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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185333
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20221207BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20221207BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
E02F9/00 M
F01P5/06 510Z
F01P11/10 B
F01P11/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092945
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 香織
(72)【発明者】
【氏名】井口 将利
(72)【発明者】
【氏名】江東 真也
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
(57)【要約】
【課題】除去装置による塵埃の除去効率の向上を図ること。
【解決手段】本体と、本体に取り付けられた作業装置と、本体に設けられたエンジンルームの内部にそれぞれ収容され、冷却空気を導く冷却ファン、及び、冷却空気の流れに対して冷却ファンの上流側に配置されて、冷却空気と熱交換を行う熱交換器とを備える作業機械であって、冷却空気の流れに対して熱交換器の上流側に配置されて、冷却空気の流れを旋回流に変化させ、旋回流中に含まれる塵埃を遠心力によって除去した後に冷却空気を熱交換器へ導くとともに、塵埃を含む冷却空気を排出する第1除去装置と、第1除去装置を収納し、第1除去装置から冷却空気が排出される排出空間を形成する収納ケースと、収納ケースの排出空間を負圧にして旋回流を増幅させるためのファンとを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に取り付けられた作業装置と、
前記本体に設けられたエンジンルームの内部にそれぞれ収容され、冷却空気を導く冷却ファン、及び、冷却空気の流れに対して前記冷却ファンの上流側に配置されて、冷却空気と熱交換を行う熱交換器とを備える作業機械であって、
冷却空気の流れに対して前記熱交換器の上流側に配置されて、冷却空気の流れを旋回流に変化させ、旋回流中に含まれる塵埃を遠心力によって除去した後に冷却空気を前記熱交換器へ導くとともに、塵埃を含む冷却空気を排出する第1除去装置と、
前記第1除去装置を収納し、前記第1除去装置から冷却空気が排出される排出空間を形成する収納ケースと、
前記収納ケースの前記排出空間を負圧にして前記旋回流を増幅させるためのファンとを備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記ファンは、前記収納ケースの下面に設けられ、
前記第1除去装置にて除去された塵埃は、前記ファンを介して前記収納ケースから大気へ排出されることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記第1除去装置から排出された冷却空気を取り込み、冷却空気から塵埃を分離する分離装置を有する第2除去装置をさらに備え、
前記第2除去装置は、前記分離装置にて塵埃が分離された冷却空気を前記ファンによって前記熱交換器に向けて送風することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記第2除去装置は、前記収納ケースの上部に設置されて、前記排出空間と連通していることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記第1除去装置と前記熱交換器の間に位置して、冷却空気が流れる通風空間を備え、
前記第2除去装置は、前記通風空間の外部から前記通風空間に向かって延び、前記熱交換器に向かう冷却空気が流れる空気通路を有し、
前記空気通路は、前記熱交換器の前記第1除去装置側の面に対して斜めに供給される冷却空気を前記通風空間へ送り出す送出口を有することを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
前記空気通路は、冷却空気の流れの上流側から下流側に向かってストレート状に延びるストレート部を有することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ファンによって熱交換器へ導かれる冷却空気から塵埃を除去する除去装置を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルのような作業機械は、塵埃が発生する環境で使用されている。そのため、エンジンルームの内部に取り込まれた冷却空気には、塵埃が含まれている。また、冷却空気が熱交換器を通過するときに、冷却空気に含まれる塵埃が熱交換器に付着することで、熱交換器に目詰まりが発生することがある。
