℃)、ジメチルフォルムアミド(153℃)、ジメチルスルホキシド(189.0℃)が挙げられる。
【0092】
洗浄溶媒は、ノズルに残留する有機洗浄液の除去を効率的に行う観点から、有機洗浄液の溶解性パラメータ(SP値)に近い溶解度パラメータを有することが好ましい。例えば、有機洗浄液がエポキシ樹脂(理論SP値9.7~10.9)である場合、洗浄溶媒としては、アセトン(SP値10.0)、イソプロパノール(SP値11.5)、酢酸エチル(SP値9.0)等の有機溶媒が好ましく、アセトンが特に好ましい。
【0093】
洗浄溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。よって、例えば、2種類以上の有機溶媒を含む混合溶媒を、洗浄溶媒として用いてもよい。また、例えば、ある洗浄溶媒でノズルを洗浄した後で、別の種類の洗浄溶媒でノズルを洗浄してもよい。
【0094】
工程(II)における洗浄溶媒によるノズルの洗浄は、1回だけ行ってもよく、複数回行ってもよい。工程(II)が洗浄溶媒によってノズルを洗浄することを複数回含む場合、少なくとも最後の洗浄が、100℃以下の沸点を有する洗浄溶媒によって行われることが好ましい。100℃以下の有機溶媒による洗浄を最後に行う場合、洗浄後のノズルの乾燥を効率的に行うことができる。
【0095】
[6.工程(III):乾燥]
上述した工程(I)及び工程(II)を行うことにより、ノズルの詰まりを抑制しながら、ノズルの洗浄を行うことができる。ただし、工程(II)の後のノズルには、洗浄溶媒が付着していることがありうる。この洗浄溶媒を除去するため、本実施形態に係るノズルの洗浄方法は、任意の工程として、(II)工程の後に、ノズルを乾燥させる工程(III)を含んでいてもよい。
【0096】
ノズルの乾燥方法に制限は無い。乾燥方法としては、加熱乾燥、減圧乾燥、風乾などが挙げられ、これらは組み合わせて行ってもよい。また、一般に、洗浄溶媒は室温でも揮発して除去できるので、乾燥は室温において放置することで行ってもよい。中でも、乾燥を効率的に進行させる観点から、工程(III)は加熱乾燥を含むことが好ましい。乾燥温度としては、20℃~400℃の範囲が好ましく、50℃~300℃より好ましい。
【0097】
[7.任意の工程]
ノズルの洗浄方法は、更に、任意の工程を含んでいてもよい。例えば、ノズルの洗浄方法は、工程(I)の前にエポキシ樹脂組成物を拭き取る工程、工程(II)の前に有機洗浄液を拭き取る工程、工程(II)の後で有機溶媒を拭き取る工程、などを含んでいてもよい。
【0098】
[8.再生ノズルの製造方法]
上述したノズルの洗浄方法は、使用済ノズルから再生ノズルを製造する製造方法として実施してもよい。使用済ノズルとは、エポキシ樹脂組成物が付着したノズルを表し、よって、エポキシ樹脂組成物の吐出に用いた後のノズルに該当しうる。また、再生ノズルとは、使用済ノズルからエポキシ樹脂組成物を除去して、再びエポキシ樹脂組成物等の液状組成物の吐出に用いることが可能となったノズルを表す。したがって、上述したノズルの製造方法は、有機洗浄液で使用済ノズルを洗浄する工程(I)、及び、洗浄溶媒で使用済ノズルを洗浄する工程(II)、をこの順に含む再生ノズルの製造方法として実施できる。
【実施例0099】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ質量基準である。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧(25℃1atm)の環境で行った。
【0100】
[試薬の説明]
以下の実施例及び比較例において使用した試薬の種類は、下記の通りである。
【0101】
[液状エポキシ樹脂]
JER-828EL:三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型(BPA型)液状エポキシ樹脂、エポキシ当量186g/eq.
ZX-1059:日鉄ケミカル&マテリアル社製、ビスフェノールA型(BPA型)/ビスフェノールF型(BPF型)液状混合エポキシ樹脂、エポキシ当量165g/eq.
JER-1001:三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型(BPA型)固形エポキシ樹脂、エポキシ当量450g/eq.~500g/eq.
N-730-A:DIC社製、ビスフェノールF型(BPF型)液状エポキシ樹脂、エポキシ当量172g/eq.~179g/eq.
【0102】
[固体分散型潜在性硬化剤]
PN-F:味の素ファインテクノ社製、アミンアダクト型潜在性硬化剤
MY-24:味の素ファインテクノ社製、アミンアダクト型潜在性硬化剤
【0103】
[チオール化合物]
DPMP:SC有機化学社製、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、チオールの官能基当量130g/eq.
【0104】
【0105】
[着色剤]
PV-10MB:味の素ファインテクノ社製、カーボンブラック分散ビスフェノールA型(BPA型)液状エポキシ樹脂、エポキシ当量226g/eq.
