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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185334
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】導電ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20221207BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20221207BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C08L65/00
C08L25/18
C08L1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092946
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】319012211
【氏名又は名称】株式会社ザック
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】野地 欣久
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB01Y
4J002BC10X
4J002CE00W
4J002GF00
4J002GH00
(57)【要約】
【課題】 本発明は、最適な密着性を取得するために、所望の粘度を有する導電性ポリマー組成物を提供する。
【解決手段】 本発明に係る導電性ポリマー組成物は、PEDOT/PSS導電性ポリマーに所望の粘度を付与するために、増粘剤として所定の割合のセルロースナノファイバーを混合させるものである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PEDOT/PSS導電性ポリマーに所望の粘度を付与するために、増粘剤として所定の割合のセルロースナノファイバーを混合させたことを特徴とする導電性ポリマー組成物。
【請求項2】
プリント基板の下地層の所望の粘度として、粘度100~500Pa・sを達成するために、PEDOT/PSS導電性ポリマーにセルロースナノファイバーを0.05~3重量%混合させることを特徴とする請求項1記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項3】
印刷用インキの所望の粘度として、粘度40~500Pa・sを達成するために、PEDOT/PSS導電性ポリマーにセルロースナノファイバーを0.01~3重量%混合させることを特徴とする請求項1記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記所望の粘度の内、粘度40~100Pa・sは、短時間の高速撹拌にて取得されることを特徴とする請求項3記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項5】
前記所望の粘度の内、粘度200~500Pa・sは、長時間の低速撹拌にて取得されることを特徴とする請求項3記載の導電性ポリマー組成物。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の下地層の材料若しくは印刷用インキに使用される導電性ポリマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2015-117367号公報)及び特許文献2(特許第6569931号公報)は、導電性ポリマー、導電性向上剤、バインダー、及び増粘剤を含有する導電性樹脂組成物を開示し、前記増粘剤が、ポリアクリル、及びポリビニルアルコールから選択される少なくとも1つであること(特許文献1)、増粘剤が、ポリアクリル酸系樹脂、セルロースエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、又は、ポリビニルアルコールであること(特許文献2)を開示する。
【0003】
特許文献3(特開2019-112615号公報)は、ポリマーと、約60℃未満の融点を有する金属及び金属合金から選択される導体と、増粘剤とを含む導電性複合材料を開示し、さらに増粘剤が有機増粘剤又は無機増粘剤であることが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-117367号公報
【特許文献2】特許第6569931号公報
【特許文献3】特開2019-112615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願人は、導電性ポリマーを使用して第5世代通信(5G)向けのプリント基板の新工法を研究開発している。これは、絶縁・接着材料のプリプレグに導電性ポリマーで下地層を作り、その上にメッキを施して配線層とするもので、スパッタリングやパラジウム触媒を付与する方法に比べて大幅に低コスト化できるものであるが、その密着性に課題が残っている。
【0006】
このため、本発明は、最適な密着性を取得するために、所望の粘度を有する導電性ポリマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る導電性ポリマー組成物は、PEDOT/PSS導電性ポリマーに所望の粘度を付与するために、増粘剤として所定の割合のセルロースナノファイバーを混合させたことにある。
【0008】
前記導電性ポリマー組成物は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)及びポリスチレンスルホン酸(PSS)からなるPEDOT/PSS導電性ポリマー組成物であることが望ましい。
【0009】
また、前記セルロースナノファイバー(CNF)は、植物素材を機械的に解繊したもので、結晶部、准結晶部、非晶部からなるセルロースミクロファブリル(シングルナノファイバー)単独又は、縦井に引き裂かれたもの、もつれたもの、または網目状の構造を持つその集合体からなり、幅3~100nm・アスペクト比10以上・長さ100μmまでものである。植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)は、主に木材を原料とするが、木材の他にも、竹、稲わら・麦わら・もみ殻、農業残渣(野菜くず、茶殻、ミカン皮など)、草本類(ススキなど)、海藻といった原料からも生成することができ、さらには一般生ゴミからも生成することができる。
【0010】
所望の粘度として、プリント基板の下地層用の導電性ポリマー組成物は、粘度100~500Pa・sを有することが望ましく、このために導電性ポリマーにセルロースナノファイバーを0.05~3重量%混合させることが望ましい。
【0011】
さらに所望の粘度として、印刷用インキ用の導電性ポリマー組成物は、粘度40~500Pa・sを有することが望ましく、このために導電性ポリマーにセルロースナノファイバーを0.01~3重量%混合させることが望ましい。
【0012】
前記所望の粘度の内、粘度40~100Pa・sは、短時間の高速撹拌にて取得されることが望ましい。これは、特にスクリーン印刷の高速印刷の場合に最適な粘度である。
【0013】
前記所望の粘度の内、粘度200~500Pa・sは、長時間の低速撹拌にて取得されることが望ましい。これは、特にスクリーン印刷の低速印刷の場合に最適な粘度である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電性ポリマー組成物を、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)及びポリスチレンスルホン酸(PSS)からなるPEDOT/PSS導電性ポリマー組成物で生成するとともに、前記導電性ポリマー組成物にセルロースナノファイバーを所定の割合で含有させて所望の粘度を達成することができるため、最適な導電性ポリマー組成物の接着性を達成できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施例ついて説明する。
【実施例0016】
本発明の実施例1に係る導電性ポリマー組成物は、プリント基板の下地層としてプリント基板に塗布されるのに適したもので、その粘度は、40~500Pa・sであることが望ましい。このため、本発明に実施例1に係る導電性ポリマー組成物は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)及びポリスチレンスルホン酸(PSS)からなるPEDOT/PSS導電性ポリマー組成物であり、これにセルロースナノファイバーを0.05~3重量%混合させるものである。
【0017】
PEDOT/PSS導電性ポリマーと0.05~3重量%のセルロースナノファイバーは、20℃~80℃の液温で、回転速度1000rpm~5000rpmで、10分~2時間の撹拌時間で、撹拌され、所望の粘度を得ることができるものである。
【実施例0018】
本発明の実施例2に係る導電性ポリマー組成物は、印刷用インキとして使用されるもので、その粘度は、40~500Pa・sであることが望ましく、このために本発明に実施例1に係る導電性ポリマー組成物は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)及びポリスチレンスルホン酸(PSS)からなるPEDOT/PSS導電性ポリマー組成物であり、これにセルロースナノファイバーを0.01~3重量%混合させるものである。
【0019】
さらにスクリーン印刷の場合において、高速印刷に対応する理想の粘度は、40~100Pa・sであり、これを得るために、短時間の高速撹拌にて取得される。
【0020】
また、低速印刷に対応する理想の粘度は、200~500Pa・sであり、長時間の低速撹拌にて取得されることが望ましい。
【0021】
また、所望の粘度を得るために、低速回転、1000rpmの場合、撹拌時間は2時間、中速回転、3000rpmの場合、撹拌時間は15分以上、高速回転、5000rpmの場合、撹拌自艦は10分以上である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
また、本発明のセルロースナノファイバーが混合されて所定の粘度を有するPEDOT/PSS導電性ポリマーは、蓄電体に利用することもできる。