【0003】
そこで、特許文献1に記載された建設機械では、冷却空気の流れに対して熱交換装置ユニットの上流側に除去装置を対向して配置し、除去装置によって、冷却空気に含まれる塵埃を除去している。除去装置は、冷却空気を旋回流に変化させ、旋回流中に含まれる塵埃を遠心力によって除去する。塵埃が除去された冷却空気は、熱交換装置ユニットへ導かれて、熱交換装置ユニットを通過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6580607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された除去装置は、収納ケース内の空気抵抗が大きく、旋回流を増幅させることが困難な構成であるため、塵埃の除去効率の低下が懸念される。特に、冷却空気に塵埃が多く含まれると熱交換器の目詰まりが起こるため、塵埃の除去効率の向上は重要な課題である。
【0006】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、除去装置による塵埃の除去効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、本体と、前記本体に取り付けられた作業装置と、前記本体に設けられたエンジンルームの内部にそれぞれ収容され、冷却空気を導く冷却ファン、及び、冷却空気の流れに対して前記冷却ファンの上流側に配置されて、冷却空気と熱交換を行う熱交換器とを備える作業機械であって、冷却空気の流れに対して前記熱交換器の上流側に配置されて、冷却空気の流れを旋回流に変化させ、旋回流中に含まれる塵埃を遠心力によって除去した後に冷却空気を前記熱交換器へ導くとともに、塵埃を含む冷却空気を排出する第1除去装置と、前記第1除去装置を収納し、前記第1除去装置から冷却空気が排出される排出空間を形成する収納ケースと、前記収納ケースの前記排出空間を負圧にして前記旋回流を増幅させるためのファンとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、除去装置(第1除去装置)による塵埃の除去効率の向上を図ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2】エンジンルームを後方から見た断面図である。
図3】上部旋回体を後方から見た斜視図である。
図4】切断した第1除去装置の斜視図である。
図5】切断した第1除去装置の側面図である。
図6】エンジンルーム内の冷却空気の流れを示す図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図8】エンジンルームを後方から見た断面図である。
図9】上部旋回体を後方から見た斜視図である。
図10】第2除去装置の部分を拡大して示す断面図である。
図11】エンジンルーム内の冷却空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明に係る作業機械の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る作業機械の代表例である油圧ショベル1の側面図である。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2に支持された上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられた作業装置4とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、油圧ショベル1の本体の一例である。下部走行体2は、左右一対の無限軌道8を備える。走行モータ(図示省略)の回転が左右一対の無限軌道8に伝達されて、無限軌道8が回転すると、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、無限軌道8に代えて、装輪式であってもよい。
【0012】
上部旋回体3は、旋回モータ(図示省略)によって旋回可能な状態で下部走行体2に支持されている。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5と、旋回フレーム5の前方左側に配置されたキャブ7と、旋回フレーム5の後部に配置されたカウンタウェイト6と、エンジンルーム(建屋)10とを主に備える。作業装置4は、土砂の掘削作業などを行うフロント作業機であり、旋回フレーム5の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0013】