【0106】
[製造例1~3.固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物(洗浄対象物)の製造]
表1に示す配合組成で各成分を混合し、エポキシ樹脂組成物1~3を製造した。表1において、各成分の量は、質量部を意味する。
具体的には、専用のプラスチック容器に、表1に示される量のエポキシ樹脂及びチオール化合物を量り取った。その後、自転・公転ミキサーあわとり錬太郎(シンキー社製「ARE-310」)を用い、室温25℃にて2000rpmで約30秒~1分間、充分混合して、樹脂組成物を得た。その樹脂組成物へ、表1に示す量の固体分散型潜在性硬化剤、及び、カーボンブラックを含む液状エポキシ樹脂を添加し、前記の自転・公転ミキサーを用いて、室温25℃にて2000rpmで約30秒~1分間、充分混合した。最後に、自動公転式攪拌脱泡機(共立精機社製「HM-200W」)で真空下(圧力0に設定)、900rpm、2分間の条件で脱泡し、エポキシ樹脂組成物1~3を得た。このとき、カーボンブラックは、目視確認簡易化のために添加した。
【0107】
【0108】
[製造例4~6.洗浄用の液状樹脂(有機洗浄液)の製造]
表2に示す配合組成で各成分を混合し、有機洗浄液として液状樹脂A~Cを製造した。表2において、各成分の量は、質量部を意味する。
具体的には、製造例4及び5では、専用のプラスチック容器に、表2に示される量のエポキシ樹脂を量り取った。その後、自転・公転ミキサーあわとり錬太郎(シンキー社製「ARE-310」)を用い、室温25℃にて2000rpmで約30秒~1分間、充分混合し、液状樹脂A及びBを得た。
また、製造例6では、SUS製のコップに表2に示される量のエポキシ樹脂を量り取った。その後、IHヒーターにて加熱溶解し、冷却させることで、液状樹脂Cを得た。
【0109】
【0110】
[粘度の評価]
上述した製造例1~3で製造したエポキシ樹脂組成物1~3、及び、製造例4~6で製造した液状樹脂A、B及びCの粘度は、下記の方法で測定した。
サンプル(エポキシ樹脂組成物、液状樹脂)の温度を25℃(±2℃)に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE-85U」、3°×R9.7ロータ)を用いて、測定サンプル量0.22ml、回転数20rpmの測定条件にて、粘度(Pa・s)を測定した。
【0111】
[実施例1]
(1-1.ノズルの使用)
製造例1で製造したエポキシ樹脂組成物1を、シリンジ(武蔵エンジニアリング社製の10ccシリンジ「PSY-10E」)に充填した。このシリンジに、ノズル(武蔵エンジニアリング社製の内径0.26mmプラスチックニードル「PN-25G-A」)を装着した。シリンジをディスペンサに取り付け、シリンジ内のエポキシ樹脂組成物1をノズルを通して吐出させた。
【0112】
(1-2.液状樹脂による置換洗浄)
シリンジからノズルを取り外し、ノズルのコネクタ部の汚れを綿棒でふき取って、使用済ノズルを得た。また別途、製造例6で製造した液状樹脂Cを、シリンジ(武蔵エンジニアリング社製の10ccシリンジ「PSY-10E」)に充填した。この液状樹脂Cを充填されたシリンジに、前記の使用済ノズルを装着した。シリンジをディスペンサに取り付け、400kPaのエアー圧力で、使用済ノズルを通して液状樹脂Cを25秒間吐出させた。ノズルから吐出される吐出液の色は、吐出開始の直後は黒色であったが、吐出終了直前には透明になっていることを確認した。
【0113】
(1-3.有機溶媒による超音波洗浄)
シリンジからノズルを取り外した。このノズルを、有機溶媒としてのアセトンに浸漬させ、5分間、超音波で洗浄を行った。
【0114】
(1-4.乾燥)
有機溶媒からノズルを取り出し、数回振ってノズル内部の有機溶媒を取り除いた後、乾燥させた。乾燥は、室温で30分間放置することによって行った。以上の操作により、使用済ノズルを洗浄した再生ノズルが得られた。
【0115】
(1-5.ノズルの詰まりの評価)
得られた再生ノズルの内部を、目視にて観察した。この観察結果から、下記の基準により、ノズルの詰まりを評価した。
「○」:ノズル内部に詰まりがなかった。
「×」:ノズル内部に詰まりが発生した。
【0116】
(1-6.最終判定)
以上の操作を、2回行って、再生ノズル2個の詰まりの評価を行った。最終判定として、2回中、2回とも詰まりがなかった場合「〇」、1回詰まりが発生した場合「△」、2回とも詰まりが発生したものを「×」とした。
【0117】
[実施例2]
エポキシ樹脂組成物1の代わりに製造例2で製造したエポキシ樹脂組成物2を使用し、液状樹脂Cの代わりに製造例4で製造した液状樹脂Aを使用したこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。
【0118】
[実施例3]
エポキシ樹脂組成物1の代わりに製造例2で製造したエポキシ樹脂組成物2を使用し、液状樹脂Cの代わりに製造例5で製造した液状樹脂Bを使用したこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。
【0119】
[実施例4]