作業装置4は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム4aと、ブーム4aの先端に揺動可能に支持されたアーム4bと、アーム4bの先端に揺動可能に支持されたバケット4cと、ブーム4a、アーム4b、及び、バケット4cを駆動させる油圧シリンダ4d~4fとを含む。カウンタウェイト6は、作業装置4との重量バランスを取るための重量物であり、上部旋回体3の後端において、旋回フレーム5に支持されている。
【0014】
キャブ7には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。キャブ7の内部には、オペレータが着席するシート(図示省略)と、シートに着席したオペレータが操作する操作装置(ステアリング、ペダル、レバー、スイッチなど)が配置されている。キャブ7に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、作業装置4が動作する。
【0015】
エンジンルーム10は、上部旋回体3のキャブ7とカウンタウェイト6の間に設けられて、作業装置4及びキャブ7より後方で、カウンタウェイト6より前方において、旋回フレーム5に支持されている。また、エンジンルーム10は、旋回フレーム5の左右方向の全域に延設されている。エンジンルーム10は、その上部がエンジンカバー12によって覆われており、左側部は後述する第1除去装置30が露出している。
【0016】
図2は、図1に示すエンジンルーム10を後方から見た断面図である。エンジンルーム10の内部には、油圧ポンプ20、エンジン21、冷却ファン22、熱交換器23、及び、収納ケース24が、右側から左側に向けて順に収容されている。エンジン21は、油圧ショベル1の駆動源であり、油圧ショベル1を動作させるための駆動力を発生させる。油圧ポンプ20は、エンジン21によって駆動されて、作動油タンク(図示省略)に貯留された作動油を走行モータ、旋回モータ、及び、油圧シリンダ4d~4fに供給する。
【0017】
エンジン21の内部には、冷却液(例えば、水、油)が通過する冷却液通路が形成されている。冷却液は、熱交換器23から供給され、冷却液通路を通過してエンジン21を冷却した後、再び熱交換器23に還流する。熱交換器23は、エンジン21から還流した冷却液を冷却するラジエータ(図示省略)を含み、ラジエータによって冷却された冷却液をエンジン21に再び供給する。なお、熱交換器23は、ラジエータ以外の熱交換器、例えば、作動油を冷却するオイルクーラ、ターボ過給されたエンジン21の吸気を冷却するインタークーラを含んでいてもよい。
【0018】
冷却ファン22は、エンジン21の駆動軸にプーリとベルトを介して取り付けられ、エンジン21から伝達される駆動力によって回転する。冷却ファン22の回転に伴い、エンジンルーム10の内部に冷却空気の流れが誘起される。これにより、冷却ファン22は、エンジン21及び熱交換器23を冷却するための冷却空気の流れを発生させる。収納ケース24、熱交換器23、冷却ファン22、及び、エンジン21は、冷却ファン22による冷却空気の流れの上流側から下流側に向けて順に配置されている。エンジン21は、冷却空気の流れに対して冷却ファン22の下流側に配置されて、冷却ファン22が発生する冷却空気により冷却される。
【0019】
熱交換器23は、冷却空気の流れに対して冷却ファン22の上流側に配置されて、冷却ファン22と対向する。冷却ファン22は、熱交換器23と冷却ファン22との間に負圧を発生させて、熱交換器23に冷却空気を導く。冷却ファン22の回転に伴い、エンジンルーム10の外部の空気(外気)は、給気口13からエンジンルーム10の内部に冷却空気として取り込まれて、熱交換器23を通過する。熱交換器23は、冷却ファン22によって導かれた冷却空気と熱交換を行う。
【0020】
熱交換器23に導かれる冷却空気の流れに対して熱交換器23の上流側の位置には、収納ケース24が熱交換器23と対向して配置されている。収納ケース24は、直方体形状に形成されて、上部旋回体3に取り付けられている。熱交換器23と収納ケース24は、間隔をあけて配置されて、互いの間に冷却空気が流れる通風空間25を形成している。収納ケース24は、通風空間25を挟んで、熱交換器23において冷却空気の流れの上流側に位置する上流側面23aと対向する。
【0021】
図3は、図1に示す上部旋回体3を後方から見た斜視図である。図3では、上部旋回体3の一部を省略している。収納ケース24の内部には、複数の第1除去装置30が収納されている。収納ケース24と第1除去装置30は、エンジンルーム10の側部に露呈して設けられている。そして、収納ケース24の下面に複数(例えば5つ)の排気ファン(ファン)70が設けられている。複数の第1除去装置30は、縦方向及び横方向に互いに間隔をあけて設けられて、冷却ファン22による冷却空気の流れに対して熱交換器23の上流側に配置される。第1除去装置30は、冷却空気の流れを旋回流に変化させ、旋回流中に含まれる塵埃を遠心力によって除去する。
【0022】
図2を参照して、冷却空気は、エンジンルーム10の内部で、第1除去装置30、通風空間25、熱交換器23、冷却ファン22、及び、エンジン21を順に通過する。第1除去装置30は、熱交換器23と対向して配置されて、熱交換器23に導かれる冷却空気に含まれる塵埃を除去する。通風空間25は、第1除去装置30と熱交換器23の間に位置して、第1除去装置30から熱交換器23へ導かれる冷却空気が流れる。
【0023】
図4は、切断した第1除去装置30の斜視図である。図5は、切断した第1除去装置30の側面図である。第1除去装置30は、収納ケース24において冷却空気の流れの上流側に位置する上流側壁24aと冷却空気の流れの下流側に位置する下流側壁24bとに取り付けられて、収納ケース24の内部に形成された排出空間24cに収納されている。排出空間24cは、収納ケース24の内部空間における第1除去装置30の外部に位置する空間である。第1除去装置30は、排出空間24cに塵埃を排出する。
【0024】
第1除去装置30は、例えば、合成樹脂によって作製されており、円筒形状の第1筒体31と第2筒体40とを有する。第1筒体31は、冷却空気の流れの上流側の一端に位置する上流側開口部32と、冷却空気の流れの下流側の他端に位置する下流側開口部33と、上流側開口部32から下流側開口部33まで延びる空洞部34とを有する。第1筒体31の上流側開口部32は、収納ケース24の上流側壁24aに形成された上流側孔部24d内に配置されて、加熱による変形によって、上流側孔部24dに隙間なく固着されている。第1筒体31の下流側開口部33は、排出空間24cに配置されている。
【0025】
第1除去装置30は、第1筒体31の内周面に固着された螺旋状の羽根35と、羽根35を支持する軸部36と、軸部36を第1筒体31の内周面に連結する連結部37とを有する。羽根35は、第1筒体31の空洞部34内で上流側開口部32側の位置に設けられて、第1除去装置30に導かれた冷却空気の流れを旋回流に変化させる。これにより、冷却空気は、空洞部34内で旋回して、空洞部34の内周面に吹き付けられる。
【0026】
第2筒体40は、冷却空気の流れの上流側の一端に位置する上流側開口部41と、冷却空気の流れの下流側の他端に位置する下流側開口部42と、上流側開口部41から下流側開口部42まで延びる空洞部43と、上流側開口部41の外周面に設けられた環状の補強部44とを有する。第2筒体40の下流側開口部42は、収納ケース24の下流側壁24bに形成された下流側孔部24e内に配置されて、加熱による変形によって、下流側孔部24eに隙間なく固着されている。
【0027】
第2筒体40の上流側開口部41の外径は、下流側開口部42の外径、及び、第1筒体31の下流側開口部33の内径よりも小さい。第2筒体40の上流側開口部41は、第1筒体31の空洞部34内に位置し、第1筒体31の下流側開口部33よりも冷却空気の流れの上流側に配置されている。第2筒体40の上流側開口部41と第1筒体31の下流側開口部33との間の箇所には、第2筒体40の外周面と第1筒体31の内周面との間に、塵埃を排出可能な隙間38が形成されている。
【0028】
冷却空気は、第1除去装置30に導かれて、第1筒体31の上流側開口部32に流入する。第1筒体31内で、冷却空気の流れは、羽根35によって旋回流に変化して、空洞部34内を流れる。冷却空気に含まれる塵埃は、旋回流の遠心力を受けて第1筒体31の内周面に向かって吹き付けられ、遠心力によって冷却空気から分離して除去される。塵埃が除去された清浄な冷却空気は、第2筒体40の上流側開口部41から空洞部43を経て下流側開口部42から流出する。このように、第1除去装置30は、塵埃を除去した後に、冷却空気を通風空間25へ流出させて、塵埃を除去した冷却空気を熱交換器23へ導く。
【0029】
冷却空気から分離した塵埃は、第1筒体31の内周面に沿って流れて、第1筒体31と第2筒体40の間の隙間38から第1除去装置30の外部に向かって、冷却空気と共に排出される。第1除去装置30は、塵埃を含む冷却空気を収納ケース24の排出空間24cに排出する。
【0030】
ここで、第1実施形態では、図2及び図3に示すように、収納ケース24の下面に複数の排気ファン70が設けられており、これらの排気ファン70が駆動することで、塵埃を含む冷却空気は排気ファン70を介して大気に排出される。図6は、エンジンルーム10内の冷却空気の流れを示す図である。
【0031】
図6に示すように、エンジン21が駆動して冷却ファン22が回転すると、冷却空気は第1除去装置30内に取り込まれ、第1除去装置30によって塵埃が除去される。そして、塵埃が除去された冷却空気は、冷却ファン22の軸方向に沿って図中の矢印A方向に流れて、熱交換器23及びエンジン21を冷却する。一方、第1除去装置30によって除去された塵埃は、排出空間24cにおいて旋回流の流れ方向に排出される。そして、排出空間24c内の塵埃を含む空気は、排気ファン70によって吸引され、図中の矢印B方向に排出される。こうして、収納ケース24の排出空間24c内にある塵埃は大気中に排出される。なお、図6の符号23aは防虫ネットである。