エポキシ樹脂組成物1の代わりに製造例2で製造したエポキシ樹脂組成物2を使用したこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。
【0120】
[実施例5]
超音波洗浄に使用する有機溶媒を酢酸エチルに変更したこと、及び、超音波洗浄の時間を10分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。
【0121】
[実施例6]
超音波洗浄に使用する有機溶媒をイソプロピルアルコールに変更したこと、及び、超音波洗浄の時間を15分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。
【0122】
[実施例7]
エポキシ樹脂組成物1の代わりに製造例3で製造したエポキシ樹脂組成物3を使用したこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。
【0123】
[比較例1]
液状樹脂を用いた置換洗浄を行わなかったこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。具体的には、実施例1の工程(1-1)と同じ方法でノズルを通したエポキシ樹脂組成物1の吐出を行い、シリンジからノズルを取り外し、ノズルのコネクタ部の汚れを綿棒でふき取って、使用済みノズルを得た。この使用済ノズルに、実施例1の工程(1-3)及び(1-4)と同じ条件で超音波洗浄及び乾燥を行った後、評価した。
【0124】
[比較例2]
エポキシ樹脂組成物1の代わりに製造例2で製造したエポキシ樹脂組成物2を使用し、液状樹脂を用いた置換洗浄を行わなかったこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。具体的には、エポキシ樹脂組成物1の代わりにエポキシ樹脂組成物2を用いたこと以外は実施例1の工程(1-1)と同じ方法でノズルを通したエポキシ樹脂組成物1の吐出を行い、シリンジからノズルを取り外し、ノズルのコネクタ部の汚れを綿棒でふき取って、使用済みノズルを得た。この使用済ノズルに、実施例1の工程(1-3)及び(1-4)と同じ条件で超音波洗浄及び乾燥を行った後、評価した。
【0125】
[比較例3]
液状樹脂を用いた置換洗浄を行なわず、また超音波洗浄の条件を表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。具体的には、実施例1の工程(1-1)と同じ方法でノズルを通したエポキシ樹脂組成物1の吐出を行い、シリンジからノズルを取り外し、ノズルのコネクタ部の汚れを綿棒でふき取って、使用済みノズルを得た。この使用済ノズルを、有機溶媒としての酢酸エチルに浸漬して10分間、超音波で洗浄を行った。その後、有機溶媒からノズルを取り出し、数回振ってノズル内部の有機溶媒を取り除いた後、室温で30分間放置して乾燥してから、評価した。
【0126】
[比較例4]
液状樹脂を用いた置換洗浄を行なわず、また超音波洗浄の条件を表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。具体的には、実施例1の工程(1-1)と同じ方法でノズルを通したエポキシ樹脂組成物1の吐出を行い、シリンジからノズルを取り外し、ノズルのコネクタ部の汚れを綿棒でふき取って、使用済みノズルを得た。この使用済ノズルを、有機溶媒としてのイソプロピルアルコールに浸漬して15分間、超音波で洗浄を行った。その後、有機溶媒からノズルを取り出し、数回振ってノズル内部の有機溶媒を取り除いた後、室温で30分間放置して乾燥してから、評価した。
【0127】
[比較例5]
エポキシ樹脂組成物1の代わりに製造例3で製造したエポキシ樹脂組成物3を使用し、液状樹脂を用いた置換洗浄を行わなかったこと以外は、実施例1と同じ方法により、ノズルの洗浄及び評価を行った。具体的には、エポキシ樹脂組成物1の代わりにエポキシ樹脂組成物3を用いたこと以外は実施例1の工程(1-1)と同じ方法でノズルを通したエポキシ樹脂組成物1の吐出を行い、シリンジからノズルを取り外し、ノズルのコネクタ部の汚れを綿棒でふき取って、使用済みノズルを得た。この使用済ノズルに、実施例1の工程(1-3)及び(1-4)と同じ条件で超音波洗浄及び乾燥を行った後、評価した。
【0128】
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表3に示す。下記の表3において、略称の意味は、下記の通りである。
AC:アセトン
EA:酢酸エチル
IPA:イソプロピルアルコール
【0129】
【0130】
[結果の考察]
比較例1~5においては、ノズル内に固体分散型潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物を満たしたまま有機溶媒で洗浄を行ったので、ノズル内部に詰まりの発生を確認した。他方、実施例1~7は、ノズル内部の詰まりの発生はなく、異物の付着も確認されなかった。以上の結果から、本発明のノズルの洗浄方法によれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物のノズルへの付着を抑制できるので、ノズルの詰まりを抑制しながら当該ノズルの洗浄が可能であることが確認された。