【0032】
第1実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0033】
第1除去装置30によって塵埃が除去された冷却空気によって熱交換器23を冷却できるため、熱交換器23の目詰まりを防止できる。しかも、排気ファン70によって収納ケース24の排出空間24cが負圧になり、第1除去装置30に取り込まれた冷却空気は圧力差によって排出空間24cに向かって引かれる。これにより、第1除去装置30の内部に発生する旋回流を増幅させて、旋回流に含まれる塵埃に作用する遠心力を大きくすることができる。その結果、第1除去装置30による塵埃の除去効率が向上し、熱交換器23の目詰まりをより一層、防止することができる。即ち、排気ファン70を設けるだけの簡単な構成で、第1除去装置30の塵埃除去効率を大幅に向上させることができる。
【0034】
また、排気ファン70が収納ケース24の下面に設けられているので、塵埃が下向きに排出される。よって、油圧ショベル1の周囲に塵埃が大気中に飛散するのを抑止でき、作業環境を良好に保てる利点もある。
【0035】
勿論、排気ファン70の取付位置は、収納ケース24の下面に限定されない。収納ケース24の上部や左右の側部に設けても良い。何れの場合であっても、排気ファン70が駆動することで排出空間24cが負圧になり、第1除去装置30の内部に発生させる旋回流を増幅させて、旋回流に含まれる塵埃に作用する遠心力を大きくすることができる。その結果、第1除去装置30の塵埃除去効率を高めることができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、上記した第1実施形態と重複する構成については、同一符号を付して説明は省略する。図7は、第2実施形態に係る油圧ショベル101の側面図、図8は、図7に示すエンジンルーム10を後方から見た断面図、図9は、図7に示す上部旋回体3を後方から見た斜視図である。なお、図9において、上部旋回体3の一部の図示を省略している。
【0037】
図7図9に示すように、第2実施形態では、塵埃を除去するための第2除去装置50をさらに備えた点に特徴がある。また、第2実施形態では、収納ケース24の下面に複数の排気ファン70を設ける構成に代えて、送風ファン71を設けている点が第1実施形態と相違する。第1除去装置30から排出された塵埃を含む冷却空気は、図7図9に示す第2除去装置50によって取り込まれる。図10は、第2除去装置50の部分を拡大して示す断面図である。また、図11は、エンジンルーム10内の冷却空気の流れを示す図である。
【0038】
第2除去装置50は、第1除去装置30から排出された冷却空気を、送風ファン71によって吸引し熱交換器23に向けて送風する。また、第2除去装置50は、冷却空気から塵埃を分離する分離装置51を有している。分離装置51は、第1除去装置30から排出された冷却空気を取り込み、熱交換器23に向けて送風される冷却空気から塵埃を分離して除去する。分離装置51は、遠心力を利用して塵埃を分離する遠心分離型のエアクリーナであり、収納ケース24の上部に取り付けられている。また、分離装置51は、円筒形状の分離ケース52と、分離ケース52内で回転する羽根53とを有している。分離ケース52の底面には、環状の吸入口54と吐出口55が同心円状に形成されている。吐出口55は、分離ケース52の径方向の中心側に形成され、吸入口54は、吐出口55を囲んで形成されている。羽根53は、吸入口54と吐出口55とがなす同心円の中心を通る回転軸に取り付けられている。
【0039】
吸入口54には、第1空気通路56が接続され、吐出口55には、第2空気通路60が接続されている。第2除去装置50は、収納ケース24の排出空間24cに繋がる第1空気通路56によって、排出空間24cと連通している。第1空気通路56は、排出空間24cから分離装置51の吸入口54まで上下方向に沿って延びる。第2空気通路60は、例えば、ダクトであり、分離装置51の吐出口55から熱交換器23に向けて延びる。
【0040】
第2空気通路60の先端には、熱交換器23に向けて配置された送風ファン(ファン)71が取り付けられている。送風ファン71が駆動されることによって、第2除去装置50の内部に熱交換器23へ向かう冷却空気の流れが生じるとともに、収納ケース24の排出空間24cに第2除去装置50へ向かう冷却空気の流れが生じる。これにより、排出空間24cの冷却空気は、第1除去装置30から第2除去装置50へ導かれて(吸引されて)、第2除去装置50に回収される。別言すれば、送風ファン71が排出空間24cの冷却空気を吸引し、第2除去装置50を介して熱交換器23に向けて排出する。
【0041】
第2除去装置50は、第1空気通路56を介して、第1除去装置30から排出された塵埃を含む冷却空気を排出空間24cから分離装置51に取り込む(図11の矢印D参照)。取り込まれた冷却空気は、吸入口54から分離ケース52の内部に吸入されて、分離ケース52の内部に旋回流を発生させる。羽根53は、旋回流により回転して、冷却空気の旋回流に含まれる塵埃を遠心力によって除去する。
【0042】
冷却空気に含まれる塵埃は、旋回流の遠心力を受けて分離ケース52の内周面に向かって吹き付けられ、回転する羽根53によって分離ケース52に形成されたスリット52aに押し付けられる。これにより、塵埃は、スリット52aから押し出されて、冷却空気から分離して除去される。除去された塵埃は、第2除去装置50の外部の大気中に排出される(図11の矢印E参照)。塵埃が除去された冷却空気は、分離ケース52の吐出口55から第2空気通路60へ吐き出され、第2空気通路60を通って通風空間25に向けて流出する(図11の矢印F参照)。
【0043】
第2除去装置50は、分離装置51によって冷却空気に含まれる塵埃を除去した後に、塵埃が除去された清浄な冷却空気を送風ファン71によって熱交換器23に向けて流す。送風ファン71は、通風空間25に配置されて、冷却空気を熱交換器23に向けて送風する。送風ファン71により、冷却空気は、熱交換器23へ導かれて、第2除去装置50から熱交換器23に向けて供給される。このように、塵埃が除去された冷却空気は、第2除去装置50によって熱交換器23へ導かれて(図11の矢印F参照)、通風空間25において、第1除去装置30から熱交換器23へ導かれる冷却空気(図11の矢印C参照)と合流する。
【0044】
第2除去装置50の分離装置51、第1空気通路56、及び、第2空気通路60は、第1除去装置30の上方に位置し、通風空間25の外部に配置されている。第2空気通路60は、通風空間25の外部から通風空間25に向かって延び、通風空間25における冷却空気の流れの上流側の箇所に開口している。また、第2空気通路60は、第1除去装置30の上方の分離装置51から通風空間25及び熱交換器23に向かって延びる。分離装置51から熱交換器23に向かう冷却空気は、第2空気通路60を流れて、第2空気通路60の送出口61から熱交換器23に向けて送り出される。送風ファン71は、送出口61に接続され、送出口61から送り出される冷却空気を熱交換器23に向けて送風する。
【0045】
送出口61は、第2空気通路60の先端に形成され、熱交換器23の上流側面23aに向けて配置されている。上流側面23aは、熱交換器23の第1除去装置30側の面であり、第1除去装置30と対向して配置されている。冷却空気は、送出口61から送風ファン71を介して通風空間25へ送り出されて、上流側面23aに対して斜めに供給される。即ち、冷却空気は、上流側面23aに斜め上方から当たるように、送出口61から上流側面23aに対して斜めに傾斜する方向に送り出されて、上流側面23aに供給される。
【0046】
第2空気通路60は、冷却空気の流れの上流側の端部と下流側の端部の間に、ストレート部62、63と屈曲部64とを有する。ストレート部62、63は、第2空気通路60の内部の冷却空気の流れの上流側から下流側に向かってストレート状に延びる。ストレート部62、63のうち、一方のストレート部62は、冷却空気の流れの上流側に位置する第2空気通路60の上流側端部を含む上流側ストレート部であり、他方のストレート部63は、冷却空気の流れの下流側に位置する第2空気通路60の下流側端部及び送出口61を含む下流側ストレート部である。
【0047】
屈曲部64は、2箇所のストレート部62、63の間に位置して、ストレート部62、63を連結する。第2空気通路60は、1箇所の屈曲部64のみにおいて、鈍角な角度で熱交換器23に向けて屈曲する。冷却空気の流れに沿う長さを比較したときに、ストレート部62、63のそれぞれの長さを合計した長さは、屈曲部64の長さよりも長い。このように、第2空気通路60の全長において、ストレート部62、63の長さは、ストレート部62、63以外の部分の長さよりも長い。
【0048】
第2実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0049】
送風ファン71によって、第1除去装置30から排出された冷却空気を第2除去装置50に取り込んで、冷却空気を熱交換器23へ向けて供給することができる。そのため、熱交換器23へ供給する冷却空気の風量を確保することができる。送風ファン71によって冷却空気を送風することで、第2除去装置50の内部空間と収納ケース24の排出空間24cとが負圧になり、第1除去装置30の内部の冷却空気が排出空間24cに向かって引かれる。これにより、第1除去装置30の内部に発生する旋回流を増幅させて、旋回流に含まれる塵埃に作用する遠心力を大きくすることができる。その結果、第1除去装置30によって、冷却空気に含まれる塵埃を効率よく除去でき、冷却空気に含まれる塵埃による熱交換器23の目詰まりを防止することができる。
【0050】
分離装置51によって、熱交換器23に向けて送風される前の冷却空気から塵埃を分離して除去することができる。これにより、塵埃が除去された冷却空気を熱交換器23に供給できるため、塵埃による熱交換器23の目詰まりを防止することができる。
【0051】
第2除去装置50を収納ケース24の上部に設置しており、収納ケース24内の排出空間24cと第2除去装置50との距離を長くすることなく、第2除去装置50を排出空間24cと連通させることができる。そのため、第1除去装置30から第2除去装置50に向かう冷却空気の圧力損失を抑制でき、冷却空気を排出空間24cから第2除去装置50に効率よく取り込むことができる。
【0052】
第2空気通路60は、通風空間25の外部から通風空間25に向かって延びており、通風空間25における冷却空気の流れを阻害しない。また、冷却空気は、第2空気通路60の送出口61から熱交換器23の上流側面23aに斜めに供給される。そのため、第2空気通路60を大きく屈曲させることなく、冷却空気を熱交換器23に向けて流すことができる。従って、第2空気通路60を流れる冷却空気に作用する抵抗が大きくなるのが抑制される。その結果、冷却空気の圧力損失を低減して、冷却空気を熱交換器23に向けて円滑に流すことができる。
【0053】
第2空気通路60のストレート部62、63では、屈曲部64に比べて、冷却空気に作用する抵抗が小さく、冷却空気の圧力損失が小さくなることで、冷却空気が円滑に流れる。そのため、冷却空気の圧力損失を低減して、冷却空気を効率よく熱交換器23に供給することができる。
【0054】
本実施形態の効果を確認するため、熱交換器23の上流側面23aに風速計を取り付け、熱交換器23の複数の測定箇所で、風速計によって風速を測定した。送風ファン71を停止した状態で、冷却ファン22を駆動したときには、風速の測定結果より、複数の測定箇所のそれぞれで冷却空気が供給されていた。また、冷却ファン22を停止した状態で、送風ファン71を駆動したときにも、風速の測定結果より、複数の測定箇所のそれぞれで冷却空気が供給されていた。これより、第1除去装置30によって冷却空気を熱交換器23に導けるとともに、第2除去装置50によって冷却空気を熱交換器23に供給できることが分かった。
【0055】
なお、送風ファン71と対向する整流板を通風空間25の内部に設けて、整流板により、第2除去装置50から熱交換器23に向かう冷却空気を整流してもよい。これにより、第2空気通路60の送出口61から送り出された冷却空気を熱交換器23の上流側面23aに対して斜めに供給するようにしてもよい。また、第1除去装置30は、合成樹脂に限定されず、例えば、鉄材などの金属によって作製して、ボルト及びナットにより、収納ケース24に取り付けてもよい。収納ケース24は、直方体形状以外の形状に形成してもよい。
【0056】
第2除去装置50は、収納ケース24の上部に限定されず、例えば、収納ケース24の下部、又は、収納ケース24の側部に設置してもよい。また、送風ファン71の位置も収納ケース24の上部に限定されない。収納ケース21の排出空間24c内を吸引して負圧にでき、排出空間24に排出された冷却空気を第2除去装置50に取り込んで、熱交換器23に送風できる位置であれば、送風ファン71はどのような位置に設けられていても良い。
【0057】
また、冷却ファン22は、エンジン21によって駆動されるファンに限定されず、例えば、電動駆動ファン、又は、油圧駆動ファンであってもよい。また、エンジンルーム10の内部に、2つ以上の冷却ファン22を設けてもよい。排気ファン70及び送風ファン71は、例えば、電動で駆動してもよく、油圧、又は、エンジン21によって駆動してもよい。
【0058】
本実施形態では、油圧ショベル1、101に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は、例えば、ホイールローダ、ダンプトラックを含む他の種類の作業機械にも適用可能であり、同様の効果を奏する。このように、本発明は、冷却空気により熱交換器を冷却する種々の作業機械に適用できる。
【0059】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(本体)
3 上部旋回体(本体)
4 作業装置
10 エンジンルーム
20 油圧ポンプ
21 エンジン
22 冷却ファン
23 熱交換器
23a 上流側面
24 収納ケース
24c 排出空間
25 通風空間
30 第1除去装置
50 第2除去装置
51 分離装置
56 第1空気通路
60 第2空気通路
61 送出口
62 ストレート部
63 ストレート部
64 屈曲部
70 排気ファン(ファン)
71 送風ファン(ファン)
101 油圧ショベル
図1
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